論文式試験問題集[公法系科目] - 1 - [公法系科目] 〔第1問〕(配点:100) 200*年度インターネット白書によると,インターネット利用者数は推計で約8900万人と され,国民のおよそ4分の3がインターネットを利用していることになる。とりわけ,携帯電話所 有者のほぼ100%がインターネットにアクセスしている。インターネットは,既に個人レベルに まで普及しており,インターネットなしの生活は考えられなくなっている反面,様々な弊害も問題 視されている。それは,過度の性的表現,過度の暴力や残虐な表現,犯罪や違法薬物への興味を引 き起こすような情報等が子どもに及ぼす有害な影響である。また,過度の性的表現等を見たくない 大人もおり,そのような大人に配慮することも必要であるという意見も主張されてきていた。 有害な影響を及ぼすインターネット上の情報を子どもが閲覧できないようにする技術的対策とし て,フィルタリング・ソフトウェア(以下「フィルタリング・ソフト」ともいう。)がある。国は, 子どもが使用する携帯電話等へのフィルタリング・ソフトの搭載を促進することが効果的と考え, 学校や携帯電話等の販売業者等を通じるなどしてその普及を図ってきていた。しかし,前記白書に よれば,インターネットを利用する際にフィルタリング・ソフトを使用している利用者は10%に とどまり,フィルタリング・ソフトについて知らないという利用者が70%に上っていた。政府は, 過度の性的表現等から子どもを保護することを更に徹底するための対策等の強化について検討し, 201×年, 「インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィ ルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律」 (フィルタリング・ソフト法)案を策定して 国会に提出し,同法案は衆参両院で可決・成立した。 フィルタリング・ソフト法は,有害情報を定義するとともに,その基準の定めなど細目的事項に ついて内閣府令に委任している。同法によれば,パソコン,携帯電話等のインターネットへの接続 機能を有する電子機器(以下「インターネット接続電子機器」という。)を製造する業者は,これを 製造する場合には,内閣総理大臣が指定した適合フィルタリング・ソフトウェア(以下「適合ソフ ト」という。)の一つをあらかじめ搭載しなければならず,インターネット接続電子機器を販売する 業者は,法施行前に製造された製品等,適合ソフトが搭載されていないインターネット接続電子機 器を販売する場合には,適合ソフトの一つをあらかじめ搭載して販売しなければならない(違反し た場合は,罰則が適用される。)。ただし,販売業者はインターネット接続電子機器の購入者から, 専ら使用することとなる者が18歳未満の者ではないことを理由として適合ソフトの削除を求める 旨の申出を受けたときは,使用者が18歳未満の者ではないことを所定の方法で確認した上で,適 合ソフトを削除することができる(当該確認を怠って削除して販売した場合は,罰則が適用され る。)。他方で,フィルタリング・ソフト法は,適合ソフトの効果を損なうソフトウェアが蔓延し, 18歳未満の者の保護が図れなくなることを防止するため,適合ソフトを削除し又は使用目的に沿 うべき動作をさせないプログラムを他人に提供してはならないし,また,適合ソフトが搭載された インターネット接続電子機器を使用する者は,正当な理由なく,同法に定める手続以外の手続で適 合ソフトを削除してはならない旨を規定している(提供又は無断削除した場合は,罰則が適用され る。)。なお,同法は,適合ソフト搭載の促進のために国が助成措置を講じることとしており,使用 者は,適合ソフト搭載のために上乗せされた価格部分を追加的に自己負担することなく,適合ソフ トを搭載したインターネット接続電子機器を購入することができる。また,適合ソフトが搭載され ていないインターネット接続電子機器を所有している者も,追加的な自己負担なしに適合ソフトを 搭載してもらうことができる(資料1,資料2,資料3参照)。 Aは,平和問題と死刑存廃問題に関係する情報を無料で配信するサイト(以下「本件サイト」と いう。)を運営していた。本件サイトには,戦場における死傷者の無残な画像,拷問を受ける人々の 画像,公開処刑の画像等,見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載されていた。フィルタ リング・ソフト法施行後,本件サイトに含まれるウェブページの大半が有害情報を含む有害ウェブ - 2 - ページとして,かつ本件サイト全体が有害ウェブサイトとして指定された。このため,適合ソフト を搭載したインターネット接続電子機器では,本件サイト内のすべてのウェブページが閲覧できな くなった。 Aは,大人ばかりでなく子どもも真実を知った上で問題を考える必要があるという信念のもとで 本件サイトを運営していた。しかも,Aは,見る人に不快感を与える可能性のある画像が表示され る前に,「次のウェブページには,不快感を与えるかもしれない画像が掲載されています。」という 注意を促す文章を掲げていた。遮断される以前に本件サイトに寄せられていた意見のほとんどは, 画像を見てショックを受けたが,平和や死刑の問題を真剣に考えるようになったというものであっ た。Aは,子どもが全く見ることができず,18歳以上の者も所定の手続を踏まなければ見ること ができないことへの対抗策として,適合ソフトが搭載されていても本件サイトを閲覧できるように するプログラムを開発した上,本件サイトとは別の自分のサイトに同プログラムをアップロードし, 無償でダウンロードできるようにした。 