論文式試験問題集[倒 - 1 - 産 法] [倒 産 法] 〔第1問〕(配点:50) 1.A株式会社(以下「A社」という。 )の代表者Pから次のような相談を受けた弁護士として, 以 下の設問に答えなさい。 Pの相談内容は, すべて証拠により裏付けられる事実であるとする。 【Pからの相談内容】 私はA社の代表取締役をしておりますPと申します。 A社は旅館業を営むことを業としております。 A社が経営している旅館は, 温泉町の一角にあ ります木造2階建ての温泉旅館です。 私の祖父の代からの老舗で, 建物は築50年にもなろうと しておりますが, 昔からの従業員による家庭的なもてなしと敷地内に温泉が出ること, ちょっと した散策ができる和風庭園があることが好評で, ひいきにしていただいているお客様もいて, こ れまでやってきておりました。 祖父の跡を継いだ父が2年前に急死してからは, それまで東京で 会社勤めをしていた長男の私が呼び戻されて, 代表取締役として経営に携わってきました。 しかし, さすがに施設が老朽化して, 度々の修繕に費用が掛かることもあり, 苦しい経営を続 けていましたところ, 今般の経済情勢の厳しさから, とうとう手元資金がほとんどなくなり, 直 近の支払のめども立たなくなってしまいました。 民事再生というものを申し立てることにより, 破産という最悪の事態を避けることができると聞いて, この度御相談に伺った次第でございます。 A社の他の取締役である私の母親と妻も賛成してくれており, 裁判所に納める予納金として必要 なお金は, 何とか工面してまいりました。 A社の財務の概要を御説明いたします。 まず, 最大の債権者はB銀行で, 債権額は約2億円で す。 A社の唯一の資産であります旅館の土地建物に, 第1順位の抵当権を有しております。 仕入れその他の取引業者の債権者は15社, 債権総額は約3000万円です。 それから, お恥 ずかしい話ですが, 法人税, 社会保険料等の公租公課の未納分が約2000万円たまっており, また, 従業員の過去1か月分の給料合計約200万円も遅配となっております。 負債は以上のと おりです。 資産としては, 先ほども申し上げましたとおり, 唯一のものが旅館の土地建物で, B銀行の2 億円の抵当権がついております。 この土地建物についている担保権はこれだけです。 この土地建 物の時価は, 温泉が出ることを考慮してもせいぜい1億円ではないかと, 幾つもの不動産業者が 査定を出しており, 間違いのないところだろうと考えられます。 しかし, B銀行は, この不動産 の時価は1億5000万円は下らないはずであり, そのような前提で支払条件を示さない限り, 抵当権の実行も辞さないと, 強く主張しています。 この土地建物のほかには特段の資産はなく, 裁判所への予納金を支払うと, 手元の資金はわず かしか残っていない状態です。 こうした現状から, A社単独での再生は困難であり, どこかにスポンサーを見付けて支援をし ていただかなければならないことは, 私も理解しております。 そこで, 八方手を尽くして探しま したところ, ようやく1社だけ, 支援を引き受けていただける会社が見付かりました。 この会社 は, 同じ県内で幾つも旅館を経営しておりますQ社です。 援助の条件といたしましては, 出せる 金額は1億5000万円が上限で, Q社自らが主体となって施設と従業員を引き受けて経営する ことを希望していますが, 負債や抵当権の負担は引き継がないことを支援の条件としています。 私どもも, 旅館の経営者としての能力には限界を感じており, Q社に旅館を引き継いでいただけ るのは有り難いと思っております。 Q社としては, これからのシーズンを控えて, できるだけ早 く引継ぎをすることを強く希望しておりまして, 私としても, 従業員を引き止めるにももう限界 で, 一刻も早くQ社に入っていただかなければならないと感じております。 ただ, A社の株主構成としては, 私が株式の60%を有しているほか, 遠方に住む2名の弟が それぞれ20%を保有しておりますところ, 弟たちは, 民事再生を申し立てることには理解を示 - 2 - してくれましたが, 旅館を人手に渡すことについては強く反対しており, 簡単に納得してくれそ うにありません。 このような現状ですが, どうかよろしくお願いいたします。 〔設 問〕 弁護士としてA社を代理して再生手続開始の申立てをし, その手続中において, Q社に対し, 同社の希望する条件で, A社の事業を承継させる方針を立てたとする。 その場合に再生手続開 始決定後に採るべき手続について述べなさい。 下線 を引いた部分で示したB銀行の方針に対して, A社として採り得る対応策について 述べなさい。 再生手続開始直後, Pから以下のような相談を受けた。 考えられる対処方法について論じな さい。 【Pからの相談内容】 昔から旅館の日本庭園の手入れをお願いしている庭師のCさんへの昨年秋の庭木の剪定の 代金30万円が未払になっています。 Cさんから, この30万円を直ちに支払ってもらわな い限り, 今後の作業はしないとの通告がありました。 Cさんは大変な腕利きですし, うちの 庭園のことは熟知していますので, 他の業者に代えるのは大きなマイナスです。 これからの 行楽シーズンに向けて, すぐにでも庭園の手入れをしてもらう必要があるのですが, 手元に あるお金で未払金を支払ってあげることはできないでしょうか。 2.前記1の相談内容に係る事案において, 再生手続開始決定前, A社は建築業者D社に対して, 旅館の離れの建物の改修工事を請負代金200万円で発注し, 代金の一部として120万円を支 払っており, 再生手続開始決定時点において, 工事は出来高2割の状態であったとする。 A社と D社との間の請負契約が再生手続開始決定後にどのように処理されることになるのかについて説 明しなさい。 - 3 - 〔第2問〕(配点:50) 次の事例について, 以下の設問に答えなさい。 【事 例】 A男とB女は婚姻し, 夫婦で飲食店を営んでいた。 その後, Aは, 家業の飲食店をBに任せ, 自らは中古車販売業を始めた。 しかし, Aは, 仕事上のトラブルから, 次第に仕事もせずに昼間 から飲酒をするなどの状態になり, Bに対しても, 暴言を吐いたり, 暴力を振るうことが多くな った。 そこで, AとBは, ついに協議により離婚したが, 当時AとBには10歳の子Cがおり, CはBに引き取られることになった。 〔設 問〕 以下の1及び2については, それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1. 【事 例】において, Aは, 離婚の約1年ほど前から, 中古車販売業に関連して多額の負債を 抱えるようになり, 離婚から約半年後に自ら破産手続開始の申立てをするに至った。 離婚した当時, Aは, 既に無資力の状態にあったが, A名義の唯一の財産ともいうべき時 価1000万円のマンション(以下「甲マンション」という。 )を, 財産分与として, Bに譲 渡していた(以下「本件財産分与」という。 )。 