論文式試験問題集[民事系科目第1問] - 1 - [民事系科目] 〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点は、50:50〕) 次の各文章を読んで、後記の〔設問1・〕及び〔設問2〕に答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。 【事実】 1.Aは、遠方に、空き地である甲土地を所有しており、甲土地の所有権の登記名義人はAであ る。 2.令和2年4月1日、Aの子Bは、Aの了承を得ないまま、甲土地について、Cとの間で、賃 料月額5万円、賃貸期間30年間、建物所有目的との約定による賃貸借契約(以下「契約@」 という。)をBの名において締結し、同日、甲土地をCに引き渡した。契約@の締結に当たり、 Cが、Bに対し、甲土地の所有権の登記名義人がAである理由を尋ねたところ、Bは、「Aは 父であり、甲土地は既にAから贈与してもらったものだから、心配はいらない。」と言い繕っ た。Cがなお不安がったことから、契約@には、甲土地の使用及び収益が不可能になった場合 について、損害賠償額を300万円と予定する旨の特約が付された。 3.令和2年7月1日、Cは、甲土地上に居住用建物(以下「乙建物」という。)を築造し、乙 建物について所有権保存登記を備えた。Cは、乙建物に居住している。 4.令和3年7月10日、Bが急死した。Bは、遺言をしておらず、また、Bの相続人は、Aの みである。Cは、Bの相続人が誰であるか分からなかったことから、Bの死亡後、甲土地の賃 料を供託している。 5.令和4年4月15日、Aは、甲土地をCが利用していることに気付き、Cに対し、甲土地の 所有権に基づき、乙建物を収去して甲土地を明け渡すよう請求した(以下「請求1」とい う。)。これに対して、Cは、「私は、契約@に基づいて甲土地を占有する権利を有してい る。仮にそのような権利がないとしても、300万円の損害賠償を受けるまでは甲土地を占 有する権利がある。」と反論した。 〔設問1〕 【事実】1から5までを前提として、次のア及びイの問いに答えなさい。 ア Cは、下線部の反論に基づいて請求1を拒むことができるかどうかを論じなさい。 イ 下線部の反論が認められない場合に、Cが下線部の反論に基づいて請求1を拒むことがで きるかどうかを論じなさい。 【事実】 6.【事実】5の後、AとCとの間で交渉が持たれ、令和4年6月1日、Cは、乙建物を代金2 80万円でAに売却し、同日、乙建物をAに引き渡した。その後、乙建物について、CからA への所有権移転登記がされた。 7.令和4年6月15日、Aは、乙建物について、Dとの間で、賃料月額12万円、賃料前月末 日払、賃貸期間2年間との約定による賃貸借契約(以下「契約A」という。)を締結し、同年 7月1日、乙建物をDに引き渡した。 Dは、令和4年7月分から9月分までの賃料を、それぞれ約定どおりAに支払った。 8.令和4年9月初めから雨が降り続く中、同月11日、乙建物の一室(以下「丙室」とい う。)で雨漏りが発生し、同日以後、丙室は使用することができなくなった。その後の調査に よれば、丙室の雨漏りは、契約Aが締結される前から存在した原因によるものであった。 - 2 - 9.令和4年9月13日、Dは、Aに何らの通知もしないまま、建設業者Eに丙室の雨漏りの修 繕工事を依頼した。Eは、雨漏りの状態を確認した上で、同月20日、この依頼を報酬30万 円で引き受け、同月24日から30日まで丙室の雨漏りの修繕工事(以下「本件工事」とい う。)を行った。Dは、Eに30万円の報酬を支払い、同年10月1日から丙室の使用を再開 した。 令和4年9月30日、Dは、翌日から丙室の使用が可能となったため、Aに令和4年10月 分の賃料を支払った。 10.令和4年10月10日、Dは、Aに対して、同年8月31日に支払った令和4年9月分の賃 料の一部を返還するよう請求する(以下「請求2」という。)とともに、DがEに報酬として 支払った30万円を直ちに償還するよう請求した(以下「請求3」という。)。Aは、この時 に初めて、丙室に雨漏りが発生した事実とDがEに本件工事を行わせた事実とを知った。 Aは、請求2及び請求3を拒み、Dに対し、「特に修繕工事を急ぐべき事情はなかったのだ から、Dは、そもそも、丙室の雨漏りを無断で修繕する権利を有していなかったはずだ。