論文式試験問題集[公法系科目] 1 [公法系科目] 〔第1問〕(配点:100) たばこ専売制度が廃止されたのに伴い,1984年に「我が国たばこ産業の健全な発展を図り, もって財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的」として,たばこ事業 法が制定された。その第39条は,製造たばこに「消費者に対し製造たばこの消費と健康との関係 に関して注意を促すための大蔵省令で定める文言を,大蔵省令で定めるところにより,表示しなけ ればならない」と規定した。それを受けて,1985年に制定されたたばこ事業法施行規則第36 条は, 「注意表示」文を「健康のため吸いすぎに注意しましょう」と定めた。1989年の同施行規 則の改正により,「注意表示」文は,「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意 しましょう」と改められた。 2000年に厚生省(当時)事務次官通知等により開始された国民健康づくり運動としての「健 康日本21」は,たばこの危険性に関する十分な知識を得た上で選択することができるよう,情報 の提供を強化すること等を求めている。2002年には,学校,劇場,官公庁施設など多数の者が 利用する施設の管理者は,その利用者について受動喫煙を防止するために「必要な措置を講ずるよ うに努めなければならない」(第25条)と規定する健康増進法が制定された。 たばこによる健康,社会及び環境に与える影響に対する取組は,1970年以来WHO(世界保 健機関)によっても行われてきている。2003年5月,WHO第56回総会は,喫煙による健康 被害の防止を目的として,たばこの需要の減少に関する措置等への国際協力を定める「たばこの規 制に関する世界保健機関枠組条約」を全会一致で採択した。同条約の締約国は,条約の発効から3 年以内に,@たばこ製品の包装及びラベルに,たばこ使用による有害な影響を記述する健康に関す る警告を付し,かつ,Aその警告文の大きさは主たる表示面の50%以上を占めるべきであり,主 たる表示面の30%を下回るものであってはならない等,規制の実施措置を採るよう求められてい る(同条約第11条)。日本政府は,2004年3月に同条約に署名し,第159回国会における承 認を経て,同年6月に受諾書を寄託した。 「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の発効は2005年2月27日であるが,内容 を先取りして対応した国も多い。我が国も,2003年11月にたばこ事業法施行規則第36条を 改正した。それによって,同施行規則別表第一及び第二に掲げる合計8つの,従前よりは具体的な 内容の「注意表示」文(注)の中から選んだものを,たばこ製品の容器包装の主要な面の面積の30 %以上の大きさで記載することが義務付けられた。 (注) 「注意表示」文の一例: 「喫煙は,あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学 的な推計によると,喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から 4倍高くなります。」 なお,諸外国の中には, 「喫煙は人を殺す」等のより直接的な表現を用いた警告文や肺の 病巣等の写真が入った警告文の記載を義務付けている国もある。 その後,200*年に成年者を対象として実施された「喫煙と健康問題に関する実態調査」では, 全回答者の84.5%が喫煙と肺がんの関係を認識していたが,心臓病との関係については40. 5%,脳卒中との関係については35.1%にとどまっている。さらに,たばこに依存性があるこ とを知っていた人は51.8%である。 そこで,これまでの経緯のほか,この調査結果も踏まえて,同年,製造たばこの容器包装への「注 意表示」についての関連規定を廃止し,独立した法律である「製造たばこの警告表示に関する法律」 (以下「警告表示法」という。)が制定された(資料1及び2参照)。 警告表示法は公布後直ちに施行されることとされており,同法施行前に製造されたたばこ製品に 関する特段の経過措置は設けられていない。 警告表示法施行後1年間で,国内におけるたばこ製品の販売量は,直近3年間の平均に比べて約 2 30%減少した。喫煙者に対するアンケート等によって,販売量減少の主たる原因は,新たに義務 付けられた警告文にあることが明らかになっている。 〔設 問〕 1. あなたがたばこ会社であるT社から依頼を受けた訴訟代理人であった場合(T社からの相談 内容については,資料3参照),損害を回復するためにどのような訴えを起こしますか。2つの 訴えを挙げなさい。そして,訴訟代理人として,警告表示法に対して憲法に基づいてどのよう な主張を行うか,述べなさい。 2. あなたが国側の代理人として請求の棄却を求める場合,上記の主張に対応して,憲法に基づ いてどのような主張を行うか,述べなさい。 3. 設問1及び2で提起された憲法上の争点について,あなた自身はどのように考えますか。あ なたと異なる考え方を批判しつつ,あなたの結論とその論拠を述べなさい。 資料1 製造たばこの警告表示に関する法律 (目的) 第1条 この法律は,たばこが健康に及ぼす重大な影響等にかんがみ,たばこを購買しようとする 者がたばこの健康に及ぼす危険性に関する十分な知識を得た上で選択することができるようにす ることによって,たばこによる疾病及び死亡を低減し,受動喫煙がもたらす害を排除若しくは減 少し,未成年者の喫煙を防止し,並びに喫煙によって生じる社会的費用を抑制することを目的と する。 (定義) 第2条 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 一 たばこ 二 製造たばこ タバコ属の植物をいう。 たばこの葉を原料の全部又は一部とし,喫煙用,かみ用又はかぎ用に供し得る 状態に製造されたものをいう。 三 会社 日本たばこ産業株式会社をいう。 四 特定販売業者 自ら輸入をした製造たばこの販売を業として行う者として,たばこ事業法に よる登録を受けた者をいう。 