1 新司法試験プレテスト(模擬試験)論文式試験問題出題趣旨
2
3 【公法系科目】
4 〔第1問〕
5 本問の「国際テロリズム対策法案(要綱)」には,刑罰法規の明確性の要件,国際テロリズム
6 活動規制と結社の自由及び表現の自由との関係,
7 「特定国際テロリズム組織」の指定の際の適正
8 手続の保障,裁判官の令状を要しない捜索・押収の許容性,捜査機関の質問権限と自己負罪拒
9 否特権との関係等,様々な憲法上の問題があり得る。本問は,こうした架空の法案を素材とし
10 て,その背景を示す資料をも参照しながら,憲法上の問題を分析する力を問うとともに,違憲
11 の疑いを軽減させる方策を考察する能力をも問うものである。
12 〔第2問〕
13 児童福祉施設(保育所)に関する法令を取り上げて,個別法令の趣旨解釈の在り方,行政処
14 分と契約の違い,行政手続法と個別法の関係及び行政事件訴訟法の解釈適用(新しく法定され
15 た抗告訴訟類型のほか,適宜,当事者訴訟についても理解を試す。)について,個別法令の条文
16 及び具体的事例を踏まえた理解を問う。
17 出題に際して,視点を限定したり,論じる対象を限定したりすることによって,問いに対す
18 る答の幅を限定することも試みている。
19 【民事系科目】
20 〔第1問〕
21 本問は,銀行の支店長代理が顧客から金銭をだまし取った事例について,顧客に対する銀行
22 の責任の有無と内容及び銀行の取締役や執行役の対第三者責任の有無の検討を求める問題であ
23 る。事例分析力,論理的思考力,法の解釈・適用能力,文章構成力や表現力等の基本的な能力
24 が備わっているか否かを判定するため,多数の関係当事者の証言等から構成される長文の事例
25 を出題した。
26 問1は,類似事例の3通りの詐欺類型と対照して分析することで,代理権濫用・表見代理・
27 使用者責任など類型により中心的に検討すべき法的構成や重要となる事実が異なることが理解
28 できるかを尋ねている。また,いわゆる間接被害者が損害賠償責任を追及する際に,相当因果
29 関係の存否の判断につきどのような要素が重要となるかを事実関係に即して検討することを求
30 めている。
31 問2は,委員会等設置会社における取締役及び執行役の対第三者責任(商法特例法第21条
32 の22)の成否を問うものである。制度趣旨を踏まえつつ同条の適用要件を明確にした上で,
33 問題文に現れた間接事実等を用いながら,役員ごとに丁寧な認定を行うことが求められる。役
34 員相互間の職責の分離を前提としながら,各人にいかなる任務懈怠があるかを,内部統制シス
35 テムの構築及び運用に関する義務も視野に入れながら,きめ細やかに分析することが期待され
36 る。
37 〔第2問〕
38 本問は,
39 「補助参加の利益」を題材に,事案の法的分析力,判例・学説の基本的な理解,裁判
40 例の読解力,判断基準を的確に事案に当てはめて論理的な議論を展開する能力を問うものであ
41 る。
42 本問のように,見解の分かれる問題点では,各見解の理論的根拠を正確に理解しなければ,
43
44 1
45
46 真に問題点を理解したということはできない。そこで,
47 「補助参加の利益」についての理解度を
48 多角的に判定するために,単に各見解の結論的命題を事案に当てはめるだけではなく,その前
49 提として,各見解がどのような理論的根拠を有するかを説明すること,訴訟の結果との利害関
50 係に関して想定される複数の法律関係を分析・検討すること,裁判例を事案に即して読み解き,
51 そこで採用されている判断基準を抽出することをも求めたものである。
52 【刑事系科目】
53 〔第1問〕
54 第1問は,犯罪発生後の捜査経過及び各被疑者の供述内容を素材として提供し,これらの証
55 拠関係を前提に,各被疑者の刑事責任を検討する上で必要な事実関係(占有の帰属及び殺意の
56 有無・程度等)について,間接事実を意識した的確な事実認定ができるかどうかを問うととも
57 に,認定した事実を踏まえ,共犯者相互で認識が異なる場合における窃盗罪と横領罪の共同正
58 犯の成否及び殺人罪と事後強盗(致死)罪の共同正犯の成否並びに付随する問題点等を検討さ
59 せることにより,問題抽出能力,事例解析能力,論理的思考力及び法解釈・適用能力等を試す
60 こととする。
61 〔第2問〕
62 第2問は,一連の捜査・公判の経過並びにその間における被疑者,被告人,被害者及び目撃
63 者の各供述内容を素材として提供し,これらの具体的な犯罪事象及び証拠関係を前提として,
64 刑事訴訟法上の問題点の解決に必要となる具体的な事実関係を整理,分析し,これを踏まえて,
65 逮捕・勾留の要件及び適法性,伝聞証拠の意義並びに共同被告人の供述調書の証拠能力などを
66 検討し,それを具体的事実に当てはめさせることにより,問題抽出能力,事例解析能力,論理
67 的思考力及び法解釈・適用能力を試すこととする。
