論文式試験問題集[倒 - 1 - 産 法] [倒 産 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の事例について, 以下の設問に答えなさい。 【事 例】 A株式会社(以下「A社」という。 )は, 主に個人向けの住宅や企業向けのビルの設計・建築 を手掛けている会社である。 A社は, 営業地域全体の人口減少等による市場規模の縮小により, 苦しい経営を続けていたが, A社が設計・建築を請け負ったビルの外壁タイルが剥がれ落ち, 通行人が怪我をするという事故 が発生したことが契機となって, 住宅やビルの設計・建築の注文が減って売上げが激減した。 そ の結果, 平成30年3月初め頃, 同月末日を納期限とする租税債権(300万円)だけでなく, 同日を支払期日とする多くの取引先に対する債務の弁済に充てる資金がないことが判明した。 そこで, A社は, 古くからの取引先であるB株式会社(以下「B社」という。 )に依頼して, 平成30年3月20日, 当該租税債権を納付(代位弁済)してもらった。 その後, A社は, 同月 26日, 裁判所に対して破産手続開始の申立てをし, 同月29日, 破産手続開始の決定(以下 「本件破産手続開始決定」という。 )を受け, 破産管財人として弁護士Xが選任された。 〔設 問〕 以下の1から3については, それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.B社は, A社の破産手続との関係で, どのように権利行使をすることができるか, 想定され る破産管財人Xの主張を踏まえて, 論じなさい。 2.A社は, Cとの間で, 平成29年9月30日, 請負代金2000万円で住宅(以下「本件住 宅」という。 )を建築すること(以下「本件建築工事」という。 )を請負い, Cは, 契約締結時 に上記請負代金の内金として1200万円, 建物完成時に800万円を支払うことを内容とす る請負契約を締結し(以下「本件建築工事請負契約」という。 ), 同日, A社に対し1200万 円を支払った。 ところが, 本件建築工事の出来高が6割程度に達したところで, A社が本件破 産手続開始決定を受けた。 破産管財人Xは, A社において本件建築工事を完成させることが可能であり, それが破産 財団の利益となるものと判断する場合, 本件建築工事請負契約について, どのように処理す るべきか, 論じなさい。 破産管財人Xは, 平成30年4月20日, Cに対して本件建築工事請負契約を解除する旨 の意思表示をしたが, A社による本件建築工事によって生じていた建築廃材は, その現場に 放置されていた。 そこで, Cは, 同年5月7日, D株式会社(以下「D社」という。 )との 間で, @D社が本件住宅を完成させるための残工事を請負い, その請負代金として1000 万円を支払うことを内容とする請負契約を締結し, それとともに, AD社が上記建築廃材の 撤去を行い, その費用として100万円を支払うことを内容とする契約を締結した。 そして, Cは, 同月8日, 合計1100万円をD社に支払った。 この場合, Cは, A社の破産手続と の関係で, どのように権利行使をすることができるか, 論じなさい。 3.平成30年3月26日時点におけるE銀行のA社に対する貸付残高は6750万円であった が, 同月27日, A社の当該債務の連帯保証人であるFは, E銀行に対して300万円を弁済 し, さらに, 同年4月2日, 200万円を弁済した。 A社の破産手続において, Fが, 破産債権額として500万円を届け出たところ, 同じく破 産債権の届出をしているE銀行が異議を述べ, これに対し, Fは, 査定の申立てを行った。 査 定決定において, 裁判所は, どのように判断すべきか, 論じなさい。 - 2 - 〔第2問〕(配点:50) 次の事例について, 以下の設問に答えなさい。 【事 例】 機械メーカーであるA株式会社(以下「A社」という。 )(資本金1億円)は, 平成29年末に 債務超過となり, 支払不能となった。 その後, A社は, 平成30年1月18日に再生手続開始の 申立てをし, 裁判所は, 同年1月25日に再生手続開始の決定をした。 A社は, B株式会社(以下「B社」という。 )の完全子会社で, B社は, A社に対して貸金債 権20億円を有している。 A社は, 平成20年の初め頃にB社の完全子会社となって以来, その 取締役の過半数はB社からの出向者であり, 現在のA社社長を含む歴代の社長もB社が指名して きた。 A社が支払不能になったのは, @平成23年頃からB社の指示により無謀な設備投資を続けて 資金繰りが悪化したこと, A同じくB社の指示により平成29年8月から取引を開始した甲株式 会社について同年11月に破産手続が開始され, 同社に対する売掛債権が回収不能となったこと が主たる原因であった。 一方, C株式会社(以下「C社」という。 )は, A社に継続的に部品を納入していたが, A社 による無謀な設備投資に危惧を抱き, 平成29年1月にA社との取引を停止した。 しかし, C社 は, 同年7月, 「当社がA社の支援を続けるから協力願いたい」とのB社からの説得を受け, 同 月から取引を再開した結果, 平成30年1月前半までに納入した部品に係る売掛債権10億円を 有するに至った。 A社の再生手続開始を受け, 平成30年3月1日, B社は貸金債権20億円を, C社は売掛債 権10億円をそれぞれ再生債権として届け出た。 A社は, B社及びC社が届け出た再生債権をい ずれも認めた。 なお, B社, C社以外に再生債権者はいない。 〔設 問〕 以下の1, 2については, それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.A社は, 財産評定を完了し, 平成30年4月25日, 裁判所に対し財産目録及び貸借対照表 を提出したが, これらに基づく予想清算配当率は10パーセントであった。 しかし,A社は,再生手続開始後, 顧客離れが進んだため売上げが振るわず, 再生計画案提出 直前の業績及び財産状況を前提とすると, 想定される再生計画認可決定の日を基準とする予想 清算配当率は5パーセントと見込まれた。 A社は, 裁判所に対し, 平成30年5月16日, 要旨, 次のような再生計画案を提出した。 @ 再生債権の元本並びに再生手続開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額のう ち再生計画の認可決定確定時にその95パーセントの免除を受ける。 A 再生手続開始決定日以後の利息及び遅延損害金は, 再生計画の認可决定確定時に全額の免 除を受ける。 B 上記@の権利変更後の債権額(5パーセント)は, 再生計画の認可決定確定日から3か月 以内に半額を, 1年3か月以内に残額を, それぞれ支払う。 上記の再生計画案に対して, C社は, (a)清算価値保障原則に違反している, (b)A社の 完全親会社であり, かつA社の破綻に責任のあるB社の再生債権はC社の再生債権よりも劣後 して扱うべきである, との趣旨の意見書を裁判所に提出した。 裁判所は, この再生計画案を付議することができるか, 民事再生法第169条第1項第3号 に照らし, C社の上記(a)及び(b)の主張ごとに問題となる条文を摘示して論じなさい。 2.A社の事業には同業の乙株式会社(以下「乙社」という。 )が関心を持っており, A社の事 業を譲り受けたいと考えている。 乙社は, 平成30年2月25日, 顧客離れに伴うA社の事業 価値の毀損を防ぐため, 再生計画によらずに早期にA社の全ての事業を譲り受けることをA社 に対して申し入れた。 - 3 - 以上の事実を前提に, 以下の, について, それぞれ独立したものとして解答しなさい。 A社は, 平成30年3月1日, 乙社からの申入れについてB社とC社に説明したところ, B社はこれに強硬に反対し, C社は賛成の意向を示した。 A社が乙社からの申入れを受け, 再生計画によらずに乙社へA社の全ての事業を譲渡する場合の手続について説明しなさい。 A社は, 乙社へ事業を譲渡することなく自力で再建する方針を固め, 平成30年5月16 日, 再生計画案を裁判所に提出するとともに, B社とC社に説明した。 当該再生計画案では, B社とC社の再生債権のいずれについても85パーセントの免除を受け, 15パーセントを 分割弁済するものとされている。 また, 乙社へ事業を譲渡することなく, 引き続きB社の完 全子会社として再建していく方針が示されている。 A社の提出に係る当該再生計画案が付議されたとして(他に再生計画案は提出されていな いものとする。 ), これにC社が債権者集会において同意しなかった場合のその後の再生手続 の帰すうについて, 論じなさい。 - 4 - 論文式試験問題集[租 - 5 - 税 法] [租 税 法] 〔第1問〕(配点:50) 甲は, インテリア雑貨の輸入販売の事業を行う株式会社A(以下「A社」という。 )の創業者で あり, その代表取締役である。 乙は甲の長男である。 乙は, 平成26年3月にB大学商学部を卒業した後, A社に入社し, 経理の事務を担当した。 乙 の給与は月額30万円であった。 乙は, A社への入社に際しワンルームマンションを借り, 甲とは 生計を別にした独立した生活を始めた。 乙は, A社での仕事になじめず, 平成29年1月に, 甲に 対して, A社を退社したい旨, 打ち明けた。 甲は乙に「A社での勤務を続け, いずれは跡を継いで ほしい。 」と説得したが, 乙の決意は固く, 乙は平成29年3月31日にA社を退社し, 同社の退 職金規程に基づく退職金を受領した。 A社の退職金規程によると, 3年間の勤務で受け取る退職金は微々たる金額であった。 そのため, A社退社後の乙の生活を心配した甲は, 乙の退職に際して, A社が従業員の福利厚生目的で保有し ていた, 著名なリゾート地C町に所在する戸建別荘(以下, 別荘の建物を「本件建物」, 別荘の土 地建物を併せて「本件不動産」という。 )を, A社から乙に対して, 本件不動産の帳簿価格300 0万円で売却し, 乙がそれを賃貸して得られる収入によって乙の生活の足しにできるようにしてや ろうと考えた。 