短答式試験問題集 [刑法・刑事訴訟法] - 1 - [刑法] 〔第1問〕(配点:2) 正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[No.1]) 1.甲は,乙が甲所有の自動車を盗むのを目撃し,これを追跡したものの見失い,その翌日,窃 取された場所から約2キロメートル離れた路上で,乙がその自動車から降りて立ち去ったのを 認めた。甲は,乙がすぐに戻って来る様子であったので,直ちにその自動車を運転し,自宅に 戻った。この場合,甲には正当防衛が成立する。 2.甲は,散歩中,仲の悪かった乙から大型犬をけしかけられたので,犬から逃げようとして, 偶然その場を通り掛かった丙を突き飛ばして走り去った。甲の行為により,丙は転倒して全治 約1週間を要する足首捻挫の傷害を負った。この場合,甲には正当防衛が成立する。 3.甲は,乙ら数名の男によって監禁されたが,監禁されて2週間後,たまたま見張りが乙一人 になったので,監禁場所から脱出するため,乙の顔面を1回殴打して乙がひるんだ隙にそこか ら逃げた。この場合,甲には正当防衛が成立する。 4.甲は,深夜,路上で,見知らぬ乙から,ナイフを胸元に突き付けられ現金を要求されたので, ナイフを避けるために乙の胸付近を手で押し,走って逃げ出した。甲の行為により,乙は転倒 して後頭部を路面に打ち付け,全治約1か月間を要する頭部打撲の傷害を負った。この場合, 甲には正当防衛は成立しない。 5.甲は,同居していた乙と言い争いをし,乙から「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴られたため,身の危 険を感じて一旦家を出たが,乙と仲直りをしようと考え直し,乙から暴力を振るわれることが あるかもしれないと思いつつ,家に戻って乙に謝罪した。しかし,甲は,乙に数回顔面を殴ら れた上,更に殴り続けられそうになったことから憤激し,とっさに乙の脇腹付近を1回蹴り, 乙に全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負わせた。この場合,甲には正当防衛は成立し ない。 〔第2問〕(配点:2) 偽証罪に関する次の【見解】に従って後記1から5までの【記述】を検討し,誤っているものを 2個選びなさい。(解答欄は,[No.2] ,[No.3]順不同) 【見 解】 A説:偽証罪は,宣誓した証人が客観的事実に反する陳述をした場合に成立する。 B説:偽証罪は,宣誓した証人が自己の記憶に反して陳述をした場合に成立する。 【記 述】 1.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反すると思いながら陳述したが,それが客観 的事実に合致していた場合,A説によれば,偽証罪は成立しない。 2.上記1の場合,B説によれば,偽証罪は成立しない。 3.証人が客観的事実に反しないと思いながら自己の記憶どおりに陳述したが,それが客観的事 実に合致していない場合,A説によれば,偽証罪が成立する。 4.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反すると思いながら陳述し,それが客観的事 実に合致していない場合,A説によっても,B説によっても,偽証罪が成立する。 5.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反しないと信じて陳述したが,それが客観的 事実に合致していない場合,A説によれば,偽証罪は成立しない。 - 2 - 〔第3問〕(配点:2) 学生Aと学生Bは,次の【事例】について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の @からFの( )内に,後記aからnまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,( )内に 入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.4]) 【事 例】 甲は,過去数回,飲酒酩酊の上,正常な運転ができない状態で自動車を運転し,物損事故を起 こして運転免許取消処分を受けていたが,運転免許を再取得しないまま,自動車の運転を続けて いた。 ある日,甲は,自動車を運転して居酒屋に行き,同居酒屋で飲酒し始めたが,仮に酩酊して正 常な運転ができない状態になっても,自動車を運転して帰宅するつもりであった。 甲は,同居酒屋で日本酒1升を飲み,酩酊して是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動 を制御する能力を失った状態で,帰宅するために自動車の運転を開始した。しかし,甲は,飲酒 酩酊により正常な運転ができなかったため,自車を歩道上に乗り上げさせて歩行中の乙を跳ね飛 ばし,乙を死亡させた。 【会 話】 学生A.この事例は,構成要件としては, (@)罪に当てはまりそうだけど,甲は,運転開始時, 是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動を制御する能力を失った状態だね。 学生B.そうすると,運転開始時に甲は(A)がなかったことになるから,甲は不可罰になるの だろうか。 学生A.甲が(A)に影響が出ない程度に飲酒して,正常な運転が困難な状態で自動車を運転し ていたら(@)罪が成立するのに,この事例が不可罰になるなんて納得できないな。 学生B.こういう場合に,甲の可罰性を根拠付ける理論として,(B)があったね。 学生A.確か「直接結果を惹起した行為の際には(A)がなくても,その原因となった行為の際 に完全な(A)があれば,完全な責任が問いうる。」という理論だったよね。 学生B.この理論の根拠は何だろう。 学生A.(C)を維持しつつ,構成要件該当事実を原因行為まで遡及させる立場と,(C)の例外 を認め,責任だけを原因行為時に遡及させる立場があるよね。 学生B.(A)を欠いた自分を道具として利用すると捉え,(D)と同様に考える見解は,前者の 立場に分類されるね。 学生A.だけど,甲が乙を自動車ではねた時点で甲自身が道具といえるか問題となる場合とし て,甲が(E)だった場合があるね。 学生B.確かに,道具といえるか問題があるね。判例は,(E)の場合,(B)の理論を(F)よ ね。 【語句群】 a.業務上過失致死 b.危険運転致死 e.原因において違法な行為 c.責任能力 d.行為能力 f.原因において自由な行為 g.行為と責任の同時存在の原則 h.罪刑法定主義 j.間接正犯 l.