1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
17 【事
18
19 例】
20 A株式会社(以下「A社」という。)は,取引先の倒産を契機として経営状態が著しく悪化した。
21
22 A社のメインバンクとして,同社の全債務3億円のうち2億5000万円について貸付けを行っ
23 ていたB銀行は,平成19年12月になり,債権全額についてA社から回収することは困難であ
24 ると考え,A社との間で再建計画を作成し,弁済期の到来した2億5000万円の債務について
25 期限を猶予した。しかし,その後A社の経営状態に不安を抱いたB銀行が経理状況を改めて調査
26 したところ,A社には,実際は,総額1億円の簿外債務が存在することが判明した。B銀行は,
27 A社の破たんはいずれ避けられないものと判断して再建計画に基づく協力を取りやめることを決
28 定し,平成20年1月25日にはその旨をA社に告げて再建計画を破棄した。
29 他方,以前からB銀行を抵当権者とする抵当権が設定されていたA社所有の甲土地について
30 は,周辺地域の再開発計画が発表され,地価が上昇したことから,2000万円分の担保余剰が
31 生じた。そこで,A社は,平成20年2月1日,これに抵当権を設定して資金を調達すべく,C
32 銀行に融資を申し込み,C銀行は,同月4日,A社の救済策として,甲土地について第2順位の
33 抵当権を設定して,2000万円を貸し付けた。しかし,A社の破産は必至であると考えていた
34 同社の代表者Dは,融資を受けるに当たり,貸付金を妻のEに贈与することを意図しており,そ
35 の後貸付金はEに交付された。
36 また,F株式会社(以下「F社」という。)は,A社に対して無担保の債権3000万円(以下
37 「S債権」という。)を有していたが,B銀行が再建計画を破棄したことを知り,平成20年2月
38 5日,A社から,同社所有の土地のうち唯一担保の設定されていない乙土地(価格3000万円)
39 を代金3000万円で買い受け,同日,既に弁済期の到来していたS債権をもって乙土地につい
40 ての売買代金債権と相殺する旨の意思表示をした。
41 その後資金繰りに窮したA社は,平成20年3月3日に裁判所に対し自ら破産手続開始の申立
42 てをし,同月10日に破産手続開始の決定がされ,破産管財人Xが選任された。
43 〔設
44
45 問〕
46
47 1. 破産管財人Xは,甲土地に関しC銀行に対して否認権を行使することができるか。
48 2. 破産管財人Xは,F社に対してどのような請求をすべきか。
49
50 - 2 -
51
52 〔第2問〕(配点:50)
53 次の事例について,以下の設問に答えなさい。設問の各問いは相互に独立したものとして答えな
54 さい。
55 【事
56
57 例】
58 A株式会社(以下「A社」という。)の従業員B及びCは,平成20年3月31日付けでA社を
59
60 退職した。退職時にB及びCの給料はすべて支払われていたものの,A社の退職金規程に従えば,
61 Bの退職金額は退職時の月給の5か月分相当額,Cの退職金額は退職時の月給の2か月分相当額
62 であるところ,BにもCにも退職金はまだ支払われていない。A社は同年2月1日に貸金業者D
63 より500万円を,同日貸金業者Eより300万円を,いずれも弁済期は同年3月31日かつ無
64 担保という約定で,A社の代表取締役Fの個人保証付きで借り入れていた。
65 〔設
66
67 問〕
68
69 1. B及びCは,平成20年4月に入ってからFが会社財産の隠匿を始めていると疑っており,
70 退職金の支払を確保するためにA社の財産を保全したいと考えている。Bは,A社について破
71 産手続開始の申立てをすることができるか。また,Cは,A社について破産手続開始の申立て
72 をすることができるか。B及びCの有する権利の破産手続上の地位を明らかにした上で理由を
73 付して説明しなさい。
74 2. A社について平成20年5月1日に破産手続が開始された後,債権調査期日において,Dが
75 届け出た貸金返還請求権について,既にFが弁済したことを理由に全額について異議が述べら
76 れた。以下ののそれぞれの場合に,述べられた異議がDの貸金返還請求権の確定を妨げる
77 かどうかについて,理由を付して説明しなさい。Dの貸金返還請求権にはほかに異議等がない
78 ものとする。
79
80
81 異議を述べたのは,貸金返還請求権について債権届出をしたEであった。
82
83
84
85 異議を述べたのは,退職金請求権について債権届出をしたBであった。
86
87 3. 平成20年4月に入ってからもA社はDに返済をしなかったため,同月7日にDがA社につ
88 いて破産手続開始の申立てをしたところ,この申立てに対する裁判がされる前である同月10
89 日になって,A社は再生手続開始の申立てをした。この場合,A社の破産手続及び再生手続の
90 帰すうについて説明しなさい。
91
92 - 3 -
93
94 - 4 -
95
96 論文式試験問題集[租
97
98 - 5 -
99
100
101
102 法]
103
104 [租
105
106
107
108 法]
109
110 〔第1問〕(配点:50)
111 A(居住者)は,平成10年に甲土地を代金3000万円で購入し,これを20台の自動車が収
112 容可能な平面駐車場として賃貸していた。Aは平成12年に死亡し,その遺産をB(居住者)ら3
113 人の子が相続した。Bらは限定承認をしなかった。Aの死亡時における甲土地の時価は3300万
114 円であった。
115 Bら3人の相続人は,相続後直ちに遺産分割協議を行い,甲土地については,Bがほかの共同相
116 続人に対して代償としての金銭(以下「本件代償金」という。)合計1500万円を支払って,これ
117 を単独取得すること(いわゆる代償分割)で合意した。Bは,金融機関から2000万円を借り入
118 れ,そこから本件代償金を支払い,甲土地の相続登記を済ませた。登録免許税等この相続登記に要
119 した費用は20万円であった。Bは,上記借入金を平成17年に完済したが,そのときまでに支払
120 った利子の合計額のうち本件代償金の額に対応する金額は130万円に上った。
121 Bは,甲土地を取得した後は,Aの駐車場経営を引き継がないこととし,甲土地の上に住宅を建
122 て,自己の居住の用に供した。
123 Bは,平成19年に,甲土地をその上の住宅とともに売却し引き渡した。甲土地の売却価格は
124 5000万円であった。Bは,平成19年分の所得税に係る確定申告において,譲渡所得の金額の
125 計算上,甲土地に係る取得費の額に,@Aが支払った購入代金3000万円,ABが支払った本件
126 代償金1500万円,BBが支払った相続登記費用20万円及びCBが支払った借入金利子のうち
127 本件代償金の額に対応する金額130万円の合計4650万円の各支払金の額を算入した。
128 以上の事案について,租税特別措置法の適用はないものとした上で,以下の設問に答えなさい。
129 〔設
130
131 問〕
132
133 1. Bの平成19年分の所得税に係る確定申告における前記@ないしCの各支払金の取扱いにつ
134 いて,それぞれの適否を論じなさい。その際,それぞれの適否に関する判断理由の中で,必要
135 に応じて,所得税法における譲渡所得課税の趣旨や取得費の意義にも論及しなさい。
136 2. 前記の事案においてBがAの駐車場経営を引き継ぎ,甲土地をそのまま駐車場として賃貸し
137 続けていたとした場合,前記Bの相続登記費用の取扱いがどうなるかについて,所得税法の条
138 文の根拠を摘示して論じなさい。
139
140 - 6 -
141
142 〔第2問〕(配点:50)
143 A建設株式会社(以下「A社」という。)は,毎年3月末日を事業年度末日とする大手の建設会社
144 であり,個人で建設用機械の修理業を営んでいるBと取引関係にあるが,Bが独自の技術を有し,
145 修理代金も割安であったことから,その依頼に応じて何度か同人に融資をしてきた。しかし,Bは,
146 経営がはかばかしくなく,融資を受けた債務の元本について弁済の猶予を受けており,利息につい
147 ても最近2年間はA社に支払えない状態であって,めぼしい財産もなかった。そのような折の平成
148 20年3月,A社は,Bから,新たに500万円の運転資金の融資を依頼された。これに対し,A
149 社は,その依頼を断ったが,その時点でBに対して有していた元利合計で2000万円の債権の全
150 額を放棄することとし,同月中に書面でその旨をBに伝えるとともに,放棄した債権につき貸倒損
151 失として経理処理を行った。
152 これらの事実を前提として,以下の設問に答えなさい。
153 〔設
154
155 問〕
156
157 1. A社が貸倒損失として経理処理した金額について,同社の平成20年3月期の事業年度の所
158 得の金額の計算上損金の額に算入することができるかどうかを,内国法人の各事業年度の所得
159 の金額の計算構造を踏まえつつ論じなさい。
160 2.
