1 論文式試験問題集[民事系科目第1問]
2
3 1
4
5 [民事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 1. P株式会社(以下「P社」という。
8
9 )は,
10 ホテル事業及びスポーツ施設の運営事業を主たる事業
11 目的とする会社法(平成17年法律第86号。
12
13 以下同じ。
14
15 )上の公開会社であり,
16 スポーツ事業部
17 門にかかる資産の帳簿価額は,
18 P社の総資産額の約40%を占めている。
19
20
21 Q株式会社(以下「Q社」という。
22
23 )は,
24 ショッピングセンターの運営事業及びスポーツ施設の
25 運営事業を主たる事業目的とする会社法上の公開会社である。
26
27 Q社は,
28 P社の議決権総数の40
29 %に当たるP社株式を保有し,
30 Q社の代表権のない取締役AがP社の代表取締役を兼任している
31 が,
32 A以外に両社の取締役を兼任する者はいない。
33
34
35 Q社はかねてP社のスポーツ事業部門の買収に関心を有しており,
36 Q社の取締役会においては,
37
38 もしQ社がP社のスポーツ施設を所有することとなれば,
39 Q社のスポーツ事業部門の業績向上に
40 有用であるという意見と,
41 当該スポーツ施設をショッピングセンター用の大型店舗に転用すれば
42 大いに活用できるという意見とに分かれていたが,
43 いずれにせよP社からのスポーツ事業部門の
44 譲受けを積極的に進めるべきことで意見は一致していた。
45
46 なお,
47 Q社は,
48 株式買取請求権の行使
49 を懸念し,
50 これが問題となる手続は利用しないこととした。
51
52
53 P社は業績が思わしくなく,
54 特にスポーツ事業部門が不振であったため,
55 P社の取締役会にお
56 いては,
57 ホテル事業に傾注して業績の立て直しを図るべきであり,
58 スポーツ事業部門をQ社に譲
59 渡することに賛成の意見が多数を占めた。
60
61 ただし,
62 スポーツ事業部門を譲渡することには取締役
63 の一部に強い反対があったため,
64 Q社にスポーツ事業部門を譲渡するが,
65 将来,
66 P社の業績が回
67 復すればスポーツ施設の運営事業を再開することは妨げられないよう,
68 Q社との間で約定をして
69 おくべきことで意見がまとまり,
70 その点については,
71 Q社からの一応の了解も得られた。
72
73
74 〔設問1〕
75
76 この段階で,
77 P社法務部の担当者が弁護士であるあなたのところに,
78 本件に関する会
79
80 社法上の手続の進め方について相談に来た。
81
82 Q社がスポーツ施設の運営事業を承継する場合と,
83
84 当該スポーツ施設をショッピングセンターに転用する場合とに分けて,
85 回答すべき内容を検討し
86 なさい。
87
88 なお,
89 後記2記載の事実は,
90 ここでは考慮せずに解答すること。
91
92
93 2. その後,
94 P社代表取締役Aが複数の専門家に鑑定をさせたところ,
95 収益からみたスポーツ施設
96 の運営事業の事業価値は20億円を下らず,
97 また,
98 スポーツ施設の資産価値も30億円を下らな
99 いとの回答を得たが,
100 Q社代表取締役Bは,
101 帳簿価額により算定した10億円以下にするよう強
102 く求めた。
103
104
105 P社は,
106 スポーツ施設の運営事業の今後の動向,
107 当該事業再開の可能性,
108 Q社との関係の継続
109 等も考慮した上で,
110 契約内容の再検討を行った。
111
112 その結果,
113 P社代表取締役AとQ社代表取締役
114 Bとの間で,
115 別紙の契約書による契約が締結され,
116 当該契約は履行された。
117
118 なお,
119 当該契約の締
120 結については,
121 P社の取締役会において承認され,
122 さらに,
123 P社の株主総会において特別決議に
124 より承認された。
125
126 Q社の取締役会においても,
127 当該契約の締結に先立ち,
128 重要事実が開示され,
129
130 Aを議決から排除した上でその締結を承認する決議がされた。
131
132
133 〔設問2〕
134
135 上記の事実関係について,
136 会社法上の問題点を検討しなさい。
137
138
139
140 2
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
151
152
153
154
155
156
157
158
159
160 P株式会社(以下「甲」という。
161
162 )とQ株式会社(以下「乙」という。
163
164 )とは,