心神耗弱 k.心神喪失 n.適用していない 1.@a Ac Be Cg Dj El Fm 2.@a Ad Bf Cg Di El Fn 3.@b Ac Bf Cg Dj El Fm 4.@b Ac Bf Ch Di Ek Fn 5.@b Ad Be Cg Dj Ek Fm - 3 - i.共謀共同正犯 m.適用している 〔第4問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答 欄は,[No.5],[No.6]順不同) 1.甲は,乙から商品を購入する際,偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として交付 した。甲には詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,両罪は観念的競合となる。 2.甲は,自動販売機に投入して飲料水と釣銭を不正に得る目的で,外国硬貨の周囲を削って5 00円硬貨と同じ大きさにした。甲には通貨偽造罪が成立する。 3.甲は,警察官から道路交通法違反(無免許運転)の疑いで取調べを受けた際,交通事件原票 中の供述書欄に,あらかじめ承諾を得ていた実兄乙の名義で署名指印した。甲には有印私文書 偽造罪が成立する。 4.甲は,当選金を得る目的で,外れた宝くじの番号を当選番号に改ざんした。甲には有印私文 書変造罪が成立する。 5.甲は,運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで,偽造された自 動車運転免許証を携帯して自動車の運転を開始した。甲には偽造公文書行使罪は成立しない。 〔第5問〕(配点:3) 業務上の占有者による横領行為に非占有者が加功した場合の罪責について,教授及び学生が次の 【会話】のとおり議論している。【会話】中の@からDまでの( )内に後記アからキまでの【発 言】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。 (解 答欄は,[No.7]) 【会 話】 教授.保険会社の保険料集金担当従業員である甲が,同社の従業員ではない知人乙と共謀の上, 集金した保険料を横領した事例のように,業務上の占有者に非占有者が加功した場合のそれ ぞれの罪責について,共犯と身分の観点から,どのようなことが問題になりますか。 学生.業務上横領罪の成否に関して,同罪は,単純横領罪との関係では(@)であり,他方,非 占有者との関係では(A)となりますから,特に乙に対して,何罪が成立するのかが問題に なります。 教授.判例ではこの事例はどのような結論になりますか。 学生.判例は,(B)としています。 教授.判例の立場に対しては,どのような批判がなされていますか。 学生.非身分者について罪名と科刑の分離を認めるのは妥当でないという批判がなされています。 教授.この点を克服するための考え方としては,どのようなものがありますか。 学生.刑法第65条第1項は違法身分について規定し,同条第2項は責任身分について規定して いると考え,業務上横領罪については,(C)と捉えた上で,この事例では(D)とする見 解などがあります。 【発 言】 ア.占有の受託者という身分があることによって犯罪行為になる構成的身分犯 イ.業務者という身分があることによって刑が加重・減軽される加減的身分犯 ウ.占有の受託者たる身分は責任身分,業務者たる身分は違法身分 エ.占有の受託者たる身分は違法身分,業務者たる身分は責任身分 オ.刑法第65条第1項により甲には業務上横領罪が,同条第2項により乙には単純横領罪がそ れぞれ成立し,甲及び乙は単純横領罪の範囲で共犯となる カ.刑法第65条第1項により甲及び乙は業務上横領罪の共犯となり,同条第2項により乙に対 しては単純横領罪の刑を科す キ.刑法第65条第1項により甲及び乙は単純横領罪の共犯となり,更に同条第2項により甲に - 4 - ついては業務上横領罪が成立する 1.@ア Aイ Bカ Cウ Dオ 2.@ア Aイ Bキ Cウ Dオ 3.@イ Aア Bオ Cエ Dカ 4.@イ Aア Bカ Cエ Dキ 5.@イ Aア Bキ Cウ Dカ 〔第6問〕(配点:2) 次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,乙に対する詐 欺罪(刑法第246条)が甲に成立しないものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.8],[No.9] 順不同) 1.甲は,乙とトランプ賭博を行った際,乙の手札の内容が分かるよう不正な細工を施したトラ ンプカードを用いて乙を負けさせ,乙に100万円の支払債務を負担させた。 2.甲は,15歳の乙がふだんから多額の現金を持ち歩いているのを知っていたことから,同人 の知識や思慮が足りないことに乗じて現金を手に入れようと考え,乙に対し,借りた現金を返 す意思もないのに返す意思があるように装って10万円の借金を申し込み,これを誤信した乙 から現金10万円の交付を受けた。 3.甲は,乙宅の金品を手に入れようと考え,乙宅で乙と歓談中,「火事だ。」と嘘を言い,乙が その旨誤信して外に逃げた隙に乙宅から現金を持ち去った。 4.甲は,パチンコ店において,通常の方法によってパチンコ台で遊技しているように装って同 店従業員乙の目を欺き,特殊な器具を使ってパチンコ台を誤作動させてパチンコ玉を排出させ, その占有を取得した。 5.甲は,乙に対し,乙の居宅は耐震補強工事をしないと地震の際に危険である旨嘘を言い,そ の旨乙を誤信させて必要のない工事契約を締結させたが,乙には資金がなかったことから,乙 が甲の妻丙が経営する家具店から家具を購入したように仮装して,その購入代金について乙と 信販会社との間で立替払契約を締結させ,これに基づき,同信販会社から丙名義の預金口座に 工事代金相当額の振込みを受けた。 - 5 - 〔第7問〕(配点:3) 両罰規定に関する次の【見解】A説ないしC説に従って,後記【罰則】の適用に関する後記1か ら5までの【記述】を検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.10],[No.11] 順不同) 【見 解】 A説:両罰規定は,法人が無過失であっても代表者や従業者の責任が法人に転嫁されることを政 策的に認めたものである。 B説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については, 法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が推定され,過失責任に基づき法人が 処罰される。 