1 平成20年新司法試験論文式試験問題出題趣旨
2 【公法系科目】
3 〔第1問〕
4 本問は,
5 インターネットという「より新しいメディア」における積極的な表現行為に対す
6 る表現内容規制をめぐる問題である。
7
8 インターネット上の有害情報を18歳未満の者が閲覧
9 できないようにするなどのためにインターネット接続電子機器にフィルタリング・ソフトウ
10 ェアを搭載することを義務付け,
11 また,
12 当該ソフトウェアを削除したり,
13 その効果を損なう
14 プログラムを他人に提供することを禁じる法律が制定されたという想定の下で,
15 問いが設定
16 されている。
17
18 インターネット上で自らの信念に基づいて表現行為を行なっているAは,
19 18
20 歳未満の者ばかりだけでなく,
21 18歳以上の者も見ることができなくなる可能性があること
22 への対抗策として,
23 フィルタリング・ソフトウェアによって自分のサイトの閲覧が妨げられ
24 ないプログラムを作成し,
25 提供したところ,
26 当該行為が違法であるとして,
27 起訴された。
28
29
30 本問で問われているのは,
31 インターネット上の有害情報という問題設定の新しさはあるが,
32
33 青少年の保護を理由とした「有害」な表現の規制という点で,
34 青少年保護育成条例における
35 有害図書規制の合憲性と同種の問題である。
36
37 ただし,
38 当該判決とは,
39 重要な事案の違いもあ
40 る。
41
42 本問では,最広義説に立っても,
43 18歳以上の者は「解除ソフト」によって規制される情
44 報を見ることができるので,
45 検閲には該当しない(18歳以上の者が当該情報を見るために課
46 せられる「負担」は,
47 検閲の問題ではない。
48
49 )。
50
51 また,
52 問題となる法律は,
53 「有害」とされたサ
54 イトを削除するものではない。
55
56 それは,
57 18歳以上の者が当該サイトを読むためには一定の
58 手続を踏まなければならない,
59 と定めるものである。
60
61 「自己の権利が,
62 直接,
63 現在」侵害され
64 ている場合に,
65 それを理由として当該法律の違憲を主張することはできる。
66
67 本問の場合,
68 サ
69 イトを見る人の「知る自由」の制約も(が)問題となる。
70
71 したがって,
72 他者の権利の制約が
73 違憲であることを理由に法律や処分の違憲性を主張できるか否かを,
74 検討する必要がある。
75
76
77 その場合,
78 まずは,
79 第三者所有物没収事件判決を参照することになる。
80
81
82 新しい素材に関して,
83 全く新たに考えることを求めているのではない。
84
85 法科大学院の授業
86 で学んでいるはずである,
87 表現の自由や憲法訴訟論に関する基礎知識を正確に理解した上で,
88
89 具体的問題に即して思考する力,
90 応用する力を試す問題である。
91
92 個別・具体の事案に応じて
93 存在する憲法上の問題を発見し,
94 それについて深く広く検討し,
95 そして説得力のある理由を
96 付して,
97 自らの結論を導くことが求められている。
98
99 問題文に書かれていることや資料に書か
100 れていることをそのまま書き写すのではなく,
101 与えられている資料等からそれぞれの設問が
102 求める立場での主張を考えることが必要である。
103
104
105 設問1では,
106 Aの弁護人として,
107 本問が仮想する法律の違憲性を主張することが求められ
108 ている。
109
110 弁護人としては,
111 当該法律及びAに対する処罰を違憲とするために理論及び事実に
112 関する効果的な主張を行なうことになる。
113
114 その際,
115 裁判の場で行なう主張であるので,
116 判例
117 と異なる主張を行なう場合には,
118 判例の判断枠組みや事実認定・評価のどこに,
119 どのような
120 問題があるかを明らかにする必要がある。
121
122
123 法令の違憲性に関しては,
124 @「有害情報」と18歳未満の者の健全な育成及び見たくない
125 18歳以上の者の保護との関連性(立法事実),
126 A表現内容を規制する法律の合憲性に関する
127 判断枠組み,
128 B規制される「有害情報」の不明確性,
129 C有害なウェブページだけでなく,
130 そ
131 れを含むウェブサイト全体を閲覧できなくする規制の広汎性,
132 D仮にAの提供する情報は「有
133 害」であるとしても,
134 第三者の,
135 憲法が保障する表現も規制される可能性,
136 E18歳未満の
137 者の「知る自由」への制約,
138 F18歳未満の者を保護するための規制によって18歳以上の
139 者の「知る自由」が制約される可能性,
140 G18歳以上の者が見ることができるようにするた
141
142 -1-
143
144 めには一定の手続が求められていることが,
145
146 「不当な負担」といえるか否か,
147 等が問題となる。
148
149
150 Aに対する処罰の違憲性に関しては,
151 @Aが提供する情報の「有害」性,
152 AAが提供する
153 情報自体の社会的重要性,
154 B一般的な解除ではなく,
155 Aのウェブサイトを解除するだけなの
156 に刑罰を科すという規制手段の過度性,
157 C見る人に不快感を与える可能性のある画像が出て
158 くる前に注意を促す文章を掲げていることに関する評価等が問題となる。
159
160
161 このように,
162 本問では,
163 多くの問題が存在する。
164
165 求められていることは,
166 上記の問題点を
167 すべて挙げることではない。
168
169 試験時間の制約の中で,
170 重要度を自分で判断して重要であると
171 思う(その判断の妥当性は問われるが。
172
173 )複数の問題について,
174 説得力のある主張を展開する
175 ことが求められている。
176
177
178 設問2では,
179 まず,
180 設問1での主張とは対立する,
181 すなわち,
182 本問の仮想する法律を合憲
183 とする理由付けを想定することが求められる(この部分の記述は,
184 簡潔でよい)。
185
186 次いで,
187 こ
188 のような憲法上の問題点に関する相対立する主張を踏まえて,
189 「あなた自身の見解」を述べる
190 ことになる。
191
192
193 「あなた自身の見解」は,
194 必ずしも,
195 被告人側と検察側の相対立する主張のいずれか,
196 と
197 いう二者択一であることが求められているわけではない。
198
199 「あなた自身の見解」は,
200 両者とは
201 異なる「第三の道」であることもあり得る。
202
203 また,
204 この種の問題に関する判例と同じである
205 ことが求められているわけでもない。
206
207 被告人側と,
208 検察側と,
209 あるいは判例と「同じである」
210 という理由では,
211 全く不十分である。
212
213 なぜその主張に賛成するのかについて,
214 説得力のある
215 理由が述べられていなければならない。
216
217
218 〔第2問〕
219 本問は,
220 県知事が介護老人保健施設に対して勧告をした事案について,
221 勧告を違法と考え従
222 わなかった施設の代理人弁護士という立場から論じさせるものである。
223
224 問題文と資料から基本
225 的な事実関係を把握した上で,
226 介護保険法や関連法令の趣旨を読み解き,
227 適切な救済手段を選
228 択し,
229 それと結び付いた本案の主張を展開する力を試すものである。
230
231
232 設問1は,
233 勧告不服従の公表を阻止するための法的手段(訴訟とそれに伴う仮の救済措置)
234 に関して,
235 基本的理解を問う問題である。
236
237 勧告や公表が処分に当たるのかといった検討を,
238 介
239 護保険法に即して行うことが前提となる。
240
241 勧告に従わない場合には,
242 公表や措置命令,
243 業務停
244 止命令,
245 開設許可取消などがなされ得る法的仕組みを正確に把握した上で,
246 勧告や公表の法的
247 性格を分析することが求められている。
248
249
250 例えば,
251 処分性の定義を前提として,
252 勧告が処分に当たることを具体的に説明した上で,
253 そ
254 の執行停止を解答する場合には,
255 勧告の取消訴訟を論じることに加えて,
256 行政事件訴訟法第2
257 5条所定の要件について検討する必要があろう。
258
259 勧告の処分性を否定する場合には,
260 勧告に対
261 して公法上の当事者訴訟を提起するとともに,
262 仮の権利救済手段として仮処分を検討すること
263 が考えられる。
264
265 確認訴訟を利用する場合には,
266 確認の利益を中心に詳細な検討が期待される。
267
268
269 また,
270 公表の処分性を肯定した上で,
271 その差止め訴訟,
272 仮の差止めを提案する解答もあり得る。
273
274
275 この場合には,
276 差止め訴訟の要件(行政事件訴訟法第37条の4)や仮の差止めの要件(特に,
277
278 同法第37条の5第2項,
279 第3項)について,
280 法文の解釈や当てはめが的確になされているこ
281 とが必要となる。
282
283 さらに,
284 公表の処分性を否定し,
285 公表に対する民事の差止め訴訟ないし公法
286 上の当事者訴訟を提案し,
287 仮処分の可能性を検討することも考えられる。
288
289 民事の差止め訴訟を
290 選択する場合には,
291 差止めを根拠付ける権利について詳細な言及が望まれよう。
292
293 このように,
294
295 様々な法的手段が考えられる中で,
296 複数の法的手段を提案し,
297 それらの比較を通じて最も適切
