1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒 産 法]
10 〔第1問〕(配点:50)
11 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
12 【事
13
14 例】
15 A株式会社(以下「A社」という。)は,コンピュータ・ソフトウェアの製造及び販売を業と
16
17 する会社であり,平成20年頃には,年間で50億円を超える売上げを計上するなど,順調な業
18 績を維持していたが,平成22年末頃以降は,徐々にその経営が悪化し,平成23年9月5日に
19 は,破産手続開始の申立てをするに至り,同月15日,破産手続開始の決定を受け,弁護士Xが
20 破産管財人に選任された。
21 〔設
22
23 問〕
24
25 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
26
27 1.A社は,平成22年12月頃,売上げの半分以上を占めていた取引先が破綻し,当該取引先
28 からの支払が突然途絶えたため,以後は,その資金繰りが悪化した。
29 そこで,A社は,メインバンクを含む金融機関に新規の融資を求めたものの,十分な額の融
30 資を得ることができそうになかったため,取引先からの紹介を受け,いわゆる事業再生ファン
31 ドであるBアセット株式会社(以下「B社」という。)と交渉した結果,将来の他社とのM&
32 Aを念頭に置いてB社から最大で20億円をめどに融資を受けられることとなり,まず,平成
33 23年2月1日に5億円の融資を受ける旨の契約をB社との間で締結し,その融資は,同日,
34 実行された(以下においては,利息については考慮せず,当該契約に基づくA社の債務額は,
35 5億円とする。)。この契約においては,A社は,同年8月1日をもって,借入金を返済する旨
36 の条項が含まれていた。
37 A社によるスポンサー企業等の開拓は,その後も精力的に続けられたが,業界の景気の更な
38 る悪化などのため,適当なスポンサー企業等を獲得するには至らなかった。その結果,A社の
39 経営状況は,同年6月頃から深刻さを増したものの,B社からの上記の5億円の融資金の残り
40 を利用することができたため,一部の金融機関に対する債務の返済計画を相手方の同意を得て
41 変更した以外は,全ての債務を約定どおり弁済していた。
42 一方,B社は,同年6月頃には,A社への上記の融資は失敗であり,その回収に向けた準備
43 が必要であるとの判断に至ったことから,当該融資の段階でその担保のために抵当権の設定を
44 受けていたA社所有の不動産の評価を進めたところ,2億円しか満足を受けられる見込みがな
45 いことが明らかになった。そこで,同年7月25日,B社の代表取締役らがA社を訪れ,5億
46 円の融資の返済期日を同年9月1日に変更するとともに,その見返りとして,A社の有する複
47 数の売掛金債権(全てが優良債権であり,その評価額は,2億円であった。)を追加担保(譲
48 渡担保)としてB社に差し入れることを求めた。A社の代表取締役であるCは,同年7月25
49 日,やむを得ず,これに応じて,当該売掛金債権について債権譲渡担保を設定し(以下「本件
50 債権譲渡担保設定行為」という。),A社とB社は,同月28日に債権譲渡登記を経由した。
51 A社は,この当時,同年8月中旬までに弁済期が到来する債務を幾つか負担し(この他には,
52 同年8月中に弁済期が到来する債務はなかった。),その総額は,1億円に達していたが,B社
53 に対する債務の支払の猶予を受けたことで余裕ができたため,何とか,これらの債務を全額決
54 済することができた。ただし,CらA社の経営陣は,同年7月末時点で,A社の余裕資金はぎ
55 りぎり1億円であり,他方で,同年8月中に新たな弁済資金の調達の見込みがなかったため,
56 同年8月中旬には弁済資金が枯渇するものと予想していた。そして,実際にも,その予想どお
57 りに資金状況は推移し,返済期日が同年9月1日に変更されたB社に対する上記の債務の支払
58 をすることができなかった。
59 以上の場合において,A社の破産手続開始後,A社がB社のためにした本件債権譲渡担保設
60 - 2 -
61
62 定行為をXが否認することができるかどうかについて,予想されるX及びB社の主張を踏まえ
63 て,論じなさい。
64 2.A社は,平成23年5月27日,株主総会を開催し,@取締役としてDらを選任すること,
65 A定款を変更して,本店を移転すること,B1株当たり5000円の配当をすることをそれぞ
66 れ決議した。ところが,A社の株主Eは,同年7月29日,当該株主総会の決議の取消しの訴
67 えを提起した。
68 なお,この訴訟においては,DがA社を代表して訴訟追行をしていた。
69 以上の場合において,当該訴訟は,A社に対する破産手続開始の決定によってどのような影
70 響を受けるかについて,論じなさい。
71
72 - 3 -
73
74 〔第2問〕(配点:50)
75 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
76 【事
77
78 例】
79 金属製品のリサイクル業等を営むA株式会社(以下「A社」という。)は,債権者50社に対
80
81 して総額約10億円の負債を負っていたことから,破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそ
82 れがあるとして,平成23年5月30日に再生手続開始の申立てを行ったところ,同日に監督委
83 員として弁護士Xが選任された上,同年6月3日に再生手続開始の決定を受けた。
84 〔設
85
86 問〕
87
88 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
89
90 1.A社は,平成23年1月21日,その主要な取引銀行であるB銀行から1億円の融資を受け
91 るに当たり,その担保として,B銀行に対し,取引先のC株式会社(以下「C社」という。)
92 外10社に対する金属製品の販売に係る売掛金債権をそれぞれ譲渡した。その際,対抗要件の
93 具備については留保し,B銀行がA社を代理して譲渡通知を行うことができる旨の委任がA社
94 からB銀行にされた。
95 B銀行は,A社が再生手続開始の申立てを行ったことを受け,同年6月1日,上記の売掛金
96 債権の譲渡担保について確定日付のある証書による債務者らに対する譲渡通知をしたものの,
97 C社に対する売掛金債権については,この譲渡通知を行うことを失念していた。B銀行は,同
98 月13日になってこれに気付いたことから,同日,C社に対し,当該売掛金債権につき確定日
99 付のある証書によって譲渡通知をするとともに,同月15日には,C社から確定日付のある証
100 書による承諾も,取得した。
101 以上の場合において,A社がB銀行に対してC社に対する売掛金債権がA社に帰属すること
102 を主張することができるかどうかについて,B銀行の譲渡通知及びC社の承諾がそれぞれ再生
103 手続上どのように取り扱われるかを踏まえて,論じなさい。
104 2.A社は,財産評定を完了し,平成23年7月29日,裁判所に対し,財産目録及び貸借対照
105 表を提出した。これらによれば,A社の再生手続開始の時点における資産総額は,3億円であ
106 り,共益債権,一般優先債権及び破産手続において清算するための費用等を控除して算定した
107 予想破産配当率は,10%とされていた。Xが調査を進めたところ,A社について,主要な取
108 引先であるD株式会社(以下「D社」という。)から再生債権である未払の売掛金を即時に弁
109 済しなければ新規の取引を全て打ち切る旨を告げられたため,やむを得ず,再生手続開始後財
110 産評定前の段階で,D社に対し,裁判所に無断で,500万円の弁済をしていたという事実が
111 当該財産評定後に判明した。
112 なお,当該財産評定においては,上記の500万円の弁済後の資産が計上されていた。
113 その後,A社は,同年8月29日,裁判所に対し,再生計画案を提出した。当該再生計画案
114 における権利の変更の一般的基準の要旨は,次の@からCまでのとおりであった。
115 @
116
117 再生債権の元本並びに再生手続開始の決定の日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額
118
119 のうち,10万円までの部分は,免除を受けず,10万円を超える部分は,再生計画の認可
120 の決定が確定した時にその95%の免除を受ける。
121 A
122
123 再生手続開始の決定の日以後の利息及び遅延損害金は,再生計画の認可の決定が確定した
124
125 時に全額の免除を受ける。
126 B
127
128 権利変更後の債権額のうち,10万円までの部分は,再生計画の認可の決定が確定した日
129
130 から2か月以内に支払う。
131 C
132
133 権利変更後の債権額のうち,10万円を超える部分は,均等額で5回に分割し,平成24
134
135 年から平成28年までの間,毎年7月末日限り,支払う。
136 以上の事実関係を踏まえ,裁判所がA社の提出した再生計画案を決議に付すかどうかを判断
137 するに当たり,どのような法律上の問題点があるかを論じ,あわせて,XがA社に対してどの
138 - 4 -
139
140 ような是正措置を採るように勧告すべきかについて,論じなさい。
141
142 - 5 -
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144 - 6 -
145
146 論文式試験問題集[租
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152 法]
153
154 [租
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157
158 法]
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160 〔第1問〕(配点:50)
161 上場会社であるX社(暦年を事業年度とする内国法人。)は,同社の知名度を上げるとともに,
162 同社の新規投資先発掘を目的として,X社の商号を冠した「X起業大賞」という起業企画コンペを
163 行った。X社は,平成21年10月に,X社が大賞受賞者と起業支援のための起業支援契約を締結
164 することなどを盛り込んだ募集要項を発表,平成22年10月に優秀者5名を決定し,うち1名を
