平成25年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨 [憲 法] 202*年時点では, 衆議院小選挙区選出議員における, いわゆる「世襲」議員の数が増加す る傾向にある。 「世襲」議員とは, 例えば, 国会議員が引退する際に, その子が親と同一の選挙区 から立候補して当選した場合の当選議員をいう。 「世襲」議員には, 立候補時において, 一般の新 人候補者に比べて, 後援会組織, 選挙資金, 知名度等のメリットがあると言われている。 このよ うな「世襲」議員については賛否両論があるが, 政党A及び政党Bでは, 世論の動向も踏まえて 何らかの対応策を採ることとし, 立候補が制限される世襲の範囲や対象となる選挙区の範囲等に ついて検討が行われた。 その結果, 政党Aから甲案が, 政党Bから乙案が, それぞれ法律案とし て国会に提出された。 甲乙各法律案の内容は, 以下のとおりである。 (甲案)政党は, その政党に所属する衆議院議員の配偶者及び三親等内の親族が, 次の衆議 院議員選挙において, 当該議員が選出されている小選挙区及びその小選挙区を含む都 道府県内の他の小選挙区から立候補する場合は, その者を当該政党の公認候補とする ことができない。 (乙案)衆議院議員の配偶者及び三親等内の親族は, 次の衆議院議員選挙において, 当該議 員が選出されている小選挙区及びその小選挙区を含む都道府県内の他の小選挙区から 立候補することができない。 政党Cに所属する衆議院議員Dは, 次の衆議院議員選挙では自らは引退した上で, 長男を政党 Cの公認候補として出馬させようとして, その準備を着々と進めている。 Dは, 甲案及び乙案の いずれにも反対である。 Dは, 甲案にも乙案にも憲法上の問題があると考えている。 〔設 問〕 Dの立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ, あ なた自身の見解を述べなさい。 (出題趣旨) 本問は, いわゆる世襲議員に関する立候補の自由の制限をめぐる問題である。 甲 案は一定の要件の下で政党の公認候補とすることを禁止し, 乙案は一定の要件の下 で立候補自体を禁止している。 まず, 甲案と乙案によって, どのような権利・自由が制約されるのかを明らかに する必要がある。 そこでは, 甲案と乙案とで, 共通する問題と, それぞれに特有の 問題とがある。 その上で, 被選挙権及び立候補の自由の憲法上の位置付けに関する 判例及び主要な学説を前提として, 世襲を理由とした別異の取扱いの合憲性が問題 となる。 そこでは, 選挙権・被選挙権及び立候補の自由, そして平等に関する基礎 理論の正確な理解に基づいて, D側及び法案提出側からの各主張の対立点を明確に することが求められている。 さらに, いわゆる世襲議員の功罪に関する一般的な指 摘, 立候補の制限と選挙に求められる公平さとの関係, 立候補の制限と選挙民によ る選択との関係等に関する対立点を明確にする。 また, 甲案に関しては, とりわけ 政党がその公認候補を自由に選定・決定するという政党の自律権に関し, 検討する ことが求められよう。 そして, それぞれの対立点に関して, 一定の説得力のある理由を付して自己の結 論を導き出すことが求められている。 [行政法] A市は, 景観法(以下「法」という。 )に基づく事務を処理する地方公共団体(景観行政団体) であり, 市の全域について景観計画(以下「本件計画」という。 )を定めている。 本件計画には, A市の臨海部の建築物に係る形態意匠の制限として, 「水域に面した外壁の幅は, 原則として50 メートル以内とし, 外壁による圧迫感の軽減を図る。 」と定められている。 事業者Bは, A市の臨 海部に, 水域に面した外壁の幅が70メートルのマンション(以下「本件マンション」という。 ) を建築する計画を立て, 2013年7月10日に, A市長に対し法第16条第1項による届出を 行った。 本件マンションの建築は, 法第17条第1項にいう特定届出対象行為にも該当する。 し かし, 本件マンションの建築予定地の隣に建っているマンションに居住するCは, 本件マンショ ンの建築は本件計画に違反し良好な景観を破壊するものと考えた。 Cは, 本件マンションの建築 を本件計画に適合させるためには, 水域に面した外壁の幅が50メートル以内になるように本件 マンションの設計を変更させることが不可欠であると考え, 法及び行政事件訴訟法による法的手 段を採ることができないか, 弁護士Dに相談した。 Cから同月14日の時点で相談を受けたDの 立場に立って, 以下の設問に解答しなさい。 なお, 法の抜粋を資料として掲げるので, 適宜参照しなさい。 〔設問1〕 Cが, 本件計画に適合するように本件マンションの設計を変更させるという目的を実現する には, 法及び行政事件訴訟法によりどのような法的手段を採ることが必要か。 法的手段を具体 的に示すとともに, 当該法的手段を採ることが必要な理由を, これらの法律の定めを踏まえて 説明しなさい。 〔設問2〕 〔設問1〕の法的手段について, 法及び行政事件訴訟法を適用する上で問題となる論点のう ち, 訴訟要件の論点に絞って検討しなさい。 【資料】景観法(平成16年法律第110号)(抜粋) (目的) 第1条 この法律は, 我が国の都市, 農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため, 景観計 画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより, 美しく風格のある国土の形成, 潤いのある豊 かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り, もって国民生活の向上並びに国 民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。 (基本理念) 第2条 良好な景観は, 美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠な ものであることにかんがみ, 国民共通の資産として, 現在及び将来の国民がその恵沢を享受できる よう, その整備及び保全が図られなければならない。 2〜5 (略) (住民の責務) 第6条 住民は, 基本理念にのっとり, 良好な景観の形成に関する理解を深め, 良好な景観の形成に 積極的な役割を果たすよう努めるとともに, 国又は地方公共団体が実施する良好な景観の形成に関 する施策に協力しなければならない。 (景観計画) 第8条 景観行政団体は, 都市, 農山漁村その他市街地又は集落を形成している地域及びこれ と一体となって景観を形成している地域における次の各号のいずれかに該当する土地(中略) の区域について, 良好な景観の形成に関する計画(以下「景観計画」という。 )を定めること ができる。 一〜五 (略) 2〜11 (略) (届出及び勧告等) 第16条 景観計画区域内において, 次に掲げる行為をしようとする者は, あらかじめ, (中略) 行為の種類, 場所, 設計又は施行方法, 着手予定日その他国土交通省令で定める事項を景観 行政団体の長に届け出なければならない。 一 建築物の新築(以下略) 二〜四 2〜7 (略) (略) (変更命令等) 第17条 景観行政団体の長は, 良好な景観の形成のために必要があると認めるときは, 特定 届出対象行為(前条第1項第1号又は第2号の届出を要する行為のうち, 当該景観行政団体 の条例で定めるものをいう。 (中略))について, 景観計画に定められた建築物又は工作物の 形態意匠の制限に適合しないものをしようとする者又はした者に対し, 当該制限に適合させ るため必要な限度において, 当該行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを命 ずることができる。 (以下略) 2 前項の処分は, 前条第1項又は第2項の届出をした者に対しては, 当該届出があった日か ら30日以内に限り, することができる。 3〜9 (略) (出題趣旨) 本問は, 事案に即して, また関係行政法規を踏まえて, 行政訴訟についての基本 的な知識及び理解を運用する基本的な能力を試す趣旨の問題である。 具体的には, マンションの建設計画に対し近隣住民が景観計画の遵守を求めるための行政事件訴 訟法上の手段について問うものである。 景観法による変更命令の期間制限に照らし て, 実際上仮の義務付けの申立てが必要なこと, 及び, 当該申立てを行うには非申 請型(直接型)義務付け訴訟の提起が必要なことを説き, 申立て及び請求の趣旨を 具体的に示した上で, 原告適格を中心とする訴訟要件の論点について, 景観法の趣 旨及び景観という利益の性質に即して論じることが求められる。 [民法] 次の文章を読んで, 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。 【事実】 1.Aは, 太陽光発電パネル(以下「パネル」という。 )の部品を製造し販売することを事業とす る株式会社である。 工場設備の刷新のための資金を必要としていたAは, 平成25年1月11 日, Bから, 利息年5%, 毎月末日に元金100万円及び利息を支払うとの条件で, 1200 万円の融資を受けると共に, その担保として, パネルの部品の製造及び販売に係る代金債権で あって, 現在有しているもの及び今後1年の間に有することとなるもの一切を, Bに譲渡した。 A及びBは, 融資金の返済が滞るまでは上記代金債権をAのみが取り立てることができること のほか, Aが融資金の返済を一度でも怠れば, BがAに対して通知をすることによりAの上記 代金債権に係る取立権限を喪失させることができることも, 併せて合意した。 2.Aは, 平成25年3月1日, Cとの間で, パネルの部品を100万円で製造して納品する旨 の契約を締結した。 代金は同年5月14日払いとした。 Aは, 上記部品を製造し, 同年3月1 2日, Cに納品した(以下, この契約に基づくAのCに対する代金債権を「甲債権」という。 )。 Aは, 同月25日, Dとの間で, 甲債権に係る債務をDが引き受け, これによりCを当該債務 から免責させる旨の合意をした。 3.Aは, 平成25年3月5日, Eとの間で, パネルの部品を150万円で製造して納品する旨 の契約を締結した。 代金は同年5月14日払いとした。 Aは, 上記部品を製造し, 同年3月2 6日, Eに納品した(以下, この契約に基づくAのEに対する代金債権を「乙債権」という。 )。 乙債権については, Eからの要請を受けて, 上記契約を締結した同月5日, AE間で譲渡禁止 の特約がされた。 Aは, Bに対してこの旨を同月5日到達の内容証明郵便で通知した。 4.その直後, Aは, 大口取引先の倒産のあおりを受けて資金繰りに窮するようになり, 平成2 5年4月末日に予定されていたBへの返済が滞った。 