298 と考える法的手段を提示しなければならない。
299
300
301 設問2は,
302 調査,
303 勧告の適法性を論ずる問題である。
304
305 調査については,
306 帳簿書類等を段ボー
307 ル箱に詰めて持ち帰った行為が強制力の行使に当たるとすれば,
308 介護保険法第100条の解釈
309 -2-
310
311 として許容されるのかを検討する必要がある。
312
313 また,
314 調査に当たりB県職員が身分証を提示し
315 なかった点について,
316 同法第100条第2項,
317 第24条第3項に違反するのかが論じられなけ
318 ればならない。
319
320 このほか,
321 行政指導として行われる調査を同法第100条の調査に先行させる
322 義務を知事は負っているのかという問題も,
323 検討すべき対象である。
324
325
326 上記の検討を通じて,
327 調査の違法が認められる場合に,
328 それが勧告にどのような影響を及ぼ
329 すのかを検討することも,
330 本問では要求されている。
331
332
333 勧告の違法性に関しては,
334 基準違反を内容とする県の指摘について,
335 事実誤認を主張するこ
336 とが考えられる。
337
338 このほか,
339 勧告に関しては,
340 勧告の手続法的違法が問題となろう。
341
342 その前提
343 として,
344 勧告にはどのような行政手続が要請されるのかが論じられなければならない。
345
346 例えば,
347
348 勧告を不利益処分ととらえる場合には,
349 行政手続法の不利益処分手続が適用される。
350
351 この場合
352 には具体的にどのような手続規制が要求されるのかを明らかにした上で,
353 本件事案でそうした
354 手続が踏まれていたのかを検討することとなろう。
355
356 これに対し,
357 勧告を行政指導と解する場合
358 には,
359 知事の行う行政指導については,
360 行政手続法は適用除外となり,
361 B 県行政手続条例の定
362 める行政指導手続が要求される。
363
364 この点を指摘した上で,
365 本件で手続に関する違法が認められ
366 るのかを同条例に即して検討することが求められる。
367
368
369 【民事系科目】
370 〔第1問〕
371 本問は,
372 不動産の売買・賃貸借・相続等に関し,
373 財産法と家族法にわたる民法上の様々な問
374 題について,
375 基本的な理解の有無を確認するものである。
376
377 単に知識の確認をするだけでなく,
378
379 掘り下げた考察をしそれを明確に表現する能力,
380 論理的に一貫した論述をする能力,
381 具体的事
382 実について法的観点から評価し構成する能力なども評価の対象となる。
383
384
385 設問1は,
386 マンションの1戸の売買をしたが,
387 買主の代金不払により売主が契約を解除した
388 ところ,
389 解除前に,
390 買主が目的物を賃貸し,
391 更に賃借人が無断転貸をしていたという事案で,
392
393 売主が賃借人及び転借人に明渡しを求める場面の問題である。
394
395
396 小問(1)は,
397 賃借人に対する所有権に基づく返還請求に対し,
398 賃借人の反論(賃借人は
399 売買契約解除前の第三者である。
400
401 )の当否を問う。
402
403 民法第545条ただし書の趣旨及び「第三
404 者」の意義,
405 第三者の対抗要件の要否とその意味,
406 賃借人の対抗要件(借地借家法第31条
407 第1項),
408 第三者の善意・悪意など,
409 基本的理解を確認する。
410
411 「解除と第三者」に関しては,
412
413 第三者は目的物の譲受人として論じられることが多いが,
414 ここでは目的物の賃借人であると
415 いう特色がある。
416
417
418 小問(2)では,
419 賃借人に対する賃貸借契約終了に基づく返還請求について,
420 賃借人の2
421 つの反論の成否を問う。
422
423 第1の反論(賃借人は買主から賃借したのだから,
424 売主が賃貸借契
425 約を解除することはできない。
426
427 )に関しては,
428 売買契約の解除に伴う賃貸人の地位の買主から
429 売主への移転,
430 それにより売主が賃貸人として賃貸借契約を解除できるに至ったこと,
431 その
432 前提として売主に目的物の所有権の登記が求められることなど,
433 基本的な理解を確認する。
434
435
436 契約解除の場面における「賃貸人たる地位の移転」についての考察や賃貸借契約解除原因の
437 発生時期と賃貸人(売主)による解除権の行使時期との関係についての考察があれば,
438 それ
439 も評価する。
440
441 第2の反論(目的物は現在,
442 転借人が使用しており,
443 賃借人は占有していない
444 ので,
445 売主の請求には理由がない。
446
447 )に関しては,
448 所有権に基づく返還請求ではなく,
449 賃貸借
450 契約終了に基づく返還請求では,
451 相手方の占有の有無は問題とならないという基本的理解を
452 確認する。
453
454 なお,
455 これは「不動産の間接占有者に対する引渡しないし明渡しの請求」という
456 より高度な問題にもかかわるが,
457 そこまでの叙述を不可欠とするものではない。
458
459
460 小問(3)は,
461 無断転貸を理由とする解除における「背信行為と認めるに足りない特段の
462 事情」となるべき具体的事実の指摘とその理由の説明を求める。
463
464 賃貸借と転貸借との利用形
465 -3-
466
467 態がほぼ同様で賃貸人の許諾した範囲内にあるといえること,
468 両者の契約内容が同じである
469 こと(特に転貸人に差額による利益を取得する意図がないこと),
470 転貸人の主観的悪性が低い
471 ことなどを示す事実を挙げ,
472 整理して理由付けることが求められる。
473
474 背信行為論の抽象的説
475 明のみをするのではなく,
476 具体的事実との関係で説得的な論述ができるかを問うている。
477
478
479 設問2は,
480 マンションの1戸の賃貸人が死亡し,
481 その9か月後に遺産分割がされた場合につ
482 いて,
483 相続開始時から遺産分割時までの間に支払われた賃料の帰属を問うものである。
484
485 関連す
486 る近時の最高裁判決の判旨を問題中で示した上,
487 その評価も求めている。
488
489 賃料債権が相続財産
490 (遺産)の範囲に含まれるかどうか(民法第896条),
491 及び,
492 遺産分割の遡及効との関係(同
493 第909条)を明確にした上,
494 判例の見解に対する評価を述べ,
495 自らの見解に基づく具体的結
496 論とその法的構成を示すことが求められる。
497
498 本問の賃料の性質(法定果実であること,
499 相続開
500 始後に発生した分であること,
501 金銭債権であることなど)のどこを重視するかなどにより,
502 複
503 数の考え方があり得るが,
504 それぞれの問題点についての基本的な説明と説得的な理由付けのほ
505 か,
506 論述全体としての論理的整合性が求められる。
507
508
509 〔第2問〕
510 本問は,
511 会社財産の不適切な運用・管理により財産の流出を来した株式会社をめぐる事例に
512 関し,
513 様々な角度から,
514 会社法上及び民事訴訟法上の問題点等についての基礎的な理解の有無
515 を問う総合問題である。
516
517 本問においては,
518 比較的詳細に示された事実関係を分析して法的な論
519 点を的確に抽出し,
520 事案に即した有効な解決手段を選択するなど,
521 これまでの学習を通じて培
522 った法制度や法原則に関する理解を多角的に応用し,
523 その結果を論理的に総合して分かりやす
524 く表現する作業を行わせることにより,
525 その理解の正確さを試すこととしている。
526
527
528 設問1は,
529 取締役会の承認を受けずに締結された保証契約の効力と, 甲社及び乙社の間で
530 行われた株式交換の問題点を指摘させるものである。
531
532 まず,
533 保証契約の効力については,甲社
534 が丙銀行との間で締結した金銭消費貸借契約と, これを主たる債務として乙社が丙銀行との
535 間で締結した保証契約は,
536 いずれも, 「多額の借財」(会社法第362条第4項第2号)に当
537 たるものとして,
538 それぞれの会社の取締役会の承認を受けなければならないものと考えられ
539 るが,
540 本件では,
541 いずれについても,
542 取締役会の承認を受けていないため,
543 その効力が問題
544 となる。
545
546 この問題点の解決に当たっては,
547 様々な理論構成を用いることが考えられるが,
548 例
549 えば,
550 民法第93条ただし書を類推適用する判例の立場を採った場合には,
551 取締役会の承認
552 を受けていないことを知らなかったことについて丙銀行の側に過失がなかったかどうかとい
553 う点につき,
554 事例に即して丁寧に吟味することが求められる。
555
556 また,
557 上記保証契約は,
558 Bが
559 乙社を代表して締結したものであるとはいえ,
560 Aが甲社を代表して丙銀行と締結した金銭消
561 費貸借契約に基づく借入金債務を主たる債務としながら,
562 Aが代表取締役を務める乙社に保
563 証をさせるという内容のものであることから,
564 その締結が利益相反取引の一つである間接取
565 引(会社法第356条第1項第3号,
566 第365条)に当たるのではないかという点も問題と
567 なる。
568
569 本件では,
570 この点についても取締役会の承認を受けていなかったことから,
571 いわゆる
572 相対的無効説によれば,
573 丙銀行の側がその点について善意かつ無重過失であったかどうかを
