1 論文式試験問題集[公法系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [公法系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 A寺は,
8 人口約1000人のB村にある寺である。
9
10 伝承によると,
11 A寺は,
12 江戸時代に,
13 庄屋を
14 務めていた村一番の長者によって創建された。
15
16 その後,
17 A寺は,
18 C宗の末寺となった。
19
20 現在では,
21
22 A寺はB村にある唯一の寺であり,
23 B村の全世帯約300世帯のうち約200世帯がA寺の檀家で
24 かんぶつえ
25
26 ある。
27
28 A寺の檀家でない村民の多くも,
29 初詣,
30 節分会,
31 釈迦の誕生日を祝う灌仏会(花祭り)等の
32 A寺の行事に参加しており,
33 A寺は村民の交流の場ともなっている。
34
35 また,
36 A寺は,
37 悩み事など心
38 理的ストレスを抱えている村民の相談も受け付けており,
39 檀家でない村民も相談に訪れている。
40
41
42 A寺の本堂は,
43 江戸時代の一般的な寺院の建築様式で建てられており,
44 そこには観音菩薩像が祀
45 られている。
46
47 本堂では,
48 礼拝供養といった宗教儀式ばかりでなく,
49 上記のような村民の相談も行わ
50 れている。
51
52 本堂の裏手には,
53 広い墓地がある。
54
55 B村には数基のお墓があるだけの小さな墓地を持つ
56 集落もあるが,
57 大きな墓地はA寺の墓地だけである。
58
59
60 かつては一般に,
61 寺院が所有する墓地に墓石を建立することができるのは,
62 当該寺院の宗旨・宗
63 派の信徒のみであった。
64
65 しかし,
66 最近は,
67 宗旨・宗派を一切問わない寺院墓地もある。
68
69 A寺も,
70 近
71 時,
72 墓地のパンフレットに「宗旨・宗派は問わない」と記載していた。
73
74 村民Dの家は,
75 先祖代々,
76
77 C宗の信徒ではない。
78
79 Dは,
80 両親が死亡した際に,
81 A寺のこのパンフレットを見て,
82 両親の遺骨を
83 A寺の墓地に埋蔵し,
84 墓石を建立したいと思い,
85 住職にその旨を申し出た。
86
87
88 「宗旨・宗派は問わない」
89 ということは,
90 住職の説明によれば,
91 C宗の規則で,
92 他の宗旨・宗派の信者からの希望があった場
93 合,
94 当該希望者がC宗の典礼方式で埋葬又は埋蔵を行うことに同意した場合にこれを認めるという
95 ことであった(墓地等管理者の埋蔵等の応諾義務に関する法規制については,
96
97 【参考資料】を参照。
98
99 )。
100
101
102 しかし,
103 Dは,
104 この条件を受け入れることができなかったので,
105 A寺の墓地には墓石を建立しなか
106 った。
107
108
109 山間にあるB村の主要産業は林業であり,
110 多くの村民が村にある民間企業の製材工場やその関連
111 会社で働いている。
112
113 20**年に,
114 A寺に隣接する家屋での失火を原因とする火災(なお,
115 失火者
116 に故意や重過失はなかった。
117
118 )が発生したが,
119 その折の強風のために広い範囲にわたって家屋等が延
120 く
121
122 り
123
124 焼した。
125
126 A寺では,
127 観音菩薩像は持ち出せたものの,
128 この火災により本堂及び住職の住居である庫裏
129 が全焼した。
130
131 炎でなめ尽くされたA寺の墓地では,
132 木立,
133 物置小屋,
134 各区画にある水場の手桶やひ
135 しゃく,
136 各墓石に供えられた花,
137 そして卒塔婆等が全て焼失してしまった。
138
139 A寺の墓地は,
140 消火後
141 も,
142 荒涼とした光景を呈している。
143
144 また,
145 B村の村立小学校も,
146 上記製材工場やその関連会社の建
147 物も全焼した。
148
149 もっとも,
150 幸いなことに,
151 この火事で亡くなった人は一人もいなかった。
152
153
154 A寺は,
155 創建以来,
156 自然災害等によって被害を受けることが全くなかったので,
157 火災保険には入
158 っていなかった。
159
160 A寺の再建には,
161 土地全体の整地費用も含めて億単位の資金が必要である。
162
163 通常,
164
165 寺院の建物を修理するなどの場合には,
166 檀家に寄付を募る。
167
168 しかし,
169 檀家の人たちの多くが勤めて
170 いた製材工場やその関連会社の建物も全焼してしまったため,
171 各檀家も生計を立てることが厳しく
172 なっている。
173
174 それゆえ,
175 檀家からの寄付によるA寺の建物等の再建は,
176 困難であった。
177
178
179 この年,
180 B村村長は,
181 全焼した村立小学校の再建を主たる目的とした補正予算を議会に提出した。
182
183
184 その予算項目には,
185 A寺への再建助成も挙げられていた。
186
187 補正予算審議の際に,
188 村長は,
189
190 「A寺は,
191
192 長い歴史を有するばかりでなく,
193 村の唯一のお寺である。
194
195 A寺は,
