短答式試験問題集 [刑法・刑事訴訟法] - 1 - [刑法] 〔第1問〕(配点:2) 暴行罪及び傷害罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、誤っ ているものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。(解答欄は、[bP]) ア.相手方の眼前に抜き身の日本刀を突き付けたとしても、その刃が同人に接触しない限り、暴 行罪が成立することはない。 イ.相手方の意思に反して、その耳元で楽器を大音量で鳴らし続けた場合には、人の身体に対し て不法な攻撃を加えたものとして暴行罪が成立し得る。 ウ.ひそかに相手方に睡眠薬を摂取させ、2時間にわたり意識を失わせるとともに筋弛緩作用を 伴う急性薬物中毒の症状を生じさせたとしても、覚醒後の健康状態に支障がない場合には、傷 害罪が成立することはない。 エ.性病を有する者が、性行為を行えば相手方に感染させる危険性があると認識しながら、情を 秘して同人と性行為を行い、同人に性病を感染させたとしても、同人が性行為に同意している 場合には、傷害罪が成立することはない。 オ.相手方に暴行を加えて負傷させた者が、傷害結果が発生することについて認識を欠いている 場合には、傷害罪が成立することはない。 1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個 〔第2問〕(配点:3) 次の【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち、誤っているものを2個選びなさい。 (解答欄は、[bQ]、[bR]順不同) 【判 旨】 共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体 となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よ って犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがって、このような関係において共 謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自 己の手段として犯罪を行ったという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき 理由はない。さればこの関係において実行行為に直接関与したかどうか、その分担又は役割のい かんは、共犯の刑責自体の成立を左右するものではないと解する。 【記 述】 1.【判旨】を前提にすると、殺意を有する者と傷害の故意にとどまる者との間で共謀共同正犯 が成立する余地はない。 2.【判旨】は、共同正犯の成立には、実行行為の一部を分担することは必要ないとの立場に立 っている。 3.【判旨】は、共謀共同正犯の成立には、単に関与者の内心における意思の合致があるだけで は十分でなく、客観的な謀議行為が必要であるとする考えと矛盾しない。 4.【判旨】に対しては、共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判がある。 5.【判旨】を前提にすると、共謀共同正犯の成立には、実行行為を行わない者が実行行為者に 対して指揮命令をすることが必要である。 - 2 - 〔第3問〕(配点:2) 学生A及びBは、次の【事例】における甲の罪責について、後記【会話】のとおり議論している。 【会話】中の@からDまでの( )内から適切な語句を選んだ場合、正しいものの組合せは、後記 1から5までのうちどれか。(解答欄は、[bS]) 【事 例】 甲は、X県から代金1億円で請け負った土木工事を完成させ、同工事で生じた汚泥5トンを搬 出して適法に処理した。上記工事に関する請負契約では、甲が工事で生じた汚泥を全て搬出する ことが義務付けられていたが、請負代金はその搬出量にかかわらず定額とされ、汚泥の処理方法 についての定めもなかった。もっとも、上記契約締結の際、X県が汚泥搬出量は50トンを下ら ないと予測していたため、甲は、実際の搬出量を報告すれば、X県が行う工事完成検査の際に不 法投棄を疑われ、その調査のために請負代金の支払が延期されると懸念し、X県に対し、汚泥5 0トンを搬出して適法に処理したと虚偽の報告をし、X県職員をその旨誤信させ、請負代金1億 円の支払を受けた。なお、甲が虚偽の報告をしなければ、X県が不法投棄について調査を行い、 請負代金の支払時期が遅れたことは確実であった。 【会 話】 学生A.詐欺罪の成否を問題とした場合、財産上の損害をどう考えますか。 学生B.詐欺罪における財産上の損害の有無は、@(a.財物の占有・支配の喪失それ自体によ って・b.被害者の取引目的達成の有無も考慮して)判断すべきです。本事例では、請負 契約の目的である工事が完成し、かつ、その請負代金は定額なので、X県に財産上の損害 はないと考えます。 学生A.Bさんのように、財産上の損害を実質的に把握するとしても、本事例では、A(c.X 県の代金支払時期を早めた・d.X県の代金減額請求権を侵害した)という点で、財産上 の損害を認め得ると思います。 学生B.Aさんの見解では、B(e.一日でも支払時期を早めれば詐欺罪が成立する・f.未成 年であることを秘して成人向け雑誌を購入した者にまで詐欺罪が成立する)ことになりか ねず、妥当でないと考えます。 学生A.いや、私は、判例と同様に、C(g.全体財産の減少が認められる・h.社会通念上別 個の支払に当たるといい得る程度の期間、支払時期を早めた)場合に限って財産上の損害 を認めますので、その批判は当たりません。ところで、Bさんは、本事例において、詐欺 未遂罪の成立も否定しますか。 学生B.甲の虚偽報告の有無にかかわらずX県は代金を支払わざるを得ませんので、そもそも、 D(i.欺罔行為がない・j.財物の交付行為がない)と考えます。したがって、詐欺未 遂罪も成立しません。 1.@a Be Di 2.@b Ac Cg 3.@b Ch Di 4.Ac Bf Cg 5.Ad Be Dj - 3 - 〔第4問〕(配点:2) 強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、誤っているも のはどれか。(解答欄は、[bT]) 1.甲は、違法な麻薬の購入資金としてAから預かった金銭の返還を免れるために、殺意をもっ て、Aを殺害し、その返還を免れた。