短答式試験問題集 [刑法・刑事訴訟法] -1- [刑法] 〔第1問〕(配点:3) 正当防衛(刑法第36条第1項)に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討 した場合,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.1],[No.2]順不同) 1.刑法第36条第1項における「急迫」というには,法益の侵害が現に存在していることを要 する。 2.刑法第36条第1項における「やむを得ずにした行為」というには,反撃行為が権利を防衛 する手段として必要最小限度のものであること,すなわち侵害に対する防衛手段として相当性 を有するものであることを要する。 3.急迫不正の侵害がないのにあると誤信して,防衛の意思で反撃行為を行った場合でも,正当 防衛が成立し得る。 4.刑法第36条第1項にいう「権利」は,個人的法益に限られ,国家的・社会的法益は,これ に含まれない。 5.刑法第36条第1項における「不正の侵害」というには,可罰的な行為であることを要しな い。 〔第2問〕(配点:2) 強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。(解答欄は,[No.3]) 1.甲は,銭湯の脱衣場で窃盗をしようと考え,客の財布を手に取って在中する金額を確認中, その様子を目撃した乙から声を掛けられたため,逮捕を免れる目的で,乙に反抗を抑圧するに 足りる程度の暴行を加えて加療約1か月間を要する傷害を負わせた。この場合,甲には,事後 強盗罪及び強盗致傷罪が成立し,両罪は観念的競合となる。 2.甲は,電車内で寝ていた乙の財布を盗んで電車を降りたが,乙が目を覚まして追い掛けてき たため,逮捕を免れる目的で,乙に暴行を加えたところ,乙が転倒して重傷を負い,反抗が抑 圧された状態に至った。この場合,甲の暴行の程度を問わず,甲には,強盗致傷罪が成立する。 3.甲は,留守宅に侵入して窃盗をしようと考え,金品を物色中に家人が帰ってきたら同人に反 抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて逃げる意図でサバイバルナイフを携帯し,住宅街を 徘徊して侵入に適した留守宅を探したが,これを発見できず,侵入を断念した。この場合,甲 には,強盗予備罪が成立する。 4.甲は,窃盗の目的で乙宅に侵入し,金品を物色中,乙に発見されたため,この機会に乙に暴 行を加えて金品を奪おうと考え,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,金品を奪っ た。この場合,甲には,事後強盗罪が成立する。 5.甲は,乙宅に侵入して財布を盗んだ後,誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移 動して財布内の現金を確認した。しかし,甲は,その金額に満足せず再度乙宅で窃盗をしよう と考え,乙宅を出た30分後に乙宅に戻り,その玄関扉を開けようとしたところ,帰宅してい た乙に発見されたため,逮捕を免れる目的で,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え た。この場合,甲には,事後強盗罪が成立する。 -2- 〔第3問〕(配点:2) 過失犯に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはど れか。(解答欄は,[No.4]) 1.共同正犯に関する刑法第60条は,意思の連絡を要件としているので,過失犯には適用され ない。 2.重過失とは,重大な結果を惹起する危険のある不注意な行為をすることをいう。 3.過失犯の成立に必要となる結果発生の予見可能性は,内容の特定しない一般的・抽象的な危 惧感ないし不安感を抱く程度の予見の可能性で足りる。 4.行為者が法令に違反する行動をした事案においても信頼の原則が適用される場合がある。 5.ホテルの火災により死傷者が出た場合,火災発生時に現場にいなかったホテル経営者には業 務上過失致死傷罪が成立することはない。 〔第4問〕(配点:2) 名誉毀損罪及び侮辱罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合, 正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.5]) ア.事実を摘示せずに公然と人を侮辱することを教唆した者に,侮辱教唆罪が成立することはな い。 イ.弁護人が被告人の利益を擁護するためにした弁護活動であれば,それが名誉毀損罪の構成要 件に該当する行為であっても,違法性が阻却されるため,名誉毀損罪が成立することはない。 ウ.人の社会的評価を害するに足りる事実を公然と摘示したとしても,その人の社会的評価が現 実に害されていない場合,刑法第230条第1項にいう「人の名誉を毀損した」とはいえない ため,名誉毀損罪は成立しない。 エ.私人の私生活の行状であっても,その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼ す影響力の程度等によっては,刑法第230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」 に当たる場合がある。 オ.インターネットを利用して公然と虚偽の事実を摘示し,人の名誉を毀損した場合,他の表現 手段を利用する場合と異なり,インターネットの個人利用者に要求される水準を満たす調査に よって摘示した事実が真実か否かを確かめることなく発信したときに限り名誉毀損罪が成立す る。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ -3- オ 5.ウ エ 〔第5問〕(配点:2) 学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり議論して いる。 