論文式試験問題集[倒 1 産 法] [倒 産 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の事例について, 以下の設問に答えなさい。 【事 例】 A株式会社は, かねてから代表取締役Bの親友であるCの経営するD社に無担保で貸付けをし ていたところ, この貸付金の回収が不能になったことから, 経営状況が著しく悪化した。 いち早 くA社が支払不能の状況にあると判断した同社の取引債権者であるE社は, 平成19年3月2日, 裁判所に対し, A社についての破産手続開始の申立てをし, 同月23日, 破産手続開始の決定が され, 破産管財人Xが選任された。 破産管財人Xは, 調査の結果, Bに資産があることが判明し たので, A社がD社に対して有する債権のうち回収不能になった3000万円について, Bに対 して役員としての損害賠償責任を追及したいと考えている。 他方, E社は, A社に対して500万円の債権を有していたので, A社に対する破産手続にお いて破産債権の届出をしたが, Bの妻であるFは, 平成18年10月に当該債権につきE社との 間で連帯保証契約を締結していたことから, E社からの求めに応じ, 同社が破産債権の届出をし た後, 当該連帯保証債務の全額につき弁済した。 〔設 問〕 以下の小問1から3までについては, それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.(1) 破産管財人XによるBの責任追及のための手続について説明しなさい。 (2) 破産手続開始前から, D社への無担保の貸付けを理由として, A社の株主GからBに対 し, 回収不能分である3000万円について, 適法に株主代表訴訟(会社法第847条第 3項)が提起されていた場合には, 破産管財人Xは, Bの責任追及のためにどのように対 応すべきか。 (1)で説明した手続との関係にも留意しながら解答しなさい。 2. Bは, A社に対し平成17年に2000万円貸し付けたとして, A社に対する破産手続にお いて当該貸付金について破産債権の届出をしたが, 取引債権者の多くは, A社の破綻の原因を 作ったBが他の破産債権者と同様の配当を受けることに不満を持っている。 他方で, Bは, 以 前から資産をはるかに上回る多額の債務を負っており, 近々自己破産の申立てをすると噂され ている状況にある。 破産管財人Xとしては, Bが届け出た破産債権について, どのように対応 することが考えられるか。 3. Fは, 破産手続開始の直前まで, A社所有名義の建物につき, A社との間で賃貸借契約を結 んで居住していたが, 賃料債務については合計600万円が未払状態になっていた。 Fは, E 社に対する連帯保証債務についての弁済に係る以下の(1)(2)の債権を自働債権, 上記賃料債務 に係る債権を受働債権として, 相殺しようとしている。 (1)(2)のそれぞれの場合について相殺 は認められるか。 (1) 弁済による代位によって取得した原債権 (2) 求償権 2 [第2問](配点:50) 次の事例について, 以下の設問に答えなさい。 【事 例】 Aは, 宅地建物取引主任者の登録を経た上, 宅地建物取引業の免許を受けて自ら不動産仲介業 を営んでいたが, 平成10年に購入したマンションの住宅ローンの返済のためや, 平成15年こ ろから始めた株取引及び商品先物取引により生じた2000万円余りの損失の処理のために, い わゆる消費者金融業者からも借入れを繰り返すようになった。 その結果, 平成19年1月当時, Aの負債は, 住宅ローンの残債務1600万円のほか, 損失処理のための借入債務も, 知人及び 消費者金融業者からの借入れを主なものとして合計1500万円に達していた。 他方, その当時 のAのめぼしい財産としては, 住宅ローンを被担保債権とする抵当権が設定されている時価15 00万円のマンション, 平成18年5月にBに絵画を時価相当額である50万円で売却したこと により生じた売買代金債権及び時価40万円の中古自動車があるだけであった。 その上, 収入が 安定せず, その額もかろうじて生活費を賄える程度に減少していたので, Aは, 弁済期にある債 務を継続的に支払えない状況に陥った。 そこで, Aは, 平成19年1月下旬, 債務の整理につい て, 自治体が主催する法律相談を受けたこともあったが, その時は, 破産手続を選択する決断が できなかった。 Aは, その後も負債の返済に窮していたため, 平成19年2月初旬, 消費者金融業者に借入れ を申し込む際, 申込書の「他の業者からの借入額」を記載する欄に, 正直に記載すると借入れを 断られるとの思いから100万円と記載した。 Aは, 応対した従業員から「本当にこれ以上の負 債はないのですか。 」と尋ねられたものの, 「他にはありません。 」と答え, 50万円を借りたが, この借入れについては, わずかの返済しかできなかった。 また, Aは, 借入先を探している際, クレジットカードを利用して家電量販店でパソコンを購 入し, それを送ってくれれば購入価格の半額程度で買い取るとの情報をある業者から得た。 藁に もすがる思いであったAは, 平成19年3月上旬, クレジットカードを利用して家電量販店にお いて60万円でパソコンを3台購入し, 直ちにその業者に送って30万円を得た。 しかし, その 金員は他の返済に費消され, クレジットカード会社へはほとんど弁済することができなかった。 平成19年3月下旬, 返済の督促に耐えきれなくなったAは, 弁護士Cに相談の上, 同年4月 6日, 破産手続開始及び免責許可の各申立てをし, 同月11日, 破産手続が開始され, 裁判所に より破産管財人Dが選任された。 〔設 問〕 1. Aは, 自治体が主催した法律相談を受けた際, 担当弁護士が説明してくれた小規模個人再生 手続にも関心を持ったが, 「不動産仲介業の収入が減って生活費を賄うのがやっとの状態だか ら, 小規模個人再生手続を利用することは難しいと思う。 」との説明を受けた。 破産手続との比較において小規模個人再生手続の利点を指摘するとともに, 担当弁護士が「小 規模個人再生手続を利用することは難しい。 」と判断した理由を簡潔に説明しなさい。 2. Bから次のような相談を受けた弁護士Eは, Bに対して, どのように答えるのが適切か検討 しなさい。 【Bの相談】 私は, 平成18年5月にAから絵画1点を代金50万円で購入し, その引渡しを受けました が, 贋作ではないかとの疑いもあって代金を支払っていませんでした。 その後, 平成19年4 月下旬に至り, 本物であることが判明したので, Aに対し, 50万円を支払いました。 ところ が, 同年5月中旬になって, Aの破産管財人と称するDから, 50万円をDに支払うように求 められました。 私は, Dの求めに応じなければならないのでしょうか。 3 3. 破産手続開始の申立てを受任した弁護士Cは, Aから次の質問を受けた。 どのように答える のが適切か検討しなさい。 【Aの質問】 私は, 破産手続が開始された後は, 業者から委託を受けて化粧品や健康食品の訪問販売の仕 事に従事して生計を立てようと考えています。 