論文式試験問題集 [法律実務基礎科目(民事・刑事)] - 1 - [民 事] 司法試験予備試験用法文を適宜参照して, 以下の各設問に答えなさい。 〔設問1〕 弁護士Pは, Xから次のような相談を受けた。 【Xの相談内容】 「私は, 骨董品を収集することが趣味なのですが, 親友からBという人を紹介してもらい, 平 成28年5月1日, B宅に壺(以下「本件壺」という。 )を見に行きました。 Bに会ったところ, Aから平成27年3月5日に, 代金100万円で本件壺を買って, 同日引き渡してもらったとい うことで, 本件壺を見せてもらったのですが, ちょうど私が欲しかった壺であったことから, 是 非とも譲ってほしいとBにお願いしたところ, 代金150万円なら譲ってくれるということで, 当日, 本件壺を代金150万円で購入しました。 そして, 他の人には売ってほしくなかったので, 親友の紹介でもあったことから信用できると思い, 当日, 代金150万円をBに支払い, 領収書 をもらいました。 当日は, 電車で来ていたので, 途中で落としたりしたら大変だと思っていたと ころ, Bが, あなた(X)のために占有しておきますということでしたので, これを了解し, 後 日, 本件壺を引き取りに行くことにしました。 平成28年6月1日, Bのところに本件壺を取りに行ったところ, Bから, 本件壺は, Aから 預かっていただけで, 自分のものではない, あなた(X)から150万円を受け取ったこともな い, また, 本件壺は, 既に, Yに引き渡したので, 自分のところにはないと言われました。 すぐに, Yのところに行き, 本件壺を引き渡してくれるようにお願いしたのですが, Yは, 本 件壺は, 平成28年5月15日にAから代金150万円で購入したものであり, 渡す必要はない と言って渡してくれません。 本件壺の所有者は, 私ですので, 何の権利もないのに本件壺を占有しているYに本件壺の引渡 しを求めたいと考えています。 」 弁護士Pは, 【Xの相談内容】を前提に, Xの訴訟代理人として, Yに対し, 本件壺の引渡しを 求める訴訟(以下「本件訴訟」という。 )を提起することを検討することとした。 以上を前提に, 以下の各問いに答えなさい。 (1) 弁護士Pは, 本件訴訟に先立って, Yに対して, 本件壺の占有がY以外の者に移転されること に備え, 事前に講じておくべき法的手段を検討することとした。 弁護士Pが採り得る法的手段を 一つ挙げ, そのような手段を講じなかった場合に生じる問題についても併せて説明しなさい。 (2) 弁護士Pが, 本件訴訟において, 選択すると考えられる訴訟物を記載しなさい。 なお, 代償請 求については, 考慮する必要はない。 (3) 弁護士Pは, 本件訴訟の訴状(以下「本件訴状」という。 )において, 本件壺の引渡請求を理 由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)として, 次の各事実を主張した。 ア Aは, 〔@〕 イ Aは, 平成27年3月5日, Bに対し, 本件壺を代金100万円で売った。 ウ 〔A〕 エ 〔B〕 上記@からBまでに入る具体的事実を, それぞれ答えなさい。 (4) 弁護士Pは, Yが, AB間の売買契約を否認すると予想されたことから, 上記(3)の法的構成 - 2 - とは別に, 仮に, Bが本件壺の所有権を有していないとしても, 本件壺の引渡請求を理由づける 事実(民事訴訟規則第53条第1項)の主張をできないか検討した。 しかし, 弁護士Pは, この ような主張は, 判例を踏まえると認められない可能性が高いとして断念した。 弁護士Pが検討し たと考えられる主張の内容(当該主張を構成する具体的事実を記載する必要はない。 )と, その 主張を断念した理由を簡潔に説明しなさい。 〔設問2〕 弁護士Qは, 本件訴状の送達を受けたYから次のような相談を受けた。 【Yの相談内容】 「私は, Aから, 本件壺を買わないかと言われました。 壺に興味があることから, Aに見せて ほしいと言ったところ, Aは, Bに預かってもらっているということでした。 そこで, 平成28 年5月15日, B宅に見に行ったところ, 一目で気に入り, Aに電話で150万円での購入を申 し込み, Aが承諾してくれました。 