【会話】中の@からDまでの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.6]) 【事 例】 甲は,乙を殺せとの幻聴に従い,殺意をもって,乙の腹部を包丁で刺して死亡させた。甲の精 神鑑定を行った精神科医丙は,上記犯行当時,甲が重篤な統合失調症を患っており,これに基づ く幻覚妄想に支配された状態にあったと鑑定した。 【会 話】 学生A.甲の責任能力についてはどのように考えていくべきだろうか。いくら精神科医であって も,統合失調症等の重い精神障害が@(a.生物学的要素・b.心理学的要素)に与えた 影響など分からないのではないかな。 学生B.確かに,精神科医の中でも,A君の見解,つまり不可知論を採用する方もいるようだね。 でも,判例はそのように考えていないんだ。判例による心神喪失の定義が,精神の障害に より,事物の理非善悪を弁識する能力が欠如し,A(c.又は・d.かつ),この弁識に 従って行動する能力が欠如している場合とされていることからも分かるよね。 学生C.では,精神障害による影響の程度は,誰がどのようにして判断するのだろうか。特に, 専門家である医師が述べている意見については,どう考えるべきなのかな。丙医師の意見 に従えば,心神喪失になるのではないかと思うんだけど。 学生B.判例は,生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与え た影響の有無及び程度については,その診断がB(e.臨床精神医学の本分・f.非医学 的知見も加味した総合的判断)であることからすれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑 定等として証拠となっている場合には,C(g.これを採用し得ない合理的な事情が認め られるのでない限り,その意見を十分に尊重して・h.生物学的要素の判断に関する限り, その意見に従って)認定すべきであると判示しているね。もっとも,一方で判例は,被告 人の精神状態が心神喪失・心神耗弱に該当するかは,D(i.事実判断・j.法律判断) であって,裁判所の専権事項であり,その前提となる生物学的要素・心理学的要素につい ても,究極的には裁判所の判断に委ねられるべき問題であると判示しているね。 1.@a Ad Be Cg Di 2.@a Ad Bf Ch Dj 3.@b Ac Be Cg Dj 4.@b Ac Bf Cg Di 5.@b Ad Be Ch Di -4- 〔第6問〕(配点:3) 文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいも のを2個選びなさい。(解答欄は,[No.7],[No.8]順不同) 1.偽造公文書行使罪の客体は,行使の目的で作成されたものでなければならない。 2.公務員である医師が,自己の勤務する市立病院の患者が裁判所に提出するための診断書に虚 偽の病名を記載した場合,虚偽公文書作成罪が成立する。 3.行使の目的で,公務員の名義を冒用して公文書を作成したが,実際には当該公務員に当該文 書の作成権限がなかった場合,当該文書が当該公務員の職務権限内で作成されたものと一般人 が信じるに足る形式・外観を備えていれば,公文書偽造罪が成立する。 4.警察官から提示を求められたときに備え,偽造された自動車運転免許証を携帯して自動車を 運転した場合,偽造公文書行使罪が成立する。 5.上司である公文書の作成権限のある公務員を補佐して公文書の起案を担当する公務員が,そ の地位を利用し,行使の目的で,その職務上起案を担当する公文書に内容虚偽の記載をした上, 情を知らない上司に,当該文書の内容が真実であると誤信させ,これに署名押印させた場合, 虚偽公文書作成罪は成立しない。 -5- 〔第7問〕(配点:2) 刑法第65条について,学生A,B及びCが次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の @からJまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。なお,@からJまでの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。 (解答欄は,[No.9]) 【会 話】 学生A.私は,「違法の連帯性,責任の個別性」の原則を強調する立場から,(@)と考えます。 学生B.A君の見解には,(A)との批判がありますね。私は,刑法第65条第1項が「共犯と する」,同条第2項が「通常の刑を科する」とそれぞれ規定していることに着目し,(B) と考えます。 学生C.ただ,B君の見解には,(C)との批判がありますね。刑法第65条第1項が身分によ って構成すべき犯罪を問題とし,同条第2項が身分によって刑の軽重がある犯罪を問題と していることに着目し,(D)と考えるべきではないかな。 学生B.でも,C君の見解にも,(E)との批判がありますね。ところで,C君の見解だと,甲 が知人の乙を唆して乙の嬰児の生存に必要な食事をさせなかった事例では,甲の罪責はど うなりますか。 学生C.私は,刑法第217条(遺棄)と同法第218条(保護責任者遺棄等)の「遺棄」とは, 行為者と要扶助者との間の場所的離隔を生じさせることをいい,同法第217条では作為 による遺棄のみが処罰されていると考え,また,同法第218条の「必要な保護をしなか った」とは,場所的離隔を生じさせることなく要扶助者を不保護状態に置くことをいうと 考えます。そうすると,同条の罪のうち,作為による保護責任者遺棄罪は(F)犯,保護 責任者不保護罪は(G)犯になるため,乙とその嬰児との間に場所的離隔が生じていない 本件では,甲には(H)と考えます。 学生A.しかし,C君の見解では,甲が乙を唆して乙の嬰児を山に捨てさせた事例では,甲に (I)ため,不均衡な結論になるのではないかな。私は,保護責任者という身分は,必要 な保護をしなかったことの違法性を基礎付け,遺棄の違法性を加重するため,(J)と考 えます。