C説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については, 法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が擬制され,過失責任に基づき法人が 処罰される。 【罰 則】 出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し, 又はこれを併科する。 一 事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた者 二 (以下略) 同法第76条の2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業 務に関して第73条の2(中略)の罪(中略)を犯したときは,行為者を罰するほか,その法 人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。 【記 述】 1.A説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせ た場合,甲社に出入国管理及び難民認定法違反の罪(同法第73条の2第1項,第76条の2, 以下「不法就労助長罪」という。)が成立する。 2.A説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場 合,甲社に不法就労助長罪が成立する。 3.B説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせ た場合,甲社の乙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に不法就労 助長罪が成立する。 4.B説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場 合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に 不法就労助長罪が成立する。 5.C説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場 合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に 不法就労助長罪が成立する。 - 6 - 〔第8問〕(配点:2) 公務執行妨害罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを 2個選びなさい。(解答欄は,[No.12],[No.13]順不同) 1.甲は,警察官乙から職務質問を受けた際,乙に対して暴行を加えて傷害を負わせた。甲に乙 に対する公務執行妨害罪が成立する場合,同罪と傷害罪は観念的競合となる。 2.甲は,飲食店Aで無銭飲食した後,A店店員の通報を受けて同店に臨場した制服の警察官乙 の姿を認めるや,乙から事情聴取を受ける前に,その場から逃走する目的で乙を1回殴り,乙 がひるんだ隙に同店から逃げた。甲には公務執行妨害罪は成立しない。 3.甲は,パトロールカーに乗って警ら中の警察官乙を認めるや,以前乙によって逮捕されたこ とを恨んでいたので,乙の乗っていたパトロールカーに石を投げ付けて同車のフロントガラス に命中させ,同ガラスにひび割れを生じさせた。甲には,器物損壊罪が成立するが,公務執行 妨害罪は成立しない。 4.甲は,窃盗を行って制服の警察官乙に追跡されている途中で,乙に暴行を加えて傷害を負わ せた。甲に乙に対する事後強盗致傷罪が成立する場合,公務執行妨害罪は,事後強盗致傷罪に 吸収される。 5.甲は,警察官乙により,逮捕状を示されて逮捕されそうになった際,逮捕を免れるため,乙 に暴行を加えて抵抗したものの,結局,その場で,前記逮捕状により逮捕された。甲には公務 執行妨害罪が成立する。 〔第9問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄 は,[No.14]) 1.甲は,昼間の電車内において,多数の乗客が見ている状態で,恋人の乙が着ていたコートの 前を広げさせてその陰部を露出させた場面を写真撮影した。同写真撮影について乙があらかじ め甲に対して承諾していた場合,公然わいせつ罪の違法性が阻却され,甲には同罪の共同正犯 は成立しない。 2.甲は,重病で苦しんでいる妻乙に同情して,同人の首を絞めて窒息死させた。乙の殺害につ いて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,いずれの構成要件にも該当せ ず,犯罪は成立しない。 3.甲は,乙が保険金をだまし取るのに協力する目的で,乙の右手の親指を包丁で切断した。親 指の切断について乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,傷害罪の構成要 件に該当せず,同罪は成立しない。 4.甲は,11歳の乙の陰部を指で弄ぶなどのわいせつな行為を行った。わいせつな行為をする ことについて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,強制わいせつ罪の構 成要件に該当せず,同罪は成立しない。 5.甲は,妊娠している妻乙と話し合った上,薬物を使用して堕胎させた。堕胎について乙があ らかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,不同意堕胎罪の構成要件に該当せず,同 罪は成立しない。 - 7 - 〔第10問〕(配点:2) 毀棄罪及び損壊罪の「毀棄」, 「損壊」に関する次の【見解】に従って後記アからオまでの【記述】 を検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.15]) 【見 解】 A説:「毀棄」,「損壊」とは,対象物の全部又は一部を物理的に破壊,毀損することである。 B説:「毀棄」,「損壊」とは,対象物を物理的に破壊,毀損することに限らず,対象物の効用を 害する一切の行為を含む。 【記 述】 ア.A説は,例えば飲食店の食器に放尿する行為は,食器を破壊することと同視されるというこ とを論拠の一つとする。 イ.A説によると,建物の美観・外観を汚損するにとどまるビラ貼り行為は,「損壊」に当たら ないことになる。 ウ.B説によれば,毀棄罪又は損壊罪の成否に,原状回復の難易も考慮されることになる。 