1 平成21年新司法試験論文式試験問題出題趣旨
2 【公法系科目】
3 〔第1問〕
4 今年度も,
5
6 「憲法」論文式問題は,
7 判例及び学説に関する知識を単に「書き連ね」たような,
8
9 観念的,
10 定型的,
11
12 「自動販売機」型の答案を求めるものではなく,
13
14 「考える」ことを求めている。
15
16
17 すなわち,
18 判例及び学説に関する正確な理解と検討に基づいて問題を解くための精緻な判断枠
19 組みを構築し,
20 そして事案の内容に即した個別的・具体的な検討を求めている。
21
22
23 今年の論文問題では,
24 設問1及び設問2の構成が従来と異なっている。
25
26
27 第1に,
28 相異なる理由で行われた2つの処分にかかわる憲法問題を,
29 設問1と設問2とでそ
30 れぞれ問う構成になっている。
31
32 答える「量」が増えたことを考慮して,
33 資料を含めた分量を減
34 らした。
35
36 そして,
37 問題文の中で,
38 それぞれ何が問題になるのかについて明確なヒントを書き込
39 み,
40 また議論が不必要に拡散しないように注を付したり,
41 文中で(例えば,
42 「定められた手続
43 に従い慎重に審査した」)限定したりしている。
44
45 第2に,
46 X側の主張に対する大学側の主張を
47 「想定して」検討することを求めている。
48
49 まず,
50 X側の主張は,
51 理にかない,
52 筋の通った主張
53 を十分に行う必要がある。
54
55 そして,
56 その主張に対応する大学側の「反論」は,
57 「見解」を展開
58 する中でそれと一体としての議論に組み込んで示すべきものであり,
59 「反論」では詳論する必
60 要はなく,
61 ポイントだけを述べればよい(例えば,
62 指針と「規則」の違いを正当化する理由と
63 して大学の自治,
64 あるいは研究を承認した大学としてより高度の倫理と責任を持つべきとする
65 等の主張)。
66
67 「反論」を組み込んだ「あなた自身の見解」は,
68 詳細に検討した上で(例えば,
69
70 学の自治の憲法上の位置付け,
71 意味内容等を論じ,
72 研究の自由を制約する根拠としての大学の
73 自治の主張について論じる。
74
75 ),
76 説得力のある理由を述べて結論を導き出す必要がある。
77
78
79 今年度の問題では,
80 大学の「規則」自体の違憲性の問題と処分違憲が問題となる。
81
82
83 設問1における「規則」違憲では,
84 指針と「規則」の違い(それは,
85 法律と条例の関係の問
86 題でも,
87 命令への委任の問題でもない。
88
89 ),
90 そして憲法第23条で保障される研究の自由の制約
91 の合憲性が問題となる。
92
93 本問で問題となる研究は実験を伴うものであり,
94 思索中心の研究の自
95 由とは異なる側面を有している。
96
97 また,
98 本問での制約は,
99 研究中止措置に向けられたものであ
100 って,
101 何ら言論活動を禁止するものではない。
102
103 したがって,
104 本問での制約は,
105 表現内容に基づ
106 く制約と同じものではない。
107
108
109 設問2における「規則」違憲では,
110 被験者の遺伝子情報を知る権利の制約が問題となる。
111
112
113 知る権利は,
114 憲法上明文では規定されていないので,
115 憲法上の位置付けが問題となる。
116
117 知る
118 権利は,
119 表現の自由との関係で位置付けられているが,
120 本件の場合には,
121 送り手の自由と受け
122 ての自由という関係でのものではない。
123
124 むしろ,
125 本問での知る権利は,
126 憲法第13条の幸福追
127 求権に位置付けられている自己情報コントロール権に基づく情報開示請求権といえる。
128
129
130 停職処分を受けたX自身は,
131 実質的に研究の自由を制約されることになる。
132
133 ただし,
134 本件処
135 分の違憲性を争う場合には,
136 Xは,
137 直接的には,
138 Cの情報開示請求権侵害を主張することにな
139 るので,
140 特定の第三者の権利侵害を理由として違憲主張をできるかが問題となる。
141
142 違憲主張適
143 格に関しては,
144 判例の判断枠組みを正確に挙げた上で,
145 それがこの問題に関する唯一の判断枠
146 組みといえるか等も検証した上で,
147 本件のような問題の場合の判断枠組み,
148 そして個別的・具
149 体的検討が必要である。
150
151
152 知る権利の制約の違憲性に関しては,
153 2つの異なる問題が存在する。
154
155 それは,
156 被験者自身の
157 情報の本人への開示の問題と,
158 被験者以外の人の情報の被験者への不開示の問題である。
159
160 前者
161 では,
162 すべての遺伝子に係る情報を開示することが本人に与えるマイナスの影響への考慮とい
163 う理由は,
164 いわゆるパターナリスティックな理由であり,
165 制約を正当化する理にかなった理由
166
167 -1-
168
169 といえるか否かについて検討する必要がある。
170
171 後者では,
172 その開示によって生じるかもしれな
173 い様々な問題とは何かを具体的に想定した上で,
174 第三者への情報提供を一切認めない規定の合
175 憲性を,
176 取り分け被験者の疾病の性質との関係で検討する必要がある。
177
178
179 設問1及び設問2の処分違憲に共通する大学側の主張として部分社会論を想定した場合に
180 は,
181 「あなた自身の見解」において,
182 部分社会論を展開した判例の判断枠組みを本件にそのま
183 ま使用することの適切性,
184 部分社会論自体の問題性等を論じる必要がある。
185
186 また,
187 設問2にお
188 ける処分違憲に関しては,
189 取り分け,
190 XがCに対して,
191 Cの要望とは異なる「規則」の内容に
192 ついて説明していないことも,
193 問題となる。
194
195
196 〔第2問〕
197 本問は,
198 建築主事がマンションの建築確認を行ったのに対し,
199 当該マンションの建築に反対
200 する周辺住民Fらが採るべき救済手段について論じさせるものである。
201
202 問題文と資料から基本
203 的な事実関係を把握し,
204 建築基準法や関連条例の趣旨を読み解いた上で,
205 採るべき救済手段の
206 訴訟要件等を検討するとともに,
207 本案における違法事由を論じる力を試すものである。
208
209
210 設問1は,
211 建築確認に基づく建築を阻止するために考えられる法的手段(訴訟とそれに伴う
212 仮の救済措置)に関して,
213 基本的な理解を問う問題である。
214
215 資料1において,
216 措置命令や検査
217 済証交付をめぐる行政訴訟は検討の対象から除外されているので,
218 本件確認の取消訴訟を論じ
219 ることが考えられる。
220
221 さらに,
222 資料1では,
223 本件確認の処分性,
224 審査請求前置,
225 出訴期間には
226 問題がないとされているので,
227 主として原告適格と狭義の訴えの利益を検討すべきことになる。
228
229
230 原告適格については,
231 行政事件訴訟法の条文と判例を踏まえ,
232 いかなる判断枠組みにより,
233
234 いかなる点に着目して判断すべきかを明らかにした上で,
235 建築基準法及び関連条例の趣旨目的
236 や,
237 本件においてFらが主張する利益の内容性質に即して,
238 原告適格の有無を論じることが必
239 要である。
240
241 取り分け,
242 本件では,
243 Fが本件土地から至近距離にあるマンションに居住し,
244 Gが
245 当該マンションを所有し,
246 Hが本件児童室に毎週通っており,
247 Iがその父親であるなど,
248 それ
249 ぞれ法的地位が異なっていることから,
250 個別具体的に検討を加えることが求められる。
251
252
253 狭義の訴えの利益については,
254 資料1の指示に従い,
255 建築物が完成した場合の問題点を検討
256 することが要求されている。
257
258 判例を踏まえた上で,
259 説得力のある立論を行うことが期待される。
260
261
262 仮の救済措置としては,
263 本件確認の執行停止が考えられる。
264
265 行政事件訴訟法に定める要件の
266 該当性について,
267 本件事案でFらが主張し得る利益に即し,
268 「重大な損害」の要件を中心に,
269
270 具体的に論じることが必要である。
271
272
273 設問2は,
274 上記法的手段の本案で主張すべき本件確認の適法性を検討させる問題であり,
275
276 体上及び手続上の違法事由が考えられる。
277
278
279 実体上の違法事由として,
280 まず,
281 接道義務違反が問題となる。
282
283 建築基準法及び本件建築安全
284 条例から,
285 本件建築物についていかなる内容の接道義務が課せられているかを読み取った上で,
286
287 本件道路がこの要件を満たしているかを検討しなければならない。
288
289 特に,
290 本件道路に遮断ゲー
291 トが設置されている点について,
292 接道義務が設けられている趣旨に照らし,
293 適切な解釈を行う
294 ことが求められる。
295
296
297 次に,
298 本件建築物の地下駐車場と本件児童室の出入口間の距離が問題となる。
299
300 本件建築安全
301 条例によっていかなる規制がなされているかを指摘した上で,
302 その趣旨に照らし,
303 本件児童室
304 が規制対象に当たるかを論じなければならない。
305
306
307 手続面では,
308 本件紛争防止条例に定める説明会の開催と,
309 行政手続法に定める公聴会の開催
310 が問題となる。
311
312 それぞれの根拠規定の趣旨を明らかにした上で,
313 本件において義務違反がある
314 と認められるか,
315 認められるとして,
316 それが本件確認にいかなる意味を持つかを検討すること
317 が必要である。
318
319
320 最後に,
321 本問では,
322 Fが以上の違法事由をすべて主張できるか検討することも求められてい
323 -2-
324
325 る。
326
327 行政事件訴訟法の条文を踏まえ,
328 違法事由ごとに検討を加える必要がある。
329
330
331 【民事系科目】
332 〔第1問〕
333 設問1は,
334 一方当事者が主張責任を負う主要事実を,
335 その当事者が主張せず,
336 かえって相手
337 方当事者が主張した場合において,
338 その主張を判決の基礎とすることができるかどうか,
339 当事
340 者の証明を経ないで判決の基礎とすることができるかどうかを,
341 小問(1)ないし(3)の各
342 場合に分けて,
343 論じさせるものである。
