短答式試験問題集 [刑法・刑事訴訟法] -1 - [刑法] 〔第1問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄 は,[bP]) 1.法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定め られている場合には,選任監督上の過失がなくても刑事責任を負う。 2.法人事業主を両罰規定により処罰するためには,現実に犯罪行為を行った従業者も処罰され なければならない。 3.法人事業主が処罰される場合には,その代表者も処罰される。 4.刑法各則に規定された行為の主体には,法人は含まれない。 5.刑法各則に規定された行為の客体には,法人は含まれない。 〔第2問〕(配点:2) 次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤って いるものはどれか。(解答欄は,[bQ]) 【事案及び判旨】 精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属して いる家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたA の捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴し た事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨 判示し,甲に有罪判決を言い渡した。 【記 述】 1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものであ る。 2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪 における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。 3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を 認めたものである。 4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命 じた家庭裁判所の秘密であると考えている。 5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含 むかどうかは必ずしも明らかではない。 -2 - 〔第3問〕(配点:3) 正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2 個選びなさい。(解答欄は,[bR],[bS]順不同) 1.正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは,予期された侵害を避けるべき義務を 課する趣旨ではないが,単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を 利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,侵害の急迫性の要件 を欠く結果,そのような侵害に対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。 2.憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には,防衛の意思を欠く結果, 防衛のための行為と認められることはない。 3.相手からの侵害が,それに先立つ自らの攻撃によって触発されたものである場合には,不正 の行為により自ら侵害を招いたことになるから,相手からの侵害が急迫性を欠く結果,これに 対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。 4.刑法第36条にいう「権利」には,生命,身体,自由のみならず名誉や財産といった個人的 法益が含まれるので,自己の財産権への侵害に対して相手の身体の安全を侵害する反撃行為に 及んでも正当防衛となり得る。 5.正当防衛における「やむを得ずにした」とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又 は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること,すなわち反撃行為が侵害 に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味し,反撃行為が防衛手段として 相当性を有する以上,その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より 大であっても,その反撃行為が正当防衛でなくなるものではない。 〔第4問〕(配点:2) 文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいも のはどれか。(解答欄は,[bT]) 1.甲は,A公立高校を中途退学した乙から「父親に見せて安心させたい。それ以外には使わな いからA公立高校の卒業証書を作ってくれ。」と頼まれ,乙の父親に呈示させる目的で,A公 立高校校長丙名義の卒業証書を丙に無断で作成した。甲には公文書偽造罪は成立しない。 2.甲は,自己の所有する土地の登記記録を改ざんしようと考え,法務局の担当登記官である乙 にその情を打ち明けて記録の改ざんを依頼し,乙に登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録を してもらった。甲には電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する。 3.甲は,行使の目的で,高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し,公害反 対の署名であると偽り,その旨誤信した乙に,甲を貸主,乙を借主とする100万円の借用証 書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。 