5.Aの債権者であるFは, 平成25年5月1日, Aを債務者, Cを第三債務者として甲債権の 差押命令を申し立て, 同日, 差押命令を得た。 そして, その差押命令は同月2日にCに送達さ れた。 6.Bは, 平成25年5月7日, Aに対し, 同年1月11日の合意に基づき取立権限を喪失させ る旨を同年5月7日到達の内容証明郵便で通知した。 Aは, 同年5月7日, D及びEに対し, 甲債権及び乙債権をBに譲渡したので, これらの債権についてはBに対して弁済されたい旨を, 同月7日到達の内容証明郵便で通知した。 〔設問1〕 (1) 【事実】1の下線を付した契約は有効であるか否か, 有効であるとしたならば, Bは甲債権 をいつの時点で取得するかを検討しなさい。 (2) Cは, 平成25年5月14日, Fから甲債権の支払を求められた。 この場合において, Cの 立場に立ち, その支払を拒絶する論拠を示しなさい。 〔設問2〕 Eは, 平成25年5月14日, Bから乙債権の支払を求められた。 この請求に対し, Eは, 【事 実】3の譲渡禁止特約をもって対抗することができるか。 譲渡禁止特約の意義を踏まえ, かつ, Bが乙債権を取得した時期に留意しつつ, 理由を付して論じなさい。 (出題趣旨) 設問1のうち, 小問1は, 将来債権譲渡が原則として有効であることを踏まえ, 担保目的でされた将来債権の譲渡契約の結果, 債権譲受人が将来債権をいつの時点 で取得したのかについて, 動産譲渡担保・不動産譲渡担保と異なる債権譲渡担保の 特性を意識しながら理論的に説明をすることができる能力を試すものである。 小問 2は, 担保目的での将来債権譲渡がされた後に債権者・引受人間でされた免責的債 務引受の効力及び対抗力に留意しつつ, 譲渡債権について差押債権者が有する地位 を, 事実に即して論じさせるものである。 また, 設問2は, 将来債権譲渡を目的と する契約が締結された後に譲渡債権に付された譲渡禁止特約をもって債権譲受人に 対抗することができるか否かを, 譲渡禁止特約に関する民法第466条第2項の理 解を踏まえ, 債権譲受人の地位及び債務者の地位に結び付けられた利益を考慮に入 れつつ理論的に説明することができる能力を試すものである。 [商 法] 次の文章を読んで, 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。 1.X株式会社(以下「X社」という。 )は, 日本国内において不動産の開発及び販売等を行う監 査役会設置会社であり, 金融商品取引所にその発行する株式を上場している。 2.Y株式会社(以下「Y社」という。 )は, 日本国内において新築マンションの企画及び販売等 を行う取締役会設置会社であり, 監査役を置いている。 Y社が発行する株式は普通株式のみで あり, その譲渡による取得にはY社の承認を要するものとされている。 Y社の発行済株式のうち, 75%はX社及びその子会社(以下, X社を含め「Xグループ」 という。 )が, 15%はY社の取締役であるAが, 10%は関東地方を中心に住居用の中古不動 産の販売等を行うZ株式会社(以下「Z社」という。 )がそれぞれ保有している。 なお, Z社の 発行済株式の67%はAが保有し, 同社の取締役はA及びAの親族のみである。 3.X社は, 平成23年9月, Y社の行う事業をXグループ内の他社に統合する方向で検討を始 め, その後, Aに対し, A及びZ社が保有するY社株式をX社に売却するよう求めた。 しかし, Aは, Y社との資本関係が失われることによって生じ得るZ社の事業展開への不安を訴えて回 答を留保し, その後のX社による説得にも応じなかった。 4.X社は, 平成24年6月1日, 取締役会を開催し, 同年9月1日をもってY社をX社の完全 子会社とする旨の株式交換契約(以下「本件株式交換契約」という。 )を締結することを適法に 決定した。 また, Y社でも, 同年6月1日, 取締役会を開催し, 本件株式交換契約を締結する ことを適法に決定した。 これらの決定を受けて, X社とY社との間で本件株式交換契約が正式に締結された。 本件株 式交換契約においては, Y社株主に対しY社株式10株につきX社株式1株を交付する, すな わち, X社とY社との間の株式交換比率(以下「本件交換比率」という。 )を1対0.1とする 旨が定められた。 5.X社では, 同月29日, 定時株主総会が開催され, 本件株式交換契約の承認に関する議案が 適法に可決された。 6.Y社でも, 同日, 定時株主総会(以下「本件総会」という。 )が適法な招集手続に基づき開催 された。 本件総会には, 本件株式交換契約の承認に関する議案及びAの取締役からの解任に関 する議案が提出された。 Aは, 本件総会の議場において, 株主としての地位に基づき, 議長である代表取締役Bに対 し, 自らが取締役から解任される理由について質問をした。 これに対してBは, 「それはあなた もわかっているはずであり, 答える必要はない。 」と回答し, 質疑を打ち切った。 A及びZ社は, 本件総会に提出された上記各議案に反対したが, いずれもXグループ各社の賛成により可決さ れた。 7.Aは, 同年7月, 本件交換比率の妥当性について独自に検討し, 算定を行うこととした。 そ の結果, 同年8月, Aとしては, Y社株主に対しY社株式10株につきX社株式3株を交付す るのが妥当であるとの結論に至った。 〔設問1〕 Aは, Aを取締役から解任する旨の本件総会の決議の効力を争うことができるか。 〔設問2〕 Aは, Y社に対し, 本件交換比率の妥当性を検討するためであることを明らかにして, 本件 交換比率をY社が算定するために使用したY社の一切の会計帳簿及びこれに関する資料の閲覧 を請求した。 Y社は, この請求を拒むことができるか。 なお, Y社の会計帳簿及びこれに関す る資料は書面をもって作成されているものとする。 〔設問3〕 本件交換比率を不当と考えるAが, @ 本件株式交換契約に基づく株式交換の効力発生前に会社法上採ることができる手段 A 本件株式交換契約に基づく株式交換の効力発生後に会社法上採ることができる手段 として, それぞれどのようなものが考えられるか。 (出題趣旨) 本問は, 親子会社間で行われる株式交換について, 子会社の株主であり取締役で もある者が反対している場合において, @株主の質問を打ち切ってされた当該取締 役を解任する株主総会決議の効力, A株式交換比率の妥当性を検討するためにされ る会計帳簿閲覧請求の可否, B株式交換比率の不当を主張する株主が救済を受ける 方法を問うものである。 解答に際しては, @会社法第314条に基づく説明義務の違反の有無及び株主総 会決議の効力を争うことの可否, A同法第433条第1項に基づき会計帳簿閲覧請 求をする場合における会計帳簿の特定性及び同条第2項第3号に定める拒絶事由(競 争者による請求)の有無, B株式交換比率の不当を理由として株式交換を事前に差 し止めることの可否及び株式交換契約を承認する株主総会決議の効力を争うことの 可否, 同法第785条に基づく株式買取請求の可否, 同法第828条第1項第11 号に定める株式交換無効の訴えの無効事由の有無並びに同法第423条第1項又は 第429条第1項に基づく取締役の責任追及の可否について, 正しく論述すること が求められる。 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は, 7:3) 次の文章を読んで, 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。 【事例】 Aは, 平成23年11月10日, Bに対し, 弁済期を平成24年11月10日として, 1000 万円を貸し付けた(以下, この貸付けに基づく貸金債権を「甲債権」という。 )。 しかし, Bは, 弁 済期にこれを返済しなかった。 そこで, AがBの現在の財産状況を調査したところ, Bの営む店舗の経営状態が悪化し, 甲債権 のほかにも, 多額の借入金や取引先に対する買掛金の合計1億円余りが弁済期を過ぎても未払とな っていること, Bの所有する不動産にはその評価額以上に抵当権が設定されており, 平成25年1 月31日を弁済期とする500万円の売掛金債権(以下「乙債権」という。 )をCに対して有する ほか, Bには見るべき資産がないことが判明した。 そこで, 平成25年2月25日, Aは, Bに代位して, 乙債権の支払を求める訴えをCに対して 提起した(以下, この訴えに係る訴訟を「訴訟1」という。 )。 〔設問1〕((1)と(2)は, 独立した問題である。 ) (1) Bは, 平成25年3月14日, 訴訟1に係る訴状の送達を受けたCから問い合わせを受けて, 訴訟1が第一審に係属中であることを知った。 Bは, 甲債権については, 平成24年12月1 0日にAから免除を受けたとしてその存在を争うとともに, 乙債権については, 自己に支払う ようCに求めたいと考えている。 ア この場合, Bは, 訴訟1において, 民事訴訟法上, どのような手段を採ることができるか, 理由を付して述べなさい。 イ 裁判所は, 審理の結果, 甲債権は存在せず, 乙債権は存在すると判断した場合, どのよう な判決をすべきか, Aが提起した訴訟1に係る訴え及びアでBが採った手段のそれぞれにつ いて説明しなさい。 (2) Bが訴訟1の係属の事実を知らないうちに, 訴訟1について, 甲債権は存在すると認められ るが, 乙債権が存在するとは認められないとして, 請求棄却判決がされ, この第一審判決が確 定した。 その後, Bが, Cに対し, 乙債権の支払を求めて訴えを提起した(以下, この訴えに 係る訴訟を「訴訟2」という。 )ところ, 訴訟2の過程において, 訴訟1についての上記確定 判決の存在が明らかになった。 この場合において, 訴訟2の受訴裁判所はどのような判決をす べきか, 当該受訴裁判所が, 審理の結果, 訴訟1の口頭弁論終結時において甲債権が存在して いたと判断したときと, これが存在していなかったと判断したときとに分けて説明しなさい。 【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。 ) Dは, Bに対して, 平成25年2月10日を弁済期とする1500万円の売掛金債権を有してい るが, 同年4月半ば, Dの取引先でCとも取引関係があるEから, AのCに対する訴訟1が第一審 に係属中であると知らされた。 そこで, Dは, 顧問弁護士と相談した結果, Aが甲債権を有することを争う必要はないが, この ままではAが乙債権の弁済による利益を独占し, 自らが弁済を受ける機会を失ってしまうこととな るので, それを避けたいと考えるに至った。 〔設問2〕 この場合, Dは, 訴訟1において, 民事訴訟法上, どのような手段を採ることができるか, 理 由を付して述べなさい。 (出題趣旨) 本問は, 債権者代位訴訟の基本的理解及びそれを踏まえた訴訟参加の基本的理解 を問うものである。 