1 論文式試験問題集[倒
2
3 1
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 甲建物を所有するA社から同建物を賃借しているBが,
17 次のような事情の説明及び質問をしてき
18 たとする。
19
20 Bの説明の中の事実関係はすべて証拠によって証明できるものと仮定して,
21 Bの1から
22 4までの質問にどのように回答すべきか検討しなさい。
23
24
25 なお,
26 回答に際しては,
27 仮にA社について破産手続が開始された場合,
28 A社にはある程度の財産
29 があることから異時廃止になる見込みはなく,
30 破産手続は7,
31 8か月くらいで最後配当を経て終結
32 するであろうことを前提としなさい。
33
34
35 【Bによる事情の説明】
36 私は,
37 甲建物の2階全部を所有者であるA社から賃借していて,
38 現在事務所として使っていま
39 す。
40
41 賃貸借期間は3年,
42 賃料は毎月50万円で,
43 敷金として300万円(賃料6か月分)を差し
44 入れています。
45
46
47 賃貸借の開始からもうすぐ2年8か月が経過しますが,
48 A社の債権者からの申立てに基づいて,
49
50 間もなくA社について破産手続開始の決定がされるようです。
51
52 約定期間の満了まであと約4か月
53 ありますが,
54 その残り4か月間は,
55 私はまだ甲建物で仕事を続ける必要があります。
56
57 ただ,
58 賃料
59 がほぼ同額でもう少し広い賃貸物件が見つかったので,
60 約定期間が満了したら賃貸借契約は更新
61 せずに,
62 別の建物に事務所を移すつもりでいます。
63
64
65 私は,
66 今まで賃料の支払を怠ったことはなく,
67 A社が破産したとしても,
68 A社の社長のCには
69 昔から世話になっていることから,
70 取りあえず残り4か月分も約定どおりに支払うつもりでいま
71 す。
72
73 なお,
74 敷金については,
75 今後万一賃料の不払等があれば格別,
76 そうでなければ控除の対象と
77 なる損害金等は現時点ではない旨をCに確認済みです。
78
79
80 【Bの質問】
81 1. A社の破産管財人がA社の破産を理由として私に甲建物からの即時の退去を求めることはで
82 きますか。
83
84
85 2. A社の破産手続開始の決定後も私が賃料を支払い続けることを前提にして,
86 後で敷金相当額
87 を幾らかでも回収する方法はないのでしょうか。
88
89
90 3. A社の破産手続において敷金返還請求権を行使しなければならないとして,
91 その行使はどの
92 ようにすればよいのでしょうか。
93
94 また,
95 どのように支払を受けることができるのでしょうか。
96
97
98 4. Cによると,
99 A社は再生手続開始の申立てをすることを検討中であるとのことです。
100
101 仮にA
102 社について再生手続が開始されても,
103 私は賃料を支払い続けるつもりですが,
104 この場合,
105 敷金
106 返還請求権をどのように行使することができるでしょうか。
107
108
109
110 2
111
112 〔第2問〕(配点:50)
113 次に掲げる事例について,
114 以下の設問に答えなさい。
115
116
117 【事
118
119 例】
120 A社は,
121 建設工事を業とする株式会社であったが,
122 折からの不況で,
123 資金繰りが悪化していた。
124
125
126
127 そこで,
128 B信用金庫から1000万円の借入れをしようとしたところ,
129 B信用金庫からは,
130 A社
131 の代表者であるCと,
132 さらにもう1人十分な資力を有している者の計2名の連帯保証と不動産担
133 保とがない限り,
134 融資はできないと言われた。
135
136 A社はいわゆる同族会社であり,
137 その株式の70
138 %はCが保有しており,
139 代表者であるCのほか,
140 親族である2名の取締役がいるが,
141 業務はCが
142 全面的に執り行っており,
143 他の取締役には十分な資力がなかった。
144
145 そこで,
146 Cは,
147 高校時代から
148 の友人であり,
149 以前若干の資金援助をしたこともあるDに
150 「絶対に迷惑をかけることはないから。
151
152 」
153 と懇願し,
154 連帯保証人となるとともに,
155 Dの所有する山林を担保に提供することに同意してもら
156 った。
157
158 その結果,
159 平成17年10月20日,
160 B信用金庫は,
161 C及びDを連帯保証人とし,
162 D所有
163 の山林に抵当権の設定を受けて,
164 A社に対し1000万円を貸し付けた。
165
166 なお,
167 C及びDは,
168 連
169 帯保証や物上保証をするに際して保証料を受領していない。
170
171
172 しかし,
173 その後,
174 A社の主要な受注先である大手建設株式会社が同年11月15日,
175 突然更生
176 手続開始の申立てをし,
177 従来の下請関係を抜本的に見直す措置がとられたため,
178 A社の売上高は
179 大幅に減少した。
180
181 その結果,
182 平成18年2月24日,
183 A社は,
184 ついに振り出した約束手形を決済
185 できず,
186 当該手形が不渡りになってしまった。
187
188 そして,
189 3月3日,
190 A社は,
191 破産手続開始の申立
192 てをし,
193 同月10日,
194 開始決定がされた。
195
196 また,
197 A社の代表者であるCも,
198 多額の連帯保証債務
199 を弁済できない状態になり,
200 3月3日,
201 自ら破産手続開始の申立てをし,
202 同月10日,
203 開始決定
204 がされた。
205
206 Dは,
207 このような状況の推移に驚いていたが,
208 4月初めになって,
209 B信用金庫の担当
210 者から連帯保証債務の即時の履行を強く請求された。
211
212 ところが,
213 D自身,
214 自己の経営しているコ
215 ンビニエンス・ストアについて,
216 近くに24時間営業のスーパーマーケットが出店したことなど
217 から急激にその売上げが落ち込んでいたところであり,
218 そこにこのような連帯保証債務の履行の
219 請求がされれば事業の継続は困難になると判断して,
220 4月14日,
221 再生手続開始の申立てをし,
222
223 同月28日,
224 開始決定がされた。
225
226
227 B信用金庫は,
228 A社の破産手続において1000万円の貸付債権について届出をし,
229 Cの破産
230 手続において1000万円の連帯保証債務に係る債権について届出をするとともに,
231 D所有の山
232 林に対する抵当権を近く実行する旨をDに通知した。
233
234 ところが,
235 Cの破産手続における債権調査
236 では,
237 Cの破産管財人Eは,
238 上記連帯保証契約を否認する旨を主張して,
239 B信用金庫の破産債権
240 を認めない旨の認否をしたので,
241 B信用金庫は破産債権査定申立てをした。
242
243 また,
244 B信用金庫が
245 D所有の山林に対する抵当権を実行しようとしているので,
246 Dの再生手続の監督委員Fは,
247 否認
248 権を行使する権限の付与を受け,
249 上記抵当権設定契約を否認する旨を主張して,
250 抵当権不存在確
251 認の訴えを提起した。
252
253
254 〔設
255
256 問〕
257
258 1. あなたがFであるとして,
259 B信用金庫に対する抵当権不存在確認訴訟において,
260 否認権の行
261 使を基礎づけるため,
262 どのような主張をすることが考えられるか。
263
264 想定されるB信用金庫から
265 の反論も指摘しながら論じなさい。
266
267
268 2. あなたがB信用金庫の代理人であるとして,
269 Cの破産手続における破産債権査定の手続にお
270 いて,
271 Eの否認権の主張に反論するため,
272 どのような主張をすることが考えられるか。
273
274 CがA
275 社の代表者であるという点を考慮に入れて,
276 想定されるEからの反論も指摘しながら論じなさ
277 い。
278
