論文式試験問題集[倒 - 1 - 産 法] [倒 産 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の【事例】について、 以下の設問に答えなさい。 なお、 解答に当たっては、 文中において特定されている日時にかかわらず、 令和6年1月1日現 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 A株式会社(以下「A社」という。 )は、 子供服の販売を業とする株式会社であり、 取締役会 設置会社であるところ、 国内で小売店10店舗を展開していた。 A社の発行済株式は、 代表取締 役であるBが70%を保有し、 残りの30%は別の者が保有している。 A社は、 令和2年春頃から販売不振に陥って売上げが落ち始め、 C銀行から事業資金の融資を 受けて資金を工面してきたが、 売上げが回復することはなく、 令和4年3月末日時点で債務超過 に陥った。 その後、 A社は、 収支が改善しないまま資金繰りに窮し、 令和5年3月末日、 上記1 0店舗のうち、 4店舗の事業を他の会社に譲渡し(以下「本件事業譲渡」という。 )、 残る不採 算店舗6店舗を閉店し、 事業を停止した。 A社は、 事業停止後、 C銀行に対する借入金債務や仕入先等に対する取引債務を弁済しないま ま何らの手続も採らずにいたところ、 A社の債権者であるC銀行は、 令和5年7月21日、 A社 について破産手続開始の申立てをした。 同申立てを受けた裁判所は、 同年8月末日、 A社につい て破産手続開始の決定をし、 破産管財人としてDを選任した。 〔設 問〕 以下の1から3については、 それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.破産管財人Dの調査により、 以下の事実が判明した(<判明した事実>)。 破産管財人Dは、 <判明した事実>に基づきBの責任を追及するために、 破産法上、 どのような手続を採ること が考えられるか。 その制度趣旨にも言及しつつ説明しなさい。 なお、 破産管財人Dは、 BがA 社からの役員報酬の振込先としてE銀行の預金口座を指定していたことを把握している。 <判明した事実> Bの弟は、 個人で飲食店を経営していたところ、 令和4年6月、 Bに対し、 資金繰りに窮し ているとの相談を持ち掛け、 Bは、 同月末日、 独断でA社から弟に対する1000万円の貸付 けを実行させた。 その後、 弟は、 飲食店を閉店し、 A社からの上記借入金を返済することが見 込めない状況になった。 2.Bに関して以下の事実(<Bに関する事実>)があった場合、 Bの破産手続において、 破産 管財人D及び裁判所は、 Bの資産状況等の情報を収集するために、 破産法上、 どのような調査 や手続を行うことができるか。 破産法における破産者の義務にも言及しつつ説明しなさい。 <Bに関する事実> Bは、 A社のC銀行に対する債務について連帯保証をしていたが、 C銀行から保証債務の履 行を求められても、 「資産がないので支払うことはできない」と述べるだけでC銀行との交渉 に応じなかった。 他方で、 破産管財人Dの調査の過程において、 Bが財産を隠匿していると疑われる内容の情 報やBが多額の遊興費を支出しているとの情報が複数の関係者から破産管財人Dの下に寄せら れていた。 破産管財人Dは、 令和5年11月に開かれたA社の債権者集会において、 Bに関す る上記各情報が寄せられていることなどを報告した。 そこで、 C銀行は、 令和6年1月31日、 Bについて破産手続開始の申立てをしたところ、 同年3月18日、 Bについて破産手続開始の決定がされ、 A社の破産手続と同様に破産管財人 としてDが選任された。 - 2 - 3.本件事業譲渡の内容等が以下の<本件事業譲渡の内容等@>又は<本件事業譲渡の内容等 A>のとおりであった場合において、 破産管財人Dは本件事業譲渡を対象として否認権を行使 することができるか。 本件事業譲渡の対象となった4店舗の事業価値が1店舗当たり1000 万円で合計4000万円であったものとして、 各場合について論じなさい。 <本件事業譲渡の内容等@> A社は、 令和5年3月末日、 Bが代表取締役を務めるE株式会社(以下「E社」という。 ) に対し、 4店舗の事業を合計4000万円で譲渡した。 A社は、 A社の取締役であるFから事業資金として5000万円を借り入れており、 その返 済期限が既に到来していたところ、 Bは、 A社の代表取締役として、 E社から受領した事業譲 渡代金4000万円を同日、 同借入れへの弁済としてFに支払った。 <本件事業譲渡の内容等A> A社は、 令和5年3月末日、 G株式会社(以下「G社」という。 )に対し、 4店舗の事業を 譲渡した。 A社は複数の金融機関に対して借入金債務を負っていたところ、 G社は、 本件事業譲渡に当 たり、 A社の金融機関Hに対する借入金債務3000万円について債務引受けをした。 そのた め、 本件事業譲渡代金額は、 4店舗の事業価値の合計4000万円から同債務の額を控除して 1000万円と定められた。 なお、 A社は、 本件事業譲渡に際し、 G社に対し、 A社が債務超過の状態にあり資金繰りに 窮していること及び他の店舗は閉店してA社が事業を停止することを説明していた。 - 3 - 〔第2問〕(配点:50) 次の【事例】について、 以下の設問に答えなさい。 なお、 解答に当たっては、 文中において特定されている日時にかかわらず、 令和6年1月1日現 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 A株式会社(以下「A社」という。 )は、 ワインの輸入・販売事業とレストラン事業を行って おり、 レストラン事業においては、 複数のレストランを経営しているほか、 料理の定期販売サー ビス(以下「本件定期販売サービス」という。 )を提供していた。 A社は、 毎年12月に本件定 期販売サービスの申込みを募集し、 同月末日までに代金6万円を支払って本件定期販売サービス に申し込んだ顧客に対して、 翌年1月から12か月にわたり、 毎月1回、 月替わりの料理を宅配 便で送付するものとされていた。 A社は、 令和3年頃からレストラン事業において赤字が続くようになり、 令和4年には、 ワイ ンの輸入・販売事業において売上げが低迷するなどして、 令和5年1月には資金繰りに窮する状 況に陥った。 そのため、 A社は、 同年2月1日に再生手続開始の申立てをした。 同申立てを受け た裁判所は、 同日、 監督命令を発令し監督委員を選任して、 同月10日、 A社について再生手続 開始の決定をした。 再生手続開始後、 A社は、 事業再生の方針として、 レストラン事業から撤退 し、 ワインの輸入・販売事業に集中することを決定した。 〔設 問〕 以下の1及び2については、 それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.A社の申立代理人は、 再生計画案の可決見込み等を検討することにした。 以下のからま でについて解答しなさい。 なお、 及びでは、 債権調査手続において、 A社は届出再生債権 の内容を認め、 また、 届出をした他の再生債権者からも異議が述べられなかったものとする。 民事再生法において再生計画案の可決要件がどのように定められているかについて説明し なさい。 レストラン事業における取引業者Bは、 売掛金500万円、 再生手続開始の前日までの遅 延損害金10万円及び再生手続開始後から支払済みまで年14.6%の割合による遅延損害 金を再生債権として届け出た。 この場合において、 Bの届出再生債権の議決権額がどのよう に定められるかについて説明しなさい。 海外ワイナリーCは、 ユーロ建てで200万ユーロの売掛金について再生債権として届け 出た。 この場合において、 Cの届出再生債権の議決権額がどのように定められるかについて 説明しなさい。 なお、 再生手続開始決定時には1ユーロ140円であったが、 その後、 急速 に円安が進んでいるものとする。 A社は、 令和4年12月、 本件定期販売サービスの申込みを募集したところ、 1000人 から申込みがされ、 それぞれから6万円の入金がされた。 しかし、 A社は、 これらの者に対 して一度もサービスを提供しないまま、 本件定期販売サービスを終了した。 本件定期販売サービスに申し込んだ上記1000人のうち、 200人は、 それぞれ6万円 を再生債権として届け出たが、 800人からは再生債権の届出がなかった。 A社は、 本件定期販売サービスに申し込んだ者について顧客リストを作成しており、 届出 のなかった債権についても顧客リストに基づいて再生債権として認めることとした。 そして、 A社は、 799人について、 それぞれ6万円を再生債権として自認する旨を認否書に記載し たが、 顧客リストからの転記ミスがあったため、 顧客Dの再生債権だけは認否書に記載され なかった。 この場合に、 再生債権の届出がなかった上記800人の再生債権に関し、 再生計画案の決 議における取扱いや、 再生計画認可の決定が確定した場合の取扱いについて説明しなさい。 - 4 - 2.A社は、 レストラン事業を始めるに当たり、 農家であるEとの間で、 継続的売買契約(以下 「本件売買契約」という。 )を締結していた。 本件売買契約においては、 A社は、 Eに対して 生産方法を指定して有機野菜の生産を依頼し、 これに基づいて生産された有機野菜を買い取る ものとされていた。 そして、 A社が本件売買契約を解除するには、 Eに対して1年前に解除の 予告をする必要があり、 予告期間が不足する場合にはその不足期間に応じて定められた額(即 時解除の場合は1200万円)の違約金を支払う旨の条項(以下「本件違約金条項」とい う。 )が定められていた。 A社は、 事業再生方針に従い、 監督委員の同意を得た上で、 Eに対し、 本件売買契約を即時 解除する旨の通知をした。 同解除通知を受けたEは、 本件違約金条項に基づき、 1200万円 の違約金請求権を有すると主張し、 A社の再生手続において、 同違約金請求権を再生債権とし て届け出た。 これに対し、 A社は、 債権調査手続において、 同債権を認めない旨を認否書に記 載した。 以上の事実を前提に、 以下の及びについて解答しなさい。 Eは、 上記認否書の記載を争って自らの届出再生債権の存在を主張するために、 民事再生 法上、 どのような手続を採る必要があるかについて説明しなさい。 A社の再生手続において、 Eが再生債権として届け出た違約金請求権は認められるか。 A 社からの反論を踏まえ、 本件売買契約の即時解除について本件違約金条項が適用されるかを 検討しつつ論じなさい。 なお、 本件違約金条項について公序良俗違反(民法第90条)は考慮しなくてよい。 また、 Eの生産する有機野菜は容易に他の取引先に販売することができるものであり、 本件売買契 約が即時解除されてもEには損害が発生しない見込みであるものとする。 - 5 - - 6 - 論文式試験問題集[租 - 7 - 税 法] [租 税 法] 〔第1問〕(配点:40) 東京都内の賃貸物件に居住するAは、 平成29年10月1日、 定年退職後の居宅の建築用地とし て、 自らの出身地であるP県内の土地(以下「本件土地」という。 )を、 時価である3000万円 で購入し、 同日、 所有権移転登記を了した。 令和4年10月頃、 Aは、 令和5年3月末日の定年退職後に都内のスタートアップ企業であるQ 株式会社(以下「Q社」という。 )が発行する株式を取得して経営に参画することが決まり、 その ための資金が必要となったため、 本件土地を急きょ売却することとした。 そこで、 Aは、 P県在住 の旧友Bに、 本件土地の売却話を持ち掛け、 令和4年12月1日、 Bとの間で、 本件土地(当時の 時価4000万円)を以下の内容で売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。 )を締結し、 下記A記載の手付金を受領した。 @ 本件土地の売買代金を3500万円とする。 A 買主Bは、 売主Aに対し、 手付金として300万円を、 本件売買契約の締結時に支払う。 こ の手付金は、 解約手付と違約手付を兼ねるものとし、 残代金が支払われた際に、 売買代金の一 部に無利息にて充当する。 B 令和5年3月1日付けで、 買主Bは、 売主Aに対し、 残代金3200万円全額を支払い、 売 主Aは、 買主Bに対し、 本件土地を引き渡すとともに、 その所有権移転登記手続に必要な書類 を引き渡すものとする。 令和5年2月に、 Aは、 Bから、 残代金のうち2700万円を同年3月1日に現金で支払うとと もに、 残りの500万円についても同年9月30日までには必ず支払うので、 同年3月1日に本件 土地の引渡しを受けたい旨の申出を受けた。 Aは、 一抹の不安を覚えたものの、 A自身が急ぎで資 金を必要として持ち掛けた話であり、 Bが信頼のおける長年の友人であることから、 Bの申出を受 け入れることとした。 令和5年3月1日、 Aは、 本件土地の売買代金の一部としてBから現金27 00万円の支払を受け、 手付金300万円を売買代金に充当するとともに、 Bに対して、 本件土地 の所有権移転登記手続に必要な書類を渡して、 本件土地の引渡しも完了した。 Bは、 その後間もな く本件土地の所有権移転登記を了した。 ところが、 Bは、 令和5年9月30日になっても、 残代金500万円の支払を行わず、 Aからの 残代金500万円の支払請求に応じようともしなかった。 Bは、 個人で卸売業を営み、 毎年確定申告をしていたところ、 令和4年12月1日時点において、 取引先である個人Cに対して同年10月20日に納入した商品に係る2000万円の売掛債権(支 払期限は令和5年1月20日。 以下「本件債権」という。 )を有していた。 しかし、 当該期限を過 ぎても支払はなされず、 令和5年3月15日、 Cが破産手続開始決定を受けたため、 本件債権の回 収が滞り、 Bは、 その事業の資金繰りにも窮するようになった。 令和5年12月15日にはCの破 産手続が終結し、 本件債権の全額が回収不能であることが確定した。 Aは、 令和5年3月末日の定年退職後、 直ちに本件土地の売却代金を用いてQ社株式を取得し、 Q社の経営に参画していたが、 次第に他の経営参画者との関係が悪化し、 令和6年3月には、 Q社 株式を取得価額と同額で他の株主に譲渡し、 経営から手を引くことになった。 このためAは、 Bに 対して残代金500万円の請求を続けるよりも、 本件土地を取り戻して家を建て、 静かな老後を送 りたいと考えるようになり、 令和6年4月10日、 Bによる債務不履行を理由として本件売買契約 を解除する意思をBに通知するとともに、 本件土地の所有権移転登記の抹消登記手続に応じるよう に求めた。 Bが速やかに登記手続に応じ、 本件土地をAに引き渡したため、 Aは、 令和6年4月2 0日、 受領済みの本件土地の代金3000万円から、 違約金として300万円を控除した残額27 00万円をBに返還した。 なお、 Aが本件土地を取り戻した令和6年4月時点での本件土地の時価 は4100万円であった。 - 8 - 以上の事案について、 以下の設問に答えなさい。 解答に当たっては、 理由を付し、 根拠条文があ る場合はそれを明記しなさい。 ただし、 租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、 事案中の年 月日にかかわらず、 令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。 〔設 1 問〕 Aが令和5年分の所得税について期限内申告をする場合において、 本件売買契約に係る譲渡 所得の金額の計算はどのように行われるか、 手付金の扱いを含めて論じなさい。 なお、 Aは令 和5年中、 他の資産の譲渡を行っておらず、 Aが負担した本件土地の譲渡に要した費用は10 0万円である。 2 Aは、 設問1における申告と同時に所得税の納付を完了した。 本件売買契約の解除と原状回 復は、 Aの令和5年分の譲渡所得の金額の計算にどのように影響するか。 またその結果、 納付 した税額が過大になっていると考えたAは、 どのような手続をとることができるか。 3 本件売買契約の解除に伴い、 AがBから得た違約金300万円は、 所得税法上、 Aのいつの 年分のいかなる所得に分類されるか。 4 Bは、 本件債権額2000万円を、 令和4年分の事業所得の収入金額に含めて期限内申告を した。 令和5年12月15日に本件債権の全額回収不能が確定したという事実は、 Bのいつの 年分の所得金額の計算にどのように影響するか。 - 9 - 〔第2問〕(配点:60) Aは、 平成21年4月に、 ある大学の医学部に入学し、 平成27年3月に当該大学を卒業し医師 免許を取得するまで、 医療法人B(以下「B法人」という。 )から授業料相当額の甲奨学金(貸与 型)を受け、 その全額を授業料に充当していた。 Aは、 平成27年4月から令和2年3月までの間、 B法人傘下の病院で常勤の医師として勤務を継続したことにより甲奨学金の返還免除の要件を満た したため、 同月にB法人から甲奨学金の全額300万円について返還免除の決定を受けた。 B法人 は、 この決定により、 令和2年3月に、 Aに対し、 通常の給与に加えて免除益相当額の給与の支払 があったものとして処理し、 これらの全額に対し源泉徴収を行い、 徴収した税額を直ちに国に納付 した。 なお、 Aは、 現在に至るまで当該病院で勤務を継続し、 毎年確定申告を行っている。 Aの父Cは、 製造業を営む株式会社D(以下「D社」といい、 その事業年度は暦年である。 )の 製造部長として勤務していた。 D社は、 令和元年5月に、 生産用機械乙(以下、 単に「乙」とい う。 )の製作と設置を、 株式会社E(以下「E社」という。 )に委託する内容の請負契約を、 E社 との間で締結した。 当該契約では、 D社による乙の試運転を経た性能確認(検収)をもって乙の引 渡しと所有権移転が完了し、 同時に対価が支払われることとされた。 Cら従業員は、 令和元年11 月から試運転として生産工程で乙の利用を開始し、 その後も使い続けていたが、 乙に不具合が度々 生じたため、 E社による乙の修理や調整等の対応を要し、 乙の正常な動作確認と検収が完了したの は令和2年1月末日であった。 同日以降、 乙は、 特に問題なく、 D社の生産工程において稼動して いる。 令和3年1月にCが死亡した。 唯一の相続人であるAが単純承認により承継したCの相続財産に は、 Cが預託金を預けて取得した丙ゴルフ場の会員権(以下「丙会員権」という。 )が含まれてい た。 丙会員権は、 丙ゴルフ場施設の優先的利用権と預託金返還請求権、 会費納入義務が一体となっ た契約上の地位であり、 所定の手続を経て譲渡可能とされていた。 Cは生前、 年会費を納入し、 月 に二、 三回程度、 丙会員権を利用して趣味のゴルフを楽しんでいた。 もっとも、 Aが相続により取 得した時点で、 丙会員権の時価は、 Cがその取得に要した金額を下回っていた。 相続後Aは、 名義 書換料を支払って丙会員権の名義をAに変更し、 丙会員権を利用して月に1回程度ゴルフをしたが、 もともとゴルフにCほどは興味がなく、 どちらかといえば将来の丙会員権の値上がりの可能性や、 Cから聞いていた含み損を使った節税策に関心があった。 丙会員権は相続後も値上がりに転じる気 配がなかったため、 令和5年12月に、 Aは、 丙会員権を第三者に売却して損失を確定させた。 な お、 Aは令和5年中に給与所得以外に所得を得ておらず、 また、 同年にAが譲渡した資産は丙会員 権のみである。 以上の事案について、 以下の設問に答えなさい。 解答に当たっては、 理由を付し、 根拠条文があ る場合はそれを明記しなさい。 ただし、 租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、 事案中の年 月日にかかわらず、 令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。 〔設 1 問〕 Aが令和2年3月にB法人から受けた、 甲奨学金の返還免除に係る300万円の経済的利益 に関し、 B法人が行った源泉徴収は、 所得税法に従ったものであるか。 2 仮に設問1における源泉徴収が所得税法に従ったものでないとした場合、 A及びB法人は、 300万円の経済的利益に係る源泉徴収税額相当額を取り戻すために、 それぞれどのような法 的主張が可能か。 令和2年分のAの確定申告との関連を踏まえて論じなさい。 3 D社が、 会社法上の利益計算において、 生産用機械乙に関し令和元年事業年度に減価償却費 を計上している場合、 法人税法上も、 同事業年度に当該減価償却費の全部又は一部を損金に算 入することは可能であるか。 4 Aは、 所得税法の関係条文の文言から、 丙会員権の譲渡による損失の金額の計算に際し、 A が支払った名義書換料は無視されると考えた。 このAの解釈に問題はないか。 - 10 - 5 Aは、 令和5年分の総所得金額の計算上、 丙会員権の譲渡による損失の金額を、 同年の給与 所得の金額から控除することは可能であるか。 解答に当たっては、 その根拠規定の趣旨にも言 及しなさい。 (参照条文)所得税法施行令 (生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等) 第178条 法第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で 定めるものは、 次に掲げる資産とする。 一 競走馬(中略)その他射こう的行為の手段となる動産 二 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、 娯楽又 は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、 娯楽、 保養又は鑑賞の目的で所 有する資産(略) 三 (以下略) (損益通算の対象とならない損失の控除) 第200条 法第69条第2項(損益通算の対象とならない損失)に規定する政令で定める損失の 金額は、 第178条第1項第1号(生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)に 規定する競走馬の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額とする。 2 (略) (参照条文)法人税法施行令 (減価償却資産の範囲) 第13条 法第2条第23号(定義)に規定する政令で定める資産は、 棚卸資産、 有価証券及び繰 延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその 価値の減少しないものを除く。 )とする。 一 建物及びその附属設備(略) 二 構築物(略) 三 機械及び装置 四 (以下略) - 11 - - 12 - 論文式試験問題集[経 - 13 - 済 法] [経 済 法] 〔第1問〕(配点:50) 中部地区に所在する55の地方公共団体(以下「55団体」という。 )は、 各々、 毎年一定期間 ごとに、 浄水場で使用する消毒用の製品(以下「甲製品」という。 )を指名競争入札の方法により 発注している(以下、 この入札を「甲製品の入札」という。 )。 X1社ないしX9社は、 いずれも甲製品のメーカーである(以下、 X1社ないしX9社を「メー カー9社」という。 )。 我が国における甲製品のメーカーはメーカー9社以外にも存在するが、 メ ーカー9社の甲製品のシェア(売上額に基づく割合)は合計約9割である。 