設問1(1)アは, 債権者Aが債権者代位訴訟を提起した場合の債務者Bの当事者 適格の有無等の検討を前提に, Bがする訴訟参加の形態を問うものである。 設問1 (1)イでは, 債権者代位訴訟において債権者Aに当事者適格が認められるためには 甲債権が存在すると認められることが必要であること, 設問1(2)では, これに加 えて, 債権者代位訴訟の既判力が債務者Bに及ぶかどうかの検討を踏まえて, それ ぞれの事例について, 裁判所がすべき判決内容を論じることが求められる。 また, 設問2は, 債権者Aが提起した債権者代位訴訟に係る判決の効力が, 債務者Bの他 の債権者であるDに及ぶかどうかの検討を前提に, Dがする訴訟参加の形態を問う ものである。 [刑 法] 以下の事例に基づき, Vに現金50万円を振り込ませた行為及びD銀行E支店ATMコーナーに おいて, 現金自動預払機から現金50万円を引き出そうとした行為について, 甲, 乙及び丙の罪責 を論じなさい(特別法違反の点を除く。 )。 1 甲は, 友人である乙に誘われ, 以下のような犯行を繰り返していた。 @乙は, 犯行を行うための部屋, 携帯電話並びに他人名義の預金口座の預金通帳, キャッシ ュカード及びその暗証番号情報を準備する。 A乙は, 犯行当日, 甲に, その日の犯行に用いる 他人名義の預金口座の口座番号や名義人名を連絡し, 乙が雇った預金引出し役に, 同口座のキ ャッシュカードを交付して暗証番号を教える。 B甲は, 乙の準備した部屋から, 乙の準備した 携帯電話を用いて電話会社発行の電話帳から抽出した相手に電話をかけ, その息子を装い, 交 通事故を起こして示談金を要求されているなどと嘘を言い, これを信じた相手に, その日乙が 指定した預金口座に現金を振り込ませた後, 振り込ませた金額を乙に連絡する。 C乙は, 振り 込ませた金額を預金引出し役に連絡し, 預金引出し役は, 上記キャッシュカードを使って上記 預金口座に振り込まれた現金を引き出し, これを乙に手渡す。 D引き出した現金の7割を乙が, 3割を甲がそれぞれ取得し, 預金引出し役は, 1万円の日当を乙から受け取る。 2 甲は, 分け前が少ないことに不満を抱き, 乙に無断で, 自分で準備した他人名義の預金口座 に上記同様の手段で現金を振り込ませて, その全額を自分のものにしようと計画した。 そこで, 甲は, インターネットを通じて, 他人であるAが既に開設していたA名義の預金口座の預金通 帳, キャッシュカード及びその暗証番号情報を購入した。 3 某日, 甲は, 上記1の犯行を繰り返す合間に, 上記2の計画に基づき, 乙の準備した部屋か ら, 乙の準備した携帯電話を用いて, 上記電話帳から新たに抽出したV方に電話をかけ, Vに 対し, その息子を装い, 「母さん。 俺だよ。 どうしよう。 俺, お酒を飲んで車を運転して, 交 通事故を起こしちゃった。 相手のAが, 『示談金50万円をすぐに払わなければ事故のことを 警察に言う。 』って言うんだよ。 警察に言われたら逮捕されてしまう。 示談金を払えば逮捕さ れずに済む。 母さん, 頼む, 助けてほしい。 」などと嘘を言った。 Vは, 電話の相手が息子で あり, 50万円をAに払わなければ, 息子が逮捕されてしまうと信じ, 50万円をすぐに準備 する旨答えた。 甲は, Vに対し, 上記A名義の預金口座の口座番号を教え, 50万円をすぐに 振り込んで上記携帯電話に連絡するように言った。 Vは, 自宅近くのB銀行C支店において, 自己の所有する現金50万円を上記A名義の預金口座に振り込み, 上記携帯電話に電話をかけ, 甲に振込みを済ませた旨連絡した。 4 上記振込みの1時間後, たまたまVに息子から電話があり, Vは, 甲の言ったことが嘘であ ると気付き, 警察に被害を申告した。 警察の依頼により, 上記振込みの3時間後, 上記A名義 の預金口座の取引の停止措置が講じられた。 その時点で, Vが振り込んだ50万円は, 同口座 から引き出されていなかった。 1 甲は, 上記振込みの2時間後, 友人である丙に, 上記2及び3の事情を明かした上, 上記A 名義の預金口座から現金50万円を引き出してくれれば報酬として5万円を払う旨持ちかけ, 丙は, 金欲しさからこれを引き受けた。 甲は, 丙に, 上記A名義の預金口座のキャッシュカー ドを交付して暗証番号を教え, 丙は, 上記振込みの3時間10分後, 現金50万円を引き出す ため, D銀行E支店(支店長F)のATMコーナーにおいて, 現金自動預払機に上記キャッシ ュカードを挿入して暗証番号を入力したが, 既に同口座の取引の停止措置が講じられていたた め, 現金を引き出すことができなかった。 なお, 金融機関は, いずれも, 預金取引に関する約 款等において, 預金口座の譲渡を禁止し, これを預金口座の取引停止事由としており, 譲渡さ れた預金口座を利用した取引に応じることはなく, 甲, 乙及び丙も, これを知っていた。 (出題趣旨) 本問は, 乙と共に振り込め詐欺を繰り返していた甲が, 利益を独占するため, 乙 に無断で, それまでと同様の方法で別の被害者をだまし, 現金50万円を甲が予め キャッシュカード等を入手していた他人名義の預金口座に振り込ませることに成功 し, 甲からの依頼を受けた丙が, 同口座から現金を引き出そうとしたが, 直前に同 口座が凍結されたため引出しが失敗に終わったという事案を素材として, 事案を的 確に分析する能力を問うとともに, 詐欺罪の客体, 実行行為及びその既遂時期, 共 謀共同正犯の成立要件, 窃盗未遂罪の成否等に関する基本的理解とその事例への当 てはめが論理的一貫性を保って行われているかを問うものである。 [刑事訴訟法] 次の記述を読んで, 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。 甲は, 傷害罪の共同正犯として, 「被告人は, 乙と共謀の上, 平成25年3月14日午前1時頃, L市M町1丁目2番3号先路上において, Vに対し, 頭部を拳で殴打して転倒させた上, コンク リート製縁石にその頭部を多数回打ち付ける暴行を加え, よって, 同人に加療期間不明の頭部打 撲及び脳挫傷の傷害を負わせたものである。 」との公訴事実が記載された起訴状により, 公訴を提 起された。 〔設問1〕 冒頭手続において, 甲の弁護人から裁判長に対し, 実行行為者が誰であるかを釈明するよう 検察官に命じられたい旨の申出があった場合, 裁判長はどうすべきか, 論じなさい。 〔設問2〕 冒頭手続において, 検察官が, 「実行行為者は乙のみである。 」と釈明した場合, 裁判所が, 実行行為者を「甲又は乙あるいはその両名」と認定して有罪の判決をすることは許されるか。 判決の内容及びそれに至る手続について, 問題となり得る点を挙げて論じなさい。 (出題趣旨) 本問は, 共同正犯者2名による傷害被告事件について, 冒頭手続において, 弁護 人から裁判長に対し, 検察官に実行行為者を特定するよう求釈明されたい旨の申出 があった場合の裁判長のとるべき措置, 裁判所が検察官の釈明内容と異なる事実を 認定して有罪判決をする場合の判決の内容, 及び手続上の問題点を検討させること により, 起訴状における訴因の明示, これと論理的に関連する訴因についての義務 的求釈明の要否, これと論理的に関連する釈明内容と異なる事実を認定する場合の 手続上の措置, および択一的認定の可否について, 基本的な学識の有無及び具体的 事案に対する応用力を試すものである。 [法律実務基礎科目(民事)] (〔設問1〕から〔設問5〕までの配点の割合は, 12:5:8:17:8) 司法試験予備試験用法文及び本問末尾添付の資料を適宜参照して, 以下の各設問に答えなさい。 〔設問1〕 弁護士Pは, Xから次のような相談を受けた。 【Xの相談内容】 「私は, 平成17年12月1日から「マンション甲」の301号室(以下「本件建物」とい います。 )を所有していたAから, 平成24年9月3日, 本件建物を代金500万円で買い受け (以下「本件売買契約」といいます。 ), 同日, Aに代金500万円を支払い, 本件建物の所有 権移転登記を具備しました。 本件建物には現在Yが居住していますが, Aの話によれば, Yが本件建物に居住するように なった経緯は次のとおりです。 Aは, 平成23年4月1日, Bに対し, 本件建物を, 賃貸期間を定めずに賃料1か月5万円 とする賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といいます。 )を締結し, これに基づき, 本件建物 を引き渡しました。 ところが, Bは, 平成24年4月2日, Bの息子であるYに対し, Aの承 諾を得ずに, 本件建物を, 賃貸期間を定めずに賃料1か月5万円とする賃貸借契約(以下「本 件転貸借契約」といいます。 )を締結し, これに基づき, 本件建物を引き渡しました。 こうして, Yが本件建物に居住するようになりました。 そこで, Aは, 同年7月16日, Bに対し, Aに無断で本件転貸借契約を締結したことを理 由に, 本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をし, 数日後, Yに対し, 本件建物の明渡しを 求めました。 しかし, Yは, 本件建物の明渡しを拒否し, 本件建物に居住し続けています。 このような次第ですので, 私は, Yに対し, 本件建物の明渡しを求めます。 」 弁護士Pは, 【Xの相談内容】を前提に, Xの訴訟代理人として, Yに対し, 所有権に基づく返 還請求権としての建物明渡請求権を訴訟物として, 本件建物の明渡しを求める訴えを提起した。 そして, 弁護士Pは, その訴状において, 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項) として, 次の各事実を主張した(なお, 以下では, これらの事実が請求を理由づける事実となる ことを前提に考えてよい。 )。 @ Aは, 平成23年4月1日当時, 本件建物を所有していたところ, Xに対し, 平成24年 9月3日, 本件建物を代金500万円で売ったとの事実 A Yは, 本件建物を占有しているとの事実 上記各事実が記載された訴状の副本を受け取ったYは, 弁護士Qに相談をした。 Yの相談内容 は次のとおりである。 【Yの相談内容】 「Aが平成23年4月1日当時本件建物を所有していたこと, AがXに対して平成24年9 月3日に本件建物を代金500万円で売ったことは, Xの主張するとおりです。 しかし, Aは, 私の父であるBとの間で, 平成23年4月1日, 本件建物を, 賃貸期間を定 めずに賃料1か月5万円で賃貸し(本件賃貸借契約), 同日, Bに対し, 本件賃貸借契約に基づ き, 本件建物を引き渡しました。 そして, 本件賃貸借契約を締結する際, Aは, Bに対し, 本 件建物を転貸することを承諾すると約したところ(以下, この約定を「本件特約」といいます。 ), Bは, 本件特約に基づき, 私との間で, 平成24年4月2日, 本件建物を, 賃貸期間を定めず に賃料1か月5万円で賃貸し(本件転貸借契約), 同日, 私に対し, 本件転貸借契約に基づき, 本件建物を引き渡しました。 その後, 私は, 本件建物に居住しています。 このような次第ですので, 私にはXに本件建物を明け渡す義務はないと思います。 」 そこで, 弁護士Qは, 答弁書において, Xの主張する請求を理由づける事実を認めた上で, 占 有権原の抗弁の抗弁事実として次の各事実を主張した。 B Aは, Bに対し, 平成23年4月1日, 本件建物を, 期間の定めなく, 賃料1か月5万円 で賃貸したとの事実。 C Aは, Bに対し, 同日, Bの賃貸借契約に基づき, 本件建物を引き渡したとの事実。 D Bは, Yに対し, 平成24年4月2日, 本件建物を, 期間の定めなく, 賃料1か月5万円 で賃貸したとの事実。 E Bは, Yに対し, 同日, Dの賃貸借契約に基づき, 本件建物を引き渡したとの事実。 以上を前提に, 以下の各問いに答えなさい。 (1) 本件において上記Cの事実が占有権原の抗弁の抗弁事実として必要になる理由を説明しなさ い。 (2) 弁護士Qが主張する必要がある占有権原の抗弁の抗弁事実は, 上記BからEまでの各事実だ けで足りるか。 結論とその理由を説明しなさい。 ただし, 本設問においては, 本件転貸借契約 締結の背信性の有無に関する事実を検討する必要はない。 〔設問2〕 平成24年11月1日の本件の第1回口頭弁論期日において, 弁護士Qは, 本件特約があった 事実を立証するための証拠として, 次のような賃貸借契約書(斜体部分は全て手書きである。 以 下「本件契約書」という。 )を提出した。 賃貸借契約書 1 AはBに対し, 本日から, Aが所有する「マンション甲」301号室を賃貸し, Bは これを賃借する。 2 賃料は1か月金5万円とし, Bは, 毎月末日限り翌月分をAに支払うものとする。 3 本契約書に定めがない事項は, 誠意をもって協議し, 解決するものとする。 4 Aは, Bが上記建物を転貸することを承諾する。 以上のとおり, 契約が成立したので, 本書を2通作成し, AB各1通を保有する。 平成23年4月1日 A A印 賃借人 B B印 賃貸人 本件契約書について, 弁護士PがXに第1回口頭弁論期日の前に確認したところ, Xの言い分 は次のとおりであった。 【Xの言い分】 「Aに本件契約書を見せたところ, Aは次のとおり述べていました。 『本件契約書末尾の私の署名押印は, 私がしたものです。 しかし, 本件契約書に記載されて いる本件特約は, 私が記載したものではありません。 本件特約は, B又はYが, 後で書き加え たものだと思います。 』」 そこで, 弁護士Pは, 第1回口頭弁論期日において, 本件契約書の成立の真正を否認したが, それに加え, 本件特約がなかった事実を立証するための証拠の申出をすることを考えている。 次 回期日までに, 弁護士Pが申出を検討すべき証拠には, どのようなものが考えられるか。 その内 容を簡潔に説明しなさい。 なお, 本設問に解答するに当たっては, 次の〔設問3〕のFの事実を 前提にすること。 〔設問3〕 本件の第1回口頭弁論期日の1週間後, 弁護士Qは, Yから次の事実を聞かされた。 F 本件の第1回口頭弁論期日の翌日にBが死亡し, Yの母も半年前に死亡しており, Bの相 続人は息子のYだけであるとの事実 これを前提に, 次の各問いに答えなさい。 (1) 上記Fの事実を踏まえると, 弁護士Qが主張すべき占有権原の抗弁の内容はどのようなもの になるか説明しなさい。 なお, 当該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。 (2) 弁護士Pは, (1)の占有権原の抗弁に対して, どのような再抗弁を主張することになるか。 その再抗弁の内容を端的に記載しなさい。 なお, 当該再抗弁を構成する具体的事実を記載する 必要はない。 〔設問4〕 本件においては, 〔設問3〕の(1)の占有権原の抗弁及び(2)の再抗弁がいずれも適切に主張され るとともに, 〔設問1〕の@からEまでの各事実及び〔設問3〕のFの事実は, 全て当事者間に争 いがなかった。 そして, 証拠調べの結果, 裁判所は, 次の事実があったとの心証を形成した。 【事実】 本件建物は, 乙市内に存在するマンションの一室で, 間取りは1DKである。 Aは, 平成1 7年12月1日, 本件建物を当時の所有者から賃貸目的で代金600万円で買い受け, その後, 第三者に賃料1か月8万円で賃貸していたが, 平成22年4月1日から本件建物は空き家にな っていた。 平成23年3月, Aは, 長年の友人であるBから, 転勤で乙市に単身赴任することになった との連絡を受けた。 AがBに転居先を確認したところ, まだ決まっていないとのことであった ため, Aは, Bに本件建物を紹介し, 本件賃貸借契約が締結された。 なお, 賃料は, 友人とし てのAの計らいで, 相場より安い1か月5万円とされた。 平成24年3月, Bの長男であるY(当時25歳)が乙市内の丙会社に就職し, 乙市内に居 住することになった。 Yは, 22歳で大学を卒業後, 就職もせずに遊んでおり, 平成24年3 月当時, 貸金業者から約150万円の借金をしていた。 そこで, Bは, Yが借金を少しでも返 済しやすくするため, Aから安い賃料で借りていた本件建物をYに転貸し, 自分は乙市内の別 のマンションを借りて引っ越すことにした。 こうして, 本件転貸借契約が締結された。 本件転貸借契約後も, BはAに対し, 約定どおり毎月の賃料を支払ってきたが, 同年7月5 日, 本件転貸借契約の締結を知ったAは, 同月16日, Bに対し, 本件転貸借契約を締結した ことについて異議を述べた。 これに対し, Bは, 転貸借契約を締結するのに賃貸人の承諾が必 要であることは知らなかった, しかし, 賃料は自分がAにきちんと支払っており, Aに迷惑は かけていないのだから, いいではないかと述べた。 Aは, Bの開き直った態度に腹を立て, 貸 金業者から借金をしているYは信用できない, Yに本件建物を無断で転貸したことを理由に本 件賃貸借契約を解除すると述べた。 しかし, Bは, 解除は納得できない, せっかくYが就職し て真面目に生活するようになったのに, 解除は不当であると述べた。 その後, Bは, 無断転貸ではなかったことにするため, 本件契約書に本件特約を書き加えた。 そして, Bは, Yに対し, 本件転貸借契約の締結についてはAの承諾を得ていると嘘をつき, Yは, これを信じて本件建物に居住し続けた。 この場合, 裁判所は, 平成24年7月16日にAがした本件賃貸借契約の解除の効力について, どのような判断をすることになると考えられるか。 結論とその理由を説明しなさい。 なお, 上記 事実は全て当事者が口頭弁論期日において主張しているものとする。 〔設問5〕 弁護士Pは, 平成15年頃から継続的にAの法律相談を受けてきた経緯があり, 本件について も, Aが本件転貸借契約の締結を知った翌日の平成24年7月6日, Aから相談を受けていた。 その際, 弁護士Pは, Aに対し, 本件建物を売却するのであれば, 無断転貸を理由に本件賃貸借 契約を解除してYから本件建物の明渡しを受けた後の方が本件建物を売却しやすいとアドバイス した。 その後, Aは, 無断転貸を理由に本件賃貸借契約を解除したが, Yから本件建物の明渡しを受 ける前に本件建物をXに売却した。 その際, Aは, Xから, 本件建物の明渡しをYに求めようと 思うので弁護士を紹介してほしいと頼まれ, 本件の経緯を知っている弁護士PをXに紹介した。 弁護士Pは, Aとの関係から, Xの依頼を受けざるを得ない立場にあるが, 受任するとした場 合, 受任するに当たってXに何を説明すべきか(弁護士報酬及び費用は除く。 )について述べなさ い。 弁護士職務基本規程(平成十六年十一月十日会規第七十号) 目次 第一章 基本倫理(第一条ー第八条) 第二章 一般規律(第九条ー第十九条) 第三章 依頼者との関係における規律 第一節 通則(第二十条ー第二十六条) 第二節 職務を行い得ない事件の規律(第二十七条・第二十八 条) 第三節 事件の受任時における規律(第二十九条ー第三十四条) 第四節 事件の処理における規律(第三十五条ー第四十三条) 第五節 事件の終了時における規律(第四十四条・第四十五条) 第四章 刑事弁護における規律(第四十六条―第四十九条) 第五章 組織内弁護士における規律(第五十条・第五十一条) 第六章 事件の相手方との関係における規律(第五十二条ー第五 十四条) 第七章 共同事務所における規律(第五十五条―第六十条) 第八章 弁護士法人における規律(第六十一条―第六十九条) 第九章 他の弁護士との関係における規律(第七十条ー第七十三 条) 第十章 裁判の関係における規律(第七十四条―第七十七条) 第十一章 弁護士会との関係における規律(第七十八条・第七十 九条) 第十二章 官公署との関係における規律(第八十条・第八十一条) 第十三章 解釈適用指針(第八十二条) 附則 弁護士は、 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。 その使命達成のために、 弁護士には職務の自由と独立が要請され、 高度の自治が保障されている。 弁護士は、 その使命を自覚し、 自らの行動を規律する社会的責任 を負う。 よって、 ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに するため、 弁護士職務基本規程を制定する。 第一章 基本倫理 (使命の自覚) 第一条 弁護士は、 その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現 にあることを自覚し、 その使命の達成に努める。 (自由と独立) 第二条 弁護士は、 職務の自由と独立を重んじる。 (弁護士自治) 第三条 弁護士は、 弁護士自治の意義を自覚し、 その維持発展に努 める。 (司法独立の擁護) 第四条 弁護士は、 司法の独立を擁護し、 司法制度の健全な発展に 寄与するように努める。 (信義誠実) 第五条 弁護士は、 真実を尊重し、 信義に従い、 誠実かつ公正に職 務を行うものとする。 (名誉と信用) 第六条 弁護士は、 名誉を重んじ、 信用を維持するとともに、 廉潔 を保持し、 常に品位を高めるように努める。 (研鑽) 第七条 弁護士は、 教養を深め、 法令及び法律事務に精通するため、 研鑽に努める。 (公益活動の実践) 第八条 弁護士は、 その使命にふさわしい公益活動に参加し、 実践 するように努める。 第二章 一般規律 (広告及び宣伝) 第九条 弁護士は、 広告又は宣伝をするときは、 虚偽又は誤導にわ たる情報を提供してはならない。 