279
280
281 3
282
283 4
284
285 論文式試験問題集[租
286
287 5
288
289 税
290
291 法]
292
293 [租
294
295 税
296
297 法]
298
299 〔第1問〕(配点:50)
300 A(個人)は,
301 平成16年3月3日,
302 Bから,
303 土地・建物(以下「甲不動産」という。
304
305 )を,
306 代金
307 6億円で買い受けた。
308
309 前記代金のうち,
310 2億円は自己資金であったが,
311 4億円は銀行からの借入金
312 であり,
313 10年間の元利均等返済方式による分割弁済で,
314 利息は年10%の約定で借り入れたもの
315 であった。
316
317
318 AがBから甲不動産を購入した当時,
319 その建物には,
320 Bの親族Cが居住しており,
321 すぐに退去し
322 なかった。
323
324 Aは,
325 Cと交渉し,
326 ようやく平成17年3月2日に無償で立ち退いてもらい,
327 翌3日か
328 ら同建物に居住した。
329
330
331 その後,
332 甲不動産の所在地一帯を,
333 商業用地として再開発することを計画していた不動産業者D
334 が,
335 Aに対し,
336 甲不動産を7億円で買い取りたいという申出をしてきた。
337
338 これに対して,
339 Aは,
340 甲
341 不動産と同等の土地・建物を取得できることと,
342 譲渡所得税等の支払等のため3億円を支払っても
343 らえることを条件に,
344 甲不動産を譲渡する意向を示した。
345
346
347 そこで,
348 Dは,
349 前記再開発のためにはどうしても甲不動産の土地が必要であったため,
350 Aの提示
351 した条件に従うこととし,
352 E所有の土地・建物(以下「乙不動産」という。
353
354 )を探し出し,
355 これをE
356 から代金6億5000万円で購入した。
357
358
359 その上で,
360 DとAとは,
361 平成18年3月3日,
362 A所有の甲不動産を代金7億円でAからDに売却
363 する旨の売買契約書と,
364 D所有の乙不動産を代金4億円でDからAに売却する旨の売買契約書をそ
365 れぞれ作成し,
366 両不動産を相互に引き渡し,
367 所有権移転登記を行い,
368 DからAに双方の代金額の差
369 額3億円が支払われた。
370
371
372 以上の事案について,
373 以下の設問に答えなさい。
374
375
376 〔設
377
378 問〕
379
380 1. A・D間で甲不動産を7億円で売却する売買契約に基づいて甲不動産が譲渡されたと考えた
381 場合,
382 甲不動産の譲渡によるAの譲渡所得の算定において,
383 法的に問題となる点を指摘して見
384 解を述べなさい。
385
386
387 2. 甲不動産の譲渡によるAの譲渡所得の算定において,
388 D所有の乙不動産との交換契約である
389 として課税することはできるか。
390
391 また,
392 交換契約であることを前提として甲不動産の譲渡によ
393 るAの譲渡所得を算定する場合,
394 設問1のように売買契約と考えた場合と異なる点を説明しな
395 さい。
396
397
398
399 6
400
401 〔第2問〕(配点:50)
402 Xは,
403 昭和20年にT町に生まれ,
404 今日までずっとT町で暮らしてきた。
405
406 Xの父Mは,
407 昭和25
408 年に医薬品等を製造する事業を始め,
409 T町を事業の本拠地と定めた。
410
411 Xは,
412 昭和50年にこの事業
413 を継承し,
414 漸次これを発展させ,
415 今日のY株式会社を築いた。
416
417 Xは,
418 昭和60年にY社の筆頭株主
419 となり,
420 それ以来Y社の代表取締役を務めている。
421
422
423 ところで,
424 Y社の従業員はそのほとんどがT町に居住しており,
425 新年には,
426 T町所在の宗教法人
427 Uの祭殿に参けいすることを通例としていた。
428
429 Uの祭殿は,
430 平成10年ころから屋根や柱の傷みが
431 激しく,
432 数度にわたる修繕も限界に達し,
433 改築の必要に迫られていた。
434
435 この話を聞いたXは,
436 平成
437 17年1月にUの祭殿に参けいした折に,
438 U法人の関係者に対し,
439
440 「この祭殿は,
441 Y社の従業員一同
442 にとって,
443 大切な祭殿だ。
444
445 私も,
446 子供のころ父に手を引かれ,
447 よく参ったものだ。
448
449 このように荒廃
450 しているのは見たことがない。
451
452 改築してはどうか。
453
454 明日会社へ来なさい。
455
456 」と話した。
457
458 そこで,
459 翌日,
460
461 U法人の関係者がY社の事務所を訪ねたところ,
462 Xは,
463 「寄進するからUの祭殿を改築してはどう
464 か。
465
466 」と申し出た。
467
468 そこで,
469 U法人の関係者は,
470 この申出を受けることとし,
471 祭殿改築委員会を組織
472 した。
473
474
475 Y社においては,
476 平成17年3月開催の取締役会において,
477 祭殿改築委員会への寄付に係る承認
478 決議がされ,
479 これに基づいて,
480 祭殿改築委員会に対し,
481 平成17年4月に,
482 5000万円が小切手
483 で支払われた(以下「本件5000万円」という。
484
485 )。
486
487 祭殿改築委員会は,
488 この支払を受けるに当た
489 り,
490 領収証のあて名欄にY社の名前を記載したが,
491 その保存する帳簿書類には,
492 寄付行為の主体を
493 Xと記していた。
494
495
496 Uの祭殿の改築に伴い,
497 敷地内には「寄付者芳名碑」が建てられたが,
498 その碑には「金5000
499 万円也
500
501 Y社代表取締役X」と刻まれた。
502
503 また,
504 Uの敷地内には,
505 高さ2メートルの「顕彰の碑」
506
507 が建立されたが,
508 その正面にはMとXのそれぞれの胸像の陶板がはめ込まれ,
509 その下に「M氏,
510 Y
511 グループ創始者」,
512 「X氏,
513 Yグループ会長」と刻まれた。
514
515
516 Y社は,
517 平成17年1月1日から12月31日までの事業年度の法人税の申告に当たり,
518 本件5
519 000万円の支出を寄附金として損金に算入して申告した。
520
521 これに対し,
522 所轄税務署長は,
523 前記寄
524 付行為の主体はY社ではなくX個人であり,
525 Xの支出すべき個人的費用をY社が負担したものであ
526 るから,
527 Xへの役員賞与であると認定し,
528 Y社に対し,
529 この寄附金の損金算入を否定する法人税の
530 更正(以下「本件更正」という。
531
532 )をするとともに,
533 源泉所得税の納税告知(以下「本件納税告知」
534 という。
535
536 )をした。
537
538
539 以上の事案において,
540 Y社の代理人が,
541 本件寄付行為の主体がY社であるとして本件更正及び本
542 件納税告知を争う場合,
543 どのような主張が可能であるかを,
544 予想される所轄税務署長の主張を念頭
545 に置いて,
546 検討しなさい。
547
548
549 ただし,
550 所轄税務署長は,
551 同族会社等の行為又は計算の否認の規定に基づく主張はしないものと
552 する。
553
554
555
556 7
557
558 8
559
560 論文式試験問題集[経
561
562 9
563
564 済
565
566 法]
567
568 [経
569
570 済
571
572 法]
573
574 〔第1問〕(配点:50)
575 化学製品の製造業者であるA社は,
576 化学製品の甲製品において市場占拠率(シェア)50%を有
577 している。
578
579 甲製品の製造業者には,
580 A社のほか,
581 シェア15%のB社,
582 シェア10%のC社など数
583 社ある。
584
585 甲製品の中で輸入品の占める割合は10%程度であり,