344
345 本問は,
346 いわゆる「相手方の援用しない自己に不利益
347 な事実の陳述」という周知の論点に関するものであるが,
348 建物収去土地明渡請求訴訟において
349 建物買取請求権の行使が問題となる設例に基づき,
350 証拠調べの要否という観点から検討させる
351 ことにより,
352 弁論主義,
353 事実の要証性などについて,
354 基本的な理解とともに,
355 その応用力を問
356 うことを意図している。
357
358 被告が主張責任を負う事実である建物買取請求権の行使の事実を原告
359 が主張しているという本問の問題状況を理解し,
360 建物買取請求権の行使の訴訟法的な意義,
361
362 論主義(いわゆる第1テーゼ及び主張共通の原則)との関係,
363 当事者間に争いのある事実の要
364 証性,
365 自白された事実について証明を要しないとする民事訴訟法第179条の趣旨などについ
366 て,
367 自己の理解を明らかにした上で,
368 自説の立場から,
369 小問(1)から(3)までの場合につ
370 いて,
371 証拠調べの要否を論じることになる。
372
373
374 小問(1)は,
375 原告が被告による建物買取請求権行使の事実を主張し,
376 被告がこれを否認す
377 る場合であり,
378 小問(2)は,
379 被告がその事実を自ら援用した場合である。
380
381 自白の不要証効に
382 照準を合わせつつ,
383 自白の意義,
384 自白(先行自白も含む。
385
386 )の成否等について検討することに
387 なろう。
388
389 小問(3)は,
390 裁判所が釈明を求めたにもかかわらず,
391 被告が原告の主張する事実を
392 争うことを明らかにしない場合であり,
393 擬制自白の成否が問題となるが,
394 民事訴訟法第159
395 条第1項は,
396 主張責任を負う相手方の主張する事実について争うかどうかを明らかにしない場
397 合を想定した規定であることから,
398 主張責任を負う当事者が相手方の主張する事実について争
399 うことを明らかにしない場合にそのまま適用できないことを理解する必要がある。
400
401 同項の趣旨
402 等も踏まえ,
403 証拠調べを要するかどうかを論じることが求められる。
404
405
406 設問2は,
407 訴訟物,
408 訴えの利益,
409 既判力等の民事訴訟法に関する基本的な概念についての理
410 解を前提として,
411 各当事者の立場から,
412 複眼的な思考・検討を求めるものである。
413
414
415 小問(1)においては,
416 訴えの利益が訴訟要件の一つであること,
417 給付訴訟においては原則
418 として訴えの利益が認められること,
419 同一訴訟物について債務名義が存在する場合には訴えの
420 利益が否定されることなどを前提に,
421 設例に即した論述をすることが求められる。
422
423
424 小問(2)は,
425 第1訴訟と第2訴訟の訴訟物が同一であることを前提としながら,
426 少なくと
427 も建物収去を求める部分については棄却されるべきであるとの被告の主張の論拠について考え
428 させる問題である。
429
430 受験生は,
431 既判力の意義や積極的・消極的作用についての基本的な理解を
432 踏まえ,
433 一部認容判決の敗訴部分の既判力や留保付判決の留保部分に生じる効力など,
434 被告の
435 上記主張の論拠について考えることが求められる。
436
437
438 小問(3)は,
439 小問(1)及び(2)の被告の主張に対し,
440 原告の立場からいかなる反論を
441 することが可能かを考えさせるものである。
442
443 小問(1)の主張に対しては,
444 第1訴訟の確定判
445 決で認容された部分と第2訴訟の請求を対比しつつ,
446 新たに債務名義を得る利益があるという
447 立場から議論をすることが必要となる。
448
449 また,
450 小問(2)の主張に対しては,
451 既判力の時的限
452 界についての基本的な理解を踏まえ,
453 設例の具体的事実を的確に摘示しつつ,
454 既判力の基準時
455 前の事由を前訴において主張することが期待し得たかなどの観点から論じることが求められ
456 る。
457
458
459 〔第2問〕
460 -3-
461
462 本問は,
463 機械の製造販売事業を営む株式会社の取引及び合併をめぐる事例に関し,
464 様々な角
465 度から,
466 民法上及び会社法上の問題点等についての基礎的な理解の有無を問う総合問題である。
467
468
469 単に知識の有無の確認をするだけではなく,
470 具体的な事実関係に即して基本的問題を掘り下げ
471 て考察する能力,
472 具体的事実を法的観点から評価し構成する能力,
473 法律上の権利を具体的場面
474 で活用する能力,
475 論理的に一貫した論述をする能力の有無などを試すものである。
476
477
478 設問1から設問3までは,
479 会社間の売買契約に関する問題である。
480
481 X社がA社に金属加工機
482 械1台を所有権留保特約付きで売却し,
483 A社がこれをY社に転売し,
484 X社からY社に直接納品
485 されたが,
486 A社のX社に対する代金債務が履行されなかったため,
487 X社がA社との売買契約を
488 解除した上,
489 Y社に対し目的物の返還を求めて提訴したという事案について,
490 多面的な検討を
491 求めることにより,
492 種々の能力の程度を測るものである。
493
494
495 設問1は,
496 X社とA社との間の売買契約について,
497 注文書及び注文請書に誤記があり,
498 両当
499 事者が一致して意図していた目的物の型番とは異なる型番がこれらの書面に記載されたという
500 場合において,
501 売買契約の目的物,
502 誤記が契約の効力に与える影響,
503 錯誤の成否について問う
504 ものである。
505
506 契約当事者の真意は合致しているものの,
507 物理的な表示がそれとは異なっている
508 場合の処理という基礎的な問題ではあるが,
509 結論に至る理由付けを具体的事案に即して述べる
510 ためには,
511 理論的考察と事実の評価との両面にわたる能力が求められる。
512
513 なお,
514 本件では,
515
516 類物売買であるという特徴もある。
517
518
519 設問2は,
520 Y社による上記機械の即時取得の要件に関する問題である。
521
522 (1)@は,
523 「A社と
524 Y社との間の売買契約に基づく引渡しがされたこと」という事実をY社が主張立証する必要が
525 あるかどうかを問う。
526
527 取引行為に基づく占有取得の要件について,
528 その意義(占有取得の意義,
529
530 それが取引行為に「基づく」ものであることの意味)を問うものである。
531
532 なお,
533 この事実は,
534
535 種類物の特定にもかかわるものである。
536
537 (1)Aは,
538 「Y社が引渡しを受ける際,
539 A社がX社に
540 代金全額を弁済していない事実を知らなかったこと」という事実をY社が主張立証する必要が
541 あるかどうかを問う。
542
543 ここでは,
544 即時取得の要件である「善意」又は「無過失」に関する一般
545 的な論述よりも,
546 上記事実が即時取得の要件である「善意」とは異なるものであることを正確
547 に指摘した上,
548 その評価をすることが求められる。
549
550 (2)B及びCは,
551 即時取得における過失
552 の評価に関する問題であるが,
553 それぞれの性格は異なる。
554
555 (2)Bは,
556 具体的事実が過失の認
557 定判断に働くかどうか,
558 その理由は何かの説明を求めるものであり,
559 事実の分析及び評価に係
560 るものである。
561
562 他方,
563 (2)Cは,
564 過失の有無の判断が占有取得時にされるべきであるという
565 理論的性格を持つものである。
566
567 以上のように,
568 設問2は,
569 要件事実の基本的知識を確認するだ
570 けではなく,
571 実体法上の理論的問題の検討及び具体的事実の慎重な分析と評価を求めるという,
572
573 多面的な性格を持つ問題である。
574
575
576 設問3は,
577 X社がY社に対し,
578 引き渡された機械の返還とともに,
579 その使用料相当額をも請
580 求しようとする場合について,
581 その法的根拠を 1 つ示した上,
582 いつから請求することができる
583 かの説明を求めるものである。
584
585 法的根拠(不当利得返還請求権,
586 悪意占有者の果実返還義務,
587
588 不法行為に基づく損害賠償請求権が考えられる。
589
590 )といつから請求することができるか(引渡
591 時,
592 解除時,
593 返還請求時,
594 返還請求訴訟提起時が考えられる。
595
596 )との組合せと理由付けが整合
597 的なものとして示されていること,
598 その前提として所有権留保売買の法的構成及びそこでの買
599 主又は転得者の使用権限に関する分析がされていることが求められる。
600
601 この問題は,
602 他人の物
603 を権原なく使用する場合の清算関係及び所有権留保売買における売主と転得者との関係という
604 民法上の重要問題に関する基本的理解と,
605 具体的事実を法的観点から評価し構成する能力を問
606 うものである。
607
608
609 設問4から設問6までは,
610 株式会社の合併に関する問題である。
611
612 X社がZ社との間の事業の
613 譲渡等に関する基本合意を白紙撤回した上,
614 D社からの吸収合併の申入れを受け入れ,
615 合併契
616 約承認の株主総会を開催し,
617 決議をしたという事案について,
618 合併に関する一連の手続の進行
619 -4-
620
621 の過程に応じて,
622 それに係る法的諸問題につき多面的な検討を求めることにより,
623 種々の能力
624 の程度を測ろうとするものである。
625
626
627 設問4は,
628 合併契約の締結や当該合併契約の承認を目的とする株主総会の招集を阻止するた
629 めの手段となる会社法上の株主の権利について問うものである。
630
631 その最も有効な権利として考
632 えられるものは,
633 株主による取締役の行為の差止め(会社法第360条)であるが,
634 その要件
635 の充足の検討に当たり,
636 様々な法的論点の分析が求められる。
637
638 第1に問題となるのは,
639 同条第
640 1項に規定する「法令」の意義であり,
641 善管注意義務や忠実義務(同法第330条,
642 民法第6
643 44条,
644 会社法第355条),
645 さらに,
646 独禁法などの公益を守るための法令も含まれるのかが
647 問題となり,