574 検討することが必要となる。
575
576 ただし,
577 本件においては,
578 乙社の株主が上記取引にかかわって
579 いるA及びBの2人だけであることから,
580 そもそも取締役会の承認を受ける必要はなかった
581 のではないかという点も問題となる。
582
583 次に,
584 株式交換の問題点については,
585 @知れている債
586 権者に対する各別の催告(同法第799条第1項第3号及び第2項)が行われていない点,
587
588 A債権者(丙銀行)の異議を受けた弁済等(同条第5項)が行われていない点,
589 B株主に対
590 して交付する株式交換の対価が不当である点,
591 C株式交換を承認した株主総会の決議に特別
592 の利害関係を有する者が参加していた点(同法第831条第1項第3号参照)などに問題が
593 認められる。
594
595 果たして,
596 これらが株式交換無効の訴え(同法第828条第1項第11号)の
597 -4-
598
599 無効原因となるかどうか,
600 また,
601 丙銀行に当該訴訟に関する原告適格(同条第2項第11号)
602 があるかどうかといった点を検討する必要がある。
603
604 仮に,
605 株式交換を無効とすることができ
606 れば,
607 株式交換の対価として不当に流出した会社財産を取り戻すことが可能となるという実
608 益にも言及することが期待される。
609
610
611 設問2では,
612 第1に,
613 甲社と乙社との間で行われた不自然な取引が利益相反取引の一つで
614 ある直接取引(会社法第356条第1項第2号,
615 第365条)に当たるにもかかわらず,
616 取
617 締役会の承認を受けていないことから,
618 それらの一連の取引を無効とすることによって,
619 甲
620 社の責任財産を回復できないかが問題となる。
621
622 ただし,
623 この点については,
624 一人会社(甲社)
625 の株主自身(乙社)が直接取引の相手方になっている場合には,
626 実質的な利益相反関係が認
627 められないことから,
628 取締役会の承認は要しないとするのが判例の立場である。
629
630 この考え方
631 で債権者(丁社)の保護を図ることができるのかという点について,
632 悩みを見いだすことが
633 できるかどうかが肝要である。
634
635 第2に,
636 乙社に対する責任追及の可能性が問題となる。
637
638 この
639 点については,
640 @法人格否認の法理によりその責任を追及する見解,
641 A事実上の取締役とし
642 て対第三者責任(同法第429条第1項)を追及する見解,
643 B株主の権利の行使に関する利
644 益供与(同法第120条)としてその責任を追及する見解,
645 C隠れた剰余金の配当として分
646 配可能額を超える部分についての返還(同法第462条)を求める見解など,
647 様々な法的構
648 成を用いることが考えられる。
649
650 第3に,
651 甲社の取締役について,
652 対第三者責任(同法第42
653 9条第1項)を追及することが考えられる。
654
655 その際には,
656 各取締役が本件にどのようにかか
657 わったのかを具体的に吟味しながら,
658 その責任の有無を丁寧に分析することが必要である。
659
660
661 設問3は,
662 取締役解任の訴えが,
663 被告側の固有必要的共同訴訟であることを理解した上で,
664
665 原告の立場から,
666 主観的追加的併合(原告による被告の追加)が許容されるべきことの主張
667 を具体的な事案に即して行わせるものである。
668
669 周知のとおり,
670 主観的追加的併合が理論的に
671 許容されるか否かは,
672 民事訴訟法の著名な論点の一つであるが,
673 そこで論じられていること
674 を踏まえつつも,
675 より実務的な観点から,
676 少なくとも本件の具体的な事例の下においては主
677 観的追加的併合が許容されるべきことを示すことが必要になる。
678
679 具体的には,
680 取締役解任の
681 訴えが被告側の固有必要的共同訴訟であって,
682 訴訟共同と合一確定が要請される場面である
683 ことを考慮すべきであることはもとより,
684 取締役解任の訴えにおいては,
685 出訴期間が法定さ
686 れており,
687 本件においては,
688 改めて再訴を提起する方法によっては期間徒過により対応でき
689 ないということ,
690 そして被告追加の申立てがされたのが,
691 訴訟の極めて初期段階にあること,
692
693 といった本件固有の事情を的確に抽出し,
694 それを最高裁判決摘示の理由に対する反論の形で
695 展開していくことが求められる。
696
697
698 設問4は,
699 文書提出命令に違反した場合の効果について,
700 一般的な考え方を整理した上で,
701
702 その具体的適用を考えさせる問題である。
703
704 一般に,
705 民事訴訟法第224条については,
706 概説書
707 においても取り上げられており,
708 条文自体の存在についてはその重要性も含めて理解されてい
709 るが,
710 その具体的な適用(特に効果)については,
711 さほど言及されていない。
712
713 受験生が,
714 これ
715 までの学習を通じて培ってきた基本的理解(例えば,
716 当事者主義の下での立証の困難の克服手
717 段,
718 真実に合致した裁判の要請,
719 訴訟上の協力義務,
720 当事者の手続保障等)を活用して,
721 その
722 場で考え,
723 解決に導く応用能力を試すべく出題したものである(出題に当たって,
724 詳細な誘導
725 を施したのはそのためである。
726
727 )。
728
729 小問(1)では,
730 裁判所が,
731 必要性及び要件充足を認めて発
732 出した文書提出命令に当事者が従わない場合に,
733 民事訴訟においてどのような「不都合」が生
734 じるのかを考えながら,
735 その解決手段としての民事訴訟法第224条第3項の効果を論じるも
736 のであるが,
737 その際には,
738 問題文で指摘した各説の長所短所を,
739 同項が定める要件(特に,
740 同
741 条第1項の要件との違い)や同条第3項の効果に関する「真実と認めることができる。
742
743 」とい
744 う規定の文言に留意しながら,
745 多角的に検討することが求められる。
746
747 小問(2)では,
748 小問(1)
749 での自説を前提に,
750 文書提出命令の申立てに「証明すべき事実」を記載すべきものとされてい
751 -5-
752
753 ることの意義や,
754 本件において申立書に証明すべき事実として実際に記載されている各事項が,
755
756 本件訴訟における立証命題との関係でどのように位置付けられるか(主要事実又は間接事実の
757 いずれであるのか,
758 法的評価であるのか等)を考えながら,
759 検討することが求められる。
760
761 また,
762
763 小問(3)は,
764 固有必要的共同訴訟という合一確定が要請される場面における民事訴訟法第2
765 24条第3項の効果を考えさせるものである。
766
767 心証説以外の立場からは特に共同被告のうちの
768 一人による文書の不提出という態度の訴訟法上の位置付け(民事訴訟法第40条第1項との関
769 係)を,
770 心証説の立場からは特に証拠共通の原則との関係を,
771 両被告の実質的関係を考慮し,
772
773 また,
774 他方被告への手続保障にも配慮しながら,
775 論じることが求められよう。
776
777
778 【刑事系科目】
779 〔第1問〕
780 本問は,
781 具体的事例に基づいて甲乙の罪責を問うことによって,
782 刑事実体法の理解,
783 具体的
784 事実に法規範を適用する能力,
785 論理的思考力を試すものである。
786
787
788 まず,
789 甲乙の共犯関係については,
790 甲が乙に一緒にA方に盗みに入ろうと誘ったのに対し,
791
792 乙が「俺はそんな危ないことはしたくない。
793
794 」と言った上,
795 実際に乙は自らはA方に盗みに入
796 らなかったことに着目し,
797 共謀共同正犯の成立要件ないし共同正犯と幇助犯の区別の判断基準
798 等を念頭に置いて,
799 本問の具体的事実関係の中から評価に値する事実を抽出し,
800 要件に当ては
801 めることが求められる。
802
803 その際,
804 事実を事例中からただ書き写して羅列するのではなく,
805 犯行
806 に至る経緯,
807 乙が甲に提供した情報の具体的内容,
808 犯行当日の甲乙の行動及び甲乙間の金銭の
809 分配状況等について,
810 これらの事実が持つ意味を的確に評価し,
811 上記要件ないし判断基準に当
812 てはめて結論に至る思考過程を論述する必要がある。
813
814 また,
815 その際には,
816 (共謀)共同正犯の
817 成否のみの論述にとどまらず,
818 甲乙間の共謀ないし共同実行の意思の内容にも留意し,
819 甲乙が
820 想定していた金品奪取の態様や奪取対象となる金品の範囲を明確に意識しておく必要がある。
821
822
823 甲の罪責については,
824 甲乙の共犯関係を前提として,
825 まずはA方に入った行為及び書斎の机
826 の引き出しから300万円を取り出してジャンパーのポケットに入れた行為について構成要件
827 への当てはめを行うことが求められる。
828
829 そして,
830 甲が,
831 Bにカッターナイフを示すなどした上,
832
833 現金2万円を奪った行為については,
834 反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫の有無等を中
835 心に,
836 必要かつ十分な具体的事実を抽出して法的評価を示す必要がある。
