1 平成19年新司法試験論文式試験問題出題趣旨
2 【公法系科目】
3 〔第1問〕
4 本問は人権と統治を組み合わせた問題となっており,
5 仮想的な事案をめぐって3つのテーマ
6 が問われている。
7
8 それは,
9 法律と条例の関係,
10 人権の保障と民主主義の関係,
11 そして人権の保
12 障と安全・安心の確保の関係である。
13
14
15 本事案で問題となっている「まちづくり」条例は,
16 市の処分に関して,
17 いわば2段階構造を
18 採っている。
19
20 第1段階では,
21 住民自治を具体化するものとして,
22 「周辺住民の過半数の同意」
23 による開発事業協定の締結等の条件が課せられている。
24
25 このような条件が満たされていない場
26 合,
27 第2段階として,
28 市は,
29 条例第18条第2項各号のいずれかに該当すると認めるときには,
30
31 当該開発事業を許可しないことができる。
32
33
34 本事案では,
35 こういった条例の仕組みをきちんと理解した上で,
36 条例自体の合憲性と不許可
37 処分の合憲性について論ずることが求められている。
38
39
40 条例自体の合憲性に関する主要な問題は,
41 「法律と条例の関係」である。
42
43 徳島市公安事件上
44 告審判決がポイントとなるが,
45 まず,
46 当該判決を正確に理解していることが求められる。
47
48 その
49 上で,
50 法律と条例の目的・趣旨・効果をどのように比較するのか,
51 どのような点で法律の範囲
52 内である/ない,
53 という結論を導くのかについて論じることが,
54 必要である。
55
56
57 さらに,
58 人権の保障と民主主義の関係というテーマにかかわるが,
59 第 1 段階での「周辺住民
60 の過半数の同意」要件が,
61 実際上,
62 いわゆる禁忌施設への拒否として機能することも,
63 問題と
64 なる。
65
66 つまり,
67 このような要件を置くことの合憲性である。
68
69
70 不許可処分の違憲性に関しては,
71 安全・安心の確保と人権の保障との兼ね合いが問題となる。
72
73
74 ここでは,
75 B教団の「危険性」に関する評価が焦点となるが,
76 資料に掲げられた事実の一面だ
77 けをとらえて,
78 危険だから不許可は合憲,
79 危険でないから不許可は違憲といった資料の読み方
80 では不十分である。
81
82 本問で前提となっているのは,
83 教団の「危険性」への懸念にも一定の理由
84 があるが,
85 その有無・程度等には不確実な面もあるといった状況である。
86
87 この文脈で,
88 審査基
89 準論が意味を持つ。
90
91 審査基準論が用いられる文脈,
92 意義・内容を正確に把握した上で検討する
93 ことが求められる。
94
95
96 条例自体の違憲性及び不許可処分の違憲性に関しては,
97 どの人権が侵害されているのかが問
98 題となる。
99
100 本事案において専ら問題になるのは,
101 宗教的行為の自由である。
102
103 ここでも,
104 熟慮し
105 た主張と検討が求められる。
106
107 本事案の条例や不許可処分において,
108 居住の自由そのものが制限
109 されているわけではない。
110
111 都市計画法や「まちづくり条例」一般が示しているように,
112 自己の
113 所有する土地に関してその利用形態が制限されることはあり得る。
114
115 居住・移転の自由や財産権
116 への侵害であるゆえに違憲であると主張するためには,
117 更に広く深い説得力のある論述が必要
118 となる。
119
120
121 まず設問1においては,
122 これらの問題に関して,
123 判例・学説を正確に理解した上検討し,
124 適
125 切な結論を導くとともに,
126 説得力のある理由を示すことが求められている。
127
128 法律との抵触や,
129
130 宗教的行為の自由の侵害を抽象的に指摘しただけで,
131 直ちに審査基準論を展開するというので
132 は,
133 不十分である。
134
135 まず,
136 どのような点で,
137 どのような抵触や侵害が生じているのかを,
138 B教
139 団の立場から具体的に論じることが必要である。
140
141
142 設問2におけるC市側の主張では,
143 設問1におけるほど詳細な論述までを求めているわけで
144 はない。
145
146 その主張の理由付けの詳細が設問2での自説の検討において述べられていれば,
147 それ
148 でもよい。
149
150
151 その上で,
152 設問2では,
153 設問1でのB教団側の主張と設問2でのC市側の主張を踏まえた上
154
155 -1-
156
157 で,
158 「あなた」の見解を展開することが求められている。
159
160 「あなた」の見解は,
161 必ずしも,
162 B教
163 団側の主張かC市側の主張か,
164 という二者択一であるとは限らない。
165
166 「あなた」の見解は,
167 そ
168 れらとは異なる「第3の道」となることもあり得る。
169
170 例えば,
171 徳島市公安事件上告審判決の判
172 断には問題もある。
173
174 同判決の判断が公安条例の場合を超えて,
175 他の条例の場合にどこまで妥当
176 するのかは,
177 必ずしも明確ではない。
178
179 ここで,
180 この問題が論じられ,
181 判例とは異なる「あなた」
182 の見解が主張されることもあり得よう。
183
184 また,
185 B教団側の主張あるいはC市側の主張と「同じ
186 である」という答えでは,
187 不十分である。
188
189 なぜ,
190 一方の主張に賛成するのかについての説得力
191 のある理由が述べられていなければならない。
192
193
194 〔第2問〕
195 本問は,
196 留学の在留資格に基づいて日本の大学に在学する外国人に対し風営店でのアルバイ
197 トを理由として退去強制令書が発付され,
198 収容されたことについて,
199 当該外国人の弁護士とい
200 う立場から論じさせるものである。
201
202 問題文と資料から基本的な事実関係,
203 法令の趣旨を読み解
204 き,
205 説得力ある理由とともに,
206 適切な結論を導くことが問われている。
207
208 法科大学院における基
209 礎的な学習を前提として,
210 具体的な事例で,
211 適切な救済手段や訴訟方法を選択し,
212 それと結び
213 ついた本案の主張を展開する力を試すものである。
214
215
216 設問 1 の(1)は,
217 収容やその後に予定される送還を停止するための法的手段に関する基本
218 的理解を問うものである。
219
220 例えば,
221 退去強制令書の発付が処分に当たることを説明した上で,
222
223 その執行停止を解答する場合には,
224 発付処分の取消訴訟を提起することに加えて,
225 行政事件訴
226 訟法第25条所定の要件に即して検討する必要があろう。
227
228 同条第2項の「重大な損害」という
229 要件については,
230 学業継続の支障,
231 事後的な損害賠償による損害回復の困難性,
232 人格の尊厳へ
233 の侵害など,
234 具体的根拠を伴った解釈論が望まれる。
235
236 収容の継続と送還とを区別した上でそれ
237 ぞれの部分についての執行停止の要否,
238 可否を論ずるといった配慮も期待されるところである。
239
240
241 以上のような発付処分の取消訴訟と執行停止の組合せではなく,
242 それ以外の方法を選んで解
243 答する場合には,
244 その方法が現行法上可能かつ適切であり,
245 その方法によって確実に収容や送
246 還が停止できることを示すことが重要である。
247
248 例えば,
249 差止訴訟及び仮の差止めの方法を選択
250 するのであれば,
251 取消訴訟及び執行停止の可能性との関係をどう考えるかの検討は不可欠であ
252 ろう。
253
254
255 設問1の(2)は,
256 退去強制事由に該当するという行政判断を争うための訴訟選択に関する
257 問題である。
258
259 ここでは,
260 取消訴訟の対象を認定と裁決のどちらとすべきかが,
261 問われている。
262
263
264 入管法所定の審理の仕組みに関しては,
265 資料に示されているように,
266 様々な見解が存在すると
267 ころであるが,
268 本問では,
269 2つの行為の関係を原処分と裁決の関係として解釈することを前提
270 とした上で,
271 原処分主義と解釈して認定の取消訴訟を提起すべきか,
272 それとも裁決主義と理解