648 善管注意義務ないし忠実義務については,
649 基本合意違反による損害賠償債務の発
650 生と合併によってもたらされるX社の利益との比較や,
651 合併比率の不公正という問題がX社自
652 身にどのような損害をもたらし得るのか等の分析を行うことが期待される。
653
654 第2に問題となる
655 のは,
656 会社法第360条第3項に規定する「回復することのできない損害」がX社に生ずるお
657 それの有無であり,
658 本問の事案に即して,
659 丁寧に具体的な当てはめをする必要がある。
660
661
662 設問5は,
663 株主総会における議決権行使書面による議決権行使や委任状に基づく議決権の代
664 理行使をめぐる法律問題をきちんと理解することができているかどうかについて試すものであ
665 る。
666
667 議決権行使書面による議決権行使の場合,
668 書面に記載されたとおりの議決権行使がされた
669 ものとして取り扱われるが(会社法第311条第1項,
670 第2項),
671 委任状に基づく議決権の代
672 理行使は,
673 代理人による投票をもって議決権行使として取り扱われるのであり,
674 このような両
675 制度の趣旨・意義,
676 法的構造の違い等についての基本認識が問われている。
677
678 @において問題と
679 なるのは,
680 まず,
681 賛否の記載のない議決権行使書面について各議案につき賛成又は反対とみな
682 す旨を記載することであるが,
683 これは会社法施行規則第66条第1項第2号により認められて
684 おり,
685 その有効性を肯定した下級審裁判例も存在する。
686
687 これに対し,
688 委任状については,
689 そも
690 そも白紙委任が認められるのか,
691 また,
692 代理人が委任状の指示に反したときに代理人による議
693 決権行使の効果はそのまま認められるのかが問われる。
694
695 これらは下級審裁判例・学説で議論さ
696 れた問題ではあるものの,
697 本問の事例は,
698 かつての多くの例とは異なり,
699 会社経営陣に反対す
700 る株主側が委任状を勧誘したという最近の事例を踏まえたものとなっており,
701 従来の議論をど
702 こまで応用できるかという柔軟な法的推論を行う能力も試されている。
703
704 Aにおいて問題となる
705 のは,
706 議決権行使書面と委任状により矛盾する内容の権利の行使を株主が行った場合の効力を
707 どのように考えるかという論点であり,
708 従来,
709 余り論じられていないものである。
710
711 考え方とし
712 ては,
713 議決権行使書面の送付と委任状の交付の時点を比較して後のものを優先する考え方,
714
715 理人による議決権行使を本人による議決権行使と同視して優先する考え方,
716 矛盾した議決権行
717 使としていずれも無効とする考え方等があり得るが,
718 いずれにしても,
719 自分なりの法律構成を
720 行った上で結論を導く応用能力が必要とされている。
721
722
723 設問6は,
724 合併承認総会の後の段階において,
725 合併の効力が発生する前と後とに分けた上,
726
727 合併の実現を阻止するための手段としての会社法上の権利(設問4で解答した手段を除く。
728
729
730 について問うものである。
731
732 合併の効力発生の前においては,
733 合併を承認した株主総会の決議に
734 ついて,
735 取消しの訴えや無効確認の訴えを提起するとともに,
736 それらを本案とする仮処分命令
737 の申立てを行うことにより,
738 合併の実現を阻止することが考えられるが,
739 そのような決議の効
740 力を争う根拠として,
741 設問5における自らの解答を前提として特別決議が成立しているかどう
742 か,
743 議長不信任動議や投票数の算入方法に関する抗議を議長が無視して決議の成立を宣言した
744 ことが決議の方法の法令違反等となるかどうか,
745 当該合併が独禁法第15条第1項第1号に違
746 反するとした場合にそれが決議の無効事由となるかどうか等が,
747 検討される必要がある。
748
749 合併
750 の効力発生の後においては,
751 合併無効の訴えによらなければ,
752 合併の無効は主張できなくなる
753 が,
754 合併条件の不公正,
755 独禁法違反等が合併無効事由になるかが,
756 前記の会社法上の効力等の
757 問題を踏まえて論じられる必要がある。
758
759
760 -5-
761
762 【刑事系科目】
763 〔第1問〕
764 本問は,
765 具体的事例に基づいて甲乙の罪責を問うことによって,
766 刑事実体法及びその解釈論
767 の理解,
768 具体的事実に法規範を適用する能力並びに論理的思考力を試すものである。
769
770
771 問題文前半は,
772 刑法所定の財産犯に関する理解及び間接正犯ないし共犯に関する理解を問う
773 ものである。
774
775
776 まず,
777 Aに生じた合計200万円の財産的損害について,
778 甲乙にいかなる財産犯が成立し得
779 るかが問題となる。
780
781 この検討に当たっては,
782 刑法所定の財産犯の構成要件に関する正確な理解
783 が必要不可欠である。
784
785 その上で,
786 本件の具体的事実関係においていかなる犯罪が成立するかを
787 検討することになるが,
788 その際,
789 第1に,
790 いわゆる「預金の占有」の趣旨・根拠についての的
791 確な理解を前提に,
792 Aの口座についての「預金の占有」が対銀行との関係での払戻権限を踏ま
793 えて甲乙各人にそれぞれ認められるか否かによって,
794 成立し得る財産犯が異なることに留意す
795 る必要がある。
796
797 例えば,
798 「預金の占有」を有する者には横領罪が成立し得るものの窃盗罪や電
799 子計算機使用詐欺罪は成立しないと解されることなどに関する正確な理解が必要となろう。
800
801
802 2に,
803 本問の具体的事実関係において甲乙にAの口座の払戻権限が認められるか否かなどにつ
804 いて的確に事実を評価した上で,
805 これに法的な当てはめを行い,
806 甲乙に成立し得る財産犯を確
807 定することが必要である。
808
809 第3に,
810 以上の検討を前提に,
811 次に述べる甲乙の法的な関係の理解
812 に従って,
813 本問の事実関係に即して甲乙に成立すると考えられる財産犯の各構成要件要素の充
814 足を検討し,
815 最終的に甲乙の罪責を確定する必要がある。
816
817 その際,
818 単に,
819 問題文に表れた事実
820 を漫然と羅列するのではなく,
821 いかなる事実がいかなる構成要件要素の該当性判断に関係があ
822 ると考えているのか分かるように論述しなければ,
823 「事実を摘示しつつ」との出題意図に答え
824 たことにはならない。
825
826 例えば,
827 問題文に記載された各事実関係のうち,
828 どの事実が甲乙の「預
829 金の占有」の有無を基礎付ける事実で,
830 どの事実が甲乙の「(占有の)業務性」の有無を基礎
831 付ける事実であると考えているのかが分かるように「事実を摘示しつつ」犯罪構成要件要素が
832 充足されるか否かの結論を導くことが求められている。
833
834
835 次に,
836 甲乙の法的な関係が問題となる。
837
838 本問では,
839 実際に合計200万円の預金払戻等に及
840 んだのが乙である上,
841 甲が当初認識していた事実と実際に生じた事実との間にそごが生じてい
842 ることから,
843 乙の行為について甲が刑事責任を負うか否かに関し,
844 いかなる理論構成によるべ
845 きか,
846 間接正犯や共犯の各成立要件を踏まえて検討することが必要である。
847
848 その際,
849 正犯がだ
850 れであるかが問題となり,
851 甲を教唆犯,
852 乙を正犯とする考え方のほか,
853 甲を間接正犯,
854 乙を故
855 意ある幇助道具とする考え方などがあり得るところ,
856 後者の考え方によるには乙が甲の意図を
857 認識している点や乙に正犯性を認め得るのではないかとの点が障害となり得ることに留意しつ
858 つ,
859 本問の具体的事実関係に即して論理的に考察することが求められている。
860
861 さらに,
862 乙によ
863 る120万円の払戻行為に関する甲の刑事責任について,
864 前記そごを理由に因果関係や故意を
865 否定し得るのかどうかの検討も重要である。
866
867
868 また,
869 甲乙の罪責に関する構成によっては,
870 共犯と身分に関する処理が必要となろう。
871
872
873 問題文後半は,
874 甲乙のいわゆる狂言行為についていかなる犯罪が成立するか,
875 主として財産犯以
876 外の刑法各論の基礎的な知識と当てはめの能力を問うものである。
877
878
879 具体的には,
880 監禁罪,
881 偽計業務妨害罪,
882 その他の国家的法益に対する罪等の成否が問題となり得
883 る幾つかの事実関係の中から,
884 問題文において詳細に事実が提示されている甲乙の行為で,
885 理論上
886 重要な問題点を含む事項について犯罪の成否を論述することが求められている。
887
888 取り分け,
889 甲が乙
890 を自動車のトランクに閉じ込めた行為について,
891 乙がこれを承諾していることが監禁罪の成否に与
892 える影響に関する理論的な対立に留意しつつも,
893 本問の具体的事実関係において当該理論がどのよ
894
895 -6-
896
897 うに適用されるべきかを注意深く検討することが必要であろう。
898
899
900 最後に,
901 甲乙に成立する犯罪相互の関係に留意して罪数判断を示すことも必要である。
902
903
904 論述においては,
905 刑法解釈上の論点に関する学説等の立場・見解の相違によって結論が異なり得
906 る個々の問題点については,
907 自らの採る結論のみならず,
908 それが正当であるとする論拠を説得的に
909 論述することが必要である。
910
911 ただし,
912 その場合,
913 飽くまでも本問の事実関係を前提に,
914 結論を導く
915 のに必要な点を中心に論ずるべきであって,
916 本問の事実関係からかけ離れた一般論や結論を左右し
917 ない論点に関する理論的対立の検討に力を注ぐのは,
918 出題意図にかなうものとは言えないであろう。
919
920
921 また,
922 既知の判例や典型事例等の結論を,
923 それが前提とする事実関係や本問の事実関係との相違
924 を十分検討せずに本問に当てはめたり,
925 逆に,
926 自ら是とする見解に適合しやすいよう恣意的に事実
927 をわい曲して評価したりすることも不適当と言わざるを得ない。
928
929
930 本問においては,
931 事例を丁寧に分析・評価し,
932 基本的な刑法解釈論を踏まえて粘り強く論理的な
933 思考を重ね,