165 最優秀者としてX起業大賞を授与することとした。
166 甲(居住者)は,子供の頃から,いつかは自分が発明したロボット製品を世界中に広めたいとい
167 う夢を持ち,工学系大学院修了後は,実家に住み,叔父が経営するY精密機械工場(以下「Y」と
168 いう。)で働きながら,実家の物置を改装した作業場で,大学院在学中に自分が取った特許技術を
169 応用した比較的低価格で製造可能な介護支援用ロボット「OKくん」の商品開発を続けていた。甲
170 は,ロボット専門誌でX起業大賞のことを知り,ここが人生の正念場と考えて起業の決意を固め,
171 平成21年末にYを退職し,その後,退職時にYから受けた退職金100万円を軍資金とし,叔父
172 の好意でYの工場の一角と工作機械を使わせてもらい,OKくんの商品性の改良と企画書作りに専
173 念した。甲は,平成22年3月の締切りぎりぎりにOKくん起業企画書を仕上げて応募し,同年4
174 月から発表までの間も,父親から300万円を借金してOKくんの商品性の改良にまい進していた
175 ところ,最優秀者に選ばれた。
176 平成22年11月1日に行われたX起業大賞表彰式において,優秀者5名に対して,X社から奨
177 励金として500万円が入った金一封が授与され,最優秀者甲には,この金一封に加えて,甲を宛
178 先とし,X社代表取締役社長名義で記名押印され,「貴殿がX起業大賞に応募したOKくん起業企
179 画書を最優秀と認め,奨励金500万円を授与するとともに,@正賞として,総額で最高5000
180 万円までの起業支援金を授与し,A副賞として,貴殿がX社のビジネス・パートナーとなった証と
181 して,X社普通株式1000株を授与する。また,X社は,本日付けで募集要項記載の起業支援契
182 約を貴殿と締結したことを確認する。」と記載されたX起業大賞目録が授与された。
183 「起業支援契約」
184 の主要な条項は下記のとおりである。
185
186 第1条(起業支援金支払条件)
187 X社は,甲に対し,本契約に定める条件に従って,X起業大賞目録記載の正賞として,起業
188 支援金を支払う。ただし,X社は,OKくん起業企画書(以下「甲起業企画書」という。)の企
189 画を実行するための費用として,本契約有効期間中に発生したものにつき,甲がX社に対して
190 その請求書又は領収書を提出することを条件として,当該費用相当額を,本条に基づく起業支
191 援金として,累積合計5000万円に至るまで支払うものとする。
192 第2条(協議及び独占販売権)
193 甲は,甲起業企画書の企画達成状況につき,本契約有効期間中,少なくとも1か月に1回,
194 更にX社が希望する場合には随時,X社に報告しなければならない。X社は,甲起業企画書記
195 載の商品につき,別途合意する売買条件で,本契約の期間満了日前でX社が指定する日(以下
196 「独占販売契約開始日」という。)から2年間の独占販売権を甲から受ける権利を有する。
197 第3条(起業支援金残額の取扱い)
198 第1条の規定にかかわらず,@甲が独占販売契約開始日までに同条に基づいてX社に請求し
199 た起業支援金の累積合計が5000万円に満たなかった場合には,X社は甲に対し,未請求分
200 の起業支援金残額を独占販売契約開始日に支払うものとするが,AX社が本契約の期間満了日
201 までに独占販売契約開始日を指定しなかった場合には,甲はX社に対し,未請求分の起業支援
202 金残額の支払を請求することはできない。
203 - 8 -
204
205 第4条(契約期間)
206 本契約の有効期間は,平成22年11月1日から,@X社が第2条に基づいて独占販売契約
207 開始日を指定した場合には,X社が指定した独占販売契約開始日の前日,又はA平成23年1
208 1月1日のいずれか早い方の日までとする。
209
210 甲は,奨励金500万円で父親からの借金の返済もでき,平成22年11月にはようやく念願の
211 新作業場を賃借し,アルバイトを雇って試作品の製作を開始した。その後のOKくん発売までの道
212 のりは次のとおりであった。
213 平成22年
214 11月〜12月
215
216 甲は,新作業場の賃料,人件費及び機材購入費の請求書を添付して,起業支
217 援金800万円の請求書をX社宛てに発行し,X社は即時に請求額を支払った。
218
219 平成23年
220 1月〜3月
221
222 甲の新作業場で製作したOKくんの試作品をX社の技術研究所に持ち込み,
223 耐久性,安全性等のテストを行い,3月末には上々のテスト結果が得られた。
224
225 4月
226
227 X社は,平成23年7月1日を独占販売契約開始日に指定した。
228
229 1月〜6月
230
231 甲は,新作業場の賃料,人件費及び機材購入費の請求書又は領収書を添付し
232 て,起業支援金500万円の請求書を毎月1回,月初めにX社宛てに発行し,
233 X社は甲に対し,この半年間で合計3000万円の起業支援金を支払った。
234
235 6月
236
237 甲とX社は,X社をOKくんの独占販売代理店に任命する2年間の独占販売
238 契約を締結した。甲は,新作業場では専ら製造原価引下げのための改良作業を
239 行うこととしていたので,独占販売契約開始日以降の製造能力を確保するため
240 に,起業を応援してくれた叔父に恩返しをしたいということもあり,Yと,取
241 りあえず1年間の製造委託契約を締結した。
242
243 7月1日
244
245 独占販売契約開始日。X社は甲に対し,平成23年6月30日時点の起業支
246 援金未請求額1200万円を支払った。
247
248 7月〜
249
250 X社は,独占販売契約締結後速やかに,平成23年の敬老の日を発売開始日
251 として,OKくんの予約キャンペーンを開始したところ,OKくんは爆発的な
252 ヒット商品となった。
253
254 甲に対する副賞のX社普通株式1000株は,X社側の必要手続や甲側の証券口座開設手続等い
255 ろいろな手続に時間が掛かり,結局,平成23年4月1日にX社から甲に引き渡された。なお,甲
256 が表彰式においてX起業大賞目録を受け取った日である平成22年11月1日におけるX社普通株
257 式の株価は,1株2万円であったが,その後急落し,甲がX社から同社普通株式1000株の引渡
258 しを受けた日である平成23年4月1日の終値は,1株1万円であった。しかし,OKくんが爆発
259 的なヒット商品となったことから,同年12月末には,1株3万円まで株価が上昇した。
260 以上の事案について,次の設問に答えなさい。ただし,租税特別措置法は考慮しないこととする。
261
262 - 9 -
263
264 〔設問1〕
265 あなたは,甲から,次に掲げるX起業大賞の賞金・賞品は,それぞれ,所得税法上,どの年に,
266 幾らの金額が,いかなる種類の所得として取り扱われるかについて意見を求められた。あなたの意
267 見を,理由を明らかにして述べなさい。
268
269
270 奨励金
271
272
273
274 起業支援金
275
276
277
278 X社普通株式1000株
279
280 〔設問2〕
281 X社がX起業大賞の受賞者(優秀者及び最優秀者)に対して支払う奨励金及び起業支援金は,法
282 人税法上,どの年度においてどのように取り扱われるか。根拠条文と理由を付して答えなさい。
283
284 - 10 -
285
286 〔第2問〕(配点:50)
287 A(居住者)は,昭和40年頃からK市において小売業を営んできた。Aは,平成20年中に,
288 小売業の一部であるP店での事業を法人組織に切り換えることにしX株式会社(暦年を事業年度と
289 する内国法人。以下「X社」という。)を設立し,P店の店舗,敷地,在庫商品及び売掛金(以下
290 それぞれ「P建物」,
291 「P土地」,
292 「P商品」及び「P売掛金」という。)をX社に譲渡した(以下「本
293 件法人成り」という。)。P建物及びP土地は,Aが平成10年に取得したものであり,X社への譲
294 渡の時においてP建物の簿価は5億円,時価も5億円,譲渡対価は1億円であり,P土地の簿価は
295 5億円,時価は6億円,譲渡対価は4億円であった。また,P商品の簿価総額は8000万円,通
296 常の販売価額の総額は1億円,譲渡対価は2000万円であった。P売掛金の譲渡対価はその債権
297 額どおり1000万円であった。なお,P売掛金の基礎となる売買契約の対象商品は,P売掛金の
298 X社への譲渡の時までに,全てAから買主に引渡済みであった。
299 Aは,本件法人成りの後もP店以外で営んできた小売業を,平成22年末をもって全面的に廃業
300 したが,平成23年1月1日に,前年まで小売店のうちQ店の敷地として使用してきた土地(以下
301 「Q土地」という。)をX社に贈与し(以下「本件贈与」という。),また,同日以降,前年までQ
302 店の店舗として使用してきた建物(以下「Q建物」という。)をX社に月額5万円の賃料で貸し付
303 けることにした(以下「本件貸付け」という。)。本件贈与に関しては,AとX社との間で,Q建物
304 の建築に係るAの借入金の残額(1000万円)をX社がAに代わって借入先に支払う旨が合意さ
305 れた。Q土地は,Aが平成元年に5000万円で取得したものであり,X社への贈与時の時価は3
306 000万円であった。また,K市では平成23年において,Q建物と類似の条件にある貸店舗の賃
307 料相場は月額30万円であった。
308 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。ただし,租税特別措置法及び同族会社の行為計
309 算否認規定(所得税法第157条,法人税法第132条)の適用はないものとする。
310 〔設問1〕
311 本件法人成りに伴う資産の譲渡に係るAに対する所得税の課税関係について,根拠条文を摘示し
312 て検討しなさい。
313 〔設問2〕
314 平成23年における本件贈与及び本件貸付けに係るAに対する所得税及びX社に対する法人税の
315 課税関係について,根拠条文を摘示して検討しなさい。
316
317 - 11 -
318
319 - 12 -
320
321 論文式試験問題集[経
322
323 - 13 -
324
325
326
327 法]
328
329 [経
330
331
332
333 法]
334
335 〔第1問〕(配点:50)
336 A社,B社,C社及びD社(以下「4社」という。)は,いずれも石油を原料とする化学製品甲
337 の製造販売をしている。国内における甲製造販売業者には,4社のほかにX社,Y社及びZ社があ
