論文式試験問題集[知的財産法] - 1 - [知的財産法] 〔第1問〕(配点:50) Aは,B社に在職中にその職務として発明αをなした。B社が設ける勤務規則には, 「会社は職務 発明の特許を受ける権利を承継する。ただし,会社がその権利を承継する必要がないと認めたとき は,この限りでない。」と規定されていたところ,B社は,発明αは実用化が難しいため価値がない と考え,その特許を受ける権利を承継しなかった。B社の発明αに対する低い評価に失望したAは, B社を退職した後,当該発明について特許出願し,特許権を取得した。その後,関連技術の開発に よって,発明αの実用化が容易となったため,B社の競業者であるC社は当該発明を実施したいと 考え,Aに対して実施契約の締結を申し入れた。交渉の結果,AがC社に対して前記特許権の独占 的通常実施権を許諾する旨の契約が締結され,この契約に基づき,C社は発明αを実施している。 〔設 問〕 1.B社は,C社が販売する発明αに係る製品の売行きが好調であることから,当該発明が高い 経済的価値を有することに気付き,当該発明を実施し始めた。B社の競業者であるD社も,発 明αを実施し始めた。B社及びD社は,いずれもその実施についてAの承諾を得ていない。こ の場合において,C社は,B社及びD社に対し,その実施の差止め及び損害賠償を請求するこ とができるか。 2.Aは,C社との前記実施契約締結後に,同社よりも高額の実施料を申し出たE社との間で, 前記特許権の専用実施権設定契約を締結した。E社は,その専用実施権の設定登録がなされる 前に,発明αを実施するC社に対し,その実施の差止め及び損害賠償を請求することができる か。設定登録がなされた後であればどうか。 3.F社の従業者Gは,出願公開がされたAの出願を見て,発明αの将来性を見抜き,当該発明 に関する研究開発を行った。その結果,Gは,発明αを改良した発明βをなした。Gから発明 βの特許を受ける権利を承継したF社は,当該発明について特許出願し,特許権を取得した。 発明αの特許権の専用実施権者となったE社は,発明βを実施するF社に対し,その実施の差 止め及び損害賠償を請求することができるか。 - 2 - 〔第2問〕(配点:50) Aは,松尾芭蕉の生涯をテーマとした劇場用映画を企画し,自己の危険と責任において,その製 作に必要な資金の調達,その製作に従事するスタッフ,キャストの選定・雇入れ,スケジュール管 理等の活動を行って,映画αを製作した。その監督を担当したのは,Bであり,主題歌である楽曲 βを作曲したのは,Cであった。映画αは白黒映画とされたが,それは,Aが当該映画を懐古的な 雰囲気の漂うものとすることを構想していたためであり,Bは,Aから依頼を受けて監督となるこ とを約束した際,当該映画がAの構想に合致したものとなるように監督することを了承した。また, Cも,映画αの主題歌を古風なイメージの曲にしてもらいたいとのAの依頼を受け入れ,雅楽を部 分的に取り入れた楽曲βを作曲した。映画αはAによって劇場公開されたが,観客数はAが見込ん でいたよりも少なかった。そこで,Aは,その投資に見合う収益を得ることを期待して,当該映画 の複製物であるDVDを販売している。A,B及びCはいずれも,いずれかの者の業務に従事する 者ではない。 〔設 問〕 1.Dは,Aが販売し,小売店を介して消費者が購入した,映画αの複製物であるDVDを購入 者から買い入れ,中古品として販売している。Aは,Dに対し,その販売の差止めを請求する ことができるか。 また,Dが,買い入れたDVDを,販売するのではなく,その経営するレンタル店において 貸与している場合には,Aは,Dに対し,その貸与の差止めを請求できるか。 2.Eは,インターネット上に俳句に関する情報を掲載したホームページを開設している。Eは, そのホームページに映画αを掲載すれば,多くの人がアクセスするようになると思い,無断で 当該映画を掲載した。 Fは,Eと同様にインターネット上に俳句に関する情報を掲載したホームページを開設して いるところ,映画αが白黒映画であるために,これを鑑賞する者が松尾芭蕉の偉大さを深く理 解することができないと考え,無断で,当該映画をカラー化した映画α’を作成し,これを自 己のホームページに掲載した。 (1) Bは,Eに対してそのホームページから映画αを削除することを,Fに対してそのホーム ページから映画α’を削除することを,それぞれ請求することができるか。 (2) Bの死後,Bの妻であるGは,E及びFに対し,前記(1)と同様の請求をすることができる か。 (3) Cは,E及びFに対し,前記(1)と同様の請求をすることができるか。 - 3 - - 4 - 論文式試験問題集[労 - 5 - 働 法] [労 働 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の各問に答えなさい(なお,準拠法は日本法とし,国際私法上の論点に触れる必要はありませ ん。)。 1.あなたが弁護士としてXから次のような相談を受けた場合,どのような法律上の問題点がある と回答しますか。 2.XがYに対し雇用契約上の地位確認訴訟を提起した場合,文中の下線部@からCまでの各事実 はその訴訟においてどのような意味を持つと考えますか。 私(X)は,平成16年4月1日付けで,学校法人Yが経営する私立大学(以下「Y大学」と いう。)の専任講師として採用され,経済学部において経済統計学,銀行論,英語,ゼミを担当し ていましたが,Y大学は,平成17年1月になって,3月31日の任期満了をもって専任講師を 辞めてもらうと通告してきました。Y大学は,学長であり理事長でもあるA氏(以下「A学長」 という。)が設立した大学で,人事や予算などすべての実権をA学長が握っています。 そもそも私は,平成7年に日本の大学を卒業した後,アメリカに留学して経済学の勉強をし, 経済学博士の学位を取得し,アメリカの銀行や経済研究所で働いていましたが,両親が年を取っ てきたので,日本の大学で教員をしようと考えていたところ,平成15年12月に,インターネ ットで,Y大学が英語に堪能な経済学関係の教員を募集していることを知りました。そこで,メ ールで経歴を送って応募したところ,年末に,A学長から, 「君こそ私が求めていた人材だ。今度 アメリカに行くので,是非とも会って話をしたい。」とのメールをもらい,平成16年1月10日 にニューヨークでA学長と面談しました。A学長は,ご自分もアメリカの大学で教育学博士号を 取得したとのことで,私が英語に堪能で,経済学や銀行論にも詳しいことを知り,すっかり気に 入ってくれて,@「将来は,我が大学の経済学部の教授になってもらいたいが,他の教員の手前 もあるので,最初は任期付きの専任講師で我慢してもらえないか。」と言いました。私の年齢で最 初から助教授に採用された人はいないそうですし,将来を保証するというので, 「最初は講師でも 構いませんよ。」と返事しました。そして,平成16年3月5日に帰国し,4月1日からY大学で 教え始めたのです。 確かに,辞令では, 「経済学部専任講師を命じる。任期は平成16年4月1日から平成17年3 月31日までとする。」と記載されていましたが,A私は,英語を週4コマと,経済統計学,銀行 論,そしてゼミを担当しており,この授業負担は教授や助教授の先生と同じでしたし,経済学部 の建物内に研究室を与えられ,教授会にもオブザーバーとして出席していましたので,この点で も教授や助教授の先生方と何の違いもありませんでした。 BA学長は,当初は私を高く評価してくれていましたが,平成16年の秋にアメリカから招い たA学長の恩師の講演会で,私が恩師を侮辱する質問をしたと言って私のことをひどく叱責しま した。Cその後,A学長は,私が英語の授業中に女子学生にセクハラまがいの質問をしたとか, 研究業績が不足しているとか,協調性がないなどと言い出し,今回の任期満了通告になったわけ です。 私は,Y大学で教授になる前提で勤め始めたので,4月1日以降もY大学で研究と授業を続け たいと思っています。仮に,研究室を閉め出されると,研究に支障が出ますし,キャリアも傷つ きますので,賃金だけでなく研究室の使用を認めてもらいたいと思っています。 - 6 - 〔第2問〕(配点:50) 次の文章を読んで,末尾の設問に答えなさい。 甲株式会社(以下「会社」という。)には500名の従業員がおり,うち300名がA労働組合 に所属する組合員(以下「A組合」「 ・ A組合員」という。)であり,うち20名がB労働組合に所 属する組合員(以下「B組合」「 ・ B組合員」という。)である。その他は非組合員である。 賃上げ(ベースアップ)については就業規則上特段の定めはなく,一時金については就業規則 上,「会社の業績に応じて7月及び12月に一時金を支給する。」との条項がある。 会社では過去10年間にわたって,A組合・B組合とも春闘要求として,毎年3月ごろから新 年度の賃上げ及び一時金(夏季一時金・冬季一時金)を要求し,会社と団体交渉の結果,それぞ れについてすべて妥結し,賃上げ及び一時金について一括した確認書を締結した上で,賃上げ及 び一時金の支給を実施してきた。ちなみに,平成16年度の妥結内容は賃上げ率として組合員平 均2.5%,夏季一時金は月額給与の3か月分(7月1日支給),冬季一時金は月額給与の3か月 分(12月1日支給)であった。ここ10年間,一時金の支給月数は同一であり,支給日もほと んど変わりがなく,非組合員も同様の取扱いがなされてきた。 平成17年度についても,A組合・B組合とも従来と同様,賃上げとして組合員平均5%,夏 季・冬季一時金としてそれぞれ月額給与の4か月分(それぞれ7月1日,12月1日支給)を文 書により要求した。