仕事をするためには自動車があった方が便利で すし, 公共交通機関が乏しい地方であることから, 高齢の母の通院の介助や日用品の買物とい った日常生活の場面でも自動車が不可欠です。 そこで, 中古自動車を保有し続けることができ るのであればありがたいのですが, それは可能でしょうか。 4. Aの免責許可の申立てについて裁判所が判断する際に検討すべき事項を指摘して説明しなさ い。 ただし, 設問2及び3に現れた事実は考慮しないものとする。 (参照条文) 宅地建物取引業法 (試験) 第16条第1項 都道府県知事は, 国土交通省令の定めるところにより, 宅地建物取引主任者資 格試験(以下「試験」という。 )を行わなければならない。 (取引主任者の登録) 第18条第1項 試験に合格した者で, 宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期 間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上 の能力を有すると認めたものは, 国土交通省令の定めるところにより, 当該試験を行つた都道 府県知事の登録を受けることができる。 ただし, 次の各号のいずれかに該当する者については, この限りでない。 一, 二 三 (略) 破産者で復権を得ないもの 四〜八 (略) (登録の消除) 第68条の2第1項 都道府県知事は, その登録を受けている取引主任者が次の各号の一に該当 する場合においては, 当該登録を消除しなければならない。 一 第18条第1項第1号から第5号の2までの一に該当するに至つたとき。 二〜四 (略) 4 論文式試験問題集[租 5 税 法] [租 税 法] 〔第1問〕(配点:50) Xは, 親友Aが代表取締役として実質的に一人で経営しているB株式会社(以下「B社」という。 ) の非常勤の取締役であるが, 同社の経営には全く関与していなかった。 Aは, 平成14年6月, C 銀行から5000万円を借り入れ, B社の運転資金に充当した。 その際, Xは, Aから依頼されて, Aの上記借入れについて連帯保証した。 その後, B社の経営が次第に悪化し利息の支払すら困難になり, Xは, Aに懇願されて, やむを 得ず, 平成17年3月, 自己所有の土地(30年前に1000万円で購入した土地。 以下「本件土 地」という。 )を売却して, その売却代金8000万円から, 譲渡費用300万円を支払った上, A のC銀行に対する残債務4000万円全額を返済し, 4000万円をAに求償した。 しかし, B社 は経営不振が続いた結果, 債務超過に陥り辛うじて営業を続けている状態であって, Aには, Xか ら求償された金銭の返済資金が全くなかった。 そこで, Xは, 本件土地の売却代金のうち, C銀行に対する返済に充当した部分については, 所 得税法第64条第2項に規定する所得計算の特例の適用を受けることができるものとして, 平成1 7年分の確定申告書を提出した。 以上の事案について, 以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1. 所得税法第64条第2項の規定の適用がないとした場合において, 本件土地の売却に係るX の所得税の課税関係がどうなるかについて, 所得税法の条文の根拠を摘示して論じなさい。 た だし, 租税特別措置法の適用はないものとして論じなさい(以下の設問においても同じ。 )。 2. Xが所得税法第64条第2項に規定する所得計算の特例の適用を受けることができるかどう かについて, その適用要件を示した上, 前記の事案においてこれに該当する事実としてどのよ うな事実が認められるのかを検討しつつ論じなさい。 3. 前記の事案中のAの平成14年6月の借入れの時点で, B社が既に債務超過で辛うじて営業 を続けている状態であり, Aにも返済資金が全くなかったとした場合において, Xが所得税法 第64条第2項の適用を受けることができるかどうかについて論じなさい。 6 〔第2問〕(配点:50) 甲は, 多数の従業員を擁して個人で生花の卸小売りを行う花屋の事業を営んでいる。 甲は, 平成 18年5月下旬ころ, 得意先の丙株式会社(以下「丙社」という。 )から同社の記念行事を飾る一定 量の生花の注文を受けたことから, その納期である同年6月1日に, 従業員乙に指示してその生花 を丙社に配達させたが, その折, 乙は, 丙社の社長室に置いてある高級なガラス製の置物を誤って 割ってしまった。 その置物は, 丙社がその前日に備品として300万円で購入したものであった。 連絡を受けた甲は, すぐさま丙社に出向いて陳謝したところ, 丙社の社長は, 甲が丙社に対し上記 の置物の購入代金の300万円を支払うことを条件に, これまでどおり取引を続けてよいと述べた。 甲はこれを了承し, 翌日, 300万円を丙社に支払った(以下当該支払を「本件支払」という。 )。 同日, 甲は乙に対して, 「今回のことは, この仕事ではよくあることで, 仕方がありません。 あなた は, 長い間, まじめに働いてくれていますから, 300万円はあなたには求償しませんよ。 」と述べ た。 以上の事案について, 以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1. 甲の事業所得の金額の計算上, 本件支払に係る金額がどのように取り扱われるかについて, 条文を摘示しつつ論じなさい。 2. 本件支払に係る乙の所得税の課税関係がどうなるかについて, 源泉徴収の要否にも触れなが ら, 条文を摘示しつつ論じなさい。 3. 丙社が本件支払を受けたことに伴い, 丙社に法人税の課税関係が生ずるかどうかについて, 条文を摘示しつつ論じなさい。 (参照条文) 所得税法施行令第98条の2 法第45条第1項第7号 (必要経費とされない損害賠償金)に規定する政令で定める損害賠償金 (これに類するものを含む。 )は, 同項第1号に掲げる経費に該当する損害賠償金(これに類するも のを含む。 以下この条において同じ。 )のほか, 不動産所得, 事業所得, 山林所得又は雑所得を生ず べき業務に関連して, 故意又は重大な過失によつて他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠 償金とする。 7 8 論文式試験問題集[経 9 済 法] [経 済 法] 〔第1問〕(配点:50) 都市部のマンション等では, 多数の自動車の駐車スペースを確保するため, 二段・多段方式の機 械式の駐車場装置(以下「駐車場装置」という。 )が利用されることが多い。 駐車場装置の製造を行 う事業者(以下「製造業者」という。 )は国内に6社存在し, 甲社もその一つである。 甲社の駐車場 装置(以下「甲社製装置」という。 )の売上げは, 国内における駐車場装置の総販売台数の30%を 占め, 第一位の市場占有率(シェア)を有している。 駐車場装置は耐用年数が長く, 安全に使用し続けるためには定期的な保守点検(駐車場装置の点 検, 給油, 調整, 破損部品の交換及び修理等)を必要とする。 駐車場装置は, 製造業者によって仕 様が異なり, その取替部品も汎用品は少なく, 駐車車両を乗せるためのパレット(車両を乗せる金属 製の板)の落下防止設備, 電子制御基盤など, 製造業者ごとに仕様の異なる部品が大部分である(以 下, これらの製造業者ごとに仕様の異なる部品を「構成部品」という。 )。 構成部品の故障・トラブ ルの発生は重大な事故の原因となり得るため, マンション等の駐車場の所有者・管理者にとって上 記の故障・トラブルへの対応が最も重要であり, かかる故障・トラブルが発生した場合における迅 速な対応の可否が保守業者の選定に当たって重視されることが多い。 甲社は, 北海道地区から九州・沖縄地区まで全国を幾つかの地区に分けて, 子会社を設立し, 子 会社において, 甲社製装置の販売・据付け, 甲社製装置の部品の販売を行っている。 X社はそのよ うな子会社の一つであり, 関東地区において甲社製装置を独占的に販売し, その据付けを行うとと もに, 甲社製装置の部品(構成部品を含むすべての部品)を販売している。 X社による甲社製装置 の販売台数は, 関東地区では6製造業者の駐車場装置全体の総販売台数の40%を占めており, 第 一位のシェアを有している。 駐車場装置の保守業者には, 製造業者系列の保守業者と, 製造業者と資本関係のない保守業者(以 下「独立系保守業者」という。 )があり, 関東地区においても, 甲社系列の保守業者である乙社(乙 社は甲社及びX社が共同で出資して設立した会社である。 )と, 独立系保守業者のA社, B社及びC 社が存在している。 A社, B社及びC社は, いずれも乙社に比べて規模の小さい事業者であるが, 乙社等の製造業者系列の保守業者に比べて低廉な料金で保守業務を行うことで, 近時人気を集めて いる。 関東地区における甲社製装置に係る保守業務契約に関して, A社, B社及びC社の合計シェ アは70%を占め, 乙社のシェア(30%)よりも高くなっている。 X社は, 従来, 構成部品を含む甲社製装置の部品をすべて自ら保管し, 保守業者からの発注に応 じて, その都度, 部品の引渡しを行っていたが, この度, 構成部品に関する販売方針を変更しよう と考え, 以下に述べるそれぞれの販売方針について, 弁護士に私的独占の禁止及び公正取引の確保 に関する法律(独占禁止法)上の問題点の検討を依頼した。 あなたが弁護士としてX社から上記の依頼を受けたとして, 独占禁止法上の問題点の有無を検討 し, 回答しなさい。 なお, 個々の設問に記載した事実関係は, それぞれが独立しており, 他の設問 の前提とはならないものとして検討しなさい。 〔設問1〕 X社の担当者は, 「駐車場装置は製造業者によって仕様が異なり, それに応じて構成部品の仕様 も本来異なるものがほとんどであるが, 構成部品の中には他の製造業者の駐車場装置の構成部品 として転用可能なものがあり, 独立系の保守業者が, それを他の製造業者の駐車場装置の構成部 品として転用する事例がしばしば見られる。 この点に関して, 国土交通省のガイドラインは, 特 定の製造業者の駐車場装置に他の製造業者の構成部品を使えば安全性が確保できないおそれがあ るから, 特定の製造業者の駐車場装置には当該製造業者製の構成部品を使用すべきであると勧告 している。 当社としては, この点に着目して, 甲社製装置の構成部品を, 独立系保守業者に販売 10 すると, どの製造業者の駐車場装置に使用されるのか確認できず, これが甲社製装置に使用され ることを確保するためには, 独立系保守業者からの甲社製装置の構成部品の発注に対しては, 系 列の乙社において取替工事を行うことを販売の条件とするという方針を採りたい。 」と説明した。 あなたがX社の担当者に尋ねたところ, 独立系保守業者が甲社製装置の構成部品を他の製造業 者製の駐車場装置の構成部品として転用した事例がどの程度あるか, これまでに転用による事故 が起きた例があるか否か, 転用による具体的な危険性の程度などについては, いずれも調査を行 っていないため不明であり, また, 独立系保守業者に, 文書や口頭で, 他の製造業者製の駐車場 装置に自社の部品を転用しないように注意するなどの措置を採ったことはなく, 今後もそのよう な計画はないとのことであった。 また, あなたが乙社の担当者にも尋ねたところ, 担当者は「乙 社は, 独立系保守業者から甲社製装置の構成部品の取替えの依頼があった場合, できる限り迅速 に対応したいと考えているが, 乙社の顧客からの依頼があった場合にはこれを優先する。 乙社の 顧客に対する甲社製装置の修理に比べて, 独立系保守業者の顧客に対する甲社製装置の修理は平 均して2週間程度の遅れが生じることが見込まれる。 」と回答した。 〔設問2〕 X社の担当者は, 設問1に述べた計画に代えて, 「独立系保守業者から甲社製装置の構成部品の 発注を受けた場合, 当該業者自身で構成部品の取替工事を行うことは認めるが, 構成部品の引渡 時期について条件を付したいと考えている。 従来は甲社で余分の在庫を抱えて, 独立系保守業者 か乙社かを問わず, 発注を受けた場合には直ちに当該構成部品を引き渡していたが, 今後は, 当 社において一定の計画在庫数量を設定し, その数量の8割を基準数量とする。 発注を受けた時点 で, 在庫数量が基準数量を下回っている場合, 又は独立系保守業者への引渡しによって基準数量 を下回る場合は, 独立系保守業者から当該構成部品の発注を受けても, これを直ちに引き渡さず, 甲社に構成部品の生産を発注し, その納入を待って構成部品を引き渡すこととしたい。 その場合, 甲社への生産発注から納入までは2か月程度が見込まれる。 なお, 引渡しによっても基準数量を 確保できる場合には直ちに引渡しを行う。 一方, 乙社に対しては, いかなる場合であっても直ち に引渡しを行う。 」と説明した。 あなたがX社の担当者に尋ねたところ, 担当者は「従来の保管費用が過大になってきたため, 保管費用を削減するために計画在庫数量を設定し, 不必要な在庫を減らすこととした。 計画在庫 数量は, 乙社の契約者数に, それらの契約者に2か月間に生じる構成部品の故障・トラブルの平 均発生頻度を乗じて得られる数量とする。 」と説明した。 11 〔第2問〕(配点:50) 電機メーカーのX社は, 平成13年に, 家庭用電気製品に関する小売業者向け価格カルテルにつ いて独占禁止法違反により課徴金納付命令を受け, 以後, 会社内に独占禁止法遵守体制(コンプラ イアンス体制)を置いていた。 平成17年12月にX社の代表取締役社長Aは, コンプライアンス 部門を担当する取締役Bから次のような報告を受けた。 すなわち, 「平成15年初めから, X社が甲 省発注の重電製品であるα電気製品の納入について同業他社である5社(Y社, P社, Q社, R社, S社)との間で入札に関して会合を開いて話し合いを行っていることが判明した。 X社の営業部門 のCが, 他社の営業担当者との年1回の会合に参加して, 甲省発注のα電気製品の入札(年間15 0億円程度の予算が確保されており, 各四半期ごとに甲省本省・地方支分部局ごとに入札が行われ る。 )に関し, 前年度の実績に応じて各社が受注する旨の基本ルールを確認している。 また, 各年度 の個別の入札に当たっては, その都度, 基本ルールに沿って落札できるように, 各入札に参加する 各社は話合いにより落札予定者と落札価格を決め, 実際の入札時にも落札予定者以外の会社は落札 価格より高い入札価格で応札することにより落札予定者の落札に協力してきた。 