1 短答式試験問題集[刑事系科目]
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3 1
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:3)
7 判例の立場に従って次の【事例】の甲の罪責について検討した場合,後記1から5までの各記述
8 のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[bP])
9 【事
10
11 例】
12 甲は,女子中学生を自動車に乗車させるなどしてホテルの一室に連行し,睡眠薬を服用させて
13
14 熟睡させた上,同女にわいせつな行為をすることを企て,自動車を運転中に見かけた女子中学生
15 乙(14歳)に対し声を掛け,
16 「君のお母さんが交通事故に遭って病院に運ばれた。私は病院から
17 頼まれて君を迎えに来た。お母さんのいる病院まで連れて行ってあげるから車に乗って。」と虚偽
18 の事実を述べた。甲の言葉を信じた乙が甲運転車両の後部座席に乗車すると,甲は,同車を運転
19 して同所から約10キロメートルの地点にあるホテルAに向かった。甲は,同車を走行中,信号
20 待ちをしている間にあらかじめ用意しておいた缶飲料を開け,密かに睡眠薬を混入させた上,
21 「飲
22 むと落ち着くよ。」と述べて乙に手渡した。乙は,甲から手渡された睡眠薬入りの缶飲料を飲むと
23 間もなく眠り込んだ。
24 甲は,乙を自動車に乗車させてから約30分後にホテルAに到着すると,眠り込んだままの同
25 女を抱きかかえて同ホテルの一室に連れ込み,ベッドに横たえた上で部屋の出入口ドアを施錠し
26 たところ,同女が目を覚ました。乙は,母親が入院している病院ではなくホテルの一室に自分が
27 連れ込まれていることに気付き,室外に逃げ出すため出入口ドアに近づこうとした。甲は,わい
28 せつな行為を乙が熟睡している間にすることで犯行の発覚を免れようと計画していたことから,
29 同女が目を覚ました以上わいせつな行為は断念せざるを得ないが,捕まらずに逃げるために,当
30 分の間同女を室内にとどめて人と接触させないようにしなければならないと考えた。そこで,甲
31 は,出入口ドアの前に立ちふさがり,乙が出入口ドアに近づくのを妨げるとともに,同女に対し
32 「部屋の中で大人しくしていろ。外には見張りがいるので逃げようとしても無駄だ。勝手に部屋
33 から出ようとしたら痛い目に遭わせてやる。」と述べて同女を脅した上で,同女を残して1人で部
34 屋を出て,そのまま自動車を運転してホテルAから立ち去った。
35 乙は,甲に脅されたため,勝手に室外に出ると暴力を振るわれるのではないかと恐れて室内に
36 とどまっていたが,目を覚ましてから約1時間後に意を決して出入口ドアを開けたところ見張り
37 などいないことに気付き,室外に出て同ホテルのフロントに助けを求めた。
38 1. 未成年者誘拐罪(刑法第224条),わいせつ目的誘拐罪(刑法第225条),監禁罪(刑法
39 第220条)及び脅迫罪(刑法第222条第1項)が成立する。
40 2. わいせつ目的誘拐罪,監禁罪及び準強制わいせつ未遂罪(刑法第179条,第178条第1
41 項)が成立する。
42 3. 未成年者誘拐罪,監禁罪及び準強制わいせつ未遂罪が成立する。
43 4. わいせつ目的誘拐罪,脅迫罪及び準強制わいせつ未遂罪が成立する。
44 5. 未成年者誘拐罪及び監禁罪が成立する。
45 〔第2問〕(配点:3)
46 次の【事例】について,甲及び丙の行為がいずれも傷害罪の構成要件に該当するとした上で,後
47 記の【見解】TないしWを採って検討した場合,後記1から5までの各記述のうち,正しいものは
48 どれか。(解答欄は,[bQ])
49 【事
50
51 例】
52 甲は,自分に向けてけん銃を構えた乙から,
53 「そこで腕を縛られて座っている丙の右腕をバット
54
55 で殴って骨折させろ。そうでないとお前を射殺する。」と告げられたので,やむを得ず乙の指示に
56 従って丙の右腕を目掛けてバットを振り下ろしたところ,丙は,殴打されるのを避けるためにや
57
58 2
59
60 むを得ず,バットを持った甲の右腕を蹴り上げた。甲は,丙に蹴られたため右腕を骨折し,丙は,
61 甲が振り下ろしたバットが軽く接触したにとどまったため,右腕に軽い打撲傷を負ったものの,
62 骨折は免れた。
63 【見
64
65 解】
66
67 T. 刑法第37条第1項は,違法性阻却事由を定めたものである。ただし,形式的に同条同項の
68 要件を充たす場合でも,犯罪者に利用されるなど,行為者が不法を行う側に立っているような
69 ときは,同条同項の適用は認められない。
70 U. 刑法第37条第1項は,違法性阻却事由を定めたものである。犯罪者に利用されるなど,行
71 為者が不法を行う側に立っていたとしても,同条同項の要件を充たす場合には,同条同項の適
72 用は認められる。
73 V. 刑法第37条第1項は,原則として違法性阻却事由を定めたものであるが,被侵害法益と保
74 全法益とが同価値である場合は責任阻却事由を定めたものである。ただし,形式的に同条同項
75 の要件を充たす場合でも,犯罪者に利用されるなど,行為者が不法を行う側に立っているよう
76 なときは,同条同項の適用を認めるべきではない。
77 W. 刑法第37条第1項は,原則として違法性阻却事由を定めたものであるが,被侵害法益と保
78 全法益とが同価値である場合は責任阻却事由を定めたものである。犯罪者に利用されるなど,
79 行為者が不法を行う側に立っていたとしても,同条同項の要件を充たす場合には,同条同項の
80 適用を認めてよい。
81 1. Tの立場によれば,甲の行為も丙の行為も違法性が阻却される。
82 2. Uの立場によれば,甲の行為も丙の行為も違法性が阻却される。
83 3. Vの立場によれば,甲の行為も丙の行為も責任が阻却され得るにとどまる。
84 4. Wの立場によれば,甲の行為も丙の行為も違法性が阻却される。
85 5. Wの立場によれば,甲の行為も丙の行為も責任が阻却され得るにとどまる。
86
87 3
88
89 〔第3問〕(配点:2)
90 教授と学生A及びBが,刑法第110条の建造物等以外放火罪の成立要件である「公共の危険」
91 に関する議論をしている。次の【発言】中の@からDまでの(
92
93 )内から適切な語句を選んだ場合,
94
95 その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[bR])
96 【発
97
98 言】
99
100
101
102 授. 刑法第110条第1項に規定される建造物等以外放火罪は,条文上「公共の危険」の発
103 生を要求していますが,Aさんは,この「公共の危険」の内容について,どのように考え
104 ますか。
105
106 学生A. 私は,
107 「公共の危険」とは,@(a. 現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等に対す
108 る延焼の危険・b. 現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等に限定せず,不特定又は
109 多数の人の生命,身体又は財産に対する危険)をいうと理解しています。
110
111
112 授. Aさんの考え方は,判例の立場と同じですね。
113
114 学生A. はい,そうです。
115 学生B. 私は,判例の立場には反対しています。Aさんの考え方だと,例えば,犯人が小さなゴ
116 ミ箱1個に放火した際,たまたまその横に置き忘れられていた不特定人の小さな物品1個
117 に延焼の危険が発生しても,
118 「公共の危険」が発生したとされかねず,不当な結果にならな
119 いでしょうか。
120 学生A. 私の立場に立っても,各事案ごとの具体的状況の中で火災に基づく危険の拡大作用が認
121 められるかどうかを判断することになると思います。
122
123
124 授. 次に,建造物等以外放火罪が成立するためには,
125 「公共の危険」の認識が必要かどうかに
126 ついて議論しましょう。
127
128 学生B. 私は,「公共の危険」の認識は,A(c. 必要・d. 不要)と考えます。なぜなら,
129 B(e. 刑法第110条の条文の文言が「よって公共の危険を生じさせた」となっている
130 ・f. 責任主義の原則から考えて結果的責任は否定されるべきである)からです。
131 学生A. しかし,あなたの考えでは,C(g. 実際上,現住建造物等放火罪又は他人の所有の非
132 現住建造物等放火罪の未必の故意が認められてしまう・h. 基本犯が不可罰である行為の
133 結果的加重犯を認めることになる)という問題が生じませんか。
134 学生B. 私の立場でも,刑法第110条における「公共の危険」の認識内容について,延焼の危
135 険の認識と区別することは可能だと考えます。
136
137
138 授. この点に関するあなたの考え方は,判例と同じですか。
139
140 学生B. 私は,判例にD(i. 賛成・j. 反対)する立場です。
141 1.
142
143 @aAdBfChDi
144
145 2.
146
147 @aAdBeCgDj
148
149 3.
150
151 @bAcBeChDj
152
153 4.
154
155 @bAdBeCgDi
156
157 5.