273 して裁決の取消訴訟を提起すべきかという点について,
274 解答者の立場を示すことが求められて
275 いる。
276
277
278 設問2は,
279 実体法の問題として,
280 入管法所定の退去強制事由に該当するという行政判断の当
281 否を問うものである。
282
283 これは,
284 留学の在留資格に係る退去強制事由の解釈とその具体的適用に
285 関するものであり,
286 行政庁の広汎な裁量権が問題となるいわゆる在留特別許可に関するもので
287 はない。
288
289 解答に当たっては,
290 関係する条文の構造,
291 問題文や資料で示された入管政策や入管実
292 務における解釈を正確に把握した上で,
293 検討を進めることが期待される。
294
295
296 入管は,
297 就労しつつ勉学するという留学の形態を原則として認めない基本政策を前提に,
298 資
299 格外活動を限定的に捉えている。
300
301 その上で,
302 在留目的を変更したと認められるような態様で資
303 格外活動がなされていれば,
304 第24条の「専ら行つている」という要件に該当すると解釈する
305 のである。
306
307 これによると,
308 量の面では,
309 滞在費の大半がアルバイトで賄われていれば上記要件
310 に該当し,
311 質の面では,
312 風営店でのアルバイトは一律該当と解釈される。
313
314
315 -2-
316
317 こうした行政判断について実体法上の検討を行うにあたっては,
318 まず,
319 本件のアルバイトが
320 第19条に違反するものであるのかを,
321 問題文,
322 資料に示された事実関係に即して検討するこ
323 とが必要である。
324
325 その上で,
326 第24条の「専ら行つている」の要件該当性を検討することとな
327 ろう。
328
329 その際には,
330 第19条と第24条の関係に言及することが望まれる。
331
332 論じ方としては,
333
334 第24条で退去強制について第19条違反だけでなく報酬活動を「専ら行つている」という
335 要件を加えており,
336 また,
337 単なる第19条違反には軽い刑罰を規定する一方で同条違反の活動
338 を「専ら行つている」場合には重い刑罰を定めているなど,
339 入管法が2つの要件を書き分けて
340 いる点に着目することが考えられよう。
341
342 また,
343 法律には存在しない「在留目的」といった語を
344 用いてその実質的な変更を問題とする入管実務の解釈方法について検討したり,
345 風営店でのア
346 ルバイトを一律禁止とする入管の見解に対し,
347 本件の事実関係に即して,
348 アルバイトに至った
349 経緯,
350 学業成績,
351 出席状況,
352 アルバイトの継続性,
353 アルバイトの具体的内容などを取り込んだ
354 解釈論を展開することも考えられる。
355
356
357 以上のように,
358 具体の法制度の趣旨を分析した上で,
359 行政判断を多角的かつ柔軟に検討する
360 ことが求められているのである。
361
362
363 【民事系科目】
364 〔第1問〕
365 本問は,
366 甲会社において,
367 A派とB派の対立が生じている場面で,
368 A派主導で乙会社に対す
369 る第三者割当てによる募集株式の発行が行われた事例を基に,
370 甲会社及び乙会社における法律
371 問題を問うものである。
372
373
374 〔設問1〕は,
375 甲会社において,
376 第三者割当て実施後に,
377 B派が執り得る対抗手段を解答さ
378 せる問題である。
379
380 甲会社の募集株式の発行の手続等の瑕疵を見付け出し,
381 それに基づき,
382 いか
383 なる法的手段が可能かを検討させるものである。
384
385 具体的には,
386 新株発行無効の訴えの提起が許
387 されるかどうかの検討が必要である。
388
389 会社法は,
390 新株発行無効の訴えの制度を定めているが(会
391 社法第828条第1項第2号),
392 無効原因については規定されておらず,
393 どのような瑕疵を基
394 に,
395 新株発行無効の訴えが認められるかが問題となる。
396
397 本件では,
398 発行直前の市場価格を大き
399 く下回る価額での発行が行われているが,
400 募集株式の発行に当たって株主総会の決議を経てい
401 ないため,
402 有利発行規制に違反するかどうかが論じられなければならない。
403
404 また,
405 本件では,
406
407 募集株式の発行に関する取締役会決議はB派の取締役が海外出張中に行われたので,
408 かかる取
409 締役会決議の効力が問題となり得る。
410
411 さらに,
412 本件の第三者割当てがA派の支配権を維持する
413 ための不公正発行であったといえるかどうかも問題である。
414
415 これらの募集株式の発行に関する
416 瑕疵が認められるとするならば,
417 続いて,
418 それらが募集株式の発行の無効原因となるかが論じ
419 られなければならない。
420
421 募集株式の発行に瑕疵があった場合における募集株式の発行の効力に
422 関する判例及び学説を踏まえつつ,
423 本件特有の事情を考慮して,
424 自己の見解を述べる必要があ
425 る。
426
427 なお,
428 不公正な払込金額で株式を引き受けた者の責任(会社法第212条第1項)を乙会
429 社に問うことができるかどうかも問題となる。
430
431
432 〔設問2〕は,
433 第三者割当てにより甲会社株式を引き受けた乙会社の取締役の会社に対する
434 責任の有無を解答させる問題である。
435
436 甲会社の株式を引き受けたものの,
437 その後保有する株式
438 の価値が大きく下落した場合に,
439 どのような責任が乙会社の取締役に発生するか(若しくは発
440 生しないか)を検討させるものである。
441
442 具体的には,
443 会社法第423条が定める任務懈怠の責
444 任の有無が判断されなければならない。
445
446 任務懈怠の責任と善良なる管理者の注意義務との関係,
447
448 さらに,
449 注意義務違反の判断基準を理解しているかが問われている。
450
451 その際に,
452 経営判断の原
453 則の意義についての的確な記述が求められる。
454
455 その上で,
456 経営判断の原則を本件にどのように
457 適用するかが論じられる必要があるが,
458 弁護士事務所の意見書と監査法人の報告書はそれぞれ
459 異なる視点から作成されており,
460 これらの資料を読み解き,
461 乙会社の取締役の責任の有無につ
462 -3-
463
464 きどのように考えるのかについて,
465 説得力のある解答が期待されている。
466
467 取締役の責任がある
468 とする場合には,
469 賠償すべき損害額についても検討する必要がある。
470
471
472 〔第2問〕
473 本問は,
474 売買契約締結後・引渡し前にその目的物(特定物)に瑕疵が生じた場面において,
475
476 民法上の様々な法的構成と争点,
477 民事訴訟における訴訟行為をめぐる諸問題についての基本的
478 な理解を問う総合問題である。
479
480 本問は,
481 比較的長文の事実及び当事者の主張から法的な問題点
482 を発見する能力,
483 当事者の望むところを的確に法的に構成する能力,
484 そうした法的構成にとっ
485 て意味のある事実を過不足なく拾い出す能力,
486 相手方の主張の問題点や中心的な争点を明らか
487 にする能力,
488 具体的な事実に即して抽象的な法原則や法制度を正確に理解し法規定を解釈・適
489 用する能力などを多面的に問うている。
490
491 これらに加えて,
492 論じるべきことを論理的かつ明快に
493 構成した文章で表現する能力が備わっているかについても評価の対象としている。
494
495
496 設問1は,
497 課題(a)として,
498 買主Xが支払済みの代金200万円の返還と18万円の損害
499 賠償を請求するために,
500 どのような法的構成で主張してくるかを検討するよう求めている。
501
502 代
503 金返還を主張する法的構成として中心となるのは,
504 履行遅滞を理由とする解除に基づく原状回
505 復請求(民法第541条)であるが,
506 定期行為の履行遅滞による解除(民法第542条)や瑕
507 疵担保を理由とする解除(民法第570条)の構成も考えられる。
508
509 損害賠償については,
510 一般
511 の債務不履行に基づく損害賠償(民法第415条)と瑕疵担保を理由とする損害賠償(民法第