934 それを説得的に論述することこそが求められている。
935
936
937 〔第2問〕
938 本問は,
939 捜査・公判に関する具体的事例を示して,
940 そこに生起する刑事手続上の問題点の解
941 決に必要な法解釈,
942 法適用にとって重要な具体的事実の分析・評価及び具体的帰結に至る過程
943 を論述させることにより,
944 刑事訴訟法等の解釈に関する学識と適用能力及び論理的思考力を試
945 すものである。
946
947
948 設問1は,
949 殺人及び死体遺棄事件を素材として,
950 被疑者甲の共犯者乙が経営するT化粧品販
951 売株式会社を適法に発付された捜索差押許可状に基づいて捜索した際に行われた様々な写真撮
952 影について,
953 その適法性を論じさせることにより,
954 捜索差押えという強制処分の過程における
955 写真撮影の法的性質についての考え方,
956 ひいては令状主義及び刑事訴訟法第218条第1項の
957 定める捜索,
958 差押え及び検証についての正確な理解と具体的事実への適用能力を試すものであ
959 る。
960
961
962 捜索差押時に行われる写真撮影の適法性については,
963 当該写真撮影が捜索差押えに付随する
964 処分として許される場合があるとの見解や捜索差押えの意義・内容からその本来的効力として
965 写真撮影が許されるとする見解などがあり得るが,
966 いずれにせよ,
967 まず,
968 令状主義の意義と趣
969 旨に立ち帰ってこの問題に関する各自の基本的な立場を刑事訴訟法の解釈として論ずる必要が
970 ある。
971
972 その上で,
973 例えば,
974 捜索差押えに付随する処分として許されるとする見解からは,
975 証拠
976 物の証拠価値を保存するため,
977 あるいは手続の適法性の担保のため写真撮影が許されるとの規
978 範を定立することになろう。
979
980
981 事例への法適用の部分では,
982 具体的事例の写真@からCのいずれについても,
983 写真撮影の対
984 象が本件捜索差押許可状の差押対象物,
985 すなわち令状の本来的効力の対象である「本件に関連
986 する保険証書,
987 借用証書,
988 預金通帳,
989 金銭出納帳,
990 手帳,
991 メモ,
992 ノート」に該当するか否かを
993 まず検討し,
994 その上で,
995 当該写真撮影が証拠物の証拠価値を保存するためなどに必要であるか
996 否かを検討してその適法性を論ずることになろうが,
997 いずれも事例中に現れた具体的事実を的
998 確に抽出,
999 分析しながら論証すべきである。
1000
1001 個々の適法又は違法の結論はともかく,
1002 具体的事
1003 実を事例中からただ書き写して羅列すればよいというものではなく,
1004 それぞれの事実が持つ法
1005 的な意味を的確に分析して論じなければならない。
1006
1007 例えば,
1008 写真@については,
1009 白壁に書かれ
1010 た記載の意味について甲の供述調書の記載から,
1011 本件との関連性を認定し,
1012 差押対象物である
1013 「本件に関連するメモ」として,
1014 白壁の一部を破壊し取り外して差し押さえるよりも写真撮影
1015 にとどめる方が処分を受ける者にとって不利益がより小さいため適法であるなどとの分析が可
1016 能であるし,
1017 写真A及びBについては,
1018 通帳はいずれもA名義であるが,
1019 乙名義のパスポート
1020 やA名義の印鑑などと同じ引き出し内に入っていたことから乙が実質的に管理・使用していた
1021
1022 -7-
1023
1024 通帳であることを論じたり,
1025 X銀行の通帳にある「→T.K」との鉛筆での書き込みの意味を
1026 検討し,
1027 通帳が発見された時点からその書き込みがあったことを明らかにする必要性を論じる
1028 ことなどが求められよう。
1029
1030 また,
1031 写真Cについては,
1032 撮影されたパスポート,
1033 名刺等は令状記
1034 載の差押対象物ではないが,
1035 乙による通帳の管理・使用すなわち,
1036 引き出し内にあった預金通
1037 帳が本件に関連する通帳に該当する点を明らかにするため,
1038 同じ引き出し内にあったパスポー
1039 ト等の乙の名義部分だけを写真撮影するという行為が,
1040 差押手続の適法性担保の観点から許さ
1041 れないか等を論じる必要があろう。
1042
1043
1044 設問2は,
1045 被疑者甲による犯行再現実験の結果を記録した実況見分調書について,
1046 その要証
1047 事実との関係での証拠能力を問うことにより,
1048 伝聞法則の正確な理解と具体的な事実への適用
1049 能力を試すものである。
1050
1051
1052 本問では,
1053 検察官は「被告人が本件車両を海中に沈めることができたこと」という立証趣旨
1054 を設定したが,
1055 弁護人は,
1056 その立証趣旨を「被告人が本件車両を海中に沈めて死体遺棄したこ
1057 と」であると考え,
1058 本件実況見分調書の証拠調べ請求に対し,
1059 不同意の意見を述べている。
1060
1061
1062 行再現行為が問題となった判例によれば,
1063 弁護人が考えるように犯罪事実の存在が要証事実に
1064 なると見るべき場合には,
1065 刑事訴訟法第321条第3項所定の要件を満たす必要があるだけで
1066 はなく,
1067 再現者が被告人である場合には同法第322条第1項所定の要件をも満たす必要があ
1068 るとされていることから,
1069 果たして本件における要証事実をどのようにとらえるべきか,
1070 事例
1071 中に現れた具体的事実関係を前提にして,
1072 的確な分析が求められる。
1073
1074
1075 事案に則した前記判例の正確な理解を踏まえつつ,
1076 本件の具体的事実関係を的確に把握すれ
1077 ば,
1078 本件は,
1079 判例の見解が前提としていた事案とは異なり,
1080 検察官が設定した立証趣旨をその
1081 まま前提にするとおよそ証拠としては無意味になるような例外的な場合などではなく,
1082 甲が供
1083 述しているような犯行態様が現場の客観的な環境との関係で物理的に可能であるか否かが正に
1084 問題になる事案であるとの理解が可能である。
1085
1086
1087 いずれの設問についても,
1088 法解釈論や要件について抽象的に論じるにとどまったり,
1089 判例の
1090 見解をそのまま書き写すのではなく,
1091 事例中に現れた具体的事実関係を前提に,
1092 法的に意味の
1093 ある事実の的確な把握と要件への当てはめを行うことが要請されている。
1094
1095
1096 【選択科目】
1097 [倒
1098
1099
1100
1101 法]
1102
1103 〔第1問〕
1104 本問は,
1105 具体的な事例を通じて再生手続における事業譲渡に関する制度及び双方未履行の双
1106 務契約関係の処理等についての理解を問うものである。
1107
1108
1109 設問1(1)については,
1110 まず,
1111 Q社の意向を踏まえた上で選択すべき事業承継の方策とし
1112 て,
1113 再生手続開始後の早い段階での事業譲渡が考えられることを指摘し,
1114 それに必要な手続(具
1115 体的には民事再生法第42条及び第43条の裁判所の許可の申立て)について,
1116 本件事案の下
1117 でそれらの要件を充足するか否かを具体的に検討し,
1118 論じる必要がある。
1119
1120
1121 (2)については,
1122 B銀行の態度,
1123 他の債権者への弁済の必要性等本件の事情に照らして,
1124
1125 別除権協定の可能性を含め,
1126 担保権実行手続中止命令及び担保権消滅許可の申立てといった再
1127 生債務者として採るべき手続を明らかにすることが求められる。
1128
1129 さらに,
1130 それらの申立てが認
1131 められる要件について具体的事案に即して論じる必要がある。
1132
1133
1134 (3)については,
1135 再生債権の弁済に関する原則的な取扱いに触れた上で,
1136 本件において少
1137 額の再生債権を弁済することを可能とする条文上の根拠として考えられるもの,
1138 具体的には民
1139 事再生法第85条第5項(「少額の再生債権を早期に弁済しなければ再生債務者の事業の継続
1140 に著しい支障を来すとき」に関する部分)を正確に指摘するとともに,
1141 具体的事案に即して,
1142
1143 その要件の充足の有無を論じる必要がある。
1144
1145
1146 -8-
1147
1148 設問2については,
1149 民事再生法第49条による処理の原則を指摘した上で,
1150 A社が履行を選
1151 択し,
1152 又はD社の催告に確答しなかった場合と,
1153 A社が解除を選択した場合とに分けて,
1154 A社
1155 及びD社間の法律関係に関し,
1156 D社の有する債権及び債務が再生手続上どのように取り扱われ
1157 るかという点や,
1158 A社による解除が履行済みの部分に与える効果等について具体的に論じる必
1159 要がある。
1160
1161
1162 〔第2問〕
1163 本問は,
1164 具体的な事例を通じて,
1165 離婚をめぐって生ずる各種の法律関係と破産手続との関係
1166 等についての理解を問うものである。
1167
1168
1169 設問1(1)については,
1170 詐害行為取消訴訟が破産手続開始とともに中断すること,
1171 破産管
1172 財人においてこれを受継することができること及び破産管財人が受継した場合には同訴訟が否
1173 認訴訟に変更されることを前提とした上で,
1174 本件における財産分与の否認の可否を踏まえて,
1175
1176 破産管財人の受継の要否等を論じる必要がある。
1177
1178 そして,
1179 財産分与の否認の可否については,
1180
1181 否認類型を意識しつつ,
1182 マンションの購入代金の提供者等本件における具体的な事情を踏まえ
1183 て論じることが求められる。
1184
1185
1186 (2)については,
1187 養育費の支払義務に係る債権が非免責債権となることを明らかにすると
1188 ともに,
1189 同義務に係る債務名義による強制執行の可否を免責許可決定の確定前と確定後に分け
1190 て論じる必要がある。
1191
1192 そして,
1193 同決定の確定前については,
1194 民事再生法第249条第1項が非
1195 免責債権についても適用されることを示した上で,
1196 その理由についても論じることが求められ
1197 る。
1198
1199
1200 設問2については,
1201 破産財団に関する訴訟が破産手続開始決定とともに中断するとの原則を
1202 明らかにした上で,
1203 本件の慰謝料請求権に係る訴訟が上記原則の適用を受けるか否かについて,