したがって,私の見解からは,いずれの事例でも,甲には(H)と考えます。 【語句群】 a.刑法第65条第1項は真正身分犯の成立及び科刑についての規定であり,同条第2項は不真 正身分犯の成立及び科刑についての規定である b.刑法第65条第1項は身分が違法性に関係する場合についての規定であり,同条第2項は身 分が責任に関係する場合についての規定である c.刑法第65条第1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定であり, 同条第2項は不真正身分犯の科刑についての規定である d.犯罪の成立と科刑が分離されることになる e.真正身分犯が身分を連帯的に作用させ,不真正身分犯が身分を個別的に作用させることの実 質的根拠が明らかでない f.身分が違法性に関係する場合と責任に関係する場合を区別することは困難 g.責任身分 h.違法身分 i.真正身分 j.不真正身分 k.刑法第218条の罪の教唆犯が成立する l.刑法第217条の罪の教唆犯が成立する 1.@b Da Hk 2.Ad Ee Jh 4.Bc Cd Jg 5.Bc Ef Il -6- 3.Af Fi Gj 〔第8問〕(配点:2) 横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは どれか。( 解 答 欄 は ,[No.10]) 1.所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の均等分割払いで,自動車販売会社から 自動車を購入した者が,同車の引渡しを受け,3回分の支払を済ませた時点で,同車の売却代 金を自己の生活費として費消するため,同社に無断で,第三者に同車を売却し,これを引き渡 した場合,当該行為は,実質的には他人の所有権を侵害する行為ではないから,横領罪は成立 しない。 2.スーパーマーケットでレジ係のアルバイトをしていた者が,担当するレジ内の売上金を自己 の遊興費として費消するため,店長に無断で,同レジ内から売上金を取り出し,自己のバッグ に入れて店外に持ち出した場合,当該行為は,他人の占有ではなく,その所有権を侵害する行 為であるから,業務上横領罪が成立する。 3.所有者から動産を賃借している者が,同動産の売却代金を自己の生活費として費消するため, 所有者に無断で,第三者に同動産の売却を申し入れたが,同人から買受けの意思表示がない場 合,他人の所有権を侵害する状態には至っていないから,横領罪は成立しない。 4.所有者から委託を受けて不動産を占有する者が,所有者に無断で,金融機関を抵当権者とす る抵当権を同不動産に設定してその旨の登記を了した後において,同不動産の売却代金を自己 の用途に費消するため,更に所有者に無断で,第三者に同不動産を売却してその旨の登記を了 した場合,先行する抵当権設定行為について横領罪が成立する場合であっても,後行する所有 権移転行為について,横領罪が成立する。 5.窃盗犯人から盗品の売却を依頼された者が,その売却代金を自己の用途に費消するため着服 した場合,当該行為は,他人の所有権を侵害する行為であるものの,窃盗犯人との間の委託信 任関係は法律上保護に値しないから,横領罪は成立しない。 〔第9問〕(配点:2) 緊急避難に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの 組合せは,後記1から5までのうちどれか。( 解 答 欄 は ,[No.11]) ア.豪雨により稲苗が水に沈む危険が生じていたことから,排水のため他人の所有する下流の板 堰を損壊した場合,「現在の危難」があるとは認められないので,緊急避難は成立しない。 イ.警察官の適法な逮捕行為に対し,逮捕を免れるためには他に方法がなかったので,第三者を 突き飛ばして逃走し,よって同人に傷害を負わせた場合,緊急避難が成立し得る。 ウ.頭に拳銃を突き付けられて,覚醒剤の自己使用を強要され,これを拒むことができず,自己 に覚醒剤を注射して使用した場合,犯罪行為の強要の手段は「現在の危難」に当たらないので, 緊急避難は成立しない。 エ.吊橋が腐朽し,通行の際の揺れにより通行者の生命,身体等に危険が生じていたため,ダイ ナマイトを使用して同吊橋を爆破したが,通行制限の強化等適当な手段,方法を講ずる余地が あった場合,同爆破行為は,「やむを得ずにした行為」とは認められないので,緊急避難は成 立しない。 オ.甲が飼い犬A(時価30万円相当)を連れて山道を散歩中,乙が設置していた害獣駆除用の 罠(時価3万円相当)にAがかかり,その生命に危険が生じ,Aを保護するためには他に方法 がなかったので,その罠を損壊した場合,緊急避難が成立する(甲及び乙いずれにも過失がな かったものとする。)。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ -7- オ 5.エ オ 〔第10問〕(配点:2) 窃盗罪における不法領得の意思についての次の各【見解】に従って後記の各【事例】における甲 の罪責を検討した場合,後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。なお,後記 の各【事例】における甲の行為は,いずれも窃盗罪の客観的要件を全て満たすものとする。(解答 欄は,[No.12]) 【見 解】 A.不法領得の意思として,権利者を排除して所有者として振る舞う意思及び何らかの用途に従って 利用・処分する意思が必要である。 B.不法領得の意思として,権利者を排除して所有者として振る舞う意思は必要であるが,何らかの 用途に従って利用・処分する意思は不要である。 C.不法領得の意思として,何らかの用途に従って利用・処分する意思は必要であるが,権利者を排 除して所有者として振る舞う意思は不要である。 D.不法領得の意思は不要である。 【事 例】 T.甲は,勤務先の会社の上司乙を困らせる目的で,乙が机の引き出し内に保管していた同社の 銀行届出印をひそかに持ち出し,自宅の天井裏に隠匿した。 