平成20年新司法試験論文式試験問題出題趣旨 【公法系科目】 〔第1問〕 本問は,インターネットという「より新しいメディア」における積極的な表現行為に対す る表現内容規制をめぐる問題である。インターネット上の有害情報を18歳未満の者が閲覧 できないようにするなどのためにインターネット接続電子機器にフィルタリング・ソフトウ ェアを搭載することを義務付け,また,当該ソフトウェアを削除したり,その効果を損なう プログラムを他人に提供することを禁じる法律が制定されたという想定の下で,問いが設定 されている。インターネット上で自らの信念に基づいて表現行為を行なっているAは,18 歳未満の者ばかりだけでなく,18歳以上の者も見ることができなくなる可能性があること への対抗策として,フィルタリング・ソフトウェアによって自分のサイトの閲覧が妨げられ ないプログラムを作成し,提供したところ,当該行為が違法であるとして,起訴された。 本問で問われているのは,インターネット上の有害情報という問題設定の新しさはあるが, 青少年の保護を理由とした「有害」な表現の規制という点で,青少年保護育成条例における 有害図書規制の合憲性と同種の問題である。ただし,当該判決とは,重要な事案の違いもあ る。本問では,最広義説に立っても,18歳以上の者は「解除ソフト」によって規制される情 報を見ることができるので,検閲には該当しない(18歳以上の者が当該情報を見るために課 せられる「負担」は,検閲の問題ではない。)。また,問題となる法律は,「有害」とされたサ イトを削除するものではない。それは,18歳以上の者が当該サイトを読むためには一定の 手続を踏まなければならない,と定めるものである。「自己の権利が,直接,現在」侵害され ている場合に,それを理由として当該法律の違憲を主張することはできる。本問の場合,サ イトを見る人の「知る自由」の制約も(が)問題となる。したがって,他者の権利の制約が 違憲であることを理由に法律や処分の違憲性を主張できるか否かを,検討する必要がある。 その場合,まずは,第三者所有物没収事件判決を参照することになる。 新しい素材に関して,全く新たに考えることを求めているのではない。法科大学院の授業 で学んでいるはずである,表現の自由や憲法訴訟論に関する基礎知識を正確に理解した上で, 具体的問題に即して思考する力,応用する力を試す問題である。個別・具体の事案に応じて 存在する憲法上の問題を発見し,それについて深く広く検討し,そして説得力のある理由を 付して,自らの結論を導くことが求められている。問題文に書かれていることや資料に書か れていることをそのまま書き写すのではなく,与えられている資料等からそれぞれの設問が 求める立場での主張を考えることが必要である。 設問1では,Aの弁護人として,本問が仮想する法律の違憲性を主張することが求められ ている。弁護人としては,当該法律及びAに対する処罰を違憲とするために理論及び事実に 関する効果的な主張を行なうことになる。その際,裁判の場で行なう主張であるので,判例 と異なる主張を行なう場合には,判例の判断枠組みや事実認定・評価のどこに,どのような 問題があるかを明らかにする必要がある。 法令の違憲性に関しては,@「有害情報」と18歳未満の者の健全な育成及び見たくない 18歳以上の者の保護との関連性(立法事実),A表現内容を規制する法律の合憲性に関する 判断枠組み,B規制される「有害情報」の不明確性,C有害なウェブページだけでなく,そ れを含むウェブサイト全体を閲覧できなくする規制の広汎性,D仮にAの提供する情報は「有 害」であるとしても,第三者の,憲法が保障する表現も規制される可能性,E18歳未満の 者の「知る自由」への制約,F18歳未満の者を保護するための規制によって18歳以上の 者の「知る自由」が制約される可能性,G18歳以上の者が見ることができるようにするた -1- めには一定の手続が求められていることが, 「不当な負担」といえるか否か,等が問題となる。 Aに対する処罰の違憲性に関しては,@Aが提供する情報の「有害」性,AAが提供する 情報自体の社会的重要性,B一般的な解除ではなく,Aのウェブサイトを解除するだけなの に刑罰を科すという規制手段の過度性,C見る人に不快感を与える可能性のある画像が出て くる前に注意を促す文章を掲げていることに関する評価等が問題となる。 このように,本問では,多くの問題が存在する。求められていることは,上記の問題点を すべて挙げることではない。試験時間の制約の中で,重要度を自分で判断して重要であると 思う(その判断の妥当性は問われるが。)複数の問題について,説得力のある主張を展開する ことが求められている。 設問2では,まず,設問1での主張とは対立する,すなわち,本問の仮想する法律を合憲 とする理由付けを想定することが求められる(この部分の記述は,簡潔でよい)。次いで,こ のような憲法上の問題点に関する相対立する主張を踏まえて,「あなた自身の見解」を述べる ことになる。 「あなた自身の見解」は,必ずしも,被告人側と検察側の相対立する主張のいずれか,と いう二者択一であることが求められているわけではない。「あなた自身の見解」は,両者とは 異なる「第三の道」であることもあり得る。また,この種の問題に関する判例と同じである ことが求められているわけでもない。被告人側と,検察側と,あるいは判例と「同じである」 という理由では,全く不十分である。なぜその主張に賛成するのかについて,説得力のある 理由が述べられていなければならない。 〔第2問〕 本問は,県知事が介護老人保健施設に対して勧告をした事案について,勧告を違法と考え従 わなかった施設の代理人弁護士という立場から論じさせるものである。問題文と資料から基本 的な事実関係を把握した上で,介護保険法や関連法令の趣旨を読み解き,適切な救済手段を選 択し,それと結び付いた本案の主張を展開する力を試すものである。 設問1は,勧告不服従の公表を阻止するための法的手段(訴訟とそれに伴う仮の救済措置) に関して,基本的理解を問う問題である。勧告や公表が処分に当たるのかといった検討を,介 護保険法に即して行うことが前提となる。勧告に従わない場合には,公表や措置命令,業務停 止命令,開設許可取消などがなされ得る法的仕組みを正確に把握した上で,勧告や公表の法的 性格を分析することが求められている。 例えば,処分性の定義を前提として,勧告が処分に当たることを具体的に説明した上で,そ の執行停止を解答する場合には,勧告の取消訴訟を論じることに加えて,行政事件訴訟法第2 5条所定の要件について検討する必要があろう。勧告の処分性を否定する場合には,勧告に対 して公法上の当事者訴訟を提起するとともに,仮の権利救済手段として仮処分を検討すること が考えられる。確認訴訟を利用する場合には,確認の利益を中心に詳細な検討が期待される。 また,公表の処分性を肯定した上で,その差止め訴訟,仮の差止めを提案する解答もあり得る。 この場合には,差止め訴訟の要件(行政事件訴訟法第37条の4)や仮の差止めの要件(特に, 同法第37条の5第2項,第3項)について,法文の解釈や当てはめが的確になされているこ とが必要となる。さらに,公表の処分性を否定し,公表に対する民事の差止め訴訟ないし公法 上の当事者訴訟を提案し,仮処分の可能性を検討することも考えられる。