そこで, A社は, 取締役会決議を経た上で, 平成29年3月31日に, 本件不動産 の売買契約を乙と締結し, 同日, 乙は, A社に対して, 銀行からの借入金を原資として, 売買代金 3000万円を支払った。 本件不動産の時価は, 近年のC町の地価高騰の結果, 平成29年3月31日時点では4000万 円にまで値上がりしていた。 乙は, 平成29年5月1日から, 本件不動産を, 丙に対し, 月額10万円で賃貸したところ, 翌 30年3月, C町で記録的な暴風雪が発生し, その結果, 本件建物の屋根が損傷する被害が生じた。 被害発生直前の本件建物の時価・帳簿価格はともに800万円であったが, 本件建物の被害割合は 5%であり被害額は40万円であった。 乙は, 本件建物について, 損害に備えるための保険契約を 締結していなかった。 また, 本件不動産以外には, 土地建物などのみるべき財産を乙は所有してい なかった。 以上の事案について, 以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.A社の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の所得の金額の計算にお いて, 乙への本件不動産の売却に関して, 益金の額への計上はどのようにすべきかにつき, 関連 する条文とその趣旨に触れつつ, 益金となる金額とその理由を述べなさい。 2.A社の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の所得の金額の計算にお いて, 乙への本件不動産の売却に関して, 損金の額への計上はどのようにすべきかにつき, 関連 する条文とその趣旨に触れつつ, 損金となる金額とその理由を述べなさい。 3.乙の平成30年分の所得税に関して, 乙の同年分の総所得金額, 退職所得金額及び山林所得金 額の合計額が330万円であった場合, 暴風雪により発生した本件建物の被害について, 所得税 法上, どのように取り扱われるか, 説明しなさい。 なお, 本件建物の被害に直接関連してなされ た支出はない。 4.一般に, 事業活動で生じた「損失」についての所得税法上の取扱いと法人税法上の取扱いとの 最も特徴的な差異とその理由について, 所得税法及び法人税法の関係条文を指摘した上で, 簡潔 に述べなさい。 - 6 - (参照条文) 所得税法施行令 (災害の範囲) 第9条 法第2条第1項第27号(災害の意義)に規定する政令で定める災害は, 冷害, 雪害, 干害, 落雷, 噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害, 火薬類の爆発その他の人為による異常な 災害並びに害虫, 害獣その他の生物による異常な災害とする。 (生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等) 第178条 法第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で定 めるものは, 次に掲げる資産とする。 一 競走馬(その規模, 収益の状況その他の事情に照らし事業と認められるものの用に供されるも のを除く。 )その他射こう的行為の手段となる動産 二 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味, 娯楽又は 保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味, 娯楽, 保養又は鑑賞の目的で所有す る資産(前号又は次号に掲げる動産を除く。 ) 三 生活の用に供する動産で第25条(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)の規 定に該当しないもの 2 (後略) (雑損控除の対象となる雑損失の範囲等) 第206条 (略) 3 法第72条第1項の規定を適用する場合には, 同項に規定する資産について受けた損失の金額は, 当該損失を生じた時の直前におけるその資産の価額(その資産が法第38条第2項(譲渡所得の金 額の計算上控除する取得費)に規定する資産である場合には, 当該価額又は当該損失の生じた日に その資産の譲渡があつたものとみなして同項の規定(その資産が昭和27年12月31日以前から 引き続き所有していたものである場合には, 法第61条第3項(昭和27年12月31日以前に取 得した資産の取得費等)の規定)を適用した場合にその資産の取得費とされる金額に相当する金 額)を基礎として計算するものとする。 法人税法施行令 (特殊関係使用人の範囲) 第72条 法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める特殊の関係のある 使用人は, 次に掲げる者とする。 一 役員の親族 二 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者 三 前二号に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの 四 前二号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族 (過大な使用人給与の額) 第72条の2 法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は, 内国 法人が各事業年度においてその使用人に対して支給した給与の額が, 当該使用人の職務の内容, そ の内国法人の収益及び他の使用人に対する給与の支給の状況, その内国法人と同種の事業を営む法 人でその事業規模が類似するものの使用人に対する給与の支給の状況等に照らし, 当該使用人の職 務に対する対価として相当であると認められる金額(退職給与にあつては, 当該使用人のその内国 法人の業務に従事した期間, その退職の事情, その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規 模が類似するものの使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし, その退職した使用人に対す る退職給与として相当であると認められる金額)を超える場合におけるその超える部分の金額とす る。 - 7 - 〔第2問〕(配点:50) 個人Xは, 平成10年に甲土地を個人Aから対価1000万円で購入した。 甲土地は, 昭和56 年にAが時価である1400万円で購入したもので, 平成10年当時の時価は2200万円であっ た。 このXによる甲土地の購入に関する事情は, 以下のとおりである。 @ 昭和56年に勤務先を定年退職したAは, 入手した甲土地を小公園として整備し, 付近の子供 たちの遊び場として開放して, 子供たちからも「公園のおじいさん」として親しまれていた。 A 平成10年初めに体調を崩し, 余命幾ばくもないと診断されたAは, 病院に入院するに当たっ て, 甲土地が小公園として維持管理され続けることを願い, Xに甲土地を売り渡した。 なぜなら, Xが, これまで暇を見付けては公園の掃除の手伝いをしたり, 子供たちの遊び相手になったりし ていたという事情があったからである。 B XとAは, Xがすぐに払える金額として代金を1000万円と決め, Xは, 所有権移転登記の 費用を自ら負担して, 甲土地の所有権を得た。 この後, 程なくしてAが亡くなり, XはAの遺志を継いで甲土地を小公園として維持し, 子供た ちの遊び相手をしていた。 Xは, 近年, 高齢のため体力の衰えを強く意識したが, 平成28年から は, 医師の勧めで多種類のサプリメント(以下「本件サプリメント」という。 )を使用したところ, 若干体調が戻り, その効果を実感した。 そんなXも, 寄る年波には勝てず平成30年にはそろそろ「公園のおじいさん(二代目)」から の引退を考えていたところ, 甲に隣接する乙土地をB株式会社(以下「B社」という。 )が購入し, そこに保育所を開設することになったのを知って, 甲土地を保育所の庭としてB社に買ってもらい たいと思うようになった。 「甲土地が保育所の庭となってそこで子供たちが遊ぶのであれば, 子供 好きだったAの遺志にも沿う」と考えたからである。 また, 仮にB社が甲土地を買ってくれるなら ば, その対価として1000万円もらえば十分だと考えている(甲土地の平成30年における時価 は2500万円である。 )。 これは, Xが, 甲土地の売買により自分が得をすることを嫌い, Aから 譲ってもらった時に支払ったのと同額で甲土地を売りたいと考えたものである。 以上の事案について, 以下の設問に答えなさい。 〔設問1〕 平成30年にXがB社に甲土地を対価1000万円で売った場合, そのことは同年分のXの所得 税の計算上どのように扱われるかを, 根拠条文に触れつつ説明しなさい。 なお, 租税特別措置法に ついて考える必要はない。 〔設問2〕 平成30年にB社がXから甲土地を対価1000万円で購入する取引をした場合, そのことは, この取引の日を含む同社の事業年度の法人税の計算上どのように扱われるかを説明しなさい。 その 説明に当たっては, 法人税法第22条第2項が, 「有償による資産の譲受け」との文言を含んでい ないことに留意し, この取引が同項のどの文言に該当するかを明らかにすること。 〔設問3〕 所得税の医療費控除について色々と調べたXは, 本件サプリメントの購入費用について, 同控除 の適用を受けるつもりである。 その前提としてXは, 所得税法第73条第2項及び所得税法施行令 第207条第2号に規定されている「医薬品」とは, 「医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安 全性の確保等に関する法律」第2条第1項にいう「医薬品」に該当するものを指すと考えている。 Xが前提としているこの考え方を, 租税法の解釈手法の立場から評価しなさい。 なお, 本件サプリ メントの購入費用が医療費控除の対象となるか否かについて, 言及する必要はない。 - 8 - (参照条文) 所得税法施行令 (時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲) 第169条 法第59条第1項第2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める 額は, 同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満 たない金額とする。 (医療費の範囲) 第207条 法第73条第2項(医療費の範囲)に規定する政令で定める対価は, 次に掲げるものの 対価のうち, その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超え ない部分の金額とする。 一 (略) 二 治療又は療養に必要な医薬品の購入 三〜七 (略) 医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安全性の確保等に関する法律 (目的) 第1条 この法律は, 医薬品, 医薬部外品, 化粧品, 医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品 等」という。 )の品質, 有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発 生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに, 指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか, 医療上特にその必要性が高い医薬品, 医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要 な措置を講ずることにより, 保健衛生の向上を図ることを目的とする。 (定義) 第2条 一 二 この法律で「医薬品」とは, 次に掲げる物をいう。 (略) 人又は動物の疾病の診断, 治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて, 機 械器具等(機械器具, 歯科材料, 医療用品, 衛生用品並びにプログラム(略)及びこれを記録し た記録媒体をいう。 以下同じ。 )でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。 ) 三 2 (略) (後略) - 9 - - 10 - 論文式試験問題集[経 - 11 - 済 法] [経 済 法] 〔第1問〕(配点:50) A, B, C, D, E, F, G, H, I, Jの10社(以下「10社」という。 )は, 各地の農業 協同組合(以下「農協」という。 )が競争入札等の方法により発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施 設及び精米施設(以下「穀物貯蔵等施設」という。 )の建設を請け負う事業者であり, 他に当該建 設を請け負う事業者は存在しない。 A, B, C, D, E, F, Gの7社(以下「7社」ともい う。 )は, 一定の技術的水準を満たした農業施設を建設できる能力を有し, かねてより, 穀物貯蔵 等施設工事の指名競争入札においては, 7社のうち複数の者が指名されることが多かった。 10社 は穀物貯蔵等施設以外の施設・設備の建設工事も行っており, 特にH, I, Jの3社(以下「3 社」ともいう。 )は, 穀物貯蔵等施設を建設することもできるが, 主たる事業分野は農業施設以外 の建設工事であり, 穀物貯蔵等施設の建設能力は相対的に低かった。 穀物貯蔵等施設工事に当たっては, 農業振興のための補助金が平成28年度から3年間の予定で 国や都道府県から農協に交付されることとなった(以下, 当該補助金が交付される穀物貯蔵等施設 工事を「特定農業施設工事」という。 )。 当該補助金の交付を受けるための条件として, 農協は3者 以上の事業者を指名して行う競争入札を実施することが必要であり, 補助金事業として3年間に相 当数の特定農業施設工事の指名競争入札が実施される見込みとなった。 これを受けて, A, B, C, D, E, F, Gの7社は, 平成27年12月から数次の会合を経て, 平成28年1月30日の会合で, 特定農業施設工事の入札について, 均等な受注機会の確保と受注 価格の低落防止を図るため, 指名を受けた事業者(以下「指名業者」という。 )は, Aに当該特定農業施設工事を受注する 意思の有無を連絡する 受注を希望する者が1社の場合は, その者が受注予定者となり, 受注を希望する者が複数の場 合は, 会合を開いた上, 7社において受注予定者を決定する 受注予定者以外の指名業者が入札すべき価格は, 受注予定者が定めてAに連絡する Aは受注予定者以外の指名業者に, 受注予定者が定めた価格で入札するよう連絡する などにより, 受注予定者を決定し, 受注予定者が受注できるようにすることに合意した(以下「本 件合意」という。 )。 H, I, Jの3社は, 平成27年12月, Aから, 特定農業施設工事の入札について競合事業者 が集まって話合いを行うので出席するよう持ちかけられたが, 3社の担当者は言葉を濁して出席す ることを見合わせた。 3社は, それぞれ, 工事の規模や技術力の点から自社も受注できると考えた 特定農業施設工事の入札に指名された場合には, 積極的に落札を目指して低価格で入札を行おうと 考えていた。 一方, 3社は, それぞれ, 特定農業施設工事以外の分野の入札において競合事業者か ら協力を得たいと考えていたため, 自社が受注を希望しない特定農業施設工事について, 競合事業 者の間で受注予定者が決定されている場合には, 要請があれば, 指定された価格で入札するなどの 方法により当該受注予定者の落札に協力するつもりであった。 Aは, 3社が特定農業施設工事の入札に指名されることは少ないと考えたが, 念のため, 特定農 業施設工事の発注が行われるたび3社に指名の有無と受注の意思を確認し, 協力が得られる場合に は, 3社に入札価格を連絡することとし, その方針を平成28年1月30日の上記会合でA以外の 6社に伝えた。 平成28年6月に行われた甲農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第1回入札」 という。 )では, A, B, C, Dが指名され, A, B, Cが受注を希望したため開かれた会合で, Aが受注予定者に決定し, 入札では, 会合での調整の結果どおり, Aが落札した。 平成28年11月に行われた乙農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第2回入 札」という。 )では, B, C, D, Eが指名され, B, C, Dが受注を希望したため開かれた会合 - 12 - で, Dが受注予定者に決定し, 入札では, 会合での調整の結果どおり, Dが落札した。 平成29年6月に行われた丙農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第3回入札」 という。 )では, E, G, Jが指名された。 Jは, 第1回入札及び第2回入札に際してAからの問 合せに対し指名を受けていないことを回答していたところ, 第3回入札に際しても, Aからの問合 せに対し, 指名を受けたこと及び落札を目指していないことを回答した。 そして, EとGが受注を 希望したため開かれた会合で, Gが受注予定者に決定し, 入札では, 会合での調整の結果どおり, Gが落札した。 Jは, Aから指示されたとおりの価格で入札して, Gの落札に協力した。 平成29年11月に行われた丁農協発注の特定農業施設工事の指名競争入札(以下「第4回入 札」という。 )では, D, F, Iが指名を受けたが, 受注希望者はFのみであったため, 会合は開 かれず, DとIがAから指示されたとおりの価格で入札した結果, Fが落札した。 平成30年7月30日に指名競争入札(以下「第5回入札」という。 )が行われた戊農協発注の 特定農業施設工事は, 第4回入札の対象であった丁農協発注の特定農業施設工事と工事の規模や必 要とされる技術力がほぼ同じであった。 この第5回入札では, B, C, Jが指名されたが, それま での入札で受注予定者になることができなかったBとCは, これを必ず落札したいと考えた。 第5 回入札の受注予定者を決定するために平成30年6月15日に開かれた会合には7社が出席し, 長 時間の話合いの結果, B以外の6社は, Cを受注予定者とすることに決したところ, その場でBの 担当者は, 「今度は本気で勝負する。 値下げ競争になっても必ず仕事を取る。 」, 「今後, 一切, 受注 予定者を話し合って決めるつもりはない。 」, 「二度とこの会合には戻らない。 」と発言し, Cの担当 者と激しい口論になった。 その後, Aは, Jに連絡し, Jから第5回入札の指名を受けたこと及び 落札を目指していないことを確認すると, Cの落札に協力するよう要請し, Jが承諾したことから, Jが入札すべき価格を伝達した。 第5回入札において, JはCに協力するためにAから指示された とおりの価格で入札し, 一方, BはJに協力を依頼しないで入札を行った結果, Bが落札した。 そ のため, 7社のうちBを除く6社は, 平成30年8月1日, 本件合意のメンバーからBを除名する ことを決定した。 その後, Eは, このような入札談合はもはや維持できないと考え, 平成30年8月10日, 私的 独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。 )第7条の2第10項 に基づいて公正取引委員会に事実の報告等を行い, それを受けて, 公正取引委員会は, 平成30年 9月20日, 関係各社に対する一斉の立入検査を実施した。 以後, 7社は本件合意に基づく会合を 開いていない。 各回の入札における指名業者の入札価格及び農協が設定した予定価格は, 以下の表のとおりであ る。 入札 入札価格 予定価格 第1回 A:2.91億円 B:2.94億円 C:2.97億円 D:3.06億円 3億円 第2回 B:2.97億円 C:3.03億円 D:2.94億円 E:3.06億円 3億円 第3回 E:1.94億円 G:1.90億円 J:2.02億円 ― 2億円 第4回 D:0.98億円 F:0.96億円 I:1.03億円 ― 1億円 第5回 B:0.72億円 C:0.75億円 J:0.90億円 ― 1億円 〔設 問〕 上記のB及びJの行為について, 独占禁止法に違反するか, 違反する場合には, 違反する行為 がなくなった時期も含めて検討しなさい。 - 13 - 〔第2問〕(配点:50) 各種の医療・ヘルスケア製品の研究, 開発, 製造及び販売を行うX社及びY社(以下「当事会社 2社」という。 )が, Y社を存続会社とする吸収合併を行う計画(以下「本件計画」という。 )を検 討している。 当事会社2社は, 日本法人であり, 国内外に製造及び販売拠点を有し, 国内外での販 売拠点を経由して, 製品を国内外の医療機関等に販売している。 点滴静脈注射(以下「点滴」という。 )の器具(以下「点滴関連製品」という。 )としては, 点滴 容器, 点滴チューブ, 点滴針等があり, 点滴容器と点滴チューブと点滴針を組み立てて点滴は実施 される。 点滴針のうち針甲は, 一時的かつ短時間の点滴に用いられる。 針甲以外に, 持続的に点滴 を行う目的で使用される点滴針である針乙が存在するが, 針甲とは形状も異なり, 針乙を用いて一 時的かつ短時間の点滴を行うことはできない。 点滴針の流通は, 製造販売業者から流通業者を経て, 需要者である病院等の医療機関が購入する という実態にある。 点滴針について, 国内の製造販売業者, 国外の製造販売業者の日本法人又は輸 入総代理店が個々の製品を国内で販売するためには, それぞれ, 点滴針の種類別に用途を特定して, 法律に基づく承認(以下「販売承認」という。 )を受けなければならない。 したがって, 国内での 販売が認められる針甲は, 販売承認を受けたものに限定されており, 需要者である医療機関も, 販 売承認を受けた製品のみを購入・使用している。 このような承認制度の下, 現時点で販売承認を受 けた針甲を国内向けに供給している製造販売業者は, 当事会社2社及びA社の合計3社である。 平成30年度における針甲のメーカー別国内販売シェアは, A社が45パーセント, X社が30 パーセント, Y社が25パーセントである。 針甲以外にも, 当事会社2社のいずれもが製造販売し ている製品はいくつか存在するが, それらの製品については, 当事会社2社のシェアは小さく順位 も低く, 当事会社2社以外に競合事業者が多数存在している。 A社は, 国外で販売する針甲を国内向けに振り向けることで国内向け供給量を増やすことができ る。 ただし, 針甲の全世界でのメーカー別販売シェアを見ると, 当事会社2社の合算シェアは65 パーセント, A社のシェアは20パーセントであり, A社の国内向けの供給余力は十分ではない。 A社が針甲の生産を第三者に委託することで, 国内向け供給量を増やすことは可能であるが, かか る第三者は現時点では見当たらない。 現在, 国外において当事会社2社及びA社以外に針甲を製造販売している事業者は, 少数である。 また, 当該事業者が製造する針甲については, これまで国内で販売実績はない。 一般に, 国内の医 療機関は, 国内で販売実績のない医療製品を購入することはまれである。 新規参入事業者が針甲を開発して国内で販売しようとする場合, 当事会社2社及びA社の既存製 品と同等の機能では, 実績のない新規参入事業者から針甲を調達する医療機関は少ないため, 新規 参入には既存製品にはない機能を付加して参入する必要があると考えられている。 しかしながら, そのような新製品の開発には一定の期間や投資を必要とする。 一定規模以上の病院では, 医療製品の購入に際して, 見積り合わせ等による競争的な購入方法を 採ることが一般的である。 医療機関は, このような購入方法により低価格での購入を試みている。 反面, 医療機関としての規模の大小にかかわらず, 実際の製品選択は使用者である看護師等の意見 を聞きながら医師が行っている場合が多く, 医師は製品の品質及び使い慣れを重視して製品を選択 する傾向がある。 針甲についても, 異なる製造販売業者の製品の間で使用方法に若干の違いがある ことから, 医師は頻繁には他の製造販売業者の製品に変更しない傾向がある。 〔設問1〕 本件計画について, 独占禁止法上の問題点を検討しなさい(企業結合に関する独占禁止法上の 届出基準は充足されているものとする。 )。 - 14 - 〔設問2〕 公正取引委員会の企業結合審査において, 企業結合により独占禁止法上の問題が生ずると判断 される場合, 当該問題を解消するために企業結合当事者が企業結合計画の修正を試みることがあ る。 上記設例において, 公正取引委員会が本件計画に対して独占禁止法上の問題が生ずると判断 した場合, 当事会社2社が本件計画についてどのような修正を試みることによって独占禁止法上 の問題を解消できるか, 以下の事実を前提に, 当該修正が競争に及ぼす影響を踏まえて検討しな さい。 点滴関連製品を取り扱っている国内流通業者6社(以下「6社」という。 )のうちの1社であ るM社は, 針甲と同時に使用される点滴関連製品である点滴チューブ丙について15パーセント の販売シェアを有している。 6社の取扱製品には差異はあるものの, 針甲及び点滴チューブ丙を 含む点滴関連製品については競合流通業者の間で激しい販売競争が展開されており, シェアの変 動もある。 このような競争状況を反映して, 点滴関連製品の製造販売業者も, 取引先流通業者の 変更や取引内容の随時見直しを行うことが可能である。 本件計画が検討されている現時点において, M社は, 針甲の製造も販売も行っていない。 しか し, M社は, 過去にX社製の針甲を販売し, 一定のシェアを獲得した実績もあり, 針甲の販売を 行う十分な経験及び能力を有している。 なお, X社製の針甲の販売に関するノウハウの蓄積があ れば, 他社製の針甲についても, 競合事業者との競争の中で販売を行うことは可能である。 また, M社は, 針甲の製造経験はないものの, 製造を行うための設備や人材, ノウハウ等を包括的に取 得できれば, それらを有効に活用する能力を有している。 M社は, 点滴関連製品の国内販売で豊富な実績を有していたが, 点滴に必要な一連の器具のう ち点滴針の品ぞろえに弱点があった。 M社が, 針甲の製造を含む供給手段を獲得し, 針甲を取り 扱うこととなれば, かかる弱点を克服することができる。 そのため, M社が針甲の事業を営もう とするインセンティブは高い。 M社は, 当事会社2社及びA社との間に, 株式の保有や役員兼任等の資本関係・人的関係を有 していない。 - 15 - - 16 - 論文式試験問題集[知的財産法] - 17 - [知的財産法] 〔第1問〕(配点:50) 食品加工会社Xは, 特許請求の範囲に「工程aと工程bを含むことを特徴とする食品中の成分P 含有量の測定方法」(以下「本件発明」という。 )と記載された特許権(以下「本件特許権」とい う。 )を有している。 成分Pは, 一般に健康に良いとされ, 従来, 食品中の成分P含有量の測定方 法としては, 工程aのみを含むものが広く使用されていたが, 本件発明は, 工程bの追加により全 体の測定時間を顕著に短縮させたものである。 また, 本件発明は, Xの研究開発部門に所属してい た甲がXにおける勤務時間中にXの施設においてXの資材を用いて完成させたものであり, 本件発 明完成時点のXの職務発明規程には, 職務発明について, その発明が完成した時にXが特許を受け る権利を取得する旨が定められていた。 Xが本件特許権に係る特許出願(以下「本件出願」という。 )をした後, 甲は, Xを退職し, 食 品加工, 測定機器の製造販売等を業とする会社Yに転職した。 その後, Yは, 加工食品の製造工程 に, 本件発明の技術的範囲に属する測定方法(以下「Y方法」という。 )を使用して成分P含有量 を測定する工程を組み込み, 測定の結果, 成分P含有量が基準値以上であることを確認した加工食 品のみを成分P含有量の豊富な食品である旨を表示して販売している(以下, Y方法による測定を 経てYが販売している加工食品を「Y製品」という。 )。 以上の事実関係を前提として, 以下の設問に答えなさい。 なお, 各問はそれぞれ独立したもので あり, 相互に関係はないものとする。 〔設 問〕 1.Yは, Xから特許権侵害の警告を受けたため, 本件発明の完成の経緯を甲に確認したところ, 甲は, 上司に反対された研究を甲独自の判断で進める中で本件発明を完成させたのであるから, 本件発明の完成はXから期待されておらず, 甲が特許を受ける権利を有していると説明した。 そのため, Yは, Y方法の使用を続けたところ, Xは, Yに対して, 本件特許権に基づき, Y 製品の製造販売の差止め及びY製品の廃棄を求める訴訟を提起した。 Xの請求に対するYの考 えられる反論とその妥当性について論じなさい。 2.本件出願の特許請求の範囲には, 出願当初, 「工程aを含むことを特徴とする食品中の成分 P含有量の測定方法」(以下「本件当初発明」という。 )と記載されており, Xは, 本件出願の 出願公開後に本件当初発明の内容を記載した書面を提示してYに警告をした。 しかし, 本件出 願前から工程aのみを含む食品中の成分P含有量の測定方法が広く使用されていたことを知る Yは, Y方法の使用を続けた。 仮にXが本件当初発明について特許権の設定登録を受け, Yに対して出願公開の効果とし ての補償金の支払を請求した場合, Yは, どのように反論すべきか。 特許請求の範囲に本件当初発明が記載された本件出願について拒絶理由通知を受けたXは, 特許請求の範囲を本件発明のとおり補正したが, 補正後にYに対して再度の警告をしなかっ た。 その後, Xは, 本件特許権の設定登録を受け, Yに対して出願公開の効果としての補償 金の支払を求める訴訟を提起した。 Xの請求に対するYの考えられる反論とその妥当性につ いて論じなさい。 3.Yは, 本件発明の実施にのみ用いられる測定機器Mを製造し, それら全てを貿易会社Zに国 内で販売している。 Zは, それら全てを外国に輸出している。 Xは, Yに対して, 本件特許権 に基づき, Mの製造及び販売の差止めを請求することができるか。 - 18 - 〔第2問〕(配点:50) 仏師X1は, 宗教法人Y1寺からの依頼に応じて, 青銅製の仏像彫刻作品A一体を作成し, Y1 け さ に納めた。 