1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 1
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 次の文章(資料@からBまでを含む。)を読んで,後記の設問1及び設問2に答えよ。
8 1. 甲株式会社(以下「甲会社」という。)は,自動車の電子部品を製造する会社である。甲会社は
9 兄弟であるA1とB1が中心となってその設立を行ったものであり,その後も,A1が代表取締
10 役社長,B1が取締役副社長として,甲会社の共同経営を行ってきた。
11 2. 甲会社は,平成7年4月に,多角化の一環として,ゲームソフト開発部門を創設した。その際,
12 B1と親交があったCがゲームソフト開発部門の責任者に就任した。Cの入社を契機として,甲
13 会社の業績は急速に向上した。甲会社は,平成15年4月には,東京証券取引所(マザーズ)に
14 上場を果たした。初値は1560円を記録し,その後も,甲会社の株価は1000円台で推移し
15 た。
16 3. 甲会社の取締役会は5名で構成され,A1及びその妻A2,B1及びその友人B2並びに取引
17 金融機関から出向しているDが取締役に就任していた。
18 4. 甲会社の業績は好調であったが,平成17年の秋以降,過酷な競争にさらされ,その成長に陰
19 りが見え始めた。これとともに,その経営方針をめぐって,A1とB1との間で争いが生ずるよ
20 うになり,甲会社の株価も300円前後と低迷した。
21 5. このような状況下で,自動車部品の総合メーカーである乙株式会社(以下「乙会社」という。)
22 から,甲会社に対し,自動車部品の製造におけるシナジー(相乗)効果を期待して,経営統合の
23 話が持ち込まれた。A1は,自動車部品製造の業界における自力での生き残りは難しいと判断し
24 て,乙会社の提案に前向きの姿勢を見せた。これに対し,B1は,あくまで自主経営を目指すべ
25 きであるとして,B1を中心とする経営陣による甲会社株式に対する公開買付けの実施について
26 外資系ファンドとの交渉を始めた。甲会社をめぐるこれらの動きが新聞で報道されたことを契機
27 として,甲会社の株価は平成18年5月中旬には900円台に急騰した。
28 6. 平成18年6月7日,甲会社は,臨時取締役会を開催して,乙会社に対する募集株式の第三者
29 割当てを決定した。この件に関しては,甲会社の株主総会は開催されていない。かかる決定に際
30 しては,B1らの反対が予想されたため,A1は,B1及びB2が海外出張に出かけた時期を見
31 計らって臨時取締役会を開催することとした。甲会社の定款には,取締役会の招集通知について
32 会日の2日前までに発するとする定めがあり,当該取締役会の書面による招集通知はB1及びB
33 2が海外出張中である6月4日に発され,また,B1及びB2は,同日に電子メールでも招集通
34 知と同内容の連絡を受けた。しかし,B1及びB2は,結局6月7日の臨時取締役会までに帰国
35 することができず,同取締役会では,取締役5名中3名が出席し,出席者全員の賛成で募集株式
36 の発行に係る議案が可決された。資料@は,この臨時取締役会の議事録である。
37 7. 乙会社においても,同日,甲会社株式を引き受ける件について,取締役会で全員賛成の決議が
38 された。株式を引き受けるに当たり,乙会社では,○○法律事務所に依頼し,意見書を受領して
39 いるが,資料Aは,この意見書の抜粋である。また,乙会社は,甲会社の財務状況及び経営統合
40 の効果についての調査を△△監査法人に依頼し,報告書を受領しているが,資料Bは,この報告
41 書の要旨である。乙会社がこの募集株式に対して払い込んだ金額は,平成17年12月7日から
42 平成18年6月6日までの6か月間の甲会社の株価の平均額に90パーセントを掛け合わせたも
43 のとして算定されている。
44 8. 海外出張から帰国したB1は,かかる第三者割当ての決定に対して猛烈に反発した。そこで,
45 A1は,ゲームソフト開発部門の事業譲渡等によるB1の独立を提案してB1と交渉を開始した
46 ものの,その途中に,先の第三者割当てによる募集株式の発行を強行した。結局,B1の独立は
47 実現しなかった。第三者割当ての実施によって,乙会社は,甲会社の議決権の55パーセントを
48
49 2
50
51 保有する株主となった。なお,第三者割当てによる募集株式発行については,適法な公告が行わ
52 れたほか,募集株式の割当て及び払込みについての手続に法令違反はなかった。
53 9. 乙会社の子会社となった甲会社では,平成18年9月29日開催の定時株主総会において,任
54 期満了となったB1及びB2を取締役として再任せず,また,A1及びA2に加えて,新たに乙
55 会社関係者を取締役に選任した。
56 10. 第三者割当ての実施後,甲会社の株価は600円台で推移した。その後,平成18年12月に,
57 甲会社のゲームソフト開発部門の中心であったCがゲームソフト会社の大手である丙株式会社に
58 好条件で引き抜かれ,そのニュースが業界誌に掲載されたことにより,甲会社の株価は急落した。