837
838 また,
839 Bが居間から
840 逃げ出し,
841 玄関を出た直後に転倒して怪我をしたことについては,
842 強盗の機会性の有無や因果
843 関係の有無等に留意しつつ,
844 具体的事実を示しながら強盗致傷罪の成否を検討する必要がある。
845
846
847 さらに,
848 その後,
849 A方前路上でBが乙から殴る・蹴るなどされて死亡したことに関し,
850 甲が罪
851 責を負うか否かについては,
852 乙との共犯関係に基づく帰責の可否及び甲に成立する強盗罪固有
853 の枠組み(強盗の機会性ないし因果関係等)による帰責の可否を本問の事実関係に即して論ず
854 ることが必要である。
855
856
857 乙の罪責については,
858 甲乙間の共犯関係を前提として,
859 甲によるA方への侵入と300万円
860 の窃取に関する罪責を示すほか,
861 甲がBにカッターナイフを示すなどして2万円を奪った行為
862 等については,
863 甲乙間の共犯関係の内容を踏まえ,
864 乙が予見していた事情と実際に甲が行った
865 ことの間のずれの有無とその内容を的確に示した上,
866 予見と異なる事態が生じた場合における
867 乙の罪責を本件に即して具体的に論ずることが必要である。
868
869 また,
870 乙がA方前路上でBを殴る
871 ・蹴るなどして死亡させたことについても,
872 その段階において乙に成立する犯罪を念頭に置き
873 ながら,
874 適切な犯罪を選択した上,
875 その犯罪の構成要件要素を示しつつ,
876 設問から抽出した具
877 体的事実をこれに当てはめることが必要である。
878
879
880 なお,
881 甲乙に成立する個々の犯罪を前提に,
882 これらに関する罪数評価及び共犯の成立範囲を
883 的確に示すことが必要であることは言うまでもない。
884
885
886 いずれの問題点についても,
887 論点に関する法解釈論を抽象的に論ずるにとどまることなく,
888
889 -6-
890
891 事例に示された具体的な事実関係を分析し,
892 論点の解決にとって必要な事実を抽出し,
893 的確に
894 法的評価をすることが求められている。
895
896
897 〔第2問〕
898 本問は,
899 捜査・公判に関する具体的事例を示して,
900 そこに生起する刑事手続上の問題点の解
901 決に必要な法解釈,
902 法適用にとって重要な具体的事実の分析・評価及び具体的帰結に至る過程
903 を論述させることにより,
904 刑事訴訟法等の解釈に関する学識と適用能力及び論理的思考力を試
905 すものである。
906
907
908 設問1は,
909 覚せい剤の営利目的所持事件を素材として,
910 被告人甲との会話内容等が記載され
911 たW作成のノートにつき,
912 要証事実との関係での証拠能力を問うことにより,
913 刑事訴訟法にお
914 いて最も基本的な法準則の一つである「伝聞法則」の正確な理解と具体的事実への適用能力を
915 試すものである。
916
917
918 法解釈の部分では,
919 検察官の立証趣旨を踏まえた要証事実の分析を前提にして(立証趣旨か
920 ら想定される要証事実は,
921 いずれもWが知覚・記憶してノートに記載した事実の真実性を前提
922 とするものであるから,
923 これが「伝聞証拠」,
924 すなわち刑事訴訟法第320条第1項の定める
925 「公判期日における供述に代えて書面を証拠と」する場合であることは明瞭である。
926
927 ),
928 伝聞法
929 則の例外となる規定を的確に選択した上,
930 その規定に係る各要件を検討することが必要である。
931
932
933 各要件を指摘,
934 記述するだけでは,
935 本事例への法適用を前提とした法解釈として不十分である
936 ことは言うまでもない。
937
938 とりわけ,
939 本事例で問題になる「特に信用すべき情況」の意義・解釈
940 等については的確に論じなければならない。
941
942 例えば,
943 本件ノートを刑事訴訟法第321条第1
944 項第3号に該当する書面であると考えた場合には,
945 証拠能力の要件要素である「特に信用すべ
946 き情況」の理論的意味に留意しつつ,
947 その存否につき,
948 供述の内容そのものを直接に判断する
949 のではなく,
950 供述に付随する外部的な情況を主たる考慮事情として判断しなければならず,
951 ま
952 た,
953 他の供述と比較するのではなく,
954 その供述自体にかかわる絶対的な判断が要求されている
955 ことなどを論述することが必要である。
956
957 また,
958 本件ノートに記載された被告人甲の発言内容の
959 真実性を要証事実とする場合には,
960 「再伝聞」が問題になるので,
961 その構造を正確に分析して
962 その旨を指摘しなければならないことはもとより,
963 それを許容するか否かの結論だけでなく,
964
965 その文理上の根拠や実質的な考慮等をも的確に論じることが求められている(本事例は,
966 公判
967 期日における供述に代えて用いられる,
968 被告人以外の者Wが作成した「供述書」に,
969 被告人甲
970 の供述を内容とする記述がある場合である。
971
972 )。
973
974
975 事例への法適用の部分では,
976 自らが論じた伝聞法則の例外となる規定や再伝聞の解釈等に従
977 って,
978 事例中に現れた具体的事実を的確に抽出,
979 分析し,
980 個々の事実が持つ法的な意味を的確
981 に示して論じることが求められている。
982
983 例えば,
984 供述に付随する外部的な情況にかかわる具体
985 的事実を抽出,
986 分析する際には,
987 個人の日記と解されるノートに,
988 1週間に3日ないし5日程
989 度の割合で,
990 出来事やその感想等がその経過順に記載されていることや,
991 空白の行やページが
992 無かったことなどという具体的事実を指摘した上で,
993 Wがその日にあった出来事をその都度記
994 載している事情等が認められることを論じたり,
995 また,
996 鍵が掛けられていた机の引き出しの中
997 から本件ノートが発見されたことなどという具体的事実を指摘した上で,
998 ノートを他人に見せ
999 ることを予定しておらず,
1000 うそを記載する理由がないことなどを論じたりすることが必要であ
1001 る。
1002
1003 つまり,
1004 具体的事実を事例中からただ書き写して羅列すれば足りるものではなく,
1005 個々の
1006 事実が持つ意味を的確に分析して論じなければならない。
1007
1008
1009 設問2は,
1010 捜索差押許可状の呈示に先立って捜索場所であるマンションの甲方の窓ガラスを
1011 割って入室した措置について,
1012 刑事訴訟法第111条第1項(同法第222条第1項により捜
1013 査段階に準用)の「必要な処分」といえるのか否かにつき,
1014 この規定の趣旨・目的を踏まえて,
1015
1016 事例中に現れた具体的事実を前提に,
1017 被疑事実の内容,
1018 差押物件の重要性,
1019 差押え対象物件に
1020 -7-
1021
1022 係る破棄隠匿のおそれ,
1023 財産的損害の内容,
1024 被捜索者の協力態様などの諸事情を具体的に論じ
1025 て,
1026 その適否に関する結論を導かなければならない。
1027
1028
1029 また,
1030 令状呈示の時期の適否についても,
1031 関連規定の有無等を指摘し,
1032 令状呈示の趣旨等を
1033 論じた上,
1034 事例中に現れた具体的事実関係を前提にして,
1035 事前呈示の要請と現場保全の必要性
1036 等に係る諸事情を具体的に摘示した上,
1037 結論を導かなければならない。
1038
1039
1040 いずれの設問についても,
1041 法解釈論や要件の存否を抽象的に論じるにとどまることなく,
1042 事
1043 例中に現れた具体的事実を指摘しつつ,
1044 個々の事実がどの要件の存否を基礎付けているのかを
1045 的確に論じることが要請されている。
1046
1047
1048 【選択科目】
1049 [倒
1050
1051 産
1052
1053 法]
1054
1055 〔第1問〕
1056 本問は,
1057 具体的な事例を通して否認制度及び相殺制限制度の理解について問うものである。
1058
1059
1060 設問1については,
1061 まず,
1062 偏頗行為否認(破産法第162条)の可否が問題となるが,
1063 こ
1064 の場合には,
1065 当該行為(不動産への担保の設定による借入れ)が同時交換的行為(破産法第
1066 162条第1項柱書参照)に該当するかどうかの検討が必要である。
1067
1068
1069 次に,
1070 当該行為が,
1071 相当の対価を得てした処分行為の否認の対象となるかが問題となり,
1072
1073 破産法第161条第1項の要件に当てはめて結論を得る必要がある。
1074
1075
1076 設問2については,
1077 まず,
1078 F社による相殺が破産法第71条第1項第2号の相殺制限の適
1079 用を受けるかが問題となり,
1080 同号の要件に当てはめて結論を得る必要がある。
1081
1082 相殺制限の場
1083 合に該当するときは,
1084 破産管財人Xは,
1085 売買代金を請求することになる。
1086
1087 また,
1088 本問では,
1089
1090 F社への不動産の売却が,
1091 相当の対価を得てした処分行為の否認の対象になるか,
1092 当該行為
1093 と相殺を全体として把握して不動産の代物弁済と同視し,
1094 偏頗行為否認の対象になるかも問
1095 題となるが,
1096 相殺制限の適用を肯定する場合には,
1097 否認と相殺制限の優先関係や得失等につ
1098 いても言及することが求められる。
