1 論文式試験問題集[倒
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15 〔第1問〕(配点:50)
16 甲建物を所有するA社から同建物を賃借しているBが,次のような事情の説明及び質問をしてき
17 たとする。Bの説明の中の事実関係はすべて証拠によって証明できるものと仮定して,Bの1から
18 4までの質問にどのように回答すべきか検討しなさい。
19 なお,回答に際しては,仮にA社について破産手続が開始された場合,A社にはある程度の財産
20 があることから異時廃止になる見込みはなく,破産手続は7,8か月くらいで最後配当を経て終結
21 するであろうことを前提としなさい。
22 【Bによる事情の説明】
23 私は,甲建物の2階全部を所有者であるA社から賃借していて,現在事務所として使っていま
24 す。賃貸借期間は3年,賃料は毎月50万円で,敷金として300万円(賃料6か月分)を差し
25 入れています。
26 賃貸借の開始からもうすぐ2年8か月が経過しますが,A社の債権者からの申立てに基づいて,
27 間もなくA社について破産手続開始の決定がされるようです。約定期間の満了まであと約4か月
28 ありますが,その残り4か月間は,私はまだ甲建物で仕事を続ける必要があります。ただ,賃料
29 がほぼ同額でもう少し広い賃貸物件が見つかったので,約定期間が満了したら賃貸借契約は更新
30 せずに,別の建物に事務所を移すつもりでいます。
31 私は,今まで賃料の支払を怠ったことはなく,A社が破産したとしても,A社の社長のCには
32 昔から世話になっていることから,取りあえず残り4か月分も約定どおりに支払うつもりでいま
33 す。なお,敷金については,今後万一賃料の不払等があれば格別,そうでなければ控除の対象と
34 なる損害金等は現時点ではない旨をCに確認済みです。
35 【Bの質問】
36 1. A社の破産管財人がA社の破産を理由として私に甲建物からの即時の退去を求めることはで
37 きますか。
38 2. A社の破産手続開始の決定後も私が賃料を支払い続けることを前提にして,後で敷金相当額
39 を幾らかでも回収する方法はないのでしょうか。
40 3. A社の破産手続において敷金返還請求権を行使しなければならないとして,その行使はどの
41 ようにすればよいのでしょうか。また,どのように支払を受けることができるのでしょうか。
42 4. Cによると,A社は再生手続開始の申立てをすることを検討中であるとのことです。仮にA
43 社について再生手続が開始されても,私は賃料を支払い続けるつもりですが,この場合,敷金
44 返還請求権をどのように行使することができるでしょうか。
45
46 2
47
48 〔第2問〕(配点:50)
49 次に掲げる事例について,以下の設問に答えなさい。
50 【事
51
52 例】
53 A社は,建設工事を業とする株式会社であったが,折からの不況で,資金繰りが悪化していた。
54
55 そこで,B信用金庫から1000万円の借入れをしようとしたところ,B信用金庫からは,A社
56 の代表者であるCと,さらにもう1人十分な資力を有している者の計2名の連帯保証と不動産担
57 保とがない限り,融資はできないと言われた。A社はいわゆる同族会社であり,その株式の70
58 %はCが保有しており,代表者であるCのほか,親族である2名の取締役がいるが,業務はCが
59 全面的に執り行っており,他の取締役には十分な資力がなかった。そこで,Cは,高校時代から
60 の友人であり,以前若干の資金援助をしたこともあるDに
61 「絶対に迷惑をかけることはないから。」
62 と懇願し,連帯保証人となるとともに,Dの所有する山林を担保に提供することに同意してもら
63 った。その結果,平成17年10月20日,B信用金庫は,C及びDを連帯保証人とし,D所有
64 の山林に抵当権の設定を受けて,A社に対し1000万円を貸し付けた。なお,C及びDは,連
65 帯保証や物上保証をするに際して保証料を受領していない。
66 しかし,その後,A社の主要な受注先である大手建設株式会社が同年11月15日,突然更生
67 手続開始の申立てをし,従来の下請関係を抜本的に見直す措置がとられたため,A社の売上高は
68 大幅に減少した。その結果,平成18年2月24日,A社は,ついに振り出した約束手形を決済
69 できず,当該手形が不渡りになってしまった。そして,3月3日,A社は,破産手続開始の申立
70 てをし,同月10日,開始決定がされた。また,A社の代表者であるCも,多額の連帯保証債務
71 を弁済できない状態になり,3月3日,自ら破産手続開始の申立てをし,同月10日,開始決定
72 がされた。Dは,このような状況の推移に驚いていたが,4月初めになって,B信用金庫の担当
73 者から連帯保証債務の即時の履行を強く請求された。ところが,D自身,自己の経営しているコ
74 ンビニエンス・ストアについて,近くに24時間営業のスーパーマーケットが出店したことなど
75 から急激にその売上げが落ち込んでいたところであり,そこにこのような連帯保証債務の履行の
76 請求がされれば事業の継続は困難になると判断して,4月14日,再生手続開始の申立てをし,
77 同月28日,開始決定がされた。
78 B信用金庫は,A社の破産手続において1000万円の貸付債権について届出をし,Cの破産
79 手続において1000万円の連帯保証債務に係る債権について届出をするとともに,D所有の山
80 林に対する抵当権を近く実行する旨をDに通知した。ところが,Cの破産手続における債権調査
81 では,Cの破産管財人Eは,上記連帯保証契約を否認する旨を主張して,B信用金庫の破産債権
82 を認めない旨の認否をしたので,B信用金庫は破産債権査定申立てをした。また,B信用金庫が
83 D所有の山林に対する抵当権を実行しようとしているので,Dの再生手続の監督委員Fは,否認
84 権を行使する権限の付与を受け,上記抵当権設定契約を否認する旨を主張して,抵当権不存在確
85 認の訴えを提起した。
86 〔設
87
88 問〕
89
90 1. あなたがFであるとして,B信用金庫に対する抵当権不存在確認訴訟において,否認権の行
91 使を基礎づけるため,どのような主張をすることが考えられるか。想定されるB信用金庫から
92 の反論も指摘しながら論じなさい。
93 2. あなたがB信用金庫の代理人であるとして,Cの破産手続における破産債権査定の手続にお
94 いて,Eの否認権の主張に反論するため,どのような主張をすることが考えられるか。CがA