512 570条)が考えられる。
513
514 このうち解除に関しては,
515 解除の対象となる売買契約の締結・解除
516 権を発生させる要件・解除権行使について,
517 損害賠償に関しては,
518 損害の発生とその数額につ
519 いて,
520 【弁護士間で確認された事実】から,
521 過不足なく事実を指摘して主張を構成することが
522 求められる。
523
524
525 Yの側からの反論を考えるよう求める課題(b)では,
526 解除の主張に対し,
527 定期行為性の否
528 定,
529 制度の趣旨による瑕疵担保規定の不適用・契約目的不達成要件の不充足,
530 12月7日の適
531 法な提供,
532 履行期の延期合意の成立あるいは相当期間内の履行による履行遅滞自体の否定,
533 履
534 行補助者性の否定と選任・監督上の無過失・不可抗力,
535 解除の意思表示の否定などが,
536 反論と
537 して考えられる。
538
539 なお,
540 解除権の行使について権利濫用・信義則違反という反論を評価しない
541 わけではないが,
542 一般条項に頼る前に検討すべきことが少なくない。
543
544 損害賠償請求に対しては,
545
546 特別事情の予見不能(民法第416条第2項),
547 信頼利益と履行利益の同時請求の矛盾,
548 債権
549 者の損害軽減義務違反等による過失相殺などが反論として考えられる。
550
551 答案では,
552 これらの反
553 論をXの主張と対比させ,
554 やはり事実を的確に指摘しつつ,
555 説得力をもって論じることが求め
556 られる。
557
558
559 設問2は,
560 自白,
561 擬制自白及び自白の撤回についての民事訴訟法の理解を主として試すもの
562 である。
563
564 陳述@については,
565 署名はあるが押印のない私文書を題材に,
566 書証の成立に関する事
567 実についての擬制自白の成否を論じた上で,
568 擬制自白が成立しない場合における書証の成立の
569 真正の証明について,
570 民事訴訟法第228条第4項の規律を踏まえて説明することを求めたも
571 のである。
572
573 陳述A及び陳述Bについては,
574 Xの従前の発言が主要事実に該当するのか否か等,
575
576 その法的位置付けを本件事案に即して具体的に検討した上で,
577 自白ないし擬制自白の成否及び
578 従前の陳述の撤回可能性を,
579 その法的位置付けと論理的に整合するように導くこと,
580 また,
581 併
582 せて,
583 時機に後れた攻撃防御方法として却下されるものか否かについて,
584 具体的な手続の進行
585 状況に即して,
586 当該攻撃防御方法を許容すると新たにどのような審理が必要となるかを踏まえ
587 つつ,
588 論じることを求めたものである。
589
590
591 設問3は,
592 訴訟を終了させる当事者の行為,
593 すなわち,
594 訴えの取下げの合意,
595 請求の放棄及
596 び訴訟上の和解の三つの方法について,
597 紛争の解決を希望する被告の視点から,
598 具体的事案に
599 即して,
600 その長短を比較検討するというものである。
601
602 具体的には,
603 この三つの方法について,
604
605 -4-
606
607 それぞれの法的性質,
608 既判力の有無や範囲等の法的効果の検討を踏まえ,
609 意思表示の瑕疵の主
610 張等による紛争の蒸し返しや再訴による新たな紛争の発生の可能性等を本件具体的事案に即し
611 て検討した上で,
612 それを横断的に比較しながら三つの方法の長短を論じることが求められる。
613
614
615 【刑事系科目】
616 〔第1問〕
617 本問は,
618 具体的事例を素材として,
619 そこに現れた具体的事実に基づいて甲乙の罪責を問うこ
620 とにより,
621 刑事実体法の正確な理解,
622 具体的事実に法規範を適用する能力及び論理的思考力を
623 試すものである。
624
625 小問1及び2は,
626 甲乙の罪責を論じる上でポイントとなる問題点であり,
627 こ
628 れらの点について十分な検討をした上で,
629 甲乙の罪責を罪数評価を含めて論述することが求め
630 られている。
631
632
633 小問1においては,
634 詐欺罪及び恐喝罪の成否を検討するに当たり,
635 構成要件該当性等犯罪の
636 成立に必要な要件を念頭において具体的事実を抽出し,
637 要件への当てはめをすることが求めら
638 れている。
639
640 その際,
641 「錯誤に基づく財産的処分行為」ないし「畏怖に基づく財産的処分行為」
642 という構成要件要素への該当性を判断するに当たっては,
643 Aが現金を交付しようと考えるに至
644 った理由に関し,
645 Aが,
646 Bから120万円の損害賠償を求められた際,
647 事故の全責任が自らに
648 あることは認めながら,
649 損害金の支払には応じなかったこと,
650 Aが甲乙両名と面談し,
651 甲から
652 「Bは現在も仕事を休んで治療を続けており,
653 追加の治療費と休業補償分を加えると,
654 未払分
655 は120万円にとどまらず,
656 既に200万円になっている。
657
658 」と言われた時にも,
659 Aは,
660 20
661 0万円の支払要求には応じなかったこと,
662 甲が,
663 「あんたにも家族がいるだろう。
664
665 家族が事故
666 に遭えば,
667 被害に遭った者の気持ちが分かるかもしれんな。
668
669 家族が事故に遭ってから,
670 あの時
671 200万円払っておけば良かったと悔やんでも遅いぞ。
672
673 」と申し向けて,
674 200万円の支払を
675 強く要求したところ,
676 Aは,
677 200万円支払わなければならないと考え,
678 とりあえず,
679 手持ち
680 の現金20万円を甲乙に手渡したこと等の具体的事実を示した上で,
681 これらの事実が持つ意味
682 を的確に評価し,
683 要件への当てはめという思考過程を論述することが必要である。
684
685
686 また,
687 甲がBから損害金120万円の取立を委任されていることと恐喝罪等の成否との関係
688 についても,
689 甲が自己の取り分を上乗せして120万円を大きく超える200万円を請求して
690 いること,
691 Aの家族の生命・身体に危害を加えることをほのめかして脅迫するという手段を用
692 いていること等の具体的事実を示した上で論述することが必要である。
693
694
695 小問2においては,
696 最高裁判所決定理由の中で,
697 共犯関係の解消が認められないとの帰結に
698 至る過程で着目された事実及びこれらの事実の評価から結論が導かれた過程を検討した上で,
699
700 本事例を分析することが求められている。
701
702 その際,
703 最高裁判所決定の事案と本事例との類似点,
704
705 相違点に留意しつつ,
706 甲乙の人的関係,
707 甲乙間に共犯関係が成立した経緯,
708 甲乙の共謀の内容,
709
710 Aから20万円の交付を受ける際に甲乙それぞれが果たした役割,
711 甲乙の行為がAに与えた影
712 響,
713 乙がこれ以上の支払要求をやめようとした際の甲に対する乙の言動,
714 これに対する甲の対
715 応,
716 その後の甲の行動とこれに対する乙の予測可能性等に関する具体的事実を示し,
717 これらの
718 事実を評価して結論を導く思考過程を論述することが必要である。
719
720
721 さらに,
722 甲の罪責として,
723 50万円の費消行為をどう考えるかについては,
724 成立が考えられ
725 る犯罪についての構成要件該当性を具体的事実に基づいて論述する必要がある。
726
727
728 いずれの問題点についても,
729 論点に関する法解釈論を抽象的に論じるにとどまることなく,
730
731 事例に示された具体的な事実関係を分析した上,
732 論点の解決にとって必要な事実を抽出し,
733 的
734 確に法的評価をすることが求められている。
735
736
737 〔第2問〕
738 本問は,
739 捜査・公判に関する具体的事例を示して,
740 そこに生起する刑事手続上の問題点の解
741 -5-
742
743 決に必要な法解釈,
744 法適用にとって重要な具体的事実の分析・評価及び具体的帰結に至る過程
745 を論述させることにより,
746 刑事訴訟法等の解釈に関する学識と適用能力及び論理的思考力を試
747 すものである。
748
749
750 設問1は,
751 連続的に発生した放火事件を素材として,
