1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 【事
21
22 例】
23 A株式会社(以下「A社」という。
24
25 )は,
26 取引先の倒産を契機として経営状態が著しく悪化した。
27
28
29
30 A社のメインバンクとして,
31 同社の全債務3億円のうち2億5000万円について貸付けを行っ
32 ていたB銀行は,
33 平成19年12月になり,
34 債権全額についてA社から回収することは困難であ
35 ると考え,
36 A社との間で再建計画を作成し,
37 弁済期の到来した2億5000万円の債務について
38 期限を猶予した。
39
40 しかし,
41 その後A社の経営状態に不安を抱いたB銀行が経理状況を改めて調査
42 したところ,
43 A社には,
44 実際は,
45 総額1億円の簿外債務が存在することが判明した。
46
47 B銀行は,
48
49 A社の破たんはいずれ避けられないものと判断して再建計画に基づく協力を取りやめることを決
50 定し,
51 平成20年1月25日にはその旨をA社に告げて再建計画を破棄した。
52
53
54 他方,
55 以前からB銀行を抵当権者とする抵当権が設定されていたA社所有の甲土地について
56 は,
57 周辺地域の再開発計画が発表され,
58 地価が上昇したことから,
59 2000万円分の担保余剰が
60 生じた。
61
62 そこで,
63 A社は,
64 平成20年2月1日,
65 これに抵当権を設定して資金を調達すべく,
66
67 銀行に融資を申し込み,
68 C銀行は,
69 同月4日,
70 A社の救済策として,
71 甲土地について第2順位の
72 抵当権を設定して,
73 2000万円を貸し付けた。
74
75 しかし,
76 A社の破産は必至であると考えていた
77 同社の代表者Dは,
78 融資を受けるに当たり,
79 貸付金を妻のEに贈与することを意図しており,
80
81 の後貸付金はEに交付された。
82
83
84 また,
85 F株式会社(以下「F社」という。
86
87 )は,
88 A社に対して無担保の債権3000万円(以下
89 「S債権」という。
90
91 )を有していたが,
92 B銀行が再建計画を破棄したことを知り,
93 平成20年2月
94 5日,
95 A社から,
96 同社所有の土地のうち唯一担保の設定されていない乙土地(価格3000万円)
97 を代金3000万円で買い受け,
98 同日,
99 既に弁済期の到来していたS債権をもって乙土地につい
100 ての売買代金債権と相殺する旨の意思表示をした。
101
102
103 その後資金繰りに窮したA社は,
104 平成20年3月3日に裁判所に対し自ら破産手続開始の申立
105 てをし,
106 同月10日に破産手続開始の決定がされ,
107 破産管財人Xが選任された。
108
109
110 〔設
111
112 問〕
113
114 1. 破産管財人Xは,
115 甲土地に関しC銀行に対して否認権を行使することができるか。
116
117
118 2. 破産管財人Xは,
119 F社に対してどのような請求をすべきか。
120
121
122
123 - 2 -
124
125 〔第2問〕(配点:50)
126 次の事例について,
127 以下の設問に答えなさい。
128
129 設問の各問いは相互に独立したものとして答えな
130 さい。
131
132
133 【事
134
135 例】
136 A株式会社(以下「A社」という。
137
138 )の従業員B及びCは,
139 平成20年3月31日付けでA社を
140
141 退職した。
142
143 退職時にB及びCの給料はすべて支払われていたものの,
144 A社の退職金規程に従えば,
145
146 Bの退職金額は退職時の月給の5か月分相当額,
147 Cの退職金額は退職時の月給の2か月分相当額
148 であるところ,
149 BにもCにも退職金はまだ支払われていない。
150
151 A社は同年2月1日に貸金業者D
152 より500万円を,
153 同日貸金業者Eより300万円を,
154 いずれも弁済期は同年3月31日かつ無
155 担保という約定で,
156 A社の代表取締役Fの個人保証付きで借り入れていた。
157
158
159 〔設
160
161 問〕
162
163 1. B及びCは,
164 平成20年4月に入ってからFが会社財産の隠匿を始めていると疑っており,
165
166 退職金の支払を確保するためにA社の財産を保全したいと考えている。
167
168 Bは,
169 A社について破
170 産手続開始の申立てをすることができるか。
171
172 また,
173 Cは,
174 A社について破産手続開始の申立て
175 をすることができるか。
176
177 B及びCの有する権利の破産手続上の地位を明らかにした上で理由を
178 付して説明しなさい。
179
180
181 2. A社について平成20年5月1日に破産手続が開始された後,
182 債権調査期日において,
183 Dが
184 届け出た貸金返還請求権について,
185 既にFが弁済したことを理由に全額について異議が述べら
186 れた。
187
188 以下ののそれぞれの場合に,
189 述べられた異議がDの貸金返還請求権の確定を妨げる
190 かどうかについて,
191 理由を付して説明しなさい。
192
193 Dの貸金返還請求権にはほかに異議等がない
194 ものとする。
195
196
197
198
199 異議を述べたのは,
200 貸金返還請求権について債権届出をしたEであった。
201
202
203
204
205
206 異議を述べたのは,
207 退職金請求権について債権届出をしたBであった。
208
209
210
211 3. 平成20年4月に入ってからもA社はDに返済をしなかったため,
212 同月7日にDがA社につ
213 いて破産手続開始の申立てをしたところ,
214 この申立てに対する裁判がされる前である同月10
215 日になって,
216 A社は再生手続開始の申立てをした。
217
218 この場合,
219 A社の破産手続及び再生手続の
220 帰すうについて説明しなさい。
221
222
223
224 - 3 -
225
226 - 4 -
227
228 論文式試験問題集[租
229
230 - 5 -
231
232
233
234 法]
235
236 [租
237
238
239
240 法]
241
242 〔第1問〕(配点:50)
243 A(居住者)は,
244 平成10年に甲土地を代金3000万円で購入し,
245 これを20台の自動車が収
246 容可能な平面駐車場として賃貸していた。
247
248 Aは平成12年に死亡し,
249 その遺産をB(居住者)ら3
250 人の子が相続した。
251
252 Bらは限定承認をしなかった。
253
254 Aの死亡時における甲土地の時価は3300万
255 円であった。
256
257
258 Bら3人の相続人は,
259 相続後直ちに遺産分割協議を行い,
260 甲土地については,
261 Bがほかの共同相
262 続人に対して代償としての金銭(以下「本件代償金」という。
263
264 )合計1500万円を支払って,
265 これ
266 を単独取得すること(いわゆる代償分割)で合意した。
267
268 Bは,
269 金融機関から2000万円を借り入
270 れ,
271 そこから本件代償金を支払い,
272 甲土地の相続登記を済ませた。
273
274 登録免許税等この相続登記に要
275 した費用は20万円であった。
276
277 Bは,
278 上記借入金を平成17年に完済したが,
279 そのときまでに支払
280 った利子の合計額のうち本件代償金の額に対応する金額は130万円に上った。
281
282
283 Bは,
284 甲土地を取得した後は,
285 Aの駐車場経営を引き継がないこととし,
286 甲土地の上に住宅を建
287 て,
288 自己の居住の用に供した。
289
290
291 Bは,
292 平成19年に,
293 甲土地をその上の住宅とともに売却し引き渡した。
294
295 甲土地の売却価格は
296 5000万円であった。
297
298 Bは,
299 平成19年分の所得税に係る確定申告において,
300 譲渡所得の金額の
301 計算上,
302 甲土地に係る取得費の額に,
303 @Aが支払った購入代金3000万円,
304 ABが支払った本件
305 代償金1500万円,
306 BBが支払った相続登記費用20万円及びCBが支払った借入金利子のうち
307 本件代償金の額に対応する金額130万円の合計4650万円の各支払金の額を算入した。
308
309
310 以上の事案について,
311 租税特別措置法の適用はないものとした上で,
312 以下の設問に答えなさい。
313
314
315 〔設
316
317 問〕
318
319 1. Bの平成19年分の所得税に係る確定申告における前記@ないしCの各支払金の取扱いにつ
320 いて,
321 それぞれの適否を論じなさい。
322
323 その際,
324 それぞれの適否に関する判断理由の中で,
325 必要
326 に応じて,
327 所得税法における譲渡所得課税の趣旨や取得費の意義にも論及しなさい。
328
329
330 2. 前記の事案においてBがAの駐車場経営を引き継ぎ,
331 甲土地をそのまま駐車場として賃貸し
332 続けていたとした場合,
333 前記Bの相続登記費用の取扱いがどうなるかについて,
334 所得税法の条
335 文の根拠を摘示して論じなさい。
336
337
338
339 - 6 -
340
341 〔第2問〕(配点:50)
342 A建設株式会社(以下「A社」という。
343
344 )は,
345 毎年3月末日を事業年度末日とする大手の建設会社
346 であり,
347 個人で建設用機械の修理業を営んでいるBと取引関係にあるが,
348 Bが独自の技術を有し,
349
350 修理代金も割安であったことから,
351 その依頼に応じて何度か同人に融資をしてきた。
352
353 しかし,
354 Bは,
355
356 経営がはかばかしくなく,
357 融資を受けた債務の元本について弁済の猶予を受けており,
358 利息につい
359 ても最近2年間はA社に支払えない状態であって,
360 めぼしい財産もなかった。
361
362 そのような折の平成
363 20年3月,
364 A社は,
365 Bから,
366 新たに500万円の運転資金の融資を依頼された。
367
368 これに対し,
369
370 社は,
371 その依頼を断ったが,
372 その時点でBに対して有していた元利合計で2000万円の債権の全
373 額を放棄することとし,
374 同月中に書面でその旨をBに伝えるとともに,
375 放棄した債権につき貸倒損
376 失として経理処理を行った。
377
378
379 これらの事実を前提として,
380 以下の設問に答えなさい。
381
382
383 〔設
384
385 問〕
386
387 1. A社が貸倒損失として経理処理した金額について,
388 同社の平成20年3月期の事業年度の所
389 得の金額の計算上損金の額に算入することができるかどうかを,
390 内国法人の各事業年度の所得
391 の金額の計算構造を踏まえつつ論じなさい。
392
393
394 2.