U.甲は,乙が不在であることを知り,一時的に借用して直ちに戻す意思で,乙方の玄関先に無 施錠で駐輪されていた乙の自転車を無断で乗り出し,100メートル先の店まで移動して用事 を済ませ,その乗り出しから5分後,同自転車を同玄関先に戻した。 V.甲は,X市議会議員選挙に際し,候補者乙の得票数を水増しする目的で,同市選挙管理委員 会が保管していた投票用紙50枚を投票所から持ち出し,乙の支持者らに交付して乙に対する 投票を依頼した。 【記 述】 1.A及びBいずれの見解によっても,事例Tでは窃盗罪が成立する。 2.A及びDいずれの見解によっても,事例Uでは窃盗罪が成立する。 3.B及びCいずれの見解によっても,事例Uでは窃盗罪が成立する。 4.B及びDいずれの見解によっても,事例Vでは窃盗罪が成立する。 5.C及びDいずれの見解によっても,事例Tでは窃盗罪が成立する。 -8- 〔第11問〕(配点:2) 因果関係に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているも のの個数を後記1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[No.13]) ア.甲は,他の共犯者5名と共に,約3時間にわたり,マンションの一室において,Vの頭部, 腹部等を木刀で多数回殴打していたところ,これにより極度の恐怖感を抱いたVが,同室から 逃走し,甲らによる追跡から逃れるために,同マンション付近にある高速道路に進入し,疾走 してきた自動車に衝突され,死亡した。この場合,甲らの上記殴打行為とVの死亡との間に, 因果関係はない。 イ.甲は,Vの頸部を包丁で刺突し,致命傷になり得る頸部刺創の傷害をVに負わせたところ, Vは,病院で緊急手術を受けたため一命をとりとめ,引き続き安静な状態で治療を継続すれば 数週間で退院することが可能となったが,安静にせず,病室内を歩き回ったことから治療の効 果が上がらず,同頸部刺創に基づく血液循環障害による肝機能障害により死亡した。この場合, 甲の上記刺突行為とVの死亡との間に,因果関係はない。 ウ.甲は,Vの顔面を1回足で蹴ったところ,特殊な病気により脆弱となっていたVの脳組織が 崩壊してVが死亡したが,当該病気の存在について,一般人は認識することができず,甲も認 識していなかった。この場合,甲の上記足蹴り行為とVの死亡との間に,因果関係はない。 エ.甲は,医師資格のない柔道整復師であるところ,自己に全幅の信頼を寄せるVから,風邪の 治療について相談を持ち掛けられた際に,Vに対し,食事や水分補給を控える一方,発汗を促 すという医学的に明らかに誤った治療法を繰り返して指示し,これに忠実に従ったVが症状を 悪化させ,脱水症状に陥り,死亡した。この場合,甲の上記指示行為とVの死亡との間に,因 果関係はない。 オ.甲は,自動車を運転中,路上で過失により通行人Vに同車を衝突させてVを同車の屋根に跳 ね上げ,意識を喪失したVに気付かないまま,同車の運転を続けていたところ,同乗者がVに 気付き,走行中の同車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転落させ,Vは,頭部打撲に基 づく脳くも膜下出血により死亡したが,これが同車との衝突の際に生じたものか,路上に転落 した際に生じたものかは不明であった。この場合,甲の上記衝突行為とVの死亡との間に,因 果関係はない。 1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個 〔第12問〕(配点:2) 汚職の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの 組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.14]) ア.公務員になろうとする者が,その担当すべき職務に関し,請託を受けて,賄賂の収受を約束 した後に公務員となったが,結局,賄賂を収受しなかった場合,事前収賄罪(刑法第197条 第2項)が成立する。 イ.公務員が,その職務に関し,請託を受けて,第三者に賄賂を供与させた場合,職務上不正な 行為をし,又は相当の行為をしなかったときに限り,第三者供賄罪(刑法第197条の2)が 成立する。 ウ.公務員が,その職務に関し,賄賂を収受したとき,当該職務が適切なものであっても単純収 賄罪(刑法第197条第1項前段)が成立する。 エ.公務員であった者が,その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたことに関し,退職 後に賄賂を収受した場合,事後収賄罪(刑法第197条の3第3項)は成立しない。 オ.犯人が収受した賄賂は,任意的没収の対象となる。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ -9- エ 5.エ オ 〔第13問〕(配点:4) 次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合 には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.15]から[No.1 9]) 【事 例】 暴力団A組の組員甲は,クラブで飲酒していた際,たまたま入店してきた旧知の暴力団B組の 組員乙に因縁を付けられて口論になり,乙に拳で殴りかかった。乙は,これを避けた上,更に殴 りかかろうとしてきた甲の胸部を拳で数回強打した。その数分後,B組の組員丙は,乙と待ち合 わせをしていた上記クラブに到着し,その直後に甲の態度に激高し,いきなり甲の胸部を拳で数 回強打した。甲は,全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負ったが,同傷害が乙と丙のいず れの暴行によって生じたのかは不明であった。