民事の差止め訴訟を 選択する場合には,差止めを根拠付ける権利について詳細な言及が望まれよう。このように, 様々な法的手段が考えられる中で,複数の法的手段を提案し,それらの比較を通じて最も適切 と考える法的手段を提示しなければならない。 設問2は,調査,勧告の適法性を論ずる問題である。調査については,帳簿書類等を段ボー ル箱に詰めて持ち帰った行為が強制力の行使に当たるとすれば,介護保険法第100条の解釈 -2- として許容されるのかを検討する必要がある。また,調査に当たりB県職員が身分証を提示し なかった点について,同法第100条第2項,第24条第3項に違反するのかが論じられなけ ればならない。このほか,行政指導として行われる調査を同法第100条の調査に先行させる 義務を知事は負っているのかという問題も,検討すべき対象である。 上記の検討を通じて,調査の違法が認められる場合に,それが勧告にどのような影響を及ぼ すのかを検討することも,本問では要求されている。 勧告の違法性に関しては,基準違反を内容とする県の指摘について,事実誤認を主張するこ とが考えられる。このほか,勧告に関しては,勧告の手続法的違法が問題となろう。その前提 として,勧告にはどのような行政手続が要請されるのかが論じられなければならない。例えば, 勧告を不利益処分ととらえる場合には,行政手続法の不利益処分手続が適用される。この場合 には具体的にどのような手続規制が要求されるのかを明らかにした上で,本件事案でそうした 手続が踏まれていたのかを検討することとなろう。これに対し,勧告を行政指導と解する場合 には,知事の行う行政指導については,行政手続法は適用除外となり,B 県行政手続条例の定 める行政指導手続が要求される。この点を指摘した上で,本件で手続に関する違法が認められ るのかを同条例に即して検討することが求められる。 【民事系科目】 〔第1問〕 本問は,不動産の売買・賃貸借・相続等に関し,財産法と家族法にわたる民法上の様々な問 題について,基本的な理解の有無を確認するものである。単に知識の確認をするだけでなく, 掘り下げた考察をしそれを明確に表現する能力,論理的に一貫した論述をする能力,具体的事 実について法的観点から評価し構成する能力なども評価の対象となる。 設問1は,マンションの1戸の売買をしたが,買主の代金不払により売主が契約を解除した ところ,解除前に,買主が目的物を賃貸し,更に賃借人が無断転貸をしていたという事案で, 売主が賃借人及び転借人に明渡しを求める場面の問題である。 小問(1)は,賃借人に対する所有権に基づく返還請求に対し,賃借人の反論(賃借人は 売買契約解除前の第三者である。)の当否を問う。民法第545条ただし書の趣旨及び「第三 者」の意義,第三者の対抗要件の要否とその意味,賃借人の対抗要件(借地借家法第31条 第1項),第三者の善意・悪意など,基本的理解を確認する。「解除と第三者」に関しては, 第三者は目的物の譲受人として論じられることが多いが,ここでは目的物の賃借人であると いう特色がある。 小問(2)では,賃借人に対する賃貸借契約終了に基づく返還請求について,賃借人の2 つの反論の成否を問う。第1の反論(賃借人は買主から賃借したのだから,売主が賃貸借契 約を解除することはできない。)に関しては,売買契約の解除に伴う賃貸人の地位の買主から 売主への移転,それにより売主が賃貸人として賃貸借契約を解除できるに至ったこと,その 前提として売主に目的物の所有権の登記が求められることなど,基本的な理解を確認する。 契約解除の場面における「賃貸人たる地位の移転」についての考察や賃貸借契約解除原因の 発生時期と賃貸人(売主)による解除権の行使時期との関係についての考察があれば,それ も評価する。第2の反論(目的物は現在,転借人が使用しており,賃借人は占有していない ので,売主の請求には理由がない。)に関しては,所有権に基づく返還請求ではなく,賃貸借 契約終了に基づく返還請求では,相手方の占有の有無は問題とならないという基本的理解を 確認する。なお,これは「不動産の間接占有者に対する引渡しないし明渡しの請求」という より高度な問題にもかかわるが,そこまでの叙述を不可欠とするものではない。 小問(3)は,無断転貸を理由とする解除における「背信行為と認めるに足りない特段の 事情」となるべき具体的事実の指摘とその理由の説明を求める。賃貸借と転貸借との利用形 -3- 態がほぼ同様で賃貸人の許諾した範囲内にあるといえること,両者の契約内容が同じである こと(特に転貸人に差額による利益を取得する意図がないこと),転貸人の主観的悪性が低い ことなどを示す事実を挙げ,整理して理由付けることが求められる。背信行為論の抽象的説 明のみをするのではなく,具体的事実との関係で説得的な論述ができるかを問うている。 設問2は,マンションの1戸の賃貸人が死亡し,その9か月後に遺産分割がされた場合につ いて,相続開始時から遺産分割時までの間に支払われた賃料の帰属を問うものである。関連す る近時の最高裁判決の判旨を問題中で示した上,その評価も求めている。賃料債権が相続財産 (遺産)の範囲に含まれるかどうか(民法第896条),及び,遺産分割の遡及効との関係(同 第909条)を明確にした上,判例の見解に対する評価を述べ,自らの見解に基づく具体的結 論とその法的構成を示すことが求められる。本問の賃料の性質(法定果実であること,相続開 始後に発生した分であること,金銭債権であることなど)のどこを重視するかなどにより,複 数の考え方があり得るが,それぞれの問題点についての基本的な説明と説得的な理由付けのほ か,論述全体としての論理的整合性が求められる。 〔第2問〕 本問は,会社財産の不適切な運用・管理により財産の流出を来した株式会社をめぐる事例に 関し,様々な角度から,会社法上及び民事訴訟法上の問題点等についての基礎的な理解の有無 を問う総合問題である。本問においては,比較的詳細に示された事実関係を分析して法的な論 点を的確に抽出し,事案に即した有効な解決手段を選択するなど,これまでの学習を通じて培 った法制度や法原則に関する理解を多角的に応用し,その結果を論理的に総合して分かりやす く表現する作業を行わせることにより,その理解の正確さを試すこととしている。 設問1は,取締役会の承認を受けずに締結された保証契約の効力と, 甲社及び乙社の間で 行われた株式交換の問題点を指摘させるものである。まず,保証契約の効力については,甲社 が丙銀行との間で締結した金銭消費貸借契約と, これを主たる債務として乙社が丙銀行との 間で締結した保証契約は,いずれも, 「多額の借財」(会社法第362条第4項第2号)に当 たるものとして,それぞれの会社の取締役会の承認を受けなければならないものと考えられ るが,本件では,いずれについても,取締役会の承認を受けていないため,その効力が問題 となる。この問題点の解決に当たっては,様々な理論構成を用いることが考えられるが,例 えば,民法第93条ただし書を類推適用する判例の立場を採った場合には,取締役会の承認 を受けていないことを知らなかったことについて丙銀行の側に過失がなかったかどうかとい う点につき,事例に即して丁寧に吟味することが求められる。