このため,Aは,フィルタリング・ソフト法第17条及び第16条第1項第2号が定める,適合 ソフトの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムを提供する罪に当たるものとして起訴され た。 〔設 問〕 1. あなたがAの弁護人であったとして,裁判においてどのような憲法上の主張を行うか,具体的 に論じなさい。 2. Aの主張に対する検察官の主張を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を 述べなさい。 <用語説明> ウェブページ:インターネット上に公開されている情報を閲覧ソフトで閲覧した場合に,一度に表 示されるデータのまとまりをいう。 サ イ ト:ウェブサイトともいう。複数のウェブページで構成された全体のウェブページ群を 指す。また,そのウェブページ群が置いてあるインターネット上での場所を指す。 ソフトウェア:コンピュータの処理の手順を示すプログラムの総称。 アップロード:ネットワークを通じて,利用者のコンピュータに保存されているデータをサーバ・ コンピュータ(*)に転送すること。 ダウンロード:ネットワークを通じて,サーバ・コンピュータ(*)に保存されているデータを利 用者のコンピュータに転送すること。 *サーバ・コンピュータ:ネットワークにおいて,自身の持っている機能やデータを提供するコン ピュータのこと。 - 3 - 資料1: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図る ためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律 目次 第1章 総則(第1条−第4条) 第2章 適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等(第5条−第12条) 第3章 フィルタリング審議会(第13条−第15条) 第4章 適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止(第16条) 第5章 罰則(第17条−第19条) 附則 第1章 総則 (目的) 第1条 この法律は,インターネットを利用する子どもを有害情報から保護するとともに,インタ ーネットを利用するその他の国民についても,有害情報にさらされることを希望しない者が有害 情報にさらされることを防止するため,フィルタリング・ソフトウェアの普及の促進を図ることを 目的とする。 (定義) 第2条 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところに よる。 一 子ども 18歳に満たない者をいう。 二 有害情報 インターネット上で流通している情報で,子どもに対し,著しく性的感情を刺激 し,著しく残虐性を助長し,又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして,内閣府令で 定める基準に該当し,子どもの健全な成長を阻害するおそれがあると認められるものをいう。 三 有害ウェブページ 有害情報が掲載されているウェブページとして内閣総理大臣が指定する ものをいう。 四 有害ウェブサイト 有害ウェブページを含み内容的に一つのまとまりをなすウェブページ群 として内閣総理大臣が指定するものをいう。 五 フィルタリング・ソフトウェア 有害ウェブサイトを閲覧できないようにする機能を有する プログラムをいう。 六 インターネット接続電子機器 電子計算機,携帯電話その他の電子機器であって,インター ネットへの接続機能を有するものをいう。 七 プログラム インターネット接続電子機器に対する指令であって,一の結果を得ることがで きるように組み合わせたものをいう。 (国及び地方公共団体の責務) 第3条 (略) (保護者の責務) 第4条 (略) 第2章 適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等 (有害ウェブページ等の指定) 第5条 内閣総理大臣は,有害ウェブページ及び有害ウェブサイトを指定するものとする。 - 4 - (適合ソフトウェアの指定) 第6条 内閣総理大臣は,フィルタリング・ソフトウェアを開発した者からの申出を受けて,当該 フィルタリング・ソフトウェアが有害ウェブサイトを閲覧できないようにするために必要な性能 を有するかどうかを検査し,これを有すると認めるものを適合フィルタリング・ソフトウェア(以 下「適合ソフトウェア」という。)として指定するものとする。 2 適合ソフトウェアの検査の方法は,内閣府令で定める。 (告示) 第7条 内閣総理大臣は,第5条又は前条第1項の規定による指定をした場合には,その旨その他 内閣府令で定める事項を告示するものとする。これを取り消したときも,同様とする。 (適合ソフトウェアの搭載義務) 第8条 インターネット接続電子機器の製造を業として行う者(以下「製造業者」という。)は,こ れを製造する場合には,適合ソフトウェアの一をこれに搭載しなければならない。 2 インターネット接続電子機器の販売を業として行う者(以下「販売業者」という。)は,適合ソ フトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を販売する場合には,適合ソフトウ ェアの一をあらかじめこれに搭載して販売しなければならない。 (購入者による適合ソフトウェアの削除の求め) 第9条 前条の規定にかかわらず,当該インターネット接続電子機器を専ら使用することとなる者 が子どもでない場合には,これを購入しようとする者は,当該インターネット接続電子機器を製 造した製造業者又はこれを販売する販売業者に対し,搭載されている適合ソフトウェアを削除す るよう求めることができる。 2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をす る場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を 専ら使用することとなる者が子どもでないことを確認しなければならない。 (使用者による適合ソフトウェアの搭載の求め) 第10条 適合ソフトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を使用する者は,当 該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又はこれを販売した販売業者に対し,適合ソ フトウェアを搭載するよう求めることができる。 (搭載費用の助成) 第11条 国は,第8条及び前条に規定する適合ソフトウェアの搭載のための費用について,製造 業者及び販売業者に対する助成措置を講ずるものとする。 (使用者による適合ソフトウェアの削除の求め) 第12条 適合ソフトウェアが搭載されているインターネット接続電子機器を専ら使用する者が子 どもでない場合には,その使用者は,当該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又は これを販売した販売業者に対し,当該適合ソフトウェアを削除するよう求めることができる。 2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をす る場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を 専ら使用する者が子どもでないことを確認しなければならない。 第3章 フィルタリング審議会 (設置) 第13条 内閣総理大臣の諮問に応じて,次項に掲げる事項について調査審議させるため,内閣府 に,フィルタリング審議会(以下「審議会」という。)を置く。 2 内閣総理大臣は,次に掲げる場合には,審議会の意見を聴かなければならない。 一 第2条第2号に規定する内閣府令の基準を定めようとするとき。 - 5 - 二 第5条の規定による有害ウェブページ又は有害ウェブサイトの指定をしようとするとき。 三 第6条の規定による適合ソフトウェアの指定をしようとするとき。 (組織等) 第14条 審議会は,前条第2項に掲げる事項に関して学識経験のある者のうちから,内閣総理大 臣が任命する委員10人以内で組織する。 2 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。 (内閣府令への委任) 第15条 前二条に規定するもののほか,審議会の組織及び運営に関し必要な事項は,内閣府令で 定める。 第4章 第16条 2 適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止 何人も,次に掲げるものを他人に提供してはならない。 一 適合ソフトウェアを削除するプログラム 二 適合ソフトウェアの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラム 適合ソフトウェアが搭載されたインターネット接続電子機器を使用する者は,正当な理由なく, 第9条又は第12条に定める手続以外の手続で,当該適合ソフトウェアを削除してはならない。 第5章 第17条 罰則 第8条又は前条第1項の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰 金に処する。 第18条 第9条第2項,第12条第2項又は第16条第2項の規定に違反した者は,30万円以 下の罰金に処する。 第19条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人 の業務に関して前二条の罪を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても各 本条の罰金刑を科する。 附 則(以下略) - 6 - 資料2: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図る ためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する内閣府令 (法第2条第2号の基準) 第1条 インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタ リング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律(以下「法」という。)第2条第2号に定める基 準は,次の各号に掲げる種別に応じ,当該各号に定めるものとする。 一 著しく性的感情を刺激するもの イ 次のいずれかに該当するものであること。 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより,卑わいな感じを与 え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。 