1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 1
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 1. P株式会社(以下「P社」という。)は,ホテル事業及びスポーツ施設の運営事業を主たる事業
8 目的とする会社法(平成17年法律第86号。以下同じ。)上の公開会社であり,スポーツ事業部
9 門にかかる資産の帳簿価額は,P社の総資産額の約40%を占めている。
10 Q株式会社(以下「Q社」という。)は,ショッピングセンターの運営事業及びスポーツ施設の
11 運営事業を主たる事業目的とする会社法上の公開会社である。Q社は,P社の議決権総数の40
12 %に当たるP社株式を保有し,Q社の代表権のない取締役AがP社の代表取締役を兼任している
13 が,A以外に両社の取締役を兼任する者はいない。
14 Q社はかねてP社のスポーツ事業部門の買収に関心を有しており,Q社の取締役会においては,
15 もしQ社がP社のスポーツ施設を所有することとなれば,Q社のスポーツ事業部門の業績向上に
16 有用であるという意見と,当該スポーツ施設をショッピングセンター用の大型店舗に転用すれば
17 大いに活用できるという意見とに分かれていたが,いずれにせよP社からのスポーツ事業部門の
18 譲受けを積極的に進めるべきことで意見は一致していた。なお,Q社は,株式買取請求権の行使
19 を懸念し,これが問題となる手続は利用しないこととした。
20 P社は業績が思わしくなく,特にスポーツ事業部門が不振であったため,P社の取締役会にお
21 いては,ホテル事業に傾注して業績の立て直しを図るべきであり,スポーツ事業部門をQ社に譲
22 渡することに賛成の意見が多数を占めた。ただし,スポーツ事業部門を譲渡することには取締役
23 の一部に強い反対があったため,Q社にスポーツ事業部門を譲渡するが,将来,P社の業績が回
24 復すればスポーツ施設の運営事業を再開することは妨げられないよう,Q社との間で約定をして
25 おくべきことで意見がまとまり,その点については,Q社からの一応の了解も得られた。
26 〔設問1〕
27
28 この段階で,P社法務部の担当者が弁護士であるあなたのところに,本件に関する会
29
30 社法上の手続の進め方について相談に来た。Q社がスポーツ施設の運営事業を承継する場合と,
31 当該スポーツ施設をショッピングセンターに転用する場合とに分けて,回答すべき内容を検討し
32 なさい。なお,後記2記載の事実は,ここでは考慮せずに解答すること。
33 2. その後,P社代表取締役Aが複数の専門家に鑑定をさせたところ,収益からみたスポーツ施設
34 の運営事業の事業価値は20億円を下らず,また,スポーツ施設の資産価値も30億円を下らな
35 いとの回答を得たが,Q社代表取締役Bは,帳簿価額により算定した10億円以下にするよう強
36 く求めた。
37 P社は,スポーツ施設の運営事業の今後の動向,当該事業再開の可能性,Q社との関係の継続
38 等も考慮した上で,契約内容の再検討を行った。その結果,P社代表取締役AとQ社代表取締役
39 Bとの間で,別紙の契約書による契約が締結され,当該契約は履行された。なお,当該契約の締
40 結については,P社の取締役会において承認され,さらに,P社の株主総会において特別決議に
41 より承認された。Q社の取締役会においても,当該契約の締結に先立ち,重要事実が開示され,
42 Aを議決から排除した上でその締結を承認する決議がされた。
43 〔設問2〕
44
45 上記の事実関係について,会社法上の問題点を検討しなさい。
46
47 2
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67 P株式会社(以下「甲」という。)とQ株式会社(以下「乙」という。)とは,甲の事業の譲渡につ
68 き,次のとおり契約を締結する。
69
70 第1条(事業譲渡)
71 (1)
72
73 甲は甲のスポーツ施設の運営事業部門(以下「本事業」という。)を乙に譲渡し,乙はこれを譲
74
75 り受ける。
76 (2)
77
78 本事業の譲渡により,本事業にかかわる甲の資産及び負債は,乙に譲渡される。
79
80 第2条(譲渡日)
81 譲渡日は,平成○年○月○日とする。ただし,法令上の制限,手続上の事由により必要あるとき