338 り,我が国における市場占有率は,上位から順に,X社30%,A社15%,B社14%,Y社1
339 4%,Z社13%,C社6%,D社4%となっているほか,輸入製品が4%となっている。上記各
340 社の甲の品質にはほとんど差はない。また,輸入製品は,国内製品よりも若干低価格であるものの,
341 その分品質がやや劣っていることもあって,購入者は特定の需要者に限られており,ここ10年ほ
342 ど輸入製品の市場占有率に変化はない。なお,甲に代替する商品はない。
343 甲製造販売業者は,甲を直接需要者に販売しており,需要者との間で価格交渉を行い,個別に価
344 格を決定している。甲は,石油製品である乙を分解して得られる化学物質を原料としているため,
345 乙の市場における価格(以下「乙価格」という。)が甲の製造コストに大きく影響する関係にあり,
346 従来から,甲製造販売業者は,甲の販売価格を引き上げる際,乙価格の上昇を理由としてきている。
347 甲の市場占有率の状況は,工場立地等の関係から,東日本地区と西日本地区で大きく異なってお
348 り,X社及びY社は,主に東日本地区において販売しており,A社,B社及びC社は,主に西日本
349 地区において販売しており,Z社は東日本地区でしか,また,D社は西日本地区でしか販売してい
350 ない。西日本地区における市場占有率は,上位から順に,A社32%,B社24%,C社14%,
351 X社10%,D社10%,Y社8%となっている。以上のような市場状況は,ここ十数年変化はな
352 く,各社の製造設備は基本的に従前の取引量を前提としたものとなっているため,短期的に製造量
353 を増やすことは各社とも難しい状況にある。また,甲製造販売業者とその需要者との取引は,固定
354 的な関係にあって取引先が変更されることは少ない。
355 以上のような市場状況の下で,4社は,かねてから,3か月に1回程度の割合で,営業部長によ
356 る会合(以下「部長会」という。)を開催し,主として西日本地区における甲の販売に関する情報
357 交換を行っていた。平成16年には,乙価格が高騰したため,部長会において,西日本地区におけ
358 る甲の販売価格の値上げについて合意し,この合意に基づいて各社が顧客との値上げ交渉を行い,
359 一部顧客との間で値上げに成功したことがあった。また,平成18年春頃から再び乙価格が上昇し
360 てきたことから,同年6月に開催された部長会において,西日本地区における甲の販売価格の値上
361 げについて合意し,この合意に基づいて各社が顧客との値上げ交渉を行い,一部顧客について同年
362 8月販売分からの値上げに成功したことがあった。
363 〔設問1〕
364 その後,乙価格は安定していたが,平成20年に入ってから上昇が続いたことから,同年6月1
365 5日に開催された部長会(出席者は,A社のP部長,B社のQ部長,C社のR部長,D社のS部長)
366 において,P部長は,「A社としては,乙価格の上昇傾向が深刻なので,今年の8月販売分から,
367 西日本地区の顧客に対する甲の販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げたいと考え
368 ている。これまでも4社が同調して値上げした場合には,ある程度値上げに成功しているので,今
369 回もB社,C社,D社にも同時に値上げをお願いしたい。」旨を述べたところ,S部長も賛同した。
370 これに対して,Q部長は,「B社としては,需要が伸び悩み値下げ要求も出されている中で,値上
371 げについて取引先の理解を得ることは難しいと考えている。値上げは時期尚早である。」と述べ,
372 R部長は値上げの是非についての態度を明らかにしなかった。そのため,同日の部長会は明確な結
373 論を出すことなく終了した。
374 上記部長会を終えて帰社したP部長は,それまでの経緯から,「A社が先行して値上げを実施す
375 れば,他社も追随するのではないか。」と考えた。そこで,A社は,以後,B社,C社及びD社と
376 の間で部長会等の会合を開催することなく,同年8月販売分について西日本地区の顧客との値上げ
377 - 14 -
378
379 交渉を開始した。もっとも,A社は,顧客との交渉開始に先立って,「8月販売分から甲の販売価
380 格を1キログラム当たり10円の値上げをすべく,まず西日本地区の顧客との交渉を開始する。」
381 旨の新聞発表を行い,P部長は,上記新聞発表と同じ頃に,Q部長,R部長及びS部長に対し,
382 「A
383 社は,8月販売分から甲の販売価格を値上げいたします。」という内容のメールを一方的に送信し
384 た。B社,C社及びD社は,いずれもA社の値上げ交渉開始から数日ほど遅れて,同年8月販売分
385 について西日本地区の顧客との値上げ交渉を開始し,結果として,4社ともおおむね1キログラム
386 当たり10円近い値上げに成功した。Y社は,上記新聞発表によってA社の値上げを知り,直ちに
387 同年8月販売分について西日本地区の顧客との値上げ交渉を行い値上げに成功した。
388 この場合の4社及びY社の行為は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独
389 占禁止法」という。)に違反するといえるか検討しなさい。
390 〔設問2〕
391 平成21年になると乙価格は低下し,しばらく安定していたが,平成22年暮れ頃から上昇に転
392 じ,平成23年になってもその傾向に変化はなかった。4社は,同年2月15日に開催された部長
393 会(出席者は,A社のE部長,B社のF部長,C社のG部長,D社のH部長)において,乙価格の
394 上昇によるコスト増を甲の販売価格に転嫁する必要があるとの結論に達し,同年4月販売分から,
395 西日本地区の顧客に対する甲の販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げること,顧
396 客との値上げ交渉の進捗状況について情報交換するために,同年4月10日に再度部長会を開催す
397 ることを合意した。
398 上記2月15日の部長会を終えて帰社したG部長は,部長会における合意の内容を上司に報告し
399 たところ,「独占禁止法上の問題があるのではないか。以後,他社とは関わりを持たないように。」
400 との指示を受けた。そこで,C社は,他の3社に何ら連絡をすることなく,同年4月販売分につい
401 て西日本地区の顧客との値上げ交渉を行わなかった。また,G部長は,急に別の予定が入ったとい
402 う虚偽の連絡を入れて,同年4月10日に開催された部長会を欠席した。C社を除く3社は,同年
403 4月販売分について西日本地区の顧客との値上げ交渉を行った。その結果,A社及びB社は,一部
404 顧客との間で値上げに成功したが,D社は,大口取引先に拒否されるなどしたために,結果として
405 値上げに成功しなかった。
406 この場合の4社の行為は,独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
407
408 - 15 -
409
410 〔第2問〕(配点:50)
411 X社は,特殊な植物から抽出した栄養成分を主とする栄養機能食品(注)αを製造・販売する大
412 手食品メーカーであり,自社製品を甲というブランド名で販売している。
413 αは,近年の健康志向の増大により市場が拡大しているが,独自の製法を必要とすること,原料
414 である植物の調達が容易ではないことから,αを製造・販売するメーカーは6社に限定されている。
415 また,価格より品質を優先する消費者の傾向とあいまって,メーカー間の価格競争はほとんど行わ
416 れていない。なお,αの類似品としてβがあり,栄養機能食品の対象となる栄養成分はαとほとん
417 ど異ならないが,当該栄養成分を抽出する植物が異なることから,多くの消費者にとってβの栄養
418 機能はαよりも大きく劣ると考えられており,仮にαの価格が大幅に引き上げられたとしても,α
419 に代えてβを購入しようとする消費者はほとんど存在しない。
420 甲は,他社製品に比べて栄養成分の体内吸収率が高いこと,X社の知名度の高さ,テレビでの有
421 名タレントを使ったコマーシャルなどから人気商品となっており,その市場占有率は40%で第1
422 位で,2位以下を大きく引き離している。なお,他社の市場占有率は,A社18%,B社15%,
423 C社11%,D社9%,E社7%である。そして,甲を指名して購入する消費者も少なくないこと
424 から,栄養機能食品の販売業者にとっては,これを取りそろえておくことが不可欠の製品となって
425 いる。
426 甲の流通経路は,卸売業者を経て,薬事法上の許可を受けた薬局及び店舗販売業者(以下「薬
427 局・薬店」という。)の店頭で販売されるものが9割以上を占めているほか,インターネットを
428 通じた販売(以下「ネット販売」という。)が新たに登場してきている。に関しては,X社は,
429 資本・人員・保管設備などの良否を勘案して,各都道府県ごとに卸売業者1社を選んで代理店とし,
430 それらの者のみに甲を販売している(以下「代理店卸売業者」という。)。代理店卸売業者は,各都
431 道府県を担当地域として当該地域内で積極的な販売を行うよう義務付けられているが,他の都道府
432 県での販売に特に制約は課されていない。に関しては,インターネットのホームページを通じて
433 注文を受け,宅配業者が配送するもので,無店舗のインターネット販売業者(以下「ネット販売業
434 者」という。)がこれを手掛けている。その場合,ネット販売業者は,薬局・薬店相互の間で在庫
435 調整や換金の必要性などから低価格で取引されている甲を,薬局・薬店から購入してその販売に充
436 てている。ネット販売は,店舗や人員のコストが節約できることなどから,薬局・薬店の店頭での
437 販売価格に比べて5%〜10%ほど安いことが多く,最近,その売上高は増加傾向にある。
438 X社は,当初から,ネット販売業者によるネット販売が,薬局・薬店による店頭での販売と異な
439 り,甲の摂取目安量や摂取方法について,顧客の求めに応じて説明やアドバイスを行う機会がな
440 く,製品の栄養機能が十分に発揮できなくなるおそれがあること,甲は,品質保持のため摂氏1
441 5度以下の冷暗所での保存が必要なところ,その配送や保管における温度管理が不十分となり,品
442 質が劣化するおそれがあることを理由に,これに消極的な姿勢を採ってきた。そして,このままネ
443 ット販売業者によるネット販売が拡大すると,上記により甲のブランドイメージが損なわれる