196 宗旨・宗派を越えて村民に親し
197 まれ,
198 村民の心のよりどころでもあり,
199 村の交流の場ともなっている。
200
201 A寺は,
202 村にとっても,
203 村
204 民にとっても必要不可欠な,
205 言わば公共的な存在である。
206
207 できる限り速やかに再建できるよう,
208 A
209 寺には特別に助成を行いたい。
210
211 その助成には,
212 多くの村民がお墓を建立しているA寺の墓地の整備
213 も含まれる。
214
215 墓地は,
216 亡くなった人の遺骨を埋蔵し,
217 故人を弔うためばかりでなく,
218 先祖の供養と
219 いう人倫の大本といえる行為の場である。
220
221 それゆえ,
222 速やかにA寺の墓地の整備を行う必要がある。
223
224 」
225 と説明した。
226
227
228 - 2 -
229
230 A寺への助成の内訳は,
231 墓地の整備を含めた土地全体の整地の助成として2500万円(必要な
232 費用の2分の1に相当する額),
233 本堂再建の助成として4000万円(必要な費用の4分の1に相当
234 する額),
235 そして庫裏再建の助成として1000万円(必要な費用の2分の1に相当する額)となっ
236 ている。
237
238 補正予算は,
239 村議会で議決された。
240
241 その後,
242 B村村長はA寺への助成の執行を終了した。
243
244
245 〔設問1〕
246 Dは,
247 今回のB村によるA寺への助成は憲法に違反するのではないかと思い,
248 あなたが在籍す
249 る法律事務所に相談に来た。
250
251
252 あなたがその相談を受けた弁護士である場合,
253 どのような訴訟を提起するか(なお,
254 当該訴訟
255 を提起するために法律上求められている手続は尽くした上でのこととする。
256
257 )。
258
259 そして,
260 その訴訟
261 において,
262 あなたが訴訟代理人として行う憲法上の主張を述べなさい。
263
264
265 〔設問2〕
266 設問1における憲法上の主張に関するあなた自身の見解を,
267 被告側の反論を想定しつつ,
268 述べ
269 なさい。
270
271
272 【参考資料】墓地,
273 埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
274 (抄録)
275 第1条
276
277 この法律は,
278 墓地,
279 納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が,
280 国民の宗教的感情に適合し,
281
282
283 且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から,
284 支障なく行われることを目的とする。
285
286
287 第13条
288
289 墓地,
290 納骨堂又は火葬場の管理者は,
291 埋葬,
292 埋蔵,
293 収蔵又は火葬の求めを受けたときは,
294
295
296 正当の理由がなければこれを拒んではならない。
297
298
299
300 - 3 -
301
302 論文式試験問題集[公法系科目第2問]
303
304 - 1 -
305
306 [公法系科目]
307 〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,
308 4:4:2〕)
309 Pは,
310 Q県が都市計画に都市計画施設として定め,
311 建設を計画している道路(以下「本件計画道
312 路」という。
313
314 )の区域内に,
315 土地(以下「本件土地」という。
316
317 )及び本件土地上の鉄骨2階建ての店
318 舗兼住宅(以下「本件建物」という。
319
320 )を所有して,
321 商店を営業している。
322
323 Pは,
324 1965年に,
325 本
326 件土地を相続により取得し,
327 本件建物を建築して営業を始めた。
328
329 本件計画道路に係る都市計画(以
330 下「本件計画」という。
331
332 )は,
333 1970年に決定され(以下,
334 この決定を「本件計画決定」という。
335
336 ),
337
338 現在に至るまで基本的に変更されていない。
339
340 本件計画によれば,
341 本件計画道路は,
342 延長を1万50
343 00メートル,
344 幅員を32メートルとされ,
345 R市を南北に縦断するように,
346 a地点を起点とし,
347 他
348 の道路(県道)と交差する交差点(b地点)を経由して,
349 c地点を終点とするものと定められてい
350 る。
351
352 a地点とc地点のほぼ中間にb地点が位置し,
353 本件土地はb地点とc地点のほぼ中間に位置し
354 ている。
355
356
357 Q県は,
358 本件計画道路のうちa地点からb地点までの区間については,
359 交通渋滞を緩和させる必
360 要性が高かったため,
361 1975年から徐々に事業を施行した。
362
363 予算の制約や関係する土地建物の所
364 有者等の反対があり,
365 計画を実現するには長期間を要したが,
366 2000年には道路の整備が完了し
367 た。
368
369 これに対し,
370 本件計画道路のうちb地点からc地点までの区間(以下「本件区間」という。
371