4.甲と乙は,警察署に提出する目的で,県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨 共謀し,甲が丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲は,乙に相談することなく自ら県 立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立 する。 5.甲は,行使の目的で,正規の国際運転免許証を発給する権限のない民間団体乙名義で,外観 が正規の国際運転免許証に酷似する文書を作成した。甲は,乙からその文書の作成権限を与え られていたが,乙に正規の国際運転免許証を発給する権限がないことは知っていた。甲には私 文書偽造罪は成立しない。 -3 - 〔第5問〕(配点:2) 次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。 (解答欄は,[bU]) 【事 例】 甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独 自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血 を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあ ったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した 上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しなが ら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受け させないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。 【判 旨】 甲は,自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上,Bが運び込 まれたホテルにおいて,甲を信奉するAから,重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に 委ねられた立場にあったものと認められる。その際,甲は,Bの重篤な状態を認識し,これを自 らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちにBの生命を維持するために必要な医 療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず,未必的な殺 意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には,不作為による殺 人罪が成立する。 【記 述】 1.Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があ れば,甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場か らも殺人罪の成立は否定される。 2.判旨の立場によれば,この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ,重過 失致死罪が成立するにとどまる。 3.判旨は,不作為犯が成立するためには,作為義務違反に加え,既発の状態を積極的に利用す る意図が必要であると考えている。 4.判旨は,Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で,甲に殺人罪の実行の着手を認 めたものと解される。 5.判旨は,先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に,甲のBに対す る殺人罪の作為義務を認めたものと解される。 -4 - 〔第6問〕(配点:4) 次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に公務執行 妨害罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順 に[bV]から[11]) ア.甲は,県議会の議事が紛糾し,議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際,乙の顔 面をげんこつで殴った。[bV] イ.甲は,日本国内にある外国の大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際,乙の腹 部を足で蹴った。[bW] ウ.甲は,警察官乙から捜索差押許可状に基づき自宅の捜索を受け,覚せい剤入りの注射器を差 し押さえられた際,乙の眼前で同注射器を足で踏み付けて壊した。[bX] エ.甲は,無許可のデモ行進に参加していた際,これを解散させようとした警察官乙に向かって 石を1回投げ,その石は乙の頭部付近をかすめたが,乙には命中しなかった。[10] オ.甲は,執行官から確定判決に基づき居室明渡しの強制執行を受けていた際,執行官の補助者 であった民間人乙の頭部を棒で殴った。[11] 〔第7問〕(配点:3) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。 (解 答欄は,[12],[13]順不同) 1.暴力団組長甲は,配下組員乙に対し,「もし,Aがこちらの要求を聞き入れなかったら,A を殺してこい。Aがこちらの要求を聞き入れるのであれば,Aを殺す必要はない。」旨指示し, 乙にけん銃を手渡した上,乙を対立する暴力団組員Aのところに行かせた。乙は,Aが要求を 聞き入れなかったので,Aをけん銃で射殺した。甲には殺人罪の故意が認められる。 2.甲は,駐車場で他人の所有する自動車に放火し,公共の危険を生じさせた。その際,甲は, 公共の危険が発生するとは認識していなかった。