短答式試験問題集[刑事系科目] -1 - [刑事系科目] 〔第1問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄 は,[bP]) 1.法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定め られている場合には,選任監督上の過失がなくても刑事責任を負う。 2.法人事業主を両罰規定により処罰するためには,現実に犯罪行為を行った従業者も処罰され なければならない。 3.法人事業主が処罰される場合には,その代表者も処罰される。 4.刑法各則に規定された行為の主体には,法人は含まれない。 5.刑法各則に規定された行為の客体には,法人は含まれない。 〔第2問〕(配点:3) 監禁の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選 びなさい。(解答欄は,[bQ],[bR]順不同) 1.甲は,自己が経営する飲食店で住み込みの従業員として違法に働かせていたA女が逃げたこ とから,これを連れ戻すため,A女に対し, 「お母さんが病気で入院していると連絡があった。 これからその病院に連れて行くから,車に乗れ。」と嘘を言い,これを信じたA女を自己の運 転する普通乗用自動車に乗車させて約12キロメートル走行した。甲に監禁罪は成立しない。 2.甲は,身の代金取得の目的で7歳の子供Aを拐取し,さらに,Aの手足をロープで縛って逃 げることができないようにして自室に閉じ込め,その間にAの親に電話をかけて身の代金を要 求した。甲に監禁罪は成立しない。 3.甲は,知人のA女をA女宅に送るため,自己が運転する原動機付自転車の後部荷台に乗せて 走行していたが,途中でA女を強姦しようと考え,なおも走行を続けた。その後,甲の意図に 気付いたA女が「降ろして。」と叫んだが,甲は,これを無視して,そのまま約1キロメート ルの間,同車を疾走させた。甲には監禁罪が成立する。 4.甲は,自己の所属する暴力団の配下組員Aに指を詰めさせることとし,嫌がるAを無理やり 普通乗用自動車に乗せて組事務所に連行し,約1時間半にわたってAを監視したが,その間に, 組事務所内において,Aの左腕を押さえ付け,包丁でAの小指を切断した。甲には監禁致傷罪 が成立する。 5.甲は,通行中のA女を殴るなどして無理やり自己が運転する普通乗用自動車に乗せて同車を 疾走させて連れ回そうと考え,同車を停めて運転席から降り,路上でA女に近づき,A女を同 車に連れ込むために,A女の顔面を殴打して加療約2週間を要する顔面挫傷の傷害を負わせた が,A女が甲に捕まえられることなく逃げたため,A女を同車に乗せることはできなかった。 甲に監禁致傷罪は成立しない。 〔第3問〕(配点:2) 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1 から5までのうちどれか。(解答欄は,[bS]) ア.甲は,医師免許を有していなかったが,女性乙に対し,医学的に必要とされる措置をとるこ となく豊胸手術を行った。女性乙が豊胸手術に伴う身体傷害につきあらかじめ甲に対して承諾 していた場合,甲に傷害罪(刑法第204条)は成立しない。 イ.甲は,民事訴訟の証拠調べの期日において,証人として宣誓の上,虚偽の陳述をした。原告 乙及び被告丙の双方とも甲が虚偽の陳述をすることにつきあらかじめ甲に対して承諾していた -2 - 場合,甲に偽証罪(刑法第169条)は成立しない。 ウ.甲は,重病の母親乙の首をロープで絞めて殺害した。乙が殺害につきあらかじめ甲に対して 承諾していた場合,甲に殺人罪(刑法第199条)は成立しない。 エ.甲は,12歳の女児乙の同意を得て,女児乙に対してわいせつな行為を行った。甲に準強制 わいせつ罪(刑法第178条第1項)は成立しない。 オ.甲は,交通違反の取締りを受けた際,警察官に対し,乙の氏名を名乗り,交通事件原票の供 述書欄に乙名義で署名押印した。乙が名義使用につきあらかじめ甲に対して承諾していた場合, 甲に有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)は成立しない。 1.ア イ 2.イ ウ 3.ウ エ 4.エ オ 5.オ ア 〔第4問〕(配点:4) 次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に窃盗罪が 成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。 (解答欄は,アからオの順に[bT] から[bX]) ア.甲は,夜道を歩いていた際,乙が路上で倒れて急死したのを目撃し,乙が死亡しているのを 認識した上で,乙の上着ポケットに入っていた財布を自分のものにしようと考え,これを取り 出して自分のかばんにしまった。[bT] イ.甲は,乙を強姦した直後,警察に通報されないよう乙の携帯電話を破壊するため,乙の持っ ていたかばんから,乙に気付かれないうちに乙の携帯電話を取り出してその場で破壊した。 [ 6] ウ.甲は,自然湖であるA湖内で,同湖の一部を区切って錦鯉を養殖している乙のいけすから逃 げ出した錦鯉20匹を発見し,乙が養殖していた錦鯉であると認識しながら,これを自分のも のにするため捕獲し,第三者に売却した。[bV] エ.甲は,乙から鍵の掛かった乙の手提げ金庫を預かって保管していたが,同金庫の在中物を自 分のものにしようと考え,同金庫を破壊し,中に入っていた乙の宝石を取り出し,第三者に売 却した。[bW] オ.甲は,A駅行きの満員電車に乗っていた際,隣の席に座っていた乙がかばんを忘れたままB 駅で下車したのを目撃し,乙のかばんとその中身を自分のものにしようと考え,次のC駅で乙 のかばんを持って下車し,自宅に持ち帰った。[bX] 〔第5問〕(配点:2) 責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[10]) 1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動す る能力が欠けている場合をいう。 2.心神耗弱とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力が欠けている若しくは著しく 減退している場合,又はこの弁識に従って行動する能力が欠けている若しくは著しく減退して いる場合をいう。 3.13歳であるが,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力に欠けると ころがない場合,責任能力が認められる。 4.精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めること はできない。 5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。 -3 - 〔第6問〕(配点:2) 文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいも のはどれか。(解答欄は,[11]) 1.甲は,A公立高校を中途退学した乙から「父親に見せて安心させたい。それ以外には使わな いからA公立高校の卒業証書を作ってくれ。」と頼まれ,乙の父親に呈示させる目的で,A公 立高校校長丙名義の卒業証書を丙に無断で作成した。甲には公文書偽造罪は成立しない。 2.甲は,自己の所有する土地の登記記録を改ざんしようと考え,法務局の担当登記官である乙 にその情を打ち明けて記録の改ざんを依頼し,乙に登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録を してもらった。甲には電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する。 3.甲は,行使の目的で,高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し,公害反 対の署名であると偽り,その旨誤信した乙に,甲を貸主,乙を借主とする100万円の借用証 書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。 4.甲と乙は,警察署に提出する目的で,県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨 共謀し,甲が丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲は,乙に相談することなく自ら県 立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立 する。 