2 弁護士は、 品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。 (依頼の勧誘等) 第十条 弁護士は、 不当な目的のため、 又は品位を損なう方法によ り、 事件の依頼を勧誘し、 又は事件を誘発してはならない。 (非弁護士との提携) 第十一条 弁護士は、 弁護士法第七十二条から第七十四条までの規 定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当 な理由のある者から依頼者の紹介を受け、 これらの者を利用し、 又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。 (報酬分配の制限) 第十二条 弁護士は、 その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法 人でない者との間で分配してはならない。 ただし、 法令又は本会 若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その 他正当な理由がある場合は、 この限りでない。 (依頼者紹介の対価) 第十三条 弁護士は、 依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その 他の対価を支払ってはならない。 2 弁護士は、 依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価 を受け取ってはならない。 (違法行為の助長) 第十四条 弁護士は、 詐欺的取引、 暴力その他違法若しくは不正な 行為を助長し、 又はこれらの行為を利用してはならない。 (品位を損なう事業への参加) 第十五条 弁護士は、 公序良俗に反する事業その他品位を損なう事 業を営み、 若しくはこれに加わり、 又はこれらの事業に自己の名 義を利用させてはならない。 (営利業務従事における品位保持) 第十六条 弁護士は、 自ら営利を目的とする業務を営むとき、 又は 営利を目的とする業務を営む者の取締役、 執行役その他業務を執 行する役員若しくは使用人となったときは、 営利を求めることに とらわれて、 品位を損なう行為をしてはならない。 (係争目的物の譲受け) 第十七条 弁護士は、 係争の目的物を譲り受けてはならない。 (事件記録の保管等) 第十八条 弁護士は、 事件記録を保管又は廃棄するに際しては、 秘 密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなけれ ばならない。 (事務職員等の指導監督) 第十九条 弁護士は、 事務職員、 司法修習生その他の自らの職務に 関与させた者が、 その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に 及び、 又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、 若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければな らない。 第三章 依頼者との関係における規律 第一節 通則 (依頼者との関係における自由と独立) 第二十条 弁護士は、 事件の受任及び処理に当たり、 自由かつ独立 の立場を保持するように努める。 (正当な利益の実現) 第二十一条 弁護士は、 良心に従い、 依頼者の権利及び正当な利益 を実現するように努める。 (依頼者の意思の尊重) 第二十二条 弁護士は、 委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重し て職務を行うものとする。 2 弁護士は、 依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に 表明できないときは、 適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に 努める。 (秘密の保持) 第二十三条 弁護士は、 正当な理由なく、 依頼者について職務上知 り得た秘密を他に漏らし、 又は利用してはならない。 (弁護士報酬) 第二十四条 弁護士は、 経済的利益、 事案の難易、 時間及び労力そ の他の事情に照らして、 適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなけ ればならない。 (依頼者との金銭貸借等) 第二十五条 弁護士は、 特別の事情がない限り、 依頼者と金銭の貸 借をし、 又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、 若しく は依頼者の債務について保証をしてはならない。 (依頼者との紛議) 第二十六条 弁護士は、 依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じな いように努め、 紛議が生じたときは、 所属弁護士会の紛議調停で 解決するように努める。 第二節 職務を行い得ない事件の規律 (職務を行い得ない事件) 第二十七条 弁護士は、 次の各号のいずれかに該当する事件につい ては、 その職務を行ってはならない。 ただし、 第三号に掲げる事 件については、 受任している事件の依頼者が同意した場合は、 こ の限りでない。 一 相手方の協議を受けて賛助し、 又はその依頼を承諾した事件 二 相手方の協議を受けた事件で、 その協議の程度及び方法が信 頼関係に基づくと認められるもの 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件 四 公務員として職務上取り扱った事件 五 仲裁、 調停、 和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手 続実施者として取り扱った事件 (同前) 第二十八条 弁護士は、 前条に規定するもののほか、 次の各号のい ずれかに該当する事件については、 その職務を行ってはならない。 ただし、 第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同 意した場合、 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方 が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及 び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、 この限りでない。 一 相手方が配偶者、 直系血族、 兄弟姉妹又は同居の親族である 事件 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供 を約している者を相手方とする事件 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件 第三節 事件の受任時における規律 (受任の際の説明等) 第二十九条 弁護士は、 事件を受任するに当たり、 依頼者から得た 情報に基づき、 事件の見通し、 処理の方法並びに弁護士報酬及び 費用について、 適切な説明をしなければならない。 2 弁護士は、 事件について、 依頼者に有利な結果となることを請 け合い、 又は保証してはならない。 3 弁護士は、 依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにも かかわらず、 その見込みがあるように装って事件を受任してはな らない。 (委任契約書の作成) 第三十条 弁護士は、 事件を受任するに当たり、 弁護士報酬に関す る事項を含む委任契約書を作成しなければならない。 ただし、 委 任契約書を作成することに困難な事由があるときは、 その事由が 止んだ後、 これを作成する。 2 前項の規定にかかわらず、 受任する事件が、 法律相談、 簡易な 書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものである ときその他合理的な理由があるときは、 委任契約書の作成を要し ない。 (不当な事件の受任) 第三十一条 弁護士は、 依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに 不当な事件を受任してはならない。 (不利益事項の説明) 第三十二条 弁護士は、 同一の事件について複数の依頼者があって その相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、 事件を受 任するに当たり、 依頼者それぞれに対し、 辞任の可能性その他の 不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。 (法律扶助制度等の説明) 第三十三条 弁護士は、 依頼者に対し、 事案に応じ、 法律扶助制度、 訴訟救助制度その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を 説明し、 裁判を受ける権利が保障されるように努める。 (受任の諾否の通知) 第三十四条 弁護士は、 事件の依頼があったときは、 速やかに、 そ の諾否を依頼者に通知しなければならない。 第四節 事件の処理における規律 (事件の処理) 第三十五条 弁護士は、 事件を受任したときは、 速やかに着手し、 遅滞なく処理しなければならない。 (事件処理の報告及び協議) 第三十六条 弁護士は、 必要に応じ、 依頼者に対して、 事件の経過 及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、 依頼者と協議しな がら事件の処理を進めなければならない。 (法令等の調査) 第三十七条 弁護士は、 事件の処理に当たり、 必要な法令の調査を 怠ってはならない。 2 弁護士は、 事件の処理に当たり、 必要かつ可能な事実関係の調 査を行うように努める。 (預り金の保管) 第三十八条 弁護士は、 事件に関して依頼者、 相手方その他利害関 係人から金員を預かったときは、 自己の金員と区別し、 預り金で あることを明確にする方法で保管し、 その状況を記録しなければ ならない。 (預り品の保管) 第三十九条 弁護士は、 事件に関して依頼者、 相手方その他利害関 係人から書類その他の物品を預かったときは、 善良な管理者の注 意をもって保管しなければならない。 (他の弁護士の参加) 第四十条 弁護士は、 受任している事件について、 依頼者が他の弁 護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、 正当な理由な く、 これを妨げてはならない。 (受任弁護士間の意見不一致) 第四十一条 弁護士は、 同一の事件を受任している他の弁護士又は 弁護士法人との間に事件の処理について意見が一致せず、 これに より、 依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、 依頼者に対 し、 その事情を説明しなければならない。 (受任後の利害対立) 第四十二条 弁護士は、 複数の依頼者があって、 その相互間に利害 の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、 依頼者相互間に 現実に利害の対立が生じたときは、 依頼者それぞれに対し、 速や かに、 その事情を告げて、 辞任その他の事案に応じた適切な措置 をとらなければならない。 (信頼関係の喪失) 第四十三条 弁護士は、 受任した事件について、 依頼者との間に信 頼関係が失われ、 かつ、 その回復が困難なときは、 その旨を説明 し、 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならな い。 第五節 事件の終了時における規律 (処理結果の説明) 第四十四条 弁護士は、 委任の終了に当たり、 事件処理の状況又は その結果に関し、 必要に応じ法的助言を付して、 依頼者に説明し なければならない。 (預り金等の返還) 第四十五条 弁護士は、 委任の終了に当たり、 委任契約に従い、 金 銭を清算したうえ、 預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければ ならない。 第四章 刑事弁護における規律 (刑事弁護の心構え) 第四十六条 弁護士は、 被疑者及び被告人の防御権が保障されてい ることにかんがみ、 その権利及び利益を擁護するため、 最善の弁 護活動に努める。 (接見の確保と身体拘束からの解放) 第四十七条 弁護士は、 身体の拘束を受けている被疑者及び被告人 について、 必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努 める。 (防御権の説明等) 第四十八条 弁護士は、 被疑者及び被告人に対し、 黙秘権その他の 防御権について適切な説明及び助言を行い、 防御権及び弁護権に 対する違法又は不当な制限に対し、 必要な対抗措置をとるように 努める。 (国選弁護における対価受領等) 第四十九条 弁護士は、 国選弁護人に選任された事件について、 名 目のいかんを問わず、 被告人その他の関係者から報酬その他の対 価を受領してはならない。 2 弁護士は、 前項の事件について、 被告人その他の関係者に対し、 その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。 ただし、 本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある 場合は、 この限りでない。 第五章 組織内弁護士における規律 (自由と独立) 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。 以下これら を合わせて「組織」という。 )において職員若しくは使用人とな り、 又は取締役、 理事その他の役員となっている弁護士(以下「組 織内弁護士」という。 )は、 弁護士の使命及び弁護士の本質であ る自由と独立を自覚し、 良心に従って職務を行うように努める。 (違法行為に対する措置) 第五十一条 組織内弁護士は、 その担当する職務に関し、 その組織 に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、 又は行おうとし ていることを知ったときは、 その者、 自らが所属する部署の長又 はその組織の長、 取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対 する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとら なければならない。 第六章 事件の相手方との関係における規律 (相手方本人との直接交渉) 第五十二条 弁護士は、 相手方に法令上の資格を有する代理人が選 任されたときは、 正当な理由なく、 その代理人の承諾を得ないで 直接相手方と交渉してはならない。 (相手方からの利益の供与) 第五十三条 弁護士は、 受任している事件に関し、 相手方から利益 の供与若しくは供応を受け、 又はこれを要求し、 若しくは約束を してはならない。 (相手方に対する利益の供与) 第五十四条 弁護士は、 受任している事件に関し、 相手方に対し、 利益の供与若しくは供応をし、 又は申込みをしてはならない。 第七章 共同事務所における規律 (遵守のための措置) 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所 である場合を除く。 )を共にする場合(以下この法律事務所を「共 同事務所」という。 )において、 その共同事務所に所属する弁護 士(以下「所属弁護士」という。 )を監督する権限のある弁護士 は、 所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるよ うに努める。 (秘密の保持) 第五十六条 所属弁護士は、 他の所属弁護士の依頼者について執務 上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、 又は利用してはな らない。 その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、 同様と する。 (職務を行い得ない事件) 第五十七条 所属弁護士は、 他の所属弁護士(所属弁護士であった 場合を含む。 )が、 第二十七条又は第二十八条の規定により職務 を行い得ない事件については、 職務を行ってはならない。 ただし、 職務の公正を保ち得る事由があるときは、 この限りでない。 (同前ー受任後) 第五十八条 所属弁護士は、 事件を受任した後に前条に該当する事 由があることを知ったときは、 速やかに、 依頼者にその事情を告 げて、 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければなら ない。 (事件情報の記録等) 第五十九条 所属弁護士は、 職務を行い得ない事件の受任を防止す るため、 他の所属弁護士と共同して、 取扱い事件の依頼者、 相手 方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。 (準用) 第六十条 この章の規定は、 弁護士が外国法事務弁護士と事務所を 共にする場合に準用する。 この場合において、 第五十五条中「複 数の弁護士が」とあるのは「弁護士及び外国法事務弁護士が」と、 「共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という。 ) 」 とあるのは「共同事務所に所属する外国法事務弁護士(以下「所 属外国法事務弁護士」という。 ) 」と、 「所属弁護士が」とあるの は「所属外国法事務弁護士が」と、 第五十六条から第五十九条ま での規定中「他の所属弁護士」とあるのは「所属外国法事務弁護 士」と、 第五十七条中「第二十七条又は第二十八条」とあるのは 「外国特別会員基本規程第三十条の二において準用する第二十七 条又は第二十八条」と読み替えるものとする。 第八章 弁護士法人における規律 (遵守のための措置) 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、 その弁護士法人の 社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という。 )及び使 用人である外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な 措置をとるように努める。 (秘密の保持) 第六十二条 社員等は、 その弁護士法人、 他の社員等又は使用人で ある外国法事務弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正 当な理由なく他に漏らし、 又は利用してはならない。 社員等でな くなった後も、 同様とする。 (職務を行い得ない事件) 第六十三条 社員等(第一号及び第二号の場合においては、 社員等 であった者を含む。 )は、 次に掲げる事件については、 職務を行 ってはならない。 ただし、 第四号に掲げる事件については、 その 弁護士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、 こ の限りでない。 一 社員等であった期間内に、 その弁護士法人が相手方の協議を 受けて賛助し、 又はその依頼を承諾した事件であって、 自らこ れに関与したもの 二 社員等であった期間内に、 その弁護士法人が相手方の協議を 受けた事件で、 その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと 認められるものであって、 自らこれに関与したもの 三 その弁護士法人が相手方から受任している事件 四 その弁護士法人が受任している事件(当該社員等が自ら関与 しているものに限る。 )の相手方からの依頼による他の事件 (他の社員等との関係で職務を行い得ない事件) 第六十四条 社員等は、 他の社員等が第二十七条、 第二十八条又は 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を 行い得ない事件については、 職務を行ってはならない。 ただし、 職務の公正を保ち得る事由があるときは、 この限りでない。 2 社員等は、 使用人である外国法事務弁護士が外国特別会員基本 規程第三十条の二において準用する第二十七条、 第二十八条又は 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を 行い得ない事件については、 職務を行ってはならない。 ただし、 職務の公正を保ち得る事由があるときは、 この限りでない。 (業務を行い得ない事件) 第六十五条 弁護士法人は、 次の各号のいずれかに該当する事件に ついては、 その業務を行ってはならない。 ただし、 第三号に規定 する事件については受任している事件の依頼者の同意がある場合 及び第五号に規定する事件についてはその職務を行い得ない社員 がその弁護士法人の社員の総数の半数未満であり、 かつ、 その弁 護士法人に業務の公正を保ち得る事由がある場合は、 この限りで ない。 一 相手方の協議を受けて賛助し、 又はその依頼を承諾した事件 二 相手方の協議を受けた事件で、 その協議の程度及び方法が信 頼関係に基づくと認められるもの 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件 四 社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任 している事件 五 社員が第二十七条、 第二十八条又は第六十三条第一号若しく は第二号のいずれかの規定により職務を行い得ない事件 (同前) 第六十六条 弁護士法人は、 前条に規定するもののほか、 次の各号 のいずれかに該当する事件については、 その業務を行ってはなら ない。 