372 )に
373 ついては,
374 やはり関係する土地建物の所有者等の反対もあって,
375 1970年から現在まで全く事業
376 が施行されておらず,
377 事業を施行するための具体的な準備や検討も一切行われていない。
378
379 Q県の財
380 政事情が逼迫しているため,
381 事業の施行は財政上もますます困難になっている。
382
383
384 こうした状況において,
385 Q県は,
386 b地点とc地点の間の交通需要が2030年には2010年比
387 で約40パーセント増加するものと推計し,
388 この将来の交通需要に応じるために,
389 本件計画道路の
390 区間や幅員を縮小する変更をせずに本件計画を存続させている。
391
392 もっとも,
393 Q県が5年ごとに行っ
394 ている都市計画に関する基礎調査によれば,
395 R市の旧市街地に位置するc地点の付近において事業
396 所及び人口が減少する「空洞化」の傾向が見られ,
397 b地点とc地点の間の交通量は1990年から
398 漸減し,
399 2010年までの20年間に約20パーセント減少している。
400
401 しかし,
402 c地点の付近で営
403 業する事業者の多くは,
404 空洞化に歯止めを掛けて街のにぎわいを取り戻すために,
405 本件区間を整備
406 する必要があると,
407 Q県に対して強く主張し続けている。
408
409 こうした地元の主張に配慮して,
410 Q県も,
411
412 本件区間の整備を進めれば,
413 c地点付近の旧市街地の経済が活性化し,
414 それに伴いb地点とc地点
415 の間の交通需要が増えていくと予測して,
416 上記のように将来交通需要を推計している。
417
418
419 あわせて,
420 Q県は,
421 本件区間を整備しないと,
422 本件区間付近において道路密度(都市計画におい
423 て定められた道路の1平方キロメートル当たりの総延長)が過少になることも,
424 本件区間について
425 縮小する変更をせずに本件計画を存続させることの理由に挙げている。
426
427 Q県は,
428 道路密度が,
429 住宅
430 地においては1平方キロメートル当たり4キロメートル,
431 商業地においては1平方キロメートル当
432 たり5キロメートルは最低限確保されるように(これらの数値を,
433 以下「基準道路密度」という。
434
435 ),
436
437 道路に係る都市計画を定める運用をしている。
438
439 本件区間付近は,
440 住宅地及び本件土地のような商業
441 地から成るが,
442 いずれにおいても,
443 本件区間を整備しないと,
444 道路密度が基準道路密度を1キロメ
445 ートル前後下回ることになるため,
446 Q県は本件計画をそのまま存続させる姿勢を崩していない。
447
448
449 最近になって,
450 Pは,
451 持病が悪化して商店を休業することが多くなった。
452
453 また,
454 本件建物は,
455 建
456 築から45年以上を経過して老朽化し,
457 一部が使用できない状態になった。
458
459 そこで,
460 Pは,
461 商店の
462 営業をやめて本件建物を取り壊し,
463 鉄筋コンクリート8階建てのマンションを建築して,
464 自らも居
465 住しながらマンションを経営して老後の生活を送ることを考えるようになった。
466
467 しかし,
468 このこと
469 をQ県の職員に話したところ,
470
471 「本件土地は,
472 本件計画道路の区域内にあるため建築が制限され(以
473 下,
474 この制限を「本件建築制限」という。
475
476 ),
477 そのような高層の堅固な建物の建築は認められない。
478
479 」
480 と言われた。
481
482 Pは,
483 承服できず,
484 訴訟を提起するために弁護士Sに相談した。
485
486 Pは,
487 8階建てマン
488 - 2 -
489
490 ションへの建て替えを第一に要望しているが,
491 もしそれが無理であれば,
492 Q県に対し,
493 本件土地の
494 地価が本件建築制限により低落している分に相当する額の支払を請求し(以下,
495 この請求を「本件
496 支払請求」という。
497
498 ),
499 本件建物を鉄骨2階建てのバリアフリーの住宅に建て替えることを考えてい
500 る。
501
502
503 【資料1
504
505 法律事務所の会議録】を読んだ上で,
506 弁護士Tの立場に立って,
507 弁護士Sの指示に応
508
509 じ,
510 設問に答えなさい。
511
512
513 なお,
514 都市計画法及び都市計画法施行規則の抜粋を,
515
516 【資料2
517
518 関係法令】に掲げてあるので,
519 適
520
521 宜参照しなさい。
522
523
524 〔設問1〕
525 本件計画決定は,
526 抗告訴訟の対象となる処分に当たるか。
527
528 本件計画決定がどのような法的効果
529 を有するかを明らかにした上で,
530 そのような法的効果が本件計画決定の処分性を根拠付けるか否
531 かを検討して答えなさい。
532
533
534 〔設問2〕
535 Q県が本件計画道路の区間又は幅員を縮小する変更をせずに本件計画を存続させていることは
536 適法か。
537
538 都市計画法の関係する規定を挙げながら,