この場合、甲に強盗殺人罪が成立する。 2.甲は、強盗目的でA宅に侵入し、殺意をもって、Aを殺害して金品を奪うとともに、Aの傍 らで熟睡していた幼児Bも、殺意をもって、殺害した。この場合、Aの殺害についてのみ、甲 に強盗殺人罪が成立する。 3.甲は、タクシーに乗車して目的地に到着した後、運賃を請求された際、運賃の支払を免れる ために、タクシー運転手Aにナイフを突き付けた上、「殺すぞ。」と言って脅し、Aが恐怖で 動けないうちに逃走し、その支払を免れた。この場合、甲に強盗罪が成立する。 4.甲は、財物奪取目的でAに包丁を突き付けて「金を出さなければ殺す。」と言って脅したと ころ、Aに包丁をつかまれたため、Aが負傷することを分かりながら包丁を引き、Aは両手を 負傷した。この場合、甲に強盗傷人罪が成立する。 5.甲は、財物奪取目的でAを脅迫してその反抗を抑圧し、その際、Aが気付かないうちに、A が持つかばんから財布を抜き取った。この場合、甲に強盗罪が成立する。 〔第5問〕(配点:2) 緊急避難に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものの 組合せは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[bU]) ア.緊急避難は、自己又は他人の生命、身体、自由又は財産という個人的法益に対する現在の危 難を避けるためにした行為に成立するものであるから、国家的法益に対する危難を避けるため にした行為に緊急避難が成立することはない。 イ.避難行為により避けようとした害の程度が生じた害の程度を上回る場合だけでなく、両者が 同程度の場合にも、緊急避難は成立し得る。 ウ.緊急避難における現在の危難は、危難が現に存在している場合のみならず、間近に押し迫っ ている場合も含む。 エ.過剰避難が成立する場合、情状によって、その刑を減軽することはできるが免除することは できない。 オ.緊急避難におけるやむを得ずにした行為とは、正当防衛におけるのと同様に、手段として必 要最小限度のものであること、すなわち相当性を有するものであれば足りる。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ - 4 - エ 5.ウ オ 〔第6問〕(配点:3) 放火の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものを 2個選びなさい。(解答欄は、[bV]、[bW]順不同) 1.人が居住する木造建物Aと人が居住していない木造建物Bは、木造の渡り廊下で接合され、 渡り廊下を通じて人の行き来のある構造となっていた。甲は、これらの事実を認識した上で、 その当時誰もいなかった建物Bに放火して建物Bを焼損した。この場合、建物Aに延焼しなけ れば、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 2.甲は、Vがその家族と共に居住する木造家屋に放火してこれを焼損した。この場合、Vとそ の家族が1泊2日の旅行中で不在であり、甲がそのことを認識して放火したのであれば、甲に 現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 3.甲は、妻と二人で居住する木造家屋を燃やそうと考え、壁に掛けられたカレンダーに火をつ けた。この場合、上記カレンダーが焼損した時点で、これに気付いた妻に火を消し止められ、 他に燃え移らなかったのであれば、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 4.甲は、火災保険金を詐取する目的で、自己が単独で居住し、かつ、誰も現在しない木造家屋 に放火してこれを焼損した。この場合、刑法第108条の「現に人が住居に使用し又は現に人 がいる」の「人」に犯人は含まれないから、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはな い。 5.甲は、Vが居住する木造家屋の押し入れの床にガソリンをまいて火をつけたところ、同押し 入れの床板が独立して燃焼するに至ったが、他に燃え移る前に消し止められた。この場合、上 記家屋の効用を失うに至っていなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 - 5 - 〔第7問〕(配点:2) 共犯の要素従属性に関して、学生A及びBが次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の @からEまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、正しいものの組合せは、 後記1から5までのうちどれか。なお、@からEまでの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。 (解答欄は、[bX]) 【会 話】 学生A.(@)ことからも、共犯を処罰するためには、正犯が(A)を備える必要があると考え ます。 学生B.Aさんの見解によれば、甲が乙に指示して構成要件に該当する行為を実行させたが、 (B)において、甲に責任を問うことができなくなり、不当ではありませんか。 学生A.その場合、甲に(C)を幅広く認めることで妥当な結論を得られます。 学生B.でも、乙が刑事未成年者ながら是非弁別能力があり、その意思が抑圧されていない場合 にまで(C)を認めることは無理がありますね。他方で、適法な行為を援助する行為を処 罰の対象とするのは妥当ではありません。私は、(D)べきと考えるので、共犯を処罰す るためには、正犯が(E)を備えることが必要であり、それで足りることになります。 【語句群】 a.違法は連帯的に作用するが、責任は個別的に作用する b.教唆犯については刑法第61条が「犯罪」という文言を使っている c.違法性阻却事由については、行為者ごとの違法の相対性も認められる d.構成要件該当性 e.構成要件該当性及び違法性 f.構成要件該当性、違法性及び有責性 g.乙の行為に違法性阻却事由が認められる事案 h.乙の行為に責任阻却事由が認められる事案 i.間接正犯 j.幇助犯 1.@a Bg Dc 2.@b Bh Dc 3.