ただし、 第一号に掲げる事件についてその依頼者及び相手 方が同意した場合、 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び 他の依頼者のいずれもが同意した場合並びに第三号に掲げる事件 についてその依頼者が同意した場合は、 この限りでない。 一 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供 を約している者を相手方とする事件 二 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件 三 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件 (同前ー受任後) 第六十七条 社員等は、 事件を受任した後に第六十三条第三号の規 定に該当する事由があることを知ったときは、 速やかに、 依頼者 にその事情を告げ、 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとら なければならない。 2 弁護士法人は、 事件を受任した後に第六十五条第四号又は第五 号の規定に該当する事由があることを知ったときは、 速やかに、 依頼者にその事情を告げ、 辞任その他の事案に応じた適切な措置 をとらなければならない。 (事件情報の記録等) 第六十八条 弁護士法人は、 その業務が制限されている事件を受任 すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士 が職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、 その弁 護士法人、 社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事 件の依頼者、 相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように 努める。 (準用) 第六十九条 第一章から第三章まで(第十六条、 第十九条、 第二十 三条及び第三章中第二節を除く。 ) 、 第六章及び第九章から第十二 章までの規定は弁護士法人に準用する。 第九章 他の弁護士との関係における規律 (名誉の尊重) 第七十条 弁護士は、 他の弁護士、 弁護士法人及び外国法事務弁護 士(以下「弁護士等」という。 )との関係において、 相互に名誉 と信義を重んじる。 (弁護士に対する不利益行為) 第七十一条 弁護士は、 信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れ てはならない。 (他の事件への不当介入) 第七十二条 弁護士は、 他の弁護士等が受任している事件に不当に 介入してはならない。 (弁護士間の紛議) 第七十三条 弁護士は、 他の弁護士等との間の紛議については、 協 議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。 第十章 裁判の関係における規律 (裁判の公正と適正手続) 第七十四条 弁護士は、 裁判の公正及び適正手続の実現に努める。 (偽証のそそのかし) 第七十五条 弁護士は、 偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、 又 は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。 (裁判手続の遅延) 第七十六条 弁護士は、 怠慢により又は不当な目的のため、 裁判手 続を遅延させてはならない。 (裁判官等との私的関係の不当利用) 第七十七条 弁護士は、 その職務を行うに当たり、 裁判官、 検察官 その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係 があることを不当に利用してはならない。 第十一章 弁護士会との関係における規律 (弁護士法等の遵守) 第七十八条 弁護士は、 弁護士法並びに本会及び所属弁護士会の会 則を遵守しなければならない。 (委嘱事項の不当拒絶) 第七十九条 弁護士は、 正当な理由なく、 会則の定めるところによ り、 本会、 所属弁護士会及び所属弁護士会が弁護士法第四十四条 の規定により設けた弁護士会連合会から委嘱された事項を行うこ とを拒絶してはならない。 第十二章 官公署との関係における規律 (委嘱事項の不当拒絶) 第八十条 弁護士は、 正当な理由なく、 法令により官公署から委嘱 された事項を行うことを拒絶してはならない。 (受託の制限) 第八十一条 弁護士は、 法令により官公署から委嘱された事項につ いて、 職務の公正を保ち得ない事由があるときは、 その委嘱を受 けてはならない。 第十三章 解釈適用指針 (解釈適用指針) 第八十二条 この規程は、 弁護士の職務の多様性と個別性にかんが み、 その自由と独立を不当に侵すことのないよう、 実質的に解釈 し適用しなければならない。 第五条の解釈適用に当たって、 刑事 弁護においては、 被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護 権を侵害することのないように留意しなければならない。 2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、 第二十六条、 第三 十三条、 第三十七条第二項、 第四十六条から第四十八条まで、 第 五十条、 第五十五条、 第五十九条、 第六十一条、 第六十八条、 第 七十条、 第七十三条及び第七十四条の規定は、 弁護士の職務の行 動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければな らない。 附 則 この規程は、 平成十七年四月一日から施行する。 (出題趣旨) 設問1は, 転貸借に基づく占有権原の抗弁の抗弁事実について説明・検討を求め るものであり, 実体法上の要件に留意して説明・検討することが求められる。 設問2は, 転貸承諾の事実を争うための立証手段を問うものであり, 書証と人証 の双方を検討することが求められる。 設問3は, 訴訟中に事実関係が変動した場合の影響を問うものであり, 従前の抗 弁を維持できるか否か, 維持できない場合にはどのような抗弁とすべきかを検討し た上で, その抗弁に対する再抗弁を検討することが求められる。 設問4は, 解除の有効性に関する判断を問うものである。 主に, 転貸借が背信行 為と認めるに足りない特段の事情という規範的要件について, 当事者が主張し, 裁 判所が認定した事実の中から, どの事実がいかなる理由から評価を根拠付け又は障 害する上で重要であるかに留意して, 検討することが求められる。 設問5は, 弁護士倫理の問題であり, 弁護士職務基本規程第29条に留意して, 将来生じ得る状況を想定した上で, 依頼者に対していかなる説明をすべきかを検討 することが求められる。 [法律実務基礎科目(刑事)] 次の【事例】を読んで, 後記〔設問〕に答えなさい。 【事 1 例】 V(男性, 27歳)は, 平成25年2月12日, カメラ量販店で, 大手メーカーであるC社 製のデジタルカメラ(商品名「X」)を30万円で購入した。 同デジタルカメラは, ヒット商 品で飛ぶように売れていたため, 販売店では在庫が不足気味であり, なかなか手に入りにくい ものであった。 2 Vは, 同月26日午後10時頃から, S県T市内のQマンション405号室のV方居室で, テーブルを囲んで友人のA(男性, 25歳)とその友人の甲(男性, 26歳)と共に酒を飲ん だが, その際, 上記「X」を同人らに見せた。 Vは, その後同デジタルカメラを箱に戻して同 室の机の引き出しにしまい, 引き続きAや甲と酒を飲んだが, Vは途中で眠ってしまい, 翌27 日午前7時頃, Vが同所で目を覚ますと, 既に甲もAも帰っていた。 Vは, その後外出するこ となく同室内でテレビを見るなどしていたが, 同日午後1時頃, 机の引き出しにしまっていた 同デジタルカメラを取り出そうとしたところ, これが収納していた箱ごと無くなっていること に気付いた。 Vは, 前夜V方で一緒に飲んだAや甲が何か知っているかもしれないと考え, A に電話をして同デジタルカメラのことを聞いたが, Aは, 「知らない。 」と答えた。 また, Vは, Aの友人である甲については連絡先を知らなかったため, Aに聞いたところ, Aは, 「自分の 方から甲に聞いておく。 」と答えた。 VがV方の窓や玄関ドアを確認したところ, 窓は施錠されていたが, 玄関ドアは閉まってい たものの施錠はされていなかった。 Vは, 同デジタルカメラは何者かに盗まれたと判断し, 同 日午後3時頃, 警察に盗難被害に遭った旨届け出た。 3 同日午後3時40分頃, 通報を受けたL警察署の司法警察員Kら司法警察職員3名がV方に 臨場し, Vは上記2の被害状況を司法警察員Kらに説明した。 なお, 司法警察員KがVに被害 に遭ったデジタルカメラの製造番号を確認したところ, Vは, 「製造番号は保証書に書いてあ ったが, それを入れた箱ごと被害に遭ったため分からない。 」と答えた。 司法警察員Kらは, 引き続き同室の実況見分を行った。 V方居室はQマンションの4階にあ り, 間取りは広さ約6畳のワンルームであり, テーブル, 机及びベッドは全て一室に置かれて いた。 同室の窓はベランダに面した掃き出し窓一つのみであり, 同窓にはこじ開けられたよう な形跡はなく, Vに確認したところ, Vは, 「窓はふだんから施錠しており, 昨日の夜も施錠 していた。 」と申し立てた。 また, 鑑識活動の結果, 盗難に遭ったデジタルカメラをしまって いた机やその近くのテーブルから対照可能な指紋3個を採取した。 さらに, 司法警察員KらがVと共にQマンションに設置されている防犯ビデオの画像を確認 したところ, 同月26日午後9時55分にV, 甲及びAの3人が連れ立って同マンション内に 入ってきた様子, 同日午後11時50分にAが一人で同マンションから出て行く様子, その後 約5分遅れて甲が一人で同マンションから出て行く様子がそれぞれ撮影されていた。 Aや甲が 同マンションから出て行った際の所持品の有無については, 画像が不鮮明なため判然としなか った。 なお, 甲が一人で同マンションを出て行って以降, 同月27日午前7時20分まで, 同 マンションに人が出入りする状況は撮影されていなかった。 また, 同マンションの出入口は防 犯ビデオが設置されているエントランス1か所のみであり, それ以外の場所からは出入りでき ない構造になっていた。 司法警察員Kは, 同日, 盗難に遭ったデジタルカメラの商品名を基に, L警察署管内の質屋 やリサイクルショップ等に取扱いの有無を照会した。 