586 輸送費が比較的高いため,
587 当面,
588
589 輸入が大幅に増える見込みはない。
590
591 国内製造に係る甲製品は,
592 製造業者各社から20社の卸売業者
593 を通じて需要者に販売されている。
594
595 A社は,
596 これらの卸売業者のうち15社との間で,
597 甲製品の継
598 続的販売に関する取引基本契約を締結し,
599 この15社にのみ甲製品を販売している。
600
601 なお,
602 甲製品
603 の用途は限定されており,
604 また,
605 他の製品での代替は困難であるとされている。
606
607
608 ところで,
609 A社は,
610 適正な価格で販売されることが製品の安定的な供給につながるとの観点から,
611
612 取引先の卸売業者に,
613 A社から卸売業者への販売価格(以下「仕切価格」という。
614
615 )に8%を加えた
616 価格で需要者に販売させるとの営業方針を立てた。
617
618
619 (ア) A社は,
620 上記営業方針に基づき,
621 取引基本契約を締結している卸売業者15社に対し,
622 仕切価
623 格に8%を加えた価格で需要者に販売してもらいたい旨の希望を表明した。
624
625 これに対して,
626 15
627 社のうち10社は,
628 A社の営業方針に理解を示し,
629 仕切価格に8%を加えた価格で需要者に販売
630 していたが,
631 残りの5社(以下「5社」という。
632
633 )は,
634 A社の希望に応じず,
635 仕切価格に4%を加
636 えた価格で甲製品を需要者に販売していた。
637
638 A社は,
639 5社に対しては,
640 当面,
641 様子を見ることと
642 した。
643
644
645 (イ)
646
647 その後,
648 A社は,
649 近い将来,
650 甲製品の供給がやや過剰気味となるとの予測を得たこと等から,
651
652
653 取引先の卸売業者に対し,
654 上記営業方針を徹底する必要性が高くなったと考え,
655 当面様子を見る
656 こととしていた5社に対する対応を改め,
657 5社に対し,
658 再三,
659 仕切価格に8%を加えた価格で需
660 要者に販売するよう強く求めた。
661
662 しかし,
663 5社はこれに応じなかったので,
664 A社は,
665 5社に対し,
666
667 下記の取引基本契約第6条第3号に基づき,
668 同契約を解除して甲製品の供給をやめる旨通告し,
669
670 5社に対し甲製品の供給を停止した。
671
672
673
674 取引基本契約第6条
675 甲(A社)は,
676 乙(卸売業者)に,
677 以下の各号に該当する事実があるときは,
678 本契約を解
679 除することができる。
680
681
682 1
683
684 乙が,
685 本契約上の義務に違反したとき。
686
687
688
689 2
690
691 乙が,
692 手形小切手の取引停止処分を受けたとき,
693 破産,
694 民事再生,
695 会社更生の手続開始
696 の申立てをし又は申立てを受けたとき。
697
698
699
700 3
701
702 〔設
703
704 乙が,
705 このほか,
706 甲との信頼関係を著しく損なう行為を行ったとき。
707
708
709
710 問〕
711
712 1.(1)
713
714 上記(ア)に係るA社の行為には,
715 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占
716 禁止法)上,
717 どのような問題があるか。
718
719
720
721 (2)
722
723 上記(ア)に係る行為に加えて,
724 上記(イ)の行為が行われた場合にはどうか。
725
726
727
728 2. A社から甲製品の供給の停止を受けた5社のうちの1社であるX社としては,
729 どのような民
730 事裁判手続をとることができるか。
731
732 請求の趣旨及び請求の原因となる事実についても述べるこ
733 と。
734
735
736
737 10
738
739 〔第2問〕(配点:50)
740 A県における生コンクリート(以下「生コン」という。
741
742 )の製造業者は,
743 大手事業者10社(以下
744 「10社」という。
745
746 )と小規模事業者40社(以下「40社」という。
747
748 )からなる。
749
750 A県において販
751 売される生コンの総販売数量のうち,
752 10社が占める割合は約60%,
753 40社が占める割合は約4
754 0%であり,
755 10社及び40社でほぼ100%を占めている。
756
757 なお,
758 生コンは,
759 一般に,
760 その性質
761 上長距離輸送が難しいので,
762 県内で消費される生コンのほとんどは同一県内で製造されている。
763
764
765 A県生コンクリート事業者協議会(以下「生コン協議会」という。
766
767 )は,
768 A県に所在する生コンの
769 製造業者が,
770 会員相互の親睦及び業界の健全な発展を目的として設立した社団法人であり,
771 その会
772 員は10社及び40社である。
773
774 生コン協議会には幹事会が置かれ,
775 10社が幹事会の構成員である。
776
777
778 10社は,
779 業界の当面する課題について意見交換を行ってきたが,
780 生コンの販売価格の引上げ問
781 題及び廃業する会員の生産設備の買取り問題について,
782 緊急に対処する必要がある旨の認識を共有
783 するに至った。
784
785 販売価格の引上げ問題とは,
786 最近,
787 生コンの需要者である建設業者からの価格引下
788 げ圧力が強くなり,
789 生コンの販売価格が下がり,
790 経営が苦しくなった会員が増えていることに対処
791 するため,
792 共同して価格を引き上げようとするものである。
793
794 会員の生産設備の買取り問題とは,
795 隣
796 接するB県で営業を行っている複数の生コン事業者が,
797 後継者がいないことや経営破綻状態にある
798 ことなどから廃業しようとするA県の事業者の生産設備を買い取ってA県に参入しようとすること
799 に対処しようとするものである。
800
801 すなわち,
802 これらB県の生コン事業者は,
803 B県において低価格で
804 販売することにより競争事業者の顧客を奪う行動に出ており,
805 これらの事業者がA県に参入すれば
806 A県においても同様の行動に出ることが懸念されることから,
807 生コン協議会側で先んじて生産設備
808 を買い取ることによりこのような事態の発生を回避しようとするものである。
809
810
811 10社は,
812 平成18年3月1日,
813 会合を持ち,
814 下記<決定1>の内容の合意をした。
815
816 10社は,
817
818 <決定1>の1に基づいて,
819 同年3月6日から価格の引上げを実施し,
820 <決定1>の2については,
821
822 10社のうち1社が,
823 3月中に1名の会員の生産設備を自社の費用で買い取った。
824
825
826
827 <決定1>
828 1. 1立方メートル当たりの現地引渡し価格を従来の相場である6000円前後から625
829 0円に引き上げ,
830 工場渡し価格を6050円とすること。
831
832 (注)
833 2. 廃業しようとする会員については,
834 10社のうちで生産設備に最も近い場所に所在する
835 1社がその生産設備を買い取ること。
836
837
838 (注)
839
840 現地引渡し価格とは,
841 工事現場において生コンを引き渡す場合の価格であり,
842 工場渡し
843 価格とは,
844 生コン製造工場において生コンを引き渡す場合の価格である。
845
846
847
848 10社が価格を引き上げたことを知った生コン協議会の会員は,
849 ほとんどが10社の価格引上げ
850 に追随して価格を引き上げたが,
851 数社は従来の価格で販売し続けた。
852
853 さらに,
854 10社は,
855 自社の費
856 用で生産設備を買い取っていくのは負担が大きすぎることから,
857 同年4月30日に開催された生コ
858 ン協議会の幹事会において,
