1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 1.A株式会社(以下「A社」という。
17
18 )の代表者Pから次のような相談を受けた弁護士として,
19
20 下の設問に答えなさい。
21
22 Pの相談内容は,
23 すべて証拠により裏付けられる事実であるとする。
24
25
26 【Pからの相談内容】
27 私はA社の代表取締役をしておりますPと申します。
28
29
30 A社は旅館業を営むことを業としております。
31
32 A社が経営している旅館は,
33 温泉町の一角にあ
34 ります木造2階建ての温泉旅館です。
35
36 私の祖父の代からの老舗で,
37 建物は築50年にもなろうと
38 しておりますが,
39 昔からの従業員による家庭的なもてなしと敷地内に温泉が出ること,
40 ちょっと
41 した散策ができる和風庭園があることが好評で,
42 ひいきにしていただいているお客様もいて,
43
44 れまでやってきておりました。
45
46 祖父の跡を継いだ父が2年前に急死してからは,
47 それまで東京で
48 会社勤めをしていた長男の私が呼び戻されて,
49 代表取締役として経営に携わってきました。
50
51
52 しかし,
53 さすがに施設が老朽化して,
54 度々の修繕に費用が掛かることもあり,
55 苦しい経営を続
56 けていましたところ,
57 今般の経済情勢の厳しさから,
58 とうとう手元資金がほとんどなくなり,
59
60 近の支払のめども立たなくなってしまいました。
61
62 民事再生というものを申し立てることにより,
63
64 破産という最悪の事態を避けることができると聞いて,
65 この度御相談に伺った次第でございます。
66
67
68 A社の他の取締役である私の母親と妻も賛成してくれており,
69 裁判所に納める予納金として必要
70 なお金は,
71 何とか工面してまいりました。
72
73
74 A社の財務の概要を御説明いたします。
75
76 まず,
77 最大の債権者はB銀行で,
78 債権額は約2億円で
79 す。
80
81 A社の唯一の資産であります旅館の土地建物に,
82 第1順位の抵当権を有しております。
83
84
85 仕入れその他の取引業者の債権者は15社,
86 債権総額は約3000万円です。
87
88 それから,
89 お恥
90 ずかしい話ですが,
91 法人税,
92 社会保険料等の公租公課の未納分が約2000万円たまっており,
93
94 また,
95 従業員の過去1か月分の給料合計約200万円も遅配となっております。
96
97 負債は以上のと
98 おりです。
99
100
101 資産としては,
102 先ほども申し上げましたとおり,
103 唯一のものが旅館の土地建物で,
104 B銀行の2
105 億円の抵当権がついております。
106
107 この土地建物についている担保権はこれだけです。
108
109 この土地建
110 物の時価は,
111 温泉が出ることを考慮してもせいぜい1億円ではないかと,
112 幾つもの不動産業者が
113 査定を出しており,
114 間違いのないところだろうと考えられます。
115
116 しかし,
117 B銀行は,
118 この不動産
119 の時価は1億5000万円は下らないはずであり,
120 そのような前提で支払条件を示さない限り,
121
122 抵当権の実行も辞さないと,
123 強く主張しています。
124
125
126 この土地建物のほかには特段の資産はなく,
127 裁判所への予納金を支払うと,
128 手元の資金はわず
129 かしか残っていない状態です。
130
131
132 こうした現状から,
133 A社単独での再生は困難であり,
134 どこかにスポンサーを見付けて支援をし
135 ていただかなければならないことは,
136 私も理解しております。
137
138 そこで,
139 八方手を尽くして探しま
140 したところ,
141 ようやく1社だけ,
142 支援を引き受けていただける会社が見付かりました。
143
144 この会社
145 は,
146 同じ県内で幾つも旅館を経営しておりますQ社です。
147
148 援助の条件といたしましては,
149 出せる
150 金額は1億5000万円が上限で,
151 Q社自らが主体となって施設と従業員を引き受けて経営する
152 ことを希望していますが,
153 負債や抵当権の負担は引き継がないことを支援の条件としています。
154
155
156 私どもも,
157 旅館の経営者としての能力には限界を感じており,
158 Q社に旅館を引き継いでいただけ
159 るのは有り難いと思っております。
160
161 Q社としては,
162 これからのシーズンを控えて,
163 できるだけ早
164 く引継ぎをすることを強く希望しておりまして,
165 私としても,
166 従業員を引き止めるにももう限界
167 で,
168 一刻も早くQ社に入っていただかなければならないと感じております。
169
170
171 ただ,
172 A社の株主構成としては,
173 私が株式の60%を有しているほか,
174 遠方に住む2名の弟が
175 それぞれ20%を保有しておりますところ,
176 弟たちは,
177 民事再生を申し立てることには理解を示
178 - 2 -
179
180 してくれましたが,
181 旅館を人手に渡すことについては強く反対しており,
182 簡単に納得してくれそ
183 うにありません。
184
185
186 このような現状ですが,
187 どうかよろしくお願いいたします。
188
189
190 〔設
191
192
193 問〕
194 弁護士としてA社を代理して再生手続開始の申立てをし,
195 その手続中において,
196 Q社に対し,
197
198 同社の希望する条件で,
199 A社の事業を承継させる方針を立てたとする。
200
201 その場合に再生手続開
202 始決定後に採るべき手続について述べなさい。
203
204
205
206
207
208 下線
209
210 を引いた部分で示したB銀行の方針に対して,
211 A社として採り得る対応策について
212
213 述べなさい。
214
215
216
217
218 再生手続開始直後,
219 Pから以下のような相談を受けた。
220
221 考えられる対処方法について論じな
222 さい。
223
224
225 【Pからの相談内容】
226 昔から旅館の日本庭園の手入れをお願いしている庭師のCさんへの昨年秋の庭木の剪定の
227 代金30万円が未払になっています。
228
229 Cさんから,
230 この30万円を直ちに支払ってもらわな
231 い限り,
232 今後の作業はしないとの通告がありました。
233
234 Cさんは大変な腕利きですし,
235 うちの
236 庭園のことは熟知していますので,
237 他の業者に代えるのは大きなマイナスです。
238
239 これからの
240 行楽シーズンに向けて,
241 すぐにでも庭園の手入れをしてもらう必要があるのですが,
242 手元に
243 あるお金で未払金を支払ってあげることはできないでしょうか。
244
245
246
247 2.前記1の相談内容に係る事案において,
248 再生手続開始決定前,
249 A社は建築業者D社に対して,
250
251 旅館の離れの建物の改修工事を請負代金200万円で発注し,
252 代金の一部として120万円を支
253 払っており,
254 再生手続開始決定時点において,
255 工事は出来高2割の状態であったとする。
256
257 A社と
258 D社との間の請負契約が再生手続開始決定後にどのように処理されることになるのかについて説
259 明しなさい。
260
261
262
263 - 3 -
264
265 〔第2問〕(配点:50)
266 次の事例について,
267 以下の設問に答えなさい。
268
269
270 【事
271
272 例】
273 A男とB女は婚姻し,
274 夫婦で飲食店を営んでいた。
275
276 その後,
277 Aは,
278 家業の飲食店をBに任せ,
279
280
281 自らは中古車販売業を始めた。
282
283 しかし,
284 Aは,
285 仕事上のトラブルから,
286 次第に仕事もせずに昼間
287 から飲酒をするなどの状態になり,
288 Bに対しても,
289 暴言を吐いたり,
290 暴力を振るうことが多くな
291 った。
292
293 そこで,
294 AとBは,
295 ついに協議により離婚したが,
296 当時AとBには10歳の子Cがおり,
297
298 CはBに引き取られることになった。
299
300
301 〔設
302
303 問〕
304 以下の1及び2については,
305 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
306
307
308
309 1.