また, 司法警察員Kは, A及び甲の前歴 を確認したところ, Aには前歴はなかったが, 甲には窃盗の前科前歴があることが判明した。 4 同年3月1日, L警察署に対し, T市内のリサイクルショップRから, 「甲という男からC 社の『X』1台の買取りを行った。 」旨の回答があった。 そこで, 司法警察員Kがリサイクル ショップRに赴き, 同店店員Wから事情を聴取したところ, 店員Wは, 「一昨日の2月27日 午前10時頃, 甲が来店したので応対に当たった。 甲の身元は自動車運転免許証で確認した。 甲から『X』1台を箱付きで27万円で買い取った。 甲には現金27万円と買取票の写しを渡 した。 」旨供述した。 そのときの買取票を店員Wが呈示したため, 司法警察員Kがこれを確認 したところ, 2月27日の日付, 甲の氏名, 製造番号SV10008643番の「X」1台を 買い取った旨の記載があった。 司法警察員Kは甲の写真を含む男性20名の写真を貼付した写 真台帳を店員Wに示したところ, 店員Wは甲の写真を選んで「その『X』を持ち込んできたの はこの男に間違いない。 」と申し立てた。 司法警察員Kは, 同店店長から, 甲から買い取った「X」1台の任意提出を受け, L警察署 に持ち帰って調べたところ, 内蔵時計は正確な時刻を示していたが, 撮影した画像のデータを 保存するためのメモリーカードが同デジタルカメラには入っておらず, 抜かれたままになって いた。 司法警察員Kは, 同デジタルカメラを鑑識係員に渡して, 指紋の採取を依頼し, 同デジ タルカメラの裏面から指紋1個を採取した。 この指紋及び同年2月27日にV方から採取した 指紋をV及び甲の指紋と照合したところ, 同デジタルカメラから採取された指紋及びV方のテ ーブルから採取された指紋1個が甲の指紋と合致し, V方の机から採取された指紋1個がVの 指紋と合致し, それ以外の指紋は甲, Vいずれの指紋とも合致しなかった。 5 司法警察員Kは, 甲を尾行するなどしてその行動を確認したところ, 甲が消費者金融会社O に出入りしている様子を目撃したことから, 甲の借金の有無をO社に照会したところ, 限度額 一杯の30万円を借り, その返済が滞っていたこと, 同月27日に27万円が返済されている ことが判明した。 さらに, 司法警察員Kは, 同年3月4日, AをL警察署に呼び出して事情を聞いたところ, Aは以下のとおり供述した。 (1) Vは前にアルバイト先で知り合った友人で, 月に1, 2回は一緒に飲んだり遊んだりして いる。 甲は高校時代の同級生であり, 2か月くらい前に偶然再会し, それ以降, 毎週のよう に一緒に遊んでいる。 甲とVは直接の面識はなかったが, 先月の初め頃, 自分が紹介して3 人で一緒に飲んだことがあった。 (2) 今年の2月26日は, Vに誘われて甲と共にV方に行って3人で酒を飲んだ。 その際, V からデジタルカメラを見せられた記憶がある。 しかし, Vが先に眠ってしまい, 自分も終電 があるので甲を誘って午後11時50分頃V方を出て帰った。 その後, Vから「カメラが無 くなった。 」と聞かされたが, 自分は知らない。 甲にも聞いてみたが, 甲も知らないと言っ ていた。 ただ, 思い出してみると, あの日帰るとき, 甲が「たばこを一本吸ってから帰る。 」 と言うので, Vの部屋の前で甲と別れて一人で帰った。 その後甲がいつ帰ったかは知らない。 6 司法警察員Kは, 裁判官から甲を被疑者とする後記【被疑事実】での逮捕状の発付を得て, 同年3月5日午前8時頃, 甲方に赴いた。 すると, 甲が自宅前で普通乗用自動車(白色ワゴン 車, 登録番号「T550よ6789」)に乗り込み発進しようとするところであったことから, 司法警察員Kは甲を呼び止めて降車を促し, その場で甲を通常逮捕するとともに同車内の捜索 を行った。 その際, 司法警察員Kは同車内のダッシュボードからちり紙にくるまれたメモリー カード1枚を発見したので, これを押収した。 なお, 同車は甲が勤務するZ社所有の物であっ た。 7 その後, 同日午前9時からL警察署内で行われた弁解録取手続及びその後の取調べにおいて, 甲は以下のとおり供述した。 (1) 結婚歴はなく, T市内のアパートに一人で住んでいる。 兄弟はおらず, 隣のU市に今年65 歳になる母が一人で住んでいる。 高校卒業後, しばらくアルバイトで生活していたが, 平成 23年8月からZ社で正社員として働くようになり, 今に至っている。 仕事の内容は営業回 りである。 収入は手取りで月17万円くらいだが, 借金が120万円ほどあり, 月々3万円 を返済に回しているので生活は苦しい。 警察に捕まったことがこれまで2回あり, 最初は平 成19年5月, 友人方で友人の財布を盗み, そのことがばれて捕まったが, 弁償し謝罪して 被害届を取り下げてもらったので, 処分は受けなかった。 2回目は, 平成22年10月に換 金目的でゲーム機やDVDを万引き窃取して捕まり, 同事件で同年12月に懲役1年, 3年 間執行猶予の有罪判決を受け, 今も執行猶予期間中である。 (2) 今年の2月26日夜, AとV方に行った時にVからカメラを見せられた。 そのカメラを盗 んだと疑われているらしいが, 私はそんなことはしていない。 私はその日はAと一緒に帰っ たから, Aに聞いてもらえれば自分が盗みをしていないことが分かるはずだ。 8 司法警察員Kは, 甲が乗っていた自動車内から押収したメモリーカードを精査したところ, 同カードはデジタルカメラで広く使われている規格のもので「X」にも適合するものであった。 そこで, その内容を解析したところ, 写真画像6枚のデータが記録されており, 撮影時期はい ずれも同年2月12日から同月25日の間, 撮影したデジタルカメラの機種はいずれも「X」 であることが明らかとなった。 司法警察員Kは, 同年3月5日午後6時頃, VをL警察署に呼 んで上記データの画像をVに示したところ, Vは, 「写っている写真は全て自分が新しく買っ た『X』で撮影したものに間違いないので, そのメモリーカードは『X』と一緒に盗まれたも のに間違いない。 」旨供述した。 さらに, Vがその写真の一部は自分がインターネット上で公 開していると申し立てたので, 司法警察員Kがインターネットで調べたところ, メモリーカー ド内の画像のうち3枚が, 実際にVによって公開された画像と同一であることが判明した。 また, 司法警察員Kは, 同月6日午前9時頃, 甲の勤務するZ社に電話をして, 代表者から 同社が所有する車両の管理状況について聴取したところ, 同人は, 「会社所有の車は4台あり, うち1台は私が常時使っている。 残りの3台は3人の営業員に使わせているが, 誰がどの車両 を使っているかは車の鍵の管理簿を付けているのでそれを見れば分かる。 登録番号『T550 よ6789』のワゴン車については, 今年の2月24日から甲が使っている。 」旨供述した。 9 司法警察員Kは, 同年3月6日午前9時30分頃から再度甲の取調べを行ったところ, 甲は 以下のとおり供述した。 (1) Vのデジタルカメラは盗んでいない。 (2) 自分が今年の2月27日にリサイクルショップにデジタルカメラを持ち込んだことはある が, それは名前を言えない知り合いからもらった物だ。 (3) 車の中にあったメモリーカードのことは知らない。 (4) 自分が疑われて不愉快だからこれ以上話したくない。 10 司法警察員Kは, 同年3月6日午前11時頃, 後記【被疑事実】で甲をS地方検察庁検察官 に送致した。 甲は, 同日午後1時頃, 検察官Pによる弁解録取手続において, 「事件のことに ついては何も話すつもりはない。 」と供述した。 11 検察官Pは, 同日午後2時30分頃, S地方裁判所裁判官に対して, 甲につき後記【被疑事 実】で勾留請求した。 S地方裁判所裁判官Jは, 同日午後4時頃, 甲に対する勾留質問を行っ たところ, 甲は被疑事実について「検察官に対して話したとおり, 事件のことについて話すつ もりはない。 」と供述した。 【被疑事実】 被疑者は, 平成25年2月26日午後11時55分頃, S県T市内所在のQマンション405 号室V方において, 同人が所有するデジタルカメラ1台(時価30万円相当)を窃取したもので ある。 〔設 問〕 上記【事例】の事実を前提として, 本件勾留請求を受けた裁判官Jは, 甲を勾留すべきか。 関 連条文を挙げながら, 上記事例に即して具体的に論じなさい。 ただし, 勾留請求に係る時間的制 限, 逮捕前置の遵守及び先行する逮捕の適法性については論じる必要はない。 なお, 甲が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由について論じるに当たっては, 具体的な 事実を摘示するのみならず, 上記理由の有無の判断に際してそれらの事実がどのような意味を持 つかについても説明しなさい。 (出題趣旨) 本問は, 被疑者勾留の各要件についての正確な理解を前提に, 具体的な事実関係 を踏まえてその要件を充足するか否かについて妥当な結論を導くことができるか, という基本的な実務能力を問うものである。 すなわち, 勾留要件のうち罪を犯した ことを疑うに足りる相当な理由の有無については, 【事例】に現れた事実関係のう ち甲の犯人性に関する具体的事実を摘示し, さらに, 上記理由の判断に際してそれ らの事実がどのような意味を持つかなどを, また, その他の勾留要件(刑事訴訟法 第60条第1項各号及び勾留の必要性)については, 【事例】に現れた事実関係を 踏まえつつ各要件を充足するか否かを, それぞれ具体的に検討し, 妥当な結論を導 くことができるかを問うものである。 [一般教養科目] 次の文章は, 和辻哲郎『倫理学』(1937〜49 年)の一節である。 これを読んで, 後記の各設問に 答えなさい。 (省 略) 〔設問1〕 この文章を15行程度で要約しなさい。 〔設問2〕 本文で, 著者は, 「土地の共同」に基づくコミュニティ(共同体)について論じている。 それ とともに, 著者は, 「文化の共同」(共通の言語, 芸術, 学問, 宗教, 風習, 制度, 道徳等)に基 づくコミュニティの存在をも想定している。 このことを踏まえて, コミュニティの現在について, 20行程度で論述しなさい。 (出題趣旨) 設問1は, 共同体が血縁共同体並びに非血縁共同体としての地縁(土地)共同体 及び文化共同体に区分し得ることを前提に, 土地の存立構造や地縁共同体の存在理 由, 道具や技術の存在意義を的確に捉えているかどうかを問うている。 その内容を 要約するには, 家と土地の区別, 道具の二面性, 道具と「隣り」との関係を正確に 理解していることが求められる。 設問2は, 筆者の考える共同体論を踏まえ, 地縁 共同体と文化共同体といったコミュニティの現代的特徴について, 自説を説得的に 展開することを問うている。 いずれの設問においても, 全体として指定の分量内で 簡明に記述する能力も求められる。