859 生コン協議会の通常総会に下記<決定2>の内容の決議を行うよう提
860 案することを決めた。
861
862
863 これを受けて,
864 同年5月8日に全会員が出席して開催された生コン協議会の通常総会において,
865
866 10社が提案した<決定2>を内容とする決議案が全会一致で可決された。
867
868
869 その後,
870 10社が会員の販売価格の実態を調査したところ,
871 遅くとも5月15日以降には,
872 すべ
873 ての会員が<決定2>の1に記載された金額に価格引上げを行っていることが判明した。
874
875 さらに生
876 コン協議会は,
877 5月中に<決定2>の2に従って2社の生産設備を買い取って当該生産設備を廃棄
878 した。
879
880
881
882 11
883
884 <決定2>
885 1. 5月15日以降,
886 1立方メートル当たりの現地引渡し価格を6250円とし,
887 工場渡し
888 価格を6050円とすること。
889
890
891 2.生コン協議会は,
892 廃業しようとする会員から生産設備の買取りを行うこと。
893
894 買取り資金
895 は,
896 生コン協議会の積立基金から支出し,
897 買い取った設備は直ちに廃棄すること。
898
899
900
901 〔設
902
903 問〕
904
905 1. <決定1>に関する行為について,
906 だれに対して,
907 いかなる独占禁止法違反を問うことがで
908 きるか。
909
910 その法的根拠も示しなさい。
911
912
913 2. <決定2>に関する行為について,
914 だれに対して,
915 いかなる独占禁止法違反を問うことがで
916 きるか。
917
918 その法的根拠も示しなさい。
919
920
921
922 12
923
924 論文式試験問題集[知的財産法]
925
926 13
927
928 [知的財産法]
929 〔第1問〕(配点:50)
930 Xは,
931 糖尿病のインシュリン治療等に使用される注射器や注射方法に関する研究開発の結果,
932 注
933 射液の調整方法についての発明(以下「X発明」という。
934
935 )をし,
936 X発明について特許権(以下「X
937 特許権」という。
938
939 )を有している。
940
941 X発明は,
942 注射器内に二つの室を設け,
943 薬剤を一方の室に,
944 薬剤
945 を溶解する液体を他方の室にそれぞれ分離収納し,
946 注射する際に,
947 注射器を操作して,
948 薬剤を収納
949 した室に薬剤を溶解する液体をゆっくりと流入させることによって敏感な薬剤(注)を簡易に調整す
950 る注射液の調整方法に関するものである。
951
952
953 X発明は,
954 薬剤を収納した室に薬剤を溶解する液体を流入させて注射液を調整する際に「注射器
955 がその注射針部分を上にしてほぼ垂直に保持された状態」にすることを構成要件の一つ(以下「構
956 成要件A」という。
957
958 )としている。
959
960
961 Yは,
962 薬剤とこれを溶解する液体とを二つの室にそれぞれ分離収納した注射器(以下「Y注射器」
963 という。
964
965 )を製造し,
966 医師向けに販売している。
967
968 Y注射器には,
969 「注射器がその注射針部分を水平か
970 らやや上向きにして保持された状態」で注射液の調整を行うことを指示する取扱説明書が付されて
971 おり,
972 医師はこの指示どおりにY注射器を使用している。
973
974
975 Y注射器を用いた注射液の調整方法は,
976 構成要件Aを除くX発明の他の構成要件のすべてを充足
977 する。
978
979 YがY注射器に上記取扱説明書を付したのは,
980 以前に注射器を垂直に近い状態に保持して注
981 射液の調整を行うことを指示していたところ,
982 XからX特許権を侵害するという警告を受けたため
983 であるが,
984 Y注射器を用いて上記取扱説明書に従って調整作業を行っても特段の不都合は生じてい
985 ない。
986
987
988 以上の事実関係を前提として,
989 以下の各設問に答えよ。
990
991
992 1. X発明の構成要件Aの技術的意義が,
993 注射液を調整する際に針先から液が漏れないようにする
994 点にあり,
995 薬剤を収納した室に液体を流入させることには関係しないものであるとき,
996 Yの行為
997 は,
998 どのような場合にX特許権の侵害となるか。
999
1000
1001 2. X発明の構成要件Aが,
1002 出願当初の特許請求の範囲には記載されておらず,
1003 拒絶理由通知を受
1004 けてされた補正により付加されたものであった場合において,
1005 構成要件Aが,
1006 @拒絶理由通知に
1007 おける拒絶理由を回避するために付加されたものであったときと,
1008 A拒絶理由を回避するために
1009 付加されたものではなかったときとで,
1010 YによるX特許権の侵害の成否につき差異を生じるか。
1011
1012
1013 3. @上記の事実関係のようにY注射器を使用するのが医師である場合と,
1014 AY注射器を使用する
1015 のが専ら患者本人である場合とで,
1016 YによるX特許権の侵害の成否につき差異を生じるか。
1017
1018
1019 (注)
1020
1021 薬剤の中には,
1022 機械的な力が加わることで品質が劣化したり,
1023 溶解したときに変性する傾向が
1024 あるものが存在する。
1025
1026 ここでは,
1027 このような薬剤を「敏感な薬剤」と呼ぶ。
1028
1029
1030
1031 14
1032
1033 〔第2問〕(配点:50)
1034 出版社Aは,
1035 その発行する美術雑誌に新作美術作品の紹介記事を連載しているところ,
1036 職業写真
1037 家である甲に対し,
1038 同美術雑誌の次号の記事で紹介する作品の写真を撮影することを依頼した。
1039
1040 そ
1041 の際,
1042 甲はAから,
1043 撮影する作品は日本の伝統芸能の一つである浄瑠璃芝居に用いられる文楽人形
1044 αであり,
1045 文楽人形細工師乙が創作した新作品であること,
1046 乙は文楽人形αが写真撮影されること
1047 を承諾して撮影への協力を引き受けたこと,
1048 写真の掲載に当たっては写真撮影者の表示はしないこ
1049 と,
1050 写真原版は雑誌発行後に甲に返還することについて説明を受け,
1051 甲は写真撮影を承諾した。
1052
1053 そ
1054 して,
1055 甲は,
1056 写真βを撮影し,
1057 その写真原版をAに引き渡した。
1058
1059
1060 写真βは,
1061 文楽舞台において,
1062 衣装等を着けて鼓を持たせた文楽人形αを斜めから撮影したカラ
1063 ー写真であり,
1064 乙は,
1065 衣装等をつけた文楽人形αと鼓を撮影現場に持参し,
1066 自ら人形を操作してそ
1067 のポーズを決め,
1068 甲は,
1069 写真構図,
1070 採光,
1071 露光,
1072 シャッタースピード等を決めてシャッターを切っ
1073 たものである。
1074
1075
1076 出版社Aは,
1077 写真βを文楽人形α及び乙の紹介記事とともに掲載(写真撮影者の表示はない。
1078
1079 )し
1080 た美術雑誌を発行した。
1081
1082 その後,
1083 Aは,
1084 経営不振のため美術雑誌の発行を継続することができなく
1085 なり,
1086 写真βの写真原版は甲に返還されないままとなっていた。
1087
1088
1089 商業用カレンダーの製作を業とする会社丙は,
1090 出版社Aからその保有するすべての写真原版を買
1091 い受けたところ,
1092 その中に写真βの写真原版があったことから,
1093 これを顧客に配布する自社のカレ
1094 ンダー用の写真として利用することとした。
1095
1096 その際,
1097 丙は,
1098 自社のカレンダー仕様に合わせるため
1099 に写真βの左右の2辺を一部削除したので,
1100 その背景の一部がカットされた。
1101
1102 丙はこの写真を自社
1103 の来年度のカレンダーに掲載した。
1104
1105
1106 甲及び乙は,
1107 それぞれ丙に対して,
1108 著作権法上いかなる法的主張が可能か。