この要求に対して,会社は,業績が悪化しており今後赤字に転落する可能性 が極めて高いこと等を理由に,A組合・B組合のいずれに対しても,次のとおり文書回答をした。 「平成17年度については,@ 賃上げについては実施しない,A @の条件を組合が受諾する 場合には,夏季一時金及び冬季一時金を前年度と同様それぞれ3か月分(平成16年度の月額給 与を基礎とする)とし,前年度と同じ期日に支給する。」 この会社回答を巡って各組合は会社と団体交渉を行ったが,会社が提示内容を譲らなかったの で,A組合はやむなく会社の回答を受諾し,確認書を締結した。一方,B組合は,会社の態度が 不誠実であるとして,合意に至らなかった。そこで,B組合は,会社回答のうち,@の条件は受 諾できないが,Aの一時金支給月数及び支給日については妥結する旨の文書を会社に交付した。 会社は7月1日,非組合員及びA組合員に対し,会社回答に従って夏季一時金を支給したが, B組合員に対しては夏季一時金についてB組合と未妥結であることを理由に支給しなかった。 〔設 問〕 B組合から所属組合員の夏季一時金を請求したいとの相談を受けて,あなたがその組 合員の代理人弁護士として会社を被告に訴えを提起する場合,どのような法的構成が考えられま すか。考えられる法的構成を挙げ,それぞれについて論じてください。 - 7 - - 8 - 論文式試験問題集[租 - 9 - 税 法] [租 税 法] 〔第1問〕(配点:50) A株式会社は,広告代理業を営んでおり,営業社員(雇用契約により雇用される従業員)を多数 雇用している。A社は,営業社員に,見込み客リスト(営業活動の対象とする法人や個人の住所・ 電話等が記載されたもの)を提供し,営業社員は,そのリストや自分で収集した情報に基づいて, 会社から電話したり,訪問したりして広告契約を獲得する営業活動を行っている。営業社員の給与 は,毎月定額で支払われる固定給と営業成績に応じて支払われる歩合給からなっており,給与とし ての源泉徴収がされている。 ところが,営業社員の中で特に業績のよいBが,自分は営業成績を上げるために,営業用自動車 に関する費用,通信費,交際費など諸費用を自分で負担しているので,社員扱いでなく,独立事業 者扱いにしてほしい,そうすれば諸費用を経費として計上できるので税金が少なくて済む,そうで なければ競合する他社に移籍したいと言い出した。 A社は,やむを得ず,Bの申出を受け入れ,Bと業務委託契約を締結し,委託料は定額委託料(従 前の固定給より少額)及び営業成績に応じた成果委託料(従前の歩合給より高率)とし,報酬とし ての源泉徴収を行うように変更した。そして,Bは,社会保険も国民健康保険と国民年金に切り替 えた上,自ら事業所得として所得税の確定申告を行い,A社から得た報酬から必要経費を控除した ものを所得として申告した。しかし,前記変更後も,Bは,A社に専属しA社以外の仕事は行わず, A社内で電話による営業活動を行った場合の電話料を負担していない。また,A社は,Bに出勤を 義務付けていないが,Bの出勤状況は従前と同様である。 C税務署は,A社に対する税務調査を行った結果,Bに対する支払について給与としての源泉徴 収を行うべきであるとして,源泉所得税納税告知処分を行った。 〔設 問〕 1.A社の代理人として,Bの所得が事業所得であるとの立場で主張するとすれば,どのような 主張が考えられるか。 2.国の代理人として,Bの所得が給与所得であるとの立場で主張するとすれば,どのような主 張が考えられるか。 〔第2問〕(配点:50) 昭和40年3月ごろ,Aは,本件土地を100万円で購入した。Aは一人で暮らしていたが,長 年にわたり世話になっていたB株式会社に対し本件土地を寄付したいと考え,その旨の遺言をして いた。Aは平成16年1月に死亡し,遺言に基づき,平成16年2月に本件土地の所有権の登記が B株式会社に移転した。不動産鑑定士の意見によると,本件土地の時価は3,000万円と評価さ れるとのことである。なお,Bの事業年度は1月1日に始まり12月31日に終わる。 〔設 問〕 1.平成16年分のAと平成16事業年度のBの課税関係はどうなるか。後記2の事実がないも のとして論じなさい。 2.昭和59年4月から,AのおいのCが本件土地の上に家屋を建てて暮らしており,Aは生前 それを黙認していた。Cは,平成16年6月,Aからの生前贈与を理由として,Bに対して所 有権移転登記を求めて訴訟を提起した。訴訟追行の過程で,Cは,平成17年1月になって時 効を援用し,時効取得の主張を追加した。裁判所は20年の時効の成立を認め,平成17年7 月にCを勝訴させた。判決の確定をうけ,平成17年10月に本件土地の登記がCに移転した。 この判決の認定を前提とする場合,Cはどう課税されることになるか。 - 10 - 論文式試験問題集[倒 - 11 - 産 法] [倒 産 法] 〔第1問〕(配点:50) A会社は,平成17年7月30日,S会社に対し,鋼材200トンを,代金1,600万円(1 トンあたり8万円)で,代金の支払期日を9月20日として売り渡した。 S会社は,当面の運転資金を得るために,(1)8月5日,B会社に対し,前記鋼材のうち60トン を,代金480万円(1トンあたり8万円)で,代金の支払期日を9月5日として売り渡し,次い で,(2)8月10日,C会社に対し,前記鋼材のうち100トンを,代金700万円(1トンあたり 7万円)で売り渡し,同社から支払手形(満期10月5日)を受け取った。 しかし,S会社が資金繰りに窮したため,同社の経営状況の悪化に不安を抱いたA会社は,前記 鋼材200トン分の売買代金債権1,600万円の回収を図るため,8月25日,S会社から,代 物弁済として,前記のとおりA会社から買い受けたものの売れ残ってS会社の倉庫に保管されてい た鋼材40トンの引渡しを受けたが,A会社は,さらに,S会社に対し,B会社及びC会社に転売 された鋼材分の売買代金債権についても返済を求めた。 そこで,S会社は,まず,B会社に転売された前記鋼材60トン分については,A会社に対する 売買代金債務の代物弁済として,B会社に対して有する売買代金債権をA会社に譲渡することとし, A会社は,8月30日,S会社から,代物弁済として,B会社に対する前記売買代金債権の譲渡を 受け,9月1日に,S会社からB会社に対し,確定日付のある証書による債権譲渡の通知がされた。 他方,C会社に転売された前記鋼材100トン分については,まず,S会社は,C会社との間で 交渉を行い,8月30日,同社との間で,前記鋼材100トン分の売買契約を合意解除するととも に,同社から受け取った支払手形を返還する旨の合意をした。S会社は,さらに,同日,A会社と の間で,売買の目的物である鋼材100トンをS会社のA会社に対する売買代金債務について代物 弁済として譲渡する旨の合意を成立させた。そして,同日,S会社は,これらに従って,C会社に 支払手形を返還し,C会社からA会社に対し,当該鋼材100トンが引き渡された。 S会社は,9月20日には支払不能の状態に陥り,9月30日,自ら破産手続開始の申立てをし た。その後,10月7日にS会社に対して破産手続開始の決定がされ,Xが破産管財人に選任され た。 〔設 問〕 破産管財人Xは,A会社に対し,(1)売れ残った鋼材40トン分,(2)B会社に転売さ れた鋼材60トン分及び(3)C会社に転売された鋼材100トン分について,どのような請求をす ることができるか検討せよ。なお,解答するに当たっては,C会社に転売された鋼材100トン 分についてと同様の方法で売買代金債権の回収が行われた事案に関する以下の見解の当否を検討 しつつ論ぜよ。 「動産売買の先取特権の目的物が買主から第三取得者(転買人)に引き渡された後に買主が その所有権及び占有を回復したことにより,売主が前記目的物に対して再び先取特権を行使し 得ることになるとしても,買主が転売契約を合意解除して第三取得者から本件物件を取り戻し た行為は,売主に対する関係では,法的に不可能であった担保権の行使を可能にするという意 味において,実質的には新たな担保権の設定と同視し得るものと解される。そして,本件代物 弁済は,本件物件を売主に返還する意図の下に,転売契約の合意解除による本件物件の取戻し と一体として行われたものであり,義務なくして設定された担保権の目的物を買主が被担保債 権(代金債権)の代物弁済に供する行為に等しいというべきである。」 - 12 - 〔第2問〕(配点:50) 以下の事例を読んで,設問1から3までに解答せよ。 【事例】 A社は,洋菓子の製造販売を行っている従業員30人ほどの老舗の有限会社である。洋菓子の 販売自体は順調であるが,先代の社長が,レストラン部門への進出を試みるなどの事業展開をし たために,過大投資が原因で,ここ数か月は債務の支払が苦しくなってきている。 A社は,借地上に工場兼販売店舗(第1号店)として甲建物を有しており,この甲建物には, 第1順位抵当権者B銀行(被担保債権額2,000万円),第2順位抵当権者C信用金庫(被担保 債権額4,000万円)の各抵当権が設定されている。 A社は,先代の社長のころに,レストラン用の土地としてDから乙土地を購入したが,現在の 社長がレストラン部門への進出を取りやめたために,乙土地をEに譲渡した。もっとも,この2 度の売買については,いずれも代金は支払われたものの,DとA社との間で代金額を巡ってなお 争いがあるため,DからA社への所有権移転登記はされておらず,A社の社長と旧知の仲である Eは,DからA社への所有権移転登記がされたらEへの所有権移転登記をするということでいい, と言っていた。しかし,DがいつまでもA社への所有権移転登記に応じないことから,Eは,A 社への移転登記請求権を保全するために,Dを被告として,DからA社への所有権移転登記手続 を求める訴訟を提起した(第一審に係属中。