444 危険が大きいと考え,今後はこれを行わせないようにするとの方針を決定し,そのために以下のよ
445 うな方策を採ることを考えている。
446 @
447
448 ネット販売業者に甲が販売されないようにするため,甲を扱っている薬局・薬店に対し,甲
449 を,専ら一般消費者に対してのみ販売するよう要請する。
450
451 A
452
453 @の要請を遵守させるため,代理店卸売業者に対し,肉眼では見えない製品の隠しロット番
454 号を用いた取引先の薬局・薬店の監視を義務付け,同要請に従わない薬局・薬店には甲を販売
455 しないようにさせる。
456
457 〔設
458
459 問〕
460
461 X社が実施しようとしている上記@及びAの方策について,独占禁止法上の問題点を指摘して検
462 討しなさい。
463 - 16 -
464
465 (注)「栄養機能食品」とは,栄養成分(ビタミン・ミネラル)の補給のために利用される食品で
466 あり,同食品として,その栄養成分の機能を表示して販売するためには,健康増進法に基づき,
467 一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が,定められた上・下限値の基準の範囲内
468 である必要がある。また,摂取目安量や摂取方法等についての注意喚起表示を行う必要がある。
469 他方,それは,薬事法上の許可を受けた薬局及び店舗販売業者でなければ販売することができ
470 ない「医薬品」には該当しないから,これ以外の者であっても販売することができる。
471
472 - 17 -
473
474 - 18 -
475
476 論文式試験問題集[知的財産法]
477
478 - 19 -
479
480 [知的財産法]
481 〔第1問〕(配点:50)
482 Aは,充電式でない電池(以下「使い捨て電池」という。)を充電する方法の発明(以下「本件
483 発明」という。)について特許権を有している。本件発明によると,電圧が低下した使い捨て電池
484 を充電して繰り返し使用することができる。
485 メーカーBは,新型の充電器(以下「B製品」という。)を開発した。B製品は,充電式の電池
486 を充電する機能のほかに,電圧が低下した使い捨て電池を本件発明と同一の方法で充電する機能を
487 有しており,ユーザーは充電したい電池の種類に応じて充電機能を選択することができるように設
488 計されている。
489 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えよ。
490 〔設
491
492 問〕
493
494 1.Bは,日本国内市場及び外国市場を指向して,各国仕様ごとに生産工程を分けてB製品を製
495 造し,国内仕様のB製品を国内で販売し,外国仕様のB製品を外国に輸出している。AはBに
496 対し,本件発明の特許権に基づいてB製品の製造,販売及び輸出の各行為につき差止請求をす
497 ることができるか。なお,B製品は,家庭内での使用を予定した装置であるものとする。また,
498 Aは,外国において特許権を有していないものとする。
499 2.Cは,ソフトウェアメーカーであるが,Bからの発注を受けて,B製品に搭載する部品であ
500 る半導体チップ(以下「C部品」という。)を製造してBに譲渡している。C部品には,本件
501 発明と同一の充電方法をB製品で機能させるプログラムが記録されている。そこでAはCに対
502 し,BがC部品を搭載して製造するB製品は,Aの本件発明の特許権を侵害していると通知し
503 た。AはCに対し,どのような請求をすることができるか。
504 3.AはBに対し,家庭内で使用される製品に限る条件で,本件発明による充電機能を有するB
505 製品の製造・販売行為を許諾したが,事業者向けの充電器の製造・販売行為は許諾しなかった。
506 そこで,Bは,B製品に「家庭内使用に限る」と明記して販売した。ところが,日本国内の事
507 業者Dは,市場において購入したB製品を自らの事業目的で使用し,電圧が低下した使い捨て
508 電池を充電している。AはDに対し,本件発明の特許権に基づいてB製品の使用行為につき差
509 止請求をすることができるか。
510
511 - 20 -
512
513 〔第2問〕(配点:50)
514 音楽家であるA及びBは,共同で楽曲αを創作し,楽曲αについての著作権を共有している。平
515 成20年7月に,レコード会社Cは,A及びBとの間で,期間を3年とする楽曲αの日本国におけ
516 る利用許諾契約を結び,その後,同契約に基づいて,楽曲αの演奏を録音したレコード(以下「C
517 レコード」という。)の製造販売を開始した。また,A及びBは,X国のレコード会社Dに対して,
518 X国における楽曲αについての著作権を譲渡した。レコード会社Dは,X国において,楽曲αの演
519 奏を録音したレコード(以下「Dレコード」という。)を製造し販売している。映画会社Eは,レ
520 コード会社Dから利用許諾を得て,X国において,楽曲αをエンディング・テーマとした劇場用映
521 画(以下「E映画」という。)を製作し,映画館等において上映した後,E映画のDVDを製造し
522 販売している。
523 平成23年5月に,AとCは,上記利用許諾契約を更新しようと考えていたが,Bは,Aとの人
524 間関係のもつれからAを困らせたいと思い,この更新を拒絶した。そのため,Cは,Cレコードの
525 製造を中止し,同年7月までに,その製造したCレコードを全て販売した。しかしながら,Cは,
526 Aからの強い要望を受けて,同年9月に,Bの許諾を得ないまま,Cレコードの製造販売を再開し
527 た。レコード店を経営するFは,平成24年2月から,Bの許諾がないという事情を知らずに,C
528 からCレコードを購入していたところ,同年4月に当該事情を知り,その後はCレコードを新たに
529 購入することはやめたが,現在,それ以前に購入したCレコードを消費者に販売している。
530 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えよ。
531 〔設
532
533 問〕
534
535 1.Bは,Cに対してCレコードの製造販売の差止請求をする場合,どのような主張をすべきか
536 について,Cの反論を想定しつつ,述べよ。
537 2.Bは,Fに対してCレコードの販売の差止請求をする場合,どのような主張をすべきかにつ
538 いて,Fの反論を想定しつつ,述べよ。
539 3.Gは,X国においてDレコードを購入し,これを日本に輸入し販売している。Aは,Gに対
540 して,Dレコードの輸入及び販売の各行為につき差止請求をすることができるか。
541 4.Hは,X国においてE映画のDVDを購入し,これを日本に輸入し販売している。Aは,H
542 に対して,E映画のDVDの輸入及び販売の各行為につき差止請求をすることができるか。
543
544 - 21 -
545
546 - 22 -
547
548 論文式試験問題集[労
549
550 - 23 -
551
552
553
554 法]
555
556 [労
557
558
559
560 法]
561
562 〔第1問〕(配点:50)
563 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
564 【事
565
566 例】
567 Xは,平成10年,インテリアデザイン設計・施工業を営むY社に期間の定めなく雇用され,
568
569 入社以来,主にインテリアデザイン設計を担当している社員である。Xが入社した当時,Y社に
570 は,同じインテリアデザイン設計担当として勤続年数10年以上の正社員が1名いたが,この社
571 員は平成20年に転職した。ところが,Y社は人材を補充しなかったため,同年以降,X一人で
572 インテリアデザイン設計を担当していた。Xは,これでは自己の業務負担が大きく,まとまった
573 休暇の取得もままならないことをY社に訴え続け,Y社は,適した人材が見付からないことを理
574 由になかなか人材を補充しなかったが,ようやく平成23年4月になって,デザイン専門学校を
575 卒業したばかりのAを正社員として雇用し,インテリアデザイン設計担当とした。
576 ところで,Xは,共働きの妻が出産し,その産前産後休業後に妻が職場復帰できるよう,それ
577 に合わせて2か月の育児休業を取得しようと考え,Y社の承認を得て,同年7月1日から同年8
578 月31日まで所定の休日を除く43日の育児休業を取得した。
579 Xは,当初,同年9月1日からは妻が育児休業を取得し,自分は職場復帰する予定でいたとこ
580 ろ,妻の勤務先が繁忙で,同月中は妻の休業が困難であり,妻も勤務継続を希望した。そこで,
581 Xは,いまだ消化していない当該年度の年次有給休暇20日分をここで利用しようと考え,同年
582 8月25日,Y社に電話で連絡し,同年9月1日から同月30日まで所定の休日を除く20日の
583 年次有給休暇を取得する旨申し出た。
584 他方,Y社は,マンション建設・販売業を営むB社が新築マンションのインテリアデザイン設
585 計・施工を外注する案件につき,他社に先んじて営業活動を展開し,Xが1年近く,B社との交
586 渉や企画提案等に従事してきたところ,同年7月上旬頃,B社から,同年9月中にB社がY社及
587 び競合他社の各企画提案を受け,その最終評価に基づき外注先を決する旨を伝えられていた。
588 そこで,Y社は,同年8月25日に電話連絡してきたXに対し,前記事情を説明し,大きな利
589 益が見込まれる前記案件を受注するためには,Xが最終的な企画提案及び交渉を行う必要が大き
590 く,入社したばかりで実務経験の浅いAには任せられないことを理由に,同年9月の年次有給休
591 暇の取得は避けてもらいたい旨申し出た。しかし,家庭の事情を優先せざるを得ないと考えたX
592 は,これに応じなかった。そこで,Y社は,同年8月26日,Xに電話連絡し,同年9月半ばま
593 では何とかAに代替させるとしても,他社との企画競争及びB社との交渉が山場となる同月15
594 日から同月30日までの期間中(うち勤務日10日)は,Xによる年次有給休暇の取得が事業の
595 正常な運営を妨げるとして,同月1日から同月14日までの期間における年次有給休暇は承認す
596 るが,同月15日から同月30日までの期間における年次有給休暇は承認しない旨通知するとと
597 もに,同年10月中であれば,これに相当する期間の年次有給休暇を取得しても差し支えない旨
598 提案した。