161
162 「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合において,当該
163 債務の免除を受けたときは,当該免除に係る債務の金額に相当する金額については,所得
164 税法第36条第1項に規定する収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額に
165 算入されないと解すべきである。」とする見解があるとした場合,それはどのような根拠に
166 基づくものと考えられるかについて論じなさい。
167
168
169
170 前記の見解を前提とした場合において,Bの所得税の課税関係がどうなるのかを論じ
171 なさい。
172
173 - 7 -
174
175 - 8 -
176
177 論文式試験問題集[経
178
179 - 9 -
180
181
182
183 法]
184
185 [経
186
187
188
189 法]
190
191 〔第1問〕(配点:50)
192 以下の事例を前提として,各設問に答えなさい。
193 【事
194
195 例】
196 A社及びB社は乗合バス事業を営む会社である。A社の主要な営業地域は甲市であり,B社の
197
198 主要な営業地域は乙市である。甲市は,東北地方の中央に位置する甲県の県庁所在地であり,そ
199 の人口は約20万人である。乙市は,東北地方の太平洋側に位置する乙県の県庁所在地であり,
200 人口約100万人の政令指定都市である。甲市と乙市との間の主要な移動手段には鉄道(JR)と
201 自動車があるが,その移動に鉄道で約2時間30分,高速道路を利用した自動車で約3時間を要
202 する。
203 甲市ではA社及びX社の2社の乗合バス事業者が,乙市ではB社,C社,Y社及びZ社の4社
204 の乗合バス事業者が営業しており,所有バス台数による市場占有率(シェア)は,A社が甲市で
205 75%,B社が乙市で50%である。なお,C社は乙市で30%のシェアを有している。
206 最近,高速バス(都市間を結び,停車する停留所を限定して運行する急行系統で,運行系統キ
207 ロがおおむね50キロメートル以上の乗合バスをいう。)の運行について,国土交通省の規制が緩
208 和され,新規参入が原則として自由となった。この結果,鉄道よりも料金が安いことから,高速
209 バスの人気が上昇している。市場調査によれば,甲市−乙市間についても,高速バスに対する相
210 当の需要が見込める状況にある。A社は,当初自社単独で甲市−乙市間の高速バスを運行する計
211 画を立てたが,同社は乙市に営業地域を有しないため,乙市内のバス乗場及び車庫,乙市に在住
212 する職員の確保等が困難であって,自社のみではその運行が困難であることが明らかとなった。
213 同時に,他社の参入可能性についても調査したところ,甲市,乙市を主要な営業地域とする各社
214 は,いずれも単独で甲市−乙市間の高速バスを運行することは事業経営上困難であろうとの予測
215 結果が出た。
216 そこで,A社から,B社に対して甲市−乙市間の高速バスの共同運行を打診したところ,同社
217 は関心を示し,この2社の間で高速バスの共同運行を行う計画が検討された。
218 ところで,甲市で一日のバス乗降客数が圧倒的に多いのは甲駅バスターミナルであるが,同タ
219 ーミナルはA社の所有に係る施設であり,X社はその運行に係るバス路線のバス乗場をA社から
220 賃借しているところ,その賃貸借契約においては,X社が当該乗場をどの運行路線の停留所とし
221 て利用するかについてA社の承認が必要であるとされている。また,乙市において,ビジネス街,
222 学校等に近接し,一日のバス乗降客数が格段に多いのは乙駅バスターミナルであるが,同バスタ
223 ーミナルにバス乗場を設置し,保有しているのは,乙市を主要な営業地域とする乗合バス事業者
224 の中でB社及びC社の2社のみであり,ほかの2社は,乙駅から約1キロメートル離れた繁華街
225 に2社共同のバスターミナルを設置し,主として郊外の住宅地との間の路線を運行している。
226 A社及びB社は,協議の結果,2社で甲市−乙市間の高速バスを共同運行することで合意に達
227 した。その共同運行計画として合意した事項は次のとおりである。
228
229
230 2社は,2社間で決定した運行時刻表に従って,各社のバス及び運転手を提供して高速バス
231 を運行する。
232
233
234
235 2社は,それぞれ自社の発券所において高速バスの乗車券を販売するが,乗客の混乱を避け
236 るため,乗客は2社が販売した切符によりいずれのバスにも乗車できることとする。
237 一方,運賃の設定方法等については合意に達せず,なお複数の案を検討中である。それらの案
238
239 とは,@案(共同運行である以上,2社の公平の観点から2社で協議して運賃を決定する。),A
240 案(運賃は各自で決定し,運賃の配分も行わない。),B案(運賃は各自で決定することとするが,
241 運賃売上げは共同でプールした上で,各社の運行回数比によって配分する。)の3案であり,いま
242 だ決着をみていない。
243
244 - 10 -
245
246 〔設問1〕
247 あなたはA社から相談を受けた弁護士である(ただし,設問1に限る。)。
248 A社の担当者は,@案ないしB案について,
249 「A社とB社がJR,自家用車に対抗して高速バス
250 を共同運行するものであり,共同で運行時刻表を決定し,その決定に従って,それぞれのバスを
251 運行させるのであるから@案が自然であり,また運営上も最も支障がないので望ましいというこ
252 とになった。他方で,バスの機材,人件費等を各社で負担するものであり,@案については法的
253 リスクがあるかもしれないという危惧が呈され,A案が提出された。しかし,A案では,いずれ
254 のバスに乗客が乗車するか否かにかかわらず,発券した会社が売上げを保持し得ることとなり,
255 バスの運行と無関係に収益が定まるから,不公平となるという反論が出された。そこで,折衷的
256 にBの案が提案された。」と説明した。
257 上記,の内容の共同運行計画を前提として,運賃の設定等に関する@案ないしB案を比較
258 しつつ,それらの案についての私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁
259 止法」という。)上の問題点とその考え方を論じ,最大の利益が確保でき,かつ独占禁止法に抵触
260 しないような案を示しなさい。
261 〔設問2〕
262 その後,A社及びB社は,独占禁止法に抵触しないような内容で運賃の設定方法を定めた共同
263 運行事業協定を締結し,甲市−乙市間の高速バスの運行を開始したところ,人気を博し,当初期
264 待した以上の売上げを達成した。また,高速バスへの乗換えを希望する乗客が,一般道において
265 もA社又はB社の乗合バスを利用する例が多くなったため,A社の甲市,B社の乙市におけるシ
266 ェアは,それぞれわずかながら増加した。
267 そのような状況をみたX社は,甲市−乙市間の高速バスへの参入を企画し,C社に対して,共
268 同で新規に甲市−乙市間の高速バスを運行することを提案した。C社も,X社の提案に対して前
269 向きに応じ,両社による協議が開始された。
270 他方,C社は,X社の提案を契機に既存のA社及びB社による共同運行への参加についても検
271 討したところ,A社及びB社の共同運行への参加の方がより採算性が高いとの試算結果が出た。
272 そのため,C社は,A社及びB社に対して,その共同運行への参加を申し入れたところ,両社が
273 これに応じたため,X社との協議を打ち切り,A社及びB社の共同運行に参加することとした。
274 A社,B社及びC社の3社は,協議を進め,本件共同運行事業の協定に以下のような条項を盛
275 り込んだ。すなわち,
276 「本件共同運行に,3社以外のほかの事業者を加入させないものとする。ま
277 た,甲市−乙市間の高速バスを運行し,又は運行しようとする3社以外のほかの事業者から甲駅
278 又は乙駅内のバスターミナル内のバス乗場の利用の申出があった場合は,これを拒否する義務を
279 負う。これに反した場合には,ほかの2社にそれぞれ違約金1億円を支払うものとする。」という
280 条項である。その趣旨は,各社にとって,この高速バス事業は初めての試みであって,当該事業
281 に必要な初期投資,すなわち,トイレ設備を有し,リクライニング仕様に優れた新車両の導入や
282 新路線の停留所の設置,広告宣伝などにかなりの費用が必要であるため,相応の利益を確保し,
283 投資金額を最大限回収し得るようにすることにあった。
284 以上のA社,B社及びC社の共同運行事業の協定について,独占禁止法上の問題点を論じなさ