95 社の代表者であるという点を考慮に入れて,想定されるEからの反論も指摘しながら論じなさ
96 い。
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116 〔第1問〕(配点:50)
117 A(個人)は,平成16年3月3日,Bから,土地・建物(以下「甲不動産」という。)を,代金
118 6億円で買い受けた。前記代金のうち,2億円は自己資金であったが,4億円は銀行からの借入金
119 であり,10年間の元利均等返済方式による分割弁済で,利息は年10%の約定で借り入れたもの
120 であった。
121 AがBから甲不動産を購入した当時,その建物には,Bの親族Cが居住しており,すぐに退去し
122 なかった。Aは,Cと交渉し,ようやく平成17年3月2日に無償で立ち退いてもらい,翌3日か
123 ら同建物に居住した。
124 その後,甲不動産の所在地一帯を,商業用地として再開発することを計画していた不動産業者D
125 が,Aに対し,甲不動産を7億円で買い取りたいという申出をしてきた。これに対して,Aは,甲
126 不動産と同等の土地・建物を取得できることと,譲渡所得税等の支払等のため3億円を支払っても
127 らえることを条件に,甲不動産を譲渡する意向を示した。
128 そこで,Dは,前記再開発のためにはどうしても甲不動産の土地が必要であったため,Aの提示
129 した条件に従うこととし,E所有の土地・建物(以下「乙不動産」という。)を探し出し,これをE
130 から代金6億5000万円で購入した。
131 その上で,DとAとは,平成18年3月3日,A所有の甲不動産を代金7億円でAからDに売却
132 する旨の売買契約書と,D所有の乙不動産を代金4億円でDからAに売却する旨の売買契約書をそ
133 れぞれ作成し,両不動産を相互に引き渡し,所有権移転登記を行い,DからAに双方の代金額の差
134 額3億円が支払われた。
135 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
136 〔設
137
138 問〕
139
140 1. A・D間で甲不動産を7億円で売却する売買契約に基づいて甲不動産が譲渡されたと考えた
141 場合,甲不動産の譲渡によるAの譲渡所得の算定において,法的に問題となる点を指摘して見
142 解を述べなさい。
143 2. 甲不動産の譲渡によるAの譲渡所得の算定において,D所有の乙不動産との交換契約である
144 として課税することはできるか。また,交換契約であることを前提として甲不動産の譲渡によ
145 るAの譲渡所得を算定する場合,設問1のように売買契約と考えた場合と異なる点を説明しな
146 さい。
147
148 6
149
150 〔第2問〕(配点:50)
151 Xは,昭和20年にT町に生まれ,今日までずっとT町で暮らしてきた。Xの父Mは,昭和25
152 年に医薬品等を製造する事業を始め,T町を事業の本拠地と定めた。Xは,昭和50年にこの事業
153 を継承し,漸次これを発展させ,今日のY株式会社を築いた。Xは,昭和60年にY社の筆頭株主
154 となり,それ以来Y社の代表取締役を務めている。
155 ところで,Y社の従業員はそのほとんどがT町に居住しており,新年には,T町所在の宗教法人
156 Uの祭殿に参けいすることを通例としていた。Uの祭殿は,平成10年ころから屋根や柱の傷みが
157 激しく,数度にわたる修繕も限界に達し,改築の必要に迫られていた。この話を聞いたXは,平成
158 17年1月にUの祭殿に参けいした折に,U法人の関係者に対し,
159 「この祭殿は,Y社の従業員一同
160 にとって,大切な祭殿だ。私も,子供のころ父に手を引かれ,よく参ったものだ。このように荒廃
161 しているのは見たことがない。改築してはどうか。明日会社へ来なさい。」と話した。そこで,翌日,
162 U法人の関係者がY社の事務所を訪ねたところ,Xは,「寄進するからUの祭殿を改築してはどう
163 か。」と申し出た。そこで,U法人の関係者は,この申出を受けることとし,祭殿改築委員会を組織
164 した。
165 Y社においては,平成17年3月開催の取締役会において,祭殿改築委員会への寄付に係る承認
166 決議がされ,これに基づいて,祭殿改築委員会に対し,平成17年4月に,5000万円が小切手
167 で支払われた(以下「本件5000万円」という。)。祭殿改築委員会は,この支払を受けるに当た
168 り,領収証のあて名欄にY社の名前を記載したが,その保存する帳簿書類には,寄付行為の主体を
169 Xと記していた。
170 Uの祭殿の改築に伴い,敷地内には「寄付者芳名碑」が建てられたが,その碑には「金5000
171 万円也
172
173 Y社代表取締役X」と刻まれた。また,Uの敷地内には,高さ2メートルの「顕彰の碑」
174
175 が建立されたが,その正面にはMとXのそれぞれの胸像の陶板がはめ込まれ,その下に「M氏,Y
176 グループ創始者」,「X氏,Yグループ会長」と刻まれた。
177 Y社は,平成17年1月1日から12月31日までの事業年度の法人税の申告に当たり,本件5
178 000万円の支出を寄附金として損金に算入して申告した。これに対し,所轄税務署長は,前記寄
179 付行為の主体はY社ではなくX個人であり,Xの支出すべき個人的費用をY社が負担したものであ
180 るから,Xへの役員賞与であると認定し,Y社に対し,この寄附金の損金算入を否定する法人税の
181 更正(以下「本件更正」という。)をするとともに,源泉所得税の納税告知(以下「本件納税告知」
182 という。)をした。
183 以上の事案において,Y社の代理人が,本件寄付行為の主体がY社であるとして本件更正及び本
184 件納税告知を争う場合,どのような主張が可能であるかを,予想される所轄税務署長の主張を念頭
185 に置いて,検討しなさい。
186 ただし,所轄税務署長は,同族会社等の行為又は計算の否認の規定に基づく主張はしないものと
187 する。
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207 〔第1問〕(配点:50)
208 化学製品の製造業者であるA社は,化学製品の甲製品において市場占拠率(シェア)50%を有
209 している。甲製品の製造業者には,A社のほか,シェア15%のB社,シェア10%のC社など数
210 社ある。甲製品の中で輸入品の占める割合は10%程度であり,輸送費が比較的高いため,当面,