甲には建造物等以外放火罪の故意は認められ ない。 3.甲は,乙から,乙が窃取してきた貴金属類を,乙が盗んできたものかもしれないと思いなが ら,あえて買い取った。甲には盗品等有償譲受け罪の故意が認められる。 4.覚せい剤が含まれている錠剤を所持していた甲は,同錠剤について,身体に有害で違法な薬 物類であるとの認識はあったが,覚せい剤や麻薬類ではないと認識していた。甲には覚せい剤 取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。 5.甲は,Aを殺害しようと考え,Aに向けてけん銃を発射し,弾丸をAに命中させ,Aを死亡 させたが,同弾丸は,Aの身体を貫通し,甲が認識していなかったBにも命中し,Bも死亡し た。甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。 -5 - 〔第8問〕(配点:2) 詐欺の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[14]) 1.国や地方公共団体が所有する財物は,刑法第246条第1項の詐欺罪における「財物」には 当たらない。 2.家賃を支払う意思も能力もないのに,これがあるように装って大家をだましてアパートの一 室を借り受けた場合,刑法第246条第1項の詐欺罪が成立する。 3.商品買受けの注文の際,代金支払の意思も能力もないのに,そのことを告げることなく,単 純に商品買受けの注文をした場合,その注文行為が刑法第246条第1項の詐欺罪における作 為による欺罔行為となる。 4.相手方を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより相手方から財物の交付を受けたとしても,錯誤 に陥ったことに相手方の過失が認められるときには,刑法第246条第1項の詐欺罪は成立し ない。 5.知慮浅薄な未成年者を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより未成年者から財物の交付を受けた 場合,刑法第248条の準詐欺罪が成立する。 〔第9問〕(配点:2) 次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。 (解答欄は, [15]) 【見 解】 恐喝の目的で人を監禁し,その監禁中に同人を脅迫して現金を喝取した場合,監禁罪と恐喝罪 が成立し,両者は併合罪の関係になる。 【記 述】 1.この見解は,監禁行為と恐喝行為とが社会的に見て一個の行為であると考えている。 2.この見解は,監禁が恐喝の手段として用いられることが類型的に予定されることを根拠とし ている。 3.この見解は,数個の犯罪の牽連性を,行為者の主観によって判断すべきであると考えている。 4.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における逮捕罪と監禁罪の罪数関係と同様 に考えている。 5.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における監禁罪と殺人罪の罪数関係と同様 に考えている。 〔第10問〕(配点:2) 横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[16]) 1.横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上 の支配力を有する状態を含まない。 2.株式会社の代表取締役には,同社の所有物について,横領罪の「占有」は認められない。 3.横領罪の「物」は,窃盗罪における「財物」と同義であり,不動産は横領罪の客体とはなら ない。 4.法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に 照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。 5.業務上横領罪の「業務」には,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務であ れば,いかなる事務も含まれる。 -6 - 〔第11問〕(配点:2) 責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[17]) 1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動す る能力が欠けている場合をいう。 2.心神耗弱とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力が欠けている若しくは著しく 減退している場合,又はこの弁識に従って行動する能力が欠けている若しくは著しく減退して いる場合をいう。 3.13歳であるが,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力に欠けると ころがない場合,責任能力が認められる。 4.精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めること はできない。 5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。 