@c Ci Da 4.Ad Cj Ef 5.Af Ci Ee - 6 - 〔第8問〕(配点:2) 賭博の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものは どれか。(解答欄は、[10]) 1.賭博罪が成立するためには、賭博行為が開始されるだけでなく、勝敗が決し、金品の授受が なされなければならない。 2.あるスポーツの勝敗に関し、あらかじめ勝敗の結果を知った上、その結果を知らない者との 間で金銭を賭けて利益を得た場合、当事者全員に賭博罪が成立する。 3.一般多数人をして、スポーツの勝敗に関し、賭博をさせて利益を得るため、賭博の主催者が、 参加者を特定の場所に集めることなく、事務所の固定電話を利用して参加者と連絡を取り合っ て賭博をさせた場合であっても、賭博場開張図利罪が成立する。 4.それまで賭博行為をしたことがなかった甲が、長期間営業を継続する意思で多額の資金を投 下して多数の賭博遊技機を設置した遊技場の営業を開始し、来場した多数の遊技者と賭博行為 をしたとしても、数日間営業を行ったにすぎない場合には、甲に常習賭博罪が成立することは ない。 5.賭博常習者の賭博行為を常習性のない者が幇助した場合、常習性のない者には常習賭博罪の 幇助犯が成立する。 (参照条文)刑法 と 第185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供 か する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。 第186条 2 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。 - 7 - 〔第9問〕(配点:2) 学生A及びBは、次の【事例】における甲の罪責について、後記【会話】のとおり議論している。 【会話】中の@からDまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、正しいもの の組合せは、後記1から5までのうちどれか。なお、@からDまでの( )内にはそれぞれ異なる 語句が入る。(解答欄は、[11]) 【事 例】 甲は、殺意をもって、Xの腕の静脈内に蒸留水と空気を注射したが、当該空気量が疾病のない 健常人に対する致死量未満であったためXは死ななかった。また、甲は、当該空気量が上記致死 量未満とは知らなかった。なお、当該空気量であっても被注射者の身体的条件等によっては死亡 する危険はあった。 【会 話】 学生A.未遂犯と不能犯の区別に関してはいろいろな考え方がありますが、行為の時点において 一般人が認識し得た事情と行為者が特に知っていた事情を基礎とし、一般人が結果発生の 危険を感じる場合には可罰的未遂を肯定する考え方に立ち、本事例では一般人が結果発生 の危険を感じるとすれば、甲に殺人未遂罪が(@)ことになりますね。 学生B.この考え方に対しては、(A)ことになるという批判がありますね。では、結果発生の 危険性を事後的客観的に判断する考え方に立った場合、甲の罪責をどう考えますか。 学生A.(B)という考え方によれば、身体的条件等によっては死亡の危険があったので、甲に 殺人未遂罪が成立します。一方で、結果発生の危険性を事後的客観的に判断する考え方を 徹底すれば、(C)ことになりませんか。 学生B.そうとは限りませんよ。結果が発生しなかった原因究明と同時に、いかなる事情があれ ば結果発生があり得たかを明らかにし、(D)可能性を判断すれば妥当な結論を導けます。 【語句群】 a.成立する b.成立しない c.迷信犯に未遂犯を認める d.印象で未遂犯処罰を決める e.行為者の認識内容が客観的真実に合致するか否かによって区別する f.結果発生の絶対的不能・相対的不能によって区別する g.行為者の誤信が相当と認められる h.結果発生をもたらす仮定的事実が存在し得た i.結果不発生の原因を解明できた場合、すべて不能犯となる 1.@a Ac Be Cg Dh 2.@a Ad Bf Ci Dh 3.@a Ae Bf Cc Dg 4.@b Ad Be Ci Dg 5.@b Ai Bf Cc Dg - 8 - 〔第10問〕(配点:2) 次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合、甲に窃 盗罪が成立しないものはどれか。(解答欄は、[12]) 1.甲は、V宅内において、Vが所在を見失っていたV所有の指輪を発見し、これを自己のもの にしようと考えて無断で持ち去った。 2.甲は、Vが海中に取り落としたV所有の金塊について、Vからおおよその落下場所を教えて もらった上で回収を依頼され、Vの眼前で同所に潜り、同金塊を同所付近で発見したものの、 これを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。 3.甲は、看守者のいない仏堂に所有者Vが据え置いてまつっていた仏像を、自己のものにしよ うと考えて無断で持ち去った。 4.甲は、Xが乙から窃取した乙所有の腕時計を、これが盗品であることを知りながら自己のも のにしようと考えて、X宅に忍び込んで無断で持ち去った。 5.甲は、満員電車内において、乗客Vが網棚にかばんを置き忘れたままA駅で下車したのを目 撃し、B駅で下車する際、同かばんを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。 〔第11問〕(配点:2) 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものの組合せは、後記1 から5までのうちどれか。(解答欄は、[13]) ア.甲は、Aが居住するA所有の家屋に放火し、同家屋を全焼させた上、同家屋に隣接するBが 居住するB所有の家屋にも火を燃え移らせて同家屋を全焼させた。この場合、甲には2個の現 住建造物等放火罪が成立し、これらは観念的競合となる。 イ.甲は、行使の目的で1万円札を偽造し、Aが経営する商店において、事情を知らないAに対 し、1万円の商品の購入を申し込み、その代金として偽造の1万円札をAに手渡して同商品の 交付を受けた。この場合、甲には通貨偽造罪、偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは 牽連犯となる。 ウ.暴力団員甲及び乙は、対立する暴力団員A及びBを襲撃して殺害することを共謀し、路上を 連れ立って歩いていたA及びBを待ち構えた上で、甲がAを、乙がBを、それぞれ殺害した。 