59 乙会社は,平成18年度(平成18年4月1日から平成19年3月31日まで)の決算に当たり,
60 甲会社の株価が140円と,取得価格の50パーセントを割り込んだことから,監査法人の意見
61 に従い,保有する甲会社株式の評価額について1株当たり300円から140円にする減損処理
62 を行った。
63 11. Xは,平成17年9月1日に乙会社の株式を1単元購入し,以後これを継続して保有している
64 株主である。Xは,平成19年5月に,乙会社に対し,甲会社から第三者割当てを受けた当時か
65 らの乙会社の代表取締役社長Y1及び担当取締役Y2は取締役としての善管注意義務に違反して
66 甲会社の株式を引き受け,同株式の減損処理による損害を乙会社に与えたとして,Y1及びY2
67 に対する損害賠償責任を追及する訴えを提起するように求めた。なお,Xは,損害賠償額として,
68 甲会社1株当たり160円の減損処理額に乙会社の引き受けた株式数を乗じた金額を主張してい
69 る。
70 〔設問1〕
71 甲会社の乙会社に対する募集株式の発行が行われた後において,B1はどのような法律上の措
72 置を執ることができるか,あなたの意見を述べなさい。
73 〔設問2〕
74 Y1及びY2の乙会社に対する責任について,あなたの意見を述べなさい。
75
76 3
77
78 資料@
79 臨時取締役会議事録
80 平成18年6月7日午後1時15分,当本社会議室において,取締役5名中2名欠席のもと取締役
81 会を開催した。取締役社長A1が議長席につき次の議題を付議した。
82 (決議事項)
83 1. 募集株式の発行について
84 取締役社長A1から,下記の条件で乙株式会社に対して募集株式の発行を行うことについて提案
85 があった。質疑応答の後,付議され,出席者全員異議なくこれを決議した。
86 (1)
87
88 発行方法:第三者割当てによる
89
90 (2)
91
92 払込金額:1株当たり300円
93
94 (3)
95
96 発行株式数:550万株
97
98 (4)
99
100 株式の種類:普通株式
101
102 (5)
103
104 払込期日:平成18年6月26日
105
106 (6)
107
108 なお,本件株式の発行後,乙会社は当社の発行済株式総数の55パーセントの株式を保有する
109
110 株主となる。
111
112 以上をもって議題の審議を終了したため,議長は午後2時15分閉会を宣した。
113 この議事の経過の要領及び結果を明確にするため,本議事録を作成し,出席取締役及び出席監査
114 役はこれに記名押印する。
115 平成18年6月7日
116 議長
117
118 4
119
120 取締役社長
121
122 A1
123
124
125
126 取締役
127
128 A2
129
130
131
132 取締役
133
134
135
136
137
138 常勤監査役
139
140 E1
141
142
143
144 社外監査役
145
146 E2
147
148
149
150 社外監査役
151
152 E3
153
154
155
156 資料A
157 ○○法律事務所の意見書の抜粋
158 (略)
159 V
160
161 ソフト開発部門関係
162
163
164 調査結果
165 @
166
167 本件事業部門の概要について
168 本件事業部門は,売上こそ対象会社の全売上額の20パーセントにすぎないが,経常利益の
169 段階では,他の部門がいずれも赤字となっていることから,全体の100パーセントを占めて
170 おり,正に,対象会社の収益のかなめである。
171 本件事業部門の製品(以下「本件製品」という。)は,いわゆる「次世代ゲーム機用ゲームソ
172 フト」と呼ばれるものであるが,対象会社の本製品は,過去において業界で高い評価を得てい
173 る。
174 対象会社がこの事業を行うようになったのは,約11年前に,Cが,当時経営していたゲー
175 ムソフト開発会社が経営難となった際に,大学時代の先輩である対象会社の現経営者の一員で
176 あるB1に援助を要請し,対象会社の支援によって,当該ゲームソフト会社の負債を整理し,
177 対象会社に新設されたゲームソフト開発部門の責任者として入社したことからである。
178 その後,Cに対しては,何回もヘッドハンティングの誘いがあったが,Cは,このような経
179 緯から,B1に対する恩義を感じて,これを断ってきたとのことである。
180 また,これらの具体的な開発作業を行っているのは,対象会社の従業員ではなく,下請契約
181 を締結した個人のSE(システムエンジニア)であるが,企業への帰属意識は低い。
182
183 A
184
185 基本契約の締結状況と内容
186 開発の発注元との間では,必ず契約が締結してあり,その管理態勢についても何ら問題とな
187 るべきところはなかった。
188 また,SEとの下請契約についても,全員との間で締結されており,その内容も含めて特に
189 問題はないと考えられる。
190
191 B
192
193 契約内容における特殊な条項について