エ.A説からは,B説に対して,B説に立ちつつ窃盗罪に不法領得の意思が必要とすると,隠匿 目的で他人の物の占有を取得する行為を処罰できなくなるという批判が可能である。 オ.B説からは,信書隠匿罪について,隠匿は「毀棄」,「損壊」の一形態ではないが,信書の隠 匿により,名宛人がその情報に接することが阻害されるために特に設けられたものであるとい うことが可能である。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第11問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。 (解 答欄は,[No.16],[No.17]順不同) 1.甲は,乙が第三者から盗んできた物を,盗品かもしれないと認識していたが,値段が安いの でそれでも構わないと思って有償で譲り受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪は成立 しない。 2.甲は,殺意をもって乙の首を絞め,乙が気絶したのを見て既に窒息死したものと誤信し,乙 を海に投げ込んだところ,乙は海中で溺死した。この場合,甲には殺人罪が成立する。 3.甲は,自己が経営する店において,わいせつな映像を録画したDVDを販売したが,あらか じめ同DVDの映像を再生してその内容を認識していたものの,この程度ではわいせつ図画に 当たらないと考えていた。この場合,甲にはわいせつ図画販売罪が成立しない。 4.甲は,パチンコ店の従業員乙が運搬していた同店の売上金の入ったかばんを強取するため, 乙の後方から,乙の頭部を狙い,殺意をもってけん銃の弾丸を発射したところ,同弾丸は乙の 肩を貫通した上,甲が認識していなかった通行人丙の腹部に命中し,乙と丙にそれぞれ傷害を 負わせた。この場合,甲には,乙に対する強盗殺人未遂罪,丙に対する強盗殺人未遂罪がそれ ぞれ成立し,両罪は観念的競合となる。 5.甲は,乙に対して丙に暴行するよう教唆したところ,乙が丙の頭部を1回殴り,その結果, 丙が転倒して地面に頭部を打ち付け,脳挫傷により死亡した。この場合,甲には傷害致死罪の 教唆犯が成立する。 - 8 - 〔第12問〕(配点:3) 強盗殺人罪に関する次の【見解】A説ないしC説に従って後記【事例】TないしVにおける甲の 罪責を検討し,後記1から5までの【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No. 18],[No.19]順不同) 【見 解】 強盗殺人罪が成立するためには, A説:殺人行為が強盗の機会に行われなければならないとする。 B説:殺人行為が強盗の手段でなければならないとする。 C説:殺人行為が強盗の手段である場合に限らず,事後強盗(刑法第238条)類似の状況にお ける殺人行為も含むとする。 【事 例】 T.甲は,強盗の目的で,乙に対し,持っていたナイフを突き付け,「金を出せ。出さなかった ら殺す。」などと申し向け,反抗を抑圧された乙から現金を奪い取った後,逃走しようとした が,乙に追跡され,犯行現場から約10メートル逃げたところで,捕まらないようにするため, 殺意をもって乙の胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。 U.甲は,乙所有の自動車1台を窃取し,犯行翌日,同車を犯行場所から約10キロメートル離 れた場所で駐車させ,用事を済ませた後,同車に戻ってきたところを乙に発見され,同車を放 置して逃走した。甲は,乙に追跡されたので,捕まらないようにするため,殺意をもって乙の 胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。 V.甲は,乙方において,乙をロープで縛り上げた上,乙所有の現金を奪い取った後,乙方から 逃走しようとしたが,乙方玄関先において,たまたま乙方を訪問した丙と鉢合わせとなり,丙 が悲鳴を上げたことから,犯行の発覚を恐れ,殺意をもって丙の胸部を刃物で突き刺し,丙を 即死させた。 【記 述】 1.A説によれば,事例Tでは強盗殺人罪が成立する。 2.A説によれば,事例Vでは強盗殺人罪は成立しない。 3.B説によれば,事例Uでは強盗殺人罪は成立しない。 4.B説によれば,事例Vでは強盗殺人罪が成立する。 5.C説によれば,事例Uでは強盗殺人罪が成立する。 - 9 - 〔第13問〕(配点:3) 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合 には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.20]から[No.24]) ア.甲は,乙を毒殺する目的で毒入り菓子をお歳暮として郵送するため,郵便局の窓口でその菓 子を包んだ小包の郵送を申し込んだが,誤って実際には存在しない住所を宛先として記載した ために同小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返された。この場合,甲には殺人未遂罪が成 立する。[No.20] イ.甲は,自己が居住する建物に付した火災保険の保険金を保険会社からだまし取る目的で同建 物に放火したが,保険金を請求するに至らなかった。この場合,甲には詐欺未遂罪は成立しな い。[No.21] ウ.甲は,乙の住居内に侵入し,タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが,見付 けることができないうちに乙に発見された。甲は,逮捕を免れるため,乙に対して包丁を示し て脅迫し,屋外に逃走したが,通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場 合,甲には事後強盗未遂罪が成立する。[No.22] エ.甲は,勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ,逃走の目的で拘禁 場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが,いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず, 逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合,甲には加重逃走未遂罪は成立しない。 [No.23] オ.甲は,他人が居住する建物に放火することを企て,30分後に発火して導火材を経て同建物 に火が燃え移るように設定した時限発火装置を同建物に設置したが,設定した時刻が到来する 前に発覚して同装置の発火に至らなかった。