メーカー9社は、 甲製品の入札について、 いずれも指名資格を有しておらず、 入札に当たっては、 メーカー9社の各甲製品をそれぞれ専門に販売する販売業者であるZ1社ないしZ9社(Z1社な いしZ9社はいずれも指名資格を有している。 X1社の甲製品を専門に販売する販売業者がZ1社、 X2社の甲製品を専門に販売する販売業者がZ2社、 Z3社以下についても同じ。 以下、 Z1社な いしZ9社を「販売業者9社」という。 )に指示して、 入札に参加させていた。 販売業者9社は、 従来から、 いずれも甲製品の販売について特に営業活動をしておらず、 各メーカーの指示に従った 価格で甲製品を顧客に販売し、 その売上額から一定率のマージンを受け取っていた(なお、 物流上 の必要等からメーカーと販売業者の間に卸業者が入ることもあった。 )。 メーカー9社とそれぞれ の販売業者9社との間に、 いずれも資本関係はない。 Y社は、 メーカーから甲製品を仕入れ、 それを販売業者に販売する卸業者であり、 甲製品の入札 について指名資格を有していない。 甲製品の入札で販売業者9社のいずれかが落札した場合、 当該 販売業者は、 指示をしたメーカーから甲製品を仕入れ、 それを55団体に供給していたが、 当該メ ーカーと当該販売業者との取引の間に卸業者としてY社が入ることもあった。 令和2年以前、 メーカー9社は、 甲製品の入札に関して直接に連絡交渉し合い、 受注調整を行う ことがあった。 しかし、 調整が整わないことも少なくなく、 この受注調整が私的独占の禁止及び公 正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。 )違反として公正取引委員会に探知され ることはなかった。 Y社は、 令和2年12月頃、 甲製品の入札の各入札結果につき、 発注数量、 落 札業者、 落札金額等の情報を記載した入札一覧表と呼ばれる社内資料(以下「入札一覧表」とい う。 )を作成するようになり、 その後、 入札一覧表をメーカー9社に提供するようになった。 このような状況の下、 メーカー9社は、 甲製品の入札の各入札結果に詳しいY社が調整すること で、 メーカー同士が直接に連絡交渉し合う必要がなくなると考えるようになり、 また、 Y社は、 調 整に関与し、 落札した販売業者と指示をしたメーカーとの取引の間に卸業者として確実に入ること で、 より多くの利益を上げることができると考えるようになった。 このため、 令和3年4月頃、 メーカー9社とY社は、 甲製品の入札に関して、 以下の内容の取決 め(以下「本件取決め」という。 )をし、 それ以降、 本件取決めに基づき、 55団体に甲製品を供 給するようにしていた。 Y社は、 毎年度ごとに、 メーカー9社と個別に面談し、 入札一覧表を提供する。 甲製品の各入札が実施されるごとに、 メーカー9社は、 入札一覧表を参考にしてY社に受注希 望の有無を伝える。 Y社は、 メーカー9社の受注希望の有無、 入札一覧表に記載されたメーカー9社の55団体に 対する甲製品の供給実績等を勘案して、 各入札ごとにメーカー9社のうちいずれかを、 入札を通 じて55団体に甲製品を供給すべき者(以下「供給予定者」という。 )に決定する。 Y社は、 供給予定者の指示する販売業者が落札できるようにするため、 各入札ごとに当該販売 業者が提示する入札価格がそれ以外の販売業者が提示する入札価格よりも低くなるように販売業 者9社の提示する各入札価格を決定し、 それをメーカー9社に伝える。 メーカー9社は、 各々、 自らが指示する販売業者にその入札価格を提示させる。 - 14 - メーカー9社間では、 各入札について、 直接の連絡交渉を一切行わない。 各入札後、 Y社は、 落札した販売業者が供給予定者から甲製品を仕入れるに当たり、 必ず両者 の取引の間に卸業者として入る。 その後、 メーカー9社間で供給予定者の決定をめぐって対立が生じ、 令和5年10月13日に実 施された甲製品の入札において、 X2社は、 事前にY社が伝えた入札価格に従わず、 Z2社に指示 して独自に決定した安い入札価格を提示させ、 落札させた。 そして、 X2社の担当者は、 同年12 月7日、 自社以外のメーカーとY社の各担当者に対し、 今後は自社で独自に決めた価格で応札して いく旨を口頭で明確に表明し、 それ以降、 X2社は本件取決めに基づく行動を取っていない。 令和6年6月28日、 公正取引委員会は、 本件について関係各社の立入検査を行い、 これ以降、 Y社は本件取決めに基づく行為を行っていない。 なお、 令和3年4月頃から令和6年6月28日までに実施された甲製品の入札200件のうち、 本件取決めに基づいて決められた供給予定者の指示する販売業者が落札し、 同供給予定者が甲製品 を供給したものは180件であった。 Y社は、 その全てでメーカー9社と販売業者9社との取引の 間に卸業者として入っており、 その売上額は10億円であった。 残りの20件については、 いずれ も、 Y社がアウトサイダーの入札価格を見誤ったため、 販売業者9社は落札できず、 アウトサイダ ーが落札した。 〔設 問〕 令和3年4月頃以降におけるメーカー9社、 Y社及び販売業者9社による上記各行為について、 独占禁止法に違反するか、 違反する場合には違反行為がなくなった時期も含めて検討しなさい。 併せて、 Y社の行為が独占禁止法に違反する場合には、 Y社に対する課徴金の有無及び金額につ いて、 算定の過程を明らかにして検討しなさい(なお、 Y社は、 独占禁止法第7条の2第2項第 2号に該当する者ではないものとする。 )。 - 15 - 〔第2問〕(配点:50) X社は、 αを含む多数の放射性医薬品を製造販売している。 αは、 特別な放射線医療装置βを検査に利用するときに用いられる放射性医薬品である。 βは、 もともと悪性腫瘍などの治療用に普及している装置であるが、 それを検査に利用するにはαを用い る必要がある。 βとαを用いた検査(以下「β検査」という。 )は、 悪性腫瘍を始めとするいくつ かの疾病の発見について非常に高い精度を示し、 それ以外の検査では発見できないものを高い確度 で見付け出す例が多いことで知られている。 αは、 その物質特性から製造後に利用できる時間が短 い上、 安定した品質で製造することが難しかった。 そのため、 X社がαの製造販売を開始する以前 は、 αを製造する特殊な装置と能力を持つ高度医療機関だけが、 自らαを製造してβ検査を行って いた。 X社は、 迅速な配送を可能にする形状でかつ安定した品質でαを製造することに最初に成功し、 必要な認可を得て製造販売を開始した。 これによって、 従来は検査を行うことができなかった医療 機関でもβ検査を行うことが可能になり、 β検査は急増した。 X社は、 放射性医薬品の供給に定評 のある公益法人Zを通じて、 全国一律の価格でαの供給を行っていた。 Zは、 自らが考える公益法 人としての役割から、 放射性医薬品の供給に関して、 一定の手数料を取るだけで、 メーカー等が指 定する価格で、 メーカー等が指定する取引先に供給することを原則としており、 X社製αについて も、 かかる原則に基づいて供給を行っていた。 また、 αは製造後に利用できる時間が短く、 一つの 製造拠点から、 その時間内に配送可能な範囲には限界があることから、 αを全国的に販売する場合 は、 全国をいくつかの地域に分割して各地域内に製造拠点を設け、 各製造拠点から各地域内に所在 する医療機関に対してαを供給する体制をとる必要があり、 X社は、 全国を12の地域に分割し、 各地域内に製造拠点を設けるなどして全国的にαの製造販売を行っていた。 なお、 αを検査に用いるには、 その物質特性から自動投与装置γを利用することが通常必要とさ れる。 γはX社とは無関係の複数の会社が製造販売しているが、 いずれの会社のγもX社製αを検 査に用いる上で支障はなかった。 このように、 従来、 日本国内では、 X社だけがαの製造販売を行っていたが、 その後、 放射性医 薬品等の製造販売業者であるY社がαの開発に成功し、 製造販売に必要な認可を得た。 Y社も、 X 社と同様、 全国をX社と同じ12の地域に分割し、 各地域内に製造拠点を設けるなどして全国的に αの製造販売を開始した。 Y社は、 αの製造販売を行うに当たって、 次のような経営方針を立てた。 X社はZを通じて全国一律の価格でαの供給を行っているが、 Y社は、 既に需要量が多く、 こ れからもβ検査件数の伸びが期待できる南関東地域及び近畿地域(以下「両地域」という。 )で は、 他の地域よりも低い価格でαの供給を行う。 これによって需要量が多い両地域で高いシェア を獲得することを目指す。 Y社は、 単に低価格販売により両地域で高いシェアを獲得するだけではこれまでの研究開発費 の回収には不十分であることから、 一層の需要増を目指すため、 別の会社と共同開発していた低 価格で使いやすい新型自動投与装置γ(以下「新型γ」という。 )の供給を開始する。 それによ ってβ検査を増やし、 αの一層の需要拡大を図り、 同時にγとαの両方を提供する事業者として β検査の分野におけるY社の信頼性を高める。 また、 Y社が共同開発した新型γが利用される場 合はY社製αが利用されることが想定できるため、 新型γの供給を通じてY社製αの販売を促進 する。 このようなY社の方針に対して、 X社は、 次のような対応を決定し、 実施した。 (a) αの公平な配分には全国一律の価格が必要であるとして、 ZがY社製αについて、 地域ごとに 価格に差を設けて取り扱うことに応じた場合は、 ZへのX社製αの販売を停止するとZに通知し た。 (b) 両地域内のαを利用している各医療機関に対し、 Y社からαの供給を受けた医療機関について - 16 - はαの供給を停止すると通知した。 (c) 両地域内のβを設置している各医療機関に対し、 新型γに関して、 検査等を行わず、 明確な根 拠もなく、 「新型γではX社製αは利用できない。 」と説明した。 これらの対応の結果、 Zは、 定評のあるX社製αの供給を受けることができなくなってしまうと、 従来の顧客である医療機関に対して、 各医療機関が必要とするだけの量のαを供給できなくなるこ とを懸念し、 Y社の方針に基づくY社製αの取扱いをちゅうちょした。 そこで、 Y社は、 両地域 以外の地域でのみZを通じた販売を行うこととし、 両地域については、 Zを利用した場合に比べて 費用は掛かるものの、 Y社が、 自ら、 直接、 αを他の地域よりも低い価格で販売することとした。 また、 両地域内の医療機関においては、 Y社からαを購入すると、 今後、 X社からαの供給を受 けることができなくなるため、 低価格は魅力であるものの、 新規参入業者であるY社が今後も必要 量の全てを安定的に供給することができるのかを懸念し、 Y社からαを購入することを断念するも のも多く、 Y社によるそれらの医療機関へのαの販売は難しくなった。 その結果、 両地域における 低価格販売によるY社製αの売上が想定より伸びなかった。 さらに、 新型γについては、 それが高性能であることを認めて導入を検討した医療機関もあった が、 既に定評のあるX社製αが利用できなくなることを懸念して、 新型γの導入を取りやめる例が 見られた。 そのため、 新型γの販売実績はY社が想定した水準を大きく下回り、 新型γの市場への 投入に対応したY社製αの販売も、 当初のY社の想定水準を大きく下回ることとなった。 〔設 問〕 X社の行為について、 独占禁止法上の問題点を検討しなさい。 - 17 - - 18 - 論文式試験問題集[知的財産法] - 19 - [知的財産法] 〔第1問〕(配点:50) Xは、 合金の高強度を維持しつつ、 曲げても割れにくいという曲げ加工性を向上させるとの課題 を解決する合金の発明(以下「本件発明」という。 )について特許権(以下「本件特許権」といい、 本件特許権についての特許を「本件特許」という。 )を有している。 以上の事実関係を前提として、 以下の設問に答えなさい。 なお、 各設問はそれぞれ独立したもの であり、 相互に関係はないものとする。 [設問1] 本件発明に係る特許出願(以下「本件出願」という。 )から本件特許権の設定登録に至る経緯 は、 次のとおりである。 本件出願の願書に添付された特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。 )には、 「物質A及び物質Bからなる合金」と記載されていた。 また、 本件出願の願書に添付された明細 書(以下「本件明細書」という。 )における発明の詳細な説明には、 強度及び曲げ加工性に優れ た実施例として「物質A及び物質b1からなる合金α」のみが記載されるとともに、 物質b1に 代えて物質b2を用いた「物質A及び物質b2からなる合金β」は曲げ加工性が低下するため、 本件発明を実施する際に、 物質b2など物質b1以外の物質Bを使用することは不適当であると 記載されていた。 なお、 物質b1及び物質b2は、 物質Bの下位概念である。 本件出願を審査した特許審査官は、 本件出願の6か月前に公表された論文に「物質A及び物質 b2からなる合金β」についての記載があったため、 新規性喪失の拒絶理由を通知した。 これに 対して、 Xは、 本件明細書の記載に照らせば、 本件特許請求の範囲に記載された物質Bは物質b 1を意味するものとして解釈すべきである旨の意見書を提出したところ、 本件特許請求の範囲は 補正されることなく特許査定がされ、 本件特許権が設定登録された。 Y1は、 「物質A及び物質b2からなる合金β」を製造販売している(以下、 Y1の製造販売 に係るこの合金βを「Y1製品」という。 )。 Xは、 Y1に対して特許権侵害訴訟を提起し、 Y1製品の製造販売の停止を請求した。 Xは、 Y1製品が本件発明の技術的範囲に属すると主張している。 Xの主張の当否につい て論じなさい。 なお、 均等侵害について論じる必要はない。 Y1は、 本件特許に関して特許法第104条の3第1項の抗弁を提出した。 この抗弁を提 出するに当たり、 Y1は、 具体的にどのような主張をすることが考えられるか。 その妥当性 についても論じなさい。 なお、 訂正について論じる必要はない。 Xが本件出願の9か月前に発表した論文に「物質A及び物質Bからなる合金」についての 記載があった。 この場合、 前記におけるY1の主張の妥当性について差異が生じることが あるかについて、 考えられるXの主張及び本件出願時の手続を踏まえて論じなさい。 [設問2] Xは、 Y2に本件特許権について通常実施権を許諾する旨の契約(以下「本件契約」とい う。 )をY2と締結した。 本件契約においては、 Y2が本件発明の技術的範囲に属する合金(以 下「Y2製品」という。 )を製造販売することができる上限の最高数量が10万トンと定められ ている。 Y2は、 10万トンのY2製品を製造し、 その全てを販売したが、 その後、 Y3から新 たな注文を受けたため、 更に2万トンのY2製品を製造し、 Y3に譲渡した。 Y3は、 譲り受け たY2製品を販売している。 なお、 Y3は、 Y2製品の譲渡を受けた時点において、 Y2がXか ら通常実施権の許諾を受けたことを知っていたが、 本件契約における最高数量の定めについては 知らなかった。 また、 10万トンの範囲内でY2が製造したY2製品とY2が追加的に製造した - 20 - 2万トンのY2製品を区別することは困難である。 Xは、 Y3に対してY2製品の販売の停止を請求することができるかについて、 考えられるY 3の反論を踏まえて論じなさい。 なお、 本件契約は解除されていない。 また、 私的独占の禁止及 び公正取引の確保に関する法律上の問題について論じる必要はない。 - 21 - 〔第2問〕(配点:50) A市は、 だれでも自由に入れる公園に図書館を建築することとし、 その建物の設計を建築家Bに 依頼した。 Bは、 過去から未来に絶えず発展していくA市を表すものとして、 正面から見ると、 曲 面状となっている屋根が右方向に上がって、 その右端が大きく横に飛び出し、 外壁が曲面状の屋根 と連続する曲面であることに特徴を有する斬新な建物を設計し、 その設計どおりに図書館(以下 「A図書館」という。 )が建築された。 A図書館の入口を入るとすぐ大きな玄関ホールがあり、 そ の奥の壁には、 A市出身の画家Cの代表作として有名で、 A市にある山(以下「A山」という。 ) の風景を独特の色彩で描いた大きな絵画αが展示されていた。 以上の事実関係を前提として、 以下 の設問に答えなさい。 [設問1] A図書館の近くで土産物を販売するDは、 自らの店舗の外壁の一部や屋根をA図書館の外壁や 屋根と同じ形に改築した。 Dの上記行為がBの著作権を侵害するかについて論じなさい。 [設問2] Dは、 絵はがき製作のためにA図書館を正面から撮影し、 その写真に基づく絵はがきβを多数 枚印刷した上で、 これを販売している。 絵はがきβは、 その5分の3程度にA図書館が写ってい るというものであり、 青空を背景として、 その特徴的な屋根や外壁の形が明瞭に判別できた。 ま た、 撮影当時、 A図書館の入口の大きな扉が開いていて、 A図書館の正面から撮影したために、 玄関ホールの奥の壁に展示されている絵画αが、 その独特の色彩によりA山を描いたCの代表作 であることが分かる程度に小さく写っていた。 なお、 A図書館の入口の扉は、 A図書館の開館時 間中は常に開いていた。 BはDに対し、 著作権侵害を理由としてどのような請求をすることが考えられるか。 その 妥当性についても論じなさい。 Cは、 Dが販売する絵はがきβに絵画αが写っていることが問題であると考えた。 CはD に対し、 著作権侵害を理由として絵はがきβの販売をやめるよう求める訴訟を提起した。 同 訴訟において、 Cはどのような主張をすべきか。 それに対し、 Dは、 どのような主張をする ことが考えられるか。 それらの妥当性についても論じなさい。 [設問3] A図書館が建築されて10年経ち、 現在のA市の市長は、 A図書館の屋根が奇抜すぎると考え、 A市は、 A図書館の屋根のうち大きく横に飛び出している部分のみを撤去する工事を計画してい る。 Bは、 この計画に反対し、 この工事を阻止したいと考えている。 Bは、 A市に対し、 著作権 法上どのような請求をすることが考えられるか。 その妥当性についても論じなさい。 - 22 - 論文式試験問題集[労 - 23 - 働 法] [労 働 法] 〔第1問〕(配点:50) 次の事例を読んで、 後記の設問に答えなさい。 【事 1 例】 Xは、 平成5年4月に投資信託運用会社であるY社に入社し、 平成21年以降は投資業務推進 部においてスタッフ職として勤務していた。 Y社にはライン職とスタッフ職の職種があり、 スタ ッフ職は、 高度の専門知識、 職務知識に基づき、 専門的な職務を担うものの、 部下を持たない。 Xの主たる業務は、 月次レポートの精査や臨時レポートの作成等であった。 月次レポートや臨 時レポートは、 Y社の運営するファンドの情報を顧客である投資家に提供するもので、 これらの 情報は顧客の投資判断の基となり、 当該レポートの精査等は、 Y社の収益の大半を占める投資家 からの手数料にも影響し得る、 相当程度難易度の高い重要な業務であった。 Xは、 毎週木曜に開 催される管理者ミーティングへの出席を求められず、 Y社の営業方針の決定や予算の策定、 企業 組織や人事制度の構築・改編、 労働条件の決定等に関与することはなかった。 スタッフ職の所定労働時間は午前8時30分から午後5時30分(休憩1時間)である。 Xは、 月次レポートの精査等の業務がある期間(1か月に8日程度)は基本的に当該業務のために少な くとも所定労働時間内はY社内で就業し、 午後7時30分過ぎまで業務を行う日がほとんどであ った。 他方で、 それ以外の期間は比較的自由に就業でき、 遅刻や早退をしても賃金から控除され なかった。 Xの令和5年の年収(毎月支払われる給与と年2回の賞与の合計)は1200万円を超え、 こ れはY社の上位6%に位置した。 年収ベースでは、 Y社のライン管理職部長に次ぐ待遇で、 ライ ン管理職副部長の平均を上回っていた。 なお、 Y社は、 Xを含む上位スタッフ職とライン管理職 を管理監督者として扱い、 深夜の割増賃金を除き、 時間外手当を支給していない。 2 Xは、 かねてから定年より前に地元に戻り、 自営業をしながら地元に貢献したいと考えていた ところ、 令和6年3月に、 Y社を退職することを決意し、 同年7月31日をもって退職する意向 をY社に伝え、 Y社は承認した。 Xが同年5月上旬にY社の人事部に確認したところ、 令和6年7月分の賞与として同年7月1 0日に約150万円が、 退職金として退職した日以降に約1400万円が、 それぞれXに支払わ れる見込みであるとの連絡を受けた。 Xは、 開業資金と当面の生活費が十分賄えると考えていた。 3 Xは、 令和6年5月中旬、 酒を飲んだ状態で車を運転し、 赤信号で交差点に進入して、 車2台 を巻き込む交通事故を起こした。 これにより、 巻き込まれた車を運転していた2名の者は打撲等 の軽傷を負った。 Xは、 その場で逮捕され、 新聞やインターネット上のニュースなどで実名報道 された。 Y社は、 Xが飲酒運転により人身事故を起こし、 実名報道されたことは重大な非違行為である とし、 Y社就業規則(なお、 同規則はY社従業員に周知されていた。 )に基づき、 所定の手続に のっとり、 同月31日に、 同年6月末日をもってXを懲戒解雇すること及び退職金を支給しない ことを決定し、 Xにその旨を通知した。 Xは同日をもって解雇されたため、 Xに令和6年7月分 の賞与は支給されなかった。 Xは、 飲酒運転により人身事故を起こしたことの非を認め、 懲戒解雇されたことには承服して いるが、 退職金の全額や賞与が支給されないことに疑問を感じ、 弁護士に相談した。 【Y社就業規則(抜粋)】 第50条 賞与は、 原則として、 下記の支給日に在籍し、 かつ、 評価対象期間に勤務していた従業員 に対して、 会社の業績等を勘案して支給する。 ただし、 会社の業績の著しい低下その他やむを得な - 24 - い事由により、 支給時期を延期し、 又は支給しないことがある。 支給日 7月10日 12月20日 2 評価対象期間 前年10月1日から当年3月31日まで 当年4月1日から当年9月30日まで 前項の賞与の額は、 会社の業績及び従業員の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。 第54条 従業員が退職し又は解雇されたときは、 退職金を支給する。 ただし、 本規則の定めにより 懲戒解雇された者には、 退職金の全部又は一部を支給しないことがある。 第55条 退職金の額は、 退職又は解雇の時の基本給の額に、 勤続年数に応じて定めた下記の支給率 を乗じた金額とする。 勤続年数 第56条 支給率 5年未満 1.0 5年以上11年未満 3.0 11年以上16年未満 5.0 16年以上21年未満 7.0 21年以上26年未満 10.0 26年以上31年未満 15.0 31年以上 20.0 退職金は、 支給事由の生じた日から1か月以内に、 退職した従業員(死亡による退職の場 合はその遺族)に対して支払う。 〔設 1 問〕 Xは、 弁護士から法定時間外労働についての割増賃金をY社に請求できるのではないかとのア ドバイスを受け、 当該賃金をY社に請求したいと考えている。 当該請求は認められるか。 考えら れる論点を挙げて検討し、 あなたの見解を述べなさい。 2 Xは、 令和6年7月分の賞与をY社に請求したいと考えている。 当該請求は認められるか。 