1204
1205 本件慰謝料請求権の性質をどうとらえるか(行使上の一身専属的なものととらえられるかどう
1206 か),
1207 その性質が訴えの提起や判決の確定という事情によって変化を来すのかどうかという点
1208 に検討を加え,
1209 理由を明確にして自説を論じる必要がある。
1210
1211
1212 [租
1213
1214
1215
1216 法]
1217
1218 租税法の出題に関しては,
1219 これまで,
1220 所得税法を中心とし,
1221 これに関連する範囲で法人税法
1222 及び国税通則法を含み,
1223 いずれも基本的な理解を問うものを出題することとしてきた。
1224
1225
1226 〔第1問〕
1227 本問は,
1228 いわゆる不法利得に対する課税の在り方を通じて,
1229 所得税法の基礎的な理解と応用
1230 力を試すものである。
1231
1232
1233 まず,
1234 設問1前段の課税が許される根拠については,
1235 包括的所得概念・純資産増加説といっ
1236 た所得概念を踏まえる必要はあるが,
1237 所得税法の条文上,
1238 不法な利得を所得から除外したり非
1239 課税とする規定がないことなど,
1240 飽くまでも法解釈論としての根拠を示す必要があろう。
1241
1242 設問
1243 1後段は,
1244 所得区分を問題にしているが,
1245 ここでは,
1246 主に事業所得か雑所得かの区分が問題と
1247 なる。
1248
1249
1250 設問2(1)は,
1251 不法利得の収入金額の年度帰属の問題であり,
1252 権利確定主義,
1253 管理支配基
1254 準がキーワードになる。
1255
1256 利息制限法による制限超過の未収利息についての管理支配基準を適用
1257 した最高裁判所の判決(最判昭和46年11月9日民集25巻8号1120頁)が参考になる
1258 が,
1259 いずれにせよ,
1260 Cに対する請求権の行使が法律上可能かどうかを踏まえて,
1261 権利確定があ
1262 ったかどうかを検討すれば一定の結論を導くことができる。
1263
1264
1265 設問2(2)は,
1266 必要経費に係る問題である。
1267
1268 @は,
1269 そもそも賭博での負金の支出が,
1270 所得
1271 税法第37条第1項にいう「必要経費」に当たるかどうか(賭博の負金のような法的支払義務
1272 のない支出は,
1273 任意の家事的支出で,
1274 消費ととらえる考え方もあろう。
1275
1276 ),
1277 原価なのか販売費等
1278 -9-
1279
1280 なのかの問題があり,
1281 更に債務が確定しているかどうかが検討されなければならない。
1282
1283 必要経
1284 費性については完璧な解答までを求めているわけではなく,
1285 本問では,
1286 主にコインの精算が法
1287 的に義務付けられるものかどうかなどに着目して,
1288 これに整合的な結論を導けるかどうかを試
1289 している。
1290
1291 Aは,
1292 暴力団員に対する指導料名目の支出についてであるが,
1293 必要経費の要件であ
1294 る事業関連性,
1295 客観的必要性があるかどうかにつき,
1296 当該支出の実質を踏まえて,
1297 どう評価す
1298 るかが問題となる。
1299
1300 また,
1301 公序に反するような支出について必要経費控除が認められるかどう
1302 かという,
1303 いわゆる違法経費控除の可否についても検討されなければならない。
1304
1305 Bは,
1306 違法な
1307 事業に供されている機械についての減価償却費の控除の可否を問うもので,
1308 Aと同様に違法経
1309 費の観点から,
1310 控除の可否が問題となる。
1311
1312 設問2は,
1313 イレギュラーな所得稼得形態の収入金額
1314 と必要経費性を問題としているだけに,
1315 問題解決に必要な基礎知識と,
1316 問題点抽出力,
1317 応用力,
1318
1319 自説を説得的で整合的に論述する能力が試されている。
1320
1321
1322 〔第2問〕
1323 本問は,
1324 役員退職慰労金の支給に関する課税上の問題について,
1325 所得税法及び法人税法のそ
1326 れぞれの観点から検討することを求めるものであり,
1327 1つの事案を多角的・包括的に分析する
1328 能力及び条文を正確に読解し事実を要件に適切に当てはめる能力を試している。
1329
1330
1331 設問1は,
1332 役員の分掌変更に伴って支給される退職慰労金の所得税法上の取扱いについて,
1333
1334 @給与所得と退職所得との区別,
1335 取り分け所得税法における退職所得課税の趣旨及び同法第3
1336 0条に規定する「退職」の意義の理解,
1337 A現物所得の取扱いに関する所得税法第36条第1項
1338 括弧書及び同条第2項の理解を踏まえ,
1339 本文の事案に即して検討することを求めるものである。
1340
1341
1342 @については,
1343 取り分け勤務関係の終了の意義に関する最高裁判所の判決(最判昭和58年9
1344 月9日民集37巻7号962頁等)の立場を踏まえた論述が求められる。
1345
1346
1347 設問2は,
1348 役員退職慰労金の支給,
1349 特に現物支給を,
1350 法人税法に従ってどのように処理すべ
1351 きかを問うものである。
1352
1353 法人税法上の所得算定の基本構造に照らし,
1354 役員退職慰労金の現物支
1355 給については,
1356 1個の取引であるが,
1357 益金及び損金の両面において処理しなければならないこ
1358 とを理解した上で,
1359 益人及び損金の両面において当該役員退職慰労金の支給を関連規定の要件
1360 に当てはめることを求めている。
1361
1362 その当てはめの検討においては,
1363 法人税法上の所得算定の基
1364 本構造及び本問の事案に関連する条文を正確に理解しているかどうかが問われており,
1365 取り分
1366 け法人税法第22条第2項,
1367 同条第3項及び第34条の規定並びにそれらの規定の相互関係に
1368 関する正確な理解が重要である。
1369
1370
1371 [経
1372
1373
1374
1375 法]
1376
1377 〔第1問〕
1378 本問は,
1379 コスト削減を一つの契機とする機械メーカーによる部品の共同購入及び共同物流会
1380 社の設立等の計画に関する独占禁止法上の問題点を検討させることをその趣旨としている。
1381
1382
1383 このような業務提携は,
1384 必然的に競争事業者間の共同行為という性格を有することから,
1385
1386 当な取引制限の構成要件である「行為の共同性」,
1387
1388 「事業活動の相互拘束」,
1389
1390 「一定の取引分野」,
1391
1392 「競争の実質的制限」等についての理解を問うものである。
1393
1394
1395 部品の共同購入については,
1396 これが部品の購入市場のみならず製品販売市場における競争に
1397 も影響を及ぼすおそれがあることを踏まえ,
1398 それぞれの市場における不当な取引制限の成否を
1399 検討する必要がある。
1400
1401
1402 まず,
1403 部品購入市場においては,
1404 共同購入カルテルの成否について,
1405 当該市場を一定の取引
1406 分野として画定することの可否,
1407 本件共同購入計画の具体的な内容に基づく事業活動の相互拘
1408 束性の判断,
1409 当該市場における競争の実質的制限の有無をいかなる事実によって認定すべきか
1410 等についての検討が求められよう。
1411
1412
1413 - 10 -
1414
1415 製品販売市場においては,
1416 部品の共同購入が行われることによるコストの共通化が川下市場
1417 における製品の販売価格に影響を及ぼす可能性に着眼し,
1418 価格カルテルの成否について,
1419 部品
1420 の調達予定金額の目安を検討する前提資料として製品価格の上限を協議して決定することを含
1421 め,
1422 行為の共同性や事業活動の相互拘束あるいは競争の実質的制限をどのように認定するかに
1423 ついて検討する必要があろう。
1424
1425
1426 また,
1427 共同物流会社の設立については,
1428 同社が実際に行うこととなる事業活動の態様からす
1429 ると,
1430 競争事業者である共同出資会社間において,
1431 競争手段にかかわる情報を共有することに
1432 より,
1433 一定の共通認識を生ずるおそれがないかという観点から,
1434 製品の販売市場における不当
1435 な取引制限の成否について検討することになる。
1436
1437
1438 その場合は,
1439 当該会社の人的構成,
1440 あるいは配送の具体的な方法,
1441 製品の販売価格に占める
1442 物流コストの比率などの事実関係を踏まえ,
1443 当該情報の共有が競争に与える影響をどのように
1444 判断するか,
1445 行為の共同性や事業活動の相互拘束をいかに理解するか等がポイントとなろう。
1446
1447
1448 いずれにしても,
1449 本問では,
1450 論点主義的な記述ではなく,
1451 不当な取引制限の構成要件の意義
1452 を正確に理解した上で,
1453 当該行為の市場における競争への影響を念頭に置き,
1454 事実関係を丹念
1455 に検討した上でその当てはめを行うことが求められる。
1456
1457
1458 〔第2問〕
1459 本問は,
1460 Aが中部地方で計画しているパソコンの販売及び東日本地域で計画している液晶テ
1461 レビの販売について独占禁止法に違反しないかどうかを問うことによって,
1462 同法上の不当廉売
1463 規制に関して基本的な理解ができているかを確認するものである。
1464
1465 いずれも一般指定6項の要
1466 件を検討することになり,
1467 6項前段については,
1468 「正当な理由」,
1469 「供給に要する費用を著しく
1470 下回る」,
1471 「継続して」,
1472 「他の事業者の事業活動を困難にするおそれ」の要件を,
1473 6項後段につ
1474 いては,
1475 「不当に」,
1476 「低い対価」,
1477 「他の事業者の事業活動を困難にするおそれ」の要件を検討
1478 することになる。
1479
1480
1481 Aが中部地方で計画しているパソコンの販売については,
1482 「継続して」の要件,
1483 「他の事業者
1484 の事業活動を困難にするおそれ」の要件,
1485 「正当な理由」の要件を正確に理解し,
1486 問題文に示
1487 された仕入価格,
1488 新規開店セール,
1489 キャンペーン期間,
1490 旧型製品などから適切に事実を抽出し
1491 てその当てはめができるかを確認している。
1492
1493 本件は,