私は, すぐに近くの銀行で150万円を引き出しA宅に向か い, Aに現金を交付したところ, Aが私と一緒にB宅に行ってくれて, Aから本件壺を受け取り ました。 したがって, 本件壺の所有者は私ですから, Xに引き渡す必要はないと思います。 」 弁護士Qは, 【Yの相談内容】を前提に, Yの訴訟代理人として, 本件訴訟における答弁書を作 成するに当たり, 主張することが考えられる二つの抗弁を検討したところ, 抗弁に対して考えられ る再抗弁を想定すると, そのうちの一方の抗弁については, 自己に有利な結論を得られる見込みは 高くないと考え, もう一方の抗弁のみを主張することとした。 以上を前提に, 以下の各問いに答えなさい。 (1) 弁護士Qとして主張することを検討した二つの抗弁の内容(当該抗弁を構成する具体的事実を 記載する必要はない。 )を挙げなさい。 (2) 上記(1)の二つの抗弁のうち弁護士Qが主張しないこととした抗弁を挙げるとともに, その抗 弁を主張しないこととした理由を, 想定される再抗弁の内容にも言及した上で説明しなさい。 〔設問3〕 Yに対する訴訟は, 審理の結果, AB間の売買契約が認められないという理由で, Xが敗訴した。 そこで, 弁護士Pは, Xの訴訟代理人として, Bに対して, BX間の売買契約の債務不履行を理由 とする解除に基づく原状回復請求としての150万円の返還請求訴訟(以下「本件第2訴訟」とい う。 )を提起した。 第1回口頭弁論期日で, Bは, Xから本件壺の引渡しを催告され, 相当期間が経過した後, Xか ら解除の意思表示をされたことは認めたが, BがXに対して本件壺を売ったことと, BX間の売買 契約に基づいてXからBに対し150万円が支払われたことについては否認した。 弁護士Pは, 当 該期日において, 以下の領収書(押印以外, 全てプリンターで打ち出されたものである。 以下「本 件領収書」という。 )を提出し, 証拠として取り調べられた。 これに対し, Bの弁護士Rは, 本件 領収書の成立の真正を否認し, 押印についてもBの印章によるものではないと主張している。 その後, 第1回弁論準備手続期日で, 弁護士Pは, 平成28年5月1日に150万円を引き出し たことが記載された]名義の預金通帳を提出し, それが取り調べられ, 弁護士Rは預金通帳の成立 の真正を認めた。 第2回口頭弁論期日において, XとBの本人尋問が実施され, Xは, 下記【Xの供述内容】のと おり, Bは, 下記【Bの供述内容】のとおり, それぞれ供述した。 - 3 - 領 収 書 X 様 下記金員を確かに受領しました。 金150万円 ただし, 壺の代金として 平成28年5月1日 B 【Xの供述内容】 「私は, 平成28年5月1日に, 親友の紹介でB宅を訪問し, 本件壺を見せてもらいました。 Bとは, そのときが初対面でしたが, Bは, 現金150万円なら売ってもいいと言ってくれたの で, 私は, すぐに近くの銀行に行き, 150万円を引き出して用意しました。 Bは, 私が銀行に 行っている間に, パソコンとプリンターを使って, 領収書を打ち出し, 三文判ではありますが, 判子も押して用意してくれていたので, 引き出した現金150万円をB宅で交付し, Bから領収 書を受け取りました。 当日は, 電車で来ていたので, 取りあえず, 壺を預かっておいてもらった のですが, 同年6月1日に壺を受け取りに行った際には, Bから急に, 本件壺は, Aから預かっ ているもので, あなたに売ったことはないと言われました。 また, Yに対する訴訟で証人として証言したAが供述していたように, Aは同年5月2日にB から200万円を借金の返済として受け取っているようですが, この200万円には私が交付し た150万円が含まれていることは間違いないと思います。 」 【Bの供述内容】 「確かに, 平成28年5月1日, Xは, 私の家を訪ねてきて, 本件壺を見せてほしいと言って きました。 私はXとは面識はありませんでしたが, 知人からXを紹介されたこともあり, 本件壺 を見せてはあげましたが, Xから150万円は受け取っていません。 