考 えられる論点を挙げて検討し、 あなたの見解を述べなさい。 3 Xは、 懲戒解雇されなければ支払われたであろう退職金の全額をY社に請求したいと考えてい る。 当該請求は認められるか。 考えられる論点を挙げて検討し、 あなたの見解を述べなさい。 - 25 - 〔第2問〕(配点:50) 次の事例を読んで、 後記の設問に答えなさい。 【事 例】 Y社は、 食品の製造・販売を行う非上場の株式会社である。 Y社のほとんどの労働者は、 本社と 工場が一体となった施設で勤務していた。 当初、 Y社に労働組合はなかったが、 令和5年10月、 会社の経営状況の悪化のため翌年4月から業務手当(月額3万円)を廃止する旨が通告されたこと を契機に、 一部の労働者がいわゆる地域合同労組であるX労働組合(以下「X組合」という。 )に 加入し、 その支部を結成した。 X組合に加入したのは、 Y社の管理職を除く労働者200名のうち 25名であった。 X組合は、 支部結成の翌日、 Y社に対して、 支部の結成を通知し、 業務手当廃止 の撤回と組合費のチェック・オフの実施を求めて、 団体交渉を要求した。 令和5年10月下旬から翌年3月にかけて計5回、 Y社とX組合との間で団体交渉が行われたが、 交渉は進展しなかった。 業務手当の廃止について、 Y社は、 「7年前、 賃金体系を変更して業務手 当を含む諸手当を整理したときに、 当時、 ヒット商品が出て業績が一時的に好調だったので、 業務 手当については従業員に利益を還元する趣旨で当面の措置として残したものであり、 従業員に負担 をかけるのは心苦しいが、 近年の会社の業績不振に照らせば廃止はやむを得ない。 」との主張を繰 り返した。 X組合は、 「経緯はどうであれ業務手当は今も重要な労働条件であり、 月3万円の手当 を失うことによって労働者の生活は重大な打撃を受ける。 会社の経営上どうしても必要だというの なら、 きちんと資料を示して具体的に説明せよ。 」と主張した。 これに対して、 Y社は、 「正式な 計算書類は外部に非公表である。 」として、 「当社決算の概要と過去10年の推移」という1枚紙 の文書を示して経営状況の厳しさを訴えたが、 他に提出資料はなく、 業務手当の廃止によってどれ だけの経費削減効果があるのか、 他にどのような経営改善の努力を行っているのか等の説明もなさ れなかった。 また、 組合費のチェック・オフについて、 Y社は、 「使用者が組合に対してそのよう なサービスを行う義務はそもそもなく、 少数組合の場合は法律上も無理がある。 」と述べて拒否し、 「過半数組合でなくても適法に組合費のチェック・オフを行うことはできるはずだ。 実際、 少数組 合に組合費のチェック・オフを認めた例は多くある。 」というX組合の反論に対し、 「当を得ない 見解だ。 」として受け入れない姿勢を明確にした。 結局、 Y社は、 就業規則の変更によって、 令和6年4月から予定どおり業務手当を廃止した。 そ の際、 事業場で選出された過半数代表者も、 同手当の廃止に反対しないという意見書を提出し、 変 更後の就業規則の労働基準監督署長への届出に当たってはこの意見書が添付された。 X組合は、 そ の後も上記2つの要求を掲げて団体交渉を求めたが、 同月中旬に行われた6回目の団体交渉で、 Y 社は、 「@業務手当の廃止は既に適正な手続を経て実施済みであり、 X組合とは何度も交渉したが 進展はなく、 今更交渉しても無意味である。 A組合費のチェック・オフについても、 法律上困難な 話であって、 要求に応じる余地はない。 」と述べ、 物別れに終わった。 この日の交渉の最後に、 Y 社は、 これ以上の交渉には応じない旨をX組合に通告し、 その後、 何度か行われたX組合からの団 体交渉の要求を拒否した。 そこで、 X組合は、 同年5月中旬、 始業前にY社の本社・工場の門前で 抗議活動を行い、 プラカードと組合旗を掲げてY社を非難する演説やビラの配布をした。 そのような中で、 同月下旬、 Y社の労働者150名が参加して、 A労働組合(以下「A組合」と いう。 )が結成された。 A組合は、 いわゆる企業別労働組合であり、 上部団体には所属していない。 A組合結成の翌日、 A組合は、 チェック・オフ協定とユニオン・ショップ協定の締結等を求めて団 体交渉を申し入れ、 その1週間後、 Y社とA組合の間で団体交渉が行われた。 その席で、 A組合の 委員長は、 「業務手当の廃止はY社の状況に照らしてやむを得ない措置であったと理解する。 今は 我慢の時であり、 まずは労使の協力によって会社の業績を回復させた上で、 基本給の改善を図って いきたい。 」と発言した。 これに対してY社も賛意を表明し、 「従業員の真の利益を考える組合の 出現を心から歓迎する。 」と述べた。 この日の交渉の結果、 Y社とA組合との間に、 チェック・オ - 26 - フ協定とユニオン・ショップ協定が締結された。 前者は、 「Y社は、 A組合に所属する従業員の月 々の賃金から組合費分を控除し、 各月末までにA組合の指定する銀行口座にまとめて振り込む。 」 と定め、 後者は、 「Y社に雇用された従業員は、 A組合の組合員とする。 A組合に加入しない者や、 A組合より除名された者又はA組合から脱退した者は、 従業員の資格を失い、 Y社はこれを解雇す る。 」と定めていた。 以上のような団体交渉の模様については、 チェック・オフ協定とユニオン・ ショップ協定の内容を含めて、 A組合のニューズレターに記事が掲載された。 このニューズレター は、 Y社の従業員向け掲示板の脇の机の上に積み重ねて置かれ、 Y社の労働者は誰でもそれを持ち 帰ることができた。 X組合は、 直ちにY社に抗議文を送り、 「A組合との間の2つの協定の締結はX組合に対する違 法な差別と弱体化工作である。 」と主張した。 これに対し、 Y社は、 「@A組合との間でチェック ・オフ協定を結ぶことは法的に何の問題もない。 AA組合との間にユニオン・ショップ協定があっ てもX組合の組合員を解雇できないことは承知しており、 解雇するつもりもない。 」と記した回答 書を1週間後にX組合に送付した。 この間、 X組合に加入していた労働者のうち10名が同組合を 脱退し、 A組合に加入した。 〔設 問〕 X組合は、 労働委員会に不当労働行為の救済申立てをすることを検討している。 X組合は、 どの ような主張をしてどのような救済を求めるべきか。 また、 労働委員会は、 どのような命令を発する ことになると考えられるか。 労働組合法第7条第2号、 同条第3号、 という2つの項目に分け て、 検討すべき法律上の論点を挙げながら、 あなたの意見を述べなさい。 なお、 X組合は、 同法第 5条第1項が定める救済申立ての要件を満たしているものとする。 - 27 - - 28 - 論文式試験問題集[環 - 29 - 境 法] [環 境 法] 〔第1問〕(配点:50) 【資料】を参照しつつ、 地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「温対法」という。 )及びそ の適用に関する以下の設問に答えよ。 〔設問1〕 A県にあるB町は、 内陸部に位置しているという地理的な事情もあり、 夏には国内最高気温を 何度も記録するような状況にあった。 こうしたことから、 同町は、 地球温暖化対策に熱心であり、 2019年に、 温対法に基づく地方公共団体実行計画を、 県内の他の市町村に先駆けて策定した。 2020年に、 内閣総理大臣が、 2050年までに国家レベルでカーボンニュートラルの実現 を目指すことを宣言した。 それを受けて、 2021年に、 温対法は、 一部改正された。 B町は、 町内において再生可能エネルギーのうち風力発電を促進するために、 地域における合意形成を重 視しつつ、 この改正の内容を最大限活用しようとしている。 甲社は、 B町にあるC国定公園内の甲社所有地において、 自然公園法第33条第1項の届出を 要する規模での鉄塔状の工作物による風力発電事業の実施を計画している(なお、 計画地は普通 地域内にある。 )。 当該風力発電事業を行うためには、 その発電に必要な電気工作物(出力6万 キロワット。 以下「本件工作物」という。 )の設置の工事について、 電気事業法第47条第1項 の認可が必要である。 また、 本件工作物を設置するには、 森林法第5条に基づく地域森林計画の 対象となっている民有林であり、 かつ、 温対法上の対象民有林でもある上記甲社所有地内にある 森林を森林法第10条の2の許可を要する規模で伐採する必要がある。 本件工作物の設置のために、 温対法の下で、 甲社はB町に対してどのような手続をとること が考えられるかを説明せよ。 なお、 B町は、 同法に基づく計画策定市町村であり、 本件工作物 の設置予定地を含む地域を促進区域に指定している。 また、 B町に関して、 同法に基づく地方 公共団体実行計画協議会は組織されていないものとする。 2021年の温対法の改正によって導入された仕組みは、 再生可能エネルギーの利用による 脱炭素化のための施設の円滑な整備を促進するためのものであり、 その仕組みにおいては、 関 連法令により必要とされる規制が緩和されている。 本件工作物の設置との関係で、 その内容を 説明せよ。 〔設問2〕 温対法は、 個別の事業者に対して、 温室効果ガスの排出量の削減を直接に強制するといった伝 統的な規制手法を採用していない。 温対法の目的の実現のために、 同法上の特定排出者との関係で同法が採用している排出量削 減策とはどのような手法であり、 伝統的な規制手法と比較してどのような特徴があるのか。 温 対法が採用している上記手法により期待されている効果にも留意しつつ説明せよ。 国内のある地方公共団体の条例において制度化されているように、 個別の事業者に対して温 室効果ガスの排出量の削減を直接に求める手法があるが、 それは何か。 また、 これは伝統的な 規制手法を修正したものであるが、 どのような特徴があるのかを説明せよ。 〔設問3〕 地球温暖化は人為的な温室効果ガスの排出が原因となっているところ、 大規模に温室効果ガス を排出しているとして、 複数の企業に対し、 二酸化炭素の排出の抑制を求める調停が公害紛争処 理法に基づき申請されたことがある。 公害等調整委員会は同申請を却下し、 却下決定の取消しが 請求された訴訟において、 裁判所は同請求を棄却した。 環境基本法の関係規定にも触れつつ、 上 - 30 - 記申請が公害紛争処理法上の調停の対象とならない理由を説明せよ。 - 31 - 【資 〇 料】 地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地域脱炭素化促進事業計画の認定等に関する省令 (令和4年農林水産省、 経済産業省、 国土交通省、 環境省令第1号)(抜粋) (地域脱炭素化促進施設) 第2条 法第2条第6項の環境省令・農林水産省令・経済産業省令・国土交通省令で定める施設は、 次に掲げるものとする。 一 再生可能エネルギー発電施設(中略) 二、 三 ○ (略) 環境影響評価法施行令(平成9年政令第346号)(抜粋) (第一種事業) 第1条 環境影響評価法(以下「法」という。 )第2条第2項の政令で定める事業は、 別表第一の第 一欄に掲げる事業の種類ごとにそれぞれ同表の第二欄に掲げる要件に該当する一の事業とする。 (中略) 別表第一(抜粋) 事業の種類 5 法第2条第2項第 ワ 第一種事業の要件 第二種事業の要件 法律の規定 出力が5万キロワ 出力が3万7500キ 電気事業法第47条第 1号ホに掲げる事業 ット以上である風力 ロワット以上5万キロ 1項若しくは第2項又 の種類 発電所の設置の工事 ワット未満である風力 は第48条第1項 の事業 発電所の設置の工事の 事業 〇 電気事業法(昭和39年法律第170号)(抜粋) (工事計画) 第47条 事業用電気工作物の設置又は変更の工事(中略)をしようとする者は、 その工事の計画に ついて主務大臣の認可を受けなければならない。 (中略) 2〜5 ○ (略) 森林法(昭和26年法律第249号)(抜粋) (地域森林計画) 第5条 都道府県知事は、 全国森林計画に即して、 森林計画区別に、 その森林計画区に係る民有林 (中略)につき、 5年ごとに、 その計画をたてる年の翌年4月1日以降10年を一期とする地域森 林計画をたてなければならない。 2〜5 (略) (開発行為の許可) 第10条の2 地域森林計画の対象となつている民有林(中略)において開発行為(中略)をしよう とする者は、 農林水産省令で定める手続に従い、 都道府県知事の許可を受けなければならない。 (以下、 略) ○ 森林法施行令(昭和26年政令第276号)(抜粋) (開発行為の規模) 第2条の3 法第10条の2第1項の政令で定める規模は、 次の各号に掲げる行為の区分に応じ、 そ れぞれ当該各号に定める規模とする。 一 専ら道路の新設又は改築を目的とする行為 当該行為に係る土地の面積1ヘクタールで、 かつ、 道路(中略)の幅員3メートル - 32 - 二 太陽光発電設備の設置を目的とする行為 三 前二号に掲げる行為以外の行為 ○ 当該行為に係る土地の面積0.5ヘクタール 当該行為に係る土地の面積1ヘクタール 公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)(抜粋) (定義) 第2条 この法律において「公害」とは、 環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定 する公害をいう。 (公害等調整委員会) 第3条 公害等調整委員会(以下「中央委員会」という。 )は、 この法律の定めるところにより公害 に係る紛争についてあつせん、 調停、 仲裁及び裁定を行うとともに、 地方公共団体が行う公害に関 する苦情の処理について指導等を行う。 (管轄) 第24条 一 中央委員会は、 次の各号に掲げる紛争に関するあつせん、 調停及び仲裁について管轄する。 現に人の健康又は生活環境(環境基本法第2条第3項に規定する生活環境をいう。 )に公害に 係る著しい被害が生じ、 かつ、 当該被害が相当多数の者に及び、 又は及ぶおそれのある場合にお ける当該公害に係る紛争であつて政令で定めるもの 二 前号に掲げるもののほか、 2以上の都道府県にわたる広域的な見地から解決する必要がある公 害に係る紛争であつて政令で定めるもの 三 前二号に掲げるもののほか、 事業活動その他の人の活動の行われた場所及び当該活動に伴う公 害に係る被害の生じた場所が異なる都道府県の区域内にある場合又はこれらの場所の一方若しく は双方が2以上の都道府県の区域内にある場合における当該公害に係る紛争 2、 3 (略) (申請) 第26条 公害に係る被害について、 損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じた場合にお いては、 当事者の一方又は双方は、 公害等調整委員会規則で定めるところにより中央委員会に対し、 政令で定めるところにより審査会等に対し、 書面をもつて、 あつせん、 調停又は仲裁の申請をする ことができる。 この場合において、 審査会に対する申請は、 都道府県知事を経由してしなければな らない。 2 (略) - 33 - 〔第2問〕(配点:50) 甲社は、 A県内の中核市であるB市において、 同市の特産品である魚と野菜を原材料とするカマ ボコを製造する工場(以下「本件工場」という。 )の設置を計画している。 本件工場において発生 する廃棄物の収集運搬及び中間処理は、 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」とい う。 )の関係規定を遵守して、 その全量を委託処理する予定である。 廃棄物としては、 カマボコ製 造過程において発生する魚の残渣や野菜くずがあり、 また、 社員食堂において発生する調理くずや 残飯があるとする。 甲社は、 廃掃法に基づきB市長の許可を得て処理業を営むC社に対して、 本件工場において発生 する上記廃棄物の処理を委託しようと考えている。 C社は、 同県内の他の町にある甲社のD事業場 において発生する金属くずと廃プラスチック類の収集運搬及び中間処理を委託されている。 C社は、 この2品目の処理についてのみ、 必要な許可を得ている。 以上の事実を踏まえた上で、 【資料1】を参照しつつ、 以下の設問に答えよ。 なお、 本問におい て問題となる廃掃法上の権限は、 いずれもB市長にある。 〔設問1〕 甲社の環境担当役員Eが、 本件工場における廃棄物の処理についての計画を顧問弁護士のFに 説明した。 説明を受けたFは、 「C社が現時点において得ている許可を踏まえると、 同社に対し て本件工場の廃棄物の処理を委託するのは、 廃掃法上、 違法である。 」と指摘した。 Fがそのよ うに指摘した理由を説明せよ。 〔設問2〕 Fの指摘はもっともだと考えたEは、 C社に対して、 少なくとも本件工場の社員食堂において 発生する廃棄物を同社が適法に収集運搬できるように対応してほしいと相談した。 ところが、 C 社は、 「それについては、 許可が得られるかどうかを予測することは難しい。 しかし、 チャレン ジしてみる。 」と回答した。 C社が「それについては、 許可が得られるかどうかを予測することは難しい。 」と回答した 理由を、 カマボコ製造過程において発生する魚の残渣や野菜くずの収集運搬に関する業の許可 と比較しつつ、 廃掃法の規定に照らして説明せよ。 本件工場の社員食堂において発生する廃棄物の収集運搬についての許可の取得を予測するこ とは難しいと考えていたC社であったが、 同許可を得ることができた(以下「本件許可」とい う。 )。 これに対して、 B市内において、 本件許可と同種の許可を得て営業をしている同業者 乙社は、 売上の減少を懸念して、 不満である。 そこで、 乙社は、 本件許可の取消訴訟を提起し ようと検討している。 乙社には、 当該訴訟を提起できる資格が認められるか。 本件許可に係る 廃棄物の処理に対する廃掃法の考え方を踏まえつつ、 論ぜよ。 〔設問3〕 コンサルタントのGは、 C社の取締役会にも出席して積極的に発言し、 同社の意思決定にも影 響力を保持している。 Gは、 C社の仕事がない日に居酒屋で友人たちと食事をしていた際に、 隣 の席にいたグループと口論になり、 そのグループ内の一人を数発殴ってけがをさせ、 傷害罪で現 行犯逮捕された。 その後、 Gは、 傷害罪の被疑事実で近隣の警察署に勾留されている。 この事件を知った甲社の環境担当役員Eは、 C社の廃掃法上の許可が取り消されるのではない かと考え、 顧問弁護士のFに相談した。 ところが、 Fは、 「今の状況では許可が取り消されるこ とはない。 例えば、 許可の取消しに際して問題となる廃掃法第14条第5項の要件に該当しない からである。 」と回答した。 【資料2】を参照しつつ、 廃掃法第14条第5項の要件に該当しな いとFが回答した理由を説明せよ。 なお、 【資料2】にある「同号」とは、 廃掃法第7条第5項 - 34 - 第4号を指す。 〔設問4〕 廃プラスチック類を処理するC社の中間処理施設内の機械が、 突然故障した。 そこで、 同社は、 とりあえず操業を停止した。 機械を納品した業者に通報したところ、 1か月後にようやく担当社 員が確認に訪れた。 その際、 確認を済ませた同社員は、 機械を入れ替えなければならないため、 操業再開までには3か月を要すると言った。 故障はすぐに修復できると考えていたC社は、 上記 訪問があるまでの間、 廃棄物の搬入は継続させていた。 そのため、 甲社から搬入された廃棄物の 量が、 保管上限を超えるまでに施設内に堆積してしまった。 C社は、 上記の状況になったとき、 甲社に対して、 廃掃法に基づき、 どのような措置を講ず るべきか。 その措置を受けた甲社は、 産業廃棄物管理票交付者として、 どのように対応すべき か。 それぞれ説明せよ。 甲社が上記の対応を怠っていたところ、 C社の中間処理施設内に堆積された廃プラスチック 類が人通りのある前面道路に崩落し始めている。 C社による対応は困難なようである。 B市長 は、 廃掃法の下で、 甲社に対して、 どのような措置を講じ得るか。 環境法の基本的な考え方を 踏まえつつ説明せよ。 - 35 - 【資料1】 〇 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)(抜粋) (産業廃棄物) 第2条 一 法第2条第4項第1号の政令で定める廃棄物は、 次のとおりとする。 紙くず(建設業に係るもの(工作物の新築、 改築又は除去に伴つて生じたものに限る。 )、 パ ルプ、 紙又は紙加工品の製造業、 新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。 )、 出版業(印刷出版を行うものに限る。 )、 製本業及び印刷物加工業に係るもの並びにポリ塩化ビ フェニルが塗布され、 又は染み込んだものに限る。 ) 二 木くず(建設業に係るもの(工作物の新築、 改築又は除去に伴つて生じたものに限る。 )、 木 材又は木製品の製造業(家具の製造業を含む。 )、 パルプ製造業、 輸入木材の卸売業及び物品賃 貸業に係るもの、 貨物の流通のために使用したパレット(パレットへの貨物の積付けのために使 用したこん包用の木材を含む。 )に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限 る。 ) 三 繊維くず(建設業に係るもの(工作物の新築、 改築又は除去に伴つて生じたものに限る。 )、 繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。 )に係るもの及びポリ塩化ビフェニルが染み込 んだものに限る。 ) 四 食料品製造業、 医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る 固形状の不要物 四の二 と畜場法(昭和28年法律第114号)第3条第2項に規定すると畜場においてとさつし、 又は解体した同条第1項に規定する獣畜及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律 (平成2年法律第70号)第2条第6号に規定する食鳥処理場において食鳥処理をした同条第1 号に規定する食鳥に係る固形状の不要物 五 ゴムくず 六 金属くず 七 ガラスくず、 コンクリートくず(工作物の新築、 改築又は除去に伴つて生じたものを除く。 ) 及び陶磁器くず 八 鉱さい 九 工作物の新築、 改築又は除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物 十 動物のふん尿(畜産農業に係るものに限る。 ) 十一 動物の死体(畜産農業に係るものに限る。 ) 十二 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第2条第2項に規定するばい煙発生施設、 ダイ オキシン類対策特別措置法第2条第2項に規定する特定施設(ダイオキシン類(同条第1項に規 定するダイオキシン類をいう。 以下同じ。 )を発生し、 及び大気中に排出するものに限る。 )又 は次に掲げる廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであつて、 集じん施設によつて集めら れたもの イ 燃え殻(事業活動に伴つて生じたものに限る。 第2条の4第7号及び第10号、 第3条第3 号ワ並びに別表第一を除き、 以下同じ。 ) ロ 汚泥(事業活動に伴つて生じたものに限る。 第2条の4第5号ロ、 第8号及び第11号、 第3条第2号ホ及び第3号ヘ並びに別表第一を除き、 以下同じ。 ) ハ 廃油(事業活動に伴つて生じたものに限る。 