5.甲は,行使の目的で,正規の国際運転免許証を発給する権限のない民間団体乙名義で,外観 が正規の国際運転免許証に酷似する文書を作成した。甲は,乙からその文書の作成権限を与え られていたが,乙に正規の国際運転免許証を発給する権限がないことは知っていた。甲には私 文書偽造罪は成立しない。 〔第7問〕(配点:2) 刑法第65条に関する次のTないしVの各【見解】についての後記1から5までの各【記述】の うち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[12]) 【見 解】 T.刑法第65条第1項は真正身分犯の成立及び科刑についての規定であり,同条第2項は不真 正身分犯の成立及び科刑についての規定である。 U.刑法第65条第1項は身分が違法性に関係する場合についての規定であり,同条第2項は身 分が責任に関係する場合についての規定である。 V.刑法第65条第1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定であり, 同条第2項は不真正身分犯の科刑についての規定である。 【記 述】 1.Tの見解に対しては,真正身分犯が身分を連帯的に作用させ,不真正身分犯が身分を個別的 に作用させることの実質的根拠が明らかでないとの批判がある。 2.Uの見解に対しては,身分が違法性に関係する場合と身分が責任に関係する場合を区別する ことは困難であるとの批判がある。 3.Vの見解は,刑法第65条第1項が「共犯とする」と規定し,同条第2項が「通常の刑を科 する」と規定していることを根拠の一つとしている。 4.Tの見解に立った場合,甲が愛人である乙を唆して,乙が介護していた乙の老母の生存に必 要な保護をやめさせた事例では,甲には保護責任者遺棄罪の教唆犯が成立し,科刑は単純遺棄 罪の刑となる。 5.Vの見解に立ちつつ,常習賭博罪における常習性が身分に含まれると解した場合,賭博の非 常習者である甲が賭博の常習者乙を唆して,乙に賭博をさせた事例では,甲には常習賭博罪の 教唆犯が成立し,科刑は単純賭博罪の刑となる。 -4 - 〔第8問〕(配点:2) 犯人蔵匿等の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤って いるものはどれか。(解答欄は,[13]) 1.甲は,窃盗事件を犯して逃亡中の乙を自宅にかくまったが,かくまった時点では,既にその 窃盗事件の公訴時効が完成していた。甲には,犯人蔵匿罪は成立しない。 2.甲は,強盗事件を犯して逃亡中の乙の所在を知っていたが,その所在を警察官に尋ねられた 際,その質問に答えなかった。甲には,犯人隠避罪が成立する。 3.甲は,強盗事件を犯した息子乙を逮捕から免れさせるため,乙に逃走資金を与えた。甲には, 犯人隠避罪が成立する。 4.甲は,自動車運転過失致死事件の被告人として裁判を受けていた乙が保釈中であることを知 りながら,乙を逃亡させるため,乙にその資金を与えた。甲には,犯人隠避罪が成立する。 5.甲は,強姦事件を犯して逃亡中,告訴権者からの告訴がない時点で,友人乙に強姦事件を犯 して逃げているのでかくまってほしい旨依頼して乙宅に一晩かくまってもらった。甲には,犯 人蔵匿罪の教唆犯が成立する。 〔第9問〕(配点:4) 刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2 を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[14]から[18]) ア.自由刑には,懲役,禁錮及び労役場留置が含まれる。[14] イ.財産刑には,罰金,没収及び追徴が含まれる。[15] ウ.有期の懲役又は禁錮は,1月以上15年以下であり,これを加重する場合においては30年 にまで上げることができる。[16] エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[17] オ.懲役は,受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり,禁錮は,受刑者を 刑事施設に拘置する刑罰である。[18] -5 - 〔第10問〕(配点:2) 次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤って いるものはどれか。(解答欄は,[19]) 【事案及び判旨】 精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属して いる家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたA の捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴し た事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨 判示し,甲に有罪判決を言い渡した。 【記 述】 1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものであ る。 2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪 における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。 3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を 認めたものである。 4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命 じた家庭裁判所の秘密であると考えている。 5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含 むかどうかは必ずしも明らかではない。 〔第11問〕(配点:2) 次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。 (解答欄は,[20]) 【事 例】 甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独 自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血 を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあ ったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した 上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しなが ら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受け させないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。 【判 旨】 甲は,自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上,Bが運び込 まれたホテルにおいて,甲を信奉するAから,重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に 委ねられた立場にあったものと認められる。その際,甲は,Bの重篤な状態を認識し,これを自 らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちにBの生命を維持するために必要な医 療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず,未必的な殺 意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には,不作為による殺 人罪が成立する。 【記 述】 1.Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があ れば,甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場か らも殺人罪の成立は否定される。 2.判旨の立場によれば,この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ,重過 -6 - 失致死罪が成立するにとどまる。 3.判旨は,不作為犯が成立するためには,作為義務違反に加え,既発の状態を積極的に利用す る意図が必要であると考えている。 4.