1 平成23年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2 [憲
3
4 法]
5
6 多くの法科大学院は2004年4月に創設されたが,
7 A大学(国立大学法人)は,
8 2005年4
9 月に法科大学院を創設することとした。
10
11 A大学法科大学院の特色は,
12 女性を優遇する入学者選抜制
13 度の採用であった。
14
15 A大学法科大学院が女性を優遇する入学者選抜制度を採用する主たる理由は,
16
17 法科大学院・新司法試験という新しい法曹養成制度の目的として多様性が挙げられているが,
18 法曹
19 人口における女性の占める比率が低い(参考資料参照)ことである。
20
21 A大学法学部では,
22 入学生に
23 おける女子学生の比率は年々増え続けており,
24 2004年度には女子学生が約40パーセントを占
25 めていた。
26
27 A大学法科大学院としては,
28 法学部で学ぶ女子学生の増加という傾向を踏まえて,
29 法科
30 大学院に進学する女性を多く受け入れることによって,
31 結果として法曹における女性の増加へ結び
32 付けることができれば,
33 法科大学院を創設する社会的意義もある,
34 と考えた。
35
36
37 A大学法科大学院の入学者選抜制度によれば,
38 入学定員200名のうち180名に関しては性別
39 にかかわらず成績順に合格者が決定されるが,
40 残りの20名に関しては成績順位181位以下の女
41 性受験生のみを成績順に合格させることになっている(このことは,
42 募集要項で公表している。
43
44 )。
45
46
47 男性であるBは,
48 2007年9月に実施されたA大学法科大学院2008年度入学試験を受験し
49 たが,
50 成績順位181位で不合格となった。
51
52 なお,
53 A大学法科大学院の2008年度入学試験にお
54 ける受験生の男女比は,
55 2対1であった。
56
57
58 〔設問1〕
59 あなたがA大学法科大学院で是非勉強したいというBの相談を受けた弁護士であった場合,
60
61 のような訴訟を提起し,
62 どのような憲法上の主張をするか,
63 述べなさい(なお,
64 出訴期間につい
65 て論ずる必要はない。
66
67 )。
68
69
70 〔設問2〕
71 原告側の憲法上の主張とA大学法科大学院側の憲法上の主張との対立点を明確にした上で,
72
73 なた自身の見解を述べなさい。
74
75
76
77 【参考資料】法曹人口に占める女性の比率(2004年までの過去20年のデータ)
78 女性割合 女性割合 女性割合
79 (裁判官) (検事)
80
81 (弁護士)
82
83 (%)
84
85 (%)
86
87 (%)
88
89 昭和60年 1985年
90
91 3.3
92
93 2.1
94
95 4.7
96
97 昭和61年 1986年
98
99 3.5
100
101 2.0
102
103 4.8
104
105 昭和62年 1987年
106
107 3.9
108
109 2.1
110
111 5.0
112
113 昭和63年 1988年
114
115 4.1
116
117 2.5
118
119 5.2
120
121 平成元年
122
123 1989年
124
125 4.5
126
127 2.9
128
129 5.3
130
131 平成2年
132
133 1990年
134
135 5.0
136
137 3.5
138
139 5.6
140
141 平成3年
142
143 1991年
144
145 5.5
146
147 3.8
148
149 5.8
150
151 平成4年
152
153 1992年
154
155 6.0
156
157 4.1
158
159 6.1
160
161 平成5年
162
163 1993年
164
165 6.7
166
167 4.6
168
169 6.3
170
171 平成6年
172
173 1994年
174
175 7.2
176
177 5.0
178
179 6.5
180
181 平成7年
182
183 1995年
184
185 8.2
186
187 5.7
188
189 6.6
190
191 平成8年
192
193 1996年
194
195 8.9
196
197 6.4
198
199 7.3
200
201 平成9年
202
203 1997年
204
205 9.7
206
207 7.1
208
209 7.8
210
211 平成10年 1998年
212
213 10.2
214
215 8.0
216
217 8.3
218
219 平成11年 1999年
220
221 10.4
222
223 8.4
224
225 8.9
226
227 平成12年 2000年
228
229 10.9
230
231 9.2
232
233 8.9
234
235 平成13年 2001年
236
237 11.3
238
239 10.6
240
241 10.1
242
243 平成14年 2002年
244
245 12.2
246
247 11.6
248
249 10.9
250
251 平成15年 2003年
252
253 12.6
254
255 12.6
256
257 11.7
258
259 平成16年 2004年
260
261 13.2
262
263 12.8
264
265 12.1
266
267 (出題趣旨)
268 本年の問題は,
269 いわゆる積極的差別是正措置を含む法科大学院の入学者選抜制度
270 の合憲性(憲法第14条違反か否か)を問う問題である。
271
272 憲法第14条の「平等」
273 は,
274 いわゆる結果の平等ではなく,
275 形式的平等(機会の平等)を意味すると解され
276 てきたところ,
277 性中立的な「結果 」(実質的な平等)を目指す積極的な差別是正措
278 置がどのような場合に許容されるのか,
279 そのような差別是正措置がもたらす「逆差
280 別」の問題をどう考えるのか,
281 というのが本問の核心であり,
282 これを,
283 問題文や資
284 料に示されている具体的事情を踏まえて検討することが求められている。
285
286 なお,
287
288 問で求めているのは,
289 観念的・抽象的な「暗記」からパターンで答えを導くような
290 「学力」ではなく,
291 正確に判例・学説を理解した上で判断枠組みを構築し,
292 事案の
293 内容に即した個別的・具体的検討を踏まえて一定の理にかなった答えを導き出す「学
294 力」である。
295
296
297
298 [行政法]
299 Aは,
300 甲県乙町において,
301 建築基準法に基づく建築確認を受けて,
302 客室数20室の旅館(以下「本
303 件施設」という。
304
305 )を新築しようとしていたところ,
306 乙町の担当者から,
307 本件施設は乙町モーテル
308 類似旅館規制条例(以下「本件条例」という。
309
310 )にいうモーテル類似旅館に当たるので,
311 本件条例
312 第3条による乙町長の同意を得る必要があると指摘された。
313
314 Aは,
315 2011年1月19日,
316 モーテ
317 ル類似旅館の新築に対する同意を求める申請書を乙町長に提出したが,
318 乙町長は,
319 同年2月18日,
320
321 本件施設の敷地の場所が児童生徒の通学路の付近にあることを理由にして,
322 本件条例第5条に基づ
323 き,
324 本件施設の新築に同意しないとの決定(以下「本件不同意決定」という。
325
326 )をし,
327 本件不同意
328 決定は,
329 同日,
330 Aに通知された。
331
332
333 Aは,
334 本件施設の敷地の場所は,
335 通学路として利用されている道路から約80メートル離れてい
336 るので,
337 児童生徒の通学路の付近にあるとはいえず,
338 本件不同意決定は違法であると考えており,
339
340 乙町役場を数回にわたって訪れ,
341 本件施設の新築について同意がなされるべきであると主張したが,
342
343 乙町長は見解を改めず,
344 本件不同意決定を維持している。
345
346
347 Aは,
348 既に建築確認を受けているものの,
349 乙町長の同意を得ないまま工事を開始した場合には,
350
351 本件条例に基づいて不利益な措置を受けるのではないかという不安を有している。
352
353 そこで,
354 Aは,
355
356 本件施設の新築に対する乙町長の同意を得るための訴訟の提起について,
357 弁護士であるCに相談す
358 ることにした。
359
360 同年7月上旬に,
361 当該訴訟の提起の可能性についてAから相談を受けたCの立場で,
362
363 以下の設問に解答しなさい。
364
365
366 なお,
367 本件条例の抜粋は資料として掲げてあるので,
368 適宜参照しなさい。
369
370
371 〔設問1〕
372 本件不同意決定は,
373 抗告訴訟の対象たる処分(以下「処分」という。
374
375 )に当たるか。
376
377 Aが乙町
378 長の同意を得ないで工事を開始した場合に本件条例に基づいて受けるおそれがある措置及びその
379 法的性格を踏まえて,
380 解答しなさい。
381
382
383 〔設問2〕
384 本件不同意決定が処分に当たるという立場を採った場合,
385 Aは,
386 乙町長の同意を得るために,
387
388 誰を被告としてどのような訴訟を提起すべきか。
389
390 本件不同意決定が違法であることを前提にして,
391
392 提起すべき訴訟とその訴訟要件について,
393 事案に即して説明しなさい。
394
395 なお,
396 仮の救済について
397 は検討しなくてよい。
398
399
400
401 【資料】乙町モーテル類似旅館規制条例(平成18年乙町条例第20号)(抜粋)
402 (目的)
403 第1条
404
405 この条例は,
406 町の善良な風俗が損なわれないようにモーテル類似旅館の新築又は改築(以下
407
408 「新築等」という。
409
410 )を規制することにより,
411 清純な生活環境を維持することを目的とする。
412
413
414 (定義)
415 第2条
416
417 この条例において「モーテル類似旅館」とは,
418 旅館業法(昭和23年法律第138号)第2
419
420 条に規定するホテル営業又は旅館営業の用に供することを目的とする施設であって,
421 その施設の一
422 部又は全部が車庫,
423 駐車場又は当該施設の敷地から,
424 屋内の帳場又はこれに類する施設を通ること
425 なく直接客室へ通ずることができると認められる構造を有するものをいう。
426
427
428
429 (同意)
430 第3条
431
432 モーテル類似旅館を経営する目的をもって,
433 モーテル類似旅館の新築等(改築によりモーテ
434
435 ル類似旅館に該当することとなる場合を含む。
436
437 以下同じ。
438
439 )をしようとする者(以下「建築主」と
440 いう。
441
442 )は,
443 あらかじめ町長に申請書を提出し,
444 同意を得なければならない。
445
446
447 (諮問)
448 第4条
449
450 町長は,
451 前条の規定により建築主から同意を求められたときは,
452 乙町モーテル類似旅館建築
453
454 審査会に諮問し,
455 同意するか否かを決定するものとする。
456
457
458 (規制)
459 第5条
460
461 町長は,
462 第3条の申請書に係る施設の設置場所が,
463 次の各号のいずれかに該当する場合には
464
465 同意しないものとする。
466
467
468 (1) 集落内又は集落の付近
469 (2) 児童生徒の通学路の付近
470 (3) 公園及び児童福祉施設の付近
471 (4) 官公署,
472 教育文化施設,
473 病院又は診療所の付近
474 (5) その他モーテル類似旅館の設置により,
475 町長がその地域の清純な生活環境が害されると認める
476 場所
477 (通知)
478 第6条
479
480 町長は,
481 第4条の規定により,
482 同意するか否かを決定したときは,
483 その旨を建築主に通知す
484
485 るものとする。
486
487
488 (命令等)
489 第7条
490
491 町長は,
492 次の各号のいずれかに該当する者に対し,
493 モーテル類似旅館の新築等について中止
494
495 の勧告又は命令をすることができる。
496
497
498 (1) 第3条の同意を得ないでモーテル類似旅館の新築等をし,
499 又は新築等をしようとする建築主
500 (2) 虚偽の同意申請によりモーテル類似旅館の新築等をし,
501 又は新築等をしようとする建築主
502 (公表)
503 第8条
504
505 町長は,
506 前条に規定する命令に従わない建築主については,
507 規則で定めるところにより,
508
509
510 の旨を公表するものとする。
511
512 ただし,
513 所在の判明しない者は,
514 この限りでない。
515
516
517
518
519 町長は,
520 前項に規定する公表を行うときは,
521 あらかじめ公表される建築主に対し,
522 弁明の機会を
523 与えなければならない。
524
525
526
527 (注)本件条例においては,
528 資料として掲げた条文のほかに,
529 罰則等の制裁の定めはない。
530
531
532
533 (出題趣旨)
534 行政訴訟の基本的な知識,
535 理解及びそれを事案に即して運用する基本的な能力を
536 試すことを目的として,
537 旅館の建設につき条例に基づく町長の不同意決定を受けた
538 者が,
539 訴訟を提起して争おうとする場合の行政事件訴訟法上の問題について問うも
540 のである。
541
542 不同意決定の処分性を条例の仕組みに基づいて検討した上で,
543 処分性が
544 認められる場合に選択すべき訴訟類型及び処分性以外の訴訟要件について,
545 事案に
546 即して説明することが求められる。