Xは, 私に150万円を現 金で渡したと言っているようですが, そんな大金を現金でもらうはずはありませんし, 領収書に ついても, 私の名前の判子は押してありますが, こんな判子はどこでも買えるもので, Xがパソ コンで作って, 私の名前の判子を勝手に買ってきて押印したものに違いありません。 私は, 同月2日に, Aから借りていた200万円を返済したことは間違いありませんが, これ は, 自分の父親からお金を借りて返済したもので, Xからもらったお金で工面したものではあり ません。 父親は, 自宅にあった現金を私に貸してくれたようです。 また, 父親とのやり取りだっ たので, 貸し借りに当たって書面も作りませんでした。 その後, 同年6月1日にもXが私の家に 来て, 本件壺を売ってくれと言ってきましたが, 断っています。 」 以上を前提に, 以下の各問いに答えなさい。 (1) 本件第2訴訟の審理をする裁判所は, 本件領収書の形式的証拠力を判断するに当たり, Bの記 名及びB名下の印影が存在することについて, どのように考えることになるか論じなさい。 (2) 弁護士Pは, 本件第2訴訟の第3回口頭弁論期日までに, 準備書面を提出することを予定して いる。 その準備書面において, 弁護士Pは, 前記【Xの供述内容】及び【Bの供述内容】と同内 容のX及びBの本人尋問における供述並びに前記の提出された書証に基づいて, Bが否認した事 実についての主張を展開したいと考えている。 弁護士Pにおいて準備書面に記載すべき内容を, - 4 - 提出された書証や両者の供述から認定することができる事実を踏まえて, 答案用紙1頁程度の分 量で記載しなさい。 - 5 - [刑 事] 次の【事例】を読んで, 後記〔設問〕に答えなさい。 【事 例】 1 A(26歳, 男性)は, 平成29年4月6日午前8時, 「平成29年4月2日午前6時頃, H県I市J町2丁目3番Kビル前歩道上において, V(55歳, 男性)に対し, その胸部を 押して同人をその場に転倒させ, よって, 同人に加療期間不明の急性硬膜下血腫等の傷害を 負わせた。 」旨の傷害事件で通常逮捕され, 同月7日午前9時, 検察官に送致された。 送致記 録に編綴された主な証拠は次のとおりであった(以下, 特段の断りない限り, 日付はいずれ も平成29年である。 )。 Vの受傷状況等に関する捜査報告書(証拠@) 「近隣住民Wの119番通報により救急隊員が臨場した際, Vは, 4月2日午前6時10 分頃にH県I市J町2丁目3番Kビル前(甲通り沿い)歩道上に, 意識不明の状態で仰向け に倒れていた。 Vは, 直ちにH県立病院に救急搬送され, 同病院において緊急手術を受け, そのまま同病院集中治療室に入院した。 同病院医師によれば, Vには硬い面に強打したこと に起因する急性硬膜下血腫を伴う後頭部打撲が認められ, Vは, 手術後, 意識が回復したが, 集中治療室での入院治療が必要であり, 少なくとも1週間は取調べを受けることはできない とのことであった。 」 「Vは, 同市J町4丁目2番の自宅で妻と二人で居住する会社員である。 妻によれば, V は毎朝甲通りをジョギングしており, 持病はないとのことであった。 」 Wの警察官面前の供述録取書(証拠A) 「私は, 4月2日午前6時頃, 通勤のため自宅を出て甲通りをI駅に向かって歩いている と, 約50メートル先のKビル前の歩道上に, 男二人と女一人(B子)が立っていて, その うち男一人(V)が歩道上に仰向けに倒れた様子が見えた。 そして, 約10メートルまで近 づいたところ, もう一人の男(A)が仰向けに倒れたVの腹の上に馬乗りになったので, 事 件であると思って立ち止まった。 このとき, Aは, Vの腹の上に馬乗りになった状態で, 『こ の野郎。 』と怒鳴りながら右腕を振り上げ, B子がそのAの右腕を両手でつかんだ。 私は, 自分の携帯電話機を使って, その様子を1枚写真撮影した。 その直後, AはVの腹の上から 退いたが, Vは全く動かなかった。 私は, 119番通報し, AとB子に『救急車を呼んだか ら, しばらく待ってください。 』と声を掛けた。 しかし, AとB子は, その場を立ち去り, 甲通り沿いのLマンションの中に入っていった。 私は, 注視していなかったため, Vの転倒 原因は分からない。 私は, A, V及びB子とは面識がない。 」 B子の警察官面前の供述録取書(証拠B) 「私は, 1年半前からAと交際し, 半年前からLマンション202号室でAと二人で生活 している。 