68 【選 択 科 目】
69 [倒
70
71
72
73 法]
74
75 〔第1問〕
76
77
78 本問は,動産売買先取特権の目的物等による代物弁済に関して否認の成否を問う問題であ
79 り,(1)動産売買先取特権の目的物による代物弁済,(2)動産売買先取特権の目的物の転売代
80 金債権による代物弁済,(3)動産売買先取特権の目的物を転売先から取り戻してする代物弁済
81 のそれぞれについて否認の成否を尋ねている。
82
83
84
85 A会社による(1)から(3)までの行為は,いずれも支払不能前に行われた代物弁済行為であ
86 り,破産法第162条第1項第2号の適用の可否が問題となる。このうち,(1)については,
87 最高裁判例(最判昭和41年4月14日民集20巻4号611ページ)において,被担保債
88 権の範囲内においては他の破産債権者を害する行為に当たらないとして,否認の対象となら
89 ないとされ,(2)についても,転売代金債権が物上代位の対象となることから,(1)と同様に
90 否認を否定する裁判例
91 (大阪地判昭和57年8月9日判例タイムズ483号104ページ等)
92 がある。しかし,他方で,(3)については,実質的には新たな担保権の設定と同視し得るとし
93 て,否認を肯定する最高裁判例があり(最判平成9年12月18日民集51巻10号421
94 0ページ),本問では,この判旨の一部を「見解」として掲げている。
95 (1)や(2)の考え方は,動産売買先取特権の目的物やその転売代金債権は,破産債権者のた
96 めの共同担保を構成しないとするものであるが,(3)の最高裁判例に賛成する立場からは,動
97 産売買先取特権は,公示方法を欠き,追及効もなく,さらに,転売代金債権に対する物上代
98 位についても,行使方法等に関する法律上又は事実上の制約により優先弁済の実現が不確実
99 であって,破産の場面で,動産売買先取特権を抵当権のように担保価値の把握が容易な担保
100
101 2
102
103 物権と同等のものとして取り扱うことには疑問があるとの指摘がされている。
104
105
106 (1)から(3)までについて解答するに当たっては,上記の指摘を踏まえ,動産売買先取特権
107 の効力及び行使方法や転売代金債権に対する物上代位の可能性等についても検討した上で,
108 その結論に至る論理構成につき整合性のある論述をすることが求められる。
109
110 〔第2問〕
111
112
113 設問1は,再生手続の開始決定が係属中の訴訟に与える影響を問う問題であり,再生手続
114 によらなければ行使できない権利とそうではない権利との区別の理解を尋ねている。あわせ
115 て,債権者代位訴訟の取扱いも尋ねている。
116 訴訟@については,債権者代位訴訟が,金銭債権の保全ではなく,登記請求権を保全する
117 ためのいわゆる転用型として用いられる場合にも,民事再生法第40条の2が適用されるか
118 を検討することになる。
119 訴訟Aについては,訴訟物である権利が再生債権のため,民事再生法第40条第1項によ
120 り開始決定があると中断することになる。
121 訴訟Bについては,訴訟物である権利が一般優先債権(民再第122条)のため,開始決
122 定によって中断することはなく,そのまま続行することになる。
123
124
125
126 設問2は,事業の継続に不可欠な財産に担保権が設定されている場合に,担保権の実行を
127 避けるために再生債務者がとることのできる手段について尋ねている。
128 第1に,A社は,担保権の実行申立てを取り下げてもらうために,別除権者との間で別除
129 権協定の締結を目的とする交渉をすることができる。
130 第2に,A社は,担保権消滅請求(民再第148条)をすることが考えられる。これに対
131 して,C信用金庫は,事業継続にとっての甲建物の不可欠性を争うために許可決定に対して
132 即時抗告をすることができ(民再第148条第4項),また,再生債務者の申出額を争うため
133 に価額決定請求をすることができる(民再第149条)。
134 第3に,上記の交渉あるいは請求の前提として,A社は,担保権の実行手続の中止命令(民
135 再第31条)を求めることができる。これに対して,C信用金庫は,民事再生法第31条第
136 1項所定の要件の存在を争って,中止命令に対して即時抗告をすることができる(民再第3
137 1条第4項)。
138
139
140
141 設問3は,再生手続の挫折の後の手続の流れ及び再生手続係属中の与信に係る請求権の牽
142 連破産における取扱いについて尋ねている。
143 再生計画案の否決に基づく再生手続の廃止(民再第191条第3号)と,これに基づく牽
144 連破産(民再第249条第1項・第250条第1項),及び再生手続における共益債権(民再
145 第119条第5号)が牽連破産において財団債権となる旨(民再第252条第6項前段)に