五 卸売販売業者 製造たばこの卸売販売(消費者に対する販売以外の販売をいう。)を業として 行う者として,たばこ事業法による登録を受けた者をいう。 六 小売販売業者 製造たばこの小売販売(消費者に対する販売をいう。)を業として行う者とし て,たばこ事業法による許可を受けた者をいう。 (警告文表示) 第3条 会社又は特定販売業者は,製造たばこを販売の用に供するために製造し,又は輸入した場 合には,当該製造たばこを販売する時までに,当該製造たばこの最小容器包装に,消費者に対し 製造たばこの消費と健康との関係に関して警告するため,第4条及び第5条で定めるところによ り,一般警告文及び特別警告文を表示しなければならない。 2 卸売販売業者又は小売販売業者は,前項の規定により製造たばこの最小容器包装に表示されて いる文言を消去し,又は変更してはならない。 3 会社又は特定販売業者は,第1項の規定に違反して製造たばこを販売してはならない。 4 卸売販売業者又は小売販売業者は,第1項の規定に違反して販売された製造たばこを販売し, 又は販売の目的で貯蔵してはならない。第2項の規定に違反して同項の文言が消去され,又は変 更された製造たばこについても,同様とする。 3 (一般警告文) 第4条 前条第1項に定める一般警告文は, 「喫煙は,あなた自身と周りの人に深刻な害を与える」 とする。 2 一般警告文は,製造たばこの最小容器包装の面のうち側面(次条第2項に定める面,上面及び 底面以外の面をいう。)に,かつ,相対する両面に,読みやすいよう,印刷し又はラベルを貼る方 法により表示されなければならない。 3 一般警告文は,太い黒枠で囲わなければならない。太い黒枠を含めたその記載の大きさは,そ の表示面の50%の面積を占めなければならない。 (特別警告文) 第5条 第3条第1項の定めにより製造たばこの最小容器包装に表示する特別警告文の文言は,次 の(ア)から(オ)までの中から異なる2種のものを選択して表示するものとし,一定期間毎に選択 を変えることにより,それぞれの文言を表示した最小容器包装の数が,年間を通じて,おおむね 均等になるようにしなければならない。 2 (ア) 喫煙者は,早死にする。 (イ) 喫煙は,致命的な肺がんを引き起こす。 (ウ) 喫煙は,動脈を詰まらせ,心臓病と脳卒中の原因となる。 (エ) 妊娠時の喫煙は,胎児に害を与える。 (オ) 喫煙は,非常に依存性が高い。吸い始めてはいけない。 前項により選択した2種類の特別警告文は,その1を,製造たばこの最小容器包装の面のうち 最大面積を有する面に,その2を,これと相対する面に,それぞれ,読みやすいよう,印刷し又 はラベルを貼る方法により表示されなければならない。 3 特別警告文は,太い黒枠で囲わなければならない。太い黒枠を含めたその記載の大きさは,そ の表示面の50%の面積を占めなければならない。 (成分の表示) 第6条 会社又は特定販売業者は,厚生労働大臣の定める方法により測定したたばこ煙中に含まれ るタール量及びニコチン量を,製造たばこの最小容器包装の面(上面及び底面を除く。)の上部に, かつ,相対する両面に,読みやすいよう,印刷又はラベルを貼る方法により表示しなければなら ない。 2 前項に規定する成分量の表示は,太い黒枠で囲わなければならない。太い黒枠を含めたその記 載の大きさは,その表示面の15%の面積を占めなければならない。 (報告) 第7条 厚生労働大臣は,会社,特定販売業者,卸売販売業者又は小売販売業者(以下本条及び次 条において「会社等」という。)が,前4条の各規定を遵守しているかどうかを確認するため,会 社等に対して,必要な報告を求めることができる。 (立入検査等) 第8条 厚生労働大臣は,会社等が第3条から第6条までの各規定を遵守しているかどうかを確認 するために必要があると認めるときは,その職員に,会社等の製造所,営業所,事務所その他の 事業場に立ち入り,帳簿,書類その他の物件を検査させ,又は関係者に質問させることができる。 2 前項の規定により立入検査をする職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者に提示しな ければならない。 3 第1項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。 (回収・廃棄命令) 第9条 厚生労働大臣は,卸売販売業者又は小売販売業者が第3条第4項の規定に違反して製造た ばこを貯蔵していると認めるときは,会社又は特定販売業者に対し,当該製造たばこの回収又は 廃棄を命ずることができる。 4 (特定販売業者の営業停止) 第10条 厚生労働大臣は,特定販売業者が次の各号のいずれかに該当するときは,期間を定めて, その営業の停止を命ずることができる。 一 第3条第3項の規定に違反したとき 二 第9条による命令に違反したとき (卸売販売業者及び小売販売業者の営業停止) 第11条 厚生労働大臣は,卸売販売業者又は小売販売業者が,第3条第4項の規定に違反したと きは,期間を定めて,その営業の停止を命ずることができる。 (罰則) 第12条 第10条又は第11条の規定による営業の停止命令に違反した者は,100万円以下の 罰金に処する。 (罰則) 第13条 次の各号の一に該当する者は,50万円以下の罰金に処する。 一 第7条の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者 二 第8条の規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又は同条の規定による質問に関し 陳述をせず,若しくは虚偽の陳述をした者 (両罰規定) 第14条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人 の業務に関し,前2条の違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対して, 各本条の罰金刑を科する。 附 則 (施行期日) 第1条 この法律は,公布の日から施行する。 (たばこ事業法の一部改正) 第2条 たばこ事業法の一部を次のように改正する。 