この場合、甲及び乙を共同正犯とする2個の殺人罪が成立し、これらは併合罪となる。 エ.甲は、酒に酔った状態で、自動車を無免許で運転した。この場合、甲には酒酔い運転の罪と 無免許運転の罪が成立し、これらは観念的競合となる。 オ.甲は、恐喝目的でAを監禁し、監禁のための暴行等により畏怖しているAを更に脅迫して現 金を喝取した。この場合、監禁罪と恐喝罪が成立し、これらは牽連犯となる。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ - 9 - エ 5.エ オ 〔第12問〕(配点:2) 偽証罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものはど れか。(解答欄は、[14]) 1.自己が被告人となっている窃盗被告事件につき、知人を教唆して偽証行為を行わせた場合、 他人の行為を利用して自ら虚偽を述べたに等しく、被告人が自己の刑事事件につき虚偽を述べ ても罪にならないから、偽証罪の教唆犯は成立しない。 2.証人が殊更記憶に反する陳述をした場合、その他の証拠からその陳述内容が真実と認められ るのであれば、国の審判作用は害されないから、偽証罪は成立しない。 3.共犯者が被告人となっている詐欺被告事件に証人として出廷し、証言拒絶権を行使せずに宣 誓して自己の犯罪事実に関して虚偽の陳述をした場合、同証人には自己負罪拒否特権があるか ら、偽証罪は成立しない。 4.証人がした虚偽の陳述が裁判の結果に影響しなかった場合、国の審判作用に対する具体的な 危険が発生しなかったといえるから、偽証罪は成立しない。 5.「宣誓の趣旨を理解することができない者」(刑事訴訟法第155条第1項)に誤って証人 として宣誓させた上、その者が虚偽の陳述をした場合、偽証罪の「宣誓」は適法になされなけ ればならないから、同罪は成立しない。 (参照条文)刑事訴訟法 第155条 宣誓の趣旨を理解することができない者は、宣誓をさせないで、これを尋問しなけ ればならない。 2 (略) - 10 - 〔第13問〕(配点:4) 次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、正しい場合 には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[15]から[ 19]) 【事 例】 甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手 するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながら カードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済 ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カ ードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実 行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて 上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求 めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免 れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗で きないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画 どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の 内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。 丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50 キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警 察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2 週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲 にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査され ていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。 【記 述】 ア.乙がAからカードを奪った行為は、窃盗罪の実行に着手した後、Aに暴行を加えてこれを奪 取したことになるから、乙に事後強盗既遂罪が成立する。[15] イ.甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、乙がAからカードを奪 取した行為について、甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。[16] ウ.甲は、当初から丙にカードを運搬させる計画であり、その運搬は重要な役割であるから、丙 には盗品等運搬罪ではなく窃盗罪の共同正犯が成立する。[17] エ.丙がBを殴って負傷させた行為には、公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競 合となる。[18] オ.丙のいずれの行為についても、証拠上、犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、丁 が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない。[19] - 11 - [刑事訴訟法] 〔第14問〕(配点:2) 捜査の端緒に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から 5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄 は、[20]) ア.