158
159 @bAcBfCgDj
160
161 〔第4問〕(配点:2)
162 刑法上の過失に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[
163 4])
164 1. 行為者が構成要件的結果発生の認容を欠く場合を認識のない過失といい,その認容がある場
165 合を認識のある過失という。
166 2. 業務上過失傷害罪について通常の過失傷害罪より重い法定刑が定められているのは,業務上
167 の過失が通常の過失より重大な結果を引き起こすことが多いためであるから,生じた結果が軽
168 微な場合は業務上過失傷害罪は成立せず,過失傷害罪が成立し得るにとどまる。
169
170 4
171
172 3. 重過失とは,注意義務違反の程度が著しい場合をいい,行為者としてわずかな注意を用いる
173 ことによって結果を予見でき,かつ,結果の発生を回避することができる場合の過失をいう。
174 4. 被害者が不適切な行動に出ないことを信頼するに足る事情があり,その被害者の不適切な行
175 動によって結果が発生した場合は,過失相殺が適用されるから,行為者の注意義務違反の程度
176 が著しい場合であっても重過失が認められることはない。
177 5. 構成要件的結果を惹起させた直接行為者について,これを監督すべき立場にある監督者の過
178 失を,監督過失という。監督過失を認めるには,直接行為者に構成要件的結果発生の予見可能
179 性があれば足り,監督者にはその予見可能性は必要とされていない。
180 〔第5問〕(配点:3)
181 盗品等に関する罪についての次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤
182 っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[bT])
183 ア. 甲は,乙がAを欺いて,乙の不動産に設定していたAの抵当権の設定登記を抹消させたこと
184 を知りながら,乙の不動産を譲り受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪が成立する。
185 イ. 甲は,購入した絵画について,購入後盗品であることを知ったが,そのまま自宅の応接間に
186 飾り続けた。この場合,甲には盗品等保管罪は成立しない。
187 ウ. 甲は,乙から,乙が盗んだ時計の処分に困り,盗んだ時計を誰かに無償で譲りたいとの相談
188 を受け,時計を欲しがっていたAを乙に紹介した。この場合,甲が乙からあっせん料をもらっ
189 たとしても,甲には盗品等有償処分あっせん罪は成立しない。
190 エ. 甲は,丙が窃取して乙に売却したつぼを,これが盗品であることを知りながら,乙から購入
191 した。この場合,丙の窃盗行為について公訴時効が成立していれば,甲には盗品等有償譲受け
192 罪は成立しない。
193 オ. 甲は,乙がAに賃貸していた車を,賃貸借契約期間中であるにもかかわらず,乙が合鍵で勝
194 手に引き上げてきてしまったものであることを知りながら,これを乙から借り受けて自己の車
195 庫に保管した。この場合,車の所有権が乙にあったとしても甲には盗品等保管罪が成立する。
196 1. ア
197
198
199
200 2. ア
201
202
203
204 3. イ
205
206
207
208 4. イ
209
210 5
211
212
213
214 5. ウ
215
216
217
218 〔第6問〕(配点:3)
219 次の【記述】の中の@からDまでの(
220
221 )内に,狭義の共犯(教唆犯及び幇助犯)が成立するた
222
223 めの要件に関する後記のAからDまでの各【見解】から適切なものを入れた場合,
224
225
226 )内に入るも
227
228 のの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。なお,一つの(
229
230 )内に二つ以
231
232 上の見解が入る場合もある。(解答欄は,[bU])
233 【記
234
235 述】
236 (@)とする見解によれば,12歳の乙が,甲に唆されたことにより,V方から現金を盗んだ
237
238 という事例では,甲に窃盗罪の教唆犯が成立する可能性があるが,
239 (A)とする見解によると,甲
240 に窃盗罪の教唆犯が成立する余地がないことになる。また,甲が,故意のない乙を唆して,ある
241 故意犯に当たる行為を実行させた場合,故意が構成要件の要素であるとすれば,
242 (B)とする見解
243 に立たない限り,甲には教唆犯は成立しないことになる。さらに,乙とVが殴り合っているのを
244 発見した甲が,かねてからVに対する反感を持っていたことから,乙をしてVに怪我を負わせる
245 意図で乙に木刀を渡したところ,乙がその木刀でVを殴って怪我を負わせたが,実は乙はVから
246 突然襲われてやむを得ず殴り合いになったもので,乙には正当防衛が成立するという事案の場合,
247 (C)とする見解に立てば,甲には傷害罪の幇助犯が成立する可能性があるが,
248 (D)とする見解
249 に立つと,甲には傷害罪の幇助犯は成立しないことになる。
250 【見
251
252 解】
253
254 A. 共犯者の固有の行為としての教唆・幇助行為があれば足り,被教唆者・被幇助者が犯罪を実
255 行したか否かは問わない。
256 B. 正犯が一定の行為を行ったことを要するが,その内容としては,正犯の行為が構成要件に該
257 当すれば足りる。
258 C. 正犯が一定の行為を行ったことを要するが,その内容としては,正犯の行為が構成要件に該
259 当し,かつ,違法であることを要する。
260 D. 正犯が一定の行為を行ったことを要するが,その内容としては,正犯の行為が構成要件,違
261 法性及び責任を備えていなければならない。
262 1. @A,B,C
263
264 AD
265
266 BA
267
268 CA,B
269
270 DC,D
271
272 2. @B,C,D
273
274 AA
275
276 BD
277
278 CB,C,D
279
280 DA
281
282 3. @A,B
283
284 AC,D
285
286 BA
287
288 CB,C,D
289
290 DA
291
292 4. @A,B,C
293
294 AD
295
296 BA
297
298 CC,D
299
300 DA,B
301
302 5. @A,B
303
304 AC,D
305
306 BD
307
308 CA,B
309
310 DC,D
311
312 〔第7問〕(配点:2)
313 次のアからオまでの各記述について,判例の立場に従って(
314
315 )内から適切な語句を選んだ場合,
316
317 その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[bV])
318 ア. 甲は,Aが被疑者として捜査の対象となっている殺人未遂事件に関し,Aの部下でAと被害
319 者との関係について知っているBがいずれは参考人として警察の取調べを受けることを予期し
320 つつ,Bを隠匿した。この場合,(a. 犯人隠避罪が成立する・b. 証拠隠滅罪が成立する)。
321 イ. 甲は,汚職の罪で逃走中の友人Cから頼まれて,Cに対し,Cの留守宅の様子や家族の安否
322 のほか,警察の捜査状況を教えた。この場合,
323 (c. 犯人隠避罪が成立する・d. 不可罰である)。
324 ウ. 暴力団幹部である甲は,自己の犯した業務上過失致死事件について,配下の組員Dに命じて,
325 Dを自己の身代わり犯人として警察に出頭させた。この場合,
326 (e. 不可罰である・f. 犯人隠
327 避教唆罪が成立する)。
328 エ. 甲は,自己が被告人となっている公職選挙法違反事件の証人となったEに対し宣誓の上で虚
329 偽の陳述をするように依頼し,依頼どおりに虚偽の陳述をさせた。この場合,
330 (g. 不可罰であ
331 る・h. 偽証教唆罪が成立する)。
332
333 6
334
335 オ. 甲は,自己が被告人となっている横領事件で有利な判決を得る目的から,事件と無関係のF
336 に対し,被害を弁償していないのに,弁償金を受領した旨の被害者名義の領収証を作るように
337 依頼し,これを作成させた。この場合,
338 (i. 証拠偽造教唆罪が成立する・j. 犯人隠避教唆罪
339 が成立する)。
340 1. アa
341
342 イc
343
344 ウf
345
346 エh
347
348 オi
349
350 2. アa
351
352 イd
353
354 ウf
355
356 エg
357
358 オi
359
360 3. アb
361
362 イc
363
364 ウe
365
366 エh
367
368 オj
369
370 4. アb
371
372 イc
373
374 ウf
375
376 エh
377
378 オi
379
380 5. アb
381
382 イd
383
384 ウe
385
386 エg
387
388 オj
389
390 〔第8問〕(配点:2)
391 刑罰に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。
392 (解答欄は,
393 [bW])
394 1. 殺人と傷害の併合罪を犯した者について,殺人につき有期懲役刑,傷害につき懲役刑をそれ
395 ぞれ選択した場合,処断刑は,5年以上30年以下の懲役となる。
396 2. 窃盗の正犯を幇助した者について,懲役刑を選択した場合,処断刑は,1月以上5年以下の
397 懲役となる。
398 3. 強盗致傷を犯した者について,有期懲役刑を選択して酌量減軽した場合,処断刑は,3年以
399 上10年以下の懲役となる。
400 4. 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が,1年以下の懲役
401 又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときは,その執行を猶予すること
402 ができる場合がある。
403 5. 刑の執行猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予
404 の言渡しがないときは,猶予の言渡しを取り消さなければならない。
405 〔第9問〕(配点:2)
406 [汚職の罪]に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤ってい
407 るものはどれか。(解答欄は,[bX])
408 1. 公務員が賄賂を受け取って,他の公務員の職務について働き掛けを行った場合,違法な行為
409 の働き掛けがあったときにのみあっせん収賄罪が成立し,他の公務員の裁量判断に不当な影響
410 を及ぼす程度では同罪は成立しない。
411 2. 収賄罪において賄賂と対価関係に立つ行為は,法令上公務員の一般的職務権限に属する行為
412 であれば足り,公務員が具体的事情の下においてその行為を適法に行うことができたかどうか
413 は,問うところではない。
414 3. 公務員が自己に代わって債務を弁済してもらったことが賄賂になる場合のように,賄賂とし
415 て収受した無形の利益についてはおよそ没収の対象とはならないが,金銭に換算可能であれば,
416 その価額は追徴しなければならない。
417 4. 公務員が賄賂として関係業者から借金をした場合,借金という形をとっても実は金銭の贈与
418 を受ける趣旨であれば,当該金銭は没収の対象となるが,本当に借金したにすぎない場合には,
419 刑法第197条の5の規定によっては,受領した金銭を没収することはできない。
420 5. 公務員が職務上知り得た秘密を漏らすことに関し,請託を受けて賄賂を収受したものの,実
421 際には秘密を漏らさなかった場合には,受託収賄罪が成立するが,秘密を漏らした場合には,
422 加重収賄罪が成立する。
423
424 7
425
426 〔第10問〕(配点:3)
427 次の【事例】における甲の自首の成否に関し,後記アからオまでの各記述を判例の立場に従って
428 検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
429 (解答欄は,アからオの順に[
430 10]から[14])
431 【事
432
433 例】
434 甲は,空腹を感じたが所持金がなかったことから,飲食店Aにおいて無銭飲食をした。そして,