539 適法とする法律論及び違法とする法律論とし
540 て考えられるものを示して答えなさい。
541
542
543 〔設問3〕
544 Q県が本件計画を変更せずに存続させていることは適法であると仮定する場合,
545 PのQ県に対
546 する本件支払請求は認められるか。
547
548 請求の根拠規定を示した上で,
549 請求の成否を判断するために
550 考慮すべき要素を,
551 本件に即して一つ一つ丁寧に示しながら答えなさい。
552
553
554
555 - 3 -
556
557 【資料1
558
559 法律事務所の会議録】
560
561 弁護士S:本日は,
562 Pの案件について基本的な処理方針を議論したいと思います。
563
564 まず,
565 本件土地
566 の現況はどうなっていますか。
567
568
569 弁護士T:本件土地は,
570 都市計画法上の近隣商業地域にあります。
571
572 本件計画がなければ,
573 Pが要望
574 している高層の堅固なマンションを建築することに,
575 法的な支障はありません。
576
577 実際に,
578
579 本件土地の周辺では,
580 高層の堅固な建物が建築されています。
581
582
583 弁護士S:しかし,
584 PはQ県の職員から,
585 本件計画があるために建築が認められないと言われたの
586 ですね。
587
588
589 弁護士T:はい。
590
591 確かに,
592 都市計画施設の区域内でも,
593 都市計画法第53条の許可を受ければ,
594 建
595 築が可能です。
596
597 しかし,
598 鉄筋コンクリート8階建てという高層の堅固な建物になりますと,
599
600 都市計画法が建築制限を定める趣旨から言って,
601 許可を受けることは難しいと思います。
602
603
604 そして,
605 建築基準法の制度によれば,
606 本件計画が定めるような都市計画施設の区域内では,
607
608 都市計画法第53条の許可を受けていない建物は建築確認を受けられないことになりま
609 す。
610
611
612 弁護士S:そうですね。
613
614 それでは,
615 本件計画が違法なのでPの建物は都市計画法第53条の建築制
616 限の適用を受けないと主張する方向で検討することにしましょう。
617
618 したがって,
619 Pが考え
620 ているマンションが,
621 都市計画法第53条の許可の要件を満たすか否かは,
622 検討しなくて
623 結構です。
624
625 しかし,
626 1970年において本件計画決定が違法であったと主張することも,
627
628 難しそうですね。
629
630
631 弁護士T:はい。
632
633 どの都道府県でも,
634 道路に係る都市計画は,
635 高度経済成長期に人口増加と経済成
636 長を前提に定められた結果として増えたのですが,
637 地方公共団体の財政が悪化して,
638 事業
639 が全部又は一部施行されていない計画が残されている状況にあります。
640
641 Q県でも,
642 道路に
643 係る都市計画全体のうち道路の延べ延長にして約50パーセントが,
644 事業未施行の状態で
645 す。
646
647 そこで,
648 Q県は,
649 2005年から,
650 Q県でも近年進行している少子高齢化による人口
651 減少や低成長経済を前提にして,
652 道路に係る都市計画を全面的に見直すことにしました。
653
654
655 見直しの結果,
656 道路の区間や幅員を縮小するように都市計画を変更した例もあります。
657
658 し
659 かし,
660 本件区間については本件計画を変更せずに存続させることにしたのです。
661
662
663 弁護士S:では,
664 現時点において本件計画を変更せずに存続させていること,
665 ここでは単に計画の
666 存続ということにしますが,
667 このことが違法といえるかどうかを検討してください。
668
669 本件
670 計画決定が1970年において違法であったという主張は,
671 検討の対象から外してくださ
672 い。
673
674 それでも,
675 都市計画の存続を違法とした先例はなかなか見当たりませんので,
676 計画の
677 存続を適法とする法律論と違法とする法律論の双方を示して,
678 都市計画法の関係規定を挙
679 げながら,
680 本件の具体的な事情に即して綿密に検討するようにお願いします。
681
682
683 弁護士T:承知しました。
684
685 それから,
686 計画の存続の違法性を主張するために,
687 どのような訴えを提
688 起するべきかという問題もあります。
689
690
691 弁護士S:そのとおりです。
692
693 最高裁判所は,
694 大法廷判決で,
695 土地区画整理事業の事業計画の決定に
696 処分性を認める判例変更をしましたね(最高裁判所平成20年9月10日大法廷判決,
697 民
698 集62巻8号2029頁)。
699
700 ただし,
701 都市計画施設として道路を整備する事業は,
702 都市計画
703 決定とそれに基づく都市計画事業認可との2段階を経て実施されるのですが,
704 土地区画整
705 理事業の事業計画の決定は,
706 道路に係る都市計画でいえば,
707 事業認可の段階に相当します。
708
709
710 弁護士T:そのためか,
711 Q県の職員は,