しか も、DがEに支払った報酬30万円は高すぎる。私が一般の建設業者に依頼していれば20万 円で足りたはずだ。」と反論した。 〔設問1〕 【事実】1から10までを前提として、次のア及びイの問いに答えなさい。 ア 請求2が認められるかどうかを論じなさい。 イ 請求3が認められるかどうかを論じなさい。なお、本件工事の実施について急迫の事情はなく、 また、本件工事と同じ内容及び工期の工事に対する適正な報酬額は20万円であるものとする。 【事実】 11. 令和5年9月15日、Fは、Gに無断で、Gが所有する丁土地を駐車場として使用し始めた。 Gは、Fとは知らない仲ではなかったことや、G自身は丁土地を使用する予定がなかったこと から、Fに対し、口頭で抗議をする以外のことをしなかった。 12. 令和5年12月5日、Gは、配偶者であるHと協議により離婚し、Hとの間で離婚に伴う 財産分与について協議をした。Gは、丁土地以外の財産をほとんど持っておらず、また、失職 中で収入がなかった。Gは、Hに対し、Gの財産及び収入の状況を伝えるとともに、丁土地は Fが無断で使用しているだけなので、いつでもFから返してもらえるはずであると説明した。 13. 令和5年12月6日、GとHとの間で、離婚に伴う財産分与として、Gが丁土地をHに譲 渡する契約(以下「契約B」という。)が締結された。その際、Gは、GではなくHに課税さ れることを心配して、そのことを気遣う発言をしたのに対し、Hは、「私に課税される税金は、 何とかするから大丈夫。」と応じた。Hは、Hにのみ課税されるものと理解していた。同月1 1日、丁土地について、GからHへの所有権移転登記がされた。 14. 令和6年1月10日、HとIとの間で、Hが丁土地を代金2000万円でIに売る契約 (以下「契約C」という。)が締結された。Hは、Iに対し、丁土地の使用に係る事情につい て、HがGから受けた説明のとおりに説明した。同日、Iは、Hに対し、契約Cの代金を支払 った。丁土地について、HからIへの所有権移転登記は、されなかった。 15. 令和6年1月15日、Gは、税理士である友人から、課税されるのは財産分与をした側で あるGであり、その額はおおよそ300万円であるとの指摘を受けた。Gは、契約Bに係る課 税についての誤解に基づきHとの間で契約Bを締結したことに気付いたため、同日、Hに対し、 契約Bをなかったこととする旨を伝えた。Iは、Gが契約Bに係る課税について誤解していた ことを契約Cの締結時に知らず、そのことについて過失がなかった。 16. 令和6年1月18日、Gは、丁土地を駐車場として使用しているFに対し、丁土地を買わな - 3 - いかと持ち掛けた。Gは、丁土地の所有権の登記名義人がHとなっていることについては、G とHとの間で契約Bが締結されたものの、Gが契約Bに係る課税について誤解していたため、 契約Bは既になかったこととなっているとFに説明した。同月25日、GとFとの間で、Gが 丁土地を代金2000万円でFに売る契約(以下「契約D」という。)が締結された。同日、 Fは、Gに対し、契約Dの代金を支払った。 〔設問2〕 【事実】11から16までを前提として、次の問いに答えなさい。 令和6年1月30日、Iは、丁土地を占有するFに対し、丁土地を明け渡すよう請求した(以下 「請求4」という。)。請求4が認められるかどうかを論じなさい。 - 4 - 論文式試験問題集[民事系科目第2問] - 1 - [民事系科目] 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点の割合は、60:40〕) 次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。 1.甲株式会社(以下「甲社」という。)は、建築設備機器の製造及び販売等を目的とする会社法 上の公開会社である取締役会設置会社であり、種類株式発行会社ではない。甲社の発行済株式の 総数は500万株であり、株主数は1000名であった。甲社には、A、B及びC(以下、A、 B及びCを総称して「Aら」という。)の3名の取締役並びにDほか2名の計3名の監査役がお り、Aが代表取締役を務めていた。なお、甲社の取締役であるAらは甲社の株式を保有していた が、甲社の監査役であるDほか2名は甲社の株式を保有していなかった。 