435
436 同店店主乙から飲食代金の支払を請求されるや,乙に対し,「金はない。」と言いながら所携のナ
437 イフを乙に突き付けて脅迫し,乙がひるんだすきにその場から逃走した。
438 しかし,この先も生活費が手に入る見込みがなかった甲は,いっそのこと刑務所で服役して飢
439 えをしのごうと考え直し,付近の警察署に出頭するため,上記ナイフを手に持ったまま同署の前
440 まで歩いていった。捜査機関は,この時点でいまだ甲による上記無銭飲食の事実を認識していな
441 かったが,同署の警察官Xは,ナイフを手に持った甲の姿を見て不審者と認め,甲に対する職務
442 質問を開始した。甲は,その職務質問に対し,警察官Xに無銭飲食の事実を告げ,ナイフも提出
443 した。
444 ア. 自首が成立するためには,犯人が反省悔悟に出たものであることを要するから,甲のような
445 いわゆる刑務所志願を目的とする場合には,自首は成立しない。[10]
446 イ. 自首は自ら進んで自発的に行う必要があるから,甲のように警察官から職務質問を受け,そ
447 の質問に答えて犯罪事実を申告した場合には,およそ自首は成立しない。[11]
448 ウ. 仮に,乙の通報により捜査機関に犯罪事実が発覚し,犯人のおよその年齢・人相・服装・体
449 格が判明していた場合には,犯人が甲であることが発覚していなくても,自首は成立しない。
450
451 12]
452 エ. 仮に,捜査機関に犯罪事実及び甲が犯人であることが発覚しており,甲の所在だけが不明で
453 あった場合には,自首は成立しない。[13]
454 オ. 甲が,ナイフを突き付けたのは無銭飲食をした後逃走するためであり,そのような行為が強
455 盗という罪に当たるとは思わなかったと申告している場合には,自首は成立しない。[14]
456 〔第11問〕(配点:2)
457 [業務妨害罪]に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しい
458 ものはどれか。(解答欄は,[15])
459 1. 業務妨害罪における業務は,職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は
460 事業であり,経済的に収入を得る目的のものであることを要しないから,運転免許を取得した
461 者が娯楽のために行う自動車の運転も本罪の業務に含まれる。
462 2. 威力業務妨害罪が成立するには,現実に執行中の業務の執行を妨害した結果が発生したこと
463 を要し,被害者に業務を中止させあるいは不能にさせたことが必要である。
464 3. 弁当屋に電話をかけ,弁当を受け取る意思もなく,代金を支払う意思もないのに,偽名を名
465 のって弁当100個を注文し,これを架空の住所まで配達することを依頼して,同弁当屋の店
466 員に弁当100個を作らせ,配達に赴かせた場合,偽計業務妨害罪が成立する。
467 4. 県議会の審議中,傍聴席において,大声を上げながら椅子を叩くなどして審議を中断させた
468 場合,妨害の対象となったのは公務であるから,威力業務妨害罪ではなく公務執行妨害罪が成
469 立する。
470 5. 自己の勤務する会社の上司に恨みを持ち,同人の事務机の引き出し内に犬の死がいを入れて
471 おいて同人にこれを発見させ,畏怖させた行為は,これにより同人の当日の各種決裁事務等の
472 執行が不可能になったとしても,
473 「威力を用いた」とはいえないから,威力業務妨害罪には当た
474 らない。
475
476 8
477
478 〔第12問〕(配点:2)
479 因果関係に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは
480 どれか。(解答欄は,[16])
481 1. 不作為犯における不作為と結果との間に刑法上の因果関係を認めるためには,不作為の後に
482 結果の発生が認められることで足り,期待される作為をなしていたとすれば結果を避け得たこ
483 とが合理的な疑いを超える程度に確実であったことまでは必要とされない。
484 2. 甲がVを殴打したところ,Vには重篤な心臓疾患があったため,その疾患と相まってVが死
485 亡した場合,V自身が同疾患の存在を認識していない限り,甲の殴打とVの死亡の結果との間
486 に因果関係を肯定することはできない。
487 3. 甲がVの腹部をナイフで突き刺して内臓損傷の重傷を負わせたところ,Vは救急病院に搬送
488 されて緊急手術を受け,術後,いったん容体は安定した。ところが,意識を回復したVが,医
489 師の指示に従わずに暴れたため,治療の効果が失われ,上記内臓損傷により死亡した。この場
490 合,治療の効果が失われたのはVの落ち度によるのであるから,Vの内臓損傷がそれ自体死亡
491 の結果をもたらし得るものであっても,甲の刺突行為とVの死亡の結果との間の因果関係を肯
492 定することはできない。
493 4. 甲及び乙が木刀と野球のバットでVを執拗に殴打し,辛うじて逃走したVを更に殴打すべく
494 追跡したところ,Vは,追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ,更に約1メートル離れた隣のビ
495 ルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡した場合には,Vは自ら危険な行動を行って
496 いる以上,甲及び乙による殴打,追跡とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはで
497 きない。
498 5. 甲が自動車を運転中,自転車に乗ったVを跳ね飛ばして自動車の屋根に跳ね上げ意識を喪失
499 させたが,Vに気付かないまま自動車の運転を続けるうち,自動車の同乗者がVに気付き,走
500 行中の自動車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転倒させた。その結果,Vは頭部に傷害
501 を負って死亡したが,Vの死因である傷害が自動車との衝突の際に生じたものか,路上へ転落
502 した際に生じたものかは不明であった。この場合,同乗者の行為は経験上普通に予想できると
503 ころではないから,甲の行為とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。
504
505 9
506
507 〔第13問〕(配点:3)
508 学生AないしEは,次の【事例】における乙に対する横領罪の成否について,後記【発言】のと
509 おりの意見を述べた。乙に対する横領罪の成立を肯定する意見を述べた学生を選んだ場合,その組
510 合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[17])
511 【事
512
513 例】
514 乙は,甲から,公務員丙に対し甲所有の宝石を賄賂として贈ることを依頼されてその宝石の交
515
516 付を受けたが,その後,この宝石を売却してその代金を自己の用途に費消しようと考え,この宝
517 石を売却した。
518 【発
519
520 言】
521
522 学生A. 民法第708条にいう「給付」とは,終局的利益を与えるもの,すなわち所有権付与を
523 意味し,甲が贈賄の目的に基づいて乙に宝石を寄託することは不法原因給付には当たらな
524 い。
525 学生B. 民法と刑法とでは目的が異なる。この事例では,委託者甲の側に保護に値する利益があ
526 るかどうかという視点から考えるべきであり,窃盗犯人の占有する盗品の窃取を処罰すべ
527 きであることとの均衡も考慮すべきである。
528 学生C. 甲から乙への宝石の交付は民法第708条の不法原因給付に当たるから,不法原因給付
529 物である宝石の所有権は,甲が乙に対し宝石の返還を請求できないことの反射的効果とし
530 て乙に帰属するに至った。
531 学生D. 横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることを要件としているにすぎず,
532 必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求することができることを要件としてい
533 ない。
534 学生E. 私の考えと反対の考え方を採ると,民法上宝石の返還義務のない者に宝石の返還を強制
535 することとなり,全体としての法秩序の統一性を破ることになる。
536 1. A,D
537 2. B,C,E
538 3. A,B,C
539 4. A,B,D
540 5. C,D,E
541 (参照条文)民法
542 第708条
543
544 不法な原因のために給付をした者は,その給付したものの返還を請求することができ
545
546 ない。ただし,不法な原因が受益者についてのみ存したときは,この限りでない。
547 〔第14問〕(配点:3)
548 次のアからエまでの各事例の甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,それぞれaないし
549 cから正しいものを選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
550 (解答欄は,[18])
551 ア. 甲は,乙の経営する商店において偽造の1万円札を使用しようと考え,同店において,情を
552 知らない乙に対し,価格1万円の商品の購入を申し込み,代金として偽造の1万円札を渡して
553 同商品を得た。
554 a. 詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
555 b. 詐欺罪が成立し,偽造通貨行使罪は詐欺罪に吸収される。
556 c. 偽造通貨行使罪が成立し,詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。
557 イ. 甲は,自動車を運転中,前方不注視の過失により,同車を歩行者乙に衝突させ,乙に傷害を
558 負わせたが,路上に転倒している乙を見て,自己の犯行の発覚を防ぐため乙を殺害しようと考
559 え,同人を同車両で轢過し,死亡させた。
560
561 10
562
563 a. 業務上過失傷害罪と殺人罪が成立し,両罪は併合罪となる。
564 b. 業務上過失傷害罪と殺人罪との包括一罪となる。
565 c. 業務上過失致死罪が成立する。
566 ウ. 甲は,制服の警察官乙から職務質問を受けたが,質問されたことを不愉快に感じ,乙の顔面
567 を手拳で殴打して傷害を負わせた。
568 a. 公務執行妨害罪と傷害罪が成立し,両罪は牽連犯になる。
569 b. 公務執行妨害罪と傷害罪が成立し,両罪は観念的競合になる。
570 c. 公務執行妨害罪と傷害罪が成立し,両罪は併合罪になる。
571 エ. 甲は,殺意をもって,女性乙の頸部をひもで絞めながら強姦し,同女を死亡させた。
572 a. 強姦致死罪と殺人罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
573 b. 強姦致死罪のみが成立する。
574 c. 強姦罪と殺人罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
575 1. アa
576
577 イb
578
579 ウc
580
581 エa
582
583 2. アb
584
585 イb
586
587 ウa
588
589 エc
590
591 3. アb
592
593 イc
594
595 ウa
596
597 エb
598
599 4. アc
600
601 イa
602
603 ウb
604
605 エa
606
607 5. アc
608
609 イa
610
611 ウb
612
613 エc
614
615 〔第15問〕(配点:2)
616 次の【事例】の甲の罪責について正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
617 (解答欄は,
618
619 19])
620 【事
621
622 例】
623 甲は,夜間,普通乗用自動車を運転し,人通りが少ない一方通行の狭い道路を進行中,右前方
624
625 を歩いている女性乙がショルダーバッグを左肩に掛けているのを認め,同バッグを奪い取ろうと
626 考え,同車で乙を追い抜きざま,運転席窓から右手を出して同バッグをつかんで引っ張った。乙
627 は,同バッグを引っ張られた勢いで路上に転倒したものの,同バッグを奪われまいとして,その