165 甲の事業の譲渡につ
166 き,
167 次のとおり契約を締結する。
168
169
170
171 第1条(事業譲渡)
172 (1)
173
174 甲は甲のスポーツ施設の運営事業部門(以下「本事業」という。
175
176 )を乙に譲渡し,
177 乙はこれを譲
178
179 り受ける。
180
181
182 (2)
183
184 本事業の譲渡により,
185 本事業にかかわる甲の資産及び負債は,
186 乙に譲渡される。
187
188
189
190 第2条(譲渡日)
191 譲渡日は,
192 平成○年○月○日とする。
193
194 ただし,
195 法令上の制限,
196 手続上の事由により必要あるとき
197 は,
198 甲・乙協議の上,
199 これを変更することができる。
200
201
202 第3条(譲渡価額)
203 本事業の譲渡の価額は,
204 金10億円とする。
205
206
207 第4条(競業の禁止)
208 甲は,
209 本事業の譲渡の後は,
210 スポーツ施設の運営事業を行わない。
211
212
213 第5条(瑕疵担保責任)
214 譲渡資産に重大な瑕疵があった場合は,
215 本契約の趣旨に従い,
216 甲・乙協議の上,
217 その解決に当た
218 る。
219
220
221 第6条(善管注意義務)
222 甲は,
223 本契約締結後,
224 引渡し完了に至るまで,
225 善良なる管理者の注意をもって本事業及び譲渡資
226 産の管理運営を行い,
227 本事業及び本契約に重大な影響を及ぼすような行為をする場合は,
228 あらかじ
229 め乙と協議するものとする。
230
231
232 第7条(支払方法)
233 乙は,
234 第3条の譲渡価額から甲の乙に対する債務額を控除した額を支払うものとする。
235
236 また,
237
238 渡価額の支払方法は,
239 甲・乙協議の上,
240 別途定める。
241
242
243 第8条(従業員の取扱い)
244 本事業に従事している甲の従業員の雇用については,
245 甲・乙協議の上,
246 別途定める。
247
248
249 第9条(移転手続)
250 譲渡資産のうち登記,
251 登録,
252 その他移転のために必要とするものについて,
253 甲・乙協力してその
254 手続を行う。
255
256
257 第10条(取引先等の継承)
258 乙は,
259 甲の本事業に関する顧客及び仕入取引先を継承する。
260
261
262 第11条(費用負担)
263 譲渡資産に関する公租公課,
264 保険料等の費用は,
265 日割計算により,
266 譲渡日までの分は甲の負担,
267
268 その後の分は乙の負担とする。
269
270
271 第12条(契約の変更又は解除)
272 本契約締結の日から譲渡期日に至る間において,
273 天災地変その他の事由により甲の財産又は経営
274 状態に重要な変動が生じたときは,
275 甲・乙協議の上,
276 条件を変更し,
277 又は本契約を解除することが
278 できる。
279
280
281 第13条(効力発生)
282
283 3
284
285 本契約は,
286 本事業の譲渡に必要な法令の手続が終了したときに,
287 その効力を生ずる。
288
289
290 第14条(管轄裁判所)
291 本契約に関する紛争については,
292 ○○地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。
293
294
295 以上の証として,
296 本契約書を2通作成し,
297 甲・乙各々その1通を保有する。
298
299
300
301 平成○年△月△日
302
303 (甲)P株式会社
304 代表取締役
305
306
307
308 (乙)Q株式会社
309 代表取締役
310
311 4
312
313
314
315 論文式試験問題集[民事系科目第2問]
316
317 1
318
319 [民事系科目]
320 〔第2問〕(配点:200〔設問1から設問4までの配点の割合は,
321 4:4.5:7:4.5〕)
322 次の文章を読んで,
323 以下の1から4までの設問に答えよ。
324
325
326 T
327
328 民事裁判実務修習中の司法修習生K(以下「K修習生」という。
329
330 )は,
331 配属先の裁判所で,
332 Xが
333 Yに対して提起した保証債務の履行を求める訴えの訴状等を検討して,
334 以下の【メモ】を作成し
335 た。
336
337 なお,
338 X,
339 Y,
340 A,
341 Bはいずれも株式会社である。
342
343 後記は,
344 その内容に関する担当裁判官J
345 (以下「J裁判官」という。
346