第39条 削除 5 資料2 20本入り紙巻きたばこの包装についてのイメージ図 (成分表示) タ ー ル ○○○g ニコチン ○○○g 〈側面表示〉 (一般警告文) 喫煙は、あなた自身と 周りの人に深刻な害を 与える。 (特別警告文) 〈裏面表示〉 喫煙者は、 早死にする。 (特別警告文) 喫煙は、非常に 依存性が高い。 吸い始めてはい けない。 資料3 相談要旨 [この「相談要旨」は,T社の法務部長らから聴取した相談内容を弁護士が書いたメモである。] 相 談 要 旨 相談日:20**年5月20日 相談者:T社(法務部長他2名) [T社は,アメリカ系のたばこ会社の日本法人で,日本国内において,たばこ事業法による登録を 受けて,たばこの輸入・販売をする特定販売業者。] 今回施行された警告表示法によって大きな被害を受けているので,この法律を裁判で問題にしたい と考えている。同じように問題視しているたばこ会社も,確認した限りでは他に5社があり,訴訟に なれば参加してくれる可能性がある。 今回の警告表示法は, 「喫煙者は,早死にする」, 「喫煙は,致命的な肺がんを引き起こす」など,従 6 前の警告文に比べてショッキングな警告文の記載を,決められた大きさで義務付けるというもの。し かも,経過措置がなかったので,大量の包装済みの自社在庫だけではなく,卸売業者や小売業者の営 業所,店舗,自動販売機内に残っていた包装済み在庫のすべてを回収して,それらの包装を全部作り 変えなければならなくなり,億単位の損害を被った。 商品のイメージも大幅にダウン。警告表示法が施行されてから,それ以前に比べて売上げも35% 減少している。深刻な経営問題。リストラによる従業員の人員整理の必要性。このままでは,倒産の 危険さえある。 法律が施行されてしまった以上,それには従って営業するしかない。それでもこの法律は明らかに 行き過ぎ。訴訟を提起して,全損害を回復したいし,ひいては警告表示法自体の違憲性も問いたい。 事実の問題として,喫煙によって健康被害(肺がん,心臓病,脳卒中,胎児への害など)のリスク は高まるかもしれないが,病気の要因は様々な環境因子によるもの。喫煙が唯一の原因ではない。警 告表示法第1条で規定されている,たばこによる疾病・死亡の低減,受動喫煙がもたらす害の排除・ 減少,未成年者の喫煙防止,そして喫煙の社会的費用の抑制という立法目的には異論はないが,その 目的を達成する規制手段の点で憲法上も問題があるのではないか。当社の見解と異なる警告文の掲載 を義務付けられることは,耐えられない。社会の健康増進のために必要だというなら,それは国家の 政策であり,たばこ事業者だけに犠牲を強いるのは筋が違うのではないか。 資料4 たばこと健康被害等に関するデータ [以下は,警告表示法の制定に当たって参考にされた資料である。] (1) たばことがん 発がん物質 たばこの煙には4000種以上の化学物質が含まれ,そのうち発がん性が分かっているもの だけでも43種類ある。 が ん 喫煙は単独で,がんの原因の約30%を占める。そして,がんで死亡する危険性が,喫煙者 の方が高まる。例えば,肺がんで死亡する危険性は,喫煙者は非喫煙者に比べて約2倍から4 倍高まる。 喫煙開始年齢と発がんリスク たばこを吸い始める年齢が若いほど,発がんのリスクが増加する。例えば,肺がんでは,2 0歳未満で喫煙を開始した場合の死亡率は,非喫煙者に比べて約5.5倍になる。 (2) 喫煙がもたらす,その他のリスク 心筋梗塞 喫煙者が心筋梗塞で死亡する危険性は,非喫煙者に比べて約1.7倍高くなる。 脳卒中 喫煙者が脳卒中で死亡する危険性は,非喫煙者に比べて約1.7倍高くなる。 肺気腫など呼吸器系への障害 喫煙により,慢性気管支炎,肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患の危険が増大し,肺機能検査に より閉塞性障害の頻度が高いことが観察されている。 ニコチン依存症 たばこを持続的に使用した後,たばこから完全に,又は相対的に離脱するときに生じる,種 々の性質と重症度を持つ一群の症状である。典型的には,たばこ摂取を強く渇望し,使用の制 御が困難になり,有害な影響があるにもかかわらず持続して使用してしまう。 7 その他 喫煙により,胃・十二指腸潰瘍,口腔粘膜の角化及び色素沈着,慢性萎縮性胃炎,肝硬変等 の危険が増大する。また,歯槽膿漏や歯周囲炎など歯周病になりやすくなる。この他,脳萎縮, 白内障,難聴,味覚・嗅覚の低下,骨粗鬆症,老化の促進などもみられる。さらに,年齢より も顔のしわが増えたり頬がこけるという特有の顔つき(スモーカーズ・フェイス)になること が知られている。 (3) 胎児・乳幼児・小児への影響 妊婦の喫煙により,流産,早産,死産,低体重児,先天異常,新生児死亡のリスクが高まるこ とが明らかになっている。 家庭内での喫煙によって,肺炎,幼児の喘息性気管支炎,学童の咳・痰などの呼吸器症状が増 加する。 (4) 受動喫煙とリスク 受動喫煙(自分の意志とは無関係に吸い込んでしまうこと)によって病気にかかる危険度は, たばこの害を受けない人と比べて,肺がんで約1.19倍,心臓病で約1.25倍に高まる。 (5) 喫煙と社会的費用 たばこの税収は年間約2兆円である。他方で,喫煙によって起こるがんや心臓病の医療費,そ れらの病気やたばこが原因の火災で失われる労働力等をすべて金額に換算してみると,年間7兆 4000億円近くになる。 8 〔第2問〕(配点:100) ○○県甲川市に土地を所有するAは,Aの所有する土地の一画にある通路について建築基準法第 42条第2項にいう2項道路に該当するとの判断を甲川市の職員が表明したことから,当該通路及 びこれに隣接するA所有の土地の価格評価が下落することになると考え,訴訟提起の可能性につき 相談するため,J弁護士事務所を訪ね,弁護士K及びLと面談した。 本件紛争及び紛争へと至る事実関係(資料1),及びA,K,Lの間のやり取り(資料2)を踏ま えて,主任の弁護士Kから報告書を作成するよう指示を受けた若手弁護士Lの立場で,次の設問に 具体的に解答しなさい。 〔設 問〕 1. 