1109
1110
1111
1112 15
1113
1114 16
1115
1116 論文式試験問題集[労
1117
1118 17
1119
1120 働
1121
1122 法]
1123
1124 [労
1125
1126 働
1127
1128 法]
1129
1130 〔第1問〕(配点:50)
1131 以下のX,
1132 Yの言い分を読んで,
1133 次の各問いに答えなさい。
1134
1135
1136 1. Xの代理人としてYを被告に訴えを提起する場合の請求内容と額を具体的に述べなさい(遅延
1137 損害金は除く。
1138
1139 )。
1140
1141 (配点:8)
1142 2. Yの言い分から,
1143 1の訴訟で考えられる争点を挙げ,
1144 各争点に対するあなたの見解を述べなさ
1145 い。
1146
1147 (配点:42)
1148 【Xの言い分】
1149 私は,
1150 平成7年3月1日に広告代理店のY社に入社し,
1151 以後営業社員として勤務していました
1152 が,
1153 Y社は忙しいばかりで,
1154 月給は27万円(基本給20万円と営業手当7万円)と安く,
1155 嫌気
1156 がさしていたところ,
1157 以前の同僚から,
1158 独立して一緒に広告代理店をやらないかと誘われたので,
1159
1160 昨年(平成17年)11月中旬ころ,
1161 社長に年内一杯で退職したいと申し出ました。
1162
1163 このときは,
1164
1165 年が明けたら昇給を考えるからと強く慰留されたので,
1166 いったん退職を思いとどまりましたが,
1167
1168 今年になっても給料が上がる様子がないので,
1169 退職を決断し,
1170 元同僚が設立の準備を進めていた
1171 P社の取締役になることを承諾しました。
1172
1173 そして,
1174 本年3月8日付けで,
1175 広告代理店業を目的と
1176 し,
1177 私も取締役となったP社の設立登記ができましたので,
1178 3月10日付けで,
1179 3月末までの有
1180 給休暇取得届と,
1181 3月末日をもって退社する旨の退職届をY社に郵送しました。
1182
1183 有給休暇日数は
1184 十分残っていました。
1185
1186
1187 Y社では,
1188 給料は毎月10日に前月分が銀行振込みで支払われていましたが,
1189 Y社は,
1190 本年3
1191 月分の給料も退職金も,
1192 全く支払おうとしません。
1193
1194 そこで,
1195 私の権利が一刻も早く実現するよう
1196 法的手段をとってください。
1197
1198
1199 なお,
1200 私は,
1201 退職後1,
1202 2か月はのんびりするつもりでいましたが,
1203 4月上旬ころ,
1204 Y社から,
1205
1206 私を3月31日付けで懲戒解雇する,
1207 退職金は支給しないとの通知書が送られてきた上,
1208 3月分
1209 の給料も支払われないため,
1210 4月の中旬ころからP社の営業活動を始めました。
1211
1212 といっても,
1213 Y
1214 社時代の担当顧客に対しては積極的に取引を勧誘した訳ではなく,
1215 退職のあいさつに行ったとこ
1216 ろ是非私に引き続き担当してほしいと頼まれたので,
1217 P社で引き受けただけです。
1218
1219 Y社のいう誓
1220 約書を提出したことは事実ですし,
1221 退職金規程の内容も知っていましたが,
1222 Y社の言い分は不当
1223 だと思います。
1224
1225
1226 【Yの言い分】
1227 当社は,
1228 従業員が25人前後の広告代理店です。
1229
1230 営業社員にはそれぞれ専属で顧客数社を担当
1231 させているので,
1232 営業社員と顧客との個人的信頼関係が会社の売上げに直結します。
1233
1234 平成5年こ
1235 ろ,
1236 当社の社員が退職直後に同業他社に入社し,
1237 担当していた顧客をそっくり他社に持っていっ
1238 たことがありました。
1239
1240 その経験から,
1241 社員を採用するに当たっては,
1242
1243 「退職後1年間は同業他社に
1244 就職しないことを誓約いたします。
1245
1246 万一違約した場合は,
1247 退職金を放棄し又は受領した退職金を
1248 全額返還いたします。
1249
1250 」との文言による誓約書を提出することを義務付けており,
1251 Xも入社時これ
1252 を提出しています。
1253
1254
1255 Xは,
1256 本年3月13日に出勤せず,
1257 前日までに有給休暇届と退職届が郵送されていました。
1258
1259 不
1260 審に思い急きょ調査したところ,
1261 Xが3月8日付けで設立されたP社の取締役に就任していたこ
1262 とが判明しました。
1263
1264 そこで,
1265 当社は,
1266 就業規則第56条第3号,
1267 第10号によりXを3月31日
1268 付けで懲戒解雇することとし,
1269 念のため退職金は不支給とすることも付記して,
1270 4月5日にその
1271 通知書を発送しました。
1272
1273 Xが担当していた顧客5社は,
1274 そろって本年5月初めころ,
1275 これまで継
1276 続して当社に発注していた仕事の向う3か月分をP社に発注したため,
1277 当社は少なくとも300
1278
1279 18
1280
1281 万円の利益を失いました。
1282
1283
1284 そもそも誓約書や就業規則,
1285 退職金規程の内容からして,
1286 Xに退職金を支払う義務はありませ
1287 んし,
1288 それは別としても,
1289 当社は,
1290 XのせいでP社に顧客を奪われ,
1291 差引きではXが請求する以
1292 上の損害を受けていますから,
1293 いずれにせよ,
1294 Xに支払うべきものはありません。
1295
1296
1297 なお,
1298 当社の就業規則及び退職金規程には,
1299 別紙の定めがあります。
1300
1301
1302
1303 別
1304
1305 紙
1306
1307 【Yの就業規則(関係部分のみ抜粋)】平成2年4月1日施行
1308 (退職金の支給)
1309 第30条
1310
1311 社員が退職するときは,
1312 別に定める「退職金規程」により退職金を支払う。
1313
1314
1315
1316 (懲戒解雇)
1317 第56条
1318 1,
1319 2
1320 3
1321
1322 次の各号の一に該当する場合には懲戒解雇とする。
1323
1324
1325 (略)
1326
1327 会社の承認を得ず,
1328 在籍のまま他人に雇用されたとき又は就業に従事したとき
1329
1330 4〜9
1331 10
1332
1333 (略)
1334 前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき
1335
1336 【Yの退職金規程(関係部分のみ抜粋)】平成2年4月1日施行
1337 (算出方法)
1338 第6条
1339
1340 退職金は,
1341 別表の退職金の支給算式により算出支給する。
1342
1343
1344
1345 (支給事由)
1346 第7条
1347 1
1348
1349 社員が満3年以上勤務し,
1350 次の各号の一に該当する場合に支給する。
1351
1352
1353 自己の都合により退職したとき
1354
1355 2〜5
1356
1357 (略)
1358
1359 (退職金の支給除外)
1360 第8条
1361
1362 退職金は,
1363 次の各号の一に該当する場合は支給しない。
1364
1365
1366
1367 1
1368
1369 勤続3年未満の者
1370
1371 2
1372
1373 懲戒解雇された者
1374
1375 (支給制限)
1376 第9条
1377
1378 退職に際して次の事項に該当する場合は,
1379 退職金を減額し又は支給しないことがある。
1380
1381
1382
1383 退職金支給後に次の事項に該当することが判明した場合は,
1384 支給した退職金の全部又は一部
1385 の返還を求めることがある。
1386
1387
1388 1,
1389 2
1390 3
1391