211 輸入が大幅に増える見込みはない。国内製造に係る甲製品は,製造業者各社から20社の卸売業者
212 を通じて需要者に販売されている。A社は,これらの卸売業者のうち15社との間で,甲製品の継
213 続的販売に関する取引基本契約を締結し,この15社にのみ甲製品を販売している。なお,甲製品
214 の用途は限定されており,また,他の製品での代替は困難であるとされている。
215 ところで,A社は,適正な価格で販売されることが製品の安定的な供給につながるとの観点から,
216 取引先の卸売業者に,A社から卸売業者への販売価格(以下「仕切価格」という。)に8%を加えた
217 価格で需要者に販売させるとの営業方針を立てた。
218 (ア) A社は,上記営業方針に基づき,取引基本契約を締結している卸売業者15社に対し,仕切価
219 格に8%を加えた価格で需要者に販売してもらいたい旨の希望を表明した。これに対して,15
220 社のうち10社は,A社の営業方針に理解を示し,仕切価格に8%を加えた価格で需要者に販売
221 していたが,残りの5社(以下「5社」という。)は,A社の希望に応じず,仕切価格に4%を加
222 えた価格で甲製品を需要者に販売していた。A社は,5社に対しては,当面,様子を見ることと
223 した。
224 (イ)
225
226 その後,A社は,近い将来,甲製品の供給がやや過剰気味となるとの予測を得たこと等から,
227
228 取引先の卸売業者に対し,上記営業方針を徹底する必要性が高くなったと考え,当面様子を見る
229 こととしていた5社に対する対応を改め,5社に対し,再三,仕切価格に8%を加えた価格で需
230 要者に販売するよう強く求めた。しかし,5社はこれに応じなかったので,A社は,5社に対し,
231 下記の取引基本契約第6条第3号に基づき,同契約を解除して甲製品の供給をやめる旨通告し,
232 5社に対し甲製品の供給を停止した。
233
234 取引基本契約第6条
235 甲(A社)は,乙(卸売業者)に,以下の各号に該当する事実があるときは,本契約を解
236 除することができる。
237
238
239 乙が,本契約上の義務に違反したとき。
240
241
242
243 乙が,手形小切手の取引停止処分を受けたとき,破産,民事再生,会社更生の手続開始
244 の申立てをし又は申立てを受けたとき。
245
246
247
248 〔設
249
250 乙が,このほか,甲との信頼関係を著しく損なう行為を行ったとき。
251
252 問〕
253
254 1.(1)
255
256 上記(ア)に係るA社の行為には,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占
257 禁止法)上,どのような問題があるか。
258
259 (2)
260
261 上記(ア)に係る行為に加えて,上記(イ)の行為が行われた場合にはどうか。
262
263 2. A社から甲製品の供給の停止を受けた5社のうちの1社であるX社としては,どのような民
264 事裁判手続をとることができるか。請求の趣旨及び請求の原因となる事実についても述べるこ
265 と。
266
267 10
268
269 〔第2問〕(配点:50)
270 A県における生コンクリート(以下「生コン」という。)の製造業者は,大手事業者10社(以下
271 「10社」という。)と小規模事業者40社(以下「40社」という。)からなる。A県において販
272 売される生コンの総販売数量のうち,10社が占める割合は約60%,40社が占める割合は約4
273 0%であり,10社及び40社でほぼ100%を占めている。なお,生コンは,一般に,その性質
274 上長距離輸送が難しいので,県内で消費される生コンのほとんどは同一県内で製造されている。
275 A県生コンクリート事業者協議会(以下「生コン協議会」という。)は,A県に所在する生コンの
276 製造業者が,会員相互の親睦及び業界の健全な発展を目的として設立した社団法人であり,その会
277 員は10社及び40社である。生コン協議会には幹事会が置かれ,10社が幹事会の構成員である。
278 10社は,業界の当面する課題について意見交換を行ってきたが,生コンの販売価格の引上げ問
279 題及び廃業する会員の生産設備の買取り問題について,緊急に対処する必要がある旨の認識を共有
280 するに至った。販売価格の引上げ問題とは,最近,生コンの需要者である建設業者からの価格引下
281 げ圧力が強くなり,生コンの販売価格が下がり,経営が苦しくなった会員が増えていることに対処
282 するため,共同して価格を引き上げようとするものである。会員の生産設備の買取り問題とは,隣
283 接するB県で営業を行っている複数の生コン事業者が,後継者がいないことや経営破綻状態にある
284 ことなどから廃業しようとするA県の事業者の生産設備を買い取ってA県に参入しようとすること
285 に対処しようとするものである。すなわち,これらB県の生コン事業者は,B県において低価格で
286 販売することにより競争事業者の顧客を奪う行動に出ており,これらの事業者がA県に参入すれば
287 A県においても同様の行動に出ることが懸念されることから,生コン協議会側で先んじて生産設備
288 を買い取ることによりこのような事態の発生を回避しようとするものである。
289 10社は,平成18年3月1日,会合を持ち,下記<決定1>の内容の合意をした。10社は,
290 <決定1>の1に基づいて,同年3月6日から価格の引上げを実施し,<決定1>の2については,
291 10社のうち1社が,3月中に1名の会員の生産設備を自社の費用で買い取った。
292
293 <決定1>
294 1. 1立方メートル当たりの現地引渡し価格を従来の相場である6000円前後から625
295 0円に引き上げ,工場渡し価格を6050円とすること。(注)
296 2. 廃業しようとする会員については,10社のうちで生産設備に最も近い場所に所在する
297 1社がその生産設備を買い取ること。
298 (注)
299
300 現地引渡し価格とは,工事現場において生コンを引き渡す場合の価格であり,工場渡し
301 価格とは,生コン製造工場において生コンを引き渡す場合の価格である。
302
303 10社が価格を引き上げたことを知った生コン協議会の会員は,ほとんどが10社の価格引上げ
304 に追随して価格を引き上げたが,数社は従来の価格で販売し続けた。さらに,10社は,自社の費