146 ついて言及することになる。
147
148 [租
149
150
151
152 法]
153
154 〔第1問〕
155 事業所得及び給与所得の意義と判断基準に関する基本的理解を問うとともに,事案に現れた
156 事実を分析し判断基準に照らして主張する力を問う問題である。
157 〔第2問〕
158 事例に即して所得課税の基本的な理解を問う問題である。
159 Aについて,会社に対して寄付することを遺言し,遺言に基づいて登記が移転したという事
160 実関係から,法人への遺贈に伴う所得税法第59条第1項第1号の適用が問題になり,これに
161
162 3
163
164 関連して,Bについて,受贈益の課税が問題になる(法人税法第22条第2項)。
165 Cについて,取得時効との関係で所得税の所得分類と課税時期が問題となる。具体的には,
166 Cが本件土地を時効により取得することで,一時所得の収入金額がどうなるのか,いつの年分
167 の所得として計上すべきか,時効の遡及効(民法第144条)との関係をどう考えるかといっ
168 た論点がある。
169 [経
170
171
172
173 法]
174
175 〔第1問〕
176 本問の事実関係はやや複雑なものとなっているが,問題自体は排他条件付取引及び拘束条件
177 付取引に関する基本的な理解を問うものである。本問は,排他条件付取引等の拘束を課したと
178 き,いかなる場合に公正競争阻害性があるかを,事業者が単独で行っている場合と,複数の事
179 業者が並列的に行っている場合に分けて,論じさせている(設問の2)。その際,東洋精米機事
180 件(東京高判昭和59年2月17日)をめぐる議論等を参考にすることもできよう。さらに,
181 かかる拘束を課す事業者が,ノウハウの流出防止という合理的理由があると主張した場合の法
182 的な取扱いを問うている(設問の1)。本件のノウハウの主張は口実にすぎないとの理解に立ち
183 論ずることもできよう。
184 〔第2問〕
185 企業結合規制に関する基本的な知識及びそれに基づく考え方・論じ方を問うている。前半で
186 は,独占禁止法第16条に関する事案について,一定の取引分野(市場)の画定の方法,及び
187 「競争を実質的に制限することとなる」の判断方法について,企業結合規制の基礎的な理解を
188 確認している。後半は,企業結合計画が独占禁止法に違反するおそれがある場合に,いわゆる
189 問題解消措置として,販売を独立に行い,その際に情報提供の縛りをかけることがどのように
190 評価されるかを問うものである。問題文ではOEM供給,情報提供など見なれない言葉も用い
191 られているが,解答自体は基本的な知識に基づき答えられるものとなっている。
192 [知的財産法]
193 〔第1問〕
194 1.は,独占的通常実施権者の救済として考え得る方策(差止請求権(独占的通常実施権者
195 固有の差止請求権,特許権者の差止請求権の代位行使),損害賠償請求権)と,職務発明の場合
196 における特許権についての法定実施権(特許法第35条第1項)に関する理解を問うものであ
197 る。
198 2.は,専用実施権(同法第77条)に関し,その効力や効力発生要件等を踏まえた上で,
199 専用実施権設定登録前後における独占的通常実施権者との間の法律関係を問うものである。
200 3.は,ある特許発明とこれを改良した特許発明との関係につき,利用発明(同法第72条)
201 等に関する理解を問うものである。
202 〔第2問〕
203 本問は,全体を通じて,映画の著作物の著作者(著作権法第16条),映画の著作物の著作権
204 の帰属(同法第29条第1項)及び映画の著作物において複製されている著作物の著作権の帰
205 属(同法第16条参照)等,映画の著作物をめぐる権利関係についての基本的な理解を問うも
206 のである。この基本的な理解を踏まえた上で,1.は,映画の著作物の頒布権(同法第26条)
207 についての消尽論(最判平成14年4月25日民集56巻4号808ページ参照)に関する理
208 解を,2.(1)は,同一性保持権(同法第20条)に関する理解を,2.(2)は,著作者の死後
209 における人格的利益の保護(同法第60条,第116条)に関する理解を,2.(3)は,映画の
210
211 4
212
213 著作物において複製されている著作物の公衆送信権(同法第23条)に関する理解を,それぞ
214 れ問うものである。
215 [労
216
217
218
219 法]
220
221 〔第1問〕
222 第1問のうち小問1では,弁護士としてXから相談を受けた場合の回答として,XY間の労
223 働契約が期間の定めのあるものといえるか,期間の定めのある契約と認定された場合における
224 期間満了による契約終了(雇止め)への制約の有無及び内容,期間の定めのない契約と認定さ