285 い。
286
287 - 11 -
288
289 〔第2問〕(配点:50)
290 以下の事例を前提として,各設問に答えなさい。
291 【事
292
293 例】
294
295
296 X社は,東京都内において「A」という商号,商標を用いてピザ等の宅配を行うフランチ
297 ャイズシステムによる事業活動を行っている。
298 Aは,人気タレントを起用した広告・宣伝活動を行い,低価格でカジュアルなブランドイ
299 メージを訴求することにより,一気にそのシェアを伸ばしたが,競合業者の行う同様の宅配
300 ピザ・フランチャイズであるB,Cが急速にAを追い上げてきている。A,B,Cは,それ
301 ぞれピザ等の宅配を行うフランチャイズシステムであるが,そのピザ等の品質,販売促進活
302 動等について現時点で有意な差はない。
303 各加盟店は,X社とフランチャイズ基本契約(以下「本件契約」という。)を締結して,A
304 フランチャイズシステムに加盟した上,拠点となる営業店舗1個所を設け,ここからピザ,
305 サラダ類,ドリンク,デザートの宅配を行うこととなる。
306
307
308
309 本件契約の内容は,@X社は加盟店に対し,そのピザ等の宅配に係る営業に関し,Aとい
310 う商号,商標を使用することを許諾すること,AX社は,Aフランチャイズシステム本部と
311 して,顧客に対して統一的イメージを確保し,各加盟店の営業を維持するため,加盟店に対
312 する営業指導,統制を行うことができること,B加盟店は,ピザ等の売上げを基礎として一
313 定の方式で算定されるロイヤルティをX社に支払うことを根幹としている。
314 また,本件契約では,加盟店の義務として,本部であるX社の定める営業方針等に従って
315 営業を行うことなどが定められており,加盟店が本件契約上の義務に違反した場合には,X
316 社は,本件契約を解除できるとされている。
317
318
319
320 本件契約に基づいて本部が定めた営業細則には,加盟店が従うべき営業方針等が規定され
321 ており,本部はそれに沿って加盟店に対する営業指導と統制を行っている。その営業方針等
322 と営業指導・統制は,下記のないしのとおりである。
323
324
325
326 加盟店が営業店舗で調理して顧客に提供するピザ,サラダ類については,本部において,
327 その品目,価格等を定めることとされ,加盟店が,これと異なる品目又は価格等でピザ,
328 サラダ類の提供をすることは認められていない。このため,本部において,それらの品目,
329 価格等を記載したチラシを印刷し,これを,加盟店に配布して使用させている。
330 また,加盟店が顧客に提供するドリンク,デザートは,Aという商標が使用された同フ
331 ランチャイズ固有の規格の商品であり,X社が,加盟店にこれらを卸売し,加盟店は,こ
332 れらを本部の定めた価格で顧客に販売提供することとされ,これらの品目,価格等も前記
333 のチラシに記載されている。
334
335
336
337 加盟店が顧客から受注してピザ等の商品の宅配を行う範囲(以下「営業範囲」という。)
338 については,加盟店間で競合が生じないように,本部において,各加盟店の拠点となる営
339 業店舗からの配達時間,距離,人口数等を勘案して,それぞれの営業範囲を具体的に指定
340 している。そして,X社のホームページにおいても,地域ごとに各加盟店の営業範囲が地
341 図上に色分けして表示されており,また,本部が加盟店に配布して使用させる前記のチ
342 ラシにも,各加盟店の営業範囲が明示され,チラシの配布もその営業範囲に限って認めら
343 れている。その上で,加盟店の営業範囲外の顧客から電話等による注文がされたときは,
344 注文を受けた加盟店はその地域を営業範囲とする加盟店にその注文を転送し,その転送先
345 加盟店が受注して宅配を行うこととされている。
346
347
348
349 本部は,加盟店が提供するメニューの統一性を確保し,食材の安全性を保障し,また食
350 材を一括購入することによるスケールメリットを生かす必要があるという理由から,加盟
351 店に対し,ピザの生地,具材等の原材料となる食材,調味料等をX社と提携関係にある輸
352 - 12 -
353
354 入食材卸売業者Y社から仕入れることを義務付けている。
355
356
357 ところで,甲社は,平成16年2月1日,X社との間で本件契約を締結し,Aフランチャ
358 イズシステムの加盟店として,東京都世田谷区内において店舗を設け,ピザ等の宅配の業務
359 を開始したが,平成17年夏ころ,その営業範囲内に相次いでB,Cの新店舗が開店したた
360 め,次第に甲社の客足が減少し,営業成績が落ち込む事態となった。
361 そこで,甲社は,本部の了承を得ることなく,平成18年初めころから,@甲社にピザ等
362 の注文をした顧客に対し,次回以降の甲社のピザ等の宅配の注文時に,ピザ,サラダ類,ド
363 リンク,デザートの代金の20%を割引するという有効期間無期限・利用回数無制限のクー
364 ポン券を配布すること,A甲社店舗の営業範囲には,同じくAフランチャイズシステムに加
365 盟する乙社の店舗の営業範囲が隣接しているところ,乙社店舗の営業範囲のうち,甲社店舗
366 からバイクで15分程度(Aフランチャイズシステムが各加盟店の営業範囲を定めるに当た
367 っては,配達時間に関しては15分程度を目安としている。)の所要時間で宅配が可能である
368 地域に,甲社が独自に作成し,甲社店舗の営業範囲を記載しない折り込みチラシを配布し,
369 当該地域の顧客からのピザ等の宅配の注文も受注すること,B甲社がY社から仕入れている
370 外国製のハムやチーズなどの食材については,食材輸入商社であるW社から同一製品を約2
371 割低い価格で購入できることから,これらについてはW社から仕入れることによって仕入経
372 費を削減するなどの対策を講じたところ,同年末ころまでに営業成績が好転した。
373 ちなみに,クーポン券の利用者は甲社の顧客の8割程度に上っているほか,W社からの食
374 材の購入金額は甲社の食材の仕入金額の半分程度になっている。
375
376
377
378 前記甲社の行為が開始された後,乙社店舗の売上げの30%が,売上粗利益の50%がそ
379 れぞれ減少した。X社は,平成19年夏ころ,乙社から自己の営業範囲内の顧客が甲社に奪
380 われているとの苦情を受けて調査をしたところ,前記4の事実を確認したため,甲社に対し,
381 平成20年4月1日,3か月以内に前記4の@ないしBの各行為をやめなければ,契約上の
382 義務違反により甲社との契約を解除すると通知した。
383
384 〔設問1〕
385 あなたは弁護士として甲社から,前記の事例について公正取引委員会に独占禁止法違反による
386 申告ができないかという相談を受けた。X社による前記3のないしの各営業方針等とそれに
387 基づく営業指導・統制が独占禁止法に違反するか否かを検討しなさい。
388 〔設問2〕
389 さらに,あなたは弁護士として甲社から,X社による本件契約の解除を回避するための法的措
390 置を依頼された。そのための独占禁止法に基づく訴訟の提起の可否について検討しなさい。
391
392 - 13 -
393
394 - 14 -
395
396 論文式試験問題集[知的財産法]
397
398 - 15 -
399
400 [知的財産法]
401 〔第1問〕(配点:50)
402 以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。
403 【事実関係】
404 甲は,傘生地に特殊の樹脂を塗布する防水加工を施すことにより,防水効果を発揮することを
405 特徴とする傘の発明(以下「甲発明」という。)の特許権を有している。
406 乙は,甲発明の特許権について,その存続期間全部に対応する実施料全額を甲に一括して支払
407 って,甲から,専用実施権の設定を受け,甲発明の実施品であるA傘の製造販売をしている。
408 一方で,丙は,甲発明の特許出願がされた後,独自に開発した紫外線を吸収する傘生地に,上
409 記特殊の樹脂を特定の温度条件で塗布する防水加工を施すことにより,紫外線カット(UVカッ
410 ト)効果及び防水効果を共に発揮する傘の発明(以下「丙発明」という。)の特許出願をし,特許
411 権の設定登録を受けた。
412 丁は,丙から,丙発明の特許権について通常実施権の許諾を受け,丙発明の実施品であるB傘
413 の製造販売を開始した。
414 〔設問1〕
415 甲と乙は,それぞれ丁に対し,B傘の製造販売の差止め及び損害賠償を請求することができるか。
416 〔設問2〕
417 1. 丁は,丙発明の特許について,特許無効審判を請求することができるか。
418 2.