甲マンションについては, 本件財産分与の後, 直ちに所有権移転登記がされ, Bが単独で所有権の登記名義人となっている。 なお, 甲マン ションは, Aが中古車販売業を始めてしばらくした後に, Aが家族の住居として購入し, A が単独で所有権の登記名義人となっていたものである。 しかし, Aは, 中古車販売によって 得た利益のほとんどを酒代等の遊興費に充てていたので, 甲マンションについては, そのロ ーンの支払を含め, 実質的な購入資金は, すべてBが一家の生計を立てていた飲食店の利益 から支払われ, 離婚の当時, 既にローンは完済されていた。 その後, Aについて破産手続が開始され, 破産管財人が選任された。 破産手続開始当時, 本件財産分与については, Aの破産債権者であるDが詐害行為取消訴訟を提起し, 係属中で あった(以下「本件詐害行為取消訴訟」という。 )。 本件詐害行為取消訴訟は, 破産手続開始 決定によってどのような影響を受け, これに対して, 破産管財人は, どのような対応を採る ことが考えられるか。 本件財産分与について否認が可能かどうかという点を踏まえて検討し なさい。 Aは, 離婚したころからE社で働き始め, E社から給与を支給されていたところ, Cの養 育費について, 離婚の当時, AB間で話合いが行われたが, 協議は進まず, Bが家事調停を 申し立てた。 その結果, 毎月末日にAがBに対して5万円を支払うことが合意され, その旨 の調停調書が作成された。 その後, Aは, 自ら破産手続開始の申立てをするとともに, 免責許可の申立てをし, Aにつ いて破産手続が開始されることになったが, 破産手続開始当時, 養育費について2か月分が未 払の状態であった。 そこで, Bは, 破産手続が終了した後に, 前記調停調書に基づいて, Aの E社に対する給料債権を差し押さえようと考えている。 Bによる強制執行の申立てが, 破産手 続終了後, @免責許可決定確定前にされる場合と, A免責許可決定確定後にされる場合とに分 けて, その可否を検討しなさい。 2. 【事 例】において, Bは, 離婚後も飲食店の経営を続けていたが, 原材料費の高騰によって 経営は悪化し, 生活費を消費者金融業者等からの借入れで賄うようになり, 離婚から約半年後, 自ら破産手続開始の申立てをするに至った。 ところで, Bは, 婚姻中にAから度々受けた暴行及び虐待により, 精神的苦痛を被ったとし て, 離婚後, Aに対して, 不法行為を理由に慰謝料の支払を求める訴えを提起していた(以下 「本件慰謝料請求訴訟」という。 )。 - 4 - 本件慰謝料請求訴訟の係属中に, Bについて破産手続が開始され, 破産管財人が選任された。 Bは, 破産手続開始後も, 本件慰謝料請求訴訟を追行することができるか。 破産手続開始後, 本件慰謝料請求訴訟について慰謝料200万円の支払を命じる判決が確 定した場合, 破産管財人は, Aに対して, その履行を求めることができるか。 - 5 - - 6 - 論文式試験問題集[租 - 7 - 税 法] [租 税 法] 〔第1問〕(配点:50) Aは, 喫茶店経営をしていたが, その地域に縄張を持つ暴力団員Bからポーカーゲーム機賭博に よるもうけ話を聞かされて, その気になり, Bからポーカーゲーム機10台を購入し, 喫茶店の店 舗内にポーカーゲーム専用の部屋を設けて, そこにポーカーゲーム機10台を設置し, 平成20年 1月3日から, ポーカーゲーム機を客に利用させるようになった。 ポーカーゲーム機賭博の方法は, 以下のとおりであった。 @ 客は, コイン1枚につき500円をAに支払って, 賭博の元手として必要なだけのコイン の交付を受ける。 A コインをゲーム機に投入して(1枚から20枚の範囲で投入可能), ゲーム機の画面に表示 される5枚のトランプのカードの絵柄の組合せにより勝負を決するが, 絵柄がそろわなけれ ばコインはそのまま機械内に回収され, 絵柄がそろった場合は, そろう確率の高低に応じて, 投入したコイン1枚につき1枚から100枚のコインが機械から排出される。 B 客は, 店を出る際に, 手元に残ったコインがある場合それを1枚500円で精算するか, あるいは, そのまま持ち帰って次に入店してポーカーゲームをする際に, そのコインを使用 する。 C なお, Aはポーカーゲーム機の絵柄のそろう確率を調整することができ, Aが客よりも勝 つ確率を高く設定していたが, 客との間の個々の勝負は偶然に左右されるものであった。 平成20年1月3日から同年12月31日までの間, Aがコインを交付するときに客から受け取 った現金の総額は8000万円, 客がコインを精算する際にAが客に支払った現金の総額は5000 万円になっていた。 ところで, Aは, 常連客のCに対し, 後払いの約束でコインを渡していた。 Cは, そのコインで 勝負したがすべて負け, 平成20年12月15日時点でAから後払いの約束で受け取ったコインの 枚数は1000枚(50万円分)となっていた。 そこで, Aは, Cに50万円の支払を求めたが, 結局, Cは支払わず, 同年12月31日までに, 50万円は回収できなかった。 また, 平成20年12月31日時点では, 200枚のコイン(10万円分)を客が持ち帰ってい て, 精算されないままとなっていた。 Aにポーカーゲーム機を売った暴力団員Bは, ポーカーゲーム機賭博に関する経営指導料の名目 で, 月々20万円を支払うようにAに要求してきたため, Aは, 平成20年1月から12月までの 12か月分の合計240万円をBに支払った。 ポーカーゲーム機10台の平成20年における減価償却費の合計額は50万円である。 なお, Aは, 平成21年1月早々に, 常習賭博罪で警察に逮捕され, 起訴されて有罪判決を受け, ポーカーゲーム機10台はすべて没収された。 以上を前提に, Aのポーカーゲーム機賭博による利得に対する所得税法の適用に関して, 以下の 設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.Aのポーカーゲーム機賭博による利得は課税されるが, このような利得に課税が許される理 由と, Aのポーカーゲーム機賭博による所得の種類は何かを述べなさい。 2.Aのポーカーゲーム機賭博による所得の種類を踏まえ, 平成20年分のAのポーカーゲーム 機賭博による所得の計算に関する以下の問題点について論じなさい。 Cから回収されていない50万円は, 収入金額となるか。 以下の金額は, 所得の計算上控除されるか。 @ 客がコインを持ち帰ったため, 精算未了となっている10万円 - 8 - A 暴力団員Bに支払った240万円 B ポーカーゲーム機の減価償却費50万円 - 9 - 〔第2問〕(配点:50) Aは, B株式会社(内国法人。 以下「B社」という。 )の常勤の取締役を20数年間務め, 平成2 0年3月期決算に係る定時株主総会の終結をもって取締役副社長としての任期を満了したが, 同株 主総会において非常勤の監査役に選任され, その後は監査役としての職務に専念している。 