712 道路に係る都市計画決定は,
713 この大法廷判決の射程の外に
714 あり,
715 事業の「青写真」の決定にすぎず,
716 処分性はない,
717 と解釈しているようなのです。
718
719
720 弁護士S:私たちとしては,
721 この大法廷判決の射程をよく考えながら,
722 道路に係る都市計画決定の
723 法的効果を分析して,
724 本件計画決定に処分性が認められるかどうか,
725 判断する必要があり
726 ます。
727
728 都市計画決定の法的効果を分析する際には,
729 その次の段階に位置付けられる都市計
730 - 4 -
731
732 画事業認可の法的効果との関係も考慮に入れてください。
733
734 綿密な検討をお願いします。
735
736
737 弁護士T:承知しました。
738
739 本件計画決定に処分性が認められる場合,
740 本件計画の変更を求める義務
741 付け訴訟や,
742 本件計画決定の失効確認訴訟を提起することになるのでしょうか。
743
744
745 弁護士S:いろいろ考えられますが,
746 今の段階では,
747 こうした個々の抗告訴訟の適法性を検討する
748 ことまでは,
749 していただかなくて結構です。
750
751 また,
752 本件計画決定の処分性が認められない
753 場合に,
754 どのような訴えを提起するべきかも問題ですが,
755 この点についても,
756 今の段階で
757 は,
758 処分性の検討の際に必要な範囲で考慮するだけで結構です。
759
760
761 弁護士T:分かりました。
762
763
764 弁護士S:それで,
765 Pは,
766 絶対にマンションを建築したいという希望なのですか。
767
768
769 弁護士T:強い希望を持っています。
770
771 建築資金も調達できるとのことです。
772
773 マンションの設計の依
774 頼まではしていませんが,
775 それは,
776 高い費用を掛けてマンションの設計を依頼しても,
777 法
778 的にマンションを建築できないことになると,
779 設計費用が無駄になるからであって,
780 意欲
781 や財源がないからではありません。
782
783 ただし,
784 本件建築制限が適法とされる可能性があるこ
785 とは十分承知していて,
786 その場合は,
787 代わりに本件支払請求をすることを要望しています。
788
789
790 弁護士S:そのような本件支払請求が可能かどうかを検討する場合,
791 いろいろな要素を考慮する必
792 要がありますね。
793
794 Pに有利な要素も不利な要素も一つ一つ示しながら,
795 検討してください。
796
797
798 請求の根拠規定やごく基本的な考慮要素も,
799 丁寧に挙げてください。
800
801 当然ながら,
802 箇条書
803 にとどめないでください。
804
805 税法に関わる問題もありそうですが,
806 その点は考慮しなくて結
807 構です。
808
809
810 弁護士T:承知しました。
811
812
813
814 - 5 -
815
816 【資料2
817 ○
818
819 関係法令】
820
821 都市計画法(昭和43年6月15日法律第100号)(抜粋)
822 (定義)
823
824 第4条
825
826 この法律において「都市計画」とは,
827 都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地
828
829 利用,
830 都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で,
831 次章の規定に従い定められたものを
832 いう。
833
834
835 2〜4
836 5
837
838 (略)
839
840 この法律において「都市施設」とは,
841 都市計画において定められるべき第11条第1項各号に
842 掲げる施設をいう。
843
844
845
846 6
847
848 この法律において「都市計画施設」とは,
849 都市計画において定められた第11条第1項各号に
850 掲げる施設をいう。
851
852
853
854 7〜14
855 15
856
857 (略)
858
859 この法律において「都市計画事業」とは,
860 この法律で定めるところにより第59条の規定に
861
862 よる認可又は承認を受けて行なわれる都市計画施設の整備に関する事業及び市街地開発事業をい
863 う。
864
865
866 16
867
868 (略)
869
870 (都市計画区域)
871 第5条
872
873 都道府県は,
874 市又は人口,
875 就業者数その他の事項が政令で定める要件に該当する町村の中
876
877 心の市街地を含み,
878 かつ,
879 自然的及び社会的条件並びに人口,
880 土地利用,
881 交通量その他国土交通
882 省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して,
883 一体の都市として総合的に整備し,
884 開発し,
885
886 及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする。
887
888 (以下略)
889 2〜6
890
891 (略)
892
893 (都市計画に関する基礎調査)
894 第6条
895
896 都道府県は,
