1 [新司法試験サンプル問題(刑事系科目)]
2
3
4 科目全般について
5 刑事系科目は,
6 刑法,
7 刑事訴訟法を中心とし,
8 大学(法科大学院)における講義あるいは教
9 科書等で通常触れられる刑事実体法及び刑事手続法に係る関連法分野も出題範囲とする。
10
11
12
13 [短答式試験問題]
14
15
16 短答式試験問題について
17 刑事系の短答式問題は,
18 刑法総論・各論,
19 刑事訴訟法・刑事訴訟規則等の幅広い分野から,
20
21 判例に関する基礎的知識,
22 基本的論点に関する正確な理解及びそれらを前提とした法的判断を
23 問う問題を中心とし,
24 全体として基本的な問題を多数出題することにより,
25 実務家になろうと
26 する者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを試すことを目的と
27 する。
28
29 そのために,
30 多角的な観点からの柔軟な出題が可能となるように,
31 現行司法試験の5肢
32 択一形式だけではなく,
33 出題の形式を多様化することとする。
34
35
36
37 〔第1問〕
38
39 学生AないしCは,
40 「甲は,
41 酒に酔って大声を上げながら土足で甲宅に上がり込ん
42
43 できた乙を退去させようとしたところ,
44 突然乙が素手で殴りかかってきたので,
45 身を守るため
46 に,
47 そばにあった果物ナイフで乙の腹部及び腕部に切りつけた。
48
49 その結果,
50 乙は失血死した。」
51 という事例の甲の罪責について議論している。
52
53 各発言の(
54
55 )に語句群から適切な語句を入れ
56
57 た場合,
58 (@)から(F)までに入るものの組合せとして正しいものは,
59 後記1から5までの
60 うちどれか。
61
62 なお,
63 参照条文は,
64 語句群中のd又はeの該当部分の抜粋である(解答欄は,
65 [
66 1])。
67
68
69
70 【発言】
71 学生A
72
73 甲の行為は(@)罪の構成要件該当性はあるが,
74 (A)が定める正当防衛の要件
75 を充足するので,
76 犯罪不成立だと思う。
77
78 (A)が定める要件を形式的に充足する限
79 り正当防衛とみなされるべきだ。
80
81
82
83 学生B
84
85 A君の意見に反対だ。
86
87 甲の行為は(B)罪の構成要件に該当すると思う。
88
89 また,
90
91 (A)が定める正当防衛の要件は刑法の要件と同じと解すべきである。
92
93 甲の行為に
94 は防衛行為の相当性がなく,
95 正当防衛は成立しないと思う。
96
97
98
99 学生C
100
101 B君の見解では,
102 (A)の規定は刑法の正当防衛の一例を例示した解釈規定にす
103 ぎないことになるし,
104 A君の見解では,
105 (C)の余地がなくなりかねず,
106 妥当では
107 ない。
108
109 なお,
110 この事例から分かる凶器の形状・用法,
111 創傷の部位などの(D)を総
112 合すると,
113 (@)の故意の認定には疑問がある。
114
115
116
117 学生B
118
119 故意の認定についてはC君の意見に賛成だ。
120
121 ただ,
122 果物ナイフで腹部及び腕部に
123 切りつけるという態様からみて,
124 その行為については,
125 少なくとも(E)罪の構成
126 要件該当性は認められるので,
127 同罪を基本犯とした(F)としての(B)罪が成立
128 すると思う。
129
130
131
132 【語句群】
133
134 1
135
136 a.殺人
137
138 b.傷害
139
140 c.傷害致死
141
142 d.盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律
143 f.正当防衛
144
145 g.過剰防衛
146
147 j.結合犯
148
149 k.結果的加重犯
150
151 1.@aBcDh
152
153 2.AdCfDh
154
155 e.暴力行為等処罰ニ関スル法律
156
157 h.情況証拠
158
159 i.直接証拠
160
161 3.AeCgEb
162
163 4.BcDiFk
164
165 5.CgEbFj
166
167 (参照条文)
168 第1条
169
170 左ノ各号ノ場合ニ於テ自己又ハ他人ノ生命,
171 身体又ハ貞操ニ対スル現在ノ危難ヲ排除
172
173 スル為犯人ヲ殺傷シタルトキハ刑法第36条第1項ノ防衛行為アリタルモノトス
174 一〜二
175
176
177 (略)
178
179 故ナク人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,
180 建造物若ハ船舶ニ侵入シタル者又ハ要求ヲ受ケ
181 テ此等ノ場所ヨリ退去セザル者ヲ排斥セントスルトキ
182
183 【正解】
184
185
186
187 【出題趣旨】
188
189 〔第2問〕
190
191 正当防衛及び刑法と隣接する特別法の基本的理解を問う問題である。
192
193
194
195 次の事例についての以下の【見解】,
196 【結論】及び【最高裁判所の判例との比較】
197
198 の組合せとして正しいものを,
199 後記1から6までのうち二つ選びなさい(解答欄は,
200 [bQ]及
201 び [bR] で順不同)。
202
203
204
205 【事例】
206 甲と乙は,
207 日ごろから仲の悪かったVに傷害を加えることを共謀した上,
208 共同して,
209 Vに
210 殴る,
211 蹴るなどの暴行を加えたが,
212 甲は,
213 Vが捨てぜりふを吐いたことに激高し,
214 とっさに
215 殺意を抱き,
216 持っていた小刀でVの腹部を力任せに一回突き刺し,
217 Vを腹部刺創により失血
218 死させた。
219
220
221
222 【見解】
223
224
225 共同正犯の本質について行為共同説の立場に立ち,
226 共同正犯は共犯者が惹起した結果
227 について因果性が認められる場合に認められるのであって,
228 異なる罪名の場合でも共同
229 正犯の成立を認める見解
230
231
232
233 共同正犯の本質について犯罪共同説の立場に立ち,
234 同一の罪名の場合しか共同正犯の
235 成立は認められないとする見解
236
237
238
239 共同正犯の本質について犯罪共同説の立場に立ちながら,
240 構成要件の重なり合いが認
241 められる限度で異なる罪名の場合でも共同正犯の成立を認める見解
242
243 【結論】
244 T
245
246 甲,
247 乙には傷害致死罪の共同正犯が成立し,
248 さらに甲には殺人罪が成立する。
249
250
251
252 2
253
254 U
255
256 甲には殺人罪の共同正犯,
257 乙には傷害致死罪の共同正犯が成立する。
258
259
260
261 V
262
263 甲,
264 乙には殺人罪の共同正犯が成立し,
265 乙は傷害致死罪の範囲で科刑される。
266
267
268
269 【最高裁判所の判例との比較】
270
271
272 最高裁判所の判例の見解に必ずしも反しない。
273
274
275
276
277
278 最高裁判所の判例の見解に明らかに反する。
279
280
281
282 【組合せ】
283 1.aTア
284
285 【正解】
286
287 2.aUイ
288
289 3.bUア
290
291 4.bVイ
292
293 5.cTア
294
295 6.cVイ
296
297 4及び5
298
299 【出題趣旨】
300 重要な最高裁判例及び共犯論に関する基本的論点についての理解を問う問題である。
301
302
303
304 〔第3問〕
305
306 下記アないしコの事例は,
307 最高裁判所の判例に従うと,
308 併合罪と判断されるグルー
309
310 プ,
311 観念的競合と判断されるグループ及び牽連犯と判断されるグループの三つに分類される。
312
313
314 同じグループに分類されるべき事例の組合せとして正しいものは,
315 後記1から6までのうちど
316 れか(解答欄は,
317 [bS] )。
318
319
320
321 【事例】
322
323
324 酒に酔った状態で自動車を運転し,
325 その運転中の過失により人身事故を発生させて人
326 を死亡させた場合における,
327 酒酔い運転の罪と酒に酔って運転したことを過失の内容と
328 する業務上過失致死罪
329
330
331
332 同時に同一場所において,