82 は,甲・乙協議の上,これを変更することができる。
83 第3条(譲渡価額)
84 本事業の譲渡の価額は,金10億円とする。
85 第4条(競業の禁止)
86 甲は,本事業の譲渡の後は,スポーツ施設の運営事業を行わない。
87 第5条(瑕疵担保責任)
88 譲渡資産に重大な瑕疵があった場合は,本契約の趣旨に従い,甲・乙協議の上,その解決に当た
89 る。
90 第6条(善管注意義務)
91 甲は,本契約締結後,引渡し完了に至るまで,善良なる管理者の注意をもって本事業及び譲渡資
92 産の管理運営を行い,本事業及び本契約に重大な影響を及ぼすような行為をする場合は,あらかじ
93 め乙と協議するものとする。
94 第7条(支払方法)
95 乙は,第3条の譲渡価額から甲の乙に対する債務額を控除した額を支払うものとする。また,譲
96 渡価額の支払方法は,甲・乙協議の上,別途定める。
97 第8条(従業員の取扱い)
98 本事業に従事している甲の従業員の雇用については,甲・乙協議の上,別途定める。
99 第9条(移転手続)
100 譲渡資産のうち登記,登録,その他移転のために必要とするものについて,甲・乙協力してその
101 手続を行う。
102 第10条(取引先等の継承)
103 乙は,甲の本事業に関する顧客及び仕入取引先を継承する。
104 第11条(費用負担)
105 譲渡資産に関する公租公課,保険料等の費用は,日割計算により,譲渡日までの分は甲の負担,
106 その後の分は乙の負担とする。
107 第12条(契約の変更又は解除)
108 本契約締結の日から譲渡期日に至る間において,天災地変その他の事由により甲の財産又は経営
109 状態に重要な変動が生じたときは,甲・乙協議の上,条件を変更し,又は本契約を解除することが
110 できる。
111 第13条(効力発生)
112
113 3
114
115 本契約は,本事業の譲渡に必要な法令の手続が終了したときに,その効力を生ずる。
116 第14条(管轄裁判所)
117 本契約に関する紛争については,○○地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。
118 以上の証として,本契約書を2通作成し,甲・乙各々その1通を保有する。
119
120 平成○年△月△日
121
122 (甲)P株式会社
123 代表取締役
124
125
126
127 (乙)Q株式会社
128 代表取締役
129
130 4
131
132
133
134 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
135
136 1
137
138 [民事系科目]
139 〔第2問〕(配点:200〔設問1から設問4までの配点の割合は,4:4.5:7:4.5〕)
140 次の文章を読んで,以下の1から4までの設問に答えよ。
141 T
142
143 民事裁判実務修習中の司法修習生K(以下「K修習生」という。)は,配属先の裁判所で,Xが
144 Yに対して提起した保証債務の履行を求める訴えの訴状等を検討して,以下の【メモ】を作成し
145 た。なお,X,Y,A,Bはいずれも株式会社である。後記は,その内容に関する担当裁判官J
146 (以下「J裁判官」という。)とK修習生の会話である。
147
148 【メモ】
149 1. Xは,平成16年9月13日,Aに対し,3600万円を次の約束で貸し付けた(以下,こ
150 の消費貸借契約に基づくXのAに対する貸金債権を「本件貸金債権」という。)。
151 弁 済 方 法 等
152
153 平成17年1月20日,同年5月20日,同年9月20日及び平成1
154 8年1月20日に各800万円並びに同年5月19日に400万円
155
156
157
158
159
160
161
162 9%
163
164 遅 延 損 害 金
165
166 年14%
167
168 期限の利益喪失
169
170 Aが前記弁済を1回でも怠ったときは,Aは当然に期限の利益を喪失
171 する。
172
173 2. Aは,平成15年10月6日,Bとの間で,AがBに対して3年間継続して機械部品を販売
174 する旨の契約(以下「本件基本契約」という。)を締結し,Yは,同日,Aとの間で,本件基本
175 契約に基づいてBがAから購入した機械部品の売買代金債務について,連帯保証する旨の契約
176 書を作成した。