第24条第2号ハ及び別表第五を除き、 以下同 じ。 ) ニ 廃酸(事業活動に伴つて生じたものに限る。 第24条第2号ハを除き、 以下同じ。 ) ホ 廃アルカリ(事業活動に伴つて生じたものに限る。 第24条第2号ハを除き、 以下同じ。 ) ヘ 廃プラスチック類(事業活動に伴つて生じたものに限る。 第2条の4第5号ロを除き、 以 下同じ。 ) - 36 - ト 前各号に掲げる廃棄物(第1号から第3号まで及び第5号から第9号までに掲げる廃棄物に あつては、 事業活動に伴つて生じたものに限る。 ) 十三 燃え殻、 汚泥、 廃油、 廃酸、 廃アルカリ、 廃プラスチック類、 前各号に掲げる廃棄物(第1 号から第3号まで、 第5号から第9号まで及び前号に掲げる廃棄物にあつては、 事業活動に伴つ て生じたものに限る。 )又は法第2条第4項第2号に掲げる廃棄物を処分するために処理したも のであつて、 これらの廃棄物に該当しないもの (事業者の産業廃棄物の運搬、 処分等の委託の基準) 第6条の2 一 法第12条第6項の政令で定める基準は、 次のとおりとする。 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。 以下この条から第6条の4までにおいて同じ。 )の 運搬にあつては、 他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようと する産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。 二〜六 〇 (略) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)(抜粋) (産業廃棄物の処理を適正に行うことが困難となる事由) 第10条の6の2 一 法第14条第13項の環境省令で定める事由は、 次のとおりとする。 事業の用に供する産業廃棄物の処理施設において破損その他の事故が発生し、 当該処理施設を 使用することができないことにより、 当該処理施設において保管する産業廃棄物の数量が処分等 のための保管上限に達したこと。 二〜八 (略) 【資料2】 〇 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長「行政処分の指針について(通知)」(令和3年4 月14日環循規発第2104141号)(抜粋) 〔(注) 第2 本通知中、 単に「法」とあるのは廃棄物の処理及び清掃に関する法律を指す。 〕 産業廃棄物処理業の事業の停止及び許可の取消し(法第14条の3及び第14条の3の2) 1 (略) 2 要件 〜 (略) (略) @ (略) A 同号〔(注)法第7条第5項第4号〕ホの「法人に対し業務を執行する社員、 取締役、 執行 役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者」とは、 法人の業務 を執行する権限はないものの、 法人に対する実質的な支配力を有する者をいい、 例えば、 相談 役、 顧問等の名称を有する者、 法人に対し多額の貸金を有することに乗じて法人の経営に介入 している者又は一定比率以上の株式を保有する株主若しくは一定比率以上の出資をしている者 などが典型的には想定されること。 (中略) B (略) C 同号〔(注)法第7条第5項第4号〕チの「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするお それがあると認めるに足りる相当の理由がある者」とは、 法第7条第5項第4号イからトまで 及び第14条第5項第2号ロからへまでのいずれにも該当しないが、 その者の資質及び社会的 信用性等の面から、 将来、 その業務に関して不正又は不誠実な行為をすることが相当程度の蓋 然性をもって予想される者をいうこと。 具体的には、 次のような者については、 特段の事情が ない限り、 これに該当するものと考えられること。 イ、 ロ (略) - 37 - ハ 暴力団対策法の規定に違反し、 又は刑法第204条、 第206条、 第208条、 第208 条の3、 第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律(大正1 5年法律第60号)の罪を犯し、 公訴を提起され、 又は逮捕、 勾留その他の強制の処分を受 けている者(当該違反又は罪が廃棄物の処理に関連してなされ又は犯された場合に限る。 ) ニ (以下、 略) - 38 - 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)] - 39 - [国際関係法(公法系)] 〔第1問〕(配点:50) A国とB国は、 国境を接する隣国であり、 A国では人口の約7割がα民族、 B国では人口の約8 割がβ民族である。 α民族とβ民族は、 同じ人種に属し、 使用言語も類似しているが、 宗教に関し てはα民族のほとんどがα教を、 β民族のほとんどがβ教をそれぞれ信仰している。 B国との国境 に近いA国のP州では、 A国の中では例外的に人口の約9割がβ民族であるが、 P州に居住するβ 民族のほとんどはA国の国籍を有している。 P州内には、 州内の少数派であるα民族の住民(以下「α系住民」という。 )が利用するα教の 宗教施設と、 州内の多数派であるβ民族の住民(以下「β系住民」という。 )が利用するβ教の宗 教施設とが混在しており、 それぞれの施設の利用をめぐってα系住民とβ系住民の間での対立が深 刻化していった。 P州における知事選挙でβ系住民の圧倒的支持により当選した知事Xが、 P州に おけるα教最大の宗教施設であるQ寺院の閉鎖を命じたところ、 A国大統領であるYは、 「A国憲 法で保障されている信教の自由を侵害した」ことを理由に、 A国憲法の規定に基づいてP州のX知 事を解任するとともにP州に非常事態を宣言する大統領令を発布した。 P州では、 X知事解任と非 常事態宣言に抗議するβ系住民が武器を持って立ち上がり、 P州政府の主要機関を占拠して「P共 和国」の樹立とA国からの独立を宣言した。 A国のY大統領は、 このようなP地域の状況を受けて、 「『P共和国』と自称する武装勢力によ る独立宣言は、 A国の国内法上の重大な犯罪行為である。 」と宣言し、 この動きを鎮圧する目的で 多数のA国軍を新たに派遣したため、 P地域ではA国軍と「P共和国」支持派勢力との間で激しい 戦闘が発生した。 このようなP地域における混乱の中で、 B国政府は、 「国際法上の原則として確立している人民 の同権及び自決の原則に照らして、 P地域におけるβ系住民による独立宣言を支持する。 」との声 明を発表するとともに、 「『P共和国』を国家承認する。 」と宣言した。 これに対して、 A国政府 は、 B国政府による「P共和国」の「国家承認」はA国の領土保全を侵害する重大な国際法違反で あると非難し、 その撤回をB国政府に対して強く要求した。 P地域におけるA国軍と「P共和国」支持派勢力との武力衝突が一進一退を続ける中で、 B国政 府は、 「P共和国」から援助の要請を受けたことを理由に、 P地域に多数のB国軍を派遣した。 B 国軍の強力な支援を受けた「P共和国」支持派勢力は、 P地域におけるA国軍との戦闘に勝利し、 P地域のほぼ全域は「P共和国」が実効的に支配するところとなった。 以上の事実関係を前提として、 以下の設問に答えなさい。 なお、 A国とB国は、 共に国際連合加 盟国であるが、 いずれも安全保障理事会の常任理事国ではない。 また、 以下の設問にある安全保障 理事会における審議の時点で、 A国は安全保障理事会の非常任理事国であったが、 B国は非常任理 事国ではなかった。 〔設問1〕 「国際法上の原則として確立している人民の同権及び自決の原則に照らして、 P地域における β系住民による独立宣言を支持する。 」とのB国政府の声明及び「『P共和国』を国家承認す る。 」とのB国政府の宣言に対して、 A国政府はどのように反論できるかについて国際法上の根 拠を挙げながら論じなさい。 〔設問2〕 A国政府は、 A国のP州に対するB国軍の軍事侵攻は国際法の重大な違反であるとして国際連 合の安全保障理事会に訴えた。 安全保障理事会における本件に関する審議に際して、 B国の代表 は、 「本件は、 AB両国間の紛争であるにもかかわらず、 A国は安全保障理事会の理事国として - 40 - 本件表決に際して一票を行使できるのに、 我が国は行使することができない。 これは、 加盟国の 主権平等の原則に反するものであり、 紛争当事国であるA国は、 本件に関する安全保障理事会で の表決に際して投票を棄権すべきである。 」と主張した。 このようなB国の代表の主張に対して、 国際法上どのように評価できるかについて論じなさい。 〔設問3〕 A国及びこれを支持する安全保障理事会の理事国7か国は、 「A国のP州に対するB国軍の侵 攻は、 国際の平和及び安全を危うくする平和の破壊に該当することを決定する。 」という内容の 決議案を、 安全保障理事会に共同提出した。 この決議案は、 安全保障理事会において審議の後、 投票に付され、 投票結果は賛成12か国、 反対1か国、 棄権2か国であったが、 B国の同盟国で あり安全保障理事会の常任理事国であるC国が反対票を投じたため、 否決された。 以上の状況を踏まえて、 A国が国際連合の枠組みの中で本件に関する問題解決を更に求めると すれば、 どのような手段を採ることが考えられるかについて論じなさい。 - 41 - 〔第2問〕(配点:50) A国を旗国とする船舶α号とB国を旗国とする船舶β号が公海上で衝突し、 沈没したβ号に乗船 していたB国国民8人が死亡する事故が起こった。 α号は事故後も航行を続け、 当初の予定どおり B国の港に到着した。 α号の船長はA国国民Xであったが、 α号から下船してB国に上陸したXを B国当局がB国刑法上の犯罪の容疑で逮捕し、 起訴したところ、 A国の外務大臣は、 「先般の事故 に関して我が国の国民であるXを逮捕し、 起訴することは国際法違反であり、 断じて受け入れられ ず、 強く抗議する。 」という声明を発表した。 A国とB国の関係はそれまでは全般的に良好であり、 長年にわたりA国はB国に対してODA(政府開発援助)を供与してきたが、 Xに対するB国での 刑事裁判の結果、 Xに拘禁刑が言い渡されると、 A国国内でB国を批判する世論が高まった。 それ を受けてA国の外務大臣は、 B国大使を召致し、 「我が国は、 B国が自らの国際法違反に対する責 任を取ることを強く求める。 B国が国際法に従った対応をするまで、 我が国はB国へのODAを停 止するほか、 必要な全ての手段を用いる。 」というA国の立場を伝達した。 A国は軍事大国の一つ に数えられており、 B国と比べて強大な軍事力を有している。 B国大使からA国の立場について報 告を受けたB国の大統領は、 「我が国がXの刑事責任を問うことは国際法に違反するものではない。 むしろ、 我が国によるXの逮捕や起訴に対してA国の外務大臣が批判することや、 力ずくで我が国 に対応を求めるA国の行為こそ、 国際法上の不干渉原則や国際連合憲章第2条第4項に違反するも のである。 」という声明を発表した。 A国とB国は、 α号とβ号の衝突事故を発端として生じた国際法上の問題に対する両国の立場の 相違を解消するため、 C国の仲介で交渉を重ねた。 しかしながら、 交渉は平行線をたどったため、 A国とB国は、 C国の提案に従って、 国際司法裁判所規程第36条第1項に基づいて事件を国際司 法裁判所(以下「ICJ」という。 )に付託することとした。 付託合意においてA国とB国は、 I CJが国際法違反の有無について判断することのみを請求し、 ICJが国際法違反を認定した場合 の国家責任法上の問題については、 判決後に両国で交渉することになっていた。 A国とB国は、 い ずれも国際連合の加盟国である。 