1099
1100
1101 設問1及び2において,
1102 偏頗行為否認ないし相殺制限の適用の可否を検討する前提として,
1103
1104 C銀行への抵当権の設定又はF社への不動産の売却がされた時に債務者が支払不能状態にな
1105 っていたかどうかが問題となる。
1106
1107 問題文から読み取れる事実を破産法第2条第11項の要件
1108 に当てはめて結論を得ることが必要である。
1109
1110
1111 〔第2問〕
1112 本問は,
1113 破産手続との関係での財団債権及び優先的破産債権の地位並びに同一債務者につい
1114 て破産手続開始の申立てと再生手続開始の申立てが競合した場合の取扱いについて問うもので
1115 ある。
1116
1117
1118 設問1では,
1119 A社について破産手続が開始されたら,
1120 Bの退職金請求権は財団債権及び優先
1121 的破産債権となる旨,
1122 Cの退職金請求権は財団債権となる旨(破産法第149条第2項,
1123 民法
1124 第308条・破産法第98条第1項)を指摘した上で,
1125 財団債権あるいは優先的破産債権とな
1126 るべき権利を有する者は「債権者」(破産法第18条第1項)として破産手続開始の申立てを
1127 する利益を有するかについて,
1128 一貫した理由付けから結論を導く必要がある。
1129
1130
1131 設問2では,
1132 債権調査の過程で一般破産債権者が届出破産債権について異議を述べた場合に,
1133
1134 その異議が当該届出破産債権の確定を妨げる(破産法第124条第1項参照)ことを指摘した
1135 上で,
1136 優先的破産債権者が届出のあった一般破産債権について異議を述べて当該一般破産債権
1137 の確定を妨げることができるかという問題について,
1138 債権調査過程における破産債権者の「異
1139 議」(破産法第121条第2項)の意義を踏まえて,
1140 一貫した理由付けから結論を導く必要が
1141 ある。
1142
1143
1144 -8-
1145
1146 設問3では,
1147 破産手続開始の申立てと再生手続開始の申立てとが競合した場合に,
1148 どの裁判
1149 所がどのような判断基準で両手続の整序を図るのか(民事再生法第26条第1条第1号・第2
1150 5条第2号),
1151 及び再生手続開始の決定や再生計画認可の決定がされた場合の破産手続の帰す
1152 う(民事再生法第39条第1項・第184条)や再生手続廃止後の破産手続への移行の可能性
1153 (民事再生法第250条第1項)等について説明する必要がある。
1154
1155
1156 [租
1157
1158 税
1159
1160 法]
1161
1162 〔第1問〕
1163 設問1は,
1164 相続人がいわゆる代償分割により相続財産を単独取得し当該財産を後に譲渡した
1165 場合における所得税の課税関係を,
1166 取得費の取扱いに関して問うものである。
1167
1168 所得税法第60
1169 条第1項第1号の規定に関する基本的な理解を問うとともに,
1170 代償分割に関する私法上の法律
1171 構成を所得税の課税関係の法律構成にいかに反映させるかを試している。
1172
1173 あわせて,
1174 譲渡所得
1175 課税の趣旨をも勘案して,
1176 所得税法第33条第3項及び第38条第1項に規定する取得費に関
1177 する解釈論を展開する能力並びにその解釈の結果を具体的な事案における取得費該当性の判断
1178 に応用する能力を試すものである。
1179
1180
1181 設問2は,
1182 駐車場経営から生ずる所得に関する所得分類を踏まえた上で,
1183 駐車場用地の取得
1184 に伴い支払った登録免許税等の相続登記費用について,
1185 これを上記の取得費として取り扱うべ
1186 きか又は所得税法第37条第1項に規定する必要経費として取り扱うべきかを問うものであ
1187 る。
1188
1189
1190 〔第2問〕
1191 設問1は,
1192 法人税法の課税標準の計算構造に関する基礎的な理解を前提として,
1193 法人が債
1194 権放棄を行い,
1195 放棄した債権額につき貸倒損失として経理処理を行った場合の課税関係を問
1196 うものである。
1197
1198 法人税法第22条第3項に規定する損失として損金に算入できる貸倒れの要
1199 件についての理解と,
1200 本問に現れた具体的事実を前提として貸倒損失と認められるか否かを
1201 論じる能力を試すとともに,
1202 債権の放棄が法人税法第37条に規定する寄附金に当たるか否
1203 かを検討する能力を試している。
1204
1205
1206 設問2は,
1207 小問(1)の問題文に示された見解について,
1208 「収入金額」ないし「所得」とい
1209 った所得税法の基礎的な概念を踏まえつつ,
1210 その根拠付けを論理的に展開し,
1211 具体的事案に当
1212 てはめる能力を試している。
1213
1214
1215 [経
1216
1217 済
1218
1219 法]
1220
1221 〔第1問〕
1222 本問は,
1223 高速バスの共同運行に係るバス会社間の運行協定について独占禁止法上の問題点を
1224 検討させるものであり,
1225 いずれも独占禁止法の根幹となる「競争」,
1226 「競争の実質的制限」の理
1227 解を問う趣旨である。
1228
1229
1230 設問1は,
1231 バス会社による運賃の設定方法に関する3案について,
1232 不当な取引制限の成否を
1233 検討させるものである。
1234
1235 本設問に関連して,
1236 公正取引委員会が「高速バスの共同運行に係る独
1237 占禁止法上の考え方について」などを公表しているが,
1238 当該「考え方」の知識又は学習の有無
1239 を問うものではない。
1240
1241 競争の本質にさかのぼりつつ,
1242 独占禁止法の基本概念を正確に理解した
1243 上で要件の当てはめを行えば足りる。
1244
1245
1246 本件運行計画の検討としては,
1247 まず,
1248 運行計画が各事業者のいかなる事業活動を相互に拘束
1249 するといえるかを具体的に検討していくこととなろう。
1250
1251 その際には,
1252 単に運賃の共同決定のみ
1253 を不当な取引制限とするだけでなく,
1254 広い意味での相互拘束行為の存在に触れる必要がある。
1255
1256
1257 一定の取引分野については複数の取引分野が候補となり,
1258 答案においても1つ又は複数の
1259 -9-
1260
1261 取引分野が画定され得るが(複数の取引分野を画定する場合にはその関係についても論述が望
1262 まれる。
1263
1264 ),
1265 本件の事実関係に即して合理的な当てはめができるか否かが問われる。
1266
1267 その上で,
1268
1269 競争の実質的制限について,
1270 当該取引分野に即した検討を行うことが必要である。
1271
1272 なお,
1273 画定
1274 した取引分野と矛盾する検討は不適当である。
1275
1276
1277 競争の実質的制限等の検討に当たっては,
1278 共同運行による新規事業又は市場の創出という本
1279 問の特性をも踏まえて,
1280 本件協定案によりどの取引分野でいかなる競争が制限されるのか,
1281 い
1282 かなる競争促進的効果があるのか,
1283 それらが独占禁止法上どのように評価されるかについて,
1284
1285 競争の本質に沿った検討を適切に行うことを求めている。
1286
1287
1288 いずれの点についても,
1289 特定の結論に達しているか否かにより評価するものではなく,
1290 その
1291 結論に至る検討過程を通して独占禁止法の理解の有無を問うものである。
1292
1293
1294 設問2は,
1295 バス会社3社による新規参入妨害のための協定を素材として独占禁止法上の基本
1296 的な問題に対する理解度を問うものである。
1297
1298
1299 適用法条としては,
1300 独占禁止法第3条前段(私的独占)又は第3条後段(不当な取引制限)
1301 のほか,
1302 一般指定第1項,
1303 第15項等が考え得る。
1304
1305 もっとも,
1306 問題文の協定中の一部の語句に
1307 基づく論点主義的な論述をするだけでなく,
1308 本件の本質を踏まえるとともに,
1309 適用法条のそれ
1310 ぞれの要件,
1311 効果の差異を理解した上で,
1312 適用法条に関する論述をすることが望まれる。
1313
1314
1315 要件の検討に当たっては,
1316 その意義を正確に理解した上で,
1317 本件における単独事業者の市場
1318 参入の困難性,
1319 各バス会社が保有する施設の意義,
1320 協定の内容,
1321 当該一定の取引分野に及ぼす
1322 効果等を踏まえた当てはめが求められる。
1323
1324
1325 〔第2問〕
1326 本問は,
1327 不公正な取引方法に関して比較的詳細な事案を設定した上で,
1328 独占禁止法の基礎的
1329 な理解を問うものである。
1330
1331 あわせて,
1332 正当化事由等の評価の方法,
1333 及びエンフォースメントに
1334 関する基礎的知識をも確認しようとしている。
1335
1336
1337 設問1では,
1338 フランチャイズ本部が加盟店に対して,
1339 (1)ピザ・サラダ等の価格を拘束す
1340 ること,
1341 ドリンク・デザートの価格を拘束すること,
1342 提供する品目の制限を課すこと,
1343 (2)
1344 営業地域を割り当てし,
1345 地域外での販売の制限及び地域外顧客への販売の制限を課すこと,
1346
1347 (3)原材料の購入先の制限を課すことを,
1348 契約に基づいて定めるとともに,
1349 それに沿った指
1350 導・統制を現実に行うことが,
1351 不公正な取引方法に該当するか否かを問うている。