194 Cは,ゲームソフト業界において,カリスマゲームクリエイターと呼ばれるほどの人気を誇
195 っており,過去,数々のヒット商品を世に送り出している。
196 そのために,取引先とのソフト開発基本契約においては,Cの継続雇用が契約存続の条件と
197 なっているものが大半である。
198
199
200
201 結論
202 @
203
204 前記のような事情から考えて,今後,対象会社の経営陣が交代することとなった場合には,
205 Cが独立し,又は競争会社へ転職する可能性が高い。なお,対象会社には,割増退職金を受領
206 した者についての退職後1年間の競業禁止規定があるが,その受領は退職者の選択に任されて
207 おり,Cがこれを受領する可能性は極めて低い。
208 なお,開発基本契約は,前述のように,Cの雇用継続を条件とするものが多いが,開発完了
209 後については,この適用はなく,対象会社に対するプレミアムフィーの支払は,Cが退職した
210 としても,一定期間(2年が大半である)継続される。
211
212 A
213
214 さらに,下請のSEの大半は,Cのカリスマ性からこれを慕って集まっている者であり,C
215 の退職後も対象会社との下請契約を締結することは考えにくい。
216
217 5
218
219 以上のような事情を考慮すれば,対象会社において,第三者割当増資を行って,現経営陣,
220 特にB1を更迭することとなれば,Cも退職するおそれが高く,その場合には,本件事業部門
221 において,現状のような収益を今後も継続して上げていくことは非常に困難であると考えられ
222 る。
223 (略)
224
225 6
226
227 資料B
228 △△監査法人の報告書の要旨
229 経営統合に基づく経済的効果について
230 貴社は,本件甲会社との経営統合の経済的効果として,約24億円の相乗効果があるとの判断に基
231 づいて,事業計画を立てている。そこで,その妥当性について,以下検討する。
232
233
234 事業計画書の記載とその妥当性の検証
235
236 (1)
237
238 研究開発費の低減
239 事業計画書には,貴社における研究開発費約200億円のうち,15パーセントを占める電子
240
241 部品関連について,これを半減し,約15億円減額することができるとの記載がある。
242 貴社は,最終商品に関する機密保持の問題もあり,電子部品について独自に研究開発をしてい
243 る。しかし,そのうち多数のものについては,単価や性能の問題から,現在,甲会社製品の供給
244 を受けている。そこで,貴社がその製造する商品に合わせた基本性能を示して,電子部品を甲会
245 社に開発させ,あるいは,甲会社と共同して開発を行うことにより,研究開発費の大幅な低減が
246 可能である。そこで,前記事業計画書記載の研究開発費の低減は,その実現性について不合理な
247 ものとは考えられない。
248 (2)
249
250 開発期間の短縮
251 事業計画書には,(1)記載のような研究開発部門の統合により,新製品に使用する電子部品の開
252
253 発期間がおおむね半分の9か月ほどに短縮することができ,これによって,部品調達コストを2
254 パーセント低減することができるとの記載がある。
255 技術コンサルタントの試算によれば,開発期間が,平均でも現状の半分程度に短縮可能とされ
256 ている。また,今後,甲会社との共同開発が可能な部品の調達額を前提とした場合には,この開
257 発期間短縮による効果は,人件費などを含めて総合すれば,約6億円と試算されている。これら
258 は,高度な専門分野の問題であるが,その判断過程などにおいて,合理性を欠くと考えられる部
259 分はなく,この判断を前提とした事業計画の内容については不合理なものとはいえない。
260 (3)
261
262 製造計画に応じた調達と流通コストの低減
263 事業計画書には,貴社グループ工場の一角に甲会社工場を移転することにより,貴社の生産計
264
265 画に応じて,電子部品の供給を受けることが可能となり,かつ,これによって流通コストを低減
266 することができるとの記載がある。その前提とされた技術コンサルタントの試算による,@)貴
267 社の主力工場に隣接する現在利用されていない貴社第21工場を甲の工場として利用した場合の
268 移転費用の算出,並びに,A)これによる流通コスト削減に関する考え方に不合理なところは見
269 当たらず,これを前提とした削減効果についても不合理なものとはいえない。
270 したがって,これらの効果を約3億円としている事業計画書の記載には,不合理な部分は見当
271 たらない。
272 (4)
273
274 人材交流の実施
275 事業計画書には,研究者の人材交流を通じて,貴社新製品の開発について,部品開発も含めた
276
277 一貫した発想が生まれる可能性があるとの記載がある。
278 確かに,人材交流の実施による効果に関する前記事業計画書の記載に不合理な点は認められな
279
280 7
281
282 いが,具体的な効果の算定は不可能である。