310 【事
311
312 例】において,
313 Aは,
314 離婚の約1年ほど前から,
315 中古車販売業に関連して多額の負債を
316
317 抱えるようになり,
318 離婚から約半年後に自ら破産手続開始の申立てをするに至った。
319
320
321
322
323 離婚した当時,
324 Aは,
325 既に無資力の状態にあったが,
326 A名義の唯一の財産ともいうべき時
327 価1000万円のマンション(以下「甲マンション」という。
328
329 )を,
330 財産分与として,
331 Bに譲
332 渡していた(以下「本件財産分与」という。
333
334 )。
335
336 甲マンションについては,
337 本件財産分与の後,
338
339 直ちに所有権移転登記がされ,
340 Bが単独で所有権の登記名義人となっている。
341
342 なお,
343 甲マン
344 ションは,
345 Aが中古車販売業を始めてしばらくした後に,
346 Aが家族の住居として購入し,
347
348 が単独で所有権の登記名義人となっていたものである。
349
350 しかし,
351 Aは,
352 中古車販売によって
353 得た利益のほとんどを酒代等の遊興費に充てていたので,
354 甲マンションについては,
355 そのロ
356 ーンの支払を含め,
357 実質的な購入資金は,
358 すべてBが一家の生計を立てていた飲食店の利益
359 から支払われ,
360 離婚の当時,
361 既にローンは完済されていた。
362
363
364 その後,
365 Aについて破産手続が開始され,
366 破産管財人が選任された。
367
368 破産手続開始当時,
369
370 本件財産分与については,
371 Aの破産債権者であるDが詐害行為取消訴訟を提起し,
372 係属中で
373 あった(以下「本件詐害行為取消訴訟」という。
374
375 )。
376
377 本件詐害行為取消訴訟は,
378 破産手続開始
379 決定によってどのような影響を受け,
380 これに対して,
381 破産管財人は,
382 どのような対応を採る
383 ことが考えられるか。
384
385 本件財産分与について否認が可能かどうかという点を踏まえて検討し
386 なさい。
387
388
389
390
391
392 Aは,
393 離婚したころからE社で働き始め,
394 E社から給与を支給されていたところ,
395 Cの養
396 育費について,
397 離婚の当時,
398 AB間で話合いが行われたが,
399 協議は進まず,
400 Bが家事調停を
401 申し立てた。
402
403 その結果,
404 毎月末日にAがBに対して5万円を支払うことが合意され,
405 その旨
406 の調停調書が作成された。
407
408
409 その後,
410 Aは,
411 自ら破産手続開始の申立てをするとともに,
412 免責許可の申立てをし,
413 Aにつ
414
415 いて破産手続が開始されることになったが,
416 破産手続開始当時,
417 養育費について2か月分が未
418 払の状態であった。
419
420 そこで,
421 Bは,
422 破産手続が終了した後に,
423 前記調停調書に基づいて,
424 Aの
425 E社に対する給料債権を差し押さえようと考えている。
426
427 Bによる強制執行の申立てが,
428 破産手
429 続終了後,
430 @免責許可決定確定前にされる場合と,
431 A免責許可決定確定後にされる場合とに分
432 けて,
433 その可否を検討しなさい。
434
435
436 2.
437 【事
438
439 例】において,
440 Bは,
441 離婚後も飲食店の経営を続けていたが,
442 原材料費の高騰によって
443
444 経営は悪化し,
445 生活費を消費者金融業者等からの借入れで賄うようになり,
446 離婚から約半年後,
447
448 自ら破産手続開始の申立てをするに至った。
449
450
451 ところで,
452 Bは,
453 婚姻中にAから度々受けた暴行及び虐待により,
454 精神的苦痛を被ったとし
455 て,
456 離婚後,
457 Aに対して,
458 不法行為を理由に慰謝料の支払を求める訴えを提起していた(以下
459 「本件慰謝料請求訴訟」という。
460
461 )。
462
463
464
465 - 4 -
466
467 本件慰謝料請求訴訟の係属中に,
468 Bについて破産手続が開始され,
469 破産管財人が選任された。
470
471
472
473
474 Bは,
475 破産手続開始後も,
476 本件慰謝料請求訴訟を追行することができるか。
477
478
479
480
481
482 破産手続開始後,
483 本件慰謝料請求訴訟について慰謝料200万円の支払を命じる判決が確
484 定した場合,
485 破産管財人は,
486 Aに対して,
487 その履行を求めることができるか。
488
489
490
491 - 5 -
492
493 - 6 -
494
495 論文式試験問題集[租
496
497 - 7 -
498
499
500
501 法]
502
503 [租
504
505
506
507 法]
508
509 〔第1問〕(配点:50)
510 Aは,
511 喫茶店経営をしていたが,
512 その地域に縄張を持つ暴力団員Bからポーカーゲーム機賭博に
513 よるもうけ話を聞かされて,
514 その気になり,
515 Bからポーカーゲーム機10台を購入し,
516 喫茶店の店
517 舗内にポーカーゲーム専用の部屋を設けて,
518 そこにポーカーゲーム機10台を設置し,
519 平成20年
520 1月3日から,
521 ポーカーゲーム機を客に利用させるようになった。
522
523
524 ポーカーゲーム機賭博の方法は,
525 以下のとおりであった。
526
527
528 @
529
530 客は,
531 コイン1枚につき500円をAに支払って,
532 賭博の元手として必要なだけのコイン
533
534 の交付を受ける。
535
536
537 A
538
539 コインをゲーム機に投入して(1枚から20枚の範囲で投入可能),
540 ゲーム機の画面に表示
541
542 される5枚のトランプのカードの絵柄の組合せにより勝負を決するが,
543 絵柄がそろわなけれ
544 ばコインはそのまま機械内に回収され,
545 絵柄がそろった場合は,
546 そろう確率の高低に応じて,
547
548 投入したコイン1枚につき1枚から100枚のコインが機械から排出される。
549
550
551 B
552
553 客は,
554 店を出る際に,
555 手元に残ったコインがある場合それを1枚500円で精算するか,
556
557
558 あるいは,
559 そのまま持ち帰って次に入店してポーカーゲームをする際に,
560 そのコインを使用
561 する。
562
563
564 C
565
566 なお,
567 Aはポーカーゲーム機の絵柄のそろう確率を調整することができ,
568 Aが客よりも勝
569
570 つ確率を高く設定していたが,
571 客との間の個々の勝負は偶然に左右されるものであった。
572
573
574 平成20年1月3日から同年12月31日までの間,
575 Aがコインを交付するときに客から受け取
576 った現金の総額は8000万円,
577 客がコインを精算する際にAが客に支払った現金の総額は5000
578 万円になっていた。
579
580
581 ところで,
582 Aは,
583 常連客のCに対し,
584 後払いの約束でコインを渡していた。
585
586 Cは,
587 そのコインで
588 勝負したがすべて負け,
589 平成20年12月15日時点でAから後払いの約束で受け取ったコインの
590 枚数は1000枚(50万円分)となっていた。
591
592 そこで,
593 Aは,
594 Cに50万円の支払を求めたが,
595
596 結局,
597 Cは支払わず,
598 同年12月31日までに,
599 50万円は回収できなかった。
600
601
602 また,
603 平成20年12月31日時点では,
604 200枚のコイン(10万円分)を客が持ち帰ってい
605 て,
606 精算されないままとなっていた。
607
608
609 Aにポーカーゲーム機を売った暴力団員Bは,
610 ポーカーゲーム機賭博に関する経営指導料の名目
611 で,
612 月々20万円を支払うようにAに要求してきたため,
613 Aは,
614 平成20年1月から12月までの
615 12か月分の合計240万円をBに支払った。
616
617
618 ポーカーゲーム機10台の平成20年における減価償却費の合計額は50万円である。
619
620
621 なお,
622 Aは,
623 平成21年1月早々に,
624 常習賭博罪で警察に逮捕され,
625 起訴されて有罪判決を受け,
626
627 ポーカーゲーム機10台はすべて没収された。
628
629
630 以上を前提に,
631 Aのポーカーゲーム機賭博による利得に対する所得税法の適用に関して,
632 以下の
633 設問に答えなさい。
634
635
636 〔設
637
638 問〕
639
640 1.Aのポーカーゲーム機賭博による利得は課税されるが,
641 このような利得に課税が許される理
642 由と,
643 Aのポーカーゲーム機賭博による所得の種類は何かを述べなさい。
644
645
646 2.Aのポーカーゲーム機賭博による所得の種類を踏まえ,
647 平成20年分のAのポーカーゲーム
648 機賭博による所得の計算に関する以下の問題点について論じなさい。
649
650
651
652
653 Cから回収されていない50万円は,
654 収入金額となるか。
655
656
657
658
659
660 以下の金額は,
661 所得の計算上控除されるか。
662
663
664 @
665
666 客がコインを持ち帰ったため,
667 精算未了となっている10万円
668 - 8 -
669
670 A
671
672 暴力団員Bに支払った240万円
673
674 B
675
676 ポーカーゲーム機の減価償却費50万円
677
678 - 9 -
679
680 〔第2問〕(配点:50)
681 Aは,
682 B株式会社(内国法人。
683
684 以下「B社」という。
685
686 )の常勤の取締役を20数年間務め,