判旨は,Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で,甲に殺人罪の実行の着手を認 めたものと解される。 5.判旨は,先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に,甲のBに対す る殺人罪の作為義務を認めたものと解される。 〔第12問〕(配点:2) 強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているも のはどれか。(解答欄は,[21]) 1.甲は,乙に対し,金品を奪うために,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,その反抗 を抑圧して乙から財布を奪ったが,乙は財布を奪われたことに気付かなかった。甲には強盗既 遂罪が成立する。 2.甲は,乙宅で財布を窃取し,誰からも追跡されることなく,約2キロメートル離れた場所ま で徒歩で移動した後,窃取した財布の中を見たが,予想していたよりも現金が少なかったこと から,再び窃盗を行う目的で乙宅に戻り,玄関を開けたところ,帰宅していた乙に発見され, 逮捕を免れるために,乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。甲には事後強 盗既遂罪は成立しない。 3.甲は,電車内で乗客のポケットから財布を窃取した直後,その犯行状況を目撃して甲を逮捕 しようとした警察官乙に対し,逮捕を免れるために,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加 えたが,乙に逮捕された。甲には事後強盗未遂罪が成立する。 4.甲は,空き巣を行う目的で乙宅に侵入したところ,たまたま留守番をしていた乙の甥である 10歳の丙に発見され,金品を奪うために,丙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を 加え,その反抗を抑圧して寝室のタンス内にあった乙名義の預金通帳と印鑑を奪った。甲には 強盗既遂罪が成立する。 5.甲は,飲食店において,代金を支払う意思及び能力がないのに,店長乙をだまして酒食を注 文し,飲食した後,代金の支払いを免れるために,乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の 暴行を加え,その反抗を抑圧して逃走し,代金請求を免れた。甲には強盗既遂罪が成立する。 -7 - 〔第13問〕(配点:3) 正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2 個選びなさい。(解答欄は,[22],[23]順不同) 1.正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは,予期された侵害を避けるべき義務を 課する趣旨ではないが,単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を 利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,侵害の急迫性の要件 を欠く結果,そのような侵害に対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。 2.憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には,防衛の意思を欠く結果, 防衛のための行為と認められることはない。 3.相手からの侵害が,それに先立つ自らの攻撃によって触発されたものである場合には,不正 の行為により自ら侵害を招いたことになるから,相手からの侵害が急迫性を欠く結果,これに 対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。 4.刑法第36条にいう「権利」には,生命,身体,自由のみならず名誉や財産といった個人的 法益が含まれるので,自己の財産権への侵害に対して相手の身体の安全を侵害する反撃行為に 及んでも正当防衛となり得る。 5.正当防衛における「やむを得ずにした」とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又 は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること,すなわち反撃行為が侵害 に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味し,反撃行為が防衛手段として 相当性を有する以上,その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より 大であっても,その反撃行為が正当防衛でなくなるものではない。 〔第14問〕(配点:4) 放火の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を, 誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[24]から[28]) ア.「放火」とは,目的物の焼損を惹起させる行為をいい,媒介物を介して目的物に点火する場 合には,媒介物に点火することも含まれる。[24] イ.「焼損」とは,火力により目的物の重要部分が焼失し,その本来の効用が失われた状態をい う。[25] ウ.「建造物」とは,家屋その他これに類する工作物であって,土地に定着し,人の起居出入に 適する構造を有するものをいう。[26] エ.「建造物」には,家屋の和室に敷かれている畳も含まれる。[27] オ.「現に人が住居に使用し」の「人」には,犯人が含まれる。[28] 〔第15問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。(解 答欄は,[29]) 1.罰則を定めた特別法の法条に,過失行為を処罰する旨の明文の規定がない場合であっても, 当該特別法の目的から,罰則を定めた法条に過失行為を処罰する趣旨が包含されていると認め られるときには,同法条が刑法第38条第1項ただし書に規定される特別の規定となり,過失 による行為を処罰することが可能である。 2.業務上過失致死傷罪の「業務」とは,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われ,ま たは,反復継続して行う意思をもって行われる行為であり,他人の生命・身体等に危害を加え るおそれがあるものをいう。 3.重過失致死傷罪の「重過失」とは,行為者としてわずかな注意を払えば,結果発生を予見す ることができ,結果の発生を回避できた場合をいう。 -8 - 4.複数の行為者につき,行為者共同の注意義務が観念でき,行為者がその共同の注意義務に違 反し,共同の注意義務違反と発生した結果との間に因果関係が認められる場合には,過失犯の 共同正犯が成立し得る。 5.過失行為を行った者を監督すべき地位にある者の過失の有無を判断する際には,信頼の原則 は適用されない。 〔第16問〕(配点:4) 次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に公務執行 妨害罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順 に[30]から[34]) ア.甲は,県議会の議事が紛糾し,議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際,乙の顔 面をげんこつで殴った。[30] イ.甲は,日本国内にある外国の大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際,乙の腹 部を足で蹴った。[31] ウ.甲は,警察官乙から捜索差押許可状に基づき自宅の捜索を受け,覚せい剤入りの注射器を差 し押さえられた際,乙の眼前で同注射器を足で踏み付けて壊した。[32] エ.甲は,無許可のデモ行進に参加していた際,これを解散させようとした警察官乙に向かって 石を1回投げ,その石は乙の頭部付近をかすめたが,乙には命中しなかった。[33] オ.甲は,執行官から確定判決に基づき居室明渡しの強制執行を受けていた際,執行官の補助者 であった民間人乙の頭部を棒で殴った。[34] 〔第17問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄 は,[35]) 1.甲は,生活費欲しさから強盗を計画し,12歳の長男乙に対し,Vから現金を強取するよう 指示した。