395
396 「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合において,
397 当該
398 債務の免除を受けたときは,
399 当該免除に係る債務の金額に相当する金額については,
400 所得
401 税法第36条第1項に規定する収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額に
402 算入されないと解すべきである。
403
404 」とする見解があるとした場合,
405 それはどのような根拠に
406 基づくものと考えられるかについて論じなさい。
407
408
409
410
411
412 前記の見解を前提とした場合において,
413 Bの所得税の課税関係がどうなるのかを論じ
414 なさい。
415
416
417
418 - 7 -
419
420 - 8 -
421
422 論文式試験問題集[経
423
424 - 9 -
425
426
427
428 法]
429
430 [経
431
432
433
434 法]
435
436 〔第1問〕(配点:50)
437 以下の事例を前提として,
438 各設問に答えなさい。
439
440
441 【事
442
443 例】
444 A社及びB社は乗合バス事業を営む会社である。
445
446 A社の主要な営業地域は甲市であり,
447 B社の
448
449 主要な営業地域は乙市である。
450
451 甲市は,
452 東北地方の中央に位置する甲県の県庁所在地であり,
453
454 の人口は約20万人である。
455
456 乙市は,
457 東北地方の太平洋側に位置する乙県の県庁所在地であり,
458
459 人口約100万人の政令指定都市である。
460
461 甲市と乙市との間の主要な移動手段には鉄道(JR)と
462 自動車があるが,
463 その移動に鉄道で約2時間30分,
464 高速道路を利用した自動車で約3時間を要
465 する。
466
467
468 甲市ではA社及びX社の2社の乗合バス事業者が,
469 乙市ではB社,
470 C社,
471 Y社及びZ社の4社
472 の乗合バス事業者が営業しており,
473 所有バス台数による市場占有率(シェア)は,
474 A社が甲市で
475 75%,
476 B社が乙市で50%である。
477
478 なお,
479 C社は乙市で30%のシェアを有している。
480
481
482 最近,
483 高速バス(都市間を結び,
484 停車する停留所を限定して運行する急行系統で,
485 運行系統キ
486 ロがおおむね50キロメートル以上の乗合バスをいう。
487
488 )の運行について,
489 国土交通省の規制が緩
490 和され,
491 新規参入が原則として自由となった。
492
493 この結果,
494 鉄道よりも料金が安いことから,
495 高速
496 バスの人気が上昇している。
497
498 市場調査によれば,
499 甲市−乙市間についても,
500 高速バスに対する相
501 当の需要が見込める状況にある。
502
503 A社は,
504 当初自社単独で甲市−乙市間の高速バスを運行する計
505 画を立てたが,
506 同社は乙市に営業地域を有しないため,
507 乙市内のバス乗場及び車庫,
508 乙市に在住
509 する職員の確保等が困難であって,
510 自社のみではその運行が困難であることが明らかとなった。
511
512
513 同時に,
514 他社の参入可能性についても調査したところ,
515 甲市,
516 乙市を主要な営業地域とする各社
517 は,
518 いずれも単独で甲市−乙市間の高速バスを運行することは事業経営上困難であろうとの予測
519 結果が出た。
520
521
522 そこで,
523 A社から,
524 B社に対して甲市−乙市間の高速バスの共同運行を打診したところ,
525 同社
526 は関心を示し,
527 この2社の間で高速バスの共同運行を行う計画が検討された。
528
529
530 ところで,
531 甲市で一日のバス乗降客数が圧倒的に多いのは甲駅バスターミナルであるが,
532 同タ
533 ーミナルはA社の所有に係る施設であり,
534 X社はその運行に係るバス路線のバス乗場をA社から
535 賃借しているところ,
536 その賃貸借契約においては,
537 X社が当該乗場をどの運行路線の停留所とし
538 て利用するかについてA社の承認が必要であるとされている。
539
540 また,
541 乙市において,
542 ビジネス街,
543
544 学校等に近接し,
545 一日のバス乗降客数が格段に多いのは乙駅バスターミナルであるが,
546 同バスタ
547 ーミナルにバス乗場を設置し,
548 保有しているのは,
549 乙市を主要な営業地域とする乗合バス事業者
550 の中でB社及びC社の2社のみであり,
551 ほかの2社は,
552 乙駅から約1キロメートル離れた繁華街
553 に2社共同のバスターミナルを設置し,
554 主として郊外の住宅地との間の路線を運行している。
555
556
557 A社及びB社は,
558 協議の結果,
559 2社で甲市−乙市間の高速バスを共同運行することで合意に達
560 した。
561
562 その共同運行計画として合意した事項は次のとおりである。
563
564
565
566
567 2社は,
568 2社間で決定した運行時刻表に従って,
569 各社のバス及び運転手を提供して高速バス
570 を運行する。
571
572
573
574
575
576 2社は,
577 それぞれ自社の発券所において高速バスの乗車券を販売するが,
578 乗客の混乱を避け
579 るため,
580 乗客は2社が販売した切符によりいずれのバスにも乗車できることとする。
581
582
583 一方,
584 運賃の設定方法等については合意に達せず,
585 なお複数の案を検討中である。
586
587 それらの案
588
589 とは,
590 @案(共同運行である以上,
591 2社の公平の観点から2社で協議して運賃を決定する。
592
593 ),
594 A
595 案(運賃は各自で決定し,
596 運賃の配分も行わない。
597
598 ),
599 B案(運賃は各自で決定することとするが,
600
601 運賃売上げは共同でプールした上で,
602 各社の運行回数比によって配分する。
603
604 )の3案であり,
605 いま
606 だ決着をみていない。
607
608
609
610 - 10 -
611
612 〔設問1〕
613 あなたはA社から相談を受けた弁護士である(ただし,
614 設問1に限る。
615
616 )。
617
618
619 A社の担当者は,
620 @案ないしB案について,
621
622 「A社とB社がJR,
623 自家用車に対抗して高速バス
624 を共同運行するものであり,
625 共同で運行時刻表を決定し,
626 その決定に従って,
627 それぞれのバスを
628 運行させるのであるから@案が自然であり,
629 また運営上も最も支障がないので望ましいというこ
630 とになった。
631
632 他方で,
633 バスの機材,
634 人件費等を各社で負担するものであり,
635 @案については法的
636 リスクがあるかもしれないという危惧が呈され,
637 A案が提出された。
638
639 しかし,
640 A案では,
641 いずれ
642 のバスに乗客が乗車するか否かにかかわらず,
643 発券した会社が売上げを保持し得ることとなり,
644
645 バスの運行と無関係に収益が定まるから,
646 不公平となるという反論が出された。
647
648 そこで,
649 折衷的
650 にBの案が提案された。
651
652 」と説明した。
653
654
655 上記,
656 の内容の共同運行計画を前提として,
657 運賃の設定等に関する@案ないしB案を比較
658 しつつ,
659 それらの案についての私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁
660 止法」という。
661
662 )上の問題点とその考え方を論じ,
663 最大の利益が確保でき,
664 かつ独占禁止法に抵触
665 しないような案を示しなさい。
666
667
668 〔設問2〕
669 その後,
670 A社及びB社は,
671 独占禁止法に抵触しないような内容で運賃の設定方法を定めた共同
672 運行事業協定を締結し,
673 甲市−乙市間の高速バスの運行を開始したところ,
674 人気を博し,
675 当初期
676 待した以上の売上げを達成した。
677
678 また,
679 高速バスへの乗換えを希望する乗客が,
680 一般道において
681 もA社又はB社の乗合バスを利用する例が多くなったため,
682 A社の甲市,
683 B社の乙市におけるシ
684 ェアは,
685 それぞれわずかながら増加した。
686
687
688 そのような状況をみたX社は,
689 甲市−乙市間の高速バスへの参入を企画し,
690 C社に対して,
691
692 同で新規に甲市−乙市間の高速バスを運行することを提案した。
693
694 C社も,
695 X社の提案に対して前
696 向きに応じ,
697 両社による協議が開始された。
698
699
700 他方,
701 C社は,
702 X社の提案を契機に既存のA社及びB社による共同運行への参加についても検
703 討したところ,
704 A社及びB社の共同運行への参加の方がより採算性が高いとの試算結果が出た。
705
706
707 そのため,
708 C社は,
709 A社及びB社に対して,
710 その共同運行への参加を申し入れたところ,
711 両社が
712 これに応じたため,
713 X社との協議を打ち切り,
714 A社及びB社の共同運行に参加することとした。
715
716
717 A社,
718 B社及びC社の3社は,
719 協議を進め,
720 本件共同運行事業の協定に以下のような条項を盛
721 り込んだ。
722
723 すなわち,
724
725 「本件共同運行に,
726 3社以外のほかの事業者を加入させないものとする。
727
728
729 た,
730 甲市−乙市間の高速バスを運行し,
731 又は運行しようとする3社以外のほかの事業者から甲駅
732 又は乙駅内のバスターミナル内のバス乗場の利用の申出があった場合は,
733 これを拒否する義務を
734 負う。
735
736 これに反した場合には,
737 ほかの2社にそれぞれ違約金1億円を支払うものとする。
738
739 」という
740 条項である。
741
742 その趣旨は,
743 各社にとって,
744 この高速バス事業は初めての試みであって,
745 当該事業
746 に必要な初期投資,
747 すなわち,
748 トイレ設備を有し,
749 リクライニング仕様に優れた新車両の導入や
750 新路線の停留所の設置,
751 広告宣伝などにかなりの費用が必要であるため,
752 相応の利益を確保し,
753
754 投資金額を最大限回収し得るようにすることにあった。
755
756
757 以上のA社,
758 B社及びC社の共同運行事業の協定について,
759 独占禁止法上の問題点を論じなさ
760 い。