AがB 社の取締役に就任した当時, 同社は倒産寸前の苦境に陥っていたが, Aは長年かけて同社の経営の 再建に尽力し株式上場の立役者となった。 このことは社内外を問わず衆目の一致するところである。 前記株主総会では, Aは引き続き役員を務めることになったが, これを機にAに役員退職慰労金 支給規程に従って退職慰労金を支給することが決議された。 その決議を受けて, B社の取締役会で は, 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従ってAに対する退職慰労金の額を1億3000万円 とする旨の提案がなされた。 これに対して, 審議の冒頭で, 「Aの我が社への貢献は高く評価するが, それでも上場して間もない我が社の資産, 収益等の現状からみて高額すぎるのではないか。 」との強 硬な反対意見が出され, これに同調する者もいたが, 途中から, 「もっともな御意見ではあるが, 上 場会社としてそれなりの配慮があってもよいのではないか。 」との賛成意見が優勢になり, 結局, 原 案どおり承認された。 決定された退職慰労金の内訳及び内容は以下のとおりである。 @ 標準退職慰労金 7000万円 この金額は, 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い, 役位別の最終報酬月額に 役位ごとの在任期間の年数及び役位別の役位係数を乗じて算出したものである。 A 功労加算金 2000万円 この金額は, 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い, 「在任中特に功績が著しか ったと認められる役員」に対して標準退職慰労金の金額の30%を超えない範囲で支給 することができるものとされている功労加算金について, 算出したものである。 B 特別功労加算金 4000万円 この金額は, 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い, 「当社の創業を主導し推進 した役員, 強力な戦略の成功をもたらした役員, 当社の苦境を脱し盛業に導いた役員, その他当社に大いなる貢献をなし, その功績が顕著であったと認められる役員」に対し て功労加算金の金額の倍額を超えない範囲で支給することができるものとされている特 別功労加算金について, 算出したものである。 特別功労加算金については, 金銭で支給することにした標準退職慰労金及び功労加算 金とは異なり, B社所有の帳簿価額4000万円の甲土地を支給することにした。 B社は, Aに対する退職慰労金(以下「本件退職慰労金」という。 )の支給に当たって, 1億30 00万円について, 損金処理をする一方, 所得税を源泉徴収した。 なお, 甲土地の支給時の時価は 1億円であった。 以上の事案について, 以下の設問に答えなさい。 ただし, 取締役に対する損害賠償請求の可能性 及びそれに伴う課税問題を検討する必要はない。 〔設 問〕 1.本件退職慰労金に係る所得の種類及び収入金額が所得税の課税上どうなるかについて, 所得 税法における課税の趣旨にも触れながら, 条文を摘示しつつ論じなさい。 2.本件退職慰労金の支給に係るB社の法人税の課税関係がどうなるかについて, 条文を摘示し つつ論じなさい。 - 10 - 論文式試験問題集[経 - 11 - 済 法] [経 済 法] 〔第1問〕(配点:50) 1 A, B及びCの各社はいずれも, 事業者向けの商品Xを製造販売する機械メーカーであり, 各 社のXの市場占有率(シェア)は, Aが50%, B及びCが各25%である。 A及びB(以下「両 社」という。 )は, Xに関し, 最近, 需要が低迷し部品の値上がりが著しいことから, コスト削減 の方策として, @部品の共同購入及びA共同物流会社の設立を計画している。 2 部品の共同購入について 両社の製造販売するXの主要部品の規格や仕様は共通している。 そこで, 両社は, 共同購入に よるスケールメリットを活用して, 部品の購入費用を引き下げることを考えている。 具体的には, 個々の部品ごとに両社の購入予定数量を合計した上で, 部品メーカーとの交渉窓口をA又はBに 一本化し, その合計数量で単価をどこまで引き下げることができるかを交渉し, 両社にとって最 も有利な条件の購入先1社から同一単価で当該部品を購入することにする。 その際, 両社は, 部 品メーカーとの交渉のベースとなる各部品の調達予定金額の目安を設けることにするが, さらに, この調達予定金額の目安を検討する前提資料とするために, Xの販売量が落ち込まない範囲内で 想定できるXの販売価格の上限を協議し決めておくことも検討している。 なお, 両社のいずれにおいても, この共同購入の対象となる部品の購入費用は, Xの製造コス トの約80%であり, Xの製造コストは, 製品価格の約80%である。 また, この共同購入の対 象となる部品は, Xのみに使用されており, 我が国でこれを製造している部品メーカーは3社で ある。 3 共同物流会社の設立について Aは千葉県千葉市内にある自社の工場で, Bは大阪府堺市内にある自社の工場でそれぞれXの 製造をしているが, 両社の需要家は全国に散在しているため, 従来は, Aは九州の需要家へも千 葉市内の工場から, Bは北海道の需要家へも堺市内の工場から, それぞれ自社トラックで配送し ていた。 そこで, 両社は, トラックの利用効率の向上や配送時間の短縮等を図るため, Aが51 %, Bが49%の割合で出資してXの物流業務を行う共同出資会社甲を設立し, それぞれ保有し ているX配送用のトラックを甲に譲渡して, 甲において以下のような方法で配送することを考え ている。 なお, 両社とも, 物流コストは, 製品価格の約10%を占めている。 甲の従業員は, 両社からの出向者とし, いずれからの出向であるかを問わず, 両社製のXに ついて配送業務に従事する。 千葉市及び堺市の各工場に甲が運営する共同物流センターを設け, 各共同物流センターは, 両社製のXを一定数在庫し, 1台のトラックが両社製のXを積載して配送する混載方式を採る。 両社は, それぞれの受注に関し, 需要家の名称及び所在地並びに受注数量, 納期及び販売価 格(単価及び値引き額等)を記載した納品書を甲に送付し, 甲の従業員は, 各共同物流センタ ーの輸送能力や両社製のXの在庫状況を勘案して, 最も効率的に配送できるよう, トラック配 備及び配送ルートを調整する。 〔設 問〕 前記の@部品の共同購入及びA共同物流会社の設立の各計画について, 私的独占の禁止及び公 正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。 )上の問題点を分析して検討しなさい。 - 12 - 〔第2問〕(配点:50) A電機株式会社(以下「A」という。 )は, 東京都に本店を置き, 家電製品の小売業を営む者であ る。 Aは, 平成12年ころから, その販売する家電製品が低価格であることにより顧客の支持を獲 得し, 関東地方を中心に東日本地域全域で店舗数を急速に拡大するとともに, 売上高を伸ばしてい る。 