283
284
285 結論
286 以上の検討により,本件甲会社との経営統合に基づく貴社における経済的な相乗効果を約24億
287 円と考えることは,不合理であるとはいえない。
288
289 8
290
291 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
292
293 1
294
295 [民事系科目]
296 〔第2問〕(配点:200〔設問1から設問3までの配点の割合は,10:6:4〕)
297 次の文章を読んで,以下の1から3までの設問に答えよ。
298 T
299
300 XとYの間には,美術工芸品甲の売買契約をめぐって争いがある。以下は,この紛争について,
301 Xの側のJ弁護士とYの側のK弁護士が平成18年5月初めに確認した【弁護士間で確認された
302 事実】,【Xの言い分】,【Yの言い分】及びK弁護士と弁護実務修習中の司法修習生L(以下「L
303 修習生」という。)が平成18年5月末に交わした【K弁護士とL修習生の会話】である。
304
305 【弁護士間で確認された事実】
306 1. 平成17年9月ころ,美術品収集家のXは,Yの勧めに応じて,p国在住のAが制作した美
307 術工芸品を買うことにした。Yは,外国を歩き回って現地の美術工芸品を買い付け,それを輸
308 入して売っている者であり,Aから,既に完成している作品甲の売却の内諾を得て,買主を求
309 めていた。
310 2. Aの作品は,p国の伝統的な祭祀具に独自の工夫を凝らしたものであり,その大きさ・装飾
311 ・塗り等も一つ一つ異なっている。そして,作品の目立たない箇所には,作者の銘・完成年月
312 日・作品番号などが刻印されている。YはAが制作した甲の写真をXに見せて購入を勧めた。
313 3. 9月28日,Yは,Xと代金額・支払時期などについて協議したことを反映させたメモを作
314 成し,Xに交付した。そこには,次のような趣旨が記載されていた。
315 @
316
317 甲の代金額
318
319 600万円
320
321 A
322
323 甲の納品日と場所
324
325 平成17年12月7日,Xの自宅に届ける。
326
327 B
328
329 支払期日
330
331 内金200万円
332
333 申込み時
334
335 中間金200万円
336
337 平成17年12月7日
338
339 残代金200万円
340
341 平成18年1月10日
342
343 C
344
345 支払方法
346
347 中間金は甲の納品時に現金で支払う。それ以外は,○○銀行×
348 ×支店Y名義の普通預金口座に振り込んで支払う。
349
350 D
351
352 所有権移転時期
353
354 甲の所有権は代金完済時にXに移転するものとする。
355
356 4. 9月28日,Yはメモを交付する際,
357 「甲は,私が費用を払って船便で日本に輸送するが,p
358 国からの船便は月に2便程度で,輸送には1か月前後を要する。納品は,メモのとおり12月
359 初旬を見込んでいるが,船便の状況によっては,1か月程度は遅れるかもしれない。」と説明し
360 た。これに対して,Xは,
361 「それくらいの遅れなら構わないが,どんなに遅くとも来年(平成1
362 8年)2月末日までに甲を納品して欲しい。」と述べただけで,Yの申込みに対して確定的な返
363 事をしなかった。
364 5. 10月1日,Xは,Yの指定する銀行口座に,あらかじめ預かっていた振込用紙を用いて2
365 00万円を振り込んだ。
366 6. 10月6日,Yは,Aに国際電話で甲の売買契約の申込みをして,Aの承諾を得た。そして,
367 同日,甲の代金の一部をAの銀行口座に送金した。
368 7. 10月28日,Yは,他の美術工芸品の買い付けを兼ねて再びp国に渡航した。Yは,Aに
369 代金の一部を支払って甲の引渡しを受け,翌日,B運送会社に船便で甲をp国から日本に向け
370 て送ることを依頼し,これを引き渡した。この時点では甲に傷はなかった。
371 8. 12月5日に日本でBから甲を受け取ったYは,同月7日,X宅に甲を持参し,Xは,準備
372 した中間金200万円をそろえて応対した。しかし,その場で梱包を解いて,作者銘などの刻
373 印を調べようとしたところ,甲の扉の可動部分の根元に亀裂と塗りの剥落があって開閉に支障
374 があり,Xが扉を慎重に開けようとした際に,支持部品が折れてしまった。このため,Xは,
375
376 2
377
378 甲の受領を拒み,用意をしていた中間金200万円を支払わなかった。Yは,仕方なく甲を持
379 ち帰り,運送品に傷が生じていたことをBに連絡し,Bから事実関係を調査するとの回答を得
380 た。
381 9. 12月8日,Yは,同業者の友人に甲を鑑定してもらい,甲の価格は,傷があれば300万
382 円程度になってしまうだろうとの評価を聞いた。Yは,その事実は伏せて,Xに,急いでp国
383 に渡航して甲の修理が可能かどうかをAに尋ねてみるので待って欲しい旨を依頼し,この点で
384 はXの同意を得た。しかし,