761
762
763
764 - 11 -
765
766 〔第2問〕(配点:50)
767 以下の事例を前提として,
768 各設問に答えなさい。
769
770
771 【事
772
773 例】
774
775
776 X社は,
777 東京都内において「A」という商号,
778 商標を用いてピザ等の宅配を行うフランチ
779 ャイズシステムによる事業活動を行っている。
780
781
782 Aは,
783 人気タレントを起用した広告・宣伝活動を行い,
784 低価格でカジュアルなブランドイ
785 メージを訴求することにより,
786 一気にそのシェアを伸ばしたが,
787 競合業者の行う同様の宅配
788 ピザ・フランチャイズであるB,
789 Cが急速にAを追い上げてきている。
790
791 A,
792 B,
793 Cは,
794 それ
795 ぞれピザ等の宅配を行うフランチャイズシステムであるが,
796 そのピザ等の品質,
797 販売促進活
798 動等について現時点で有意な差はない。
799
800
801 各加盟店は,
802 X社とフランチャイズ基本契約(以下「本件契約」という。
803
804 )を締結して,
805
806 フランチャイズシステムに加盟した上,
807 拠点となる営業店舗1個所を設け,
808 ここからピザ,
809
810 サラダ類,
811 ドリンク,
812 デザートの宅配を行うこととなる。
813
814
815
816
817
818 本件契約の内容は,
819 @X社は加盟店に対し,
820 そのピザ等の宅配に係る営業に関し,
821 Aとい
822 う商号,
823 商標を使用することを許諾すること,
824 AX社は,
825 Aフランチャイズシステム本部と
826 して,
827 顧客に対して統一的イメージを確保し,
828 各加盟店の営業を維持するため,
829 加盟店に対
830 する営業指導,
831 統制を行うことができること,
832 B加盟店は,
833 ピザ等の売上げを基礎として一
834 定の方式で算定されるロイヤルティをX社に支払うことを根幹としている。
835
836
837 また,
838 本件契約では,
839 加盟店の義務として,
840 本部であるX社の定める営業方針等に従って
841 営業を行うことなどが定められており,
842 加盟店が本件契約上の義務に違反した場合には,
843
844 社は,
845 本件契約を解除できるとされている。
846
847
848
849
850
851 本件契約に基づいて本部が定めた営業細則には,
852 加盟店が従うべき営業方針等が規定され
853 ており,
854 本部はそれに沿って加盟店に対する営業指導と統制を行っている。
855
856 その営業方針等
857 と営業指導・統制は,
858 下記のないしのとおりである。
859
860
861
862
863
864 加盟店が営業店舗で調理して顧客に提供するピザ,
865 サラダ類については,
866 本部において,
867
868 その品目,
869 価格等を定めることとされ,
870 加盟店が,
871 これと異なる品目又は価格等でピザ,
872
873 サラダ類の提供をすることは認められていない。
874
875 このため,
876 本部において,
877 それらの品目,
878
879 価格等を記載したチラシを印刷し,
880 これを,
881 加盟店に配布して使用させている。
882
883
884 また,
885 加盟店が顧客に提供するドリンク,
886 デザートは,
887 Aという商標が使用された同フ
888 ランチャイズ固有の規格の商品であり,
889 X社が,
890 加盟店にこれらを卸売し,
891 加盟店は,
892
893 れらを本部の定めた価格で顧客に販売提供することとされ,
894 これらの品目,
895 価格等も前記
896 のチラシに記載されている。
897
898
899
900
901
902 加盟店が顧客から受注してピザ等の商品の宅配を行う範囲(以下「営業範囲」という。
903
904
905 については,
906 加盟店間で競合が生じないように,
907 本部において,
908 各加盟店の拠点となる営
909 業店舗からの配達時間,
910 距離,
911 人口数等を勘案して,
912 それぞれの営業範囲を具体的に指定
913 している。
914
915 そして,
916 X社のホームページにおいても,
917 地域ごとに各加盟店の営業範囲が地
918 図上に色分けして表示されており,
919 また,
920 本部が加盟店に配布して使用させる前記のチ
921 ラシにも,
922 各加盟店の営業範囲が明示され,
923 チラシの配布もその営業範囲に限って認めら
924 れている。
925
926 その上で,
927 加盟店の営業範囲外の顧客から電話等による注文がされたときは,
928
929 注文を受けた加盟店はその地域を営業範囲とする加盟店にその注文を転送し,
930 その転送先
931 加盟店が受注して宅配を行うこととされている。
932
933
934
935
936
937 本部は,
938 加盟店が提供するメニューの統一性を確保し,
939 食材の安全性を保障し,
940 また食
941 材を一括購入することによるスケールメリットを生かす必要があるという理由から,
942 加盟
943 店に対し,
944 ピザの生地,
945 具材等の原材料となる食材,
946 調味料等をX社と提携関係にある輸
947 - 12 -
948
949 入食材卸売業者Y社から仕入れることを義務付けている。
950
951
952
953
954 ところで,
955 甲社は,
956 平成16年2月1日,
957 X社との間で本件契約を締結し,
958 Aフランチャ
959 イズシステムの加盟店として,
960 東京都世田谷区内において店舗を設け,
961 ピザ等の宅配の業務
962 を開始したが,
963 平成17年夏ころ,
964 その営業範囲内に相次いでB,
965 Cの新店舗が開店したた
966 め,
967 次第に甲社の客足が減少し,
968 営業成績が落ち込む事態となった。
969
970
971 そこで,
972 甲社は,
973 本部の了承を得ることなく,
974 平成18年初めころから,
975 @甲社にピザ等
976 の注文をした顧客に対し,
977 次回以降の甲社のピザ等の宅配の注文時に,
978 ピザ,
979 サラダ類,
980
981 リンク,
982 デザートの代金の20%を割引するという有効期間無期限・利用回数無制限のクー
983 ポン券を配布すること,
984 A甲社店舗の営業範囲には,
985 同じくAフランチャイズシステムに加
986 盟する乙社の店舗の営業範囲が隣接しているところ,
987 乙社店舗の営業範囲のうち,
988 甲社店舗
989 からバイクで15分程度(Aフランチャイズシステムが各加盟店の営業範囲を定めるに当た
990 っては,
991 配達時間に関しては15分程度を目安としている。
992
993 )の所要時間で宅配が可能である
994 地域に,
995 甲社が独自に作成し,
996 甲社店舗の営業範囲を記載しない折り込みチラシを配布し,
997
998 当該地域の顧客からのピザ等の宅配の注文も受注すること,
999 B甲社がY社から仕入れている
1000 外国製のハムやチーズなどの食材については,
1001 食材輸入商社であるW社から同一製品を約2
1002 割低い価格で購入できることから,
1003 これらについてはW社から仕入れることによって仕入経
1004 費を削減するなどの対策を講じたところ,
1005 同年末ころまでに営業成績が好転した。
1006
1007
1008 ちなみに,
1009 クーポン券の利用者は甲社の顧客の8割程度に上っているほか,
1010 W社からの食
1011 材の購入金額は甲社の食材の仕入金額の半分程度になっている。
1012
1013
1014
1015
1016
1017 前記甲社の行為が開始された後,
1018 乙社店舗の売上げの30%が,
1019 売上粗利益の50%がそ
1020 れぞれ減少した。
1021
1022 X社は,
1023 平成19年夏ころ,
1024 乙社から自己の営業範囲内の顧客が甲社に奪
1025 われているとの苦情を受けて調査をしたところ,
1026 前記4の事実を確認したため,
1027 甲社に対し,
1028
1029 平成20年4月1日,
1030 3か月以内に前記4の@ないしBの各行為をやめなければ,
1031 契約上の
1032 義務違反により甲社との契約を解除すると通知した。
1033
1034
1035
1036 〔設問1〕
1037 あなたは弁護士として甲社から,
1038 前記の事例について公正取引委員会に独占禁止法違反による
1039 申告ができないかという相談を受けた。
1040
1041 X社による前記3のないしの各営業方針等とそれに
1042 基づく営業指導・統制が独占禁止法に違反するか否かを検討しなさい。
1043
1044
1045 〔設問2〕
1046 さらに,
1047 あなたは弁護士として甲社から,
1048 X社による本件契約の解除を回避するための法的措
1049 置を依頼された。
1050
1051 そのための独占禁止法に基づく訴訟の提起の可否について検討しなさい。
1052
1053
1054
1055 - 13 -
1056
1057 - 14 -
1058
1059 論文式試験問題集[知的財産法]
1060
1061 - 15 -
1062
1063 [知的財産法]
1064 〔第1問〕(配点:50)
1065 以下の事実関係を前提として,
1066 後記の設問に答えよ。
1067
1068
1069 【事実関係】
1070 甲は,
1071 傘生地に特殊の樹脂を塗布する防水加工を施すことにより,
1072 防水効果を発揮することを
1073 特徴とする傘の発明(以下「甲発明」という。
1074
1075 )の特許権を有している。
1076
1077
1078 乙は,
1079 甲発明の特許権について,
1080 その存続期間全部に対応する実施料全額を甲に一括して支払
1081 って,
1082 甲から,
1083 専用実施権の設定を受け,
1084 甲発明の実施品であるA傘の製造販売をしている。
1085
1086
1087 一方で,
1088 丙は,
1089 甲発明の特許出願がされた後,
1090 独自に開発した紫外線を吸収する傘生地に,
1091
1092 記特殊の樹脂を特定の温度条件で塗布する防水加工を施すことにより,
1093 紫外線カット(UVカッ
1094 ト)効果及び防水効果を共に発揮する傘の発明(以下「丙発明」という。
1095
1096 )の特許出願をし,
1097 特許
1098 権の設定登録を受けた。
1099
1100
1101 丁は,
1102 丙から,
1103 丙発明の特許権について通常実施権の許諾を受け,
1104 丙発明の実施品であるB傘
1105 の製造販売を開始した。
1106
1107
1108 〔設問1〕
1109 甲と乙は,
1110 それぞれ丁に対し,
1111 B傘の製造販売の差止め及び損害賠償を請求することができるか。
1112
1113
1114 〔設問2〕
1115 1. 丁は,
1116 丙発明の特許について,
1117 特許無効審判を請求することができるか。
1118
1119
1120 2.