乙株式会社(以下「乙社」という。)は、住宅の建設及び売買等を目的とする株式会社であり、 甲社の発行済株式の総数の20%に相当する100万株を保有する甲社の筆頭株主であった。 2.甲社の近年の業績が悪化していたことから、乙社は、令和3年7月20日、甲社に対し、@取 締役3名の解任の件、A監査役3名の解任の件、B取締役3名の選任の件、C監査役3名の選任 の件(以下、これらを総称して「本件各議題」という。)を目的とする株主総会の招集を請求し た。しかし、甲社は、株主総会の招集通知を発しなかった。 3.そこで、乙社は、令和3年9月27日、裁判所の許可を得て、甲社の株主に対し、本件各議題 を目的とする臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会1」という。)を開催するため、必要事項 を記載した招集通知を発した。当該招集通知が入った封書には、議決権行使書面及び株主総会参 考書類のほか「議決権の行使のお願い」と題する書面(以下「本件書面」という。)が同封され ていた。本件書面には、「甲社の改革の実現に御協力をお願い申し上げます。株主総会参考書類 に記載した乙社提案の各議案のいずれにも賛成していただいた方には、後日、1000円相当の 商品券を郵送にて贈呈させていただきます。全ての議案について同封した議決権行使書面の 『賛』の欄に○印を付けて御返送ください。」との記載がされていた。なお、甲社においては、 過去の定時株主総会に際して、甲社又は甲社の役員若しくは株主が一定の内容の議決権の行使又 は議決権の行使自体を条件として商品券等を提供したことはなかった。 4.令和3年10月20日、本件臨時株主総会1が開催され、本件各議題についての乙社提案の各 議案は、いずれも出席した株主の議決権の約75%の賛成により可決した(以下「本件決議1」 という。)。本件臨時株主総会1においては、出席した株主の議決権の数は、例年の定時株主総 会よりも約30%増加し、行使された議決権のうち議案に賛成したものの割合も、例年の定時株 主総会において行使された議決権のうち甲社が提案した議案(いずれも可決された。)に賛成し たものの割合よりも高いものであった。なお、本件臨時株主総会1において、甲社の株主が返送 した議決権行使書面には、賛否の欄に記入をしていない白票は存在しなかった。 5.乙社は、令和3年11月15日、本件各議題についての乙社提案の各議案のいずれにも賛成し た甲社の株主全員に対し、一人当たり1000円相当の商品券を送付した。これらの商品券の取 得や送付に要した費用については、乙社が全て負担した。 〔設問1〕 下記の小問に答えなさい。 〔小問1〕 上記3の時点で、甲社の監査役Dは、本件臨時株主総会1の招集通知と本件書面を見て、本 件臨時株主総会1の開催には法令違反があり、監査役として何らかの対応をする必要があるの - 2 - ではないかと考えた。Dほか2名の甲社の監査役3名が協議した結果、仮に本件臨時株主総会 1の開催に法令違反があったとしても、本件臨時株主総会1の開催をやめるように求める手段 の有無が別途問題となることが判明したため、Dは、弁護士に相談することとした。Dの相談 を受けた弁護士は、Dが会社法に基づいて本件臨時株主総会1の開催をやめるように求める手 段の有無についてどのように回答すべきか、論じなさい。なお、本件臨時株主総会1の開催に 法令違反があるかどうかについては、論じなくてよい。 〔小問2〕 上記5の時点で、本件各議題についての乙社提案の各議案に反対した甲社の株主Eが、本件 決議1に至った経緯に不満を抱き、株主総会決議の取消しの訴えを提起した場合に、Eの立場 において考えられる主張及びその主張の当否について、論じなさい。 下記6以下においては、上記2から5までの事実は存在しないことを前提として、〔設問2〕に 答えなさい。 6.乙社は、甲社の業績が長期的に悪化していたため、Aらに対して不満を持っていた。これに対 し、Aらは、考え方が大きく異なる乙社が筆頭株主のままでは甲社の意思決定を円滑に行うこと ができないし、乙社のような株主が存在するのは甲社が会社法上の公開会社であるからであり、 今後は甲社を会社法上の公開会社でない株式会社にすべきであると考えていた。