乙は,甲の指示に従い,Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判 断能力を有していたか否か,甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず,甲に は強盗罪の間接正犯が成立する。 2.甲は,通常の判断能力がないVの殺害を計画し,Vに対し,首をつっても仮死状態になるだ けであり,必ず生き返るとだまして,Vに首をつらせて窒息死させた。甲には自殺関与罪が成 立する。 3.甲と乙は,自分たちのことを日頃ばかにするVを懲らしめてやろうと思い,Vに傷害を負わ せる旨共謀した。そして,甲と乙は,それぞれ,Vに対し,日頃の恨みを言いながら,その身 体を殴り付けた。Vは,これに応答して甲らを罵った。すると,乙は,Vの発言に腹を立て, 殺意をもって,隠し持っていたナイフでVを刺し殺した。乙に殺人罪が成立する場合,甲には, Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する。 4.甲は,V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は,自分も窓ガラ スを割りたいと思い,甲に気が付かれないよう,V宅に石を投げ付け,甲が割った窓ガラスと は別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。 5.女性である甲は,甲の男友達である乙との間で,乙がVを強姦する旨共謀した。その後,甲 がVを誘い出してVの体を押さえ付け,乙がVを強姦した。乙に強姦罪が成立する場合でも, 甲には強姦罪の共同正犯は成立しない。 -9 - 〔第18問〕(配点:2) 横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[36]) 1.横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上 の支配力を有する状態を含まない。 2.株式会社の代表取締役には,同社の所有物について,横領罪の「占有」は認められない。 3.横領罪の「物」は,窃盗罪における「財物」と同義であり,不動産は横領罪の客体とはなら ない。 4.法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に 照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。 5.業務上横領罪の「業務」には,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務であ れば,いかなる事務も含まれる。 〔第19問〕(配点:2) 次の【事例】及び【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。 (解答欄は,[37]) 【事 例】 Aは,殺意をもって,Bを狙い,けん銃を発射したところ,その弾丸がBを貫き,たまたまB の背後を通行中のCにも命中したが,B,C共に死亡しなかった。なお,Aは,けん銃を発射し た時点で,Cの存在を認識していなかった。 【見 解】 犯罪の故意があるとするには,罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが,犯人が認 識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するもの ではなく,両者が法定の範囲内において一致することをもって足りる。人を殺す意思のもとに殺 害行為に出た以上,犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも,その結果に ついて殺人の故意があり,Bに対する所為についてはもちろんのこと,Cに対する所為について も殺人未遂罪が成立し,両罪は観念的競合となる。 【記 述】 1.この【見解】によれば,甲が殺意をもって,乙を狙い,けん銃を発射したところ,弾丸が乙 に命中したが,乙は死亡せず,乙を貫通した弾丸が甲が予期しなかった丙に命中して丙が死亡 した場合,甲には,丙に対する殺人既遂罪が成立するが,乙に対する犯罪は成立しない。 2.この【見解】によれば,甲が殺意をもって,乙を狙い,けん銃を発射したところ,弾丸が乙 に命中して乙が死亡し,乙を貫通した弾丸が甲が予期しなかった丙にも命中して丙も死亡した 場合,甲には,乙に対する殺人既遂罪,丙に対する過失致死罪が成立する。 3.この【見解】に対しては,殺人罪は被害者ごとに成立する犯罪であるから,被害者の個別性 は構成要件的に重要な事実であるとの批判がある。 4.この【見解】に対しては,いわゆる客体の錯誤の場合と方法の錯誤の場合とで故意の有無に ついて結論が異なるのは不合理であるとの批判がある。 5.この【見解】に対しては,1人を殺す故意しかないのに,1人を殺した場合より処断刑が重 くなるのは妥当ではないとの批判がある。 - 10 - 〔第20問〕(配点:2) 次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検 討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[38] ,[39]順不同) 【事 例】 甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れてい るのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態では なかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って 自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を 取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち 去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,@大きさや重さ は五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,Aク レジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手 書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1 枚を見付けた。甲は,@の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持 っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投 入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。 また,Aの白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカ ードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号 に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カー ドを自宅に保管しておいた。 【記 述】 1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。 2.甲が上記Aの財布を自分のかばんに入れて持ち去った行為には,窃盗罪が成立する。 3.甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。 4.甲が上記金属片を自動販売機に投入してジュースと釣銭を得た行為には,電子計算機使用詐 欺罪が成立する。 5.甲が上記白色カードを自宅に保管しておいた行為には,不正電磁的記録カード所持罪が成立 する。 〔第21問〕(配点:2) 捜査機関の権限に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄 は,[40]) 1.検察官は,司法警察員の取調べに際して任意の供述をした犯行の目撃者が,公判期日におい ては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり,かつ,その者の供述が犯罪の証明に欠く ことができないと認められる場合には,第1回公判期日前に限り,裁判官にその者の証人尋問 を請求することができる。 2.