599 しかし,Xは,この提案も受け入れず,そのまま,同年9月1日から同月30日まで出勤しな
600 かった。
601 Y社は,やむなくXに代えてAを企画提案及び交渉に当たらせたが,その実務経験不足から,
602 結局,前記案件につき受注できなかった。
603 Y社は,Xが同月15日から同月30日までの間の勤務日にY社の承認を得ずに出勤しなかっ
604 たことが,就業規則に規定された懲戒事由である「正当な理由なく,業務上の指示命令に従わな
605 かったとき」に該当するとして,就業規則所定の手続に従って,Xを懲戒処分であるけん責処分
606 にした。また,Y社は,同年10月,毎月末日締めで計算される同年9月分の賃金につき,Xに
607 - 24 -
608
609 対し,Y社がXの年次有給休暇を承認しなかった同年9月15日から同月30日までの間の勤務
610 日である10日相当分の賃金を控除して支給した。さらに,Y社は,同年12月支給に係る賞与
611 につき,Xに対し,全額支給しなかった。Y社は,これについて,就業規則に定められた賞与の
612 支給条件に従った措置であるとしているところ,就業規則には,賞与支給に関して,次のように
613 規定されていた。
614 すなわち,12月支給の賞与の対象期間は,5月初勤務日(同年では5月2日)から10月最
615 終勤務日(同年では10月31日)まで,支給対象者は,同期間の出勤率(出勤した日数÷有効
616 に取得した休暇日を含めた所定労働日数)が90パーセント以上の者(同年の前記対象期間で所
617 定労働日124日のうち112日以上出勤した者)とされ,その出勤率の算定において,年次有
618 給休暇はこれを出勤したものとみなす旨の規定はあるが,育児休業についてその旨の規定はない。
619 また,賞与額の算定については,月額基本給3か月分の額から,月額基本給を20日分で除し
620 て得た額に欠勤日数を乗じて得た額を差し引く計算方式を採ることとされている。育児休業は無
621 給とされているところ,前記賞与額の算定においては,年次有給休暇も含め,全ての取得休暇日
622 を欠勤日数に算入するものと規定されている。
623 なお,Xは,同年5月2日から同年10月31日までの間,前記のとおり出勤しなかった同年
624 7月1日から同年9月30日までの期間を除き,全ての勤務日に出勤した。
625 〔設
626
627 問〕
628 Y社がXに対して行った懲戒処分,平成23年9月分給与からの10日相当分の賃金控除及び
629
630 同年12月の賞与全額不支給の各措置について,法律上の問題点を指摘し,あなたの見解を述べ
631 なさい。なお,Y社はXに対して賞与を支給すべきであるとする見解の場合には,前記計算方式
632 による賞与額の算定において欠勤日数を何日として計算すべきか,また,その根拠について説明
633 しなさい。
634
635 - 25 -
636
637 〔第2問〕(配点:50)
638 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
639 【事
640
641
642 例】
643 Y社は,事務所用家具のインターネット販売を主な事業とする株式会社であり,従業員は5
644 0名で,部長,課長及び係長の役職が設けられ,課長以上に人事考課の権限が与えられている。
645
646
647
648 Y社は,いわゆる薄利多売の営業でこれまで好調に売上げを伸ばしていたことから,例年4
649 月に賃金の引上げ(ベース・アップ)を行ってきた。ところが,主要な仕入先の会社が倒産し
650 たことに伴い,従前の廉価な販売価格を維持できなくなり,平成21年の事業年度における業
651 績が急激に悪化した。Y社の代表取締役であるAは,現在の財務状況からすれば,平成22年
652 も多少のベース・アップは可能ではあるものの,Y社のぜい弱な財務体質からすると,同年の
653 事業年度以降も業績が引き続き低迷した場合,早ければ平成24年にも深刻な経営難に陥る可
654 能性があると分析し,平成22年4月のベース・アップは行うべきではないと判断した。そこ
655 で,Y社は,同年1月上旬頃,全従業員に対して,平成21年の業績悪化により平成22年4
656 月のベース・アップは実施しない旨を書面で通知した。
657
658
659
660 Y社には,これまで労働組合が存在しなかったところ,部下2名を配されたY社の係長であ
661 るBは,平成21年の業績が悪化したとはいえ,ベース・アップができないほどにY社の財務
662 状況は悪くないはずであり,ベース・アップを行わないのは不当であると考え,Y社に対して
663 ベース・アップ要求の団体交渉を行うべく,Y社の係長以下の従業員を勧誘して,平成22年
664 1月末頃,Y社の従業員計30名でX労働組合(以下「X組合」という。)を結成し,自らそ
665 の執行委員長に就任した。そして,X組合は,Y社に対し,X組合結成の旨を通知し,X組合
666 とのベース・アップを議題とする団体交渉の開催を求めた。
667 Y社はこの要請に応じ,同年2月初め頃に開催された団体交渉に出席したAは,X組合に対
668 し,「平成21年の業績が著しく悪く,現在の財務状況では,平成22年以降の業績が引き続
669 き低迷した場合,早ければ平成24年にも従業員のリストラを検討せざるを得ないほどの経営
670 難に陥る危険がある。そこで,本年のベース・アップを断念し,財務体質の改善に力を注ぐ必
671 要がある。」旨,自らの判断を率直に説明した。これに対し,X組合は,Y社の財務状況に関
672 する資料の提出を数回にわたり求めたところ,Y社はその都度,これに迅速に対応し,財務諸
673 表等,要求された資料を全てX組合に提出した上,その後,平成22年2月中,X組合からの
674 合計3回にわたる日時指定の団体交渉開催要請に全て応じた。これらの団体交渉では,いずれ
675 も,X組合側が「深刻な経営難に陥る危険があると言うが,提出された財務関係資料を見ても
676 Y社の説明は理解できない。合理的根拠を示して納得のいく説明をしてほしい。」などと主張
677 したのに対し,Y社側は,「既に提出した資料をきちんと分析すれば当方の説明の合理性は明
678 白だ。説明しようにも根拠は資料のとおりだと言うほかない。」などと述べるのみであった。
679
680
681
682 Bは,X組合の執行委員長として前記団体交渉の内容をX組合の全組合員に伝達するため,
683 同月末頃,Y社の許可なく,始業時刻前に,Y社事務所において,団体交渉の日時,出席者及
684 び交渉概要に関する記述のほか,「会社は財務状況が悪いの一点張り。」,「会社はベース・アッ
685 プできない合理的根拠を示せ。」などの文言を片面印刷したA4サイズの紙1枚を印刷面を下
686 にしてX組合の各組合員の机上に置くという方法でビラを配布した。
687 Y社は,Bの前記ビラ配布が,Y社の就業規則に規定された従業員の遵守事項のうち,「許
688 可なく,社内で業務外の掲示をし,又は図書若しくは印刷物等の頒布あるいは貼付をしないこ
689 と。」との規定に違反するとともに,Y社の係長としての職責に照らして相当でない行為であ
690 るとして,前記ビラ配布の翌日,Bにつき,人事権の行使として係長職を解いて役職なしに降
691 格し,Bにその旨を通知した。その結果,Bは,部下を持たない立場になったほか,基本給に
692 変動はないものの,これまで支給されていた月額2万円の係長手当の支給が受けられなくなっ
693 - 26 -
694
695 た。
696
697
698 X組合は,前記降格通知の翌日,Y社に対して,従前のベース・アップ要求に加え,Bの降
699 格人事の撤回を要求し,団体交渉の開催を求めたところ,Aは,「Bの降格は人事権の行使で
700 あって経営権に属する事項であり,団体交渉に応じる必要はない。ベース・アップについても,
701 合計4回の団体交渉にもX組合の資料要求にも全て応じた。双方の主張が折り合わないのは,
702 要は,財務関係資料に基づく現在の財務状況及び今後の業績の見通しの分析・評価についての
703 見解の相違である。そもそも,そのような分析・評価も経営者の判断事項であって,その当否
704 を団体交渉で議論する必要はない。当方の経営判断を変えるつもりは全くないので,これ以上
705 の団体交渉を行っても協議に進展が見られるとは思えない。」などと述べて,Y社として,X
706 組合に対し,今後,前記要求に関する団体交渉を拒否する旨を即時に通告した。
707
708
709
710 そこで,X組合は,Y社に対する前記要求を外部に宣伝し,Y社を団体交渉に応じさせるべ
711 く,同年3月初め頃から,週2回,Y社の休憩時間中の午後零時30分から午後零時50分ま
712 での間,Y社事務所が所在するビルの敷地内の1階出入口外において,ビラ配布等の活動を始
713 めた。その状況は,毎回,X組合の組合員10名余りが,同出入口外の両側に分かれて並び,
714 同ビルを出入りする不特定者に対して,「執行委員長の降格は組合敵視の現れ。」,「会社は違法
715 な降格人事を撤回しろ。」,「会社は団体交渉に応じろ。」,「会社はベース・アップできない合理
716 的根拠を示せ。」などの文言を印刷したA4サイズのビラを配布しながら,同旨の文言を声高
717 に連呼するというものであった。
718 このような活動が3回実施された後,Y社に対して,同ビルに事務所を置く他社等から,
719 「取
720 引先がビルに入りにくいと言って迷惑している。批判の相手が当社と勘違いされては企業イメ
721 ージも下がり,売上げにも響く。」といった抗議がなされ,テナントから同様の苦情を受けた
722 同ビルの管理会社からも,X組合の前記活動を中止させてほしいとの強い要請がなされるよう
723 になった。
724
725
726
727 Y社の人事管理の責任者である総務部長Cは,これまで前記団体交渉に毎回出席し,そもそ
728 もX組合を好ましく思っていなかった上,前記ビル出入口外の活動をこのまま続けさせてはY
729 社の対外的な信用にも関わることから,このような活動をやめさせるべきだと考え,同月下旬
730 頃,Aその他Y社の役員に諮ることなく独断で,終業後,X組合の組合員を順次,酒食の席に
731 誘い,「X組合の活動はかえって会社の業績を悪化させる。今年はベース・アップがなされな
732 くても,皆が一丸となって働いて業績を回復すれば,ベース・アップもできる。組合活動を続
733 けていると出世にも影響するぞ。」などと話した。その数日後,Cに誘われたこれら組合員の
734 うち5名がX組合から脱退した。
735
736
737