また、Aらは、 1000名もの株主が存在していることも機動的な意思決定の妨げになるものと考えていた。そ こで、Aらは、令和3年12月、甲社の再建を支援してくれる丙株式会社(以下「丙社」とい う。)とともに、株式の併合をするなどして甲社の買収を行うこととした。 その結果、令和3年12月の時点で、甲社の発行済株式の総数は600株(全て普通株式であ る。)となり、丙社が200株を、Aが200株を、Bが100株を、Cが100株を、それぞ れ保有することとなった。また、甲社の定款には、譲渡による甲社の株式の取得について株主総 会の承認を要する旨、株式取得者が甲社の株主である場合には甲社はその取得を承認したものと みなす旨が定められた。そして、甲社は、引き続き取締役会を置くこととし、その取締役は、A らに加えて、丙社から派遣されたFの4名となり、引き続きAが代表取締役を務めることとなっ た。また、甲社の監査役は、従前と同様、Dほか2名の計3名となった。なお、これらの手続は、 全て適法に行われた。 7.丙社は、建築関係の中小規模の株式会社数社について、その株式の全てを保有したり、甲社や 下記8の丁株式会社(以下「丁社」という。)のように、その株式の一部を少数株主として保有 したりしていた。丙社は、甲社に対し、Fを取締役として派遣したり、取引先を紹介したりする などしてその再建に協力した。 8.甲社は、その製造する機器の品質に定評があったことに加え、建築設備機器に対する需要の増 加、丙社の協力及びAらの努力により、急速に業績を回復することができ、令和5年6月にはそ の経営が安定してきた。丙社は、甲社の再建はめどがついたと考え、今度は、甲社の営業範囲と 隣接する地域で建築設備機器の製造及び販売等を行う丁社の再建に注力するようになった。その 一環として、Fは、Aらに対し、甲社の持つ技術やライセンスを丁社に提供するように求めるな どしたため、FとAらとの間に見解の相違が見られるようになった。 9.Aらは、令和5年10月、丙社の本社を訪れ、丙社の代表取締役であるGと面会した。Aらは、 Gに対して、「甲社の再建に水を差すようなことはしないでほしい。」と伝えたところ、Gは、 「甲社の再建のために協力したのだから、今度は甲社が協力する番ではないか。甲社は、その技 術とライセンスを丁社に提供し、実際の生産は丁社に任せる方向で業務提携をしてはどうか。」 - 3 - などと提案し、両者の見解は一致しなかった。Gは、これを機に、甲社を丙社の完全子会社とし た上で将来的には丁社と合併させる方がうまくいくのではないかと考えるようになった。 10.Aは、令和5年11月1日、上記9の甲社を丙社の完全子会社にするというGの意向をFから 聞かされて驚がくし、B及びCと対応策を協議した。その結果、Aらで甲社の発行済株式の総数 の3分の2を保有していることから、甲社と競合関係にある丁社のために経営に介入されること を防ぎ、甲社の独立を維持するために、丙社を締め出すべきであるとの結論に達した。そして、 下記11の計画を実現するために、Bは、同月6日、Aに対し、甲社の株式100株を譲渡した。 Gが考えていた甲社を丙社の完全子会社にする案も、Aらが決定した甲社の独立を維持するた めに丙社を締め出すという案も、甲社の企業価値との関係では、客観的にいずれか一方が他方よ りも優れているとは言い難く、見解の分かれる問題であった。Bは、Aよりも前にGの案を聞い ており、当初はGの案もあながちおかしなものではないと考えていたが、Aが甲社の独立を維持 する必要があると強く主張し、Cもこれに賛同したことから、最終的にはAらの案を支持するこ とにした。 11.甲社の取締役会は、令和5年11月15日、適法な決議を経て、次の@からBまでの事項を一 連のものとして行う計画(以下「本件計画」という。)を決定した。 @ 甲社の株式について、300株を1株とする株式の併合(以下「本件株式併合」という。) を行うこととし、そのために臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会2」という。)を招集す る。なお、本件株式併合により1株に満たない端数となる株式については、甲社が、同月14 日に専門家から取得した株式価値算定書に基づいた価格で買い取ることとする。 A 本件株式併合の効力発生後遅滞なく、1株を200株に分割する株式の分割(以下「本件株 式分割」という。)