この場合,甲には現住建造物等放火未遂罪は成立 しない。[No.24] - 10 - [刑事訴訟法] 〔第14問〕(配点:2) 捜査の端緒に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から 5までのうちどれか。(解答欄は,[No.25]) ア.捜査機関が犯罪があると思料するに至った理由を捜査の端緒というが,捜査の端緒には何ら 制限がなく,刑事訴訟法に規定されたものに限られない。 イ.検視は,検察官にのみ認められた権限であるが,検察官は,検察事務官又は司法警察員に検 視の処分をさせることができる。 ウ.親告罪については,有効な告訴の存在が起訴又は訴訟の条件となっているから,司法警察職 員は,告訴がない間は捜査をすることができない。 エ.自首した犯人は,告訴又は告発と同様,自首を取り消すことができる。 オ.司法警察員は,自首を受けたときは,速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付 しなければならない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第15問〕(配点:2) 被疑者を逮捕した後の手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せ は,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.26]) ア.司法巡査は,逮捕状により被疑者を逮捕したときだけでなく,現行犯逮捕したとき,又は緊 急逮捕したときも,直ちにこれを司法警察員に引致しなければならない。 イ.司法巡査により緊急逮捕された被疑者が,司法警察員に引致された後,逮捕状請求前に逃走 してしまった場合であっても,司法警察員は,直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなけれ ばならない。 ウ.私人が現行犯人を逮捕したときは,直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は 司法警察職員に引き渡さなければならない。 エ.司法警察員は,被疑者を緊急逮捕したときは,直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任でき る旨を告げた上で弁解の機会を与えなければならないが,逮捕状により被疑者を逮捕したとき は,逮捕状を被疑者に示しているから犯罪事実の要旨を告げる必要はなく,直ちに弁護人を選 任することができる旨を告げた上で弁解の機会を与えれば足りる。 オ.検察官は,逮捕状により被疑者を逮捕した場合において,留置の必要があると思料するとき は,被疑者が身体を拘束された時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求し,又は被 疑者について公訴を提起しなければならず,その時間内に勾留の請求又は公訴の提起をしない ときは,直ちに被疑者を釈放しなければならない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ - 11 - オ 5.エ オ 〔第16問〕(配点:2) 捜索に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう ちどれか。(解答欄は,[No.27]) ア.司法警察員は,捜索差押許可状により被疑者の住居を捜索するときは,被疑者の同居人であ る妻が立ち会う場合であっても,被疑者をこれに立ち会わせなければならない。 イ.司法警察員は,捜索差押許可状により被疑者以外の者の住居を捜索するときは,あらかじ め,その者に執行の日時を通知しなければならない。 ウ.司法警察員は,捜索差押許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がなくても,日没 前に同許可状の執行に着手したときは,日没後でも,その処分を継続することができる。 エ.司法警察員は,捜索差押許可状により被疑者以外の者が一人で居住しているアパートの居室 を捜索するときに,その者を立ち会わせることができなければ,アパートの管理人を立ち会わ せて捜索することができる。 オ.司法警察員は,捜索すべき場所を会社事務所とする捜索差押許可状により同事務所を捜索す るときは,同事務所にある金庫内を捜索することはできない。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ 〔第17問〕(配点:3) 次の【事例】に関する検察官の処理について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい 場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.28]から[No. 32]) 【事 例】 甲は,平成22年4月1日午前9時50分,H県I市内において,司法警察員から職務質問を 受けた際,所持品の検査に応じ,「窃盗の目的でVの邸宅に侵入するのに使用するため,ガラス 切りを隠して携帯していた」旨を述べてガラス切りを所携のバッグから取り出したものの,住居 については,一切答えなかった。そこで,司法警察員は,甲の住居が明らかでない上,甲に軽犯 罪法違反(同法第1条第3号違反)に該当する「正当な理由がなくてガラス切りを隠して携帯し ていた」事実が認められたことから,同日午前10時,同事実により甲を現行犯逮捕した。その 後の捜査により,甲が窃盗を行っていたことも判明したものの,依然として,甲の住居は判明し なかった。司法警察員は,同月3日午前9時30分,甲の身柄とともに軽犯罪法違反及び窃盗の 両事実をH区検察庁検察官に送致する手続をした。その後,検察官は,同日午前10時30分, 送致された甲を受け取った。 【記 述】 ア.検察官は,甲を勾留請求する場合,これを平成22年4月4日午前10時30分までに行え ば足りる。[No.28] イ.検察官は,軽犯罪法違反の事実のみならず窃盗の事実も併せて甲を勾留請求することができ る。[No.29] ウ.検察官は,甲につき,逮捕されている軽犯罪法違反の事実のみで略式命令を請求する場合, 甲に対し,あらかじめ,略式手続を理解させるために必要な事項を説明し,通常の規定に従い 審判を受けることができる旨を告げた上,略式手続によることについて異議がないかどうかを 確かめなければならない。[No.30] エ.