305 用で生産設備を買い取っていくのは負担が大きすぎることから,同年4月30日に開催された生コ
306 ン協議会の幹事会において,生コン協議会の通常総会に下記<決定2>の内容の決議を行うよう提
307 案することを決めた。
308 これを受けて,同年5月8日に全会員が出席して開催された生コン協議会の通常総会において,
309 10社が提案した<決定2>を内容とする決議案が全会一致で可決された。
310 その後,10社が会員の販売価格の実態を調査したところ,遅くとも5月15日以降には,すべ
311 ての会員が<決定2>の1に記載された金額に価格引上げを行っていることが判明した。さらに生
312 コン協議会は,5月中に<決定2>の2に従って2社の生産設備を買い取って当該生産設備を廃棄
313 した。
314
315 11
316
317 <決定2>
318 1. 5月15日以降,1立方メートル当たりの現地引渡し価格を6250円とし,工場渡し
319 価格を6050円とすること。
320 2.生コン協議会は,廃業しようとする会員から生産設備の買取りを行うこと。買取り資金
321 は,生コン協議会の積立基金から支出し,買い取った設備は直ちに廃棄すること。
322
323 〔設
324
325 問〕
326
327 1. <決定1>に関する行為について,だれに対して,いかなる独占禁止法違反を問うことがで
328 きるか。その法的根拠も示しなさい。
329 2. <決定2>に関する行為について,だれに対して,いかなる独占禁止法違反を問うことがで
330 きるか。その法的根拠も示しなさい。
331
332 12
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334 論文式試験問題集[知的財産法]
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337
338 [知的財産法]
339 〔第1問〕(配点:50)
340 Xは,糖尿病のインシュリン治療等に使用される注射器や注射方法に関する研究開発の結果,注
341 射液の調整方法についての発明(以下「X発明」という。)をし,X発明について特許権(以下「X
342 特許権」という。)を有している。X発明は,注射器内に二つの室を設け,薬剤を一方の室に,薬剤
343 を溶解する液体を他方の室にそれぞれ分離収納し,注射する際に,注射器を操作して,薬剤を収納
344 した室に薬剤を溶解する液体をゆっくりと流入させることによって敏感な薬剤(注)を簡易に調整す
345 る注射液の調整方法に関するものである。
346 X発明は,薬剤を収納した室に薬剤を溶解する液体を流入させて注射液を調整する際に「注射器
347 がその注射針部分を上にしてほぼ垂直に保持された状態」にすることを構成要件の一つ(以下「構
348 成要件A」という。)としている。
349 Yは,薬剤とこれを溶解する液体とを二つの室にそれぞれ分離収納した注射器(以下「Y注射器」
350 という。)を製造し,医師向けに販売している。Y注射器には,「注射器がその注射針部分を水平か
351 らやや上向きにして保持された状態」で注射液の調整を行うことを指示する取扱説明書が付されて
352 おり,医師はこの指示どおりにY注射器を使用している。
353 Y注射器を用いた注射液の調整方法は,構成要件Aを除くX発明の他の構成要件のすべてを充足
354 する。YがY注射器に上記取扱説明書を付したのは,以前に注射器を垂直に近い状態に保持して注
355 射液の調整を行うことを指示していたところ,XからX特許権を侵害するという警告を受けたため
356 であるが,Y注射器を用いて上記取扱説明書に従って調整作業を行っても特段の不都合は生じてい
357 ない。
358 以上の事実関係を前提として,以下の各設問に答えよ。
359 1. X発明の構成要件Aの技術的意義が,注射液を調整する際に針先から液が漏れないようにする
360 点にあり,薬剤を収納した室に液体を流入させることには関係しないものであるとき,Yの行為
361 は,どのような場合にX特許権の侵害となるか。
362 2. X発明の構成要件Aが,出願当初の特許請求の範囲には記載されておらず,拒絶理由通知を受
363 けてされた補正により付加されたものであった場合において,構成要件Aが,@拒絶理由通知に
364 おける拒絶理由を回避するために付加されたものであったときと,A拒絶理由を回避するために
365 付加されたものではなかったときとで,YによるX特許権の侵害の成否につき差異を生じるか。
366 3. @上記の事実関係のようにY注射器を使用するのが医師である場合と,AY注射器を使用する
367 のが専ら患者本人である場合とで,YによるX特許権の侵害の成否につき差異を生じるか。
368 (注)
369
370 薬剤の中には,機械的な力が加わることで品質が劣化したり,溶解したときに変性する傾向が
371 あるものが存在する。ここでは,このような薬剤を「敏感な薬剤」と呼ぶ。
372
373 14
374
375 〔第2問〕(配点:50)
376 出版社Aは,その発行する美術雑誌に新作美術作品の紹介記事を連載しているところ,職業写真
377 家である甲に対し,同美術雑誌の次号の記事で紹介する作品の写真を撮影することを依頼した。そ
378 の際,甲はAから,撮影する作品は日本の伝統芸能の一つである浄瑠璃芝居に用いられる文楽人形
379 αであり,文楽人形細工師乙が創作した新作品であること,乙は文楽人形αが写真撮影されること
380 を承諾して撮影への協力を引き受けたこと,写真の掲載に当たっては写真撮影者の表示はしないこ
381 と,写真原版は雑誌発行後に甲に返還することについて説明を受け,甲は写真撮影を承諾した。そ
382 して,甲は,写真βを撮影し,その写真原版をAに引き渡した。
383 写真βは,文楽舞台において,衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラ
384 ー写真であり,乙は,衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,自ら人形を操作してそ
385 のポーズを決め,甲は,写真構図,採光,露光,シャッタースピード等を決めてシャッターを切っ
386 たものである。
387 出版社Aは,写真βを文楽人形α及び乙の紹介記事とともに掲載(写真撮影者の表示はない。)し
388 た美術雑誌を発行した。その後,Aは,経営不振のため美術雑誌の発行を継続することができなく
389 なり,写真βの写真原版は甲に返還されないままとなっていた。
