1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 法]
9
10 Aは,
11 平成20年3月5日,
12 自己の所有する甲土地について税金の滞納による差押えを免れるた
13 め,
14 息子Bの承諾を得て,
15 AからBへの甲土地の売買契約を仮装し,
16 売買を原因とするB名義の所
17 有権移転登記をした。
18
19 次いで,
20 Bは,
21 Aに無断で,
22 甲土地の上に乙建物を建築し,
23 同年11月7日,
24
25 乙建物についてB名義の保存登記をし,
26 同日から乙建物に居住するようになった。
27
28
29 Bは,
30 自己の経営する会社の業績が悪化したため,
31 その資金を調達するために,
32 平成21年5月
33 23日,
34 乙建物を700万円でCに売却し,
35 C名義の所有権移転登記をするとともに,
36 同日,
37 Cと
38 の間で,
39 甲土地について建物の所有を目的とする賃貸借契約(賃料月額12万円)を締結し,
40 乙建
41 物をCに引き渡した。
42
43 この賃貸借契約の締結に際して,
44 Cは,
45 甲土地についてのAB間の売買が仮
46 装によるものであることを知っていた。
47
48
49 その後,
50 さらに資金を必要としたBは,
51 同年10月9日,
52 甲土地をDに代金1000万円で売却
53 し,
54 D名義の所有権移転登記をした。
55
56 この売買契約の締結に際して,
57 Dは,
58 甲土地についてのAB
59 間の売買が仮装によるものであることを知らず,
60 それを知らないことについて過失もなかった。
61
62
63 同年12月16日,
64 Aが急死し,
65 その唯一の相続人であるBがAの一切の権利義務を相続した。
66
67
68 この場合において,
69 Dは,
70 Cに対し,
71 甲土地の所有権に基づいて,
72 甲土地の明渡しを求めることが
73 できるかを論ぜよ。
74
75
76
77 - 2 -
78
79 [商
80
81 法]
82
83 次の文章を読んで,
84
85 〔設問1〕から〔設問3〕までに答えよ。
86
87
88 1.Y株式会社(以下「Y社」という。
89
90 )は,
91 取締役会及び監査役を置く会社法上の公開会社でない
92 会社であり,
93 かつ,
94 株券発行会社でない会社である。
95
96
97 Y社は,
98 昭和59年に設立された会社であり,
99 その発行済株式総数は1000株で,
100 A及びAの
101 弟であるBがそれぞれ400株を,
102 Aの長男C及びAの妻Dがそれぞれ100株を有していた。
103
104
105 Y社の取締役にはA,
106 B及びCの3人が,
107 代表取締役にはAが,
108 監査役にはDがそれぞれ就任し
109 ている。
110
111
112 2.AとBは,
113 平成16年頃から,
114 Y社の経営方針についての考え方の違いが生じたため,
115 互いに話
116 をしなくなり,
117 Bは,
118 その頃から,
119 Y社の取締役会に全く出席しないようになった。
120
121
122 3.Bは,
123 平成23年1月頃,
124 自らの有するY社の全ての株式を処分しようと考え,
125 知人が経営す
126 るY社と同業のX株式会社(以下「X社」という。
127
128
129 )に対してY社の株式の買取りを打診し,
130 X社
131 の承諾を得た。
132
133
134 そこで,
135 Bは,
136 X社に対し,
137
138 「譲渡等承認請求に関する一切の件をX社に委任する」という内容の
139 委任状(以下「譲渡等承認委任状」という。
140
141 )及び「株主名簿の名義書換請求に関する一切の件を
142 X社に委任する」という内容の委任状(以下「名義書換委任状」という。
143
144
145 )を交付した。
146
147
148 4.X社は,
149 同年3月15日,
150 Y社に対し,
151 譲渡等承認委任状を添付して,
152 X社がBからY社の株
153 式400株を取得した旨及び取得についての承認を求める旨の通知をした(以下この通知による
154 請求を「本件譲渡等承認請求」という。
155
156
157
158
159
160
161 なお,
162 本件譲渡等承認請求においては,
163 Y社又は指定買取人による買取りについては,
164 請求がさ
165 れなかった。
166
167
168 5.Aは,
169 同月25日,
170 Y社の取締役会を開催した。
171
172 この取締役会には,
173 A及びCが出席したが,
174
175 Aも,
176 Cも,
177 X社が株主となることを警戒し,
178 取締役会は,
179 X社の株式の取得を承認しない旨を
180 決定する決議をした。
181
182
183 なお,
184 この取締役会の招集通知は,
185 Bに対し,
186 発せられなかった。
187
188
189 6.X社は,
190 Y社から本件譲渡等承認請求に対する取締役会の決定の内容についての通知を受けな
191 かったため,
192 同年4月30日,
193 Bに対して株式の譲渡代金を支払うとともに,
194 Y社に対し,
195 名義
196 書換委任状を添付して,
197 株主名簿の名義をBからX社に書き換えるように通知して請求した。
198
199
200 7.同年5月2日,
201 Y社は,
202 X社に対し,
203 X社の株式の取得について取締役会で承認しない旨を決
204 定したために名義書換請求に応ずることはできない旨を回答し,
205 併せて,
206 Aは,
207 Bに対し,
208 Bの
209 有するY社の株式をAが買い取る旨を提案した。
210
211
212 そこで,
213 Bは,
214 X社に対して受領した譲渡代金の返還を申し出た上でAの提案に応じようと考え
215 たが,
216 X社から拒絶されたため,
217 Aの提案に応ずることができなかった。
218
219
220 8.Y社は,
221 同年6月,
222 取締役会決議に基づき,
223 A,
224 B,
225 C及びDに対して定時株主総会の招集通
226 知を発送し,
227 A,
228 B,