347 )とK修習生の会話である。
348
349
350
351 【メモ】
352 1. Xは,
353 平成16年9月13日,
354 Aに対し,
355 3600万円を次の約束で貸し付けた(以下,
356
357 の消費貸借契約に基づくXのAに対する貸金債権を「本件貸金債権」という。
358
359 )。
360
361
362 弁 済 方 法 等
363
364 平成17年1月20日,
365 同年5月20日,
366 同年9月20日及び平成1
367 8年1月20日に各800万円並びに同年5月19日に400万円
368
369
370
371
372
373
374
375 9%
376
377 遅 延 損 害 金
378
379 年14%
380
381 期限の利益喪失
382
383 Aが前記弁済を1回でも怠ったときは,
384 Aは当然に期限の利益を喪失
385 する。
386
387
388
389 2. Aは,
390 平成15年10月6日,
391 Bとの間で,
392 AがBに対して3年間継続して機械部品を販売
393 する旨の契約(以下「本件基本契約」という。
394
395 )を締結し,
396 Yは,
397 同日,
398 Aとの間で,
399 本件基本
400 契約に基づいてBがAから購入した機械部品の売買代金債務について,
401 連帯保証する旨の契約
402 書を作成した。
403
404
405 3. XとAとは,
406 平成16年9月13日,
407 本件貸金債権を担保するために,
408 本件基本契約に基づ
409 く将来の売買契約によって発生する代金債権をAからXに譲渡する旨合意し,
410 その旨の債権譲
411 渡登記をした。
412
413 上記債権譲渡の際,
414 XがAに対して譲渡担保を実行する旨の通知をするまでは,
415
416 Aに代金の受領権がある旨をも合意した。
417
418
419 4. Aは,
420 Bに対し,
421 本件基本契約に基づいて,
422 平成17年6月14日に代金500万円で,
423
424 年7月15日に代金1200万円で,
425 同年8月10日に代金1500万円で,
426 同年9月5日に
427 代金400万円で,
428 それぞれ機械部品を売った。
429
430
431 5. Aが,
432 上記1の平成17年9月20日にするべき弁済を怠ったため,
433 Xは,
434 Aに対し,
435 同年
436 10月8日,
437 譲渡担保を実行する旨の通知をした。
438
439
440 6. Xは,
441 Bに対し,
442 同日,
443 債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,
444
445 登記事項証明書を交付して通知をした上,
446 上記4の売買代金の支払を求めたところ,
447 Bは,
448
449 れに応じなかった。
450
451
452 7. 平成17年11月下旬,
453 Xは,
454 Yに対し,
455 Bの売買代金債務についての保証債務の履行を求
456 めたが,
457 Yは支払わなかった。
458
459
460 8. Xは,
461 Yに対し,
462 保証債務の履行を求めて本件訴訟に及んだ。
463
464
465 【J裁判官とK修習生の会話】
466 J裁判官: 訴訟物はXのYに対する保証債務履行請求権ですね。
467
468 保証債務の履行請求をするため
469 の請求原因事実は,
470 一般的には,
471 (ア)主債務の発生原因事実,
472 (イ)保証契約の締結とされ
473 ているので,
474 本件では,
475 (ア)AとBが売買契約を締結したことと,
476 (イ)YとAとが保証契
477 約を締結したことになりますね。
478
479
480 AのYに対する保証債務履行請求権を,
481 Xが取得して行使できることを基礎付けるた
482
483 2
484
485 めの請求原因事実が何かを検討してみましょう。
486
487
488 K修習生: 債権譲渡担保の法的構成をどのように考えるかによって違いそうです。
489
490
491 J裁判官: それでは,
492 あなたの考える法的構成を前提として,
493 本件事案の契約について請求原因
494 事実を考えましょう。
495
496
497 本件においてXA間で債権譲渡担保の契約を締結したとの事実はもちろん必要だとし
498 て,
499 そのほかにも要件事実として必要か否かが問題となる事実が幾つかありますが,
500
501 のうち,
502 例えば,
503
504 @
505
506 本件貸金債権の発生原因事実
507
508 A
509
510 債権譲渡登記をしたこと
511
512 B
513
514 譲渡担保を実行する旨の通知をしたこと
515
516 C
517