385 「甲の残代金をAに支払う必要があるので中間金を直ちに支払って
386 欲しい。」というYの懇請を,Xは拒絶した。
387 10. 12月10日,p国に渡航したYは,自分が工面した金でAに甲の残代金を支払った。Yが,
388 持参した甲の破損部分の写真をAに見せて尋ねたところ,Aは,
389 「傷が分からなくなるような修
390 理は可能であるが,甲をいったん分解し,傷のない部品と取り替えて組み立て直し,全体の塗
391 装もやり直す作業が必要なので,修理には約2週間の期間と50万円の費用を要する。仕事が
392 詰まっているため,早くても修理に取り掛かれるのは1か月先になる。」と答えた。
393 11. 12月12日,帰国したYはX宅を訪れて修理に要する費用や期間について説明し,修理品
394 の納品は早くても2月半ば以降になると述べた。これに対して,Xは,傷のある甲は受け取れ
395 ないと述べた。甲の修理をAに依頼するのかどうかについて話を詰める前に,Yが,中間金の
396 支払と甲の修理費用の前払を求めたところ,Xは激怒し,
397 「どれだけ遅くても来年2月末までに,
398 傷を修理した甲を持ってこなければ,支払済みの200万円は返してもらうし,損害賠償も払
399 ってもらうから覚悟しておけ。」と述べてYを追い返した。
400 12. 12月25日,BからYに荷物の破損に関する相談があり,Bは,Yに対して,鯨が輸送船
401 にぶつかるというこれまでに経験のない事故があったため甲が破損したと推測されると説明し
402 た上,日本とp国の間の往復の船便の輸送料及び甲の修理代金50万円はBが支払う旨の約束
403 をした(なお,BからYに上記支払約束を確認する旨の書面が平成18年1月末に届いている
404 が,甲の破損の経緯は,その後も不明である。)。そこで,Yは,Aに対して,国際電話をかけ,
405 「甲を運送業者Cに頼んで航空便で送るので,早急に修理して欲しい。修理を完了した甲は,
406 あなたのところに取りに行って船便で日本に送るようCに頼んであるので,修理の完了をCの
407 p国現地事務所に連絡して欲しい。修理代金は,修理済みの甲の受領確認と発送の連絡がCか
408 らあり次第送金する。」旨を述べた。Yは,Aの承諾を得たので,翌日,甲をCに取りに来ても
409 らって,A宛に航空便で送った。
410 13. 平成18年1月25日,Yは,Cから,
411 「修理済みの甲をAより受け取り,直近の船便で送る。
412 日本への到着予定は3月5日になる。」との連絡を受けた。Yは,修理代金50万円をAの銀行
413 口座に送金した。さらに,Yは,甲の修理が完了した旨をXに電話で連絡した。Xが甲を航空
414 便で送るよう求めたのに対して,Xが費用を負担してくれるなら手配すると返答したところ,
415 Xは「それなら結構だ。」と言って電話を切った。そこで,Yは,Cに運送方法の変更を指示せ
416 ず,甲は船便で日本に輸送された。
417 14. 3月5日,Yは,Cから甲を受け取り,梱包を解いて傷がないことを確認した。同月7日,
418 Yは,甲をX宅に持参して,受領と引換えに残代金400万円の支払を求めたが,Xは,契約
419 は既に解除したとして,甲の受領も残代金の支払も拒絶した。
420 【Xの言い分】
421 甲は,Dからの依頼を受けて平成18年5月に開催されるある美術展に出展するため,少し高
422 いと思ったが,平成17年12月には納品できるということだったので買った。Dの主催してい
423 る美術展は有名で,今回,甲のような美術工芸品がテーマとなっていたことは,Yも知っていて
424 当然だし,だからこそYは私に甲を売り込んできたに違いない。甲が2月中に引き渡されなかっ
425 たため,出品物の図録撮影に間に合わず,美術展への出展は不可能になった。これでは,何のた
426
427 3
428
429 めに高い買物をしたのか分からない。
430 Yが甲を持参したのは,約束した納品期日を3か月も過ぎている。こんなに遅れたのは,甲に
431 傷が付いたためだが,その原因はBの運送ミスにあり,そんな業者を選んだYに責任がある。そ
432 れなのに,傷物を持ってきた挙げ句,中間金の支払が遅れているとか,私に修理代の50万円を
433 負担しろなどと言ってきたのだから論外である。私は,甲の修理をAに依頼したり,修理品を船
434 便で送ることには同意していない。Aへの修理依頼や船便での運送はYが自らの判断でやったこ
435 とである。遅くとも2月末には納品してくれなければ困ることは,契約前に言っておいたし,1
436 2月12日にも警告した。さらに,1月25日にYが電話してきたときにも,私はYに甲をp国
437 から航空便で送れと言った。傷の修理に時間がかかったのに,こちらの正当な要求を無視して,
438 更に1か月もかけて船便で送るとは,人を馬鹿にしている。
439 1月25日に,私は,船便で送るような態度をとるなら,もうこの契約は結構だ,と今一度警
440 告した。私は,2月末までは残代金400万円を支払う準備をしていたのだが,2月末に甲が届
441 かなかったことでこの契約は終わっているから,支払っていた200万円を早く返して欲しい。