1494 「継続して」の要件をみたすかどうか判
1495 断が分かれ,
1496 いずれの立場によるかによって6項前段,
1497 後段のいずれを適用するかが変わって
1498 くる。
1499
1500 また,
1501 独占禁止法に違反しないとするものが多いと思われる。
1502
1503 しかし,
1504 それらが唯一の
1505 答えであるとする趣旨ではなく,
1506 要件を正確に理解した上で,
1507 事実関係を検討し正確に当ては
1508 められるか,
1509 それらは論理的であるかを確認する趣旨である。
1510
1511
1512 東日本地域で計画している液晶テレビの販売については,
1513 継続性の要件を満たすと考えられ
1514 るが,
1515 37インチテレビの販売価格は仕入価格を下回り,
1516 40インチテレビの販売価格は仕入
1517 価格を上回るが総販売原価を下回る事実関係となっていることから,
1518 6項前段,
1519 後段の適用関
1520 係が問題になり得る。
1521
1522 さらに,
1523 他の事業者の事業活動を困難にするおそれ及び正当な理由又は
1524 不当性(公正競争阻害性)があるか否かも問題文に示された事実から検討することになろう。
1525
1526
1527 具体的には,
1528 価格については,
1529 37インチテレビは6項前段,
1530 40インチテレビは6項後段を
1531 適用するもの,
1532 一括して6項前段又は後段を適用するものなどがあり得るし,
1533 他の事業者の事
1534 業活動を困難にするおそれはAの市場における地位,
1535 アンケート調査での当該商品の人気及び
1536 家電専門店への影響等からこれを肯定する答案が考えられるが,
1537 ここでも一つの答えしかない
1538 とする趣旨ではない。
1539
1540
1541 いずれにせよ,
1542 本問においても,
1543 要件の意義を正確に理解した上で,
1544 当該行為の市場におけ
1545 る競争への影響を念頭に置き,
1546 事実関係を丹念に検討した上でその当てはめを行うことが求め
1547 られる。
1548
1549
1550 - 11 -
1551
1552 [知的財産法]
1553 〔第1問〕
1554 特許を受ける権利は発明者に原始的に帰属するが,
1555 当該発明が職務発明(特許法第35条第
1556 1項)に当たる場合には,
1557 あらかじめ契約,
1558 勤務規則その他の定めにより特許を受ける権利を
1559 発明者の使用者等に承継させることを定めることができる。
1560
1561
1562 特許出願後の特許を受ける権利の承継は,
1563 相続その他の一般承継の場合を除き,
1564 特許庁長官
1565 への届出が効力要件とされ(特許法第34条第4項),
1566 また,
1567 特許権の移転は,
1568 相続その他の
1569 一般承継の場合を除き,
1570 登録が効力要件とされる(特許法第98条第1項第1号)。
1571
1572 なお,
1573
1574 許を受ける権利の承継の届出(出願人名義変更届)は,
1575 譲受人が権利の承継を証明する書面を
1576 添付することにより,
1577 単独で行うことができ,
1578 また,
1579 特許権の移転登録手続は,
1580 譲渡人と譲受
1581 人との共同申請によることを原則とするが,
1582 移転登録手続を命じる判決によるときは譲受人が
1583 単独で行うことができる。
1584
1585
1586 そして,
1587 特許を受ける権利又は特許権が共有に係るときは,
1588 各共有者は,
1589 他の共有者の同意
1590 を得なければ,
1591 その持分を譲渡することができない(特許法第33条第3項,
1592 第73条第1項)。
1593
1594
1595 以上を前提に,
1596 本問は,
1597 共同発明が職務発明である場合の法律関係を問うものである。
1598
1599
1600 設問1の1では,
1601 α試薬の発明は,
1602 甲及び乙の共同発明であるとともに,
1603 甲とA社との関係,
1604
1605 乙とB社との関係ではそれぞれ職務発明となることを把握した上で,
1606 A社及びB社がα試薬の
1607 発明の特許を受ける権利を承継するかどうか,
1608 承継するとした場合あるいは承継しないとした
1609 場合に,
1610 A社及びB社は,
1611 甲及び乙にいかなる請求をすることができるかについて,
1612 本問の事
1613 実関係に即して論じる必要がある。
1614
1615 A社及びB社が特許を受ける権利を承継するとした場合に
1616 は,
1617 後記の最高裁判所の判決を踏まえた論述が求められる。
1618
1619
1620 設問1の2では,
1621 甲のB社に対するα試薬の製造販売の差止請求及び損害賠償請求の可否を
1622 論じるに当たり,
1623 B社は,
1624 職務発明に基づく通常実施権を有するか等について検討する必要が
1625 ある。
1626
1627
1628 設問2は,
1629 共同発明について冒認出願がされた場合における真の権利者の救済手続について
1630 の理解を問うものである。
1631
1632 特許出願をした特許を受ける権利の共有者の一人の承継人であると
1633 称して特許権の設定登録を受けた無権利者に対する当該特許権の持分の移転登録手続請求を認
1634 めた最高裁判所の判決(最判平成13年6月12日民集55巻4号793頁・生ゴミ処理装置
1635 事件)を踏まえた論述が求められる。
1636
1637
1638 論述を展開するに当たっては,
1639 発明者でない丙が無断で特許出願をした場合と共同発明者の
1640 一人である甲が無断で単独出願をした場合との対比が必要となる。
1641
1642 なお,
1643 設問では甲,
1644 乙,
1645
1646 社又はB社の丙に対する請求について問われているので,
1647 設問1の1で検討したように,
1648 A社
1649 及びB社がα試薬の発明の特許を受ける権利を承継するか否かが論述の前提となる。
1650
1651
1652 〔第2問〕
1653 設問1は,
1654 甲が作成した絵画Aの贈与を受けて,
1655 これを知り合い十数名に見せ,
1656 そのうちの
1657 丙に売却した乙に対する甲の請求を,
1658 また,
1659 絵画Aに描かれたキャラクターの彫刻Bを作成し,
1660
1661 これを自らが経営する玩具店の店内に置き,
1662 丁市に譲渡した丙に対する甲の請求を問うもので
1663 あり,
1664 甲が乙及び丙に対していかなる権利の侵害に基づいてどのような請求をすることが可能
1665 であるかを論述させるものである。
1666
1667 乙の行為により侵害される権利としては,
1668 公表権,
1669 譲渡権
1670 等が問題となる。
1671
1672 公表権に関しては,
1673 乙の行為が「著作物でまだ公表されていないもの・・・
1674 を公衆に提供し,
1675 又は提示する」(著作権法第18条第1項)ものに当たるかどうかや,
1676 甲と
1677 乙との間の他人に見せない旨の合意と著作権法第18条第2項第2号との関係を論じる必要が
1678 ある。
1679
1680 譲渡権に関しては,
1681 乙の行為が著作物の「原作品又は複製物・・・の譲渡により公衆に
1682 - 12 -
1683
1684 提供する」(著作権法第26条の2第1項)ものに当たるかどうか,
1685 著作権法第26条の2第
1686 2項第3号に該当するものの譲渡に当たるかどうか,
1687 甲と乙との間の他人に譲渡しない旨の合
1688 意が同号の適用に影響を与えるかどうかを論じる必要がある。
1689
1690 丙の行為により侵害される権利
1691 としては,
1692 翻案権,
1693 展示権,
1694 譲渡権,
1695 同一性保持権,
1696 公表権等が問題となる。
1697
1698 翻案権に関して
1699 は,
1700 彫刻Bの作成が翻案に当たる場合について論述することが求められる。
1701
1702 彫刻Bの作成が翻
1703 案に当たるとした場合,
1704 彫刻Bが絵画Aの二次的著作物となることから,
1705 展示権,
1706 譲渡権につ
1707 いては,
1708 同法第28条,
1709 公表権については,
1710 同法第18条第1項後段に言及することとなろう。
1711
1712
1713 そして,
1714 乙及び丙に対する請求として,
1715 差止請求や損害賠償請求が可能であるかどうかについ
1716 て論じる必要がある。
1717
1718
1719 設問2は,
1720 甲と,
1721 ラストシーンの10秒程度に彫刻Bが写っている映画CのDVDを販売し
1722 ている戊との間の法律関係を問うものである。
1723
1724 まず,
1725 著作権の侵害を理由とする甲の戊に対す
1726 る差止請求の主張に関しては,
1727 頒布権(著作権法第26条第2項)の侵害等を論述することが
1728 求められる。
1729
1730 次に,
1731 甲の主張に対する戊の反論及び戊の反論に対する甲の再反論に関しては,
1732
1733 戊の行為と著作権法第46条との関係(二次的著作物が「屋外の場所に恒常的に設置されてい
1734 る」場合における原著作物についての著作権に対する同条の適用や同条第4号の該当性),
1735
1736 画Cに彫刻Bが写っていることが著作物の複製に当たるかどうか等について検討する必要があ
1737 る。
1738
1739
1740 [労
1741
1742
1743
1744 法]
1745
1746 〔第1問〕
1747 本問は,
1748 配転命令を契機として無断欠勤を理由とする普通解雇が行われた事例について,
1749
1750 的問題点を抽出し,
1751 具体的な事例に適用することを通じて,
1752 配置転換及び解雇をめぐる問題の
1753 理解を問うものである。
1754
1755 いずれも労働法における基本的な論点といえるが,
1756 そのまま適用する
1757 かどうかは別として,
1758 これらに関する判例の知識が前提となり,
1759 それを正確に示した上で自ら
1760 の考えを述べることが期待される。
1761
1762
1763 まず,
1764 本問の事例では,
1765 配転命令が普通解雇の前提となっていることから,
1766 Xに対する配転
1767 命令の効力について論じる必要がある。
1768
1769 XとY社との合意内容や就業規則の規定に照らしなが
1770 ら,
1771 Y社がXに対して配転命令を出す権限を有していたかを記述し,
1772 さらに配転命令が権利濫
1773 用に当たらないか否かを,
1774 判例による判断枠組みを踏まえながら,
1775 本件の具体的な事実関係に
1776 即して分析することが求められる。
1777
1778
1779 次に,
1780 それを前提に,
1781 本件解雇が有効かどうかを検討することになる。
1782
1783 本件解雇が就業規則
1784 の規定に基づいて行われていることを指摘した上で,
