1 [司法試験予備試験サンプル問題(法律実務基礎科目(民事))]
2 [論文式試験問題]
3 〔問〕
4
5 弁護士Lが依頼者Xから別紙【Xの相談内容】のような相談を受けたことを前提に,
6 下記
7
8 の各設問に答えなさい。
9
10
11 〔設問1〕
12
13 弁護士LがXの訴訟代理人としてYに対して訴え(以下「本件訴え」という。
14
15 )を提
16
17 起する場合について,
18 以下の各小問に答えなさい。
19
20
21 小問1
22
23 本件訴えにおける明渡請求の訴訟物として何を主張することになるか。
24
25 訴訟物が実体
26 法上の個別的・具体的な請求権を意味するものであるとの考え方を前提として答えなさ
27 い。
28
29
30
31 小問2
32
33 本件訴えにおける明渡請求の請求の趣旨(訴訟費用の負担の申立て及び仮執行宣言の
34 申立ては除く。
35
36 )はどのようになるかを記載しなさい。
37
38
39
40 小問3 【Xの相談内容】第3項中のYの言い分を前提とした場合,
41 本件訴えの訴状において,
42
43 明渡請求についての請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)として,
44
45 護士Lは次の各事実等を必要十分な最小限のものとして主張しなければならないと考え
46 られる。
47
48
49
50
51 Cは,
52 平成21年8月3日当時,
53 甲土地を所有していた。
54
55
56
57
58
59 Aは,
60 Xに対し,
61 平成21年8月3日,
62 甲土地を代金1500万円で売った。
63
64
65
66
67
68 Aは,
69 イの際,
70 Cのためにすることを示した。
71
72
73
74
75
76 Cは,
77 Aに対し,
78 イに先立って,
79 イの代理権を授与した。
80
81
82
83
84
85 Yは,
86 現在,
87 甲土地を占有している。
88
89
90
91 請求を理由づける事実として,
92 以上のような各事実等の主張が必要であり,
93 かつ,
94
95 れで足りると考えられる理由を説明しなさい。
96
97 ただし,
98 ウ及びエの事実については説明
99 をしなくてよい。
100
101
102 小問4
103
104 【Xの相談内容】第3項中のYの言い分を前提とした場合,
105 Yから主張されることが
106 予想される抗弁は何か。
107
108 抗弁となるべき事実として必要十分な最小限のものを記載した
109 上,
110 その事実から生じる実体法上の効果を踏まえて,
111 それが抗弁となる理由を説明しな
112 さい。
113
114
115 なお,
116 事実の記載に当たっては,
117 小問3のアからオまでの記載のように,
118 事実ごとに
119 適宜記号を付して記載しなさい。
120
121
122
123 〔設問2〕
124
125 本件訴えが裁判所に提起され,
126 各当事者から【Xの相談内容】第1項から第3項まで
127
128 に記載された各事実が口頭弁論あるいは争点及び証拠の整理手続の中で陳述された場合,
129 裁判所
130 は,
131 当事者双方に対し,
132 それぞれどのような事項についての釈明を求める必要があると考えられ
133 るか。
134
135 結論とともに,
136 その理由を説明しなさい。
137
138
139 〔設問3〕
140
141 弁護士Lは,
142 Xから,
143 「Aに対し,
144 甲土地の売買契約に関する一切の代理権を授与し
145
146 ます。
147
148 」との記載のある委任状の提出を受けた。
149
150 この委任状には,
151 C名義の署名押印がされてい
152 た。
153
154 Xの話では,
155 Aは,
156 Cからこの委任状を受け取ったと述べているようであるが,
157 平成21年
158 9月14日にXがYと会った際に,
159 Yは,
160 「この委任状のC名義の印影は私がCとの間で作成し
161 た売買契約書のC名義の印影と同一であることは認めるが,
162 Cが私と売買契約を締結しておきな
163 がらAに代理権を与えることはあり得ないので,
164 この委任状は何者かに偽造されたものに間違い
165
166 - 1 -
167
168 ない。
169
170 」と言っていたとのことであった。
171
172
173 本件訴えが裁判所に提起され,
174 Xの訴訟代理人である弁護士Lが,
175 CのAに対する代理権授与
176 の事実を証明するための証拠として,
177 この委任状を提出した場合,
178 いずれの当事者がどのような
179 立証活動をすることになるかを説明しなさい。
180
181
182 〔設問4〕
183
184 弁護士でないAは,
185 これまでも自分の取引の中で事件が起きるとそれを弁護士に紹介
186
187 して謝礼金を受け取っていたが,
188 今回もこれまでと同様に謝礼金をもらおうと,
189
190 【Xの相談内容】
191 に係る事件について,
192 Xを弁護士Lに紹介した。
193
194 弁護士Lが,
195 Xから事件を受任し,
196 その対価と
197 してAに謝礼金を支払うことに弁護士倫理上の問題はあるか。
198
199 結論とともに,
200 その理由を説明し
