短答式試験問題集[刑法] - 1 - [刑法] 〔第1問〕(配点:4) 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、 正しい場合には1を、 誤っている場合 には2を選びなさい。 (解答欄は、 アからオの順に[No.1]から[No.5]) ア.甲は、 客観的にわいせつ性を有する書籍につき、 その内容を確認して理解したものの、 この 程度では刑法上のわいせつな文書には該当しないと考え、 同書籍を多数の者に販売した。 この 場合、 甲にわいせつ物頒布罪は成立しない。 [No.1] イ.甲は、 A方前路上に置かれていた自転車を、 Aの所有物と認識して持ち去ったが、 実際には 同自転車は捨てられた物であり、 誰の所有にも占有にも属さないものであった。 この場合、 甲 に遺失物等横領罪が成立する。 [No.2] ウ.甲は、 男性Aが、 酩酊して暴れ回る女性Bを介抱するために取り押さえているのを見て、 A がBに対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしていると誤信し、 Bを助けるため、 自己の暴行 の内容を認識しつつAに暴行を加え、 傷害を負わせた。 甲の暴行の程度が、 甲が認識した急迫 不正の侵害に対する防衛手段としての相当性を超えていた場合であっても、 甲に傷害罪は成立 しない。 [No.3] エ.甲は、 乙に対し、 A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、 乙は、 犯行を決意し、 A方に侵入しようとしたが、 施錠を解錠できず、 犯行を断念した。 帰路において、 乙は、 B方 に侵入し、 Bから金品を強取した。 甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間 に因果関係が認められない場合であっても、 甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。 [No.4] オ.甲は、 乙が窃取したバッグを、 これが盗品かもしれないがそれでも構わないと思って購入し た。 この場合、 甲に盗品等有償譲受け罪が成立する。 [No.5] 〔第2問〕(配点:2) 暴行罪及び傷害罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 誤っ ているものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。 (解答欄は、 [No.6]) ア.相手方の眼前に抜き身の日本刀を突き付けたとしても、 その刃が同人に接触しない限り、 暴 行罪が成立することはない。 イ.相手方の意思に反して、 その耳元で楽器を大音量で鳴らし続けた場合には、 人の身体に対し て不法な攻撃を加えたものとして暴行罪が成立し得る。 ウ.ひそかに相手方に睡眠薬を摂取させ、 2時間にわたり意識を失わせるとともに筋弛緩作用を 伴う急性薬物中毒の症状を生じさせたとしても、 覚醒後の健康状態に支障がない場合には、 傷 害罪が成立することはない。 エ.性病を有する者が、 性行為を行えば相手方に感染させる危険性があると認識しながら、 情を 秘して同人と性行為を行い、 同人に性病を感染させたとしても、 同人が性行為に同意している 場合には、 傷害罪が成立することはない。 オ.相手方に暴行を加えて負傷させた者が、 傷害結果が発生することについて認識を欠いている 場合には、 傷害罪が成立することはない。 1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 - 2 - 5.5個 〔第3問〕(配点:3) 次の【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち、 誤っているものを2個選びなさい。 (解答欄は、 [No.7]、 [No.8]順不同) 【判 旨】 共謀共同正犯が成立するには、 二人以上の者が、 特定の犯罪を行うため、 共同意思の下に一体 となって互いに他人の行為を利用し、 各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、 よ って犯罪を実行した事実が認められなければならない。 したがって、 このような関係において共 謀に参加した事実が認められる以上、 直接実行行為に関与しない者でも、 他人の行為をいわば自 己の手段として犯罪を行ったという意味において、 その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき 理由はない。 さればこの関係において実行行為に直接関与したかどうか、 その分担又は役割のい かんは、 共犯の刑責自体の成立を左右するものではないと解する。 