この訴訟を訴訟@とする。)。 A社がDから乙土地を購入した時点では,乙土地はコイン式駐車場になっていたところ,コイ ン式駐車場の設備を除去するために,A社は造成工事業者Fと請負契約を締結し,Fは約定に従 って当該設備を除去して乙土地をA社に引き渡した。しかし,A社がFへの請負報酬(500万 円)の支払をしなかったため,Fは,A社に対して請負報酬500万円の支払を求める訴訟を提 起した(第一審に係属中。この訴訟を訴訟Aとする。)。なお,A社は,この訴訟の中で,Fへの 請負報酬支払債務は,A社が乙土地をEに譲渡した際,EがA社に代わって支払う旨約束してお り,Fもこれを承諾したと主張している。 Gは,A社の工場に10年前から菓子職人として勤務していたところ,A社が経営不振に陥っ た後に退職し,現在は別の菓子工場で勤務している。Gに対しては,A社の退職金規程に従い自 己都合退職扱いで退職金150万円が支払済みであるところ,Gは,会社都合退職であると主張 しており,A社に対して,会社都合退職であるとして算定した退職金250万円と支払済みの1 50万円との差額である100万円の支払を求める訴訟を提起した(第一審に係属中。この訴訟 を訴訟Bとする。)。 以上が,平成17年6月末時点での事実関係である。A社は,7月1日に再生手続開始の申立 てをし,同日監督命令が出された。その後,7月8日に,A社に対して再生手続の開始決定がさ れた。 A社の現在の社長は,今後の販売を伸ばすためには第1号店のリニューアルが必要であると判 断して,再生手続中に同店舗のリニューアル工事を行うことを計画しており,この工事費用50 0万円全額について,7月22日にHファイナンスに融資を申し込んでいる。 〔設 問〕 1.訴訟@,訴訟A及び訴訟Bは,A社についての再生手続の開始決定によりそれぞれどのよう な影響を受けるか。 2.A社の現在の社長から,再生手続開始後に,次のような相談があったとして,どのように返 答すべきか。 「甲建物(借地権付き)の時価の評価は,不動産業者によって若干の幅があるようですが, 概ね4,500万円から5,500万円といったところです。当社としては,甲建物は事業 を続けるために是非とも必要なものなので,これなくしては再生はできないと考えているの - 13 - ですが,C信用金庫からの取立てが担当者の交替以後急に厳しくなってきており,最近では 抵当権の実行も辞さないなどという態度に出ているので心配でなりません。仮にC信用金庫 から競売の申立てをされた場合,それを止めるため,当社としてどのようなことができるで しょうか。なお,当社の収益性を評価してくださっているJ銀行(Hファイナンスの親会社) から,既存の抵当権をすべて抹消して1番抵当を設定することを条件に5,000万円まで なら新規融資を受けられる見込みがあります。これを利用して抵当権を外すことはできない のでしょうか。この場合,C信用金庫からの対抗手段としてはどのようなものが考えられる のでしょうか。」 3.A社から500万円の融資の申込みを受けたHファイナンスの融資担当者から次のような質 問があったとして,どのように返答すべきか。 「当社ではA社に対する無担保融資を検討しています。ところで,A社の債権者の中には, A社が作成中の再生計画案では弁済率が低すぎるとして,再生計画案に反対の意向を表明し ている者もある程度の数がいると聞いています。仮に,A社の提出した再生計画案が決議に おいて否決された場合には,A社の倒産処理はどのように進行することになる見込みなので しょうか。また,その場合に,リニューアル工事費用500万円の融資が未返済のときには, 当社の融資金返還請求権はどのように取り扱われるのでしょうか。」 - 14 - 論文式試験問題集[経 - 15 - 済 法] [経 済 法] 〔第1問〕(配点:50) 国内において使用される軟式テニス(ソフトテニス)ラケットは,国内メーカー4社及びその他 の国内メーカーの製品が,国内の商品の大部分を占めており,外国製品はほとんど輸入されていな い状況にある。このうち4社の軟式テニスラケットの国内におけるシェアは,それぞれA社が29 %,B社が17%,C社が15%,D社が10%である。これらメーカーの商品のほとんどは,卸 問屋(一次卸・二次卸)を通して全国のスポーツ用品店等の小売店に納入され,多くの小売店は複 数のメーカーの軟式テニスラケットを販売している。 このうち,A社は,その製造したラケットのすべてを,主に東日本を販売地域とする甲社,及び 主に西日本を販売地域とする乙社の2社(一次卸)に販売しており,甲社及び乙社は,それぞれ卸 問屋(二次卸)又は小売店に販売していた。 A社は,甲社及び乙社との間の取引基本契約において,甲社及び乙社が,A社以外の商品を取り 扱わずA社の商品のみを取り扱う旨の約定及び甲社及び乙社が他のメーカーの商品を取り扱った場 合にはA社は催告の上で契約を解約することができる旨の約定を設けていた。さらに,A社の指示 を受けて,甲社及び乙社は,卸問屋(二次卸)との間の取引基本契約において,A社以外のメーカ ーの商品を扱うことを認めない旨の約定を設けていた。なお,このような約定は小売店に対しては 設けられておらず,小売店はA社の商品と一緒に他の3社等の軟式テニスラケットを販売すること もでき,多くの小売店は,前記のように,複数のメーカーのラケットを販売している。 〔設 問〕 前記の場合において,A社の行為には,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する 法律(独占禁止法)上,どのような問題があるか,次の1及び2の点に留意しつつ述べなさい。 1.A社は,このように甲社及び乙社との間の取引基本契約において,他社の商品の取扱いを認 めない方針を設け,また,両社に対して,二次卸との間の取引基本契約に同様の約定を設ける ように指示しているのは,A社の軟式テニスラケットに関して,ガット(ラケットの網)を張 る方法,各ラケットに合ったメンテナンスなどについて特別のノウハウがあり,これが他社に 流出することを防ぐという合理的な理由がある旨主張している。この主張はどのように考慮さ れるべきであるか。 2.A社と同様に,B社,C社及びD社も,卸問屋(一次卸)との間の取引基本契約,及び,こ れらの3社の商品に関する一次卸と二次卸との間の取引基本契約において,他のメーカーの商 品を扱うことを認めない約定を設けている場合(場合1)と,このような約定を設けておらず, 他のメーカーの商品を扱うことを許容している場合(場合2)とで,どのような違いがあるか。 - 16 - 〔第2問〕(配点:50) 弁護士であるあなたは,自動車メーカーであるA社の法務担当者から次のような相談を受けた。 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)についてA社に対してどのように 助言をするか説明しなさい。 我が社は,B社から,乗用車部門に力を注ぐためトラック製造部門を我が社に売却したい旨の 申出を受けています。各社の市場占拠率(シェア)は,生産ベースでも販売ベースでもほぼ同じ であり,後記のとおりです。B社はできればトラックの販売をやめたいと言っており,我が社と してもそれは望むところです。 しかし,我が社の内部には,この売却方式だと独占禁止法に違反するのではないかと指摘する 声があります。確かに我が社はトラックの製造には自信があり顧客の支持も得ていますが,残念 なことに,我が社の乗用車部門は今一歩の状況にあり,自動車メーカーとしては4位又は5位で あるにすぎません。本当に独占禁止法に違反するのでしょうか。 もし独占禁止法に違反するのであれば,不本意ではあるのですが,B社がトラック製造部門を 我が社に売却した後も,我が社がB社に対してOEM(相手先ブランドによる受注生産)供給を し,両社は,トラックの販売及びサービスを独立して行うことも考えています。ただし,我が社 の内部では,OEM供給をする場合,我が社がB社のトラックを生産しているにもかかわらず, B社がその販売面においてで好き勝手に活動した場合,我が社の販売数量が減少したり販売価格 に悪影響が出ることになるおそれがあるので,B社に対して一定の縛りをかけておくべきだとい う意見が大勢を占めています。 そこで,OEM供給をする場合,例えば,B社の販売先,販売先への販売価格・販売数量を毎 週我が社に情報提供させることとし,B社の販売動向等を把握できるようにしておくようなこと を考えています。独占禁止法上何か問題があるでしょうか。 A 社 B 自動車 トラック 社 自動車 ←生産部門を売却 BへOEM供給→ 自 動 車 トラック トラック 生産シェア 生産シェア C 32% A 32% B 30% C 23% D 20% B 20% A 5% D 15% E 5% E 5% 外国事業者 8% 外国事業者 5% - 17 - - 18 - 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)] - 19 - [国際関係法(公法系)] 〔第1問〕(配点:50) 以下の事例について,次の問いに答えなさい。 L県下に居住し,公立中学校に通っている女子中学生甲は,将来,画家になることを考えてお り,是非とも県立のA高校(男子高校)の芸術科に入学したいと考えていた。 A高校の芸術科は,数多くの著名な画家を輩出し,かつ,現在も,日本で指折りの絵画指導者 が芸術科の主任教諭を務めていて,その絵画教育には定評がある。もちろん,県下には,芸術科 を備えた共学又は別学の県立高校(男子高校及び女子高校)がほかにもあるが,A高校の芸術科 ほど,絵画教育で評価の高いところはない。 