628 さげひもから手を離さなかったので,甲は,乙から同バッグを奪い取るため,乙の身体を同バッ
629 グごと引きずることを認識しながらそのまま加速して運転を続けた。甲は,約20メートルにわ
630 たって乙の身体を引きずったが,乙は,同バッグから手を離さなければ,同車の車輪に巻き込ま
631 れたり,道路脇の壁に衝突するなどして重傷を負いかねないという危険を感じ,やむなくそのさ
632 げひもから手を離し,甲は,同バッグをつかんだまま同車で逃走した。乙は,前記のとおり路上
633 を引きずられたことにより,約2週間の加療を要する右足関節捻挫等の傷害を負った。
634 1. 事後強盗(刑法第238条)が人を負傷させたものとして,強盗致傷罪が成立する。
635 2. 強盗致傷罪は成立せず,窃盗罪と傷害罪が成立する。
636 3. 強盗(刑法第236条第1項)が人を負傷させたものとして,強盗致傷罪が成立する。
637 4. 強盗罪のみが成立する。
638 5. 窃盗罪と業務上過失傷害罪が成立する。
639
640 11
641
642 〔第16問〕(配点:2)
643 次のアからオまでの各記述について,判例の立場に従って検討し,甲に(
644
645 )内の罪が成立する
646
647 ものは○,成立しないものは×とした場合,各記述と○・×の組合せとして正しいものは,後記1
648 から5までのうちどれか。(解答欄は,[20])
649 ア. 甲は,乙にわいせつな行為をすることについての乙の承諾がないのに,これがあると誤信し
650 て,乙が10歳であることを知りながら,乙に対してわいせつな行為を行った。
651 (13歳未満の
652 者に対する強制わいせつ罪)
653 イ. 甲は,乙を殺害することについての乙の承諾がないのに,これがあると誤信して,乙の首を
654 ひもで絞めて殺害した。(同意殺人罪)
655 ウ. 甲は,乙の居宅に入ることについての乙の承諾がないのに,これがあると誤信して,乙が単
656 身居住する乙の居宅に入った。(住居侵入罪)
657 エ. 甲は,乙に傷害を負わせることについての乙の承諾がないのに,これがあると誤信して,過
658 失による事故を装って保険金を詐取するため,甲の運転する自動車を乙に衝突させ,乙に傷害
659 を負わせた。(傷害罪)
660 オ. 甲は,交通違反の取締りを受けた際に乙の氏名を名乗ることについての乙の承諾がないのに,
661 これがあると誤信して,交通違反を警察官に現認された際,乙の氏名を名乗り,交通反則切符
662 の供述書に乙の名義で署名押印した。(有印私文書偽造罪)
663 1. ア○
664
665 イ×
666
667 ウ×
668
669 エ×
670
671 オ×
672
673 2. ア×
674
675 イ○
676
677 ウ×
678
679 エ×
680
681 オ○
682
683 3. ア○
684
685 イ○
686
687 ウ×
688
689 エ○
690
691 オ○
692
693 4. ア○
694
695 イ○
696
697 ウ×
698
699 エ×
700
701 オ○
702
703 5. ア×
704
705 イ×
706
707 ウ○
708
709 エ○
710
711 オ×
712
713 〔第17問〕(配点:3)
714 次の【事例】のアからオまでの行為について,判例の立場に従って,後記の【結論】のTないし
715 Vに分類した場合,
716 【事例】と【結論】の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれ
717 か。(解答欄は,[21])
718 【事
719
720 例】
721
722 ア. 市議会議員選挙に際し,特定の候補者を当選させるため,後日その候補者の氏名を記載して
723 投票の中に混入し同候補者の得票数を増加させる目的をもって,投票所管理者の保管する市議
724 会議員選挙の投票用紙を持ち出した行為
725 イ. 自己が振り出した小切手を呈示されてその支払を請求された際,その支払を拒むため,相手
726 方からその小切手を取り上げ,着衣のポケットに突っ込んでそのまま返還しなかった行為
727 ウ. 支払督促の債権者が,支払督促正本の送達に際し,支払督促の債務者を装い郵便配達員を欺
728 いて支払督促正本を受領することにより,送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生
729 じさせ,債務者から督促異議申立の機会を奪ったまま確定させて,その財産を不正に差し押さ
730 えようとし,支払督促正本はそのまま廃棄するつもりで,郵便配達員からその交付を受け,そ
731 の後同支払督促正本を廃棄した行為
732 エ. 銀行強盗の犯人が,犯行後逃走しようとし,銀行前の駐車場に止めてあった他人所有の自動
733 車に乗り込み,適当な場所まで逃走した後は乗り捨てるか,あるいは崖下等に転落させる意思
734 で,同自動車を運転してその場から走り去った行為
735 オ. 自己が勤務する会社のパソコンのハードディスクに記録されていたデータを自分の趣味に利
736 用しようとし,会社内で,自己の所有するフロッピーディスクに同データをコピーした行為
737 【結
738
739 論】
740
741 T. 毀棄隠匿罪に当たる。
742
743 12
744
745 U. 領得罪に当たる。
746 V. 毀棄隠匿罪にも領得罪にも当たらない。
747 1. アU
748
749 イT
750
751 ウT
752
753 エU
754
755 オV
756
757 2. アV
758
759 イT
760
761 ウT
762
763 エU
764
765 オV
766
767 3. アU
768
769 イU
770
771 ウT
772
773 エU
774
775 オU
776
777 4. アT
778
779 イV
780
781 ウU
782
783 エV
784
785 オU
786
787 5. アT
788
789 イU
790
791 ウV
792
793 エV
794
795 オV
796
797 〔第18問〕(配点:2)
798 次の【事例】に関する後記1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。
799 (解答欄は,
800 [22])
801 【事
802
803 例】
804 自動車を運転していた際に交通事故を起こした甲について,精神鑑定の結果,事故当時,統合
805
806 失調症に罹患し,心神耗弱の状態にあったとの鑑定意見が出されたが,裁判所は,
807 「被告人が,統
808 合失調症に罹患し,交通事故当時病的体験の出没があったとしても,その職業,社会生活におけ
809 る通常の適応が維持し得,病勢がいまだ被告人の人格,行動を圧倒し,対社会的適応を逸脱しな
810 いだけの統覚能力を保持し得る人格状態にあり,しかも,上記事故が被告人のハンドル操作の不
811 適切を過失内容とし,事故自体がその病的体験と直接的あるいは不可避的因果関係があるとは認
812 め難いなどの事情の下においては,被告人は心神喪失ないし心神耗弱の状態にはなく,当該事故
813 に関する業務上過失致死傷罪についての責任能力がある」旨の判断を示した。
814 1. この裁判所の判断は,この事例における責任能力の判断に当たり,精神の障害という生物学
815 的要素と,弁識能力・制御能力という心理学的要素の両方をともに基準とする混合的方法によ
816 ることを前提としている。
817 2. この事例における責任能力の判断方法に対しては,犯行と精神の障害との因果関係が明らか
818 である場合に限って責任能力を否定することになり,心神喪失ないし心神耗弱を認める場合が
819 不当に制限されるおそれがあるとの批判が可能である。
820 3. この裁判所の判断は,同じ精神の障害の状態にありながら,ある行為については完全な責任
821 能力を認め,他の行為については完全な責任能力を認めないという部分的責任能力を肯定する
822 見解を前提とするものとの評価が可能である。
823 4. 甲の精神鑑定を行った鑑定人(精神科医)は,甲は統合失調症に罹患し,本件事故当時心神
824 耗弱の状態にあったとの鑑定意見を述べているが,精神科医の鑑定意見と異なるからといって,
825 この裁判所の判断が誤りであるとはいえない。
826 5. 責任能力については,個々の行為から離れて一般的に判断できる行為者の属性であるとする
827 見解と,個々の行為ごとに個別的に判断できる行為の属性であるとする見解とがあるが,この
828 裁判所の判断は,前者の見解に基づくものと考えられる。
829
830 13
831
832 〔第19問〕(配点:3)
833 次のアからオまでの各記述について,甲に(
834
835 )内の犯罪が成立する場合には1を,成立しない
836
837 場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[23]から[27])
838 ア. 甲は,自ら不正に作成した偽造有印公文書である自動車運転免許証を携帯して自動車を運転
839 中,制限速度違反を警察官Xに現認され,自動車運転免許証の提示を求められたので,どのみ
840 ち免許証の偽造が発覚するであろうとあきらめ,偽造したものである旨申告して前記偽造に係
841 る自動車運転免許証をXに提示した。(偽造有印公文書行使未遂罪)[23]
842 イ. 甲は,Aとのタレント契約交渉に際し,甲経営の会社の資産や経営状況を疑っていたAを安
843 心させてその信用を確保するため,別のタレント用の支度金だと言って,自ら不正に作成した
844 偽造小切手を真正なものとしてAに見せた。(偽造有価証券行使罪)[24]
845 ウ. 甲は,遊び仲間のBにクレジットカードの借用を申し込まれたところ,見栄を張りたい気持
846 ちから断れないままにこれを承諾したが,実際にはカードは所有しておらず,そのため,自ら
847 不正に作成した自己名義の偽造クレジットカードを真正なクレジットカードとしてBに貸し渡
848 した。(不正電磁的記録カード貸渡し罪)[25]
849 エ. 甲は,事務所として使用しているマンションの家主に対し,滞納している家賃を確実に返済
850 できることを証明してその信用を得るための手立てとして,甲がC社に対して多額の債権を有
851 していることを示すべく,自ら不正に作成した偽造有印私文書であり,貸主甲,借主C社とす
852 る両者名義の金銭消費貸借契約書を,真正な文書として司法書士Dに示し,同契約書に基づく
853 公正証書の作成の代理嘱託を同人に依頼した。(偽造有印私文書行使罪)[26]
854 オ. 甲は,約束手形を偽造してこれを割引に出して利益を得ようと考え,自ら不正に作成したE
855 社の振出しに係る約束手形1通を割引依頼のためにFに呈示したが,Fは,既に上記約束手形
856 が偽造であることを甲の友人Gから聞いて知っていたため,割引依頼を断った。
857 (偽造有価証券
858 行使罪)[27]
859 〔第20問〕(配点:3)
860 次の【見解】TないしVに従って,後記の【記述】アないしウについて正誤を検討した場合,後
861 記1から5までのうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[28])
862 【見
863
864 解】
865
866 T. 行為者が正当防衛に当たる事実があると誤信した場合には故意が否定され,過失犯が成立し
867 得るにとどまる。違法性の意識の有無は故意の成立とは無関係であるが,違法性の意識の可能
868 性がなければ,責任を肯定することはできない。
869 U. 行為者が正当防衛に当たる事実があると誤信した場合には故意が否定され,過失犯が成立し
870 得るにとどまる。違法性の意識は故意の要件であり,違法性の意識が認められない場合には故
871 意が否定される。
872 V. 行為者が正当防衛に当たる事実があると誤信した場合であっても,故意は否定されないが,
873 誤信についてやむを得ない事情があった場合には責任が否定される。違法性の意識の有無は故
874 意の成立とは無関係であるが,違法性の意識の可能性がなければ,責任を肯定することはでき
875 ない。
876 【記
877
878 述】
879
880 ア. 行為者は,実際には正当防衛に該当する事実が存在しないのに,これが存在すると誤信した。
881 この誤信にやむを得ない理由があった場合,行為者に犯罪は成立しない。
882 イ. 行為者は,実際には正当防衛に該当する事実が存在しないのに,これが存在すると誤信した。