〔第12問〕(配点:2) 次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検 討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[18],[19]順不同) 【事 例】 甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れてい るのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態では なかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って 自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を 取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち 去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,@大きさや重さ は五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,Aク レジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手 書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1 枚を見付けた。甲は,@の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持 っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投 入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。 また,Aの白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカ ードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号 に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カー ドを自宅に保管しておいた。 【記 述】 1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。 2.甲が上記Aの財布を自分のかばんに入れて持ち去った行為には,窃盗罪が成立する。 3.甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。 4.甲が上記金属片を自動販売機に投入してジュースと釣銭を得た行為には,電子計算機使用詐 欺罪が成立する。 5.甲が上記白色カードを自宅に保管しておいた行為には,不正電磁的記録カード所持罪が成立 する。 -7 - 〔第13問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄 は,[20]) 1.甲は,生活費欲しさから強盗を計画し,12歳の長男乙に対し,Vから現金を強取するよう 指示した。乙は,甲の指示に従い,Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判 断能力を有していたか否か,甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず,甲に は強盗罪の間接正犯が成立する。 2.甲は,通常の判断能力がないVの殺害を計画し,Vに対し,首をつっても仮死状態になるだ けであり,必ず生き返るとだまして,Vに首をつらせて窒息死させた。甲には自殺関与罪が成 立する。 3.甲と乙は,自分たちのことを日頃ばかにするVを懲らしめてやろうと思い,Vに傷害を負わ せる旨共謀した。そして,甲と乙は,それぞれ,Vに対し,日頃の恨みを言いながら,その身 体を殴り付けた。Vは,これに応答して甲らを罵った。すると,乙は,Vの発言に腹を立て, 殺意をもって,隠し持っていたナイフでVを刺し殺した。乙に殺人罪が成立する場合,甲には, Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する。 4.甲は,V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は,自分も窓ガラ スを割りたいと思い,甲に気が付かれないよう,V宅に石を投げ付け,甲が割った窓ガラスと は別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。 5.女性である甲は,甲の男友達である乙との間で,乙がVを強姦する旨共謀した。その後,甲 がVを誘い出してVの体を押さえ付け,乙がVを強姦した。乙に強姦罪が成立する場合でも, 甲には強姦罪の共同正犯は成立しない。 -8 - [刑事訴訟法] 〔第14問〕(配点:2) 捜査機関の権限に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄 は,[21]) 1.検察官は,司法警察員の取調べに際して任意の供述をした犯行の目撃者が,公判期日におい ては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり,かつ,その者の供述が犯罪の証明に欠く ことができないと認められる場合には,第1回公判期日前に限り,裁判官にその者の証人尋問 を請求することができる。 2.司法警察員は,告訴を受けた事件に関する書類及び証拠物について,当該事件について犯罪 の嫌疑がないものと思料するときは,検察官に送付しないことができる。 3.検察官は,司法警察員から送致を受けた事件であっても,捜査の必要があると思料するとき は,自ら,捜索差押許可状の発付を受けて,捜索差押えを行うことができる。 4.司法警察員は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌 疑があるものと思料するときは,これを検察官ではなく家庭裁判所に送致しなければならない。 5.司法巡査は,犯罪の捜査について必要があるときは,犯罪の被害者の出頭を求め,これを取 り調べることができる。 -9 - 〔第15問〕(配点:2) 次の【事例】に関する警察官の捜査活動等について述べた後記アからオまでの【記述】のうち, 正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[22]) 【事 例】 H警察署司法警察員は,「平成24年3月1日午後9時,I市内にあるJ倉庫裏において,甲 が乙に覚せい剤を譲り渡すという覚せい剤取引の計画がある。」