【記 述】 1.【判旨】を前提にすると、 殺意を有する者と傷害の故意にとどまる者との間で共謀共同正犯 が成立する余地はない。 2.【判旨】は、 共同正犯の成立には、 実行行為の一部を分担することは必要ないとの立場に立 っている。 3.【判旨】は、 共謀共同正犯の成立には、 単に関与者の内心における意思の合致があるだけで は十分でなく、 客観的な謀議行為が必要であるとする考えと矛盾しない。 4.【判旨】に対しては、 共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判がある。 5.【判旨】を前提にすると、 共謀共同正犯の成立には、 実行行為を行わない者が実行行為者に 対して指揮命令をすることが必要である。 〔第4問〕(配点:2) 次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合、 甲に窃 盗罪が成立しないものはどれか。 (解答欄は、 [No.9]) 1.甲は、 V宅内において、 Vが所在を見失っていたV所有の指輪を発見し、 これを自己のもの にしようと考えて無断で持ち去った。 2.甲は、 Vが海中に取り落としたV所有の金塊について、 Vからおおよその落下場所を教えて もらった上で回収を依頼され、 Vの眼前で同所に潜り、 同金塊を同所付近で発見したものの、 これを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。 3.甲は、 看守者のいない仏堂に所有者Vが据え置いてまつっていた仏像を、 自己のものにしよ うと考えて無断で持ち去った。 4.甲は、 Xが乙から窃取した乙所有の腕時計を、 これが盗品であることを知りながら自己のも のにしようと考えて、 X宅に忍び込んで無断で持ち去った。 5.甲は、 満員電車内において、 乗客Vが網棚にかばんを置き忘れたままA駅で下車したのを目 撃し、 B駅で下車する際、 同かばんを自己のものにしようと考えて無断で持ち去った。 - 3 - 〔第5問〕(配点:2) 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいものの組合せは、 後記1 から5までのうちどれか。 (解答欄は、 [No.10]) ア.甲は、 Aが居住するA所有の家屋に放火し、 同家屋を全焼させた上、 同家屋に隣接するBが 居住するB所有の家屋にも火を燃え移らせて同家屋を全焼させた。 この場合、 甲には2個の現 住建造物等放火罪が成立し、 これらは観念的競合となる。 イ.甲は、 行使の目的で1万円札を偽造し、 Aが経営する商店において、 事情を知らないAに対 し、 1万円の商品の購入を申し込み、 その代金として偽造の1万円札をAに手渡して同商品の 交付を受けた。 この場合、 甲には通貨偽造罪、 偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、 これらは 牽連犯となる。 ウ.暴力団員甲及び乙は、 対立する暴力団員A及びBを襲撃して殺害することを共謀し、 路上を 連れ立って歩いていたA及びBを待ち構えた上で、 甲がAを、 乙がBを、 それぞれ殺害した。 この場合、 甲及び乙を共同正犯とする2個の殺人罪が成立し、 これらは併合罪となる。 エ.甲は、 酒に酔った状態で、 自動車を無免許で運転した。 この場合、 甲には酒酔い運転の罪と 無免許運転の罪が成立し、 これらは観念的競合となる。 オ.甲は、 恐喝目的でAを監禁し、 監禁のための暴行等により畏怖しているAを更に脅迫して現 金を喝取した。 この場合、 監禁罪と恐喝罪が成立し、 これらは牽連犯となる。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ 〔第6問〕(配点:4) 性的自由に対する罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、 正しい場 合には1を、 誤っている場合には2を選びなさい。 (解答欄は、 アからオの順に[No.11]から[No. 15]) ア.強制わいせつ罪は、 暴行又は脅迫を用いて相手方の反抗を著しく困難にしてわいせつな行為 をした場合に成立するから、 不意をついて相手方の陰部に触れた場合には、 同罪が成立するこ とはない。 [No.11] イ.強制性交の目的で、 相手方の顔面を数回殴る暴行を加え、 同人に鼻骨骨折の傷害を負わせた が、 そのまま同人に逃げられたため、 性交するに至らなかった場合には、 強制性交等未遂罪と 傷害罪が成立し、 両罪は観念的競合となるのであり、 強制性交等致傷罪は成立しない。 [No. 12] ウ.13歳の者に対し、 その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわ いせつな行為をした場合には、 暴行又は脅迫を用いた場合でなくとも監護者わいせつ罪が成立 する。 [No.13] エ.強制わいせつ罪は、 被害者の名誉等を保護する観点から親告罪とされているから、 告訴がな ければ公訴を提起できない。 [No.14] オ.強制性交の目的で、 殺意をもって、 強度の暴行を加えた上で相手方と性交し、 同暴行により、 同人を死亡させた場合には、 強制性交等致死罪のみが成立する。 [No.15] - 4 - 〔第7問〕(配点:2) 学生A及びBは、 次の【事例】における甲の罪責について、 後記【会話】のとおり議論している。 【会話】中の@からDまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、 正しいもの の組合せは、 後記1から5までのうちどれか。 なお、 @からDまでの( )内にはそれぞれ異なる 語句が入る。 (解答欄は、 [No.16]) 【事 例】 甲は、 殺意をもって、 Xの腕の静脈内に蒸留水と空気を注射したが、 当該空気量が疾病のない 健常人に対する致死量未満であったためXは死ななかった。 また、 甲は、 当該空気量が上記致死 量未満とは知らなかった。 なお、 当該空気量であっても被注射者の身体的条件等によっては死亡 する危険はあった。 【会 話】 学生A.未遂犯と不能犯の区別に関してはいろいろな考え方がありますが、 行為の時点において 一般人が認識し得た事情と行為者が特に知っていた事情を基礎とし、 一般人が結果発生の 危険を感じる場合には可罰的未遂を肯定する考え方に立ち、 本事例では一般人が結果発生 の危険を感じるとすれば、 甲に殺人未遂罪が(@)ことになりますね。 学生B.この考え方に対しては、 (A)ことになるという批判がありますね。 では、 結果発生の 危険性を事後的客観的に判断する考え方に立った場合、 甲の罪責をどう考えますか。 学生A.(B)という考え方によれば、 身体的条件等によっては死亡の危険があったので、 甲に 殺人未遂罪が成立します。 一方で、 結果発生の危険性を事後的客観的に判断する考え方を 徹底すれば、 (C)ことになりませんか。 学生B.そうとは限りませんよ。 結果が発生しなかった原因究明と同時に、 いかなる事情があれ ば結果発生があり得たかを明らかにし、 (D)可能性を判断すれば妥当な結論を導けます。 【語句群】 a.成立する b.成立しない c.迷信犯に未遂犯を認める d.印象で未遂犯処罰を決める e.行為者の認識内容が客観的真実に合致するか否かによって区別する f.結果発生の絶対的不能・相対的不能によって区別する g.行為者の誤信が相当と認められる h.結果発生をもたらす仮定的事実が存在し得た i.結果不発生の原因を解明できた場合、 すべて不能犯となる 1.@a Ac Be Cg Dh 2.@a Ad Bf Ci Dh 3.@a Ae Bf Cc Dg 4.@b Ad Be Ci Dg 5.@b Ai Bf Cc Dg - 5 - 〔第8問〕(配点:3) 放火の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいものを 2個選びなさい。 (解答欄は、 [No.17]、 [No.18]順不同) 1.人が居住する木造建物Aと人が居住していない木造建物Bは、 木造の渡り廊下で接合され、 渡り廊下を通じて人の行き来のある構造となっていた。 甲は、 これらの事実を認識した上で、 その当時誰もいなかった建物Bに放火して建物Bを焼損した。 この場合、 建物Aに延焼しなけ れば、 甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 2.甲は、 Vがその家族と共に居住する木造家屋に放火してこれを焼損した。 この場合、 Vとそ の家族が1泊2日の旅行中で不在であり、 甲がそのことを認識して放火したのであれば、 甲に 現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 3.甲は、 妻と二人で居住する木造家屋を燃やそうと考え、 壁に掛けられたカレンダーに火をつ けた。 この場合、 上記カレンダーが焼損した時点で、 これに気付いた妻に火を消し止められ、 他に燃え移らなかったのであれば、 甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 4.甲は、 火災保険金を詐取する目的で、 自己が単独で居住し、 かつ、 誰も現在しない木造家屋 に放火してこれを焼損した。 この場合、 刑法第108条の「現に人が住居に使用し又は現に人 がいる」の「人」に犯人は含まれないから、 甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはな い。 