883 この誤信が不注意によるものであった場合,行為者に故意犯は成立せず,過失犯が成立し得る。
884 ウ. 行為者は,事実に関する誤信はなかったものの,正当防衛の成立要件について誤解していた
885 ため,正当防衛が成立しないのに,成立すると誤信した。この誤信にやむを得ない理由があっ
886
887 14
888
889 たとはいえない場合,行為者に故意犯は成立しない。
890 1. 【見解】Tに従うと,【記述】アは誤りである。
891 2. 【見解】Tに従うと,【記述】ウは正しい。
892 3. 【見解】Uに従うと,【記述】イは誤りである。
893 4. 【見解】Uに従うと,【記述】ウは正しい。
894 5. 【見解】Vに従うと,【記述】アは誤りである。
895
896 15
897
898 〔第21問〕(配点:4)
899 後記【文章】は,捜査の端緒について述べたものである。これを読んで,次の【小問1】及び【小
900 問2】に答えなさい。
901 【小問1】
902 【文章】中の@からDまでの(
903
904 )内に入る適切な語句を後記【語句群】から一つずつ選び出
905
906 し,@からDの順に並べた場合,正しいものは,後記【小問1の選択肢群】の1から6までのう
907 ちどれか。なお,同じ数字の(
908
909 )内には同じ語句が入るものとする。(解答欄は,[29])
910
911 【小問2】
912 【文章】中の(ア)から(オ)までの下線部分の各記述のうち,正しいものの組合せは,後記
913 【小問2の選択肢群】の1から5までのうちどれか。(解答欄は,[30])
914 【文
915
916 章】
917 刑事訴訟法第189条第2項は,「司法警察職員は,(@)があると思料するときは,犯人及び
918
919 証拠を捜査するものとする。」と定めている。この(@)があると思料するに至った原因を捜査の
920 端緒という。刑事訴訟法は,捜査の端緒として,現行犯逮捕,(A),告訴,告発,請求及び自首
921 を挙げているが,捜査の端緒をこれらに制限しているわけではなく,被害者又は第三者の申告,
922 警察官職務執行法第2条第1項の定める(B)のほか,新聞,雑誌,投書など,いやしくも(@)
923 に関係ありと認められる事由がある限り,
924 (ア)広く社会の諸事象から捜査の端緒を得ることが許
925 される。
926 そのうちの(A)とは,人の死亡が(@)に起因するかどうかを判断するため,五官の作用に
927 より死体の状況を見分する処分をいい,捜査前の処分であって,捜査そのものではない。
928 (イ)こ
929 れを行うに当たっては,令状なくして住居内の捜索・検証にわたる処分は行えないものの,死因
930 の確認のためには,注射器を用いて体内から血液を採取したり,腹部等を切開することもできる。
931 また,刑事訴訟法第229条第1項において,
932 「変死者又は変死の疑のある死体があるときは,そ
933 の所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は,(A)をしなければならない。」とされ
934 ているが,検察官は,いわゆる代行(A)として(C)に(A)させることもできる。
935 次に,告訴とは,(@)の被害者その他一定の者が,捜査機関に対して,(@)事実を申告し,
936 その訴追を求める意思表示である。告訴の方式については,告訴の受理権者である(D)にしな
937 ければならず,
938 (ウ)一定の親告罪で定められている告訴期間との関係で,その告訴がなされた日
939 付を特定する必要があるため,口頭による告訴は認められておらず,書面でしなければならない
940 とされている。 また,
941 (エ)告訴は,被害者の訴追を求める意思表示を確認する必要があるため,
942 被害者本人が告訴しなければならず,被害者の代理人により告訴をすることはできない。なお,
943 (オ)被害者が死亡するなどして親告罪について告訴をすることができる者がない場合には,検
944 察官は,利害関係人の申立てにより告訴をすることができる者を指定することができる。
945 【語句群】
946 a. 職務質問
947
948 b. 事件
949
950 c. 医師
951
952 e. 司法巡査
953
954 f. 検視
955
956 g. 検察事務官又は司法警察員
957
958 i. 検察官又は司法警察員
959
960 d. 任意同行
961 h. 解剖
962
963 j. 犯罪
964
965 【小問1の選択肢群】
966 1. jfagi
967
968 2. bfage
969
970 3. bhdce
971
972 4. jhdci
973
974 5. jfaci
975
976 6. bhdge
977
978 【小問2の選択肢群】
979 1. ア
980
981
982
983 2. ア
984
985
986
987 3. イ
988
989
990
991 4. ウ
992
993
994
995 5. イ
996
997
998
999 〔第22問〕(配点:2)
1000 勾留に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[31])
1001 16
1002
1003 1. 刑事訴訟法第60条第1項第2号に定める「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があ
1004 るとき」の「罪証」とは,犯罪の成否に関する証拠を意味するので,犯罪の成立自体について
1005 は,既に証拠が収集されていて証拠隠滅の余地がなく,犯罪の動機に関する証拠にのみ隠滅の
1006 おそれがある場合には,同号の要件を満たすことはない。
1007 2. 被疑者の勾留の期間は,勾留の請求をした日から10日間であるが,裁判官は,やむを得な
1008 い事由があると認めるときは,検察官の請求により,1回に限り,その期間を延長することが
1009 できる。
1010 3. 検察官は,逮捕勾留されていない被疑者について公訴を提起する際,勾留請求権に基づいて,
1011 裁判官にその勾留を請求することができる。
1012 4. 第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても,
1013 控訴裁判所は,記録等の調査により,前記無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯した
1014 ことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは,勾留の理由があり,かつ,控訴審にお
1015 ける適正,迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り,その審理の段階を問わず,
1016 被告人を勾留することができる。
1017 5. 少年の刑事事件については,その健全な育成を期するという見地から,定まった住居を有す
1018 る少年の被疑者を勾留することはできない。
1019 〔第23問〕(配点:3)
1020 次の1から5までの【見解】は,令状によらない差押え等を規定した刑事訴訟法第220条第1
1021 項の「逮捕する場合」の解釈に関するものである。後記【発言】は,学生AないしEが,1から5
1022 までのいずれかの【見解】を採って,ほかの学生の【見解】について発言したものである。学生A
1023 ないしEの【見解】は,それぞれ1から5までのうちどれか。なお,同じ【見解】を採っている学
1024 生は存しない。
1025 (解答欄は,学生Aの見解につき[32],学生Bの見解につき[33],学生Cの見
1026 解につき[34],学生Dの見解につき[35],学生Eの見解につき[36])
1027 【見
1028
1029 解】
1030
1031 1. 現実に逮捕したことを要する。
1032 2. 逮捕に着手したことを要するが,逮捕に成功したかどうかは問わない。
1033 3. 被疑者が現場に存在し,直ちに逮捕に着手し得る状態にあることを要する。
1034 4. 被疑者が現場に存在しなくとも,時間的に接着して逮捕されれば足りる。
1035 5. 被疑者が現場に存在しなくとも,逮捕が見込まれる状態にあれば足り,結果的に逮捕に着手
1036 されたかどうかは問わない。
1037 【発
1038
1039 言】
1040
1041 学生A. C君の見解は,判例の立場と同じだけれど,それでは,事後的な逮捕の成否により捜索
1042 差押えの適法性が左右されることになり,不合理だ。
1043 学生B. D君の見解は,私の見解と同様に基準が明確になり,濫用防止に優れている点は理解で
1044 きるが,刑事訴訟法が「逮捕した場合」ではなく,
1045 「逮捕する場合」と規定している文理か
1046 ら離れているという問題がある。
1047 学生C. E君の見解は,被疑者がいないまま,結局,最後まで逮捕に着手しなかった場合であっ
1048 ても,
1049 「逮捕する場合」に当たるということになるので,文理から離れすぎていて妥当でな
1050 い。
1051 学生D. A君の見解は,逮捕の着手すらない時点から無令状の捜索差押えができることになり,
1052 不当だ。
1053 学生E. B君の見解は,逮捕の着手に先立って,被疑者らによる証拠の破壊等を防止する必要が
1054 生じることもあるという捜査の実情に対する配慮が欠けていて,硬直的な見解である。
1055
1056 17
1057
1058 〔第24問〕(配点:3)
1059 次のTからVまでの【見解】は,実体法上一罪の関係にある数個の可罰的行為の逮捕勾留に関す
1060 る考え方を述べたものである。これらの【見解】のいずれかを前提に,後記【事例】における逮捕
1061 勾留の適法性について述べた後記アからカまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1
1062 から5までのうちどれか。なお,
1063 「常習特殊窃盗」とは,盗犯等の防止及び処分に関する法律第2条
1064 違反の罪をいう。(解答欄は,[37])
1065 【見
1066
1067 解】
1068
1069 T. 一罪の範囲では,1回の逮捕勾留しか許されない。
1070 U. 勾留の裁判の時点において同時に裁判することが可能であった一罪の範囲では,1回の逮捕
1071 勾留しか許されない。
1072 V. 現実に実行された個々の可罰的行為ごとに1回の逮捕勾留が許される。
1073 【事
1074
1075 例】
1076 甲は,平成○○年3月15日(@事件)と4月1日(A事件)に,それぞれ財物を窃取したと
1077
1078 ころ,A事件について,4月10日に逮捕され,4月12日に勾留された後,5月1日,常習特
1079 殊窃盗の罪で起訴された。甲は,同事件の公判中に保釈されたが,保釈中の5月20日(B事件)
1080 に財物を窃取した。@事件及びB事件は,5月1日に起訴されたA事件と実体法上一罪の関係に
1081 ある。捜査機関は,6月1日,@事件及びB事件について甲の逮捕勾留を検討している。
1082 【記
1083
1084 述】
1085
1086 ア. Tの考え方に立ったとき,@事件について逮捕勾留することは,許されることがある。
1087 イ. Tの考え方に立ったとき,B事件について逮捕勾留することは,常に許される。
1088 ウ. Uの考え方に立ったとき,@事件について逮捕勾留することは,常に許される。
1089 エ. Uの考え方に立ったとき,B事件について逮捕勾留することは,常に許される。
1090 オ. Vの考え方に立ったとき,@事件について逮捕勾留することは,常に許される。
1091 カ. Vの考え方に立ったとき,B事件について逮捕勾留することは,許されないことがある。
1092 1. ア
1093
1094
1095
1096 2. イ
1097
1098
1099
1100 3. ウ
1101
1102
1103
1104 4. エ
1105
1106
1107
1108 5. エ
1109
1110
1111
1112 (参照条文)盗犯等の防止及び処分に関する法律
1113 第二条
1114
1115 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条,第二百三十六条,第二百三十八条
1116
1117 若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以
1118 上,強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
1119
1120