本件通路が2項道路に該当しないことをAが訴訟によって確定させるためには,どのような 訴訟を提起し,どのような主張をすべきか。 2. 土地の価格評価の下落による損害について市に対して賠償を求めるためには,Aは,だれの どのような行為に着目して,どのような主張をすべきか。 なお,本件で問題となっている2項道路の制度については,資料3にその説明があり,建築基準 法の抜粋は,資料4に掲げてあるので,適宜参照しなさい。 資料1 (1) 事実関係 ○○県乙山町は,平成15(2003)年4月1日に建築主事を置いている近隣の甲川市と合 併し,合併後の名称を甲川市とした (以下,合併前の甲川市を「旧甲川市」,合併前の乙山町を 「旧乙山町」,合併後の甲川市を「新甲川市」という。)。 ところで,旧乙山町には建築主事は置かれていなかったため,旧乙山町の特定行政庁は○○県 (正確には,○○県知事)であった。そして,合併の時点まで旧乙山町に適用のあった○○県建 築基準法施行細則第18条は,2項道路を一括して指定する方式を採用していた。具体的には, 細則第18条は, 「建築基準法第3章の規定が適用されるに至つた際現に存在する幅員4メートル 未満2.7メートル以上の道で,道路の形態が整い,道路敷地が明確であるもの」と規定してい た。 これに対して,旧甲川市は,合併前から建築主事を置いており,独自の建築基準法施行細則を 制定していた。そして,旧甲川市の中心市街地は整理が遅れ,戦前からの入り組んだ町並みが残 されていたために,旧甲川市の建築基準法施行細則第18条は,2項道路の幅員を1.8メート ル以上と規定して,2項道路の指定基準を県の基準より緩和し,建築基準法第42条第1項にい う道路(同法第43条参照)に接していない敷地の所有者に配慮する政策を採っていた。 したがって,合併後の新甲川市において2項道路指定につきどのような立場が採られるかは, 戦前からの町並みが古くから残っている地域に土地・家屋を有する者にとって,重要な関心事項 となった。例えば,指定基準が緩和されることにより,現在は接道要件を満たしていない家屋が 新たに接道要件を満たすこととなって,増改築等ができる可能性が出てくる。他方,緩和された 指定基準に該当する通路の属する敷地の所有者にとっては,それまで2項道路ではなかった通路 が今後は2項道路に指定されることとなり,自分が増改築しようとすると,当該通路の中心線か ら2メートルの線までセットバックする義務が新たに生ずる状態に陥ることになる。 このため,合併前に開催された合併協議会の場においては,この問題について,旧甲川市,旧 乙山町の区域について,それぞれの接道義務に関する規定を暫定的に適用し,本格的な検討は, 9 合併後に行われる市長選挙等の結果を待って行うことで合意が成立した。 (2) 合併後に実施された新甲川市の市長選挙においては,旧甲川市長M,旧甲川市市議会議員N, 旧乙山町長Pの3名が立候補し,激しい選挙戦の結果,Mが当選した。そして,当選後,Mは, 2項道路の指定に関する新甲川市建築基準法施行細則(以下「新細則」という。)を制定して平成 15(2003)年6月1日に公布した。新細則は,道の幅員等の要件は旧甲川市建築基準法施 行細則と同じ内容であったが,適用地域の限定はされていない。市が配布したパンフレットによ れば,そのような新細則を制定した理由は, 「整備が遅れた地域の多い新甲川市の状況に照らし, 接道要件を可能な限り緩和する政策を維持し,かつ,これを新市域全体に適用することが適当で ある」というものであった。 これに関し,ある地元新聞には,大要,次のような解説記事が掲載された。 「都市近郊の高級住 宅街として,区画が整理された地域の多い旧乙山町においては,合併前の○○県建築基準法施行 細則においては幅員2.7メートル以上の道だけが2項道路指定を受けていたこともあって,指 定基準の緩和には批判的な雰囲気が強く,特に,2項道路の指定を新たに受けることによって, 2項道路の敷地,さらに,2項道路に指定された道の中心線より2メートル以内にかかる部分に 突出している敷地について,その価格評価が下がることによる不利益等を受ける者は少なくない。 他方,旧乙山町の有力者の中には,たまたま,賃貸している家屋について指定基準の緩和により 新たに接道要件が満たされることによって利益を受ける人々が複数おり,Mは,選挙においてそ れらの有力者の支持を取り付けるために指定基準の緩和を約束していたと証言する関係者もい る。」 (3) @ Aは,旧乙山町区域内に家屋及びその敷地を所有しているほか,敷地部分の東側に台形状 の土地を所有している。この台形状の土地には隣人のEのための通路が南北に走っており,通路 の幅員は2.0メートルから2.2メートルであって,道としての形態は縁石等により整えられ ており,いわゆる私道として利用されている(以下,通路を含む台形状の土地を「本件通路部分」, 通路を「本件通路」という。)。 A 本件通路部分は,Aの家屋の敷地から分筆して登記されており,その際の地積測量図によ るとその大きさは,南北に伸びる長さが約6.0メートル,東西に伸びる上辺の長さは約2.3 メートル,下辺の長さは約3.0メートルである。 B また,本件通路部分は,東西に伸びる長方形の土地(以下「本件長方形部分」という。)の 東端部に対して直角に接続しており,接続部は曲がり角となっている。本件長方形部分の大きさ は,東西方向の長さが約35メートル,幅員は3.6メートルであり,その全体が私道として利 用されている。なお,本件長方形部分はA及びその隣人2名の共有であるが,この所有関係は本 件と直接関係はない(@からBにつき,後記「説明図1」参照)。 C 紛争が生じた平成17(2005)年夏の時点において,本件通路部分及び本件長方形部 分の周囲には,昭和25(1950)年の時点で既に存在していた5軒の家屋がある。 これらの家屋のうち,まず,本件長方形部分の北側に位置するAの家屋の敷地及び本件長方形 部分の南側に位置するBの家屋の敷地は,幅2メートル以上にわたり直接に公道に接している。 次に,同じく本件長方形部分の南側に位置するCの家屋の敷地,本件長方形部分及び本件通路部 分の東側に位置するDの家屋の敷地は,本件長方形部分に接し,これを経由して公道へとつなが っている。