5.甲は、 Vが居住する木造家屋の押し入れの床にガソリンをまいて火をつけたところ、 同押し 入れの床板が独立して燃焼するに至ったが、 他に燃え移る前に消し止められた。 この場合、 上 記家屋の効用を失うに至っていなければ、 甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。 〔第9問〕(配点:3) 不作為犯に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいものを 2個選びなさい。 (解答欄は、 [No.19]、 [No.20]順不同) 1.詐欺罪については積極的な欺罔行為を要するから、 不作為による欺罔行為が認められること はない。 2.不作為による幇助犯が成立するためには、 作為に出ることで確実に正犯の実行を阻止できた という関係は不要である。 3.結果犯における不真正不作為犯の故意について、 結果の発生を積極的に意欲することは不要 である。 4.不作為による殺人罪が成立するためには、 行為者と生命の危機に瀕した者との間に親族関係 や契約関係が必要であるから、 行為者が、 そのような関係にない重篤な患者に対する医師の治 療を打ち切らせて同患者を一人暮らしの自宅に引き取った上、 その生命を維持するために必要 な医療措置を受けさせずに同患者を死亡させたとしても、 殺人罪は成立し得ない。 5.不真正不作為犯の成立には、 作為可能性を必要としない場合がある。 - 6 - 〔第10問〕(配点:2) 学生A及びBは、 次の【事例】における甲の罪責について、 後記【会話】のとおり議論している。 【会話】中の@からDまでの( )内から適切な語句を選んだ場合、 正しいものの組合せは、 後記 1から5までのうちどれか。 (解答欄は、 [No.21]) 【事 例】 甲は、 X県から代金1億円で請け負った土木工事を完成させ、 同工事で生じた汚泥5トンを搬 出して適法に処理した。 上記工事に関する請負契約では、 甲が工事で生じた汚泥を全て搬出する ことが義務付けられていたが、 請負代金はその搬出量にかかわらず定額とされ、 汚泥の処理方法 についての定めもなかった。 もっとも、 上記契約締結の際、 X県が汚泥搬出量は50トンを下ら ないと予測していたため、 甲は、 実際の搬出量を報告すれば、 X県が行う工事完成検査の際に不 法投棄を疑われ、 その調査のために請負代金の支払が延期されると懸念し、 X県に対し、 汚泥5 0トンを搬出して適法に処理したと虚偽の報告をし、 X県職員をその旨誤信させ、 請負代金1億 円の支払を受けた。 なお、 甲が虚偽の報告をしなければ、 X県が不法投棄について調査を行い、 請負代金の支払時期が遅れたことは確実であった。 【会 話】 学生A.詐欺罪の成否を問題とした場合、 財産上の損害をどう考えますか。 学生B.詐欺罪における財産上の損害の有無は、 @(a.財物の占有・支配の喪失それ自体によ って・b.被害者の取引目的達成の有無も考慮して)判断すべきです。 本事例では、 請負 契約の目的である工事が完成し、 かつ、 その請負代金は定額なので、 X県に財産上の損害 はないと考えます。 学生A.Bさんのように、 財産上の損害を実質的に把握するとしても、 本事例では、 A(c.X 県の代金支払時期を早めた・d.X県の代金減額請求権を侵害した)という点で、 財産上 の損害を認め得ると思います。 学生B.Aさんの見解では、 B(e.一日でも支払時期を早めれば詐欺罪が成立する・f.未成 年であることを秘して成人向け雑誌を購入した者にまで詐欺罪が成立する)ことになりか ねず、 妥当でないと考えます。 学生A.いや、 私は、 判例と同様に、 C(g.全体財産の減少が認められる・h.社会通念上別 個の支払に当たるといい得る程度の期間、 支払時期を早めた)場合に限って財産上の損害 を認めますので、 その批判は当たりません。 ところで、 Bさんは、 本事例において、 詐欺 未遂罪の成立も否定しますか。 学生B.甲の虚偽報告の有無にかかわらずX県は代金を支払わざるを得ませんので、 そもそも、 D(i.欺罔行為がない・j.財物の交付行為がない)と考えます。 したがって、 詐欺未 遂罪も成立しません。 1.@a Be Di 2.@b Ac Cg 3.@b Ch Di 4.Ac Bf Cg 5.Ad Be Dj - 7 - 〔第11問〕(配点:2) 賄賂罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいものの組 合せは、 後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は、 [No.22]) ア.