1121 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
1122
1123
1124
1125 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
1126
1127
1128
1129 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ
1130 侵入シテ犯シタルトキ
1131
1132
1133
1134 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
1135
1136 〔第25問〕(配点:3)
1137 刑事訴訟法第39条第3項は,
1138 「検察官,検察事務官又は司法警察職員(中略)は,捜査のため必
1139 要があるときは,公訴の提起前に限り,第1項の接見又は授受に関し,その日時,場所及び時間を
1140 指定することができる。但し,その指定は,被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するよう
1141 なものであつてはならない。」と規定する。この規定に関する次のアからオまでの各記述について,
1142 判例に照らして正しいものの組合せは,後記1から8までのうちどれか。(解答欄は,[38])
1143 ア. 勾留中の被疑者の弁護人から接見の申出を受けた司法警察職員が,接見のための日時等の指
1144 定につき権限のある捜査機関である検察官に連絡し,それに対する具体的措置について指示を
1145 受ける等の手続を採る間,弁護人を待機させることは,合理的な範囲内にとどまる限り許され
1146 る。
1147
1148 18
1149
1150 イ. 捜査機関が弁護人から接見の申出を受けた時点において,現に被疑者の身柄を用いていない
1151 場合は,間近い時に被疑者を立ち会わせて実況見分を行う確実な予定があり,弁護人の申出に
1152 沿った接見を認めたのでは実況見分を予定どおりに開始できなくなるおそれがあっても,同条
1153 第3項にいう「捜査のため必要があるとき」に当たることはない。
1154 ウ. 起訴後勾留中の被告人が,同時に余罪の被疑者として逮捕又は勾留中であり,その余罪につ
1155 いて,同条第3項にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合は,被告事件について防
1156 御権の不当な制限にわたらない限り,捜査機関は,被告人と被告事件の弁護人との接見に関し,
1157 その日時等を指定することが許される。
1158 エ. 捜査機関が被疑者と弁護人との接見の日時等を指定する場合,その方法は,捜査機関の合理
1159 的裁量にゆだねられるが,弁護人に対する書面の交付による方法は許されない。
1160 オ. 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直
1161 後の初回の接見は,これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるか
1162 ら,捜査機関は,同条第3項にいう「捜査のため必要があるとき」に当たる場合であっても,
1163 接見の日時等を指定することが許されることはない。
1164 1. ア
1165
1166
1167
1168 2. ア
1169
1170
1171
1172 3. ア
1173
1174
1175
1176 4. イ
1177
1178
1179
1180 5. イ
1181
1182
1183
1184 6. ウ
1185
1186
1187
1188 7. ウ
1189
1190
1191
1192 8. エ
1193
1194
1195
1196 〔第26問〕(配点:2)
1197 起訴状一本主義に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものは幾つあるか。後記1か
1198 ら6までのうちから選びなさい。(解答欄は,[39])
1199 ア. 起訴状一本主義は,裁判官が被告人の罪責について予断を抱くことなく第一回公判期日に臨
1200 んで初めて「公平な裁判所」の理念が実現されるという考えに基づくものであるので,当事者
1201 主義とは無関係である。
1202 イ. 公訴事実中の被告人の前科の記載は,裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある事
1203 項に該当するので,前科を誇示してした恐喝などのように前科が犯罪の実行行為の一部となっ
1204 ている場合であっても,公訴事実中に前科を記載することは許されない。
1205 ウ. 恐喝の手段として送付された脅迫状の全文を恐喝罪の公訴事実に引用するのは,起訴状一本
1206 主義に反する証拠の引用に該当するので許されることはない。
1207 エ. 起訴状には,裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付して
1208 はならないとされているので,略式命令を請求する場合に,その請求と同時に検察官が立証に
1209 必要があると思料する書類を裁判所に差し出すことは許されない。
1210 オ. 起訴状には,裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付する
1211 ことを禁止しているので,検察官が被告人を勾留中のまま公訴提起する際に,起訴状の提出と
1212 同時に,被告人の逮捕状や勾留状をその裁判所の裁判官に差し出すことは許されない。
1213 1. 0個
1214
1215 2. 1個
1216
1217 3. 2個
1218
1219 4. 3個
1220
1221 19
1222
1223 5. 4個
1224
1225 6. 5個
1226
1227 〔第27問〕(配点:3)
1228 次のTからVまでの【見解】は,被告人の特定に関する基準について述べたものである。これら
1229 の【見解】のいずれかを前提に,後記【事例】について,検察官から刑の執行猶予の言渡しの取消
1230 しを請求された裁判所の採るべき対応として正しいものは,後記1から6までのうちどれか。
1231 (解答
1232 欄は,[40])
1233 【見
1234
1235 解】
1236
1237 T. 検察官が実際に起訴しようとした者が,だれであるかを基準とする。
1238 U. 起訴状に被告人として氏名を表示された者が,だれであるかを基準とする。
1239 V. 現に公判廷において被告人として行動した者が,だれであるかを基準とする。
1240 【事
1241
1242 例】
1243 甲は,強盗罪で懲役刑の実刑判決を受けて刑務所に服役し,その刑の執行を終えた。その後,
1244
1245 甲は,無銭飲食による詐欺事件(@事件)を起こして逮捕勾留されたが,その際,身上等を知る
1246 乙の氏名等を詐称したため,検察官は,乙の氏名等を詐称している甲を犯人と考えて,その勾留
1247 中に,起訴状の被告人を乙と表示して詐欺罪で起訴した。裁判所は,乙の氏名等を詐称している
1248 甲を公判期日に出頭させて審理した上,懲役刑に処するとともに,その刑の執行を猶予する旨の
1249 判決を宣告し,同判決は確定した。
1250 さらに,甲は,自動車運転による業務上過失傷害事件(A事件)を起こして身柄不拘束で警察
1251 官の取調べを受けたが,その際,身上等を知る丙の氏名等を詐称した。甲から打ち明けられて事
1252 情を知った丙が,甲に代わって検察庁に出頭し検察官の取調べを受けたため,検察官は,丙を犯
1253 人と考えて,在宅のまま,起訴状の被告人を丙と表示して業務上過失傷害罪で起訴した。裁判所
1254 は,丙を公判期日に出頭させて審理した上,禁錮刑に処するとともに,その刑の執行を猶予する
1255 旨の判決を宣告し,同判決は確定した。
1256 その後,甲は,窃盗事件を起こして現行犯逮捕され,同事件の逮捕勾留中も身上等を知る丁の
1257 氏名を詐称したものの,甲を取り調べた検察官が,その供述内容に不審を抱き捜査を遂げた結果,
1258 現在勾留中の被疑者は甲であること,甲は@事件では乙の氏名等を詐称し,A事件では丙の氏名
1259 等を詐称していたこと及びいずれの事件の判決の宣告も前記強盗罪の刑の執行を終わった日から
1260 5年を経ていなかったことが判明した。このため,検察官は,裁判所に対し,刑法第26条第3
1261 号により,甲に執行猶予の必要的取消事由が存することを理由に,@事件及びA事件における刑
1262 の執行猶予の言渡しの取消しを請求した。
1263 1. Tの考え方に立てば,@事件は請求を却下し,A事件は執行猶予を取り消すべきである。
1264 2. Tの考え方に立てば,@事件及びA事件とも請求を却下すべきである。
1265 3. Uの考え方に立てば,@事件は執行猶予を取り消し,A事件は請求を却下すべきである。
1266 4. Uの考え方に立てば,@事件及びA事件とも執行猶予を取り消すべきである。
1267 5. Vの考え方に立てば,@事件は執行猶予を取り消し,A事件は請求を却下すべきである。
1268 6. Vの考え方に立てば,@事件及びA事件とも執行猶予を取り消すべきである。
1269 〔第28問〕(配点:2)
1270 公判前整理手続に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。
1271 (解答欄は,
1272 [41])
1273 1. 裁判所は,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため必要があると認めると
1274 きは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて,第一回公判期日前に,決定で,事件の争
1275 点及び証拠を整理するための公判準備として,事件を公判前整理手続に付することができる。
1276 2. 公判前整理手続においては,被告人に弁護人がなければその手続を行うことができないので,
1277 被告人に弁護人がないときは,裁判長は,職権で弁護人を付さなければならない。
1278 3. 公判前整理手続は,受訴裁判所が主宰して行うこととされている。
1279
1280 20
1281
1282 4. 公判前整理手続は,その後の公判における審理や証拠調べの在り方を決定付けるものである
1283 ため,公開の法廷で行わなければならない。
1284 5. 公判前整理手続に付された事件については,検察官及び被告人又は弁護人は,やむを得ない
1285 事由によって公判前整理手続において請求することができなかったものを除き,当該公判前整
1286 理手続が終わった後には,証拠調べを請求することができない。
1287 〔第29問〕(配点:3)
1288 次のアからカまでの各記述は,第一審の公判期日における手続であるが,そのうち冒頭手続にお
1289 いて行われるものを選び出した上,その進行順序に従って並べた場合,正しいものは,後記1から
1290 8までのうちどれか。(解答欄は,[42])
1291 ア. 裁判長が,被告人及び弁護人に対し,被告事件について陳述する機会を与える。
1292 イ. 検察官が,起訴状を朗読する。
1293 ウ. 検察官が,事件の審判に必要と認めるすべての証拠の取調べを請求する。
1294 エ. 裁判長が,被告人に対し,その人違いでないことを確かめるに足りる事項を問う。
1295 オ. 裁判長が,被告人に対し,終始沈黙し,又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨そ
1296 の他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げる。
1297 カ. 検察官が,冒頭陳述を行う。
1298 1. イエオア
1299
1300 2. エイオカ
1301
1302 3. オイアカ
1303
1304 6. エオイア
1305
1306 7. オエイア
1307
1308 8. オエイカ
1309
1310 21
1311
1312 4. エイオア
1313
1314 5. オイカウ
1315
1316 〔第30問〕(配点:3)
1317 次の【事例】における【Wの証人尋問】中の(ア)から(エ)までの下線部分にそれぞれ対応す
1318 る後記アからエまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれ
1319 か。(解答欄は,[43])