442 また,私は,甲を自宅で保管するために,昨年(平成17年)の10月30日に20万円する特
443 注のアクリルケースを専門業者Eに注文していた。これが不要になったので,3月3日に,私は
444 Eに8万円を支払って契約を合意解除せざるを得なかった。美術品収集家としての私の評判は地
445 に落ちた上,美術展が開催される20日間,甲をDに貸していたら得られたはずの10万円の賃
446 料を得ることもできなくなった。こうした損害は,Yにはきちんと賠償してもらいたい。
447 【Yの言い分】
448 5月にD主催の美術展があることは,もちろん知っているが,そこにXが甲を出展するなどと
449 いう話は初耳である。
450 そもそも,甲に傷が付いたことについて,私には責任がない。甲の破損は不可抗力によるもの
451 である。仮にBに過失があったとしても,私は甲が壊れやすい高価品であることをBに示してき
452 ちんとした梱包の依頼をしていたのだから,専門家のBを信頼して任せた私のどこに落ち度があ
453 るというのか。だからこそ,甲の破損についてBは,日本とp国の間の往復の船便の輸送料及び
454 甲の修理代金50万円を支払うと言っている。Bは大企業であって,事後処理についての交渉態
455 度も誠実で,Xの言うようないい加減な業者ではない。
456 私としては,本来なら甲をそのままでXに渡せば十分だったはずで,私が航空運賃や修理代金
457 50万円を取りあえず立て替えてまでAに修理を依頼したのは,修理を求めるXの指示に従って
458 それに誠実に応えたためである。修理によってこの程度の納品の遅れが出ることは,Xにも伝え
459 てあり,むしろXがそれを了解した上で,強く甲の修理を求めていたのである。
460 その後も,私は,修理のために甲を航空便で送るなど,速やかな納品のためにできる限りのこ
461 とをやった。3月7日の納品は,むしろ最善の努力の結果である。Xは,12月12日に会った
462 ときにも,1月25日に電話連絡をした折にも,確かに2月中の納品を求めていた。しかし,美
463 術展に間に合わなくなるなどという事情については,Xは何も言っていなかった。また,航空便
464 は船便の何倍も費用が掛かる。契約では船便で送ることになっているから,船便で送った甲が届
465 くのが3月初めになったことには何の問題もない。運送費用の増加分を負担もせずに航空便で送
466 れなどと要求するのは身勝手であり,Xも最終的には船便で結構だと無茶な要求を引っ込めたで
467 はないか。
468 また,3月7日に至るまで,Xは,一度も契約を解除すると明言したことがない。3月7日に
469 なって唐突に解除を主張するのは,私が努力してきたことを無意味にしてしまうもので,全く理
470 不尽である。
471 逆に,私は,Aに甲の代金を支払うため,資金が必要だった。こうした事情は,Xの要望を容
472 れて代金を分割払にした経緯から,Xも十分承知していたはずである。それにもかかわらず,X
473
474 4
475
476 が中間金を支払ってくれなかったので,私は自分で支払資金を別途工面しなければならず,非常
477 に迷惑した。本来文句を言えないはずの甲の傷を理由に,甲の受取を拒絶して中間金を支払わな
478 かったXの態度こそ不当である。
479 【K弁護士とL修習生の会話】
480 K弁護士: 今月初めに,X側のJ弁護士との間で事実の確認をした上で,折り合いがつかないか
481 と話し合ってみましたが,Xは,あくまでも裁判で決着をつけたいようです。Yのため
482 に,Xがどういう主張をしてくるかを予想した上で,それに対して,Yとしてはどう反
483 論するかを考えておかなければなりません。そこで,本件について検討し,その結果を
484 私に報告して欲しいのです。
485 L修習生: 先生,それでは,判例の考え方に沿って,まずは,Xが主張してくる法的構成を予測
486 して,それへの対応を考えればよいのですか。
487 K弁護士: 基本はそうですが,判例と異なっていても,通説や有力説があって,Xに有利となれ
488 ば,X側は,それに沿って法的構成を工夫してくることも考えられます。
489 L修習生: そうなると,判例と学説の対立があれば,それも整理しておく必要がありますね。
490 K弁護士: 本件と関係ない点についてまで詳しく整理・検討したゼミの報告みたいなものを書い
491 ていただく必要はありません。あくまで確認された事実に照らして,お互いにどういう
492 主張をすることになるのかを中心に,簡潔にまとめて欲しいのです。また,こちらの言
493 い分をきちんと主張するのは当然ですが,Xの言い分が仮に認められた場合についても,
494 さらに,こちらとしては対応を考える必要がありますね。
495 L修習生: 例えば,私は,Yの言い分に沿ってYには帰責事由がないことを強く主張しようと考
496 えていますが,裁判所に,帰責事由がないとはいえない,と判断される場合の対応も考
497 える,ということでしょうか。
498 K弁護士: それは一つのポイントですね。その点は,契約解除の根拠の一つにも関係してきます