738 Bその他X組合の幹部は,X組合の組合員に対するCの働き掛けがAの意向によるX組合へ
739 の組織弱体化工作であると考えてY社への反感を強め,同月末頃,始業時刻前でY社の従業員
740 がいずれも出勤していない早朝に,Y社事務所において,Y社の許可を得ず,X組合の組合員
741 以外の者も含めたY社の全従業員の机上に,「会社は違法な降格人事を撤回しろ。」,「会社は団
742 体交渉に応じろ。」,「会社はベース・アップできない合理的根拠を示せ。」,「組合弱体化工作に
743 断固抗議する。」,「A社長は違法行為の達人。」,「A社長は従業員を犠牲にして私腹を肥やす偽
744 善者。」などの文言を片面印刷したA4サイズの紙1枚を印刷面を上にして置くという方法で
745 ビラを配布した。その後,Bらが始業時刻までの時間を潰すために一旦Y社事務所を出ている
746 間,Y社の他の従業員よりも早く出勤したCは,前記ビラを見て,これはA個人を根拠なく誹
747 謗中傷するもので,従業員の目に触れさせるわけにはいかないと考え,Aその他Y社の役員に
748 諮ることなく独断で,Y社の他の従業員が出勤してくる前に,机上配布された前記ビラをX組
749 合に無断で全て回収してしまった。
750
751 - 27 -
752
753 〔設
754
755
756 問〕
757 X組合は,Y社側の一連の対応について,いずれも不当であると考えているが,その場合,
758 X組合として採り得る法的措置とその法律上の問題点について論じなさい。なお,B個人が当
759 事者となる法律関係については検討しなくてよい。また,X組合が労働組合法上の労働組合に
760 該当することを前提に論じてよい。
761
762
763
764 Y社は,直ちにX組合による前記ビル出入口外でのビラ配布等の活動をやめさせたいと考え
765 ているが,その場合,Y社として採り得る法的措置とその法律上の問題点について論じなさい。
766
767 - 28 -
768
769 論文式試験問題集[環
770
771 - 29 -
772
773
774
775 法]
776
777 [環
778
779
780
781 法]
782
783 〔第1問〕(配点:50)
784 A県B町に所在するC社の工場の近隣に住むDは,自分がぜん息に罹患したのは,同社工場に設
785 置されているばい煙発生施設から排出される窒素酸化物が原因であると考えている。同施設は,大
786 気汚染防止法の規制対象であり,C社はA県知事に届出をしている。この場合において,以下の設
787 問に答えよ。なお,各設問の事例はそれぞれ独立している。
788 〔設問1〕
789 C社は,昭和55年(1980年)の操業開始時に,B町との間に公害防止協定を締結してい
790 る。この協定においては,大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準よりも2割厳しい基準
791 が定められ,その基準に関して,「C社工場内のばい煙発生施設の排出口において,本協定に規
792 定する排出基準に適合しないばい煙を排出してはならない。」と規定されていた。
793 Dからの相談を受けたB町役場では,C社工場に職員を派遣して窒素酸化物の濃度を測定させ
794 たところ,大気汚染防止法に基づく排出基準値は辛うじて遵守していたことが同社の測定記録か
795 らは確認できたものの,協定に規定されている値は実現できていないことが判明した。D以外に
796 もぜん息症状を訴える住民が出てきたことから,B町は,C社に対して,このままでは協定の履
797 行を求める訴訟を提起せざるを得ないと伝えた。
798 C社は,協定値不遵守の事実は認めたものの,「協定に規定されている値は,あくまで目標値
799 にすぎない。また,窒素酸化物に関する規制は,大気汚染防止法のみにより適法になし得るので
800 あって,協定により法的義務を創出することはできないはずであるから遵守義務は発生しない。」
801 と主張している。これに対してB町は,どのように反論できるか。
802 なお,窒素酸化物に関する上乗せ条例は制定されていないものとする。
803 〔設問2〕
804 大気汚染防止法は,昭和43年(1968年)に制定されたが,同法の昭和45年(1970
805 年)の改正は,排出基準の違反について第33条の2を導入し,新たな法政策を採用した。【資
806 料1】及び【資料2】を踏まえてその趣旨を述べよ。
807 〔設問3〕
808 C社は,B町に対して,大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準値は遵守していたと主
809 張したが,A県が立入検査をして質問などをしたところ,少なくとも平成19年(2007年)
810 4月から平成24年(2012年)3月までの過去5年間にわたり,同法施行規則に基づく頻度
811 で実施する排出基準の測定に当たって,度々同基準値を超過した排出をしていたにもかかわらず,
812 それが基準値内にあるように測定値を改ざんして記録していたことが判明した。この場合につい
813 て【資料1】ないし【資料3】を踏まえて次の及びに答えよ。
814
815
816 このような事案に対し,設問2に挙げた規定の導入と一体として行われた昭和45年(19
817 70年)の大気汚染防止法改正の一部(
818 【資料2】参照)には,「十分認識されていなかった問
819 題点」があったことが明らかになり,平成22年(2010年)に同法改正がなされた(平成
820 23年(2011年)4月1日施行)。この問題点は,我が国の環境法令の多くに前提となっ
821 ている認識と関連しており,我が国の環境法令の特徴ともいえるが,それは何か。
822
823
824
825 C社はどのような刑事責任を負うか。なお,罪数については答えなくてよい。
826
827 - 30 -
828
829 【資料1】昭和43年(1968年)の大気汚染防止法制定の際の関連規定
830 (排出基準の遵守義務)
831 第5条
832
833 指定地域におけるばい煙発生施設において発生するばい煙を排出する者(以下「ばい煙排
834
835 出者」という。)は,当該ばい煙発生施設に係る排出基準を遵守しなければならない。
836 (ばい煙量等の測定)
837 第15条
838
839 ばい煙排出者は,厚生省令,通商産業省令で定めるところにより,当該ばい煙発生施設
840
841 に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し,その結果を記録しておかなければならない。
842 第33条
843
844 第10条又は第14条第1項若しくは第2項の規定による命令に違反した者は,1年以
845
846 下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
847 第34条
848
849 第7条第1項の規定による届出をせず,又は虚偽の届出をした者は,5万円以下の罰金
850
851 に処する。
852 第35条
853
854 次の各号の一に該当する者は,3万円以下の罰金に処する。
855
856
857
858 第8条第1項又は第9条第1項の規定による届出をせず,又は虚偽の届出をした者
859
860
861
862 第11条第1項の規定に違反した者
863
864
865
866 第15条の規定による記録をせず,又は虚偽の記録をした者
867
868
869
870 第26条第1項の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は同項の規定による
871 検査を拒み,妨げ,若しくは忌避した者
872
873 【資料2】昭和45年(1970年)の大気汚染防止法改正の際の関連規定
874 (ばい煙の排出の制限)
875 第13条
876
877 ばい煙発生施設において発生するばい煙を大気中に排出する者(以下「ばい煙排出者」
878
879 という。)は,そのばい煙量又はばい煙濃度が当該ばい煙発生施設の排出口において排出基準に
880 適合しないばい煙を排出してはならない。
881
882
883 (略)
884 (ばい煙量等の測定)
885
886 第16条
887
888 ばい煙排出者は,厚生省令,通商産業省令で定めるところにより,当該ばい煙発生施設
889
890 に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し,その結果を記録しておかなければならない。
891 第33条
892
893 第9条又は第14条第1項の規定による命令に違反した者は,1年以下の懲役又は20
894
895 万円以下の罰金に処する。
896 第33条の2
897
898 次の各号の一に該当する者は,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
899
900
901
902 第13条第1項の規定に違反した者
903
904
905
906 第17条第2項,第18条の4又は第23条第4項の規定による命令に違反した者
907
908
909
910 過失により,前項第1号の罪を犯した者は,3月以下の禁錮又は5万円以下の罰金に処する。
911
912 第34条
913
914 次の各号の一に該当する者は,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
915
916
917
918 第6条第1項又は第8条第1項の規定による届出をせず,又は虚偽の届出をした者
919
920
921
922 第15条第2項の規定による命令に違反した者
923
924 第35条
925
926
927 次の各号の一に該当する者は,5万円以下の罰金に処する。
928
929 第7条第1項,第18条第1項若しくは第3項又は第18条の2第1項の規定による届出を
930 せず,又は虚偽の届出をした者
931
932
933
934 第10条第1項の規定に違反した者
935
936
937
938 第26条第1項の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は同項の規定による
939 検査を拒み,妨げ,若しくは忌避した者
940
941 - 31 -
942
943 【資料3】中央環境審議会「今後の効果的な公害防止の取組促進方策の在り方について(答申)」(平
944 成22年1月29日)(抜粋)
945 「近年においては,環境問題の対象が地球温暖化や廃棄物・リサイクル等にも多様化し,事業者
946 や地方自治体においてもこのような課題への対応に重点が置かれるようになり,公害防止の取組に