Aは, 高さ3メートルの仏像で, 手脚を含む全身のポーズ, 顔の表情, 袈裟(着衣)の デザインなどについて仏教美術の仕来りに従いつつも, X1独自の世界観・宗教観を反映した外観 の表現αを有している。 Y1は, 恒久的に展示・管理するとの条件でX1から許諾を得て, Y1の境内の屋外にAを設置 し, 門徒や観光客の参拝に供した。 Aの姿は公道からは見えないが, 毎日午前9時から午後5時ま での間は誰でもY1境内に立ち入り, Aを見ることができる。 以上の事実関係を前提として, 以下の設問に答えなさい。 なお, 各問はそれぞれ独立したもので あり, 相互に関係はないものとする。 〔設 問〕 1.仏像彫刻作品Aの外観の表現αの著作物性について, どのような点が問題となり, その点を いかに考えるかを説明しなさい。 また, 商品として大量生産され, 家庭内の仏壇に設置される, 高さ20センチメートルの仏 像彫刻Bの外観の表現βの著作物性について, 更にどのような点が問題となり, その点をいか に考えるかを説明しなさい。 ここで, βはαをそのまま縮小したものであり, 両者はその大き さ以外は同一であるものとする。 2.Aが「Y1大仏」と称されて人気を博したため, Y1は, Aの正面写真をその中心に大きく 配置した絵はがきPを自ら製造し, 観光客に境内で販売するとともに, Y2を含む複数の土産 物店にも販売した。 次ののそれぞれにおいて, X1は, Y2に対して, 著作権に基づき, 絵はがきPの販売の差止めを請求することができるか。 いずれもαが美術の著作物であり, A がその原作品であることを前提に説明しなさい。 絵はがきPの製造販売についてX1がY1に許諾しておらず, その事情をY2はY1から のPの購入時に知らなかったが, 知らないことについて過失があった。 その後, X1がY2 に対して警告をしたために, Y2は, 当該事情を知り, 以後はPを購入することをやめたが, 現在, それ以前に購入したPを観光客に販売している。 X1とY1は, X1がY1に絵はがきPの製造販売を許諾し, Y1がX1にPの売上げの 5%を支払う旨の契約を締結していたところ, Y1はPの販売後も一切の金銭をX1に支払 っていない。 Y2は, この不払の事情を知りつつY1からPを購入して観光客に販売してい る。 ここで, X1とY1の間で, Pの製造販売許諾契約は解除されていないものとする。 3.Aの顔つきは怒りを含んだ厳しい表情であるため, Y1の内部では不評であった。 そこで, X1の死後すぐに, Y1は, より柔和な表情をした仏頭Cを自ら作り直し, Aの頭部を切り離 してCとすげ替えた。 ここで, 切り離されたAの頭部は, そのまま梱包されてY1内に保管さ れている。 X1の遺族である配偶者X2は, Y1に対して名誉回復等の措置を請求することが できるか。 αが美術の著作物であり, Aがその原作品であることを前提に説明しなさい。 - 19 - - 20 - 論文式試験問題集[労 - 21 - 働 法] [労 働 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の事例を読んで, 後記の設問に答えなさい。 【事 例】 Xは, 数軒の飲食店と娯楽施設を経営するY社に中途採用で雇用され, 飲食店の1つで接客係と して勤務していた。 当初は6か月の期間を定めた契約社員であったが, 契約を更新し, 採用から1 年が過ぎたところで期間の定めのない常勤スタッフとなり, 頑張れば将来は店長や本部のマネージ ャーに昇進することも可能と言われていた。 ところが, その1年後, 新たな店長としてPが着任す ると, なぜか折り合いが悪く, ささいなミスや客からのクレームを理由に, しばしば叱責を受ける ようになった。 半期ごとの成績評価でも, それまでの「標準, やや良」(B+)から「要改善」 (C)へと低下したため, Pとの面談の際に納得できない旨を伝えたが, 「その自覚のなさは絶望 的だな。 次回, 不良(D)がつくと居場所はなくなるぞ。 」と言われるだけであった。 Xとしては, 他の同僚と同等以上の仕事をしているのにPに狙い撃ちにされているように思われ, ストレスが高 まった。 そのような中で, ある日の始業時のスタッフ・ミーティングの際, 全員が集まったところで, P がXを前に呼び出し, 前日に生じた客との小さなトラブルを非難して「勤務改善の誓い」と題され た1枚の文書にサインするよう求めたため, Xは「いい加減にしてください。 」と大声で叫び, 同 文書を破り捨てた。 すると, Pは, そのまま自分の勤務に就こうとしたXにオフィスで待機するよ う命じ, 直ちに本社に連絡をして親戚に当たる社長Qの了解を得た上で, Xに即日解雇を言い渡し た。 Xが, どのような解雇理由なのかと尋ねると, Pは, 「勤務成績不良と上司への反抗。 本来な ら懲戒解雇にしてもよいところであるが, 温情措置として普通解雇の扱いとしてもらった。 後で人 事部から連絡があるはずだ。 」と言い, ロッカーの私物をまとめてすぐに帰宅するよう命じた。 そ の日の午後, Y社の人事部からXの携帯電話にメールで, @本日付けでY社はXを解雇する, A解 雇理由は就業規則第32条第2号, 第4号及び第7号である, B就業規則第33条ただし書に該当 するので, 同条本文の予告及び予告手当の支払は行わない, C退職手当は後日Xの銀行口座に振り 込む, という4点が記された文書(解雇通知書)が送られてきた。 Xは翌日, Y社の人事部に電話をし, 一晩考えてみたがやはりひどすぎると解雇の撤回を求めた が, 担当者からは, 解雇通知書に記した理由による正当な解雇である, それ以上に説明することは ない, との回答しか得られなかった。 また, Xは勤務していた店舗に出向いてPに面談を求めたが, Pは不在とのことであった。 Xはやむなく立ち去ったが, 帰り際, 副店長のRに「こんな解雇は承 服できない。 知り合いの弁護士に頼んで裁判を起こしてやる。 」と言った。 Rは後刻, これをPに 報告した。 【Y社就業規則(抜粋)】 第20条(退職手当) 従業員が死亡又は退職したときには, 別に定める規程(略)に従い, 退職手当を支払う。 第32条(解雇) 従業員が, 次の事由の一つに該当するときには, 解雇する。 1 (略) 2 能力不足又は勤務成績が不良で改善の見込みがないとき。 3 (略) 4 協調性又は責任感を欠き, 従業員として不適格と認められるとき。 5・6 (略) - 22 - 7 その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき。 第33条(解雇の予告) 前条の解雇に当たっては, 少なくとも30日前に予告をするか, 予告に代えて平均賃金の30日分 以上の解雇予告手当を支払う。 但し, 本人の責めに帰すべき事由による解雇については, この限りで はない。 第40条(懲戒解雇) 従業員が, 次の事由の一つに該当するときには, 懲戒解雇を行う。 この場合, 第20条に定める退 職手当は支給しない。 1 重要な経歴を詐称して, 又は不正な方法により, 採用されたとき。 2・3 4 (略) 業務命令に従わず, 会社の規律又は正常な業務を妨害したとき。 5〜7 〔設 (略) 問〕 1.Xから解雇を争いたいという相談を受けた弁護士は, 本件解雇の適法性や効力について, どの ように考えるべきか。 請求や主張の仕方にも触れながら, あなたの意見を述べなさい。 2.Xが訴訟を起こすかもしれないというPからの連絡に基づき, Y社の人事部が, 保存してあっ たXの採用時の応募書類をチェックしてみると, ホテル専門学校を卒業したとして添付されてい た証明書のコピーに不審な点が見つかった。 そこで調査を行ったところ, このコピーは偽造であ り, Xは当該専門学校に入学したものの, 中途で退学していたことが判明した。 Xが本件解雇の無効を主張してY社を相手に訴訟を提起した場合, Y社は, この応募書類の問 題について, どのような対応を採ることが考えられるか。 検討すべき法律上の論点を挙げて, あ なたの意見を述べなさい。 - 23 - 〔第2問〕(配点:50) 次の事例を読んで, 後記の設問に答えなさい。 【事 例】 加工食品の製造販売を行うY社には, 正社員で組織するX労働組合(以下「X組合」という。 ) が存在し, 組合員資格のない管理職等を除けば, 正社員のほぼ全員がこれに加入していた。 Y社とX組合は毎年, 春闘の団体交渉により, 賃金改定や夏冬の賞与などの労働条件を合意し, 4月1日付けで期間1年の労働協約を締結してきた。 また, 上記労働協約とは別に, 組合費のチェ ックオフ, 掲示板の貸与及び苦情処理委員会等, 労使間のルールに関する期間の定めのない労働協 約(以下「本件労働協約」という。 )があった。 本件労働協約には, 第27条から第29条までに 掲示板の貸与についての規定が置かれていたほか, 労使各3名の委員で構成される苦情処理委員会 に関する規定が置かれており, 人事評価, 昇給・降給, 賞与査定等について, 同委員会で組合員か らの苦情を受け付けて, 労使の委員で協議するものとされていた。 また, 第51条に苦情処理委員 会の運営に関する定めがあった。 ところで, Y社の賞与には, 固定部分と変動部分があり, 固定部分について労使交渉で基準支給 率を定めた上で, 変動部分については, 固定部分の額の20%を上限として, 上司による賞与査定 に応じて加算される仕組みとなっていた。 X組合の組合員である女性社員Aは, 平成30年冬期賞与支給に際して, 変動部分における加算 をゼロとされたため, 以前に上司からの飲食の誘いを何度か断ったことが原因ではないかとして, X組合に相談の上, 平成31年2月, 苦情処理委員会に申立てをした。 苦情処理委員会で, 会社側委員は, 上司からの事前のヒアリングを基に, Aの賞与査定が低い理 由は, Aが電車が遅れたと言っては度々5分ないし10分の遅刻をしたこと, 業務上のミスが多か ったことであると説明した。 これに対し, X組合側委員は, 遅刻やミスの事実はあるがいずれも加 算ゼロとするほどの問題ではない, Aが上司の誘いを断ったことが真の原因ではないか, そうだと すると低査定は対価型セクシュアルハラスメントに該当すると主張し, 事実無根である, 二人きり の飲食に誘った事実はないと聞いているとする会社側委員と議論になり, 長時間を費やしたが, 協 議は平行線のままで終了した。 