419
420 丙発明の特許を無効とする審決が確定した場合,丁は,丙に対し,既払の実施料の返還
421 を請求することができるか。
422
423
424
425 また,前記の審決の確定前の期間に対応する実施料に未払があった場合,丙は,丁に
426 対し,その未払分の実施料の支払を請求することができるか。
427
428 - 16 -
429
430 〔第2問〕(配点:50)
431 以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。
432 【事実関係】
433 北国のA市で生まれ育った甲は,子供のころから小説家になることを夢見て,中学生及び高校
434 生の時に計30編の小説を執筆し,文学に関心を持つ友人と一緒に作成していた同人誌に掲載し
435 た。当該同人誌は,中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された。甲は,高校卒業後,上
436 京して作家となり,多くの有名な小説を発表した。
437 甲がA市に住んでいたころに書いた小説は世間から注目されていなかったが,甲のファンであ
438 る乙は,多大の労力と時間を掛けて,それらの小説が掲載された同人誌を収集した。そして,乙
439 は,それらの小説の中から,甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,その選
440 んだ小説を,甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した「A
441 市時代の甲小説集」を作成し,出版した(以下「乙書籍」といい,これに収録された15編の小
442 説を「乙書籍収録小説」という。)。もっとも,乙は,乙書籍収録小説について,甲が執筆したそ
443 のままの形で乙書籍に収録したのではなく,誤記と思われる数か所の送り仮名を変更し,また,
444 今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有す
445 る現代語に入れ替えた。
446 丙は,乙書籍を読んで,乙書籍収録小説に感銘を受けたが,甲が若いころから有していた文学
447 的才能を明らかにするには,乙書籍の並べ方は適当ではないと思い,乙書籍収録小説を並び替え
448 て収録した「甲青少年期作品集」を作成し,出版した(以下「丙書籍」という。)。丙は,乙書籍
449 における乙書籍収録小説をそのまま丙書籍に収録したが,乙が乙書籍収録小説に変更等を施した
450 ことは知らなかった。
451 A市立図書館は,乙書籍及び丙書籍を購入し,それらをA市民に貸し出している。
452 〔設
453
454 問〕
455
456 1. 甲は,乙に対して,どのような請求をすることができるか。
457 2. 甲は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。
458 3. 甲は,A市に対して,どのような請求をすることができるか。
459 4. 乙は,丙に対して,どのような請求をすることができるか。
460
461 - 17 -
462
463 - 18 -
464
465 論文式試験問題集[労
466
467 - 19 -
468
469
470
471 法]
472
473 [労
474
475
476
477 法]
478
479 〔第1問〕(配点:50)
480 以下のX及びZ(Y社代表取締役社長)の言い分を読んで,次の問いに答えなさい。
481 1. 給与規程改訂前において,XがYに対して支払を求めることができる割増賃金の有無及び金額
482 を,法的問題に触れながら,説明しなさい。ただし,割増賃金の金額は,具体的な数字を示す必
483 要はないが,午後11時まで労働した1日分について,@割増賃金の基礎となる賃金の月額,A
484 割増賃金の支払対象となる労働時間,B割増率を示すこと。
485 2. 改訂後の給与規程が適用されるとした場合,XがYに対して支払を求めることができる割増賃
486 金の有無及び金額を,1と同様に説明しなさい。
487 3. 1,2を踏まえて,改訂後の給与規程がXに適用されるか否かを論じなさい。
488 【Xの言い分】
489 私は,平成18年10月,コンピュータソフトウェアの開発,製造,販売をしているY社(従
490 業員数は,77人)に採用され,会計システム開発グループで「エキスパート」として,専らシ
491 ステムの開発業務を担当しています。同グループには,グループリーダー1人,エキスパート6
492 人,アシスタント2人がいます。就業規則では,勤務時間が午前9時から午後6時まで,休憩時
493 間が正午から午後1時までと定められていますが,入社以来,午前9時に出社し,午後11時に
494 退社するという日が続き,定めのとおり休憩時間は取れるものの,それ以外の時間は労働してい
495 ます。休日は,就業規則に定められているとおり,土日と祝日に取れています。
496 給与は,月給で,平成18年10月以降,エキスパートの「1号」として,基本給30万円,
497 職務手当5万円,通勤手当8000円の合計35万8000円でしたが,平成19年10月から,
498 基本給27万円,超過勤務手当8万円,通勤手当8000円に変更されました。このほかには,
499 残業代等の支給は一切ありません。通勤手当は,通勤経路の定期券代です。採用の際,給与は基
500 本給と手当の合計35万円と通勤費であり,残業代は基本給に含まれるとの説明があり,雇用契
501 約書を交わし,その時は了解しました。職務手当が残業代であるという説明や,長時間の残業が
502 あるとの説明はありませんでした。毎月渡される給与明細書に,基本給のうちの残業代部分の金
503 額や残業時間が記載されていたことはありません。
504 平成19年8月ころ,社長Zが,従業員全員を集めて,同年10月から,エキスパートについ
505 ては,従前の基本給のうちの残業代部分と職務手当を定額の超過勤務手当としての支払に改める
506 という説明をし,個別の面談で基本給や超過勤務手当が幾らになるかの説明がありました。私は,
507 説明を受けた際,基本給の減額や職務手当が支給されなくなるのは納得できないと述べました。
508 給与は銀行振込で支払われ,同月以降の給与支給を受けた際,異議を述べたりはしていませんが,
509 同意をすると述べたこともありません。Y社には,エキスパートが約40人いますが,少なくと
510 も私の属するグループのエキスパート6人は私と同じ意見であり,Zの説明に同意していません。
511 極端な長時間労働をしているので,法律や就業規則で認められている割増賃金の支払をしても
512 らいたいと思います。
513 【Zの言い分】
514 Y社では,システム開発業務の担当者は,アシスタントを除いて管理職として扱っていますが,
515 残業代に相当する金額は基本給や職務手当に含めて支給することにし,残業代という名称では支
516 給しないことにしていました。給与規程は別紙のとおりであり,採用時に十分に説明しています。
517 職務手当は,専門的で高度な業務に対する手当であるという説明をしています。エキスパートの
518 基本給,職務手当は,事務職のものより相当高額になっていました。本人も認めているように,
519 Xは,基本給に残業代相当分が含まれることや,ほかに残業代が支払われないことに同意してい
520 - 20 -
521
522 ました。
523 ただ,従業員から分かりにくいという指摘があったので,給与規程を改訂し,エキスパートに
524 は,残業代に当たる部分をすべて定額の超過勤務手当として支給することにし,職務手当は支給