」 (以下「Bの報告」 という。 )という報告であった。 これを受け, X社は, 取締役会を開催し, 法令遵守の観点からこの会合に参加しない旨を決議し た。 BとCは, 平成17年12月末に開催された上記5社との会合に出席した上, X社が平成18 年以降この会合に参加せず, さらに, 当分の間, 甲省発注のα電気製品の入札から撤退する旨を告 げた。 その際, X社は, 甲省や公正取引委員会にこれらの事実を申し出ることはしないと述べ, 実 際にも, 申し出ることはなかった。 Y社も, 平成19年6月に法令遵守の監査を実施した結果, 上記の話合いの事実を把握し, 同月 20日, 公正取引委員会に対し, 課徴金の減免のための事実の報告を行い, 更に資料も提出した。 他方, X社は, 平成18年1月以降, 甲省発注のα電気製品の入札に参加していなかったところ, α電気事業部門の営業利益が落ちてきたため, 平成19年8月, 甲省の実施する入札に再参入する ことを決定したが, その際, 他社から上記の話合いに参加するよう申入れが来てもこれに従わない こととした。 X社は, 同年9月末の甲省発注に係るα電気製品の入札に参加し, P社らからの話合 いの申入れを拒絶し5億円で受注した。 公正取引委員会は, Y社の報告の結果, 6社による上記の話合いの事実を把握することとなり, 平成19年12月28日, 独占禁止法第47条第1項第4号に基づいて参加事業者の事業所及び担 当者の自宅に一斉に立ち入り, 必要な物件の検査を行った。 これに伴い, 各社は, それぞれ, 以後, かかる入札に関する会合に参加しない旨の通知を他社に対して発出した。 なお, 以下の各設問の解答に当たっては, 平成15年以降の行為のすべてについて現行の独占禁 止法が適用されるものと仮定し, 平成17年改正独占禁止法の経過措置を含め, 経過措置は考慮し ないものとする。 〔設問1〕 公正取引委員会の審査の結果, 次のような証拠が得られた。 それぞれの場合において, いかな る行為が独占禁止法に違反すると認定できるか, 条文を踏まえつつ具体的に述べよ。 (1) X社と5社がBの報告のとおりの行為を行っていた事実を認める証拠が得られた場合 (2) X社と5社が, 毎年度の会合において前年度実績に応じて各社の受注割合を決定する旨の基 本ルールを確認していたことを否定し, 甲省発注のα電気製品に係る個々の入札のいずれにお いても, 入札に参加する事業者があらかじめ落札予定業者を決定し, 他社はそれより高い入札 価格で応札していた事実を認める証拠のみが得られた場合。 なお, この場合において, 公正取 引委員会に対するY社の報告はなかったものと仮定する。 12 〔設問2〕 公正取引委員会は, 審査の結果, X社, Y社らの6社がいずれも独占禁止法に違反する行為を 行っていたと認定し, 課徴金の納付を命ずることとした。 X社は, 資本金が2億円で従業員が400名の電機メーカーであり, Y社は, 資本金が4億円 で従業員が600名の電機メーカーである。 また, 両社のα電気製品に係る売上額及び事業全体 の売上額(総売上額)はそれぞれ以下のとおりである。 以上を前提として, X社及びY社が納付 すべき課徴金額を算定し, その理由及び算定の過程を述べよ。 X 社 甲省発注α電気製 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 10億円 20億円 20億円 0円 5億円 30億円 30億円 40億円 20億円 20億円 X 社 総 売 上 額 1200億円 1000億円 900億円 800億円 600億円 品売上額 乙県等自治体発注 α電気製品売上額 Y 社 甲省発注α電気製 品売上額 乙県等自治体発注 α電気製品売上額 Y 社 総 売 上 額 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 8億円 16億円 16億円 18億円 10億円 28億円 35億円 42億円 21億円 19億円 800億円 1200億円 1300億円 900億円 900億円 (注) これらの金額は, 独占禁止法施行令で定められた基準に基づいて算定されたものである。 乙県等自治体発注の入札については入札に関する話合いの事実は確認されていない。 〔設問3〕 X社は, 公正取引委員会が発した課徴金納付命令に不服があり, 同命令について審判を請求し た。 審判において, X社は, 「甲省発注のα電気製品の売買契約においては, 平成17年以降, 納 入業者が独占禁止法に違反する行為により入札に参加した場合には, 受注した業者は売買代金額 の20%を違約金として国に支払うとの約定が設けられている。 そして, X社は, 国からこの約 定により平成17年の売上額の20%の支払請求を受け, 既にこれを支払った。 課徴金制度は, カルテルによる不当な利得を国が徴収することにより, 違反行為者がこれを保持することを防ぐ 制度であるから, 既に売上額の20%を国に支払った平成17年分の売上について, 売上額全額 を基礎として課徴金を課すことは, 不当な利得の剥奪という制度趣旨を超えて, 過大な経済的不 利益を与えることになるから許されず, 課徴金の算定に当たっては, 平成17年分の売上額の2 0%を算定の基礎から外すべきである。 」と主張した。 この主張の当否を論ぜよ。 13 14 論文式試験問題集[知的財産法] 15 [知的財産法] 〔第1問〕(配点:50) 以下の事実関係を前提として, 後記の設問に答えよ。 【事実関係】 (1) 甲は, 平成12年7月, 符号化データの蓄積・転送装置に関する発明(以下「本件発明」と いう。 )の特許出願をし, 平成14年1月にその特許出願につき出願公開がされた後, 平成15 年1月20日, 本件発明について特許権の設定登録を受けた。 乙は, 平成12年10月から, 本件発明の技術的範囲に属する携帯電話βの製造販売を開始 し, 現在(平成19年5月16日)も, その製造販売を継続している。 その間の平成14年2 月, 甲は, 乙に対し, 携帯電話βの製造販売につき, 本件発明の内容を記載した警告書面を送 付した。 (2) 乙による携帯電話βの製造販売については, 次のような事情があった。 乙は, 平成12年2月, 知人のAから, 符号化データの蓄積・転送装置の技術に関する論文 (以下「本件論文」という。 )のコピーを入手したことを契機に, 本件論文記載の技術を用いて 携帯電話の製造販売事業を行うことを企画した。 そして, 乙は, 本件発明の特許出願時までに, 乙の工場内で試作品の携帯電話αを製造する とともに, 携帯電話αを一部改良した携帯電話βの設計図面も作成していた。 その後, 携帯電 話βについて, 前記(1)のとおり製造販売が開始されたが, 携帯電話αについては販売に至らな かった。 本件論文は, Aが, 自己の研究の成果を記載して作成し, 平成12年1月, Aを含む会員6 名で構成される先端技術に関する私的研究会の席上で各会員に交付したものであった。 〔設 問〕 1. 甲の乙に対する訴訟上の請求として考えられるものについて論ぜよ。 