公立中学校の教員が、 自らが担任を務める生徒の保護者から商品券を受け取った場合、 それ が慣行的社交儀礼としてなされたものであっても、 常に「賄賂」に当たる。 イ.賄賂罪の客体である「賄賂」の対象となり得る利益は、 有体物に限られないものの、 財産上 の利益である必要がある。 ウ.収賄罪において賄賂と対価関係に立つ行為は、 法令上公務員の一般的職務権限に属する行為 であれば足り、 公務員が具体的事情の下においてその行為を適法に行うことができたかどうか は問わない。 エ.第三者供賄罪において、 賄賂の供与を受ける「第三者」に法人は含まれない。 オ.裁判所は、 収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂について、 共犯者各自に対し、 公務員 の身分の有無にかかわらず、 それぞれその価額全部の追徴を命じることができ、 相当と認めら れる場合には、 裁量により、 各自にそれぞれ一部の額の追徴を命じ、 あるいは一部の者にのみ 追徴を科することも許される。 1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ 〔第12問〕(配点:2) 緊急避難に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいものの 組合せは、 後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は、 [No.23]) ア.緊急避難は、 自己又は他人の生命、 身体、 自由又は財産という個人的法益に対する現在の危 難を避けるためにした行為に成立するものであるから、 国家的法益に対する危難を避けるため にした行為に緊急避難が成立することはない。 イ.避難行為により避けようとした害の程度が生じた害の程度を上回る場合だけでなく、 両者が 同程度の場合にも、 緊急避難は成立し得る。 ウ.緊急避難における現在の危難は、 危難が現に存在している場合のみならず、 間近に押し迫っ ている場合も含む。 エ.過剰避難が成立する場合、 情状によって、 その刑を減軽することはできるが免除することは できない。 オ.緊急避難におけるやむを得ずにした行為とは、 正当防衛におけるのと同様に、 手段として必 要最小限度のものであること、 すなわち相当性を有するものであれば足りる。 1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ - 8 - エ 5.ウ オ 〔第13問〕(配点:2) 学生A及びBは、 次の【事例】における甲の罪責について、 後記【会話】のとおり議論している。 【会話】中の@からEまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、 正しいもの の組合せは、 後記1から5までのうちどれか。 なお、 @からEまでの( )内にはそれぞれ異なる 語句が入る。 (解答欄は、 [No.24]) 【事 例】 甲は、 自らを溺愛していた交際中のVに対し、 実際には追死する意思がないのに追死すると欺 き、 Vに、 甲が追死するものと誤信させ、 死ぬことを承諾させた。 その上で、 甲は、 下記のT又 はUの行為に及んだ。 T.Vの承諾を得てVの頸部を両手で絞め、 Vを窒息死させた。 U.Vの承諾を得てVに致死量の毒物を渡し、 その毒物を服用させて、 Vを中毒死させた。 【会 話】 学生A.まず、 Tの事例について考えましょう。 Vは(@)といえるので、 甲が追死することを 誤信していたとしても、 Vの生命を放棄する意思は有効であり、 甲に(A)は成立せず、 (B)が成立すると考えます。 学生B.私としては、 Vは(C)といえるので、 Vの生命を放棄する意思は無効であり、 甲に (A)が成立すると考えます。 学生A.Uの事例において、 甲に(A)が成立するかについては、 BさんのようにVの生命を放 棄する意思は無効であると考えるとしても、 甲に(D)が成立するかを更に検討する必要 がありますよね。 学生B.Vは(E)といえるので、 甲に(A)が成立すると考えます。 【語句群】 ア.甲に自己の行為を支配されていない イ.自己が死亡すること自体は認識し、 これを承諾していた ウ.甲の言葉を信じ込み、 甲の意思どおりに行動した エ.真意に沿わない重大な瑕疵ある意思に基づいて死を決意した オ.殺人罪 カ.刑法第202条の罪 1.@ア Aオ Bカ Cイ Dキ Eウ 2.@ア Aカ Bオ Cウ Dク Eイ 3.@ア Aカ Bオ Cエ Dク Eウ 4.@イ Aオ Bカ Cア Dキ Eエ 5.@イ Aオ Bカ Cエ Dキ Eウ キ.間接正犯 ク.