547
548
549
550 [刑
551
552 法]
553
554 以下の事例に基づき,
555 甲の罪責について論じなさい。
556
557
558
559
560 甲(35歳)は,
561 無職の妻乙(30歳)及び長女丙(3歳)と,
562 郊外の住宅街に建てられた甲
563 所有の木造2階建て家屋(以下「甲宅」という。
564
565 )で生活していた。
566
567 甲宅の住宅ローンの返済は,
568
569 会社員であった甲の給与収入によってなされていた。
570
571 しかし,
572 甲が勤務先を解雇されたことから,
573
574 甲一家の収入が途絶え,
575 ローンの返済ができず,
576 住宅ローン会社から,
577 甲宅に設定されていた抵
578 当権の実行を通告された。
579
580 甲は就職活動を行ったが,
581 再就職先を見つけることができなかった。
582
583
584 このような状況に将来を悲観した乙は,
585 甲に対して,
586 「生きているのが嫌になった。
587
588 みんなで一
589 緒に死にましょう。
590
591 」と繰り返し言うようになったが,
592 甲は,
593 一家3人で心中する決意をするこ
594 とができず,
595 乙に対して,
596 その都度「もう少し頑張ってみよう。
597
598 」と答えていた。
599
600
601
602
603
604 ある日の夜,
605 甲と丙が就寝した後,
606 乙は,
607 「丙を道連れに先に死のう。
608
609 」と思い,
610 衣装ダンスの
611 中から甲のネクタイを取り出し,
612 眠っている丙の首に巻き付けた上,
613 絞め付けた。
614
615 乙は,
616 丙が身
617 動きをしなくなったことから,
618 丙の首を絞め付けるのをやめ,
619 台所に行って果物ナイフを持ち出
620 し,
621 布団の上で自己の腹部に果物ナイフを突き刺し,
622 そのまま横たわった。
623
624
625 甲は,
626 乙のうめき声で目を覚ましたところ,
627 丙の首にネクタイが巻き付けられていて,
628 乙の腹
629 部に果物ナイフが突き刺さっていることに気が付いた。
630
631
632 甲が乙に「どうしたんだ。
633
634 」と声を掛けると,
635 乙は,
636 甲に対し,
637 「ごめんなさい。
638
639 私にはもうこ
640 れ以上頑張ることはできなかった。
641
642 早く楽にして。
643
644 」と言った。
645
646 甲は,
647 「助けを呼べば,
648 乙が丙を
649 殺害したことが発覚してしまう。
650
651 しかし,
652 このままだと乙が苦しむだけだ。
653
654 」と考え,
655 乙殺害を
656 決意し,
657 乙の首を両手で絞め付けたところ,
658 乙が動かなくなり,
659 うめき声も出さなくなったこと
660 から,
661 乙が死亡したと思い,
662 両手の力を抜いた。
663
664
665
666
667
668 その後,
669 甲は,
670 「乙が丙を殺した痕跡や,
671 自分が乙を殺した痕跡を消してしまいたい。
672
673 家を燃
674 やせば乙や丙の遺体も燃えるので焼死したように装うことができる。
675
676 」と考え,
677 乙と丙の周囲に
678 灯油をまき,
679 ライターで点火した上,
680 甲宅を離れた。
681
682 その結果,
683 甲宅は全焼し,
684 焼け跡から乙と
685 丙の遺体が発見された。
686
687
688
689
690
691 乙と丙の遺体を司法解剖した結果,
692 両名の遺体の表皮は,
693 熱により損傷を受けていること,
694
695 の腹部の刺創は,
696 主要な臓器や大血管を損傷しておらず,
697 致命傷とはなり得ないこと,
698 乙の死因
699 は,
700 頸部圧迫による窒息死ではなく,
701 頸部圧迫による意識消失状態で多量の一酸化炭素を吸引し
702 たことによる一酸化炭素中毒死であること,
703 丙の死因は,
704 頸部圧迫による窒息死であることが判
705 明した。
706
707
708
709 (出題趣旨)
710 本問は,
711 甲が,
712 無理心中を図って子丙を殺害した妻乙から乙殺害の嘱託を受け,
713
714 殺意をもって乙の首を絞め,
715 乙が死亡したものと誤信し,
716 乙及び丙それぞれの殺害
717 に関する証拠を隠滅する目的で犯行現場である甲宅に放火し,
718 甲宅を全焼させると
719 ともに,
720 乙と丙の遺体を焼損させたが,
721 乙の死因は放火による一酸化炭素中毒であ
722 ったという事案を素材として,
723 事案を的確に分析する能力を問うとともに,
724 行為者
725 の行為の介在と因果関係,
726 事実の錯誤,
727 証拠隠滅罪等に関する理解とその事例への
728 当てはめの適切さを問うものである。
729
730
731
732 [刑事訴訟法]
733 次の記述を読んで,
734 後記の設問に答えなさい。
735
736
737 警察官は,
738 甲が,
739 平成23年7月1日にH市内において,
740 乙に対して覚せい剤10グラムを30万
741 円で譲渡したとの覚せい剤取締法違反被疑事件につき,
742 甲宅を捜索して現金の出納及び甲の行動等に
743 関する証拠を収集するため,
744 H地方裁判所裁判官に対し,
745 捜索差押許可状の発付を請求した。
746
747 これを
748 受けてH地方裁判所裁判官は,
749 罪名として「覚せい剤取締法違反」,
750 差し押さえるべき物として「金
751 銭出納簿,
752 預金通帳,
753 日記,
754 手帳,
755 メモその他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」と
756 それぞれ記載した捜索差押許可状を発付した。
757
758
759 〔設問1〕
760 この捜索差押許可状の罪名及び差し押さえるべき物の記載は適法か。
761
762
763 〔設問2〕
764 仮に,
765 捜索差押許可状の記載が適法であったとして,
766 警察官が,
767 この捜索差押許可状に基づき,
768
769 甲宅を捜索した際に,
770 「6/30
771
772 250万円
773
774 丙から覚せい剤100グラム購入」と書かれた
775
776 メモを発見した場合,
777 これを差し押さえることができるか。
778
779
780 (参照条文)覚せい剤取締法
781 第41条の2第1項
782
783 覚せい剤を,
784 みだりに,
785 所持し,
786 譲り渡し,
787 又は譲り受けた者(第42条第
788
789 5号に該当する者を除く。
790
791 )は,
792 10年以下の懲役に処する。
793
794
795
796 (出題趣旨)
797 本問は,
798 覚せい剤取締法違反被疑事件の捜査における捜索差押えを題材として,
799
800 特別法違反事件に関する捜索差押許可状の「罪名」及び「差し押さえるべき物」の
801 各記載の適法性を問うとともに,
802 捜索の過程で発見された具体的な物件が当該捜索
803 差押許可状記載の「差し押さえるべき物」に該当するか否かを検討させることによ
804 り,
805 令状主義の趣旨と捜索差押えについての基本的な知識の有無及び具体的事案に
806 対する応用力を試すものである。
807
808
809
810 [民
811
812 法]
813
814 Aは,
815 平成20年3月5日,
816 自己の所有する甲土地について税金の滞納による差押えを免れるた
817 め,
818 息子Bの承諾を得て,
819 AからBへの甲土地の売買契約を仮装し,
820 売買を原因とするB名義の所
821 有権移転登記をした。
822
823 次いで,
824 Bは,
825 Aに無断で,
826 甲土地の上に乙建物を建築し,
827 同年11月7日,
828
829 乙建物についてB名義の保存登記をし,
830 同日から乙建物に居住するようになった。
831
832
833 Bは,
834 自己の経営する会社の業績が悪化したため,
835 その資金を調達するために,
836 平成21年5月
837 23日,
838 乙建物を700万円でCに売却し,
839 C名義の所有権移転登記をするとともに,
840 同日,
841 Cと
842 の間で,
843 甲土地について建物の所有を目的とする賃貸借契約(賃料月額12万円)を締結し,
844 乙建
845 物をCに引き渡した。
846
847 この賃貸借契約の締結に際して,
848 Cは,
849 甲土地についてのAB間の売買が仮
850 装によるものであることを知っていた。
851
852
853 その後,
854 さらに資金を必要としたBは,
855 同年10月9日,
856 甲土地をDに代金1000万円で売却
857 し,
858 D名義の所有権移転登記をした。
859
860 この売買契約の締結に際して,
861 Dは,
862 甲土地についてのAB
863 間の売買が仮装によるものであることを知らず,
864 それを知らないことについて過失もなかった。
865
866
867 同年12月16日,
868 Aが急死し,
869 その唯一の相続人であるBがAの一切の権利義務を相続した。
870
871
872 この場合において,
873 Dは,
874 Cに対し,
875 甲土地の所有権に基づいて,
876 甲土地の明渡しを求めることが
877 できるかを論ぜよ。
878
879
880
881 (出題趣旨)
882 不動産の仮装売買(民法第94条第1項)を前提に,
883 仮装名義人が不動産を一方
884 に賃貸し,
885 他方に売買した事案における,
886 賃借人と買主との法律関係についての理
887 解を問うものである。
888
889 民法第94条第2項の善意の第三者に関する基本的理解を前
890 提に,
891 他人物売買及び他人物賃貸借をめぐる法律関係を検討し,
892 さらに,
893 他人物の
894 売主及び賃貸人が所有者を相続した場合の法律関係を問うことで,
895 正確な法的知識
896 とそれに基づく事案分析能力,
897 論理的思考能力及び応用力を試すものである。
898
899
900
901 [商
902
903 法]
904
905 次の文章を読んで,
906
907 〔設問1〕から〔設問3〕までに答えよ。
908
909
910 1.Y株式会社(以下「Y社」という。
911
912 )は,
913 取締役会及び監査役を置く会社法上の公開会社でない
914 会社であり,
915 かつ,
916 株券発行会社でない会社である。
917
918
919 Y社は,
920 昭和59年に設立された会社であり,
921 その発行済株式総数は1000株で,
922 A及びAの
923 弟であるBがそれぞれ400株を,
924 Aの長男C及びAの妻Dがそれぞれ100株を有していた。
925
926
927 Y社の取締役にはA,
928 B及びCの3人が,
929 代表取締役にはAが,
930 監査役にはDがそれぞれ就任し
931 ている。
932
933
934 2.AとBは,
935 平成16年頃から,
936 Y社の経営方針についての考え方の違いが生じたため,
937 互いに話
938 をしなくなり,
939 Bは,
940 その頃から,
941 Y社の取締役会に全く出席しないようになった。
942
943
944 3.Bは,
945 平成23年1月頃,
946 自らの有するY社の全ての株式を処分しようと考え,
947 知人が経営す
948 るY社と同業のX株式会社(以下「X社」という。
949
950
951 )に対してY社の株式の買取りを打診し,
952 X社
953 の承諾を得た。
954
955
956 そこで,
957 Bは,
958 X社に対し,
959
960 「譲渡等承認請求に関する一切の件をX社に委任する」という内容の
961 委任状(以下「譲渡等承認委任状」という。
962
963 )及び「株主名簿の名義書換請求に関する一切の件を
964 X社に委任する」という内容の委任状(以下「名義書換委任状」という。
965
966
967 )を交付した。
968
969
970 4.X社は,
971 同年3月15日,
972 Y社に対し,
973 譲渡等承認委任状を添付して,
974 X社がBからY社の株
975 式400株を取得した旨及び取得についての承認を求める旨の通知をした(以下この通知による
976 請求を「本件譲渡等承認請求」という。
977
978
979
980
981
982
983 なお,
984 本件譲渡等承認請求においては,
985 Y社又は指定買取人による買取りについては,
986 請求がさ
987 れなかった。
988
989
990 5.Aは,
991 同月25日,
992 Y社の取締役会を開催した。
993
994 この取締役会には,
995 A及びCが出席したが,
996
997 Aも,
998 Cも,
999 X社が株主となることを警戒し,
1000 取締役会は,
1001 X社の株式の取得を承認しない旨を
1002 決定する決議をした。
1003
1004
1005 なお,
1006 この取締役会の招集通知は,
1007 Bに対し,
1008 発せられなかった。
1009
1010
1011 6.X社は,
1012 Y社から本件譲渡等承認請求に対する取締役会の決定の内容についての通知を受けな
1013 かったため,
1014 同年4月30日,
1015 Bに対して株式の譲渡代金を支払うとともに,
1016 Y社に対し,
1017 名義
1018 書換委任状を添付して,
1019 株主名簿の名義をBからX社に書き換えるように通知して請求した。
1020
1021
1022 7.同年5月2日,
1023 Y社は,
1024 X社に対し,
1025 X社の株式の取得について取締役会で承認しない旨を決
1026 定したために名義書換請求に応ずることはできない旨を回答し,
1027 併せて,
1028 Aは,
1029 Bに対し,
1030 Bの
1031 有するY社の株式をAが買い取る旨を提案した。
1032
1033
1034 そこで,
1035 Bは,
1036 X社に対して受領した譲渡代金の返還を申し出た上でAの提案に応じようと考え