1121
1122 丙発明の特許を無効とする審決が確定した場合,
1123 丁は,
1124 丙に対し,
1125 既払の実施料の返還
1126 を請求することができるか。
1127
1128
1129
1130
1131
1132 また,
1133 前記の審決の確定前の期間に対応する実施料に未払があった場合,
1134 丙は,
1135 丁に
1136 対し,
1137 その未払分の実施料の支払を請求することができるか。
1138
1139
1140
1141 - 16 -
1142
1143 〔第2問〕(配点:50)
1144 以下の事実関係を前提として,
1145 後記の設問に答えよ。
1146
1147
1148 【事実関係】
1149 北国のA市で生まれ育った甲は,
1150 子供のころから小説家になることを夢見て,
1151 中学生及び高校
1152 生の時に計30編の小説を執筆し,
1153 文学に関心を持つ友人と一緒に作成していた同人誌に掲載し
1154 た。
1155
1156 当該同人誌は,
1157 中学校及び高校のクラスメートに無料で配布された。
1158
1159 甲は,
1160 高校卒業後,
1161
1162 京して作家となり,
1163 多くの有名な小説を発表した。
1164
1165
1166 甲がA市に住んでいたころに書いた小説は世間から注目されていなかったが,
1167 甲のファンであ
1168 る乙は,
1169 多大の労力と時間を掛けて,
1170 それらの小説が掲載された同人誌を収集した。
1171
1172 そして,
1173
1174 は,
1175 それらの小説の中から,
1176 甲の文学的才能を示すものと評価した15編の小説を選び,
1177 その選
1178 んだ小説を,
1179 甲が作家になった後に執筆した各小説との関連性の観点から分類して収録した「A
1180 市時代の甲小説集」を作成し,
1181 出版した(以下「乙書籍」といい,
1182 これに収録された15編の小
1183 説を「乙書籍収録小説」という。
1184
1185 )。
1186
1187 もっとも,
1188 乙は,
1189 乙書籍収録小説について,
1190 甲が執筆したそ
1191 のままの形で乙書籍に収録したのではなく,
1192 誤記と思われる数か所の送り仮名を変更し,
1193 また,
1194
1195 今では余り用いられず多くの人にとって意味が分からなくなった数個の言葉を同様の意味を有す
1196 る現代語に入れ替えた。
1197
1198
1199 丙は,
1200 乙書籍を読んで,
1201 乙書籍収録小説に感銘を受けたが,
1202 甲が若いころから有していた文学
1203 的才能を明らかにするには,
1204 乙書籍の並べ方は適当ではないと思い,
1205 乙書籍収録小説を並び替え
1206 て収録した「甲青少年期作品集」を作成し,
1207 出版した(以下「丙書籍」という。
1208
1209 )。
1210
1211 丙は,
1212 乙書籍
1213 における乙書籍収録小説をそのまま丙書籍に収録したが,
1214 乙が乙書籍収録小説に変更等を施した
1215 ことは知らなかった。
1216
1217
1218 A市立図書館は,
1219 乙書籍及び丙書籍を購入し,
1220 それらをA市民に貸し出している。
1221
1222
1223 〔設
1224
1225 問〕
1226
1227 1. 甲は,
1228 乙に対して,
1229 どのような請求をすることができるか。
1230
1231
1232 2. 甲は,
1233 丙に対して,
1234 どのような請求をすることができるか。
1235
1236
1237 3. 甲は,
1238 A市に対して,
1239 どのような請求をすることができるか。
1240
1241
1242 4. 乙は,
1243 丙に対して,
1244 どのような請求をすることができるか。
1245
1246
1247
1248 - 17 -
1249
1250 - 18 -
1251
1252 論文式試験問題集[労
1253
1254 - 19 -
1255
1256
1257
1258 法]
1259
1260 [労
1261
1262
1263
1264 法]
1265
1266 〔第1問〕(配点:50)
1267 以下のX及びZ(Y社代表取締役社長)の言い分を読んで,
1268 次の問いに答えなさい。
1269
1270
1271 1. 給与規程改訂前において,
1272 XがYに対して支払を求めることができる割増賃金の有無及び金額
1273 を,
1274 法的問題に触れながら,
1275 説明しなさい。
1276
1277 ただし,
1278 割増賃金の金額は,
1279 具体的な数字を示す必
1280 要はないが,
1281 午後11時まで労働した1日分について,
1282 @割増賃金の基礎となる賃金の月額,
1283 A
1284 割増賃金の支払対象となる労働時間,
1285 B割増率を示すこと。
1286
1287
1288 2. 改訂後の給与規程が適用されるとした場合,
1289 XがYに対して支払を求めることができる割増賃
1290 金の有無及び金額を,
1291 1と同様に説明しなさい。
1292
1293
1294 3. 1,
1295 2を踏まえて,
1296 改訂後の給与規程がXに適用されるか否かを論じなさい。
1297
1298
1299 【Xの言い分】
1300 私は,
1301 平成18年10月,
1302 コンピュータソフトウェアの開発,
1303 製造,
1304 販売をしているY社(従
1305 業員数は,
1306 77人)に採用され,
1307 会計システム開発グループで「エキスパート」として,
1308 専らシ
1309 ステムの開発業務を担当しています。
1310
1311 同グループには,
1312 グループリーダー1人,
1313 エキスパート6
1314 人,
1315 アシスタント2人がいます。
1316
1317 就業規則では,
1318 勤務時間が午前9時から午後6時まで,
1319 休憩時
1320 間が正午から午後1時までと定められていますが,
1321 入社以来,
1322 午前9時に出社し,
1323 午後11時に
1324 退社するという日が続き,
1325 定めのとおり休憩時間は取れるものの,
1326 それ以外の時間は労働してい
1327 ます。
1328
1329 休日は,
1330 就業規則に定められているとおり,
1331 土日と祝日に取れています。
1332
1333
1334 給与は,
1335 月給で,
1336 平成18年10月以降,
1337 エキスパートの「1号」として,
1338 基本給30万円,
1339
1340 職務手当5万円,
1341 通勤手当8000円の合計35万8000円でしたが,
1342 平成19年10月から,
1343
1344 基本給27万円,
1345 超過勤務手当8万円,
1346 通勤手当8000円に変更されました。
1347
1348 このほかには,
1349
1350 残業代等の支給は一切ありません。
1351
1352 通勤手当は,
1353 通勤経路の定期券代です。
1354
1355 採用の際,
1356 給与は基
1357 本給と手当の合計35万円と通勤費であり,
1358 残業代は基本給に含まれるとの説明があり,
1359 雇用契
1360 約書を交わし,
1361 その時は了解しました。
1362
1363 職務手当が残業代であるという説明や,
1364 長時間の残業が
1365 あるとの説明はありませんでした。
1366
1367 毎月渡される給与明細書に,
1368 基本給のうちの残業代部分の金
1369 額や残業時間が記載されていたことはありません。
1370
1371
1372 平成19年8月ころ,
1373 社長Zが,
1374 従業員全員を集めて,
1375 同年10月から,
1376 エキスパートについ
1377 ては,
1378 従前の基本給のうちの残業代部分と職務手当を定額の超過勤務手当としての支払に改める
1379 という説明をし,
1380 個別の面談で基本給や超過勤務手当が幾らになるかの説明がありました。
1381
1382 私は,
1383
1384 説明を受けた際,
1385 基本給の減額や職務手当が支給されなくなるのは納得できないと述べました。
1386
1387
1388 給与は銀行振込で支払われ,
1389 同月以降の給与支給を受けた際,
1390 異議を述べたりはしていませんが,
1391
1392 同意をすると述べたこともありません。
1393
1394 Y社には,
1395 エキスパートが約40人いますが,
1396 少なくと
1397 も私の属するグループのエキスパート6人は私と同じ意見であり,
1398 Zの説明に同意していません。
1399
1400
1401 極端な長時間労働をしているので,
1402 法律や就業規則で認められている割増賃金の支払をしても
1403 らいたいと思います。
1404
1405
1406 【Zの言い分】
1407 Y社では,
1408 システム開発業務の担当者は,
1409 アシスタントを除いて管理職として扱っていますが,
1410
1411 残業代に相当する金額は基本給や職務手当に含めて支給することにし,
1412 残業代という名称では支
1413 給しないことにしていました。
1414
1415 給与規程は別紙のとおりであり,
1416 採用時に十分に説明しています。
1417
1418
1419 職務手当は,
1420 専門的で高度な業務に対する手当であるという説明をしています。
1421
1422 エキスパートの
1423 基本給,
1424 職務手当は,
1425 事務職のものより相当高額になっていました。
1426
1427 本人も認めているように,
1428
1429 Xは,
1430 基本給に残業代相当分が含まれることや,
1431 ほかに残業代が支払われないことに同意してい
1432 - 20 -
1433
1434 ました。
1435
1436
1437 ただ,
1438 従業員から分かりにくいという指摘があったので,
1439 給与規程を改訂し,
1440 エキスパートに
1441 は,
1442 残業代に当たる部分をすべて定額の超過勤務手当として支給することにし,
1443 職務手当は支給
1444 しないことにしました。
1445
1446 支給合計額は変わりません。
1447
1448 改訂に際しては,