499 ね。それについて,私には,気になっている点があります。近時,債務者の帰責事由を
500 必要とせずに契約の解除ができるという考え方も,学説では有力に主張されているよう
501 ですね。
502 L修習生: はい,以前から,履行遅滞による解除に帰責事由は不要とする見解がありますし,近
503 ごろは,債務不履行一般について重大な債務不履行があれば帰責事由がなくても解除が
504 できるという見解もあります。ただ,こうした見解を細部まで正確に理解して理論的な
505 反論を準備するのは,私には少し荷が重いです。
506 K弁護士: 分かりました。ほかにも学説はあるようですから,そういう理論的な問題は,X側の
507 具体的な主張を見た後で,一緒に検討しましょう。場合によっては,友人の大学教授に
508 話を聞いてみます。君は,仮に債務不履行を理由とする解除には帰責事由を要しないと
509 いう見解が採用されたとしても,確認された事実に即して考えた場合,Xは本件契約を
510 解除できない,という主張が可能かどうかを考えてください。
511 L修習生: はい。ところで,先生,Yの側から未払代金等の支払を求める反訴を起こすことも検
512 討しなければいけませんか。
513 K弁護士: その点は私が検討しますから,書かなくてよいです。いろいろ言いましたから,課題
514 を整理しましょう。まず,(a)支払済み代金200万円の返還と18万円の損害賠償を請
515 求するためにXが主張してくると予想される様々な実体法上の法的構成を,確認された
516 事実を前提として検討してみてください。次に,(b)Yはこれに対して,どのように反論
517 すればよいかを考えてみてください。先ほど言いましたように,帰責事由がなくても債
518 務不履行を理由とする解除ができるという解釈論の当否自体の検討はしなくてもよいで
519 す。以上の2点について報告書を書いてきてください。
520
521 5
522
523 〔設問1〕
524
525 あなたがL修習生であるとして,K弁護士が指示した課題(a)及び(b)についてどのよ
526
527 うな報告をすべきか,検討の結果を述べなさい。なお,本件については,すべて日本法が適用さ
528 れるものとする。また,解答に当たっては,後記U以下の事実は考慮しないこと。
529 U
530
531 前記TのXY間の売買契約に関して,平成18年6月15日,XがYに対して訴えを提起した
532 ところ,その訴訟は,次のように推移した。
533 1. Xは,Yに対して,甲の売買契約を解除したとして,原状回復として支払済みの売買代金相
534 当額200万円及びこれに対する平成17年10月1日から支払済みまで年6分の割合による
535 利息,並びに債務不履行に基づく損害賠償として250万円及びこれに対する訴状送達の日の
536 翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求めて,訴えを提起した。なお,
537 訴状は平成18年6月22日にYに送達されている。
538 2. Xの訴状には次のような記載があり,Xは第1回口頭弁論期日において訴状の内容を陳述し,
539 また,同期日において甲4号証その他の書証を提出した。なお,甲4号証にはF名義の署名が
540 あるだけで,捺印はされていない。
541
542 【訴状】
543 <前略>
544 第1
545
546
547 請求の趣旨
548 Yは,Xに対し,200万円及びこれに対する平成17年10月1日から支払済みま
549 で年6分の割合による金員を支払え
550
551
552
553 Yは,Xに対し,250万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで
554 年6分の割合による金員を支払え
555
556
557
558 訴訟費用は被告の負担とする
559
560 との判決並びに仮執行の宣言を求める。
561 第2
562
563 請求原因
564
565 <中略>
566
567
568 平成17年12月12日,XはYに対して,「どれだけ遅くても来年2月末までに,
569 傷を修理した甲を持ってこなければ,支払済みの200万円は返してもらうし,損害賠
570 償も払ってもらう。」と述べて,修理済みの甲の引渡しを催告すると同時に,平成18
571 年2月28日の経過をもって甲の売買契約を解除する旨の意思表示をした。
572
573 <中略>
574
575
576 Xは,Xが甲を購入し美術展に出展する話を聞き付けた同好の美術品収集家Fから,
577 平成17年11月上旬ころから,美術展終了後に甲を譲り渡して欲しい旨の懇請を受け
578 ていた。そして,同年11月28日,Xは,Fとの間で,美術展終了後の平成18年6
579 月10日を引渡し期日として,甲を850万円で転売する旨の契約を締結したが,Yが
580 甲を適時に引き渡さなかったために,購入代金600万円と転売代金850万円の差額
581 250万円を得ることができなかった。
582
583 <中略>
584 第3
585
586 証拠
587
588 <中略>