1037 たが,
1038 X社から拒絶されたため,
1039 Aの提案に応ずることができなかった。
1040
1041
1042 8.Y社は,
1043 同年6月,
1044 取締役会決議に基づき,
1045 A,
1046 B,
1047 C及びDに対して定時株主総会の招集通
1048 知を発送し,
1049 A,
1050 B,
1051 C及びDが出席した定時株主総会において,
1052 この定時株主総会の終結の時
1053 に任期が満了するA,
1054 B及びCを取締役に選任する旨の取締役選任議案を決議した。
1055
1056
1057 なお,
1058 Y社は,
1059 定時株主総会に関し,
1060 定款に基準日に係る規定を置いておらず,
1061 また,
1062 基準日に
1063 係る公告もしていない。
1064
1065
1066 〔設問1〕
1067 平成23年3月25日に開催された本件譲渡等承認請求に係るY社の取締役会の決議の効力に
1068 ついて論ぜよ。
1069
1070
1071
1072 〔設問2〕
1073 Y社の定時株主総会の決議に関し,
1074 X社は,
1075 その効力を争うことができるか。
1076
1077
1078 〔設問3〕
1079 仮に,
1080 BがAからの提案(上記7の提案)に応じてY社の株式400株をAに譲渡して代金を
1081 受領し,
1082 Y社がAの株式の取得を取締役会で承認するとともに,
1083 定時株主総会の招集通知の発送
1084 前までにA及びBの求めに応じてBからAに株主名簿の名義を書き換え,
1085 A,
1086 C及びDに対して
1087 定時株主総会の招集通知を発送していたとしたら,
1088 Y社の定時株主総会の決議に関し,
1089 X社は,
1090
1091 その効力を争うことができるか。
1092
1093
1094
1095 (出題趣旨)
1096 本問は,
1097 公開会社ではなく,
1098 かつ,
1099 株券発行会社ではない取締役会設置会社にお
1100 いて,
1101 株式の譲渡がされた場合に関し,
1102 @譲渡人である取締役に対する招集通知を
1103 欠いてされた譲渡等承認請求に係る取締役会の決議の効力,
1104 A株主名簿の名義書換
1105 えが拒絶された株式取得者の取扱いについて,
1106 問うものである。
1107
1108 解答に際しては,
1109
1110 取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役の意義,
1111 会社が譲渡等承認
1112 請求をしたとみなされる場合に関する規律の存在,
1113 株主名簿の名義書換えの不当拒
1114 絶の意義及び効果,
1115 名義書換未了の間にされた株主総会決議の効力,
1116 株式の二重譲
1117 渡において対抗要件を具備した第二譲受人との優劣等について,
1118 整合的に論述する
1119 ことが求められる。
1120
1121
1122
1123 [民事訴訟法]
1124 次の事例について,
1125 後記の設問に答えよ。
1126
1127
1128 【事 例】
1129 Xは,
1130 請求の趣旨として「被告は,
1131 原告に対し,
1132 150万円を支払え。
1133
1134
1135 」との判決を求める旨を記載
1136 するとともに「原告は,
1137 被告との間で,
1138 原告が被告に中古自動車1台を代金150万円で売り渡すと
1139 いう売買契約を平成21年1月15日に締結し,
1140 同日,
1141 当該自動車について,
1142 所有者の登録を被告名
1143 義に移転するとともに被告に引き渡した。
1144
1145 よって,
1146 原告は,
1147 被告に対し,
1148 売買代金150万円の支払
1149 を求める。
1150
1151
1152 」との主張を記載した訴状を平成22年4月1日に地方裁判所に提出して訴えを提起した。
1153
1154
1155 その訴状には,
1156 被告として,
1157 甲市乙町5番地に住所のあるYの氏名が表示され,
1158 かつ,
1159 被告の法定代
1160 理人として,
1161 同所に住所のある成年後見人Zの氏名が表示されていた。
1162
1163
1164 この訴えについて,
1165 裁判長は,
1166 平成22年4月5日,
1167 第1回口頭弁論期日を平成22年4月28日
1168 午前10時と指定し,
1169 裁判所書記官は,
1170 この訴状を送達するため,
1171 訴状副本を第1回口頭弁論期日の
1172 呼出状とともに,
1173 Z宛てに郵送した。
1174
1175
1176 ところで,
1177 Yは,
1178 甲市乙町5番地の自宅に子であるZとともに居住していたが,
1179 平成21年3月に
1180 重病のため事理を弁識することができない状態となり,
1181 同年6月にYについて後見開始の審判がされ
1182 て,
1183 それまでに成年に達していたZが成年後見人に選任された。
1184
1185 そして,
1186 Yは,
1187 平成22年4月3日
1188 に死亡した。
1189
1190 Zは,
1191 Yが死亡したことを同日に知ったが,
1192 その後3か月以内に相続放棄や限定承認の
1193 手続をしなかった。
1194
1195 Yの配偶者はYより前に死亡しており,
1196 ZのほかにYの子はいなかった。
1197
1198
1199 Zは,
1200 平成22年4月7日に,
1201 甲市乙町5番地の自宅で上記の訴状副本と口頭弁論期日呼出状を受
1202 け取った。
1203
1204 Zは,
1205 Yが死亡したことを裁判所やXに知らせることなく,
1206 Yの法定代理人として第1回
1207 口頭弁論期日に出頭し,
1208
1209 「Xが主張する売買契約を否認し,
1210 請求の棄却を求める。
1211
1212
1213 」旨を答弁した上,
1214
1215 訴訟代理人を選任することなく訴訟を追行した。
1216
1217 第一審では,
1218 Xが主張する売買契約があったかどう
1219 かが争点となり,
1220 証拠調べとしてXの尋問とZの尋問とが実施され,
1221 Zは,
1222
1223 「Yは重病で動けない。
1224
1225
1226 は,
1227 平成21年1月当時も現在もYと同居しているが,
1228 Yが自動車を買ったと聞いたことはないし,
1229
1230 そのような自動車を見たこともない。
1231
1232
1233 」旨を述べた。
1234
1235
1236 裁判所及びXがYの死亡を知らないまま,
1237 第一審の口頭弁論は平成22年9月に終結され,
1238 裁判所
1239 は,
1240 判決書の原本に基づいて判決を言い渡した。
1241
1242 判決書には,
1243 原告X,
1244 被告Y,
1245 被告法定代理人成年
1246 後見人Zとの記載があり,
1247 主文は「被告は,
1248 原告に対し,
1249 150万円を支払え。
1250
1251
1252 」というものであって,
1253
1254 その理由としてXが主張する売買契約が認められる旨の判断が示されていた。
1255
1256
1257 Zは,
1258 第一審の判決書の正本の送達を受けた日の2日後に,
1259 控訴人をZと表示した控訴状を第一審
1260 裁判所に提出して控訴を提起した。
1261
1262 その控訴状には,
1263
1264 「Yは,
1265 平成22年4月3日に死亡していた。
1266
1267
1268 の他の主張は,
1269 第一審でしたとおりである。
1270
1271
1272 」との記載がある。
1273
1274 第一審裁判所の裁判所書記官は,
1275 控訴
1276 裁判所の裁判所書記官に訴訟記録を送付した。
1277
1278
1279 〔設
1280
1281 問〕
1282 Yが平成22年4月3日に死亡していたと認められる場合,
1283 控訴審では,
1284 どのような事項について
1285
1286 検討し,
1287 誰と誰を当事者としてどのような内容の裁判をすべきか。
1288
1289
1290
1291 (出題趣旨)
1292 訴状において被告と表示された者が訴え提起後第1回口頭弁論期日の指定や訴状
1293 副本の送達がされる前に死亡していたところ,
1294 その者の生前の法定代理人であり,
1295
1296 唯一の相続人である者が,
1297 その死亡の事実を明らかにせずに訴訟を追行した結果,
1298
1299 死亡した者を被告と表示して請求を認容する第一審の終局判決がされ,
1300 その終局判
1301 決に対して第一審の訴訟追行者が自らの名で控訴した場合に,
1302 控訴審での当事者や
1303
1304 裁判の内容を問う問題である。
1305
1306 訴えの適法性や第一審判決の効力,
1307 第一審判決で表
1308 示された当事者と異なる者が控訴した場合の取扱い,
1309 控訴の適法性等について,
1310
1311 事者の確定の問題,
1312 訴訟追行者の信義誠実の原則等を踏まえて事案に即して検討し
1313 た上,
1314 控訴審で判断の対象となる事項を考慮し,
1315 控訴審がすべき適切な裁判を示す
1316 必要がある。
1317
1318
1319
1320 [法律実務基礎科目(民事)]
1321 〔設問1〕
1322 別紙【Xの相談内容】は,
1323 弁護士PがXから受けた相談の内容の一部を記載したものである。
1324
1325
1326 れを前提に,
1327 以下の問いに答えなさい。
1328
1329
1330 弁護士Pは,
1331 Xの依頼により,
1332 Xの訴訟代理人として,
1333 AY間の消費貸借契約に基づく貸金返還
1334 請求権を訴訟物として,
1335 Yに対して100万円の支払を請求する訴え(以下「本件訴え」という。
1336
1337
1338 を提起しようと考えている(なお,
1339 利息及び遅延損害金については請求しないものとする。
1340
1341 以下の
1342 設問でも同じである。
1343
1344 )。
1345
1346 弁護士Pが,
1347 別紙【Xの相談内容】を前提に,
1348 本件訴えの訴状において,
1349
1350 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)として必要十分な最小限のものを主張する
1351 場合,
1352 次の各事実の主張が必要であり,
1353 かつ,
1354 これで足りるか。
1355
1356 結論とともに理由を説明しなさい。
1357
1358
1359 @
1360
1361 平成16年10月1日,
1362 Yは,
1363 平成17年9月30日に返済することを約して,
1364 Aか
1365 ら100万円の交付を受けたとの事実
1366
1367 A
1368
1369 平成22年4月1日,
1370 Aは,
1371 Xに対して,
1372 @の貸金債権を代金80万円で売ったとの
1373 事実
1374
1375 B
1376
1377 平成17年9月30日は到来したとの事実
1378
1379 〔設問2〕
1380 弁護士Pは,
1381 訴状に本件の請求を理由づける事実を適切に記載した上で,
1382 本件訴えを平成23年
1383 2月15日に提起した(以下,
1384 この事件を「本件」という。
1385
1386 )。
1387
1388 数日後,
1389 裁判所から訴状の副本等の
1390 送達を受けたYが,
1391 弁護士Qに相談したところ,
1392 弁護士Qは,
1393 Yの訴訟代理人として本件を受任す
1394 ることとなった。
1395
1396 別紙【Yの相談内容】は,
1397 弁護士QがYから受けた相談の内容の一部を記載した
1398 ものである。
1399
1400 これを前提に,
1401 以下の問いに答えなさい。
1402
1403
1404 弁護士Qは,
1405 別紙【Yの相談内容】を前提に,
1406 答弁書において抗弁として消滅時効の主張をしよ
1407 うと考えている。
1408
1409 弁護士Qとして,
1410 答弁書において必要十分な最小限の抗弁事実を主張するに当た
1411 り,
1412 消滅時効の理解に関する下記の甲説に基づく場合と乙説に基づく場合とで,
1413 主張すべき事実に
1414 違いがあるか。
1415
1416 結論とともに理由を説明しなさい。
1417
1418 なお,
1419 本件の貸金返還請求権について商法第5
1420 22条が適用されることは解答の前提としてよい。
1421
1422
1423 甲説・・時効による債権消滅の効果は,
1424 時効期間の経過とともに確定的に生じるものでは
1425 なく,
1426 時効が援用されたときに初めて確定的に生じる。
1427
1428
1429 乙説・・時効による債権消滅の効果は,
1430 時効期間の経過とともに確定的に生じる。
1431
1432 時効の
1433 援用は,
1434 「裁判所は,
1435 当事者の主張しない事実を裁判の資料として採用してはな
1436 らない」という民事訴訟の一般原則に従い,
1437 時効の完成に係る事実を訴訟におい
1438 て主張する行為にすぎない。
1439
1440
1441
1442 〔設問3〕
1443 弁護士Qは,
1444 別紙【Yの相談内容】を前提に,
1445 答弁書に消滅時効の抗弁事実を適切に記載して裁
1446 判所に提出した。
1447
1448
1449 本件については,
1450 平成23年3月14日に第1回口頭弁論期日が開かれた。
1451
1452 同期日には,
1453 弁護士
1454 Pと弁護士Qが出頭し,
1455 弁護士Pは訴状のとおり陳述し,
1456 弁護士Qは答弁書のとおり陳述した。
1457
1458
1459
1460 の上で,
1461 両弁護士は次のとおり陳述した。
1462
1463 これを前提に,
1464 以下の問いに答えなさい。
1465
1466
1467 弁護士P:Y側は消滅時効を主張しています。
1468
1469 しかし,
1470 私がXから聴取しているところでは,
1471
1472 は,