検察官は,平成22年4月3日,逮捕されている軽犯罪法違反の事実のみで甲を公判請求す る場合,勾留状が発付されていないので甲を釈放した上で公判請求しなければならない。[No. 31] オ.検察官は,平成22年4月3日,軽犯罪法違反の事実のみならず窃盗の事実も併せて甲を公 判請求する場合,簡易裁判所ではなく地方裁判所に対して行うこともできる。[No.32] - 12 - (参照条文)軽犯罪法 第1条 左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。 一,二 三 (略) 正当な理由がなくて合かぎ,のみ,ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使 用されるような器具を隠して携帯していた者 四〜三十四 (略) (参照条文)裁判所法 第24条 地方裁判所は,次の事項について裁判権を有する。 一 (略) 二 第16条第4号の罪及び罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審 三,四 第33条 (略) 簡易裁判所は,次の事項について第一審の裁判権を有する。 一 (略) 二 罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条,第2 52条若しくは第256条の罪に係る訴訟 2,3 (略) 〔第18問〕(配点:2) 即決裁判手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5 までのうちどれか。(解答欄は,[No.33]) ア.検察官は,公訴を提起しようとする強盗事件について,事案が明白であること,証拠調べが 速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し,相当と認めるときは,公訴の提起と 同時に,書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。 イ.検察官は,即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなくても,即決裁判手続の申 立てをすることができる。 ウ.即決裁判手続による公判期日については,被告人に弁護人がないときは,これを開くことが できない。 エ.裁判所が即決裁判手続において懲役又は禁錮の言渡しをする場合には,その刑の執行猶予の 言渡しをしなければならない。 オ.即決裁判手続においてされた判決に対しては,控訴の申立てをすることができない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 13 - エ 5.エ オ 〔第19問〕(配点:3) 訴因に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5まで のうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。 (解答欄は, [No. 34]) ア.検察官は,第1回の公判期日の前であっても,公訴事実の同一性を害しない限度において, 起訴状に記載された訴因の追加,撤回又は変更を裁判所に請求することができる。 イ.起訴状における訴因の記載は,裁判所が行う審判対象の範囲を画定するとともに,被告人の 防御の対象を明確にする機能を有するものであり,起訴状における罰条の記載も,訴因をより 一層特定させて被告人の防御に遺憾のないようにするため法律上要請されているものであるか ら,訴因により公訴事実が十分に明確にされ,被告人の防御に実質的な不利益が生じない場合 であっても,裁判所が起訴状に記載されていない罰条を適用するためには,罰条変更の手続を 経なければならない。 ウ.傷害致死の罪について,「被告人は,平成22年5月9日午後9時ころ,H市I区所在のJ ホテル7号室において,Vに対し,その頭部等に手段不明の暴行を加え,頭蓋冠,頭蓋底骨折 等の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,頭蓋冠,頭蓋底骨折に基づく外傷性脳 障害又は何らかの傷害により死亡させた。」という訴因とすることは,暴行態様,傷害の内容 及び死因の表示が概括的なものにとどまるから,検察官において,当時の証拠に基づき,でき る限り日時,場所,方法等をもって傷害致死の罪となるべき事実を特定して訴因を明示したも のであっても,訴因の特定に欠ける。 エ.検察官において,共謀共同正犯者の存在に言及することなく,被告人が1人で自動二輪車を 窃取したという窃盗の訴因で公訴を提起した場合,裁判所が,証拠上,他に実行行為を行って いない共謀共同正犯者が存在するとの心証を得たとしても,被告人1人の行為により犯罪構成 要件の全てが満たされたと認めるときは,訴因どおりの犯罪事実を認定することができる。 オ.裁判所は,訴因の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある と認めるときは,被告人又は弁護人の請求により,決定で,被告人に十分な防御の準備をさせ るため必要な期間公判手続を停止しなければならない。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ - 14 - エ 5.ウ オ 〔第20問〕(配点:3) 次の【事例】は,甲に対する殺人被告事件の冒頭手続における法廷でのやり取りである。この法 廷でのやり取りに関する後記アからエまでの【記述】のうち,正しいものは幾つあるか。後記1か ら5までのうちから選びなさい。(解答欄は,[No.35]) 【事 例】 裁判長「それでは開廷します。被告人は証言台の前に立ちなさい。」 裁判長「名前は何と言いますか。」@ 被告人「甲と言います。」 裁判長「本籍,住所はどこですか。」 被告人「本籍は,H市I町1番です。住所も同じです。」 裁判長「職業は何ですか。」 被告人「無職です。」 裁判長「生年月日はいつですか。」 被告人「昭和30年1月1日です。」 裁判長「それでは,検察官,起訴状を朗読してください。」 検察官「公訴事実。被告人は,平成20年6月10日ころ,H市I町1番被告人方において,V に対し,殺意をもって,持っていたナイフでその胸部を突き刺し,よって,同日ころ, 同所において,同人を胸部刺傷に基づく失血により死亡させて殺害したものである。罪 名及び罰条。殺人。刑法第199条。」A 裁判長「被告人には黙秘権という権利があります。被告人は終始沈黙し,又は個々の質問に対し 陳述を拒むことができます。