を行う。 B 本件株式分割の効力発生後遅滞なく、B及びCに対する募集株式の第三者割当て(甲社が上 記@で買い取った甲社の株式であって本件株式分割後の200株の自己株式を処分するという ものである。)を行うこととし、そのために臨時株主総会を招集する。この募集株式の第三者 割当ては、Bに100株を、Cに100株を、それぞれ割り当てるものである。 これらを行うことにより、甲社の発行済株式の総数は400株となり、Aが200株を、Bが 100株を、Cが100株を、それぞれ保有することとなる。 Fは、甲社のような株式会社において特定の株主を狙い撃ちにして締め出すことは許されない と主張して本件計画に反対した。しかし、Aらが賛成したことにより本件計画が可決された。 12.甲社は、令和5年12月11日、適法な招集手続を経て、本件臨時株主総会2を開催した。本 件臨時株主総会2では、全ての株主が出席し、Aが上記8及び9の丙社による提案等を説明した 上で、甲社と競合関係にある丁社のために経営に介入されることを防ぎ、甲社の独立を維持する ために、丙社を締め出す必要があるとして、本件株式併合が必要な理由を説明した。なお、本件 株式併合により1株に満たない端数となる株式の買取価格は、公正な価格と認められるものであ った。 本件臨時株主総会2に出席したGは、「金額の問題ではなく、信義の問題だ。なぜ再建に協力 した我々だけを排除するのか。このようなものは到底容認できない。」と述べたところ、Aは、 「御社とは甲社の経営について深刻な見解の相違があるため、我々経営陣が退くのでなければ、 最終的には退出していただくほかない。」と回答した。本件株式併合に関する事項を定める件に ついては、丙社が反対したものの、他の株主全ての賛成により、甲社提案のとおり可決された (以下「本件決議2」という。)。 13.本件株式併合の効力は、本件決議2によって効力発生日として定められた日に発生した。なお、 本件株式併合に際して行うべき株主への通知及び本件株式併合に関する書面等の備置き等は、全 - 4 - て適法に行われた。 〔設問2〕 上記13の時点で、丙社は、本件株式併合の効力を争うことを検討している。丙社が採ること ができる会社法上の手段に関し、丙社の立場において考えられる主張及びその主張の当否につい て、論じなさい。 - 5 - 論文式試験問題集[民事系科目第3問] - 1 - [民事系科目] 〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は、35:35:30]) 次の文章を読んで、後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 1.Aは、令和2年4月1日、その所有する建物(以下「本件建物」という。)をYに対して賃貸 する旨の契約を締結し(以下「本件契約」という。)、本件契約に基づき本件建物をYに引き渡 した。本件契約では、賃貸期間を契約日から3年間とすること、賃料は月額6万円を前月末日ま でに支払うこと、Yは本件建物を居住用建物として使用し、他の目的での使用はしないこと、Y が賃料の支払を怠ったとき又は前記使用目的に違反したときは、Aは催告を要することなく本件 契約を解除することができることが定められた。 2.その後、Aは令和3年7月に死亡し、その子であるX1、X2及びX3(以下、併せて「X ら」という。)が遺産分割協議をした。その結果、本件建物については、Xらがそれぞれ3分の 1の持分で共有すること、本件契約については、Xら全員が賃貸人となること、本件契約の更新、 賃料の徴収及び受領、本件建物の明渡しに関する訴訟上あるいは訴訟外の業務についてはX1が 自己の名で行うことが取り決められた。 3.これを受けて、X1は、同年9月に本件契約の現状について調べたところ、同年6月から8月 までの3か月分の賃料が支払われていないことが判明したことから、X1は、本件契約を解除し て本件建物の明渡しを求める訴訟を提起しようと考え、X2及びX3にその旨を相談した。これ に対し、X2及びX3は、Yに対して本件建物の明渡しを求めるとのX1の意向には賛成したが、 自らが当事者となることは時間的・経済的負担が大きいことを理由に、X1単独で訴訟を提起し てほしいと述べた。 