752 将来,
753 同一犯人による同種手口の放火
754 事件が発生する蓋然性が高いと認められる駐車場と,
755 犯人である嫌疑が高い被疑者の自宅前公
756 道上におけるビデオ撮影・録画の適法性を問うことにより,
757 「捜査」の意義,
758 任意捜査と強制
759 捜査の区別基準,
760 その区別に即したビデオ撮影・録画の適法性判断基準など捜査に対する法規
761 制に係る最も基本的な事項の理解と具体的事実への法適用能力を試すものである。
762
763
764 法解釈の部分では,
765 刑事訴訟法等の関連規定の構造と,
766 これを解釈した最高裁判所の判例の
767 示す「強制」手段の定義や判断基準の背後にある基本的な考え方,
768 ―例えば,
769 なぜ「強制」の
770 処分には特別の根拠規定が要請されているのか,
771 また,
772 「強制」に当たらない任意処分であっ
773 ても常に許容されるわけではなく,
774 具体的状況において一定の限界があり得ると解されている
775 理由や趣旨―を論じた上で,
776 そこから強制捜査と任意捜査の区別基準や,
777 任意手段の必要性・
778 緊急性や相当性等の具体的な適法性判断基準を導き出すことが求められている。
779
780 基準の結論部
781 分を記述しただけでは法解釈とは言えず,
782 不十分である。
783
784
785 また,
786 事例への法適用の部分では,
787 自らが論じた判断基準等に従って,
788 本問の事例中に現れ
789 た具体的事実関係を的確に抽出,
790 分析して,
791 その該当性を判断することが要求されている。
792
793 例
794 えば,
795 駐車場におけるビデオ撮影・録画と,
796 被疑者方前公道上におけるそれとは,
797 同じ判断基
798 準を適用しても,
799 その該当性判断において論じるべき具体的事実関係は異なっているので,
800 こ
801 うした違いに即して丁寧に分析・検討すべきである。
802
803 また,
804 事実を事例中からただ書き写して
805 羅列すれば足りるものではなく,
806 それぞれの事実が持つ意味を的確に分析して論じることが必
807 要である。
808
809 例えば,
810 被疑者方前公道上におけるビデオ撮影・録画の必要性を検討する過程で,
811
812 被疑者に対する犯罪の嫌疑の程度を論じる際には,
813 3件の放火事件が,
814 発生時期,
815 発生場所,
816
817 放火対象物,
818 放火の態様等において類似していることを示す具体的事実関係を指摘して,
819 これ
820 らが同一犯人による連続放火事件である可能性が高いことを的確に論証した上で,
821 各放火事件
822 と被疑者を結びつける個々の事実関係に言及して,
823 その嫌疑の程度を論じることができていれ
824 ば,
825 極めて優れた分析といえよう。
826
827
828 設問2は,
829 被告人の前科に関する事実を,
830 被告人が被告事件の犯人であることの認定に用い
831 ることが許されるかを問うものであり,
832 前科に関する事実を公訴事実の認定に用いる場合に生
833 じ得る問題点や弊害についての基本的な理解を踏まえて,
834 事例中に現れた被告人の前科に関す
835 る事実を犯人であることの認定に用いる際の推認の過程を具体的に検討し,
836 この事実を認定に
837 用いることの可否を論じる必要がある。
838
839 すなわち,
840 被告人に前科があるという事実から,
841 被告
842 人が犯罪を犯すような悪性格をもっていることを立証し,
843 こうした悪性格の立証を介して,
844 被
845 告人が被告事件の犯人であることを推認させようとする推認過程と,
846 特殊な犯行方法・態様等
847 の共通性に着目し,
848 そこから被告人が被告事件の犯人であることを推認させようとする推認過
849 程の違いを明確に意識して論じることが必要である。
850
851
852 いずれの問題点についても,
853 法解釈論や要件の存否を抽象的に論じるにとどまることなく,
854
855 事例中に現れた具体的な事実関係を指摘しつつ,
856 それらの事実関係がどの要件の存否を基礎付
857 けているのかを的確に論じることが要請されている。
858
859
860 【選択科目】
861 [倒
862
863 産
864
865 法]
866
867 〔第1問〕
868 設問1は,
869 破産手続における法人の役員の責任追及について問うものである。
870
871 (1)では,
872
873 役員の責任の査定手続及び役員の財産に対する保全処分について説明する必要がある。
874
875 (2)
876 -6-
877
878 は,
879 株主代表訴訟が係属している場合に破産手続の開始が当該訴訟に対して与える影響につい
880 て問うものであり,
881 当該訴訟の中断及び受継(破産法第45条の類推適用の可否)について被
882 告からの受継申立てを含めて検討する必要があるほか,
883 当該訴訟とは別個に査定の申立てをす
884 ることができるか等についても問題となる。
885
886
887 設問2は,
888 破綻の原因を作った代表取締役による破産債権の行使に対する破産管財人の対応
889 について問うものである。
890
891 本問では,
892 破産管財人が破産債権者に対する損害賠償請求権を自働
893 債権として相殺をすることができるか(破産法第102条)について検討する必要がある。
894
895 ま
896 た,
897 明文の規定はないが,
898 このような破産債権者が届け出た債権について衡平の観点から劣後
899 化を図ることができるか等が問題となる。
900
901
902 設問3は,
903 保証人が保証債務を全額弁済した場合に,
904 (1)弁済による代位によって取得し
905 た原債権及び(2)求償権を自働債権とし,
906 破産者に対する債務に係る債権を受働債権とする
907 相殺の可否について問うものである。
908
909 弁済による代位や求償権の性質を踏まえ,
910 破産手続開始
911 後の債権取得による相殺制限の規律(破産法第72条第1項第1号)の適用及び停止条件付の
912 破産債権である求償権による停止条件成就後の相殺の可否等について検討することが必要であ
913 る。
914
915
916 〔第2問〕
917 本問は,
918 個人破産事件の具体的な事例を基に,
919 破産手続と小規模個人再生手続の手続選択上
920 の考慮要素,
921 破産手続開始後の破産者に対する弁済の効力,
922 自由財産の範囲拡張の裁判制度及
923 び免責不許可事由について,
924 その理解を問うとともに,
925 適切に事案を分析できるか否かを試す
926 出題である。
927
928
929 設問1では,
930 小規模個人再生手続の利点として,
931 資格制限を回避することができ,
932 債務者に
933 財産の管理処分権が保持されるため従前の生活が維持され,
934 再生計画に住宅資金特別条項(民
935 事再生法第198条以下)を定めることによって住宅の確保を図り得ることを指摘した上で,
936
937 再生計画の認可のために必要な最低弁済額要件(同法第231条第2項第4号)を充たす収入
938 を確保し難いことが手続を利用する障害となることを論述する必要がある。
939
940
941 設問2は,
942 破産手続開始後の破産者に対する弁済の効力(破産法第50条)について,
943 弁済
944 者が破産手続の開始を認識していたか否かという場合分けを踏まえ,
945 推定規定(同法第51条)
946 の存在を含めて的確な分析ができるか否かを問うものである。
947
948
949 設問3では,
950 破産財団を構成する中古自動車について,
951 自由財産の範囲拡張の裁判の申立て
952 (同法第34条第4項)ができることを指摘した上で,
953 設問からうかがわれる破産者の事情か
954 ら許可の可能性について検討することが必要となる。
955
956
957 設問4では,
958 具体的な事例から,
959 検討すべき免責不許可事由(同法第252条第1項第2号,
960
961 第4号及び第5号)を適切に抽出し,
962 要件の分析を加えるとともに,
963 裁量免責の可能性(同条
964 第2項)についても言及することが求められている。
965
966
967 [租
968
969 税
970
971 法]
972
973 いずれの設問も,
974 法科大学院における租税法の基本的な事項に関する学習を前提として,
975
976 具体的な事案について,
977 租税法規の解釈論をどのように展開することができるか,
978 どのよう
979 に事実関係を認定し,