390 商業用カレンダーの製作を業とする会社丙は,出版社Aからその保有するすべての写真原版を買
391 い受けたところ,その中に写真βの写真原版があったことから,これを顧客に配布する自社のカレ
392 ンダー用の写真として利用することとした。その際,丙は,自社のカレンダー仕様に合わせるため
393 に写真βの左右の2辺を一部削除したので,その背景の一部がカットされた。丙はこの写真を自社
394 の来年度のカレンダーに掲載した。
395 甲及び乙は,それぞれ丙に対して,著作権法上いかなる法的主張が可能か。
396
397 15
398
399 16
400
401 論文式試験問題集[労
402
403 17
404
405
406
407 法]
408
409 [労
410
411
412
413 法]
414
415 〔第1問〕(配点:50)
416 以下のX,Yの言い分を読んで,次の各問いに答えなさい。
417 1. Xの代理人としてYを被告に訴えを提起する場合の請求内容と額を具体的に述べなさい(遅延
418 損害金は除く。)。(配点:8)
419 2. Yの言い分から,1の訴訟で考えられる争点を挙げ,各争点に対するあなたの見解を述べなさ
420 い。(配点:42)
421 【Xの言い分】
422 私は,平成7年3月1日に広告代理店のY社に入社し,以後営業社員として勤務していました
423 が,Y社は忙しいばかりで,月給は27万円(基本給20万円と営業手当7万円)と安く,嫌気
424 がさしていたところ,以前の同僚から,独立して一緒に広告代理店をやらないかと誘われたので,
425 昨年(平成17年)11月中旬ころ,社長に年内一杯で退職したいと申し出ました。このときは,
426 年が明けたら昇給を考えるからと強く慰留されたので,いったん退職を思いとどまりましたが,
427 今年になっても給料が上がる様子がないので,退職を決断し,元同僚が設立の準備を進めていた
428 P社の取締役になることを承諾しました。そして,本年3月8日付けで,広告代理店業を目的と
429 し,私も取締役となったP社の設立登記ができましたので,3月10日付けで,3月末までの有
430 給休暇取得届と,3月末日をもって退社する旨の退職届をY社に郵送しました。有給休暇日数は
431 十分残っていました。
432 Y社では,給料は毎月10日に前月分が銀行振込みで支払われていましたが,Y社は,本年3
433 月分の給料も退職金も,全く支払おうとしません。そこで,私の権利が一刻も早く実現するよう
434 法的手段をとってください。
435 なお,私は,退職後1,2か月はのんびりするつもりでいましたが,4月上旬ころ,Y社から,
436 私を3月31日付けで懲戒解雇する,退職金は支給しないとの通知書が送られてきた上,3月分
437 の給料も支払われないため,4月の中旬ころからP社の営業活動を始めました。といっても,Y
438 社時代の担当顧客に対しては積極的に取引を勧誘した訳ではなく,退職のあいさつに行ったとこ
439 ろ是非私に引き続き担当してほしいと頼まれたので,P社で引き受けただけです。Y社のいう誓
440 約書を提出したことは事実ですし,退職金規程の内容も知っていましたが,Y社の言い分は不当
441 だと思います。
442 【Yの言い分】
443 当社は,従業員が25人前後の広告代理店です。営業社員にはそれぞれ専属で顧客数社を担当
444 させているので,営業社員と顧客との個人的信頼関係が会社の売上げに直結します。平成5年こ
445 ろ,当社の社員が退職直後に同業他社に入社し,担当していた顧客をそっくり他社に持っていっ
446 たことがありました。その経験から,社員を採用するに当たっては,
447 「退職後1年間は同業他社に
448 就職しないことを誓約いたします。万一違約した場合は,退職金を放棄し又は受領した退職金を
449 全額返還いたします。」との文言による誓約書を提出することを義務付けており,Xも入社時これ
450 を提出しています。
451 Xは,本年3月13日に出勤せず,前日までに有給休暇届と退職届が郵送されていました。不
452 審に思い急きょ調査したところ,Xが3月8日付けで設立されたP社の取締役に就任していたこ
453 とが判明しました。そこで,当社は,就業規則第56条第3号,第10号によりXを3月31日
454 付けで懲戒解雇することとし,念のため退職金は不支給とすることも付記して,4月5日にその
455 通知書を発送しました。Xが担当していた顧客5社は,そろって本年5月初めころ,これまで継
456 続して当社に発注していた仕事の向う3か月分をP社に発注したため,当社は少なくとも300
457
458 18
459
460 万円の利益を失いました。
461 そもそも誓約書や就業規則,退職金規程の内容からして,Xに退職金を支払う義務はありませ
462 んし,それは別としても,当社は,XのせいでP社に顧客を奪われ,差引きではXが請求する以
463 上の損害を受けていますから,いずれにせよ,Xに支払うべきものはありません。
464 なお,当社の就業規則及び退職金規程には,別紙の定めがあります。
465
466
467
468
469
470 【Yの就業規則(関係部分のみ抜粋)】平成2年4月1日施行
471 (退職金の支給)
472 第30条
473
474 社員が退職するときは,別に定める「退職金規程」により退職金を支払う。
475
476 (懲戒解雇)
477 第56条
478 1,2
479
480
481 次の各号の一に該当する場合には懲戒解雇とする。
482 (略)
483
484 会社の承認を得ず,在籍のまま他人に雇用されたとき又は就業に従事したとき
485
486 4〜9
487 10
488
489 (略)
490 前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき
491
492 【Yの退職金規程(関係部分のみ抜粋)】平成2年4月1日施行
493 (算出方法)
494 第6条
495
496 退職金は,別表の退職金の支給算式により算出支給する。
497
498 (支給事由)
499 第7条
500
501
502 社員が満3年以上勤務し,次の各号の一に該当する場合に支給する。
503 自己の都合により退職したとき
504
505 2〜5
506
507 (略)
508
509 (退職金の支給除外)
510 第8条
511
512 退職金は,次の各号の一に該当する場合は支給しない。
513
514
515
516 勤続3年未満の者