被害者の法定代理人は、被害者の意思に反して告訴をすることはできない。 イ.検視においては、死因の確認のために必要があるときには、死体の腹部を切開することがで きる。 ウ.親告罪の告訴期間の起算点である「犯人を知った」とは、告訴権者において犯人が誰である かを知ることをいい、犯人の住所氏名などの詳細を知る必要はない。 エ.司法警察員は、口頭による告発を受けたときは調書を作らなければならない。 オ.司法警察員は、自首を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付 しなければならない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第15問〕(配点:3) 次のアからオまでの各記述のうち、正しいものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選び なさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄は、[ 21]) ア.強盗殺人事件の捜査に関し、公道上を歩いている被疑者の容ぼう等を撮影することは、防犯 ビデオに写っていた犯人の容ぼう等と被疑者の容ぼう等との同一性の有無という犯人を特定す るための重要な判断に必要な証拠資料を入手するためであっても、被疑者の同意がある場合 か、裁判官の令状がある場合以外には許容されない。 イ.強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身 体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がな ければ許容することが相当でない手段を意味するものであって、この程度に至らない有形力の 行使は、任意捜査においても許容される場合がある。 ウ.車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付け、情報機器でその位置情報を検索 し、画面表示を読み取って当該車両の所在と移動状況を把握する捜査手法は、個人のプライバ シーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認され る個人の意思に反してその私的領域に侵入するものであり、刑事訴訟法上、特別の根拠規定が なければ許容されない強制処分に当たる。 エ.荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、宅配便業者の運送過程下にある荷物について、外部 からエックス線を照射して内容物の射影を観察する捜査手法は、その射影によって荷物の内容 物の形状や材質をうかがい知ることができるだけでなく、その品目等を相当程度具体的に特定 することも可能である場合には、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵 害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たる。 オ.警察官が、覚醒剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められる者に対する職務質問中 に、その者の承諾がないのに、その上衣の内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出したう え検査する行為は、職務質問に附随する所持品検査において許容される限度を超えるとの評価 を受けることはない。 1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 - 12 - 5.4個 6.5個 〔第16問〕(配点:2) 後記【事例】に関する次のアからオまでの【記述】のうち、【見解】に示す考え方からの帰結と して正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それ に照らして考えるものとする。(解答欄は、[22]) 【事例】 甲には、乙宅において、乙に対して暴行を加え、その反抗を抑圧して、乙所有の財布を強取した という強盗の事実の嫌疑が認められる。 【見解】 T.逮捕に引き続く勾留の理由となる被疑事実は、先行する逮捕の理由とされた被疑事実と同一 のものでなければならない。 U.実体法上一罪の関係にある被疑事実を理由とする身体拘束は、一回に限り認められる。 V.身体拘束に関する処分は、明示的に身体拘束の理由とされている被疑事実について行われる もので、それ以外の事実のみに基づいて行われてはならない。 【記述】 ア.【見解】Tによれば、検察官は、甲が【事例】中の強盗の被疑事実について逮捕された場合 に、逮捕中の捜査の結果を踏まえて恐喝に評価を改め、その逮捕に引き続き、乙に対する恐喝 の被疑事実を理由として甲の勾留を請求することはできない。 イ.【見解】Tによれば、検察官は、甲が【事例】中の強盗の被疑事実について逮捕された場合 に、これに引き続いて、別に判明した、甲の丙に対する強盗の被疑事実のみを理由として甲の 勾留を請求することはできない。 ウ.【見解】Uによれば、司法警察員は、【事例】中の強盗の被疑事実を乙に対する暴行の被疑 事実と乙に対する窃盗の被疑事実に分割し、甲が暴行の被疑事実で逮捕、勾留された後に、改 めて、窃盗の被疑事実で逮捕状を請求することはできない。 エ.【見解】Uによれば、司法警察員は、甲が【事例】中の強盗の被疑事実について逮捕された 後、これに引き続く勾留請求が却下された場合に、甲が【事例】中の強盗を行うための手段と して乙宅に侵入した旨の住居侵入の被疑事実(【事例】中の強盗の被疑事実と牽連犯の関係に 立つものとする)を理由として、甲の逮捕状を請求することができる。 オ.【見解】Vによれば、検察官は、【事例】中の強盗の被疑事実を理由とする勾留の延長を請 求するに当たり、並行して実施している別の被疑事実の捜査から判明した事情は、前記強盗の 被疑事実に関連するとしても、これを示すことはできない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 13 - エ 5.エ オ 〔第17問〕(配点:3) 次のT及びUの【見解】は、刑事訴訟法第220条第1項第2号及び同条第3項が、被疑者を逮 捕する場合において必要があるときは、「逮捕の現場」で令状を必要とせずに捜索差押えをするこ とができるとしている根拠に関する考え方を述べたものである。