司法警察員は,告訴を受けた事件に関する書類及び証拠物について,当該事件について犯罪 の嫌疑がないものと思料するときは,検察官に送付しないことができる。 3.検察官は,司法警察員から送致を受けた事件であっても,捜査の必要があると思料するとき は,自ら,捜索差押許可状の発付を受けて,捜索差押えを行うことができる。 4.司法警察員は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌 疑があるものと思料するときは,これを検察官ではなく家庭裁判所に送致しなければならない。 5.司法巡査は,犯罪の捜査について必要があるときは,犯罪の被害者の出頭を求め,これを取 り調べることができる。 - 11 - 〔第22問〕(配点:2) 告訴に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5まで のうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(解答欄は,[ 41]) ア.被害者が死亡したときは,被害者の明示の意思に反しない限り,その兄弟姉妹が告訴をする ことができる。 イ.親告罪の告訴期間を起算する基準となる「犯人を知った」とは,犯人が誰であるかを知るこ とをいい,告訴権者において,犯人の住所氏名などの詳細を知る必要はないが,少なくとも犯 人の何人たるかを特定し得る程度に認識することを要する。 ウ.告訴の取消しは,代理人によりこれをすることができない。 エ.被害者の司法警察員に対する供述調書であっても,犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求める 旨の意思の表示がされていれば,告訴調書として有効である。 オ.告訴は,書面でこれをしなければならない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ 〔第23問〕(配点:2) 次のアからオまでの各手続のうち,その手続に関して裁判官の裁判が必要となるものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[42]) ア.私人が,窃盗行為に及んだ者を現行犯逮捕する場合 イ.司法警察員が,殺人を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある者を緊急逮捕する場合 ウ.検察官が,逮捕状に基づき逮捕された者を司法警察員から受け取った後,勾留請求せずに釈 放する場合 エ.殺人の事実で勾留中に起訴された者につき,同じ事実で引き続き勾留する場合 オ.窃盗の事実で逮捕中に起訴された者につき,同じ事実で勾留する場合 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ 〔第24問〕(配点:3) 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤って いる場合には2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。 (解答欄は,アからオの順に[43]から[47]) 【事 例】 司法警察員は,甲が自宅において覚せい剤を密売しているとの被疑事実により,甲の逮捕状及 び甲宅に対する捜索差押許可状の発付を得て,甲宅に赴いた。甲宅には,甲の妻Aのみが在宅し ていたことから,司法警察員は,@Aに前記捜索差押許可状を呈示した上で,甲宅に立ち入り, Aを立会人として捜索を実施し,覚せい剤や電子計量器などを差し押さえた。更に捜索を進めた ところ,甲宅リビングルームのテーブル上に,甲が野球賭博を開張していたことを示すノートが 発見されたことから,司法警察員はAにノートの提出を求めた。ノートは甲の所有物であったが, AAは司法警察員にノートを任意に提出し,司法警察員がこれを領置した。捜索終了後,その日 のうちに,司法警察員は甲が帰宅した旨の情報を得たことから,直ちに甲宅に赴き,B玄関から 甲宅に立ち入り,在宅していた甲に逮捕状を示して通常逮捕した。翌日,Aは,甲の了解を得ず に前記ノートを提出したことを後悔し,C司法警察員に対してノートの還付を請求した。 【記 述】 ア.下線部@につき,覚せい剤や電子計量器などが甲の所有物である場合には,甲に捜索差押許 可状を呈示していない以上,司法警察員がこれらの物を差し押さえることは違法である。[ 43] - 12 - イ.下線部@につき,仮にAが不在であり,甲宅に誰も在宅していなかった場合でも,立会人な くして捜索することは違法である。[44] ウ.下線部Aにつき,任意提出を行うことができる者は,所有者又は所持者に限られるところ, 所持者とは自己のために当該物件を占有する者であるから,司法警察員がAからノートを領置 したことは違法である。[45] エ.下線部Bにつき,既に甲宅に対する捜索が終わった後であるから,甲宅に立ち入るためには, 甲又はAの了解が必要である。[46] オ.下線部Cにつき,任意提出物を領置した場合には,提出者から還付を請求されると直ちに還 付する必要がある。[47] 〔第25問〕(配点:3) 令状主義に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの個数を,後記1から6までの 中から選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。 (解答欄は, [48]) ア.捜査機関が,犯罪の証拠物として被疑者の体内に存在する尿を強制的に採取するには,捜索 差押令状を必要とするが,人権の侵害にわたるおそれがある点では,検証の方法としての身体 検査と共通の性質を有しているので,「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附 することができる」旨の規定が前記捜索差押令状に準用される。 イ.捜査機関は,身体を拘束されていない被疑者を採尿場所に任意に同行することが事実上不可 能であると認められる場合,採尿することを許可する捜索差押令状の効力として,採尿に適す る最寄りの場所まで被疑者を連行することができ,その際,必要最小限度の有形力を行使する ことができる。 ウ.身体検査令状に関する「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附することがで きる」旨の規定は,その規定する条件の付加が強制処分の範囲,程度を減縮させる方向に作用 するので,身体検査令状以外の検証許可状にもその準用を肯定することができる。 エ.捜査機関は,強盗殺人事件に関し,被疑者が犯人である疑いを持つ合理的理由が存在する場 合,検証許可状がなくても,犯人の特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手する手段 として,これに必要な限度において,公道上を歩いている被疑者の容貌等を撮影することがで きる。 オ.捜査機関が,捜査目的で宅配業者が保管している宅配便荷物に荷送人や荷受人の承諾を得る ことなく,エックス線を照射して内容物の射影を観察するには,検証許可状を必要とする。 1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 - 13 - 5.4個 6.5個 〔第26問〕(配点:2) 精神鑑定に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。 (解答欄は, [49]) 1.検察官は,医師に被疑者の精神状態の鑑定を嘱託した場合,裁判官に被疑者の鑑定留置を請 求しなければならない。 2.検察官から被疑者の精神状態の鑑定を嘱託された医師は,鑑定留置状により留置された被疑 者については,医療器具が整備された病院においてであれば,裁判官の許可がなくても,血液 を採取した上で血液検査を実施するなどの必要な身体検査を強制的に実施することができる。 3.裁判所は,裁判員裁判対象事件につき,公判前整理手続において被告人の精神状態の鑑定を 行うことを決定した場合,当該鑑定の結果の報告がなされるまでに相当の期間を要すると認め るときは,公判前整理手続において鑑定の手続(鑑定の経過及び結果の報告を除く。)を行う 旨の決定をすることができる。 4.裁判所は,精神鑑定のため鑑定留置中の被告人についても,適当と認めるときは,職権で保 釈を許すことができる。 5.裁判所は,被告人の精神状態の鑑定を命じた鑑定人が作成した「鑑定の経過及び結果を記載 した書面」については,検察官が証拠とすることに同意しない場合でも,被告人が証拠とする ことに同意すれば,直ちに証拠とすることができる。 