私とAは, 4月1日夜から同月2日明け方までカラオケをし, Lマンションに帰 るため, 甲通りの歩道を並んで歩いていた。 すると, 前方からジョギング中の男(V)が走 ってきて, 擦れ違いざまに私にぶつかった。 私は, 立ち止まり, Vに『すみません。 』と謝 ったが, Vは, 立ち止まり, 『横に広がらずに歩けよ。 』と怒ってきた。 Aも立ち止まり, 興 奮した様子でVに言い返し, AとVが向かい合って口論となった。 Aは, Vの面前に詰め寄 り, 両手でVの胸を1回突き飛ばすように押した。 Vが少し後ずさりしたが, 『何するんだ。 』 と言ってAに向き合うと, Aは両手でVの胸をもう1回突き飛ばすように押した。 すると, Vは, 後方に勢いよく転び, 路上に仰向けに倒れ, 後頭部を路面に打ち付けた。 さらに, A は, 仰向けに寝た状態になったVの腹の上に馬乗りになり, 『この野郎。 』と怒鳴りながら, - 6 - 右腕を振り上げてVを殴ろうとした。 私は, 慌ててAの右腕を両手でつかんで止めた。 する と, AはVの体から離れたが, Vは起き上がらなかった。 Aは, 『こちらが謝っているのに, 文句を言ってきたのが悪いんだ。 放っておけ。 』と言った。 私とAは, 通り掛かりの男の人 から, 『救急車を呼んだから, 待ってください。 』と言われたが, VをそのままにしてLマン ションに帰った。 」 Aの警察官面前の供述録取書(証拠C) 「私は, 4月2日早朝, カラオケ店から, 交際相手のB子と一緒に帰る途中, B子と二人 で並んで歩道を歩いていたところ, ジョギング中の男(V)が擦れ違いざまにB子にぶつか ってきた。 Vは, B子が謝ったにもかかわらず, 『横に並んで歩くな。 』と怒鳴った。 私は, VがわざとB子にぶつかってきたように感じていたので, 『ここはジョギングコースじゃな いんだぞ。 』と言い返した。 私とVは口論となり, そのうち, Vは, 興奮した様子で, 右手 で私の胸ぐらをつかんで前後に激しく揺さぶってきたが, その手を自ら離してふらつくよう に後退し, 後方にひっくり返って後頭部を歩道上に打ち付けた。 この間, 私は, Vの胸を押 したことはなく, それ以外にもVの転倒原因になるような行為をしていない。 Vが勝手に歩 道上に倒れたので, それを放ったまま自宅に戻った。 私は, 半年前からLマンション202 号室でB子と一緒に生活しており, 現在, 株式会社丙において会社員として働いている。 」 Aの身上調査照会回答書(証拠D) H県I市J町2丁目5番Lマンション202号室が住居として登録されている。 2 Aは, 4月7日午後1時, 検察官による弁解録取手続において, 証拠Cと同旨の供述をした。 検察官は, 弁解録取書を作成した後, H地方裁判所裁判官に対し, Aの勾留を請求した。 同裁 判所裁判官は, 同日, Aに対し, 勾留質問を行い, 刑事訴訟法第207条第1項の準用する 同法第60条第1項第2号に定める事由があると判断して勾留状を発付した。 3 Aは, 勾留中, 一貫して, Vの胸部を押してVを転倒させ, 傷害を負わせた事実を否認した。 検察官は, 回復したVに対する取調べ等の所要の捜査を遂げ, 4月26日, H地方裁判所にA を傷害罪で公判請求した。 同公判請求に係る起訴状の公訴事実には, 「被告人は, 4月2日午 前6時頃, H県I市J町2丁目3番Kビル前歩道上において, Vに対し, その胸部を両手で2 回押す暴行を加え, 同人をその場に転倒させてその後頭部を同歩道上に強打させ, よって, 同 人に全治3週間の急性硬膜下血腫を伴う後頭部打撲の傷害を負わせた。 」旨記載されている。 同裁判所は, 同月28日, 同公判請求に係る傷害被告事件を公判前整理手続に付する決定をし た。 4 検察官は, 5月10日, 前記傷害被告事件について, 証明予定事実記載書を裁判所に提出す るとともに弁護人に送付し, 併せて, 証拠の取調べを裁判所に請求し, 当該証拠を弁護人に開 示した。 検察官が取調べを請求した証拠の概要は, 次のとおりである。 甲1号証 H県立病院医師作成の診断書 「Vは, 4月2日に急性硬膜下血腫を伴う後頭部打撲を負い, 全治まで3週間を要した。 