これらの【見解】に関する後記ア からオまでの【記述】のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄 は、[23]) 【見解】 T.逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が一般的に高いため、裁判官による事前の令状審査を 行う必要性がないことを根拠とする見解 U.逮捕の際には被逮捕者により証拠が隠滅されるおそれが高いため、これを防止して証拠を保 全する緊急の必要性があることを根拠とする見解 【記述】 ア.Tの見解に立っても、Uの見解に立っても、捜索差押えの対象となる証拠は、逮捕の理由と された被疑事実と関連する物に限られる。 イ.Tの見解に立つと、捜索差押えをすることができるのは、証拠が存在する蓋然性が一般的に 高いと認められる場所においてであると考えることになるため、逮捕が被疑者の隣人方でなさ れた場合、当該隣人方のほか、被疑者方でも捜索差押えを実施することができる。 ウ.Tの見解に立っても、逮捕が被疑者ではない第三者の住居でなされた場合、逮捕の理由とさ れた被疑事実に関する証拠の存在を認めるに足りる状況がなければ、当該住居で捜索差押えを 実施することは違法であり、許されない。 エ.Uの見解に立つと、捜索差押えをすることができるのは、逮捕の際に被疑者が証拠を隠滅す ることが可能な場所においてであると考えることになるため、逮捕が被疑者方の一室でなされ た場合に、捜索差押えができるのは、逮捕がなされた時点で被疑者の手が届く場所に限られ、 当該一室全体において実施することができるとは考えられない。 オ.Uの見解に立つと、捜索差押えの要件として、被逮捕者が証拠を隠滅する具体的な危険が認 められることが要求されることになる。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ 〔第18問〕(配点:3) 身体検査等に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものには1を、誤っているものに は2を選びなさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄 は、アからオの順に[24]から[28]) ア.裁判所が女子の身体を検査する場合でも、捜査機関が身体検査令状により女子の身体を検査 する場合と同じく、医師又は成年の女子をこれに立ち会わせる必要がある。[24] イ.身体の拘束を受けている被疑者を写真撮影する場合、必ず身体検査令状によらなければなら ない。[25] ウ.捜査機関が人の着用しているズボンのポケットの中を捜索して物を差し押さえるためには、 捜索差押許可状のほかに、身体検査令状の発付を受ける必要がある。[26] エ.捜査機関から鑑定の嘱託を受けた者は、鑑定処分許可状に基づき行う身体検査を拒否する者 に対して、直接強制として身体検査を行うことができる。[27] オ.強制採尿のための捜索差押許可状には、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方 法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。[28] - 14 - 〔第19問〕(配点:2) 弁護人の活動に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5 までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄 は、[29]) ア.弁護人は、検察官のした接見の日時を指定する処分に不服がある場合、裁判所にその処分の 取消し又は変更を請求することができる。 イ.弁護人は、司法警察職員が捜索差押許可状に基づき被疑者方を捜索する場合、当該捜索差押 許可状の執行に立ち会う権利がある。 ウ.弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情が あるときは、起訴前であっても、裁判官に証人の尋問を請求することができる。 エ.勾留されている被疑者の弁護人は、裁判官に保釈の請求をすることができる。 オ.国選弁護人は、自己を国選弁護人に選任した裁判所又は裁判官に辞任を申し出ることによ り、自らその地位を離れることができる。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第20問〕(配点:3) 公判手続に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものには1を、誤っているものには 2を選びなさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄は、 アからオの順に[30]から[34]) ア.検察官は、刑事事件の通常の第一審公判手続における冒頭手続において、冒頭陳述を行う。 [30] イ.裁判長は、刑事事件の通常の第一審公判手続における冒頭手続において、検察官の起訴状の 朗読に先立ち、人定質問を行う。[31] ウ.必要的弁護事件において、裁判所が弁護人出頭確保のための方策を尽くしたにもかかわら ず、被告人が、弁護人の公判期日への出頭を妨げるなど、弁護人が在廷しての公判審理ができ ない状態を生じさせ、かつ、その事態を解消することが極めて困難な場合には、公判期日に弁 護人が出頭しなくとも、開廷することができる。[32] エ.検察官は、証拠調べが終わった後の事実及び法律の適用についての意見の陳述において、量 刑についての意見を述べることはできるが、無罪である旨の意見を述べることはできない。 [33] オ.被告人又は弁護人は、公判前整理手続に付されていない事件について、証拠により証明すべ き事実があるときは、裁判所の許可がなくとも、検察官が冒頭陳述をした後、冒頭陳述をする ことができる。[34] - 15 - 〔第21問〕(配点:2) 訴因変更に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5 までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄 は、[35]) ア.