また,上記保証契約は,Bが 乙社を代表して締結したものであるとはいえ,Aが甲社を代表して丙銀行と締結した金銭消 費貸借契約に基づく借入金債務を主たる債務としながら,Aが代表取締役を務める乙社に保 証をさせるという内容のものであることから,その締結が利益相反取引の一つである間接取 引(会社法第356条第1項第3号,第365条)に当たるのではないかという点も問題と なる。本件では,この点についても取締役会の承認を受けていなかったことから,いわゆる 相対的無効説によれば,丙銀行の側がその点について善意かつ無重過失であったかどうかを 検討することが必要となる。ただし,本件においては,乙社の株主が上記取引にかかわって いるA及びBの2人だけであることから,そもそも取締役会の承認を受ける必要はなかった のではないかという点も問題となる。次に,株式交換の問題点については,@知れている債 権者に対する各別の催告(同法第799条第1項第3号及び第2項)が行われていない点, A債権者(丙銀行)の異議を受けた弁済等(同条第5項)が行われていない点,B株主に対 して交付する株式交換の対価が不当である点,C株式交換を承認した株主総会の決議に特別 の利害関係を有する者が参加していた点(同法第831条第1項第3号参照)などに問題が 認められる。果たして,これらが株式交換無効の訴え(同法第828条第1項第11号)の -4- 無効原因となるかどうか,また,丙銀行に当該訴訟に関する原告適格(同条第2項第11号) があるかどうかといった点を検討する必要がある。仮に,株式交換を無効とすることができ れば,株式交換の対価として不当に流出した会社財産を取り戻すことが可能となるという実 益にも言及することが期待される。 設問2では,第1に,甲社と乙社との間で行われた不自然な取引が利益相反取引の一つで ある直接取引(会社法第356条第1項第2号,第365条)に当たるにもかかわらず,取 締役会の承認を受けていないことから,それらの一連の取引を無効とすることによって,甲 社の責任財産を回復できないかが問題となる。ただし,この点については,一人会社(甲社) の株主自身(乙社)が直接取引の相手方になっている場合には,実質的な利益相反関係が認 められないことから,取締役会の承認は要しないとするのが判例の立場である。この考え方 で債権者(丁社)の保護を図ることができるのかという点について,悩みを見いだすことが できるかどうかが肝要である。第2に,乙社に対する責任追及の可能性が問題となる。この 点については,@法人格否認の法理によりその責任を追及する見解,A事実上の取締役とし て対第三者責任(同法第429条第1項)を追及する見解,B株主の権利の行使に関する利 益供与(同法第120条)としてその責任を追及する見解,C隠れた剰余金の配当として分 配可能額を超える部分についての返還(同法第462条)を求める見解など,様々な法的構 成を用いることが考えられる。第3に,甲社の取締役について,対第三者責任(同法第42 9条第1項)を追及することが考えられる。その際には,各取締役が本件にどのようにかか わったのかを具体的に吟味しながら,その責任の有無を丁寧に分析することが必要である。 設問3は,取締役解任の訴えが,被告側の固有必要的共同訴訟であることを理解した上で, 原告の立場から,主観的追加的併合(原告による被告の追加)が許容されるべきことの主張 を具体的な事案に即して行わせるものである。周知のとおり,主観的追加的併合が理論的に 許容されるか否かは,民事訴訟法の著名な論点の一つであるが,そこで論じられていること を踏まえつつも,より実務的な観点から,少なくとも本件の具体的な事例の下においては主 観的追加的併合が許容されるべきことを示すことが必要になる。具体的には,取締役解任の 訴えが被告側の固有必要的共同訴訟であって,訴訟共同と合一確定が要請される場面である ことを考慮すべきであることはもとより,取締役解任の訴えにおいては,出訴期間が法定さ れており,本件においては,改めて再訴を提起する方法によっては期間徒過により対応でき ないということ,そして被告追加の申立てがされたのが,訴訟の極めて初期段階にあること, といった本件固有の事情を的確に抽出し,それを最高裁判決摘示の理由に対する反論の形で 展開していくことが求められる。 設問4は,文書提出命令に違反した場合の効果について,一般的な考え方を整理した上で, その具体的適用を考えさせる問題である。一般に,民事訴訟法第224条については,概説書 においても取り上げられており,条文自体の存在についてはその重要性も含めて理解されてい るが,その具体的な適用(特に効果)については,さほど言及されていない。受験生が,これ までの学習を通じて培ってきた基本的理解(例えば,当事者主義の下での立証の困難の克服手 段,真実に合致した裁判の要請,訴訟上の協力義務,当事者の手続保障等)を活用して,その 場で考え,解決に導く応用能力を試すべく出題したものである(出題に当たって,詳細な誘導 を施したのはそのためである。)。小問(1)では,裁判所が,必要性及び要件充足を認めて発 出した文書提出命令に当事者が従わない場合に,民事訴訟においてどのような「不都合」が生 じるのかを考えながら,その解決手段としての民事訴訟法第224条第3項の効果を論じるも のであるが,その際には,問題文で指摘した各説の長所短所を,同項が定める要件(特に,同 条第1項の要件との違い)や同条第3項の効果に関する「真実と認めることができる。」とい う規定の文言に留意しながら,多角的に検討することが求められる。小問(2)では,小問(1) での自説を前提に,文書提出命令の申立てに「証明すべき事実」を記載すべきものとされてい -5- ることの意義や,本件において申立書に証明すべき事実として実際に記載されている各事項が, 本件訴訟における立証命題との関係でどのように位置付けられるか(主要事実又は間接事実の いずれであるのか,法的評価であるのか等)を考えながら,検討することが求められる。また, 小問(3)は,固有必要的共同訴訟という合一確定が要請される場面における民事訴訟法第2 24条第3項の効果を考えさせるものである。心証説以外の立場からは特に共同被告のうちの 一人による文書の不提出という態度の訴訟法上の位置付け(民事訴訟法第40条第1項との関 係)を,心証説の立場からは特に証拠共通の原則との関係を,両被告の実質的関係を考慮し, また,他方被告への手続保障にも配慮しながら,論じることが求められよう。 【刑事系科目】 〔第1問〕 本問は,具体的事例に基づいて甲乙の罪責を問うことによって,刑事実体法の理解,具体的 事実に法規範を適用する能力,論理的思考力を試すものである。 まず,甲乙の共犯関係については,甲が乙に一緒にA方に盗みに入ろうと誘ったのに対し, 乙が「俺はそんな危ないことはしたくない。」と言った上,実際に乙は自らはA方に盗みに入 らなかったことに着目し,共謀共同正犯の成立要件ないし共同正犯と幇助犯の区別の判断基準 等を念頭に置いて,本問の具体的事実関係の中から評価に値する事実を抽出し,要件に当ては めることが求められる。その際,事実を事例中からただ書き写して羅列するのではなく,犯行 に至る経緯,乙が甲に提供した情報の具体的内容,犯行当日の甲乙の行動及び甲乙間の金銭の 分配状況等について,これらの事実が持つ意味を的確に評価し,上記要件ないし判断基準に当 てはめて結論に至る思考過程を論述する必要がある。