ロ 性的行為を露骨に描写し,又は表現することにより,卑わいな感じを与え,又は性的行為 を容易に連想させるものであること。 ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人 に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。 ニ イからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同 程度に卑わいな感じを与え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。 二 著しく残虐性を助長するもの 次のいずれかに該当するものであること。 イ 暴力を不当に賛美するように表現しているものであること。 ロ 残虐な殺人,傷害,暴行,処刑等の場面又は殺傷による肉体的苦痛若しくは言語等による 精神的苦痛を刺激的に描写し,又は表現しているものであること。 ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人 に残虐な行為を擬似的に体験させるものであること。 ニ イからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同 程度に残虐性を助長するものであること。 三 著しく自殺又は犯罪を誘発するもの イ 次のいずれかに該当するものであること。 自殺又は刑罰法令に触れる行為を賛美し,又はこれらの行為の実行を勧め,若しくは唆す ような表現をしたものであること。 ロ 自殺又は刑罰法令に触れる行為の手段を,模倣できるように詳細に,又は具体的に描写し, 又は表現したものであること。 ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人 に刑罰法令に触れる行為を擬似的に体験させるものであること。 (以下略) - 7 - 資料3: フィルタリング・ソフト法Q&A(内閣府作成の広報資料から) ここでは,いわゆるフィルタリング・ソフト法に関してよくある御質問とそれに対する回答を一問一 答形式で掲載しています。 Q1 有害情報を規制する方法として,フィルタリング・ソフトの普及の促進を図ることにした のはなぜですか。 A 有害情報から子どもを保護することが強く求められています。また,有害情報にさらされずに インターネットを使用したいと考える大人の利益にも配慮する必要があります。しかし,インタ ーネット上の情報は,このような保護されるべき又は配慮が払われるべき受け手か,それ以外の 受け手かを区別することなく流通しています。このようなインターネットのシステムの中で,必 要以上に影響を及ぼすことなく,保護されるべき又は配慮が払われるべき受け手の保護等を実現 するには,受信する側において有害情報を遮断することが最も効果的な方法であると考えられま す。そこで,本法では,表現の自由にも十分に配慮しつつ有害情報を的確に規制する方法として, フィルタリング・ソフトの普及の促進を強力に図ることとしました。 フィルタリング・ソフトは,インターネット上の情報を受信する側において,どのような情報 を受信して表示するかをコントロールするプログラムで,これを使うと,情報を発信する側の機 能には何ら影響を与えることなく,情報を受信する側において,不適切な情報の表示を拒否する ことができます。 Q2 本法は,インターネット接続電子機器を購入して子どもが使用する場合に適合ソフトの搭 載を義務付けるだけでなく,インターネット接続電子機器の製造段階等で適合ソフトを搭載 させ,購入後に専ら大人が使用する場合で,購入しようとする者から適合ソフトを削除して ほしい旨の申出があった場合を除いて適合ソフトを削除しないこととしていますが,なぜこ のような制度にしたのですか。 A 200*年の世論調査では,インターネットを利用していると予想外の有害情報が表示される ことがあり,有害サイトに接続するとウイルスに感染したり法外な利用料を請求される心配があ るなどの理由で,インターネットの利用に不安を感じるとの回答が60%に達しました。このよ うな不安に煩わされることなくインターネットを利用したいとの国民の利益は十分考慮すべきで あると考えられます。このような不安を解消し,安心してインターネットを利用するためには, フィルタリング・ソフトの搭載が効果的ですが,同じ世論調査で,フィルタリング・ソフトにつ いても調査したところ,全く知らないが70%,名称だけしか知らないが15%で,使用してい る利用者は10%にとどまり,フィルタリング・ソフトについての認識が極めて低いことが確認 できました。このため,国民の利益を確実に実現するには,子どもが使用するかどうかにかかわ らず,製造段階等であらかじめフィルタリング・ソフトを搭載させておき,購入者から,専ら大人 が使用する予定であり,フィルタリング・ソフトを削除してほしい旨の積極的な申出がない限り, そのまま販売させることにより,フィルタリング・ソフトの普及を強力に進めることとしました。 - 8 - Q3 本法により,インターネット接続電子機器には,内閣総理大臣が指定した適合ソフトが原 則として搭載されることになりますが,この適合ソフトによりどのような情報が遮断される のですか。 A 本法は,一定の有害情報から子どもを保護するとともに,これらにさらされることを欲しない 大人の利益を実現することを目的としています。