333 無免許で,
334 かつ,
335 酒に酔った状態で自動車を運転した場合
336 における,
337 無免許運転の罪と酒酔い運転の罪
338
339
340
341 傷害により人を死亡させた後,
342 さらに死体を遺棄した場合における,
343 傷害致死罪と死
344 体遺棄罪
345
346
347
348 二人連れのうち,
349 男を不法に監禁した上,
350 女を強姦した場合における,
351 監禁罪と強姦
352
353
354
355
356 同時に同一場所で数人を監禁した場合における,
357 各被害者につき成立する数個の監禁
358
359
360
361
362 強盗目的で住居に侵入し,
363 その住居内で強盗行為に及んだ場合における,
364 住居侵入罪
365 と強盗罪
366
367
368
369 身の代金を取得しようと考えて人を拐取し,
370 身の代金を要求した場合における,
371 身の
372 代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪
373
374
375
376 窃盗を教唆し,
377 その窃盗犯人のために盗品の有償処分のあっせんをした場合における,
378
379 窃盗教唆罪と盗品等処分あっせん罪
380
381
382
383 不動産登記簿の原本に不実の記載をさせた上,
384 これを備え付けさせて行使した場合に
385 おける,
386 公正証書原本不実記載罪とその行使罪
387
388 3
389
390
391
392 数人に対して刃物を突き付け「動くな」と言って脅迫し,
393 同時に数人から所持金を強
394 取した場合における,
395 各被害者につき成立する数個の強盗罪
396
397 1.ア イ キ
398
399 2.イ オ コ
400
401 3.ウ カ キ
402
403 4.エ キ コ
404
405 5.オ カ ク
406
407 6.カ ケ コ
408
409 【正解】
410
411
412
413 【出題趣旨】
414
415 〔第4問〕
416
417 罪数に関する基本的かつ正確な理解を問う問題である。
418
419
420
421 学生AないしCは,
422 刑罰の執行について会話している。
423
424 各発言中の(
425
426 )内に語句
427
428 群から適切な語句を入れた場合,
429 (@)から(F)までに入るものの組合せとして正しいもの
430 は,
431 後記1から6までのうちどれか(解答欄は,
432 [bT] )。
433
434
435
436 【発言】
437 学生A
438
439 執行猶予は,
440 情状によって刑の執行を猶予し,
441 一定期間を無事経過したときは,
442
443 (@)は効力を失うという制度である。
444
445 短期の(A)については,
446 受刑者の改善に
447 は短すぎるし,
448 他の被収容者から悪影響を受けるなどの弊害が指摘されているが,
449
450 執行猶予は,
451 このような弊害を避けるための制度であると思う。
452
453
454
455 学生B
456
457 A君の意見には賛成できない。
458
459 典型的な短期の(A)である(B)が,
460 執行猶予
461 の対象になっていない一方で,
462 財産刑である(C)が執行猶予の対象になっている
463 ことを考えると,
464 現行刑法の執行猶予は,
465 短期の(A)の弊害を避けることだけを
466 目的としているとは思えない。
467
468 むしろ,
469 執行猶予は,
470 施設に収容せず,
471 刑が執行さ
472 れるという心理的強制を背景として,
473 自力で改善更生させるという(D)の目的が
474 ある思う。
475
476 執行猶予には(E)を付すことができるとされているのも,
477 その目的に
478 沿うものだと思う。
479
480
481
482 学生C
483
484 執行猶予の目的が短期の(A)の弊害の回避だけではないという点で,
485 B君の意
486 見に賛成だ。
487
488 しかし,
489 (D)の目的に沿うという(E)も,
490 (F)の執行猶予の場
491 合は,
492 裁量的に付することとされているにとどまっている。
493
494 その上,
495 現行刑法の執
496 行猶予制度は,
497 自由を拘束するよりも執行猶予に付する方が改善更正を期待できる
498 場合に広く刑の執行を猶予するという制度になっておらず,
499 一定の前科のないこと
500 を要件として,
501 また,
502 対象となる(A)の上限を3年としている。
503
504 これらの点を考
505 えると,
506 執行猶予が(D)の目的だけにあると考えるのも妥当ではないと思う。
507
508
509
510 【語句群】
511 a.公訴の提起
512
513 b.刑の言渡し
514
515 f.労役場留置
516
517 g.科料
518
519 k.保護観察
520
521 1.@bAcCg
522
523 l.試験観察
524
525 2.@aBfDi
526
527 c.自由刑
528
529 h.罰金
530 m.再度
531
532 i.一般予防
533
534 e.拘留
535
536 j.特別予防
537
538 n.初度
539
540 3.AdBeEl
541
542 4
543
544 d.懲役刑
545
546 4.AcChDj
547
548 5.ChElFm
549
550 【正解】
551
552 6.DiEkFn
553
554
555
556 【出題趣旨】
557 刑法の隣接分野である刑事政策も視野に入れた刑罰論に関する基本的理解を問う問題であ
558 る。
559
560
561
562 〔第5問〕
563
564 財産犯に関する次の各文章について,
565 それが正しい場合には1を,
566 誤っている場合
567
568 には2を選びなさい(解答欄は,
569 アからオの順に [bU] から [10] )。
570
571
572
573
574 窃盗罪ばかりでなく,
575 器物損壊罪も,
576 客体に不動産を含まない犯罪である。
577
578 [bU]
579
580
581
582 会社の重要な秘密文書を業務上保管する者が,
583 業務の競合する他社にその秘密を漏らし
584 て同社を利する目的で,
585 秘密文書を一時社外に持ち出し,
586 コピーした後に返却した場合に
587 は,
588 判例の見解によると,
589 業務上横領罪は成立しない。
590
591 [bV]
592
593
594
595 13歳の少年が万引きした商品を買い取る行為については,
596 前提の犯罪である窃盗罪が
597 不成立である以上,
598 盗品等有償譲受け罪は成立しない。
599
600 [bW]
601
602
603
604 質権者の委託を受けて質物を保管する者が,
605 ほしいままに当該質物を所有権者に返還し
606 た場合には,
607 委託物横領罪が成立する。
608
609 [bX]
610
611
612
613 窃盗罪の保護法益を財物の占有と解している判例は,
614 盗品等関与罪の親族間の犯罪に関
615 する特例の適用の要件として,
616 被害者である占有者と盗品等関与罪の犯人の間に親族関係
617 があれば足りるとしている。
618
619 [10]
620
621 【正解】
622 ア.2(誤)
623
624 【出題趣旨】
625
626 〔第6問〕
627
628 イ.2(誤)
629
630 ウ.2(誤)
631
632 エ.2(誤)
633
634 オ.2(誤)
635
636 財産犯に関する基本的かつ正確な理解を問う問題である。
637
638
639
640 下記の事例において,
641 判例の立場に従って甲の罪責を検討した場合の結論として正
642
643 しいものは,
644 後記1から5までのうちどれか(解答欄は,
645 [11] )。
646
647
648
649 【事例】
650 A省の職員(国家公務員)である甲は,
651 他省庁であるB省の課長職(国家公務員)を併任
652 し,
653 法律上,
654 同課の職員に付与されている権限に基づいて,
655 法律違反事案に対する行政調査
656 を担当することとなった(なお,
657 同法律上,
658 「同課職員は,
659 調査により犯罪の心証を得たと
660 きは,
661 告発する」とされていた)。
662
663
664 同課では,
665 某会社の社長Xに対する法律違反事案の調査(以下「本件調査」という。
666
667 )に
668 着手し,
669 甲の部下である同課職員Cらが,
670 甲の指示でその調査に当たっていた。