また,その際には,(共謀)共同正犯の 成否のみの論述にとどまらず,甲乙間の共謀ないし共同実行の意思の内容にも留意し,甲乙が 想定していた金品奪取の態様や奪取対象となる金品の範囲を明確に意識しておく必要がある。 甲の罪責については,甲乙の共犯関係を前提として,まずはA方に入った行為及び書斎の机 の引き出しから300万円を取り出してジャンパーのポケットに入れた行為について構成要件 への当てはめを行うことが求められる。そして,甲が,Bにカッターナイフを示すなどした上, 現金2万円を奪った行為については,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫の有無等を中 心に,必要かつ十分な具体的事実を抽出して法的評価を示す必要がある。また,Bが居間から 逃げ出し,玄関を出た直後に転倒して怪我をしたことについては,強盗の機会性の有無や因果 関係の有無等に留意しつつ,具体的事実を示しながら強盗致傷罪の成否を検討する必要がある。 さらに,その後,A方前路上でBが乙から殴る・蹴るなどされて死亡したことに関し,甲が罪 責を負うか否かについては,乙との共犯関係に基づく帰責の可否及び甲に成立する強盗罪固有 の枠組み(強盗の機会性ないし因果関係等)による帰責の可否を本問の事実関係に即して論ず ることが必要である。 乙の罪責については,甲乙間の共犯関係を前提として,甲によるA方への侵入と300万円 の窃取に関する罪責を示すほか,甲がBにカッターナイフを示すなどして2万円を奪った行為 等については,甲乙間の共犯関係の内容を踏まえ,乙が予見していた事情と実際に甲が行った ことの間のずれの有無とその内容を的確に示した上,予見と異なる事態が生じた場合における 乙の罪責を本件に即して具体的に論ずることが必要である。また,乙がA方前路上でBを殴る ・蹴るなどして死亡させたことについても,その段階において乙に成立する犯罪を念頭に置き ながら,適切な犯罪を選択した上,その犯罪の構成要件要素を示しつつ,設問から抽出した具 体的事実をこれに当てはめることが必要である。 なお,甲乙に成立する個々の犯罪を前提に,これらに関する罪数評価及び共犯の成立範囲を 的確に示すことが必要であることは言うまでもない。 いずれの問題点についても,論点に関する法解釈論を抽象的に論ずるにとどまることなく, -6- 事例に示された具体的な事実関係を分析し,論点の解決にとって必要な事実を抽出し,的確に 法的評価をすることが求められている。 〔第2問〕 本問は,捜査・公判に関する具体的事例を示して,そこに生起する刑事手続上の問題点の解 決に必要な法解釈,法適用にとって重要な具体的事実の分析・評価及び具体的帰結に至る過程 を論述させることにより,刑事訴訟法等の解釈に関する学識と適用能力及び論理的思考力を試 すものである。 設問1は,覚せい剤の営利目的所持事件を素材として,被告人甲との会話内容等が記載され たW作成のノートにつき,要証事実との関係での証拠能力を問うことにより,刑事訴訟法にお いて最も基本的な法準則の一つである「伝聞法則」の正確な理解と具体的事実への適用能力を 試すものである。 法解釈の部分では,検察官の立証趣旨を踏まえた要証事実の分析を前提にして(立証趣旨か ら想定される要証事実は,いずれもWが知覚・記憶してノートに記載した事実の真実性を前提 とするものであるから,これが「伝聞証拠」,すなわち刑事訴訟法第320条第1項の定める 「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であることは明瞭である。),伝聞法 則の例外となる規定を的確に選択した上,その規定に係る各要件を検討することが必要である。 各要件を指摘,記述するだけでは,本事例への法適用を前提とした法解釈として不十分である ことは言うまでもない。とりわけ,本事例で問題になる「特に信用すべき情況」の意義・解釈 等については的確に論じなければならない。例えば,本件ノートを刑事訴訟法第321条第1 項第3号に該当する書面であると考えた場合には,証拠能力の要件要素である「特に信用すべ き情況」の理論的意味に留意しつつ,その存否につき,供述の内容そのものを直接に判断する のではなく,供述に付随する外部的な情況を主たる考慮事情として判断しなければならず,ま た,他の供述と比較するのではなく,その供述自体にかかわる絶対的な判断が要求されている ことなどを論述することが必要である。また,本件ノートに記載された被告人甲の発言内容の 真実性を要証事実とする場合には,「再伝聞」が問題になるので,その構造を正確に分析して その旨を指摘しなければならないことはもとより,それを許容するか否かの結論だけでなく, その文理上の根拠や実質的な考慮等をも的確に論じることが求められている(本事例は,公判 期日における供述に代えて用いられる,被告人以外の者Wが作成した「供述書」に,被告人甲 の供述を内容とする記述がある場合である。)。 事例への法適用の部分では,自らが論じた伝聞法則の例外となる規定や再伝聞の解釈等に従 って,事例中に現れた具体的事実を的確に抽出,分析し,個々の事実が持つ法的な意味を的確 に示して論じることが求められている。例えば,供述に付随する外部的な情況にかかわる具体 的事実を抽出,分析する際には,個人の日記と解されるノートに,1週間に3日ないし5日程 度の割合で,出来事やその感想等がその経過順に記載されていることや,空白の行やページが 無かったことなどという具体的事実を指摘した上で,Wがその日にあった出来事をその都度記 載している事情等が認められることを論じたり,また,鍵が掛けられていた机の引き出しの中 から本件ノートが発見されたことなどという具体的事実を指摘した上で,ノートを他人に見せ ることを予定しておらず,うそを記載する理由がないことなどを論じたりすることが必要であ る。つまり,具体的事実を事例中からただ書き写して羅列すれば足りるものではなく,個々の 事実が持つ意味を的確に分析して論じなければならない。 設問2は,捜索差押許可状の呈示に先立って捜索場所であるマンションの甲方の窓ガラスを 割って入室した措置について,刑事訴訟法第111条第1項(同法第222条第1項により捜 査段階に準用)の「必要な処分」といえるのか否かにつき,この規定の趣旨・目的を踏まえて, 事例中に現れた具体的事実を前提に,被疑事実の内容,差押物件の重要性,差押え対象物件に -7- 係る破棄隠匿のおそれ,財産的損害の内容,被捜索者の協力態様などの諸事情を具体的に論じ て,その適否に関する結論を導かなければならない。 また,令状呈示の時期の適否についても,関連規定の有無等を指摘し,令状呈示の趣旨等を 論じた上,事例中に現れた具体的事実関係を前提にして,事前呈示の要請と現場保全の必要性 等に係る諸事情を具体的に摘示した上,結論を導かなければならない。 いずれの設問についても,法解釈論や要件の存否を抽象的に論じるにとどまることなく,事 例中に現れた具体的事実を指摘しつつ,個々の事実がどの要件の存否を基礎付けているのかを 的確に論じることが要請されている。 【選択科目】 [倒 産 法] 〔第1問〕 本問は,具体的な事例を通して否認制度及び相殺制限制度の理解について問うものである。 設問1については,まず,偏頗行為否認(破産法第162条)の可否が問題となるが,こ の場合には,当該行為(不動産への担保の設定による借入れ)が同時交換的行為(破産法第 162条第1項柱書参照)に該当するかどうかの検討が必要である。 