そして,Eの家屋の敷地は,本件通路及び本件長方形部分を経由して公道へとつなが っており,他に公道に出る手段はない。 本件長方形部分の私道は従来から2項道路に該当すると認識され,かつ,C及びDの家屋の敷 地はこの私道に幅2メートル以上接しており,従前より接道要件を満たしていると考えられてき た(Cにつき,後記「説明図2」参照)。 10 説明図1 約2.3m 北 本件通路(斜線部分) 公 本件通路部分 約6.0m 約3.0m 道 本件長方形部分 約3.6m 約35m 説明図2 北 E 本件通路部分 A 公 本件長方形部分 道 B C 11 D (4) 本件通路部分を所有するAは,Aの父親の代から,隣人Eに本件通路を生活道路として使用す ることを承認してきた。平成17(2005)年春ごろ,Eは,自宅を解体してこれまでの2倍 以上の床面積を有する家屋を建築する計画を立て,そのため,容積率・建ぺい率の関係で敷地を 大幅に拡張する必要が生じ,本件通路部分に隣接するDの敷地の一部を買い取る旨Dに申し入れ たほか,本件通路部分及びそれに隣接するAの家屋の敷地の一部(以下「本件売却予定部分」とす る。後記「説明図3」参照)も買い取ることにして,Aに買取りを申し入れた。Aは,亡父から 土地家屋等を相続したことから生じた税金を支払う必要があったため,Eとの売買交渉に入るこ とにした。 説明図3 本件売却予定部分 北 E 公 本件売却予定部分 ( 斜 線 部 分 ) 道 A 本件長方形部分 そして,交渉の結果,AとEは,本件売却予定部分の価格を,その現状価格に関する不動産鑑 定会社Fによる鑑定結果に基づいて決定することで合意し,この合意の時点においてAはEから 手付金200万円を受領した。そこで,A及びEの依頼を受けたFの職員は,平成17(200 5)年5月,新甲川市の建築指導課に出向いて,本件通路が2項道路に該当するか否かの照会を した。これに対し,担当課長Gは, 「現地の状況を確認しないと何とも言えないので,詳細な調査 をした上で回答する。」と返事をした。その後,Gは,課員に現地を見分させ,関係資料を調査さ せるなどし,その結果,本件通路は2項道路に該当するとの判断を得た。Gのこの判断は,@本 件においては,本件長方形部分及び本件通路を一体的にとらえて2項道路該当性を判断すべきで あり,そこには,現在のA,B,C,D及びEの各建築物が基準時において立ち並んでいたと認 められること(ちなみに, 「基準時」とは,建築基準法第42条第2項にいう「この章の規定が適 用されるに至つた際」のことをいい,本件では昭和25(1950)年である。),又は,A仮に 本件通路だけで2項道路該当性を判断すべきだとしても,同じく,現在のA,D,Eの各建築物 が基準時において立ち並んでいたと認められること,かつ,B以上の@,Aのいずれの考え方に 立つにせよ,本件通路は最も狭いところでも幅員が2.0メートルあり,新細則による2項道路 12 の指定要件に欠けるところはないことを根拠とするものであった。そこで,Gはその旨を平成1 7(2005)年6月にFに伝えた。 (5) このような市の判断を不動産鑑定会社Fから伝え聞いたAは,本件通路が2項道路と判断され たことに対して,大きな不満を抱いた。そこで,Aは,平成17(2005)年6月,7月,8 月の3度にわたって,自ら市役所に出向いて不満を述べる等の行動をとったが,市の立場は変わ らなかった。 Aは,市の判断になおも納得がいかないが,他方,相続税納付の期日が迫っており,Eから手 付金を受領している等の事情もあることから,市の見解を前提としてEとの間に売買契約を結ば ざるを得ないとも考えた。結局,Aは,あれこれ悩んだ末,平成17(2005)年9月初めに J弁護士事務所を訪れ,相談した。第2回の面談では,A,主任の弁護士K及び若手弁護士Lと の間で,概略,資料2のような会話が交わされた。 資料2 A,主任の弁護士K及び若手弁護士Lの間のやり取り A: 私は父親の代からの家を大事に守ってきました。それに,父親からは, 「古くからの知り合いの Eさんだから通路として使わせてあげているけれども,あんな狭い通路は正式な道路とは認定さ れっこないから,安心していい。」と言われていたのです。 それを,旧甲川市の基準を私たちに一方的に押し付けるなんて,M市長の方針は絶対に間違っ ています。大体,旧乙山町は旧甲川市とは事情が違うのです。今更,通路の中心線から2メート ルのセットバック義務があるだなんて…。通路部分以外の売却予定地の現状価格もかなり下がっ てしまって,本当に困っているのです。しかも,通路を使っているのは,Eさんだけですよ。そ れ以外の人たちは,皆で共有している長方形の道しか使ってないのですから,Eさん一人のため だけに,あの通路が2項道路に指定されるなんてとても納得がいきません。 K: L君,Aさんが最後に言われた点は,建築基準法の解釈適用の問題としては…。 L: はい…。建築基準法の解説書,特に同法第42条の部分をチェックしたのですが,私は,市が 本件通路を2項道路に当たるとしている根拠に問題があると思います。 第1に,本件通路と本件長方形部分を一体的にとらえて判断するとしている点です。この二つ の部分は,接続してはいますが,形状からすればそれぞれ別々に2項道路該当性を判断すべきも のでしょう。 そして,そのことを前提としてですが,第2に,建築基準法第42条第2項にいう「建築物が 立ち並んでいる」という要件の解釈適用が問題になります。この第42条第2項は,一方で第4 3条によって厳しい接道要件が定められたことと,他方で,ある一つの道の周りに安定的に形成 されている土地利用の現状を一定程度保護する必要があることとの兼ね合いで置かれた,政策的 な規定だと考えられます。そうだとすれば,この要件は,その道が幅員4メートル未満であるた めに接道要件を満たさないことになるような建築物が立ち並んでいるという限定的な意味に解す べきものでしょう。本件通路に関しては,それに該当するのはEさんの家だけですから,この要 件が満たされているとはいえないのではないでしょうか。 K: なるほど,それは主張として成り立つかもしれないね。