517
518
519
520 懲戒解雇された者
521
522 (支給制限)
523 第9条
524
525 退職に際して次の事項に該当する場合は,退職金を減額し又は支給しないことがある。
526
527 退職金支給後に次の事項に該当することが判明した場合は,支給した退職金の全部又は一部
528 の返還を求めることがある。
529 1,2
530
531
532 (略)
533
534 退職後1年以内に同業他社へ転職した場合には,退職金を通常の半額とする。
535
536 19
537
538
539
540
541
542
543
544 退職金の支給算式は次のとおりとする。
545 支給退職金額=退職時基本給+退職時基本給×乗率(注1)×(勤続年数(注2)−4)
546 (注1)
547
548 (注2)
549
550 乗率は次のとおりとする。
551 勤続
552
553 4年未満
554
555 乗率
556
557 0.0
558
559 勤続
560
561 4年
562
563
564
565 0.5
566
567 勤続
568
569 5年以上10年未満
570
571
572
573 0.6
574
575 勤続10年以上15年未満
576
577
578
579 0.7
580
581 勤続15年以上20年未満
582
583
584
585 0.8
586
587 勤続20年以上
588
589
590
591 1.0
592
593 勤続年数の計算においては,端数の月数は,6か月未満は切り捨て,6か月以
594 上は1年に切り上げる。
595
596
597 20
598
599
600
601 〔第2問〕(配点:50)
602 以下の事案を読んで,X労組がY社に対してとり得る法的手段について論じなさい。
603 Z社は,Y社が製造する製品を梱包する仕事を同社から請け負い,自社が雇用する20名の社
604 員をY社の工場において就労させている。Y社の工場は老朽化が進んでおり,特に梱包作業を行
605 う場所は換気が十分でなく,また,賃金もY社の正社員と比べると格段に安かったため,Y社の
606 工場で働くZ社の社員はかねてから不満を持っていた。そのため,Y社で働くZ社の社員である
607 Aが,X労働組合(以下「X労組」という。)の役員であるBに相談したところ,X労組に加入す
608 れば,X労組として改善に取り組むことが可能だとBが述べたため,AはX労組に加入するとと
609 もに,他の社員にも加入を働きかけた。この結果,Y社の工場で働くZ社の社員のうち,チーム
610 リーダーを除く19名がX労組に加入することとなった。なお,X労組は,近隣の様々な企業で
611 働く労働者によって組織された労働組合である。
612 X労組がZ社に対し,Y社の工場における換気の改善と賃金引上げを求めて団体交渉を申し入
613 れたところ,Z社はこれに応じ,換気の改善をY社に申し入れることを約束した。また,賃金引
614 上げについても,Y社からの請負代金が増額されなければ実現が難しいので,Y社に対し請負代
615 金の増額を求めると回答した。これに基づき,Z社はY社に対し,換気の改善と請負代金の増額
616 を求めたが,Y社はこれを承諾せず,かえって,これ以上文句があるのであれば,Z社との請負
617 契約の解除も考えると述べた。Z社は,Y社から融資を受けていることもあり,これ以上求める
618 のは無理と判断し,X労組に対してその事情を説明した。X労組はZ社と交渉しても成果を得ら
619 れないと判断し,今度は,Y社に対して換気の改善と請負代金の増額を求めて団体交渉を申し入
620 れた。これに対し,Y社は,X労組と交渉する義務はないとして団体交渉を拒否したが,Y社で
621 労務を担当する総務課長Cは,問題が大きくなりはしないかと心配した。そこで,CはAに対し,
622 Z社の社員がX労組を脱退しなければ,Z社との請負契約は解除されるだろうと述べた。なお,
623 X労組は労働組合法第2条の要件を満たしている。
624
625 21
626
627 22
628
629 論文式試験問題集[環
630
631 23
632
633
634
635 法]
636
637 [環
638
639
640
641 法]
642
643 〔第1問〕(配点:50)
644 産業廃棄物に関して,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)は,1970年の
645 制定時より,排出事業者処理責任を基本的方針としている。ところが,この方針の下で,具体的な
646 法政策は,変遷している。
647 [資料]は,2000年に改正される以前の廃棄物処理法の,不法投棄に
648 対して原状回復を求める措置命令規定及びその関係条文である。
649 これを読んだ上で,以下の設問に答えよ。
650 〔設
651
652 問〕
653
654 1. [資料]に掲げた措置命令規定に対応する現在の廃棄物処理法の関係規定は,基本的に,2
655 000年改正によるものであるが,それ以前の規定とは,どのように異なっているか。排出事
656 業者から適法な委託を受けた産業廃棄物収集運搬許可業者が,委託に係る産業廃棄物を不法投
657 棄した場合を念頭において論ぜよ。
658 2. 2000年改正は,排出事業者処理責任の観点からは,どのように評価することができるか。
659 改正に至る背景に触れつつ論ぜよ。
660 [資
661
662 料]2000年改正前の廃棄物処理法
663 (措置命令)
664
665 第19条の4第1項
666
667 次の各号に掲げる場合において,生活環境の保全上支障が生じ,又は生ず
668
669 るおそれがあると認められるときは,当該各号に定める者は,必要な限度において,当該処分
670 を行つた者(……第12条第3項,……の規定に違反する委託により当該処分が行われたとき,
671 ……は,これらの委託をした者を含む。……)に対し,期限を定めて,その支障の除去又は発
672 生の防止のために必要な措置……を講ずべきことを命ずることができる。
673
674
675 (略)
676
677
678
679 産業廃棄物処理基準……に適合しない産業廃棄物の処分が行われた場合
680
681 都道府県知事
682
683 (…)
684 (事業者の処理)
685 第12条第3項
686
687 事業者は,その産業廃棄物の運搬……を他人に委託する場合には,政令で定め
688
689 る基準に従い,その運搬については第14条第8項に規定する産業廃棄物収集運搬業者……に,
