1 論文式試験問題集
2 [憲法・行政法]
3
4 - 1 -
5
6 [憲
7
8 法]
9
10 多くの法科大学院は2004年4月に創設されたが,
11 A大学(国立大学法人)は,
12 2005年4
13 月に法科大学院を創設することとした。
14
15 A大学法科大学院の特色は,
16 女性を優遇する入学者選抜制
17 度の採用であった。
18
19 A大学法科大学院が女性を優遇する入学者選抜制度を採用する主たる理由は,
20
21 法科大学院・新司法試験という新しい法曹養成制度の目的として多様性が挙げられているが,
22 法曹
23 人口における女性の占める比率が低い(参考資料参照)ことである。
24
25 A大学法学部では,
26 入学生に
27 おける女子学生の比率は年々増え続けており,
28 2004年度には女子学生が約40パーセントを占
29 めていた。
30
31 A大学法科大学院としては,
32 法学部で学ぶ女子学生の増加という傾向を踏まえて,
33 法科
34 大学院に進学する女性を多く受け入れることによって,
35 結果として法曹における女性の増加へ結び
36 付けることができれば,
37 法科大学院を創設する社会的意義もある,
38 と考えた。
39
40
41 A大学法科大学院の入学者選抜制度によれば,
42 入学定員200名のうち180名に関しては性別
43 にかかわらず成績順に合格者が決定されるが,
44 残りの20名に関しては成績順位181位以下の女
45 性受験生のみを成績順に合格させることになっている(このことは,
46 募集要項で公表している。
47
48 )。
49
50
51 男性であるBは,
52 2007年9月に実施されたA大学法科大学院2008年度入学試験を受験し
53 たが,
54 成績順位181位で不合格となった。
55
56 なお,
57 A大学法科大学院の2008年度入学試験にお
58 ける受験生の男女比は,
59 2対1であった。
60
61
62 〔設問1〕
63 あなたがA大学法科大学院で是非勉強したいというBの相談を受けた弁護士であった場合,
64 ど
65 のような訴訟を提起し,
66 どのような憲法上の主張をするか,
67 述べなさい(なお,
68 出訴期間につい
69 て論ずる必要はない。
70
71 )。
72
73
74 〔設問2〕
75 原告側の憲法上の主張とA大学法科大学院側の憲法上の主張との対立点を明確にした上で,
76 あ
77 なた自身の見解を述べなさい。
78
79
80
81 - 2 -
82
83 【参考資料】法曹人口に占める女性の比率(2004年までの過去20年のデータ)
84 女性割合 女性割合 女性割合
85 (裁判官) (検事)
86
87 (弁護士)
88
89 (%)
90
91 (%)
92
93 (%)
94
95 昭和60年 1985年
96
97 3.3
98
99 2.1
100
101 4.7
102
103 昭和61年 1986年
104
105 3.5
106
107 2.0
108
109 4.8
110
111 昭和62年 1987年
112
113 3.9
114
115 2.1
116
117 5.0
118
119 昭和63年 1988年
120
121 4.1
122
123 2.5
124
125 5.2
126
127 平成元年
128
129 1989年
130
131 4.5
132
133 2.9
134
135 5.3
136
137 平成2年
138
139 1990年
140
141 5.0
142
143 3.5
144
145 5.6
146
147 平成3年
148
149 1991年
150
151 5.5
152
153 3.8
154
155 5.8
156
157 平成4年
158
159 1992年
160
161 6.0
162
163 4.1
164
165 6.1
166
167 平成5年
168
169 1993年
170
171 6.7
172
173 4.6
174
175 6.3
176
177 平成6年
178
179 1994年
180
181 7.2
182
183 5.0
184
185 6.5
186
187 平成7年
188
189 1995年
190
191 8.2
192
193 5.7
194
195 6.6
196
197 平成8年
198
199 1996年
200
201 8.9
202
203 6.4
204
205 7.3
206
207 平成9年
208
209 1997年
210
211 9.7
212
213 7.1
214
215 7.8
216
217 平成10年 1998年
218
219 10.2
220
221 8.0
222
223 8.3
224
225 平成11年 1999年
226
227 10.4
228
229 8.4
230
231 8.9
232
233 平成12年 2000年
234
235 10.9
236
237 9.2
238
239 8.9
240
241 平成13年 2001年
242
243 11.3
244
245 10.6
246
247 10.1
248
249 平成14年 2002年
250
251 12.2
252
253 11.6
254
255 10.9
256
257 平成15年 2003年
258
259 12.6
260
261 12.6
262
263 11.7
264
265 平成16年 2004年
266
267 13.2
268
269 12.8
270
271 12.1
272
273 - 3 -
274
275 [行政法]
276 Aは,
277 甲県乙町において,
278 建築基準法に基づく建築確認を受けて,
279 客室数20室の旅館(以下「本
280 件施設」という。
281
282 )を新築しようとしていたところ,
283 乙町の担当者から,
284 本件施設は乙町モーテル
285 類似旅館規制条例(以下「本件条例」という。
286
287 )にいうモーテル類似旅館に当たるので,
288 本件条例
289 第3条による乙町長の同意を得る必要があると指摘された。
290
291 Aは,
292 2011年1月19日,
293 モーテ
294 ル類似旅館の新築に対する同意を求める申請書を乙町長に提出したが,
295 乙町長は,
296 同年2月18日,
297
298 本件施設の敷地の場所が児童生徒の通学路の付近にあることを理由にして,