897 都市計画区域について,
898 おおむね5年ごとに,
899 都市計画に関する基礎調査と
900
901 して,
902 国土交通省令で定めるところにより,
903 人口規模,
904 産業分類別の就業人口の規模,
905 市街地の
906 面積,
907 土地利用,
908 交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び将来の見通しについ
909 ての調査を行うものとする。
910
911
912 2〜5
913
914 (略)
915
916 (都市施設)
917 第11条
918 一
919
920 都市計画区域については,
921 都市計画に,
922 次に掲げる施設を定めることができる。
923
924
925 (以下略)
926
927 道路,
928 都市高速鉄道,
929 駐車場,
930 自動車ターミナルその他の交通施設
931
932 二〜十一
933 2
934
935 (略)
936
937 都市施設については,
938 都市計画に,
939 都市施設の種類,
940 名称,
941 位置及び区域を定めるものとする
942 とともに,
943 面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
944
945
946
947 3〜6
948
949 (略)
950
951 (都市計画基準)
952 第13条
953
954 都市計画区域について定められる都市計画(中略)は,
955
956 (中略)当該都市の特質を考慮し
957
958 て,
959 次に掲げるところに従つて,
960 土地利用,
961 都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項で
962 当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを,
963 一体的かつ総合的に定めなけれ
964 ばならない。
965
966 (以下略)
967 一〜十
968 十一
969
970 (略)
971 都市施設は,
972 土地利用,
973 交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,
974 適切な規模で必要な
975
976 位置に配置することにより,
977 円滑な都市活動を確保し,
978 良好な都市環境を保持するように定め
979 - 6 -
980
981 ること。
982
983 (以下略)
984 十二〜十八
985 十九
986
987 (略)
988
989 前各号の基準を適用するについては,
990 第6条第1項の規定による都市計画に関する基礎調
991
992 査の結果に基づき,
993 かつ,
994 政府が法律に基づき行う人口,
995 産業,
996 住宅,
997 建築,
998 交通,
999 工場立地
1000 その他の調査の結果について配慮すること。
1001
1002
1003 2〜6
1004
1005 (略)
1006
1007 (都市計画の図書)
1008 第14条
1009
1010 都市計画は,
1011 国土交通省令で定めるところにより,
1012 総括図,
1013 計画図及び計画書によつて
1014
1015 表示するものとする。
1016
1017
1018 2
1019
1020 計画図及び計画書における区域区分の表示又は次に掲げる区域の表示は,
1021 土地に関し権利を有
1022 する者が,
1023 自己の権利に係る土地が区域区分により区分される市街化区域若しくは市街化調整区
1024 域のいずれの区域に含まれるか又は次に掲げる区域に含まれるかどうかを容易に判断することが
1025 できるものでなければならない。
1026
1027
1028 一〜六
1029 七
1030
1031 (略)
1032
1033 都市計画施設の区域
1034
1035 八〜十四
1036 3
1037
1038 (略)
1039
1040 (略)
1041 (都市計画の告示等)
1042
1043 第20条
1044
1045 都道府県又は市町村は,
1046 都市計画を決定したときは,
1047 その旨を告示し,
1048 かつ,
1049 都道府県
1050
1051 にあつては国土交通大臣及び関係市町村長に,
1052 市町村にあつては国土交通大臣及び都道府県知事
1053 に,
1054 第14条第1項に規定する図書の写しを送付しなければならない。
1055
1056
1057 2
1058
1059 都道府県知事及び市町村長は,
1060 国土交通省令で定めるところにより,
1061 前項の図書又はその写し
1062 を当該都道府県又は市町村の事務所に備え置いて一般の閲覧に供する方法その他の適切な方法に
1063 より公衆の縦覧に供しなければならない。
1064
1065
1066
1067 3
1068
1069 都市計画は,
1070 第1項の規定による告示があつた日から,
1071 その効力を生ずる。
1072
1073
1074 (都市計画の変更)
1075
1076 第21条
1077
1078 都道府県又は市町村は,
1079 都市計画区域又は準都市計画区域が変更されたとき,
1080 第6条第
1081
1082 1項若しくは第2項の規定による都市計画に関する基礎調査又は第13条第1項第19号に規定
1083 する政府が行う調査の結果都市計画を変更する必要が明らかとなつたとき,
1084
1085 (中略)その他都市計