690 ……委託しなければならない。
691 (産業廃棄物処理業)
692 第14条第1項
693
694 産業廃棄物……の収集又は運搬を業として行おうとする者は,当該業を行おう
695
696 とする区域……を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。……
697 第14条第8項
698
699 第1項の許可を受けた者……は,産業廃棄物処理基準に従い,産業廃棄物の収
700
701 集若しくは運搬……を行わなければならない。
702
703 24
704
705 〔第2問〕(配点:50)
706 Aは,B県C町にある自己所有の山林を造成して,ゴルフ場を開発する計画を立てた。Dらは,
707 隣接するB県E市に居住する住民であり,古くから桜や紅葉の名所として名高い上記計画地域にハ
708 イキングに訪れ,森林浴を楽しんできた。また,上記計画地域には,絶滅が危ぐされている野生生
709 物が生息している。Dらは何とかこの開発を阻止したいと考えている。
710 この場合について,以下の設問に答えよ。
711 〔設
712
713 問〕
714
715 1. Dらは,Aに対してどのような訴訟を提起することが考えられるか。裁判例の動向とその理
716 由を踏まえつつ論ぜよ。
717 2. 設問の事例を踏まえて,このような紛争を未然に防止するためにどのような法政策的仕組み
718 が考えられるか。環境法の理念といわれている環境権と関連させて論ぜよ。
719
720 25
721
722 26
723
724 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
725
726 27
727
728 [国際関係法(公法系)]
729 〔第1問〕(配点:50)
730 A国法に基づいて設立されA国に本社を持つY会社(以下「Y社」という。)は,途上国であるB
731 国に同国法に基づいて100パーセント子会社Y1を設立して,Y1で人工甘味料αの生産を19
732 80年から行い,多額の収益を上げてきた。A国法に基づいて設立されA国に本社を持つ企業の中
733 でB国に相当多額の資本を投下してB国で事業活動を行っていたのはY1のみであった。
734 1996年5月にA国とB国は投資保護協定の交渉を終えて共に署名をした。その中には,以下
735 の事案に関係する第10条が入っていた(それ以外には直接的に関係する規定はなかった。)。
736 第10条
737
738 いずれの締約国も,(a)公共のためであり,(b)差別的なものではなく,かつ,(c)迅速,
739 十分かつ実効的な補償の支払を伴ってとられるものである場合を除くほか,自国の領域
740 内にある他方の締約国の投資家の投資財産について,収用又は国有化を実施してはなら
741 ない。
742
743 1997年春ごろから,B国において人工甘味料αの発がん性がにわかに問題となり,同年8月
744 1日には,B国議会は,同年9月1日以降,B国内においてαの製造及び販売を禁止するという法
745 律を制定した。Y1は,B国においてαをほぼ独占的に製造し,販売していた。
746 αの製造及び販売禁止の結果,Y1は操業中止に追い込まれて,1998年1月には経営が破綻
747 し,B国内で会社の清算手続が始まった。
748 人工甘味料αの製造及び販売が禁止された1997年9月の時点では,A,B両国間の上記の投
749 資保護条約は,A国では議会の承認を得て締結のための国内手続を完了し,A国政府はその旨をB
750 国政府に通報していた。他方,B国でも,この投資保護条約の締結のための国内手続を完了するた
751 めにはB国議会の承認が必要であったが,B国政府は承認のために議会に付議はしたが,2001
752 年1月までに議会の承認は得られていなかった。
753 このような状況下で,Y社はB国裁判所に,αの製造及び販売を禁止した法律の制定によって損
754 害又は損失を被ったとして,B国に対して損害賠償又は損失補償を請求して出訴し,最高裁判所ま
755 で争ったが,2000年1月に最高裁判所は最終的にY社の請求を退けた。
756 最高裁判所の判決を受けて,Y社はB国から何らかの条約上又は国際慣習法上の救済を得るべく,
757 A国外務省に働きかけを行った。Y社がB国から救済を得られるようにするためには,A国外務省
758 は,外交交渉を通じてどのような法的主張をB国に対して行えばよいかを論述しなさい。なお,A,
759 B両国は,条約法に関するウィーン条約の当事国である。
760
761 28
762
763 〔第2問〕(配点:50)
764 A国は,国内法に基づいてB国にODA(政府開発援助)を供与してきた。B国は,国際テロリズ
765 ムを支援している国家であるとして,繰り返し国連総会決議により非難を受けている。国際テロリ
766 ズム支援国家へのODAを縮小又は廃止するように加盟国に求める国連総会決議も,繰り返し採択
767 されており,大多数の国が国連総会で同様の主張を示している。A国とC国は,A国の海底油田を
768 共同開発しており,C国はそのために長年にわたりA国に技術供与及び投資を行ってきており,こ
769 の海底油田開発は,今や,A国の資源開発と経済発展のためには不可欠な要因となっている。C国
770 は,国際テロリズム撲滅を国際社会に対して繰り返し主張しており,その主導的な立場にある。A
771 国,B国及びC国は,いずれも国連加盟国である。
772 そうした状況でC国は,国際テロリズム支援国家へのODAの制限又は禁止は,既に国際慣習法
773 として成立しており,この国際慣習法はA国を拘束しているとして,A国に対して,B国へのOD
774 Aやそれを根拠付ける国内法を批判して,それらが改められなければ,C国からの海底油田開発に
775 関する技術供与及び投資を打ち切ると公式にA国に対して通告した。
776 A国は,C国のこの通告に対して,次のように批判した。
777 「国際テロリズム支援国家へのODAの制限又は禁止については,国連総会決議が繰り返し採択
778 され,諸国の主張が繰り返されたとはいえ,国際慣習法として成立しているとはいえない。仮に国
779 際慣習法として成立しておりA国を拘束しているとしても,このような国際慣習法は,A国からB
780 国へのODAの実施を担保するA国の国内法に違背するので,A国はこの国際慣習法に従うことは
781 できない。A国がB国とどのような経済関係を結ぶかは,A国が決定する問題であって,これにつ