2. 乙が甲の請求に対して主張することができる抗弁を検討し, その上で, 甲の請求がいかなる 範囲で認められるかについて論ぜよ。 16 〔第2問〕(配点:50) 以下の事実関係を前提として, 後記の設問に答えよ。 なお, 著作者人格権に関しては論じる必要 はない。 【事実関係】 甲は, 小説Aを執筆し出版した。 これは, 甲が数年暮らした外国を舞台に, 外国人の若い男女 を主人公とした恋愛小説であった。 甲は, 小説Aを演劇として上演することを計画し, その脚色 を乙と丙に依頼し, 乙と丙は, これを受けて, 共同して小説Aを脚色し, 脚本Bを執筆した。 作家志望の丁は, 小説の書き方の勉強のために, 小説Aを基にして, ストーリー展開と登場人 物の性格設定を同様なものとしつつ, 舞台を日本とし, 主人公を日本人の若い男女に置き換えた 小説Cを執筆した。 同じく作家志望の戊も, 小説の書き方の勉強のために, 小説Aの続編として, 主な登場人物を そのまま登場させ, 主人公のその後の人生を描く小説Dを執筆した。 〔設 問〕 1. 乙は, 甲の上演計画が頓挫したことから, 自らが代表者である劇団に脚本Bに基づいて演劇 Eを演じさせ, これを録音録画したDVDを販売したいと考えている。 この場合, 乙は, 甲と 丙の承諾を得ることが必要か。 2. 丁は, 小説Cが一般の人にどのように評価されるかを知りたくなり, これを, 自らがボラン ティアで行っている小説等の無料朗読会において朗読した。 この場合, 甲は, 丁に対して, ど のような請求をすることができるか。 3. 戊は, 小説Dの出来栄えに満足し, 多くの人に読んでもらうために, これを, 自らがインタ ーネット上に開設したホームページに掲載した。 この場合, 甲は, 戊に対して, どのような請 求をすることができるか。 17 18 論文式試験問題集[労 19 働 法] [労 働 法] 〔第1問〕(配点:50) 以下の【事実関係】の下で, D社は, A及びBに対して, 何らかの懲戒処分を行いたいと考えて いる。 この相談に対し, あなたが弁護士として回答する場合に検討すべき法律上の問題点を, Aと Bそれぞれについて指摘し, それについてのあなたの見解を述べなさい。 【事実関係】 A及びBは, 製造業を営むC社の従業員であるが, 現在, 子会社のD社に在籍出向中であり, Aは同社の本社営業部において, Bは同社のE営業所においてそれぞれ勤務している。 C社の就 業規則においては, 所定労働日は月曜日から金曜日までとされ, 始業時刻は午前8時, 終業時刻 は午後5時(休憩1時間)と定められている。 他方, D社では, 労働日はC社と同一であるが, 製品の販売等を主たる事業としていることから, 顧客との取引の多い時間帯に合わせて, 各事業 場において始業時刻を午前9時, 終業時刻を午後6時(休憩1時間)としている。 C社の上司からA・B両名に出向の内示があった際, Aは, 小さな子供を抱えており, 出向先 までの通勤時間はあまり変わらないものの, 終業時刻が1時間遅くなるため, 帰宅の際に子供を 保育所に迎えに行くことが困難になることにつき不満を示し, Bも, 小規模な営業所勤務となる ことに不満を述べた。 しかし, 両名は, 結局は異議を留めずに出向に応じ, D社の勤務時間どお りに就労し始めた。 ところが, その後, E営業所でBの不手際により商品の受注事務につき多大な支障が生じ, 取 引先から苦情が多数寄せられた。 このBの不手際は, 出向後仕事に熱意を示さなくなっていた同 人が上司の指示を無視したために生じたものであった。 また, この事態に対応するため, 本社営 業部でも残業が必要になり, 営業部長は, 当日の水曜日と翌木曜日の2日間にわたり, Aを含む 営業部の関係従業員に対して, それぞれ午後11時までの5時間の残業を命じた。 しかし, Aは, 水曜日については, 友人に子供を一時預かってもらうことが可能になったとして午後10時まで は残業したものの, その後の残業は拒否して退社し, 木曜日は, その手立てがつかないと述べて 一切の残業を拒否し, 午後6時に退社した。 D社の就業規則には, 「会社は, 業務上の必要に応じて, 労働基準法第36条所定の協定に従い, 時間外又は休日に従業員を労働させることができる。 」という規定があり, D社は, 各事業場にお ける労働者の過半数を代表する者との間で同協定を締結し, 所轄労働基準監督署長に届け出てい るが, 協定には, 「納期への対応, 決算事務, その他業務の必要上やむを得ない場合」が時間外・ 休日労働の事由として挙げられ, 延長時間の限度は, 1日については4時間と記載されていた。 また, D社の就業規則には, 会社が懲戒処分をなし得る旨の規定のほか, 譴責・減給・出勤停 止・諭旨退職・懲戒解雇という懲戒処分の種類を定めた規定があり, 業務上の指示・命令違反そ の他の懲戒事由を定めた規定も置かれている。 もっとも, 同社のE営業所においては, 常時就労 している従業員数は8名であり, 上記就業規則の周知手続はとられていなかった。 他方, C社で も, 就業規則上にD社の上記規定と同様の定めがあり, 労働基準法第36条の協定も締結されて いるが, C・D両社間の出向協定には懲戒処分についての定めはなかった。 20 〔第2問〕(配点:50) ○○年10月10日, 弁護士であるあなたは, R労働組合(以下「R労組」という。 )の委員長で あるX1とP労働組合(以下「P労組」という。 )の組合員であるX11〜X13から, 後記【相談 事例】について, 雇用の回復や本来もらえたはずの賃金を得るために, Y社を相手方として訴えを 提起したいとの相談を受けました。 次の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1. あなたがX1〜X13の代理人として訴えを提起するとした場合, どのような請求をします か。 X1〜X10とX11〜X13に分けて解答しなさい。 (配点:10) 2. それぞれの請求について, 想定される相手方の反論も考慮しつつ, 問題となる具体的論点を 挙げた上, あなたの見解を述べなさい。 (配点:40) 【相談事例】 Y社は, 約100名の従業員を雇用するタクシー会社である。 X1〜X10は, かつてY社に 雇用され, タクシー運転手として働いていた。 X11〜X13は, 現にY社の従業員であり, タ クシー運転手として働いている。 Y社には○○年4月時点で, X1〜X13を含む80名の運転 手で組織されるP労組が存在していた。 Y社は, 多額の累積赤字を抱えていたことから, 同年4 月初旬に, 従来の賃金協定に基づく年功序列的な旧賃金体系に代えて, 新賃金体系を導入するな どの内容を含む会社再建案をP労組に提示した。 新賃金体系は, 固定給の割合を低くして歩合給 の比重を高くするとともに, 定期昇給を廃止するなど, 旧賃金体系よりも運転手にとっては一般 的に不利益な内容になることが予想され, 特に, 年齢の高いX11〜X13らには不利益な内容 であった。 新賃金体系の提案をめぐって, P労組内部は混乱して基本方針も二転三転し, 5月の 組合大会ではX1〜X13は新賃金体系を内容とする協定の締結に強く反対した。 