1473 平成22年4月1日にXに本件の貸金債権を譲渡し,
1474 同日にYにその事実を電話
1475 で通知した,
1476 そこで,
1477 Xは,
1478 5年の時効期間が経過する前の同年5月14日にYの店
1479 に行き,
1480 Yに対して本件の借金を返済するよう求めたが,
1481 そのときにYが確たる返事
1482 をしなかったことから,
1483 しばらく様子を見ていた,
1484 その後,
1485 Xが,
1486 同年12月15日
1487 に再びYの店に行ったところ,
1488 Yの方から返済を半年間待ってほしいと懇請された,
1489
1490 とのことでした。
1491
1492 このような経過を経て,
1493 私がXから依頼を受けて,
1494 平成23年2月
1495 15日に本件訴えを提起したものです。
1496
1497 ですから,
1498 Y側の消滅時効の主張は通らない
1499 と思います。
1500
1501
1502 弁護士Q:私も,
1503 Yから,
1504 A及びXとの間のやりとりについて詳しく確認してきましたが,
1505 Yは,
1506
1507 平成22年中に,
1508 AともXとも話をしたことはないとのことです。
1509
1510
1511 訴状に記載された本件の請求を理由づける事実及び答弁書に記載された消滅時効の抗弁事実がい
1512 ずれも認められるとした場合,
1513 裁判所は,
1514 本件の訴訟の結論を得るために,
1515 弁護士Pによる上記陳
1516 述のうちの次の各事実を立証対象として,
1517 証拠調べをする必要があるか。
1518
1519 結論とともにその理由を
1520 説明しなさい。
1521
1522 なお,
1523 各事実を間接事実として立証対象とすることは考慮しなくてよい。
1524
1525
1526 @
1527
1528 Xは,
1529 5年の時効期間が経過する前の平成22年5月14日に,
1530 Yに対して,
1531 本件の
1532 借金を返済するよう求めたとの事実
1533
1534 A
1535
1536 平成22年12月15日に,
1537 YがXに対して,
1538 本件の借金の返済を半年間待ってほし
1539 いと懇請したとの事実
1540
1541 〔設問4〕
1542 本件の第1回口頭弁論期日において,
1543 弁護士Pは,
1544 「平成22年4月1日,
1545 Aは,
1546 Xに対して,
1547
1548 @の貸金債権を80万円で売った。
1549
1550 」との事実(設問1におけるAの事実)を立証するための証拠
1551 として,
1552 A名義の署名押印のある別紙【資料】の領収証を,
1553 作成者はAであるとして提出した。
1554
1555
1556 れに対して弁護士Qは,
1557 この領収証につき,
1558 誰が作成したものか分からないし,
1559 A名義の署名押印
1560 もAがしたものかどうか分からないと陳述した。
1561
1562 これを前提に,
1563 以下の問いに答えなさい。
1564
1565
1566 上記弁護士Qの陳述の後,
1567 裁判官Jは,
1568 更に弁護士Qに対し,
1569 別紙【資料】の領収証にあるA名
1570 義の印影がAの印章によって顕出されたものであるか否かを尋ねた。
1571
1572 裁判官Jがこのような質問を
1573 した理由を説明しなさい。
1574
1575
1576
1577 〔設問5〕
1578 本件の審理の過程において,
1579 弁護士P及びQは,
1580 裁判官Jからの和解の打診を受けて,
1581 1か月後
1582 の次回期日に和解案を提示することになった。
1583
1584 和解条件についてあらかじめ被告側の感触を探りた
1585 いと考えた弁護士Pは,
1586 弁護士Qに電話をかけたが,
1587 弁護士Qは海外出張のため2週間不在とのこ
1588 とであった。
1589
1590 この場合において,
1591 早期の紛争解決を望む弁護士Pが,
1592 被告であるYに電話をかけて
1593 和解の交渉をすることに弁護士倫理上の問題はあるか。
1594
1595 結論と理由を示しなさい。
1596
1597 なお,
1598 弁護士職
1599 務基本規程を資料として掲載してあるので,
1600 適宜参照しなさい。
1601
1602
1603
1604 (別
1605
1606 紙)
1607
1608 【Xの相談内容】
1609 私は甲商店街で文房具店を営んでおり,
1610 隣町の乙商店街で同じく文房具店を営んでいるAとは旧知
1611 の仲です。
1612
1613 平成16年10月1日,
1614 Aと同じ乙商店街で布団店を営んでいるYは,
1615 資金繰りが苦しく
1616 なったことから,
1617 いとこのAから,
1618 平成17年9月30日に返済する約束で,
1619 100万円の交付を受
1620 けて借り入れました。
1621
1622 ところが,
1623 Yは,
1624 返済期限が経過しても営業状況が改善せず,
1625 返済もしません
1626 でした。
1627
1628 Aもお人好しで,
1629 特に催促をすることもなく,
1630 Yの営業が持ち直すのを待っていたのですが,
1631
1632 平成21年頃,
1633 今度はAの方が,
1634 資金繰りに窮することになってしまいました。
1635
1636 そこで,
1637 Aは,
1638 Yに
1639 対して,
1640 上記貸金の返済を求めましたが,
1641 Yは返済をしようとしなかったそうです。
1642
1643 そのため,
1644 私は,
1645
1646 Aから窮状の相談を受けて,
1647 平成22年4月1日,
1648 Yに対する上記貸金債権を代金80万円で買い取
1649 ることとし,
1650 同日,
1651 Aに代金として80万円を支払い,
1652 その場でAはYに対して電話で債権譲渡の通
1653 知をしました。
1654
1655
1656 このような次第ですので,
1657 Yにはきちんと100万円を支払ってもらいたいと思います。
1658
1659
1660 【Yの相談内容】
1661 私は,
1662 乙商店街で布団店を営んでいますが,
1663 営業が苦しくなったことから,
1664 平成16年10月1日
1665 に,
1666 いとこのAから,
1667 返済期限を平成17年9月30日として100万円を借りました。
1668
1669 私は,
1670 この
1671 金を使って店の立て直しを図りましたが,
1672 うまくいかず,
1673 返済期限を過ぎても返済しないままになっ
1674 てしまいました。
1675
1676 Aからは,
1677 平成21年頃に一度だけ,
1678 この借金を返済してほしいと言われたことが
1679 ありますが,
1680 返す金もなかったことから,
1681 ついあの金はもらったものだなどと言ってしまいました。
1682
1683
1684 その後は,
1685 気まずかったので,
1686 Aとは会っていませんし,
1687 電話で話したこともありません。
1688
1689
1690 そうしたところ,
1691 平成23年2月15日に,
1692 XがP弁護士を訴訟代理人として本件訴えを起こして
1693 きました。
1694
1695 そこで,
1696 私は,
1697 同月21日に,
1698 訴訟関係書類に記載されていたXの連絡先に電話をかけて,
1699
1700 Xに対し,
1701 XがAから本件の貸金債権を譲り受けたという話は聞いていないし,
1702 そもそも今回の借金
1703 は,
1704 Aから借りた時から既に6年以上が経過しており,
1705 返済期限からでも5年以上が経過していて,
1706
1707 時効にかかっているから支払うつもりはないと伝えました。
1708
1709
1710 このような次第ですので,
1711 私にはXに100万円を支払う義務はないと思います。
1712
1713
1714 【資料】
1715
1716
1717
1718
1719
1720
1721
1722
1723
1724
1725
1726 本日,
1727 Yに対する百萬円の貸金債権の譲渡代金
1728 として,
1729 金八十萬円を領収致しました。
1730
1731
1732 平成22年4月1日
1733
1734
1735
1736 A印
1737
1738 弁護士職務基本規程(平成十六年十一月十日会規第七十号)
1739 目次
1740 第一章 基本倫理(第一条ー第八条)
1741 第二章 一般規律(第九条ー第十九条)
1742 第三章 依頼者との関係における規律
1743 第一節 通則(第二十条ー第二十六条)
1744 第二節 職務を行い得ない事件の規律(第二十七条・第二十八
1745 条)
1746 事件の受任時における規律(第二十九条ー第三十四条
1747 第四節 事件の処理における規律(第三十五条ー第四十三条)
1748 事件の終了時における規律(第四十四条・第四十五条
1749 第四章 刑事弁護における規律(第四十六条―第四十九条)
1750 第五章 組織内弁護士における規律(第五十条・第五十一条)
1751 第六章 事件の相手方との関係における規律(第五十二条ー第五
1752 十四条)
1753 第七章 共同事務所における規律(第五十五条―第六十条)
1754 第八章 弁護士法人における規律(第六十一条―第六十九条)
1755 第九章 他の弁護士との関係における規律(第七十条ー第七十三
1756 条)
1757 第十章 裁判の関係における規律(第七十四条―第七十七条)
1758 第十一章 弁護士会との関係における規律(第七十八条・第七十
1759 九条)
1760 官公署との関係における規律(第八十条・第八十一条
1761 第十三章 解釈適用指針(第八十二条)
1762 附則
1763 弁護士は、
1764 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
1765
1766
1767
1768 弁護士には職務の自由と独立が要請され
1769 高度)
1770 の自治が保障されている。
1771
1772
1773 弁護士は、
1774 その使命を自覚し、
1775 自らの行動を規律する社会的責任
1776 )。
1777
1778
1779 を負う
1780 よって、
1781 ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに
1782 するため、
1783 弁護士職務基本規程を制定する。
1784
1785
1786 第一章 基本倫理
1787 (使命の自覚)
1788 第一条 弁護士は、
1789 その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現
1790 にあることを自覚し、
1791 その使命の達成に努める。
1792
1793
1794 (自由と独立)
1795 第二条 弁護士は、
1796 職務の自由と独立を重んじる。
1797
1798
1799 (弁護士自治)
1800 第三条 弁護士は、
1801 弁護士自治の意義を自覚し、
1802 その維持発展に努
1803
1804
1805
1806
1807
1808 める。
1809
1810
1811 (司法独立の擁護)
1812 第四条 弁護士は、
1813 司法の独立を擁護し、
1814 司法制度の健全な発展に
1815 寄与するように努める。
1816
1817
1818 (信義誠実)
1819 第五条 弁護士は、
1820 真実を尊重し、
1821 信義に従い、
1822 誠実かつ公正に職
1823 務を行うものとする。
1824
1825
1826 (名誉と信用)
1827 第六条 弁護士は、
1828 名誉を重んじ、
1829 信用を維持するとともに、
1830 廉潔
1831 を保持し、
1832 常に品位を高めるように努める。
1833
1834
1835 (研鑽)
1836 第七条 弁護士は、
1837 教養を深め、
1838 法令及び法律事務に精通するため、
1839
1840 研鑽に努める。
1841
1842
1843 (公益活動の実践)
1844 第八条 弁護士は、
1845 その使命にふさわしい公益活動に参加し、
1846 実践
1847 するように努める。
1848
1849
1850 第二章 一般規律
1851 (広告及び宣伝)
1852 第九条 弁護士は、
1853 広告又は宣伝をするときは、
1854 虚偽又は誤導にわ
1855 たる情報を提供してはならない。
1856
1857
1858 2 弁護士は、
1859 品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
1860
1861
1862 (依頼の勧誘等)
1863 第十条 弁護士は、
1864 不当な目的のため、
1865 又は品位を損なう方法によ
1866 り、
1867 事件の依頼を勧誘し、
1868 又は事件を誘発してはならない。
1869
1870
1871 (非弁護士との提携)
1872 第十一条 弁護士は、
1873 弁護士法第七十二条から第七十四条までの規
1874 定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当
1875 な理由のある者から依頼者の紹介を受け、
1876 これらの者を利用し、
1877
1878 又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
1879
1880
1881 (報酬分配の制限)
1882 第十二条 弁護士は、
1883 その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法
1884 人でない者との間で分配してはならない。
1885
1886 ただし、
1887 法令又は本会
1888 若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その
1889 他正当な理由がある場合は、
1890 この限りでない。
1891
1892
1893 (依頼者紹介の対価)
1894 第十三条 弁護士は、
1895 依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その