1392 (略)
1393
1394 退職後1年以内に同業他社へ転職した場合には,
1395 退職金を通常の半額とする。
1396
1397
1398
1399 19
1400
1401 別
1402
1403 表
1404
1405 ・
1406
1407 退職金の支給算式は次のとおりとする。
1408
1409
1410 支給退職金額=退職時基本給+退職時基本給×乗率(注1)×(勤続年数(注2)−4)
1411 (注1)
1412
1413 (注2)
1414
1415 乗率は次のとおりとする。
1416
1417
1418 勤続
1419
1420 4年未満
1421
1422 乗率
1423
1424 0.0
1425
1426 勤続
1427
1428 4年
1429
1430 〃
1431
1432 0.5
1433
1434 勤続
1435
1436 5年以上10年未満
1437
1438 〃
1439
1440 0.6
1441
1442 勤続10年以上15年未満
1443
1444 〃
1445
1446 0.7
1447
1448 勤続15年以上20年未満
1449
1450 〃
1451
1452 0.8
1453
1454 勤続20年以上
1455
1456 〃
1457
1458 1.0
1459
1460 勤続年数の計算においては,
1461 端数の月数は,
1462 6か月未満は切り捨て,
1463 6か月以
1464 上は1年に切り上げる。
1465
1466
1467 以
1468
1469 20
1470
1471 上
1472
1473 〔第2問〕(配点:50)
1474 以下の事案を読んで,
1475 X労組がY社に対してとり得る法的手段について論じなさい。
1476
1477
1478 Z社は,
1479 Y社が製造する製品を梱包する仕事を同社から請け負い,
1480 自社が雇用する20名の社
1481 員をY社の工場において就労させている。
1482
1483 Y社の工場は老朽化が進んでおり,
1484 特に梱包作業を行
1485 う場所は換気が十分でなく,
1486 また,
1487 賃金もY社の正社員と比べると格段に安かったため,
1488 Y社の
1489 工場で働くZ社の社員はかねてから不満を持っていた。
1490
1491 そのため,
1492 Y社で働くZ社の社員である
1493 Aが,
1494 X労働組合(以下「X労組」という。
1495
1496 )の役員であるBに相談したところ,
1497 X労組に加入す
1498 れば,
1499 X労組として改善に取り組むことが可能だとBが述べたため,
1500 AはX労組に加入するとと
1501 もに,
1502 他の社員にも加入を働きかけた。
1503
1504 この結果,
1505 Y社の工場で働くZ社の社員のうち,
1506 チーム
1507 リーダーを除く19名がX労組に加入することとなった。
1508
1509 なお,
1510 X労組は,
1511 近隣の様々な企業で
1512 働く労働者によって組織された労働組合である。
1513
1514
1515 X労組がZ社に対し,
1516 Y社の工場における換気の改善と賃金引上げを求めて団体交渉を申し入
1517 れたところ,
1518 Z社はこれに応じ,
1519 換気の改善をY社に申し入れることを約束した。
1520
1521 また,
1522 賃金引
1523 上げについても,
1524 Y社からの請負代金が増額されなければ実現が難しいので,
1525 Y社に対し請負代
1526 金の増額を求めると回答した。
1527
1528 これに基づき,
1529 Z社はY社に対し,
1530 換気の改善と請負代金の増額
1531 を求めたが,
1532 Y社はこれを承諾せず,
1533 かえって,
1534 これ以上文句があるのであれば,
1535 Z社との請負
1536 契約の解除も考えると述べた。
1537
1538 Z社は,
1539 Y社から融資を受けていることもあり,
1540 これ以上求める
1541 のは無理と判断し,
1542 X労組に対してその事情を説明した。
1543
1544 X労組はZ社と交渉しても成果を得ら
1545 れないと判断し,
1546 今度は,
1547 Y社に対して換気の改善と請負代金の増額を求めて団体交渉を申し入
1548 れた。
1549
1550 これに対し,
1551 Y社は,
1552 X労組と交渉する義務はないとして団体交渉を拒否したが,
1553 Y社で
1554 労務を担当する総務課長Cは,
1555 問題が大きくなりはしないかと心配した。
1556
1557 そこで,
1558 CはAに対し,
1559
1560 Z社の社員がX労組を脱退しなければ,
1561 Z社との請負契約は解除されるだろうと述べた。
1562
1563 なお,
1564
1565 X労組は労働組合法第2条の要件を満たしている。
1566
1567
1568
1569 21
1570
1571 22
1572
1573 論文式試験問題集[環
1574
1575 23
1576
1577 境
1578
1579 法]
1580
1581 [環
1582
1583 境
1584
1585 法]
1586
1587 〔第1問〕(配点:50)
1588 産業廃棄物に関して,
1589 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)は,
1590 1970年の
1591 制定時より,
1592 排出事業者処理責任を基本的方針としている。
1593
1594 ところが,
1595 この方針の下で,
1596 具体的な
1597 法政策は,
1598 変遷している。
1599
1600
1601 [資料]は,
1602 2000年に改正される以前の廃棄物処理法の,
1603 不法投棄に
1604 対して原状回復を求める措置命令規定及びその関係条文である。
1605
1606
1607 これを読んだ上で,
1608 以下の設問に答えよ。
1609
1610
1611 〔設
1612
1613 問〕
1614
1615 1. [資料]に掲げた措置命令規定に対応する現在の廃棄物処理法の関係規定は,
1616 基本的に,
1617 2
1618 000年改正によるものであるが,
1619 それ以前の規定とは,
1620 どのように異なっているか。
1621
1622 排出事
1623 業者から適法な委託を受けた産業廃棄物収集運搬許可業者が,
1624 委託に係る産業廃棄物を不法投
1625 棄した場合を念頭において論ぜよ。
1626
1627
1628 2. 2000年改正は,
1629 排出事業者処理責任の観点からは,
1630 どのように評価することができるか。
1631
1632
1633 改正に至る背景に触れつつ論ぜよ。
1634
1635
1636 [資
1637
1638 料]2000年改正前の廃棄物処理法
1639 (措置命令)
1640
1641 第19条の4第1項
1642
1643 次の各号に掲げる場合において,
1644 生活環境の保全上支障が生じ,
1645 又は生ず
1646
1647 るおそれがあると認められるときは,
1648 当該各号に定める者は,
1649 必要な限度において,
1650 当該処分
1651 を行つた者(……第12条第3項,
1652 ……の規定に違反する委託により当該処分が行われたとき,
1653
1654 ……は,
1655 これらの委託をした者を含む。
1656
1657 ……)に対し,
1658 期限を定めて,
1659 その支障の除去又は発
1660 生の防止のために必要な措置……を講ずべきことを命ずることができる。
1661
1662
1663 一
1664
1665 (略)
1666
1667 二
1668
1669 産業廃棄物処理基準……に適合しない産業廃棄物の処分が行われた場合
1670
1671 都道府県知事
1672
1673 (…)
1674 (事業者の処理)
1675 第12条第3項
1676
1677 事業者は,
1678 その産業廃棄物の運搬……を他人に委託する場合には,
1679 政令で定め
1680
1681 る基準に従い,
1682 その運搬については第14条第8項に規定する産業廃棄物収集運搬業者……に,
1683
1684 ……委託しなければならない。
1685
1686
1687 (産業廃棄物処理業)
1688 第14条第1項
1689
1690 産業廃棄物……の収集又は運搬を業として行おうとする者は,
1691 当該業を行おう
1692