甲は高校受験の年齢になったので,A高校芸術科に願書を提出したが,甲が女子であることを 理由に願書は受理されず,甲はその措置に対して強く抗議したが聞き入れられず,そのためにA 高校に入学できなかった。甲は自暴自棄となって高校入学自体も断念した。 L県には男女共学制を採る高校が私立高校にも公立高校にもあったが,A高校のように特色の ある伝統校は,男子高校又は女子高校のいずれかであると一般に言われていた。甲がA高校の受 験を拒否されたのも,A高校が共学又は女子高校でなかったためであり,L県がA高校を男女共 学にしていればこのような事態は起こらなかった。そこで甲は,L県が芸術教育に秀でたA高校 を男女別学にしていることは違法であると考え,L県に対して国家賠償を求める訴えを提起した。 訴訟では,甲は,日本国憲法等の国内法令とともに,国際法上の根拠,特に「女子に対するあ らゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」関連規定を持ち出すことが予想され た。 なお,関連規定のうちの一つである,女子差別撤廃条約第10条(b)号については,次のような 起草経緯があった。女子差別撤廃条約を審議した国際連合総会では, 「その施設が共学であるか否 かにかかわらず,同一の教育課程,同一の試験,同一の水準の資格を有する教育職員並びに同一 の質の学校施設及び設備を享受する平等な機会」という原案が提示されたが,国際連合総会での 審議において, 「その施設が共学であるか否かにかかわらず」という部分は削除された。また,同 原案の「同一の教育課程,同一の試験」の部分については, 「同一又は同等の水準の教育課程及び 試験(the curricula and examination of the same or equivalent standard)」という文言への 修正提案が出されたが採用されなかった。 〔設 問〕 被告のL県は,訴訟に備えて,女子差別撤廃条約に関する甲の主張に対する反論をX 弁護士に相談した。女子差別撤廃条約に反するという甲の主張に対して考え得る,すべての反論 を述べなさい。 (参照条文)女子差別撤廃条約(抜粋) この条約の締約国は、 国際連合憲章が基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の権利の平等に関する信念を改めて確 認していることに留意し、 世界人権宣言が、差別は容認することができないものであるとの原則を確認していること、並びに すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であること並びに すべての人は性による差別その他のいかなる差別もなしに同宣言に掲げるすべての権利及び自由を享 有することができることを宣明していることに留意し、 人権に関する国際規約の締約国がすべての経済的、社会的、文化的、市民的及び政治的権利の享有 について男女に平等の権利を確保する義務を負つていることに留意し、 国際連合及び専門機関の主催の下に各国が締結した男女の権利の平等を促進するための国際条約を - 20 - 考慮し、 更に、国際連合及び専門機関が採択した男女の権利の平等を促進するための決議、宣言及び勧告に 留意し、 しかしながら、これらの種々の文書にもかかわらず女子に対する差別が依然として広範に存在して いることを憂慮し、 女子に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものであり、女子が 男子と平等の条件で自国の政治的、社会的、経済的及び文化的活動に参加する上で障害となるもので あり、社会及び家族の繁栄の増進を阻害するものであり、また、女子の潜在能力を自国及び人類に役 立てるために完全に開発することを一層困難にするものであることを想起し、 窮乏の状況においては、女子が食糧、健康、教育、雇用のための訓練及び機会並びに他の必要とす るものを享受する機会が最も少ないことを憂慮し、 衡平及び正義に基づく新たな国際経済秩序の確立が男女の平等の促進に大きく貢献することを確信 し、 アパルトヘイト、あらゆる形態の人種主義、人種差別、植民地主義、新植民地主義、侵略、外国に よる占領及び支配並びに内政干渉の根絶が男女の権利の完全な享有に不可欠であることを強調し、 国際の平和及び安全を強化し、国際緊張を緩和し、すべての国(社会体制及び経済体制のいかんを 問わない。)の間で相互に協力し、全面的かつ完全な軍備縮小を達成し、特に厳重かつ効果的な国際管 理の下での核軍備の縮小を達成し、諸国間の関係における正義、平等及び互恵の原則を確認し、外国 の支配の下、植民地支配の下又は外国の占領の下にある人民の自決の権利及び人民の独立の権利を実 現し並びに国の主権及び領土保全を尊重することが、社会の進歩及び発展を促進し、ひいては、男女 の完全な平等の達成に貢献することを確認し、 国の完全な発展、世界の福祉及び理想とする平和は、あらゆる分野において女子が男子と平等の条 件で最大限に参加することを必要としていることを確信し、 家族の福祉及び社会の発展に対する従来完全には認められていなかつた女子の大きな貢献、母性の 社会的重要性並びに家庭及び子の養育における両親の役割に留意し、また、出産における女子の役割 が差別の根拠となるべきではなく、子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要であ ることを認識し、 社会及び家庭における男子の伝統的役割を女子の役割とともに変更することが男女の完全な平等の 達成に必要であることを認識し、 女子に対する差別の撤廃に関する宣言に掲げられている諸原則を実施すること及びこのために女子 に対するあらゆる形態の差別を撤廃するための必要な措置をとることを決意して、 次のとおり協定した。 第一部 第一条 この条約の適用上、 「女子に対する差別」とは、性に基づく区別、排除又は制限であつて、政治的、 経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、女子(婚姻をしているかいない かを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを 害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。 第二条 締約国は、女子に対するあらゆる形態の差別を非難し、女子に対する差別を撤廃する政策をすべて の適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意し、及びこのため次のことを約束する。 (a) 男女の平等の原則が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定 め、かつ、男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。 (b) 女子に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。) をとること。 - 21 - (c) 女子の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある自国の裁判所 その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女子を効果的に保護することを確保す ること。 (d) 女子に対する差別となるいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの義 務に従つて行動することを確保すること。 (e) 個人、団体又は企業による女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。 (f) 女子に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべて の適当な措置(立法を含む。)をとること。 (g) 女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止すること。 第三条 締約国は、あらゆる分野、特に、政治的、社会的、経済的及び文化的分野において、女子に対して 男子との平等を基礎として人権及び基本的自由を行使し及び享有することを保障することを目的とし て、女子の完全な能力開発及び向上を確保するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。 第四条 1 締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この 条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等 な又は別個の基準を維持し続けることとなつてはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の 目的が達成された時に廃止されなければならない。 2 締約国が母性を保護することを目的とする特別措置(この条約に規定する措置を含む。)をとるこ とは、差別と解してはならない。 第五条 締約国は、次の目的のためのすべての適当な措置をとる。 (a) 両性のいずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び 慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正する こと。 (b) 家庭についての教育に、社会的機能としての母性についての適正な理解並びに子の養育及び発 育における男女の共同責任についての認識を含めることを確保すること。