518 債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,
519 登記事項証
520 明書を交付して通知をしたこと
521
522 が,
523 それぞれXのYに対する本件請求の請求原因事実になるか否かについてはどう考え
524 ますか。
525
526
527 〔設問1〕
528
529 あなたがK修習生であるとして,
530 あなたの考える本件債権譲渡担保の法的構成を簡潔
531
532 に説明した上,
533 J裁判官が示した前記@からCまでの各事実がXのYに対する本件請求の請求原
534 因事実として必要か否かについて論じなさい。
535
536 なお,
537 解答に当たっては,
538 後記U以下の事実は考
539 慮しないこと。
540
541
542 U1. 前記Tの訴訟において,
543 Xが前記Tの【メモ】記載の事実を主張したのに対し,
544 Yは,
545
546 (1)
547
548 Xが主張した前記Tの【メモ】記載の事実のうち,
549 2,
550 4及び7の事実は認め,
551 その余の
552
553 事実は知らない
554 (2)
555
556 Aは,
557 前記Tの【メモ】4記載の各売買代金債権をZに二重に譲渡し,
558 Bは,
559 Zに対して,
560
561
562 その債務を弁済した
563 と主張した。
564
565
566 これに対し,
567 Xは,
568 Yが主張する(2)の事実を否認した。
569
570
571 また,
572 Xは,
573 AからXへの債権譲渡に関する文書を証拠として提出した。
574
575 Yは,
576 AからZへ
577 の債権譲渡に関する文書及びBからZへの金銭支払を示すBの出金伝票を証拠として提出し,
578
579 A及びBの各担当社員の証人尋問の申出をした。
580
581
582 裁判所は,
583 X及びYが提出した上記各文書を取り調べ,
584 A及びBの各担当社員を証人として
585 尋問する旨の決定をして,
586 争点整理が終了した。
587
588
589 その後実施されたA及びBの各担当社員に対する証人尋問において,
590 両名は,
591 AのBに対す
592 る債権がX及びZに二重に譲渡された旨を証言し,
593 さらに,
594 Bの担当社員は,
595 BがZにその債
596 務を弁済した旨をも証言した。
597
598
599 2. 上記証人尋問終了後,
600 Xは,
601 Zに対し,
602 BのZに対する弁済が有効にされたことを前提とす
603 る不当利得の返還を求める訴えを提起した。
604
605 これに対し,
606 Zは,
607 BのZに対する弁済の事実を
608 否認し,
609 Bから金銭の交付を受けたことはないと主張して争った。
610
611 そこで,
612 Xは,
613 BのZに対
614 する弁済の事実について統一的な判断を得たいとして,
615 裁判所に対し,
616 Yに対する訴訟とZに
617 対する訴訟について,
618 口頭弁論の併合を求めた。
619
620
621 3. K修習生は,
622 XY間の訴訟及びXZ間の訴訟を担当するJ裁判官から,
623 Xが提出した口頭弁
624 論の併合を求める書面を渡されて,
625 以下のような会話をした。
626
627
628 J裁判官: Kさん,
629 Xは,
630 Yに対する訴訟とZに対する訴訟の口頭弁論を併合すれば,
631 両方の
632 訴訟で,
633 Bの弁済の事実について統一的な判断が得られるとしていますが,
634 その理由
635 は分かりますか。
636
637
638
639 3
640
641 K修習生: 口頭弁論の併合により,
642 事実上,
643 訴訟進行も一様となり,
644 共同訴訟人間でも,
645 いわ
646 ゆる証拠共通の原則が認められているので,
647 判断の統一をかなり期待することができ
648 るとされているからです。
649
650
651 J裁判官: そうですね。
652
653 ところで,
654 民事訴訟法第39条が定めている,
655 いわゆる共同訴訟人独
656 立の原則は,
657 どのような考え方を基礎にしているものか分かりますか。
658
659
660 良い機会なので,
661 @共同訴訟人独立の原則と共同訴訟人間の証拠共通の原則が,
662
663 れぞれどのような考え方に基づくものか整理して報告してください。
664
665 その上で,
666 A仮
667 にXのYに対する訴訟とZに対する訴訟とを併合して審理したとして,
668 共同訴訟人間
669 の証拠共通の原則が働くとの見解を採った場合に,
670 どのような問題点があるか,
671 また,
672
673 その問題点についてどのように考えるべきかを検討して報告してください。