次に,当該行為が,相当の対価を得てした処分行為の否認の対象となるかが問題となり, 破産法第161条第1項の要件に当てはめて結論を得る必要がある。 設問2については,まず,F社による相殺が破産法第71条第1項第2号の相殺制限の適 用を受けるかが問題となり,同号の要件に当てはめて結論を得る必要がある。相殺制限の場 合に該当するときは,破産管財人Xは,売買代金を請求することになる。また,本問では, F社への不動産の売却が,相当の対価を得てした処分行為の否認の対象になるか,当該行為 と相殺を全体として把握して不動産の代物弁済と同視し,偏頗行為否認の対象になるかも問 題となるが,相殺制限の適用を肯定する場合には,否認と相殺制限の優先関係や得失等につ いても言及することが求められる。 設問1及び2において,偏頗行為否認ないし相殺制限の適用の可否を検討する前提として, C銀行への抵当権の設定又はF社への不動産の売却がされた時に債務者が支払不能状態にな っていたかどうかが問題となる。問題文から読み取れる事実を破産法第2条第11項の要件 に当てはめて結論を得ることが必要である。 〔第2問〕 本問は,破産手続との関係での財団債権及び優先的破産債権の地位並びに同一債務者につい て破産手続開始の申立てと再生手続開始の申立てが競合した場合の取扱いについて問うもので ある。 設問1では,A社について破産手続が開始されたら,Bの退職金請求権は財団債権及び優先 的破産債権となる旨,Cの退職金請求権は財団債権となる旨(破産法第149条第2項,民法 第308条・破産法第98条第1項)を指摘した上で,財団債権あるいは優先的破産債権とな るべき権利を有する者は「債権者」(破産法第18条第1項)として破産手続開始の申立てを する利益を有するかについて,一貫した理由付けから結論を導く必要がある。 設問2では,債権調査の過程で一般破産債権者が届出破産債権について異議を述べた場合に, その異議が当該届出破産債権の確定を妨げる(破産法第124条第1項参照)ことを指摘した 上で,優先的破産債権者が届出のあった一般破産債権について異議を述べて当該一般破産債権 の確定を妨げることができるかという問題について,債権調査過程における破産債権者の「異 議」(破産法第121条第2項)の意義を踏まえて,一貫した理由付けから結論を導く必要が ある。 -8- 設問3では,破産手続開始の申立てと再生手続開始の申立てとが競合した場合に,どの裁判 所がどのような判断基準で両手続の整序を図るのか(民事再生法第26条第1条第1号・第2 5条第2号),及び再生手続開始の決定や再生計画認可の決定がされた場合の破産手続の帰す う(民事再生法第39条第1項・第184条)や再生手続廃止後の破産手続への移行の可能性 (民事再生法第250条第1項)等について説明する必要がある。 [租 税 法] 〔第1問〕 設問1は,相続人がいわゆる代償分割により相続財産を単独取得し当該財産を後に譲渡した 場合における所得税の課税関係を,取得費の取扱いに関して問うものである。所得税法第60 条第1項第1号の規定に関する基本的な理解を問うとともに,代償分割に関する私法上の法律 構成を所得税の課税関係の法律構成にいかに反映させるかを試している。あわせて,譲渡所得 課税の趣旨をも勘案して,所得税法第33条第3項及び第38条第1項に規定する取得費に関 する解釈論を展開する能力並びにその解釈の結果を具体的な事案における取得費該当性の判断 に応用する能力を試すものである。 設問2は,駐車場経営から生ずる所得に関する所得分類を踏まえた上で,駐車場用地の取得 に伴い支払った登録免許税等の相続登記費用について,これを上記の取得費として取り扱うべ きか又は所得税法第37条第1項に規定する必要経費として取り扱うべきかを問うものであ る。 〔第2問〕 設問1は,法人税法の課税標準の計算構造に関する基礎的な理解を前提として,法人が債 権放棄を行い,放棄した債権額につき貸倒損失として経理処理を行った場合の課税関係を問 うものである。法人税法第22条第3項に規定する損失として損金に算入できる貸倒れの要 件についての理解と,本問に現れた具体的事実を前提として貸倒損失と認められるか否かを 論じる能力を試すとともに,債権の放棄が法人税法第37条に規定する寄附金に当たるか否 かを検討する能力を試している。 設問2は,小問(1)の問題文に示された見解について,「収入金額」ないし「所得」とい った所得税法の基礎的な概念を踏まえつつ,その根拠付けを論理的に展開し,具体的事案に当 てはめる能力を試している。 [経 済 法] 〔第1問〕 本問は,高速バスの共同運行に係るバス会社間の運行協定について独占禁止法上の問題点を 検討させるものであり,いずれも独占禁止法の根幹となる「競争」,「競争の実質的制限」の理 解を問う趣旨である。 設問1は,バス会社による運賃の設定方法に関する3案について,不当な取引制限の成否を 検討させるものである。本設問に関連して,公正取引委員会が「高速バスの共同運行に係る独 占禁止法上の考え方について」などを公表しているが,当該「考え方」の知識又は学習の有無 を問うものではない。競争の本質にさかのぼりつつ,独占禁止法の基本概念を正確に理解した 上で要件の当てはめを行えば足りる。 本件運行計画の検討としては,まず,運行計画が各事業者のいかなる事業活動を相互に拘束 するといえるかを具体的に検討していくこととなろう。その際には,単に運賃の共同決定のみ を不当な取引制限とするだけでなく,広い意味での相互拘束行為の存在に触れる必要がある。 一定の取引分野については複数の取引分野が候補となり,答案においても1つ又は複数の -9- 取引分野が画定され得るが(複数の取引分野を画定する場合にはその関係についても論述が望 まれる。),本件の事実関係に即して合理的な当てはめができるか否かが問われる。その上で, 競争の実質的制限について,当該取引分野に即した検討を行うことが必要である。なお,画定 した取引分野と矛盾する検討は不適当である。 競争の実質的制限等の検討に当たっては,共同運行による新規事業又は市場の創出という本 問の特性をも踏まえて,本件協定案によりどの取引分野でいかなる競争が制限されるのか,い かなる競争促進的効果があるのか,それらが独占禁止法上どのように評価されるかについて, 競争の本質に沿った検討を適切に行うことを求めている。 いずれの点についても,特定の結論に達しているか否かにより評価するものではなく,その 結論に至る検討過程を通して独占禁止法の理解の有無を問うものである。 設問2は,バス会社3社による新規参入妨害のための協定を素材として独占禁止法上の基本 的な問題に対する理解度を問うものである。 適用法条としては,独占禁止法第3条前段(私的独占)又は第3条後段(不当な取引制限) のほか,一般指定第1項,第15項等が考え得る。もっとも,問題文の協定中の一部の語句に 基づく論点主義的な論述をするだけでなく,本件の本質を踏まえるとともに,適用法条のそれ ぞれの要件,効果の差異を理解した上で,適用法条に関する論述をすることが望まれる。 要件の検討に当たっては,その意義を正確に理解した上で,本件における単独事業者の市場 参入の困難性,各バス会社が保有する施設の意義,協定の内容,当該一定の取引分野に及ぼす 効果等を踏まえた当てはめが求められる。 