あらゆる場合において、 子の利益は最初に考慮するものとする。 第六条 (略) 第二部(略) 第三部 第十条 締約国は、教育の分野において、女子に対して男子と平等の権利を確保することを目的として、特 に、男女の平等を基礎として次のことを確保することを目的として、女子に対する差別を撤廃するた めのすべての適当な措置をとる。 (a) 農村及び都市のあらゆる種類の教育施設における職業指導、修学の機会及び資格証書の取得の ための同一の条件。このような平等は、就学前教育、普通教育、技術教育、専門教育及び高等技 術教育並びにあらゆる種類の職業訓練において確保されなければならない。 (b) 同一の教育課程、同一の試験、同一の水準の資格を有する教育職員並びに同一の質の学校施設 及び設備を享受する機会 (c) すべての段階及びあらゆる形態の教育における男女の役割についての定型化された概念の撤廃 を、この目的の達成を助長する男女共学その他の種類の教育を奨励することにより、また、特に、 教材用図書及び指導計画を改訂すること並びに指導方法を調整することにより行うこと。 (d) 奨学金その他の修学援助を享受する同一の機会 - 22 - (e) 継続教育計画(成人向けの及び実用的な識字計画を含む。)、特に、男女間に存在する教育上の 格差をできる限り早期に減少させることを目的とした継続教育計画を利用する同一の機会 (f) 女子の中途退学率を減少させること及び早期に退学した女子のための計画を策定すること。 (g) スポーツ及び体育に積極的に参加する同一の機会 (h) 家族の健康及び福祉の確保に役立つ特定の教育的情報(家族計画に関する情報及び助言を含 む。)を享受する機会 第一一条から第一四条まで(略) 第四部以下(略) - 23 - 〔第2問〕(配点:50) A国には,B国国民で私企業Xの関係者が多く在留している。ある日,私企業Xが,A国国内の 民間ホテルで開催した集会に,多くのB国国民が出席した。A国の反B国政治集団Yは,A国のB 国に関する友好的政策に対して,常に批判的政治活動を行っている。その日,集団Yがこの集会に 押し掛けて,会場に掲げられていたB国の国旗を引きずり下ろして燃やしたり,集会に参加してい たB国国民に対して,暴行などを加えたりしたため,多数のけが人が出た。通報を受けて警察官が 駆け付けたが,特に措置は採らず,むしろ集団Yの行動に加わる警察官もあった。A国は, 「当該事 実が,B国の名誉並びにA国とB国間の友好的関係を侵害するものであったことは遺憾であり陳謝 する。」としてB国に向けて公式に陳謝した。A国とB国との間の交渉では,A国は国家責任の発生 を認めたが,陳謝によって既にこの問題は解決済みであり,これ以上の救済は不要であるとの主張 を繰り返したため,救済について両国間の合意は得られなかった。しかも,B国国内では,被害を 受けたB国国民の関係者らから,A国の責任を追及せよとの声が上がっている。 そこで,B国は,A国が国家責任の発生は認めているものの,いまだ救済は十分ではないとして, 発生したすべての損害に関する救済について,国際裁判に訴えを提起しようと考えている。この場 合の請求の在り方について論じなさい。 なお,国籍継続及び国内救済の完了といった国家責任の追及の要件については論ずる必要はない。 - 24 - 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)] - 25 - [国際関係法(私法系)] 〔第1問〕(配点:50) 甲国法について以下の3点が確認されていることを前提として,後記の問題に答えよ。なお,各 問は独立した問いである。 1.国際私法第a条は, 「婚姻の方式は当事者の一方の本国法又は挙行地法による」と定め,第b条 は,「相続は被相続人の本国法による」と定めている。 2. 「領事の職務及び権限に関する法律」第c条は, 「領事は甲国人間の婚姻又は甲国人と外国人と の婚姻を挙行することができる」と定めている。 3.民法第d条は,「配偶者は互いに相続人となる」と定め,第e条は,「被相続人の配偶者,子及 び直系尊属がいない場合,兄弟姉妹が相続人となる」と定めている。 〔設 問〕 1.日本人女Yは,甲国人男Aと日本にある甲国領事館において,甲国法に従い甲国領事の関与 の下に婚姻を挙行した。しかし,日本法の定める婚姻の届出をしなかった。この時点で,AY 間の婚姻は日本において有効と扱われるか。 2.その後,YとAは甲国において夫婦として生活を送っていた。婚姻から20年が経過した時 点で,遺言をすることなくAは甲国で死亡した。Aには子も直系尊属もいない。Aは日本にお いて不動産を所有していたので,日本に帰国したYがこの不動産に居住していたところ,Aの 弟である甲国人Xは,日本法上の婚姻の届出を欠くためAY間の婚姻は無効であり,自己がA の相続人であると主張して,日本の裁判所においてYに対してその居住する不動産の明渡しを 求めた。Yは,自己がAの相続人であると主張して,Xの明渡し請求を拒むことができるか。 なお,この請求につき日本の裁判所は国際的裁判管轄権を有しているものとする。 - 26 - 〔第2問〕(配点:50) Xは,衣料品及び生活用雑貨の販売を目的とする日本の会社であり,日本以外に活動の拠点はな い。Yは,衣料品及び生活用雑貨の製造・販売を目的とする乙国に主たる営業所を有する乙国の会 社であり,乙国で製造した衣料品等を大量に世界各地に輸出しているが,日本にも社員1人が常駐 する事務所を有している。 Xは,Yの日本の事務所からYが製造したスニーカーに関する情報を入手し,それが価格に見合 う以上の品質を有していたため,XY間で以前に衣料品について継続的な取引関係があったことで もあり,Yからこのスニーカーを購入することにした。Xは,商品を特定し,価格,数量等を提示 してYに対して購入の引き合いを出したところ,Yは,直ちに,売買代金は合衆国ドルで支払うこ と,Xは船積期間開始の前日までに日本の銀行の信用状を開設すること,Xが信用状を開設しない 場合にはYは催告を要せず契約を解除できること,商品の引渡しは一定の時期に乙国の港でYが手 配した船舶への船積によること等を取引条件とする契約の申込みを,乙国の営業所からファクシミ リで日本のXの営業所あてに行い,Xはそれを承諾する旨の返事をファクシミリで返信した。なお, XY間において,今回の取引では準拠法についての明示の取決めはないが,従前の衣料品の取引で は,日本法を準拠法とする合意があった。 その後,Xは資金繰りが悪くなり,Yに船積開始の日を遅らせるように依頼したが,Yは予定ど おりに船積する旨を連絡した。Xは船積期間開始の前日までに信用状を開設しなかったため,Yは 船積期間開始の日にファクシミリでXに対して契約解除を通知し,この通知は同日Xに到達した。 しかし,Xは,船積期間(7日間)の終了の3日前に信用状を開設し,翌日Yにその通知がされた が,Yは船積をしなかった。 Xは,Xが信用状を開設したにもかかわらずYが注文の品を送ってこなかったことはYの債務不 履行であると主張し,Yに対して損害賠償を請求している。 以上の事実を前提として以下の問題に答えよ。なお,各問は独立した問いである。 〔設 問〕 1.XがYに対する損害賠償請求の訴えを日本の裁判所に提起した場合に,日本の裁判所は,Y の事務所が日本にあることを理由にこの訴えを審理・判断することができるか。 2.日本の裁判所が管轄権を有する場合に,XのYに対する請求については,いかなる国の法律 によって判断すべきか。 3.XY間に本契約について日本法を準拠法とする明示の合意があった場合に,Xは,Yが船積 をしなかったことを理由に,Yに対してその責任を問うことができるか。 - 27 - - 28 - 論文式試験問題集[環 - 29 - 境 法] [環 境 法] 〔第1問〕(配点:50) A市では,B工場(大気汚染防止法の特定施設に該当する)の操業に伴ってばい煙が発生してお り,住民Cらは,そのために自己の居住地周辺のばい煙の状態が環境基準を超え,受忍限度を超え る被害を受けていること,及び,B工場の排出するばい煙が,大気汚染防止法の定める規制値を超 えていることを訴えている。 〔設 問〕 1.この場合において,住民Cらが被害の回復や,将来における被害の防止を求めるために,採 り得る手段としてどのような手続があるかを挙げ,それぞれの特色について述べよ。 2.大気汚染防止法の規制値を超えていることは,訴訟手続においてどのような意味を持つか。 - 30 - 〔第2問〕(配点:50) Y社は,A県B町において,廃プラスチック類,ゴムくず,金属くずを埋立処分する最終処分場 の建設と操業を計画した。 Yが操業開始までに考慮しなければならない環境法上の問題点を説明しなさい(訴訟上の論点に 触れる必要はない。)。 (参照条文)一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令 (昭和五十二年三月十四日総理府・厚生省令第一号)(抜粋) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第八条第二項及び第四項並 びに第十五条第二項及び第三項の規定に基づき、一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分 場に係る技術上の基準を定める命令を次のように定める。 (一般廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準) 第一条 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「法」という。) 