687 平成2
688 0年3月期決算に係る定時株主総会の終結をもって取締役副社長としての任期を満了したが,
689 同株
690 主総会において非常勤の監査役に選任され,
691 その後は監査役としての職務に専念している。
692
693 AがB
694 社の取締役に就任した当時,
695 同社は倒産寸前の苦境に陥っていたが,
696 Aは長年かけて同社の経営の
697 再建に尽力し株式上場の立役者となった。
698
699 このことは社内外を問わず衆目の一致するところである。
700
701
702 前記株主総会では,
703 Aは引き続き役員を務めることになったが,
704 これを機にAに役員退職慰労金
705 支給規程に従って退職慰労金を支給することが決議された。
706
707 その決議を受けて,
708 B社の取締役会で
709 は,
710 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従ってAに対する退職慰労金の額を1億3000万円
711 とする旨の提案がなされた。
712
713 これに対して,
714 審議の冒頭で,
715
716 「Aの我が社への貢献は高く評価するが,
717
718 それでも上場して間もない我が社の資産,
719 収益等の現状からみて高額すぎるのではないか。
720
721 」との強
722 硬な反対意見が出され,
723 これに同調する者もいたが,
724 途中から,
725
726 「もっともな御意見ではあるが,
727
728 場会社としてそれなりの配慮があってもよいのではないか。
729
730 」との賛成意見が優勢になり,
731 結局,
732
733 案どおり承認された。
734
735 決定された退職慰労金の内訳及び内容は以下のとおりである。
736
737
738 @
739
740 標準退職慰労金
741
742 7000万円
743
744 この金額は,
745 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い,
746 役位別の最終報酬月額に
747 役位ごとの在任期間の年数及び役位別の役位係数を乗じて算出したものである。
748
749
750 A
751
752 功労加算金
753
754 2000万円
755
756 この金額は,
757 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い,
758
759 「在任中特に功績が著しか
760 ったと認められる役員」に対して標準退職慰労金の金額の30%を超えない範囲で支給
761 することができるものとされている功労加算金について,
762 算出したものである。
763
764
765 B
766
767 特別功労加算金
768
769 4000万円
770
771 この金額は,
772 役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い,
773
774 「当社の創業を主導し推進
775 した役員,
776 強力な戦略の成功をもたらした役員,
777 当社の苦境を脱し盛業に導いた役員,
778
779 その他当社に大いなる貢献をなし,
780 その功績が顕著であったと認められる役員」に対し
781 て功労加算金の金額の倍額を超えない範囲で支給することができるものとされている特
782 別功労加算金について,
783 算出したものである。
784
785
786 特別功労加算金については,
787 金銭で支給することにした標準退職慰労金及び功労加算
788 金とは異なり,
789 B社所有の帳簿価額4000万円の甲土地を支給することにした。
790
791
792 B社は,
793 Aに対する退職慰労金(以下「本件退職慰労金」という。
794
795 )の支給に当たって,
796 1億30
797 00万円について,
798 損金処理をする一方,
799 所得税を源泉徴収した。
800
801 なお,
802 甲土地の支給時の時価は
803 1億円であった。
804
805
806 以上の事案について,
807 以下の設問に答えなさい。
808
809 ただし,
810 取締役に対する損害賠償請求の可能性
811 及びそれに伴う課税問題を検討する必要はない。
812
813
814 〔設
815
816 問〕
817
818 1.本件退職慰労金に係る所得の種類及び収入金額が所得税の課税上どうなるかについて,
819 所得
820 税法における課税の趣旨にも触れながら,
821 条文を摘示しつつ論じなさい。
822
823
824 2.本件退職慰労金の支給に係るB社の法人税の課税関係がどうなるかについて,
825 条文を摘示し
826 つつ論じなさい。
827
828
829
830 - 10 -
831
832 論文式試験問題集[経
833
834 - 11 -
835
836
837
838 法]
839
840 [経
841
842
843
844 法]
845
846 〔第1問〕(配点:50)
847
848
849 A,
850 B及びCの各社はいずれも,
851 事業者向けの商品Xを製造販売する機械メーカーであり,
852
853 社のXの市場占有率(シェア)は,
854 Aが50%,
855 B及びCが各25%である。
856
857 A及びB(以下「両
858 社」という。
859
860 )は,
861 Xに関し,
862 最近,
863 需要が低迷し部品の値上がりが著しいことから,
864 コスト削減
865 の方策として,
866 @部品の共同購入及びA共同物流会社の設立を計画している。
867
868
869
870
871
872 部品の共同購入について
873 両社の製造販売するXの主要部品の規格や仕様は共通している。
874
875 そこで,
876 両社は,
877 共同購入に
878 よるスケールメリットを活用して,
879 部品の購入費用を引き下げることを考えている。
880
881 具体的には,
882
883 個々の部品ごとに両社の購入予定数量を合計した上で,
884 部品メーカーとの交渉窓口をA又はBに
885 一本化し,
886 その合計数量で単価をどこまで引き下げることができるかを交渉し,
887 両社にとって最
888 も有利な条件の購入先1社から同一単価で当該部品を購入することにする。
889
890 その際,
891 両社は,
892
893 品メーカーとの交渉のベースとなる各部品の調達予定金額の目安を設けることにするが,
894 さらに,
895
896 この調達予定金額の目安を検討する前提資料とするために,
897 Xの販売量が落ち込まない範囲内で
898 想定できるXの販売価格の上限を協議し決めておくことも検討している。
899
900
901 なお,
902 両社のいずれにおいても,
903 この共同購入の対象となる部品の購入費用は,
904 Xの製造コス
905 トの約80%であり,
906 Xの製造コストは,
907 製品価格の約80%である。
908
909 また,
910 この共同購入の対
911 象となる部品は,
912 Xのみに使用されており,
913 我が国でこれを製造している部品メーカーは3社で
914 ある。
915
916
917
918
919
920 共同物流会社の設立について
921 Aは千葉県千葉市内にある自社の工場で,
922 Bは大阪府堺市内にある自社の工場でそれぞれXの
923 製造をしているが,
924 両社の需要家は全国に散在しているため,
925 従来は,
926 Aは九州の需要家へも千
927 葉市内の工場から,
928 Bは北海道の需要家へも堺市内の工場から,
929 それぞれ自社トラックで配送し
930 ていた。
931
932 そこで,
933 両社は,
934 トラックの利用効率の向上や配送時間の短縮等を図るため,
935 Aが51
936 %,
937 Bが49%の割合で出資してXの物流業務を行う共同出資会社甲を設立し,
938 それぞれ保有し
939 ているX配送用のトラックを甲に譲渡して,
940 甲において以下のような方法で配送することを考え
941 ている。
942
943 なお,
944 両社とも,
945 物流コストは,
946 製品価格の約10%を占めている。
947
948
949
950
951 甲の従業員は,
952 両社からの出向者とし,
953 いずれからの出向であるかを問わず,
954 両社製のXに
955 ついて配送業務に従事する。
956
957
958
959
960
961 千葉市及び堺市の各工場に甲が運営する共同物流センターを設け,
962 各共同物流センターは,
963
964 両社製のXを一定数在庫し,
965 1台のトラックが両社製のXを積載して配送する混載方式を採る。
966
967
968
969
970
971 両社は,
972 それぞれの受注に関し,
973 需要家の名称及び所在地並びに受注数量,
974 納期及び販売価
975 格(単価及び値引き額等)を記載した納品書を甲に送付し,
976 甲の従業員は,
977 各共同物流センタ
978 ーの輸送能力や両社製のXの在庫状況を勘案して,
979 最も効率的に配送できるよう,
980 トラック配
981 備及び配送ルートを調整する。
982
983
984
985 〔設
986
987 問〕
988 前記の@部品の共同購入及びA共同物流会社の設立の各計画について,
989 私的独占の禁止及び公
990
991 正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。
992
993 )上の問題点を分析して検討しなさい。
994
995
996
997 - 12 -
998
999 〔第2問〕(配点:50)
1000 A電機株式会社(以下「A」という。
1001
1002 )は,
1003 東京都に本店を置き,
1004 家電製品の小売業を営む者であ
1005 る。
1006
1007 Aは,
1008 平成12年ころから,
1009 その販売する家電製品が低価格であることにより顧客の支持を獲
1010 得し,
1011 関東地方を中心に東日本地域全域で店舗数を急速に拡大するとともに,
1012 売上高を伸ばしてい
1013 る。
1014
1015 Aは,
1016 平成18年以降,
1017 東日本地域の家電小売業において売上高第1位になっている。
1018
1019
1020 東日本地域では,
1021 Aのような業態をとるいわゆる家電量販店には,