Aは, 平成18年以降, 東日本地域の家電小売業において売上高第1位になっている。 東日本地域では, Aのような業態をとるいわゆる家電量販店には, AのほかB及びCなどが存在 する。 A, B及びCはそれぞれ東日本地域の主要な都市に参入しており, 各社の都市部におけるシ ェアは多少異なるが, おおむね次のとおりである。 家電小売業全体で見ると, いわゆる家電量販店 の合算シェアは50%程度を占め, Aは第1位でシェア25%から30%, Bが第2位でシェア 10%前後, Cが第3位でシェア5%前後である。 家電小売業全体における家電量販店を除く家電 小売店(以下「家電専門店」という。 )の合算シェアは50%程度であるが, ほとんどが小規模事業 者でありシェア0.5%を超える家電専門店は存在しない。 このような状況において, Aは, 5年後には全国の主要な地域において売上高第1位になること を目標に掲げ, 全国に本格的に進出することとした。 また, Aは, そのため東日本地域における経 営基盤を強化することとした。 そこで, Aは, 次の及びの方針を採ることとした。 Aは, まず中部地方に進出することとし, 平成21年6月1日に名古屋に3店舗を開店する。 その新規開店セールとして, 今後1か月間, 毎週末に販売キャンペーンを行い, 週末ごとに各店 において先着50名に対していわゆる格安パソコンを2000円で販売する。 なお, Aはこの格 安パソコンを3万円で仕入れたが, その後新型製品が販売されたために, 旧型製品となっている。 Aは, その地盤である東日本地域において販売活動を強化するために以下の販売キャンペーン を行う。 @我が国で販売されている主要な液晶テレビのメーカー4社(以下「4社」という。 )の 37インチ及び40インチの液晶テレビ(以下「本件液晶テレビ」という。 )を, 今後3か月間, それぞれおおむね14万円及び19万円で販売する。 A本件液晶テレビの販売台数には制限を設 けない。 本件液晶テレビをキャンペーンの対象にしたのは, Aが有力市場調査会社Dに依頼して 行ったアンケート調査により, 消費者が購入したいとする家電製品中トップにあったことから, 消費者にアピールすると考えたためである。 Aは, 本件液晶テレビを4社から直接仕入れているが, このキャンペーンに際して4社と個別 に仕入価格の交渉をした結果, 4社からそれぞれ毎月1万台以上を仕入れることを条件に, 1台 当たりの仕入価格を37インチテレビについては15万円, 40インチテレビについては18万 円で購入することに成功している。 他の家電量販店及びすべての家電専門店は, Aのような大量 購入ができないために, 本件液晶テレビの仕入価格は37インチテレビでは16万円, 40イン チテレビでは21万円をいずれも上回るものと見込まれる。 なお, Aにおいて, 本件液晶テレビの販売に係る経費及び総務部門や店舗全体を運営し管理す るために要する経費等の諸費用は, テレビ1台当たり2万円である。 したがって, Aの本件液晶 テレビの総販売原価, すなわちテレビの仕入価格にこの諸費用2万円を加えた金額は, 37イン チテレビについては17万円, 40インチテレビについては20万円である。 〔設 問〕 弁護士甲は, Aの前記方針が独占禁止法に違反しないかどうかAから相談を受けた。 甲は弁護 士としていかなる回答をすべきか述べなさい。 なお, 解答するに当たり付加的な事情を考慮すべ き場合には, そのような事情を補って述べなさい。 - 13 - - 14 - 論文式試験問題集[知的財産法] - 15 - [知的財産法] 〔第1問〕(配点:50) A社とB社は, 新型インフルエンザの感染の有無を検査する試薬を共同開発することとし, A社 の従業員甲とB社の従業員乙が, 共同研究を行い, α試薬を発明した。 A社の勤務規則には, 従業 員が発明をするに至った行為がその職務に属するときは, 当該発明についての特許を受ける権利は A社が承継する旨の定めがあった。 また, B社の勤務規則にも, これと同様の定めがあった。 以上の事実関係を前提に, 以下の各設問に答えよ。 ただし, 各設問に記載した追加的な事実関係 は別個の独立したものである。 〔設問1〕 甲は, α試薬の発明について一緒に特許出願をしようと乙に持ちかけたところ, 乙は, 乙の特 許を受ける権利はB社に帰属するので, 特許出願はB社で行いたいと述べた。 しかし, 甲が甲及 び乙の名義で特許出願をすることに固執した結果, 甲と乙が共同でα試薬の発明について特許出 願をした。 1.A社及びB社は, 甲又は乙に対し, どのような請求をすることができるか。 また, 甲及び乙 が前記特許出願について特許権の設定登録を受けた場合はどうか。 2.甲及び乙が前記特許出願について特許権の設定登録を受けた後, B社がα試薬の製造販売を 開始した場合, 甲は, B社に対し, α試薬の製造販売の差止め及び損害賠償を請求することが できるか。 〔設問2〕 甲は, α試薬について, 共同研究に関与していなかったA社の同僚の丙に評価を求めたところ, 丙は, 無断で, α試薬の発明を自己の単独発明として特許出願をした。 甲, 乙, A社又はB社は, 丙に対し, どのような請求をすることができるか。 また, 丙が前記 特許出願について特許権の設定登録を受けた場合はどうか。 α試薬の発明を自己の単独発明として特許出願をしたのが, 丙ではなく, 甲であった場合と対 比して論ぜよ。 - 16 - 〔第2問〕(配点:50) アニメーションのキャラクターデザイナーである甲は, 戯れに思い付いたキャラクターの容姿を 描いた絵画Aを作成した。 甲は, 絵画Aを友人である乙に見せたところ, 乙が欲しいと言ったので, 他人に譲渡しないこと及び他人に見せないことを条件に, 乙にこれを贈与した。 しかしながら, そ の後, 乙は, 借金に困り, その返済のために絵画Aを売ろうと考え, 知り合い十数名にこれを見せ た。 そして, 乙は, そのうちの丙に絵画Aを売却した。 丙は, 絵画Aに描かれたキャラクターが気 に入り, そのキャラクターの彫刻Bを作成し, これを自らが経営する玩具店の店内に置いた。 その 際, 丙は, 乙が絵画Aは自分が作成したと言ったことを信じ, 乙の承諾のみを受けた。 丁市の市民 公園の担当者は, 子供が喜びそうな彫刻を探していたところ, 偶然に丙の玩具店において彫刻Bを 見て, これが適当であると考えた。 そこで, 丁市は, 丙から彫刻Bを購入し, その市民公園内にこ れを設置した。 映画製作者である戊は, 丁市を中心にストーリーが展開する映画Cを製作し, その DVDを販売している。 映画Cのラストシーン約1分間は, 丁市の市民公園を舞台としたもので, そのうちの10秒程度に彫刻Bが写っている。 以上の事実関係を前提に, 以下の各設問に答えよ。 〔設問1〕 1.甲は, 乙に対して, 著作権法上どのような請求をすることができるか。 2.甲は, 丙に対して, 著作権法上どのような請求をすることができるか。 