」 甲2号証 H県I市J町2丁目3番Kビル前歩道上において, Vを立会人として, 現場 の状況を明らかにするために実施された実況見分の調書 甲3号証 Vの検察官面前の供述録取書 「4月2日早朝, 私が甲通りの歩道をI駅方面に向かってジョギング中, 前方から, 若い 男(A)と女(B子)が歩道一杯に広がるように並んで歩いてきた。 私は, ぶつからないよ うに気を付けて走ったが, 擦れ違う際に, B子がふらつくように私の方に寄ってきたために, B子にぶつかった。 B子が私に謝ったが, 私は, 立ち止まり, 『そんなに横に広がって歩く なよ。 』と注意した。 すると, Aは, 『ここはジョギングコースじゃない。 』と怒鳴り, 興奮 した様子で私に詰め寄ってきた。 私がAとの距離を取るため, のけ反るように後ずさると, - 7 - Aは, 私の胸を両手で1回強く押してきた。 私は, 更に後ずさりしながら, 『何するんだ。 』 と言ったが, その後のことは記憶になく, 気が付いた時にはH県立病院の集中治療室にいた。 」 甲4号証 写真撮影報告書 I警察署において, Vが甲3号証と同旨のAのVに対する暴行状況を説明し, A役とV役 の警察官2名が, Vの説明に基づき, AがVの胸を両手で1回強く押した際のAとVの相互 の体勢及びその動作を再現し, 同再現状況が撮影された写真が貼付されている。 甲5号証 W所有の携帯電話機に保存されていた画像データを印画した写真1枚 4月2日午前6時に撮影されたものであり, 男(A)が, Kビル前歩道上に仰向けに寝て いる男(V)の腹部の上に馬乗りになった状態で, Aの右手掌部が右肩の位置よりも右上方 の位置にあり, 女(B子)が, Aの右後方から, そのAの右腕を両手でつかんでいる状況が 写っている。 甲6号証 Wの検察官面前の供述録取書 Wの警察官面前の供述録取書(証拠A)と同旨の供述に加え, 甲5号証につき, 「この写 真は, 私が4月2日午前6時, Kビル前歩道上において, 自己の携帯電話機のカメラ機能で Aらを撮影したものである。 Aは, Kビル前の歩道上に仰向けに寝ているVの腹の上に馬 乗りになった状態で, 『この野郎。 』と怒鳴りながら右腕を振り上げた。 すると, 傍らにいた B子がAの右腕を両手でつかんで止めたが, この写真はその場面が撮影されている。 」旨の 供述が録取されている。 甲7号証 B子の検察官面前の供述録取書 B子の警察官面前の供述録取書(証拠B)と同旨の供述。 乙1号証 Aの検察官面前の供述録取書 Aの警察官面前の供述録取書(証拠C)と同旨の供述に加え, 甲5号証につき, 「この写 真には, 転倒したVを私が介抱しようとした状況が写っている。 」旨の供述が録取されてい る。 5 乙2号証 Aの身上調査照会回答書(証拠Dと同じ) 弁護人は, 検察官請求証拠を閲覧・謄写した後, 検察官に対して類型証拠の開示の請求を し, 類型証拠として開示された証拠も閲覧・謄写するなどした上, 「Aが, Vに対し, 公訴事 実記載の暴行に及んだ事実はない。 Vは, 興奮した状態でAの胸ぐらをつかんで前後に激しく 揺さぶってきたが, このときVの何らかの疾患が影響して, 自らふらついて転倒して後頭部を 強打し, 公訴事実記載の傷害を負ったにすぎない。 」旨の予定主張事実記載書を裁判所に提出 するとともに検察官に送付し, 併せて, 検察官に対して主張関連証拠の開示の請求をした。 5月24日から6月7日までの間, 3回にわたり公判前整理手続が開かれ, 弁護人は, 検 察官請求証拠に対し, 甲1号証, 甲2号証及び乙2号証につき, いずれも「同意」, 甲3号証, 甲4号証(貼付された写真を含む。 ), 甲6号証及び甲7号証につき, いずれも「不同意」, 甲 5号証につき, 「異議あり」との意見を述べるとともに, 乙1号証につき, 「不同意」とした上, 「被告人質問で明らかにするので, 取調べの必要性はない。 」との意見を述べた。 検察官は, V, W及びB子の証人尋問を請求した。 裁判所は, 争点を整理した上, 甲1号証, 甲2号証及 び乙2号証につき, 証拠調べをする決定をし, 甲3号証ないし甲7号証及び乙1号証の採否を 留保して, V, W及びB子につき, 証人として尋問をする決定をするなどし, 公判前整理手続 を終結した。 