299 本件条例第5条に基づ
300 き,
301 本件施設の新築に同意しないとの決定(以下「本件不同意決定」という。
302
303 )をし,
304 本件不同意
305 決定は,
306 同日,
307 Aに通知された。
308
309
310 Aは,
311 本件施設の敷地の場所は,
312 通学路として利用されている道路から約80メートル離れてい
313 るので,
314 児童生徒の通学路の付近にあるとはいえず,
315 本件不同意決定は違法であると考えており,
316
317 乙町役場を数回にわたって訪れ,
318 本件施設の新築について同意がなされるべきであると主張したが,
319
320 乙町長は見解を改めず,
321 本件不同意決定を維持している。
322
323
324 Aは,
325 既に建築確認を受けているものの,
326 乙町長の同意を得ないまま工事を開始した場合には,
327
328 本件条例に基づいて不利益な措置を受けるのではないかという不安を有している。
329
330 そこで,
331 Aは,
332
333 本件施設の新築に対する乙町長の同意を得るための訴訟の提起について,
334 弁護士であるCに相談す
335 ることにした。
336
337 同年7月上旬に,
338 当該訴訟の提起の可能性についてAから相談を受けたCの立場で,
339
340 以下の設問に解答しなさい。
341
342
343 なお,
344 本件条例の抜粋は資料として掲げてあるので,
345 適宜参照しなさい。
346
347
348 〔設問1〕
349 本件不同意決定は,
350 抗告訴訟の対象たる処分(以下「処分」という。
351
352 )に当たるか。
353
354 Aが乙町
355 長の同意を得ないで工事を開始した場合に本件条例に基づいて受けるおそれがある措置及びその
356 法的性格を踏まえて,
357 解答しなさい。
358
359
360 〔設問2〕
361 本件不同意決定が処分に当たるという立場を採った場合,
362 Aは,
363 乙町長の同意を得るために,
364
365 誰を被告としてどのような訴訟を提起すべきか。
366
367 本件不同意決定が違法であることを前提にして,
368
369 提起すべき訴訟とその訴訟要件について,
370 事案に即して説明しなさい。
371
372 なお,
373 仮の救済について
374 は検討しなくてよい。
375
376
377
378 【資料】乙町モーテル類似旅館規制条例(平成18年乙町条例第20号)(抜粋)
379 (目的)
380 第1条
381
382 この条例は,
383 町の善良な風俗が損なわれないようにモーテル類似旅館の新築又は改築(以下
384
385 「新築等」という。
386
387 )を規制することにより,
388 清純な生活環境を維持することを目的とする。
389
390
391 (定義)
392 第2条
393
394 この条例において「モーテル類似旅館」とは,
395 旅館業法(昭和23年法律第138号)第2
396
397 条に規定するホテル営業又は旅館営業の用に供することを目的とする施設であって,
398 その施設の一
399 部又は全部が車庫,
400 駐車場又は当該施設の敷地から,
401 屋内の帳場又はこれに類する施設を通ること
402 なく直接客室へ通ずることができると認められる構造を有するものをいう。
403
404
405
406 - 4 -
407
408 (同意)
409 第3条
410
411 モーテル類似旅館を経営する目的をもって,
412 モーテル類似旅館の新築等(改築によりモーテ
413
414 ル類似旅館に該当することとなる場合を含む。
415
416 以下同じ。
417
418 )をしようとする者(以下「建築主」と
419 いう。
420
421 )は,
422 あらかじめ町長に申請書を提出し,
423 同意を得なければならない。
424
425
426 (諮問)
427 第4条
428
429 町長は,
430 前条の規定により建築主から同意を求められたときは,
431 乙町モーテル類似旅館建築
432
433 審査会に諮問し,
434 同意するか否かを決定するものとする。
435
436
437 (規制)
438 第5条
439
440 町長は,
441 第3条の申請書に係る施設の設置場所が,
442 次の各号のいずれかに該当する場合には
443
444 同意しないものとする。
445
446
447 (1) 集落内又は集落の付近
448 (2) 児童生徒の通学路の付近
449 (3) 公園及び児童福祉施設の付近
450 (4) 官公署,
451 教育文化施設,
452 病院又は診療所の付近
453 (5) その他モーテル類似旅館の設置により,
454 町長がその地域の清純な生活環境が害されると認める
455 場所
456 (通知)
457 第6条
458
459 町長は,
460 第4条の規定により,
461 同意するか否かを決定したときは,
462 その旨を建築主に通知す
463
464 るものとする。
465
466
467 (命令等)
468 第7条
469
470 町長は,
471 次の各号のいずれかに該当する者に対し,
472 モーテル類似旅館の新築等について中止
473
474 の勧告又は命令をすることができる。
475
476
477 (1) 第3条の同意を得ないでモーテル類似旅館の新築等をし,
478 又は新築等をしようとする建築主
479 (2) 虚偽の同意申請によりモーテル類似旅館の新築等をし,
480 又は新築等をしようとする建築主
481 (公表)
482 第8条
483
484 町長は,
485 前条に規定する命令に従わない建築主については,
486 規則で定めるところにより,
487 そ
488
489 の旨を公表するものとする。
490
491 ただし,
492 所在の判明しない者は,
493 この限りでない。
494
495
496 2
497
498 町長は,
499 前項に規定する公表を行うときは,
500 あらかじめ公表される建築主に対し,
501 弁明の機会を
502 与えなければならない。
503
504
505
506 (注)本件条例においては,
507 資料として掲げた条文のほかに,
508 罰則等の制裁の定めはない。
509
510
511
512 - 5 -
513
514