旨の情報を入手した。そこで, 司法警察員は,部下である司法巡査X及び司法巡査Yに対して,前記覚せい剤取引を確認した場 合には甲及び乙を逮捕するように指示した。その後,司法巡査X及び司法巡査Yは,同日午後9 時,前記J倉庫裏において,甲が乙にアタッシュケースを渡したのを現認したので,直ちに,甲 及び乙に対する職務質問を開始した。しかし,甲は,その場から逃走し,司法巡査Xはこれを追 跡したものの,見失った。これに対し,乙は,その場に留まり,司法巡査Yの求めに任意に応じ て前記アタッシュケースを開披し,その中に入っていた白色粉末入りのビニール袋を司法巡査Y に渡した。そして,司法巡査Yは,乙の同意を得た上で,試薬を使用してその白色粉末が覚せい 剤であることを確認したことから,同日午後9時20分,乙を覚せい剤所持の事実により現行犯 逮捕した。その後,乙は,同日午後10時,司法警察員に引致された。一方,甲を捜していた司 法巡査Xは,司法巡査Yから,携帯電話により,前記アタッシュケースの中には覚せい剤が入っ ていたことを聞いた。そして,司法巡査Xは,同日午後11時50分,I市内において,甲を発 見したことから,甲を覚せい剤譲渡の事実により緊急逮捕し,司法警察員に引致した。その後, 甲には,同年2月27日に同市内の宝石店において100万円相当の宝石を窃取したという窃盗 の余罪があることが判明した。 【記 述】 ア.乙が所持していた覚せい剤を押収するには,差押許可状の発付を受ける必要がある。 イ.甲及び乙の引致を受けた司法警察員は,緊急逮捕された甲については,弁解の機会を与える 必要があるが,現行犯逮捕された乙については,弁解の機会を与える必要がない。 ウ.甲については,直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならないが,司法巡査Xも この手続をすることができる。 エ.甲については,覚せい剤譲渡の事実により逮捕されている間でも,前記窃盗の事実により逮 捕することができる。 オ.乙について検察官に送致する手続をする場合には,この手続を平成24年3月3日午後10 時までにしなければならない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ (参照条文)覚せい剤取締法 第41条の2第1項 覚せい剤を,みだりに,所持し,譲り渡し,又は譲り受けた者(第42条第 5号に該当する者を除く。)は,10年以下の懲役に処する。 〔第16問〕(配点:2) 次のアからオまでの各手続のうち,その手続に関して裁判官の裁判が必要となるものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[23]) ア.私人が,窃盗行為に及んだ者を現行犯逮捕する場合 イ.司法警察員が,殺人を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある者を緊急逮捕する場合 ウ.検察官が,逮捕状に基づき逮捕された者を司法警察員から受け取った後,勾留請求せずに釈 放する場合 エ.殺人の事実で勾留中に起訴された者につき,同じ事実で引き続き勾留する場合 オ.窃盗の事実で逮捕中に起訴された者につき,同じ事実で勾留する場合 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ - 10 - オ 5.エ オ 〔第17問〕(配点:3) 覚せい剤取締法違反被疑事件の捜査に関する次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記 述】のうち,誤っているものの組合せは後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合 には,それに照らして考えるものとする。(解答欄は,[24]) 【事 例】 路上で騒いでいる男がいるとの通報を受けた司法警察員Xらが,パトカーで現場に駆けつけた ところ,甲が上半身裸で大声を出していた。Xらは,甲の言語や態度から,覚せい剤の使用を疑 い,職務質問をすべく,パトカーから降りて甲に近づいた。甲は,Xらに気付くと,その場から 立ち去ろうとしたため,@Xは,甲を追い掛け,「待ちなさい。」などと声を掛けながら,甲の肩 に右手を掛けて引き留めた。甲は,ふて腐れた様子で文句を言ったが,それ以上,その場から離 れようとはしなかったため,Xは甲の肩から手を離した。Xは,多くの野次馬が集まってきたた め,甲に対し,最寄りのH警察署への同行を求めた。A甲は,当初,これを拒否していたが,最 終的には渋々パトカーに乗車し,XらとともにH警察署に赴いた。同署に到着後,Xは,甲の左 腕に注射痕らしきものがあるのを認め,甲に対し,覚せい剤使用の事実について尋ねたが,甲は これを否定した。Xは,甲に対し,尿の提出を再三にわたって求めたが,甲はこれを拒絶し続け た。そこでXは,強制採尿もやむなしと考え,B裁判官より強制採尿令状の発付を受けた。Xは, 甲に対し,同令状を示して再度尿の任意提出を求めたが,甲は,なおもこれを拒むとともに,最 寄りのJ病院へ赴くことをも拒んだ。そこでCXは,数名がかりで甲をJ病院まで連行した。甲 は,同病院の病室に連行された後も,身体を動かして激しく抵抗し,説得にも応じなかったため, DXら数名が甲の身体を同病室のベッド上に押さえ付けた上で,医師において,カテーテルを甲 の尿道に挿入して尿を採取した。同尿を鑑定したところ,覚せい剤の成分の含有が認められたこ とから,甲は,覚せい剤取締法違反(自己使用)の疑いで緊急逮捕された。 【記 述】 ア.下線部@については,職務質問において有形力の行使は一切許されないから違法となる。 イ.下線部Aについては,甲が最終的にパトカーに乗車することには応じたとしても,その前後 の状況によっては,甲をH警察署に連れて行った行為が違法と判断される場合がある。 ウ.下線部Bの令状については,医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなけれ ばならない旨の条件の記載が不可欠である。 