〔第27問〕(配点:2) 次のアからオまでの場合のうち,刑事訴訟法の規定上,被疑者の弁護人又は被告人の弁護人が立 会いを求めることができるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は, [50]) ア.警察官が,裁判官により発せられた捜索許可状に基づき,被疑者方を捜索する場合 イ.裁判官が,検察官からの勾留請求を受け,被疑者に対し,勾留質問をする場合 ウ.裁判官が,勾留されている被疑者につき,公開の法廷において,勾留の理由を開示する場合 エ.裁判官が,刑事訴訟法第226条に基づいて,検察官の請求により,犯罪の捜査に欠くこと のできない知識を有すると明らかに認められる者につき,第1回公判期日前に証人尋問を行う 場合 オ.裁判所が,起訴された被告事件の犯行現場を検証する場合 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ - 14 - オ 5.エ オ 〔第28問〕(配点:3) 次のTないしVの【見解】は,公訴時効の根拠に関してのものである。【見解】に関する後記ア からオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解 答欄は,[51]) 【見 解】 T.時間の経過により犯罪行為の可罰性が消滅するので,訴追の対象としない。 U.時間の経過により証拠が散逸し,公正な審理を行うことができなくなるので,訴追の対象と しない。 V.時間の経過により長期間訴追されなかったという被告人の法的地位の安定を図る必要がある ので,訴追の対象としない。 【記 述】 ア.Tの見解に対しては,刑の軽重により,公訴時効が異なることを説明できないとの批判があ る。 イ.Tの見解に対しては,公訴時効完成後に公訴が提起された場合の判決が免訴という形式裁判 であることを説明できないとの批判がある。 ウ.Uの見解に対しては,犯人が国外にいる場合に公訴時効がその進行を停止することを説明で きないとの批判がある。 エ.Uの見解に対しては,法改正により,公訴時効の期間が延長された場合,特別の定めを置か ない限り,既に行われた犯罪行為に対し,新法を適用することができないとの批判がある。 オ.Vの見解に対しては,被告人の法的地位の安定は,正当な利益ないし権利といえるものでは なく,公訴時効制度があることによる反射的利益にすぎないとの批判がある。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ 〔第29問〕(配点:2) 保釈に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう ちどれか。(解答欄は,[52]) ア.裁判所は,犯罪の性質や情状によっては,保証金額を定めずに保釈を許可することができる。 イ.裁判員裁判対象事件は,刑事訴訟法第89条第1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上 の懲役若しくは禁錮に当たる罪」に該当するから,保釈は認められない。 ウ.保釈が許可されても,保証金(又はこれに代えることを許された有価証券,保証書)が納付 されなければ,被告人は釈放されない。 エ.裁判所は,保釈中に被告人が他の罪を犯した場合,保釈を取り消さなければならない。 オ.勾留されている被告人やその弁護人のみならず,被告人の配偶者や直系の親族も,保釈の請 求をすることができる。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ - 15 - オ 5.エ オ 〔第30問〕(配点:3) 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記 1から5までのうちどれか。(解答欄は,[53]) 【事 例】 検察官は,Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが,凶器を特定することができなかっ たことから,起訴状には,「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し,裁判所において は,合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後,弁護人は,裁 判長に対し,「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てた が,@裁判長は,その必要がないと判断して釈明を求めなかった。証拠調べ手続において,検察 官は,目撃者の供述を録取した検察官調書の証拠調べを請求したが,弁護人が同意しなかったこ とから,目撃者の証人尋問を請求し,裁判所もこれを取り調べる旨の決定をした。目撃者に対す る主尋問においては,A検察官の尋問に対して弁護人が異議を申し立てることがあった。結局, 目撃者は,記憶が減退してしまったとして検察官調書の記載内容と実質的に異なった供述をした ので,検察官が,検察官調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号に基づき証拠調べ請求した。 B弁護人は,検察官調書における供述を信用すべき特別の情況がない旨意見を述べたが,裁判所 は,検察官調書を取り調べる旨の決定をした。 【記 述】 ア.下線部@につき,裁判長が釈明を求めなかったことについての異議申立ては,法令の違反が あることを理由とする場合に限られる。 イ.下線部Aにつき,検察官の尋問に対する異議申立ては,法令の違反があることを理由とする 場合に限られる。 ウ.下線部Aにつき,裁判長は,弁護人の異議申立てに対して判断するに当たり,他の裁判官と の合議を経る必要がない。 エ.下線部Bにつき,弁護人は,検察官調書の証拠調べをする決定に不服がある場合には,直ち に抗告する必要がある。 オ.下線部Bにつき,裁判所は,仮に検察官からの証拠調べ請求を却下する場合であっても,弁 護人の意見を聴く必要がある。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ エ 〔第31問〕(配点:2) 第一審の被告人質問に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1 から5までのうちどれか。(解答欄は,[54]) ア.被告人質問については,証拠調べの最終の段階で行うこととされており,検察官の立証が終 了する前に被告人質問を実施することは許されない。 イ.被告人質問を実施するためには証拠調べの請求や決定を必要としない。 ウ.被告人質問を開始するに当たっては,あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめなけ れば違法な手続となる。 エ.被告人質問においては,まず弁護人が質問し,次いで検察官が質問をするという順番によら なければならない。 オ.当事者の質問終了後,裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても,訴訟手続の法令違 反の問題は生じない。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ - 16 - オ 5.エ オ 〔第32問〕(配点:3) 次のT,Uの【見解】は,犯行を否認する甲を有罪とするに当たり,甲と共に犯行を行った旨自 白する乙の供述につき,補強証拠を要するか否かに関するものである。【見解】に関する後記アか らオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答 欄は,[55]) 【見 解】 T.甲を有罪とするには,乙の供述につき補強証拠を要する。 U.甲を有罪とするには,乙の供述につき補強証拠を要しない。 【記 述】 ア.Uの見解に対しては,他に補強証拠がない限り,否認した甲は有罪,自白した乙は無罪にな り,事実を合一的に確定できないという批判がある。 イ.自白の証明力の過大評価を防止するという刑事訴訟法第319条第2項の規定の趣旨からす れば,本人の自白と共犯者の自白を区別する理由がないと考えると,Tの見解に結び付く。 ウ.本人の自白は,証明力が過大に評価される点に危険があるが,共犯者の自白は,被告人の引 き込みや責任転嫁をする点に危険があり,その危険は異なると考えると,Tの見解に結び付く。 エ.刑事訴訟法第319条第2項の規定は,自由心証主義の例外であるから限定的に解すべきで あると考えると,Uの見解に結び付く。 オ.共犯者である乙の自白は,甲の公判においては,反対尋問による吟味を経ることになるため 証明力が高いと考えると,Tの見解に結び付く。