1896 他の対価を支払ってはならない。
1897
1898
1899 2 弁護士は、
1900 依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価
1901 を受け取ってはならない。
1902
1903
1904 及び
1905 (違法行為の助長)
1906 第十四条 弁護士は、
1907 詐欺的取引、
1908 暴力その他違法若しくは不正な
1909 行為を助長し、
1910 又はこれらの行為を利用してはならない。
1911
1912
1913
1914 (品位を損なう事業への参加)
1915 第十五条 弁護士は、
1916 公序良俗に反する事業その他品位を損なう事
1917 業を営み、
1918 若しくはこれに加わり、
1919 又はこれらの事業に自己の名
1920 義を利用させてはならない。
1921
1922
1923 (営利業務従事における品位保持)
1924 第十六条 弁護士は、
1925 自ら営利を目的とする業務を営むとき、
1926 又は
1927 営利を目的とする業務を営む者の取締役、
1928 執行役その他業務を執
1929 行する役員若しくは使用人となったときは、
1930 営利を求めることに
1931 とらわれて、
1932 品位を損なう行為をしてはならない。
1933
1934
1935 (係争目的物の譲受け)
1936 第十七条 弁護士は、
1937 係争の目的物を譲り受けてはならない。
1938
1939
1940 (事件記録の保管等)
1941 第十八条 弁護士は、
1942 事件記録を保管又は廃棄するに際しては、
1943
1944 密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなけれ
1945 ばならない。
1946
1947
1948 (事務職員等の指導監督)
1949 第十九条 弁護士は、
1950 事務職員、
1951 司法修習生その他の自らの職務に
1952 関与させた者が、
1953 その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に
1954
1955 又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし
1956 若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければな
1957 らない。
1958
1959
1960 第三章 依頼者との関係における規律
1961 第一節 通則
1962 (依頼者との関係における自由と独立)
1963 第二十条 弁護士は、
1964 事件の受任及び処理に当たり、
1965 自由かつ独立
1966 の立場を保持するように努める。
1967
1968
1969 (正当な利益の実現)
1970 第二十一条 弁護士は、
1971 良心に従い、
1972 依頼者の権利及び正当な利益
1973 を実現するように努める。
1974
1975
1976 (依頼者の意思の尊重)
1977 第二十二条 弁護士は、
1978 委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重し
1979 て職務を行うものとする。
1980
1981
1982 2 弁護士は、
1983 依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に
1984 表明できないときは、
1985 適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に
1986 努める。
1987
1988
1989 (秘密の保持)
1990 第二十三条 弁護士は、
1991 正当な理由なく、
1992 依頼者について職務上知
1993 り得た秘密を他に漏らし、
1994 又は利用してはならない。
1995
1996
1997 (弁護士報酬)
1998
1999
2000 第二十四条 弁護士は、
2001 経済的利益、
2002 事案の難易、
2003 時間及び労力そ
2004 の他の事情に照らして、
2005 適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなけ
2006 ればならない。
2007
2008
2009
2010 (依頼者との金銭貸借等)
2011 第二十五条 弁護士は、
2012 特別の事情がない限り、
2013 依頼者と金銭の貸
2014 借をし、
2015 又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、
2016 若しく
2017 は依頼者の債務について保証をしてはならない。
2018
2019
2020 (依頼者との紛議)
2021 第二十六条 弁護士は、
2022 依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じな
2023 いように努め、
2024 紛議が生じたときは、
2025 所属弁護士会の紛議調停で
2026 解決するように努める。
2027
2028
2029 第二節 職務を行い得ない事件の規律
2030 (職務を行い得ない事件)
2031 第二十七条 弁護士は、
2032 次の各号のいずれかに該当する事件につい
2033 ては、
2034 その職務を行ってはならない。
2035
2036 ただし、
2037 第三号に掲げる事
2038 件については、
2039 受任している事件の依頼者が同意した場合は、
2040
2041 の限りでない。
2042
2043
2044 一 相手方の協議を受けて賛助し、
2045 又はその依頼を承諾した事件
2046 二 相手方の協議を受けた事件で、
2047 その協議の程度及び方法が信
2048 頼関係に基づくと認められるもの
2049 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
2050 四 公務員として職務上取り扱った事件
2051 五 仲裁、
2052 調停、
2053 和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手
2054 続実施者として取り扱った事件
2055 (同前)
2056 第二十八条 弁護士は、
2057 前条に規定するもののほか、
2058 次の各号のい
2059 ずれかに該当する事件については、
2060 その職務を行ってはならない。
2061
2062
2063 ただし、
2064 第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同
2065 意した場合、
2066 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方
2067 が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及
2068 び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、
2069 この限りでない。
2070
2071
2072 一 相手方が配偶者、
2073 直系血族、
2074 兄弟姉妹又は同居の親族である
2075 事件
2076 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
2077 を約している者を相手方とする事件
2078 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
2079 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
2080 第三節 事件の受任時における規律
2081 (受任の際の説明等)
2082 第二十九条 弁護士は、
2083 事件を受任するに当たり、
2084 依頼者から得た
2085 情報に基づき、
2086 事件の見通し、
2087 処理の方法並びに弁護士報酬及び
2088 費用について、
2089 適切な説明をしなければならない。
2090
2091
2092 2 弁護士は、
2093 事件について、
2094 依頼者に有利な結果となることを請
2095 け合い、
2096 又は保証してはならない。
2097
2098
2099 3 弁護士は、
2100 依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにも
2101
2102 かかわらず、
2103 その見込みがあるように装って事件を受任してはな
2104 らない。
2105
2106
2107 (委任契約書の作成)
2108 第三十条 弁護士は、
2109 事件を受任するに当たり、
2110 弁護士報酬に関す
2111 る事項を含む委任契約書を作成しなければならない。
2112
2113 ただし、
2114
2115 任契約書を作成することに困難な事由があるときは、
2116 その事由が
2117 止んだ後、
2118 これを作成する。
2119
2120
2121 2 前項の規定にかかわらず、
2122 受任する事件が、
2123 法律相談、
2124 簡易な
2125 書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものである
2126 ときその他合理的な理由があるときは、
2127 委任契約書の作成を要し
2128 ない。
2129
2130
2131 (不当な事件の受任)
2132 第三十一条 弁護士は、
2133 依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに
2134 不当な事件を受任してはならない。
2135
2136
2137 (不利益事項の説明)
2138 第三十二条 弁護士は、
2139 同一の事件について複数の依頼者があって
2140 その相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、
2141 事件を受
2142 任するに当たり、
2143 依頼者それぞれに対し、
2144 辞任の可能性その他の
2145 不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。
2146
2147
2148 (法律扶助制度等の説明)
2149 第三十三条 弁護士は、
2150 依頼者に対し、
2151 事案に応じ、
2152 法律扶助制度、
2153
2154 訴訟救助制度その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を
2155 説明し、
2156 裁判を受ける権利が保障されるように努める。
2157
2158
2159 (受任の諾否の通知)
2160 第三十四条 弁護士は、
2161 事件の依頼があったときは、
2162 速やかに、
2163
2164 の諾否を依頼者に通知しなければならない。
2165
2166
2167 第四節 事件の処理における規律
2168 (事件の処理)
2169 第三十五条 弁護士は、
2170 事件を受任したときは、
2171 速やかに着手し、
2172
2173 遅滞なく処理しなければならない。
2174
2175
2176 (事件処理の報告及び協議)
2177 第三十六条 弁護士は、
2178 必要に応じ、
2179 依頼者に対して、
2180 事件の経過
2181 及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、
2182 依頼者と協議しな
2183 がら事件の処理を進めなければならない。
2184
2185
2186 (法令等の調査)
2187 第三十七条 弁護士は、
2188 事件の処理に当たり、
2189 必要な法令の調査を
2190 怠ってはならない。
2191
2192
2193 2 弁護士は、
2194 事件の処理に当たり、
2195 必要かつ可能な事実関係の調
2196 査を行うように努める。
2197
2198
2199 (預り金の保管)
2200 第三十八条 弁護士は、
2201 事件に関して依頼者、
2202 相手方その他利害関
2203 係人から金員を預かったときは、
2204 自己の金員と区別し、
2205 預り金で
2206
2207 あることを明確にする方法で保管し、
2208 その状況を記録しなければ
2209 ならない。
2210
2211
2212 (預り品の保管)
2213 第三十九条 弁護士は、
2214 事件に関して依頼者、
2215 相手方その他利害関
2216 係人から書類その他の物品を預かったときは、
2217 善良な管理者の注
2218 意をもって保管しなければならない。
2219
2220
2221 (他の弁護士の参加)
2222 第四十条 弁護士は、
2223 受任している事件について、
2224 依頼者が他の弁
2225 護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、
2226 正当な理由な
2227 く、
2228 これを妨げてはならない。
2229
2230
2231 (受任弁護士間の意見不一致)
2232 第四十一条 弁護士は、
2233 同一の事件を受任している他の弁護士又は
2234 弁護士法人との間に事件の処理について意見が一致せず、
2235 これに
2236 より、
2237 依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、
2238 依頼者に対
2239 し、
2240 その事情を説明しなければならない。
2241
2242
2243 (受任後の利害対立)
2244 第四十二条 弁護士は、
2245 複数の依頼者があって、
2246 その相互間に利害
2247 の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、
2248 依頼者相互間に
2249 現実に利害の対立が生じたときは、
2250 依頼者それぞれに対し、
2251 速や
2252 かに、
2253 その事情を告げて、
2254 辞任その他の事案に応じた適切な措置
2255 をとらなければならない。
2256
2257
2258 (信頼関係の喪失)
2259 第四十三条 弁護士は、
2260 受任した事件について、