525 しないことにしました。支給合計額は変わりません。改訂に際しては,従業員全員を集めて十分
526 に説明し,その場で従業員の過半数の賛成により代表者を選んでもらい,その代表者から同意す
527 る旨を記載した書面をもらいました。改訂された給与規程は行政官庁に届け出て,会社内に備え
528 付けています。
529 Xは,採用時に給与の内容に同意していたし,改訂に際しても,個別の面談で詳しい説明を受
530 け,平成19年10月以降異議を述べず給与を受け取っているので,残業代を請求するという言
531 い分は理解できません。
532 なお,Y社は,裁量労働制は採用していません。また,Y社には,労働組合はありません。
533
534 - 21 -
535
536
537
538
539
540 【就業規則(抜粋)(改訂なし)】
541 (賃金)
542 第51条
543
544 従業員の給与に関する事項は,給与規程に定める。
545
546 【給与規程(抜粋)(改訂前)】
547 (目的)
548 第1条
549
550 この規程は,就業規則の定めに基づいて従業員の給与に関する事項を定める。
551
552 (賃金体系と種類)
553 第2条
554
555 従業員の賃金の種類は,次のとおりとする。
556 基本給
557 職務手当
558 超過勤務手当
559 通勤手当
560
561 (管理職に対する特例)
562 第3条
563
564 管理職(エキスパート以上)に対しては,超過勤務手当を支給しない。
565
566 (基本給)
567 第10条
568
569 基本給は,職務グレードごとに,別表のとおり,月額で定める。
570 別表(基本給月額表)の抜粋
571 エキスパート 1
572
573 号 300,000円
574
575
576
577 号 315,000円
578
579 (職務手当)
580 第11条
581
582 職務手当は,職種ごとに,次のとおりとする。
583
584
585
586
587
588
589 エキスパート
590
591
592
593
594
595 月額
596
597 5万円
598
599 (超過勤務手当,割増賃金の計算)
600 第12条
601
602 超過勤務手当は,次の割増賃金とする。
603
604
605 時間外勤務(所定労働時間を超える勤務)
606 通常労働時間の賃金の125パーセント
607
608
609
610 休日勤務
611
612 通常労働時間の賃金の135パーセント
613
614
615
616 深夜勤務(午後10時から午前5時までの勤務)
617 通常労働時間の賃金の25パーセント
618
619 - 22 -
620
621 【給与規程(抜粋)(改訂後)】
622 第1条〜第2条
623 第3条
624
625 〔改訂なし〕
626
627 〔次のとおり改める〕
628 管理職(グループリーダー以上)に対しては,超過勤務手当を支給しない。
629
630 第10条
631
632 〔本文は改訂なし。別表を次のとおり改める〕
633 エキスパート 1
634
635 号 270,000円
636
637
638
639 号 285,000円
640
641 第11条
642
643 〔を削除。他は改訂なし〕
644
645 第12条
646
647 〔改訂なし〕
648
649 第12条の2
650
651 〔新設〕
652
653 エキスパートに対しては,前条の規定にかかわらず,超過勤務手当として,月額8万円
654 を支給する。
655
656 - 23 -
657
658 〔第2問〕(配点:50)
659 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
660 【事
661
662
663 例】
664 Y株式会社(以下「Y社」という。)にはA労働組合が存在し,従業員500人のうち300
665 人がこれに加入している。ところが,平成18年ころから,同組合の一部の組合員の間で,Y
666 社との協調路線を採る執行部に対する批判が高まり,数名の組合員(以下「Xら」という。)が
667 執行部を批判する活動をしたり,執行委員の選挙に立候補するなどの行動をとるようになって
668 いた。
669 平成19年に至り,Xらは,
670 「A労働組合を良くする会」を名乗り,一層の執行部批判に加え
671 て,Y社に対する批判をも行うようになり,同年夏ころからは,同会名義で,執行部批判及び
672 Y社批判を内容とするビラを,Y社に無断で,Y社施設内において従業員に配布したり,Y社
673 施設外で通行人等に配布し,自分たちへの支持を訴えるようになった。
674 さらに,Xらは,
675 「A労働組合を良くする会」の名で開設したホームページでY社批判や組合
676 批判を行うようになり,Y社が業務上従業員に使用させているパソコンを利用してこのホーム
677 ページに書き込み等も行うようになった。
678
679
680
681 著しい誇張や曲解を含む悪質な会社批判のビラがまかれる,ホームページ上で会社に対する
682 誹謗中傷や批判が書き込まれる,会社のパソコンを業務と関係なく使用されるという状況に危
683 機感を抱いたY社は,Xらの行動が別紙の就業規則に反するとして,
684 「本件行為は,就業規則に
685 違反する行為であり,今後同様の行為を行った場合には,本件行為と併せて,就業規則にのっ
686 とり,厳正な懲戒処分を行う。このような行為を直ちに中止するよう警告する。」旨の警告書を
687 Xらに交付した。しかし,この警告にもかかわらず事態は一向に改善されなかったので,Y社
688 は,Xらに対する懲戒処分を行うこととして,まず,A労働組合及びXらからそれぞれ言い分
689 を聴いたところ,次のとおりの回答があった。
690
691 (A労働組合の言い分)
692 「当組合は,会社批判のビラ配布やホームページの開設等を行っていない。Xらの行動は,当組
693 合の方針に基づくものでもなければ,当組合の承認に基づくものでもない。言ってみれば,これ
694 らは,勝手に行った個人の行為であって,当組合の組合活動ではない。よって,懲戒処分につい
695 て組合は関知しないし,組合として会社に対して何らかの行動を起こすことは考えていない。」
696 (Xらの言い分)
697 「我々が行った行為は,所属労働組合を本来のあるべき姿に戻すための良識ある行動である。組
698 合員として組合執行部批判及び会社批判が許されることは当然であり,我々の行為は,正に組合
699 活動である。また,我々の行為によって,会社の業務上,何らかの支障が発生したわけではない。
700 そもそも,ビラ配布は,企業における組合活動として当然認められるべきであり,いちいち会社
701 の許可が必要というわけではない。更に言えば,従来組合がビラ配布を行うにつき,必ずしも会
702 社の許可を得て行っていたわけではない。また,ホームページの開設はだれでも自由であるし,
703 そこにどのような書き込みをするかについて会社の許可など必要ない。さらに,会社のパソコン
704 を使って書き込みをしたからといって,業務上何らかの支障が発生したという事実はないし,他
705 の従業員も,会社のパソコンを使って私的にサイトにアクセスし,閲覧したり,書き込みをした
706 りしている事実がある。にもかかわらず,今回の我々の件についてだけ,突然,会社の許可が必
707 要であるとか,就業規則違反であるという言い分は,筋が通らない。」
708
709 - 24 -
710
711 〔設
712
713 問〕
714
715 1. あなたが,弁護士として,Xらから,
716 「懲戒処分を受けそうだ。懲戒処分には納得できないが,
717 労働組合は動かないので,何とか争って我々の権利を守ってもらいたい。」との相談を受けた場