1449 従業員全員を集めて十分
1450 に説明し,
1451 その場で従業員の過半数の賛成により代表者を選んでもらい,
1452 その代表者から同意す
1453 る旨を記載した書面をもらいました。
1454
1455 改訂された給与規程は行政官庁に届け出て,
1456 会社内に備え
1457 付けています。
1458
1459
1460 Xは,
1461 採用時に給与の内容に同意していたし,
1462 改訂に際しても,
1463 個別の面談で詳しい説明を受
1464 け,
1465 平成19年10月以降異議を述べず給与を受け取っているので,
1466 残業代を請求するという言
1467 い分は理解できません。
1468
1469
1470 なお,
1471 Y社は,
1472 裁量労働制は採用していません。
1473
1474 また,
1475 Y社には,
1476 労働組合はありません。
1477
1478
1479
1480 - 21 -
1481
1482
1483
1484
1485
1486 【就業規則(抜粋)(改訂なし)】
1487 (賃金)
1488 第51条
1489
1490 従業員の給与に関する事項は,
1491 給与規程に定める。
1492
1493
1494
1495 【給与規程(抜粋)(改訂前)】
1496 (目的)
1497 第1条
1498
1499 この規程は,
1500 就業規則の定めに基づいて従業員の給与に関する事項を定める。
1501
1502
1503
1504 (賃金体系と種類)
1505 第2条
1506
1507 従業員の賃金の種類は,
1508 次のとおりとする。
1509
1510
1511 基本給
1512 職務手当
1513 超過勤務手当
1514 通勤手当
1515
1516 (管理職に対する特例)
1517 第3条
1518
1519 管理職(エキスパート以上)に対しては,
1520 超過勤務手当を支給しない。
1521
1522
1523
1524 (基本給)
1525 第10条
1526
1527 基本給は,
1528 職務グレードごとに,
1529 別表のとおり,
1530 月額で定める。
1531
1532
1533 別表(基本給月額表)の抜粋
1534 エキスパート 1
1535
1536 号 300,
1537 000円
1538
1539
1540
1541 号 315,
1542 000円
1543
1544 (職務手当)
1545 第11条
1546
1547 職務手当は,
1548 職種ごとに,
1549 次のとおりとする。
1550
1551
1552
1553
1554
1555
1556
1557
1558 エキスパート
1559
1560
1561
1562
1563
1564 月額
1565
1566 5万円
1567
1568 (超過勤務手当,
1569 割増賃金の計算)
1570 第12条
1571
1572 超過勤務手当は,
1573 次の割増賃金とする。
1574
1575
1576
1577
1578 時間外勤務(所定労働時間を超える勤務)
1579 通常労働時間の賃金の125パーセント
1580
1581
1582
1583 休日勤務
1584
1585 通常労働時間の賃金の135パーセント
1586
1587
1588
1589 深夜勤務(午後10時から午前5時までの勤務)
1590 通常労働時間の賃金の25パーセント
1591
1592 - 22 -
1593
1594 【給与規程(抜粋)(改訂後)】
1595 第1条〜第2条
1596 第3条
1597
1598 〔改訂なし〕
1599
1600 〔次のとおり改める〕
1601 管理職(グループリーダー以上)に対しては,
1602 超過勤務手当を支給しない。
1603
1604
1605
1606 第10条
1607
1608 〔本文は改訂なし。
1609
1610 別表を次のとおり改める〕
1611 エキスパート 1
1612
1613 号 270,
1614 000円
1615
1616
1617
1618 号 285,
1619 000円
1620
1621 第11条
1622
1623 〔を削除。
1624
1625 他は改訂なし〕
1626
1627 第12条
1628
1629 〔改訂なし〕
1630
1631 第12条の2
1632
1633 〔新設〕
1634
1635 エキスパートに対しては,
1636 前条の規定にかかわらず,
1637 超過勤務手当として,
1638 月額8万円
1639 を支給する。
1640
1641
1642
1643 - 23 -
1644
1645 〔第2問〕(配点:50)
1646 次の事例を読んで,
1647 後記の設問に答えなさい。
1648
1649
1650 【事
1651
1652
1653 例】
1654 Y株式会社(以下「Y社」という。
1655
1656 )にはA労働組合が存在し,
1657 従業員500人のうち300
1658 人がこれに加入している。
1659
1660 ところが,
1661 平成18年ころから,
1662 同組合の一部の組合員の間で,
1663
1664 社との協調路線を採る執行部に対する批判が高まり,
1665 数名の組合員(以下「Xら」という。
1666
1667 )が
1668 執行部を批判する活動をしたり,
1669 執行委員の選挙に立候補するなどの行動をとるようになって
1670 いた。
1671
1672
1673 平成19年に至り,
1674 Xらは,
1675
1676 「A労働組合を良くする会」を名乗り,
1677 一層の執行部批判に加え
1678 て,
1679 Y社に対する批判をも行うようになり,
1680 同年夏ころからは,
1681 同会名義で,
1682 執行部批判及び
1683 Y社批判を内容とするビラを,
1684 Y社に無断で,
1685 Y社施設内において従業員に配布したり,
1686 Y社
1687 施設外で通行人等に配布し,
1688 自分たちへの支持を訴えるようになった。
1689
1690
1691 さらに,
1692 Xらは,
1693
1694 「A労働組合を良くする会」の名で開設したホームページでY社批判や組合
1695 批判を行うようになり,
1696 Y社が業務上従業員に使用させているパソコンを利用してこのホーム
1697 ページに書き込み等も行うようになった。
1698
1699
1700
1701
1702
1703 著しい誇張や曲解を含む悪質な会社批判のビラがまかれる,
1704 ホームページ上で会社に対する
1705 誹謗中傷や批判が書き込まれる,
1706 会社のパソコンを業務と関係なく使用されるという状況に危
1707 機感を抱いたY社は,
1708 Xらの行動が別紙の就業規則に反するとして,
1709
1710 「本件行為は,
1711 就業規則に
1712 違反する行為であり,
1713 今後同様の行為を行った場合には,
1714 本件行為と併せて,
1715 就業規則にのっ
1716 とり,
1717 厳正な懲戒処分を行う。
1718
1719 このような行為を直ちに中止するよう警告する。
1720
1721 」旨の警告書を
1722 Xらに交付した。
1723
1724 しかし,
1725 この警告にもかかわらず事態は一向に改善されなかったので,
1726 Y社
1727 は,
1728 Xらに対する懲戒処分を行うこととして,
1729 まず,
1730 A労働組合及びXらからそれぞれ言い分
1731 を聴いたところ,
1732 次のとおりの回答があった。
1733
1734
1735
1736 (A労働組合の言い分)
1737 「当組合は,
1738 会社批判のビラ配布やホームページの開設等を行っていない。
1739
1740 Xらの行動は,
1741 当組
1742 合の方針に基づくものでもなければ,
1743 当組合の承認に基づくものでもない。
1744
1745 言ってみれば,
1746 これ
1747 らは,
1748 勝手に行った個人の行為であって,
1749 当組合の組合活動ではない。
1750
1751 よって,
1752 懲戒処分につい
1753 て組合は関知しないし,
1754 組合として会社に対して何らかの行動を起こすことは考えていない。
1755
1756
1757 (Xらの言い分)
1758 「我々が行った行為は,
1759 所属労働組合を本来のあるべき姿に戻すための良識ある行動である。
1760
1761
1762 合員として組合執行部批判及び会社批判が許されることは当然であり,
1763 我々の行為は,
1764 正に組合
1765 活動である。
1766
1767 また,
1768 我々の行為によって,
1769 会社の業務上,
1770 何らかの支障が発生したわけではない。
1771
1772
1773 そもそも,
1774 ビラ配布は,
1775 企業における組合活動として当然認められるべきであり,
1776 いちいち会社
1777 の許可が必要というわけではない。
1778
1779 更に言えば,
1780 従来組合がビラ配布を行うにつき,
1781 必ずしも会
1782 社の許可を得て行っていたわけではない。
1783
1784 また,
1785 ホームページの開設はだれでも自由であるし,
1786
1787 そこにどのような書き込みをするかについて会社の許可など必要ない。
1788
1789 さらに,
1790 会社のパソコン
1791 を使って書き込みをしたからといって,
1792 業務上何らかの支障が発生したという事実はないし,
1793
1794 の従業員も,
1795 会社のパソコンを使って私的にサイトにアクセスし,
1796 閲覧したり,
1797 書き込みをした
1798 りしている事実がある。
1799
1800 にもかかわらず,
1801 今回の我々の件についてだけ,
1802 突然,
1803 会社の許可が必
1804 要であるとか,
1805 就業規則違反であるという言い分は,
1806 筋が通らない。
1807
1808
1809
1810 - 24 -
1811
1812 〔設
1813
1814 問〕
1815
1816 1. あなたが,
1817 弁護士として,
1818 Xらから,
1819
1820 「懲戒処分を受けそうだ。
1821
1822 懲戒処分には納得できないが,
1823
1824 労働組合は動かないので,
1825 何とか争って我々の権利を守ってもらいたい。
1826
1827 」との相談を受けた場
1828 合,