201 なさい。
202
203
204
205 【出題趣旨】
206 本問は,
207 具体的な事例を前提として,
208 訴訟代理人として訴えを提起する場合の訴訟物の把握,
209
210 実体法の理解を踏まえた攻撃防御方法の把握,
211 訴訟において裁判所の果たすべき役割についての
212 理解,
213 事実認定についての基本的な知識及び法曹倫理に関する基本的な理解等を問う問題である。
214
215
216 主に,
217 法科大学院における法律実務基礎科目(民事訴訟実務の基礎)の教育目的や内容を踏まえ
218 て,
219 民事訴訟実務に関する基礎的な素養が身についているかどうかを試すものであるが,
220 これと
221 併せて,
222 検討した内容を文章として的確に表現する能力をも求めている。
223
224 また,
225 法曹倫理につい
226 ても,
227 法科大学院における法律実務基礎科目の内容とされていることから,
228 典型的な事例を通じ
229 て,
230 その基礎的な素養を身につけているかを問うものである。
231
232
233 設問1は,
234 主に,
235 当事者から相談を受けた弁護士が,
236 訴えを提起する場面における問題である。
237
238
239 小問1及び2は,
240 訴訟において審判を求める対象となる訴訟物及び請求の趣旨についての基本
241 的な理解を問うものである。
242
243
244 小問3は,
245 訴訟物たる権利の発生原因である請求原因事実について,
246 実体法の要件を踏まえた
247 説明を求めるとともに,
248 所有という法的評価について権利自白を認める理由やその機能について
249 の説明を求めるものである。
250
251
252 小問4は,
253 当事者の主張の中から抗弁となるべき具体的事実を抽出させるとともに,
254 実体法の
255 効果を踏まえて,
256 なぜ当該主張が抗弁と位置づけられるのかの説明を求めるものである。
257
258
259 小問3及び4は,
260 実体法の要件や効果についての理解をいかして,
261 具体的な事例を攻撃防御の
262 観点から的確に分析し,
263 かつ,
264 その理由を実体法の理解を踏まえて説明することができる能力が
265 備わっているかを試すことを目的とするものである。
266
267
268 設問2は,
269 訴えが提起された後における裁判所の役割を問う問題である。
270
271
272 裁判所は,
273 当事者の行った主張を攻撃防御の観点から的確に分析するとともに,
274 必要に応じて,
275
276 当事者に対し,
277 主張に不十分な点があればこれを補充するよう促し,
278 また,
279 争いのある事実につ
280 いてはその立証を促すなどしながら,
281 争点及び証拠の整理をすることになる。
282
283 このような裁判所
284 の訴訟運営や争点等の整理に係る当事者の訴訟活動が実体法の要件や効果を踏まえて行われるも
285 のであることを理解し,
286 具体的な事例の中で争点等を整理するために必要となる事項を指摘する
287 ことができる能力が備わっているかを試すことを目的とするものである。
288
289
290 設問3は,
291 事実認定に関する基礎知識の一つである文書の成立の推定(いわゆる二段の推定)
292 に関する理解を問う問題である。
293
294 ここでは,
295 訴訟において,
296 文書を証拠として裁判所に提出する
297 場合,
298 提出者がその真正を立証する必要があることを前提として,
299 成立の真正が推定される場合
300 に,
301 立証責任の転換が生じるのか否かや,
302 それを踏まえて,
303 いずれの当事者がどの程度の立証活
304 動を行うべきことになるのかについて,
305 具体的事例に即して論じることが求められる。
306
307
308 設問4は,
309 弁護士倫理に関する基本的な理解を,
310 非弁護士との提携の禁止等を含む典型的な事
311 - 2 -
312
313 例に即しつつ,
314 問う問題である。
315
316 法曹倫理の中でも弁護士倫理については,
317 弁護士法のほか,
318
319 護士職務基本規程にも様々な規律が定められているので,
320 設問で問われている弁護士倫理の条項
321 を正確に示して説明することが求められる。
322
323
324 なお,
325 本問における配点の比率は,
326 例えば,
327 設問1から4までで,
328 10:4:3:3とするこ
329 とが考えられる。
330
331 また,
332 その場合の設問1における配点の比率は,
333 例えば,
334 小問1から4までで,
335
336 1:1:4:4とすることが考えられる。
337
338
339
340 - 3 -
341
342 別紙
343 【Xの相談内容】
344
345
346 私は,
347 平成21年5月ころ,
348 新しい事業を立ち上げるために必要な土地を探していたところ,
349
350 かねてからの友人であるAから,
351 甲土地の紹介を受けました。
352
353 Aによると,
354 甲土地は,
355 もともと
356 Bの所有地だったそうですが,
357 Cが同年3月1日にBから贈与を受けて取得したものであり,
358
359 は遠方に居住していることから,