1022 AのほかB及びCなどが存在
1023 する。
1024
1025 A,
1026 B及びCはそれぞれ東日本地域の主要な都市に参入しており,
1027 各社の都市部におけるシ
1028 ェアは多少異なるが,
1029 おおむね次のとおりである。
1030
1031 家電小売業全体で見ると,
1032 いわゆる家電量販店
1033 の合算シェアは50%程度を占め,
1034 Aは第1位でシェア25%から30%,
1035 Bが第2位でシェア
1036 10%前後,
1037 Cが第3位でシェア5%前後である。
1038
1039 家電小売業全体における家電量販店を除く家電
1040 小売店(以下「家電専門店」という。
1041
1042 )の合算シェアは50%程度であるが,
1043 ほとんどが小規模事業
1044 者でありシェア0.5%を超える家電専門店は存在しない。
1045
1046
1047 このような状況において,
1048 Aは,
1049 5年後には全国の主要な地域において売上高第1位になること
1050 を目標に掲げ,
1051 全国に本格的に進出することとした。
1052
1053 また,
1054 Aは,
1055 そのため東日本地域における経
1056 営基盤を強化することとした。
1057
1058 そこで,
1059 Aは,
1060 次の及びの方針を採ることとした。
1061
1062
1063
1064
1065 Aは,
1066 まず中部地方に進出することとし,
1067 平成21年6月1日に名古屋に3店舗を開店する。
1068
1069
1070 その新規開店セールとして,
1071 今後1か月間,
1072 毎週末に販売キャンペーンを行い,
1073 週末ごとに各店
1074 において先着50名に対していわゆる格安パソコンを2000円で販売する。
1075
1076 なお,
1077 Aはこの格
1078 安パソコンを3万円で仕入れたが,
1079 その後新型製品が販売されたために,
1080 旧型製品となっている。
1081
1082
1083
1084
1085
1086 Aは,
1087 その地盤である東日本地域において販売活動を強化するために以下の販売キャンペーン
1088 を行う。
1089
1090 @我が国で販売されている主要な液晶テレビのメーカー4社(以下「4社」という。
1091
1092 )の
1093 37インチ及び40インチの液晶テレビ(以下「本件液晶テレビ」という。
1094
1095 )を,
1096 今後3か月間,
1097
1098 それぞれおおむね14万円及び19万円で販売する。
1099
1100 A本件液晶テレビの販売台数には制限を設
1101 けない。
1102
1103 本件液晶テレビをキャンペーンの対象にしたのは,
1104 Aが有力市場調査会社Dに依頼して
1105 行ったアンケート調査により,
1106 消費者が購入したいとする家電製品中トップにあったことから,
1107
1108 消費者にアピールすると考えたためである。
1109
1110
1111 Aは,
1112 本件液晶テレビを4社から直接仕入れているが,
1113 このキャンペーンに際して4社と個別
1114 に仕入価格の交渉をした結果,
1115 4社からそれぞれ毎月1万台以上を仕入れることを条件に,
1116 1台
1117 当たりの仕入価格を37インチテレビについては15万円,
1118 40インチテレビについては18万
1119 円で購入することに成功している。
1120
1121 他の家電量販店及びすべての家電専門店は,
1122 Aのような大量
1123 購入ができないために,
1124 本件液晶テレビの仕入価格は37インチテレビでは16万円,
1125 40イン
1126 チテレビでは21万円をいずれも上回るものと見込まれる。
1127
1128
1129 なお,
1130 Aにおいて,
1131 本件液晶テレビの販売に係る経費及び総務部門や店舗全体を運営し管理す
1132 るために要する経費等の諸費用は,
1133 テレビ1台当たり2万円である。
1134
1135 したがって,
1136 Aの本件液晶
1137 テレビの総販売原価,
1138 すなわちテレビの仕入価格にこの諸費用2万円を加えた金額は,
1139 37イン
1140 チテレビについては17万円,
1141 40インチテレビについては20万円である。
1142
1143
1144
1145 〔設
1146
1147 問〕
1148 弁護士甲は,
1149 Aの前記方針が独占禁止法に違反しないかどうかAから相談を受けた。
1150
1151 甲は弁護
1152
1153 士としていかなる回答をすべきか述べなさい。
1154
1155 なお,
1156 解答するに当たり付加的な事情を考慮すべ
1157 き場合には,
1158 そのような事情を補って述べなさい。
1159
1160
1161
1162 - 13 -
1163
1164 - 14 -
1165
1166 論文式試験問題集[知的財産法]
1167
1168 - 15 -
1169
1170 [知的財産法]
1171 〔第1問〕(配点:50)
1172 A社とB社は,
1173 新型インフルエンザの感染の有無を検査する試薬を共同開発することとし,
1174 A社
1175 の従業員甲とB社の従業員乙が,
1176 共同研究を行い,
1177 α試薬を発明した。
1178
1179 A社の勤務規則には,
1180 従業
1181 員が発明をするに至った行為がその職務に属するときは,
1182 当該発明についての特許を受ける権利は
1183 A社が承継する旨の定めがあった。
1184
1185 また,
1186 B社の勤務規則にも,
1187 これと同様の定めがあった。
1188
1189
1190 以上の事実関係を前提に,
1191 以下の各設問に答えよ。
1192
1193 ただし,
1194 各設問に記載した追加的な事実関係
1195 は別個の独立したものである。
1196
1197
1198 〔設問1〕
1199 甲は,
1200 α試薬の発明について一緒に特許出願をしようと乙に持ちかけたところ,
1201 乙は,
1202 乙の特
1203 許を受ける権利はB社に帰属するので,
1204 特許出願はB社で行いたいと述べた。
1205
1206 しかし,
1207 甲が甲及
1208 び乙の名義で特許出願をすることに固執した結果,
1209 甲と乙が共同でα試薬の発明について特許出
1210 願をした。
1211
1212
1213 1.A社及びB社は,
1214 甲又は乙に対し,
1215 どのような請求をすることができるか。
1216
1217 また,
1218 甲及び乙
1219 が前記特許出願について特許権の設定登録を受けた場合はどうか。
1220
1221
1222 2.甲及び乙が前記特許出願について特許権の設定登録を受けた後,
1223 B社がα試薬の製造販売を
1224 開始した場合,
1225 甲は,
1226 B社に対し,
1227 α試薬の製造販売の差止め及び損害賠償を請求することが
1228 できるか。
1229
1230
1231 〔設問2〕
1232 甲は,
1233 α試薬について,
1234 共同研究に関与していなかったA社の同僚の丙に評価を求めたところ,
1235
1236 丙は,
1237 無断で,
1238 α試薬の発明を自己の単独発明として特許出願をした。
1239
1240
1241 甲,
1242 乙,
1243 A社又はB社は,
1244 丙に対し,
1245 どのような請求をすることができるか。
1246
1247 また,
1248 丙が前記
1249 特許出願について特許権の設定登録を受けた場合はどうか。
1250
1251
1252 α試薬の発明を自己の単独発明として特許出願をしたのが,
1253 丙ではなく,
1254 甲であった場合と対
1255 比して論ぜよ。
1256
1257
1258
1259 - 16 -
1260
1261 〔第2問〕(配点:50)
1262 アニメーションのキャラクターデザイナーである甲は,
1263 戯れに思い付いたキャラクターの容姿を
1264 描いた絵画Aを作成した。
1265
1266 甲は,
1267 絵画Aを友人である乙に見せたところ,
1268 乙が欲しいと言ったので,
1269
1270 他人に譲渡しないこと及び他人に見せないことを条件に,
1271 乙にこれを贈与した。
1272
1273 しかしながら,
1274
1275 の後,
1276 乙は,
1277 借金に困り,
1278 その返済のために絵画Aを売ろうと考え,
1279 知り合い十数名にこれを見せ
1280 た。
1281
1282 そして,
1283 乙は,
1284 そのうちの丙に絵画Aを売却した。
1285
1286 丙は,
1287 絵画Aに描かれたキャラクターが気
1288 に入り,
1289 そのキャラクターの彫刻Bを作成し,
1290 これを自らが経営する玩具店の店内に置いた。
1291
1292 その
1293 際,
1294 丙は,
1295 乙が絵画Aは自分が作成したと言ったことを信じ,
1296 乙の承諾のみを受けた。
1297
1298 丁市の市民
1299 公園の担当者は,
1300 子供が喜びそうな彫刻を探していたところ,
1301 偶然に丙の玩具店において彫刻Bを
1302 見て,
1303 これが適当であると考えた。
1304
1305 そこで,
1306 丁市は,
1307 丙から彫刻Bを購入し,
1308 その市民公園内にこ
1309 れを設置した。
1310
1311 映画製作者である戊は,
1312 丁市を中心にストーリーが展開する映画Cを製作し,
1313 その
1314 DVDを販売している。
1315
1316 映画Cのラストシーン約1分間は,
1317 丁市の市民公園を舞台としたもので,
1318
1319 そのうちの10秒程度に彫刻Bが写っている。
1320
1321
1322 以上の事実関係を前提に,
1323 以下の各設問に答えよ。
1324
1325
1326 〔設問1〕
1327 1.甲は,
1328 乙に対して,
1329 著作権法上どのような請求をすることができるか。
1330
1331
1332 2.甲は,
1333 丙に対して,
1334 著作権法上どのような請求をすることができるか。
1335
1336
1337 〔設問2〕
1338 1.甲は,
1339 映画CのDVDを販売する戊の行為が甲の有する著作権を侵害することを理由とし
1340 て,
1341 戊に対して,