1352
1353 本件に適用
1354 し得る一般指定の項を見定め,
1355 当該項の規定に沿ってその行為要件及び効果要件を検討してい
1356 くことが必要である。
1357
1358 (1)では一般指定第12項,
1359 第13項,
1360 (2)では同第13項,
1361 (3)
1362 では同第10項,
1363 第11項,
1364 第13項の適用が問題となり得るであろう(なお,
1365 当該規定のす
1366 べてを検討することを求めているわけではないが,
1367 他方で,
1368 本問設例の趣旨に照らせば合理的
1369 に適用可能な規定を広く検討することは望ましい。
1370
1371 )。
1372
1373
1374 行為要件の検討に当たっては,
1375 各規定の内容を正確に理解し,
1376 本問事例に当てはめること
1377 が必要である。
1378
1379 さらに,
1380 効果要件の検討に当たっては,
1381 これらの制限を課すことが,
1382 一般的
1383 に競争上いかなる効果を有するかを把握した上で,
1384 さらに,
1385 本問におけるフランチャイズ制
1386 度の特質,
1387 営業の統一性の確保,
1388 食品の安全性の確保,
1389 スケールメリット,
1390 ブランド間競争
1391 の有無などの諸点をも検討し,
1392 競争上の評価について検討することが求められるものであっ
1393 て,
1394 独占禁止法における基本的考え方を習得し,
1395 それを具体的事例に当てはめができるか否
1396 かを確認するものである。
1397
1398 正当化事由または競争促進的効果に関するこれらの考え方につい
1399 ては,
1400 当然ながら唯一の解答を前提とするものではなく,
1401 独占禁止法の趣旨に沿った説得的
1402 で論理的に整合する説明ができるか否かを確認している。
1403
1404
1405 設問2は,
1406 弁護士の立場から,
1407 本問の事案について独占禁止法に基づく訴訟の提起の可否
1408 を問うものであり,
1409 まず,
1410 独占禁止法第24条に関し,
1411 その要件についての基本的な理解を
1412 - 10 -
1413
1414 示した上,
1415 本問における具体的な違反行為と差止めの範囲などについて検討することが望ま
1416 しい。
1417
1418 また,
1419 検討対象となる訴訟は同条に基づくものに限られるものではなく,
1420 その他の請
1421 求の可否も検討の対象となり得るであろう。
1422
1423
1424 [知的財産法]
1425 〔第1問〕
1426 設問1は,
1427 特許権者が特許権の存続期間全部に対応する実施料全額の一括支払を受けて専用
1428 実施権を設定した場合における特許権者及び専用実施権者の差止請求権(特許法第100条第
1429 1項)及び損害賠償請求権に関する理解を問うものである。
1430
1431 専用実施権を設定した特許権者の
1432 差止請求の可否について判示した最高裁判所の判決(最判平成17年6月17日民集59巻5
1433 号1074頁)を踏まえた論述が求められる。
1434
1435
1436 具体的には,
1437 丁が製造販売するB傘が,
1438 甲発明の技術的範囲(特許法第70条)に属する
1439 かどうかをまず検討した上で,
1440 甲発明の特許権者甲が,
1441 丁に対し,
1442 B傘の製造販売の差止め
1443 及び損害賠償を請求することができるかどうか,
1444 甲から専用実施権の設定を受けた乙が,
1445 丁
1446 に対し,
1447 B傘の製造販売の差止め及び損害賠償を請求することができるかどうか等について,
1448
1449 本問の事実関係に即して論じなければならない。
1450
1451
1452 設問2の1は,
1453 通常実施権者が特許無効審判の請求人適格(特許法第123条第2項)を
1454 有するかどうかについて問うものである。
1455
1456 また,
1457 設問2の2は,
1458 特許を無効とする審決が確
1459 定した場合,
1460 特許権は初めから存在しなかったものとみなされること(特許法第125条)
1461 との関係で,
1462 小問(1)では,
1463 通常実施権者が,
1464 特許権者に対し,
1465 既払の実施料の返還を請
1466 求することができるかどうかについて,
1467 小問(2)では,
1468 特許権者が,
1469 通常実施権者に対し,
1470
1471 当該審決の確定前の期間に対応する実施料の未払分の支払を請求することができるかどうか
1472 について,
1473 それぞれ問うものである。
1474
1475
1476 〔第2問〕
1477 設問1は,
1478 甲が執筆し,
1479 同人誌に掲載した計30編の小説の中から選んだ15編のものを,
1480
1481 一部変更を施した上で収録した乙書籍を作成し出版した乙に対する甲の請求を,
1482 また,
1483 設問2
1484 は,
1485 乙書籍に収録された甲の小説を収録した丙書籍を作成し出版した丙に対する甲の請求を問
1486 うものであり,
1487 甲が乙及び丙に対していかなる権利の侵害に基づいてどのような請求をするこ
1488 とが可能であるかを論述しなければならない。
1489
1490 侵害される権利としては,
1491 複製権,
1492 譲渡権,
1493 公
1494 表権,
1495 同一性保持権等が問題となる。
1496
1497 公表権の侵害については,
1498 甲の小説が,
1499 「まだ公表され
1500 ていないもの」(著作権法第18条第1項)であるかどうか,
1501 すなわち,
1502 同人誌に掲載され,
1503
1504 クラスメートに配布されたことにより,
1505 「発行」(著作権法第3条第1項)されたものになるこ
1506 とはないかどうかを論じる必要がある。
1507
1508 同一性保持権の侵害については,
1509 乙が甲の小説に施し
1510 た変更が,
1511 意に反する改変となることを示した上で,
1512 「やむを得ないと認められる改変」(著作
1513 権法第20条第2項第4号)に当たるかどうかを論述することが求められる。
1514
1515 また,
1516 乙による
1517 変更に関して,
1518 改変された甲の小説を複製し譲渡する行為に対して,
1519 その行為が同一性保持権
1520 を侵害するかどうかの点を含め,
1521 甲がどのような請求をすることができるかを論述することが
1522 求められる。
1523
1524 設問3及び設問4には,
1525 これに類似する論点が含まれている。
1526
1527
1528 設問3では,
1529 甲の小説を収録した乙書籍及び丙書籍をA市民に貸し出しているA市立図書館
1530 が甲のいかなる権利を侵害し,
1531 甲がA市に対してどのような請求をすることが可能であるかを
1532 論述しなければならない。
1533
1534 A市立図書館による貸出しには貸与権が働くが,
1535 その侵害の成否に
1536 ついては,
1537 著作権法第38条第4項の適用の有無を論じる必要がある。
1538
1539 甲の小説が「公表され
1540 た著作物」に当たらない場合には,
1541 同項は適用されず,
1542 また,
1543 公表権の侵害も問題となること
1544 となる。
1545
1546
1547 - 11 -
1548
1549 設問4は,
1550 乙書籍に収録された甲の15編の小説を並び替えて収録した丙書籍を作成し出版
1551 した丙に対する乙の請求を問うものであり,
1552 乙書籍が乙の著作物であり,
1553 丙が乙の権利を侵害
1554 するかどうかを論述することが求められる。
1555
1556 乙書籍の著作物性については,
1557 甲の小説の選択又
1558 は配列によって創作性を有し,
1559 編集著作物であるかどうかが問題となり,
1560 丙による侵害の成否
1561 については,
1562 乙書籍における選択又は配列による創作性が利用されたかどうかが問題となる。
1563
1564
1565 [労
1566
1567 働
1568
1569 法]
1570
1571 〔第1問〕
1572 本問は,
1573 時間外労働及び賃金規程改訂の事例を通じて,
1574 時間外労働に対する割増賃金,
1575 当事
1576 者間の合意や就業規則と労働基準法(以下「労基法」という。
1577
1578 )との関係,
1579 就業規則の変更に
1580 ついての理解を問うものである。
1581
1582
1583 小問1では,
1584 「エキスパート」職には超過勤務手当を支給しない旨の賃金規程の定めは労基
1585 法第41条第2号,
1586 第37条との関係で有効か,
1587 割増賃金を基本給に含めて支払う旨の合意は
1588 労基法第37条との関係で有効か,
1589 職務手当は割増賃金の趣旨であるとの合意があるかが問題
1590 であり,
1591 これらの点を前提にした上で,
1592 設問で示されている賃金規程及び労基法を適用して,
1593
1594 割増賃金の基礎となる賃金,
1595 時間外及び深夜の労働時間,
1596 割増率を説明することが求められる。
1597
1598
1599 小問2では,
1600 割増賃金を定額で支給する旨の賃金規程の定めを労基法第37条との関係でど
1601 のように理解するかが問題であり,
1602 定額の超過勤務手当がどのような意味や効果を有するかに
1603 留意しながら,
1604 割増賃金の基礎となる賃金,
1605 時間外及び深夜の労働時間,
1606 割増率を説明するこ
1607 とが求められる。
1608
1609
1610 小問3では,
1611 就業規則と一体となっている賃金規程の改訂に関して,
1612 改訂に同意があるか,
1613
1614 改訂手続は適法に行われているか,
1615 改訂はXに不利益な変更か,
1616 Xの同意がないとしても不利