177 3. XとAとは,平成16年9月13日,本件貸金債権を担保するために,本件基本契約に基づ
178 く将来の売買契約によって発生する代金債権をAからXに譲渡する旨合意し,その旨の債権譲
179 渡登記をした。上記債権譲渡の際,XがAに対して譲渡担保を実行する旨の通知をするまでは,
180 Aに代金の受領権がある旨をも合意した。
181 4. Aは,Bに対し,本件基本契約に基づいて,平成17年6月14日に代金500万円で,同
182 年7月15日に代金1200万円で,同年8月10日に代金1500万円で,同年9月5日に
183 代金400万円で,それぞれ機械部品を売った。
184 5. Aが,上記1の平成17年9月20日にするべき弁済を怠ったため,Xは,Aに対し,同年
185 10月8日,譲渡担保を実行する旨の通知をした。
186 6. Xは,Bに対し,同日,債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,
187 登記事項証明書を交付して通知をした上,上記4の売買代金の支払を求めたところ,Bは,こ
188 れに応じなかった。
189 7. 平成17年11月下旬,Xは,Yに対し,Bの売買代金債務についての保証債務の履行を求
190 めたが,Yは支払わなかった。
191 8. Xは,Yに対し,保証債務の履行を求めて本件訴訟に及んだ。
192 【J裁判官とK修習生の会話】
193 J裁判官: 訴訟物はXのYに対する保証債務履行請求権ですね。保証債務の履行請求をするため
194 の請求原因事実は,一般的には,(ア)主債務の発生原因事実,(イ)保証契約の締結とされ
195 ているので,本件では,(ア)AとBが売買契約を締結したことと,(イ)YとAとが保証契
196 約を締結したことになりますね。
197 AのYに対する保証債務履行請求権を,Xが取得して行使できることを基礎付けるた
198
199 2
200
201 めの請求原因事実が何かを検討してみましょう。
202 K修習生: 債権譲渡担保の法的構成をどのように考えるかによって違いそうです。
203 J裁判官: それでは,あなたの考える法的構成を前提として,本件事案の契約について請求原因
204 事実を考えましょう。
205 本件においてXA間で債権譲渡担保の契約を締結したとの事実はもちろん必要だとし
206 て,そのほかにも要件事実として必要か否かが問題となる事実が幾つかありますが,そ
207 のうち,例えば,
208 @
209
210 本件貸金債権の発生原因事実
211
212 A
213
214 債権譲渡登記をしたこと
215
216 B
217
218 譲渡担保を実行する旨の通知をしたこと
219
220 C
221
222 債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,登記事項証
223 明書を交付して通知をしたこと
224
225 が,それぞれXのYに対する本件請求の請求原因事実になるか否かについてはどう考え
226 ますか。
227 〔設問1〕
228
229 あなたがK修習生であるとして,あなたの考える本件債権譲渡担保の法的構成を簡潔
230
231 に説明した上,J裁判官が示した前記@からCまでの各事実がXのYに対する本件請求の請求原
232 因事実として必要か否かについて論じなさい。なお,解答に当たっては,後記U以下の事実は考
233 慮しないこと。
234 U1. 前記Tの訴訟において,Xが前記Tの【メモ】記載の事実を主張したのに対し,Yは,
235 (1)
236
237 Xが主張した前記Tの【メモ】記載の事実のうち,2,4及び7の事実は認め,その余の
238
239 事実は知らない
240 (2)
241
242 Aは,前記Tの【メモ】4記載の各売買代金債権をZに二重に譲渡し,Bは,Zに対して,
243
244 その債務を弁済した
245 と主張した。
246 これに対し,Xは,Yが主張する(2)の事実を否認した。
247 また,Xは,AからXへの債権譲渡に関する文書を証拠として提出した。Yは,AからZへ
248 の債権譲渡に関する文書及びBからZへの金銭支払を示すBの出金伝票を証拠として提出し,
249 A及びBの各担当社員の証人尋問の申出をした。
250 裁判所は,X及びYが提出した上記各文書を取り調べ,A及びBの各担当社員を証人として
251 尋問する旨の決定をして,争点整理が終了した。