第八条の二第一項第一号の規定による一般廃棄物の最終処分場の技術上の基準は、次のとおりとす る。 一 埋立処分の場所(以下「埋立地」という。)の周囲には、みだりに人が埋立地に立ち入るのを防 止することができる囲い(次項第十七号の規定により閉鎖された埋立地を埋立処分以外の用に供 する場合においては、埋立地の範囲を明らかにすることができる囲い、杭その他の設備)が設け られていること。 二 入口の見やすい箇所に、様式第一により一般廃棄物の最終処分場であることを表示する立札そ の他の設備が設けられていること。 三 地盤の滑りを防止し、又は最終処分場に設けられる設備の沈下を防止する必要がある場合にお いては、適当な地滑り防止工又は沈下防止工が設けられていること。 四 埋め立てる一般廃棄物の流出を防止するための擁壁、えん堤その他の設備であつて、次の要件 を備えたもの(以下「擁壁等」という。)が設けられていること。 イ 自重、土圧、水圧、波力、地震力等に対して構造耐力上安全であること。 ロ 埋め立てる一般廃棄物、地表水、地下水及び土壌の性状に応じた有効な腐食防止のための措 置が講じられていること。 五 埋立地(内部仕切設備により区画して埋立処分を行う埋立地については、埋立処分を行つてい る区画。以下この号、第六号及び次項第十二号において同じ。)からの浸出液による公共の水域及 び地下水の汚染を防止するための次に掲げる措置が講じられていること。ただし、公共の水域及 び地下水の汚染を防止するために必要な措置を講じた一般廃棄物のみを埋め立てる埋立地につい ては、この限りでない。 イ 埋立地(地下の全面に厚さが五メートル以上であり、かつ、透水係数が毎秒百ナノメートル (岩盤にあつては、ルジオン値が一)以下である地層又はこれと同等以上の遮水の効力を有す る地層(以下「不透水性地層」という。)があるものを除く。以下イにおいて同じ。)には、一 般廃棄物の投入のための開口部及びニに規定する保有水等集排水設備の部分を除き、一般廃棄 物の保有水及び雨水等(以下「保有水等」という。)の埋立地からの浸出を防止するため、次の 要件を備えた遮水工又はこれと同等以上の遮水の効力を有する遮水工を設けること。ただし、 埋立地の内部の側面又は底面のうち、その表面に不透水性地層がある部分については、この限 りでない。 (1) 次のいずれかの要件を備えた遮水層又はこれらと同等以上の効力を有する遮水層を有する こと。ただし、遮水層が敷設される地盤(以下「基礎地盤」という。)のうち、そのこう配が 五十パーセント以上であつて、かつ、その高さが保有水等の水位が達するおそれがある高さ - 31 - を超える部分については、当該基礎地盤に吹き付けられたモルタルの表面に、保有水等の浸 出を防止するために必要な遮水の効力、強度及び耐久力を有する遮水シート(以下「遮水シ ート」という。)若しくはゴムアスファルト又はこれらと同等以上の遮水の効力、強度及び耐 久力を有する物を遮水層として敷設した場合においては、この限りでない。 (イ) 厚さが五十センチメートル以上であり、かつ、透水係数が毎秒十ナノメートル以下であ る粘土その他の材料の層の表面に遮水シートが敷設されていること。 (ロ) 厚さが五センチメートル以上であり、かつ、透水係数が毎秒一ナノメートル以下である アスファルト・コンクリートの層の表面に遮水シートが敷設されていること。 (ハ) 不織布その他の物(二重の遮水シートが基礎地盤と接することによる損傷を防止するこ とができるものに限る。)の表面に二重の遮水シート(当該遮水シートの間に、埋立処分に 用いる車両の走行又は作業による衝撃その他の負荷により双方の遮水シートが同時に損傷 することを防止することができる十分な厚さ及び強度を有する不織布その他の物が設けら れているものに限る。)が敷設されていること。 (2) 基礎地盤は、埋め立てる一般廃棄物の荷重その他予想される負荷による遮水層の損傷を防 止するために必要な強度を有し、かつ、遮水層の損傷を防止することができる平らな状態で あること。 (3) 遮水層の表面を、日射によるその劣化を防止するために必要な遮光の効力を有する不織布 又はこれと同等以上の遮光の効力及び耐久力を有する物で覆うこと。ただし、日射による遮 水層の劣化のおそれがあると認められない場合には、この限りでない。 ロ 埋立地(地下の全面に不透水性地層があるものに限る。以下ロにおいて同じ。)には、保有水 等の埋立地からの浸出を防止するため、開口部を除き、次のいずれかの要件を備えた遮水工又 はこれらと同等以上の遮水の効力を有する遮水工を設けること。 (1) 薬剤等の注入により、当該不透水性地層までの埋立地の周囲の地盤が、ルジオン値が一以 下となるまで固化されていること。 (2) 厚さが五十センチメートル以上であり、かつ、透水係数が毎秒十ナノメートル以下である 壁が埋立地の周囲に当該不透水性地層まで設けられていること。 (3) 鋼矢板(他の鋼矢板と接続する部分からの保有水等の浸出を防止するための措置が講じら れるものに限る。)が埋立地の周囲に当該不透水性地層まで設けられていること。 (4) ハ イ(1)から(3)までに掲げる要件 地下水により遮水工が損傷するおそれがある場合には、地下水を有効に集め、排出すること ができる堅固で耐久力を有する管渠その他の集排水設備(以下「地下水集排水設備」という。) を設けること。 ニ 埋立地には、保有水等を有効に集め、速やかに排出することができる堅固で耐久力を有する 構造の管渠その他の集排水設備(水面埋立処分を行う埋立地については、保有水等を有効に排 出することができる堅固で耐久力を有する構造の余水吐きその他の排水設備。以下「保有水等 集排水設備」という。)を設けること。ただし、雨水が入らないよう必要な措置が講じられる埋 立地(水面埋立処分を行う埋立地を除く。)であつて、腐敗せず、かつ、保有水が生じない一般 廃棄物のみを埋め立てるものについては、この限りでない。 ホ 保有水等集排水設備により集められ、ヘに規定する浸出液処理設備に流入する保有水等の水 量及び水質を調整することができる耐水構造の調整池を設けること。ただし、水面埋立処分を 行う最終処分場又はヘただし書に規定する最終処分場にあつては、この限りでない。 ヘ 保有水等集排水設備により集められた保有水等(水面埋立処分を行う埋立地については、保 有水等集排水設備により排出される保有水等。以下同じ。)に係る放流水の水質を別表第一の上 欄に掲げる項目ごとに同表の下欄に掲げる排水基準及び法第八条第二項第七号に規定する一般 廃棄物処理施設の維持管理に関する計画(以下「維持管理計画」という。)に放流水の水質につ - 32 - いて達成することとした数値(ダイオキシン類(ダイオキシン類対策特別措置法(平成十一年 法律第百五号)第二条第一項に規定するダイオキシン類をいう。)に関する数値を除く。)が定 められている場合における当該数値(以下「排水基準等」という。)並びにダイオキシン類対策 特別措置法施行規則(平成十一年総理府令第六十七号)別表第二の下欄に定めるダイオキシン 類の許容限度(維持管理計画においてより厳しい数値を達成することとした場合にあつては、 当該数値)に適合させることができる浸出液処理設備を設けること。ただし、保有水等集排水 設備により集められた保有水等を貯留するための十分な容量の耐水構造の貯留槽が設けられ、 かつ、当該貯留槽に貯留された保有水等が当該最終処分場以外の場所に設けられた本文に規定 する浸出液処理設備と同等以上の性能を有する水処理設備で処理される最 終 処 分 場 に あ つ て は、この限りでない。 六 埋立地の周囲には、地表水が埋立地の開口部から埋立地へ流入するのを防止することができる 開渠その他の設備が設けられていること。 2 法第八条の三の規定による一般廃棄物の最終処分場の維持管理の技術上の基準は、次のとおりと する。 一 埋立地の外に一般廃棄物が飛散し、及び流出しないように必要な措置を講ずること。 二 最終処分場の外に悪臭が発散しないように必要な措置を講ずること。 三 火災の発生を防止するために必要な措置を講ずるとともに、消火器その他の消火設備を備えて おくこと。 四 ねずみが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないように薬剤の散布その他必要な措置 を講ずること。 五 前項第一号の規定により設けられた囲いは、みだりに人が埋立地に立ち入るのを防止すること ができるようにしておくこと。ただし、第十七号の規定により閉鎖された埋立地を埋立処分以外 の用に供する場合においては、同項第一号括弧書の規定により設けられた囲い、杭その他の設備 により埋立地の範囲を明らかにしておくこと。 六 前項第二号の規定により設けられた立札その他の設備は、常に見やすい状態にしておくととも に、表示すべき事項に変更が生じた場合には、速やかに書換えその他必要な措置を講ずること。 七 前項第四号の規定により設けられた擁壁等を定期的に点検し、擁壁等が損壊するおそれがある と認められる場合には、速やかにこれを防止するために必要な措置を講ずること。 八 埋め立てる一般廃棄物の荷重その他予想される負荷により、前項第五号イ又はロ((1)から(3) までを除く。)の規定により設けられた遮水工が損傷するおそれがあると認められる場合には、一 般廃棄物を埋め立てる前に遮水工の表面を砂その他の物により覆うこと。 九 前項第五号イ又はロの規定により設けられた遮水工を定期的に点検し、その遮水効果が低下す るおそれがあると認められる場合には、速やかにこれを回復するために必要な措置を講ずること。 