980 どのように法規に当てはめて判断すべきかを考える能力を試すもので
981 ある。
982
983
984 〔第1問〕
985 第1問は,
986 保証人としての債務を履行した場合の譲渡所得の課税関係に関する理解を問う
987 問題である。
988
989 1においては,
990 譲渡所得の該当性及び譲渡所得の課税の基本的な仕組みについ
991 ての理解を問うている。
992
993 所得税法第33条の規定とともに,
994 同法第22条に留意する必要が
995 -7-
996
997 ある。
998
999 2においては,
1000 所得税法第64条第2項の特例の適用要件についての基本的な理解を
1001 問うた上で,
1002 本問の事案に現れた諸事実の中から,
1003 その適用要件に関わる事実を指摘し,
1004 当
1005 該要件を満たすか否かを論じる能力を試している。
1006
1007 3においては,
1008 Xが連帯保証をした時点
1009 で既にB社が債務超過に陥っており,
1010 辛うじて営業を続けている状態にあって,
1011 Aにも返済
1012 資金が全くなかった場合を想定して,
1013 所得税法第64条第2項の特例の適用要件の法解釈を
1014 論じた上で,
1015 Xがそれらの事実を認識していたかどうかを含めて,
1016 その適用要件を満たすか
1017 否かを論じる能力を試している。
1018
1019
1020 〔第2問〕
1021 第2問は,
1022 事案に現れた三者間の法律関係を把握した上で,
1023 所得税法及び法人税法の規定
1024 の法解釈論を展開するとともに,
1025 問題文に現れた事実関係を整理して法規範を適用する能力
1026 を試す問題である。
1027
1028 1については,
1029 参照条文を参考にしながら,
1030 必要経費に関する所得税法
1031 第37条及び第45条の関連規定の要件を正確に読み取り,
1032 それらの規定の趣旨がいかなる
1033 ものか,
1034 当該趣旨や条文の文言に照らして,
1035 甲のした支払の所得税法上の取扱いがどうなる
1036 のかを,
1037 問題文に現れた諸事実を踏まえつつ,
1038 分かりやすく論述できるかどうかを試してい
1039 る。
1040
1041 2については,
1042 民事上の法律関係を踏まえ,
1043 甲が求償しない旨を乙に告げ,
1044 乙が甲から
1045 求償権の行使を受けなくなったことに関して,
1046 それが所得税法第36条所定の収入金額に当
1047 たるか,
1048 当たるとすればいかなる理由に基づくのか,
1049 また,
1050 その所得区分はどのように考え
1051 るべきか,
1052 さらに,
1053 源泉徴収がいかなる場合にどのようにして行われるのか,
1054 を論じること
1055 ができるかどうかを問うている。
1056
1057 3については,
1058 法人税の課税標準となる各事業年度の所得
1059 の金額の計算構造の基本的な理解を問うとともに,
1060 損害賠償請求権の額が益金の額に算入さ
1061 れるか,
1062 備品の損壊が損失として損金の額に算入されるかに関する理解を問うている。
1063
1064
1065 [経
1066
1067 済
1068
1069 法]
1070
1071 〔第1問〕
1072 本問は,
1073 不公正な取引方法に関して比較的詳細な事案を設定した上で,
1074 独占禁止法の基礎的
1075 な理解を問うとともに,
1076 抽象的な議論に陥いることなく具体的な事実関係に基づいた論述の展
1077 開ができるかを試すものである。
1078
1079
1080 設問1では,
1081 X社が,
1082 甲社製の駐車場装置の構成部品の販売に際し,
1083 乙社の取替工事を条件
1084 とするという販売方針について,
1085 これが不公正な取引方法に該当して違法か否かを論じること
1086 を求めた。
1087
1088
1089 一般指定の各項を踏まえて,
1090 本事例の行為に対する適用項とその要件該当性を具体的に論述
1091 することとなる。
1092
1093
1094 さらに,
1095 独立系保守業者の事業活動に対する影響と,
1096 構成部品の転用防止というX社の主張
1097 に関して,
1098 公正競争阻害性,
1099 正当化事由に係る一般的判断枠組みを論じた上で,
1100 弁護士として
1101 X社及び乙社の担当者に尋ねて得られた回答を踏まえて,
1102 X社の意図に関する事実認定を行い,
1103
1104 あるいは営業計画の合理性を判断して,
1105 公正競争阻害性の有無について論じることが求められ
1106 る。
1107
1108
1109 設問2は,
1110 X社が,
1111 構成部品の在庫費用を削減するために,
1112 計画在庫数量を設定した上で,
1113
1114 一定の場合に独立系保守業者からの発注について引渡時期の条件を付すという販売方針につい
1115 て,
1116 これが不公正な取引方法に該当するか否かの検討を求めるものである。
1117
1118
1119 この方針について,
1120 一般指定の各項を踏まえて,
1121 本事例の行為に対する適用項とその要件該
1122 当性を具体的に論述することが求められる。
1123
1124
1125 さらに,
1126 在庫費用の削減という目的,
1127 独立系保守業者に与える影響等の具体的事実関係に基
1128 づいて,
1129 公正競争阻害性の有無を論じることとなる。
1130
1131 計画在庫数量を算出している基準の妥当
1132 -8-
1133
1134 性等を踏まえて,
1135 かかる方針の相当性を論じることになろう。
1136
1137 その際,
1138 乙社とX社の資本関係,
1139
1140 保守業者による自社在庫の可能性なども考慮され得よう。
1141
1142
1143 なお,
1144 X社からの依頼を受けた弁護士として回答することを求めており,
1145 乙社の行為に関す
1146 る回答は不要であるが,
1147 X社の行為・販売方針については合理的に考え得る独占禁止法上の問
1148 題点を幅広く回答することが望ましい。
1149
1150
1151 〔第2問〕
1152 本問は,
1153 入札談合事案を素材として独占禁止法の基本概念の正確な理解と的確な条文解釈能
1154 力を試すものである。
1155
1156
1157 設問1は,
1158 いわゆる基本合意とそれに基づく個別調整行為という典型的な入札談合に係る事
1159 実関係をもとに,
1160 不当な取引制限の構成要件という独占禁止法の基礎を正確に理解し,
1161 使いこ
1162 なすことができるか否かを問う基本的問題である。
1163
1164 小問(1)では,
1165 本問において,
1166 毎年1回
1167 の会合における話合いから実際の入札に至るまでの行為のうち,
1168 いかなる行為が不当な取引制
1169 限の違反行為となり得るかを特定し,
1170 かつ,
1171 甲省の入札制度を踏まえた上で,
1172 具体的事実を摘
1173 示して構成要件該当性を論述することが求められる。
1174
1175 小問(2)では,
1176 不当な取引制限に関す
1177 る法律解釈又は事実認定に関する議論を問うたものであり,
1178 事実認定に関する議論にあたって
1179 は,
1180 個々の事案に即して経験則に従って事実認定を行うという事実認定の基本を踏まえた論述
1181 が望まれる。
1182
1183
1184 なお,
1185 公正取引委員会の立入検査等の審査の結果を踏まえた論述を求めており,
1186 刑事事件と
1187 しての議論までを求めたものではない。
1188
1189
1190 設問2は,
1191 課徴金納付命令に関して,
1192 その算定に関する条文を踏まえながら本問での当ては
1193 めを行わせるものであり,
1194 法文を読んだ上で内容を理解し,
1195 文理に忠実に条文の操作を行って
1196 事案の解決を図るという法律家に必要な能力を試したものである。
1197
1198
1199 設問3は,
1200 課徴金納付命令に係る審判における被審人の主張の当否を論じさせるものであり,
1201
1202 課徴金の算定に当たって違約金相当額を控除すべきか否かについて,
1203 課徴金の算定又は控除に
1204 関する条文の文理を踏まえた上で,
1205 課徴金の制度趣旨,
1206 各規定の趣旨に基づいて説得的に論述
1207 することが求められる。
1208
1209
1210 [知的財産法]
1211 〔第1問〕
1212 設問1では,
1213 問題文から読み取れる事実関係を条文に当てはめて,
1214 甲の訴訟上の請求として,
1215
1216 物の発明である本件発明の特許権に基づく差止請求,