「Aを脅迫して現金を強取した」という強盗の訴因で起訴された甲について、「Aに暴行を 加えて現金を交付させた」という恐喝の事実を認定するには、訴因変更の手続を要しない。 イ.「乙と共謀の上、Vに対し、殺意をもって、甲が、Vの頸部を絞め付け、窒息死させて殺害 した」という殺人の共同正犯の訴因で起訴された甲について、「乙と共謀の上、Vに対し、殺 意をもって、甲又は乙あるいはその両名において、Vの頸部を絞め付け、窒息死させて殺害し た」という事実を認定するには、公判で、殺害行為を行ったのが甲と乙のいずれなのかが争点 となっていたとしても、訴因変更の手続を要する。 ウ.「ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏んだ過失により、自車を前方のA運転の自 動車に追突させ、Aに傷害を負わせた」という過失運転致傷の訴因で起訴された甲について、 「A車の後ろに進行接近する際、ブレーキをかけるのが遅れた過失」を認定するには、訴因変 更の手続を要する。 エ.日時、場所、方法を特定した覚醒剤使用の訴因を、別の日時、場所、方法の覚醒剤使用の訴 因に変更することは、いずれの訴因も被告人の尿中から検出された同一の覚醒剤の使用行為に 関するものである場合には、公訴事実の同一性に欠けることはなく、許される。 オ.「A方に侵入し、現金10万円を窃取した」という住居侵入・窃盗の訴因を、別の日時に 「B方に侵入し、現金15万円を窃取した」という住居侵入・窃盗の訴因に変更することは、 両訴因の事実が、実体法上は常習特殊窃盗罪を構成する場合であっても、公訴事実の同一性を 欠くため、許されない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 16 - エ 5.エ オ 〔第22問〕(配点:2) 次の【事例】における【乙の証人尋問】中のからまでの下線部分に関する後記アからオまで の【記述】のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例が ある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄は、[36]) 【事例】 乙は、暴力団の構成員である甲と共謀の上、対立する暴力団の構成員が多数在室していた事務所 の外壁にガソリンをまいて着火し、同事務所を全焼させたとの現住建造物等放火の事実で逮捕され た。乙は、捜査段階で検察官に対し、「私の運転する車で事務所に赴き、甲が同所で降車してガソ リンをまいて着火した。甲とは、私の兄である丙の紹介で知り合い、本件で使用した車やガソリン は丙が準備したものである。」などと甲との共謀や丙の関与を認める供述をし、その内容の検察官 面前調書が作成された。その後、乙は、甲との共同被告人として起訴された。第1回公判期日で は、甲は、公訴事実について、「乙と共謀をしたことはなく、実行行為をしたこともない。」旨を 述べて否認し、甲の弁護人は検察官が取調べを請求した前記乙の検察官面前調書について不同意で ある旨の意見を述べた。一方、乙は、公訴事実を認め、甲と乙の公判は分離された。その後、乙 は、甲の公判期日に証人として呼ばれた。 【乙の証人尋問】 裁判長 宣誓をしてください。 乙 宣誓(以下省略) 検察官 あなたは現住建造物等放火罪で起訴されていますね。 乙 はい。 検察官 その事件を誰と一緒に行ったのですか。 乙 甲さんと一緒にやりました。 検察官 今回の事件についてあなたが関わることになったきっかけや、あなたの役割について教 えてください。 乙 答えたくありません。 【記述】 ア.乙は、自らも同一の事件で公訴提起されていることを理由に、下線部の宣誓を拒むことは できない。 イ.下線部、の尋問方法は、いずれも誘導尋問であり、主尋問では許されない。 ウ.下線部において、答えたくない理由が、「自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける おそれのある」ことであったとしても、乙が証言を拒むことができない場合もある。 エ.下線部において、乙は、兄である丙が「刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれの ある」ことを理由に、丙に関する事項についての証言を拒むことができる。 オ.下線部において、乙は、真実の証言をしたとしても、その内容が検察官面前調書の内容と 齟齬したときには偽証罪の訴追を受けるおそれがあることを理由に、証言を拒むことができ る。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ - 17 - オ 5.ウ エ 〔第23問〕(配点:2) 次のアからオまでの各記述は、取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前に した供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができな いと認められるため、検察官が刑事訴訟法第227条に基づき証人尋問を請求する場合に関する記 述である。各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄 は、[37]) ア.被疑者の共犯者についても、証人尋問を請求することができる。 イ.第1回公判期日後には証人尋問を請求することができない。 ウ.「異なる供述」とは、供述が、被疑者、被告人に有利に変更される場合だけでなく、不利に 変更される場合も含む。 エ.弁護人は、証人尋問が行われる際、その尋問に立ち会う権利を有する。 オ.公訴提起後に証人尋問を請求する場合は、請求先は裁判官ではなく裁判所である。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第24問〕(配点:2) 伝聞証拠に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5 までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄 は、[38]) ア.証人が公判期日において、前に裁判官の面前でした供述と異なった供述をした場合、前にし た供述を録取した書面で供述者の署名又は押印のあるものは、公判期日における供述よりも前 にした供述を信用すべき特別の情況の存するときに限り、これを証拠とすることができる。 