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ - 17 - オ 5.エ オ 〔第33問〕(配点:3) 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤って いる場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[56]から[60]) 【事 例】 甲及び乙は,共謀の上,平成24年12月5日午前1時頃,H市内のコンビニエンスストア「T」 において,同店店員Vから現金10万円を強取したとしてH地方裁判所に起訴され,併合審理さ れることとなった。この審理において,V,甲の妻A及び知人Bに対する証人尋問が行われたと ころ,Vは,「2人組の犯人が店から出て行く際,犯人の1人がもう1人の犯人に対し,『@甲, 早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。次に,Aは,「平成24年12月8日午後3時 頃,自宅において,甲から『A3日前の午前1時頃,乙と一緒に,H市内のコンビニエンススト ア「T」で,果物ナイフを店員に突き付けて現金10万円を奪ってきた。見付からないと思って いたが,乙が捕まった。ひょっとしたら,乙が自分のことを話すかもしれない。そうなると,警 察が来るだろう。頼む。B3日前の午前1時頃には,俺が自宅で寝ていたということにして欲し い。』と言われた。」旨を証言した。次に,Bは,「平成24年12月4日,甲から,『C明日の午 前1時頃,H市内のコンビニエンスストアで強盗をしないか。』と言われたが,断った。」旨を証 言した。また,乙に対する被告人質問において,乙は,「甲と一緒に強盗をした際,甲が店員に 『D金を出せ。出さないと殺すぞ。』と言っていた。」旨を供述した。 【記 述】 ア.下線部@の発言は,要証事実を「犯行後,犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれ ていたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。[56] イ.下線部Aの発言は,要証事実を「甲が乙と一緒に強盗を実行したこと」とした場合,伝聞証 拠ではない。[57] ウ.下線部Bの発言は,要証事実を「甲がAに甲のアリバイ作りに協力するよう依頼したこと」 とした場合,伝聞証拠ではない。[58] エ.下線部Cの発言は,要証事実を「甲がBに強盗を実行することを持ち掛けたこと」とした場 合,伝聞証拠ではない。[59] オ.下線部Dの発言は,要証事実を「甲がVを脅迫したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。 [60] - 18 - 〔第34問〕(配点:3) 次の【見解】は,実体的には常習特殊窃盗罪を構成する窃盗行為が刑法第235条の窃盗罪(以 下「単純窃盗罪」という。)として起訴され(以下「前訴」という。),判決が確定した後,その判 決の宣告前に犯されていた余罪の窃盗行為(実体的には確定判決を経由した窃盗行為と共に一つの 常習特殊窃盗罪を構成するもの)が,前同様に単純窃盗罪として起訴された場合(以下「後訴」と いう。)に,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴に及ぶかという点に関するものである。後記1 から5までの【記述】のうち,【見解】と同じ立場から論じているものはどれか。(解答欄は,[ 61]) 【見 解】 訴因制度を採用した現行刑事訴訟法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対 象であると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も一事不再理効を有することに 加え,常習特殊窃盗罪の性質や一罪を構成する行為の一部起訴も適法になし得ることなどに鑑み ると,前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的には,前訴 及び後訴の各訴因のみを基準としてこれらを比較対照することにより行うのが相当である。本件 においては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,両訴因を通じて常習性の発露とい う面は全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,両訴因の相互関係を検討するに当たり,常 習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しないのであるから,ここに常習特殊窃盗罪によ る一罪という観点を持ち込むことは,相当でないというべきである。 【記 述】 1.単純窃盗として起訴された以上,訴因を動かす権限のない裁判所としては,訴因の範囲にお いて審判すべきである。 2.裁判所は訴因を超えて事実を認定し有罪判決をすることは許されないが,免訴や公訴棄却と いった形式裁判をする場合に関する限り訴因に拘束されることはないと解すべきである。 3.両訴因間における公訴事実の単一性の有無を判断するに当たり,いずれの訴因の記載内容に もなっていないところの犯行の常習性という要素について証拠により心証形成をし,両者は常 習特殊窃盗として包括的一罪を構成するから公訴事実の単一性を肯定できる場合には,前訴の 確定判決の一事不再理効が後訴にも及ぶとすべきである。 4.実体に合わせて訴因が変更されれば免訴となるが,そうでなければ有罪判決になるというこ とになり,検察官の選択によって両極端の結果を生じさせるのは,不合理である。 5.訴因は有罪を求めて検察官により提示された審判の対象であり,訴因を超えて有罪判決をす ることは,被告人の防御権を侵害するから許されないが,これに対し,確定判決の有無という 訴訟条件の存否は職権調査事項である上,その結果免訴判決がなされても,被告人の防御権を 侵害するおそれは全くないから,訴因に拘束力を認める理由も必要性も存しない。 (参照条文)盗犯等の防止及び処分に関する法律 第2条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第235条,第236条,第238条若ハ第239 条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ3年以上,強盗ヲ以テ論ズ ベキトキハ7年以上ノ有期懲役ニ処ス 一 凶器ヲ携帯シテ犯シタルトキ 二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ 三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ 侵入シテ犯シタルトキ 四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ - 19 - 〔第35問〕(配点:3) 次の【記述】は,前科証拠の証拠能力に関する最高裁判所の判例を要約したものである。 【記述】 中の@からBまでの( )内から適切な語句を選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記 1から5までのうちどれか。(解答欄は,[62]) 【記 述】 前科も一つの事実であり,前科証拠は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての 価値(@(a.法律的関連性 b.自然的関連性))を有している。反面,前科,特に同種前科に ついては,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために 事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲 に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生ずるなど,その取調べ に付随してA(a.争点が拡散する b.不当な不意打ちになる)おそれもある。したがって,前 科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば,(@)があるかどうかのみによ って証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について, 実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初め て証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一 性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実がB(a.