1342 その行為の差止めを請求するために,
1343 どのような主張をすべきか。
1344
1345
1346 2.前記1の甲の主張に対する戊の反論として,
1347 どのようなものが考えられるか。
1348
1349
1350 3.前記2の戊の反論に対する甲の再反論として,
1351 どのようなものが考えられるか。
1352
1353
1354
1355 - 17 -
1356
1357 - 18 -
1358
1359 論文式試験問題集[労
1360
1361 - 19 -
1362
1363
1364
1365 法]
1366
1367 [労
1368
1369
1370
1371 法]
1372
1373 〔第1問〕(配点:50)
1374 次の事例について,
1375 法的な問題とそれに対する考えを述べた上で,
1376 XのY社に対する法的地位,
1377
1378 権利関係について論じなさい(金銭債権に関して述べる場合は,
1379 平成21年5月31日を基準とし
1380 て,
1381 金額を明示すること。
1382
1383 遅延損害金は考えなくてよい。
1384
1385 )。
1386
1387
1388 なお,
1389 Y社の就業規則(抜粋)は,
1390 後記のとおりである。
1391
1392
1393 【事
1394
1395 例】
1396 Xは,
1397 求人雑誌で衣料品等の販売を全国に展開するY社の販売員募集の広告を見て応募し,
1398
1399
1400 成13年4月に期間の定めなく採用された。
1401
1402 Xは,
1403 希望どおり自宅から徒歩15分のM店で販売
1404 員をすることになったが,
1405 雇用契約締結の際に,
1406 勤務場所や従事する業務について特別の話はな
1407 く,
1408 雇用契約書にもその記載はなかった。
1409
1410 Xの給与は,
1411 基本給だけであり,
1412 平成20年4月以降
1413 は月額30万円で,
1414 当月分が毎月25日に支払われていた。
1415
1416 Y社では,
1417 M店を含めて,
1418 就業規則
1419 は周知されていた。
1420
1421
1422 ところが,
1423 M店店長(以下「店長」という。
1424
1425 )は,
1426 平成20年12月20日,
1427 Xに対し,
1428 突然,
1429
1430 平成21年2月1日付けでの本社総務課勤務を命じた。
1431
1432 Xは,
1433 自宅療養中で介護が必要な父親と
1434 小学校低学年の子1人の3人暮らしであり,
1435 毎年4月と10月に行われる店長との面談で,
1436 家族
1437 の状況を話し,
1438 勤務店を変わることはできないことを伝えていた。
1439
1440 Xが「本社は自宅から片道2
1441 時間半以上掛かり,
1442 通勤は不可能です。
1443
1444 病気の父を抱え,
1445 家族が転居することはできないし,
1446
1447 と子を残して単身で転居することもできません。
1448
1449 それに,
1450 これまで,
1451 希望していないのに販売員
1452 が異動になった例は,
1453 聞いたことがありません。
1454
1455 」と話すと,
1456 店長は,
1457 「会社の方針で,
1458 人件費削
1459 減のために販売員は期間雇用のパート従業員とすることになり,
1460 販売員の中で給与が高いXを最
1461 初に異動対象とした。
1462
1463 本社での具体的な仕事は,
1464 まだ決まっていない。
1465
1466 給与は,
1467 通勤手当が付く
1468 ほかは変わらない。
1469
1470 本社勤務ができないなら,
1471 辞めてもらうしかない。
1472
1473 」と話した。
1474
1475
1476 Xは,
1477 異動に納得ができず,
1478 平成20年12月20日以降,
1479 店長に対して,
1480 家庭の事情などを
1481 繰り返し伝えて異動に応じられないと話したが,
1482 店長は,
1483 異動に従業員の同意はいらないと言っ
1484 て聞き入れなかった。
1485
1486 Xは,
1487 平成21年2月1日にM店に行ったところ,
1488 異動辞令が出ていると
1489 言われ,
1490 店内に入れず,
1491 その後,
1492 出社しなかった。
1493
1494 Xには,
1495 Y社から2度電話があり,
1496 本社に出
1497 社するように言われたため,
1498 M店なら勤務すると答えたが,
1499
1500 「本社以外に勤務場所はない,
1501 M店で
1502 は働かせない。
1503
1504 」と告げられた。
1505
1506 2月25日には給与が振り込まれず,
1507 2月27日に,
1508 3月1日付
1509 けで解雇するとの通知書が送られてきた。
1510
1511 Xは,
1512 すぐに店長に電話して,
1513 解雇は認められないと
1514 抗議をしたところ,
1515 3月10日に,
1516 Xの銀行口座に30万円が送金されるとともに,
1517 同日,
1518 Y社
1519 から,
1520
1521 「解雇理由は無断欠勤(就業規則第37条第1号,
1522 第5号)であり,
1523 送金したのは解雇予告
1524 手当である。
1525
1526 」と記載された文書と,
1527 退職金の支給のための書類が送付されてきた。
1528
1529 Xは,
1530 Y社に
1531 電話して解雇は認めないと伝え,
1532 退職金支給書類を返送しなかった。
1533
1534 Y社の退職金規程によれば,
1535
1536 Xが3月に退職した場合の退職金は105万円であった。
1537
1538
1539 なお,
1540 Y社は,
1541 Xの後任として,
1542 2月1日からパート従業員1名を採用している。
1543
1544 また,
1545 Xは,
1546
1547 生活のため,
1548 4月1日から近所のコンビニエンスストアでアルバイトをし,
1549 4月と5月に各14
1550 万円の収入を得ているが,
1551 元のようにM店で働きたいと思っている。
1552
1553
1554 【就業規則(抜粋)】
1555 (転勤等)
1556 第11条
1557
1558 会社は,
1559 従業員に対して,
1560 業務の都合により,
1561 就業の場所又は従事する業務の変更を
1562
1563 命じることができる。
1564
1565
1566 - 20 -
1567
1568 (解雇)
1569 第37条
1570 @
1571
1572 職務遂行能力が不十分又は勤務態度が不良でその職務に不適格であるとき。
1573
1574
1575
1576 A〜C
1577 D
1578
1579 会社は,
1580 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは,
1581 解雇する。
1582
1583
1584 (略)
1585
1586 前各号に準じる事由があるとき。
1587
1588
1589
1590 - 21 -
1591
1592 〔第2問〕(配点:50)
1593 次の設例を読んで,
1594 後記の設問に答えなさい。
1595
1596
1597 【設
1598
1599
1600 例】
1601 電機メーカーY社は,
1602 主力商品である半導体製品の売上不振によって業績が悪化したため,
1603
1604 平成20年7月,
1605 主力工場であるA工場の生産縮小を決定した。
1606
1607 そして,
1608 Y社は,
1609 同年8月
1610 18日,
1611 期間1年の有期労働契約で雇用され,
1612 比較的単純な作業に従事する期間従業員である
1613 X1ら100名の雇用を,
1614 期間の満了時期にかかわらず,
1615 同年9月末日限りで打ち切る方針を固
1616 め,
1617 全員に通知した。
1618
1619 A工場における平成20年度上半期の生産高は,
1620 それ以前に比べて著し
1621 く落ち込み,
1622 その後も回復を見込めない情勢にあった。
1623
1624
1625 しかし,
1626 X1ら期間従業員がこの打切りに強く反発したため,
1627 Y社は雇用打切りの方針をいっ
1628 たん断念し,
1629 同年9月30日付けで労働契約を合意解約するとともに,
1630 同年10月1日付けで
1631 6か月の期間を定めた労働契約を期間従業員全員との間で新たに締結した。
1632
1633 その内容は,
1634
1635 「本労
1636 働契約の期間は,
1637 平成20年10月1日から平成21年3月31日までとし,
1638 期間従業員は,
1639
1640 3月31日をもって退職するものとする。
1641
1642 」というものであった。
1643
1644 X1らは不満を抱いたものの,
1645
1646 当面の生活を重視して契約締結に応じた。
1647
1648 また,
1649 Y社は,
1650 A工場の生産体制を縮小する中で,
1651
1652 従業員の雇用を確保するため,
1653 平成20年10月1日以降,
1654 正社員及び期間従業員の労働時間
1655 を1日8時間から7時間に短縮した。
1656
1657
1658
1659
1660
1661 X1ら期間従業員は,
1662 前記労働契約によって就労を継続したが,
1663 A工場の業績は回復せず,
1664
1665 社全体としても業績が悪化したので(平成20年度下半期の売上高は,
1666 前年度比で3割近く減
1667 少し,
1668 経常損失を生じる見込みである。
1669
1670 ),
1671 Y社は,
1672 平成21年2月20日,
1673 期間従業員100
1674 名全員について,
1675 同年3月31日をもって雇用を終了することを決定し,
1676 通知した。
1677
1678 通知に際
1679 しては,
1680 A工場長がX1ら期間従業員全員を集めて2回にわたって説明会を開き,
1681 雇用打切りに
1682 至る経緯や理由について説明を行った。
1683
1684
1685 これに対して,
1686 100名の期間従業員のうち60名は雇用打切りに応じたが,
1687 X1〜X40の
1688 40名は納得せず,