ところで,Aさんは,そのほかに,旧 甲川市の基準を旧乙山町の区域にも及ぼすという新市長の措置そのものにも御不満なのですよ ね。 A: そうです。 L: 本件の場合,新市長が執った措置は,建築基準法施行細則による2項道路の一括指定というわ けでして,これ自体が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることは,平成14年1月17日の 13 最高裁判決で認められています。しかし,取消訴訟の出訴期間は既に経過しています。 K: 要するに,問題は,一つには,Aさんの本件通路が2項道路に当たらないということを確定で きるような訴訟のやり方だね。L君,さらに考えてみてください。もう一つには,Aさんは,本 件売却予定部分の評価が低下することを御不満に思っておられるわけだけれども,Eさんとの関 係では,実際上,低い評価価格で売却せざるを得ないという御事情もおありのようで,そうだと すると,そのような行政上の原因による不利益について原因者に損害賠償を請求するという方策 も必要だね。普通の民事上の不法行為と対比して独特な問題も有り得るので,L君,注意して主 張を整理してみてください。 Aさん,次回の面談は一週間後ですから,行政相手の訴訟経験のあるL君に,だれに対してど のような訴訟を提起すれば,Aさんの御不満を適切にくみ取れるかを報告してもらいましょう。 ただ,訴訟を提起するとなると,勝ち目というものを考える必要がありますから,彼の報告を聞 きながら,方針をじっくり検討することにしませんか。 A: よろしくお願いします。 資料3 (1) 2項道路の制度について 建築基準法(以下「法」という。)第43条第1項によれば,法第3章(第8節は除く。法第4 1条の2から第68条の8まで)の規定が適用される区域(主として都市計画区域がこれに当た る。)においては,建築物の敷地は同法に規定する道路に2メートル以上接していなければならず(以 下,これを「接道要件」あるいは「接道義務」という。),その要件を満たしていない敷地の建築 物は違法建築物として建築基準法上の取締りの対象となる(法第9条)。そして,この場合に取締 りの権限を有しているのは,特定行政庁である(特定行政庁については,法第2条第32号参照)。 また,法第6条第1項各号に該当する建築物の建築(新築,増築,改築又は移転をいう。),大 規模な修繕,大規模な模様替えをしようとする場合には,同条第2項に定める例外を除き,建築 主事等に対して建築確認の申請をし,確認を受け,確認済証の交付を受けなければならず(法第 6条第1項等),申請に係る建築物の計画が「建築基準関係規定に適合しない」等の場合には確認 を受けることはできない(法第6条第5項等)。 さらに,建築確認を受け工事を実施した建築主は,建築主事等による検査を受け,検査済証の 交付を受ける必要があり(法第7条第1項等),この場合においても,建築物及びその敷地が建築 基準関係規定に適合していない場合には検査済証の交付を受けることはできない(法第7条第5 項等)。 (2) 以上のような接道要件を満たすための「道路」として,どのようなものがあるのかを規定して いるのが,法第42条である。同条第1項によれば,まず,接道要件を満たすために必要となる 道路には,@国道,県道等の道路法上の道路(同項第1号),A都市計画法,土地区画整理法等に よる道路(同項第2号),B「都市計画区域等における建築物の敷地,構造,建築設備及び用途」 に関する法第3章の規定が適用されるに至った際現に存在する道(同項第3号)等であって,幅 員4メートル以上のものが含まれる。したがって,幅員4メートル未満の道路に接しているだけ では法第43条第1項の接道義務を果たしたことにはならない。 しかしながら,都市計画制度が未整備であった時期が長く続いた我が国にあっては,上記の接 道要件を満たすことができない敷地は多く存在している。特に,建築基準法の前身である市街地 建築物法においては,昭和13(1938)年改正前は,接道要件を満たし得る道路は幅員9尺 (約2.7メートル)以上のものとされていた経緯があり,法第43条第1項の規定を厳格に適 用すると,古くからの土地家屋を所有してきた者に対して酷な結果となりかねない。これらの土 14 地家屋の所有者は,法第3条第2項の規定により,これまでの利用を維持できるものの(これを 「既存不適格」という。),増改築や大規模の修繕等の行為をすることは許されなくなるからであ る。 (3) そこで,@交通,避難,防火,衛生上安全な状態に都市環境を保つために十分な道路への接合 を敷地建物について要求する必要性と,A未整備な都市計画制度の下で以前より土地建物を所有 してきた者の既存の利益を保障する必要性とを調和させる見地から設けられた制度が,法第42 条第2項に規定する2項道路である。 まず,同項によれば,@法第3章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる 幅員4メートル未満の道であって,A特定行政庁が指定したものは,第1項の道路であるとみな される(これを「2項道路」という。)。この規定により,狭あいな通路にのみ接道する敷地の所 有者も,特定行政庁の指定を受ければ接道要件を満たすものとして取り扱われることになる。そ の一方,同項は,2項道路の中心線からの水平距離2メートルの線をその道路の境界線とみなす 旨の規定を同時に置いているので,境界線の内側に現に存在している建築物等は2項道路に突出 していることになる。 そして,2項道路内に突出している建築物については,直ちに違法建築物として取り扱われる ことはない(法第44条第1項,法第3条第2項)ものの,いわゆるセットバック義務,すなわ ち,建築物の増改築,大規模の修繕等をしようとするときには,2項道路内の部分を除却する義 務が生ずる(法第3条第3項第3号及び第4号)。 (4) 以上に述べてきたように,2項道路は,未整理で入り組んだ所有関係にある地域に古くから土 地家屋を有してきた者の既得の利益を尊重しつつ,将来において良好な都市環境が形成されるこ とを期待して設けられた制度である。 