947 対する社会的な注目度は相対的に低下し,現場における担当者の公害問題に対する危機意識も希薄
948 となりがちな傾向にある。それらを背景として,公害防止法令に基づく環境管理業務に充てられる
949 人的・予算的な資源に制約が生じ,その適確な遂行が困難になりつつあり,さらに,これまで公害
950 防止対策を担ってきた経験豊富な事業者や地方自治体の職員も退職期を迎えている。また,企業に
951 おけるコンプライアンスの確保が課題となっている。このような中で,ここ数年,大企業も含めた
952 一部の事業者において,『大気汚染防止法』や『水質汚濁防止法』の排出基準の超過及び工場の従
953 業員による測定データの改ざん等の法令違反事案が相次いで明らかとなり,事業者の公害防止管理
954 体制に綻びが生じている事例が見られている。」
955 「現行の『大気汚染防止法』及び『水質汚濁防止法』においては,(中略)ばい煙量等又は排出
956 水の汚染状態の測定・記録(中略)により得られる排出測定データは,事業者が排出基準を超過し
957 ないよう自主的管理のために用いられるとともに(中略)地方自治体による報告徴収や立入検査,
958 改善命令等の法に基づく措置を行う際に過去の排出の状況を明らかにする重要な資料となってき
959 た。」
960
961 - 32 -
962
963 〔第2問〕(配点:50)
964 A県B町は,瀬戸内海に面した湾内に位置し,古くから海上交通の要衝として栄えた港町である。
965 海岸には,中世からの港湾設備群や壮麗な神社等の歴史的建造物が並び,それらが良好な状態で保
966 存されている。同じ湾内の,B町の対岸側にあるA県C町からは,B町海岸の歴史的建造物があた
967 かも海に浮かんでいるように見えるため,C町からの景観は名勝として知られ,C町住民は,その
968 特徴的な歴史的景観を日常的に遠望していた。
969 A県は,事業者として,県内の他地域における幹線道路の慢性的な交通渋滞を緩和するため,上
970 記湾内の公有水面を埋め立て,埋立地に新たな地上式の県道(以下「計画道路」という。)を設置
971 する事業(以下「本件事業」という。)を計画した。計画道路は,C町を通る予定である。本件事
972 業による湾の埋立てにより,B町の歴史的建造物が並ぶ海岸地先海面も埋め立てられることとなっ
973 た。本件事業の計画に際し,埋立工事を行わず,別地区にトンネルを掘削する代替案も検討された
974 が,代替案では,幹線道路の交通混雑解消の効果が,埋立工事を行う場合の約70%であるとして,
975 採用されなかった。
976 なお,A県は,政府が瀬戸内海環境保全特別措置法第3条第1項に基づき策定した「瀬戸内海環
977 境保全基本計画」に基づいて,
978 「瀬戸内海環境保全に関するA県計画」を策定しており,これには,
979 「瀬戸内海の自然景観と一体をなしている史跡,名勝,天然記念物等については,その指定,管理
980 等に係る制度の適正な運用等によりできるだけ良好な状態で保全するよう努めるものとする。」と
981 の規定がある。
982 A県は,A県知事に対し,公有水面埋立法第4条第1項に基づき埋立免許を申請し,A県知事は,
983 A県に対し,公有水面の埋立免許を付与した。その後,本件事業による埋立工事が竣工した結果,
984 C町からは,B町の歴史的建造物が海に浮かんでいるようには見えなくなり,特徴的な歴史的景観
985 が損なわれた。
986 〔設問1〕
987 C町に住むXは,長年,B町の歴史的建造物の見える景観を日常的に楽しんでいたが,本件事
988 業による埋立てにより,特徴的な歴史的景観が損なわれ,精神的苦痛を感じているため,訴訟を
989 提起して,損害の賠償を受けたいと考えている。
990
991
992 Xは,誰に対してどのような請求ができるか。
993
994
995
996 当該訴訟において予想される争点について,Xがどのような主張をすべきかを,予想される
997 被告側の反論にも言及しつつ,論ぜよ。
998
999 〔設問2〕
1000 本件事業に係る計画道路の供用開始後,当該道路の交通量が増加し,C町では当該道路を通行
1001 する自動車の騒音が激しくなり,Xの居住地では,昼夜の各環境基準を5デシベル超える騒音が
1002 毎日のように測定されるようになった。Xは,生活妨害による精神的苦痛を感じているため,訴
1003 訟を提起して,損害の賠償を受けたいと考えている。
1004
1005
1006 Xは,誰に対してどのような請求ができるか。
1007
1008
1009
1010 当該訴訟において予想される争点について,Xがどのような主張をすべきかを,予想される
1011 被告側の反論にも言及しつつ,論ぜよ。
1012
1013 【資
1014
1015
1016 料】
1017 公有水面埋立法(大正10年4月9日法律第57号)(抄)
1018
1019 第2条
1020
1021 埋立ヲ為サムトスル者ハ都道府県知事ノ免許ヲ受クヘシ
1022
1023 2,3
1024
1025 (略)
1026
1027 第4条
1028
1029 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ
1030 - 33 -
1031
1032 為スコトヲ得ズ
1033
1034
1035 国土利用上適正且合理的ナルコト
1036
1037
1038
1039 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
1040
1041
1042
1043 埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律
1044 ニ基ク計画ニ違背セザルコト
1045
1046
1047
1048 埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト
1049
1050 五,六
1051 2,3
1052
1053
1054 (略)
1055 (略)
1056
1057 瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年10月2日法律第110号)(抄)
1058 (目的)
1059 第1条
1060
1061 この法律は,瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を推進するための瀬戸内海の環境
1062
1063 の保全に関する計画の策定等に関し必要な事項を定めるとともに,特定施設の設置の規制,富栄
1064 養化による被害の発生の防止,自然海浜の保全等に関し特別の措置を講ずることにより,瀬戸内
1065 海の環境の保全を図ることを目的とする。
1066 (瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画)
1067 第3条
1068
1069 政府は,瀬戸内海が,わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地と
1070
1071 して,また,国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として,その恵沢を国民がひとしく享受し,後
1072 代の国民に継承すべきものであることにかんがみ,瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を
1073 推進するため,瀬戸内海の水質の保全,自然景観の保全等に関し,瀬戸内海の環境の保全に関す
1074 る基本となるべき計画(以下この章において「基本計画」という。)を策定しなければならない。
1075 2,3
1076
1077 (略)
1078
1079 (瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画)
1080 第4条
1081
1082 関係府県知事は,基本計画に基づき,当該府県の区域において瀬戸内海の環境の保全に関
1083
1084 し実施すべき施策について,瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画(以下この章において「府
1085 県計画」という。)を定めるものとする。
1086 2〜5
1087
1088 (略)
1089
1090 (埋立て等についての特別の配慮)
1091 第13条
1092
1093 関係府県知事は,瀬戸内海における公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第2条
1094
1095 第1項の免許又は同法第42条第1項の承認については,第3条第1項の瀬戸内海の特殊性につ
1096 き十分配慮しなければならない。
1097
1098
1099 (略)
1100
1101 - 34 -
1102
1103 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1104
1105 - 35 -
1106
1107 [国際関係法(公法系)]
1108 〔第1問〕(配点:50)
1109 X国は,国内法で基線から12海里までを領海,24海里までを接続水域,200海里までを排
1110 他的経済水域(以下「EEZ」という。)と定め,各海域に対して適用される国内法令を制定し,
1111 施行した。X国は,同国EEZ内での漁業活動を許可に基づき外国人にも認めている。他方,X国
1112 は,関税に関する限り,領海及び接続水域だけでなくEEZの海域をも同国関税法の適用区域と定
1113 め,漁船燃料用の軽油の無許可での持込み及び販売を禁止し,違反者に重い罰則を科すことを定め
1114 ていた。X国は,海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。)批准時に「国
1115 連海洋法条約第56条に定める沿岸国の主権的権利及び管轄権には,排他的経済水域における外国
1116 船舶の商業活動に対する関税法の適用が含まれる。」という宣言を付した。
1117 Y国の登録船舶A号,B号及びC号は,X国のEEZ内で操業する漁船に対して漁船燃料用軽油
1118 を販売することを目的とした船舶であり,A号は,X国基線から11海里の海域で漁業活動中でな
1119 い漁船に漁船燃料用軽油を販売しているところをX国沿岸警備当局の巡視艇に発見され,関税法違
1120 反で拿捕された。また,B号は,基線から20海里の海域で,C号は,基線から100海里の海域
1121 で同様の販売行為により拿捕された。これらの船舶及び乗組員は,X国の港に連行された後,関税