1829 どのような機関にいかなる法的救済を求めることができるかについて,
1830 その論拠と併せて
1831 述べよ。
1832
1833
1834 その際,
1835 前記両者の言い分も踏まえて,
1836 いかなる法的救済が可能であるか,
1837 なぜ懲戒処分が
1838 違法となるのかにつき,
1839 論点を挙げて考え方を述べること。
1840
1841 また,
1842 不当労働行為を主張する場
1843 合には,
1844 当該不当労働行為の該当条項を挙げ,
1845 なぜその条項に該当するのかも述べること。
1846
1847
1848 2. あなたが,
1849 弁護士として,
1850 Y社から,
1851
1852 「このような違法状態を認めるわけにはいかない。
1853
1854 就業
1855 規則の意味がなくなってしまうので,
1856 厳正な懲戒処分を行いたい。
1857
1858 」との相談を受けた場合,
1859
1860 らのどの行為を対象として,
1861 いかなる懲戒処分を科すように助言するべきか,
1862 及びその懲戒処
1863 分を正当とする根拠について,
1864 懲戒処分を行うに当たって留意すべき点及びXらの言い分に対
1865 する反論も指摘しつつ,
1866 述べよ。
1867
1868
1869
1870 - 25 -
1871
1872
1873
1874
1875
1876 【就業規則(抜粋)】
1877 第60条
1878
1879
1880 従業員が次のいずれかに該当する場合は,
1881 懲戒する。
1882
1883
1884 (中略)
1885 C
1886
1887 就業時間中に会社の許可なく業務以外の行為を行ったとき。
1888
1889
1890
1891 D
1892
1893 会社の信用を毀損し,
1894 会社を誹謗中傷する等の行為を行ったとき。
1895
1896
1897
1898 E
1899
1900 許可なく会社の施設・設備を利用し,
1901 又は会社施設内において,
1902 集会を開き,
1903 若しくは
1904 放送,
1905 掲示,
1906 印刷物等のちょう付,
1907 配布等をしたとき。
1908
1909
1910
1911 F
1912
1913 業務上の指示命令に反し,
1914 職場の秩序を乱したとき。
1915
1916
1917
1918 (中略)
1919 H
1920
1921
1922 その他前各号に準ずる行為があったとき。
1923
1924
1925 前項各号に該当する場合,
1926 情状により,
1927 減給,
1928 出勤停止又は懲戒解雇のいずれかの懲戒処
1929
1930 分を科する。
1931
1932
1933 第61条
1934 懲戒解雇処分を科する場合には,
1935 賞罰委員会を開催し,
1936 本人の弁明を聴いた上で,
1937 賞罰委員会
1938 の答申を経なければならない。
1939
1940
1941
1942 - 26 -
1943
1944 論文式試験問題集[環
1945
1946 - 27 -
1947
1948
1949
1950 法]
1951
1952 [環
1953
1954
1955
1956 法]
1957
1958 〔第1問〕(配点:50)
1959 検察官は,
1960 以下の趣旨の公訴事実により,
1961 Aを起訴した。
1962
1963
1964 「Aは,
1965 B県に隣接するC県の知事の許可を得て産業廃棄物収集運搬処理及び最終処分の事業
1966 を営む者であるが,
1967 B県知事の許可を受けないで,
1968 業として,
1969 平成20年1月から3月までの間,
1970
1971 処分費用を無料とする一方で運搬費との名目により1回10万円を収受して,
1972 計200回にわた
1973 り,
1974 いずれもB県内にあるD外3名から処理の委託を受けた産業廃棄物である『おから』合計
1975 2000トンを収集し,
1976 運搬した上で,
1977 B県にある自己の工場において,
1978 熱処理及び乾燥をして,
1979
1980 飼料及び肥料を製造し,
1981 もって無許可で産業廃棄物の収集,
1982 運搬,
1983 処分を業として行ったもので
1984 ある。
1985
1986
1987 Aの弁護人の主張としてはどのようなことが考えられるか。
1988
1989 これに対する検察官の反論としては
1990 どのようなことが考えられるか。
1991
1992 それぞれについて,
1993 再生利用(リサイクル)との関係にも配慮し
1994 て答えよ。
1995
1996
1997 なお,
1998
1999 「おから」は,
2000 国内において有料で(処理者に支払をして)処理が委託されている状況にあ
2001 るものの,
2002 全国で発生量の5%が食用として売買され,
2003 利用されているものとする。
2004
2005
2006
2007 - 28 -
2008
2009 〔第2問〕(配点:50)
2010 A県内のB地区内に,
2011 石綿(アスベスト)を発生,
2012 飛散させる原因となる建築材料が大量に使用
2013 されている古いビル2棟(以下「ビル1」,
2014
2015 「ビル2」という。
2016
2017 )が隣接して存在していた。
2018
2019 その所有
2020 者は,
2021 ビル1がC,
2022 ビル2がDであり,
2023 B地区住民であるEは,
2024 ビル1,
2025 ビル2と道路を面した向
2026 かい側に住居を構えている。
2027
2028 Cが平成19年4月からビル1の解体作業をしたところ,
2029 Eは,
2030 自宅
2031 の敷地内の大気中に,
2032 石綿が浮遊していることを確認した。
2033
2034
2035 Eは,
2036 石綿吸入による健康被害の不安を感じていたところ,
2037 今度はDが同年6月からビル2を解
2038 体する予定であることを聞き及んだ。
2039
2040 Eは,
2041 近隣住民全体の健康に影響を及ぼすおそれがあると考
2042 えてB地区自治会に自治会として対策を講じるように申し入れた。
2043
2044 これを受け,
2045 B地区自治会は,
2046
2047 A県を介し,
2048 Dに対して石綿飛散防止の措置が十分に講じられるように求める申入れを行った。
2049
2050
2051 の結果,
2052 B地区自治会とDとの間で資料1のような内容の公害防止協定が交わされた。
2053
2054
2055 その後,
2056 Dは,
2057 ビル2の解体作業に着手したが,
2058 E宅の敷地内の大気中に,
2059 公害防止協定第2条
2060 で定めた許容基準を超える石綿が浮遊していることが確認された。
2061
2062 A県が調査したところ,
2063 Dは,
2064
2065 石綿を発生,
2066 飛散させる原因となる建築材料の除去を行う場所をほかの場所から全く隔離していな
2067 いことが明らかとなった。
2068
2069
2070 資料2は,
2071 厚生労働省が石綿について一般向けに説明するために作成したパンフレットの抜粋で
2072 あり,
2073 これを参照しながら,
2074 以下の設問に答えよ。
2075
2076
2077 〔設問1〕
2078 Dによるビル2の解体作業がなお続いているという状況の下で,
2079 A県知事としては,
2080 どのよう
2081 な措置を講ずることができるか。
2082
2083 また,
2084 Eは,
2085 Dに対してどのような訴訟上の請求をすることが
2086 できるか。
2087
2088
2089 〔設問2〕
2090 Dによるビル2の解体作業が終了したが,
2091 Eは,
2092 石綿吸入による健康被害の不安を抑え切れな
2093 いでいる。
2094
2095 Eは,
2096 C及びDに対してどのような訴訟上の請求をすることができるか。
2097
2098
2099
2100 - 29 -
2101
2102 資料1
2103 公害防止協定書
2104 B地区自治会とDは,
2105 Dが行うビル2の解体工事について,
2106 同ビルの近隣住民のために次のとおり
2107 公害防止協定を締結する。
2108
2109
2110 第1条
2111
2112 Dは,
2113 その所有するビル2の解体工事に当たって,
2114 周辺に石綿を飛散させないための措置を
2115
2116 講ずることを約束する。
2117
2118
2119 第2条
2120
2121 Dは,
2122 近隣住民の自宅敷地内の大気中において,
2123 1リットルにつき1本を超える石綿を飛散
2124
2125 させないことを約束する。
2126
2127
2128
2129 - 30 -
2130
2131 資料2
2132
2133
2134 石綿(アスベスト)とは?
2135 石綿(アスベスト)は,
2136 天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」
2137 「いしわた」と呼ばれ
2138 ています。
2139
2140
2141 その繊維が極めて細いため,
2142 研磨機,
2143 切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹き付け石綿
2144 などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがあり
2145 ます。
2146
2147 以前はビル等の建築工事において,
2148 保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われてい
2149 ましたが,
2150 昭和50年に原則禁止されました。
2151
2152
2153 その後も,
2154 スレート材,
2155 ブレーキライニングやブレーキパッド,
2156 防音材,
2157 断熱材,
2158 保温材など
2159 で使用されましたが,
2160 現在では,
2161 原則として製造等が禁止されています。
2162
2163
2164 石綿は,
2165 そこにあること自体が直ちに問題なのではなく,
2166 飛び散ること,
2167 吸い込むことが問題
2168 となります。
2169
2170
2171
2172
2173
2174 石綿が原因で発症する病気は?