〔第2問〕 本問は,不公正な取引方法に関して比較的詳細な事案を設定した上で,独占禁止法の基礎的 な理解を問うものである。あわせて,正当化事由等の評価の方法,及びエンフォースメントに 関する基礎的知識をも確認しようとしている。 設問1では,フランチャイズ本部が加盟店に対して,(1)ピザ・サラダ等の価格を拘束す ること,ドリンク・デザートの価格を拘束すること,提供する品目の制限を課すこと,(2) 営業地域を割り当てし,地域外での販売の制限及び地域外顧客への販売の制限を課すこと, (3)原材料の購入先の制限を課すことを,契約に基づいて定めるとともに,それに沿った指 導・統制を現実に行うことが,不公正な取引方法に該当するか否かを問うている。本件に適用 し得る一般指定の項を見定め,当該項の規定に沿ってその行為要件及び効果要件を検討してい くことが必要である。(1)では一般指定第12項,第13項,(2)では同第13項,(3) では同第10項,第11項,第13項の適用が問題となり得るであろう(なお,当該規定のす べてを検討することを求めているわけではないが,他方で,本問設例の趣旨に照らせば合理的 に適用可能な規定を広く検討することは望ましい。)。 行為要件の検討に当たっては,各規定の内容を正確に理解し,本問事例に当てはめること が必要である。さらに,効果要件の検討に当たっては,これらの制限を課すことが,一般的 に競争上いかなる効果を有するかを把握した上で,さらに,本問におけるフランチャイズ制 度の特質,営業の統一性の確保,食品の安全性の確保,スケールメリット,ブランド間競争 の有無などの諸点をも検討し,競争上の評価について検討することが求められるものであっ て,独占禁止法における基本的考え方を習得し,それを具体的事例に当てはめができるか否 かを確認するものである。正当化事由または競争促進的効果に関するこれらの考え方につい ては,当然ながら唯一の解答を前提とするものではなく,独占禁止法の趣旨に沿った説得的 で論理的に整合する説明ができるか否かを確認している。 設問2は,弁護士の立場から,本問の事案について独占禁止法に基づく訴訟の提起の可否 を問うものであり,まず,独占禁止法第24条に関し,その要件についての基本的な理解を - 10 - 示した上,本問における具体的な違反行為と差止めの範囲などについて検討することが望ま しい。また,検討対象となる訴訟は同条に基づくものに限られるものではなく,その他の請 求の可否も検討の対象となり得るであろう。 [知的財産法] 〔第1問〕 設問1は,特許権者が特許権の存続期間全部に対応する実施料全額の一括支払を受けて専用 実施権を設定した場合における特許権者及び専用実施権者の差止請求権(特許法第100条第 1項)及び損害賠償請求権に関する理解を問うものである。専用実施権を設定した特許権者の 差止請求の可否について判示した最高裁判所の判決(最判平成17年6月17日民集59巻5 号1074頁)を踏まえた論述が求められる。 具体的には,丁が製造販売するB傘が,甲発明の技術的範囲(特許法第70条)に属する かどうかをまず検討した上で,甲発明の特許権者甲が,丁に対し,B傘の製造販売の差止め 及び損害賠償を請求することができるかどうか,甲から専用実施権の設定を受けた乙が,丁 に対し,B傘の製造販売の差止め及び損害賠償を請求することができるかどうか等について, 本問の事実関係に即して論じなければならない。 設問2の1は,通常実施権者が特許無効審判の請求人適格(特許法第123条第2項)を 有するかどうかについて問うものである。また,設問2の2は,特許を無効とする審決が確 定した場合,特許権は初めから存在しなかったものとみなされること(特許法第125条) との関係で,小問(1)では,通常実施権者が,特許権者に対し,既払の実施料の返還を請 求することができるかどうかについて,小問(2)では,特許権者が,通常実施権者に対し, 当該審決の確定前の期間に対応する実施料の未払分の支払を請求することができるかどうか について,それぞれ問うものである。 〔第2問〕 設問1は,甲が執筆し,同人誌に掲載した計30編の小説の中から選んだ15編のものを, 一部変更を施した上で収録した乙書籍を作成し出版した乙に対する甲の請求を,また,設問2 は,乙書籍に収録された甲の小説を収録した丙書籍を作成し出版した丙に対する甲の請求を問 うものであり,甲が乙及び丙に対していかなる権利の侵害に基づいてどのような請求をするこ とが可能であるかを論述しなければならない。侵害される権利としては,複製権,譲渡権,公 表権,同一性保持権等が問題となる。公表権の侵害については,甲の小説が,「まだ公表され ていないもの」(著作権法第18条第1項)であるかどうか,すなわち,同人誌に掲載され, クラスメートに配布されたことにより,「発行」(著作権法第3条第1項)されたものになるこ とはないかどうかを論じる必要がある。同一性保持権の侵害については,乙が甲の小説に施し た変更が,意に反する改変となることを示した上で,「やむを得ないと認められる改変」(著作 権法第20条第2項第4号)に当たるかどうかを論述することが求められる。また,乙による 変更に関して,改変された甲の小説を複製し譲渡する行為に対して,その行為が同一性保持権 を侵害するかどうかの点を含め,甲がどのような請求をすることができるかを論述することが 求められる。設問3及び設問4には,これに類似する論点が含まれている。 設問3では,甲の小説を収録した乙書籍及び丙書籍をA市民に貸し出しているA市立図書館 が甲のいかなる権利を侵害し,甲がA市に対してどのような請求をすることが可能であるかを 論述しなければならない。A市立図書館による貸出しには貸与権が働くが,その侵害の成否に ついては,著作権法第38条第4項の適用の有無を論じる必要がある。甲の小説が「公表され た著作物」に当たらない場合には,同項は適用されず,また,公表権の侵害も問題となること となる。 - 11 - 設問4は,乙書籍に収録された甲の15編の小説を並び替えて収録した丙書籍を作成し出版 した丙に対する乙の請求を問うものであり,乙書籍が乙の著作物であり,丙が乙の権利を侵害 するかどうかを論述することが求められる。乙書籍の著作物性については,甲の小説の選択又 は配列によって創作性を有し,編集著作物であるかどうかが問題となり,丙による侵害の成否 については,乙書籍における選択又は配列による創作性が利用されたかどうかが問題となる。 [労 働 法] 〔第1問〕 本問は,時間外労働及び賃金規程改訂の事例を通じて,時間外労働に対する割増賃金,当事 者間の合意や就業規則と労働基準法(以下「労基法」という。)との関係,就業規則の変更に ついての理解を問うものである。 小問1では,「エキスパート」職には超過勤務手当を支給しない旨の賃金規程の定めは労基 法第41条第2号,第37条との関係で有効か,割増賃金を基本給に含めて支払う旨の合意は 労基法第37条との関係で有効か,職務手当は割増賃金の趣旨であるとの合意があるかが問題 であり,これらの点を前提にした上で,設問で示されている賃金規程及び労基法を適用して, 割増賃金の基礎となる賃金,時間外及び深夜の労働時間,割増率を説明することが求められる。 