1693 とする区域……を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
1694
1695 ……
1696 第14条第8項
1697
1698 第1項の許可を受けた者……は,
1699 産業廃棄物処理基準に従い,
1700 産業廃棄物の収
1701
1702 集若しくは運搬……を行わなければならない。
1703
1704
1705
1706 24
1707
1708 〔第2問〕(配点:50)
1709 Aは,
1710 B県C町にある自己所有の山林を造成して,
1711 ゴルフ場を開発する計画を立てた。
1712
1713 Dらは,
1714
1715 隣接するB県E市に居住する住民であり,
1716 古くから桜や紅葉の名所として名高い上記計画地域にハ
1717 イキングに訪れ,
1718 森林浴を楽しんできた。
1719
1720 また,
1721 上記計画地域には,
1722 絶滅が危ぐされている野生生
1723 物が生息している。
1724
1725 Dらは何とかこの開発を阻止したいと考えている。
1726
1727
1728 この場合について,
1729 以下の設問に答えよ。
1730
1731
1732 〔設
1733
1734 問〕
1735
1736 1. Dらは,
1737 Aに対してどのような訴訟を提起することが考えられるか。
1738
1739 裁判例の動向とその理
1740 由を踏まえつつ論ぜよ。
1741
1742
1743 2. 設問の事例を踏まえて,
1744 このような紛争を未然に防止するためにどのような法政策的仕組み
1745 が考えられるか。
1746
1747 環境法の理念といわれている環境権と関連させて論ぜよ。
1748
1749
1750
1751 25
1752
1753 26
1754
1755 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1756
1757 27
1758
1759 [国際関係法(公法系)]
1760 〔第1問〕(配点:50)
1761 A国法に基づいて設立されA国に本社を持つY会社(以下「Y社」という。
1762
1763 )は,
1764 途上国であるB
1765 国に同国法に基づいて100パーセント子会社Y1を設立して,
1766 Y1で人工甘味料αの生産を19
1767 80年から行い,
1768 多額の収益を上げてきた。
1769
1770 A国法に基づいて設立されA国に本社を持つ企業の中
1771 でB国に相当多額の資本を投下してB国で事業活動を行っていたのはY1のみであった。
1772
1773
1774 1996年5月にA国とB国は投資保護協定の交渉を終えて共に署名をした。
1775
1776 その中には,
1777 以下
1778 の事案に関係する第10条が入っていた(それ以外には直接的に関係する規定はなかった。
1779
1780 )。
1781
1782
1783 第10条
1784
1785 いずれの締約国も,
1786 (a)公共のためであり,
1787 (b)差別的なものではなく,
1788 かつ,
1789 (c)迅速,
1790
1791 十分かつ実効的な補償の支払を伴ってとられるものである場合を除くほか,
1792 自国の領域
1793 内にある他方の締約国の投資家の投資財産について,
1794 収用又は国有化を実施してはなら
1795 ない。
1796
1797
1798
1799 1997年春ごろから,
1800 B国において人工甘味料αの発がん性がにわかに問題となり,
1801 同年8月
1802 1日には,
1803 B国議会は,
1804 同年9月1日以降,
1805 B国内においてαの製造及び販売を禁止するという法
1806 律を制定した。
1807
1808 Y1は,
1809 B国においてαをほぼ独占的に製造し,
1810 販売していた。
1811
1812
1813 αの製造及び販売禁止の結果,
1814 Y1は操業中止に追い込まれて,
1815 1998年1月には経営が破綻
1816 し,
1817 B国内で会社の清算手続が始まった。
1818
1819
1820 人工甘味料αの製造及び販売が禁止された1997年9月の時点では,
1821 A,
1822 B両国間の上記の投
1823 資保護条約は,
1824 A国では議会の承認を得て締結のための国内手続を完了し,
1825 A国政府はその旨をB
1826 国政府に通報していた。
1827
1828 他方,
1829 B国でも,
1830 この投資保護条約の締結のための国内手続を完了するた
1831 めにはB国議会の承認が必要であったが,
1832 B国政府は承認のために議会に付議はしたが,
1833 2001
1834 年1月までに議会の承認は得られていなかった。
1835
1836
1837 このような状況下で,
1838 Y社はB国裁判所に,
1839 αの製造及び販売を禁止した法律の制定によって損
1840 害又は損失を被ったとして,
1841 B国に対して損害賠償又は損失補償を請求して出訴し,
1842 最高裁判所ま
1843 で争ったが,
1844 2000年1月に最高裁判所は最終的にY社の請求を退けた。
1845
1846
1847 最高裁判所の判決を受けて,
1848 Y社はB国から何らかの条約上又は国際慣習法上の救済を得るべく,
1849
1850 A国外務省に働きかけを行った。
1851
1852 Y社がB国から救済を得られるようにするためには,
1853 A国外務省
1854 は,
1855 外交交渉を通じてどのような法的主張をB国に対して行えばよいかを論述しなさい。
1856
1857 なお,
1858 A,
1859
1860 B両国は,
1861 条約法に関するウィーン条約の当事国である。
1862
1863
1864
1865 28
1866
1867 〔第2問〕(配点:50)
1868 A国は,
1869 国内法に基づいてB国にODA(政府開発援助)を供与してきた。
1870
1871 B国は,
1872 国際テロリズ
1873 ムを支援している国家であるとして,
1874 繰り返し国連総会決議により非難を受けている。
1875
1876 国際テロリ
1877 ズム支援国家へのODAを縮小又は廃止するように加盟国に求める国連総会決議も,
1878 繰り返し採択
1879 されており,
1880 大多数の国が国連総会で同様の主張を示している。
1881
1882 A国とC国は,
1883 A国の海底油田を
1884 共同開発しており,
1885 C国はそのために長年にわたりA国に技術供与及び投資を行ってきており,
1886 こ
1887 の海底油田開発は,
1888 今や,
1889 A国の資源開発と経済発展のためには不可欠な要因となっている。
1890
1891 C国
1892 は,
1893 国際テロリズム撲滅を国際社会に対して繰り返し主張しており,
1894 その主導的な立場にある。
1895
1896 A
1897 国,
1898 B国及びC国は,
1899 いずれも国連加盟国である。
1900
1901
1902 そうした状況でC国は,
1903 国際テロリズム支援国家へのODAの制限又は禁止は,
1904 既に国際慣習法
1905 として成立しており,
1906 この国際慣習法はA国を拘束しているとして,
1907 A国に対して,
1908 B国へのOD
1909 Aやそれを根拠付ける国内法を批判して,
1910 それらが改められなければ,
1911 C国からの海底油田開発に
1912 関する技術供与及び投資を打ち切ると公式にA国に対して通告した。
1913
1914
1915 A国は,
1916 C国のこの通告に対して,
1917 次のように批判した。
1918
1919
1920 「国際テロリズム支援国家へのODAの制限又は禁止については,
1921 国連総会決議が繰り返し採択
1922 され,
1923 諸国の主張が繰り返されたとはいえ,
1924 国際慣習法として成立しているとはいえない。
1925
1926 仮に国
1927 際慣習法として成立しておりA国を拘束しているとしても,
1928 このような国際慣習法は,
1929 A国からB
1930 国へのODAの実施を担保するA国の国内法に違背するので,
1931 A国はこの国際慣習法に従うことは
1932 できない。
1933
1934 A国がB国とどのような経済関係を結ぶかは,
1935 A国が決定する問題であって,
1936 これにつ
1937 いてC国がA国に対して経済的圧力をかけて,