674
675
676 〔設問2〕
677
678 あなたがK修習生であるとして,
679 J裁判官の前記@Aの質問に対してどのような報告
680
681 をすべきかを述べなさい。
682
683 なお,
684 解答に当たっては,
685 後記V以下の事実は考慮しないこと。
686
687
688 V
689
690 J裁判官は,
691 前記UのXY間の訴訟とXZ間の訴訟の口頭弁論を併合し,
692 証拠調べを終え,
693
694 成18年5月12日,
695 口頭弁論を終結した。
696
697 弁論終結後のある日,
698 K修習生は,
699 J裁判官との間
700 で以下のような会話をした。
701
702
703 J裁判官: 先日,
704 本件証拠調べの結果,
705 認定し得る事実の内容をレポートにして提出してもらい
706 ましたが,
707 なかなか頑張りましたね。
708
709 一通り見せてもらい,
710 適宜修正してみました。
711
712
713 としては「認定事実の概要」のとおりの事実が認定できると考えています。
714
715
716 K修習生: 証拠から事実を認定するのもなかなか難しいですね。
717
718
719 J裁判官: そこで,
720 次に,
721 この事実が証拠上認められる事実であるとして,
722 証明責任の所在は考
723 慮しないで,
724 実体法的観点から検討してみてくれませんか。
725
726
727
728 【認定事実の概要】
729 1. Xはいわゆる総合商社である株式会社,
730 Aは機械部品の製造販売を目的とする株式会社,
731
732 は大型機械の製造販売を行う株式会社,
733 Bも同種の中型・小型機械の製造販売を行う株式会社
734 で,
735 YはBの親会社である。
736
737 もともとAとYとは,
738 Aが製造販売する機械部品をYに販売する
739 という取引関係があった。
740
741
742 2. Aは,
743 Yからの紹介を受け,
744 Bとの間でもAが製造する機械部品を売買することになった。
745
746
747 しかし,
748 AにとってBは初めての取引先であり,
749 いまだ信用が不十分であったこともあり,
750
751 会社であるYがBの売買代金債務を連帯保証することとされた。
752
753
754 そこで,
755 Aは,
756 平成15年10月6日,
757 Bとの間で,
758 継続的に機械部品を売買する契約を締
759 結した。
760
761 契約期間は3年間とし,
762 機械部品はBからの発注後1週間以内に納品し,
763 代金は納品
764 の3か月後に支払うものとされた。
765
766 AとBのそれぞれの代表取締役が同日に上記内容の基本契
767 約書に署名押印した。
768
769 その際,
770 上記基本契約に基づく売買契約によって生ずるBのAに対する
771 売買代金債務について,
772 Yがこれを連帯保証するとの合意がされ,
773 Yの代表取締役が上記基本
774 取引契約書の連帯保証人欄に署名押印した。
775
776
777 AとBとの間の機械部品の取引は,
778 以後概ね一月に1回行われたが,
779 取引額は300万円か
780 ら2000万円くらいまで様々であった。
781
782 Aは,
783 契約どおり,
784 Bからの発注後1週間で注文さ
785 れた機械部品を納品し,
786 Bも納品の3か月後には約定どおりAに代金を支払ってきた。
787
788
789 3. Xは,
790 Aから運営資金の融通を依頼され,
791 前記T【メモ】1記載のとおり,
792 Aに対し,
793 平成
794 16年9月13日,
795 3600万円を,
796 利息年9%,
797 遅延損害金年14%とし,
798 5回の分割返済
799 (1回目から4回目までは各800万円,
800 5回目は400万円,
801 1回目は平成17年1月20
802 日,
803 2回目は同年5月20日,
804 3回目は同年9月20日,
805 4回目は平成18年1月20日,
806
807
808 4
809
810 回目は同年5月19日,
811 利息は各分割金の支払期日にそれまでの利息を支払うものとし,
812 Aが
813 分割金の弁済を1回でも怠ったときは,
814 当然に期限の利益を喪失するものとする。
815
816 )の約定で,
817
818 貸し付けた。
819
820
821 そして,
822 Aは,
823 Xとの間で,
824 前記T【メモ】3記載のとおり,
825 平成16年9月13日,
826 上記
827 借入金債務を担保するため,
828 上記A・B間の機械部品の継続的売買契約の契約期間中これに基