この目的を確実に実現するとともに,有害情報 ではない情報に影響を与えない制度とするため,本法は,内閣総理大臣が,有害情報(法2条2 号,府令1条)が掲載されているウェブページを,有害ウェブページとして指定・告示すること とし,さらに,有害ウェブページを含み,内容的に一つのまとまりをなすウェブページ群を,有 害ウェブサイトとして指定・告示することとしています(法5条,7条)。その上で,本法は,内 閣総理大臣が,有害ウェブサイトを遮断するのに必要な性能を有するフィルタリング・ソフトを適 合ソフトとして指定することとしています(法6条1項)。複数のウェブページで内容的に一つの まとまりをなすものを,一般にウェブサイトといいますが,その中に有害ウェブページがある場 合は,ウェブサイト全体が子どもの健全な成長を阻害する情報を含むおそれが高いので,適合ソ フトにより,そのウェブサイト全体を閲覧できないようにする必要があります。本法は,どの範 囲のウェブサイトが閲覧ができなくなるのかを明確にするため,有害ウェブサイトを具体的に指 定・告示することとしています。 Q4 適合ソフトを削除したり使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムの提供を禁止する ことにしたのはなぜですか。また,インターネット接続電子機器の使用者が,本法に定める 手続以外の手続で適合ソフトを削除した場合に処罰されるのはなぜですか。 A 本法では,インターネット上の有害情報から子どもを確実に保護するため,インターネット接 続電子機器の製造業者又は販売業者に,これを専ら使用する者が18歳以上であることを府令で 定める方法で確認することを求め,これが確認できた場合に限って適合ソフトを削除できること としています。適合ソフトを削除したり使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムが提供さ れると,このような手続を踏まずに無断で削除等されてしまうので,子どもが現に使用するイン ターネット接続電子機器から適合ソフトが削除等されたり,適合ソフトが削除等されたインター ネット接続電子機器が子どもの使用に供されるおそれが生じます。このような事態が生ずると, その保護が図られなくなりますから,このようなプログラムの提供は罰則で禁止する必要があり ます。 また,本法に定める手続以外の手続で適合ソフトを削除する行為は,このような削除プログラ ムの提供行為が蔓延する温床になります。一般の人々が自分で適合ソフトを削除するためには, 削除ソフトを入手する必要があるので,無断で適合ソフトを削除する行為を許しておくと,削除 ソフトの作成・販売が促されます。反対に,削除ソフトの提供を抑止するには,無断削除を禁止し て需要を断つことが不可欠です。 - 9 - 〔第2問〕(配点:100) 医療法人社団であるAは,平成13年1月24日,B県の知事から,介護保険法(以下「法」と いう。)第94条第1項に基づく開設許可を得て,介護老人保健施設(以下「本件施設」という。) を運営してきた。本件施設は,要介護者を対象に,施設サービス計画に基づき,看護,医学的管理 の下における介護及び機能訓練,その他必要な医療や日常生活上の世話を行うことを目的としてい る。現在,本件施設には60名が入所して利用しており,大半が70歳を超えた高齢者で,長期間 の入所者である。 平成19年10月1日,本件施設を退職して間もない元職員から,B県高齢福祉課に対し,本件 施設では法令上必要とされている医師が存在せず,看護師,介護職員の人数が足りていない,との 通報が入った。本件施設は,法第97条第2項,第3項により,厚生労働省令(介護老人保健施設 の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準。以下「省令」という。)の定める基準を満たさなけ ればならないとされている。上記通報を契機に,同月15日,B県高齢福祉課職員(以下「B県職 員」という。)が,法第100条に基づき本件施設に立ち入り,質問,報告の聴取等の調査を実施し た。Aの理事長は, 「ほかの施設では行政指導として実地指導が行われているにもかかわらず,いき なり法律に基づく調査を実施するのは穏当ではない。」と抗議をしたが,B県職員は,これを聞き入 れることなく,調査に着手した。B県職員は,本件施設の職員から,身分や調査の趣旨を説明する よう要請されたにもかかわらず,身分証の提示を拒否し,公的な調査であり抵抗すれば罰則の対象 になることを繰り返し述べた上,事務机の上にあった帳簿等書類を段ボール箱に詰めて持ち帰った。 B県高齢福祉課としては,医師が存在しないという事実は確認できなかったものの,当日の調査に 基づき,本件施設では,看護師数,介護職員数が不足しており,さらには,一部入所者に対する身 体的拘束が常時行われているなど,法第97条第2項,第3項,省令第2条第1項,第13条第4 項違反の状況が継続していると判断するに至った。 そこで,B県知事は,Aに対し,平成20年1月15日,勧告書を交付し,法第103条第1項 に基づく勧告を行った。同勧告書には,同年3月24日を期限として,@省令の定める基準を遵守 できるよう常勤の看護師,介護職員の人員を確保すること,A入所者に対する常時の身体的拘束を やめ,定期的に研修等を行い,身体的拘束の廃止に関する普及啓発を図ること,B上記@及びAに 関する改善状況を文書で報告することの3点が記載されていた。さらに,勧告に従わない場合には, B県知事が,Aの勧告不服従を公表することがあること,措置命令や業務停止命令を発することが あることも明記されていたが(法第103条第2項,第3項),勧告の基礎となる事実は示されてい なかった。 