2261 依頼者との間に信
2262 頼関係が失われ、
2263 かつ、
2264 その回復が困難なときは、
2265 その旨を説明
2266 し、
2267 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならな
2268 い。
2269
2270
2271 第五節 事件の終了時における規律
2272 (処理結果の説明)
2273 第四十四条 弁護士は、
2274 委任の終了に当たり、
2275 事件処理の状況又は
2276 その結果に関し、
2277 必要に応じ法的助言を付して、
2278 依頼者に説明し
2279 なければならない。
2280
2281
2282 (預り金等の返還)
2283 第四十五条 弁護士は、
2284 委任の終了に当たり、
2285 委任契約に従い、
2286
2287 銭を清算したうえ、
2288 預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければ
2289 ならない。
2290
2291
2292 第四章 刑事弁護における規律
2293 (刑事弁護の心構え)
2294 第四十六条 弁護士は、
2295 被疑者及び被告人の防御権が保障されてい
2296 ることにかんがみ、
2297 その権利及び利益を擁護するため、
2298 最善の弁
2299 護活動に努める。
2300
2301
2302 (接見の確保と身体拘束からの解放)
2303 第四十七条 弁護士は、
2304 身体の拘束を受けている被疑者及び被告人
2305
2306 について、
2307 必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努
2308 める。
2309
2310
2311 (防御権の説明等)
2312 第四十八条 弁護士は、
2313 被疑者及び被告人に対し、
2314 黙秘権その他の
2315 防御権について適切な説明及び助言を行い、
2316 防御権及び弁護権に
2317 対する違法又は不当な制限に対し、
2318 必要な対抗措置をとるように
2319 努める。
2320
2321
2322 (国選弁護における対価受領等)
2323 第四十九条 弁護士は、
2324 国選弁護人に選任された事件について、
2325
2326 目のいかんを問わず、
2327 被告人その他の関係者から報酬その他の対
2328 価を受領してはならない。
2329
2330
2331 弁護士は、
2332 前項の事件について、
2333 被告人その他の関係者に対し
2334 その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。
2335
2336
2337 ただし、
2338 本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある
2339 場合は、
2340 この限りでない。
2341
2342
2343 第五章 組織内弁護士における規律
2344 (自由と独立)
2345 )。
2346
2347 以下これら
2348 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除。
2349
2350
2351
2352 を合わせて「組織」という。
2353
2354
2355 )において職員若しくは使用人とな
2356 り 又は取締役、
2357 理事その他の役員となっている弁護士(以下「
2358 織内弁護士」という。
2359
2360
2361 )は、
2362 弁護士の使命及び弁護士の本質であ
2363 る自由と独立を自覚し、
2364 良心に従って職務を行うように努める。
2365
2366
2367 (違法行為に対する措置)
2368 第五十一条 組織内弁護士は、
2369 その担当する職務に関し、
2370 その組織
2371 に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、
2372 又は行おうとし
2373 ていることを知ったときは、
2374 その者、
2375 自らが所属する部署の長又
2376 はその組織の長、
2377 取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対
2378 する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとら
2379 なければならない。
2380
2381
2382 第六章 事件の相手方との関係における規律
2383 (相手方本人との直接交渉)
2384 第五十二条 弁護士は、
2385 相手方に法令上の資格を有する代理人が選
2386
2387 任されたときは、
2388 正当な理由なく、
2389 その代理人の承諾を得ないで
2390 直接相手方と交渉してはならない。
2391
2392
2393 (相手方からの利益の供与)
2394 第五十三条 弁
2395
2396
2397
2398
2399
2400
2401
2402
2403
2404 な受
2405 い任
2406 事し
2407 件て
2408 にい
2409 つる
2410 い事
2411 て件
2412 はに関し、
2413 相手方から利益
2414 の供与若しくは供応を受け、
2415 又はこれを要求し、
2416 若しくは約束を
2417 してはならない。
2418
2419
2420 (相手方に対する利益の供与)
2421
2422 第五十四条 弁護士は、
2423 受任している事件に関し、
2424 相手方に対し、
2425
2426 利益の供与若しくは供応をし、
2427 又は申込みをしてはならない。
2428
2429
2430 第七章 共同事務所における規律
2431
2432 (遵守のための措置)
2433 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所
2434 である場合を除く を共にする場合(以下この法律事務所を「
2435 同事務所」という。
2436
2437
2438 )において、
2439 その共同事務所に所属する弁護
2440 士(以下「所属弁護士」という。
2441
2442
2443 )を監督する権限のある弁護士
2444 は、
2445 所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるよ
2446 うに努める。
2447
2448
2449 (秘密の保持)
2450 第五十六条 所属弁護士は、
2451 他の所属弁護士の依頼者について執務
2452 上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、
2453 又は利用してはな
2454 らない。
2455
2456 その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、
2457 同様と
2458 する。
2459
2460
2461 (職務を行い得ない事件)
2462 第五十七条 所属弁護士は、
2463 他の所属弁護士(所属弁護士であった
2464 場合を含む。
2465
2466
2467 )が、
2468 第二十七条又は第二十八条の規定により職務
2469
2470 職務を行ってはならない。
2471
2472 ただし
2473 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
2474 この限りでない。
2475
2476
2477 (同前ー受任後)共
2478 第五十八条 所属弁護士は、
2479 事件を受任した後に前条に該当する事
2480 由があることを知ったときは、
2481 速やかに、
2482 依頼者にその事情を告
2483 げて、
2484 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければなら
2485 ない。
2486
2487
2488 (事件情報の記録等)
2489 第五十九条 所属弁護士は、
2490 職務を行い得ない事件の受任を防止す
2491 るため、
2492 他の所属弁護士と共同して、
2493 取扱い事件の依頼者、
2494 相手
2495 方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
2496
2497
2498 (準用)
2499 第六十条 この章の規定は、
2500 弁護士が外国法事務弁護士と事務所を
2501 共にする場合に準用する。
2502
2503 この場合において、
2504 第五十五条中「複
2505 」とあるのは「弁護士及び外国法事務弁護士が」と
2506 「共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という
2507 とあるのは「共同事務所に所属する外国法事務弁護士(以下「所
2508
2509
2510
2511
2512
2513 属外国法事務弁護士」という。
2514
2515
2516
2517 」と、
2518
2519 「所属弁護士が」とあるの
2520 は「所属外国法事務弁護士が」と、
2521 第五十六条から第五十九条ま
2522 での規定中「他の所属弁護士」とあるのは「所属外国法事務弁護
2523 士」と、
2524 第五十七条中「第二十七条又は第二十八条」とあるのは
2525
2526
2527 「外国特別会員基本規程第三十条の二において準用する第二十七
2528 条又は第二十八条」と読み替えるものとする。
2529
2530
2531 第八章 弁護士法人における規律
2532 (遵守のための措置)
2533 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、
2534 その弁護士法人の
2535 社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という。
2536
2537
2538 )及び使
2539
2540 用人である外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な
2541 措置をとるように努める。
2542
2543
2544 (秘密の保持)
2545 第六十二条 社員等は、
2546 その弁護士法人、
2547 他の社員等又は使用人で
2548 ある外国法事務弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正
2549 当な理由なく他に漏らし、
2550 又は利用してはならない。
2551
2552 社員等でな
2553 くなった後も、
2554 同様とする。
2555
2556
2557 (職務を行い得ない事件)
2558 第六十三条 社員等(第一号及び第二号の場合においては、
2559 社員等
2560 であった者を含む。
2561
2562
2563 )は、
2564 次に掲げる事件については、
2565 職務を行
2566 ってはならない。
2567
2568 ただし、
2569 第四号に掲げる事件については、
2570 その
2571 弁護士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、
2572
2573 の限りでない。
2574
2575
2576 一 社員等であった期間内に、
2577 その弁護士法人が相手方の協議を
2578 受けて賛助し、
2579 又はその依頼を承諾した事件であって、
2580 自らこ
2581 れに関与したもの
2582 二 社員等であった期間内に、
2583 その弁護士法人が相手方の協議を
2584 受けた事件で、
2585 その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと
2586 認められるものであって、
2587 自らこれに関与したもの
2588 三 その弁護士法人が相手方から受任している事件
2589 四 その弁護士法人が受任している事件(当該社員等が自ら関与
2590 しているものに限る。
2591
2592
2593 )の相手方からの依頼による他の事件
2594 (他の社員等との関係で職務を行い得ない事件)
2595 第六十四条 社員等は、
2596 他の社員等が第二十七条、
2597 第二十八条又は
2598 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
2599 行い得ない事件については、
2600 職務を行ってはならない。
2601
2602 ただし、
2603
2604 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
2605 この限りでない。
2606
2607
2608 2 社員等は、
2609 使用人である外国法事務弁護士が外国特別会員基本
2610 規程第三十条の二において準用する第二十七条、
2611 第二十八条又は
2612 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
2613 行い得ない事件については、
2614 職務を行ってはならない。
2615
2616 ただし、
2617
2618 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
2619 この限りでない。
2620
2621
2622 (業務を行い得ない事件)
2623 第六十五条 弁護士法人は、
2624 次の各号のいずれかに該当する事件に
2625 ついては、
2626 その業務を行ってはならない。
2627
2628 ただし、
2629 第三号に規定
2630 する事件については受任している事件の依頼者の同意がある場合
2631 及び第五号に規定する事件についてはその職務を行い得ない社員
2632 がその弁護士法人の社員の総数の半数未満であり、
2633 かつ、
2634 その弁
2635 護士法人に業務の公正を保ち得る事由がある場合は、
2636 この限りで
2637 ない。
2638
2639
2640 一 相手方の協議を受けて賛助し、
2641 又はその依頼を承諾した事件
2642 二 相手方の協議を受けた事件で、
2643 その協議の程度及び方法が信
2644
2645 頼関係に基づくと認められるもの