1086 画を変更する必要が生じたときは,
1087 遅滞なく,
1088 当該都市計画を変更しなければならない。
1089
1090
1091 2
1092
1093 第17条から第18条まで及び前二条の規定は,
1094 都市計画の変更(中略)について準用する。
1095
1096
1097 (以
1098 下略)
1099 (建築の許可)
1100
1101 第53条
1102
1103 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようと
1104
1105 する者は,
1106 国土交通省令で定めるところにより,
1107 都道府県知事の許可を受けなければならない。
1108
1109
1110 (以
1111 下略)
1112 一〜五
1113 2・3
1114
1115 (略)
1116 (略)
1117
1118 (許可の基準)
1119 第54条
1120
1121 都道府県知事は,
1122 前条第1項の規定による許可の申請があつた場合において,
1123 当該申請
1124
1125 が次の各号のいずれかに該当するときは,
1126 その許可をしなければならない。
1127
1128
1129 一・二
1130 三
1131
1132 (略)
1133
1134 当該建築物が次に掲げる要件に該当し,
1135 かつ,
1136 容易に移転し,
1137 又は除却することができるも
1138 のであると認められること。
1139
1140
1141 イ
1142
1143 階数が二以下で,
1144 かつ,
1145 地階を有しないこと。
1146
1147
1148 - 7 -
1149
1150 ロ
1151
1152 主要構造部(中略)が木造,
1153 鉄骨造,
1154 コンクリートブロツク造その他これらに類する構造
1155 であること。
1156
1157
1158
1159 (施行者)
1160 第59条
1161 2
1162
1163 都市計画事業は,
1164 市町村が,
1165 都道府県知事(中略)の認可を受けて施行する。
1166
1167
1168
1169 都道府県は,
1170 市町村が施行することが困難又は不適当な場合その他特別な事情がある場合にお
1171 いては,
1172 国土交通大臣の認可を受けて,
1173 都市計画事業を施行することができる。
1174
1175
1176
1177 3
1178
1179 国の機関は,
1180 国土交通大臣の承認を受けて,
1181 国の利害に重大な関係を有する都市計画事業を施
1182 行することができる。
1183
1184
1185
1186 4〜7
1187
1188 (略)
1189
1190 (認可又は承認の申請)
1191 第60条
1192
1193 前条の認可又は承認を受けようとする者は,
1194 国土交通省令で定めるところにより,
1195 次に
1196
1197 掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
1198
1199
1200 一・二
1201
1202 (略)
1203
1204 三
1205
1206 事業計画
1207
1208 四
1209
1210 (略)
1211
1212 2
1213
1214 前項第3号の事業計画には,
1215 次に掲げる事項を定めなければならない。
1216
1217
1218 一
1219
1220 収用又は使用の別を明らかにした事業地(都市計画事業を施行する土地をいう。
1221
1222 以下同じ。
1223
1224 )
1225
1226 二
1227
1228 設計の概要
1229
1230 三
1231
1232 事業施行期間
1233
1234 3
1235
1236 第1項の申請書には,
1237 国土交通省令で定めるところにより,
1238 次に掲げる書類を添附しなければ
1239 ならない。
1240
1241
1242 一
1243
1244 事業地を表示する図面
1245
1246 二
1247
1248 設計の概要を表示する図書
1249
1250 三〜五
1251 4
1252
1253 (略)
1254
1255 第14条第2項の規定は,
1256 第2項第1号及び前項第1号の事業地の表示について準用する。
1257
1258
1259 (認可等の基準)
1260
1261 第61条
1262
1263 国土交通大臣又は都道府県知事は,
1264 申請手続が法令に違反せず,
1265 かつ,
1266 申請に係る事業
1267
1268 が次の各号に該当するときは,
1269 第59条の認可又は承認をすることができる。
1270
1271
1272 一
1273
1274 事業の内容が都市計画に適合し,
1275 かつ,
1276 事業施行期間が適切であること。
1277
1278
1279
1280 二
1281
1282 (略)
1283
1284 (都市計画事業の認可等の告示)
1285 第62条
1286
1287 国土交通大臣又は都道府県知事は,
1288 第59条の認可又は承認をしたときは,
1289 遅滞なく,
1290
1291
1292 国土交通省令で定めるところにより,
1293 施行者の名称,
1294 都市計画事業の種類,
1295 事業施行期間及び事
1296 業地を告示し,
1297 かつ,
1298 国土交通大臣にあつては関係都道府県知事及び関係市町村長に,
1299 都道府県
1300 知事にあつては国土交通大臣及び関係市町村長に,