しかし, 結局, P労組では改めて6月20日に組合大会を開催し, 「会社提案を受諾し, 新賃金協定を締結する。 」 との執行部案が62対13(反対者はX1〜X13)の多数で可決された。 ただし, P労組の組 合規約(本問末尾参照)に規定されている「運転手班別集会」は開催されなかった。 このような P労組の執行部や多数派の態度に不満を抱いたX1〜X10は, 翌日の6月21日にP労組に脱 退届を提出し, 即日10名でR労組を結成すると同時に, Y社に結成通知を行った。 他方, P労組とY社はなおも交渉を重ねた結果, 7月10日, 両者間に会社再建案に関する合 意が成立し, 新賃金協定(以下「7・10協定」という。 )が締結され(協定書には, P労組執行 委員長とY社代表取締役の記名押印がある。 ), 8月1日から発効した。 この結果, 7月末日をも って旧賃金協定は効力を失うこととなったが, 新賃金体系以外の懸案事項であった勤務時間の配 分方法や労災補償の上積み案に関するY社内部の意思の不統一もあり, 7・10協定に対応する 就業規則の改定作業は遅れ, 10月10日現在なお改定されず, 賃金に関する就業規則上の規定 は, 旧賃金協定と同一内容のままであった。 なお, X11〜X13の3名は, 7・10協定には 不満を抱きつつも, P労組に残留することにした。 P労組は, 7月12日にX1〜X10を除名処分に付し, P労組とY社間で締結されているユ ニオン・ショップ協定に基づき, Y社に対しX1〜X10を解雇するように求めた。 Y社は, こ れを受けて, 7月15日にX1〜X10に対し予告手当を提供した上で, 即時解雇の意思表示を した。 他方, P労組に残留したX11〜X13は, 受領した8月分と9月分の賃金がそれまでよ り20%ほど減っていたので, R労組委員長のX1に不満を打ち明けた。 その結果, 弁護士に相 談してみようということになった。 【P労組の組合規約(関係部分のみ抜粋)】 21 「第××条 労働協約の締結は, 運転手班別集会での意見を集約した上, 執行委員会が組合大会 に提案し, 同大会において組合員の過半数の賛成を得て執行委員長がこれを行うものとす る。 」 22 論文式試験問題集[環 23 境 法] [環 境 法] 〔第1問〕(配点:50) 環境影響評価法施行以前の国レベルにおける環境影響評価は, 閣議決定「環境影響評価の実施に ついて」に基づく環境影響評価実施要綱により実施されていた([資料]参照)。 環境影響評価法は, 同実施要綱に基づく制度を, 幾つかの点で改善している。 以下の設問に答えよ。 〔設問1〕 環境影響評価実施要綱と環境影響評価法を比較して, 同法の特徴について論ぜよ。 (配点:35) 〔設問2〕 環境影響評価法がなお有する限界について論ぜよ。 (配点:15) 24 [資 料] ○ 環境影響評価の実施について (昭和59年8月28日閣議決定) 1 政府は, 事業の実施前に環境影響評価を行うことが, 公害の防止及び自然環境の保全上極め て重要であることにかんがみ, 環境影響評価の手続等について, 下記のとおり, 環境影響評価 実施要綱を決定する。 2 国の行政機関は, 環境影響評価を実施するため, この要綱に基づき, 国の行う対象事業につ いては所要の措置を, 免許等を受けて行われる対象事業については, 当該事業者に対する指導 等の措置をできるだけ速やかに講ずるものとする。 3 政府は, この要綱に基づく措置が円滑に実施されるよう事業者及び地方公共団体の理解と協 力を求めるものとする。 4 政府は, 地方公共団体において環境影響評価について施策を講ずる場合においては, この決 定の趣旨を尊重し, この要綱との整合性に配意するよう要請するものとする。 5 この要綱で別に定めるとされている事項等この要綱に基づく手続等に必要な共通的事項を定 めるため, 別紙に定めるところにより, 内閣に環境影響評価実施推進会議を設ける。 記 環境影響評価実施要綱 第1 対象事業等 1 対象事業は, 次に掲げる事業で, 規模が大きく, その実施により環境に著しい影響(公害 (放射性物質によるものを除く。 )又は自然環境に係るものに限る。 )を及ぼすおそれがある ものとして主務大臣が環境庁長官に協議して定めるものとすること。 (1) 高速自動車国道, 一般国道その他の道路の新設及び改築 (2) 河川法に規定する河川に関するダムの新築その他同法の河川工事 (3) 鉄道の建設及び改良 (4) 飛行場の設置及びその施設の変更 (5) 埋立及び干拓 (6) 土地区画整理法に規定する土地区画整理事業 (7) 新住宅市街地開発法に規定する新住宅市街地開発事業 (8) 首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律に規定する工業団地造成事 業及び近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律に規定する工 業団地造成事業 (9) 新都市基盤整備法に規定する新都市基盤整備事業 (10) 流通業務市街地の整備に関する法律に規定する流通業務団地造成事業 (11) 特別の法律により設立された法人によって行われる住宅の用に供する宅地, 工場又は事 業場のための敷地その他の土地の造成 (12) (1)から(11)までに掲げるもののほか, これらに準ずるものとして主務大臣が環境庁長官 に協議して定めるもの 2 環境影響評価を行う者は事業者とし, 事業者とは, 対象事業を実施しようとする別に定め る者とすること。 第2 1 環境影響評価に関する手続等 環境影響評価準備書の作成 (1) 事業者は, 対象事業を実施しようとするときは, 対象事業の実施が環境に及ぼす影響(対 象事業が第1の1(5)の事業以外の事業である場合には, 対象事業の実施後の土地(当該対 25 象事業以外の対象事業の用に供するものを除く。 )又は工作物において行われることが予定 される事業活動その他の人の活動に伴って生じる影響を含むものとし, 対象事業の実施の ために行う第1の1(5)に掲げる事業により生ずる影響を含まないものとする。 )について, 調査, 予測及び評価を行い, 次に掲げる事項を記載した環境影響評価準備書を作成するこ と。 @ 氏名及び住所等 A 対象事業の目的及び内容 B 調査の結果の概要 C 対象事業の実施による影響の内容及び程度並びに公害の防止及び自然環境の保全のた めの措置 D (2) 対象事業の実施による影響の評価 (1)の調査等は, 主務大臣が環境庁長官に協議して対象事業の種類ごとに定める指針に従 って行うものとし, 環境庁長官は, 関係行政機関の長に協議して, 主務大臣が指針を定め る場合に考慮すべき調査等のための基本的事項を定めること。 2 準備書に関する周知 (1) 事業者は, 関係地域を管轄する都道府県知事及び市町村長に準備書を送付するとともに, 当該都道府県知事及び市町村長の協力を得て, 準備書を作成した旨等を公告し, 準備書を 公告の日から1月間縦覧に供すること。 (2) 事業者は, 準備書の縦覧期間内に, 関係地域内において, その説明会を開催すること。 