1785 Xが本社に出社しなかったことが就業規
1786 則に定める解雇事由に該当するか否か,
1787 あるいは解雇権の濫用(労働契約法第16条)に当た
1788 らないかどうかを吟味すべきである。
1789
1790 また,
1791 必要があれば,
1792 労働基準法第20条の解雇予告の
1793 問題にも触れることになろう。
1794
1795
1796 最後に,
1797 以上を踏まえつつ,
1798 XとY社との法的地位,
1799 権利関係について整理する必要がある。
1800
1801
1802 配転命令や普通解雇が無効である場合,
1803 Xが出社しなくなった2月1日から解雇が行われた時
1804 点までと,
1805 その後5月31日までのそれぞれについて,
1806 賃金の支払を求めることができるかを
1807 民法第536条第2項を用いて説明することが必要となる。
1808
1809 さらに,
1810 Xのアルバイト収入が控
1811 除されるかどうか,
1812 控除されるとするとその金額は幾らか(労働基準法第26条や同法第24
1813 条との関係),
1814 支払済みの解雇予告手当はどのように扱うべきかを述べることが求められる。
1815
1816
1817 〔第2問〕
1818 本問は,
1819 期間従業員の労働契約の打切りと,
1820 それを契機に行われた労働組合のストライキの
1821 事例を素材として,
1822 有期労働契約の終了,
1823 争議行為の正当性,
1824 ストライキ時における賃金カッ
1825 - 13 -
1826
1827 ト,
1828 懲戒処分の根拠・効力といった問題に関する理解を問うものである。
1829
1830 事実関係はやや複雑
1831 であるが,
1832 論点はオーソドックスであり,
1833 労働法に関する基本的な理解を求めるものである。
1834
1835
1836 設問1では,
1837 Y社がX1らに対して行った雇用打切りの法的性質は何か,
1838 これが有期労働契
1839 約の更新拒絶(雇止め)であるとすれば,
1840 雇用打切りについて解雇権濫用規定(労働契約法第
1841 16条)は類推適用されるか,
1842 類推適用を認めた場合,
1843 本件雇止めは法的にどのように評価さ
1844 れるか,
1845 本件雇止めが不当と解される場合の効果はいかなるものかが論点となり,
1846 事実関係を
1847 踏まえた検討が求められる。
1848
1849 また,
1850 Y社は,
1851 平成20年9月30日付けで従来の労働契約をい
1852 ったん合意解約するとともに,
1853 平成21年3月31日をもって退職することを内容とする新契
1854 約を締結しており,
1855 この事実が解雇権濫用規定の類推適用の当否や,
1856 雇止めの当否にどのよう
1857 に影響するのかについても検討する必要がある。
1858
1859
1860 設問2では,
1861 まず,
1862 Y社がN組合の役員であるRとSに対して行った懲戒処分の根拠と効力
1863 が問題となる。
1864
1865 懲戒処分の根拠については,
1866 本問の事実関係(Y社就業規則の懲戒事由規定の
1867 存在)に留意する必要がある。
1868
1869 懲戒処分の効力については労働契約法第15条に沿って検討す
1870 ることになるが,
1871 本件懲戒処分は,
1872 N組合のストライキの計画・指導を理由に行われているの
1873 で,
1874 本件ストライキの正当性が重要な論点となる。
1875
1876 特に,
1877 X1ら期間従業員問題の打開を図る
1878 目的で実施されたという目的面と,
1879 本件ストライキが部分ストという形で実施されたという態
1880 様面で,
1881 それぞれどのように評価されるかがポイントとなろう。
1882
1883 また,
1884 懲戒処分の効力に関す
1885 る法律構成としては,
1886 労働契約法第15条だけで構成するか,
1887 憲法第28条や民法の公序規定
1888 (民法第90条)を用いるか,
1889 あるいは不当労働行為禁止規定(労働組合法第7条)を活用す
1890 るかが問題となる。
1891
1892 さらに,
1893 懲戒権の濫用に関しては,
1894 RとSに対する処分の相当性及び懲戒
1895 手続の当否についても検討する必要がある。
1896
1897
1898 [環
1899
1900
1901
1902 法]
1903
1904 〔第1問〕
1905 本問は,
1906 環境負荷物質の種類に応じてどのような対応や手法が必要となるかを,
1907 論理的に説
1908 明できる能力を問う問題である。
1909
1910 環境法政策の根本的部分を扱ったものである。
1911
1912
1913 設問1では,
1914 ばい煙及び有害大気汚染物質へのそれぞれの対応について条文を挙げつつ説明
1915 し,
1916 ばい煙については,
1917 いわゆる規制的手法が用いられていること,
1918 有害大気汚染物質対策に
1919 関しては,
1920 事業者の責務とされ,
1921 罰則もなく,
1922 自主的取組手法が中心であることを示し,
1923 対応
1924 の仕方に相違がある理由については,
1925 科学的知見が確実であるか否かによることを説明するこ
1926 とが求められている。
1927
1928
1929 設問2の小問1は,
1930 二酸化炭素の特質について,
1931 @排出者は特定の者ではなく,
1932 程度の差は
1933 大きいが国民全体がかかわっていること,
1934 A二酸化炭素については世界全体での削減が問題と
1935 なり,
1936 国全体での総量削減が必要であり,
1937 地域的な排出量の偏在は問題とならないこと,
1938 B二
1939 酸化炭素は現在のところ人為的活動に伴って不可避的に生ずるものであり,
1940 その削減にははく
1941 だいなコストが掛かるため,
1942 いかに社会的コストを少なくして削減するかが重要となること,
1943
1944 C前記Bと同様の理由から継続的削減が重要であり,
1945 削減のために現在の技術では十分でなく,
1946
1947 技術革新・技術普及が必要であることなどを指摘することが求められている。
1948
1949 そして,
1950 経済的
1951 手法が重要であることについて,
1952 その理由を,
1953 上記の特質と対応させて指摘することが求めら
1954 れる。
1955
1956
1957 設問2の小問2は,
1958 経済的手法の中でどういう措置があるかを挙げ,
1959 長所短所を問う問題で
1960 あり,
1961 税・賦課金,
1962 排出枠取引(排出量取引,
1963 排出権取引),
1964 補助金の長短を説明することが
1965 求められる。
1966
1967
1968 〔第2問〕
1969 - 14 -
1970
1971 本問は,
1972 自然環境保全に関し,
1973 自然公園法の全体的理解及び自然破壊という具体的事例にお
1974 ける同法規定の適用のされ方の理解並びに環境民事訴訟における環境保護団体の訴訟法上の論
1975 点及び環境権等の実体法上の論点についての理解を問うものである。
1976
1977
1978 設問1の@の段階では,
1979 廃タイヤの集積という行為に対し,
1980 行政上の措置に関する法の規定
1981 がどのように適用されるかを正しく示し,
1982 検討することが求められる。
1983
1984 自然公園法(以下「法」
1985 という。
1986
1987 )第14条第1項の特別保護地区内では,
1988 同条第3項が適用され,
1989 その違反に対して
1990 県知事は法第27条の中止命令・原状回復命令を発することができる。
1991
1992 また,
1993 法第13条第1
1994 項の特別地域内では,
1995 同条第3項の要件に該当する場合に法第27条の適用がある。
1996
1997 解答に当
1998 たっては,
1999 これらの規定がいずれも優れた自然の風景地の保護を目的とすることを考慮するこ
2000 とが期待される。
2001
2002 なお,
2003 法第27条については,
2004 県知事の措置として行政代執行について言及
2005 することが求められる。
2006
2007
2008 設問1のAの段階では,
2009 さらに,
2010 公園事業として設置された施設を焼失させた原因者に対し
2011 ては,
2012 法第47条に基づき費用負担を求め得ることにも言及することが求められる。
2013
2014 なお,
2015
2016 問は行政上の措置を求めているので,
2017 民事訴訟の提起は対象とはしていない。
2018
2019
2020 設問2では,
2021 本件団体の主張として,
2022 まず当事者能力について,
2023 権利能力なき社団(民事訴
2024 訟法第29条)に該当するとの主張が求められる。
2025
2026 次に,
2027 団体固有の請求権に基づいて請求す
2028 るのでなければ,
2029 当事者適格について,
2030 環境保護団体として原告適格があるとの主張が求めら
2031 れる。
2032
2033 この点について予想される法的主張としては,
2034 選定当事者(同法第30条),
2035 任意的訴
2036 訟担当として許されるとの主張のほか,
2037 環境利益をめぐる提訴前に重要な解決行動を行った紛
2038 争管理権者として当事者適格を有する(紛争管理権説)との主張や,
2039 訴訟提起前の紛争解決過
2040 程への関与等を任意的訴訟担当の要件として再構築するという主張も挙げられよう。
2041
2042
2043 次に実体権として撤去請求を根拠付けるものとしては,
2044 人格権,
2045 環境権の主張が予想される。
2046
2047
2048 いずれの場合でも,
2049 本問の原告が団体であることを考慮した主張を検討することが必要である。
2050
2051
2052 これらに対する乙の反論としては,
2053 権利能力なき社団に該当しないとの反論,
2054 選定当事者,
2055
2056 任意的訴訟担当が認められる要件を満たさないとの反論のほか,
2057 紛争管理権説に対しては,
2058
2059 高裁で否定されている(最判昭和60年12月20日裁判集民事146号336頁・豊前火力
2060 発電所事件)との反論が考えられる。
2061
2062
2063 また,
2064 環境権に対しては,
2065 環境権そのものが認められないことのほか,
2066 団体としての環境権
2067 に対する反論が考えられる。
2068
2069
2070 [国際関係法(公法系)]
2071 〔第1問〕
2072 本問は,
2073 国際紛争が発生したときに,
2074 国際法上,
2075 紛争当事国や紛争の局外にある第三国がそ
2076 れに対していかなる対応をすることが可能かを問うている。
2077
2078
2079 設問(1)では,
2080 Y国がX国民に対して行った預金凍結措置がそれ自体だけからの判断だと
2081 国際法上許されないことを前提にして,