252 その後実施されたA及びBの各担当社員に対する証人尋問において,両名は,AのBに対す
253 る債権がX及びZに二重に譲渡された旨を証言し,さらに,Bの担当社員は,BがZにその債
254 務を弁済した旨をも証言した。
255 2. 上記証人尋問終了後,Xは,Zに対し,BのZに対する弁済が有効にされたことを前提とす
256 る不当利得の返還を求める訴えを提起した。これに対し,Zは,BのZに対する弁済の事実を
257 否認し,Bから金銭の交付を受けたことはないと主張して争った。そこで,Xは,BのZに対
258 する弁済の事実について統一的な判断を得たいとして,裁判所に対し,Yに対する訴訟とZに
259 対する訴訟について,口頭弁論の併合を求めた。
260 3. K修習生は,XY間の訴訟及びXZ間の訴訟を担当するJ裁判官から,Xが提出した口頭弁
261 論の併合を求める書面を渡されて,以下のような会話をした。
262 J裁判官: Kさん,Xは,Yに対する訴訟とZに対する訴訟の口頭弁論を併合すれば,両方の
263 訴訟で,Bの弁済の事実について統一的な判断が得られるとしていますが,その理由
264 は分かりますか。
265
266 3
267
268 K修習生: 口頭弁論の併合により,事実上,訴訟進行も一様となり,共同訴訟人間でも,いわ
269 ゆる証拠共通の原則が認められているので,判断の統一をかなり期待することができ
270 るとされているからです。
271 J裁判官: そうですね。ところで,民事訴訟法第39条が定めている,いわゆる共同訴訟人独
272 立の原則は,どのような考え方を基礎にしているものか分かりますか。
273 良い機会なので,@共同訴訟人独立の原則と共同訴訟人間の証拠共通の原則が,そ
274 れぞれどのような考え方に基づくものか整理して報告してください。その上で,A仮
275 にXのYに対する訴訟とZに対する訴訟とを併合して審理したとして,共同訴訟人間
276 の証拠共通の原則が働くとの見解を採った場合に,どのような問題点があるか,また,
277 その問題点についてどのように考えるべきかを検討して報告してください。
278 〔設問2〕
279
280 あなたがK修習生であるとして,J裁判官の前記@Aの質問に対してどのような報告
281
282 をすべきかを述べなさい。なお,解答に当たっては,後記V以下の事実は考慮しないこと。
283 V
284
285 J裁判官は,前記UのXY間の訴訟とXZ間の訴訟の口頭弁論を併合し,証拠調べを終え,平
286 成18年5月12日,口頭弁論を終結した。弁論終結後のある日,K修習生は,J裁判官との間
287 で以下のような会話をした。
288 J裁判官: 先日,本件証拠調べの結果,認定し得る事実の内容をレポートにして提出してもらい
289 ましたが,なかなか頑張りましたね。一通り見せてもらい,適宜修正してみました。私
290 としては「認定事実の概要」のとおりの事実が認定できると考えています。
291 K修習生: 証拠から事実を認定するのもなかなか難しいですね。
292 J裁判官: そこで,次に,この事実が証拠上認められる事実であるとして,証明責任の所在は考
293 慮しないで,実体法的観点から検討してみてくれませんか。
294
295 【認定事実の概要】
296 1. Xはいわゆる総合商社である株式会社,Aは機械部品の製造販売を目的とする株式会社,Y
297 は大型機械の製造販売を行う株式会社,Bも同種の中型・小型機械の製造販売を行う株式会社
298 で,YはBの親会社である。もともとAとYとは,Aが製造販売する機械部品をYに販売する
299 という取引関係があった。
300 2. Aは,Yからの紹介を受け,Bとの間でもAが製造する機械部品を売買することになった。
301 しかし,AにとってBは初めての取引先であり,いまだ信用が不十分であったこともあり,親
302 会社であるYがBの売買代金債務を連帯保証することとされた。
303 そこで,Aは,平成15年10月6日,Bとの間で,継続的に機械部品を売買する契約を締
304 結した。契約期間は3年間とし,機械部品はBからの発注後1週間以内に納品し,代金は納品
305 の3か月後に支払うものとされた。AとBのそれぞれの代表取締役が同日に上記内容の基本契
306 約書に署名押印した。その際,上記基本契約に基づく売買契約によって生ずるBのAに対する
307 売買代金債務について,Yがこれを連帯保証するとの合意がされ,Yの代表取締役が上記基本