6 6月19日, 第1回公判期日において, 冒頭手続等に続き, 順次, 甲1号証, 甲2号証及 び乙2号証の取調べ, Vの証人尋問が行われ, 同尋問終了後に検察官が甲3号証及び甲4 号証(貼付された写真を含む。 )の証拠調べ請求を撤回した。 同月20日, 第2回公判期日に おいて, Wの証人尋問が行われ, Wは甲6号証と同旨の証言をし, 裁判所が同尋問後に甲5 号証の証拠調べを決定してこれを取り調べ, 検察官が甲6号証の証拠調べ請求を撤回した。 - 8 - 続いて, B子の証人尋問が行われ, 同尋問終了後, 検察官は甲7号証につき刑事訴訟法第 321条第1項第2号後段に該当する書面として取調べを請求した。 同月21日, 第3回公 判期日において, 甲7号証の採否決定, 被告人質問, 乙1号証の採否決定等が行われた上で 結審した。 〔設問1〕 下線部に関し, 裁判官が刑事訴訟法第207条第1項の準用する同法第60条第1項第2号の 「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があると判断した思考過程を, その判断要素を踏ま え具体的事実を指摘しつつ答えなさい。 〔設問2〕 下線部の供述に関し, 検察官は, Aが公訴事実記載の暴行に及んだことを立証する上で直接証 拠又は間接証拠のいずれと考えているか, 具体的理由を付して答えなさい。 〔設問3〕 下線部に関し, 弁護人は, 刑事訴訟法第316条の15第3項の「開示の請求に係る証拠を識 別するに足りる事項」を「Vの供述録取書」とし, 証拠の開示の請求をした。 同請求に当たって, 同項第1号イ及びロに定める事項(同号イの「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」は 除く。 )につき, 具体的にどのようなことを明らかにすべきか, それぞれ答えなさい。 〔設問4〕 下線部に関し, 弁護人は, 甲4号証(貼付された写真を含む。 )につき「不同意」との意見を 述べたのに対し, 甲5号証につき「異議あり」との意見を述べているが, 弁護人がこのように異な る意見を述べた理由を, それぞれの証拠能力に言及して答えなさい。 〔設問5〕 下線部に関し, 以下の各問いに答えなさい。 検察官が尋問中, Vは, 「私は, Kビル前歩道上でAに詰め寄られ, Aと距離を取るため, の け反るように後ずさると, Aに両手で胸を1回強く押された。 」旨証言した。 検察官が同証言後 に, Vに甲4号証貼付の写真を示そうと考え, 裁判長に同写真を示す許可を求めたところ, 裁判 長はこれを許可した。 その裁判長の思考過程を, 条文上の根拠に言及して答えなさい。 前記許可に引き続き, Vは, 甲4号証貼付の写真を示されて, 同写真を引用しながら証言し, 同写真は証人尋問調書に添付された。 裁判所は, 同写真を事実認定の用に供することができるか。 同写真とVの証言内容との関係に言及しつつ理由を付して答えなさい。 〔設問6〕 下線部に関し, B子の証言の要旨は次のとおりであったとして, 以下の各問いに答えなさい。 [証言の要旨] ・ AのVに対する暴行状況について, 「AとVがもめている様子をそばでずっと見ていた。 Aが Vの胸を押した事実はない。 Vがふらついて転倒したので, AがVを介抱しようとした。 AがV に馬乗りになって, 『この野郎。 』と言って殴り掛かろうとした事実はない。 Vと関わりたくなか ったので, Aの腕をつかんで, 『こんな人は放っておこうよ。 』と言った。 すると, AはVを介抱 するのを止めて, 私と一緒にその場を立ち去った。 」 ・ 捜査段階での検察官に対する供述状況について, 「何を話したのか覚えていないが, 嘘を話し た覚えはない。 録取された内容を確認した上, 署名・押印したものが, 甲7号証の供述録取書で - 9 - ある。 」 ・ 本件事件後のAとの関係について, 「5月に入ってからAの子を妊娠していることが分かった。 」 検察官として, 刑事訴訟法第321条第1項第2号後段の要件を踏まえて主張すべき事項を具 体的に答えなさい。 甲7号証の検察官の取調べ請求に対し, 弁護人が「取調べの必要性がない。 」旨の意見を述べ たため, 裁判長が検察官に必要性についての釈明を求めた。 検察官は, 必要性についてどのよう に釈明すべきか答えなさい。 - 10 -