1217 特許権侵害の不法行為による損害賠償請
1218 求,
1219 不当利得返還請求,
1220 出願公開の効果としての補償金請求が考えられることを簡潔に論述し,
1221
1222 設問2では,
1223 甲の各請求に対する抗弁(消滅時効の抗弁,
1224 権利行使の制限の抗弁,
1225 先使用の抗
1226 弁)及びその成否をそれぞれ検討した上で,
1227 各請求がいかなる範囲で認められるかについて論
1228 述する必要がある。
1229
1230 抗弁の成否の検討のポイントは,
1231 以下のとおりである。
1232
1233
1234 まず,
1235 消滅時効の抗弁については,
1236 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の時効期間は
1237 3年であり(民法第724条),
1238 補償金請求権につき不法行為の規定が準用されていることか
1239 ら(特許法第65条第5項),
1240 甲の損害賠償請求権(一部)及び補償金請求権(全部)につい
1241 て消滅時効が完成していることを論じることが求められる。
1242
1243 なお,
1244 消滅時効の抗弁により損害
1245 賠償請求ができない期間に係る部分についても,
1246 不当利得返還請求権を行使できることを明示
1247 することが望まれる。
1248
1249
1250 次に,
1251 権利行使の制限の抗弁(特許法第104条の3第1項)については,
1252 本件発明の特許
1253 の無効理由(特許法第29条違反)の存否について論じることが求められ,
1254 主として,
1255 本件論
1256 文がAによって各会員に交付されたこと及びその後乙がAからそのコピーを入手したことによ
1257 -9-
1258
1259 り,
1260 本件発明が出願前に「公然知られた発明」(特許法第29条第1項第1号)となったかど
1261 うか,
1262 また,
1263 本件発明が出願前に「頒布された刊行物に記載された発明」(特許法第29条第
1264 1項第3号)に該当するかどうかについて論述する必要がある。
1265
1266 その際には,
1267 Aが本件論文の
1268 内容について守秘義務を課した場合とそうでない場合とで差異が生じるかについて論述するこ
1269 とが望まれる。
1270
1271
1272 さらに,
1273 先使用の抗弁については,
1274 発明の実施である「事業の準備」(特許法第79条)の
1275 意義及び先使用権の効力の及ぶ範囲(最判昭和61年10月3日民集40巻6号1068頁〔ウ
1276 ォーキングビーム式加熱炉事件〕参照)の理解を問うものである。
1277
1278 具体的には,
1279 製造販売され
1280 ている現製品(携帯電話β)が出願前に製造された試作品(携帯電話α)の「一部改良品」で
1281 ある点の分析評価が重要であり,
1282 試作品の製造及び現製品の設計図面の作成をもって,
1283 試作品
1284 又は現製品につき「事業の準備」があったといえるかどうか,
1285 仮に試作品につき先使用権が成
1286 立するとした場合,
1287 その効力が現製品に及ぶかどうかといった点を論述する必要がある。
1288
1289
1290 権利行使の制限の抗弁及び先使用の抗弁の成否については,
1291 事実関係の分析評価を的確に行
1292 い,
1293 論理一貫した説得力ある論述がされていれば,
1294 結論はいずれでもよい。
1295
1296 そして,
1297 上記抗弁
1298 のいずれかが成立するという立場をとれば,
1299 甲の各請求はいずれも認められず,
1300 一方で,
1301 いず
1302 れも成立しないという立場をとれば,
1303 甲の各請求は,
1304 消滅時効の抗弁により請求できない部分
1305 を除き,
1306 認められることとなる。
1307
1308
1309 〔第2問〕
1310 本問は,
1311 主として,
1312 他人の著作物に基づいて作成された作品の利用が著作権の侵害となる場
1313 合に関する理解を問うものであり,
1314 とりわけ,
1315 作品がどのような場合に他人の著作物を原著作
1316 物とする二次的著作物となるか,
1317 また,
1318 作品の利用が著作権を侵害するとすれば,
1319 いかなる支
1320 分権を侵害するかについて,
1321 問題文から読み取れる事実関係に即して具体的に論述することが
1322 求められる。
1323
1324
1325 設問1では,
1326 脚本Bが,
1327 小説Aを原著作物とする二次的著作物であり,
1328 乙と丙を著作者とす
1329 る共同著作物であること,
1330 それゆえに,
1331 その利用について甲の承諾(著作権法第28条)及び
1332 丙の承諾(著作権法第65条第2項)を得ることが必要となることを論じた上で,
1333 @脚本Bに
1334 基づいて演劇Eを演じさせること,
1335 Aその録音録画,
1336 B録音録画したDVDの販売につき,
1337 い
1338 かなる支分権が働くかを論述しなければならない。
1339
1340 @については上演権(著作権法第22条),
1341
1342 Aについては複製権(著作権法第21条,
1343 第2条第1項第15号イ),
1344 Bについては譲渡権(著
1345 作権法第26条の2第1項)等が問題となる。
1346
1347
1348 設問2では,
1349 まず,
1350 小説Cが小説Aを原著作物とする二次的著作物となるかを検討する必要
1351 がある。
1352
1353 次に,
1354 小説Cが二次的著作物となる場合に,
1355 その朗読に口述権(著作権法第24条,
1356
1357 第28条)が働くこと,
1358 その朗読が私的使用目的で作成された二次的著作物の複製物(著作権
1359 法第30条第1項,
1360 第43条第1号)の目的外使用としての「公衆に提示」(著作権法第49
1361 条第2項第1号)に該当し,
1362 小説Aにつき翻案を行ったものとみなされること,
1363 及び著作権法
1364 第38条第1項の適用の有無について論じた上で,
1365 口述権及び翻案権(著作権法第27条)の
1366 侵害が成立するか否か,
1367 そして,
1368 侵害が成立する場合に,
1369 甲は丁に対して具体的にどのような
1370 請求をすることができるかを論述しなければならない。
1371
1372
1373 設問3では,
1374 まず,
1375 小説Dがどのような場合に小説Aを原著作物とする二次的著作物となり,
1376
1377 あるいは独立の著作物となるかを検討し,
1378 次に,
1379 小説Dが二次的著作物となる場合に,
1380 そのホ
1381 ームページへの掲載がいかなる支分権を侵害するかについて論じた上で,
1382 甲は戊に対して具体
1383 的にどのような請求をすることができるかを論述しなければならない。
1384
1385 侵害される支分権とし
1386 ては,
1387 複製権,
1388 公衆送信権(著作権法第23条第1項)とともに,
1389 設問2と同様に,
1390 目的外使
1391 用としての公衆への提示により,
1392 翻案権が問題となる。
1393
1394
1395 - 10 -
1396
1397 [労
1398
1399 働
1400
1401 法]
1402
1403 〔第1問〕
1404 本問は,
1405 在籍出向中の労働者に関して,
1406 出向先会社による懲戒処分の可否と内容を問うとと
1407 もに,
1408 時間外労働義務の問題についての理解を問うものである。
1409
1410
1411 まず,
1412 問題となるのが,
1413 出向先会社は出向労働者に対して懲戒権を持つのか,
1414 持つとすれば
1415 いかなる種類の懲戒処分が可能かという点である。
1416
1417
1418 次に,
1419 問題文では,
1420 出向労働者2名が登場しているが,
1421 うち1名については,
1422 時間外労働命
1423 令に対する拒否を理由とする懲戒処分が検討対象となるため,
1424 時間外労働義務がいかなる場合
1425 に発生するか(日立製作所武蔵工場事件・平成3年11月28日最高裁判決参照),
1426 本件では
1427 義務が発生しているか,
1428 義務違反が(どの範囲で)成立するか,
1429 義務違反が成立するとした場
1430 合,
1431 懲戒権行使に当たり考慮すべき事項は何かなどが問題となる。
1432
1433
1434 また,
1435 もう1名の労働者については,
1436 業務上の指示違反を理由とする懲戒処分が検討される
1437 ことになるが,