以下は、X1から相談を受けた弁護士L1と司法修習生Pとの間の会話である。 L1:X1としては、できればX2及びX3と共同で訴訟を提起したいとの気持ちがあるようです が、それが難しいようなら、自分一人で訴訟を提起することもやむを得ないということでした。 そこで、X1のみが原告となって訴訟を提起する方法について検討してみましょう。 P:本件建物の明渡しについて、賃貸借契約の終了に基づく明渡請求権を訴訟物とした場合は、 X1単独で訴訟を提起することができるのではないかと思います。 L1:固有必要的共同訴訟ではないということですね。それ以外に何かありませんか。 P:X1が自らの請求権について当事者となるだけでなく、X2及びX3の訴訟担当者としても 関与するということでしょうか。本件では、X2やX3からの選定行為はないので、X1は選 定当事者になることはできませんが、明文なき任意的訴訟担当とすることが考えられると思い ます。 L1:なるほど。それでは、まず、任意的訴訟担当の意義及びそれが明文なくして認められるため の要件を説明してもらえますか。その要件の説明に当たっては、民法上の組合契約に基づいて 結成された共同事業体を契約当事者とする訴訟について当該共同事業体の代表者である組合員 の任意的訴訟担当を認めた最高裁判所昭和45年11月11日大法廷判決・民集24巻12号 1854頁を踏まえるようにしてください。これを「課題1」とします。その上で、課題1に おける意義及び要件の説明を踏まえ、本件においてX1による訴訟担当が明文なき任意的訴訟 担当として認められるかについて、検討してください。その際、本件と前記最高裁判例の事案 との異同に留意するようにしてください。これを「課題2」とします。 - 2 - 〔設問1〕 あなたが司法修習生Pであるとして、L1から与えられた課題1及び課題2について答えなさい。 なお、以下に掲げる【事例(続き・その1)】及び【事例(続き・その2)】に記載されている事 実関係は考慮しなくてよい。 【事 例(続き・その1)】 4.X2及びX3はX1の説得に応じ、Xらはそろって弁護士L1にYに対する訴訟の提起等を委 任した。これを受けて、L1は、令和4年1月24日、令和3年6月から8月までの3か月分の 賃料の支払がないとして、催告することなく、同日をもって本件契約を解除する旨を内容証明郵 便にてYに送付した。さらに、L1は、Xらを原告、Yを被告として、本件契約の終了に基づく 本件建物の明渡しを求める訴え(以下、この訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)を提起し た。 5.これに対し、Yは、弁護士L2に訴訟委任をした上、本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、 「未払とされる賃料は全額支払済みである。無催告解除が認められるに足りる信頼関係の破壊の 事実はない。」と主張してXらの請求を争った。 6.裁判所は、本件訴訟に係る事件を弁論準備手続に付すこととした。その際、前記3か月分の賃 料の支払を示す書証が提出されていなかったことから、裁判官の示唆により、第1回弁論準備手 続期日においては、賃料不払による無催告解除の可否に関して当事者間の信頼関係の破壊を基礎 付ける事実関係の存否につき、当事者双方が口頭で自由に議論し、その結果を踏まえ、第2回弁 論準備手続期日以降に準備書面を提出して具体的な争点を確定することとされた。 7.第1回弁論準備手続期日において、Yは、「令和3年10月以降、自分の妻が、本件建物にお いて何回か料理教室を無償で開いたことがあった。X1は夫婦でその料理教室に毎回参加してい たが、賃料の話など一切出なかった。」と話したところ(以下、Yのこの発言を「本件陳述」と いう。)、第2回弁論準備手続期日の前に、L1から、「Yによる本件建物の使用は本件契約に おいて定められた使用目的に違反するものであり、賃料不払とは別の解除原因を構成するもので あるところ、Yはかかる請求原因事実を自白したものであり、Xらはこれを援用する。」と記載 された準備書面が裁判所に提出された。 以下は、第2回弁論準備手続期日の前にされた、L2と司法修習生Qとの間の会話である。 L2:Yは、本件陳述はXらとの間の信頼関係が破壊されていないことを裏付ける事実として述べ たにすぎないのに、このような形でXらが主張してきたのは心外であると怒っていました。 