Aの理事長は,前記調査以来,B県からは,何の連絡もなく,問い合わせに一切応じてこなかっ た状況の中で,いきなり勧告書が交付された上,内容的にも誤っているとして,激怒した。そこで, Aは,同年3月14日,勧告が違法であると考え,勧告に応ずる意思が無い旨を回答した。 しかし,Aの理事長は,このままでは,勧告書に書かれていたように公表がされ,市民からの信 頼が失われること,Aとしては多くの利用者が本件施設を離れてしまい,経営難に陥ること,仮に 施設経営が立ち行かなくなれば,施設変更に伴う環境の変化や別の施設への移動により,高齢の利 用者に身体面でも,精神面でも,大きな健康リスクが及ぶこと,入所者の移ることのできる施設が 近隣には無いため,自宅待機となれば,入所者家族が大きな負担を負わざるを得ないことなどを懸 念した。そこで,Aは,弁護士Cに訴訟提起を依頼することとした。 【資料1 法律事務所の会議録】を読んだ上で,弁護士Dの立場に立って,Cの指示に応じ,設 問に答えなさい。 なお,介護保険法,介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準,B県行政 手続条例の抜粋は,【資料2 介護保険法等】に掲げてあるので,適宜参照しなさい。 - 10 - 〔設 問〕 1. 勧告に従わなかった旨の公表がされることを阻止するために考えられる法的手段(訴訟とそ れに伴う仮の救済措置)を検討し,それを用いる場合の行政事件訴訟法上の問題点を中心に論 じなさい。解答に当たっては,複数の法的手段を比較検討した上で,最も適切と考える法的手 段について自己の見解を明らかにすること。 2. 前記1の最も適切と考える法的手段において勧告や調査の適法性を争おうとする場合に,A はいかなる主張をすべきかについて,考えられる実体上及び手続上の違法事由を挙げて詳細に 論じなさい。 【資料1 法律事務所の会議録】 弁護士C: 本日は,Aの案件の基本処理方針を議論したいと思います。本件では調査のやり方が目 を引きますね。 弁護士D: B県の説明では,通報の内容が重大なものであり,証拠隠滅も懸念された結果だという ことです。 弁護士C: 納得できる理屈ではありませんね。Aはいきなり調査が行われたと主張していますが, これはどういった趣旨なのですか。 弁護士D: B県の作成した調査の実施要綱によりますと,実務上は2種類の調査形態が存在するよ うです。一つは実地指導と呼ばれるもので,行政指導として行われる調査です。もう一つ が本件で問題となっている,法律に基づく調査でして,調査に基づき勧告がされると,公 表,措置命令,業務停止命令,開設許可取消しがされる可能性があります。 弁護士C: Aは調査について何を主張しているのですか。 弁護士D: 調査の手順がひどい上,その中身も誤りだというのです。具体的には,@調査が,一部 の出勤簿を対象としていない上,実施された特定曜日以外に週5日働いている看護師2名, 介護職員5名を計算に含めていないなど,人員の把握を誤ったものであり,本件施設は看 護師数及び介護職員数についての省令の基準を満たしていたこと,Aベッドからの転倒防 止を第一に考え,5時間に限って,入所者家族の同意の下に1名のベッドに柵を設置した だけであり,常時の身体的拘束には該当しないことが主張されています。 弁護士C: 調査が違法に行われたとして,そのことは勧告にどういった影響を及ぼすのか,両者の 関係を整理してください。 弁護士D: 分かりました。 弁護士C: それと,勧告についてですが,Aは唐突に出された点が不満のようですね。 弁護士D: そうです。これに対し,B県の側は,手順は行政の自由であるという理解のようです。 弁護士C: それは,勧告をソフトなものととらえているからでしょうか。本件の法的仕組みの中で 勧告が占める位置や,その性格からさかのぼって,どのような手続が要求されるのか,も う一度検討してください。Aの言い分からしますと,最も恐れているのは,勧告に続く公 表のようですね。 弁護士D: 勧告不服従事業者として市民に公表されるのだけは避けたいようです。 弁護士C: D君には,勧告と公表の法的性格を分析した上で,採るべき法的手段について,公表を 阻止する観点から検討をお願いします。 - 11 - 【資料2 ○ 介護保険法等】 介護保険法(平成9年12月17日法律第123号)(抜粋) (帳簿書類の提示等) 第24条 3 1,2 (略) 前2項の規定による質問を行う場合においては,当該職員は,その身分を示す証明書を携帯し, かつ,関係人の請求があるときは,これを提示しなければならない。 4 第1項及び第2項の規定による権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならな い。 (開設許可) 第94条 介護老人保健施設を開設しようとする者は,厚生労働省令で定めるところにより,都道 府県知事の許可を受けなければならない。 2〜6 (略) (介護老人保健施設の基準) 第97条 介護老人保健施設は,厚生労働省令で定めるところにより,療養室,診察室,機能訓練 室,談話室その他厚生労働省令で定める施設を有しなければならない。 2 介護老人保健施設は,厚生労働省令で定める員数の医師,看護師,介護支援専門員及び介護そ の他の業務に従事する従業者を有しなければならない。 3 前2項に規定するもののほか,介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準は,厚生労働大 臣が定める。 