671
672
673 その数日後,
674 甲は,
675 Xの会社の役員であるYから本件調査に手心を加えてもらいたいとの
676 申出を受けたところ,
677 YがA省出身であり,
678 甲のかつての上司であったことから,
679 甲はYの
680 申出を承諾した。
681
682
683
684 5
685
686 甲は,
687 Cらに本件調査の進ちょく状況を確認したところ,
688 Cらは,
689 Xについて犯罪の心証
690 を得ており,
691 また,
692 Cらから報告を受けて同様の心証を得た甲も,
693 本件調査を継続して告発
694 すべき事案であると判断した。
695
696
697 しかし,
698 Yの申出を受けていた甲は,
699 Cらの反対を押し切って,
700 本件調査及び告発を打ち
701 切るように指示したことから,
702 Cらも甲の指示に従った。
703
704 その結果,
705 本件調査は中断し,
706
707 に対する法律違反事案は不問に付されることになった。
708
709
710 その翌年,
711 甲は,
712 B省の課長職の併任を解かれてA省に復帰し,
713 半年後,
714 A省を退職して
715 引き続き国立大学法人の職員(教授)に就任した。
716
717
718 甲が教授に就任したことを知ったYは,
719 本件調査を打ち切ってくれたことに対する謝礼の
720 趣旨を込めて,
721 甲のために,
722 高級料亭に甲及びその妻を招いた上,
723 甲の退職及び教授就任祝
724 いの名目で盛大な宴会を催すことにした。
725
726
727 甲は,
728 Yの上記意図を承知しながらも,
729 妻と相談の上,
730 後に相当程度の商品券でも送り返
731 しておけば問題ないと判断し,
732 この宴会に夫婦一緒に出席して飲食等を楽しんでいたが,
733
734 の席上,
735 Yが,
736 甲に対し,
737 現金10万円入りの祝儀袋を手渡そうとしたことに立腹して受取
738 を拒否し,
739 宴会半ばで席を立って帰った。
740
741
742 なお,
743 国立大学法人法第19条は,
744 「国立大学の役員及び職員は,
745 刑法その他の罰則の適
746 用については,
747 法令により公務に従事する職員とみなす」と規定している。
748
749
750
751 1.受託収賄罪(刑法第197条第1項)
752
753 2.加重収賄罪(刑法第197条の3第2項)
754
755 3.事後収賄罪(刑法第197条の3第3項)
756
757 4.あっせん収賄罪(刑法第197条の4)
758
759 5.犯罪不成立
760
761 【正解】
762
763
764
765 【出題趣旨】
766 比較的長文の事実関係を前提として,
767 賄賂罪に関する基本的理解を問う問題である。
768
769
770
771 〔第7問〕
772
773 以下の記述について,
774 それが正しい場合には1を,
775 誤っている場合には2を選びな
776
777 さい(解答欄は,
778 アからエの順に [12] から [15] )。
779
780
781
782
783
784 刑事訴訟法は,
785 証拠調べの手続について「当事者主義」を徹底しているわけではなく,
786
787 裁判所の職権による証拠調べの権限を認めている。
788
789 もっとも,
790 裁判所は,
791 当事者の主導に
792 よる訴訟活動を原則とするという観点から,
793 刑事訴訟規則208条の定める求釈明の権限
794 や訴訟指揮権などを適切に行使することにより,
795 当事者の主張・立証活動を促して,
796 職権
797 証拠調べを行うのと同様の効果を得ることが可能である。
798
799 [12]
800
801
802
803 訴因変更命令の制度は,
804 「当事者主義」の原則に対する例外であり,
805 裁判所が,
806 当事者
807 である検察官に対して,
808 審判の対象を変更するよう命令する権限を認めるものである。
809
810
811 因変更命令の法的性質は裁判所の裁判すなわち「決定」であるから,
812 訴因変更命令が発せ
813 られた場合には,
814 検察官が訴因変更の請求をしなくても,
815 訴因変更の効果が生ずる。
816
817
818 13]
819
820 6
821
822
823
824 刑事訴訟法248条の定める「起訴便宜主義」は,
825 検察官の訴追裁量権限を認めるもの
826 であるが,
827 起訴便宜主義にも例外があり,
828 少年法20条の規定により家庭裁判所が刑事処
829 分を相当と認めて検察官に送致した少年の事件については,
830 検察官は原則として起訴しな
831 ければならないと定められている。
832
833 [14]
834
835
836
837 一罪の一部を有罪,
838 一部を無罪と判断した第一審判決に対して,
839 被告人だけが控訴した
840 場合について,
841 最高裁判所の判例は,
842 当事者主義を基本原則とする現行刑事訴訟法の基本
843 構造と,
844 当事者の申し立てた控訴趣意を中心として第一審判決に対し事後的審査を加える
845 という現行控訴審の性格にかんがみ,
846 無罪とされた部分については当事者間において攻防
847 の対象から外されたものと見ることができ,
848 このような無罪部分については移審の効果自
849 体が発生せず,
850 したがって無罪部分について控訴審が職権調査を及ぼし有罪の自判をする
851 ことは許されない旨判断している。
852
853 [15]
854
855 【正解】
856 ア.1(正)
857
858 イ.2(誤)
859
860 ウ.1(正)
861
862 エ.2(誤)
863
864 【出題趣旨】
865 刑事手続(上訴及び刑事手続と関連して当然理解しておくべき少年事件の基本的な手続も
866 含まれる。
867
868 )に関する基本原理・原則についての理解を問う問題である。
869
870
871
872 〔第8問〕
873
874
875
876 次のア〜オの記述のうち,
877 違法な裁判は幾つあるか(解答欄は,
878 [16] )。
879
880
881
882 I警察署司法警察員は被疑者甲を窃盗罪で現行犯逮捕したが,
883 同署管内で発生した殺人
884 事件の捜査に人手を取られたため,
885 被疑者甲に対する窃盗被疑事実の捜査が遅延し,
886 逮捕
887 後60時間を経過した時点で被疑者甲を検察官に送致する手続を採った。
888
889 送致を受けた検
890 察官において逮捕後72時間以内に勾留請求手続を採り,
891 裁判官は勾留状を発した。
892
893
894
895
896
897 覚せい剤の譲渡の被疑事実で通常逮捕された被疑者甲の送致を受けた検察官は,
898 被疑者
899 甲が逮捕時に覚せい剤を所持していたことから,
900 覚せい剤の譲渡の事実と所持の事実の両
901 事実を被疑事実として勾留請求し,
902 裁判官は両事実を被疑事実として勾留状を発した。
903
904
905
906
907
908 裁判官は,
909 30万円以下の罰金に当たる過失傷害罪を犯した被疑者甲について,
910 住居は
911 あるが罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由があると認め,
912 勾留状を発した。
913
914
915
916
917
918 裁判官は,
919 窃盗事件を犯した被疑者甲について,
920 勾留の理由及び必要性があると認めた
921 が,
922 捜査に要する期間は7日間で足りると考え,
923 勾留期間を7日間とする勾留状を発した。
924
925
926
927
928
929 裁判官は,
930 勾留及び勾留期間の延長により合計15日間勾留されている傷害罪の被疑者
931 甲について,
932 検察官からの請求により,
933 やむを得ない事由があると認め,
934 更に3日間の勾
935 留期間の延長決定をした。
936
937
938
939 1.1個
940
941 【正解】
942
943 2.2個
944
945 3.3個
946
947 4.4個
948
949
950
951 7
952
953 5.5個
954
955 【出題趣旨】
956 捜査から公訴提起に至るまでの刑訴法の条文等の基本的な知識を問う問題である。
957
958
959
960 〔第9問〕
961
962 次の文章の(@)及び(A)にはT群の語句のいずれか,
963 【ア】ないし【ウ】には
964
965 U群の文章のいずれか,
966 [a]及び[b]にはV群の文章のいずれかが入る。