1689 Y社に対して労働契約上の地位の確認を求める訴えを提起することを考え
1690 ている。
1691
1692 一方,
1693 Y社は,
1694 平成21年4月1日以降,
1695 X1ら40名の就労を拒否している。
1696
1697
1698 X1ら40名は,
1699 期間1年の有期労働契約を6回ないし10回更新して就労してきたものであ
1700 る。
1701
1702 契約更新に際しては,
1703 その都度契約書を取り交わしてきたものの,
1704 従来は更新を拒絶され
1705 た事例はない。
1706
1707 X1らの業務は,
1708 ライン製造における補助作業であり,
1709 正社員のような熟練作業
1710 ではないが,
1711 半導体製造にとって不可欠の業務であり,
1712 時間外労働に従事することもあった。
1713
1714
1715 なお,
1716 平成21年2月20日の期間従業員への雇用打切り通知当時,
1717 Y社には約3200億円
1718 の内部留保があり,
1719 雇用を打ち切らなくても,
1720 直ちに資産状況が債務超過に陥るという状況に
1721 あったわけではない。
1722
1723 雇用打切りに際しては,
1724 正社員の労働時間の更なる短縮や,
1725 Y社役員,
1726
1727 管理職及び正社員の給与・賞与カット等の措置は講じられていない。
1728
1729
1730
1731
1732
1733 Y社正社員の約80パーセントを組織するN組合は,
1734 当初は期間従業員の人員整理を静観し
1735 ていたが,
1736 同じ労働者として放置しておくべきではないという声が高まり,
1737 また,
1738 Y社が第2
1739 段階の人員削減として正社員の人員整理を計画しているとの情報を得て危機感を強め,
1740 平成
1741 21年4月15日,
1742 Y社との間で団体交渉を行った。
1743
1744 そして,
1745 X1ら期間従業員のうち雇用期間
1746 の長い者25名を再雇用するよう申し入れるとともに,
1747 N組合員ら正社員の人員整理計画の有
1748 無について明らかにするよう求めた。
1749
1750 これに対して,
1751 Y社は,
1752
1753 「期間従業員の雇用問題は,
1754 N組
1755 合との団交事項ではない。
1756
1757 正社員の人員整理は6月から実施する予定であるが,
1758 詳細が確定し
1759 た段階で交渉に応ずる。
1760
1761 」と回答して交渉を1回で打ち切り,
1762 その後は交渉に応じていない。
1763
1764
1765 そこで,
1766 N組合は,
1767 期間従業員問題の打開を図り,
1768 また,
1769 Y社が正社員の人員整理を予定し
1770 ていることに抗議するため,
1771 平成21年4月30日,
1772 組合規約所定の手続を経て,
1773 A工場にお
1774 - 22 -
1775
1776 けるストライキの実施を決定し,
1777 N組合A工場支部に指示した。
1778
1779 この指示を受けて,
1780 A工場に
1781 勤務するN組合員165名のうち,
1782 主要製造ラインの班長職組合員及びコンピュータ制御部門
1783 に所属する組合員計45名は,
1784 5月10日,
1785 全日ストライキを決行した。
1786
1787 この結果,
1788 同日のA
1789 工場の生産機能は完全に停止し,
1790 約1200万円の損害が発生した。
1791
1792 その際,
1793 ストライキに参
1794 加しないN組合員らは,
1795 従事すべき業務がなくなったが,
1796 終日,
1797 工場内に滞留した。
1798
1799 なお,
1800
1801 社は,
1802 A工場に勤務する非組合員については,
1803 5月10日の勤務を免除した上,
1804 当日分の賃金
1805 を支給した。
1806
1807
1808
1809
1810 Y社は,
1811 A工場のN組合員ら165名全員について5月10日分の賃金(基本給)を5月賃
1812 金からカットするとともに,
1813 6月30日,
1814 ストライキを計画・指導したN組合執行委員長R及
1815 び書記長Sに対し,
1816
1817 「故意に会社業務を妨害したとき」とのY社就業規則の懲戒事由に基づき,
1818
1819 Rを出勤停止10日間,
1820 Sをけん責の懲戒処分に付した。
1821
1822 同就業規則には,
1823 懲戒手続について,
1824
1825
1826 「会社とN組合によって組織する懲戒委員会を開催し,
1827 事実調査及び処分について協議する。
1828
1829
1830 との規定がある。
1831
1832 懲戒委員会では,
1833 R及びSを呼んでその言い分を聴いた上,
1834 Y社とN組合副
1835 執行委員長らが2回にわたって協議したものの,
1836 決裂した。
1837
1838
1839 〔設
1840
1841 問〕
1842
1843 1.Y社がX1らに対して行った雇用打切りの法的評価について論じなさい。
1844
1845
1846 2.Y社がRとSに対して行った懲戒処分及びN組合員ら165名に対して行った賃金カットの
1847 効力について論じなさい。
1848
1849
1850
1851 - 23 -
1852
1853 - 24 -
1854
1855 論文式試験問題集[環
1856
1857 - 25 -
1858
1859
1860
1861 法]
1862
1863 [環
1864
1865
1866
1867 法]
1868
1869 〔第1問〕(配点:50)
1870 環境負荷物質を大気中に排出することを抑制する手法について,
1871 以下の設問に答えなさい。
1872
1873
1874 〔設問1〕
1875 ばい煙と有害大気汚染物質についての対応の仕方を比較し,
1876 それぞれの考え方を説明するとと
1877 もに,
1878 なぜ対応の仕方にそのような相違があるかを論じなさい。
1879
1880 解答に当たっては資料1も参照
1881 すること。
1882
1883
1884 【資料1】
1885
1886
1887 大気汚染防止法(昭和43年6月10日法律第97号)附則(抄)
1888 1〜8
1889
1890 (略)
1891
1892 (指定物質抑制基準)
1893
1894
1895 環境大臣は,
1896 当分の間,
1897 有害大気汚染物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が
1898 生ずることを防止するために必要があると認めるときは,
1899 有害大気汚染物質のうち人の健康
1900 に係る被害を防止するためその排出又は飛散を早急に抑制しなければならないもので政令で
1901 定めるもの(以下「指定物質」という。
1902
1903 )を大気中に排出し,
1904 又は飛散させる施設(工場又は
1905 事業場に設置されるものに限る。
1906
1907 )で政令で定めるもの(以下「指定物質排出施設」という。
1908
1909
1910 について,
1911 指定物質の種類及び指定物質排出施設の種類ごとに排出又は飛散の抑制に関する
1912 基準(以下「指定物質抑制基準」という。
1913
1914 )を定め,
1915 これを公表するものとする。
1916
1917
1918 (勧告)
1919
1920 10
1921
1922 都道府県知事は,
1923 指定物質抑制基準が定められた場合において,
1924 当該都道府県の区域に
1925
1926 おいて指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止するために
1927 必要があると認めるときは,
1928 指定物質排出施設を設置している者に対し,
1929 指定物質抑制基準
1930 を勘案して,
1931 指定物質排出施設からの指定物質の排出又は飛散の抑制について必要な勧告を
1932 することができる。
1933
1934
1935 (報告)
1936 11
1937
1938 都道府県知事は,
1939 前項の勧告をするために必要な限度において,
1940 同項に規定する者に対
1941
1942 し,
1943 指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができる。
1944
1945
1946 12
1947
1948 環境大臣は,
1949 指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止
1950
1951 するため緊急の必要があると認めるときは,
1952 都道府県知事又は第31条第1項の政令で定め
1953 る市の長に対し,
1954 第10項の規定による勧告に関し,
1955 必要な指示を行うことができる。
1956
1957
1958 13
1959
1960 環境大臣は,
1961 前項の指示をするために必要な限度において,
1962 指定物質排出施設を設置し
1963
1964 ている者に対し,
1965 指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができ
1966 る。
1967
1968
1969 〔設問2〕
1970 環境基本法第22条は,
1971 規制的手法とは異なった手法について規定している。
1972
1973 この手法を国内
1974 の二酸化炭素排出削減に用いることが有効であるとの議論がある。
1975
1976 これについて,
1977 資料2を参照
1978 しつつ,
1979 以下の小問に答えなさい。
1980
1981
1982
1983
1984 前記議論について,
1985 その理由は何か。
1986
1987 ばい煙と比較しつつ,
1988 二酸化炭素の特質に基づいて答
1989 えなさい。
1990
1991
1992
1993
1994
1995 前記議論について,
1996 具体的にあり得る措置を複数挙げた上,
1997 それぞれの長所,
1998 短所を述べな
1999 さい。
2000
2001
2002 - 26 -
2003
2004 【資料2】
2005
2006
2007 京都議定書目標達成計画(平成17年4月28日策定,
2008 平成18年7月11日一部改定,
2009
2010 成20年3月28日全部改定)(抄)