1320 【事
1321
1322 例】
1323 甲は,Vに暴行を加えて傷害を負わせ,犯行現場から逃走したが,通りすがりのプロカメラマ
1324
1325 ンWがその犯行を目撃し,携帯していたカメラでそれを写真撮影した。そのため甲の氏名等が判
1326 明し,甲は,Vを被害者とする傷害事件で公判請求された。
1327 甲は,第一回公判期日において,
1328 「公訴事実記載の日時に現場に行ったことはないし,Vに暴力
1329 を振るったこともない。」旨述べて犯行を否認した。
1330 検察官は,その他の証拠とともに,弁護人に開示済みの@本件犯行目撃状況等に関するWの司
1331 法警察員に対する供述調書及びAW撮影に係る写真7枚を添付した司法警察員作成の捜査報告書
1332 を証拠調べ請求した。
1333 これに対し,甲の弁護人は,前記@及びAの証拠について不同意の意見を述べたが,Wが当時
1334 カメラを携帯していた事実については争わない旨述べた。
1335 そこで,検察官は,立証趣旨を「本件犯行目撃状況及び前記写真の撮影状況」として,Wの証
1336 人尋問を請求し,裁判所の採用決定を経て,次のとおりWの証人尋問を行った。なお,同証人尋
1337 問の段階では,前記Aの証拠採用決定及び証拠調べはなされていない。
1338 【Wの証人尋問】
1339 検察官. (ア)あなたは,プロのカメラマンをしていますね。
1340 W.
1341
1342 はい。
1343
1344 検察官. あなたは,本件犯行の日時である平成○年○月○日午前○時ころ,どこにいましたか。
1345 W.
1346
1347 仕事に行く途中に,事件の現場を通り掛かりました。
1348
1349 検察官. (イ)その時,あなたは,カメラを携帯していましたね。
1350 W.
1351
1352 はい。仕事で必要ですから。
1353
1354 検察官. あなたが現場を通り掛かったとき,何か見ましたか。
1355 W.
1356
1357 後に警察で名前を聞いて知ったVが暴力を振るわれているのを見ました。
1358
1359 検察官. その時,あなたは,どの地点にいましたか。
1360 W.
1361
1362 △△交差点の南側の信号機のそばです。
1363
1364 検察官. その時,Vはどこにいましたか。
1365 W.
1366
1367 私がいたところから30メートルほど南側の歩道上で私に背を向けて立っていました。
1368
1369 検察官. (ウ)では,その時,甲はその歩道上のどこにいましたか。
1370 W.
1371
1372 Vの正面に立っていました。
1373 (中略)
1374
1375 検察官. あなたは,甲がVに暴力を振るっているのを見て,どうしましたか。
1376 W.
1377
1378 とっさに,カメラを取り出して,その様子を写真に撮りました。
1379
1380 検察官. その後,甲はどうしましたか。
1381 W.
1382
1383 私が写真を撮っていることに気付いた様子で,慌てて,車に乗り込み,走り去りました。
1384
1385 検察官. それを見たあなたはどうしましたか。
1386 W.
1387
1388 逃げた犯人を捕まえるのに役立つと思ったので,その車を写真に撮りました。
1389
1390 検察官. (エ)前記Aの捜査報告書添付の写真7枚を示します。これらの写真7枚は,あなたが
1391 本件現場で撮影したものですか。
1392 W.
1393
1394 はい。間違いありません。
1395 (以下省略)
1396
1397 【記
1398
1399 述】
1400
1401 22
1402
1403 ア. この尋問は,主尋問における誘導尋問であるが,証人の身分等で実質的な尋問に入るに先立
1404 って明らかにする必要のある準備的な事項に関するものであるので許される。
1405 イ. この尋問は,主尋問における誘導尋問であるので許されない。
1406 ウ. この尋問は,Wが,いまだ甲が現場にいた旨を証言していないのに,甲が現場にいたことを
1407 前提としており,誤導尋問と呼ばれる相当でない尋問であるので許されない。
1408 エ. この尋問は,Wに示した写真7枚が,いまだ証拠調べを終えていないものであるので許され
1409 ない。
1410 1. ア
1411
1412
1413
1414 2. ア
1415
1416
1417
1418 3. イ
1419
1420
1421
1422 4. イ
1423
1424
1425
1426 5. ウ
1427
1428
1429
1430 〔第31問〕(配点:3)
1431 起訴状記載の公訴事実の特定に関し,裁判所が検察官に対して求釈明する義務を負うのは,訴因
1432 の明示に必要な範囲に限られるとの見解がある。次のアからオまでの各記述のうち,この見解と矛
1433 盾するものの組合せとして正しいものは,後記1から6までのうちどれか。(解答欄は,[44])
1434 ア. 訴因の明示に欠けるところはないが,裁判所として被告人の防御の観点から明らかにするこ
1435 とが重要であると考える事項について,裁判所が検察官に求釈明することができる。
1436 イ. 裁判所が求釈明義務に基づいて検察官に対して求釈明したにもかかわらず,検察官がこれに
1437 応じない場合は,当事者主義を採る現行法の下では,公訴棄却の判決をせず,そのまま次の手
1438 続に進むしかない。
1439 ウ. 裁判所が求釈明義務に基づいて検察官に対して求釈明し,検察官がこれに応じて釈明した場
1440 合,検察官が釈明した内容が当然に訴因の内容となるとは限らない。
1441 エ. 裁判所は,訴因の明示にとって補正が必要な事項については,弁護人から求釈明要求がない
1442 場合であっても,自ら検察官に対して求釈明しなければならない。
1443 オ. 裁判所は,求釈明する必要がないと考える事項について,弁護人から求釈明要求があった場
1444 合,一応,検察官に対して,任意に釈明に応じるかどうかを打診し,検察官がこれに応ずれば
1445 釈明を許すことができる。
1446 1. ア
1447
1448
1449
1450 2. ア
1451
1452
1453
1454 3. イ
1455
1456
1457
1458 4. イ
1459
1460
1461
1462 5. ウ
1463
1464
1465
1466 6. エ
1467
1468
1469
1470 〔第32問〕(配点:2)
1471 刑事訴訟法第89条の必要的保釈(権利保釈)に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っ
1472 ているものはどれか。(解答欄は,[45])
1473 1. 殺人罪で公訴を提起され,同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求した場合,裁判所は,同条
1474 による保釈を許可することはできない。
1475 2. 傷害罪で公訴を提起され,同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが,甲に殺人罪で有期
1476 懲役刑の実刑判決を受けた前科がある場合,裁判所は,同条による保釈を許可することはでき
1477 ない。
1478 3. 傷害罪で公訴を提起され,同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが,甲に逃亡すると疑
1479 うに足りる相当な理由がある場合,裁判所は,同条による保釈を許可することはできない。
1480 4. 被害者を乙とする傷害罪で公訴を提起され,同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが,
1481 甲に乙を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある場合,裁判所は,同条による
1482 保釈を許可することはできない。
1483 5. 傷害罪で公訴を提起され,同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが,甲が定まった住居
1484 を有しない場合,裁判所は,同条による保釈を許可することはできない。
1485
1486 23
1487
1488 〔第33問〕(配点:2)
1489 検察官の面前における供述を録取した書面についての刑事訴訟法第321条第1項第2号に関す
1490 る次の1から5までの各記述のうち,判例に照らして正しいものはどれか。(解答欄は,[46])
1491 1. 共同被告人は,被告人との関係においては,被告人以外の者であって,被害者その他の純然
1492 たる証人とその本質を異にするものではないから,共同被告人の検察官に対する供述調書は,
1493 同号にいう「検察官の面前における供述を録取した書面」に当たる。
1494 2. 証人が公判廷において証言を拒絶した場合は,同号前段の「公判準備若しくは公判期日にお
1495 いて供述することができないとき」に当たらない。
1496 3. 既に公判期日において証人として尋問された者に対し,検察官が,後の公判期日に提出する
1497 ことを予定して,その尋問内容と同一事項につき取り調べて作成した供述調書は,その後の公
1498 判期日において,その者が前記供述調書の内容と相反する供述をしても,同号後段にいう「前
1499 の供述」に当たらない。
1500 4. 退去強制によって出国した外国人の検察官に対する供述調書については,同号前段のその供
1501 述者が「国外にいる」という要件を満たすので,常に,事実認定の証拠として許容される。
1502 5. 同号ただし書の「前の供述を信用すべき特別の情況」は,供述がなされた際の外部的な事情
1503 のみを判断資料とすべきであり,この「特別の情況」を推知させる事由として,その供述内容
1504 を考慮することはできない。
1505 〔第34問〕(配点:3)
1506 次の【事例】における実況見分調書が,立証趣旨を「犯行現場の状況」として,その証拠調べを
1507 請求され,刑事訴訟法第321条第3項による書面として証拠調べされた場合,後記アからオまで
1508 の【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
1509 (解答欄は,
1510 [47])
1511 【事
1512
1513 例】
1514 甲は,午後6時30分ころ,X交差点において,自動車を運転中に交通事故を起こして被害者
1515
1516 を死亡させた。司法警察員Kは,甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について,犯行現場
1517 の状況を明らかにするために,同現場において,事故直後の午後7時から40分間にわたり,甲
1518 を立ち会わせて実況見分を行った。Kは,その後,その経過と結果を正確に記載した実況見分調
1519 書を作成した。この実況見分調書には,次の(a)から(e)までの各記載があり,現場見取図
1520 が添付されているが,甲の署名押印はない。
1521 (a). 甲は,同現場交差点南側の街灯を指さして「事故当時,この街灯は点灯していませんで
1522 した。」と説明した。
1523 (b). 甲は,
1524 「私が被害者を初めて発見した場所は@地点でした。その時,被害者が立っていた
1525 場所はA地点でした。」と説明した。
1526 (c). Kが,@地点とA地点の間の距離を測定したところ,10. 7メートルであった。
1527 (d). Kが,@地点の運転席に着席した甲の目の高さに視線を置き,A地点方向を見たとこ
1528 ろ,道路脇に設置された看板の陰になって,A地点の路面は見えなかったが,高さ80セ
1529 ンチメートルを超える部分は見えた。
1530 (e). 実況見分を実施している間,本件現場付近の人通りは多かった。