なお,2項道路の指定の方法としては,道路を個別に指定する方式と,一定の条件(例えば, 「幅 員2.7メートル以上」)を満たす道路を一括して指定する方式とがあり,いずれも適法な指定方 式であると考えられている。 資料4 建築基準法(昭和25年5月24日法律第201号)(抜粋) (用語の定義) 第2条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによ る。 一〜三十一 三十二 (略) 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい,その他の 市町村の区域については都道府県知事をいう。(以下略) (適用の除外) 第3条 2 (略) この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若し くはその敷地又は現に建築,修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの 規定に適合せず,又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては,当該建築物,建 築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては,当該規定は,適用しない。 3 前項の規定は,次の各号のいずれかに該当する建築物,建築物の敷地又は建築物若しくはその 敷地の部分に対しては,適用しない。 一,二 三 (略) 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である 15 増築,改築,大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地 四 前号に該当する建築物又はその敷地の部分 五 (略) (建築物の建築等に関する申請及び確認) 第6条 建築主は,第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようと する場合においては,建築物が増築後において第1号から第3号までに掲げる規模のものとなる 場合を含む。),これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は 第4号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては,当該工事に着手する前に,その計画 が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の 規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及 び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認 の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。当該確認 を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして,第1号から第 3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては,建築物が 増築後において第1号から第3号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。),これらの建築物 の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第4号に掲げる建築物を建築し ようとする場合も,同様とする。 一 別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で,その用途に供する部分の床面積の合 計が100平方メートルを超えるもの 二 木造の建築物で3以上の階数を有し,又は延べ面積が500平方メートル,高さが13メー トル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの 三 木造以外の建築物で2以上の階数を有し,又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの 四 前3号に掲げる建築物を除くほか,都市計画区域(都道府県知事が都道府県都市計画審議会 の意見を聴いて指定する区域を除く。),準都市計画区域(市町村長が市町村都市計画審議会(当 該市町村に市町村都市計画審議会が置かれていないときは,当該市町村の存する都道府県の都 道府県都市計画審議会)の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成16年法 律第110号)第74条第1項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府 県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内にお ける建築物 2 前項の規定は,防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し,改築し,又は移転しよう とする場合で,その増築,改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以内であ るときについては,適用しない。 3 4 (略) 建築主事は,第1項の申請書を受理した場合においては,同項第1号から第3号までに係るも のにあつてはその受理した日から21日以内に,同項第4号に係るものにあつてはその受理した 日から7日以内に,申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し, 審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは,当該申請者に確認済 証を交付しなければならない。 