718 合,どのような機関にいかなる法的救済を求めることができるかについて,その論拠と併せて
719 述べよ。
720 その際,前記両者の言い分も踏まえて,いかなる法的救済が可能であるか,なぜ懲戒処分が
721 違法となるのかにつき,論点を挙げて考え方を述べること。また,不当労働行為を主張する場
722 合には,当該不当労働行為の該当条項を挙げ,なぜその条項に該当するのかも述べること。
723 2. あなたが,弁護士として,Y社から,
724 「このような違法状態を認めるわけにはいかない。就業
725 規則の意味がなくなってしまうので,厳正な懲戒処分を行いたい。」との相談を受けた場合,X
726 らのどの行為を対象として,いかなる懲戒処分を科すように助言するべきか,及びその懲戒処
727 分を正当とする根拠について,懲戒処分を行うに当たって留意すべき点及びXらの言い分に対
728 する反論も指摘しつつ,述べよ。
729
730 - 25 -
731
732
733
734
735
736 【就業規則(抜粋)】
737 第60条
738
739
740 従業員が次のいずれかに該当する場合は,懲戒する。
741 (中略)
742 C
743
744 就業時間中に会社の許可なく業務以外の行為を行ったとき。
745
746 D
747
748 会社の信用を毀損し,会社を誹謗中傷する等の行為を行ったとき。
749
750 E
751
752 許可なく会社の施設・設備を利用し,又は会社施設内において,集会を開き,若しくは
753 放送,掲示,印刷物等のちょう付,配布等をしたとき。
754
755 F
756
757 業務上の指示命令に反し,職場の秩序を乱したとき。
758
759 (中略)
760 H
761
762
763 その他前各号に準ずる行為があったとき。
764 前項各号に該当する場合,情状により,減給,出勤停止又は懲戒解雇のいずれかの懲戒処
765
766 分を科する。
767 第61条
768 懲戒解雇処分を科する場合には,賞罰委員会を開催し,本人の弁明を聴いた上で,賞罰委員会
769 の答申を経なければならない。
770
771 - 26 -
772
773 論文式試験問題集[環
774
775 - 27 -
776
777
778
779 法]
780
781 [環
782
783
784
785 法]
786
787 〔第1問〕(配点:50)
788 検察官は,以下の趣旨の公訴事実により,Aを起訴した。
789 「Aは,B県に隣接するC県の知事の許可を得て産業廃棄物収集運搬処理及び最終処分の事業
790 を営む者であるが,B県知事の許可を受けないで,業として,平成20年1月から3月までの間,
791 処分費用を無料とする一方で運搬費との名目により1回10万円を収受して,計200回にわた
792 り,いずれもB県内にあるD外3名から処理の委託を受けた産業廃棄物である『おから』合計
793 2000トンを収集し,運搬した上で,B県にある自己の工場において,熱処理及び乾燥をして,
794 飼料及び肥料を製造し,もって無許可で産業廃棄物の収集,運搬,処分を業として行ったもので
795 ある。」
796 Aの弁護人の主張としてはどのようなことが考えられるか。これに対する検察官の反論としては
797 どのようなことが考えられるか。それぞれについて,再生利用(リサイクル)との関係にも配慮し
798 て答えよ。
799 なお,
800 「おから」は,国内において有料で(処理者に支払をして)処理が委託されている状況にあ
801 るものの,全国で発生量の5%が食用として売買され,利用されているものとする。
802
803 - 28 -
804
805 〔第2問〕(配点:50)
806 A県内のB地区内に,石綿(アスベスト)を発生,飛散させる原因となる建築材料が大量に使用
807 されている古いビル2棟(以下「ビル1」,
808 「ビル2」という。)が隣接して存在していた。その所有
809 者は,ビル1がC,ビル2がDであり,B地区住民であるEは,ビル1,ビル2と道路を面した向
810 かい側に住居を構えている。Cが平成19年4月からビル1の解体作業をしたところ,Eは,自宅
811 の敷地内の大気中に,石綿が浮遊していることを確認した。
812 Eは,石綿吸入による健康被害の不安を感じていたところ,今度はDが同年6月からビル2を解
813 体する予定であることを聞き及んだ。Eは,近隣住民全体の健康に影響を及ぼすおそれがあると考
814 えてB地区自治会に自治会として対策を講じるように申し入れた。これを受け,B地区自治会は,
815 A県を介し,Dに対して石綿飛散防止の措置が十分に講じられるように求める申入れを行った。そ
816 の結果,B地区自治会とDとの間で資料1のような内容の公害防止協定が交わされた。
817 その後,Dは,ビル2の解体作業に着手したが,E宅の敷地内の大気中に,公害防止協定第2条
818 で定めた許容基準を超える石綿が浮遊していることが確認された。A県が調査したところ,Dは,
819 石綿を発生,飛散させる原因となる建築材料の除去を行う場所をほかの場所から全く隔離していな
820 いことが明らかとなった。
821 資料2は,厚生労働省が石綿について一般向けに説明するために作成したパンフレットの抜粋で
822 あり,これを参照しながら,以下の設問に答えよ。
823 〔設問1〕
824 Dによるビル2の解体作業がなお続いているという状況の下で,A県知事としては,どのよう
825 な措置を講ずることができるか。また,Eは,Dに対してどのような訴訟上の請求をすることが
826 できるか。
827 〔設問2〕
828 Dによるビル2の解体作業が終了したが,Eは,石綿吸入による健康被害の不安を抑え切れな
829 いでいる。Eは,C及びDに対してどのような訴訟上の請求をすることができるか。
830
831 - 29 -
832
833 資料1
834 公害防止協定書
835 B地区自治会とDは,Dが行うビル2の解体工事について,同ビルの近隣住民のために次のとおり
836 公害防止協定を締結する。
837 第1条
838
839 Dは,その所有するビル2の解体工事に当たって,周辺に石綿を飛散させないための措置を
840
841 講ずることを約束する。
842 第2条
843
844 Dは,近隣住民の自宅敷地内の大気中において,1リットルにつき1本を超える石綿を飛散
845
846 させないことを約束する。
847
848 - 30 -
849
850 資料2
851
852
853 石綿(アスベスト)とは?
854 石綿(アスベスト)は,天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」
855 「いしわた」と呼ばれ
856 ています。
857 その繊維が極めて細いため,研磨機,切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹き付け石綿
858 などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがあり
859 ます。以前はビル等の建築工事において,保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われてい
860 ましたが,昭和50年に原則禁止されました。
861 その後も,スレート材,ブレーキライニングやブレーキパッド,防音材,断熱材,保温材など
862 で使用されましたが,現在では,原則として製造等が禁止されています。
863 石綿は,そこにあること自体が直ちに問題なのではなく,飛び散ること,吸い込むことが問題
864 となります。
865
866
867
868 石綿が原因で発症する病気は?