この場合において, 事業者は, その責めに帰することのできない理由で説明会を開催する ことができない場合には, 当該説明会を開催することを要せず, 他の方法により周知に努 めること。 3 準備書に関する意見 (1) 事業者は, 準備書について公害の防止及び自然環境の保全の見地からの関係地域内に住 所を有する者の意見(準備書の縦覧期間及びその後2週間の間に意見書により述べられた ものに限る。 )の把握に努めること。 (2) 事業者は, 関係都道府県知事及び関係市町村長に(1)の意見の概要を記載した書面を送付 するとともに, 関係都道府県知事に対し, 送付を受けた日から3月間内に, 準備書につい て公害の防止及び自然環境の保全の見地からの意見を関係市町村長の意見を聴いた上で述 べるよう求めること。 4 環境影響評価書の作成等 (1) 事業者は, 準備書に関する意見が述べられた後又は3(2)の期間を経過した日以後, 準備 書の記載事項について検討を加え, 次に掲げる事項を記載した環境影響評価書を作成する こと。 @ 1(1)の@からDまでに掲げる事項 A 関係地域内に住所を有する者の意見の概要 B 関係都道府県知事の意見 C A及びBの意見についての事業者の見解 (2) 事業者は, 関係都道府県知事及び関係市町村長に評価書を送付するとともに, 当該関係 都道府県知事及び関係市町村長の協力を得て, 評価書を作成した旨等を公告し, 評価書を 公告の日から1月間縦覧に供すること。 5 環境影響評価の手続等に係るその他の事項 (1) 事業者は, 都道府県等と協議の上, 説明会の開催等を都道府県等に委託することができ ること。 (2) 国は, 地方公共団体が国の補助金等の交付を受けて対象事業の実施をする場合には, 環 26 境影響評価の手続等に要する費用について適切な配慮をするものとすること。 第3 公害の防止及び自然環境の保全についての行政への反映 1 評価書の行政庁への送付 (1) 事業者は, 評価書に係る公告の日以後, 速やかに, 免許等が行われる対象事業にあって は別に定める者に, 国が行う対象事業にあっては環境庁長官に評価書を送付すること。 (2) (1)により評価書の送付を受けた国の行政機関の長は, 評価書の送付を受けた後, 速やか に, 環境庁長官に評価書を送付すること。 2 環境庁長官の意見 主務大臣は, 1により環境庁長官に評価書が送付された対象事業のうち, 規模が大きく, その実施により環境に及ぼす影響について, 特に配慮する必要があると認められる事項があ るときは, 当該事業に係る評価書に対する公害の防止及び自然環境の保全の見地からの環境 庁長官の意見を求めること。 3 公害の防止及び自然環境の保全の配慮についての審査等 (1) 対象事業の免許等を行う者は, 免許等に際し, 当該免許等に係る法律の規定に反しない 限りにおいて, 評価書の記載事項につき, 当該対象事業の実施において公害の防止及び自 然環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査し, その結果に 配慮すること。 (2) 2により環境庁長官が意見を述べる場合には, (1)の審査等の前にこれを述べるものと し, 免許等を行う者は, 当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて, その意見 に配意して審査等を行うこと。 (3) 事業者は, 評価書に記載されているところにより対象事業の実施による影響につき考慮 するとともに, 2による環境庁長官の意見が述べられているときはその意見に配意し, 公 害の防止及び自然環境の保全についての適正な配慮をして当該対象事業を実施すること。 第4 1 その他 主務大臣が定める事項, 別に定める事項等この要綱に基づく手続等に必要な事項は, でき るだけ速やかに定めること。 ただし, 第2の1(2)の基本的事項その他この要綱に基づく手続 等に必要な共通的事項は, 本決定の日から3月以内に定めること。 2 この要綱の実施に関する経過措置については, 別に定めること。 27 〔第2問〕(配点:50) A県に居住するBは, 長年, B所有の敷地内にある井戸水を飲料水として使用してきたところ, 中毒症状を発症した。 Bが平成19年4月に調査したところ, 井戸水からは環境基準を上回る高 濃度のカドミウム及び鉛が検出された。 また, B宅の隣にはCが開設した工場があり, Cは, 製 造工程中で使用したカドミウム及び鉛を含んだ水を, 長年にわたり同工場敷地の地下に浸透させ てきたことが明らかとなった。 Dは, 平成19年1月にCから同工場を譲り受けるとともに, A 県知事に対して直ちに所要の届出をし, 平成19年6月から同工場を稼働する予定である。 この場合について, 以下の設問に答えよ。 〔設問1〕 平成19年5月の時点で, A県知事はどのような対応をすることができるかについて論ぜよ。 (配点:35) 〔設問2〕 平成19年5月の時点で, Bは, C及びDに対してどのような訴訟上の請求をすることがで きるかについて論ぜよ。 (配点:15) 28 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)] 29 [国際関係法(公法系)] 〔第1問〕(配点:50) 次の文章を読んで, 後記の設問に答えなさい。 A国は, 長年, 経済不振にあえぎ, また, 天候不順から飢饉も起こり, 餓死する者も出るよう な事態になった。 A国民の甲は, 日々の食糧も事欠く状況になったため, A国をひそかに脱出し, B国に密入国してB国内で働き始めるとともに, B国内でA国の現政権打倒運動に参加した。 数 年後, B国の入国管理当局は, 甲の密入国を探知して身柄を拘束し, B国法に基づいてA国への 退去強制処分を決定した。 甲は, B国裁判所へ出訴し, 退去強制処分の取消しを求めた。 B国は難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書に加入しており, 両条約を実施 するために, 議会で法律を制定して難民認定手続を置いているが, 甲はB国で難民申請を行って おらず, したがって, B国で難民認定されていない。 また, A国は密出国者に対して, 死刑を含 む厳罰に処するとの刑法を制定している(ただし, 運用状況は不明)。 〔設 問〕 1. B国では, 日本と異なり, 難民の地位に関する条約(難民の地位に関する議定書を含む。 以 下同じ。 )のB国における位置付け上, 甲がB国裁判所において難民の地位に関する条約違反の 主張をしても, そのような主張は法的考慮の対象にならない場合があり得る。 なぜ, B国にお いて, このような可能性が考えられるかを説明しなさい。 2. B国裁判所において, 甲は, 「甲の庇護を受ける権利(庇護権)を侵害するからB国の退去強 制処分は違法である。 」と主張した。 甲の主張する庇護権と, 難民該当性の関係について説明し なさい。 3. B国政府は, 「甲がB国の難民認定手続において難民申請を行っていないから難民に該当しな い。 したがって, 難民該当性を前提とする難民の地位に関する条約上の義務に抵触することは ない。 」と主張した。 この主張の是非を論じなさい。 4. 