308 取引契約書の連帯保証人欄に署名押印した。
309 AとBとの間の機械部品の取引は,以後概ね一月に1回行われたが,取引額は300万円か
310 ら2000万円くらいまで様々であった。Aは,契約どおり,Bからの発注後1週間で注文さ
311 れた機械部品を納品し,Bも納品の3か月後には約定どおりAに代金を支払ってきた。
312 3. Xは,Aから運営資金の融通を依頼され,前記T【メモ】1記載のとおり,Aに対し,平成
313 16年9月13日,3600万円を,利息年9%,遅延損害金年14%とし,5回の分割返済
314 (1回目から4回目までは各800万円,5回目は400万円,1回目は平成17年1月20
315 日,2回目は同年5月20日,3回目は同年9月20日,4回目は平成18年1月20日,5
316
317 4
318
319 回目は同年5月19日,利息は各分割金の支払期日にそれまでの利息を支払うものとし,Aが
320 分割金の弁済を1回でも怠ったときは,当然に期限の利益を喪失するものとする。)の約定で,
321 貸し付けた。
322 そして,Aは,Xとの間で,前記T【メモ】3記載のとおり,平成16年9月13日,上記
323 借入金債務を担保するため,上記A・B間の機械部品の継続的売買契約の契約期間中これに基
324 づく売買契約によって将来生ずべきAのBに対する売買代金債権をXに譲渡する旨の契約を締
325 結し,A及びXはその旨の債権譲渡登記をした。なお,本件譲渡担保契約では,XがAに対し
326 て譲渡担保を実行する旨の通知をするまでは,Aに代金の受領権がある旨の合意がされた。
327 Aは,Xに対し,平成17年1月20日と同年5月20日にはそれぞれ元金800万円を支
328 払うとともに,それまでの利息も支払った。
329 4. Aは,上記2の契約に基づいて,さらに合計4回にわたって,Bに対し,機械部品を代金合
330 計3600万円で売った。前記T【メモ】4記載のとおり,第1回は平成17年6月14日に代
331 金500万円
332 (同月21日に機械部品引渡し),第2回は同年7月15日に代金1200万円
333 (同
334 月22日機械部品引渡し),第3回は同年8月10日に代金1500万円(同月17日機械部品
335 引渡し),第4回は同年9月5日に代金400万円(同月12日機械部品引渡し)であった。
336 5. Aは,平成17年に入ったころから業績が思わしくなくなっていたが,上記のとおり同年5
337 月20日にXに元利金を支払ったものの,そのころから資金繰りが苦しくなり,Bに対して機
338 械部品を売却するたびに,生じた代金債権をすべて金融業を営むZに売り,代金を得て事業資
339 金に充てざるを得なくなった。
340 すなわち,同年6月14日付売買契約に基づく代金債権500万円については,同年7月8
341 日代金450万円で,同年7月15日付売買契約に基づく代金債権1200万円については,
342 同年8月1日代金1000万円で,同年8月10日付売買契約に基づく代金債権1500万円
343 は,同月20日代金1200万円で,同年9月5日付売買契約に基づく代金債権400万円は,
344 同月12日に代金200万円で,それぞれZに売却した。そして,Aは,Bに到達した各内容
345 証明郵便(順に同年7月11日,同年8月3日,同年8月22日,同年9月14日到達)で各
346 債権譲渡の通知をした。
347 6. Bは,上記合計3600万円の売買代金債務のうち,第1回売買分500万円については,
348 平成17年9月21日,Zに弁済した。また,第4回売買分400万円については,AからZ
349 への債権譲渡の内容証明郵便の送付を受けた後,同年9月22日,Zから受けた電話に対し,
350 特に何も考えないで特に何の留保もせずその譲渡を承諾した。
351 7. Xは,Aが平成17年9月20日に支払うべき借入金の分割金800万円を支払わなかった
352 ことから,Aに対し,数回にわたりその支払を催告したものの,Aの担当者からもう少し待っ
353 てほしいとの言い訳しか得られなかったため,同年10月8日到達の書面で,Aに対し,譲渡
354 担保を実行する旨の通知をするとともに,併せて,同日,Bに対し,AのBに対する4回分の
355 売買代金債権すべてについて,債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことを債権