また,言いたいことを言うことができますが,この公判廷 での被告人の陳述は,被告人にとって不利益な証拠とも利益な証拠ともなることを承知 してください。」B 裁判長「それでは,まず被告人に聞きますが,今,検察官が述べた内容に間違いありませんか。」 被告人「間違いありません。」 裁判長「弁護人,御意見はいかがですか。」C 弁護人「被告人と同じです。」 裁判長「それでは,これで冒頭手続を終わり,証拠調手続に入ります。」 【記 述】 ア.@は,裁判長が,被告人として出頭している者が起訴状に表示された者と同一であるかどう かを確かめるために行った質問の一環であり,こうした人定質問を行うことは法令上要求され ている。 イ.Aは,法令上,検察官が,裁判長の訴訟指揮に基づき,起訴状に記載された公訴事実を要約 して告げる方法でも行うことができる。 ウ.Bは,裁判長が,被告人に対し,言いたいことを言うことができることや,公判廷での陳述 が被告人にとって不利益な証拠とも利益な証拠ともなることを告げなくても,法令に違反する ものではない。 エ.Cは,裁判長が,その訴訟指揮によって,弁護人の意見を確かめるために事実上行ったもの であり,法令上要求されているものではない。 1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 - 15 - 5.4個 〔第21問〕(配点:2) 裁判員の参加する刑事裁判(以下「裁判員裁判」という。)に関する次のアからオまでの各記述 のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.36]) ア.裁判員裁判の対象事件として法律で定められた殺人罪に係る事件については,裁判官のみの 合議体で取り扱うことはできない。 イ.裁判員裁判においては,裁判官及び裁判員の合議により,事実の認定,法令の解釈,法令の 適用及び刑の量定を行う。 ウ.裁判員の参加する合議体の裁判官の員数は3人,裁判員の員数は6人とされているが,公判 前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ,事件 の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては,裁判所は,裁判官1人及び 裁判員4人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。 エ.裁判員裁判の対象事件の被告人が,裁判員の参加する合議体ではなく,裁判官のみの合議体 による審理を受けることを申し立てた場合には,地方裁判所は,当該事件を裁判官のみの合議 体で取り扱う旨の決定をしなければならない。 オ.裁判員の関与する判断のための評議において,その判断は,構成裁判官及び裁判員の双方の 意見を含む合議体の員数の過半数の意見によるので,裁判員のみが被告人を有罪とする意見で ある場合には,被告人は無罪となる。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ 〔第22問〕(配点:2) 自由心証主義に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1か ら5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(解答 欄は,[No.37]) ア.裁判員の参加する刑事裁判において,裁判員の関与する判断に関しては,証拠の証明力は, それぞれの裁判官及び裁判員の自由な判断にゆだねる。 イ.憲法第38条第3項の「何人も,自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には, 有罪とされ,又は刑罰を科せられない。」という規定は,自白の証明力に対する自由心証を制 限したものである。 ウ.裁判官が,証人の証言の信用性を判断する際には,その証人の公判廷での供述態度を考慮す ることができる。 エ.経験則は,経験から導き出された事物に関する一般的な法則であるが,一般に承認された科 学的法則とは異なり,合理的な判断法則として共有されたものとまではいえないので,裁判官 が,経験則に反する心証を形成した上で事実を認定することも許される。 オ.被告人の精神状態に関する精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,そ の判断の前提となる生物学的,心理学的要素を裁判所が評価することが困難であるため,その 意見のとおりに認定しなければならない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 16 - エ 5.エ オ 〔第23問〕(配点:2) 刑事訴訟法第321条第3項は,「検察官,検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載し た書面は,その供述者が公判期日において証人として尋問を受け,その真正に作成されたものであ ることを供述したときは,第1項の規定にかかわらず,これを証拠とすることができる。」と規定 し,同条第4項は,「鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても,前 項と同様である。」と規定する。これらの規定に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例に 照らして誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.38]) ア.同条第3項所定の書面には,捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載した書面も含 まれる。 イ.警察犬による臭気選別の経過及び結果を記載した報告書は,選別に立ち会った司法警察員が 臭気選別の経過と結果を正確に記載したものであることを証言によって明らかにすれば,同条 第3項により証拠能力を付与される。 ウ.酒酔い鑑識カードは,被疑者との問答欄であっても,被疑者の酒酔いの程度を判断するため の資料として,被疑者の状態につき検査,観察により認識した結果を記載したものであるから, 同条第3項の書面にあたる。 エ.捜査官が被疑者に犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書について,実質上の要 証事実が再現されたとおりの犯罪事実の存在である場合には,同条第3項所定の要件が満たさ れれば証拠能力が付与される。 