2646 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
2647 四 社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任
2648 している事件
2649 五 社員が第二十七条、
2650 第二十八条又は第六十三条第一号若しく
2651 は第二号のいずれかの規定により職務を行い得ない事件
2652 (同前)
2653 第六十六条 弁護士法人は、
2654 前条に規定するもののほか、
2655 次の各号
2656 のいずれかに該当する事件については、
2657 その業務を行ってはなら
2658 ない。
2659
2660 ただし、
2661 第一号に掲げる事件についてその依頼者及び相手
2662 方が同意した場合、
2663 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び
2664 他の依頼者のいずれもが同意した場合並びに第三号に掲げる事件
2665 についてその依頼者が同意した場合は、
2666 この限りでない。
2667
2668
2669 一 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
2670 を約している者を相手方とする事件
2671 二 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
2672 三 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件
2673 (同前ー受任後)
2674 第六十七条 社員等は、
2675 事件を受任した後に第六十三条第三号の規
2676 定に該当する事由があることを知ったときは、
2677 速やかに、
2678 依頼者
2679 にその事情を告げ、
2680 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとら
2681 なければならない。
2682
2683
2684 2 弁護士法人は、
2685 事件を受任した後に第六十五条第四号又は第五
2686 号の規定に該当する事由があることを知ったときは、
2687 速やかに、
2688
2689 依頼者にその事情を告げ、
2690 辞任その他の事案に応じた適切な措置
2691 をとらなければならない。
2692
2693
2694 (事件情報の記録等)
2695 第六十八条 弁護士法人は、
2696 その業務が制限されている事件を受任
2697 すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士
2698 が職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、
2699 その弁
2700 護士法人、
2701 社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事
2702 件の依頼者、
2703 相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように
2704
2705 努める。
2706
2707
2708 (準用)
2709 第六十九条 第一章から第三章まで(第十六条、
2710 第十九条、
2711 第二十
2712 三条及び第三章中第二節を除く。
2713
2714
2715
2716
2717 第六章及び第九章から第十二
2718 章までの規定は弁護士法人に準用する。
2719
2720
2721 第九章 他の弁護士との関係における規律
2722 (名誉の尊重)
2723 第七十条 弁護士は、
2724 他の弁護士、
2725 弁護士法人及び外国法事務弁護
2726 士(以下「弁護士等」という。
2727
2728
2729 )との関係において、
2730 相互に名誉
2731 と信義を重んじる。
2732
2733
2734 (弁護士に対する不利益行為)
2735 第七十一条 弁護士は、
2736 信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れ
2737 てはならない。
2738
2739
2740 (他の事件への不当介入)
2741 第七十二条 弁護士は、
2742 他の弁護士等が受任している事件に不当に
2743 介入してはならない。
2744
2745
2746 (弁護士間の紛議)
2747 第七十三条 弁護士は、
2748 他の弁護士等との間の紛議については、
2749
2750 議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
2751
2752
2753 第十章 裁判の関係における規律
2754 (裁判の公正と適正手続)
2755 第七十四条 弁護士は、
2756 裁判の公正及び適正手続の実現に努める。
2757
2758
2759 (偽証のそそのかし)
2760 第七十五条 弁護士は、
2761 偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、
2762
2763 は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
2764
2765
2766 (裁判手続の遅延)
2767 第七十六条 弁護士は、
2768 怠慢により又は不当な目的のため、
2769 裁判手
2770 続を遅延させてはならない。
2771
2772
2773 (裁判官等との私的関係の不当利用)
2774 第七十七条 弁護士は、
2775 その職務を行うに当たり、
2776 裁判官、
2777 検察官
2778 その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係
2779 があることを不当に利用してはならない。
2780
2781
2782
2783 第十一章 弁護士会との関係における規律
2784 (弁護士法等の遵守)
2785 第七十八条 弁護士は、
2786 弁護士法並びに本会及び所属弁護士会の会
2787 則を遵守しなければならない。
2788
2789
2790 (委嘱事項の不当拒絶)
2791 第七十九条 弁護士は、
2792 正当な理由なく、
2793 会則の定めるところによ
2794 り、
2795 本会、
2796 所属弁護士会及び所属弁護士会が弁護士法第四十四条
2797 の規定により設けた弁護士会連合会から委嘱された事項を行うこ
2798 とを拒絶してはならない。
2799
2800
2801 第十二章 官公署との関係における規律
2802 (委嘱事項の不当拒絶)
2803 第八十条 弁護士は、
2804 正当な理由なく、
2805 法令により官公署から委嘱
2806 された事項を行うことを拒絶してはならない。
2807
2808
2809 (受託の制限)
2810 第八十一条 弁護士は、
2811 法令により官公署から委嘱された事項につ
2812 いて、
2813 職務の公正を保ち得ない事由があるときは、
2814 その委嘱を受
2815 けてはならない。
2816
2817
2818 第十三章 解釈適用指針
2819 (解釈適用指針)
2820 第八十二条 この規程は、
2821 弁護士の職務の多様性と個別性にかんが
2822 み、
2823 その自由と独立を不当に侵すことのないよう、
2824 実質的に解釈
2825 し適用しなければならない。
2826
2827 第五条の解釈適用に当たって、
2828 刑事
2829 弁護においては、
2830 被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護
2831 権を侵害することのないように留意しなければならない。
2832
2833
2834 2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、
2835 第二十六条、
2836 第三
2837 十三条、
2838 第三十七条第二項、
2839 第四十六条から第四十八条まで、
2840
2841 五十条、
2842 第五十五条、
2843 第五十九条、
2844 第六十一条、
2845 第六十八条、
2846
2847 七十条、
2848 第七十三条及び第七十四条の規定は、
2849 弁護士の職務の行
2850 動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければな
2851 らない。
2852
2853
2854 附 則
2855 この規程は、
2856 平成十七年四月一日から施行する。
2857
2858
2859
2860 (出題趣旨)
2861 設問1は,
2862 貸金債権を譲り受けて請求する場合の請求を理由付ける事実の説明を
2863 求めるものである。
2864
2865 訴訟物である権利の発生,
2866 取得及び行使を基礎付ける事実につ
2867 いて,
2868 条文を基礎とする実体法上の要件の観点から説明することが求められる。
2869
2870
2871 設問2は,
2872 時効の援用に関する考え方の相違が消滅時効の抗弁事実に及ぼす影響
2873 を問うものであり,
2874 実体法上の効果発生のための要件という観点から検討すること
2875 が求められる。
2876
2877
2878 設問3は,
2879 要件事実が民事訴訟の動態において果たす機能の理解を問うものであ
2880 る。
2881
2882 時効完成前の催告(小問1)と時効完成後の債務承認(小問2)について,
2883
2884 体法上の効果,
2885 攻撃防御方法としての意味,
2886 相手方の認否といった観点から検討す
2887 ることが求められる。
2888
2889
2890 設問4は,
2891 私文書の成立の真正に関するいわゆる二段の推定の理解を問うもので
2892 ある。
2893
2894
2895 設問5は,
2896 弁護士倫理の問題であり,
2897 弁護士職務基本規程第52条に留意して検
2898 討することが求められる。
2899
2900
2901
2902 [法律実務基礎科目(刑事)]
2903 次の記述を読んで,
2904 後記の設問に答えなさい。
2905
2906
2907 1【事案】
2908 乙(男性,
2909 30歳,
2910 会社員)は,
2911 平成23年3月5日午後2時10分頃(以下,
2912 同日),
2913 会議
2914 出張のためA駅のホームのベンチに座って,
2915 午後2時45分発の特急電車の到着を待っていた。
2916
2917
2918 このとき乙は,
2919 会議に必要な書類などを入れた黒いキャリーバッグ(B社製,
2920 外側ポケット部分
2921 に金色の「B」のロゴが入っているもの)を持っており,
2922 キャリーバッグの外側ポケットに携帯
2923 電話を入れていた。
2924
2925 そのうち,
2926 乙は,
2927 少し暑く感じたので,
2928 着ていたコートを脱ぎ,
2929 ベンチの背
2930 もたれに掛けた(位置関係については,
2931 別紙「見取図1」のとおり。
2932
2933 )。
2934
2935
2936 乙が電車を待っている間,
2937 一人の男が,
2938 時折乙の方をうかがうような目つきをしながらホーム
2939 をうろついていた。
2940
2941 その男は,
2942 白髪,
2943 身長約180センチメートルで紺色のスーツを着ており,
2944
2945 手ぶらであったが,
2946 乙とその男の間は約3メートル離れていたので,
2947 乙の目から見て,
2948 男の着て
2949 いる紺色のスーツの生地が無地か柄物かは分からなかった。
2950
2951 乙はその男と何回か目が合ったもの
2952 の,
2953 男が乙に話しかけてくる様子もなかった。
2954
2955 午後2時10分以降,
2956 ホームには何本かの電車が
2957 到着したが,
2958 紺色のスーツを着た男はいずれの電車にも乗ろうとせず,
2959 ただホームをうろつくだ
2960 けであった。
2961
2962
2963 午後2時25分頃,
2964 乙は,
2965 新聞や飲み物を購入しようと思い立ち,
2966 キャリーバッグをホームの
2967 ベンチに残したまま,
2968 ホームの中央部分にある売店まで歩いて行き,
2969 新聞等を購入した。
2970
2971 乙のい
2972 たベンチから売店までは,
2973 約15メートルの距離であった。
2974
2975 売店は客で混み合っていたため,
2976
2977 は新聞等を買うのに順番待ちで約5分かかった。
2978
2979
2980 乙は,
2981 買い物を終えた時,
2982 偶然そこにいた友人丙に声をかけられた。
2983
2984 乙は,
2985 久しぶりに丙と出
2986 会ったことで丙との話に夢中になり,
2987 一瞬キャリーバッグのことを忘れて,
2988 丙と共に,
2989 キャリー
2990 バッグを置いたベンチとは反対方向に約5メートル歩いたところで,
2991 すぐにキャリーバッグのこ
2992 とを思い出してベンチの方向を振り返った。
2993
2994 このとき,
2995 乙は,
2996 ベンチのそばに自分のキャリーバ
2997 ッグが見当たらないことに気付き,
2998 慌てて,
2999 丙に別れを告げてベンチに駆け戻ったが,
3000 ベンチの
3001 背もたれにコートだけが残っており,
3002 キャリーバッグはなくなっていた。
3003
3004
3005 乙はベンチの周囲を探したり,
3006 ホームの端から端まで走ったりしてキャリーバッグを探したが,
3007
3008 どこにもなかったことから,
3009 誰かがキャリーバッグを持ち去ったに違いないと思い,
3010 ホームの階
3011 段を下りて,
3012 改札口の方へ走って行ってみた。
3013
3014 乙は,
3015 改札口に向かう途中で,
3016 何人かの乗客が黒
3017 いキャリーバッグを持っていたのを見たが,
3018 いずれも金色の「B」のロゴが入ったものではなか
3019 った。
3020
3021
3022 そうしたところ,
3023 乙は,
3024 改札口の手前,
3025 乙の前方数メートルの地点に,