小問2では,割増賃金を定額で支給する旨の賃金規程の定めを労基法第37条との関係でど のように理解するかが問題であり,定額の超過勤務手当がどのような意味や効果を有するかに 留意しながら,割増賃金の基礎となる賃金,時間外及び深夜の労働時間,割増率を説明するこ とが求められる。 小問3では,就業規則と一体となっている賃金規程の改訂に関して,改訂に同意があるか, 改訂手続は適法に行われているか,改訂はXに不利益な変更か,Xの同意がないとしても不利 益に変更された賃金規程が適用される場合に該当するかが問題となる。小問1及び小問2を踏 まえながら,改訂がもたらす不利益の程度を正しく評価した上で,合理性の判断を行うことが 求められる。 〔第2問〕 本問は,所属労働組合の方針に反対し,その承認を得ないで行った,いわゆる少数派組合員 であるXらの行為を素材として,組合活動及び懲戒の法理に関する理解を問うものである。労 働組合及び組合員個人の活動に対する法的保護とその限界,不当労働行為に対する救済の仕組 み,懲戒処分の根拠と手続上の留意点などをきちんと押さえた上で解答することが必要である。 まず,設問1では,Xらが労働委員会に不当労働行為の救済を求めることが考えられるが, 使用者のどのような行為を対象として救済申立てを行うのか,労働組合が申立てを行わない場 合,個人による申立てが可能かといった点が問題となる。その上で,Xらの活動は「労働組合 の行為」に該当するのか,該当するとして正当性についてどのように判断すべきか,及び会社 の行為は支配介入に当たるかについて,会社の施設管理権や就業時間中の職務専念義務・誠実 義務との関係,言論の自由と会社批判・誹謗中傷との関係,労働組合へのこれまでの会社の対 応や他の労働者の取扱いとの比較等に留意しながら,検討することになろう。 また,裁判所に司法救済を求める場合には,懲戒処分の前後でいかなる訴訟が提起できるの か,その論拠を不当労働行為として構成するのか,懲戒権の濫用として構成するのかといった 点が問題となる。 次に,設問2では,Y株式会社がXらに対する懲戒処分を行うについて,就業規則の定め(本 件では,懲戒処分として,減給,出勤停止又は懲戒解雇の3種類しか選択できない。)とその 該当性を吟味しながら,どのような論拠により,どの懲戒処分を選択するのかを検討すること が求められる。また,懲戒処分を行うに当たって留意すべき点として,違反の程度,過去の事 - 12 - 例や他の労働者との比較,警告書を発したが違反行為が一向に改善されないこと等をどのよう に評価するのか,さらに,適正手続の観点から弁明の聴取が必要なのか等が問題となろう。 [環 境 法] 〔第1問〕 本問は,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の下での廃棄物該当性の判 断基準,及び,具体的事例に対するその適用に関する出題である。まず,判断基準について判 示した最高裁判所平成11年3月10日第2小法廷決定・刑集53巻3号339頁の内容を理 解しているかが問われる。基準として,@性状,A排出の状況,B通常の取扱い形態,C取引 価値の有無,D占有者の意思等を総合的に勘案,を意識しつつ,設問に即して,弁護人と検察 官の主張を対応させるように解答することが期待されている。 Aの弁護人としては,おからを飼料や肥料の原料として使用していることからその廃棄物性 を否定する主張を中心にすることになる。廃棄物ではないから,収集運搬や処分についての廃 棄物処理法の許可は不要であると主張することになる。また,リサイクル対象物を廃棄物に含 めると解することの不合理性も主張することになる。 検察官は,D外3名からAに対して金銭が支払われているがゆえに廃棄物に該当すること, 有価物でないため構造的に不法投棄等が発生しやすいがゆえに廃棄物とするのが適切であるこ となどの点を中心に反論することになる。廃棄物であるがゆえに再生行為(処分)であっても許 可を要することなどの記述は加点要素となる。 〔第2問〕 設問1は,石綿が大気汚染防止法の規制対象であることの理解を問い,A県がB地区自治会 とDとの間で公害防止協定を締結させた意味を問うものである。A県知事が採り得る措置とし ては,大気汚染防止法第18条の18の作業基準適合命令が考えられる。同法第18条の14 の作業基準の内容まで理解し記憶していることは求めないが,適用の可能性がある旨の指摘を 期待している。EのDに対する訴訟上の請求としては,公害防止協定に基づく債権的請求と人 格権に基づく差止請求を論じ,民事上の保全処分の申立てをする必要性を論じることが求めら れている。その際,公害防止協定に基づく債権的請求を構成するための法的構成(第三者のた めにする契約等)を指摘する必要がある。人格権に基づく差止請求では違法性ないし受忍限度 論や差止請求の内容,抽象的差止請求の可否等も論じる必要がある。 設問2は,Dに対しては,公害防止協定違反に基づく損害賠償請求,C及びDに対しては, 不法行為に基づく損害賠償請求の可否を問うものである。いずれについても何が損害に当たる かの議論を期待している。C及びDに対する不法行為に基づく損害賠償請求では,共同不法行 為論を論ずる必要もあり,違法性ないし受忍限度論も問題となる。 [国際関係法(公法系)] 〔第1問〕 本問は,国際関係維持に不可欠な外交関係法の特質を問う問題である。 設問1では,外交官の特権である,「身体の不可侵」(外交関係に関するウィーン条約第2 9条)の絶対性を問うている。@外交官の「身体の不可侵」,ひいては外交官の特権免除が, 「外交使節団の任務の能率的な遂行の確保」と「派遣国の代表性」に基礎を置いており,A そのために派遣国が放棄しない限り絶対的な性格を持つことを述べ,したがって,設問のよ うな「スパイ罪」の嫌疑のある事例であっても乙を拘束し続けることが上記の外交関係に関 する規則に反することを説明するのが解答の要点である。もちろん,外交官の身体が不可侵 であるとしても,現行犯であって火急の必要がある場合に,現場で一時的に取り押さえるこ - 13 - とが許されるかどうかという点まで議論すれば完璧である。さらに,AB両国のいずれかが, 外交関係に関するウィーン条約に入っていない場合にも上記規則が国際慣習法を表し,それ ゆえに適用されることに言及してもよい。 設問2は,接受国が外交特権の濫用があったことを現認したときに,接受国が正当に採り得 る措置を問う問題である。まずは,当該外交官について,接受国が「ペルソナ・ノン・グラー タ」を宣言して退去を求めるのが採り得る措置の第1である(外交関係に関するウィーン条約 第9条)。しかし,派遣国ぐるみで重大犯罪を犯しているなどの場合には,派遣国の判断によ って外交使節団自体の退去を求めることもできる(同条約第2条)(例えば,1984年の英 国のリビアに対する措置)。次に,乙の行為が,外交官の「接受国の法令尊重」の義務(同条 約第41条)に反していることを根拠に,上記の外交関係法特有の措置以外が可能かを検討し てもらいたい。具体的には,国家機関たる乙の行為が国際法義務違反を構成すれば,A国はB 国の国家責任を追及でき,陳謝等の救済(責任の解除)を求めることを説明してもらいたい。 さらに,B国の国際法上の義務違反に対して,外交関係法とは離れて,一般の対抗措置が採り 得るかの検討も重要である。