2175 石綿(アスベスト)の繊維は,
2176 肺線維症(じん肺),
2177 悪性中皮腫の原因になるといわれ,
2178 肺がん
2179 を起こす可能性があることが知られています(WHO報告)。
2180
2181 石綿による健康被害は,
2182 石綿を扱っ
2183 てから長い年月を経て出てきます。
2184
2185 例えば,
2186 中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発
2187 病することが多いとされています。
2188
2189 仕事を通して石綿を扱っている方,
2190 あるいは扱っていた方は,
2191
2192 その作業方法にもよりますが,
2193 石綿を扱う機会が多いことになりますので,
2194 定期的に健康診断を
2195 受けることをお勧めします。
2196
2197
2198 石綿を吸うことにより発生する疾病としては主に次のものがあります。
2199
2200 労働基準監督署の認定
2201 を受け,
2202 業務上疾病とされると,
2203 労災保険で治療できます。
2204
2205
2206
2207
2208 石綿(アスベスト)肺
2209 肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。
2210
2211 肺の線維化を起こすもの
2212 としては石綿のほか,
2213 粉じん,
2214 薬品等多くの原因があげられますが,
2215 石綿のばく露によって起
2216 きた肺線維症を特に石綿肺と呼んで区別しています。
2217
2218 職業上アスベスト粉じんを10年以上吸
2219 入した労働者に起こるといわれており,
2220 潜伏期間は15〜20年といわれております。
2221
2222 アスベ
2223 ストばく露をやめた後でも進行することもあります。
2224
2225
2226
2227
2228
2229 肺がん
2230 石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが,
2231 肺細胞に取り込まれ
2232 た石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。
2233
2234 また,
2235 喫煙と深い関係
2236 にあることも知られています。
2237
2238 アスベストばく露から肺がん発症までに15〜40年の潜伏期
2239 間があり,
2240 ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。
2241
2242 治療法には外科治
2243 療,
2244 抗がん剤治療,
2245 放射線治療などがあります。
2246
2247
2248
2249
2250
2251 悪性中皮腫
2252 肺を取り囲む胸膜,
2253 肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜,
2254 心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等
2255 にできる悪性の腫瘍です。
2256
2257 若い時期にアスベストを吸い込んだ方のほうが悪性中皮腫になりや
2258 すいことが知られています。
2259
2260 潜伏期間は20〜50年といわれています。
2261
2262 治療法には外科治療,
2263
2264 抗がん剤治療,
2265 放射線治療などがあります。
2266
2267
2268
2269
2270
2271 どの程度の量のアスベストを吸い込んだら発病するのか?
2272 アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていま
2273 すが,
2274 短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については不明な点が多いとされています。
2275
2276
2277 現時点では,
2278 どれくらい以上のアスベストを吸えば,
2279 中皮腫になるかということは明らかではあ
2280 りません。
2281
2282
2283
2284
2285
2286 省略
2287 - 31 -
2288
2289
2290
2291 アスベストを吸い込んだかどうかはどのような検査で分かるのか?
2292 胸部エックス線写真でアスベストを吸い込んでいた可能性を示唆する所見が見られる場合もあ
2293 りますが,
2294 アスベストを吸い込んだ方すべてに胸部エックス線写真の所見があるとは限りません。
2295
2296
2297
2298
2299
2300 吸い込んだアスベストは除去できるか?
2301 いったん吸い込んだアスベストの一部は異物として痰の中に混ざり,
2302 体外に排出されますが,
2303
2304 大量のアスベストを吸い込んだ場合や大きなアスベストは除去されずに肺内に蓄積されると言わ
2305 れています。
2306
2307
2308
2309
2310
2311 アスベストが原因で発症する疾患に特有の症状はあるか?
2312 発病し,
2313 更にある程度進行するまでは無症状のことが多いと言われています。
2314
2315
2316
2317
2318
2319 中皮腫や肺がんの発症を予防するにはどうすればよいか?
2320 過去,
2321 石綿にばく露したことによる中皮腫や肺がんの発症を予防することについては現在有効
2322 な手段は明らかではありませんが,
2323 石綿を吸い込んだ方がすべて中皮腫を発症するわけではあり
2324 ません。
2325
2326 吸い込んだ石綿の量,
2327 期間,
2328 種類によって異なります。
2329
2330
2331 肺がんについては,
2332 石綿ばく露と喫煙との組合せで肺がんの発症は相乗的に上昇するとの報告
2333 があり,
2334 禁煙は重要です。
2335
2336
2337
2338
2339
2340 省略
2341
2342
2343
2344 省略
2345
2346
2347
2348 昔,
2349 石綿工場の近くに住んでいたことがあるが大丈夫か?
2350 中皮腫は吸い込んだ石綿の量が多いほど発症のリスクが高いと考えられており,
2351 労働者など直
2352 接石綿又は石綿含有の製品を取り扱う方は大量にかつ長期にわたって吸い込むので,
2353 最もリスク
2354 が高いと考えられています。
2355
2356
2357 昭和30年代から40年代ころの間に石綿工場の周辺に居住していた住民の中皮腫の発症につ
2358 いては,
2359 その実態が明らかではありませんが,
2360 国においても情報の収集等を行って,
2361 一般住民の
2362 リスクについて検討することとしています。
2363
2364
2365
2366
2367
2368 省略
2369
2370
2371
2372 省略
2373
2374
2375
2376 省略
2377
2378
2379
2380 建築物(事務所,
2381 店舗,
2382 倉庫等)はアスベストの危険性があるか?
2383 建築物においては,
2384
2385
2386
2387 耐火被覆材等として吹き付けアスベストが
2388
2389
2390
2391 屋根材,
2392 壁材,
2393 天井材等としてアスベストを含んだセメント等を板状に固めたスレートボー
2394 ド等が
2395
2396 使用されている可能性があります。
2397
2398
2399 アスベストは,
2400 その繊維が空気中に浮遊した状態にあると危険であると言われています。
2401
2402
2403 すなわち,
2404 露出して吹き付けアスベストが使用されている場合,
2405 劣化等によりその繊維が飛散
2406 するおそれがありますが,
2407 板状に固めたスレートボードや,
2408 天井裏・壁の内部にある吹き付けア
2409 スベストからは,
2410 通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられます。
2411
2412
2413 吹き付けアスベストは,
2414 比較的規模の大きい鉄骨造の建築物の耐火被覆として使用されている
2415 場合がほとんどです。
2416
2417
2418 建築時の工事業者や建築士等に使用の有無を問い合わせてみるなどの対応が考えられます。
2419
2420
2421
2422
2423 建築物(事務所,
2424 店舗,
2425 倉庫等)に吹き付けアスベストが使用されている場合においては,
2426
2427 うしたらよいか?
2428 吹き付けられたアスベストが劣化等により粉じんを発散させ,
2429 労働者がその粉じんにばく露す
2430 るおそれがあるときは,
2431 除去,
2432 封じ込め,
2433 囲い込み等の措置を講じなければならないこととされ
2434 ています。
2435
2436
2437 - 32 -
2438
2439 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2440
2441 - 33 -
2442
2443 [国際関係法(公法系)]
2444 〔第1問〕(配点:50)
2445 次の事例について,
2446 国際判例を踏まえて後記の設問に答えなさい。
2447
2448
2449 A国に派遣されているB国外交官乙が,
2450 A国内でA国軍人甲から,
2451 金銭と交換に極秘軍事文書
2452 を受け取るという計画があった。
2453
2454 乙が甲から極秘軍事文書を受け取ることを事前に察知したA国
2455 警察当局は,
2456 その場に警察官を張り込ませていたところ,
2457 甲から乙に極秘文書が受け渡された。
2458
2459
2460 それを現認した警察官は,
2461 その場で甲,
2462 乙両人を「スパイ罪」の容疑で逮捕し,
2463 警察施設に拘束
2464 した。
2465
2466 B国政府は直ちにA国政府に対してA国政府の措置が国際法に反している旨の抗議を行い,
2467
2468 乙の即時釈放を要求した。
2469
2470 しかし,
2471 数日たってもA国政府はB国の釈放要求にこたえずに乙を拘
2472 束し続けている。
2473
2474 A国政府はB国に対して,
2475 公式な声明は出していないが,
2476 A国政府高官丙は,
2477
2478 記者団に対して,
2479
2480 「乙がA国内で重大犯罪を犯した以上,
2481 乙がたとえ外交官であっても,
2482 真相が解
2483 明されるまで,
2484 A国警察に拘束されるのは当然である。
2485
2486 」と述べた。
2487
2488
2489 〔設
2490
2491 問〕
2492
2493 1. A国政府高官丙の発言について,
2494 理由を付して論評しなさい。
2495
2496
2497 2. A国政府は,
2498 乙が甲を唆してA国の極秘軍事文書を受け取ったことを現認したが,
2499 その場で
2500 逮捕しなかった場合,
2501 B国及び乙に対して国際法上どのような措置を採り得るかについて,
2502
2503 らゆる可能性を考えて説明しなさい。
2504
2505
2506 3. 乙が拘束され続ける場合には,
2507 B国政府は国際法上どのような措置を採ることができるかを,
2508
2509 裁判外の措置とその内容,
2510 及び裁判上の措置とその内容に分けて説明しなさい。
2511
2512
2513 なお,
2514 AB両国は,
2515
2516 「相互にその権利を争うすべての紛争は,
2517 国際司法裁判所に付託される。
2518
2519
2520 と規定する条約を20年前から結んでいる。
2521
2522
2523
2524 - 34 -
2525
2526 〔第2問〕(配点:50)