3026 金色の「B」のロゴが
3027 入った黒いキャリーバッグを引いている男を発見した。
3028
3029 その男は,
3030 白髪で身長約180センチメ
3031 ートル,
3032 紺色の生地で細い縦じま模様のあるスーツを着ていた。
3033
3034 乙は,
3035 走ってその男に追いつき,
3036
3037 男の背後から,
3038 「おい,
3039 待て。
3040
3041 」と声を掛けた。
3042
3043 男は一瞬立ち止まり,
3044 振り返って乙を見たが,
3045
3046 の途端に,
3047 それまで引いていたキャリーバッグを持ち上げ,
3048 走り出そうとする仕草を見せた。
3049
3050
3051 こで,
3052 乙が,
3053 男が持っているキャリーバッグに手を掛けて,
3054 「待て泥棒。
3055
3056 そのキャリーバッグは
3057 俺のだぞ。
3058
3059 」と言うと,
3060 男は,
3061 「何の証拠があってそんなことを言うんだ。
3062
3063 」と言い返してきた。
3064
3065
3066 このため乙は,
3067 「お前は,
3068 さっき,
3069 ホームで俺の様子を見てただろう。
3070
3071 そのキャリーバッグの中
3072 身を開けてみろ。
3073
3074 俺の書類が入っているに違いない。
3075
3076 」と言ったが,
3077 男は,
3078 「何の権限があってキ
3079 ャリーバッグを開けろなどと言うのだ。
3080
3081 俺は急いでいるから手を離せ。
3082
3083 」と言って,
3084 乙にキャリ
3085 ーバッグを渡そうとしなかった。
3086
3087 このように二人が口論していたところ,
3088 午後2時40分頃,
3089
3090
3091 駅構内を主なパトロール場所としている警察官丁が通り掛かった。
3092
3093 丁が,
3094 二人の大声を聞いて,
3095
3096 「どうしたのですか。
3097
3098 」と乙らに問いかけると,
3099 乙が,
3100 「この男が私のキャリーバッグを盗んで持
3101 ち去ろうとしていたのです。
3102
3103 」と答え,
3104 これを聞いた男は怒った口調で,
3105 「何だと。
3106
3107 これがあんた
3108 の物だという証拠もないのに,
3109 他人を泥棒呼ばわりするのか。
3110
3111 」と乙に言った。
3112
3113 丁は,
3114
3115 「まあまあ,
3116
3117 落ち着いて。
3118
3119 」と二人をなだめながら,
3120 乙に,
3121 「このキャリーバッグがあなたの物だという証拠で
3122 もあるのですか。
3123
3124 」と尋ねた。
3125
3126 これに対し,
3127 乙が,
3128 「あ,
3129 そうでした。
3130
3131 キャリーバッグの外側のポ
3132 ケットに私の携帯電話が入っているはずです。
3133
3134 興奮していて携帯電話のことをすっかり忘れてい
3135 ました。
3136
3137 」と言ったので,
3138 丁が,
3139 自分の携帯電話を取り出して,
3140 乙に対し,
3141 「では,
3142 あなたの携帯
3143 電話の番号を言ってください。
3144
3145 」と言って,
3146 乙から聞いた携帯電話の番号に電話をかけてみたと
3147 ころ,
3148 男が持っていたキャリーバッグの外側ポケット内から携帯電話の着信音が鳴り始めた。
3149
3150
3151 れを聞いて乙が,
3152 「ほら,
3153 やっぱり俺のキャリーバッグじゃないか。
3154
3155 」と男に言うと,
3156 男は,
3157 「俺
3158 は,
3159 このキャリーバッグが誰かの忘れ物だと思ったから,
3160 駅の事務室まで届けに行こうとしてい
3161 たところだ。
3162
3163 あんたの物なら返すよ。
3164
3165 」と言い出した。
3166
3167 これに対して乙が,
3168 「おかしいぞ。
3169
3170 さっき
3171 までそんなことは言っていなかったじゃないか。
3172
3173 」と言うと,
3174 丁が,
3175 乙と男に対し,
3176 「ここでは周
3177 りの人の迷惑になりますから,
3178 ちょっとそこの事務室でお話を聞かせてください。
3179
3180 」と言って,
3181
3182 二人をA駅の事務室まで連れて行った(改札口付近の位置関係については,
3183 別紙「見取図2」の
3184 とおり。
3185
3186 )。
3187
3188
3189 丁は,
3190 駅事務室において,
3191 男の事情聴取をした。
3192
3193 このとき男は,
3194 「キャリーバッグは誰かの忘
3195 れ物だと思って,
3196 駅の事務室まで届けに行こうとしていただけだ。
3197
3198 」などと話し,
3199 その際の男の
3200 話から,
3201 男の氏名が「甲」であること,
3202 住居不定,
3203 無職であることが分かった。
3204
3205 また,
3206 丁が甲の
3207 前歴を照会したところ,
3208 甲には窃盗罪(置き引き)の前科が2犯あり,
3209 そのうち最近の前科につ
3210 いては,
3211 現在,
3212 執行猶予期間中であることが分かった。
3213
3214
3215 更に丁が,
3216 駅員の協力を得てホーム上に3台設置されている防犯カメラの画像を確認したとこ
3217 ろ,
3218 下記のとおりの画像が映っていた(3台の防犯カメラが撮影した画像は1台のモニター画面
3219 に映されていて,
3220 5分間隔で切り替わるようになっていた。
3221
3222 )。
3223
3224
3225 そこで丁は,
3226 乙に被害届を出す意思があることを確認した上,
3227 午後3時30分,
3228 甲を窃盗の事
3229 実で緊急逮捕した。
3230
3231
3232 2【各防犯カメラの画像】
3233 [平成23年3月5日午後1時5分からの防犯カメラ1の画像(以下,
3234 同日)]
3235 ホームに到着した電車から降りた十数名の乗客が一斉に改札口に向かってホームの階段を下り
3236 て行く中で,
3237 同じ電車から降りてきた乗客の一人がホームに残った。
3238
3239 その乗客は紺色のスーツを
3240 着た白髪の男性であること,
3241 また,
3242 手荷物を一切持っていないことが画面から判別できたが,
3243
3244 ーツの生地に細いしま模様があるか否かは画面から判別できず,
3245 顔つきも身長も判別できなかっ
3246 た。
3247
3248 その男は,
3249 ホームをうろつき,
3250 特急を含む何本もの電車が発着を繰り返しているにもかかわ
3251 らず,
3252 そのいずれにも乗ろうとしなかった。
3253
3254
3255 [午後2時10分からの防犯カメラ2の画像]
3256 乙と思われる男が,
3257 キャリーバッグを持ってホームにあるベンチに近づき,
3258 ベンチの前で着て
3259 いたコートを脱いでベンチの背もたれに掛け,
3260 キャリーバッグをベンチの傍らに置いた。
3261
3262 紺色の
3263 スーツを着た別の男が,
3264 乙の前を何回か往復している。
3265
3266
3267 [午後2時25分からの防犯カメラ3の画像]
3268 ホームの売店に一人の男が近づいてきて,
3269 数分間順番待ちをして,
3270 新聞等を購入した後,
3271 別の
3272 男と話を始め,
3273 その男と共に売店から離れてベンチとは反対方向に数メートル歩いて行ったが,
3274
3275
3276 すぐに引き返して,
3277 ベンチの方向に走って行った。
3278
3279
3280 なお,
3281 防犯カメラの時計は時報とほとんど誤差はないことが確認されている。
3282
3283 キャリーバッグ
3284 がいつの時点でベンチからなくなったのかは,
3285 モニターが切り替わって他のカメラの画像を映し
3286 ていたため,
3287 画面からは確認できなかった。
3288
3289
3290 3【甲の逮捕後の捜査で判明した事実】
3291 @
3292
3293 甲の所持品の中に,
3294 改札済みの「B駅→A駅」の乗車券が1枚あった(B駅はA駅の隣駅
3295 である。
3296
3297 切符に印字されたB駅での購入時刻は,
3298 3月5日午後0時55分であった。
3299
3300 )。
3301
3302
3303
3304 A
3305
3306 AB両駅間の電車の所要時間は約3分である。
3307
3308
3309
3310 4【逮捕後の甲の弁解内容】
3311 「午後2時過ぎ頃にA駅に着いて,
3312 すぐにベンチにキャリーバッグが置かれているのに気付き,
3313
3314 忘れ物に違いないと思って,
3315 親切心から駅の事務室に持って行こうとしたのです。
3316
3317 そうしたとこ
3318 ろ,
3319 知らない男からいきなり泥棒呼ばわりされ,
3320 キャリーバッグを奪われそうになったため腹が
3321 立ち,
3322 しかも,
3323 この男のキャリーバッグだという証拠もありませんでしたから,
3324 その男にキャリ
3325 ーバッグを渡しませんでした。
3326
3327 しかし,
3328 駆けつけてきた警察官が,
3329 男の携帯電話の番号に電話を
3330 かけたところ,
3331 その男のキャリーバッグだと分かったので,
3332 素直にキャリーバッグを渡したので
3333 す。
3334
3335 ですから,
3336 キャリーバッグは盗んでいませんし,
3337 盗む気もありませんでした。
3338
3339
3340 〔設問〕
3341 上記の1ないし3の各事実が裁判所において証拠上認定できることを前提とし,
3342 上記4の弁解
3343 内容を考慮して,
3344 甲に対する窃盗罪の成否に関する以下の各設問に答えよ。
3345
3346
3347
3348
3349 甲が,
3350 キャリーバッグをベンチから持ち去った人物であることを認定できるか否かについて,
3351
3352 事実を摘示して説明せよ。
3353
3354
3355
3356
3357
3358 キャリーバッグに対する乙の占有の有無及び甲の窃盗の故意の有無について,
3359 判例の立場に
3360 立って,
3361 それぞれ事実を摘示して説明せよ。
3362
3363
3364
3365 別紙
3366
3367 見取図1
3368
3369
3370
3371
3372
3373
3374
3375
3376
3377
3378 ホーム
3379 ベンチ
3380
3381 コート
3382
3383 キャリー
3384 バッグ
3385
3386 販売口
3387
3388 商 品
3389
3390 売 店
3391
3392 別紙
3393
3394 見取図2
3395
3396
3397
3398
3399
3400
3401
3402
3403
3404
3405 入口
3406
3407 乙が男に追いついた位置
3408
3409
3410
3411
3412 ホ ー ム
3413
3414 (出題趣旨)
3415 本問は,
3416 駅のホームで起こったキャリーバッグの置き引き事案について,
3417 具体的
3418 な事実に即して,
3419 窃盗罪の構成要件該当性と混同することなく甲の犯人性を検討で
3420 きるか,
3421 被害者乙のキャリーバッグに関する占有の事実及び占有の意思の有無を検
3422 討できるか,
3423 甲の弁解に沿う事実に留意しつつ,
3424 甲の窃盗の故意の有無を検討して
3425 妥当な結論を導くことができるか,
3426 という基本的な実務能力を問うものである。
3427
3428
3429
3430 [一般教養科目]
3431 次の文章は,
3432 渡辺浩著『日本政治思想史』の中の福沢諭吉の思想について述べた一節である。
3433
3434
3435 れを読んで,
3436 後記の各設問に答えなさい。
3437
3438
3439 (省
3440
3441 略)
3442
3443 〔設問1〕
3444 著者は,
3445 福沢の思想について「(省
3446
3447 略)」
3448 (下線部A)と述べる一方,
3449
3450 「(省
3451
3452 略)」
3453 (下線部B)
3454
3455 とも述べている。
3456
3457 下線部A,
3458 Bから読み取れる内容を踏まえ,
3459 福沢の思想に関する著者の見解を
3460 10行程度で要約しなさい。
3461
3462
3463 〔設問2〕
3464 著者は,
3465 文中で,
3466
3467 (省
3468
3469 略)」(下線部α)という問題を提起している。
3470
3471 この問題提起に対する
3472
3473 あなたの見解を,
3474 他の見解に反論しつつ(例えば,
3475 あなたが一義的に計測する基準があるという
3476 意見なら,
3477 ないという意見に反論しつつ,
3478 あなたが一義的に計測する基準がないという意見なら,
3479
3480 あるという意見に反論しつつ),
3481 20行程度で記述しなさい。
3482
3483
3484
3485 (出題趣旨)
3486 設問1は,
3487 福沢が理想的な文明の状態を想定しているという点で価値相対主義で
3488 はないこと,
3489 他方理想的な状態に照らして各文明の程度を相対化し,
3490 その文明の実
3491 情に即した対応をすべきと考える現実主義者でもあったこと,
3492 この二点を明確に捉
3493 えているかどうかを問うている。
3494
3495 その内容を要約するには,
3496 下線部A,
3497 Bの「相対」
3498 の意味に対する正確な理解が求められる。
3499
3500 設問2では,
3501 自説と他説とを明示した上,
3502
3503 自説の根拠と他説への反論を説得的に展開することが必要となる。
3504
3505 全体として指定
3506 の分量内で簡明に記述する能力も求められる。
3507
3508
3509
3510