そこで, X組合は, Aの賞与査定の問題に関して改めて団体交渉を要求したが, Y社は, そもそ も個人の査定等の問題は集団的労使交渉にはなじまないから, 労使合意により苦情処理委員会を設 置したのであり, また, 苦情処理委員会で労使の委員が長時間にわたって議論した結果, 物別れに 終わっており, これ以上説明することはないとして団体交渉に応じなかった。 Y社の態度に反発したX組合は, 掲示板を利用して組合員に状況を報告することとし, 苦情処理 委員会におけるY社側の主張を紹介した上で, 不当な賞与査定である, 上司によるセクハラ行為で ある, Y社の対応はセクハラを隠蔽しようとするものでコンプライアンス上重大な問題がある, Y 社は正当な理由なく団体交渉を拒否していると非難するビラを作成し, 掲示板に掲示した。 Y社は, X組合に対し, 当該ビラ掲示は, 本件労働協約に違反するものであるから直ちに掲示を 中止するよう通告したが, X組合が対応しなかったため, 翌日, 本件労働協約第29条に基づき当 該ビラを撤去した。 X組合がこれに猛然と反発したため, 春闘の団体交渉は難航し, 合意に至らなかったところ, Y 社は, 労使間の信頼関係は既に破壊されているとして, 本件労働協約について, 書面により90日 前の解約予告をした。 また, Y社は, 本件労働協約が失効すれば, 使用者が組合費について賃金控 除を行う法的根拠が失われると主張して, X組合に対して, 本件労働協約の失効後は組合費のチェ ックオフを中止する旨を通告した。 - 24 - 【本件労働協約(抜粋)】 第27条 会社は, X組合に対し, X組合が組合活動に必要な宣伝, 報道, 告知を行うための掲示板 を貸与する。 第28条 掲示物は, 会社の信用を傷つけ, 政治活動を目的とし, 個人をひぼうし, 事実に反し, 又 は職場規律を乱すものであってはならない。 第29条 会社は, X組合が前条の規定に違反した場合は, 掲示物を撤去し, 掲示板の貸与を取り消 すことができる。 第51条 苦情処理委員会は非公開とし, 委員会の委員及び関係者(苦情を申し立てた者, 委員会に よるヒアリングの対象となった者を含む。 )は, 苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはなら ない。 〔設 問〕 1.X組合が, Y社の本件労働協約第29条に基づくビラの撤去について争う場合, どのような機 関にどのような救済を求めることができるか。 検討すべき法律上の論点を挙げて論じなさい。 2.Y社が, 解約予告から3か月後の給与支給日以降, 実際にチェックオフを中止した場合, X組 合は, どのような機関にどのような救済を求めることができるか。 検討すべき法律上の論点を挙 げて論じなさい。 - 25 - - 26 - 論文式試験問題集[環 - 27 - 境 法] [環 境 法] 〔第1問〕(配点:50) A県を流れるB川上流域には農村地帯が広がっており, 中流域には大小多数の旅館やホテルが立 ち並ぶ観光地がある。 そして, B川は, 下流域の人口密集地と河口部の電気めっき工場の集積地を 通り, A県最大の内湾であるC湾に流れ込んでいる。 現在, C湾においては, 人の健康の保護に関 する環境基準に関しては, カドミウム, 全シアン等, 全項目について基準を達成している。 これに 対し, 生活環境の保全に関する環境基準に関しては, 水域の利用目的に関し, 水浴, 自然環境保全 等を目的としてA類型に指定されている海域Dにおいて, 化学的酸素要求量(COD)について基 準を達成していない。 また, 自然環境保全等を目的としてT類型に指定されている海域Eにおいて, 全窒素と全燐について基準を達成していない。 さらに, 水生生物の生息状況に関し, 水生生物の産 卵場等として生物特A類型に指定されている海域Fにおいて, 全亜鉛について基準を達成していな い。 〔設問1〕 水質の汚濁に係る環境上の条件について, 人の健康の保護に関する環境基準と生活環境の保全 に関する環境基準とでは, 基準の設定の仕方がどのように異なるかについて, 【資料1】も参照 しつつ, その理由も含めて説明しなさい。 〔設問2〕 A県においては, 従来, 水質汚濁防止法第3条第1項に基づく排水基準が適用されてきた。 し かし, C湾において, COD, 全窒素及び全燐に関する環境基準が一部海域において未達成であ るという状況は20年以上にわたって続いており, その発生源は, 水質汚濁防止法の特定事業場 のほか, 生活排水, 農地等であると考えられている。 また, 全亜鉛については, 水生生物保全の 観点から, 平成18年に同条同項に基づく亜鉛の排水基準が強化されたものの(5mg/lから 2mg/l), 電気めっき業については, この基準に直ちに対応することが困難であるとして, 現在に至るまで同条同項に基づく環境省令の附則による暫定排水基準(5mg/l)が適用され ている。 A県は, C湾において, COD, 全窒素, 全燐及び全亜鉛の環境基準を達成するため, 従来の対策に加え, どのような措置を採ることができるか。 水質汚濁防止法の規定を踏まえ, 【資料2】も参照しつつ論じなさい。 〔設問3〕 水質汚濁に係る環境基準が設定されていない物質Pについて, 近年, 発がん性と催奇形性があ るとの研究結果が相次いで報告されている。 そこで, 環境団体等が国に対して環境基準の設定及 び規制を求めているが, 未だ実現していない。 Pを含む水を排出している特定事業場が多数存在 しているA県G市が, 条例により独自の排水基準を設定することの可否について, 水質汚濁防止 法の規定を踏まえて論じなさい。 【資料1】 ○ 水質汚濁に係る環境基準について(昭和46年12月28日号外環境庁告示第59号)(抜粋) 第1 環境基準 公共用水域の水質汚濁に係る環境基準は, 人の健康の保護および生活環境の保全に関し, それぞ れ次のとおりとする。 1 人の健康の保護に関する環境基準 人の健康の保護に関する環境基準は, 全公共用水域につき, 別表1の項目の欄に掲げる項目ご - 28 - とに, 同表の基準値の欄に掲げるとおりとする。 2 生活環境の保全に関する環境基準 生活環境の保全に関する環境基準は, 各公共用水域につき, 別表2の水域類型の欄に掲げる 水域類型のうち当該公共用水域が該当する水域類型ごとに, 同表の基準値の欄に掲げるとおり とする。 水域類型の指定を行うに当たつては, 次に掲げる事項によること。 ア 水質汚濁に係る公害が著しくなつており, 又は著しくなるおそれのある水域を優先するこ と。 イ 当該水域における水質汚濁の状況, 水質汚濁源の立地状況等を勘案すること。 ウ 当該水域の利用目的及び将来の利用目的に配慮すること。 エ 当該水域の水質が現状よりも少なくとも悪化することを許容することとならないように配 慮すること。 第3 オ 目標達成のための施策との関連に留意し, 達成期間を設定すること。 カ (略) 環境基準の達成期間等 環境基準の達成に必要な期間およびこの期間が長期間である場合の措置は, 次のとおりとする。 1 人の健康の保護に関する環境基準 これについては, 設定後直ちに達成され, 維持されるように努めるものとする。 2 生活環境の保全に関する環境基準 これについては, 各公共用水域ごとに, おおむね次の区分により, 施策の推進とあいまちつつ, 可及的速かにその達成維持を図るものとする。 現に著しい人口集中, 大規模な工業開発等が進行している地域に係る水域で著しい水質汚濁 が生じているものまたは生じつつあるものについては, 5年以内に達成することを目途とする。 (以下, 略) 水質汚濁防止を図る必要のある公共用水域のうち, (1)の水域以外の水域については, 設定 後直ちに達成され, 維持されるよう水質汚濁の防止に努めることとする。 別表1 (略) 別表2 生活環境の保全に関する環境基準 1 河川 河川(湖沼を除く。 ) 湖沼 (略) (略) 2 海域 * 別表2のうち, 海域に関する部分の概要 (略) 利用目的の適応性等に応じ, 以下の水域類型の欄が掲げられている。 ア COD等5項目について A, B, Cの3類型 イ 全窒素, 全燐について T, U, V, Wの4類型 ウ 全亜鉛等3項目について 生物A, 生物特Aの2類型 上記各水域類型ごとの基準値の欄に掲げられている基準値として, 以下のようなものがあ る。 ア A類型(水浴, 自然環境保全等を利用目的とする水域) CODの基準値 イ ウ 2mg/l以下 T類型(自然環境保全等を利用目的とする水域) 全窒素の基準値 0.2mg/l以下 全燐の基準値 0.02mg/l以下 生物特A類型(水生生物の産卵場等として特に保全が必要な水域) - 29 - 全亜鉛の基準値 0.01mg/l以下 【資料2】 ○ 水質汚濁防止法施行令(昭和46年政令第188号)(抜粋) (特定施設) 第1条 水質汚濁防止法(以下「法」という。 )第2条第2項の政令で定める施設は, 別表第1に掲 げる施設とする。 (水素イオン濃度等の項目) 第3条 法第2条第2項第2号の政令で定める項目は, 次に掲げる項目とする。 一 水素イオン濃度 二 生物化学的酸素要求量及び化学的酸素要求量 三〜六 七 (略) 亜鉛含有量 八〜十一 十二 2 (略) 窒素又はりんの含有量 (以下, 略) (略) (排水基準に関する条例の基準) 第4条 法第3条第3項の政令で定める基準は, 水質の汚濁に係る環境上の条件についての環境基本 法(平成5年法律第91号)第16条第1項の基準(以下「水質環境基準」という。 )が定められ ているときは, 法第3条第3項の規定による条例(農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和 45年法律第139号)第3条第1項の規定により指定された対策地域における農用地の土壌の同 法第2条第3項の特定有害物質による汚染を防止するため水質環境基準を基準とせず定められる条 例の規定を除く。 )においては, 水質環境基準が維持されるため必要かつ十分な程度の許容限度を 定めることとする。 別表第1(第1条関係) 一〜六十五 六十六 (略) 電気めつき施設 六十六の二 (略) 六十六の三 旅館業(旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第1項に規定するもの(下宿 営業を除く。 )をいう。 )の用に供する施設であつて, 次に掲げるもの イ ちゆう房施設 ロ 洗濯施設 ハ 入浴施設 六十六の四〜七十四 ○ (略) 排水基準を定める省令(昭和46年総理府令第35号)(抜粋) (排水基準) 第1条 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号。 以下「法」という。 )第3条第1項の排水基 準は, 同条第2項の有害物質(以下「有害物質」という。 )による排出水の汚染状態については, 別表第1の上欄に掲げる有害物質の種類ごとに同表の下欄に掲げるとおりとし, その他の排出水の 汚染状態については, 別表第2の上欄に掲げる項目ごとに同表の下欄に掲げるとおりとする。 * 別表第2の概要 排水基準を定める省令第1条にいう「その他の排出水の汚染状態」について, 水質汚濁防止法施 行令第3条が掲げる項目が上欄に掲げられ, これに対応し, 水素指数又は排出水一定単位当たりの 許容量により定められた許容限度が下欄に掲げられている。 同表の備考2では, 同表に掲げる排出基準は, 1日当たりの平均的な排出水の量が50立方メー - 30 - トル以上である工場又は事業場に係る排出水について適用するとされている。 附 則 (平成18年11月10日環境省令第33号)(抜粋) (施行期日) 第1条 この省令は, 平成18年12月11日から施行する。 (経過措置) 第2条 附則別表の上欄に掲げる項目につき同表の中欄に掲げる業種に属する特定事業場(水質汚濁 防止法第2条第6項に規定する特定事業場をいう。 以下この条及び次条において同じ。 )から公共 用水域に排出される水(以下「排出水」という。 )の汚染状態についての水質汚濁防止法第3条第 1項に規定する排水基準(以下単に「排水基準」という。 )については, この省令の施行の日(中 略)から15年間は, 第1条の規定による改正後の排水基準を定める省令(中略)第1条の規定に かかわらず, それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。 2 (略) 3 (略) * 附則(平成18年11月10日環境省令第33号)別表の概要 電気めっき業等3業種について, 亜鉛含有量の許容限度を5mg/lとする暫定基準が掲げられ ている。 - 31 - 〔第2問〕(配点:50) Aは, B県に所在し, エアコンやテレビ等の使用済み家庭用電気機器(以下「家電機器」とい う。 )を集めて, その中から金属類を取り出し, 再資源化する業者である。 Aの再資源化工場は田 地を転換して建設したものであって, 周囲は今も田地であり稲作が行われている。 〔設問1〕 Aは, 家電機器を解体する際に生じる大量の廃プラスチック片を, 今までは廃棄していたが, これを再資源化することを思い付いた。 しかし, 廃プラスチック片には有害物を含む多くの不純 物が混ざっており, そのままでは資源として使うことのできない性質のものであった。 そのため, 再資源化のためには特殊な加工が必要であり, かつ, 資源として使用可能なものは, 廃プラスチ ック片の全体量のほんの一部にすぎなかった。 そこで, 自ら再資源化のための加工設備を持って いなかったAは, 別の再資源化業者Cに費用を支払って廃プラスチック片の加工を委託した。 C はAから受け取った廃プラスチック片を他の者から入手したものと混同させることなく加工し, 資源として使用可能になったプラスチックのペレットを, 廃プラスチック片の加工から生じる残 渣とともにAに引き渡すこととした。 AがCに廃プラスチック片の加工を委託することについて, 廃棄物の処理及び清掃に関する法 律上, どのような考慮が必要か。 AがCに委託することなく自ら廃プラスチック片を加工処理す る場合との異同を念頭に置いて論じなさい。 〔設問2〕 Aは, 自らの再資源化工場の処理能力を超えて家電機器を集め続けていたため, Aの工場敷 地内には, 解体されないままの家電機器が山積みになっていた。 そして, Aによる家電機器の 保管が適正ではなかったため, 人の健康又は生活環境に係る被害が生じ得る状態にある。 B県 知事がAに対して採り得る措置について論じなさい。 その後, Aの工場敷地内で山積みになっていた家電機器は更に放置され, 再資源化のための 処理がなされないまま, 原形をとどめない程度にまで劣化・変色し, その下から液体が染み出 して, Aの工場に接する農業用の用水路に流れ込んでいる状態になった。 Aの工場敷地内に放 置された家電機器は, 鉛, 水銀, アンチモン, 砒素, カドミウム等の有害物質を含むものであ り, Aの工場の周囲の田地で稲作に従事している農家のDらは, 染み出している液体に含まれ る有害物質が生育中の稲を汚染することを危惧し, B県の環境担当部局に相談した。 この場合, B県知事としては, Aに対してどのような措置が採れるか, また, DらはAに対して, いかな る法的請求が可能かを論じなさい。 - 32 - 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)] - 33 - [国際関係法(公法系)] 〔第1問〕(配点:50) 国連加盟国であるA国とB国は, 共に国連海洋法条約の当事国であり, 国際司法裁判所規程の選 択条項受諾宣言を留保なしに行っていた。 A国は, 自国の排他的経済水域(以下「EEZ」という。 )におけるタラの漁獲量の減少に悩ん でいた。 タラはA国のEEZと公海をまたいで生息する魚種である。 A国は自国のEEZにおける タラの漁獲可能量につきA国漁民に対する規制を年々強め, A国漁民の間には不満が募っていた。 他方, B国漁民はA国のEEZに隣接する公海でタラの漁獲に従事し, B国の漁獲量は年々増加し ていた。 そのため, A国の漁民は, A国政府に対し, タラの持続可能な漁業のために, B国政府を 相手に公海における漁業規制を行うための交渉に入るように求めた。 これを受けてA国政府は, B 国政府との交渉に入り, 公海におけるタラの総漁獲可能量及び割当量を設定するため漁業規制を行 うことを主張した。 しかし, B国政府は, タラの資源量は規制を必要とする水準にはなく総漁獲可 能量及び割当量の設定は必要でないとして, 漁業規制を行うこと自体に反対し, 引き続き公海での タラ漁を継続することを主張した。 これに対して, A国政府やA国漁民のみならず, 海洋生物資源の保存活動に取り組むA国の環境 保護団体Xも激しく反発した。 そして, ついに公海で操業しているB国漁船をA国漁船が取り囲み, 両国の漁民間が衝突する事態が生じた。 この事態を受けて, A国は, 自国のEEZ及びこれに隣接 する公海の一部においてタラ漁を禁止する禁漁区を一方的に設定した。 加えてA国は, タラ資源保 存実施法を制定し, 同禁漁区でタラを漁獲する外国漁船に対しては, これを拿捕し, 当該漁船の船 長や乗組員に対して罰金を科することができることを定めた。 B国は, A国の公海における禁漁区 の設定とタラ資源保存実施法の制定は国連海洋法条約に違反するとして, これを非難した。 そうした中, A国が設定した公海上の同禁漁区で, B国の漁船Yが従前どおりタラ漁を開始した。 これに反発したA国の環境保護団体Xは, C国を旗国とする船舶を用い, 公海上の同禁漁区でタラ 漁を行っている漁船Yの航行を妨害するとともに, 漁網を切断するなどの行為を行った。 B国政府 は, 環境保護団体Xの行為を海賊行為として取り締まるようにA国政府に要求したが, A国政府は 環境保護団体Xの行為は海賊行為に当たらないとして, 何らの取締りも行わなかった。 それどころ か, A国の海上警察機関が漁船Yをタラ資源保存実施法に違反したとして拿捕し, その船長と乗組 員を逮捕した。 大きな外交問題に発展したこの事件が国際司法裁判所(以下「ICJ」という。 )に提訴される ことを恐れたA国は, 一旦, 国際司法裁判所規程の選択条項受諾宣言を撤回した。 その後, A国は, 「タラに関するA国が制定した国内法及びこうした国内法の執行から生じた, またはそれらに関す る紛争」をICJの強制管轄権から除外する旨の留保を付した新たな選択条項受諾宣言を行った。 これに対し, B国は, 当初, 外交交渉による問題の解決を目指したが, 船長らの解放の見込みが ないと判断して, 船長と乗組員の即時釈放を求める仮保全措置とA国の行為の国際法違反の認定と 損害賠償を求めて, 本事件をICJに提訴した。 これに対して, A国は, 自らの留保を理由にIC Jの管轄権を争う先決的抗弁を提起した。 以上の事実を基に, 以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.A国は, 公海上に禁漁区を設定した上, タラ資源保存実施法に基づき, B国漁船Yを拿捕し, その船長と乗組員を逮捕したが, これらのA国の行為は国際法上許容されるかについて論じな さい。 2.環境保護団体Xの行為を海賊行為として取り締まるようにとのB国の主張に対して, A国の 立場からは, 国際法上, どのような反論が可能であるかについて論じなさい。 3.A国が選択条項受諾宣言に付した留保による先決的抗弁が認められるかについて論じなさい。 - 34 - 〔第2問〕(配点:50) A国は, 総人口のうち60%がX民族, 30%がY民族, 残りの10%がそれ以外の民族によっ て構成されている国である。 A国と陸地の国境を接するB国は, Y民族が総人口の80%を占めて いる。 C国は, A国及びB国と地理的に遠く離れているが, B国とは歴史的な関係が深く, 現在も 政治的及び経済的に緊密な友好関係にある。 A国, B国及びC国は, いずれも国連加盟国である。 A国では, 長い間, Y民族を中心とする政権が続き, 多様な民族の融和を図る政策が採られてい た。 A国とB国の間では, 人の交流が活発であり, 多くのB国籍のY民族の人々がA国に居住し, 経済活動を行っていた。 Y民族であるB国籍の甲も, A国の首都に長く居住し, 幅広い経済活動を 行っていた著名な企業経営者であった。 しかし, 近年になって, A国では, クーデターが起き, X民族主義を掲げる新政権が誕生した。 