1438 同人の所属する子会社の事業場(常時就労する労働者は10人未満)では就業
1439 規則の周知がなされていなかったことをどう考えるか(フジ興産事件・平成15年10月10
1440 日最高裁判決参照)などが問題となる。
1441
1442
1443 〔第2問〕
1444 本問は,
1445 主としてユニオン・ショップ協定の効力の限界,
1446 及び労働協約改定による労働条件
1447 の不利益変更の効力に関する理解を問うものである。
1448
1449
1450 前者については,
1451 三井倉庫港運事件・平成元年12月14日最高裁判決によれば,
1452 本件では
1453 新組合を結成していることから解雇義務が生じないために解雇は権利濫用として無効となり,
1454
1455 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求,
1456 及び解雇期間中の賃金の支払請求を行
1457 うことが考えられる。
1458
1459 賃金請求に当たっては,
1460 民法第536条第2項によりつつ,
1461 賃金額の算
1462 定根拠についてどのような法的構成を用いるのか,
1463 その際,
1464 新協定発効後については,
1465 労働組
1466 合の組織範囲次第で,
1467 新協定の一般的拘束力が及ぶか否かも検討すべき対象となる。
1468
1469
1470 後者については,
1471 新賃金協定の効力がないと主張して差額賃金請求を行うことが考えられる
1472 が,
1473 組合規約に違反して締結されたことが労働協約の有効性に影響を及ぼすのか,
1474 組合員は不
1475 利益に変更された協約条項に拘束されるのか,
1476 といった問題を検討する必要がある。
1477
1478 判例(朝
1479 日火災海上保険事件・平成9年3月27日最高裁判決参照)・通説は不利益変更を原則として
1480 承認するが,
1481 例外的に拘束力を否定すべき事情があるか否かの検討も行う必要がある。
1482
1483
1484 [環
1485
1486 境
1487
1488 法]
1489
1490 〔第1問〕
1491 本問は,
1492 環境アセスメントという考え方が,
1493 環境法政策の歴史的展開の中でどのように制度
1494 化されてきたか,
1495 どのように進化してきたか,
1496 どのような課題があるかについての基本的理解
1497 を問う問題である。
1498
1499
1500 設問1においては,
1501 閣議決定要綱から環境影響評価法へと法形式が変わったこと,
1502 スクリー
1503 ニング制度やスコーピング制度の導入により対象事業の選定方法やアセスメント内容の決定方
1504 法が明確にされたこと,
1505 住民参画の手続が整備・充実されたこと,
1506 代替案の検討を進めるよう
1507 になったこと,
1508 横断条項を通じて個別法の処分に法的影響を与え得るようになったことなどの
1509 点について,
1510 要綱と法律との相違を説明することが,
1511 求められている。
1512
1513
1514 設問2においては,
1515 事業アセスメントになっていること,
1516 代替案の考慮が義務的でないこと,
1517
1518 スクリーニング手続に住民参画がないこと,
1519 スコーピング時期が特定されていないこと,
1520 事後
1521 評価手続が義務付けられていないことなどについて,
1522 現行法の限界を指摘することが求められ
1523 - 11 -
1524
1525 ている。
1526
1527 その上で,
1528 計画アセスメントの導入など,
1529 適宜,
1530 改善策にまで論及することが,
1531 期待
1532 される。
1533
1534
1535 〔第2問〕
1536 設問1は,
1537 水質汚濁防止法(以下「水濁法」という。
1538
1539 )及び土壌汚染対策法(以下「土対法」
1540 という。
1541
1542 )の基本的理解を問うものである。
1543
1544
1545 工場の製造工程中で使用されたカドミウム及び鉛を含む水が工場敷地の地下に浸透していた
1546 という事実関係から,
1547 付近一帯の地下水が汚濁し,
1548 土壌が汚染されたこと,
1549 カドミウム及び鉛
1550 は水濁法及び土対法の規制対象となる有害物質に当たることに気付き,
1551 A県知事としては,
1552 水
1553 濁法及び土対法に基づく対応を行うことができることを説明することが求められている。
1554
1555 少な
1556 くとも,
1557 水濁法の関係では,
1558 第13条の2第1項の改善命令等,
1559 第14条の3の地下水の水質
1560 の浄化に係る措置命令等を,
1561 土対法の関係では,
1562 第4条の調査命令,
1563 第5条の指定地域の指定,
1564
1565 第7条の汚染の除去等の措置命令を指摘してほしい。
1566
1567
1568 設問2は,
1569 BのC及びDに対する訴訟について問うものである。
1570
1571
1572 Cに対する関係では,
1573 不法行為に基づく損害賠償請求が考えられることを指摘し,
1574 受忍限度
1575 論,
1576 因果関係論,
1577 損害論(人身損害,
1578 物的損害)などを,
1579 本問の解決に当たって必要な限度で
1580 まとめ,
1581 さらに,
1582 人身損害の賠償を求める場合には,
1583 水濁法第19条第1項により無過失責任
1584 を追求できることなどを説明することが求められる。
1585
1586 Dに対する関係では,
1587 工場の稼働差止め
1588 請求等が考えられることを指摘し,
1589 その法的根拠を的確に説明することなどが求められる。
1590
1591
1592 [国際関係法(公法系)]
1593 〔第1問〕
1594 本問は,
1595 国際法上の難民問題と,
1596 それを素材とした関係国際法の理解を問う問題である。
1597
1598 設
1599 問1.では,
1600 「難民の地位に関する条約」及び「難民の地位に関する議定書」(以下両条約をま
1601 とめて「難民条約」と呼ぶ。
1602
1603 )を題材にして,
1604 条約の国内法上の効力が問われている。
1605
1606 @条約
1607 自身が国内法上の効力をもつ国内法制かどうか,
1608 A条約が国内法上の効力をもつ国内法制の場
1609 合に,
1610 問題の条約の関係規定が裁判所で援用し得る内容をもつかどうか,
1611 B裁判所で援用し得
1612 るとして,
1613 条約が国内法制においてどのような効力序列にあるかが解答の要点となる。
1614
1615
1616 設問2.は,
1617 難民資格と個人の庇護権の関係を問う問題である。
1618
1619 一般国際法上,
1620 個人の庇護
1621 権は認められておらず,
1622 その上で国家の庇護権を前提にした難民条約上の難民資格が個人の庇
1623 護権とは異なることの基本的な理解が求められている。
1624
1625
1626 設問3.は,
1627 難民条約を題材に国家の条約解釈権の在り方を問う問題である。
1628
1629 条約は通常は
1630 締約国に対して特定の結果達成を義務付けるにとどまるために,
1631 当該結果達成のための方法は
1632 締約国にゆだねられる。
1633
1634 B国政府の主張は,
1635 難民条約の解釈が締約国に広い裁量を認めること
1636 を前提にしたものである。
1637
1638 それに対して,
1639 難民条約上の「難民」該当性の有無は裁判所が直接
1640 的に判断でき,
1641 「難民」としての資格を国内法上持たなくても,
1642 締約国である以上,
1643 難民条約
1644 上の「難民」として取り扱わなければならないという解釈が可能であることを尋ねている。
1645
1646 条
1647 約について種々の解釈可能性があることに思いを致してほしいというのが設問の趣旨である。
1648
1649
1650 設問4.は,
1651 本件への難民条約の当てはめを問うている。
1652
1653 難民条約第1条Aが難民条約上の
1654 「難民」を定義するが,
1655 その中の「政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分
1656 に理由のある恐怖を有する」の部分が甲の難民該当性を考える場合にポイントになる。
1657
1658 「食糧
1659 も事欠く状況になったため」A国を脱出してB国に密入国し,
1660 その後にB国においてA国の「現
1661 政権打倒運動に参加した」甲は,
1662 A国に強制送還されると「死刑を含む厳罰」に処せられるこ