Q:私も、このような揚げ足取りの主張は許されないと思います。 L2:そうですね。第2回弁論準備手続期日においてXらの準備書面を陳述させるべきでないと主 張することが考えられますが、裁判所が陳述を許すことも想定しておく必要があります。そこ で、次善の策として、裁判上の自白は成立しない、又はこれが成立するとしても撤回が許され るとの主張を準備しておきましょう。この点について検討してもらえますか。検討に当たって は、まず裁判上の自白の意義及び要件に触れ、それを前提に、本件陳述がされた場面や当該手 続の目的等を踏まえ、本件陳述について裁判上の自白が成立しないとの立場又はこれが成立す るとしても撤回が許されるとの立場のいずれかを選択して論じてください。これを「課題」と します。 〔設問2〕 あなたが司法修習生Qであるとして、L2から与えられた課題について答えなさい。なお、以下 に掲げる【事例(続き・その2)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。 - 3 - 後記8以下においては、前記6及び7の事実は存在しないことを前提として、〔設問3〕に答え なさい。 【事 例(続き・その2)】 8.裁判所は、本件訴訟につき、令和5年4月に口頭弁論を終結し、Yが主張する賃料の支払は認 められないものの、未払の期間及び本件契約の解除に至る経緯等からすれば、信頼関係が破壊さ れたとまでは認められないとして、Xらの請求を棄却するとの判決(以下「本件判決」とい う。)をし、本件判決は確定した。 9.その後、Yが、令和3年1月から令和5年1月までの間、本件建物において、株式投資に関す るセミナー(以下「本件セミナー」という。)を有料で月一、二回の割合で開催していたことが 判明した。そこで、Xらは、これが用法遵守義務違反に該当するとして本件契約を解除すること ができないかと考えるに至り、L1に相談した。 以下は、L1と司法修習生Rとの間の会話である。 L1:Xらとしては、本件訴訟では敗訴したが、本件訴訟とは異なる前記9の用法遵守義務違反を 理由として本件契約を解除し、再度本件建物の明渡しを求める訴え(以下、この訴えに係る訴 訟を「後訴」という。)を提起したいと考えているようです。所有権に基づく明渡請求権を訴 訟物とすることも考えられますが、ここでは、賃貸借契約終了に基づく明渡請求権を訴訟物と することを前提に検討してみましょう。 R:本件訴訟の訴訟物は賃貸借契約終了に基づく明渡請求権ですから、後訴も同一の訴訟物にな ります。そして、本件セミナーの開催は、いずれも本件訴訟の事実審の口頭弁論終結時(以下 「基準時」という。)より前の事実であり、基準時後は開催されていないとのことですから、 確定した本件判決の既判力が後訴に作用し、後訴は請求棄却となるように思います。また、解 除権の行使は基準時後にされていますが、学説では、基準時後の解除権の行使の主張が既判力 により遮断されないとするのは難しいとする説が強いということを授業で聞きました。 L1:そうですか。それでは、別の観点から検討してみましょう。Xらによれば、XらがYによる 本件セミナーの開催に気付いたのは本件判決の確定後であったとのことですから、用法遵守義 務違反を理由とする解除権の行使の主張は本件判決の既判力によっては遮断されないと考える ことはできないでしょうか。 R:確かに、本件判決の既判力によって主張を制限してしまうのは、Xらにやや酷な気もします。 L1:ただ、Xらに酷というだけでは裁判所は受け入れてくれないと思いますので、そのための理 論構成を考える必要があります。まず、既判力によって基準時前の事由に関する主張が遮断さ れる根拠を考えてみましょう。そして、それを踏まえ、本件の具体的な事実関係に照らし、本 件判決の既判力によって解除権行使の主張を遮断することが相当かどうかを検討してください。 これを「課題」とします。なお、結論はどちらでも構いませんが、検討に当たっては、自説と 反対の結論を採る見解にも留意するようにしてください。 〔設問3〕 あなたが司法修習生Rであるとして、L1から与えられた課題について答えなさい。なお、【事 例(続き・その1)】に記載されている6及び7の事実関係は考慮しなくてよい。 - 4 -