967
968 (@)及び(A)に
969 入る語句,
970 【ア】,
971 【ウ】及び[b]に入る文章として正しいものをそれぞれ選びなさい(解
972 答欄は,
973 (@),
974 (A),
975 【ア】,
976 【ウ】,
977 [b]の順に,
978 [17] 〜 [21] )。
979
980
981
982 最高裁判所の判例は,
983 人の体内に存在する尿を導尿管(カテーテル)を用いて強制的に採
984 取するには(@)によるべきものとしつつ,
985 処分の性質にかんがみ,
986 (A)に関する規定を
987 準用し,
988 令状には適当と認められる条件の記載が不可欠だとしている。
989
990 こ れ に 対 し て は ,
991
992 【ア】という批判が考えられるが,
993 最高裁判所は【イ】ということに着目したと考えること
994 もできる。
995
996 仮にそうであるとすれば,
997 採尿に関する最高裁判所の考え方は,
998 [a]という場
999 合には当てはまるとしても,
1000 [b]という場合には当てはまらないことになる。
1001
1002 もっとも,
1003
1004 最高裁判所は,
1005 (@)によるべき理由として,
1006 【ウ】ということを挙げており,
1007 この点を重視
1008 すれば,
1009 [a]という場合はもちろん,
1010 [b]という場合も,
1011 (@)によるべきものと考え
1012 る余地もある。
1013
1014
1015
1016 【T群】
1017 1.検証令状
1018
1019 2.捜索差押令状
1020
1021 3.鑑定処分許可状
1022
1023 4.身体検査令状
1024
1025 【U群】
1026 1.体内に存在する尿は生体の一部であって証拠物とはいえない。
1027
1028
1029 2.身体の捜索には身体の安全や人格の尊厳に対する手続的配慮が乏しい。
1030
1031
1032 3.身体の秘部への侵入は捜査手続上の処分として許される限度を超えている。
1033
1034
1035 4.検証として身体検査の場合にも同程度の精神的打撃を伴う場合がある。
1036
1037
1038 5.尿はいずれは体外に排出される老廃物である。
1039
1040
1041 6.医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならないとの条件が
1042 付される。
1043
1044
1045 7.体内に存在する尿を証拠として強制的に採取する行為は捜索・差押えの性質を有する。
1046
1047
1048
1049 【V群】
1050 1.体腔内に隠匿された証拠物を採取する。
1051
1052
1053 2.体内を流れる血液を採取する。
1054
1055
1056
1057 【正解】
1058 (@).2
1059
1060 【出題趣旨】
1061
1062 (A).4
1063
1064 【ア】.1
1065
1066 【ウ】.7
1067
1068 [b].2
1069
1070 基本的な判例について,
1071 その内容と射程の理解を問う問題である。
1072
1073
1074
1075 8
1076
1077 〔第10問〕
1078
1079 以下の二つの類型は,
1080 最高裁判所の判例によると訴因変更が必要となる場合(T類
1081
1082 型)と,
1083 最高裁判所の判例によると訴因変更が可能となる場合(U類型)とをそれぞれ並べた
1084 ものであるが,
1085 訴因変更を必要としない場合や訴因変更が許されない場合も含まれている。
1086
1087 T
1088 類型中訴因変更を必要としないものの個数及びU類型中訴因変更が許されないものの個数の組
1089 合せとして正しいものは,
1090 後記1から8までのうちどれか(解答欄は,
1091 [22] )。
1092
1093
1094
1095 【T類型】
1096 1.I市内の路上において,
1097 甲が金品強取の目的でVを殺害しようとその首を絞めている
1098 とき,
1099 これに加功することにして自己が着用していたベルトを甲に手交してV殺害の目
1100 的を達成させたという被告人に対する強盗殺人罪の共同正犯を,
1101 同日同所における上記
1102 ベルトの手交による殺人罪の幇助犯にする場合
1103 2.I市内の被告人方において,
1104 甲が乙ら4名に対して現金各5万円を供与した際,
1105 その
1106 事情を知りながら甲を被告人方まで案内したほか乙ら4名に対し,
1107 受供与を促す等の行
1108 為をしたという被告人に対する公職選挙法違反の幇助犯を,
1109 同日同所における甲との同
1110 法違反の共同正犯にする場合
1111 3.I市内の路上で帰宅中の女性を追尾し,
1112 同女が逃げ込んだ甲方において,
1113 仰向けに押
1114 し倒し馬乗りになって陰部をもてあそんだという被告人に対する強制わいせつ罪を,
1115
1116 日同所における甲ほか3名らの面前での上記行為として公然わいせつ罪にする場合
1117 4.I市内の路上において,
1118 甲と共同して実行した足蹴等によりVに傷害を負わせたとい
1119 う被告人に対する傷害罪の共同正犯を,
1120 同日同所における被告人が単独で実行した足蹴
1121 による暴行罪にする場合
1122
1123 【U類型】
1124 1.I市内の被告人方において,
1125 同市内の倉庫からウィスキー瓶10ダースを窃取するの
1126 に必要だと甲から頼まれて被告人所有の大型貨物自動車を貸与して甲の犯行を容易にし
1127 たという被告人に対する窃盗罪の幇助犯を,
1128 同日同所において盗品であることを知りな
1129 がら甲からウィスキー瓶10ダースを買い受けたという盗品等有償譲受け罪にする場合
1130 2.財団法人の外務員として賛助金集金の事務に従事していた平成16年2月14日から
1131 同年3月31日までの間,
1132 15回にわたって集金した現金1,
1133 500万円を着服横領し
1134 たという被告人に対する業務上横領罪を,
1135 平成16年1月31日まで上記賛助金集金の
1136 事務に従事していたが同日付けで解雇されたのに従前同様の地位にあるごとく装って上
1137 記期間15回にわたって賛助金名下に上記現金を詐取したという詐欺罪にする場合
1138
1139 1.【T類型】1個,
1140 【U類型】1個
1141
1142 2.【T類型】1個,
1143 【U類型】2個
1144
1145 3.【T類型】2個,
1146 【U類型】1個
1147
1148 4.【T類型】2個,
1149 【U類型】2個
1150
1151 5.【T類型】3個,
1152 【U類型】1個
1153
1154 6.【T類型】3個,
1155 【U類型】2個
1156
1157 7.【T類型】4個,
1158 【U類型】1個
1159
1160 8.【T類型】4個,
1161 【U類型】2個
1162
1163 【正解】
1164
1165
1166
1167 9
1168
1169 【出題趣旨】
1170 判例を素材にした具体的事実に即して訴因についての基本的な理解を問う問題である。
1171
1172
1173
1174 〔第11問〕
1175
1176 次のアないしカは,
1177 下記事例の公判審理における証人尋問の一場面であるが,
1178 これ
1179
1180 に関連する記述を@からDまでのうちから選んで対応させた場合の組合せとして正しいものは,
1181
1182 後記1から5までのうちどれか(解答欄は,
1183 [23] )。
1184
1185
1186
1187 【事例】
1188 被告人甲は,
1189 Aに対する5,
1190 000万円の債務を返済する資金に窮したことから,
1191 知人B
1192 が所有するI市所在の土地・建物について,
1193 知人Cに指示して,
1194 同人をして,
1195 甲B間の虚偽
1196 の売買契約書を作成させ,
1197 あたかも被告人甲が所有するものであるかのように装ってVに売
1198 却し,
1199 売買代金名下に5,
1200 000万円を詐取したとの事実で公判請求され,
1201 裁判所において
1202 審理を受けている。
1203
1204
1205 検察官は,
1206 第一回公判期日において,
1207 裁判所に対し,
1208 A,
1209 B及びCの各検察官面前調書並
1210 びにそのほかの書証の取調べを請求し,
1211 弁護人は,
1212 A,
1213 B及びCの各検察官面前調書を不同
1214 意としたので,
1215 検察官は,
1216 裁判所に対し,