共同正犯 (参照条文)刑法 第202条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、 又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾 を得て殺した者は、 6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。 - 9 - 〔第14問〕(配点:2) 身分犯の共犯に関して、 学生A及びBが次の【会話】のとおり議論している。 【会話】中の@か らDまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、 正しいものの組合せは、 後記 1から5までのうちどれか。 なお、 @からDまでの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。 (解 答欄は、 [No.25]) 【会 話】 学生A.業務者でも財物の占有者でもない甲が、 財物を業務上占有する乙を教唆して当該財物を 横領させたという事例について考えてみましょう。 私は、 刑法第65条との関係では真正身分犯と不真正身分犯との区別は重要でなく、 同 条第1項が違法身分の連帯的作用を、 同条第2項が責任身分の個別的作用を定めたという 見解に立ち、 占有者を違法身分、 業務者を責任身分と解するので、 甲には(@)の教唆犯 が成立すると考えます。 学生B.Aさんの見解には、 (A)との批判がありますね。 私は、 甲に業務上横領罪の教唆犯が成立し、 単純横領罪の刑を科すべきと考えます。 私 は、 まず(B)という考え方に立ち、 業務上横領罪について(C)と考えて刑法第65条 第1項を適用します。 その上で、 単純横領罪の刑を科すのは(D)と考えるからです。 【語句群】 a.業務上横領罪 b.単純横領罪 c.刑法第65条の文言に反する d.刑法第65条第2項は成立罪名まで個別化する規定である e.成立する罪名と科刑の分離を回避すべきだ f.業務者ではない占有者が業務上横領に加功した場合との刑の均衡を図るべきだ g.刑法第65条第1項が真正身分犯について身分の連帯的作用を、 同条第2項が不真正身分犯 について身分の個別的作用を定めた規定である h.不真正身分犯 i.真正身分犯 1.@a Ad Bg Ch De 2.@a Af Be Ci Dd 3.@b Ac Bf Ch De 4.@b Ac Bg Ci Df 5.@b Ae Bd Ch Df (参照条文)刑法 第65条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、 身分のない者であっても、 共犯とする。 2 身分によって特に刑の軽重があるときは、 身分のない者には通常の刑を科する。 - 10 - 〔第15問〕(配点:2) 文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいも のはどれか。 (解答欄は、 [No.26]) 1.公務員でない甲は、 行使の目的で、 情を知らない市役所の係員Aに虚偽の申立てをして、 市 長名義の虚偽の課税証明書を作成させた。 この場合、 甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。 2.甲は、 無免許で自動車を運転中に取締りを受けた際、 かねてより知人Aから氏名等の使用の 許諾を受けていたことから、 Aの氏名等を称し、 行使の目的で、 交通事件原票中の供述書欄末 尾に「A」と署名した。 この場合、 甲に私文書偽造罪は成立しない。 3.甲は、 Aに100万円を貸し付けていたが、 Aから借用書を徴していなかったため、 行使の 目的で、 Aに無断で、 甲から100万円を借用した旨のA名義の借用書を作成した。 この場合、 甲に私文書偽造罪は成立しない。 4.甲は、 民間団体Aから国際運転免許証の作成を委託され、 行使の目的で、 外観が正規の国際 運転免許証に酷似するA名義の文書を作成したが、 Aに正規の国際運転免許証を発給する権限 はなく、 甲もそのことを知っていた。 この場合、 甲に私文書偽造罪は成立しない。 5.甲は、 同姓同名の弁護士がいることを利用して弁護士を装い、 不動産業者Aから土地調査の 依頼を受け、 行使の目的で、 作成名義人として「弁護士甲」と記載した土地調査に関する書面 を作成しAに交付した。 この場合、 甲に私文書偽造罪は成立しない。 - 11 - 〔第16問〕(配点:2) 共犯の要素従属性に関して、 学生A及びBが次の【会話】のとおり議論している。 【会話】中の @からEまでの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、 正しいものの組合せは、 後記1から5までのうちどれか。 なお、 @からEまでの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。 (解答欄は、 [No.27]) 【会 話】 学生A.(@)ことからも、 共犯を処罰するためには、 正犯が(A)を備える必要があると考え ます。 学生B.Aさんの見解によれば、 甲が乙に指示して構成要件に該当する行為を実行させたが、 (B)において、 甲に責任を問うことができなくなり、 不当ではありませんか。 学生A.その場合、 甲に(C)を幅広く認めることで妥当な結論を得られます。 学生B.でも、 乙が刑事未成年者ながら是非弁別能力があり、 その意思が抑圧されていない場合 にまで(C)を認めることは無理がありますね。 他方で、 適法な行為を援助する行為を処 罰の対象とするのは妥当ではありません。 私は、 (D)べきと考えるので、 共犯を処罰す るためには、 正犯が(E)を備えることが必要であり、 それで足りることになります。 【語句群】 a.違法は連帯的に作用するが、 責任は個別的に作用する b.教唆犯については刑法第61条が「犯罪」という文言を使っている c.違法性阻却事由については、 行為者ごとの違法の相対性も認められる d.構成要件該当性 e.構成要件該当性及び違法性 f.構成要件該当性、 違法性及び有責性 g.乙の行為に違法性阻却事由が認められる事案 h.乙の行為に責任阻却事由が認められる事案 i.間接正犯 j.幇助犯 1.@a Bg Dc 2.@b Bh Dc 3.@c Ci Da 4.Ad Cj Ef 5.Af Ci Ee - 12 - 〔第17問〕(配点:2) 刑法第230条の2に関する次の各【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち、 正しいものはどれか。 (解答欄は、 [No.28]) 【見 解】 A説:刑法第230条の2の規定は、 名誉毀損罪について真実性の証明がなされたことを処罰阻 却事由として定めたものである。 B説:刑法第230条の2の規定は、 他人の名誉を毀損する表現の内容が証明可能な程度に真実 であることを違法性阻却事由として定めたものである。 【記 述】 1.A説に対しては、 刑法第230条の2が真実性の証明に係る立証責任を被告人に負担させて いることと整合的でないとの批判がある。 2.A説によれば、 真実性の証明に失敗した場合、 刑法第35条によって違法性が阻却される余 地はない。 3.A説は、 いい加減な調査に基づいたものであれば、 結果的に真実であることが証明された場 合でも、 その表現を違法とすべきであるとの考え方と整合的である。 4.B説は、 真実性の証明の成功・不成功は、 名誉毀損行為が行われた後の事情であって、 犯罪 の成否とは無関係であることを根拠としている。 5.B説からは、 他人の名誉を毀損する表現をした者が、 その表現内容を真実と誤信した場合に は、 常に故意がないことになる。 〔第18問〕(配点:3) 正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、 正しいものを 2個選びなさい。 (解答欄は、 [No.29]、 [No.30]順不同) 1.刑法第36条第1項における「権利」には、 個人の生命、 身体、 自由のみならず、 財産も含 まれる。 2.急迫不正の侵害に対する反撃行為について防衛の意思と攻撃の意思が併存する場合、 正当防 衛が成立するには、 その主従を比較して、 前者が優越する必要がある。 3.凶器を持たない相手からの侵害行為に対抗する場合、 正当防衛が成立するには、 凶器を持た ずに対抗する必要がある。 4.正当防衛は、 不正の侵害に対して成立するから、 相手方の過失行為に対しては、 正当防衛は 成立し得ない。 5.急迫不正の侵害に対して憤激又は逆上して反撃を加えた場合でも、 正当防衛は成立し得る。 - 13 - 〔第19問〕(配点:2) 背任罪に関する次の【判旨】についての後記1から5までの各【記述】のうち、 正しいものはど れか。 (解答欄は、 [No.31]) 【判 旨】 刑法第247条にいう「本人に財産上の損害を加えたとき」とは、 経済的見地において本人の 財産状態を評価し、 被告人の行為によって、 本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかり し価値が増加しなかったときをいうと解すべきであるところ、 信用保証協会A支所長の被告人が 同協会をして返済能力のないBの債務を保証させたときは、 同債務がいまだ不履行の段階に至ら ず、 したがって同協会の財産に、 代位弁済による現実の損失がいまだ生じていないとしても、 経 済的見地においては、 同協会の財産的価値は減少したものと評価されるから、 同条にいう「本人 に財産上の損害を加えたとき」に当たるというべきである。 【記 述】 1.【判旨】は、 保証債務の負担を「財産上の損害」とし、 背任罪を本人の全体財産に対する罪 であることを否定している。 