国際司法裁判所「在テヘラン米国大使館員人質事件」が説くよう に,外交関係法は「自己充足的な体制(self-contained regime)」を構成するために一般国際法 上の対抗措置の採用は制限される。この点との関係で乙の行為に対して,A国が一般国際法上 の対抗措置を採れるかどうかも検討してほしい。 設問3は,外交特権免除の侵害(外交官の身体の侵害)が続いている場合に,B国が採り得 る措置を尋ねている。国際司法裁判所「在テヘラン米国大使館員人質事件」を思い浮かべて解 答すればよい。裁判外では,交渉や第三国のあっせん等によって乙の釈放を求めるという常識 的な方法に加えて,B国が対抗措置を採り得るかどうかなどを検討してほしい。対抗措置を採 り得る条件は満たしているか(「義務違反の継続」と「当該行為中止の目的」),また,採る場 合にはどのような条件が課されるか(特に本件の場合は,外交官の不可侵性の尊重)をきちん と説明することが求められる。裁判上は,A国の国家責任を追及して義務違反の中止(乙の身 柄の解放)等を求めることが可能であるが,それに先立って,釈放のために権利保全のための 暫定措置(国際司法裁判所規程第41条)を求めることを考えなければいけない。 本問では,外交関係法上の義務違反に対して,派遣国,接受国がいかなる措置を採って,義 務違反の是正を求めることができるかを中心に試そうと考えた。また,国際法規の解釈と問題 の状況への当てはめ(適用)をきちんと分けて考えるようにしてもらいたい。 〔第2問〕 本問は,国内裁判所が判断に直面する国際法上の問題のうち頻度の高い問題であり, かつ,主権国家の並存を基盤として成立している国際法の基本原則の一つを構成する, 国家免除原則に関する問題である。日本の国内判例において,絶対免除原則から制限免 除原則へと判例変更の道を開くという意味で,重要な意義を持ち大きな注目を集めてい る国内判例を素材として,問題文の事実関係及び関係者の法律関係が設定されている。 XがA国を被告としてB国の国内裁判所に訴訟提起するわけであるが,B国の裁判管 轄権がA国に対して及ぶかという点で,国家免除原則が問題となる。 第一に,国家免除原則についての基本的な理解が求められる。そこでは,絶対免除原則 から制限免除原則への移行という国際法の動向,その移行の背景にある事情(国家観念 のとらえ方の変遷,国家機能の変化,国家の取引の相手方たる私人の保護という要請等), 問題文中にあるように諸国の実践の集積などを踏まえた論述が求められる。 第二に,制限免除原則の立場に立つ場合には,国家免除の対象となる行為の範囲が問 題となる。これについては,行為主体ではなく行為そのものに着目すると,行為に着目 - 14 - する考え方には行為目的説と行為性質説とがあることの認識を示した上で,どのように 免除の対象となる行為の判断基準を設定するかを論証することになる。具体的な例を挙 げて受験者自身の採用する立場を説明すると説得的な論証となり得る。 第三に,受験者自身の採用する立場に立って,それを本件の事例へ丹念に当てはめる ことにより,本件においてB国の裁判管轄権がA国に及ぶかについての結論を導くこと になる。それに際しては,まず,本件の具体的事実という点で,A国軍事基地での夜間 の航空機の離発着,地上での関連活動であることに着目する。さらに,A国とB国間の 安全保障条約上の法律関係として,A国の軍事基地での活動が条約上で負っている義務 (公共の安全に配慮する義務,B国の法令を尊重する義務)の持つ意義にも留意する。 加えて,同条約第6条が国家免除に関していかなることを規定する条文であるか,その 効果は,受験者自身の採用する立場に基づくとどのようなものかを論じることになる。 [国際関係法(私法系)] 〔第1問〕 本問は,遺言能力,遺言の方式及び遺言による認知という,家族法上の基本的事項につい ての準拠法の理解を問う問題である。 設問1は,成年被後見人の遺言能力の有無を問うものである。遺言能力の準拠法を定める 規定は法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第4条,第5条か,第37条か, 同条の「遺言の成立当時」とはいかなる時点かを検討して準拠法を決定し,実質法の本件事 案へのあてはめの結果を説明することが求められている。 設問2は,遺言の方式の有効性を問うものである。まず,遺言は,遺言の方式の準拠法に 関する法律(以下「方式法」という。)第2条が掲げるいずれかの法の定める要件に合致して いるときは方式上有効とされること,方式法第5条の規定により,遺言の際の証人の立会い や,被後見人が遺言能力を回復している時に遺言がされたことの証明の方式も「遺言の方式」 の中に含まれることを指摘し,その上で,本件事案への方式法第2条の適用の結果を丁寧に 述べ,本件遺言は日本民法の要求する方式は満たしていないが,甲国民法が要求する方式は 満たしていることを説明する必要がある。そして,証人を1名で足りるとしている甲国民法 第T条第2項の規定の適用が方式法第8条の「明らかに公の秩序に反するとき」に該当する かどうかを検討することになる。 設問3は,本件遺言による認知の有効性を問うものである。認知の有効性を定める規定は 通則法第37条か,第29条か,同条第1項後段及び第2項前段の「認知の当時」とはいか なる時点か,甲国民法第P条が要求する後見人の同意は通則法第29条第1項後段の「第三 者の承諾又は同意」に該当するか,準拠実質法上Yが本件遺言を承諾しているかを検討する ことが求められている。 〔第2問〕 本問は,貿易取引における荷為替の知識を前提にして,船荷証券中の裁判管轄条項の有効 性と,運送品の損傷による運送人の責任について問う問題である。 設問1は,我が国において渉外的民事訴訟事件についての国際裁判管轄権はどのような基 準によって判断すべきか,運送人の主たる営業所所在地の裁判所の専属的管轄とする船荷証 券中の裁判管轄条項はいかなる場合に有効とされるかを問うものである。本件設例と類似の 事案について外国の裁判所を管轄裁判所とする船荷証券中の専属的管轄条項の有効性につい て判示した最高裁判所の判決(最判昭和50年11月28日民集29巻10号1554頁) を踏まえつつ,国際裁判管轄の合意における当事者双方の署名の必要性についての論述を中 - 15 - 心に,いかなる場合に専属的裁判管轄の合意が有効とされるか,本件において丙国に専属的 国際裁判管轄権を認めて我が国の裁判管轄権を否定することが我が国の公序に反しないか等 についても論ずることが求められている。 設問2は,運送品に損傷が生じた場合における運送人の損害賠償責任について問うもので ある。その小問(1)においては,船荷証券中に,運送人の主たる営業所の所在地である我 が国の裁判所の管轄を合意した条項と日本法によって解決する旨の条項がある場合に,我が 国においては本契約の準拠法が日本法になり,国際海上物品運送法が適用されることを説明 した上で,荷受人による運送品の検査の結果についての通知,運送人の注意義務とそれにつ いての証明責任について,どのような規定が適用され,本件におけるその適用結果がどのよ うになるのかの論述が求められている。また,小問(2)においては,損害賠償額の算定に ついてどのような規定が適用され,その適用結果がどのようになるのかの論述が求められて いる。 - 16 -