十 埋立地からの浸出液による最終処分場の周縁の地下水の水質への影響の有無を判断することが できる二以上の場所から採取され、又は地下水集排水設備により排出された地下水(水面埋立処 分を行う最終処分場にあつては、埋立地からの浸出液による最終処分場の周辺の水域の水又は周 縁の地下水の水質への影響の有無を判断することができる二以上の場所から採取された当該水域 の水又は当該地下水)の水質検査を次により行うこと。 イ 埋立処分開始前に別表第二の上欄に掲げる項目(以下「地下水等検査項目」という。)、電気 伝導率及び塩化物イオンについて測定し、かつ、記録すること。ただし、最終処分場の周縁の 地下水(水面埋立処分を行う最終処分場にあつては、周辺の水域の水又は周縁の地下水。以下 「地下水等」という。)の汚染の有無の指標として電気伝導率及び塩化物イオンの濃度を用いる ことが適当でない最終処分場にあつては、電気伝導率及び塩化物イオンについては、この限り でない。 ロ 埋立処分開始後、地下水等検査項目について一年に一回(イただし書に規定する最終処分場 - 33 - にあつては、六月に一回)以上測定し、かつ、記録すること。ただし、埋め立てる一般廃棄物 の種類及び保有水等集排水設備により集められた保有水等の水質に照らして地下水等の汚染が 生ずるおそれがないことが明らかな項目については、この限りでない。 ハ 埋立処分開始後、電気伝導率又は塩化物イオンについて一月に一回以上測定し、かつ、記録 すること。ただし、イただし書に規定する最終処分場にあつては、この限りでない。 ニ ハの規定により測定した電気伝導率又は塩化物イオンの濃度に異状が認められた場合には、 速やかに、地下水等検査項目について測定し、かつ、記録すること。 十一 前号イ、ロ又はニの規定による地下水等検査項目に係る水質検査の結果、水質の悪化(その 原因が当該最終処分場以外にあることが明らかであるものを除く。)が認められた場合には、その 原因の調査その他の生活環境の保全上必要な措置を講ずること。 十二 前項第五号ニただし書に規定する埋立地については、埋立地に雨水が入らないように必要な 措置を講ずること。 十三 前項第五号ホの規定により設けられた調整池を定期的に点検し、調整池が損壊するおそれが あると認められる場合には、速やかにこれを防止するために必要な措置を講ずること。 十四 イ ロ 前項第五号ヘの規定により設けられた浸出液処理設備の維持管理は、次により行うこと。 放流水の水質が排水基準等に適合することとなるように維持管理すること。 浸出液処理設備の機能の状態を定期的に点検し、異状を認めた場合には、速やかに必要な措 置を講ずること。 ハ 放流水の水質検査を次により行うこと。 (1) 排水基準等に係る項目((2)に規定する項目を除く。)について一年に一回以上測定し、か つ、記録すること。 (2) 水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量、化学的酸素要求量、浮遊物質量及び窒素含有量 (別表第一の備考4に規定する場合に限る。)について一月に一回(埋め立てる一般廃棄物の 種類及び保有水等の水質に照らして公共の水域及び地下水の汚染が生ずるおそれがないこと が明らかな項目については、一年に一回)以上測定し、かつ、記録すること。 十五 前項第六号の規定により設けられた開渠その他の設備の機能を維持するとともに、当該設備 により埋立地の外に一般廃棄物が流出することを防止するため、開渠に堆積した土砂等の速やか な除去その他の必要な措置を講ずること。 十六 通気装置を設けて埋立地から発生するガスを排除すること。 十七 埋立処分が終了した埋立地 (内部仕切設備により区画して埋立処分を行う埋立地については、 埋立処分が終了した区画。以下この号及び次条第二項第一号ニにおいて同じ。)は、厚さがおおむ ね五十センチメートル以上の土砂による覆いその他これに類する覆いにより開口部を閉鎖するこ と。ただし、前項第五号ニただし書に規定する埋立地については、同号イ(1) (イ)から(ハ) までのいずれかの要件を備えた遮水層に不織布を敷設したものの表面を土砂で覆つた覆い又はこ れと同等以上の遮水の効力、遮光の効力、強度及び耐久力を有する覆いにより閉鎖すること。 十八 前号の規定により閉鎖した埋立地については、同号に規定する覆いの損壊を防止するために 必要な措置を講ずること。 十九 残余の埋立容量について一年に一回以上測定し、かつ、記録すること。 二十 埋め立てられた一般廃棄物の種類及び数量並びに最終処分場の維持管理に当たつて行つた点 検、検査その他の措置の記録を作成し、当該最終処分場の廃止までの間、保存すること。 3 法第九条第五項(法第九条の三第十項において準用する場合を含む。)の規定による一般廃棄物の 最終処分場の廃止の技術上の基準は、廃棄物が埋め立てられている一般廃棄物の最終処分場にあつ ては次のとおりとし、廃棄物が埋め立てられていない一般廃棄物の最終処分場にあつては廃棄物が 埋め立てられていないこととする。 一 最終処分場が、第一項(第一号、第二号並びに第五号ホ及びヘを除く。)に規定する技術上の基 - 34 - 準に適合していないと認められないこと。 二 最終処分場の外に悪臭が発散しないように必要な措置が講じられていること。 三 火災の発生を防止するために必要な措置が講じられていること。 四 ねずみが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないように必要な措置が講じられている こと。 五 前項第十号の規定により採取された地下水等の水質が、次に掲げる水質検査の結果、それぞれ 次のいずれにも該当しないと認められること。ただし、同号イ、ロ又はニの規定による地下水等 検査項目に係る水質検査の結果、水質の悪化(その原因が当該最終処分場以外にあることが明ら かなものを除く。)が認められない場合においては、この限りでない。 イ 前項第十号ロ又はニの規定による地下水等検査項目に係る水質検査の結果、地下水等の水質 が、地下水等検査項目のいずれかについて当該地下水等検査項目に係る別表第二下欄に掲げる 基準に現に適合していないこと。 ロ 前項第十号イ、ロ又はニの規定による地下水等検査項目に係る水質検査の結果、当該検査に よつて得られた数値の変動の状況に照らして、地下水等の水質が、地下水等検査項目のいずれ かについて当該地下水等検査項目に係る別表第二下欄に掲げる基準に適合しなくなるおそれが あること。 六 保有水等集排水設備により集められた保有水等の水質が、イ及びロに掲げる項目についてそれ ぞれイ及びロに掲げる頻度で二年(埋め立てる一般廃棄物の性状を著しく変更した場合にあつて は、当該変更以後の二年)以上にわたり行われた水質検査の結果、すべての項目について排水基 準等に適合していると認められること。ただし、第一項第五号ニただし書に規定する埋立地につ いては、この限りでない。 イ 排水基準等に係る項目(ロに掲げる項目を除く。) ロ 前項第十四号ハ(2)に規定する項目 七 六月に一回以上 三月に一回以上 埋立地からガスの発生がほとんど認められないこと又はガスの発生量の増加が二年以上にわた り認められないこと。 八 埋立地の内部が周辺の地中の温度に比して異常な高温になつていないこと。 九 前項第十七号に規定する覆いにより開口部が閉鎖されていること。 十 前項第十七号ただし書に規定する覆いについては、沈下、亀裂その他の変形が認められないこ と。 十一 埋立地からの浸出液又はガスが周辺地域の生活環境に及ぼす影響その他の最終処分場が周辺 地域の生活環境に及ぼす影響による生活環境の保全上の支障が現に生じていないこと。 (産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準) 第二条 法第十五条の二第一項第一号の規定による産業廃棄物の最終処分場の技術上の基準は、前条 第一項第三号の規定の例によるほか、次のとおりとする。 一 入口の見やすい箇所に、様式第二により産業廃棄物の最終処分場(廃棄物の処理及び清掃に関 する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号。以下「令」という。)第七条第十四号イに掲げる産 業廃棄物の最終処分場(以下「遮断型最終処分場」という。)のうち、令第六条の五第一項第三号 イ(1)から(6)までに掲げる特別管理産業廃棄物の埋立処分の用に供されるものにあつては有害な 特別管理産業廃棄物の最終処分場、当該特別管理産業廃棄物の埋立処分の用に供されないものに あつては有害な産業廃棄物の最終処分場)であることを表示する立札その他の設備が設けられて いること。 二 遮断型最終処分場にあつては、前条第一項第六号の規定の例によるほか、次の要件を備えてい ること。 イ 埋立地の周囲には、みだりに人が埋立地に立ち入るのを防止することができる囲いが設けら れていること。 - 35 - ロ 埋立地には、産業廃棄物の投入のための開口部を除き、次の要件を備えた外周仕切設備が設 けられていること。 (1) 日本工業規格A一一〇八(コンクリートの圧縮強度試験方法)により測定した一軸圧縮強 度が一平方ミリメートルにつき二十五ニュートン以上で、水密性を有する鉄筋コンクリート で造られ、かつ、その厚さが三十五センチメートル以上であること又はこれと同等以上の遮 断の効力を有すること。 (2) 前条第一項第四号イに掲げる要件を備えていること。 (3) 埋め立てた産業廃棄物と接する面が遮水の効力及び腐食防止の効力を有する材料で十分に 覆われていること。 (4) 地表水、地下水及び土壌の性状に応じた有効な腐食防止のための措置が講じられているこ と。 (5) ハ 目視等により損壊の有無を点検できる構造であること。 