360 Aが売却の依頼を受けたとのことでした。
361
362 私は,
363 現地を見てみ
364 たところ,
365 甲土地が気に入ったことから,
366 甲土地を購入することにし,
367 同年8月3日,
368 Cの代理
369 人であるAとの間で甲土地を代金1500万円で買う旨の契約を締結して,
370 その日に内金500
371 万円をAに支払いました。
372
373 残金1000万円は,
374 用意するのにしばらく時間がかかる見込みであ
375 り,
376 また,
377 Aによると,
378 登記についても,
379 登記関係書類をCから取り寄せる必要があり,
380 手続に
381 は1か月程度かかるということでしたので,
382 残金1000万円の支払は,
383 同年9月30日に,
384
385 土地の所有権移転登記及び引渡しと引換えに行うことにしました。
386
387
388
389
390
391 ところが,
392 平成21年9月10日に甲土地を通り掛かったところ,
393 甲土地の周囲に仮囲いがさ
394 れており,
395 「Yビル建設予定地」との看板が立っていました。
396
397 驚いて,
398 甲土地の登記記録を調べ
399 てみると,
400 同年8月8日付けでY名義の所有権移転登記がされていました。
401
402
403
404
405
406 私は,
407 直ちにその看板に書かれていたYの連絡先に電話したところ,
408 Yは「私は,
409 CがBから
410 贈与を受けて取得した甲土地を,
411 平成21年8月8日,
412 Cから代金2000万円で買い,
413 所有権
414 移転登記をしてその引渡しも受けたのだから,
415 甲土地は私のものだ。
416
417 そもそも,
418 Aが本当にあな
419 た(X)との間で甲土地の売買契約を締結したかはよく分からないが,
420 Cは私に甲土地を売った
421 のだから,
422 Aに甲土地の売買についての代理権を授与していたはずはない。
423
424 だから,
425 あなたにと
426 やかく言われる筋合いはない。
427
428 」などとまくしたて,
429 電話を切られてしまいました。
430
431 そこで,
432
433 は,
434 Aに連絡してみたところ,
435 Aは,
436 Cから,
437 「確かに,
438 私(C)は,
439 Yとの間で,
440 Yの言うと
441 おりの売買契約を締結し,
442 所有権移転登記と引渡しを済ませた。
443
444 Yは,
445 売買契約の際に代金のう
446 ち1000万円を支払ったが,
447 残金1000万円については,
448 数日後に入金が予定されている資
449 金を充てたいということだったので,
450 期限を特に定めないことにした。
451
452 本当は代金完済まで登記
453 をしたくなかったが,
454 Yの強い求めがあり,
455 この売買契約は代金が市価より高くて私にとっても
456 メリットのあるものであったことから,
457 Yを信じて登記に応じてしまった。
458
459 ところが,
460 Yは,
461
462 日待っても残金を支払わず,
463 Yに問い合わせたところ,
464 『もうしばらく待ってほしい。
465
466 』と言うだ
467 けで,
468 いつになったら支払うつもりかすら答えなかった。
469
470 私は,
471 もはやこのまま待つわけにはい
472 かないと思い,
473 同年9月10日,
474 Yに対し,
475 甲土地の売買契約を解除する旨の内容証明郵便を発
476 送し,
477 同郵便は同月11日にYに到達している。
478
479 この解除によってYとの売買契約は既に無くな
480 っているのだから,
481 Yの言っていることはおかしい。
482
483 」と聞いたとのことでした。
484
485
486 CとYとの間で甲土地の売買契約の残金が支払われたのかどうかの確認はしていませんが,
487
488 がYとの売買契約を解除するとの内容証明郵便を出している以上,
489 YがCに対して残金を支払っ
490 ているはずはありません。
491
492
493
494
495
496 私は,
497 既に甲土地の利用を前提とした事業計画を立ててしまっており,
498 甲土地にYのビルを建
499 てられると困りますので,
500 Yに対し,
501 甲土地の明渡しと登記手続を求めたいのですが,
502 その裁判
503 をお願いできませんでしょうか。
504
505
506
507 - 4 -
508
509 [口述試験のイメージ]
510 【設例】
511 Xは,
512 個人で建築業を営んでいるYから事業資金の融資を頼まれたため,
513 平成16年9月1日,
514
515 返済期日を平成17年3月31日と定め,
516 Zを連帯保証人として,
517 2000万円をYに貸し付けた
518 が,
519 YもZも,
520 Xに貸金を返済しようとしない。
521
522
523
524
525 平成16年9月1日
526
527
528
529 (返済期日
530
531 2000万円
532
533 平成17年3月31日)
534
535 (貸主)
536
537
538 (借主)
539
540
541 (連帯保証人)
542
543 - 5 -
544
545