829 づく売買契約によって将来生ずべきAのBに対する売買代金債権をXに譲渡する旨の契約を締
830 結し,
831 A及びXはその旨の債権譲渡登記をした。
832
833 なお,
834 本件譲渡担保契約では,
835 XがAに対し
836 て譲渡担保を実行する旨の通知をするまでは,
837 Aに代金の受領権がある旨の合意がされた。
838
839
840 Aは,
841 Xに対し,
842 平成17年1月20日と同年5月20日にはそれぞれ元金800万円を支
843 払うとともに,
844 それまでの利息も支払った。
845
846
847 4. Aは,
848 上記2の契約に基づいて,
849 さらに合計4回にわたって,
850 Bに対し,
851 機械部品を代金合
852 計3600万円で売った。
853
854 前記T【メモ】4記載のとおり,第1回は平成17年6月14日に代
855 金500万円
856 (同月21日に機械部品引渡し),
857 第2回は同年7月15日に代金1200万円
858 (同
859 月22日機械部品引渡し),
860 第3回は同年8月10日に代金1500万円(同月17日機械部品
861 引渡し),
862 第4回は同年9月5日に代金400万円(同月12日機械部品引渡し)であった。
863
864
865 5. Aは,
866 平成17年に入ったころから業績が思わしくなくなっていたが,
867 上記のとおり同年5
868 月20日にXに元利金を支払ったものの,
869 そのころから資金繰りが苦しくなり,
870 Bに対して機
871 械部品を売却するたびに,
872 生じた代金債権をすべて金融業を営むZに売り,
873 代金を得て事業資
874 金に充てざるを得なくなった。
875
876
877 すなわち,
878 同年6月14日付売買契約に基づく代金債権500万円については,
879 同年7月8
880 日代金450万円で,
881 同年7月15日付売買契約に基づく代金債権1200万円については,
882
883 同年8月1日代金1000万円で,
884 同年8月10日付売買契約に基づく代金債権1500万円
885 は,
886 同月20日代金1200万円で,
887 同年9月5日付売買契約に基づく代金債権400万円は,
888
889 同月12日に代金200万円で,
890 それぞれZに売却した。
891
892 そして,
893 Aは,
894 Bに到達した各内容
895 証明郵便(順に同年7月11日,
896 同年8月3日,
897 同年8月22日,
898 同年9月14日到達)で各
899 債権譲渡の通知をした。
900
901
902 6. Bは,
903 上記合計3600万円の売買代金債務のうち,
904 第1回売買分500万円については,
905
906 平成17年9月21日,
907 Zに弁済した。
908
909 また,
910 第4回売買分400万円については,
911 AからZ
912 への債権譲渡の内容証明郵便の送付を受けた後,
913 同年9月22日,
914 Zから受けた電話に対し,
915
916 特に何も考えないで特に何の留保もせずその譲渡を承諾した。
917
918
919 7. Xは,
920 Aが平成17年9月20日に支払うべき借入金の分割金800万円を支払わなかった
921 ことから,
922 Aに対し,
923 数回にわたりその支払を催告したものの,
924 Aの担当者からもう少し待っ
925 てほしいとの言い訳しか得られなかったため,
926 同年10月8日到達の書面で,
927 Aに対し,
928 譲渡
929 担保を実行する旨の通知をするとともに,
930 併せて,
931 同日,
932 Bに対し,
933 AのBに対する4回分の
934 売買代金債権すべてについて,
935 債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことを債権
936 譲渡登記の登記事項証明書を交付して通知した(前記T【メモ】5及び6記載のとおり)。
937
938
939 8. ところで,
940 第4回売買(代金400万円)については,
941 BはAから目的物である機械部品す
942 べての引渡しを受けたものの,
943 売買目的物に直ちに発見することができない瑕疵があり,
944 しか
945 も,
946 その瑕疵は,
947 商品としての価値自体を失わせるような重大なものであった。
948
949 Bは,
950 第4回
951 の売買の商品の納入後1か月程経って,
952 この瑕疵に気付き,
953 平成17年10月19日,
954 Aに対
955 して第4回の売買契約を解除するとの意思表示をした。
956
957
958 〔設問3〕
959
960 あなたがK修習生であるとして,
961 @XA間の法律関係を検討し,
962 AXは,
963 Y及びZに