2011 第1章
2012 第2節
2013
2014 地球温暖化対策の推進に関する基本的方向
2015 地球温暖化対策の基本的考え方
2016
2017 1.環境と経済の両立(略)
2018 2.革新的技術の開発とそれを中核とする低炭素社会づくり
2019 京都議定書の約束を達成するとともに,
2020 更に「低炭素社会」に向けて長期的・継続的な排
2021 出削減を進めるには,
2022 究極的には化石燃料への依存を減らすことが必要である。
2023
2024
2025 環境と経済の両立を図りつつ,
2026 これらの目標を達成するため,
2027 既に効果を上げている対策
2028 や既存技術の普及を加速することと併せて,
2029 省エネルギー,
2030 再生可能エネルギー,
2031 原子力等
2032 の環境・エネルギー技術に磨きをかけ,
2033 創造的な技術革新を図り,
2034 効率的な機器や先進的な
2035 システムの普及を図るとともに,
2036 ライフスタイル,
2037 都市や交通の在り方など社会の仕組みを
2038 根本から変えていくことで,
2039 世界をリードする環境立国を目指す。
2040
2041
2042 3.全ての主体の参加・連携の促進とそのための透明性の確保,
2043 情報の共有
2044 地球温暖化問題は,
2045 経済社会活動,
2046 地域社会,
2047 国民生活全般に深く関わることから,
2048 国,
2049
2050 地方公共団体,
2051 事業者,
2052 国民といった全ての主体が参加・連携して取り組むことが必要であ
2053 る。
2054
2055
2056 このため,
2057 地球温暖化対策の進捗状況に関する情報を積極的に提供・共有することを通じ
2058 て各主体の対策・施策への積極的な参加や各主体間の連携の強化を促進する。
2059
2060
2061 また,
2062 深刻さを増す地球温暖化問題に関する知見や,
2063 6%削減約束の達成のために格段の
2064 努力を必要とする具体的な行動,
2065 及び一人一人が何をすべきかについての情報を,
2066 なるべく
2067 目に見える形で伝わるよう,
2068 積極的に提供・共有し,
2069 広報普及活動を行い,
2070 家庭や企業にお
2071 ける意識の改革と行動の喚起につなげる。
2072
2073
2074 4.多様な政策手段の活用
2075 分野ごとの実情をきめ細かく踏まえて,
2076 削減余地を最大限発現し,
2077 あらゆる政策手段を総
2078 動員して,
2079 効果的かつ効率的な温室効果ガスの抑制等を図るため,
2080 各主体間の費用負担の公
2081 平性に配慮しつつ,
2082 自主的手法,
2083 規制的手法,
2084 経済的手法,
2085 情報的手法など多様な政策手段
2086 を,
2087 その特徴を活かしながら,
2088 有効に活用する。
2089
2090
2091 また,
2092 幅広い排出抑制効果を確保するため,
2093 コスト制約を克服する技術開発・対策導入を
2094 誘導するような経済的手法を活用したインセンティブ付与型施策を重視する。
2095
2096
2097 5.評価・見直しプロセス(PDCA)の重視(略)
2098 6.地球温暖化対策の国際的連携の確保(略)
2099
2100 - 27 -
2101
2102 〔第2問〕(配点:50)
2103 A県にあるB国定公園は,
2104 美しい山岳に恵まれた自然公園である。
2105
2106 B国定公園にはカタクリ(自
2107 然公園法第13条第3項第10号の指定を受けている。
2108
2109 )の群落があり,
2110 近隣に住む甲は,
2111 そのカタ
2112 クリの群落の保護・生育を図ることを目的とする団体(以下「本件団体」という。
2113
2114 )を設立して代表
2115 者となり,
2116 会則も作成して,
2117 これまで約30名の地域住民の会員とともに,
2118 10年以上にわたって,
2119
2120 そのカタクリの群落の生育調査を行い,
2121 年数回の一般向けの観察会や保護・生育のための提言を行
2122 ってきた。
2123
2124
2125 ところで,
2126 約3年前から,
2127 B国定公園の特別保護地区内の遊歩道沿いにある前記カタクリの群落
2128 に近接した空き地に,
2129 乙が多数回にわたって数百本もの廃タイヤを投棄し,
2130 廃タイヤが野積みされ
2131 た状態になっている。
2132
2133 そして約1年前から,
2134 前記野積みされた廃タイヤからの自然発火により,
2135
2136 繁に「ぼや」が発生したため,
2137 甲ら本件団体のメンバーは,
2138 前記野積みされた廃タイヤの処理につ
2139 いて,
2140 A県に対し,
2141 早急に対策を講じるよう何度も交渉をしていた(@)。
2142
2143
2144 その後,
2145 前記野積みされた廃タイヤの自然発火により大規模な火災が発生し,
2146 B国定公園におい
2147 てA県が公園事業として設置していたビジターセンターが焼失するとともに,
2148 前記カタクリの群落
2149 も焼失した(A)。
2150
2151
2152 この場合について,
2153 以下の設問に答えなさい。
2154
2155
2156 〔設問1〕
2157 @の段階及びA以後の段階において,
2158 それぞれA県知事は乙に対し,
2159 行政上,
2160 どのような対応
2161 措置を採ることができるか。
2162
2163 ただし,
2164 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく措置は除くも
2165 のとする。
2166
2167
2168 〔設問2〕
2169 @の段階で,
2170 本件団体が乙に対し,
2171 前記野積みされた廃タイヤの撤去を求める裁判上の請求を
2172 したときに,
2173 その請求は認められるか。
2174
2175 予想される当事者の法的主張とそれに対する相手方当事
2176 者の反論とを指摘しながら論じなさい。
2177
2178
2179
2180 - 28 -
2181
2182 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2183
2184 - 29 -
2185
2186 [国際関係法(公法系)]
2187 〔第1問〕(配点:50)
2188 隣接するX国とY国の間では,
2189 Y国が実効的な支配を行っているα地方の領有権が長く争われて
2190 きた。
2191
2192 最近になってY国がα地方領有の正当性を声高に主張し,
2193 同時にα地方に駐留する軍隊を大
2194 幅に増強したために,
2195 両国の関係が極度に悪化し,
2196 X国とα地方を区切る事実上の境界線付近で小
2197 規模な軍事衝突も幾つか起こった。
2198
2199
2200 X国は,
2201 Y国のこうした行為に反発して,
2202 自国内にいるY国民の出国を禁止すると同時に,
2203 彼ら
2204 の資産を没収するという措置を採った。
2205
2206 それに反発したY国は,
2207 Y国内のX国民の預金を凍結し,
2208
2209 さらに,
2210 X国及びY国(以下「XY両国」という。
2211
2212 )が加盟する地域機関であるA連合の設立条約に
2213 基づいて,
2214 A連合の「平和安全保障理事会」を緊急招集した。
2215
2216 開催された平和安全保障理事会は,
2217
2218 X国代表反対のまま3分の2の多数を得て(決議採択のための定足数及び採択要件を満たしてい
2219 る。
2220
2221 ),
2222 A連合設立条約第4条に基づいて,
2223 X国の措置を中止させるためにA連合加盟国に必要な
2224 手段を採ることを授権する旨の決議を採択した。
2225
2226 その直後,
2227 Y国はα地方からX国内(X国が実効
2228 的支配を行い,
2229 Y国もX国領土と承認している地域)に軍隊を侵攻させ,
2230 Y国民の出国とその資産
2231 の回復を要求してX国内の一部の占領を続けた。
2232
2233
2234 XY両国は国際連合加盟国であり,
2235 またXY両国は共に,
2236
2237 「国際司法裁判所規程第36条第2項の
2238 規定に従い,
2239 この宣言の日付以後の事態又は事実に関して同日以後に発生するすべての紛争であっ
2240 て他の平和的解決方法によって解決されないものについて,
2241 国際司法裁判所の管轄を,
2242 同一の義務
2243 を受諾する他の国に対する関係において,
2244 かつ,
2245 相互条件で,
2246 当然にかつ特別の合意なしに義務的
2247 であると認めることを宣言する光栄を有します。
2248
2249 」との宣言を,
2250 1960年代に国際連合事務総長に
2251 あてて行っている。
2252
2253
2254 また,
2255 A連合設立条約第4条は,
2256
2257 「重大な状況において,
2258 平和安全保障理事会の決定に従って,
2259
2260 加盟国に介入する連合の権利」を規定し,
2261 第5条は,
2262 平和安全保障理事会の権限として,
2263
2264 「設立条
2265 約第4条に従って,
2266 連合のために,
2267 重大な状況において,
2268 連合が加盟国に介入する方式を承認す
2269 ること」を挙げる。
2270
2271
2272 〔設
2273
2274 問〕
2275
2276
2277
2278 Y国が行ったX国民の預金凍結措置を法的に評価しなさい。
2279
2280
2281
2282
2283
2284 Y国が行った軍事的侵攻を,
2285 A連合の対応も含めて法的に評価しなさい。
2286
2287
2288
2289
2290
2291 Y国によるX国領土の一部占領後,
2292 他の多くの国際連合加盟国が事態の深刻性に懸念を持っ
2293 た。
2294
2295 これら加盟国が,
2296 国際連合を利用していかなる措置を求めることができるかについて説明
2297 しなさい。
2298
2299
2300
2301
2302
2303 領土の一部を占領されたX国は,
2304 Y国の軍事占領を止めさせるために,
2305 国際司法裁判所をど