面積が五十平方メートルを超え、又は埋立容量が二百五十立方メートルを超える埋立地は、 ロ(1)から(4)までに掲げる要件を備えた内部仕切設備により、一区画の面積がおおむね五十平 方メートルを超え、又は一区画の埋立容量がおおむね二百五十立方メートルを超えないように 区画すること。 三 令第七条第十四号ロに掲げる産業廃棄物の最終処分場(以下「安定型最終処分場」という。)に あつては、前条第一項第四号の規定の例によるほか、次の要件を備えていること。 イ 埋立地の周囲には、みだりに人が埋立地に立ち入るのを防止することができる囲い(次項第 二号トの規定により閉鎖された埋立地については、埋立地の範囲を明らかにすることができる 囲い、杭その他の設備)が設けられていること。 ロ 擁壁等の安定を保持するため必要と認められる場合においては、埋立地の内部の雨水等を排 出することができる設備が設けられていること。 ハ 埋め立てられた産業廃棄物への安定型産業廃棄物(令第六条第一項第三号イに規定する安定 型産業廃棄物をいう。以下同じ。)以外の廃棄物の付着又は混入の有無を確認するための水質検 査に用いる浸透水(安定型産業廃棄物の層を通過した雨水等をいう。以下同じ。)を埋立地から 採取することができる設備(以下「採取設備」という。)が設けられていること。 四 令第七条第十四号ハに掲げる産業廃棄物の最終処分場(以下「管理型最終処分場」という。)に あつては、前条第一項第一号及び第四号から第六号までの規定の例によること。 2 法第十五条の二の二の規定による産業廃棄物の最終処分場の維持管理の技術上の基準は、前条第 二項第一号から第四号まで及び第六号の規定の例によるほか、次のとおりとする。 一 遮断型最終処分場の維持管理は、前条第二項第十号から第十二号まで、第十五号及び第十九号 の規定の例によるほか、次によること。 イ 前項第二号イの規定により設けられた囲いは、みだりに人が埋立地に立ち入るのを防止する ことができるようにしておくこと。 ロ 埋立地(内部仕切設備により区画して埋立処分を行う埋立地については、埋立処分を行おう とする区画)にたまつている水は、当該埋立地又は区画における埋立処分開始前に排除するこ と。 ハ 前項第二号ロの規定により設けられた外周仕切設備及び同号ハの規定により設けられた内部 仕切設備を定期的に点検し、これらの設備の損壊又は埋め立てられた産業廃棄物の保有水の浸 出のおそれがあると認められる場合には、速やかに最終処分場への産業廃棄物の搬入及び埋立 処分を中止するとともに、これらの設備の損壊又は埋め立てられた産業廃棄物の保有水の浸出 を防止するために必要な措置を講ずること。 ニ 埋立処分が終了した埋立地は、速やかに前項第二号ロ(1)から(4)までに掲げる要件を備えた 覆いにより閉鎖すること。 - 36 - ホ ニの規定により閉鎖した埋立地(内部仕切設備により区画して埋立処分を行う埋立地につい ては、ニの規定により閉鎖した区画)については、覆いを定期的に点検し、覆いの損壊又は埋 め立てられた産業廃棄物の保有水の浸出のおそれがあると認められる場合には、速やかに覆い の損壊又は埋め立てられた産業廃棄物の保有水の浸出を防止するために必要な措置を講ずるこ と。 ヘ 埋立地(前項第二号ハの規定により区画して埋立処分を行う埋立地については、埋立処分を 行つている区画)に埋め立てられた産業廃棄物の種類及び数量並びに最終処分場の維持管理に 当たつて行つた点検、検査その他の措置の記録を作成し、当該最終処分場の廃止までの間、保 存すること。 二 安定型最終処分場の維持管理は、前条第二項第七号、第十九号及び第二十号の規定の例による ほか、次によること。 イ 前項第三号イの規定により設けられた囲いは、みだりに人が埋立地に立ち入るのを防止する ことができるようにしておくこと。ただし、トの規定により閉鎖された埋立地については、同 号イ括弧書の規定により設けられた囲い、杭その他の設備により、埋立地の範囲を明らかにし ておくこと。 ロ 産業廃棄物を埋め立てる前に、最終処分場に搬入した産業廃棄物を展開して当該産業廃棄物 への安定型産業廃棄物以外の廃棄物の付着又は混入の有無について目視による検査を行い、そ の結果、安定型産業廃棄物以外の廃棄物の付着又は混入が認められる場合には、当該産業廃棄 物を埋め立てないこと。 ハ 浸透水による最終処分場の周縁の地下水の水質への影響の有無を判断することができる二以 上の場所から採取された地下水の水質検査を次により行うこと。 (1) 埋立処分開始前に地下水等検査項目について測定し、かつ、記録すること。 (2) 埋立処分開始後、地下水等検査項目について一年に一回以上測定し、かつ、記録すること。 ただし、浸透水の水質等に照らして当該最終処分場の周縁の地下水の汚染が生ずるおそれが ないことが明らかな項目については、この限りでない。 ニ ハの規定による水質検査の結果、水質の悪化(その原因が当該最終処分場以外にあることが 明らかであるものを除く。)が認められる場合には、その原因の調査その他の生活環境の保全上 必要な措置を講ずること。 ホ 採取設備により採取された浸透水の水質検査を、(1)及び(2)に掲げる項目についてそれぞれ (1)及び(2)に掲げる頻度で行い、かつ、記録すること。 (1) 地下水等検査項目 一年に一回以上 (2) 生物化学的酸素要求量又は化学的酸素要求量 一月に一回(埋立処分が終了した埋立地に おいては、三月に一回)以上 ヘ 次に掲げる場合には、速やかに最終処分場への産業廃棄物の搬入及び埋立処分の中止その他 生活環境の保全上必要な措置を講ずること。 (1) ホ(1)に掲げる項目に係る水質検査の結果、地下水等検査項目のいずれかについて当該地下 水等検査項目に係る別表第二下欄に掲げる基準に適合していないとき。 (2) ホ(2)に掲げる項目に係る水質検査の結果、生物化学的酸素要求量が一リットルにつき二十 ミリグラムを超えているとき、又は化学的酸素要求量が一リットルにつき四十ミリグラムを 超えているとき。 ト 埋立処分が終了した埋立地を埋立処分以外の用に供する場合には、厚さがおおむね五十セン チメートル以上の土砂等の覆いにより開口部を閉鎖すること。 チ トの規定により閉鎖した埋立地については、トに規定する覆いの損壊を防止するために必要 な措置を講ずること。 三 管理型最終処分場の維持管理は、前条第二項第五号及び第七号から第二十号まで(鉱さい、ば - 37 - いじん等ガスを発生するおそれのない産業廃棄物のみを埋め立てる最終処分場にあつては、第十 六号を除く。)の規定の例によること。 3 法第十五条の二の五第三項において準用する法第九条第五項の規定による産業廃棄物の最終処分 場の廃止の技術上の基準は、廃棄物が埋め立てられている産業廃棄物の最終処分場にあつては前条 第三項第二号から第四号まで及び第十一号の規定の例によるほか、次のとおりとし、廃棄物が埋め 立てられていない産業廃棄物の最終処分場にあつては廃棄物が埋め立てられていないこととする。 一 遮断型最終処分場にあつては、前条第三項第五号の規定の例によるほか、次によること。 イ 最終処分場が、第一項においてその例によることとされた前条第一項第三号及び第一項第二 号ロに規定する技術上の基準に適合していないと認められないこと。 ロ 前項第一号ニに規定する覆いにより埋立地が閉鎖されていること。 ハ 最終処分場に埋め立てられた産業廃棄物又は第一項第二号ロの規定により設けられた外周仕 切設備について、環境大臣の定める措置が講じられていること。 二 安定型最終処分場にあつては、前条第三項第七号及び第八号の規定の例によるほか、次による こと。 イ 最終処分場が、第一項においてその例によることとされた前条第一項第三号、第一項第三号 においてその例によることとされた同条第一項第四号及び第一項第三号ロに規定する技術上の 基準に適合していないと認められないこと。 ロ 前項第二号ハの規定により採取された地下水の水質が、次に掲げる水質検査の結果、それぞ れ次のいずれにも該当しないと認められること。ただし、同号ハの規定による水質検査の結果、 水質の悪化(その原因が当該最終処分場以外にあることが明らかなものを除く。)が認められな い場合においては、この限りでない。 (1) 前項第二号ハ(2)の規定による水質検査の結果、地下水の水質が、地下水等検査項目のいず れかについて当該地下水等検査項目に係る別表第二下欄に掲げる基準に現に適合していない こと。 (2) 前項第二号ハの規定による水質検査の結果、当該検査によつて得られた数値の変動の状況 に照らして、地下水の水質が、地下水等検査項目のいずれかについて当該地下水等検査項目 に係る別表第二下欄に掲げる基準に適合しなくなるおそれがあること。 ハ 採取設備により採取された浸透水の水質について、次の表の上欄に掲げる項目について行わ れた水質検査の結果、それぞれ同表の下欄に掲げる基準に適合していること。 ニ 地下水等検査項目 別表第二下欄に掲げる基準 生物化学的酸素要求量 一リットルにつき二十ミリグラム以下 厚さがおおむね五十センチメートル以上の土砂等の覆いにより開口部が閉鎖されているこ と。 三 管理型最終処分場にあつては、前条第三項第五号から第十号までの規定の例によるほか、第一 項においてその例によることとされた同条第一項第三号及び第一項第四号においてその例による こととされた同条第一項第四号から第六号まで(第五号ホ及びヘを除く。)に規定する技術上の基 準に適合していないと認められないこと。 4 法第十五条の二の四の規定に基づき設置した一般廃棄物処理施設(一般廃棄物の最終処分場に限 る。)については、その施設において埋め立てられた一般廃棄物を産業廃棄物とみなして、前二項の 規定を適用する。 - 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