1531 【記
1532
1533 述】
1534
1535 ア. この実況見分調書中の(a)の記載を,当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実
1536 の認定に用いることができる。
1537 イ. この実況見分調書中の(b)の記載を,甲が初めて被害者を発見したときに,被害者はA地
1538 点に立っていたという事実の認定に用いることができる。
1539 ウ. この実況見分調書中の(b)及び(c)の記載を,甲が初めて被害者を発見した場所として
1540 指示した地点とその際に被害者が立っていた場所として指示した地点の間の距離が10. 7メ
1541
1542 24
1543
1544 ートルであるという事実の認定に用いることができる。
1545 エ. この実況見分調書中の(d)の記載を,@地点の運転席に着席していた甲からはA地点の路
1546 面を見通すことができないという事実の認定に用いることはできない。
1547 オ. この実況見分調書中の(e)の記載を,事故直後の午後7時から40分間,本件現場付近の
1548 人通りは多かったという事実の認定に用いることができる。
1549 1. ア
1550
1551
1552
1553 2. イ
1554
1555
1556
1557 3. イ
1558
1559
1560
1561 4. ウ
1562
1563
1564
1565 5. ウ
1566
1567
1568
1569 〔第35問〕(配点:3)
1570 憲法第38条第2項は,
1571 「強制,拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁さ
1572 れた後の自白は,これを証拠とすることができない。」とし,刑事訴訟法第319条第1項は,「強
1573 制,拷問又は脅迫による自白,不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたもので
1574 ない疑のある自白は,これを証拠とすることができない。」として,一定の自白について証拠能力を
1575 否定している(自白法則)。これに関する次の【会話】中の@からEまでの(
1576
1577 )内に入る適切な記
1578
1579 述を後記【記述】から一つずつ選び出し,@からEの順に並べた場合,正しいものは,後記1から
1580 5までのうちどれか。なお,同じ記述は1回しか用いてはならない。(解答欄は,[48])
1581 【会
1582
1583 話】
1584
1585 学生A. 任意性に疑いのある自白の証拠能力を否定する根拠について,私は,内容が虚偽のおそ
1586 れがあり,その信用性に乏しいからであると考えます。この考えでは,自白を証拠とする
1587 ことができるかどうかの基準は,(@)ということになると考えます。
1588 学生B. A君の考えでは,任意性に疑いのある自白について,
1589 (A)という問題があるのではない
1590 ですか。私は,その根拠について,憲法第38条第1項の黙秘権の保障を担保するためで
1591 あると考えます。この考えでは,自白を証拠とすることができるかどうかの基準は,
1592 (B)
1593 ということになると考えます。
1594 学生C. しかし,B君の考えでは,
1595 (C)という問題があると思います。そこで,私は,その根拠
1596 は,手段の適法性を担保するためであると考えます。この考えでは,自白を証拠とするこ
1597 とができるかどうかの基準は,(D)ということになると考えます。
1598 学生A. 確かに,C君の考えでは,その基準を客観化できるようにも思えますが,
1599 (E)という問
1600 題は残るのではないですか。そうすると,結局は,どれか一つの考えを根拠とするのでは
1601 なく,これら三つの考えを複合的に考えることが妥当ということになるのでしょうか。
1602 【記
1603
1604 述】
1605
1606 ア. 公判廷における自白であったか否か
1607 イ. 違法の程度の認定が困難である
1608 ウ. 黙秘権と自白法則を混同している
1609 エ. 反対尋問権の保障に欠ける
1610 オ. 供述の自由の制約があったか否か
1611 カ. 内容が真実であれば自白を証拠にできる
1612 キ. 自白偏重による誤判防止という趣旨と相容れない
1613 ク. 弁護人が取調べに立ち会ったか否か
1614 ケ. 取調方法が違法であったか否か
1615 コ. 虚偽の自白を誘発するおそれがあったか否か
1616 1. アキクウケイ
1617
1618 2. コカオエクウ
1619
1620 4. コイオキケエ
1621
1622 5. クカコウオイ
1623
1624 3. コカオウケイ
1625
1626 25
1627
1628 〔第36問〕(配点:3)
1629 次の【見解】は,自白の補強証拠が必要とされる範囲について述べたものである。
1630 【見解】中の@
1631 とAの(
1632
1633 )内に入る適切な語句を後記【A群】の1から5までのうちから,また,BとCの(
1634
1635
1636
1637 内に入る適切な記述を後記【B群】の1から5までのうちから,それぞれ一つずつ選びなさい。な
1638 お,同じ数字の(
1639
1640 )内には,同じ語句又は記述が入るものとする。(解答欄は,@からCの順に
1641
1642 [49]から[52])
1643 【見
1644
1645 解】
1646 犯罪を構成する事実は,一般に,客観的要件事実,主観的要件事実,被告人と犯人との同一性
1647
1648 の三つに分けることができる。自白の補強証拠が必要とされる範囲について,犯罪を構成する事
1649 実のうち(@)[49]の全部又は実行行為を含むその主要部分について補強証拠が必要であると
1650 する学説がある。これは,
1651 (@)[49]以外の事実については,自白以外の証拠が存在しない場合
1652 が少なくないことも考慮し,明確で実際的な補強の範囲を示そうとしたものといえる。これに対
1653 し,判例は,より柔軟に,(@)[49]のうち,(A)[50]を保障する程度の範囲の事実につい
1654 て補強証拠が存在すれば足りるとしている。
1655 例えば,貴金属を客体とする盗品有償譲受けの罪について,被告人の全面的な自白と当該貴金
1656 属に関する盗難被害届のみが存在し,自白には十分な信用性が認められる場合,前記学説によれ
1657 ば,(B)[51]ことになる。他方,この場合,判例によれば,(C)[52]ことになる。
1658 【A
1659
1660 群】
1661
1662 1. 客観的要件事実
1663 2. 主観的要件事実
1664 3. 被告人と犯人との同一性
1665 4. 自白の任意性
1666 5. 自白の真実性
1667 【B
1668
1669 群】
1670
1671 1. 当該貴金属が盗品であることについて補強証拠に欠けるから,有罪とすることは許されない
1672 2. 被告人が当該貴金属が盗品であることを認識していたことについて補強証拠に欠けるから,
1673 有罪とすることは許されない
1674 3. 被告人が犯人であることについて補強証拠に欠けるから,有罪とすることは許されない
1675 4. 被告人が当該貴金属を有償で譲り受けたことについて補強証拠に欠けるから,有罪とするこ
1676 とは許されない
1677 5. 自白全体が架空のものでないとの裏付けがあり,補強証拠に欠けるところはないから,有罪
1678 とすることが許される
1679 〔第37問〕(配点:2)
1680 次のアからカまでの各記述のうち,免訴の言渡しをしなければならない場合の組合せとして正し
1681 いものは,後記1から6までのうちどれか。(解答欄は,[53])
1682 ア. 殺人罪の訴因について無罪判決が確定した後,被告人の有罪を立証するに十分な新たな証拠
1683 が発見されたことから,再度,同一事実につき殺人罪の訴因で起訴がなされたとき
1684 イ. 強制わいせつ事件の唯一の告訴権者である被害者が告訴を取り消した後,同一事実について
1685 強制わいせつ罪の訴因で起訴がなされたとき
1686 ウ. 起訴がなされた犯罪について,起訴より前に公訴時効が完成していたことが判明したとき
1687 エ. 公判係属中に,被告人が死亡したとき
1688 オ. 犯行時に18歳で,いまだ成人に達していない被疑者の刑事事件について,家庭裁判所の刑
1689 事処分を相当と認める決定を経ないで起訴がなされたとき
1690 カ. 公訴の取消し後,犯罪事実につき,新たに重要な証拠が発見されていないにもかかわらず,
1691
1692 26
1693
1694 公訴の取消しによる公訴棄却の決定が確定した同一事実について起訴がなされたとき
1695 1. ア
1696
1697
1698
1699 2. ア
1700
1701
1702
1703 3. イ
1704
1705
1706
1707 4. ウ
1708
1709
1710
1711 5. エ
1712
1713
1714
1715 6. オ
1716
1717
1718
1719 〔第38問〕(配点:2)
1720 控訴審に関する次のアからエまでの各記述につき,正しい場合には1を,誤っている場合には2
1721 を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[54]から[57])
1722 ア. 判例に照らせば,被告人は,免訴を言い渡した原判決に対し無罪を求めて控訴することがで
1723 きる。[54]
1724 イ. 控訴裁判所は,原判決の言渡し後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべき情状について取り調
1725 べることはできない。[55]
1726 ウ. 簡易裁判所がした刑事に関する第一審の判決に対する控訴については,地方裁判所が裁判権
1727 を有する。[56]
1728 エ. 控訴裁判所は,被告人のみが控訴をした事件では,原判決の刑が著しく軽いと認められても,
1729 それより重い刑を言い渡すことはできない。[57]
1730 〔第39問〕(配点:2)
1731 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(以下「通信傍受法」という。)に関する次の1から4ま
1732 での各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[58])
1733 1. 刑事訴訟法では,令状により,差押え,捜索又は検証をすることができる対象犯罪を限定し
1734 ていないが,通信傍受法では,傍受令状で通信の傍受をすることができる対象犯罪を死刑又は
1735 無期若しくは短期1年以上の懲役に当たる刑法上の犯罪に限定している。
1736 2. 差押え,捜索又は検証のための令状には,犯罪事実の要旨及び罰条の記載を要しないが,通
1737 信傍受法の傍受令状には,被疑事実の要旨及び罰条を記載しなければならない。
1738 3. 刑事訴訟法では,令状により,差押え,捜索又は検証をすることができる要件として「犯罪
1739 の捜査をするについて必要があるとき」と定められているが,通信傍受法では,傍受令状によ
1740 り,通信の傍受をすることができる要件の一つとして「他の方法によっては,犯人を特定し,
1741 又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるとき」と定められている。
1742 4. 刑事訴訟法では,裁判官がした検証に関する裁判の取消し又は変更を請求することはできな
1743 いが,通信傍受法では,裁判官がした通信の傍受に関する裁判の取消し又は変更を請求するこ
1744 とができる。
1745
1746 27
1747
1748