964
965 対し,
966 それぞれどのような請求をすることができるかについて,
967 それぞれ金額を明示して論じな
968 さい。
969
970 なお,
971 利息及び遅延損害金(遅延利息)の問題は省略してよい。
972
973
974
975 5
976
977 W
978
979 以下の問題を検討するに当たっては,
980 前記U及びVの事実,
981 並びに設問2及び設問3の各設問
982 に対するあなたの検討結果は一切考慮せず,
983 XがYに対して前記Tの訴えを提起した時点にさか
984 のぼった上で,
985 以下の記述を読み進めなさい。
986
987
988 1. Xは,
989 Yに対して3600万円の保証債務の履行を求める訴えを提起した後,
990 Bに対しても
991 売買代金合計3600万円の支払を求める訴えを提起した。
992
993 なお,
994 XB間の訴訟の口頭弁論は,
995
996 XY間の訴訟の口頭弁論とは併合されなかった。
997
998
999 2. Yは,
1000 上記保証債務履行請求訴訟の訴状及び呼出状の送達を受けたが,
1001 この件は主債務者で
1002 あるBが適切に処理してくれるものと信じて,
1003 答弁書を提出せず,
1004 また,
1005 口頭弁論期日にも出
1006 頭しなかった。
1007
1008 その結果,
1009 この訴訟の口頭弁論は平成17年12月20日にY欠席のまま終結
1010 し,
1011 平成18年1月10日,
1012 Y敗訴の判決書がYに送達され,
1013 2週間後にこの判決が確定した。
1014
1015
1016 Yはその後,
1017 Xやその代理人からは何らの通知や連絡も受けていない。
1018
1019
1020 3. 平成18年5月中旬,
1021 Yは,
1022 Bから連絡を受けて,
1023 上記1のXB間の売買代金請求訴訟の口
1024 頭弁論が同年3月下旬に終結し,
1025 X敗訴の判決が同年5月10日に確定したことを知った。
1026
1027
1028 4. XB間の訴訟の判決理由によれば,
1029 裁判所は,
1030 売買代金債権合計3600万円のうち,
1031 (1)
1032 第1回分の500万円については,
1033 Bが平成17年9月21日に当該債権の二重譲受人である
1034 Zに弁済したこと,
1035 (2)第4回分の400万円については,
1036 Bが同年10月19日に商品の瑕
1037 疵を理由に売買契約を解除したこと,
1038 (3)第2回分の1200万円及び第3回分の1500万
1039 円については,
1040 Bが平成18年2月10日に商品の瑕疵を理由にそれぞれ各売買契約を解除し
1041 たことを根拠として,
1042 Xの請求をすべて棄却していた。
1043
1044
1045 5. L弁護士は,
1046 Yから,
1047 XB間の訴訟でBが勝訴したことを理由に,
1048 Xからの強制執行を免れ
1049 る方法はないかと相談を受けた。
1050
1051 L弁護士の事務所で実務修習中の司法修習生M(以下「M修
1052 習生」という。
1053
1054 )は,
1055 この相談に立ち会った後,
1056 L弁護士と以下のような会話をした。
1057
1058
1059 L弁護士: Mさん,
1060 さっき相談があった件で,
1061 Xからの強制執行を免れるためにはどのような
1062 手続を採ればよいですかね。
1063
1064
1065 M修習生: Xに対して請求異議の訴えを提起する方法が考えられます。
1066
1067 ただ,
1068 本件では異議の
1069 理由が立たないような気がします。
1070
1071
1072 L弁護士: そんなに簡単にあきらめないで,
1073 いろいろな考え方があるのだから,
1074 本件で強制執
1075 行を免れることができるとする結論を導くための理由として,
1076 どのような考え方を根
1077 拠とする主張が有り得るかについて検討してみてください。
1078
1079
1080 それから,
1081 請求異議訴訟でそのような主張をしたとき,
1082 Xはどのような考え方に基
1083 づいて反論をしてくるかを予想し,
1084 これに対する再反論ができるかどうかを検討して
1085 報告してください。
1086
1087
1088
1089 〔設問4〕
1090
1091 あなたがM修習生であるとして,
1092 L弁護士が指示した前記事項について,
1093 検討の結果
1094
1095 を述べなさい。
1096
1097 ただし,
1098 XY間及びXB間の各判決の適否や妥当性については,
1099 検討の対象とし
1100 ないこと。
1101
1102
1103
1104 6
1105
1106