エ.下線部Cについては,甲を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められ る場合であっても,有形力を行使することは許されない。 オ.下線部Dについては,採尿を安全に実施するにつき必要最小限度にとどまるものと認められ る有形力の行使は許される。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ 〔第18問〕(配点:2) 次のアからオまでの場合のうち,刑事訴訟法の規定上,被疑者の弁護人又は被告人の弁護人が立 会いを求めることができるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は, [25] ) ア.警察官が,裁判官により発せられた捜索許可状に基づき,被疑者方を捜索する場合 イ.裁判官が,検察官からの勾留請求を受け,被疑者に対し,勾留質問をする場合 ウ.裁判官が,勾留されている被疑者につき,公開の法廷において,勾留の理由を開示する場合 エ.裁判官が,刑事訴訟法第226条に基づいて,検察官の請求により,犯罪の捜査に欠くこと のできない知識を有すると明らかに認められる者につき,第1回公判期日前に証人尋問を行う 場合 オ.裁判所が,起訴された被告事件の犯行現場を検証する場合 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ - 11 - オ 5.エ オ 〔第19問〕(配点:3) 次のTないしVの【見解】は,公訴時効の根拠に関してのものである。【見解】に関する後記ア からオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解 答欄は,[26]) 【見 解】 T.時間の経過により犯罪行為の可罰性が消滅するので,訴追の対象としない。 U.時間の経過により証拠が散逸し,公正な審理を行うことができなくなるので,訴追の対象と しない。 V.時間の経過により長期間訴追されなかったという被告人の法的地位の安定を図る必要がある ので,訴追の対象としない。 【記 述】 ア.Tの見解に対しては,刑の軽重により,公訴時効が異なることを説明できないとの批判があ る。 イ.Tの見解に対しては,公訴時効完成後に公訴が提起された場合の判決が免訴という形式裁判 であることを説明できないとの批判がある。 ウ.Uの見解に対しては,犯人が国外にいる場合に公訴時効がその進行を停止することを説明で きないとの批判がある。 エ.Uの見解に対しては,法改正により,公訴時効の期間が延長された場合,特別の定めを置か ない限り,既に行われた犯罪行為に対し,新法を適用することができないとの批判がある。 オ.Vの見解に対しては,被告人の法的地位の安定は,正当な利益ないし権利といえるものでは なく,公訴時効制度があることによる反射的利益にすぎないとの批判がある。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ 〔第20問〕(配点:2) 保釈に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう ちどれか。(解答欄は,[27]) ア.裁判所は,犯罪の性質や情状によっては,保証金額を定めずに保釈を許可することができる。 イ.裁判員裁判対象事件は,刑事訴訟法第89条第1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上 の懲役若しくは禁錮に当たる罪」に該当するから,保釈は認められない。 ウ.保釈が許可されても,保証金(又はこれに代えることを許された有価証券,保証書)が納付 されなければ,被告人は釈放されない。 エ.裁判所は,保釈中に被告人が他の罪を犯した場合,保釈を取り消さなければならない。 オ.勾留されている被告人やその弁護人のみならず,被告人の配偶者や直系の親族も,保釈の請 求をすることができる。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ - 12 - オ 5.エ オ 〔第21問〕(配点:2) 刑事事件の通常の第一審公判において行われる次のアからオまでの各手続を先に行われるものか ら時系列に沿って並べた場合,正しいものは,後記1から5のうちどれか。(解答欄は,[28]) ア.弁護人の弁論 イ.検察官の冒頭陳述 ウ.人定質問 エ.黙秘権等の告知 オ.起訴状朗読 1.オエウイア 2.オウエアイ 3.オウアエイ 4.ウオエイア 5.ウエオイア 〔第22問〕(配点:2) 第一審の被告人質問に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1 から5までのうちどれか。(解答欄は,[29]) ア.被告人質問については,証拠調べの最終の段階で行うこととされており,検察官の立証が終 了する前に被告人質問を実施することは許されない。 イ.被告人質問を実施するためには証拠調べの請求や決定を必要としない。 ウ.被告人質問を開始するに当たっては,あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめなけ れば違法な手続となる。 エ.被告人質問においては,まず弁護人が質問し,次いで検察官が質問をするという順番によら なければならない。 オ.当事者の質問終了後,裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても,訴訟手続の法令違 反の問題は生じない。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ - 13 - オ 5.エ オ 〔第23問〕(配点:3) 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤って いる場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[30]から[34]) 【事 例】 甲及び乙は,共謀の上,平成24年12月5日午前1時頃,H市内のコンビニエンスストア「T」 において,同店店員Vから現金10万円を強取したとしてH地方裁判所に起訴され,併合審理さ れることとなった。