229 C及びDが出席した定時株主総会において,
230 この定時株主総会の終結の時
231 に任期が満了するA,
232 B及びCを取締役に選任する旨の取締役選任議案を決議した。
233
234
235 なお,
236 Y社は,
237 定時株主総会に関し,
238 定款に基準日に係る規定を置いておらず,
239 また,
240 基準日に
241 係る公告もしていない。
242
243
244 〔設問1〕
245 平成23年3月25日に開催された本件譲渡等承認請求に係るY社の取締役会の決議の効力に
246 ついて論ぜよ。
247
248
249
250 - 3 -
251
252 〔設問2〕
253 Y社の定時株主総会の決議に関し,
254 X社は,
255 その効力を争うことができるか。
256
257
258 〔設問3〕
259 仮に,
260 BがAからの提案(上記7の提案)に応じてY社の株式400株をAに譲渡して代金を
261 受領し,
262 Y社がAの株式の取得を取締役会で承認するとともに,
263 定時株主総会の招集通知の発送
264 前までにA及びBの求めに応じてBからAに株主名簿の名義を書き換え,
265 A,
266 C及びDに対して
267 定時株主総会の招集通知を発送していたとしたら,
268 Y社の定時株主総会の決議に関し,
269 X社は,
270
271 その効力を争うことができるか。
272
273
274
275 - 4 -
276
277 [民事訴訟法]
278 次の事例について,
279 後記の設問に答えよ。
280
281
282 【事 例】
283 Xは,
284 請求の趣旨として「被告は,
285 原告に対し,
286 150万円を支払え。
287
288
289 」との判決を求める旨を記載
290 するとともに「原告は,
291 被告との間で,
292 原告が被告に中古自動車1台を代金150万円で売り渡すと
293 いう売買契約を平成21年1月15日に締結し,
294 同日,
295 当該自動車について,
296 所有者の登録を被告名
297 義に移転するとともに被告に引き渡した。
298
299 よって,
300 原告は,
301 被告に対し,
302 売買代金150万円の支払
303 を求める。
304
305
306 」との主張を記載した訴状を平成22年4月1日に地方裁判所に提出して訴えを提起した。
307
308
309 その訴状には,
310 被告として,
311 甲市乙町5番地に住所のあるYの氏名が表示され,
312 かつ,
313 被告の法定代
314 理人として,
315 同所に住所のある成年後見人Zの氏名が表示されていた。
316
317
318 この訴えについて,
319 裁判長は,
320 平成22年4月5日,
321 第1回口頭弁論期日を平成22年4月28日
322 午前10時と指定し,
323 裁判所書記官は,
324 この訴状を送達するため,
325 訴状副本を第1回口頭弁論期日の
326 呼出状とともに,
327 Z宛てに郵送した。
328
329
330 ところで,
331 Yは,
332 甲市乙町5番地の自宅に子であるZとともに居住していたが,
333 平成21年3月に
334 重病のため事理を弁識することができない状態となり,
335 同年6月にYについて後見開始の審判がされ
336 て,
337 それまでに成年に達していたZが成年後見人に選任された。
338
339 そして,
340 Yは,
341 平成22年4月3日
342 に死亡した。
343
344 Zは,
345 Yが死亡したことを同日に知ったが,
346 その後3か月以内に相続放棄や限定承認の
347 手続をしなかった。
348
349 Yの配偶者はYより前に死亡しており,
350 ZのほかにYの子はいなかった。
351
352
353 Zは,
354 平成22年4月7日に,
355 甲市乙町5番地の自宅で上記の訴状副本と口頭弁論期日呼出状を受
356 け取った。
357
358 Zは,
359 Yが死亡したことを裁判所やXに知らせることなく,
360 Yの法定代理人として第1回
361 口頭弁論期日に出頭し,
362
363 「Xが主張する売買契約を否認し,
364 請求の棄却を求める。
365
366
367 」旨を答弁した上,
368
369 訴訟代理人を選任することなく訴訟を追行した。
370
371 第一審では,
372 Xが主張する売買契約があったかどう
373 かが争点となり,
374 証拠調べとしてXの尋問とZの尋問とが実施され,
375 Zは,
376
377 「Yは重病で動けない。
378
379
380 は,
381 平成21年1月当時も現在もYと同居しているが,
382 Yが自動車を買ったと聞いたことはないし,
383
384 そのような自動車を見たこともない。
385
386
387 」旨を述べた。
388
389
390 裁判所及びXがYの死亡を知らないまま,
391 第一審の口頭弁論は平成22年9月に終結され,
392 裁判所
393 は,
394 判決書の原本に基づいて判決を言い渡した。
395
396 判決書には,
397 原告X,
398 被告Y,
399 被告法定代理人成年
400 後見人Zとの記載があり,
401 主文は「被告は,
402 原告に対し,
403 150万円を支払え。
404
405
406 」というものであって,
407
408 その理由としてXが主張する売買契約が認められる旨の判断が示されていた。
409
410
411 Zは,
412 第一審の判決書の正本の送達を受けた日の2日後に,
413 控訴人をZと表示した控訴状を第一審
414 裁判所に提出して控訴を提起した。
415
416 その控訴状には,
417
418 「Yは,
419 平成22年4月3日に死亡していた。
420
421
422 の他の主張は,
423 第一審でしたとおりである。
424
425
426 」との記載がある。
427
428 第一審裁判所の裁判所書記官は,
429 控訴
430 裁判所の裁判所書記官に訴訟記録を送付した。
431
432
433 〔設
434
435 問〕
436 Yが平成22年4月3日に死亡していたと認められる場合,
437 控訴審では,
438 どのような事項について
439
440 検討し,
441 誰と誰を当事者としてどのような内容の裁判をすべきか。
442
443
444
445 - 5 -
446
447