〔設問2〕 1.甲は, 映画CのDVDを販売する戊の行為が甲の有する著作権を侵害することを理由とし て, 戊に対して, その行為の差止めを請求するために, どのような主張をすべきか。 2.前記1の甲の主張に対する戊の反論として, どのようなものが考えられるか。 3.前記2の戊の反論に対する甲の再反論として, どのようなものが考えられるか。 - 17 - - 18 - 論文式試験問題集[労 - 19 - 働 法] [労 働 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の事例について, 法的な問題とそれに対する考えを述べた上で, XのY社に対する法的地位, 権利関係について論じなさい(金銭債権に関して述べる場合は, 平成21年5月31日を基準とし て, 金額を明示すること。 遅延損害金は考えなくてよい。 )。 なお, Y社の就業規則(抜粋)は, 後記のとおりである。 【事 例】 Xは, 求人雑誌で衣料品等の販売を全国に展開するY社の販売員募集の広告を見て応募し, 平 成13年4月に期間の定めなく採用された。 Xは, 希望どおり自宅から徒歩15分のM店で販売 員をすることになったが, 雇用契約締結の際に, 勤務場所や従事する業務について特別の話はな く, 雇用契約書にもその記載はなかった。 Xの給与は, 基本給だけであり, 平成20年4月以降 は月額30万円で, 当月分が毎月25日に支払われていた。 Y社では, M店を含めて, 就業規則 は周知されていた。 ところが, M店店長(以下「店長」という。 )は, 平成20年12月20日, Xに対し, 突然, 平成21年2月1日付けでの本社総務課勤務を命じた。 Xは, 自宅療養中で介護が必要な父親と 小学校低学年の子1人の3人暮らしであり, 毎年4月と10月に行われる店長との面談で, 家族 の状況を話し, 勤務店を変わることはできないことを伝えていた。 Xが「本社は自宅から片道2 時間半以上掛かり, 通勤は不可能です。 病気の父を抱え, 家族が転居することはできないし, 父 と子を残して単身で転居することもできません。 それに, これまで, 希望していないのに販売員 が異動になった例は, 聞いたことがありません。 」と話すと, 店長は, 「会社の方針で, 人件費削 減のために販売員は期間雇用のパート従業員とすることになり, 販売員の中で給与が高いXを最 初に異動対象とした。 本社での具体的な仕事は, まだ決まっていない。 給与は, 通勤手当が付く ほかは変わらない。 本社勤務ができないなら, 辞めてもらうしかない。 」と話した。 Xは, 異動に納得ができず, 平成20年12月20日以降, 店長に対して, 家庭の事情などを 繰り返し伝えて異動に応じられないと話したが, 店長は, 異動に従業員の同意はいらないと言っ て聞き入れなかった。 Xは, 平成21年2月1日にM店に行ったところ, 異動辞令が出ていると 言われ, 店内に入れず, その後, 出社しなかった。 Xには, Y社から2度電話があり, 本社に出 社するように言われたため, M店なら勤務すると答えたが, 「本社以外に勤務場所はない, M店で は働かせない。 」と告げられた。 2月25日には給与が振り込まれず, 2月27日に, 3月1日付 けで解雇するとの通知書が送られてきた。 Xは, すぐに店長に電話して, 解雇は認められないと 抗議をしたところ, 3月10日に, Xの銀行口座に30万円が送金されるとともに, 同日, Y社 から, 「解雇理由は無断欠勤(就業規則第37条第1号, 第5号)であり, 送金したのは解雇予告 手当である。 」と記載された文書と, 退職金の支給のための書類が送付されてきた。 Xは, Y社に 電話して解雇は認めないと伝え, 退職金支給書類を返送しなかった。 Y社の退職金規程によれば, Xが3月に退職した場合の退職金は105万円であった。 なお, Y社は, Xの後任として, 2月1日からパート従業員1名を採用している。 また, Xは, 生活のため, 4月1日から近所のコンビニエンスストアでアルバイトをし, 4月と5月に各14 万円の収入を得ているが, 元のようにM店で働きたいと思っている。 【就業規則(抜粋)】 (転勤等) 第11条 会社は, 従業員に対して, 業務の都合により, 就業の場所又は従事する業務の変更を 命じることができる。 - 20 - (解雇) 第37条 @ 職務遂行能力が不十分又は勤務態度が不良でその職務に不適格であるとき。 A〜C D 会社は, 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは, 解雇する。 (略) 前各号に準じる事由があるとき。 - 21 - 〔第2問〕(配点:50) 次の設例を読んで, 後記の設問に答えなさい。 【設 1 例】 電機メーカーY社は, 主力商品である半導体製品の売上不振によって業績が悪化したため, 平成20年7月, 主力工場であるA工場の生産縮小を決定した。 そして, Y社は, 同年8月 18日, 期間1年の有期労働契約で雇用され, 比較的単純な作業に従事する期間従業員である X1ら100名の雇用を, 期間の満了時期にかかわらず, 同年9月末日限りで打ち切る方針を固 め, 全員に通知した。 A工場における平成20年度上半期の生産高は, それ以前に比べて著し く落ち込み, その後も回復を見込めない情勢にあった。 しかし, X1ら期間従業員がこの打切りに強く反発したため, Y社は雇用打切りの方針をいっ たん断念し, 同年9月30日付けで労働契約を合意解約するとともに, 同年10月1日付けで 6か月の期間を定めた労働契約を期間従業員全員との間で新たに締結した。 その内容は, 「本労 働契約の期間は, 平成20年10月1日から平成21年3月31日までとし, 期間従業員は, 3月31日をもって退職するものとする。 」というものであった。 X1らは不満を抱いたものの, 当面の生活を重視して契約締結に応じた。 また, Y社は, A工場の生産体制を縮小する中で, 従業員の雇用を確保するため, 平成20年10月1日以降, 正社員及び期間従業員の労働時間 を1日8時間から7時間に短縮した。 2 X1ら期間従業員は, 前記労働契約によって就労を継続したが, A工場の業績は回復せず, Y 社全体としても業績が悪化したので(平成20年度下半期の売上高は, 前年度比で3割近く減 少し, 経常損失を生じる見込みである。 ), Y社は, 平成21年2月20日, 期間従業員100 名全員について, 同年3月31日をもって雇用を終了することを決定し, 通知した。 通知に際 しては, A工場長がX1ら期間従業員全員を集めて2回にわたって説明会を開き, 雇用打切りに 至る経緯や理由について説明を行った。 これに対して, 100名の期間従業員のうち60名は雇用打切りに応じたが, X1〜X40の 40名は納得せず, Y社に対して労働契約上の地位の確認を求める訴えを提起することを考え ている。 一方, Y社は, 平成21年4月1日以降, X1ら40名の就労を拒否している。 