この審理において,V,甲の妻A及び知人Bに対する証人尋問が行われたと ころ,Vは,「2人組の犯人が店から出て行く際,犯人の1人がもう1人の犯人に対し,『@甲, 早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。次に,Aは,「平成24年12月8日午後3時 頃,自宅において,甲から『A3日前の午前1時頃,乙と一緒に,H市内のコンビニエンススト ア「T」で,果物ナイフを店員に突き付けて現金10万円を奪ってきた。見付からないと思って いたが,乙が捕まった。ひょっとしたら,乙が自分のことを話すかもしれない。そうなると,警 察が来るだろう。頼む。B3日前の午前1時頃には,俺が自宅で寝ていたということにして欲し い。』と言われた。」旨を証言した。次に,Bは,「平成24年12月4日,甲から,『C明日の午 前1時頃,H市内のコンビニエンスストアで強盗をしないか。』と言われたが,断った。」旨を証 言した。また,乙に対する被告人質問において,乙は,「甲と一緒に強盗をした際,甲が店員に 『D金を出せ。出さないと殺すぞ。』と言っていた。」旨を供述した。 【記 述】 ア.下線部@の発言は,要証事実を「犯行後,犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれ ていたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。[30] イ.下線部Aの発言は,要証事実を「甲が乙と一緒に強盗を実行したこと」とした場合,伝聞証 拠ではない。[31] ウ.下線部Bの発言は,要証事実を「甲がAに甲のアリバイ作りに協力するよう依頼したこと」 とした場合,伝聞証拠ではない。[32] エ.下線部Cの発言は,要証事実を「甲がBに強盗を実行することを持ち掛けたこと」とした場 合,伝聞証拠ではない。[33] オ.下線部Dの発言は,要証事実を「甲がVを脅迫したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。 [34] - 14 - 〔第24問〕(配点:3) 量刑において起訴されていない犯罪事実,すなわち余罪をどう扱うべきかに関し,「量刑は,被 告人の性格,経歴及び犯罪の動機,目的,方法等全ての事情を考慮して,裁判所が処断刑の範囲内 において,適当に決定すべきものであるから,その量刑のための一情状として,いわゆる余罪をも 考慮することは,必ずしも禁じられるところではない。」との見解がある。次のアからオまでの各 記述のうち,この見解に対する批判になり得ないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は,[35]) ア.起訴された犯罪事実のほかに,起訴されていない犯罪事実を余罪として認定し,実質上これ を処罰する趣旨で量刑資料として考慮し,被告人を重く処罰することとの区別が実際には困難 な場合がある。 イ.余罪が考慮できないと,犯罪に至らない不当な行状などが情状事実に含まれることと均衡を 失する。 ウ.余罪は被告人が犯した別の犯罪事実であるから,情状事実である犯罪傾向の有力な間接事実 となる。 エ.刑事裁判手続において犯罪事実の認定手続と量刑手続とは区分されていないため,量刑資料 である余罪が犯罪事実の認定に不当な影響を及ぼすおそれがある。 オ.余罪も犯罪事実であるため,その認定に当たっては,起訴された犯罪事実に準じた手続保障 を求めるべきであるが,量刑のための一情状だとすると厳格な証明を要しないことになる。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ 〔第25問〕(配点:2) 公判前整理手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から 5までのうちどれか。(解答欄は,[36]) ア.裁判所は,被告人に弁護人がなければ公判前整理手続を行うことができない。 イ.裁判所は,訴因の変更を許すことができない。 ウ.裁判所は,証拠調べをする決定をすることができる。 エ.検察官は,証明予定事実を記載した書面について,裁判所への提出を免除される場合がある。 オ.被告人又は弁護人は,取調べを請求した証拠について,検察官に対し,開示する必要がない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ 〔第26問〕(配点:2) 控訴に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう ちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。 (解答欄は, [37]) ア.控訴裁判所は,事後審なので,原判決の言渡し後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべき情状 について取り調べることはできない。 イ.簡易裁判所がした刑事第一審の判決に対する控訴については,地方裁判所ではなく,高等裁 判所が裁判権を有する。 ウ.控訴裁判所は,被告人のみが控訴をした事件について,原判決の認定した事実に誤認がある と認める場合には,それより被告人に不利益な事実を認定することができる場合もある。 エ.控訴審では,第一審の公判手続に関する規定が準用されるので,被告人は,公判期日におい て,控訴趣意書に基づき自ら弁論をすることができる。 オ.第一審における弁護人は,判決の宣告により弁護人の選任の効力が失われるので,被告人の ため控訴をすることができず,控訴をするには改めて弁護人として選任される必要がある。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ - 15 - オ 5.エ オ