1617 益に変更された賃金規程が適用される場合に該当するかが問題となる。
1618
1619 小問1及び小問2を踏
1620 まえながら,
1621 改訂がもたらす不利益の程度を正しく評価した上で,
1622 合理性の判断を行うことが
1623 求められる。
1624
1625
1626 〔第2問〕
1627 本問は,
1628 所属労働組合の方針に反対し,
1629 その承認を得ないで行った,
1630 いわゆる少数派組合員
1631 であるXらの行為を素材として,
1632 組合活動及び懲戒の法理に関する理解を問うものである。
1633
1634 労
1635 働組合及び組合員個人の活動に対する法的保護とその限界,
1636 不当労働行為に対する救済の仕組
1637 み,
1638 懲戒処分の根拠と手続上の留意点などをきちんと押さえた上で解答することが必要である。
1639
1640
1641 まず,
1642 設問1では,
1643 Xらが労働委員会に不当労働行為の救済を求めることが考えられるが,
1644
1645 使用者のどのような行為を対象として救済申立てを行うのか,
1646 労働組合が申立てを行わない場
1647 合,
1648 個人による申立てが可能かといった点が問題となる。
1649
1650 その上で,
1651 Xらの活動は「労働組合
1652 の行為」に該当するのか,
1653 該当するとして正当性についてどのように判断すべきか,
1654 及び会社
1655 の行為は支配介入に当たるかについて,
1656 会社の施設管理権や就業時間中の職務専念義務・誠実
1657 義務との関係,
1658 言論の自由と会社批判・誹謗中傷との関係,
1659 労働組合へのこれまでの会社の対
1660 応や他の労働者の取扱いとの比較等に留意しながら,
1661 検討することになろう。
1662
1663
1664 また,
1665 裁判所に司法救済を求める場合には,
1666 懲戒処分の前後でいかなる訴訟が提起できるの
1667 か,
1668 その論拠を不当労働行為として構成するのか,
1669 懲戒権の濫用として構成するのかといった
1670 点が問題となる。
1671
1672
1673 次に,
1674 設問2では,
1675 Y株式会社がXらに対する懲戒処分を行うについて,
1676 就業規則の定め(本
1677 件では,
1678 懲戒処分として,
1679 減給,
1680 出勤停止又は懲戒解雇の3種類しか選択できない。
1681
1682 )とその
1683 該当性を吟味しながら,
1684 どのような論拠により,
1685 どの懲戒処分を選択するのかを検討すること
1686 が求められる。
1687
1688 また,
1689 懲戒処分を行うに当たって留意すべき点として,
1690 違反の程度,
1691 過去の事
1692 - 12 -
1693
1694 例や他の労働者との比較,
1695 警告書を発したが違反行為が一向に改善されないこと等をどのよう
1696 に評価するのか,
1697 さらに,
1698 適正手続の観点から弁明の聴取が必要なのか等が問題となろう。
1699
1700
1701 [環
1702
1703 境
1704
1705 法]
1706
1707 〔第1問〕
1708 本問は,
1709 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の下での廃棄物該当性の判
1710 断基準,
1711 及び,
1712 具体的事例に対するその適用に関する出題である。
1713
1714 まず,
1715 判断基準について判
1716 示した最高裁判所平成11年3月10日第2小法廷決定・刑集53巻3号339頁の内容を理
1717 解しているかが問われる。
1718
1719 基準として,
1720 @性状,
1721 A排出の状況,
1722 B通常の取扱い形態,
1723 C取引
1724 価値の有無,
1725 D占有者の意思等を総合的に勘案,
1726 を意識しつつ,
1727 設問に即して,
1728 弁護人と検察
1729 官の主張を対応させるように解答することが期待されている。
1730
1731
1732 Aの弁護人としては,
1733 おからを飼料や肥料の原料として使用していることからその廃棄物性
1734 を否定する主張を中心にすることになる。
1735
1736 廃棄物ではないから,
1737 収集運搬や処分についての廃
1738 棄物処理法の許可は不要であると主張することになる。
1739
1740 また,
1741 リサイクル対象物を廃棄物に含
1742 めると解することの不合理性も主張することになる。
1743
1744
1745 検察官は,
1746 D外3名からAに対して金銭が支払われているがゆえに廃棄物に該当すること,
1747
1748 有価物でないため構造的に不法投棄等が発生しやすいがゆえに廃棄物とするのが適切であるこ
1749 となどの点を中心に反論することになる。
1750
1751 廃棄物であるがゆえに再生行為(処分)であっても許
1752 可を要することなどの記述は加点要素となる。
1753
1754
1755 〔第2問〕
1756 設問1は,
1757 石綿が大気汚染防止法の規制対象であることの理解を問い,
1758 A県がB地区自治会
1759 とDとの間で公害防止協定を締結させた意味を問うものである。
1760
1761 A県知事が採り得る措置とし
1762 ては,
1763 大気汚染防止法第18条の18の作業基準適合命令が考えられる。
1764
1765 同法第18条の14
1766 の作業基準の内容まで理解し記憶していることは求めないが,
1767 適用の可能性がある旨の指摘を
1768 期待している。
1769
1770 EのDに対する訴訟上の請求としては,
1771 公害防止協定に基づく債権的請求と人
1772 格権に基づく差止請求を論じ,
1773 民事上の保全処分の申立てをする必要性を論じることが求めら
1774 れている。
1775
1776 その際,
1777 公害防止協定に基づく債権的請求を構成するための法的構成(第三者のた
1778 めにする契約等)を指摘する必要がある。
1779
1780 人格権に基づく差止請求では違法性ないし受忍限度
1781 論や差止請求の内容,
1782 抽象的差止請求の可否等も論じる必要がある。
1783
1784
1785 設問2は,
1786 Dに対しては,
1787 公害防止協定違反に基づく損害賠償請求,
1788 C及びDに対しては,
1789
1790 不法行為に基づく損害賠償請求の可否を問うものである。
1791
1792 いずれについても何が損害に当たる
1793 かの議論を期待している。
1794
1795 C及びDに対する不法行為に基づく損害賠償請求では,
1796 共同不法行
1797 為論を論ずる必要もあり,
1798 違法性ないし受忍限度論も問題となる。
1799
1800
1801 [国際関係法(公法系)]
1802 〔第1問〕
1803 本問は,
1804 国際関係維持に不可欠な外交関係法の特質を問う問題である。
1805
1806
1807 設問1では,
1808 外交官の特権である,
1809 「身体の不可侵」(外交関係に関するウィーン条約第2
1810 9条)の絶対性を問うている。
1811
1812 @外交官の「身体の不可侵」,
1813 ひいては外交官の特権免除が,
1814
1815 「外交使節団の任務の能率的な遂行の確保」と「派遣国の代表性」に基礎を置いており,
1816 A
1817 そのために派遣国が放棄しない限り絶対的な性格を持つことを述べ,
1818 したがって,
1819 設問のよ
1820 うな「スパイ罪」の嫌疑のある事例であっても乙を拘束し続けることが上記の外交関係に関
1821 する規則に反することを説明するのが解答の要点である。
1822
1823 もちろん,
1824 外交官の身体が不可侵
1825 であるとしても,
1826 現行犯であって火急の必要がある場合に,
1827 現場で一時的に取り押さえるこ
1828 - 13 -
1829
1830 とが許されるかどうかという点まで議論すれば完璧である。
1831
1832 さらに,
1833 AB両国のいずれかが,
1834
1835 外交関係に関するウィーン条約に入っていない場合にも上記規則が国際慣習法を表し,
1836 それ
1837 ゆえに適用されることに言及してもよい。
1838
1839
1840 設問2は,
1841 接受国が外交特権の濫用があったことを現認したときに,
1842 接受国が正当に採り得
1843 る措置を問う問題である。
1844
1845 まずは,
1846 当該外交官について,
1847 接受国が「ペルソナ・ノン・グラー
1848 タ」を宣言して退去を求めるのが採り得る措置の第1である(外交関係に関するウィーン条約
1849 第9条)。
1850
1851 しかし,
1852 派遣国ぐるみで重大犯罪を犯しているなどの場合には,
1853 派遣国の判断によ
1854 って外交使節団自体の退去を求めることもできる(同条約第2条)(例えば,
1855 1984年の英
1856 国のリビアに対する措置)。
1857
1858 次に,
1859 乙の行為が,
1860 外交官の「接受国の法令尊重」の義務(同条
1861 約第41条)に反していることを根拠に,
1862 上記の外交関係法特有の措置以外が可能かを検討し
1863 てもらいたい。
1864
1865 具体的には,
1866 国家機関たる乙の行為が国際法義務違反を構成すれば,
1867 A国はB
1868 国の国家責任を追及でき,
1869 陳謝等の救済(責任の解除)を求めることを説明してもらいたい。
1870
1871
1872 さらに,
1873 B国の国際法上の義務違反に対して,
1874 外交関係法とは離れて,
1875 一般の対抗措置が採り
1876 得るかの検討も重要である。
1877
1878 国際司法裁判所「在テヘラン米国大使館員人質事件」が説くよう
1879 に,
1880 外交関係法は「自己充足的な体制(self-contained regime)」を構成するために一般国際法
1881 上の対抗措置の採用は制限される。