X1ら40名は, 期間1年の有期労働契約を6回ないし10回更新して就労してきたものであ る。 契約更新に際しては, その都度契約書を取り交わしてきたものの, 従来は更新を拒絶され た事例はない。 X1らの業務は, ライン製造における補助作業であり, 正社員のような熟練作業 ではないが, 半導体製造にとって不可欠の業務であり, 時間外労働に従事することもあった。 なお, 平成21年2月20日の期間従業員への雇用打切り通知当時, Y社には約3200億円 の内部留保があり, 雇用を打ち切らなくても, 直ちに資産状況が債務超過に陥るという状況に あったわけではない。 雇用打切りに際しては, 正社員の労働時間の更なる短縮や, Y社役員, 管理職及び正社員の給与・賞与カット等の措置は講じられていない。 3 Y社正社員の約80パーセントを組織するN組合は, 当初は期間従業員の人員整理を静観し ていたが, 同じ労働者として放置しておくべきではないという声が高まり, また, Y社が第2 段階の人員削減として正社員の人員整理を計画しているとの情報を得て危機感を強め, 平成 21年4月15日, Y社との間で団体交渉を行った。 そして, X1ら期間従業員のうち雇用期間 の長い者25名を再雇用するよう申し入れるとともに, N組合員ら正社員の人員整理計画の有 無について明らかにするよう求めた。 これに対して, Y社は, 「期間従業員の雇用問題は, N組 合との団交事項ではない。 正社員の人員整理は6月から実施する予定であるが, 詳細が確定し た段階で交渉に応ずる。 」と回答して交渉を1回で打ち切り, その後は交渉に応じていない。 そこで, N組合は, 期間従業員問題の打開を図り, また, Y社が正社員の人員整理を予定し ていることに抗議するため, 平成21年4月30日, 組合規約所定の手続を経て, A工場にお - 22 - けるストライキの実施を決定し, N組合A工場支部に指示した。 この指示を受けて, A工場に 勤務するN組合員165名のうち, 主要製造ラインの班長職組合員及びコンピュータ制御部門 に所属する組合員計45名は, 5月10日, 全日ストライキを決行した。 この結果, 同日のA 工場の生産機能は完全に停止し, 約1200万円の損害が発生した。 その際, ストライキに参 加しないN組合員らは, 従事すべき業務がなくなったが, 終日, 工場内に滞留した。 なお, Y 社は, A工場に勤務する非組合員については, 5月10日の勤務を免除した上, 当日分の賃金 を支給した。 4 Y社は, A工場のN組合員ら165名全員について5月10日分の賃金(基本給)を5月賃 金からカットするとともに, 6月30日, ストライキを計画・指導したN組合執行委員長R及 び書記長Sに対し, 「故意に会社業務を妨害したとき」とのY社就業規則の懲戒事由に基づき, Rを出勤停止10日間, Sをけん責の懲戒処分に付した。 同就業規則には, 懲戒手続について, 「会社とN組合によって組織する懲戒委員会を開催し, 事実調査及び処分について協議する。 」 との規定がある。 懲戒委員会では, R及びSを呼んでその言い分を聴いた上, Y社とN組合副 執行委員長らが2回にわたって協議したものの, 決裂した。 〔設 問〕 1.Y社がX1らに対して行った雇用打切りの法的評価について論じなさい。 2.Y社がRとSに対して行った懲戒処分及びN組合員ら165名に対して行った賃金カットの 効力について論じなさい。 - 23 - - 24 - 論文式試験問題集[環 - 25 - 境 法] [環 境 法] 〔第1問〕(配点:50) 環境負荷物質を大気中に排出することを抑制する手法について, 以下の設問に答えなさい。 〔設問1〕 ばい煙と有害大気汚染物質についての対応の仕方を比較し, それぞれの考え方を説明するとと もに, なぜ対応の仕方にそのような相違があるかを論じなさい。 解答に当たっては資料1も参照 すること。 【資料1】 ○ 大気汚染防止法(昭和43年6月10日法律第97号)附則(抄) 1〜8 (略) (指定物質抑制基準) 9 環境大臣は, 当分の間, 有害大気汚染物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が 生ずることを防止するために必要があると認めるときは, 有害大気汚染物質のうち人の健康 に係る被害を防止するためその排出又は飛散を早急に抑制しなければならないもので政令で 定めるもの(以下「指定物質」という。 )を大気中に排出し, 又は飛散させる施設(工場又は 事業場に設置されるものに限る。 )で政令で定めるもの(以下「指定物質排出施設」という。 ) について, 指定物質の種類及び指定物質排出施設の種類ごとに排出又は飛散の抑制に関する 基準(以下「指定物質抑制基準」という。 )を定め, これを公表するものとする。 (勧告) 10 都道府県知事は, 指定物質抑制基準が定められた場合において, 当該都道府県の区域に おいて指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止するために 必要があると認めるときは, 指定物質排出施設を設置している者に対し, 指定物質抑制基準 を勘案して, 指定物質排出施設からの指定物質の排出又は飛散の抑制について必要な勧告を することができる。 (報告) 11 都道府県知事は, 前項の勧告をするために必要な限度において, 同項に規定する者に対 し, 指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができる。 12 環境大臣は, 指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止 するため緊急の必要があると認めるときは, 都道府県知事又は第31条第1項の政令で定め る市の長に対し, 第10項の規定による勧告に関し, 必要な指示を行うことができる。 13 環境大臣は, 前項の指示をするために必要な限度において, 指定物質排出施設を設置し ている者に対し, 指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができ る。 〔設問2〕 環境基本法第22条は, 規制的手法とは異なった手法について規定している。 この手法を国内 の二酸化炭素排出削減に用いることが有効であるとの議論がある。 これについて, 資料2を参照 しつつ, 以下の小問に答えなさい。 前記議論について, その理由は何か。 ばい煙と比較しつつ, 二酸化炭素の特質に基づいて答 えなさい。 前記議論について, 具体的にあり得る措置を複数挙げた上, それぞれの長所, 短所を述べな さい。 - 26 - 【資料2】 ○ 京都議定書目標達成計画(平成17年4月28日策定, 平成18年7月11日一部改定, 平 成20年3月28日全部改定)(抄) 第1章 第2節 地球温暖化対策の推進に関する基本的方向 地球温暖化対策の基本的考え方 1.環境と経済の両立(略) 2.