甲は,一旦帰宅したものの怒りが収まらず,何か 嫌がらせをしてやろうと考え,金属バットを持ち,覆面で顔を隠してB組事務所に行き,その玄 関ドアを同バットでたたいて凹損させた。その直後,甲は,A組事務所に行き,A組の組員丁に 対し,B組組員から殴られた腹いせにB組事務所の玄関ドアを凹損させたことを話した。丁は, B組との関係悪化を避けるとともに,甲の刑事責任を免れさせるため,甲との間で,犯行時間帯 に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした。また,丁は,B組組員複数名による 襲撃を受ける可能性もあると考え,万が一に備えて,着衣のポケットに護身用として果物ナイフ を入れた。他方,乙及び丙は,上記ドアが凹損させられたとの連絡を受け,甲の仕業だろうと考 え,A組事務所へ向かった。乙は,応対に出た丁に対し,「甲を出せ。」と言った。丁は,「何の 話だ。」と応じたが,乙は,その態度に憤激し,「しらばっくれるな。」と言い,持っていた拳銃 を取り出して丁に突き付けた。丁は,自己の身を守るため,上記ナイフで乙の腹部を1回突き刺 し,乙に全治約1か月間を要する腹部刺創の傷害を負わせた。丁は,駆けつけた警察官に逮捕さ れ,その後,逃走していた甲も上記ドアを凹損させた事実で逮捕された。丁は,甲の身柄拘束中, 甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,上記口裏合わせに従い,上記ドアが凹損させ られた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした。 【記 述】 ア.乙が甲の胸部を拳で強打した行為については,甲からの侵害が,乙が甲に因縁を付けたことによ り招かれたものである以上,正当防衛又は過剰防衛が成立することはない。 [No.15] イ.乙は,甲の肋骨骨折について,丙の行為のみにより生じた可能性がある以上,丙との間で共謀が 成立していない限り,傷害罪の刑事責任を負わない。 [No.16] ウ.甲がB組事務所の玄関ドアを凹損させた行為については,同ドアが工具を使用すれば容易に取り 外せる構造であった場合,建造物損壊罪は成立しない。 [No.17] エ.丁が果物ナイフで乙の腹部を突き刺した行為については,B組組員から襲撃を受けることを予期 し,凶器ともいえるナイフを準備している以上,その予期の程度にかかわらず,侵害の急迫性を欠 くものといえ,正当防衛又は過剰防衛は成立しない。 [No.18] オ.丁が,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,B組事務所の玄関ドアが凹損させられ た時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした行為については,犯人隠避罪が成立する。 [No.19] - 10 - [刑事訴訟法] 〔第14問〕(配点:3) 警察官職務執行法上の職務質問に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例に照らして正し いものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。(解答欄は,[20]) ア.警察官が,駐在所で職務質問中に突然逃げ出した相手方の後を,約130メートル追いかけ, 背後からその腕に手をかけることは,職務質問を行うため相手方を停止させる行為として許さ れる場合がある。 イ.警察官が,相手方の運転車両の窓から手を差し入れ,エンジンキーを回転してスイッチを切 ることは,職務質問を行うため相手方を停止させる行為として許される場合がある。 ウ.警察官が,相手方の運転車両の窓から手を差し入れ,エンジンキーを引き抜いて取り上げる ことは,職務質問を行うため相手方を停止させる行為として許される場合がある。 エ.警察官が,ホテル客室(ホテル内の通路に面して外ドアがあり,これを開けると内玄関に入 ることができ,そこにある内ドアを開けると客室に入る構造)の無施錠の外ドアを開けて内玄 関に立ち入り,内ドア越しに客室内に向かって声をかけたところ,相手方が,内ドアを開けた が,警察官の姿を見て慌ててそれを閉めたのに対して,警察官が,内ドアを押し開け,内玄関 と客室の境の敷居上辺りに足を踏み入れ,内ドアが閉められるのを防止することは,職務質問 に付随する行為として許される場合がある。 オ.警察官が,相手方の承諾を得ることなく,携行中の所持品であるバッグの施錠されていない チャックを開披し内部を一べつすることは,職務質問に付随する行為として許される場合があ る。 1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個 〔第15問〕(配点:2) 逮捕・勾留に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5ま でのうちどれか。(解答欄は,[21]) ア.逮捕状を所持しないため被疑者にこれを示すことができない場合において,急速を要すると きは,被疑者に対し被疑事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて被疑者を逮捕するこ とができ,以後も被疑者に逮捕状を示す必要はない。 イ.司法警察員は,逮捕状により被疑者を逮捕した場合には,留置の必要がないと思料するとき でも,これを釈放することなく,被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類及び証 拠物とともにこれを検察官に送致しなければならない。 ウ.窃盗の事実で逮捕した後に釈放した被疑者を同一の窃盗の事実で再び逮捕することが許され る場合もある。 エ.検察官は,恐喝及び傷害の事実で逮捕した被疑者につき,その逮捕中に,同一の事実が強盗 致傷罪に当たると疑うに足りる相当な理由が生じた場合には,強盗致傷罪で勾留を請求するこ とができる。 オ.