4 厚生労働大臣は,前項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準(介護保健施 設サービスの取扱いに関する部分に限る。)を定めようとするときは,あらかじめ社会保障審議会 の意見を聴かなければならない。 5 介護老人保健施設の開設者は,要介護者の人格を尊重するとともに,この法律又はこの法律に 基づく命令を遵守し,要介護者のため忠実にその職務を遂行しなければならない。 (報告等) 第100条 都道府県知事又は市町村長は,必要があると認めるときは,介護老人保健施設の開設 者,介護老人保健施設の管理者若しくは医師その他の従業者(以下「介護老人保健施設の開設者 等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ,介護老人 保健施設の開設者等に対し出頭を求め,又は当該職員に,介護老人保健施設の開設者等に対して 質問させ,若しくは介護老人保健施設に立ち入り,その設備若しくは診療録,帳簿書類その他の 物件を検査させることができる。 2 第24条第3項の規定は,前項の規定による質問又は立入検査について,同条第4項の規定は, 前項の規定による権限について準用する。 3 (略) (設備の使用制限等) 第101条 都道府県知事は,介護老人保健施設が,第97条第1項に規定する施設を有しなくな ったとき,又は同条第3項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準(設備に関 する部分に限る。)に適合しなくなったときは,当該介護老人保健施設の開設者に対し,期間を定 めて,その全部若しくは一部の使用を制限し,若しくは禁止し,又は期限を定めて,修繕若しく は改築を命ずることができる。 (業務運営の勧告,命令等) 第103条 都道府県知事は,介護老人保健施設が,その業務に従事する従業者の人員について第 97条第2項の厚生労働省令で定める員数を満たしておらず,又は同条第3項に規定する介護老 - 12 - 人保健施設の設備及び運営に関する基準(運営に関する部分に限る。以下この条において同じ。) に適合していないと認めるときは,当該介護老人保健施設の開設者に対し,期限を定めて,第9 7条第2項の厚生労働省令で定める員数の従業者を有し,又は同条第3項に規定する介護老人保 健施設の設備及び運営に関する基準を遵守すべきことを勧告することができる。 2 都道府県知事は,前項の規定による勧告をした場合において,その勧告を受けた介護老人保健 施設の開設者が,同項の期限内にこれに従わなかったときは,その旨を公表することができる。 3 都道府県知事は,第1項の規定による勧告を受けた介護老人保健施設の開設者が,正当な理由 がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは,当該介護老人保健施設の開設者に対し,期 限を定めて,その勧告に係る措置をとるべきことを命じ,又は期間を定めて,その業務の停止を 命ずることができる。 4 都道府県知事は,前項の規定による命令をした場合においては,その旨を公示しなければなら ない。 5 (略) (許可の取消し等) 第104条 都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当する場合においては,当該介護老人保健 施設に係る第94条第1項の許可を取り消し,又は期間を定めてその許可の全部若しくは一部の 効力を停止することができる。 一〜八 九 (略) 前各号に掲げる場合のほか,介護老人保健施設の開設者が,この法律その他国民の保健医療 若しくは福祉に関する法律で政令で定めるもの又はこれらの法律に基づく命令若しくは処分に 違反したとき。 十〜十二 2,3 (略) (略) 第14章 第209条 罰則 次の各号のいずれかに該当する場合には,その違反行為をした者は,30万円以下の 罰金に処する。 一 (略) 二 第42条第3項,第42条の3第3項,第45条第8項,第47条第3項,第49条第3項, 第54条第3項,第54条の3第3項,第57条第8項,第59条第3項,第76条第1項, 第78条の6第1項,第83条第1項,第90条第1項,第100条第1項,第112条第1 項,第115条の6第1項,第115条の15第1項又は第115条の24第1項の規定によ る報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示をせず,若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の帳簿 書類の提出若しくは提示をし,又はこれらの規定による質問に対して答弁をせず,若しくは虚 偽の答弁をし,若しくはこれらの規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避したとき。 三 ○ (略) 介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年3月31日厚生 省令第40号)(抜粋) 第2章 人員に関する基準 (従業者の員数) 第2条 介護保険法(略)第97条第2項の規定による介護老人保健施設に置くべき医師,看護師, 介護支援専門員及び介護その他の業務に従事する従業者の員数は,次のとおりとする。 一 医師 二 薬剤師 常勤換算方法で,入所者の数を100で除して得た数以上 介護老人保健施設の実情に応じた適当数 - 13 - 三 看護師若しくは准看護師(以下「看護職員」という。)