1217 A,
1218 B及びCの検察官面前調書に代えて,
1219 3名の
1220 証人尋問を請求し,
1221 裁判所の採用決定を経て,
1222 第二回公判期日において,
1223 上記3名に対する
1224 証人尋問を順次行った。
1225
1226
1227
1228
1229
1230 検察官は,
1231 被告人甲がVに売却した土地・建物の所有関係を立証するため,
1232 証人Bに対
1233 し主尋問を行った際,
1234 「あなたは,
1235 これまで被告人甲と交友がありましたね。
1236
1237 」と質問し
1238 た。
1239
1240
1241
1242
1243
1244 検察官は,
1245 被告人甲の債務状況を立証するため,
1246 証人Aに対し主尋問を行った際,
1247 「あ
1248 なたは,
1249 被告人に対し,
1250 5,
1251 000万円の貸付残高がありますね。
1252
1253 」と質問した。
1254
1255 なお,
1256
1257 弁護人は,
1258 検察官請求にかかる被告人甲と証人Aの貸借状況に関する捜査報告書を同意し,
1259
1260 裁判所において取調べ済みである。
1261
1262
1263
1264
1265
1266 検察官は被告人甲―B間の売買契約書の虚偽性を立証するため,
1267 証人Cに対し主尋問を
1268 行った際,
1269 証人Cが,
1270 上記売買契約書を作成した旨を証言したので,
1271 売買契約書と題する
1272 書面を示し,
1273 「これは,
1274 あなたが作成したものですか。
1275
1276 」と質問した。
1277
1278 なお,
1279 検察官請求
1280 に係る上記売買契約書については,
1281 裁判所において取調べ済みである。
1282
1283
1284
1285
1286
1287 上記ウにおいて,
1288 検察官は,
1289 証人Cに対し,
1290 被告人甲の指示状況を質問したところ,
1291
1292 人Cが,
1293 「そんなことは忘れた。
1294
1295 」旨の証言を繰り返したため,
1296 検察官は,
1297 「あなたは,
1298
1299 平成○年○月○日,
1300 ○○地方検察庁検察官から取調べを受けた際,
1301 この点について事実を
1302 述べたことはありませんか。
1303
1304 」と質問した。
1305
1306
1307
1308
1309
1310 上記エにおいて,
1311 検察官は,
1312 証人Cの平成○年○月○日付け検察官面前調書の該当部分
1313 の要旨を読み上げた上,
1314 「あなたは,
1315 以前,
1316 検察官に対し,
1317 このように供述したのではあ
1318 りませんか。
1319
1320 」と質問した。
1321
1322
1323
1324
1325
1326 上記オにおいて,
1327 検察官は,
1328 証人Cの平成○年○月○日付け検察官面前調書末尾の供述
1329 人の署名押印部分を示し,
1330 「この署名押印は,
1331 あなたが自署し押印したものですか。
1332
1333 」と
1334 質問した。
1335
1336
1337
1338 10
1339
1340 @
1341
1342 主尋問においても実質的な尋問に入るに先立ち明らかにする必要のある事項は誘導尋問
1343 が許される。
1344
1345
1346
1347 A
1348
1349 主尋問においても訴訟関係人に争いのないことが明らかな事項は誘導尋問が許される。
1350
1351
1352
1353 B
1354
1355 証人に対し,
1356 書面の成立や同一性を確認する場合,
1357 裁判長の許可を受けずに示すことが
1358 許される。
1359
1360
1361
1362 C
1363
1364 主尋問においても証人が証言を避けようとする事項については誘導尋問が許される。
1365
1366
1367
1368 D
1369
1370 誘導尋問をするに際しては,
1371 原則として書面の朗読は避けるべきであるが,
1372 刑事訴訟法
1373 第321条第1項第2号後段の事由を立証する必要がある場合は,
1374 不相当にわたらない限
1375 り許される。
1376
1377
1378
1379 1.ア@とオA
1380
1381 【正解】
1382
1383 2.イAとエB
1384
1385 3.ウBとイC
1386
1387 4.エCとウ@
1388
1389 5.オDとカB
1390
1391
1392
1393 【出題趣旨】
1394 事例を素材にして誘導尋問に関する刑事訴訟規則についての基礎的知識を問う問題である。
1395
1396
1397
1398 〔第12問〕
1399
1400 甲ないし丙は,
1401 伝聞証拠の意義について会話している。
1402
1403 (A),
1404 (E),
1405 (G),
1406
1407
1408 (I)及び(K)に入る語句として正しいものは,
1409 後記1から5までのうちどれか。
1410
1411 (A)か
1412 ら(K)には,
1413 同じ語句は入らないものとする(解答欄は,
1414 [24] )。
1415
1416
1417
1418
1419
1420 (A)においては,
1421 (B)がある事実を(C)し,
1422 (D)し,
1423 (E)するという過程
1424 を経て(F)を行うため,
1425 その各段階に誤りが入るおそれがあります。
1426
1427 その危険性をチ
1428 ェックするために(G)が重要となります。
1429
1430 ところが,
1431 (H)においては,
1432 (I)に対
1433 する(G)が行えないために,
1434 その証拠能力が原則として否定されています。
1435
1436 今日は,
1437
1438 「Xが『俺はVは嫌いだ。
1439
1440 』と言っていた。
1441
1442 」とのWの証言から,
1443 XがVを嫌悪してい
1444 たことを証明しようとする場合のW証言の証拠能力を考えてみましょう。
1445
1446
1447
1448
1449
1450 そのように,
1451 心の状態を述べる(F)であっても,
1452 (E)過程における誤りの危険性
1453 が残る以上,
1454 (H)に当たるのでないでしょうか。
1455
1456
1457
1458
1459
1460 しかし,
1461 そのような(F)の場合,
1462 (C)・(D)の過程がないのだから,
1463 (H)に
1464 当たると解すべき必然性はないのではないでしょうか。
1465
1466 例えば,
1467 「Xが『私は宇宙人で
1468 ある。
1469
1470 』と言っていた。
1471
1472 」とのZの証言からXの精神の異常を証明しようとする場合の
1473 ように,
1474 証言を発言内容とかかわりのない事実を推認する状況証拠として用いる場合に
1475 も(E)の正確性・真摯性は問題となりますが,
1476 そのような場合については乙さんも,
1477
1478 証言の(J)の一つとして(K)であると解しているのではないですか。
1479
1480
1481
1482
1483
1484 確かに,
1485 Xが「私は宇宙人である」という発言をしたとの証言からXの精神の異常を
1486 推論することには疑問を感じません。
1487
1488 しかし,
1489 それと「俺はVは嫌いだ。
1490
1491 」という発言
1492 をしたとの証言からXがVを嫌悪していたことを推論する場合は異なるのではないでし
1493 ょうか。
1494
1495 後者の場合には,
1496 真にXがVを嫌悪していたかどうかを判断するためには,
1497
1498
1499 11
1500
1501 悪するに至る事情,
1502 すなわちそれまでのXとVとの関係をも調べざるを得ず,
1503 そのため
1504 には,
1505 (I)であるXに対する(G)が最も適切かつ有効なのではないでしょうか。
1506
1507
1508
1509
1510 証拠関係上,
1511 X発言の真し性に疑問が残る場合には,
1512 乙さんの言うようにXを証人と
1513 して尋問すべきでしょう。
1514
1515 しかし,
1516 Wに対する尋問によりXがそのような発言をした状
1517 況が解明され,
1518 X発言の真し性に疑問がない場合についてまで,
1519 必ずXの(G)が必要
1520 とすることは,
1521 訴訟運営を硬直化させ適当ではないのではないでしょうか。
1522
1523
1524