検察官は,逮捕した被疑者につき,逮捕中に公訴を提起することはできず,勾留を請求する か,又は釈放しなければならない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 11 - エ 5.エ オ 〔第16問〕(配点:2) 次のT及びUの【見解】は,刑事訴訟法第220条第1項第2号及び同条第3項において,逮捕 の現場における令状によらない捜索差押えが認められている根拠に関する考え方を述べたものであ る。これらの【見解】に関する学生AないしEの【発言】のうち,誤った発言をしている学生の組 合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[22]) 【見解】 T.逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が一般的に高いので,合理的な証拠収集手段として認 められる。 U.逮捕者の身体の安全を図る必要があり,また,被逮捕者による証拠の隠滅を防ぐ必要がある ために認められる。 【発言】 学生A:見解Tに立つと,被逮捕者が逮捕の現場から逃走した場合であっても,引き続きその現 場の捜索が可能であると考えることができるね。 学生B:見解Tに立っても,見解Uに立っても,差押えの対象は,逮捕の理由とされた被疑事実 に関する証拠物に限られないことになるので,別途捜査中の他の事件に関する証拠物を偶 然発見した場合,これを差し押さえることができるね。 学生C:見解Uに立つと,差押えの対象は,被逮捕者の身体及びその直接の支配下にある範囲の 証拠物に限られると考えることができるね。 学生D:見解Uに立つと,見解Tと異なり,逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が一般的に高 いという前提は否定せざるを得ないね。 学生E:見解Uに立つと,同条第1項柱書の「逮捕する場合」の解釈については,現実に被疑者 を逮捕することができる状況の存在が必要であると考えることができるし,見解Tに立っ て同様に考えることもできるね。 1.A C 2.A E 3.B C 4.B - 12 - D 5.D E 〔第17問〕(配点:2) 次のT及びUの【見解】は,逮捕・勾留中の被疑者に,被疑事実に係る取調べのために出頭し, 滞留する義務が認められるか否かという解釈問題に関するものである。後記【発言】は,学生Aな いしEが,T又はUのいずれかの【見解】を採って意見を述べたものである。【見解】と【発言】 を対応させた場合,その組合せとして最も適切なものは,後記1から6までのうちどれか。(解答 欄は,[23]) 【見解】 T.前記義務が認められる。 U.前記義務は認められない。 【発言】 学生A:私と異なる見解のように考えると,供述の義務はないといっても,実質的には供述を強 いるのと異ならないので,黙秘権を侵すことになってしまうのではないでしょうか。 学生B:私のように考えたとしても,直ちに被疑者からその意思に反して供述することを拒否す る自由を奪うことを意味するものでないことは明らかだと考えます。 学生C:私が採る見解は,現行法が第一次的に当事者主義を採っており,被疑者も捜査機関と相 対立する一方当事者であると考えられることと,より整合的だと考えます。 学生D:逮捕・勾留は,将来の公判への出頭を確保するためのものであると考えると,私が採る 見解とより整合性があると思います。 学生E:私は,刑事訴訟法第198条第1項但書の「但し,被疑者は,逮捕又は勾留されている 場合を除いては,出頭を拒み,又は出頭後,何時でも退去することができる。」という規 定を反対解釈するのが相当だと思います。 1.T.学生A 学生C 学生D U.学生B 学生E 2.T.学生A 学生C 学生E U.学生B 学生D 3.T.学生A 学生D U.学生B 学生C 4.T.学生B 学生D U.学生A 学生C 5.T.学生B 学生C U.学生A 学生D 学生E 6.T.学生B 学生E U.学生A 学生C 学生D 学生E - 13 - 学生E 〔第18問〕(配点:2) 接見に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5まで のうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(解答欄は,[ 24]) ア. 鑑定留置されている被疑者は,弁護人又は弁護人となろうとする者と立会人なくして接見す ることができる。 イ.弁護人又は弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見については,被疑者 の防御の準備のため特に重要であるから,捜査機関による接見の日時,場所及び時間の指定が 許されることはない。 ウ.勾留されている被告人が同時に余罪の被疑者として勾留されている場合,検察官は,その余 罪である被疑事件の捜査のため必要があるときは,被告事件について防御権の不当な制限にわ たらない限り,被告事件の弁護人と被告人との接見に関し,その日時,場所及び時間を指定す ることができる。 エ.弁護人は,検察官のした接見指定について,裁判所にその処分の取消し又は変更を請求する ことはできない。 オ.裁判所は,勾留されている被告人と弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見を 禁じ,又は糧食を除く書類その他の物の授受を禁じ,若しくはこれを差し押えることができる。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ 〔第19問〕(配点:3) 司法警察員から検察官への事件送致及び検察官の訴追裁量権に関する次のアからオまでの各記述 のうち,正しいものに1を,誤っているものには2を選びなさい。 (解答欄は, [25]から[29]) ア.司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,例外なく,速やかに書類及び証拠物とともに事件 を検察官に送致しなければならない。