589
590
591 請求原因8の事実は,F名義の文書(甲4号証)で証明する。
592
593 <後略>
594
595 6
596
597 【F名義の文書(甲4号証)】
598 平成17年11月22日
599 X様
600 本日はお目にかかることができず,残念でした。
601 先日来お願いしておりますように,甲を是非ともお譲り下さい。来年の6月8日までに8
602 50万円を用意することができる予定ですので,同日以降に代金の決済と甲の引渡しを行う
603 ということで,お願いできれば幸いです。改めて御連絡いたしますので,御検討のほどよろ
604 しくお願いいたします。
605 F(署名)
606
607 3. Yは,第1回口頭弁論期日において,あらかじめ提出していた答弁書に従って,
608 「Xの請求を
609 いずれも棄却するとの判決を求める」との請求の趣旨に対する答弁をした上で,
610 「旧知のFに甲
611 の購入の事実を問い合わせたところ,
612 『覚えがない』とのことであったので,訴状記載の請求原
613 因8の事実は否認する」と述べた。そして,
614 (陳述@)
615 「『覚えがない』と言っているFがこのよ
616 うな文書を作成したとは考えられないので,甲4号証の成立も否認する。」との陳述をした。
617 4. また,Yは,第1回口頭弁論期日において,訴状の請求原因5の記載について「『どれだけ遅
618 くても来年2月末までに,傷を修理した甲を持ってこなければ,支払済みの200万円は返し
619 てもらうし,損害賠償も払ってもらう。』とのXの発言があったことは認める。」という陳述を
620 した。第1回口頭弁論期日の後,弁論準備手続が開始され,同手続は計3回の期日をもって終
621 結した。
622 その後,Fの証人尋問並びにX及びYの当事者本人尋問を行うために,第2回口頭弁論期日
623 が開かれたが,この期日の冒頭の弁論準備手続の結果陳述に引き続いて,Yは(陳述A)
624 「訴状
625 の請求原因5記載のXの発言のうち,
626 『支払済みの200万円は返してもらう』旨の発言があっ
627 たことは否認する。」との陳述をした。そして,
628 (陳述B)
629 「仮に訴状の請求原因5記載のとおり
630 のXの発言があったとしても,それが解除の意思表示に該当することは争う。」との陳述もした。
631 なお,受訴裁判所は,弁論準備手続における両当事者との協議の結果,この第2回口頭弁論
632 期日をもって弁論を終結する予定にしている。
633 〔設問2〕
634
635 下線部のYの陳述@からBまでに関する次の設問に答えなさい。なお,設問はXが訴
636
637 状で採用した実体法上の法律構成の当否を問うものではない。
638 (1)
639
640 陳述@の訴訟法上の効果を,Yが甲4号証の成立について認否をしなかった場合と比較し
641
642 て,論じなさい。
643 (2)
644 V
645
646 陳述AとBの訴訟法上の効果(攻撃防御方法としての許容性を含む。)を論じなさい。
647
648 以下の問題は,前記Uの訴訟を前提としている。ただし,第2回口頭弁論期日が開かれる前で
649 あるものとして答えなさい。
650 Yは,第3回弁論準備手続期日が終了した後に,このまま訴訟を続けると業界の噂になって,
651 他の顧客との取引に支障が出かねないと考え,ある程度の譲歩をしてもよいので,何とか訴訟を
652
653 7
654
655 終わらせてほしいと,K弁護士に相談した。そこで,K弁護士は,X側のJ弁護士に協議を申し
656 入れた。K弁護士は,J弁護士から,Xが「以前から欲しいと思っていたY所有の仏像乙を手に
657 入れることができるのであれば,訴訟にはこだわらない。」と述べているという話を聞かされたの
658 で,そのことをYに伝えたところ,Yは「乙であれば手放してもよい。」とK弁護士に述べた。こ
659 のことをJ弁護士に伝えると,J弁護士から,次のような提案があった。
660 「YがXの請求債権が存在することを認めた上で,乙を代物弁済としてXに譲渡するのであれ
661 ば,訴訟については矛を収めることにする。その方法だが,
662 (方法@)Yが1週間以内にXの自宅
663 に乙を持参すれば,その場で訴えの取下げを合意する契約を結び,きちんとした契約書を作る。
664 その方法が嫌であれば,
665 (方法A)次回の口頭弁論期日にYが乙を持参して,法廷でXに手渡して
666 くれれば,請求債権はそれで消滅したということで,その期日に請求の放棄の手続をとる。ある
667 いは,
668 (方法B)同じく法廷で乙を授受することを前提として,YがXの請求債権を認め,これが
669 代物弁済によって消滅したこと及びXとYの間に本件に関し一切の債権債務が存在しないことを
670 相互に確認する旨の訴訟上の和解をするということでも結構だ。」
671 〔設問3〕
672
673 K弁護士の立場で,@からBまでのいずれの方法をXの側に求めるべきかにつき,訴
674
675 訟法上の観点から論じなさい。ただし,訴訟費用の問題を論ずる必要はない。
676
677 8
678
679