イ.火災原因の調査、判定に関し特別の学識経験を有する私人が、弁護人の依頼を受けて燃焼実 験を行ってその考察の結果を報告した書面は、裁判所から鑑定を命じられた者が作成した鑑定 の経過及び結果を記載した書面と同じ要件のもとでこれを証拠とすることができる。 ウ.刑事訴訟法第323条第2号によれば、「業務の通常の過程において作成された書面」は、 その作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであること を供述したときに限り、これを証拠とすることができる。 エ.甲の検察官に対する供述調書中に、被告人乙が甲に対してした「V方に放火してきた。」旨 の供述が含まれているときは、刑事訴訟法第321条第1項第2号及び同法第324条によ り、これを乙の現住建造物等放火被告事件において証拠とすることができる。 オ.刑事訴訟法第325条による書面に記載された供述が任意にされたものかどうかの調査は、 必ずしもその証拠調べの前にされなければならないものではない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ - 18 - エ 5.エ オ 〔第25問〕(配点:2) 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち、誤っているものの組合せは、 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[39]) 【事例】 甲は、強盗致傷の被疑事実で勾留され、国選弁護人としてAが選任された。甲は、被疑事実と同 一の事実により、H地方裁判所に起訴された。 本件強盗致傷事件は、公判前整理手続に付されたところ、第1回の公判前整理手続期日に先立 ち、検察官は証明予定事実記載書を提出し、また、証明予定事実を証明するために用いる証拠の取 調べを請求し、それらを@起訴後においても国選弁護人であるAに開示した。その中には、本件強 盗致傷事件の犯人の容ぼうが甲によく似ていると供述する目撃者乙の検察官に対する供述調書が含 まれていた。Aその後、第1回の公判前整理手続期日が指定され、同期日に甲が出頭した。 第1回の公判前整理手続期日の後、Aは、検察官に対し、B刑事訴訟法第316条の15に基づ き、乙の供述調書の証明力を判断するために重要な証拠として、乙の他の供述録取書等の開示を請 求し、同条の要件を満たす乙の供述録取書等は全てAに開示された。 Aは、その後、裁判所及び検察官に対し、甲は本件強盗致傷事件の発生した日時に、事件現場か ら遠く離れたI市にいたのであって、本件強盗致傷事件に関与していない旨のアリバイ主張を記載 した予定主張記載書面を提出するとともに、本件犯行日時にI市において甲と一緒にいたという甲 の友人である丙の証人尋問を請求した。C裁判所はこれに対し、検察官の意見を聞いた上で、丙の 証人尋問を決定した。 その後、公判前整理手続が終了して公判期日が開かれ、公判期日において丙の証人尋問が行われ た。D丙は、その証人尋問において、本件犯行日時にI市において丙のスマートフォンで撮影した 写真に偶然、甲が写っているものがある旨の証言をした。なお、A及び甲は、同証人尋問前に丙か ら同写真の存在を知らされておらず、公判前整理手続において、同写真の証拠調べ請求はされてい ない。 【記述】 ア.下線部@で起訴後もAが国選弁護人の地位にあるためには、改めて第一審の国選弁護人とし て選任される必要がある。 イ.甲に対しては、第1回公判期日の冒頭手続において黙秘権の告知が行われるが、下線部Aの 甲が出頭した最初の公判前整理手続期日においても、裁判長は甲に対し、黙秘権の告知をしな ければならない。 ウ.弁護人は、検察官が取調べを請求した乙の供述調書について、公判前整理手続中に刑事訴訟 法第326条の同意をするかどうか、又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見 を明らかにしなければならないが、その時期は、下線部Bの開示がされた後でよく、それより も前に意見を明らかにする必要はない。 エ.下線部Cの丙の証人尋問のほかにもアリバイ主張に関連してAが証拠調べを請求した証拠が あったとしても、裁判所はそれらについて証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する 決定をしないまま公判前整理手続を終え、丙の証人尋問を実施した後、それらの証拠の取調べ をするか否かを決定してもよい。 オ.下線部Dの写真について、公判前整理手続の中で証拠調べ請求がされることなく同手続が終 了した以上、Aが丙の証人尋問終了後にその証拠調べを請求する余地はない。 1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ - 19 - エ 5.エ オ 〔第26問〕(配点:2) 裁判の効力に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から 5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄 は、[40]) ア.被告人Aが甲を殺害した旨の訴因について有罪判決が確定した後、検察官は、BがAと共謀 の上で甲を殺害した旨の事実でBを起訴することができる。 イ.有罪の確定判決について、再審開始の決定が確定したとしても、再審の判決が確定するまで は、再審の請求の対象となった確定判決は、その効力を失わない。 ウ.殺人被告事件で勾留中の被告人につき無罪判決が宣告された場合、その判決宣告の時点で、 被告人に対する勾留状はその効力を失う。 エ.殺人罪の訴因について無罪判決が確定した後、検察官が被告人の有罪を立証するに十分な新 たな証拠が発見されたとして、再度、同事件の被告人を同一事実で起訴した場合、裁判所は、 改めて審理し、有罪の判決をすることができる。 オ.告訴がないまま起訴された器物損壊事件において、公訴棄却の判決が確定した場合、検察官 は、その後に被害者から告訴を得たとしても、再度、同事件の被告人を同一事実で起訴するこ とはできない。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ - 20 - オ 5.エ オ