オ.捜査機関の嘱託に基づき作成された鑑定書には,裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関 する同条第4項が準用される。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第24問〕(配点:2) 第1回の公判期日前の証人尋問に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せ は,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.39]) ア.検察官は,犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が,取調 べに対して出頭又は供述を拒んだ場合には,その者が当該犯罪の被害者であったとしても,第 1回の公判期日前に限り,裁判官に証人の尋問を請求することができる。 イ.弁護人は,被告人のアリバイを供述する証人に海外赴任の予定があるなど,あらかじめ証拠 を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときでも,第1回の公判 期日前に,裁判官に証人の尋問を請求することはできない。 ウ.検察官は,司法警察員の取調べに対して任意の供述をした犯罪の目撃者が,その供述が犯罪 の証明に欠くことができないと認められる場合において,圧迫を受けて公判期日においては前 にした供述と異なる供述をするおそれがある場合に限り,第1回の公判期日前に,裁判官に証 人の尋問を請求することができる。 エ.裁判官は,検察官の請求による第1回の公判期日前の証人尋問を行う際,被告人,被疑者又 は弁護人をその尋問に立ち会わせなければならない。 オ.裁判官は,第1回の公判期日前の証人尋問請求において,召喚に応じない証人に対しては, 更にこれを召喚し,又はこれを勾引することができる。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ エ 4.イ - 17 - オ 5.ウ エ 〔第25問〕(配点:2) 次のアからカまでの各手続のうち,被疑者の勾留及び被告人の勾留のいずれについても刑事訴訟 法上認められるものは,幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。(解答欄は,[No. 40]) ア.保釈 イ.勾留の取消し ウ.勾留理由開示 エ.検察官による勾留請求 オ.弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者以外の者 との接見等の制限 カ.勾留の執行停止 1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個 6.6個 〔第26問〕(配点:3) 次の【記述】は,控訴審の権限に関して判断を示した最高裁判所決定の要旨である。@からFま での( )内に後記aからiまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,組合せとして正しい ものは後記1から5までのうちどれか。なお,@からFまでの( )内にはそれぞれ異なる語句が 入る。(解答欄は,[No.41]) 【記 述】 第一審判決がその理由中において無罪の判断を示した点は,牽連犯ないし包括一罪として起訴 された事実の一部なのであるから,右第一審判決に対する控訴提起の効力は,それが被告人から だけの控訴であつても,公訴事実の全部に及び,右の無罪部分を含めたそのすべてが控訴審に移 審係属すると解すべきである。そうとすれば,控訴裁判所は右起訴事実の全部の範囲にわたつて (@)を加えることが可能であるとみられないでもない。しかしながら,控訴審が第一審判決に ついて(@)をするにあたり,いかなる限度においてその職権を行使すべきかについては,さら に慎重な検討を要するところである。いうまでもなく,現行刑訴法においては,いわゆる(A) 主義が基本原則とされ,(B)主義はその補充的,後見的なものとされているのである。(A)主 義の現われとして,現行法は(C)制度をとり,検察官が公訴を提起するには,(D)を記載し た起訴状を裁判所に提出しなければならず,(D)は(C)を明示してこれを記載しなければな らないこととし,この(C)につき,当事者の攻撃防御をなさしめるものとしている。(中略) このように,審判の対象設定を原則として(A)の手に委ね,被告人に対する不意打を防止し, (A)の公正な訴訟活動を期待した第一審の訴訟構造の上に立つて,刑事訴訟法はさらに控訴審 の性格を原則として(E)審たるべきものとしている。すなわち,控訴審は,第一審と同じ立場 で事件そのものを審理するのではなく,前記のような(A)の訴訟活動を基礎として形成された 第一審判決を対象とし,これに(E)的な審査を加えるべきものなのである。そして,その(E) 審査も当事者の申し立てた控訴趣意を中心としてこれをなすのが建前であつて,(@)はあくま で補充的なものとして理解されなければならない。けだし,前記の第一審における(A)主義と (B)主義との関係は,控訴審においても同様に考えられるべきだからである。 これを本件についてみるに,本件公訴事実中第一審判決において有罪とされた部分と無罪とさ れた部分とは牽連犯ないし包括一罪を構成するものであるにしても,その各部分は,それぞれ1 個の犯罪構成要件を充足し得るものであり, (C)としても独立し得たものなのである。そして, 右のうち無罪とされた部分については,被告人から不服を申し立てる利益がなく,検察官からの 控訴申立てもないのであるから,当事者間においては攻防の対象からはずされたものとみること ができる。このような部分について,それが理論上は控訴審に移審係属しているからといつて, (E)審たる控訴審が(@)を加え有罪の自判をすることは,被告人控訴だけの場合,刑事訴訟 - 18 - 法第402条により第一審判決の刑より重い刑を言い渡されないことが被告人に保障されている とはいつても,被告人に対し不意打を与えることであるから,前記のような現行刑事訴訟の基本 構造,ことに現行控訴審の性格にかんがみるときは,(F)として許される限度をこえたもので あつて,違法なものといわなければならない。 【語句群】 a.職権調査 b.当事者の申立てに基づく調査 e.訴因 f.公訴事実 g.事実 1.@bCe 2.@aFi 3.AdDf - 19 - c.当事者 h.事後 d.職権 i.職権の発動 4.AcEg 5.BcEh