[25] イ.刑事訴訟法では起訴独占主義が採られているため,起訴・不起訴について検察官の判断を一 切経ることなく,事件が公訴提起されることはない。[26] ウ.刑法第177条(強制性交等)の罪及びその未遂罪について告訴又は告発をした者は,当該 事件につき検察官のした公訴を提起しない処分に不服があるときは,刑事訴訟法に基づき,そ の検察官を指揮監督する検事正に当該処分の見直しを請求することができる。[27] エ.検察審査会が,検察官の公訴を提起しない処分の当否に関し,起訴を相当とする議決をした ときは,検察官は,当該議決に従って公訴を提起しなければならない。[28] オ.告訴又は告発をした者は,当該事件につき検察官のした公訴を提起しない処分に不服がある ときは,付審判請求をすることができるが,その対象事件には限定がない。[29] - 14 - 〔第20問〕(配点:2) 次のアからオまでの各事項のうち,その可否が,刑事訴訟法の規定上,法定刑の軽重により異な らないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[30]) ア.緊急逮捕 イ.必要的保釈(権利保釈) ウ.勾留の執行停止 エ.検察官による第1回公判期日前の証人尋問請求 オ.即決裁判手続の申立て 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第21問〕(配点:2) 公判前整理手続に付された刑事事件の第一審公判において行われる次のアからオまでの各手続を 先に行われるものから時系列に沿って並べた場合,正しいものは,後記1から6までのうちどれか。 (解答欄は,[31]) ア.黙秘権等の告知並びに被告人及び弁護人の陳述の機会 イ.弁護人の冒頭陳述 ウ.公判前整理手続の結果の顕出 エ.起訴状朗読 オ.検察官の冒頭陳述 1.ウアエオイ 2.ウエアオイ 5.エアオイウ 6.エオアイウ 3.ウオイエア - 15 - 4.エアウオイ 〔第22問〕(配点:3) 後記アからオまでの【記述】のうち,次に掲げる【判例】(住居侵入,窃盗,現住建造物等放火 被告事件に係る最高裁判所平成24年9月7日第二小法廷判決・刑集66巻9号907頁)に整合 しないものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。(解答欄は,[32]) 【判例】 「前科も一つの事実であり,前科証拠(被告人の前科の存在を示す証拠)は,一般的には犯罪事 実について,様々な面で証拠としての価値(自然的関連性)を有している。反面,前科,特に同種 前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,その ために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論 の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど,その 取調べに付随して争点が拡散するおそれもある。したがって,前科証拠は,単に証拠としての価値 があるかどうか,言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せら れるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評 価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許され ると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合につ いていうならば,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相 当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなも のであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。」 【記述】 ア.前科証拠を用いて,被告人と起訴に係る事件の犯人の同一性を証明しようとする場合,当該 前科証拠と証明すべき事実との間に自然的関連性があるかどうかのみによって,その証拠能力 の有無が決せられるわけではない。 イ.前科証拠を用いて,被告人に起訴に係る犯罪事実と同種の前科があるという事実から,起訴 に係る事件の犯人が被告人であることを推認しようとする場合は,実証的根拠の乏しい人格評 価につながりやすい。 ウ.前科証拠を用いて,起訴に係る事件の犯人が被告人であることを推認しようとする場合に伴 う弊害には,訴訟の円滑な進行に支障をもたらすおそれがあることが含まれる。 エ.前科証拠を用いて,被告人と起訴に係る事件の犯人の同一性を証明しようとする場合におい て,当該前科に係る犯罪事実の有する特徴が顕著なものではないため,その特徴が起訴に係る 犯罪事実と相当程度類似していても,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認 させるとはいえないときは,これを証拠として採用することはできない。 オ.事実認定者が前科証拠に触れることに伴う弊害を軽視することは相当ではないから,裁判員 の参加する合議体が審理する事件においては,前科証拠を証拠として採用することはできない。 1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 - 16 - 5.4個 6.5個 〔第23問〕(配点:3) 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記 1から5までのうちどれか。(解答欄は,[33]) 【事例】 甲は,「令和2年12月5日午前1時頃,H市内のI公園内で,ゴルフクラブでVを殴打して殺 した。」