5 建築主事は,前項の場合において,申請に係る計画が建築基準関係規定に適合しないことを認 めたとき,又は申請書の記載によつては建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することが できない正当な理由があるときは,その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期限内に当該 申請者に交付しなければならない。 6 第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ,同項の建築物の建築,大規模の修繕又は大規 模の模様替の工事は,することができない。 7 (略) 16 (建築物に関する完了検査) 第7条 建築主は,第6条第1項の規定による工事を完了したときは,国土交通省令で定めるとこ ろにより,建築主事の検査を申請しなければならない。 2 前項の規定による申請は,第6条第1項の規定による工事が完了した日から4日以内に建築主 事に到達するように,しなければならない。ただし,申請をしなかつたことについて国土交通省 令で定めるやむを得ない理由があるときは,この限りでない。 3 前項ただし書の場合における検査の申請は,その理由がやんだ日から4日以内に建築主事に到 達するように,しなければならない。 4 建築主事が第1項の規定による申請を受理した場合においては,建築主事又はその委任を受け た当該市町村若しくは都道府県の吏員(以下この章において「建築主事等」という。)は,その申 請を受理した日から7日以内に,当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合 しているかどうかを検査しなければならない。 5 建築主事等は,前項の規定による検査をした場合において,当該建築物及びその敷地が建築基 準関係規定に適合していることを認めたときは,国土交通省令で定めるところにより,当該建築 物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。 (違反建築物に対する措置) 第9条 特定行政庁は,建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反 した建築物又は建築物の敷地については,当該建築物の建築主,当該建築物に関する工事の請負 人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有 者,管理者若しくは占有者に対して,当該工事の施工の停止を命じ,又は,相当の猶予期限を付 けて,当該建築物の除却,移転,改築,増築,修繕,模様替,使用禁止,使用制限その他これら の規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。 2〜15 (略) (道路の定義) 第42条 この章の規定において「道路」とは,次の各号の一に該当する幅員4メートル(特定行 政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計 画審議会の議を経て指定する区域内においては,6メートル。次項及び第3項において同じ。)以 上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。 一 道路法(昭和27年法律第180号)による道路 二 都市計画法,土地区画整理法(昭和29年法律第119号),旧住宅地造成事業に関する法律 (昭和39年法律第160号),都市再開発法(昭和44年法律第38号),新都市基盤整備法 (昭和47年法律第86号),大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措 置法(昭和50年法律第67号)又は密集市街地整備法(第6章に限る。以下この項において 同じ。)による道路 三 この章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道 四,五 2 (略) この章の規定が適用されるに至つた際現 に 建 築 物 が 立 ち 並 んでいる幅員4メートル未満の道 で,特定行政庁の指定したものは,前項の規定にかかわらず,同項の道路とみなし,その中心線 からの水平距離2メートル(中略)の線をその道路の境界線とみなす。ただし,当該道がその中 心線からの水平距離2メートル未満でがけ地,川,線路敷地その他これらに類するものに沿う場 合においては,当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離4メートル の線をその道路の境界線とみなす。 3〜6 (略) (敷地等と道路との関係) 第43条 建築物の敷地は,道路(次に掲げるものを除く。第44条第1項を除き,以下同じ。)に 17 2メートル以上接しなければならない。ただし,その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その 他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で,特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び 衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては,この限りでない。 一 自動車のみの交通の用に供する道路 二 高架の道路その他の道路であつて自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令 で定める基準に該当するもの(第44条第1項第3号において「特定高架道路等」という。)で, 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第12条の11の規定 により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に 限る。同号において同じ。)内のもの 2 (略) (道路内の建築制限) 第44条 建築物又は敷地を造成するための擁壁は,道路内に,又は道路に突き出して建築し,又 は築造してはならない。(以下略) 18