2.【判旨】によれば、 上記信用保証協会による上記保証債務の負担後、 Bが偶然金銭を入手し て主債務を期限内に弁済した場合に、 背任罪の未遂罪の成立を認めることになる。 3.【判旨】は、 保証債務の負担が「財産上の損害」に当たるか否かを判断するに当たり、 主債 務者の返済能力を問わないとの判断をしたものである。 4.【判旨】は、 保証債務の負担をもって「財産上の損害」と認めているから、 背任罪が侵害犯 であることを否定している。 5.【判旨】に対しては、 どの程度の財産的価値の減少をもって「損害」というのかが明確では ないという批判が可能である。 - 14 - 〔第20問〕(配点:4) 次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、 正しい場合 には1を、 誤っている場合には2を選びなさい。 (解答欄は、 アからオの順に[No.32]から[No. 36]) 【事 例】 甲は、 高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。 )を不正に入手 するため、 甲が警察官を装いAに電話をかけ、 これからA方を訪れる警察官の確認を受けながら カードを封筒に入れ、 同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、 警察官に成り済 ました乙(25歳、 男性)がA方を訪れ、 隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、 カ ードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。 )を考え、 乙に本件計画の実 行を指示し、 乙はこれを承諾した。 某日午前9時頃、 本件計画に基づき、 甲がAに電話をかけて 上記うそを言い、 乙は、 同日午前9時15分頃、 A方を訪ね、 Aにカードを封筒に入れるよう求 めた。 しかし、 乙の態度を不審に思ったAが、 乙に身分証の提示を求めたので、 乙は、 逮捕を免 れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、 Aを手拳で多数回殴り、 恐怖で抵抗で きないAからカードを奪って持ち去った。 同日午前9時20分頃、 乙は、 甲に電話で、 本件計画 どおりカードを入手したと伝えた。 同日午前9時30分頃、 甲は、 丙に電話をかけ、 本件計画の 内容を初めて説明し、 乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、 丙はこれを承諾した。 丙は、 同日午前11時頃、 乙と合流し、 カードを受け取って乙と別れ、 自動車でA方から約50 キロメートル離れた甲方に向かったが、 同日午後0時30分頃、 甲方付近で降車した際、 制服警 察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。 その際、 丙は、 Bを殴り、 Bに全治2 週間を要する打撲傷を負わせ、 その隙に上記自動車で逃走し、 同日午後1時頃、 甲と合流して甲 にカードを届けた。 その後、 丙の交際相手丁は、 丙が上記一連の犯行を行い、 警察から捜査され ていることを認識しつつ、 丙を丁の自宅にかくまった。 【記 述】 ア.乙がAからカードを奪った行為は、 窃盗罪の実行に着手した後、 Aに暴行を加えてこれを奪 取したことになるから、 乙に事後強盗既遂罪が成立する。 [No.32] イ.甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、 乙がAからカードを奪 取した行為について、 甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。 [No.33] ウ.甲は、 当初から丙にカードを運搬させる計画であり、 その運搬は重要な役割であるから、 丙 には盗品等運搬罪ではなく窃盗罪の共同正犯が成立する。 [No.34] エ.丙がBを殴って負傷させた行為には、 公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、 これらは観念的競 合となる。 [No.35] オ.丙のいずれの行為についても、 証拠上、 犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、 丁 が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない。 [No.36] - 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