1882
1883 この点との関係で乙の行為に対して,
1884 A国が一般国際法上
1885 の対抗措置を採れるかどうかも検討してほしい。
1886
1887
1888 設問3は,
1889 外交特権免除の侵害(外交官の身体の侵害)が続いている場合に,
1890 B国が採り得
1891 る措置を尋ねている。
1892
1893 国際司法裁判所「在テヘラン米国大使館員人質事件」を思い浮かべて解
1894 答すればよい。
1895
1896 裁判外では,
1897 交渉や第三国のあっせん等によって乙の釈放を求めるという常識
1898 的な方法に加えて,
1899 B国が対抗措置を採り得るかどうかなどを検討してほしい。
1900
1901 対抗措置を採
1902 り得る条件は満たしているか(「義務違反の継続」と「当該行為中止の目的」),
1903 また,
1904 採る場
1905 合にはどのような条件が課されるか(特に本件の場合は,
1906 外交官の不可侵性の尊重)をきちん
1907 と説明することが求められる。
1908
1909 裁判上は,
1910 A国の国家責任を追及して義務違反の中止(乙の身
1911 柄の解放)等を求めることが可能であるが,
1912 それに先立って,
1913 釈放のために権利保全のための
1914 暫定措置(国際司法裁判所規程第41条)を求めることを考えなければいけない。
1915
1916
1917 本問では,
1918 外交関係法上の義務違反に対して,
1919 派遣国,
1920 接受国がいかなる措置を採って,
1921 義
1922 務違反の是正を求めることができるかを中心に試そうと考えた。
1923
1924 また,
1925 国際法規の解釈と問題
1926 の状況への当てはめ(適用)をきちんと分けて考えるようにしてもらいたい。
1927
1928
1929 〔第2問〕
1930
1931 本問は,
1932 国内裁判所が判断に直面する国際法上の問題のうち頻度の高い問題であり,
1933
1934 かつ,
1935 主権国家の並存を基盤として成立している国際法の基本原則の一つを構成する,
1936
1937 国家免除原則に関する問題である。
1938
1939 日本の国内判例において,
1940 絶対免除原則から制限免
1941 除原則へと判例変更の道を開くという意味で,
1942 重要な意義を持ち大きな注目を集めてい
1943 る国内判例を素材として,
1944 問題文の事実関係及び関係者の法律関係が設定されている。
1945
1946
1947 XがA国を被告としてB国の国内裁判所に訴訟提起するわけであるが,
1948 B国の裁判管
1949 轄権がA国に対して及ぶかという点で,
1950 国家免除原則が問題となる。
1951
1952
1953 第一に,
1954 国家免除原則についての基本的な理解が求められる。
1955
1956 そこでは,
1957 絶対免除原則
1958 から制限免除原則への移行という国際法の動向,
1959 その移行の背景にある事情(国家観念
1960 のとらえ方の変遷,
1961 国家機能の変化,
1962 国家の取引の相手方たる私人の保護という要請等),
1963 問題文中にあるように諸国の実践の集積などを踏まえた論述が求められる。
1964
1965
1966 第二に,
1967 制限免除原則の立場に立つ場合には,
1968 国家免除の対象となる行為の範囲が問
1969 題となる。
1970
1971 これについては,
1972 行為主体ではなく行為そのものに着目すると,
1973 行為に着目
1974
1975 - 14 -
1976
1977 する考え方には行為目的説と行為性質説とがあることの認識を示した上で,
1978 どのように
1979 免除の対象となる行為の判断基準を設定するかを論証することになる。
1980
1981 具体的な例を挙
1982 げて受験者自身の採用する立場を説明すると説得的な論証となり得る。
1983
1984
1985 第三に,
1986 受験者自身の採用する立場に立って,
1987 それを本件の事例へ丹念に当てはめる
1988 ことにより,
1989 本件においてB国の裁判管轄権がA国に及ぶかについての結論を導くこと
1990 になる。
1991
1992 それに際しては,
1993 まず,
1994 本件の具体的事実という点で,
1995 A国軍事基地での夜間
1996 の航空機の離発着,
1997 地上での関連活動であることに着目する。
1998
1999 さらに,
2000 A国とB国間の
2001 安全保障条約上の法律関係として,
2002 A国の軍事基地での活動が条約上で負っている義務
2003 (公共の安全に配慮する義務,
2004 B国の法令を尊重する義務)の持つ意義にも留意する。
2005
2006
2007 加えて,
2008 同条約第6条が国家免除に関していかなることを規定する条文であるか,
2009 その
2010 効果は,
2011 受験者自身の採用する立場に基づくとどのようなものかを論じることになる。
2012
2013
2014 [国際関係法(私法系)]
2015 〔第1問〕
2016 本問は,
2017 遺言能力,
2018 遺言の方式及び遺言による認知という,
2019 家族法上の基本的事項につい
2020 ての準拠法の理解を問う問題である。
2021
2022
2023 設問1は,
2024 成年被後見人の遺言能力の有無を問うものである。
2025
2026 遺言能力の準拠法を定める
2027 規定は法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。
2028
2029 )第4条,
2030 第5条か,
2031 第37条か,
2032
2033 同条の「遺言の成立当時」とはいかなる時点かを検討して準拠法を決定し,
2034 実質法の本件事
2035 案へのあてはめの結果を説明することが求められている。
2036
2037
2038 設問2は,
2039 遺言の方式の有効性を問うものである。
2040
2041 まず,
2042 遺言は,
2043 遺言の方式の準拠法に
2044 関する法律(以下「方式法」という。
2045
2046 )第2条が掲げるいずれかの法の定める要件に合致して
2047 いるときは方式上有効とされること,
2048 方式法第5条の規定により,
2049 遺言の際の証人の立会い
2050 や,
2051 被後見人が遺言能力を回復している時に遺言がされたことの証明の方式も「遺言の方式」
2052 の中に含まれることを指摘し,
2053 その上で,
2054 本件事案への方式法第2条の適用の結果を丁寧に
2055 述べ,
2056 本件遺言は日本民法の要求する方式は満たしていないが,
2057 甲国民法が要求する方式は
2058 満たしていることを説明する必要がある。
2059
2060 そして,
2061 証人を1名で足りるとしている甲国民法
2062 第T条第2項の規定の適用が方式法第8条の「明らかに公の秩序に反するとき」に該当する
2063 かどうかを検討することになる。
2064
2065
2066 設問3は,
2067 本件遺言による認知の有効性を問うものである。
2068
2069 認知の有効性を定める規定は
2070 通則法第37条か,
2071 第29条か,
2072 同条第1項後段及び第2項前段の「認知の当時」とはいか
2073 なる時点か,
2074 甲国民法第P条が要求する後見人の同意は通則法第29条第1項後段の「第三
2075 者の承諾又は同意」に該当するか,
2076 準拠実質法上Yが本件遺言を承諾しているかを検討する
2077 ことが求められている。
2078
2079
2080 〔第2問〕
2081 本問は,
2082 貿易取引における荷為替の知識を前提にして,
2083 船荷証券中の裁判管轄条項の有効
2084 性と,
2085 運送品の損傷による運送人の責任について問う問題である。
2086
2087
2088 設問1は,
2089 我が国において渉外的民事訴訟事件についての国際裁判管轄権はどのような基
2090 準によって判断すべきか,
2091 運送人の主たる営業所所在地の裁判所の専属的管轄とする船荷証
2092 券中の裁判管轄条項はいかなる場合に有効とされるかを問うものである。
2093
2094 本件設例と類似の
2095 事案について外国の裁判所を管轄裁判所とする船荷証券中の専属的管轄条項の有効性につい
2096 て判示した最高裁判所の判決(最判昭和50年11月28日民集29巻10号1554頁)
2097 を踏まえつつ,
2098 国際裁判管轄の合意における当事者双方の署名の必要性についての論述を中
2099
2100 - 15 -
2101
2102 心に,
2103 いかなる場合に専属的裁判管轄の合意が有効とされるか,
2104 本件において丙国に専属的
2105 国際裁判管轄権を認めて我が国の裁判管轄権を否定することが我が国の公序に反しないか等
2106 についても論ずることが求められている。
2107
2108
2109 設問2は,
2110 運送品に損傷が生じた場合における運送人の損害賠償責任について問うもので
2111 ある。
2112
2113 その小問(1)においては,
2114 船荷証券中に,
2115 運送人の主たる営業所の所在地である我
2116 が国の裁判所の管轄を合意した条項と日本法によって解決する旨の条項がある場合に,
2117 我が
2118 国においては本契約の準拠法が日本法になり,
2119 国際海上物品運送法が適用されることを説明
2120 した上で,
2121 荷受人による運送品の検査の結果についての通知,
2122 運送人の注意義務とそれにつ
2123 いての証明責任について,
2124 どのような規定が適用され,
2125 本件におけるその適用結果がどのよ
2126 うになるのかの論述が求められている。
2127
2128 また,
2129 小問(2)においては,
2130 損害賠償額の算定に
2131 ついてどのような規定が適用され,
2132 その適用結果がどのようになるのかの論述が求められて
2133 いる。
2134
2135
2136
2137 - 16 -
2138
2139