顕著な特徴 b.相当 の重大性)を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両 者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用でき るものというべきである。 1.@a Aa Ba 2.@a Ab Ba 3.@a Ab Bb 4.@b Aa Ba 5.@b Aa Bb 〔第36問〕(配点:3) 量刑において起訴されていない犯罪事実,すなわち余罪をどう扱うべきかに関し,「量刑は,被 告人の性格,経歴及び犯罪の動機,目的,方法等全ての事情を考慮して,裁判所が処断刑の範囲内 において,適当に決定すべきものであるから,その量刑のための一情状として,いわゆる余罪をも 考慮することは,必ずしも禁じられるところではない。」との見解がある。次のアからオまでの各 記述のうち,この見解に対する批判になり得ないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は,[63]) ア.起訴された犯罪事実のほかに,起訴されていない犯罪事実を余罪として認定し,実質上これ を処罰する趣旨で量刑資料として考慮し,被告人を重く処罰することとの区別が実際には困難 な場合がある。 イ.余罪が考慮できないと,犯罪に至らない不当な行状などが情状事実に含まれることと均衡を 失する。 ウ.余罪は被告人が犯した別の犯罪事実であるから,情状事実である犯罪傾向の有力な間接事実 となる。 エ.刑事裁判手続において犯罪事実の認定手続と量刑手続とは区分されていないため,量刑資料 である余罪が犯罪事実の認定に不当な影響を及ぼすおそれがある。 オ.余罪も犯罪事実であるため,その認定に当たっては,起訴された犯罪事実に準じた手続保障 を求めるべきであるが,量刑のための一情状だとすると厳格な証明を要しないことになる。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ - 20 - エ 5.エ オ 〔第37問〕(配点:2) 公判前整理手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から 5までのうちどれか。(解答欄は,[64]) ア.裁判所は,被告人に弁護人がなければ公判前整理手続を行うことができない。 イ.裁判所は,訴因の変更を許すことができない。 ウ.裁判所は,証拠調べをする決定をすることができる。 エ.検察官は,証明予定事実を記載した書面について,裁判所への提出を免除される場合がある。 オ.被告人又は弁護人は,取調べを請求した証拠について,検察官に対し,開示する必要がない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ 〔第38問〕(配点:3) 被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合における その配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)による意見陳述に関する次のアか らオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄 は,[65]) ア.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項に よる意見の陳述のいずれの場合であっても,その申出は,あらかじめ検察官にしなければなら ない。 イ.裁判所は,審理の状況その他の事情を考慮して,相当でないと認めるときは,刑事訴訟法第 292条の2第1項による意見の陳述の場合には,意見の陳述に代え意見を記載した書面を提 出させることができるが,刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述の場合には, 意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させることはできない。 ウ.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項に よる意見の陳述のいずれの場合であっても,その陳述は,犯罪事実の認定のための証拠とはな らない。 エ.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項に よる意見の陳述のいずれの場合であっても,その陳述は,量刑資料にはなり得る。 オ.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述では,法律の適用についての意見を述べ ることはできないから,被害者等は,被告人が受けるべき刑罰について,「法律上,なし得る 限りの最も重い刑罰に処してください。」と述べてはならない。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ (参照条文)刑事訴訟法 第292条の2第1項 裁判所は,被害者等又は当該被害者の法定代理人から,被害に関する心情 その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,公判期日において,その意見を陳述 させるものとする。 第316条の38第1項 裁判所は,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から,事実又は法 律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において,審理の状況,申出をした者の 数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,公判期日において,第293条第1項の規定に よる検察官の意見の陳述の後に,訴因として特定された事実の範囲内で,申出をした者がその意 見を陳述することを許すものとする。 - 21 - 〔第39問〕(配点:2) 控訴に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう ちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。 (解答欄は, [66]) ア.控訴裁判所は,事後審なので,原判決の言渡し後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべき情状 について取り調べることはできない。 イ.簡易裁判所がした刑事第一審の判決に対する控訴については,地方裁判所ではなく,高等裁 判所が裁判権を有する。 ウ.控訴裁判所は,被告人のみが控訴をした事件について,原判決の認定した事実に誤認がある と認める場合には,それより被告人に不利益な事実を認定することができる場合もある。 エ.控訴審では,第一審の公判手続に関する規定が準用されるので,被告人は,公判期日におい て,控訴趣意書に基づき自ら弁論をすることができる。 オ.第一審における弁護人は,判決の宣告により弁護人の選任の効力が失われるので,被告人の ため控訴をすることができず,控訴をするには改めて弁護人として選任される必要がある。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ 〔第40問〕(配点:2) 略式手続に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[ 67]) 1.略式命令を受けた者又は検察官は,その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求を することができる。 2.検察官は,略式命令の請求に際し,被疑者に対し,あらかじめ,略式手続を理解させるため に必要な事項を説明し,通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上,略式手続 によることについて異議がないかどうかを確かめなければならない。 3.被疑者は,略式手続によることについて異議がないときは,書面でその旨を明らかにしなけ ればならない。 4.地方裁判所は,検察官の請求により,その管轄に属する事件について,公判前,略式命令で, 100万円以下の罰金又は科料を科することができる。 5.略式命令の告知があったときは,勾留状は,その効力を失う。 - 22 -