1938 A国の対外政策や国内法の変更を迫ることは不干渉
1939 原則違反である。
1940
1941 」
1942 A国のこの主張に対するC国の反論を論述しなさい。
1943
1944 なお,
1945 A国の主張に含まれない論点は考え
1946 る必要はない。
1947
1948
1949
1950 29
1951
1952 30
1953
1954 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1955
1956 31
1957
1958 [国際関係法(私法系)]
1959 〔第1問〕(配点:50)
1960 日本人男Yと米国人女Xは日本で婚姻して共同生活を始め,
1961 Xは子を懐胎した。
1962
1963 しかし,
1964 その後
1965 両者は不和となり,
1966 Xはその出身地である米国のA州に帰り,
1967 その地において子Zを出生した。
1968
1969 Z
1970 の出生を知ったYは,
1971 Zに会うために米国に赴き,
1972 A州のホテルに宿泊した。
1973
1974 Xは,
1975 YがZに対し
1976 て支払うべき扶養料を確保するため,
1977 A州の送達吏とともに同ホテルに赴き,
1978 送達吏は,
1979 Zへの扶
1980 養料の支払をYに求める訴えの訴状をYに手交した。
1981
1982 Yはこの訴状をその場で破り捨てて日本に帰
1983 国したが,
1984 A州の裁判所は,
1985 Y欠席のまま,
1986 Yに対してZへの月額1000合衆国ドルの支払を命
1987 ずる判決を下した。
1988
1989 なお,
1990 Zは,
1991 日本と米国の国籍を有し,
1992 A州に居住している。
1993
1994
1995 以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。
1996
1997
1998 〔設
1999
2000 問〕
2001
2002 1. A州の裁判所の判決の効力が日本において問題となる場合に,
2003 その効力が日本で承認される
2004 ための要件である管轄権はA州に認められるか。
2005
2006 なお,
2007 A州の法律によると,
2008 以下のいずれか
2009 の場合にA州の裁判所は,
2010 A州に居住しない者(以下「本人」という。
2011
2012 )を被告とする扶養関係
2013 事件につき管轄権を有するとされている。
2014
2015
2016 @
2017
2018 本人がA州において訴状の交付送達を受けたとき
2019
2020 A
2021
2022 本人が応訴したとき
2023
2024 B
2025
2026 本人がA州に子とともに居住したことがあるとき
2027
2028 C
2029
2030 本人がA州に居住したことがあり,
2031 かつ,
2032 子の出産前に要した費用又は扶養料を支払
2033 っていたとき
2034
2035 D
2036
2037 本人の行為又は指示の結果として子がA州に居住しているとき
2038
2039 E
2040
2041 本人が性交渉をA州において持ち,
2042 その結果として子が懐胎された可能性があるとき
2043
2044 2. Xは,
2045 その後,
2046 離婚とXのための離婚後の扶養料の支払をYに求めてA州の裁判所に訴えを
2047 提起した。
2048
2049 A州の裁判所は,
2050 A州の法律を適用し,
2051 XとYの離婚を認め,
2052 同じくA州の法律に
2053 より,
2054 Xのために離婚後の扶養料として月額2000合衆国ドルを支払うようYに命ずる判決
2055 を下した。
2056
2057 Yは,
2058 この判決に従い,
2059 1年間,
2060 日本から同金額を送金したが,
2061 自己の経済状況が
2062 悪化したため,
2063 日本の裁判所に扶養料を月額1000合衆国ドルに減額する申立てをした。
2064
2065 A
2066 州の前記判決が日本における承認の要件を満たしていると仮定した場合,
2067 この扶養料減額請求
2068 に日本の裁判所が適用すべき準拠法は何か。
2069
2070
2071 3. A州の裁判所の離婚判決の効力が日本において承認されないことが判明したため,
2072 Xは日本
2073 の裁判所に離婚の申立てをした。
2074
2075 この場合に,
2076 Zの親権者の指定について日本の裁判所が適用
2077 すべき準拠法は何か。
2078
2079
2080
2081 32
2082
2083 〔第2問〕(配点:50)
2084 日本の商社であるX会社は,
2085 甲国の有名な醸造所であるY会社との間で,
2086 Yが特定年に特定の一
2087 級畑で収穫されたぶどうの果実のみを使って醸造した特定の銘柄の瓶詰ワイン(一連番号の付され
2088 たもの)で,
2089 Yの特定の倉庫に保管中のもの全部(以下「本件物品」という。
2090
2091 )を「F.O.B.甲国
2092 の港(インコタームズ2000)」の貿易条件で買い受け,
2093 代金は日本の銀行の発行する信用状で決
2094 済する契約を締結した。
2095
2096 この契約の条項中には,
2097 準拠法を日本法とする旨の条項があるが,
2098 紛争の
2099 解決方法に関する条項はない。
2100
2101 Xは,
2102 日本の海上運送業者に甲国の港から日本の港までの運送を依
2103 頼した。
2104
2105
2106 以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。
2107
2108 なお,
2109 各問は独立した問いである。
2110
2111
2112 〔設
2113
2114 問〕
2115
2116 1. Xが,
2117 日本に到着した本件物品を転売したが,
2118 予想外に品質が劣っていたため予定した価格
2119 で販売できなかったことを理由に,
2120 Yに損害賠償を請求している。
2121
2122 Xは,
2123 Yの損害賠償義務は
2124 日本において履行されるべきであるとして,
2125 日本の裁判所に訴えを提起した。
2126
2127 日本の裁判所は
2128 この訴えについて国際裁判管轄権を有するか。
2129
2130 なお,
2131 Yは日本に事務所,
2132 営業所等の活動の拠
2133 点や販売代理店などは有していないものとする。
2134
2135
2136 2. Xは,
2137 本件物品の日本における転売時期との関係で,
2138 陸揚げから1年後に本件物品の検査を
2139 したところ,
2140 その劣化の原因がYの倉庫での保管状態にあることが判明した。
2141
2142 XのYに対する
2143 損害賠償請求について日本の裁判所が国際裁判管轄権を有することを前提とした場合に,
2144 Xの
2145 Yに対する請求は認められるか。
2146
2147
2148 3. Yは,
2149 甲国の港でXに本件物品を引き渡したが,
2150 XY間の契約締結以前に,
2151 甲国のZ会社が
2152 本件物品をYから買い受け,
2153 本件物品をYに預けたままにしていたことが判明した。
2154
2155 Xが日本
2156 の港で陸揚げされた本件物品の引渡しを受けた後,
2157 Zは,
2158 Xに対し,
2159 所有権に基づいて本件物
2160 品の引渡しを求める訴えを日本の裁判所に提起した。
2161
2162 Xは本件物品について自己の所有権を主
2163 張している。
2164
2165 XZ間の本件物品の所有権に関する争いは,
2166 いかなる国の法律によって判断され
2167 るか。
2168
2169 また,
2170 Zの請求は認められるか。
2171
2172 なお,
2173 甲国法では,
2174 @動産の所有権の移転は契約の効
2175 果によって生ずる,
2176 A動産について売主が所有権を移転した場合には,
2177 売主は権利を喪失し,
2178
2179 その者からそれ以後に当該動産を買い受けた者は当該動産の所有権を取得することはない,
2180 B
2181 ただし,
2182 動産の売主が商人であり,
2183 買主が売買契約後も当該動産を売主に預けていた場合は,
2184
2185 その売主からそれ以後に当該動産を買い受けた者は所有権を取得するものとされている。
2186
2187
2188
2189 33
2190
2191