2082 それが対抗措置として正当化できるかどうか,
2083 具体的
2084 には「先行違法行為の存在」等の実体要件や「義務履行要請」等の手続要件がいかなるもので,
2085
2086 上記Y国の措置がこれらの要件を満たすか否かを問うている。
2087
2088
2089 設問(2)は,
2090 Y国の武力行使が,
2091 XY両国が加入する地域機関のA連合平和安全保障理事
2092 会の決議によって許されるか否かを問うものである。
2093
2094 武力行使は一般的には禁止されているが,
2095
2096 自衛の要件を満たすものは例外であり,
2097 国連安全保障理事会の決定によるものも許されると通
2098 説的には解されている。
2099
2100 本問では,
2101 A連合平和安全保障理事会の決議が武力行使を正当化し得
2102 るかどうか,
2103 特に国連憲章第8章「地域的取極」との関係でどのように位置付けられるかが最
2104 大のポイントである。
2105
2106
2107 設問(3)は,
2108 XY国間の国際紛争に対して,
2109 国連が何をできるかを前提にして,
2110 紛争の局
2111 - 15 -
2112
2113 外にある国連加盟国が国連に対して何を要請できるかを問うものである。
2114
2115 国連では,
2116 武力行使
2117 が現実に起こった状況では,
2118 国連安全保障理事会が第一次的な責任を持ち,
2119 総会の責任が安全
2120 保障理事会の責任を補完するものにすぎないこと,
2121 また総会は加盟国に対して勧告を行うにと
2122 どまるが,
2123 国連安全保障理事会は国際紛争を解決するための勧告にとどまらず(国連憲章第6
2124 章),
2125 「平和に対する脅威」等を認定して強制措置を実施することができる。
2126
2127 これらの点を踏ま
2128 えて,
2129 解答を作成することが期待される。
2130
2131
2132 設問(4)では,
2133 そもそも国際司法裁判所が本件について管轄権を持ち得るか,
2134 国際司法裁
2135 判所の管轄権があればX国はY国に何を請求すればよいか,
2136 また本案判決前に「暫定措置(又
2137 は仮保全措置)」(国際司法裁判所規程第41条)を求めることはできるか,
2138 暫定措置の有用性
2139 はどうかを問うている。
2140
2141
2142 国際関係法(公法系)の場合も,
2143 法規の解釈と対象状況への当てはめ(適用)は,
2144 きちんと
2145 分けて考えることが期待される。
2146
2147
2148 〔第2問〕
2149 <日本の法曹が直面する事象としての現実性>
2150 本問の事例は,
2151 現在進行形で,
2152 日本が国際法上の対応が求められている問題を素材としてい
2153 る。
2154
2155 数年にわたり,
2156 鯨類資源の利用と保存という問題に係る国際法上の方針として,
2157 日本は調
2158 査捕鯨を実施している。
2159
2160 この調査捕鯨を実施する日本の船舶は,
2161 毎年,
2162 公海上で外国船舶及び
2163 その乗員から妨害行為を受けているが,
2164 これらの妨害行為に対して国際法上で日本がいかなる
2165 措置を採り得るかの判断は,
2166 日本にとって喫緊の課題である。
2167
2168 さらに,
2169 状況によっては,
2170 公海
2171 上で妨害行為を行う船舶の船長や実行行為者について,
2172 日本の国内裁判所でこれらの個人が訴
2173 えられる可能性もある。
2174
2175
2176 設問1 <管轄権の種類と国際法上の根拠>
2177 第一に,
2178 管轄権の国際法上の根拠を問うている。
2179
2180 管轄権の根拠は属地主義,
2181 属人主義及びそ
2182 れらの亜種,
2183 保護主義,
2184 普遍主義など,
2185 複数存在し,
2186 国際社会での承認の程度はそれぞれで相
2187 違している。
2188
2189 本問でA国の国内法が規定する管轄権の根拠は何か,
2190 その根拠が国際法上でどの
2191 程度承認されているかを説明した上で,
2192 同国内法規定が本問の事実に適用される態様(事例へ
2193 の当てはめ)を明らかにしなければならない。
2194
2195
2196 第二に,
2197 管轄権には,
2198 立法・執行・裁判という種類ないし機能がある。
2199
2200 本問の事例で,
2201 A国
2202 内水にB国を旗国とする船舶が任意で入港したという事実に着目して,
2203 同船舶の船長に対して
2204 A国の執行・裁判管轄権が行使されること,
2205 その前提としては,
2206 A国の国内法の適用が公海上
2207 の外国人による妨害行為に及んでいること,
2208 すなわち,
2209 立法管轄権が及んでいることを説明し
2210 なければならない。
2211
2212 立法管轄権の行使は,
2213 他の種類の管轄権に比較して,
2214 国際法による許容性
2215 が高いことや,
2216 ローチュス号事件が本問における事件と類似性を持つ先例として存在すること
2217 なども,
2218 関連する論点として考えることができる。
2219
2220
2221 設問2 <公海制度の基本原則とそれに照らした公海上の措置の法的評価>
2222 第一に,
2223 公海の基本原則である公海自由の原則,
2224 公海秩序維持のための旗国主義が問われて
2225 いる。
2226
2227 国連海洋法条約(新司法試験用法文搭載法令)の規定群を反復するだけでなく,
2228 公海自
2229 由の原則と旗国主義につき,
2230 その趣旨目的も含めて,
2231
2232 「簡にして要を得た」説明が求められる。
2233
2234
2235 第二に,
2236 本問の事例で,
2237 公海上で旗国以外の国が船舶に対して執行措置を採ることが許され
2238 るかを決定するに際しては,
2239 妨害行為の性質判断が前提となる。
2240
2241 海賊とみなすならば,
2242 関連規
2243 定群の解釈とともに,
2244 本問の事実に即して規定を適用(事例への当てはめ)して結論を導くこ
2245 とが求められる。
2246
2247 あるいは,
2248 海賊とはみなさずに,
2249 妨害行為を衝突とみなすことの適否を論じ
2250 たり,
2251 国連海洋法条約に規定する例外からは離れて,
2252 非旗国が公海上の船舶に対して執行措置
2253 を採ることを法的に正当化する可能性を導けないか,
2254 そのための根拠となる規定が国連海洋法
2255 - 16 -
2256
2257 条約にあるか(例えば,
2258 旗国の義務規定)などの検討を行うことも考えられる。
2259
2260
2261 [国際関係法(私法系)]
2262 〔第1問〕
2263 本問は,
2264 外国離婚判決の承認要件である国際裁判管轄の基準を問うと同時に,
2265 婚姻の実質的
2266 ・形式的成立要件に適用される準拠法いかんを問う問題である。
2267
2268 いずれの設問においても丁寧
2269 な当てはめの作業が示されなければならない。
2270
2271
2272 設問1は,
2273 離婚事件の国際裁判管轄(間接管轄)の基準を問うものである。
2274
2275 まず,
2276 間接管轄
2277 と直接管轄の関係に触れ,
2278 その上で,
2279 最高裁判所の判決(最判昭和39年3月25日民集18
2280 巻3号486頁及び最判平成8年6月24日民集50巻7号1451頁)を意識した基準の定
2281 立及び設問の事案への当てはめが求められている。
2282
2283
2284 設問2は,
2285 法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。
2286
2287 )第24条第1項の問題であ
2288 ることの認識及び配分的適用と呼ばれる準拠法の適用方法の理解を問うものである。
2289
2290 いわゆる
2291 一方的要件と双方的要件を抵触法又は実質法のいずれの平面の問題としてとらえるにせよ,
2292
2293 婚禁止期間(小問1)と重婚禁止(小問2)に関する要件の処理方法に言及することが求めら
2294 れている。
2295
2296 また,
2297 当事者の本国法による婚姻の実質的成立要件が共に充足されない場合の法律
2298 効果の処理についても検討しなければならない(小問2)。
2299
2300
2301 設問3は,
2302 婚姻の形式的成立要件に適用される準拠法及びいわゆる領事婚に関する民法第7
2303 41条の理解を問うものである。
2304
2305 @とAの方法を婚姻の方式の問題として性質決定することを
2306 前提として,
2307 @の方法は,
2308 通則法第24条第2項又は第3項により指定される甲国法による婚
2309 姻の形式的成立要件を満たすものであるが,
2310 Aの方法は,
2311 同条第3項に基づき指定される日本
2312 民法第741条の要件を欠くことが示されなければならない。
2313
2314
2315 〔第2問〕
2316 本問は,
2317 国際的な取引の事案を基に,
2318 関係する問題の準拠法の決定方法及び専属的裁判管
2319 轄合意をめぐる当事者の利益状況を問う問題である。
2320
2321 いずれの設問においても丁寧な当ては
2322 めの作業が示されなければならない。
2323
2324
2325 設問1は,
2326 法人の機関の代表権の準拠法を問う問題である。
2327
2328 法人の機関の代表権を法人のい
2329 わゆる従属法の問題として性質決定することを前提とし,
2330 設立準拠法主義と本拠地法主義のい
2331 ずれが従属法として採られるべきかという点を中心にした論述を求めるものである。
2332
2333
2334 設問2の小問1は,
2335 専属裁判管轄の合意が当事者のいかなる法的利益に影響するかを問うも
2336 のである。
2337
2338
2339 設問2の小問2は,
2340 当事者が契約準拠法を定めなかった場合おける準拠法決定のプロセスを
2341 問うものである。
2342
2343 通則法第7条の規定の適用がないことを確認した後に,
2344 いわゆる特徴的給付
2345 について言及しながら,
2346 同法第8条第1項の「最も密接に関係がある地の法」と同条第2項の
2347 「推定」の関係を説明することが求められている。
2348
2349
2350 設問3は,
2351 債権譲渡の債務者に対する効力の準拠法を問うものである。
2352
2353 通則法第23条の規
2354 定の立法の趣旨,
2355 特に譲渡債権の準拠法によらない場合の不都合等に言及しながら,
2356 債務者と
2357 の関係における債権譲渡の効力の問題として性質決定すべきことを論述し,
2358 当該規定を適用す
2359 ることが求められている。
2360
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