甲が難民の地位に関する条約上の難民であるかどうかについて, 論じなさい(「甲がB国の難 民認定手続において難民申請を行っていないから難民には該当しない。 」との主張はここではで きないことを前提としなさい。 )。 なお, 2. 〜4. については, 難民の地位に関する条約についての甲の主張が, B国裁判所にお いて法的考慮の対象となり得ることを前提とする。 30 〔第2問〕(配点:50) 次の文章を読んで, 後記の設問に答えなさい。 A国とB国は, それぞれの国民の大多数をなす民族が, 古代より異なる宗教を信仰しており, 激しい民族的・宗教的な対立がある。 両国国境付近のX地区にはB国民の信仰する宗教の聖地があ る。 X地区は, 現在はA国領域であるが, 歴史的に両国はX地区を取り合ってきたという経緯が あり, 国境地帯には両国の軍隊が駐留し, 緊張状態にある。 両国が加盟している地域的政治機構 Yは, 国際紛争解決について, 政治的, 歴史的, 宗教的な非法的要因をも考慮した仲介及び国際 調停を行う権限を持つ。 X地区をめぐって, 両国は暴力の応酬を含む衝突を繰り返しているが, Yが介入して両国間の対立の背景を考慮しながら解決してきており, A国は常にYによる解決に 協力的であった。 近年, X地区でB国民の信仰する宗教の聖地に対する侮蔑行為がA国民により行われたことで 両国間の緊張が高まった。 ついには, いずれからともなく軍隊が発砲するに至り, 現在も小規模 ながら武力衝突が続いている。 A国もB国も国際連合加盟国であるが, いずれも, 国際司法裁判所規程の第36条第2項の選 択条項を受諾していない。 両国は, 友好関係の設立と維持を目的とする基本関係条約を締結して いるが, 紛争解決条項第Z条は次のように規定している。 第Z条 両当事国は, 両当事国間の紛争を国際連合憲章第2条第3項及び同第33条に従い, 平和的に解決する義務を負い, 交渉, 審査, 仲介, 調停, 仲裁裁判, 司法的解決, 地 域的機関又は地域的取極の利用その他当事国の選ぶ平和的手段による解決を求めなけ ればならない。 紛争解決の方法について両国が協議を行った際に, B国は第Z条を根拠として, 次のように裁 判による解決を主張した。 「両国間の紛争は, A国軍隊の発砲による武力衝突をめぐる紛争としてとらえられ, A国に よる国際連合憲章第2条第4項違反を争点とする法律的性質を持つ。 両国とも, 紛争の平 和的解決義務を負っており, 両国間の紛争は, 第Z条に規定する仲裁裁判による解決又は 司法的解決が適当である。 A国は, この紛争の裁判による解決に同意すべきである。 」 これに対してA国は, 両国の対立のより広い背景を考慮したYによる解決が望ましいと考えて いる。 〔設 問〕 B国の主張のすべてについて, A国の立場からの反論を理由を付して述べなさい。 なお, 国際 連合はこの紛争の解決に着手していないものとし, 国際連合による紛争の解決については論ずる 必要はない。 31 32 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)] 33 [国際関係法(私法系)] 〔第1問〕(配点:50) 甲国人男Aは, 地震の研究のために日本の大学に勤務していたが, その間に日本人女Xと知り合 い, 甲国において婚姻した。 婚姻後5年を経過した時点で甲国に地震が発生し, 当時, 甲国の震源 地近くで調査を行っていたAが行方不明となった。 地震発生後7年が経過したが, Aの生死は依然 不明の状態にある。 AとXの婚姻が有効に成立していることを前提として, 以下の設問に答えよ。 なお, 甲国の国際私法には次の規定があること, また, 本件事案には法の適用に関する通則法(平 成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。 【甲国国際私法】 第P条 裁判所は, 甲国国際私法の規定によって指定された国の実質法のみを適用する。 第Q条 相続は, 相続財産の所在地にかかわらず, 被相続人の最後の住所地の法による。 〔設 問〕 1. AとXは, 婚姻後, 甲国において婚姻生活を送っていたとする。 Aが行方不明となって間も なくXは日本に帰国して生活していたが, 日本人男Bと知り合い, 現在ではBとの婚姻を望ん でいる。 (1) Xが日本の裁判所にAの失踪の宣告を申し立てた場合に, 日本の裁判所はこの申立てにつ いて国際裁判管轄権を有するか。 (2) 日本の裁判所が失踪の宣告をした場合に, 日本の裁判所はAとXの婚姻の解消についてい かなる国の法によって判断するか。 2. AとXは, 婚姻後, 日本において婚姻生活を送っていたとする。 Aは日本の銀行に預金債権 を有しており, Xはこれを相続するために, Aの失踪の宣告を日本の裁判所に申し立て, 日本 の裁判所はAの失踪の宣告をした。 なお, 甲国国際私法第Q条の意味におけるAの最後の住所地は日本にあるものとする。 (1) 法の適用に関する通則法第41条の適用上, 甲国国際私法第P条のような規定は一般的に いかなる意味を持つか。 (2) 本件相続に適用される法はいかなる国の法か。 34 〔第2問〕(配点:50) Yは甲国に主たる事業所を有する世界有数の医薬品製造販売業者である。 Yはその製造する医薬 品Aを甲国だけでなく, 乙国等多くの国においてもそれらの国に所在する事業所を通じて販売して いる。 医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず, Yは, 日本に事業所も担当者も置いてい ない。 Xは日本に常居所を有する日本人である。 以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。 なお, 各設問はいずれも独立した問いであり, 本件には, 法の適用に関する通則法(平成18年 法律第78号)が適用されることを前提とする。 〔設 問〕 1. Xは, 乙国に赴いた際に, 日本では購入できない医薬品Aが売られていたので, 乙国でこれ を購入した。 Xは, 日本に帰国後, 医薬品Aをしばらく服用していたが, 体調が悪くなったた め, 病院で精密検査を受けたところ, 医薬品Aの副作用の結果であることが判明し, 日本の病 院で入通院を余儀なくされた。 (1) XはYに対し, 入通院に要した費用等の損害賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。 日本の裁判所はこの訴えについて国際裁判管轄権を有するか。 (2) XのYに対する損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。 2. 乙国に常居所を有するZは, 医薬品Aを大量に購入し, それが医薬品として承認されていな い国々の居住者に対しても販売している。 Xは, インターネットを利用してZから医薬品Aを 購入し, 郵送によって受領した。 Xが医薬品Aをしばらく服用したところ, その副作用のため 健康を害し, 日本において入通院を余儀なくされた。 XのYに対する入通院に要した費用等の 損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。 35