869 石綿(アスベスト)の繊維は,肺線維症(じん肺),悪性中皮腫の原因になるといわれ,肺がん
870 を起こす可能性があることが知られています(WHO報告)。石綿による健康被害は,石綿を扱っ
871 てから長い年月を経て出てきます。例えば,中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発
872 病することが多いとされています。仕事を通して石綿を扱っている方,あるいは扱っていた方は,
873 その作業方法にもよりますが,石綿を扱う機会が多いことになりますので,定期的に健康診断を
874 受けることをお勧めします。
875 石綿を吸うことにより発生する疾病としては主に次のものがあります。労働基準監督署の認定
876 を受け,業務上疾病とされると,労災保険で治療できます。
877
878
879 石綿(アスベスト)肺
880 肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすもの
881 としては石綿のほか,粉じん,薬品等多くの原因があげられますが,石綿のばく露によって起
882 きた肺線維症を特に石綿肺と呼んで区別しています。職業上アスベスト粉じんを10年以上吸
883 入した労働者に起こるといわれており,潜伏期間は15〜20年といわれております。アスベ
884 ストばく露をやめた後でも進行することもあります。
885
886
887
888 肺がん
889 石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが,肺細胞に取り込まれ
890 た石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。また,喫煙と深い関係
891 にあることも知られています。アスベストばく露から肺がん発症までに15〜40年の潜伏期
892 間があり,ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。治療法には外科治
893 療,抗がん剤治療,放射線治療などがあります。
894
895
896
897 悪性中皮腫
898 肺を取り囲む胸膜,肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜,心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等
899 にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方のほうが悪性中皮腫になりや
900 すいことが知られています。潜伏期間は20〜50年といわれています。治療法には外科治療,
901 抗がん剤治療,放射線治療などがあります。
902
903
904
905 どの程度の量のアスベストを吸い込んだら発病するのか?
906 アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていま
907 すが,短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については不明な点が多いとされています。
908 現時点では,どれくらい以上のアスベストを吸えば,中皮腫になるかということは明らかではあ
909 りません。
910
911
912
913 省略
914 - 31 -
915
916
917
918 アスベストを吸い込んだかどうかはどのような検査で分かるのか?
919 胸部エックス線写真でアスベストを吸い込んでいた可能性を示唆する所見が見られる場合もあ
920 りますが,アスベストを吸い込んだ方すべてに胸部エックス線写真の所見があるとは限りません。
921
922
923
924 吸い込んだアスベストは除去できるか?
925 いったん吸い込んだアスベストの一部は異物として痰の中に混ざり,体外に排出されますが,
926 大量のアスベストを吸い込んだ場合や大きなアスベストは除去されずに肺内に蓄積されると言わ
927 れています。
928
929
930
931 アスベストが原因で発症する疾患に特有の症状はあるか?
932 発病し,更にある程度進行するまでは無症状のことが多いと言われています。
933
934
935
936 中皮腫や肺がんの発症を予防するにはどうすればよいか?
937 過去,石綿にばく露したことによる中皮腫や肺がんの発症を予防することについては現在有効
938 な手段は明らかではありませんが,石綿を吸い込んだ方がすべて中皮腫を発症するわけではあり
939 ません。吸い込んだ石綿の量,期間,種類によって異なります。
940 肺がんについては,石綿ばく露と喫煙との組合せで肺がんの発症は相乗的に上昇するとの報告
941 があり,禁煙は重要です。
942
943
944
945 省略
946
947
948
949 省略
950
951
952
953 昔,石綿工場の近くに住んでいたことがあるが大丈夫か?
954 中皮腫は吸い込んだ石綿の量が多いほど発症のリスクが高いと考えられており,労働者など直
955 接石綿又は石綿含有の製品を取り扱う方は大量にかつ長期にわたって吸い込むので,最もリスク
956 が高いと考えられています。
957 昭和30年代から40年代ころの間に石綿工場の周辺に居住していた住民の中皮腫の発症につ
958 いては,その実態が明らかではありませんが,国においても情報の収集等を行って,一般住民の
959 リスクについて検討することとしています。
960
961
962
963 省略
964
965
966
967 省略
968
969
970
971 省略
972
973
974
975 建築物(事務所,店舗,倉庫等)はアスベストの危険性があるか?
976 建築物においては,
977
978
979 耐火被覆材等として吹き付けアスベストが
980
981
982
983 屋根材,壁材,天井材等としてアスベストを含んだセメント等を板状に固めたスレートボー
984 ド等が
985
986 使用されている可能性があります。
987 アスベストは,その繊維が空気中に浮遊した状態にあると危険であると言われています。
988 すなわち,露出して吹き付けアスベストが使用されている場合,劣化等によりその繊維が飛散
989 するおそれがありますが,板状に固めたスレートボードや,天井裏・壁の内部にある吹き付けア
990 スベストからは,通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられます。
991 吹き付けアスベストは,比較的規模の大きい鉄骨造の建築物の耐火被覆として使用されている
992 場合がほとんどです。
993 建築時の工事業者や建築士等に使用の有無を問い合わせてみるなどの対応が考えられます。
994
995
996 建築物(事務所,店舗,倉庫等)に吹き付けアスベストが使用されている場合においては,ど
997 うしたらよいか?
998 吹き付けられたアスベストが劣化等により粉じんを発散させ,労働者がその粉じんにばく露す
999 るおそれがあるときは,除去,封じ込め,囲い込み等の措置を講じなければならないこととされ
1000 ています。
1001 - 32 -
1002
1003 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1004
1005 - 33 -
1006
1007 [国際関係法(公法系)]
1008 〔第1問〕(配点:50)
1009 次の事例について,国際判例を踏まえて後記の設問に答えなさい。
1010 A国に派遣されているB国外交官乙が,A国内でA国軍人甲から,金銭と交換に極秘軍事文書
1011 を受け取るという計画があった。乙が甲から極秘軍事文書を受け取ることを事前に察知したA国
1012 警察当局は,その場に警察官を張り込ませていたところ,甲から乙に極秘文書が受け渡された。
1013 それを現認した警察官は,その場で甲,乙両人を「スパイ罪」の容疑で逮捕し,警察施設に拘束
1014 した。B国政府は直ちにA国政府に対してA国政府の措置が国際法に反している旨の抗議を行い,
1015 乙の即時釈放を要求した。しかし,数日たってもA国政府はB国の釈放要求にこたえずに乙を拘
1016 束し続けている。A国政府はB国に対して,公式な声明は出していないが,A国政府高官丙は,
1017 記者団に対して,
1018 「乙がA国内で重大犯罪を犯した以上,乙がたとえ外交官であっても,真相が解
1019 明されるまで,A国警察に拘束されるのは当然である。」と述べた。
1020 〔設
1021
1022 問〕
1023
1024 1. A国政府高官丙の発言について,理由を付して論評しなさい。
1025 2. A国政府は,乙が甲を唆してA国の極秘軍事文書を受け取ったことを現認したが,その場で
1026 逮捕しなかった場合,B国及び乙に対して国際法上どのような措置を採り得るかについて,あ
1027 らゆる可能性を考えて説明しなさい。
1028 3. 乙が拘束され続ける場合には,B国政府は国際法上どのような措置を採ることができるかを,
1029 裁判外の措置とその内容,及び裁判上の措置とその内容に分けて説明しなさい。
1030 なお,AB両国は,