又は介護職員(以下「看護・介護職員」 という。) 常勤換算方法で,入所者の数が3又はその端数を増すごとに1以上(看護職員の員 数は看護・介護職員の総数の7分の2程度を,介護職員の員数は看護・介護職員の総数の7分 の5程度をそれぞれ標準とする。) 四 支援相談員 五 理学療法士又は作業療法士 六 栄養士 七 介護支援専門員 八 調理員,事務員その他の従業者 2 入所者の数が100又はその端数を増すごとに1以上 常勤換算方法で,入所者の数を100で除して得た数以上 入所定員100以上の介護老人保健施設にあっては,1以上 1以上(入所者の数が100又はその端数を増すごとに1を標準とする。) 介護老人保健施設の実情に応じた適当数 前項の入所者の数は,前年度の平均値とする。ただし,新規に許可を受ける場合は,推定数に よる。 3 第1項の常勤換算方法は,当該従業者のそれぞれの勤務延時間数の総数を当該介護老人保健施 設において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより常勤の従業者の員数に換算する 方法をいう。 4 介護老人保健施設の従業者は,専ら当該介護老人保健施設の職務に従事する者でなければなら ない。ただし,入所者の処遇に支障がない場合には,この限りでない。 5〜7 (略) 第4章 運営に関する基準 (介護保健施設サービスの取扱方針) 第13条 4 1〜3 (略) 介護老人保健施設は,介護保健施設サービスの提供に当たっては,当該入所者又は他の入所者 等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き,身体的拘束その他入所者の行動 を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。 5,6 ○ (略) B県行政手続条例(抜粋) (定義) 第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 一〜六 七 (略) 行政指導 県の機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するた め特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導,勧告,助言その他の行為であって処分に該 当しないものをいう。 八 (略) 第4章 行政指導 (行政指導の一般原則) 第30条 行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,当該県の機関の任務又は所掌事務の範囲 を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容が相手方の任意の協力によって実現されるもので あることに留意しなければならない。 2 行政指導に携わる者は,その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取 扱いをしてはならない。 3 前項の規定は,公益の確保その他正当な理由がある場合において,県の機関が行政指導の事実 その他必要な事項を公表することを妨げない。 (申請に関連する行政指導) 第31条 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては,行政指導に携わる者は,申 - 14 - 請者が当該行政指導に従う意思がない旨を明確に表明したにもかかわらず当該行政指導を継続す ること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。 2 前項の規定は,申請者が行政指導に従わないことにより公益が著しく害されるおそれがある場 合に,当該行政指導を継続することを妨げない。 (許認可等の権限に関連する行政指導) 第32条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する県の機関が,当該権 限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあって は,行政指導に携わる者は,当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政 指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。 (行政指導の方式) 第33条 行政指導に携わる者は,その相手方に対して,当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任 者を明確に示さなければならない。 2 行政指導が口頭でされた場合において,その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の 交付を求められたときは,当該行政指導に携わる者は,行政上特別の支障がない限り,これを交 付しなければならない。 3 (略) (複数の者を対象とする行政指導) 第34条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしよう とするときは,県の機関は,あらかじめ,事案に応じ,これらの行政指導に共通してその内容と なるべき事項を定め,かつ,行政上特別の支障がない限り,これを公表しなければならない。 (この章の解釈) 第35条 この章の規定は,県の機関が公益上必要な行政指導を行うことを妨げるものと解釈して はならない。 - 15 -