1301 第60条第3項第1号及び第2号に掲げる図
1302 書の写しを送付しなければならない。
1303
1304
1305 2
1306
1307 市町村長は,
1308 前項の告示に係る事業施行期間の終了の日(中略)まで,
1309 国土交通省令で定める
1310 ところにより,
1311 前項の図書の写しを当該市町村の事務所において公衆の縦覧に供しなければなら
1312 ない。
1313
1314
1315 (建築等の制限)
1316
1317 第65条
1318
1319 第62条第1項の規定による告示(中略)があつた後においては,
1320 当該事業地内におい
1321
1322 て,
1323 都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その
1324 他工作物の建設を行ない,
1325 又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行なお
1326 うとする者は,
1327 都道府県知事の許可を受けなければならない。
1328
1329
1330 2・3
1331
1332 (略)
1333 - 8 -
1334
1335 (都市計画事業のための土地等の収用又は使用)
1336 第69条
1337
1338 都市計画事業については,
1339 これを土地収用法第3条各号の一に規定する事業に該当する
1340
1341 ものとみなし,
1342 同法の規定を適用する。
1343
1344
1345 第70条
1346
1347 都市計画事業については,
1348 土地収用法第20条(中略)の規定による事業の認定は行な
1349
1350 わず,
1351 第59条の規定による認可又は承認をもつてこれに代えるものとし,
1352 第62条第1項の規
1353 定による告示をもつて同法第26条第1項(中略)の規定による事業の認定の告示とみなす。
1354
1355
1356 2
1357
1358 (略)
1359 (監督処分等)
1360
1361 第81条
1362
1363 国土交通大臣,
1364 都道府県知事又は指定都市等の長は,
1365 次の各号のいずれかに該当する者
1366
1367 に対して,
1368 都市計画上必要な限度において,
1369
1370 (中略)工事その他の行為の停止を命じ,
1371 若しくは相
1372 当の期限を定めて,
1373 建築物その他の工作物若しくは物件(中略)の改築,
1374 移転若しくは除却その
1375 他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。
1376
1377
1378 一
1379
1380 この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反し
1381 た者(以下略)
1382
1383 二〜四
1384 2〜4
1385
1386 (略)
1387 (略)
1388
1389 第91条
1390
1391 第81条第1項の規定による国土交通大臣,
1392 都道府県知事又は指定都市等の長の命令に
1393
1394 違反した者は,
1395 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1396
1397
1398 ○
1399
1400 都市計画法施行規則(昭和44年8月25日建設省令第49号)(抜粋)
1401 (都市計画の図書)
1402 第9条
1403 2
1404
1405 (略)
1406
1407 法(注:都市計画法)第14条第1項の計画図は,
1408 縮尺2500分の1以上の平面図(中略)
1409 とするものとする。
1410
1411
1412
1413 3
1414
1415 (略)
1416
1417 第47条
1418
1419 法第60条第3項(中略)の規定により同条第1項(中略)の申請書に添附すべき書類
1420
1421 は,
1422 それぞれ次の各号に定めるところにより作成(中略)するものとする。
1423
1424
1425 一
1426
1427 事業地を表示する図面は,
1428 次に定めるところにより作成するものとする。
1429
1430
1431 イ
1432
1433 縮尺50000分の1以上の地形図によつて事業地の位置を示すこと。
1434
1435
1436
1437 ロ
1438
1439 縮尺2500分の1以上の実測平面図によつて事業地を収用の部分は薄い黄色で,
1440 使用の
1441 部分は薄い緑色で着色し,
1442 事業地内に物件があるときは,
1443 その主要なものを図示すること。
1444
1445
1446 収用し,
1447 若しくは使用しようとする物件又は収用し,
1448 若しくは使用しようとする権利の目的
1449 である物件があるときは,
1450 これらの物件が存する土地の部分を薄い赤色で着色すること。
1451
1452
1453
1454 二
1455
1456 設計の概要を表示する図書は,
1457 次に定めるところにより作成するものとする。
1458
1459
1460 イ
1461
1462 都市計画施設の整備に関する事業にあつては,
1463 縮尺2500分の1以上の平面図等によつ
1464 て主要な施設の位置及び内容を図示すること。
1465
1466
1467
1468 ロ
1469 三
1470
1471 (略)
1472 (略)
1473
1474 - 9 -
1475
1476