1031 「相互にその権利を争うすべての紛争は,国際司法裁判所に付託される。」
1032 と規定する条約を20年前から結んでいる。
1033
1034 - 34 -
1035
1036 〔第2問〕(配点:50)
1037 次の文章を読んで,後記の設問に答えなさい。
1038 A国とB国との間には,安全保障条約が結ばれている。それに基づいて,B国の領土には,A
1039 国の軍事基地がある。この軍事基地では,夜間から早朝においてもA国軍隊のジェット機が離発
1040 着し,それに伴う地上における活動が日常的に行われている。これらの活動に起因する騒音によ
1041 って,当該基地の付近に居住する住民は,精神的及び身体的な被害を被っている。そこで,当該
1042 基地の付近に居住する住民のうちのXは,B国の国内裁判所へ,A国を被告として損害賠償を請
1043 求する訴訟の提起を考えている。
1044 A国は,安全保障条約上の関連条文に基づき,A国軍隊の活動の結果が基地外に及ぶ場合には,
1045 公共の安全に配慮する義務を負う。また,A国軍隊は,B国の法令を尊重する義務を負っている。
1046 さらにこの条約には,次の条項がある。
1047 第6条
1048
1049 公務執行中のA国軍隊の構成員の作為又は不作為あるいはA国軍隊が法律上責任を
1050
1051 有するその他の作為,不作為,若しくは事故を原因とするB国における損害賠償請求に
1052 関しては,A国政府との間で解決するのではなく,B国政府との間で解決するものとす
1053 る。
1054 〔設
1055
1056 問〕
1057 文章の事例において,A国軍隊の航空機による夜間離発着やそれに伴う活動を原因とする損害
1058
1059 に関して,損害賠償請求訴訟を提起されたB国裁判所は,確立した国際法の原則に従って,本事
1060 例の固有の法状況を踏まえて,B国の裁判管轄権につきどのように判断すべきかについて,自己
1061 の見解とその理由を述べなさい。
1062 なお,一国の領域内における他国の行為や他国の不動産をめぐる訴訟に関して,領域国の民事
1063 裁判権が肯定される国内裁判事例やこれを明定する国内法が増えてきているという事実がある。
1064
1065 - 35 -
1066
1067 - 36 -
1068
1069 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1070
1071 - 37 -
1072
1073 [国際関係法(私法系)]
1074 〔第1問〕(配点:50)
1075 日本に常居所を有する60歳の甲国人男Aは,事理を弁識する能力を欠く常況にあったため,日
1076 本の裁判所により後見開始の審判を受け,嫡出子である甲国人Xが,Aの後見人として選任された。
1077 Aには認知をしていなかった甲国人の非嫡出子Yがいた。一時的に事理を弁識する能力を回復した
1078 Aは,日本において,遺言書に「Yを自己の子として認知する。」旨,日付及び氏名を自署し,これ
1079 に押印した。遺言書作成に当たっては,医師1名が立ち会い,Aに事理を弁識する能力のあること
1080 を確認する旨を遺言書に付記し,署名押印している。その後,Aは,日本国籍を取得し,日本にお
1081 いて死亡した。Yは,日本において,Aの遺産の分割をXに対して求めている。
1082 この事例について,甲国の国際私法からの反致はないものとして,以下の設問に答えなさい。
1083 なお,設問の各問いは,いずれも独立したものである。また,甲国の民法は,その要件・効果と
1084 も,日本の民法が定める後見制度と同視することができる後見制度を有しており,認知と遺言につ
1085 いては次の規定があること及び本件事例には法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)
1086 が適用されることを前提とする。
1087 【甲国の民法】
1088 第P条
1089
1090 父が被後見人であるときは,後見人の同意を得て認知をすることができる。
1091
1092 第Q条
1093
1094 認知は,遺言によっても,することができる。
1095
1096 第R条
1097
1098 認知には,子の承諾を要しない。
1099
1100 第S条
1101
1102 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自署し,これ
1103
1104 に印を押さなければならない。
1105 第T条
1106
1107
1108 被後見人は,その事理を弁識する能力が回復したときに限り,遺言をすることができる。
1109
1110 前項の場合には,医師1名以上が事理を弁識する能力のあることを遺言書に付記し,署名押
1111 印しなければならない。
1112
1113 第U条
1114 〔設
1115
1116 遺言は,遺言者の死亡した時からその効力を生ずる。
1117
1118 問〕
1119
1120 1. Aは遺言能力を有しているか。
1121 2. Aの遺言は方式に関して有効に成立しているか。
1122 3. Aの遺言が有効に成立しているとした場合,Yの認知は有効に成立しているか。
1123 なお,A死亡の時点においてYは20歳であり,Xは,AによるYの認知を容認しない態度
1124 をとっているとする。
1125
1126 - 38 -
1127
1128 〔第2問〕(配点:50)
1129 日本のX会社は,乙国のA会社から所定の大きさの箱に詰めた冷凍エビを輸入することとし,A
1130 との間で,
1131 「Xが船舶の手配をし,運送賃を支払う。Aが冷凍エビを詰めた約定の数量の箱を乙国の
1132 港で運送人に引き渡すことによって商品の引渡しとする。売買代金はXが日本の銀行に開設する信
1133 用状による決済とする。」旨の約定で契約した。その後,Xは,海上運送業者Y会社に乙国の港から
1134 日本の港までの海上運送を依頼し,Aは,Yが提供した冷凍貨物用のコンテナー1個に自ら冷凍エ
1135 ビを詰めた約定の数の箱を積み込んで施錠し,運送中の温度管理についてYに指示をして,当該コ
1136 ンテナーを乙国の港にあるYのコンテナー・ヤードで引き渡した。
1137 Yがコンテナーの船積後にAに交付した船荷証券上の運送品の種類,運送品の容積,重量,包・
1138 個品の数,運送品の記号を記載する欄には,当該コンテナーを特定する記号及び番号の記載と,そ
1139 の内容は冷凍エビを詰めた一定数の箱であるとの記載がある。
1140 日本の港での陸揚後,Xが,船荷証券を呈示してYからコンテナーの引渡しを受け,直ちにその
1141 中を検査したところ,コンテナー内の温度が適当でなかったため,冷凍エビの鮮度が落ちており,
1142 Xは当該冷凍エビを市価の3割程度で売却せざるを得なかった。そこで,Xは,コンテナーの受取
1143 から引渡しまでの間のYの措置が適切でなかったとして,Yに対する損害賠償請求の訴えを日本の
1144 裁判所に提起した。
1145 この事例について,以下の設問に答えなさい。
1146 なお,設問の各問いは,いずれも独立したものである。また,この事例及び設問における日本の
1147 会社,乙国の会社,丙国の会社とは,それぞれ,日本,乙国,丙国で設立され,設立された国に主
1148 たる営業所を有する会社をいうものとする。
1149 〔設
1150
1151 問〕
1152
1153 1. Yが丙国の会社であるとし,YがAに交付した船荷証券には「本件運送契約から生ずる運送
1154 人の責任についての争いは,Yの主たる営業所の所在地である丙国のM市の裁判所においての
1155 み解決する。」との条項が記載されているものとする。
1156 Yは,この条項に基づいて,日本の裁判所は本件訴訟について管轄権を有しないと主張して
1157 いる。これに対して,Xは,この条項はXとYの双方が署名した書面によるものではないとの
1158 理由で,本件訴訟については丙国の裁判所には管轄権がなく,日本の裁判所に管轄権があると
1159 主張している。
1160 このYの主張は認められるか。
1161 なお,丙国では,被告の住所又は主たる営業所の所在地の裁判所は被告に対する訴えについ
1162 て管轄権を有するとしている。また,日本と丙国は,いずれも,
1163 「1968年2月23日の議定
1164 書によって改正された1924年8月25日の船荷証券に関するある規則の統一のための国際
1165 条約を改正する議定書」の締約国である。
1166 2. Yが日本の会社であり,YがAに交付した船荷証券には「本件運送契約から生ずる運送人の
1167 責任についての争いは,日本のN市の裁判所において,日本法によって解決する。」との条項が
1168 記載されているものとする。
1169
1170
1171 XがYに対して冷凍エビの商品価値の下落についての損害賠償責任を追及することができ
1172 るのは,どのような場合か。
1173
1174
1175
1176 XがYに対して損害賠償責任を追及することができるとした場合,冷凍エビに関する損害
1177 賠償の金額は,どのようにして算定されるか。
1178
1179 - 39 -
1180
1181