1525 1.Aに「伝聞証拠」
1526
1527 2.Eに「証言」
1528
1529 3.Gに「主尋問」
1530
1531 5.Kに「非伝聞」
1532
1533 【正解】
1534
1535
1536
1537 【出題趣旨】
1538
1539 伝聞法則の意義についての理解を問う問題である。
1540
1541
1542
1543 12
1544
1545 4.Iに「供述者」
1546
1547 [論文式試験問題]
1548 〔第1問〕
1549
1550 以下の事例について,
1551 甲男,
1552 乙女及び丙男の刑事責任を論ぜよ(ただし,
1553 特別法違
1554
1555 反を除く。
1556
1557 )。
1558
1559
1560
1561 【事例】
1562
1563
1564 甲男は,
1565 平成12年2月,
1566 I県内に本店を置き自動車部品等の販売等を営むA部品株
1567 式会社(以下,
1568 「A社」という。
1569
1570 )の設立と同時にA社の経理担当の取締役となり,
1571
1572 成16年9月に本件各犯行が発覚してA社を懲戒解雇されるまでその職にあった。
1573
1574 甲男
1575 は,
1576 A社取締役として経理部の担当する会計,
1577 経理関係の事務全般を掌理する地位にあ
1578 り,
1579 A社の資金計画の策定,
1580 銀行との交渉,
1581 契約,
1582 支払の決裁とそれに伴う小切手の振
1583 出し,
1584 会社の預貯金等会社財産の管理の業務に従事していた。
1585
1586
1587 乙女は,
1588 平成15年4月,
1589 A社に新入社員として採用され,
1590 その後,
1591 本件が発覚して
1592 同社を依願退社するまでの間,
1593 同社経理部係員として,
1594 上司である甲男の具体的指示に
1595 従って小切手の作成等の業務に従事していた。
1596
1597
1598 平成16年3月,
1599 A社の創業当時の代表取締役社長が死亡し,
1600 その後は,
1601 A社の親会
1602 社の取締役BがA社の代表取締役社長を兼務するようになったが,
1603 Bは1か月のうち数
1604 日しかA社に出勤せず,
1605 甲男は,
1606 事実上社長代行としてA社の業務全般を統括するよう
1607 になった。
1608
1609
1610 そして,
1611 平成16年4月3日にBが代表取締役社長に就任して以降,
1612 A社では,
1613 Bが
1614 不在のときには,
1615 甲男が事実上の社長代行として支払に関する業務について決裁し,
1616
1617 の際,
1618 「社長代理」と刻した印を決裁文書に押捺することをBが認めていた。
1619
1620 また,
1621
1622 社の約束手形及び小切手の振出しは,
1623 いずれもA社代表取締役B名義で行うところ,
1624
1625 束手形については,
1626 Bが自ら振出手続を行い,
1627 必要な会社実印(印鑑登録をしている代
1628 表取締役印)はBが保管していたが,
1629 小切手については,
1630 振 出 し に 必 要 な 銀 行 届 出 印
1631 (同社の当座預金口座はI県内のX銀行Y支店に開設されていた。
1632
1633 ),
1634 会社ゴム印及び
1635 小切手帳等は甲男が保管し,
1636 甲男の判断によって振り出すことが認められていた上,
1637
1638 社の業務運営に必要な限り,
1639 小切手振出しの使途・金額に制限はなく,
1640 甲男の裁量に委
1641 ねられており,
1642 Bに対しては,
1643 毎月末に小切手振出し状況の事後報告を行うにすぎなか
1644 った。
1645
1646
1647 甲男は,
1648 上記銀行届出印等を経理部内の金庫に保管していたが,
1649 同金庫の鍵は,
1650 自分
1651 のほかに乙女にも保管させており,
1652 小切手振出しの際は,
1653 乙女に額面金額等に関する具
1654 体的な指示を行い,
1655 同女に小切手を作成させていた。
1656
1657
1658
1659
1660
1661 甲男は,
1662 かねてから行きつけの高級クラブのホステスC子と懇ろとなり,
1663 遊興費とし
1664 て多額の資金を必要としていたが,
1665 取締役の収入だけでは賄いきれない状況だった。
1666
1667
1668 そうしたところ,
1669 甲男は,
1670 C子に高級腕時計をプレゼントするため,
1671 平成16年6月
1672 29日,
1673 Bが出張中で不在であることを奇貨とし,
1674 乙女に対し,
1675 取引先への代金支払の
1676 ためである旨の嘘を言って額面50万円の小切手を作成するように指示したところ,
1677
1678 女は,
1679 以前から甲男が自己の個人的用途に費消するために小切手の振出しを行っていた
1680
1681 13
1682
1683 ことを知っていたが,
1684 甲男に密かな恋心を抱いていたことから,
1685 同人を手助けしてやろ
1686 うと決意し,
1687 何も気付かぬ振りをして同人の指示どおりA社代表取締役B名義の額面5
1688 0万円の小切手1通を作成して甲男に手渡した。
1689
1690 甲男は,
1691 乙女から小切手を受け取ると,
1692
1693 同日,
1694 I県所在の時計宝石商丙商会に1人で出向き,
1695 C子へのプレゼントにするために
1696 高級腕時計1個を購入し,
1697 同店の経営者である丙男に対し,
1698 その代金の支払に充てるた
1699 め,
1700 勝手に振り出した上記小切手1通を交付した。
1701
1702
1703 丙男は,
1704 その小切手を持参してX銀行Y支店に出向き,
1705 これを支払呈示して所要の手
1706 続をとらせた上,
1707 同年7月1日,
1708 同支店のA社名義の当座預金口座から,
1709 I県所在のZ
1710 銀行本店にある丙商会代表丙男名義の当座預金口座に50万円を入金させた。
1711
1712
1713
1714
1715 さらに,
1716 甲男は,
1717 同年7月14日,
1718 指輪をC子にプレゼントしようと考え,
1719 Bが不在
1720 であることを奇貨とし,
1721 乙女に対し,
1722 取引先への代金支払のためである旨の嘘を言って
1723 額面80万円の小切手を作成するように指示したところ,
1724 乙女は,
1725 これまでと同様に,
1726
1727 甲男が個人的用途に費消する意図であることを知ったが,
1728 何も気付かぬ振りをして同人
1729 の指示どおりA社代表取締役B作成名義の額面80万円の小切手1通を作成して甲男に
1730 手渡した。
1731
1732
1733 ところが,
1734 乙女は,
1735 同日の終業後,
1736 たまたま丙商会に寄ったところ,
1737 丙男から,
1738 「6
1739 月下旬ころ,
1740 甲男が女性物の高級腕時計を購入して小切手で代金決済を行った」旨を教
1741 えてもらったことから,
1742 乙女は,
1743 甲男が別の女性にプレゼントをするために腕時計を買
1744 ったものと思い,
1745 嫉妬の余り,
1746 丙男に対し,
1747 甲男が勝手にA社代表取締役B名義の小切
1748 手を振り出して使っていることを話した。
1749
1750
1751 甲男は,
1752 乙女が丙男に上記打ち明け話をした事実を知らないまま,
1753 翌7月15日,
1754
1755 商会に出向き,
1756 指輪1個を購入して,
1757 その代金の支払に充てるため,
1758 丙男に対し,
1759 上記
1760 小切手1通を交付した。
1761
1762 丙男は,
1763 前日の乙女の話から,
1764 その小切手は甲男が勝手に振り
1765 出したものであることが分かったが,
1766 甲男が高額の買物をしてくれる上客であったこと,
1767
1768 小切手自体は適式に振り出されて決済可能なものであったことなどから,
1769 何も気付かぬ
1770 振りをして甲男に指輪を交付し,
1771 小切手を受け取った。
1772
1773 そして,
1774 その小切手を持参して
1775 X銀行Y支店に出向き,
1776 これを支払呈示して所要の手続をとらせ,
1777 同年7月18日,
1778
1779 社名義の上記当座預金口座から丙男名義の上記当座預金口座に80万円を入金させた。
1780
1781
1782
1783
1784
1785 その後,
1786 甲男は,
1787 同年7月24日,