1663 とが予想される。
1664
1665 このことが「政治的意見」を理由とした「迫害を受けるおそれがあるという
1666 十分に理由のある恐怖を有する」ことと解釈できるのか。
1667
1668 @元来は政治的意見のゆえに出国し
1669 - 12 -
1670
1671 たのではないこと,
1672 A現政権打倒運動を行ったことが強制送還後の厳罰に結び付くと理解でき
1673 るかどうか等の考慮点を押さえた,
1674 条約の解釈適用能力が問われている。
1675
1676
1677 本問では,
1678 国内裁判所において法曹として国際法の解釈適用作業を行える能力が,
1679 我が国裁
1680 判所で頻繁に扱われる難民問題によって試されている。
1681
1682
1683 〔第2問〕
1684 本問は,
1685 国際紛争の平和的解決に関する主権国家の義務に係る基本的な概念や原則の理解を
1686 問い,
1687 かつ,
1688 論点及び関連事実の抽出能力・判断力・論理構成力を問う問題である。
1689
1690
1691 基本的な概念や原則とは,
1692 @国際紛争の平和的解決義務の意義と内容,
1693 A裁判に付託する紛
1694 争という観点からの,
1695 法律的紛争・非法律的(政治的)紛争の概念のとらえ方,
1696 B紛争解決手
1697 段の選択の自由の原則である。
1698
1699
1700 紛争の平和的解決義務が,
1701 国家の基本的な義務であり,
1702 本件A国とB国のいずれもこの義務
1703 を負うことには争いがない。
1704
1705 紛争の平和的解決義務との関係では,
1706 A国が,
1707 地域的政治的機構
1708 による解決に協力的であったことが関連をもつ。
1709
1710
1711 本件の紛争につき,
1712 裁判に付託することが適当か,
1713 B国の主張するようにA国は裁判に付託
1714 する義務を負うかが問われており,
1715 特に,
1716 本件の紛争のとらえ方が重要となる。
1717
1718 紛争解決手段
1719 の選択の自由の原則も関連する。
1720
1721 問題文では,
1722 長期にわたりA国とB国の対立関係の背景にあ
1723 る歴史的・社会的・宗教的な要因などとともに,
1724 地域的政治機構が関与してきたことについて,
1725
1726 説明が与えられている。
1727
1728 そこに示された事実状況を注意深く読んで,
1729 紛争の解決という目的に
1730 照らして,
1731 紛争をどの時点でとらえ,
1732 どのような争点で構成し,
1733 どのような性質でとらえるこ
1734 とが適当であるかの判断に基づいて,
1735 A国の反論を構成することになる。
1736
1737
1738 本問では,
1739 基本的な事項についての正確で過不足のない記述とともに,
1740 関連事実を踏まえて
1741 紛争をいかにとらえるかの十分な説明が要求される。
1742
1743 さらに,
1744 以下の点などに触れることで,
1745
1746 厚みのある論証が求められる。
1747
1748 国際社会における紛争解決の特徴として,
1749 主権国家の並存体制
1750 において国際裁判管轄の合意原則が維持されており,
1751 政治的機構による解決も含めて非裁判的
1752 解決も活発に行われていることである。
1753
1754 また,
1755 紛争の特徴や性質と,
1756 解決手続の選択との関連
1757 の在り方を,
1758 いかに考えるかである。
1759
1760
1761 [国際関係法(私法系)]
1762 〔第1問〕
1763 本問は,
1764 法の適用に関する通則法第6条の失踪宣告の国際裁判管轄,
1765 準拠法及び失踪宣告の
1766 効果についての理解を問うことを中心として,
1767 死亡による婚姻解消及び相続の準拠法並びに反
1768 致についても基本的な理解を問うものである。
1769
1770
1771 設問1(1)では,
1772 失踪宣告について日本の裁判所が通則法第6条第2項の例外的国際裁判
1773 管轄を有するか否かが問われている。
1774
1775 まず前提として同条第1項の原則的国際裁判管轄の有無
1776 を検討し,
1777 それがないときは,
1778 Xが解消を望むAとの婚姻関係が,
1779 「日本法によるべきときそ
1780 の他法律関係の性質,
1781 当事者の住所又は国籍その他の事情に照らして日本に関係がある」法律
1782 関係と言えるか否かが検討されなければならない。
1783
1784 法例第6条によれば,
1785 本件のような事案(婚
1786 姻の効力の準拠法が日本法とならない事案)については国際裁判管轄が認められず,
1787 そのよう
1788 な不都合の是正が通則法第6条の改正趣旨であることを踏まえた上,
1789 本件の婚姻関係が日本に
1790 関係がある法律関係であるか否かを検討することになる。
1791
1792
1793 設問1(2)は,
1794 当事者の死亡による婚姻解消の準拠法について問うものである。
1795
1796 法例第6
1797 条の解釈と異なり,
1798 通則法第6条においては,
1799 例外的管轄に基く場合も失踪宣告の効力は死亡
1800 の擬制という直接的効果にとどまるものと整理されている。
1801
1802 まずこの点を踏まえた上で,
1803 婚姻
1804 の解消を婚姻の効力(第25条)又は離婚(第27条)のいずれかの問題と性質決定し,
1805 準拠
1806 - 13 -
1807
1808 法を導く論述が求められる。
1809
1810
1811 設問2(1)は,
1812 反致についての基本的な考え方を問うものである。
1813
1814 反致を否定する甲国国
1815 際私法第P条のような規定の有無は,
1816 反致の成否に影響しないという意味において,
1817 通則法第
1818 41条の適用には直接の関係はない。
1819
1820 他方で,
1821 P条の規定の存在は,
1822 本件について,
1823 日本にお
1824 いても甲国においても同一の準拠法(日本法)が適用される結果を導くから,
1825 判決の国際的調
1826 和という要請を満足させる。
1827
1828 従来からの反致制度を維持した通則法第41条の基本的な理解を
1829 示すことが求められる。
1830
1831
1832 設問2(2)は,
1833 相続の準拠法を問うものである。
1834
1835 失踪宣告の効力の直接的効果を踏まえた
1836 上で,
1837 通則法第36条及び第41条を適用して,
1838 準拠法を決定することとなる。
1839
1840
1841 〔第2問〕
1842 本問は,
1843 生産物責任訴訟の国際裁判管轄及び準拠法の理解を問うものである。
1844
1845
1846 設問1は,
1847 日本に常居所を有する個人であるXが,
1848 外国で医薬品を購入して日本で副作用が
1849 発現した場合の事例である。
1850
1851 小問(1)は,
1852 日本の裁判所が生産物責任訴訟の国際裁判管轄を
1853 有するか否かを問うており,
1854 財産関係事件に関する国際裁判管轄についての最高裁判例を踏ま
1855 えて,
1856 国際裁判管轄を決する一般的な基準(条理及びその内容)を論じた上で,
1857 本件事例への
1858 当てはめを行うことが必要になる。
1859
1860 具体的には,
1861 民事訴訟法第5条第9号の「不法行為があっ
1862 た地」の概念を明らかにして本事案にあてはめた上,
1863 結果発生地である日本に管轄を認めるこ
1864 とが当事者間の公平,
1865 適正迅速な裁判の実現という理念に反することとなる特段の事情がある
1866 かどうかをXとYの利益状況に照らして具体的に論ずる必要がある。
1867
1868
1869 小問(2)は,
1870 生産物責任の準拠法を問うものである。
1871
1872 法の適用に関する通則法第18条の
1873 要件の当てはめを丁寧に行い,
1874 Yに対する損害賠償請求の準拠法を導き出すことになる。
1875
1876
1877 設問2は,
1878 Xがインターネットを通じて医薬品を購入した事例についての生産物責任の準拠
1879 法を問うものである。
1880
1881 まず,
1882 本事例のような生産物の送付地と受領地が異なる場合の生産物の
1883 引渡地がどこになるのかを通則法第18条の趣旨から論じた上で,
1884 同条ただし書の「その地に
1885 おける生産物の引渡しが通常予見できない」との意義について説明し,
1886 示された事実関係から
1887 どのように判断するかを述べることが求められている。
1888
1889
1890
1891 - 14 -
1892
1893