との殺人の事実により,H地方裁判所に起訴された。公判において,犯行の目撃者A,甲 の妻B,甲の知人Cの証人尋問が,それぞれ実施された。 【記述】 ア.Aの,「話をしていた2人のうち1人が『甲,お前に貸した金を早く返せ。』と言うと,言い 争いになり,その後,言われた方がもう一方に棒のようなものを振り下ろした。」旨の証言は, 要証事実を「甲がVに借金をしていたこと」とした場合,伝聞証拠に当たらない。 イ.Aの,「話をしていた2人のうち1人が『甲,お前に貸した金を早く返せ。』と言うと,言い 争いになり,その後,言われた方がもう一方に棒のようなものを振り下ろした。」旨の証言は, 要証事実を「犯人がVから甲と呼ばれていたこと」とした場合,伝聞証拠に当たる。 ウ.Bの,「令和2年12月1日午後1時頃,自宅において,甲から『探していたゴルフクラブ を家の物置で見つけた。』と言われた。」旨の証言は,要証事実を「甲が犯行時点よりも前から ゴルフクラブを所持していたこと」とした場合,伝聞証拠に当たる。 エ.Bの,「令和2年12月8日午後3時頃,自宅において,甲から『3日前の午前1時頃,H 市内のI公園で,Vをゴルフクラブで殴り殺した。』と言われた。」旨の証言は,要証事実を「V を殺したのが甲であったこと」とした場合,伝聞証拠に当たる。 オ.Cの,「令和2年12月7日午後5時頃,甲から電話があり,『2日前の午前1時頃には,俺 は自宅でテレビ番組を見ていた。』と言われた。」旨の証言は,要証事実を「Vが殺されたとき 甲が自宅にいたこと」とした場合,伝聞証拠に当たらない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第24問〕(配点:2) 証人尋問に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5 までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(解答欄は, [34]) ア.刑事訴訟規則は,書面又は物に関しその成立,同一性その他これに準ずる事項についてその 書面又は物を示してする尋問は,裁判長の許可が必要であると定めている。 イ.証人の供述を明確にするため,図面,写真,模型,装置等を利用して尋問する際,それらの 図面等が証拠調べを終わったものでないときは,あらかじめ,相手方に閲覧する機会を与えな ければならないが,相手方に異議がないときは,この限りでない。 ウ.刑事訴訟規則は,証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があ るときに示すことができる書面について,供述を録取した書面を条文上除外している。 エ.証拠として採用されていない書面であっても,その書面を証人に示した尋問が行われて証人 尋問調書に添付された場合にはその書面が証人尋問調書と一体になるから,その書面を証拠と して取り調べなくても,証言で引用されていない部分を含むその書面の全部を事実認定の用に 供することができる。 オ.証拠として採用されていない鑑定書であっても,鑑定書の作成者の証人尋問において,作成 の真正を立証するために,その作成者欄の署名押印部分を証人に示して証人の署名押印である かを確認する尋問は許される。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ - 17 - オ 5.ウ エ 〔第25問〕(配点:2) 異議申立てに関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5ま でのうちどれか。(解答欄は,[35]) ア.検察官,被告人又は弁護人は,裁判所による証拠調べ請求を却下した決定に対し,相当でな いことを理由として適法に異議を申し立てることができる。 イ.合議体の裁判長は,証人尋問において,検察官の尋問に対する弁護人の異議申立てに対して 判断をするに当たり,陪席裁判官との合議を経る必要がある。 ウ.証人尋問における異議の申立てについては,個々の行為,処分又は決定ごとに,直ちにしな ければならないが,その理由を示す必要はない。 エ.検察官,被告人又は弁護人は,裁判長の訴訟指揮に基づく処分に対し,相当でないことを理 由として適法に異議を申し立てることができる。 オ.弁護人が行った証拠調べに関する異議の申立てについて,裁判所が決定で棄却したのに対し, 弁護人は,その判断に不服があるときでも,その決定で判断された事項については,重ねて異 議を申し立てることはできない。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ 〔第26問〕(配点:2) 刑事事件の上告審に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1か ら5までのうちどれか。(解答欄は,[36]) ア.憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあることは適法な上告理由となる。 イ.単なる事実誤認は適法な上告理由に当たらないが,判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤 認があることは適法な上告理由となる。 ウ.単なる量刑不当は適法な上告理由に当たらないが,刑の量定が甚しく不当で,原判決を破棄 しなければ著しく正義に反すると認められることは適法な上告理由となる。 エ.大審院の判例と相反する判断をしたことが適法な上告理由となることはない。 オ.上告審は法律審であるが,上告裁判所である最高裁判所は,上告趣意書に包含された事項を 調査するについて必要があるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で 事実の取調べをすることができる。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 18 - エ 5.エ オ