356 譲渡登記の登記事項証明書を交付して通知した(前記T【メモ】5及び6記載のとおり)。
357 8. ところで,第4回売買(代金400万円)については,BはAから目的物である機械部品す
358 べての引渡しを受けたものの,売買目的物に直ちに発見することができない瑕疵があり,しか
359 も,その瑕疵は,商品としての価値自体を失わせるような重大なものであった。Bは,第4回
360 の売買の商品の納入後1か月程経って,この瑕疵に気付き,平成17年10月19日,Aに対
361 して第4回の売買契約を解除するとの意思表示をした。
362 〔設問3〕
363
364 あなたがK修習生であるとして,@XA間の法律関係を検討し,AXは,Y及びZに
365
366 対し,それぞれどのような請求をすることができるかについて,それぞれ金額を明示して論じな
367 さい。なお,利息及び遅延損害金(遅延利息)の問題は省略してよい。
368
369 5
370
371 W
372
373 以下の問題を検討するに当たっては,前記U及びVの事実,並びに設問2及び設問3の各設問
374 に対するあなたの検討結果は一切考慮せず,XがYに対して前記Tの訴えを提起した時点にさか
375 のぼった上で,以下の記述を読み進めなさい。
376 1. Xは,Yに対して3600万円の保証債務の履行を求める訴えを提起した後,Bに対しても
377 売買代金合計3600万円の支払を求める訴えを提起した。なお,XB間の訴訟の口頭弁論は,
378 XY間の訴訟の口頭弁論とは併合されなかった。
379 2. Yは,上記保証債務履行請求訴訟の訴状及び呼出状の送達を受けたが,この件は主債務者で
380 あるBが適切に処理してくれるものと信じて,答弁書を提出せず,また,口頭弁論期日にも出
381 頭しなかった。その結果,この訴訟の口頭弁論は平成17年12月20日にY欠席のまま終結
382 し,平成18年1月10日,Y敗訴の判決書がYに送達され,2週間後にこの判決が確定した。
383 Yはその後,Xやその代理人からは何らの通知や連絡も受けていない。
384 3. 平成18年5月中旬,Yは,Bから連絡を受けて,上記1のXB間の売買代金請求訴訟の口
385 頭弁論が同年3月下旬に終結し,X敗訴の判決が同年5月10日に確定したことを知った。
386 4. XB間の訴訟の判決理由によれば,裁判所は,売買代金債権合計3600万円のうち,(1)
387 第1回分の500万円については,Bが平成17年9月21日に当該債権の二重譲受人である
388 Zに弁済したこと,(2)第4回分の400万円については,Bが同年10月19日に商品の瑕
389 疵を理由に売買契約を解除したこと,(3)第2回分の1200万円及び第3回分の1500万
390 円については,Bが平成18年2月10日に商品の瑕疵を理由にそれぞれ各売買契約を解除し
391 たことを根拠として,Xの請求をすべて棄却していた。
392 5. L弁護士は,Yから,XB間の訴訟でBが勝訴したことを理由に,Xからの強制執行を免れ
393 る方法はないかと相談を受けた。L弁護士の事務所で実務修習中の司法修習生M(以下「M修
394 習生」という。)は,この相談に立ち会った後,L弁護士と以下のような会話をした。
395 L弁護士: Mさん,さっき相談があった件で,Xからの強制執行を免れるためにはどのような
396 手続を採ればよいですかね。
397 M修習生: Xに対して請求異議の訴えを提起する方法が考えられます。ただ,本件では異議の
398 理由が立たないような気がします。
399 L弁護士: そんなに簡単にあきらめないで,いろいろな考え方があるのだから,本件で強制執
400 行を免れることができるとする結論を導くための理由として,どのような考え方を根
401 拠とする主張が有り得るかについて検討してみてください。
402 それから,請求異議訴訟でそのような主張をしたとき,Xはどのような考え方に基
403 づいて反論をしてくるかを予想し,これに対する再反論ができるかどうかを検討して
404 報告してください。
405
406 〔設問4〕
407
408 あなたがM修習生であるとして,L弁護士が指示した前記事項について,検討の結果
409
410 を述べなさい。ただし,XY間及びXB間の各判決の適否や妥当性については,検討の対象とし
411 ないこと。
412
413 6
414
415