1788 乙女から,
1789 勝手に小切手を振り出して個人的用途
1790 に費消していた事実を突き付けられ,
1791 「100万円を支払わなければBや警察に話す」
1792 と言われたことから,
1793 乙女の要求に従うことにし,
1794 同月25日,
1795 Bが不在だった折,
1796
1797 女に指示して勝手にA社代表取締役B名義の額面100万円の小切手1通を作成させた
1798 上,
1799 これを持参してX銀行Y支店に1人で出向き,
1800 その小切手を支払呈示してA社名義
1801 の上記当座預金口座から現金100万円の換金を受け,
1802 同日,
1803 100万円全額を乙女に
1804 交付した。
1805
1806
1807
1808 【出題趣旨】
1809 第1問は,
1810 関係者が多数関与する長文の具体的事例を素材とし,
1811 一連の事実経過の中から
1812 重要な事実を選別することを前提とし,
1813 小切手振出権限の有無,
1814 預金の占有の成否等の基本
1815 的な論点に関する理解を問うとともに,
1816 主犯について自己使用目的に係る小切手振出行為の
1817
1818 14
1819
1820 業務上横領罪あるいは背任罪の成否,
1821 関係者について業務上横領罪等の共犯若しくは盗品等
1822 関与罪及び恐喝罪の成否等を検討させることにより,
1823 事例解析能力,
1824 論理的思考力及び法解
1825 釈・適用能力等を試すこととする。
1826
1827
1828
1829 15
1830
1831 〔第2問〕
1832
1833 以下の事例について,
1834 下記の各設問について論ぜよ。
1835
1836
1837
1838 【事例】
1839
1840
1841 平成15年6月1日午後9時15分ころ,
1842 警察官Xは,
1843 V宅で事件発生との110番
1844 通報を受けて臨場した。
1845
1846 被害者Vから聴取したところ,
1847 Vは,
1848 「本日午後9時ころ,
1849
1850 宅して玄関の鍵を開けようとした際,
1851 居間の窓から男が外に飛び出してきたので,
1852 泥棒
1853 だと思い前に立ちはだかると,
1854 いきなり右手で左顔面を殴られた。
1855
1856 犯人が路上に逃げた
1857 ので,
1858 追い掛けて捕まえようとしてもみ合いになり,
1859 犯人の髪の毛をつかんだが振りほ
1860 どかれた。
1861
1862 更に捕まえようとしたが,
1863 犯人がドライバー様の物を取り出し右手で振り回
1864 したり顔面に向けて突き出してきたため,
1865 ひるんだところ,
1866 犯人は逃げていった。
1867
1868 凶器
1869 を持っていたので,
1870 これ以上追い掛けるのは危険だと思い,
1871 追 い 掛 け る の は あ き ら め
1872 た。
1873
1874 」「暗かったので,
1875 犯人の顔や服装はよくは分からない。
1876
1877 」「家に入って確認する
1878 と,
1879 室内が荒らされており,
1880 V名義のクレジットカード1枚が盗まれていた。
1881
1882 」と供述
1883 した。
1884
1885
1886 警察官Xが,
1887 Vの立会いで実況見分を実施したところ,
1888 玄関ドアの錠がドライバー様
1889 の物でこじ開けられていることが判明するとともに,
1890 Vが犯人ともみ合った地点の路上
1891 に毛髪を,
1892 さらに,
1893 同所から約10メートル離れた路上にマイナスドライバーを発見し
1894 たので,
1895 これらを領置した。
1896
1897 そして,
1898 Vが,
1899 犯人が居間の窓から出てきた状況や殴打し
1900 た状況及びドライバー様の物を振り回すなどした状況等を再現しながら供述したので,
1901
1902 警察官Xは,
1903 実況見分調書に,
1904 各位置関係の指示説明とともに,
1905 Vが「泥棒だと思い前
1906 に立ちはだかると,
1907 いきなり右手で左顔面を殴られた。
1908
1909 犯人が路上に逃げたので,
1910 追い
1911 掛けて捕まえようとしてもみ合いになり,
1912 犯人の髪の毛をつかんだが振りほどかれた。
1913
1914
1915 更に捕まえようとしたところ,
1916 犯人はドライバー様の物を取り出し右手で振り回したり
1917 顔面に向けて突き出してきた。
1918
1919 」と述べたと記載した。
1920
1921
1922
1923
1924
1925 同月2日午前10時ころ,
1926 Iデパートから,
1927 「盗難届の出ているV名義のクレジット
1928 カードを使用して50万円の腕時計を購入しようとした男がいる。
1929
1930 」との通報を受け,
1931
1932 同日午前10時15分ころ,
1933 警察官Xは,
1934 Iデパート1階腕時計売場に赴いた。
1935
1936 Iデパ
1937 ートの店員は,
1938 「この男がV名義のクレジットカードを使って腕時計を購入しようとし
1939 た。
1940
1941 」と甲を指しながら申し立てた。
1942
1943 すると,
1944 甲がいきなり逃げようとしたので,
1945 警察
1946 官Xは,
1947 甲を追い掛け,
1948 Iデパート前路上で甲を押さえ付け,
1949 同日午前10時20分こ
1950 ろ,
1951 「不正に入手したV名義のクレジットカードを使用し,
1952 Vになりすまして,
1953 腕時計
1954 1個を詐取しようとした。
1955
1956 」との詐欺未遂の事実で甲を緊急逮捕し,
1957 V名義のクレジッ
1958 トカードはIデパートの店員から任意提出を受けた。
1959
1960
1961 同日午前10時35分ころ,
1962 警察官Xは,
1963 逮捕した甲を車で連行して警察署に到着し,
1964
1965 甲に対し,
1966 手に持っているリュックサックを提出するように申し向けたが,
1967 甲がこれを
1968 拒否したため,
1969 甲からリュックサックを取り上げ,
1970 中を見たところ,
1971 V方前路上で発見
1972 されたマイナスドライバーと同じメーカーのプラスドライバーと軍手が入っていた。
1973
1974
1975 察官Xは,
1976 甲がV方での事後強盗の犯人であるとの疑いを強め,
1977 V宅前路上で領置した
1978 毛髪と甲の毛髪の異同を鑑定しようと考え,
1979 甲に対し,
1980 毛髪を提出するよう申し向けた
1981 が,
1982 甲がこれを拒否したことから,
1983 甲の頭を手で軽く押さえながら,
1984 甲の毛髪を引き抜
1985
1986 16
1987
1988 いた。
1989
1990
1991 警察官Xは,
1992 部下の警察官Yに指示して,
1993 甲から取り上げたリュックサックに在中し
1994 たプラスドライバー及び軍手の押収手続とともに,
1995 甲から引き抜いた毛髪の押収手続及
1996 びV方前路上で領置した毛髪との異同の鑑定嘱託の手続をさせた。
1997
1998 その1週間後,
1999 V宅
2000 前路上で領置した毛髪と甲から押収した毛髪が同一人物のものであると推定されるとの
2001 鑑定結果が出た。
2002
2003 また,
2004 V方前路上で発見されたマイナスドライバーと甲が所持してい
2005 たプラスドライバーは,
2006 セットで販売されていることが判明した。
2007
2008
2009 警察官Xが,
2010 V名義のクレジットカードの入手状況について甲を取り調べたところ,
2011
2012 甲は,
2013 「6月1日午後10時ころ,
2014 10万円を貸していた知り合いの男と出会い,
2015 『金
2016 を返してほしい。
2017
2018 』というと,
2019 その男は,
2020 クレジットカードを渡してきて,
2021 『盗んだク
2022 レジットカードだけど,
2023 これで勘弁してくれ。
2024
2025 』と言ってきたので,
2026 受け取った。
2027
2028 盗ん
2029 できたものであると言っていたので使おうかどうか迷ったが,
2030 知人のAから借りた金の
2031 返済を迫られていたので,
2032 高い物を買って質屋に入れて金に換えようと思い,
2033 6月2日,
2034
2035 クレジットカードを使って腕時計を買おうとした。
2036
2037 」「クレジットカードをくれた男の
2038 名前は,
2039 言いたくない。
2040
2041 」と供述したため,