225 れた場合における辞令記載の任期の趣旨(試用期間か否か)及び契約終了(解雇)への制約の
226 内容などの問題点があることにつき,Xの相談内容を踏まえた形で説明することが求められて
227 いる。
228 小問2では,XがYに対して雇用契約上の地位確認訴訟を提起した場合,@からCの事実が,
229 例えば,XY間の契約における期間の定めの有無,雇用継続についての合理的期待の有無,雇
230 止め又は解雇についての合理的理由の有無などの事実認定又は法的判断においていかなる意味
231 を持つかを解答することが必要である。
232 〔第2問〕
233 第2問では,一時金の請求を根拠づける法的構成として考慮され得るものを指摘し,それぞ
234 れについて法的問題点を検討することが求められる。一時金請求権を根拠づける法的構成とし
235 ては,一時金部分についてのみ労働協約が成立したとする構成,A組合との労働協約がB組合
236 員に拡張適用されるとの構成,労使慣行が成立していたとする構成,就業規則の規定を根拠と
237 する構成などが考えられる。また,一時金請求権を根拠づけることはできないが,一時金に相
238 当する損害賠償請求権を根拠づけるものとして,不当労働行為を主張する構成もあり得る。以
239 上のような可能性を指摘した上で,それぞれについて問題点を検討する必要がある。例えば,
240 労働協約が成立したとの構成について言えば,労働協約の書面性の要件が満たされているのか,
241 また,本件で労使間の合意が成立したと言えるのか,といった点が検討される必要がある。
242 [環
243
244
245
246 法]
247
248 〔第1問〕
249 近隣における大気汚染に関する紛争の解決手続と,訴訟における公法上の規制基準の意義を
250 問う問題である。
251 1.は,司法上の手段としての民事訴訟,行政訴訟の手続と,損害賠償や差止めなどの請求
252 の内容について,また,行政上の手段としての公害苦情処理,公害紛争処理などの手続につい
253 て,それらの特色についての知識を問うものである。
254 2.は,民事訴訟の損害賠償請求及び差止め請求,行政訴訟における公法上の規制基準の意
255 義についての理解を問うものである。
256 〔第2問〕
257 廃棄物の処理及び清掃に関する法律上の廃棄物処理施設,特に産業廃棄物処理施設の規制内
258 容,施設設置許可基準,許可手続についての基本的な理解を問う問題である。許可手続の中で
259 は,生活環境影響調査についての説明も求められる。また,環境影響評価法(条例)との関係,
260 産業廃棄物処分業の許可についての手続の説明も求められる。
261 [国際関係法(公法系)]
262 〔第1問〕
263
264 5
265
266 本問は,国際法の基本である条約解釈の在り方を問うものである。裁判所で頻繁に援用され
267 る国際人権条約の一つである女子差別撤廃条約を題材にした。具体的には,ウィーン条約法条
268 約中の条約解釈規範,国際法上の義務の性質,条約解釈を前提にした国内裁判所での条約援用
269 の適否,さらには地方公共団体の国際法上の位置付けなどが論点となる。
270 〔第2問〕
271 本問は,国際法の基本的な構造の一つである国家の権利と個人の権利の関係を踏まえて,国
272 家責任の追及の在り方を問うものである。具体的には,外交保護制度の意義,外交保護権の「国
273 家性」,自国民の法益侵害についての救済を国際法平面で国家が請求する主張の仕方,国家に固
274 有の法益侵害に対する救済の方法などが論点となる。
275 [国際関係法(私法系)]
276 〔第1問〕
277 設問1は,婚姻の方式に関するいわゆる日本人条項(法例第13条第3項ただし書)の適用
278 についての基本的な知識を確認するものである。
279 設問2は,国際的な相続が争われる事例に関し,相続の先決問題となる婚姻の有効性を判断
280 する準拠法についての考え方,反致の成否,物権準拠法との関係等についての基本的な知識を
281 問い,また,準拠法の適用結果についても考えさせるものである。
282 〔第2問〕
283 設問1は,国際裁判管轄権についての基本的な考え方に関する判例の理解を前提として,国
284 際売買の事例について外国会社の事務所が我が国に存在することを理由とする我が国の国際裁
285 判管轄権の有無を問うものである。
286 設問2は,契約関係の準拠法について,当事者の黙示の意思による準拠法選択,準拠法選択
287 がない場合の隔地的な契約の行為地についての規定の適用(法例第9条第2項)を問うもので
288 ある。
289 設問3は,売買契約の準拠法が日本法とされた場合に,船積期間開始の前日までに信用状が
290 不開設の場合の無催告解除を可能とする特約が有効か否か及び解除された場合の効果を問うも
291 のである。
292
293 6
294
295