A国の新政権は, その成立以降, X民族を優遇する政策を推し進めるようになり, A国に居住する B国籍のY民族の人々の経済活動にも様々な制限を課すようになった。 そして, A国の当局は, A 国の外国為替法に違反する外国送金を行ったとの容疑で甲を逮捕した。 甲は, 同法に何ら違反して いないと主張したが, その主張は認められず, 罰金と国外退去処分の判決を受けた。 さらに, 甲が B国籍であることを理由に, 上訴も認められず, この判決は確定した。 A国内の甲の財産は罰金の 徴収のために差し押さえられ, 甲は国外退去処分となった。 A国によるこれらの措置によって, 甲 が経営していたA国内の企業は実質的に破綻した。 なお, A国の法制度では, 判決の確定後, これ に対する救済手段は, 残されていない。 他方, Y民族の旧政権を中心とする勢力は, クーデター後, A国において, 「Y民族戦線」と名 乗り, B国政府から戦闘の訓練, 武器の供与及び大規模な財政的支援を受けた反政府活動を行うよ うになった。 これらの支援により, 「Y民族戦線」は, B国と国境を接するA国領域内の地域を支 配するようになった。 これに対し, A国政府は, 反政府活動の鎮圧のために大規模な軍隊を同地域 に派遣し, 「Y民族戦線」との間の武力衝突が激化した。 これを受けて, A国との国境付近のB国 の複数の町の住民(B国籍者)の中には, 「Y民族戦線」の構成員をかくまったり, その戦闘に参 加したりする者が出てきた。 これに対し, A国軍は, B国領域内のそれらの町を武力攻撃の対象と するようになり, その結果, B国の一般住民に多数の死傷者が出る事態が生じた。 この事態を受け て, B国は, A国による武力攻撃に関し, C国に対し軍事介入を要請した。 これに応じて, C国は, B国に対する武力攻撃の根拠地となっているA国領域内のA国軍軍事基地を空爆した。 以上の事実を基に, 以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.甲に対するA国の措置に関して, B国がA国に対してどのような国際法上の主張を行い得る かを論じなさい。 2.「Y民族戦線」の活動について, B国が国際法上の責任を問われ得るかを論じなさい。 3.C国によるA国領域内の軍事基地に対する空爆行為を国際法上どのように正当化できるかを, C国の立場から論じなさい。 - 35 - - 36 - 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)] - 37 - [国際関係法(私法系)] 〔第1問〕(配点:50) 共に日本に住所を有する夫婦AとBは, 同じく日本に住所を有するCの非嫡出子D(満5歳)を 養子に迎えたいと考えている。 Cも, それを承諾している。 国際裁判管轄権については日本にある ものとして, 下記の設問に答えよ。 〔設問1〕 AとBが共に甲国籍を, Dが日本国籍をそれぞれ有する場合, AとBは, Dとの養子縁組を日 本において有効に行うことができるか。 甲国民法が以下に記すような決定型養子縁組制度のみを 定め, ここでは反致は成立しないものとして, 準拠法に留意しつつ論じなさい。 【甲国民法】 @ 養子縁組をするには, 家事裁判所の決定によらなければならない。 A 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は, 養子縁組によって終了する。 〔設問2〕 AとDが日本国籍を, Bが甲国籍をそれぞれ有し, かつAとBは, Dとの養子縁組に当たり, CとDの親子関係を維持したいと考えている。 AとBは, 日本においてこのような養子縁組をD との間で行うことができるか。 上記の甲国民法に加えて, 甲国国際私法が, 養子縁組について, 以下に記すようないわゆる管轄権的アプローチ(管轄権的構成)を定めているものとして, 準拠 法に留意しつつ論じなさい。 【甲国国際私法】 B 裁判所は, 養親となるべき者の住所が国内にある場合は, その養子縁組決定の国際裁判管轄 権を有する。 C 養子縁組の決定は, 法廷地法による。 〔設問3〕 AとBが共に日本国籍を, Dが乙国籍をそれぞれ有し, AとBには, この養子縁組に反対して いる実子E(満15歳)がおり, さらには, 乙国法が以下に記すような契約型養子縁組制度のみ を定めているものとして, 下記の小問に答えなさい。 【乙国国際私法】 D 裁判所は, 乙国国際私法の規定によって指定された国の実質法のみを適用する。 E 養子縁組は, 養親となるべき者の本国法による。 【乙国民法】 F 養子縁組は, 合意した文書を届け出ることによって, その効力を生ずる。 G 養子となるべき者が満10歳未満の場合は, その実親が, 養子に代わって養子縁組の承諾を することができる。 H 養親となるべき者に満10歳以上の子がいる場合, 養子縁組をするには, その子の同意を得 なければならない。 〔小問1〕 この養子縁組には, いずれの国の法が適用されるか。 〔小問2〕 法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)第31条第1項後段に定める要件につ いて乙国法が適用されるとして, AとBは, この養子縁組を日本において有効に行うことがで きるか。 - 38 - 〔第2問〕(配点:50) X男は甲国に常居所を有する甲国人詩人であり, Y女は日本に常居所を有する日本人である。 X の弟A男は日本に居住しており, Yは過去にAと交際していた。 Yは, 日本において日本語の小説(以下「被告小説」という。 )を執筆し, 日本のインターネッ トコンテンツプロバイダーC社の運営しているブログにこれを公表した。 被告小説は, いわゆるモ デル小説であり, AやXをモデルとしている(Xがモデルであることには当事者間に争いがな い。 )。 被告小説中には, Xが甲国において出版した詩集に掲載されている詩(以下「本件詩」とい う。 )の日本語訳が無断で掲載されているほか, Xに窃盗癖があるとの記述や, Xが精神疾患を患 っていたとの記述もあった。 Xは, Cに対して被告小説の削除依頼をし, それは削除された。 しかし, 被告小説は, 削除され るまでの間, 甲国及び日本において, Xの知人たちを含む多数の人々に閲覧されていた。 Xは, Y に損害賠償を求めて交渉したが, Yはこれに応じない。 下記の〔設問1〕〔設問2〕は, それぞれ, この事件がこの後異なった経過をたどったことを前 提とする独立の問題である。 〔設問1〕 Xは, Yに対して以下のような訴えを日本の裁判所に提起した。 @ 上記の窃盗癖の記述がXの名誉を毀損すると主張して慰謝料を請求した。 A 上記の精神疾患の記述がXのプライバシー権を侵害すると主張して慰謝料を請求した。 B 本件詩の翻訳の掲載がXの有していた本件詩に関する日本における著作権及び甲国における 著作権(具体的には, 著作権に含まれる支分権の1つである翻訳権)を侵害すると主張して, 損害賠償を請求した。 上記の各請求について判断するに当たり適用すべき準拠法の決定について論じなさい。 国際裁 判管轄権について論じる必要はない。 なお, 甲国は, 文学的及び美術的著作物の保護に関するベ ルヌ条約パリ改正条約(昭和50年条約第4号)の同盟国である。 (参照条文)文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(昭和50年条約第4 号)(抜粋) 第5条〔保護の原則〕 著作者は, この条約によつて保護される著作物に関し, その著作物の本国以外の同盟国におい て, その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利及びこの条約が特に 与える権利を享有する。 の権利の享有及び行使には, いかなる方式の履行をも要しない。 その享有及び行使は, 著作 物の本国における保護の存在にかかわらない。 したがつて, 保護の範囲及び著作者の権利を保全 するため著作者に保障される救済の方法は, この条約の規定によるほか, 専ら, 保護が要求され る同盟国の法令の定めるところによる。 著作物の本国における保護は, その国の法令の定めるところによる。 もつとも, この条約によ つて保護される著作物の著作者がその著作物の本国の国民でない場合にも, その著作者は, その 著作物の本国において内国著作者と同一の権利を享有する。 (以下略) 〔設問2〕 Xは, Yに対し, 被告小説中のXの窃盗癖に関する記述がXの名誉を毀損すると主張して, 甲 国の裁判所に不法行為に基づく慰謝料を請求する訴えを提起した。 - 39 - Yは, これに応訴しないでいたところ, 甲国裁判所は甲国法を準拠法として, X勝訴の判決 (以下「本件外国判決」という。 )を言い渡し, 本件外国判決は確定した。 しかし, Yは甲国には財産を有していなかったので, Xは, 日本の裁判所に本件外国判決に基 づく執行判決を求める訴えを提起した。 本件外国判決が日本における執行判決に係る他の要件を全て満たしているとして, 次の各小問 に答えなさい。 次の各小問は, いずれも独立した別個の問題である。 〔小問1〕 本件外国判決は, 下記の甲国民法P条を適用し, 慰謝料に加えてその3倍程度の金額の懲罰 的損害賠償請求も認容したものであった。 そこで, Xは, 日本の裁判所において, 本件外国判決に基づき, 慰謝料及び懲罰的損害賠償 の双方について執行判決を求めている。 Xの執行判決請求は認められるか。 なお, 甲国法上, 懲罰的損害賠償を得た者には, その一部を国, 州その他の公的団体に納め る義務はなく, その使途にも制限はない。 【甲国民法】 P条 契約から生じる義務以外の義務への違反に基づく訴訟においては, 明白かつ確信を抱く に足る証拠によって, 被告が抑圧, 詐欺又は害意ある行為を犯したことが証明された場合に は, 原告は, 現実の損害に加えて, 見せしめのため被告に懲罰を科すための損害賠償を請求 することができる。 〔小問2〕 本件外国判決に係る訴訟の訴状及び期日呼出状は, 甲国法に従い, いずれもXの代理人弁護 士からYに対し, 日本語への翻訳文を添付し, 訴訟に対応できる時間的余裕をもって, 国際書 留郵便によって直接郵送されていた。 Xの執行判決請求は認められるか。 - 40 -