革新的技術の開発とそれを中核とする低炭素社会づくり 京都議定書の約束を達成するとともに, 更に「低炭素社会」に向けて長期的・継続的な排 出削減を進めるには, 究極的には化石燃料への依存を減らすことが必要である。 環境と経済の両立を図りつつ, これらの目標を達成するため, 既に効果を上げている対策 や既存技術の普及を加速することと併せて, 省エネルギー, 再生可能エネルギー, 原子力等 の環境・エネルギー技術に磨きをかけ, 創造的な技術革新を図り, 効率的な機器や先進的な システムの普及を図るとともに, ライフスタイル, 都市や交通の在り方など社会の仕組みを 根本から変えていくことで, 世界をリードする環境立国を目指す。 3.全ての主体の参加・連携の促進とそのための透明性の確保, 情報の共有 地球温暖化問題は, 経済社会活動, 地域社会, 国民生活全般に深く関わることから, 国, 地方公共団体, 事業者, 国民といった全ての主体が参加・連携して取り組むことが必要であ る。 このため, 地球温暖化対策の進捗状況に関する情報を積極的に提供・共有することを通じ て各主体の対策・施策への積極的な参加や各主体間の連携の強化を促進する。 また, 深刻さを増す地球温暖化問題に関する知見や, 6%削減約束の達成のために格段の 努力を必要とする具体的な行動, 及び一人一人が何をすべきかについての情報を, なるべく 目に見える形で伝わるよう, 積極的に提供・共有し, 広報普及活動を行い, 家庭や企業にお ける意識の改革と行動の喚起につなげる。 4.多様な政策手段の活用 分野ごとの実情をきめ細かく踏まえて, 削減余地を最大限発現し, あらゆる政策手段を総 動員して, 効果的かつ効率的な温室効果ガスの抑制等を図るため, 各主体間の費用負担の公 平性に配慮しつつ, 自主的手法, 規制的手法, 経済的手法, 情報的手法など多様な政策手段 を, その特徴を活かしながら, 有効に活用する。 また, 幅広い排出抑制効果を確保するため, コスト制約を克服する技術開発・対策導入を 誘導するような経済的手法を活用したインセンティブ付与型施策を重視する。 5.評価・見直しプロセス(PDCA)の重視(略) 6.地球温暖化対策の国際的連携の確保(略) - 27 - 〔第2問〕(配点:50) A県にあるB国定公園は, 美しい山岳に恵まれた自然公園である。 B国定公園にはカタクリ(自 然公園法第13条第3項第10号の指定を受けている。 )の群落があり, 近隣に住む甲は, そのカタ クリの群落の保護・生育を図ることを目的とする団体(以下「本件団体」という。 )を設立して代表 者となり, 会則も作成して, これまで約30名の地域住民の会員とともに, 10年以上にわたって, そのカタクリの群落の生育調査を行い, 年数回の一般向けの観察会や保護・生育のための提言を行 ってきた。 ところで, 約3年前から, B国定公園の特別保護地区内の遊歩道沿いにある前記カタクリの群落 に近接した空き地に, 乙が多数回にわたって数百本もの廃タイヤを投棄し, 廃タイヤが野積みされ た状態になっている。 そして約1年前から, 前記野積みされた廃タイヤからの自然発火により, 頻 繁に「ぼや」が発生したため, 甲ら本件団体のメンバーは, 前記野積みされた廃タイヤの処理につ いて, A県に対し, 早急に対策を講じるよう何度も交渉をしていた(@)。 その後, 前記野積みされた廃タイヤの自然発火により大規模な火災が発生し, B国定公園におい てA県が公園事業として設置していたビジターセンターが焼失するとともに, 前記カタクリの群落 も焼失した(A)。 この場合について, 以下の設問に答えなさい。 〔設問1〕 @の段階及びA以後の段階において, それぞれA県知事は乙に対し, 行政上, どのような対応 措置を採ることができるか。 ただし, 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく措置は除くも のとする。 〔設問2〕 @の段階で, 本件団体が乙に対し, 前記野積みされた廃タイヤの撤去を求める裁判上の請求を したときに, その請求は認められるか。 予想される当事者の法的主張とそれに対する相手方当事 者の反論とを指摘しながら論じなさい。 - 28 - 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)] - 29 - [国際関係法(公法系)] 〔第1問〕(配点:50) 隣接するX国とY国の間では, Y国が実効的な支配を行っているα地方の領有権が長く争われて きた。 最近になってY国がα地方領有の正当性を声高に主張し, 同時にα地方に駐留する軍隊を大 幅に増強したために, 両国の関係が極度に悪化し, X国とα地方を区切る事実上の境界線付近で小 規模な軍事衝突も幾つか起こった。 X国は, Y国のこうした行為に反発して, 自国内にいるY国民の出国を禁止すると同時に, 彼ら の資産を没収するという措置を採った。 それに反発したY国は, Y国内のX国民の預金を凍結し, さらに, X国及びY国(以下「XY両国」という。 )が加盟する地域機関であるA連合の設立条約に 基づいて, A連合の「平和安全保障理事会」を緊急招集した。 開催された平和安全保障理事会は, X国代表反対のまま3分の2の多数を得て(決議採択のための定足数及び採択要件を満たしてい る。 ), A連合設立条約第4条に基づいて, X国の措置を中止させるためにA連合加盟国に必要な 手段を採ることを授権する旨の決議を採択した。 その直後, Y国はα地方からX国内(X国が実効 的支配を行い, Y国もX国領土と承認している地域)に軍隊を侵攻させ, Y国民の出国とその資産 の回復を要求してX国内の一部の占領を続けた。 XY両国は国際連合加盟国であり, またXY両国は共に, 「国際司法裁判所規程第36条第2項の 規定に従い, この宣言の日付以後の事態又は事実に関して同日以後に発生するすべての紛争であっ て他の平和的解決方法によって解決されないものについて, 国際司法裁判所の管轄を, 同一の義務 を受諾する他の国に対する関係において, かつ, 相互条件で, 当然にかつ特別の合意なしに義務的 であると認めることを宣言する光栄を有します。 」との宣言を, 1960年代に国際連合事務総長に あてて行っている。 また, A連合設立条約第4条は, 「重大な状況において, 平和安全保障理事会の決定に従って, 加盟国に介入する連合の権利」を規定し, 第5条は, 平和安全保障理事会の権限として, 「設立条 約第4条に従って, 連合のために, 重大な状況において, 連合が加盟国に介入する方式を承認す ること」を挙げる。 〔設 問〕 Y国が行ったX国民の預金凍結措置を法的に評価しなさい。 Y国が行った軍事的侵攻を, A連合の対応も含めて法的に評価しなさい。 Y国によるX国領土の一部占領後, 他の多くの国際連合加盟国が事態の深刻性に懸念を持っ た。 これら加盟国が, 国際連合を利用していかなる措置を求めることができるかについて説明 しなさい。 領土の一部を占領されたX国は, Y国の軍事占領を止めさせるために, 国際司法裁判所をど のように利用することができるか。 管轄権の基礎も含めて説明しなさい。 - 30 - 〔第2問〕(配点:50) A国の非政府船舶Xが調査捕鯨に向かうために公海を航行していたところ, B国の非政府船舶Y とZが, 調査捕鯨に抗議する目的で, A国船舶Xに体当たりした。 A国船舶Xでは, 乗組員の数名 が重傷を負った。 A国の政府船舶Kが近くの公海上に居合わせたため, 救助作業に従事するととも に, B国船舶YとZにA国の港に入港するように要請したところ, B国船舶Yは, 自発的にA国の 港に入港した。 B国船舶Zは, その後も, 公海上でA国船舶Xに対する航行妨害や軽微な体当たり を継続した。 A国もB国も国際連合海洋法条約の当事国である。 A国の刑法では, 傷害罪について は, 「A国外においてA国民に対して傷害の罪を犯した者」にもA国刑法の適用があり, それにより 処罰されると規定している。 A国は, A国刑法を適用して, B国船舶Yの船長であるB国人甲を傷 害罪で処罰した。 〔設問1〕 A国がA国刑法を適用してB国船舶Yの船長であるB国人甲を処罰した点について, 国際法上 どのように評価されるかを, 次の順序で論じなさい。 国際法は, 国家が管轄権を行使する根拠として何を認めているか, それに関する国際法の原 則を明らかにしなさい。 A国は, A国の港に入港したB国船舶Yの船長甲にA国刑法を適用して傷害罪で処罰したが, A国が公海上で体当たりを行ったB国船舶Yの船長B国人甲の行為について傷害罪で処罰する ことができると考えたことについて, 国際法上の根拠に照らしてどのように評価されるか論じ なさい。 〔設問2〕 A国の政府船舶Kが, A国船舶Xに対する航行妨害や軽微な体当たりを繰り返すB国船舶Zに 対して, その公海上で停船命令を発して強制的にこれを停止させて乗船検査を行うなどの執行措 置を採る場合を想定して, 次の順序で論じなさい。 国際連合海洋法条約の規定する公海制度の根本をなす原則(管轄権行使に関する原則を含 む。 )は何かを明らかにしなさい。 A国の政府船舶Kによる, 公海上にあるB国船舶Zに対する乗船検査などの執行措置につい て, 国際連合海洋法条約の根拠に照らして国際法上どのように評価されるか論じなさい。 - 31 - - 32 - 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)] - 33 - [国際関係法(私法系)] 〔第1問〕(配点:50) 日本人男Xと甲国人女Yは日本において婚姻し, 甲国において婚姻生活を送っていたが, 婚姻後 しばらくして両者の性格上の相違からその婚姻関係は破たんした。 Xは日本に戻り, 現在XとYは それぞれ日本と甲国に居住している。 両者がそれぞれの本国において別居を始めて5年を経過した ころ, Yは甲国において他の日本人男Aと親しくなり, 甲国におけるAとの婚姻生活を望むに至っ た。 そこで, Xとの離婚を決意したYは甲国の裁判所に離婚訴訟を提起した。 訴状は, 日本と甲国 とが締結している司法共助の取決めに従い適法にXに送達された。 Xは, 急きょ, 甲国の弁護士資 格を有する者を代理人として選任し, 甲国裁判所の国際裁判管轄を争ったが, 甲国裁判所はその管 轄を肯定した。 そして同裁判所は, 「12か月以上継続した別居」を離婚原因とする甲国の規定を適 用して, XとYとを離婚する旨の判決を言い渡した。 判決確定後1か月して, YとAは婚姻しよう としている。 XとYの間に子はない。 この事例について, 甲国の国際私法からの反致はないものとして, 以下 の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.甲国裁判所の離婚判決の効力を日本で承認するための要件である国際裁判管轄は甲国に認め られるか。 2.法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)の下におけるYとAの婚姻の実質的成 立要件につき, 次の問いに答えなさい。 甲国裁判所の判決が日本において効力を有し, かつ, Yの本国法である甲国法は再婚禁止 期間の制度を現在では廃止しているとする。 離婚判決の確定後6か月を経過することなく挙 行されるYとAの婚姻は有効に成立するか。 甲国裁判所の判決が日本において効力を有せず, かつ, 重婚を禁止する甲国の規定は「配 偶者のある者が重ねてした婚姻は無効とする」と定めているとして, YとAの婚姻の成立の 有効性について論じなさい。 3.婚姻の実質的成立要件が満たされていると仮定して, Aは, Yとの婚姻を挙行するにつき, @甲国の機関の関与の下に甲国法に従い婚姻を挙行した後に, 甲国機関の発行する婚姻証明書 を甲国に駐在する日本の領事に提出する方法又はA日本法の定める婚姻の届書を甲国に駐在す る日本の領事に提出する方法のいずれを採るべきか。 - 34 - 〔第2問〕(配点:50) Xは, 日本のS市に本店を置く食品の加工・販売を業とする株式会社であり, 日本以外には営業 所等を有さない。 Xは多くの国から食材を輸入しているが, 新たに甲国から冷凍食材の輸入をした いと考えている。 Yは, 甲国法に従い設立された会社であって, 甲国に本店を有し, 専ら甲国にお いて食材の加工・販売を行っており, 甲国以外には財産や営業所等を有さない。 XがYに取引の開 始について打診したところ, YはYのCEO(chief executive officer, 最高経営責任者)である BをXの本社に赴かせ, BはXの代表取締役であるAに対して, Yを売主, Xを買主とする冷凍食 材に関する売買契約(以下「本件契約」という。 )を締結することを提案した。 〔設 問〕 1.BがYを代表して本件契約を締結することができるか否かは, いずれの国の法で判断すべき か。 2.Bに本件契約の締結権限があるとして, 次の問いに答えなさい。 Xは, 外国の会社と契約を締結する場合には, 通常, 契約書に「当事者はXの本店所在地 を管轄する地方裁判所の専属的裁判管轄に服することを合意する」旨の条項を入れている。 しかし, Bは甲国の裁判所の専属的裁判管轄に服することに合意するようAに求めている。 Bの主張を受け入れた場合の利点と不利な点を, Xの立場に立って説明しなさい。 AとBは日本の裁判所の専属的裁判管轄に服することに合意したが, 本件契約の準拠法に ついては, Aは日本法を, Bは甲国法をそれぞれ主張して最後まで譲らなかった。 そのため, AとBは, 当事者間で準拠法の合意がないまま, Xの本店で本件契約を締結した。 本件契約 にはいずれの国の法が適用されるか。 3.Yは, Xに対する本件契約上の代金債権を乙国の金融機関であるT(乙国法に従い設立され た会社であって, 乙国に本店を有し, 日本を含む世界各国に支店を有する。 )に譲渡した。 Tが Xに対して日本の裁判所で本件契約上の代金債権の弁済を求めたとすれば, TのXに対する対 抗要件は, いずれの国の法で判断されるか。 本件契約の準拠法が日本法であるとし, かつ, Y とTとの債権譲渡契約の準拠法が甲国法であるとして答えなさい。 - 35 -