2042 警察官Xは,
2043 「クレジットカードは,
2044 6月
2045 1日にV方に侵入して盗んだものではないか。
2046
2047 」と追及したが,
2048 甲は頑強にこれを否定
2049 した。
2050
2051 同月12日,
2052 甲は,
2053 「甲がVであり,
2054 同人名義のクレジットカードの正当な使用
2055 権限があり,
2056 クレジットカードシステム所定の方法により代金の支払を受けられる旨誤
2057 信させて,
2058 腕時計1個を詐取しようとした。
2059
2060 」という詐欺未遂罪で起訴された。
2061
2062
2063
2064
2065 同日,
2066 甲は,
2067 V方での事後強盗の事実で逮捕された。
2068
2069 甲は,
2070 逮捕後の取調べにおいて,
2071
2072 事後強盗の犯人であることについて否認した上,
2073 「V名義のクレジットカードは,
2074 顔見
2075 知りの男からもらったものである。
2076
2077 」「顔見知りの男の名前は言いたくないが,
2078 その男
2079 から,
2080 クレジットカードは民家に盗みに入り盗んだと聞いた。
2081
2082 」「自分は日雇の工員を
2083 しており,
2084 その仕事で使うため,
2085 日ごろから,
2086 リュックサックにプラスドライバーと軍
2087 手を入れて持っていた。
2088
2089 」「V方前の路上に自分の髪の毛が落ちていることについて,
2090
2091 全く心当たりはない。
2092
2093 」と弁解した。
2094
2095 警察官Xが,
2096 甲と交遊関係のあったAから事情を
2097 聴取したところ,
2098 Aは,
2099 「1年くらい前,
2100 すぐに返すという約束で甲に30万円貸した
2101 が,
2102 甲に『金がない。
2103
2104 』と言われて,
2105 ずるずると返してもらっていなかった。
2106
2107 6月1日
2108 午後11時ころに甲と出会ったとき,
2109 甲に『金を返してくれ。
2110
2111 』と言うと,
2112 甲は,
2113 『明
2114 日になれば,
2115 金を返せそうだ。
2116
2117 』と言ってきた。
2118
2119 これまで引き延ばされていたため,
2120
2121 用できなかったことから,
2122 『どうやって金を作るんだ。
2123
2124 』と問い詰めると,
2125 甲は黙って
2126 いた。
2127
2128 また返済を引き延ばされるかもしれないと思ったが,
2129 『とにかく,
2130 明日,
2131 返して
2132 くれ。
2133
2134 』と言って,
2135 甲と別れた。
2136
2137 」と供述したので,
2138 警察官Xは,
2139 これを供述調書に録
2140 取した。
2141
2142
2143 V方における事後強盗事件の担当検察官Pが,
2144 Vから事情を聴取したところ,
2145 Vは,
2146
2147 前記のとおり,
2148 「6月1日午後9時ころ,
2149 帰宅して玄関の鍵を開けようとした際,
2150 居間
2151 の窓から男が外に飛び出してきたので,
2152 泥棒だと思い前に立ちはだかると,
2153 いきなり右
2154 手で左顔面を殴られた。
2155
2156 犯人が路上に逃げたので,
2157 追い掛けて捕まえようとしてもみ合
2158 いになり,
2159 犯人の髪の毛をつかんだが振りほどかれた。
2160
2161 更に捕まえようとしたが,
2162 犯人
2163 がドライバー様の物を取り出し右手で振り回したり顔面に向けて突き出してきたため,
2164
2165
2166 17
2167
2168 ひるんだところ,
2169 犯人は逃げていった。
2170
2171 凶器を持っていたので,
2172 これ以上追い掛けるの
2173 は危険だと思い,
2174 追い掛けるのはあきらめた。
2175
2176 家に入って確認すると,
2177 室内が荒らされ
2178 ており,
2179 V名義のクレジットカード1枚が盗まれていた。
2180
2181 」と供述したので,
2182 検察官P
2183 は,
2184 これを供述調書に録取した。
2185
2186
2187 同年7月2日,
2188 甲は,
2189 「V方において,
2190 V名義のクレジットカードを窃取し,
2191 逃走し
2192 ようとした際,
2193 逮捕を免れるため,
2194 Vの顔面を殴打し,
2195 更にドライバー様の物を顔面に
2196 向けて突き出すなどの暴行を加えた。
2197
2198 」という事後強盗罪で起訴されたが,
2199 その後の公
2200 判においても,
2201 捜査段階と同じ弁解をした。
2202
2203
2204
2205
2206 同年10月1日に行われた公判において,
2207 Vは,
2208 顔面を殴打された状況やドライバー
2209 様の物を突き出された状況について「犯人ともみ合い,
2210 殴打されたり,
2211 何かとがった物
2212 を突き出されたことは覚えているが,
2213 時間がたったので,
2214 いつ,
2215 どのように殴られたか,
2216
2217 何をどのように突き出されたか,
2218 今では思い出せない。
2219
2220 」「警察官や検察官の事情聴取
2221 を受けたときは,
2222 記憶しているままを話し,
2223 供述調書を読み聞かされ,
2224 話したとおりに
2225 記載されていたので,
2226 署名・押印した。
2227
2228 」と証言した。
2229
2230
2231 同年10月22日に行われた公判において,
2232 Aは,
2233 「1年くらい前,
2234 すぐに返すとい
2235 う約束で甲に30万円貸したが,
2236 甲に『金がない。
2237
2238 』と言われて,
2239 ずるずると返しても
2240 らっていなかった。
2241
2242 6月1日午後11時ころに甲と会ったとき,
2243 甲に『金 を 返 し て く
2244 れ。
2245
2246 』と言うと,
2247 甲は,
2248 『明日になれば,
2249 金を返せそうだ。
2250
2251 』と言ってきた。
2252
2253 これまで
2254 引き延ばされていたため,
2255 信用できなかったことから,
2256 『どうやって金を作るんだ。
2257
2258
2259 と問い詰めると,
2260 甲が『クレジットカードが手に入った。
2261
2262 』と言ったので,
2263 『盗んだの
2264 か。
2265
2266 』と聞くと,
2267 甲は『知り合いから,
2268 借金のカタにもらった。
2269
2270 』と言っていた。
2271
2272 それ
2273 なら金を返してもらえるかもしれないと思い,
2274 『とにかく,
2275 明日,
2276 返してくれ。
2277
2278 』と言
2279 って,
2280 甲と別れた。
2281
2282 」と証言した。
2283
2284
2285 その後,
2286 論告弁論を経て結審したが,
2287 裁判所は,
2288 証拠調べを尽くしたものの,
2289 「甲が
2290 事後強盗の犯人であるか,
2291 V名義のクレジットカードを盗品と知りながら譲り受けたか
2292 のいずれかであることは確かであるが,
2293 いずれであるか確信がない。
2294
2295 」という心証に至
2296 った。
2297
2298
2299
2300 〔設
2301
2302 問〕
2303
2304
2305 本件における犯罪事実(詐欺未遂罪,
2306 事後強盗罪)に関する証拠のうち,
2307 証拠能力が問
2308 題となり得るものを挙げて論じなさい。
2309
2310
2311
2312
2313
2314 裁判所は,
2315 被告人に対し,
2316 有罪判決を言い渡すことができるかについて論じなさい(な
2317 お,
2318 訴因変更の問題については論じる必要がない。
2319
2320 )。
2321
2322
2323
2324 【出題趣旨】
2325 第2問は,
2326 長文の具体的な事例を素材とし,
2327 一連の捜査,
2328 公判の経過を踏まえて,
2329 捜査,
2330
2331 公判手続における問題点(証拠の採取過程の違法性,
2332 書証等の証拠能力)を抽出・分析する
2333 能力,
2334 論理的思考力,
2335 法解釈・適用能力等を試すこととする。
2336
2337
2338
2339 18
2340
2341