1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
9
10 以下の事例に基づき,
11 甲の罪責について論じなさい。
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13
14 1
15
16 甲(35歳)は,
17 無職の妻乙(30歳)及び長女丙(3歳)と,
18 郊外の住宅街に建てられた甲
19 所有の木造2階建て家屋(以下「甲宅」という。
20
21 )で生活していた。
22
23 甲宅の住宅ローンの返済は,
24
25 会社員であった甲の給与収入によってなされていた。
26
27 しかし,
28 甲が勤務先を解雇されたことから,
29
30 甲一家の収入が途絶え,
31 ローンの返済ができず,
32 住宅ローン会社から,
33 甲宅に設定されていた抵
34 当権の実行を通告された。
35
36 甲は就職活動を行ったが,
37 再就職先を見つけることができなかった。
38
39
40 このような状況に将来を悲観した乙は,
41 甲に対して,
42 「生きているのが嫌になった。
43
44 みんなで一
45 緒に死にましょう。
46
47 」と繰り返し言うようになったが,
48 甲は,
49 一家3人で心中する決意をするこ
50 とができず,
51 乙に対して,
52 その都度「もう少し頑張ってみよう。
53
54 」と答えていた。
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56
57
58 2
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60 ある日の夜,
61 甲と丙が就寝した後,
62 乙は,
63 「丙を道連れに先に死のう。
64
65 」と思い,
66 衣装ダンスの
67 中から甲のネクタイを取り出し,
68 眠っている丙の首に巻き付けた上,
69 絞め付けた。
70
71 乙は,
72 丙が身
73 動きをしなくなったことから,
74 丙の首を絞め付けるのをやめ,
75 台所に行って果物ナイフを持ち出
76 し,
77 布団の上で自己の腹部に果物ナイフを突き刺し,
78 そのまま横たわった。
79
80
81 甲は,
82 乙のうめき声で目を覚ましたところ,
83 丙の首にネクタイが巻き付けられていて,
84 乙の腹
85 部に果物ナイフが突き刺さっていることに気が付いた。
86
87
88 甲が乙に「どうしたんだ。
89
90 」と声を掛けると,
91 乙は,
92 甲に対し,
93 「ごめんなさい。
94
95 私にはもうこ
96 れ以上頑張ることはできなかった。
97
98 早く楽にして。
99
100 」と言った。
101
102 甲は,
103 「助けを呼べば,
104 乙が丙を
105 殺害したことが発覚してしまう。
106
107 しかし,
108 このままだと乙が苦しむだけだ。
109
110 」と考え,
111 乙殺害を
112 決意し,
113 乙の首を両手で絞め付けたところ,
114 乙が動かなくなり,
115 うめき声も出さなくなったこと
116 から,
117 乙が死亡したと思い,
118 両手の力を抜いた。
119
120
121
122 3
123
124 その後,
125 甲は,
126 「乙が丙を殺した痕跡や,
127 自分が乙を殺した痕跡を消してしまいたい。
128
129 家を燃
130 やせば乙や丙の遺体も燃えるので焼死したように装うことができる。
131
132 」と考え,
133 乙と丙の周囲に
134 灯油をまき,
135 ライターで点火した上,
136 甲宅を離れた。
137
138 その結果,
139 甲宅は全焼し,
140 焼け跡から乙と
141 丙の遺体が発見された。
142
143
144
145 4
146
147 乙と丙の遺体を司法解剖した結果,
148 両名の遺体の表皮は,
149 熱により損傷を受けていること,
150 乙
151 の腹部の刺創は,
152 主要な臓器や大血管を損傷しておらず,
153 致命傷とはなり得ないこと,
154 乙の死因
155 は,
156 頸部圧迫による窒息死ではなく,
157 頸部圧迫による意識消失状態で多量の一酸化炭素を吸引し
158 たことによる一酸化炭素中毒死であること,
159 丙の死因は,
160 頸部圧迫による窒息死であることが判
161 明した。
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164
165 - 2 -
166
167 [刑事訴訟法]
168 次の記述を読んで,
169 後記の設問に答えなさい。
170
171
172 警察官は,
173 甲が,
174 平成23年7月1日にH市内において,
175 乙に対して覚せい剤10グラムを30万
176 円で譲渡したとの覚せい剤取締法違反被疑事件につき,
177 甲宅を捜索して現金の出納及び甲の行動等に
178 関する証拠を収集するため,
179 H地方裁判所裁判官に対し,
180 捜索差押許可状の発付を請求した。
181
182 これを
183 受けてH地方裁判所裁判官は,
184 罪名として「覚せい剤取締法違反」,
185 差し押さえるべき物として「金
186 銭出納簿,
187 預金通帳,
188 日記,
189 手帳,
190 メモその他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」と
191 それぞれ記載した捜索差押許可状を発付した。
192
193
194 〔設問1〕
195 この捜索差押許可状の罪名及び差し押さえるべき物の記載は適法か。
196
197
198 〔設問2〕
199 仮に,
200 捜索差押許可状の記載が適法であったとして,
201 警察官が,
202 この捜索差押許可状に基づき,
203
204 甲宅を捜索した際に,
205 「6/30
206
207 250万円
208
209 丙から覚せい剤100グラム購入」と書かれた
210
211 メモを発見した場合,
212 これを差し押さえることができるか。
213
214
215 (参照条文)覚せい剤取締法
216 第41条の2第1項
217
218 覚せい剤を,
219 みだりに,
220 所持し,
221 譲り渡し,
222 又は譲り受けた者(第42条第
223
224 5号に該当する者を除く。
225
226 )は,
227 10年以下の懲役に処する。
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