782 いてC国がA国に対して経済的圧力をかけて,A国の対外政策や国内法の変更を迫ることは不干渉
783 原則違反である。」
784 A国のこの主張に対するC国の反論を論述しなさい。なお,A国の主張に含まれない論点は考え
785 る必要はない。
786
787 29
788
789 30
790
791 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
792
793 31
794
795 [国際関係法(私法系)]
796 〔第1問〕(配点:50)
797 日本人男Yと米国人女Xは日本で婚姻して共同生活を始め,Xは子を懐胎した。しかし,その後
798 両者は不和となり,Xはその出身地である米国のA州に帰り,その地において子Zを出生した。Z
799 の出生を知ったYは,Zに会うために米国に赴き,A州のホテルに宿泊した。Xは,YがZに対し
800 て支払うべき扶養料を確保するため,A州の送達吏とともに同ホテルに赴き,送達吏は,Zへの扶
801 養料の支払をYに求める訴えの訴状をYに手交した。Yはこの訴状をその場で破り捨てて日本に帰
802 国したが,A州の裁判所は,Y欠席のまま,Yに対してZへの月額1000合衆国ドルの支払を命
803 ずる判決を下した。なお,Zは,日本と米国の国籍を有し,A州に居住している。
804 以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。
805 〔設
806
807 問〕
808
809 1. A州の裁判所の判決の効力が日本において問題となる場合に,その効力が日本で承認される
810 ための要件である管轄権はA州に認められるか。なお,A州の法律によると,以下のいずれか
811 の場合にA州の裁判所は,A州に居住しない者(以下「本人」という。)を被告とする扶養関係
812 事件につき管轄権を有するとされている。
813 @
814
815 本人がA州において訴状の交付送達を受けたとき
816
817 A
818
819 本人が応訴したとき
820
821 B
822
823 本人がA州に子とともに居住したことがあるとき
824
825 C
826
827 本人がA州に居住したことがあり,かつ,子の出産前に要した費用又は扶養料を支払
828 っていたとき
829
830 D
831
832 本人の行為又は指示の結果として子がA州に居住しているとき
833
834 E
835
836 本人が性交渉をA州において持ち,その結果として子が懐胎された可能性があるとき
837
838 2. Xは,その後,離婚とXのための離婚後の扶養料の支払をYに求めてA州の裁判所に訴えを
839 提起した。A州の裁判所は,A州の法律を適用し,XとYの離婚を認め,同じくA州の法律に
840 より,Xのために離婚後の扶養料として月額2000合衆国ドルを支払うようYに命ずる判決
841 を下した。Yは,この判決に従い,1年間,日本から同金額を送金したが,自己の経済状況が
842 悪化したため,日本の裁判所に扶養料を月額1000合衆国ドルに減額する申立てをした。A
843 州の前記判決が日本における承認の要件を満たしていると仮定した場合,この扶養料減額請求
844 に日本の裁判所が適用すべき準拠法は何か。
845 3. A州の裁判所の離婚判決の効力が日本において承認されないことが判明したため,Xは日本
846 の裁判所に離婚の申立てをした。この場合に,Zの親権者の指定について日本の裁判所が適用
847 すべき準拠法は何か。
848
849 32
850
851 〔第2問〕(配点:50)
852 日本の商社であるX会社は,甲国の有名な醸造所であるY会社との間で,Yが特定年に特定の一
853 級畑で収穫されたぶどうの果実のみを使って醸造した特定の銘柄の瓶詰ワイン(一連番号の付され
854 たもの)で,Yの特定の倉庫に保管中のもの全部(以下「本件物品」という。)を「F.O.B.甲国
855 の港(インコタームズ2000)」の貿易条件で買い受け,代金は日本の銀行の発行する信用状で決
856 済する契約を締結した。この契約の条項中には,準拠法を日本法とする旨の条項があるが,紛争の
857 解決方法に関する条項はない。Xは,日本の海上運送業者に甲国の港から日本の港までの運送を依
858 頼した。
859 以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。なお,各問は独立した問いである。
860 〔設
861
862 問〕
863
864 1. Xが,日本に到着した本件物品を転売したが,予想外に品質が劣っていたため予定した価格
865 で販売できなかったことを理由に,Yに損害賠償を請求している。Xは,Yの損害賠償義務は
866 日本において履行されるべきであるとして,日本の裁判所に訴えを提起した。日本の裁判所は
867 この訴えについて国際裁判管轄権を有するか。なお,Yは日本に事務所,営業所等の活動の拠
868 点や販売代理店などは有していないものとする。
869 2. Xは,本件物品の日本における転売時期との関係で,陸揚げから1年後に本件物品の検査を
870 したところ,その劣化の原因がYの倉庫での保管状態にあることが判明した。XのYに対する
871 損害賠償請求について日本の裁判所が国際裁判管轄権を有することを前提とした場合に,Xの
872 Yに対する請求は認められるか。
873 3. Yは,甲国の港でXに本件物品を引き渡したが,XY間の契約締結以前に,甲国のZ会社が
874 本件物品をYから買い受け,本件物品をYに預けたままにしていたことが判明した。Xが日本
875 の港で陸揚げされた本件物品の引渡しを受けた後,Zは,Xに対し,所有権に基づいて本件物
876 品の引渡しを求める訴えを日本の裁判所に提起した。Xは本件物品について自己の所有権を主
877 張している。XZ間の本件物品の所有権に関する争いは,いかなる国の法律によって判断され
878 るか。また,Zの請求は認められるか。なお,甲国法では,@動産の所有権の移転は契約の効
879 果によって生ずる,A動産について売主が所有権を移転した場合には,売主は権利を喪失し,
880 その者からそれ以後に当該動産を買い受けた者は当該動産の所有権を取得することはない,B
881 ただし,動産の売主が商人であり,買主が売買契約後も当該動産を売主に預けていた場合は,
882 その売主からそれ以後に当該動産を買い受けた者は所有権を取得するものとされている。
883
884 33
885
886