1122 法違反で起訴され,司法手続においてそれぞれ有罪を宣告され,漁船燃料用軽油は没収された。
1123 以上の事実を踏まえて,以下の設問に答えなさい。なお,X国とY国は,共に国連海洋法条約の
1124 当事国である。また,国連海洋法条約第292条に定める迅速な釈放の問題には触れなくてよい。
1125 〔設
1126
1127 問〕
1128
1129 1.X国が国連海洋法条約批准時に付した宣言の国際法上の効力について説明しなさい。
1130 2.X国によるY国の登録船舶A号,B号及びC号に対する各措置について,国際法上どのよう
1131 に評価できるか,沿岸国が領海,接続水域及びEEZのそれぞれにおいて有する管轄権の違い
1132 を踏まえて,説明しなさい。
1133 3.Y国の登録船舶C号に関する事件をX・Y両国は,合意により国際海洋法裁判所に付託した。
1134 Y国の請求は,海洋の使用に対するY国の自由及びX国関税法に服さないY国の権利が侵害さ
1135 れたことの宣言と,これらの侵害から生じたY国の損害の賠償を求めるものであった。本件が,
1136 国連海洋法条約第295条に定める,「国内的な救済措置を尽くすことが国際法によって要求
1137 されている場合」に当たらないとすれば,それはどのような理由によるものかをY国の請求内
1138 容から説明しなさい。
1139
1140 - 36 -
1141
1142 〔第2問〕(配点:50)
1143 A国にあるB国大使館が,同大使館の敷地内に通常大使館にはあり得ないような遊戯施設を建設
1144 して,A国に在留するB国民に開放した。A国は,そのような遊戯施設は,外交機能に関わるもの
1145 ではなく,大使館の敷地内の建造物であるとはいえ,不可侵は認められないと主張している。
1146 ところで,B国は,当該遊戯施設を建設するに当たり,A国法人である甲建設会社(以下「甲」
1147 という。)と契約して建設を委ねた。建設が終了して建造物がB国に引き渡されても,B国は,契
1148 約にあるとおりの建設代金を甲に支払わないでいる。そこで甲は,B国を相手としてA国の国内裁
1149 判所(以下「A国裁判所」という。)に,建設代金の支払を求める訴えを提起した。B国は,主権
1150 免除を理由として,A国の裁判管轄権は及ばないと主張した。A国裁判所は,B国の主権免除の主
1151 張を認めず,B国に対して不履行となっている代金債務の支払を命じ,判決は確定した。しかし,
1152 B国は,代金を支払わないでいる。
1153 さらに,この遊戯施設で,小規模な火災が発生した。そこで,A国警察は,火災現場の実況見分
1154 を求めた。
1155 その後,B国大使館のある地域で大規模な災害が発生した。このためB国は,当該遊戯施設をB
1156 国民だけでなく,全ての者に開放して避難所としての利用に供した。また,人命救助や復旧の目的
1157 で,A国の同意を得てB国から軍隊を派遣し,B国大使館の敷地内での人命救助や損壊している建
1158 物などの復旧に従事させた。ところが,B国軍隊による人命救助や復旧活動が行われている際に,
1159 B国軍隊が操作していたクレーンが倒れるという事故があり,この事故により遊戯施設に避難して
1160 いたA国民である乙が傷害を負った。乙は,B国を相手として,A国裁判所に損害賠償を請求する
1161 訴えを提起した。
1162 以上の事実を踏まえて,以下の設問に答えなさい。
1163 〔設
1164
1165 問〕
1166
1167 1.遊戯施設を建設した甲がB国を代金債務の支払を求めて訴えた裁判で,A国裁判所は,B国
1168 の主張する主権免除を認めなかったことについて,あなたの評価を述べなさい。
1169 2.A国裁判所は,B国に対して代金の支払を命じた判決に基づき,B国大使館がA国内の銀行
1170 に開設している銀行口座を差し押さえることができるか論じなさい。
1171 3.A国警察から火災現場の実況見分を求められたことに対して,B国は不可侵を理由にこれを
1172 拒否できるか論じなさい。
1173 4.B国軍隊の行為により傷害を負った乙が,A国裁判所に,B国を相手として損害賠償を請求
1174 する訴えを提起しているが,裁判管轄権について,A国裁判所は,どのような判断を下すと考
1175 えるか論じなさい。
1176
1177 - 37 -
1178
1179 - 38 -
1180
1181 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1182
1183 - 39 -
1184
1185 [国際関係法(私法系)]
1186 〔第1問〕(配点:50)
1187 甲国人夫A及び甲国人妻Bは,20年前に来日し,以後,日本において生活をしていた。Aは,
1188 来日後しばらくして知り合った甲国人女性との間に子Xをもうけたが,Xを認知していなかった。
1189 Xが出生以来日本において生活をしている甲国人であるとして,以下の設問に答えなさい。
1190 なお,甲国法は,日本の後見及び保佐に相当する制度を有するほか,次の@からBの趣旨の規定
1191 を有している。
1192 @
1193
1194 子は,父の死亡を知った日から2年以内に限り,検察官を被告として認知の訴えを提起する
1195 ことができる。
1196
1197 A
1198
1199 認知をするには,父が被後見人であるときであっても,その後見人の同意を要しない。
1200
1201 B
1202
1203 夫婦の一方が被後見人となったときは,他の一方はその後見人となる。
1204
1205 〔設
1206
1207 問〕
1208
1209 1.Aは,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に陥った。本設問1との関係では甲
1210 国の国際私法からの反致はないものとして,次の問いに答えなさい。
1211
1212
1213 Bの請求により,日本の裁判所がAにつき後見開始の審判をする場合,いかなる国の法を準
1214 拠法とすべきか。
1215
1216
1217
1218 Aにつき後見開始の審判をした場合,日本の裁判所は,いかなる国の法を準拠法としてBを
1219 後見人として選任することができるか。
1220
1221
1222
1223 日本の裁判所がAの後見人としてBを選任した場合,AによるXの任意認知につき後見人B
1224 の同意は必要か。
1225
1226 2.Aは,その後,Xを認知することなく死亡し,Xは,Aの死亡を直ちに知った。Xは,Aの死
1227 亡後2年6月を経過した時に,検察官を被告として日本の裁判所に認知の訴えを提起した。甲国
1228 の国際私法P条が,「父による子の認知は,出生当時の父の本国法,認知の当時における父の本
1229 国法又は子の本国法若しくはその常居所地法による。父が認知前に死亡したときは,その死亡の
1230 当時におけるその本国法を父の本国法とする。」と規定しているとすると,この訴えは適法か。
1231
1232 - 40 -
1233
1234 〔第2問〕(配点:50)
1235 Yは,甲国に主たる営業所を有する甲国の会社である。Yは,インターネット上に法人及び個人
1236 顧客向けに英語のほかに日本語表記のウェブサイト(以下「本件サイト」という。) を開設し, 本
1237 件サイトを通じて日本及びその他の国において自社製品であるG等の購入の問合せ及び購入ができ
1238 るようにしている。Yは,日本の弁護士を日本における代表者として定めて外国会社としての登記
1239 をし,本件サイトを通じた継続的な取引を行っているが,日本には営業所や財産を一切有していな
1240 いものとして,以下の設問に答えなさい。
1241 〔設
1242
1243 問〕
1244
1245 1.Xは,日本に主たる営業所を有する日本の会社である。Xは,本件サイトからGの購入の問合
1246 せをし,Yの主たる営業所から日本に派遣された担当者と交渉の上,Yと東京において売買契約
1247 を締結した(以下「本件売買契約」という。)。Xは,Gを受領してYに代金を支払ったが,Gに
1248 瑕疵があったため,損害を被った。Xは,Yに対して債務不履行を理由として損害賠償を求める
1249 訴えを日本の裁判所に提起した。甲国は,国際物品売買契約に関する国際連合条約(平成20年
1250 条約第8号。以下「条約」という。) の締約国ではないとして,次の問いに答えなさい。
1251
1252
1253 XとYとの間には裁判管轄に関する合意はなく,民事訴訟法第3条の3第1号に掲げる管轄
1254 原因が日本にないとした場合に,この訴えに関して日本の裁判所の国際裁判管轄権を基礎付け
1255 る事由はあるか。
1256
1257
1258
1259 法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)によれば,本件売買契約の準拠法が日
1260 本法となるとすると,日本の裁判所は,Xの請求につき条約を適用することができるか。
1261
1262 2.日本に常居所を有する個人Zは,自宅のパソコンを使って私用のために本件サイトの個人顧客
1263 向けページを通じてGを購入する意図で注文を送信して代金を支払った。ところが,本件サイト
1264 では注文の送信前に申込内容の確認を行う措置が講じられておらず,そのため,Zは,申込内容
1265 を確認できないままGと類似した別の商品Hの注文を送信してしまっていた。その結果,Yから
1266 HがZ宅に送られてきた。
1267 日本法には,事業者のウェブサイトにおいて消費者の意思表示の際にその内容を確認する措置
1268 が講じられていない限り,当該ウェブサイトを通じて締結された電子消費者契約の消費者の意思
1269 表示に民法第95条の要素の錯誤があった場合に,消費者に同条ただし書の重大な過失はないも
1270 のと扱うP法Q条の強行規定がある。他方,甲国法には,日本の民法第95条と同様の内容の要
1271 素の錯誤に関する規定はあるが,上記のような電子消費者契約の特則に係る規定はない。本件サ
1272 イト上には「商品の購入に関するお客様と弊社Yとの間に起きるあらゆる紛争については,甲国
1273 の国内法がこれに適用されることに同意していただいたものとします。」との表示があり,この
1274 表示に基づきZとYが甲国法を準拠法として合意していたとすると,日本の裁判所は,ZがYに
1275 支払った代金の返還をめぐる争いについてP法Q条を適用することができるか。
1276
1277 - 41 -
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