2306 のように利用することができるか。
2307
2308 管轄権の基礎も含めて説明しなさい。
2309
2310
2311
2312 - 30 -
2313
2314 〔第2問〕(配点:50)
2315 A国の非政府船舶Xが調査捕鯨に向かうために公海を航行していたところ,
2316 B国の非政府船舶Y
2317 とZが,
2318 調査捕鯨に抗議する目的で,
2319 A国船舶Xに体当たりした。
2320
2321 A国船舶Xでは,
2322 乗組員の数名
2323 が重傷を負った。
2324
2325 A国の政府船舶Kが近くの公海上に居合わせたため,
2326 救助作業に従事するととも
2327 に,
2328 B国船舶YとZにA国の港に入港するように要請したところ,
2329 B国船舶Yは,
2330 自発的にA国の
2331 港に入港した。
2332
2333 B国船舶Zは,
2334 その後も,
2335 公海上でA国船舶Xに対する航行妨害や軽微な体当たり
2336 を継続した。
2337
2338 A国もB国も国際連合海洋法条約の当事国である。
2339
2340 A国の刑法では,
2341 傷害罪について
2342 は,
2343
2344 「A国外においてA国民に対して傷害の罪を犯した者」にもA国刑法の適用があり,
2345 それにより
2346 処罰されると規定している。
2347
2348 A国は,
2349 A国刑法を適用して,
2350 B国船舶Yの船長であるB国人甲を傷
2351 害罪で処罰した。
2352
2353
2354 〔設問1〕
2355 A国がA国刑法を適用してB国船舶Yの船長であるB国人甲を処罰した点について,
2356 国際法上
2357 どのように評価されるかを,
2358 次の順序で論じなさい。
2359
2360
2361
2362
2363 国際法は,
2364 国家が管轄権を行使する根拠として何を認めているか,
2365 それに関する国際法の原
2366 則を明らかにしなさい。
2367
2368
2369
2370
2371
2372 A国は,
2373 A国の港に入港したB国船舶Yの船長甲にA国刑法を適用して傷害罪で処罰したが,
2374
2375 A国が公海上で体当たりを行ったB国船舶Yの船長B国人甲の行為について傷害罪で処罰する
2376 ことができると考えたことについて,
2377 国際法上の根拠に照らしてどのように評価されるか論じ
2378 なさい。
2379
2380
2381
2382 〔設問2〕
2383 A国の政府船舶Kが,
2384 A国船舶Xに対する航行妨害や軽微な体当たりを繰り返すB国船舶Zに
2385 対して,
2386 その公海上で停船命令を発して強制的にこれを停止させて乗船検査を行うなどの執行措
2387 置を採る場合を想定して,
2388 次の順序で論じなさい。
2389
2390
2391
2392
2393 国際連合海洋法条約の規定する公海制度の根本をなす原則(管轄権行使に関する原則を含
2394 む。
2395
2396 )は何かを明らかにしなさい。
2397
2398
2399
2400
2401
2402 A国の政府船舶Kによる,
2403 公海上にあるB国船舶Zに対する乗船検査などの執行措置につい
2404 て,
2405 国際連合海洋法条約の根拠に照らして国際法上どのように評価されるか論じなさい。
2406
2407
2408
2409 - 31 -
2410
2411 - 32 -
2412
2413 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
2414
2415 - 33 -
2416
2417 [国際関係法(私法系)]
2418 〔第1問〕(配点:50)
2419 日本人男Xと甲国人女Yは日本において婚姻し,
2420 甲国において婚姻生活を送っていたが,
2421 婚姻後
2422 しばらくして両者の性格上の相違からその婚姻関係は破たんした。
2423
2424 Xは日本に戻り,
2425 現在XとYは
2426 それぞれ日本と甲国に居住している。
2427
2428 両者がそれぞれの本国において別居を始めて5年を経過した
2429 ころ,
2430 Yは甲国において他の日本人男Aと親しくなり,
2431 甲国におけるAとの婚姻生活を望むに至っ
2432 た。
2433
2434 そこで,
2435 Xとの離婚を決意したYは甲国の裁判所に離婚訴訟を提起した。
2436
2437 訴状は,
2438 日本と甲国
2439 とが締結している司法共助の取決めに従い適法にXに送達された。
2440
2441 Xは,
2442 急きょ,
2443 甲国の弁護士資
2444 格を有する者を代理人として選任し,
2445 甲国裁判所の国際裁判管轄を争ったが,
2446 甲国裁判所はその管
2447 轄を肯定した。
2448
2449 そして同裁判所は,
2450
2451 「12か月以上継続した別居」を離婚原因とする甲国の規定を適
2452 用して,
2453 XとYとを離婚する旨の判決を言い渡した。
2454
2455 判決確定後1か月して,
2456 YとAは婚姻しよう
2457 としている。
2458
2459
2460 XとYの間に子はない。
2461
2462 この事例について,
2463 甲国の国際私法からの反致はないものとして,
2464 以下
2465 の設問に答えなさい。
2466
2467
2468 〔設
2469
2470 問〕
2471
2472 1.甲国裁判所の離婚判決の効力を日本で承認するための要件である国際裁判管轄は甲国に認め
2473 られるか。
2474
2475
2476 2.法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)の下におけるYとAの婚姻の実質的成
2477 立要件につき,
2478 次の問いに答えなさい。
2479
2480
2481
2482
2483 甲国裁判所の判決が日本において効力を有し,
2484 かつ,
2485 Yの本国法である甲国法は再婚禁止
2486 期間の制度を現在では廃止しているとする。
2487
2488 離婚判決の確定後6か月を経過することなく挙
2489 行されるYとAの婚姻は有効に成立するか。
2490
2491
2492
2493
2494
2495 甲国裁判所の判決が日本において効力を有せず,
2496 かつ,
2497 重婚を禁止する甲国の規定は「配
2498 偶者のある者が重ねてした婚姻は無効とする」と定めているとして,
2499 YとAの婚姻の成立の
2500 有効性について論じなさい。
2501
2502
2503
2504 3.婚姻の実質的成立要件が満たされていると仮定して,
2505 Aは,
2506 Yとの婚姻を挙行するにつき,
2507
2508 @甲国の機関の関与の下に甲国法に従い婚姻を挙行した後に,
2509 甲国機関の発行する婚姻証明書
2510 を甲国に駐在する日本の領事に提出する方法又はA日本法の定める婚姻の届書を甲国に駐在す
2511 る日本の領事に提出する方法のいずれを採るべきか。
2512
2513
2514
2515 - 34 -
2516
2517 〔第2問〕(配点:50)
2518 Xは,
2519 日本のS市に本店を置く食品の加工・販売を業とする株式会社であり,
2520 日本以外には営業
2521 所等を有さない。
2522
2523 Xは多くの国から食材を輸入しているが,
2524 新たに甲国から冷凍食材の輸入をした
2525 いと考えている。
2526
2527 Yは,
2528 甲国法に従い設立された会社であって,
2529 甲国に本店を有し,
2530 専ら甲国にお
2531 いて食材の加工・販売を行っており,
2532 甲国以外には財産や営業所等を有さない。
2533
2534 XがYに取引の開
2535 始について打診したところ,
2536 YはYのCEO(chief executive officer,
2537 最高経営責任者)である
2538 BをXの本社に赴かせ,
2539 BはXの代表取締役であるAに対して,
2540 Yを売主,
2541 Xを買主とする冷凍食
2542 材に関する売買契約(以下「本件契約」という。
2543
2544 )を締結することを提案した。
2545
2546
2547 〔設
2548
2549 問〕
2550
2551 1.BがYを代表して本件契約を締結することができるか否かは,
2552 いずれの国の法で判断すべき
2553 か。
2554
2555
2556 2.Bに本件契約の締結権限があるとして,
2557 次の問いに答えなさい。
2558
2559
2560
2561
2562 Xは,
2563 外国の会社と契約を締結する場合には,
2564 通常,
2565 契約書に「当事者はXの本店所在地
2566 を管轄する地方裁判所の専属的裁判管轄に服することを合意する」旨の条項を入れている。
2567
2568
2569 しかし,
2570 Bは甲国の裁判所の専属的裁判管轄に服することに合意するようAに求めている。
2571
2572
2573 Bの主張を受け入れた場合の利点と不利な点を,
2574 Xの立場に立って説明しなさい。
2575
2576
2577
2578
2579
2580 AとBは日本の裁判所の専属的裁判管轄に服することに合意したが,
2581 本件契約の準拠法に
2582 ついては,
2583 Aは日本法を,
2584 Bは甲国法をそれぞれ主張して最後まで譲らなかった。
2585
2586 そのため,
2587
2588 AとBは,
2589 当事者間で準拠法の合意がないまま,
2590 Xの本店で本件契約を締結した。
2591
2592 本件契約
2593 にはいずれの国の法が適用されるか。
2594
2595
2596
2597 3.Yは,
2598 Xに対する本件契約上の代金債権を乙国の金融機関であるT(乙国法に従い設立され
2599 た会社であって,
2600 乙国に本店を有し,
2601 日本を含む世界各国に支店を有する。
2602
2603 )に譲渡した。
2604
2605 Tが
2606 Xに対して日本の裁判所で本件契約上の代金債権の弁済を求めたとすれば,
2607 TのXに対する対
2608 抗要件は,
2609 いずれの国の法で判断されるか。
2610
2611 本件契約の準拠法が日本法であるとし,
2612 かつ,
2613
2614 とTとの債権譲渡契約の準拠法が甲国法であるとして答えなさい。
2615
2616
2617
2618 - 35 -
2619
2620