2527 次の文章を読んで,
2528 後記の設問に答えなさい。
2529
2530
2531 A国とB国との間には,
2532 安全保障条約が結ばれている。
2533
2534 それに基づいて,
2535 B国の領土には,
2536
2537 国の軍事基地がある。
2538
2539 この軍事基地では,
2540 夜間から早朝においてもA国軍隊のジェット機が離発
2541 着し,
2542 それに伴う地上における活動が日常的に行われている。
2543
2544 これらの活動に起因する騒音によ
2545 って,
2546 当該基地の付近に居住する住民は,
2547 精神的及び身体的な被害を被っている。
2548
2549 そこで,
2550 当該
2551 基地の付近に居住する住民のうちのXは,
2552 B国の国内裁判所へ,
2553 A国を被告として損害賠償を請
2554 求する訴訟の提起を考えている。
2555
2556
2557 A国は,
2558 安全保障条約上の関連条文に基づき,
2559 A国軍隊の活動の結果が基地外に及ぶ場合には,
2560
2561 公共の安全に配慮する義務を負う。
2562
2563 また,
2564 A国軍隊は,
2565 B国の法令を尊重する義務を負っている。
2566
2567
2568 さらにこの条約には,
2569 次の条項がある。
2570
2571
2572 第6条
2573
2574 公務執行中のA国軍隊の構成員の作為又は不作為あるいはA国軍隊が法律上責任を
2575
2576 有するその他の作為,
2577 不作為,
2578 若しくは事故を原因とするB国における損害賠償請求に
2579 関しては,
2580 A国政府との間で解決するのではなく,
2581 B国政府との間で解決するものとす
2582 る。
2583
2584
2585 〔設
2586
2587 問〕
2588 文章の事例において,
2589 A国軍隊の航空機による夜間離発着やそれに伴う活動を原因とする損害
2590
2591 に関して,
2592 損害賠償請求訴訟を提起されたB国裁判所は,
2593 確立した国際法の原則に従って,
2594 本事
2595 例の固有の法状況を踏まえて,
2596 B国の裁判管轄権につきどのように判断すべきかについて,
2597 自己
2598 の見解とその理由を述べなさい。
2599
2600
2601 なお,
2602 一国の領域内における他国の行為や他国の不動産をめぐる訴訟に関して,
2603 領域国の民事
2604 裁判権が肯定される国内裁判事例やこれを明定する国内法が増えてきているという事実がある。
2605
2606
2607
2608 - 35 -
2609
2610 - 36 -
2611
2612 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
2613
2614 - 37 -
2615
2616 [国際関係法(私法系)]
2617 〔第1問〕(配点:50)
2618 日本に常居所を有する60歳の甲国人男Aは,
2619 事理を弁識する能力を欠く常況にあったため,
2620
2621 本の裁判所により後見開始の審判を受け,
2622 嫡出子である甲国人Xが,
2623 Aの後見人として選任された。
2624
2625
2626 Aには認知をしていなかった甲国人の非嫡出子Yがいた。
2627
2628 一時的に事理を弁識する能力を回復した
2629 Aは,
2630 日本において,
2631 遺言書に「Yを自己の子として認知する。
2632
2633 」旨,
2634 日付及び氏名を自署し,
2635 これ
2636 に押印した。
2637
2638 遺言書作成に当たっては,
2639 医師1名が立ち会い,
2640 Aに事理を弁識する能力のあること
2641 を確認する旨を遺言書に付記し,
2642 署名押印している。
2643
2644 その後,
2645 Aは,
2646 日本国籍を取得し,
2647 日本にお
2648 いて死亡した。
2649
2650 Yは,
2651 日本において,
2652 Aの遺産の分割をXに対して求めている。
2653
2654
2655 この事例について,
2656 甲国の国際私法からの反致はないものとして,
2657 以下の設問に答えなさい。
2658
2659
2660 なお,
2661 設問の各問いは,
2662 いずれも独立したものである。
2663
2664 また,
2665 甲国の民法は,
2666 その要件・効果と
2667 も,
2668 日本の民法が定める後見制度と同視することができる後見制度を有しており,
2669 認知と遺言につ
2670 いては次の規定があること及び本件事例には法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)
2671 が適用されることを前提とする。
2672
2673
2674 【甲国の民法】
2675 第P条
2676
2677 父が被後見人であるときは,
2678 後見人の同意を得て認知をすることができる。
2679
2680
2681
2682 第Q条
2683
2684 認知は,
2685 遺言によっても,
2686 することができる。
2687
2688
2689
2690 第R条
2691
2692 認知には,
2693 子の承諾を要しない。
2694
2695
2696
2697 第S条
2698
2699 自筆証書によって遺言をするには,
2700 遺言者が,
2701 その全文,
2702 日付及び氏名を自署し,
2703 これ
2704
2705 に印を押さなければならない。
2706
2707
2708 第T条
2709
2710
2711 被後見人は,
2712 その事理を弁識する能力が回復したときに限り,
2713 遺言をすることができる。
2714
2715
2716
2717 前項の場合には,
2718 医師1名以上が事理を弁識する能力のあることを遺言書に付記し,
2719 署名押
2720 印しなければならない。
2721
2722
2723
2724 第U条
2725 〔設
2726
2727 遺言は,
2728 遺言者の死亡した時からその効力を生ずる。
2729
2730
2731
2732 問〕
2733
2734 1. Aは遺言能力を有しているか。
2735
2736
2737 2. Aの遺言は方式に関して有効に成立しているか。
2738
2739
2740 3. Aの遺言が有効に成立しているとした場合,
2741 Yの認知は有効に成立しているか。
2742
2743
2744 なお,
2745 A死亡の時点においてYは20歳であり,
2746 Xは,
2747 AによるYの認知を容認しない態度
2748 をとっているとする。
2749
2750
2751
2752 - 38 -
2753
2754 〔第2問〕(配点:50)
2755 日本のX会社は,
2756 乙国のA会社から所定の大きさの箱に詰めた冷凍エビを輸入することとし,
2757
2758 との間で,
2759
2760 「Xが船舶の手配をし,
2761 運送賃を支払う。
2762
2763 Aが冷凍エビを詰めた約定の数量の箱を乙国の
2764 港で運送人に引き渡すことによって商品の引渡しとする。
2765
2766 売買代金はXが日本の銀行に開設する信
2767 用状による決済とする。
2768
2769 」旨の約定で契約した。
2770
2771 その後,
2772 Xは,
2773 海上運送業者Y会社に乙国の港から
2774 日本の港までの海上運送を依頼し,
2775 Aは,
2776 Yが提供した冷凍貨物用のコンテナー1個に自ら冷凍エ
2777 ビを詰めた約定の数の箱を積み込んで施錠し,
2778 運送中の温度管理についてYに指示をして,
2779 当該コ
2780 ンテナーを乙国の港にあるYのコンテナー・ヤードで引き渡した。
2781
2782
2783 Yがコンテナーの船積後にAに交付した船荷証券上の運送品の種類,
2784 運送品の容積,
2785 重量,
2786 包・
2787 個品の数,
2788 運送品の記号を記載する欄には,
2789 当該コンテナーを特定する記号及び番号の記載と,
2790
2791 の内容は冷凍エビを詰めた一定数の箱であるとの記載がある。
2792
2793
2794 日本の港での陸揚後,
2795 Xが,
2796 船荷証券を呈示してYからコンテナーの引渡しを受け,
2797 直ちにその
2798 中を検査したところ,
2799 コンテナー内の温度が適当でなかったため,
2800 冷凍エビの鮮度が落ちており,
2801
2802 Xは当該冷凍エビを市価の3割程度で売却せざるを得なかった。
2803
2804 そこで,
2805 Xは,
2806 コンテナーの受取
2807 から引渡しまでの間のYの措置が適切でなかったとして,
2808 Yに対する損害賠償請求の訴えを日本の
2809 裁判所に提起した。
2810
2811
2812 この事例について,
2813 以下の設問に答えなさい。
2814
2815
2816 なお,
2817 設問の各問いは,
2818 いずれも独立したものである。
2819
2820 また,
2821 この事例及び設問における日本の
2822 会社,
2823 乙国の会社,
2824 丙国の会社とは,
2825 それぞれ,
2826 日本,
2827 乙国,
2828 丙国で設立され,
2829 設立された国に主
2830 たる営業所を有する会社をいうものとする。
2831
2832
2833 〔設
2834
2835 問〕
2836
2837 1. Yが丙国の会社であるとし,
2838 YがAに交付した船荷証券には「本件運送契約から生ずる運送
2839 人の責任についての争いは,
2840 Yの主たる営業所の所在地である丙国のM市の裁判所においての
2841 み解決する。
2842
2843 」との条項が記載されているものとする。
2844
2845
2846 Yは,
2847 この条項に基づいて,
2848 日本の裁判所は本件訴訟について管轄権を有しないと主張して
2849 いる。
2850
2851 これに対して,
2852 Xは,
2853 この条項はXとYの双方が署名した書面によるものではないとの
2854 理由で,
2855 本件訴訟については丙国の裁判所には管轄権がなく,
2856 日本の裁判所に管轄権があると
2857 主張している。
2858
2859
2860 このYの主張は認められるか。
2861
2862
2863 なお,
2864 丙国では,
2865 被告の住所又は主たる営業所の所在地の裁判所は被告に対する訴えについ
2866 て管轄権を有するとしている。
2867
2868 また,
2869 日本と丙国は,
2870 いずれも,
2871
2872 「1968年2月23日の議定
2873 書によって改正された1924年8月25日の船荷証券に関するある規則の統一のための国際
2874 条約を改正する議定書」の締約国である。
2875
2876
2877 2. Yが日本の会社であり,
2878 YがAに交付した船荷証券には「本件運送契約から生ずる運送人の
2879 責任についての争いは,
2880 日本のN市の裁判所において,
2881 日本法によって解決する。
2882
2883 」との条項が
2884 記載されているものとする。
2885
2886
2887
2888
2889 XがYに対して冷凍エビの商品価値の下落についての損害賠償責任を追及することができ
2890 るのは,
2891 どのような場合か。
2892
2893
2894
2895
2896
2897 XがYに対して損害賠償責任を追及することができるとした場合,
2898 冷凍エビに関する損害
2899 賠償の金額は,
2900 どのようにして算定されるか。
2901
2902
2903
2904 - 39 -
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