また、 A国は本件衝突事故の発生前から海洋法に関する国際連合 条約(以下「国連海洋法条約」という。 )の当事国であるが、 B国は国連海洋法条約の当事国では ない。 以上の事実を基に、 以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.A国の外務大臣が、 B国によるXの逮捕や起訴が国際法違反であるとの声明を発表した根拠 として、 国際法上どのような主張が考えられるかについて論じなさい。 2.A国の行為が国際法上の不干渉原則や国際連合憲章第2条第4項に違反するとのB国の大統 領の声明に対して、 A国は国際法上どのような反論が可能かについて論じなさい。 3.A国が主張するB国の国際法違反をICJが認定した場合、 判決後の交渉において、 A国は、 B国に対してどのような国家責任法上の主張をすることができるかについて論じなさい。 - 42 - 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)] - 43 - [国際関係法(私法系)] 〔第1問〕(配点:50) Xは、 衣料品の製造販売を業とする日本法人であり、 日本以外に営業所等を一切有していない。 Yは、 高級衣料品のデザインや販売等を業とする甲国法人であり、 甲国に本店を有しているほか、 日本に営業所を有し、 日本の取引先との取引を同営業所において行っている。 なお、 Yの日本の営 業所が所在するオフィスは賃貸物件で、 備品は全てレンタル品であり、 日本国内にあるYの財産の 価額はごく少額である。 世界中からファッション関連企業を集めて甲国で開かれた見本市にXが出展したところ、 Yの代 表者A(甲国に住所を有する甲国人)がXの優秀な技術に目を付け、 Yとの取引をXに持ち掛けた。 Xの担当者がAとの話合いのため何度か甲国に赴き、 サンプルを届けるなど交渉を続けたところ、 XとYとの間で、 Yのデザインや仕様に基づきXが衣料品を日本において製作してYに販売する旨 の契約(以下「本件契約」という。 )がYの本店で締結された。 本件契約上、 代金の支払期日は、 商品を引き渡した日の翌月末日と定められていた。 Xは、 商品を製作し、 2020年5月25日に Yに対して引き渡し、 その支払期日にYに代金の支払を求めたがYは代金を支払わなかった。 以上の事実を前提として、 以下の設問に答えなさい。 なお、 〔設問1〕と〔設問2〕は独立した 問いであり、 国際物品売買契約に関する国際連合条約の適用はないものとする。 〔設問1〕 Xは、 Yを被告として代金3000万円の支払を求める訴え(以下「訴え1」という。 )を日 本の裁判所に提起した。 以下の小問に答えなさい。 なお、 〔小問1〕と〔小問2〕は独立した問いである。 〔小問1〕 本件契約の交渉過程においては、 契約準拠法について、 Xは日本法を主張し、 Yは甲国法を 主張したため合意が調わず、 X及びYは、 契約中に準拠法に関する条項を置くことを断念した。 他方、 本件契約には、 商品の引渡しと代金の支払は甲国でするものとする旨の条項が置かれて おり、 実際にも商品の引渡しは甲国においてされた。 訴え1について、 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかを論じなさい。 訴え1について、 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとして、 Xの代金支払 請求について判断するに当たり、 適用すべき準拠法はいずれの国の法かを論じなさい。 〔小問2〕 Xが訴え1を提起したのは2023年8月10日であった。 また、 本件契約には、 「甲国法 を準拠法とする。 」との条項及び「代金支払地は日本とする。 」との条項が置かれていた。 甲国民事訴訟法には「売買契約上の債権に基づく訴訟は、 権利を行使することができる時か ら3年以内に提起されなければならない。 」との規定があるところ、 Yは、 訴え1の提起が支 払期日から3年が経過した後にされているのでXの請求は認められないと主張している。 訴え1について、 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとして、 Yの上記主張が 認められるかを論じなさい。 〔設問2〕 本件契約には、 「甲国法を準拠法とする。 」との条項及び紛争解決について「この契約から又 はこの契約に関連して、 当事者間に生ずる可能性のある全ての紛争について、 乙国を仲裁地とす る仲裁により最終的に解決することに合意する。 」との条項が置かれていた。 Xは、 YではなくAを被告として、 Xを欺罔して契約をさせてXに損害を被らせたと主張して、 不法行為に基づく損害賠償を求める訴え(以下「訴え2」という。 )を日本の裁判所に提起した。 - 44 - この訴訟において、 Aは、 XとYとの間の仲裁合意の効力はXとAとの間の訴訟にも及ぶと主張 して、 仲裁法第3条第2項、 第14条第1項に基づき、 訴え2の却下を求めた。 裁判所は、 Aの 主張を認めて訴え2を却下した。 この場合において、 裁判所の判断の過程を説明しなさい。 なお、 甲国法及び乙国法のいずれにおいても、 契約に関連する「全ての紛争」には当該契約に 関連する不法行為に基づく請求も含まれると解されているところ、 甲国法では法人の締結した仲 裁合意の効力は法人の代表者にも及ぶとされているが、 乙国法では法人の締結した仲裁合意の効 力は法人の代表者に及ぶことはないとされている。 - 45 - 〔第2問〕(配点:50) A(日本国籍)及びB(甲国籍)は、 出生以来日本に居住している者で、 日本で婚姻した夫婦で ある。 Cは、 日本においてD(乙国籍)が未婚のまま出産した子であり、 出生により乙国籍を取得した。 Cの実父は不明である。 Dは日本においてCを養育してきたが、 その養育が困難となったため、 C を養子縁組によって養親に養育してもらうことを希望している。 A及びBは、 事情により生みの親のもとでは暮らせない子を養子に迎え入れようと考え、 養子縁 組あっせん事業者から現在5歳のCとの養子縁組のあっせんを受けた。 A及びBは、 Cとの間で、 実親との親族関係が断絶する養子縁組(以下「本件養子縁組」とい う。 )をしたいと考え、 東京家庭裁判所に対し、 Cの特別養子適格の確認の申立て及びCとの特別 養子縁組成立の申立てをした。 これらの申立てについて、 日本の裁判所の国際裁判管轄権は認めら れるものとする。 以上の事実を前提として、 以下の設問に答えなさい。 〔設問1〕 Dは、 熟慮の上で、 本件養子縁組について同意している。 また、 養子縁組に関し、 甲国法は、 裁判所の決定で成立し、 実方の血族との親族関係が終了する縁組の規定のみを有し、 乙国法は、 身分登録吏に養子縁組を届け出ることによって成立し、 実方の血族との親族関係が終了しない縁 組の規定のみを有するものとして、 以下の小問に答えなさい。 なお、 〔小問1〕と〔小問2〕は 独立した問いである。 〔小問1〕 本件養子縁組を成立させるに当たり、 養子縁組の成立に関する甲国法及び乙国法の要件を満 たす必要はあるかについて論じなさい。 なお、 乙国法は、 養子縁組の準拠法の選択について日 本法と同内容の規定を有しているが、 甲国法には次の規定が存在する。 【甲国法】 @ 甲国の裁判所は、 養子となるべき者が甲国に常居所を有するときは、 甲国法により、 養子 縁組を成立させる決定をすることができる。 〔小問2〕 本小問において反致は成立しないものとする。 また、 養子縁組の成立の要件に関し、 甲国法 には日本法の特別養子縁組と同内容の規定が存在し、 乙国法には日本法の普通養子縁組と同内 容の規定が存在するほか、 甲国法及び乙国法にはそれぞれ次の規定が存在する。 【甲国法】 A 養親は養子と6か月以上同居して試験養育した上で、 その結果について甲国で公認された ソーシャルワーカー(児童福祉司)による報告書の提出が必要である。 【乙国法】 B 養子縁組について養親の10歳以上の嫡出子の同意が必要である。 本件養子縁組を成立させるに当たり、 甲国法Aの要件をどのように満たせばよいかについ て論じなさい。 Aは、 以前に婚姻していたEとの間に、 その婚姻中に子Fをもうけていた(Fは、 A及び Eの嫡出子であるものとして、 嫡出親子関係の成否について論じる必要はない。 )。 しかし、 Aは、 Eと10年前に、 Fの親権者をEと定めて離婚した。 その後、 現在まで、 Fは、 Eと - 46 - 暮らしており、 Aとの交流はなかった。 Fは、 現在12歳である。 Aは、 Eに対し、 本件養 子縁組についてFの同意を得るために連絡したが、 EがFに本件養子縁組について伝えるこ とをかたくなに拒んだため、 Fの同意は得られていない。 Fの同意が得られないまま、 本件 養子縁組を成立させることはできるかについて論じなさい。 〔設問2〕 本件養子縁組は有効に成立した。 本件養子縁組が成立して以降も、 A、 B及びCは、 日本に居 住していたが、 丙国のリゾート地を気に入ったA及びBは、 Cを連れて、 長期休暇中に頻繁に丙 国に滞在していた。 Bは、 本件養子縁組から20年後に死亡した。 A及びBは、 B死亡の3年前に、 丙国に所在するP銀行本店との間で、 預金口座設定契約(以 下「本件預金契約」という。 )を締結して、 A及びBの共同名義での預金口座を開設した。 本件 預金契約には、 「丙国法を準拠法とする。 」との条項がある。 その後、 Bは、 日本に所在するQ 銀行本店のB名義の口座から上記A及びBの共同名義の預金口座に7000万円を送金した。 な お、 丙国法では、 共同名義の預金口座の一方の名義人が死亡した場合には、 当該預金口座の預金 は、 当然に他方の名義人の所有資産となり、 死亡した名義人の遺産には含めないものとされてい る。 また、 Bは、 死亡の1年前に、 当時滞在していた丙国のホテルの一室で、 B名義の日本所在の 価額2000万円の不動産をAに相続させ、 Q銀行本店のB名義の口座の預金1000万円をC に相続させる旨の遺言(以下「本件遺言」という。 )をした。 本件遺言は、 スマートフォンによ り録画されたものであり、 その録画には、 Bが氏名、 撮影日及び上記の遺言の内容を発言してい る様子のほか、 同席した友人Rが氏名及び遺言が正確である旨を発言している様子が記録されて いる。 Cは、 本件預金契約とBによる送金によって遺留分が侵害されたと主張して、 遺留分侵害額請 求権を行使した上で、 Aに対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求めて、 東京地方裁判所 に訴えを提起した。 この訴えについて、 日本の裁判所の国際裁判管轄権は認められるものとする。 以上の事実を前提として、 以下の小問に答えなさい。 なお、 〔小問1〕と〔小問2〕は独立し た問いであり、 各小問において反致は成立しないものとする。 〔小問1〕 録画の方法によっていることで本件遺言が無効とされるかについて論じなさい。 なお、 甲国 法及び丙国法にはそれぞれ次の規定が存在する。 【甲国法】 C 遺言は、 自筆証書、 公正証書又は秘密証書によってしなければならない。 【丙国法】 D1 2 遺言は、 自筆証書、 公正証書、 秘密証書又は録画によってしなければならない。 録画による遺言は、 遺言者が遺言の趣旨、 その氏名と年月日を口述して、 これに参与し た証人が、 遺言が正確である旨とその氏名を口述しなければならない。 〔小問2〕 甲国法には遺留分制度はあるが、 日本法とは遺留分額が異なっており、 丙国法には遺留分制 度が存在しない。 Cの請求には、 いずれの国の法が適用されるかについて論じなさい。 - 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