1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒 産 法]
10 〔第1問〕(配点:50)
11 次の事例について,
12 以下の設問に答えなさい。
13
14
15 【事
16
17 例】
18 A株式会社(以下「A社」という。
19
20 )は,
21 コンピュータ・ソフトウェアの製造及び販売を業と
22
23 する会社であり,
24 平成20年頃には,
25 年間で50億円を超える売上げを計上するなど,
26 順調な業
27 績を維持していたが,
28 平成22年末頃以降は,
29 徐々にその経営が悪化し,
30 平成23年9月5日に
31 は,
32 破産手続開始の申立てをするに至り,
33 同月15日,
34 破産手続開始の決定を受け,
35 弁護士Xが
36 破産管財人に選任された。
37
38
39 〔設
40
41 問〕
42
43 以下の1及び2については,
44 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
45
46
47
48 1.A社は,
49 平成22年12月頃,
50 売上げの半分以上を占めていた取引先が破綻し,
51 当該取引先
52 からの支払が突然途絶えたため,
53 以後は,
54 その資金繰りが悪化した。
55
56
57 そこで,
58 A社は,
59 メインバンクを含む金融機関に新規の融資を求めたものの,
60 十分な額の融
61 資を得ることができそうになかったため,
62 取引先からの紹介を受け,
63 いわゆる事業再生ファン
64 ドであるBアセット株式会社(以下「B社」という。
65
66 )と交渉した結果,
67 将来の他社とのM&
68 Aを念頭に置いてB社から最大で20億円をめどに融資を受けられることとなり,
69 まず,
70 平成
71 23年2月1日に5億円の融資を受ける旨の契約をB社との間で締結し,
72 その融資は,
73 同日,
74
75 実行された(以下においては,
76 利息については考慮せず,
77 当該契約に基づくA社の債務額は,
78
79 5億円とする。
80
81 )。
82
83 この契約においては,
84 A社は,
85 同年8月1日をもって,
86 借入金を返済する旨
87 の条項が含まれていた。
88
89
90 A社によるスポンサー企業等の開拓は,
91 その後も精力的に続けられたが,
92 業界の景気の更な
93 る悪化などのため,
94 適当なスポンサー企業等を獲得するには至らなかった。
95
96 その結果,
97 A社の
98 経営状況は,
99 同年6月頃から深刻さを増したものの,
100 B社からの上記の5億円の融資金の残り
101 を利用することができたため,
102 一部の金融機関に対する債務の返済計画を相手方の同意を得て
103 変更した以外は,
104 全ての債務を約定どおり弁済していた。
105
106
107 一方,
108 B社は,
109 同年6月頃には,
110 A社への上記の融資は失敗であり,
111 その回収に向けた準備
112 が必要であるとの判断に至ったことから,
113 当該融資の段階でその担保のために抵当権の設定を
114 受けていたA社所有の不動産の評価を進めたところ,
115 2億円しか満足を受けられる見込みがな
116 いことが明らかになった。
117
118 そこで,
119 同年7月25日,
120 B社の代表取締役らがA社を訪れ,
121 5億
122 円の融資の返済期日を同年9月1日に変更するとともに,
123 その見返りとして,
124 A社の有する複
125 数の売掛金債権(全てが優良債権であり,
126 その評価額は,
127 2億円であった。
128
129 )を追加担保(譲
130 渡担保)としてB社に差し入れることを求めた。
131
132 A社の代表取締役であるCは,
133 同年7月25
134 日,
135 やむを得ず,
136 これに応じて,
137 当該売掛金債権について債権譲渡担保を設定し(以下「本件
138 債権譲渡担保設定行為」という。
139
140 ),
141 A社とB社は,
142 同月28日に債権譲渡登記を経由した。
143
144
145 A社は,
146 この当時,
147 同年8月中旬までに弁済期が到来する債務を幾つか負担し(この他には,
148
149 同年8月中に弁済期が到来する債務はなかった。
150
151 ),
152 その総額は,
153 1億円に達していたが,
154 B社
155 に対する債務の支払の猶予を受けたことで余裕ができたため,
156 何とか,
157 これらの債務を全額決
158 済することができた。
159
160 ただし,
161 CらA社の経営陣は,
162 同年7月末時点で,
163 A社の余裕資金はぎ
164 りぎり1億円であり,
165 他方で,
166 同年8月中に新たな弁済資金の調達の見込みがなかったため,
167
168 同年8月中旬には弁済資金が枯渇するものと予想していた。
169
170 そして,
171 実際にも,
172 その予想どお
173 りに資金状況は推移し,
174 返済期日が同年9月1日に変更されたB社に対する上記の債務の支払
175 をすることができなかった。
176
177
178 以上の場合において,
179 A社の破産手続開始後,
180 A社がB社のためにした本件債権譲渡担保設
181 - 2 -
182
183 定行為をXが否認することができるかどうかについて,
184 予想されるX及びB社の主張を踏まえ
185 て,
186 論じなさい。
187
188
189 2.A社は,
190 平成23年5月27日,
191 株主総会を開催し,
192 @取締役としてDらを選任すること,
193
194 A定款を変更して,
195 本店を移転すること,
196 B1株当たり5000円の配当をすることをそれぞ
197 れ決議した。
198
199 ところが,
200 A社の株主Eは,
201 同年7月29日,
202 当該株主総会の決議の取消しの訴
203 えを提起した。
204
205
206 なお,
207 この訴訟においては,
208 DがA社を代表して訴訟追行をしていた。
209
210
211 以上の場合において,
212 当該訴訟は,
213 A社に対する破産手続開始の決定によってどのような影
214 響を受けるかについて,
215 論じなさい。
216
217
218
219 - 3 -
220
221 〔第2問〕(配点:50)
222 次の事例について,
223 以下の設問に答えなさい。
224
225
226 【事
227
228 例】
229 金属製品のリサイクル業等を営むA株式会社(以下「A社」という。
230
231 )は,
232 債権者50社に対
233
234 して総額約10億円の負債を負っていたことから,
235 破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそ
236 れがあるとして,
237 平成23年5月30日に再生手続開始の申立てを行ったところ,
238 同日に監督委
239 員として弁護士Xが選任された上,
240 同年6月3日に再生手続開始の決定を受けた。
241
242
243 〔設
244
245 問〕
246
247 以下の1及び2については,
248 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
249
250
251
252 1.A社は,
253 平成23年1月21日,
254 その主要な取引銀行であるB銀行から1億円の融資を受け
255 るに当たり,
256 その担保として,
257 B銀行に対し,
258 取引先のC株式会社(以下「C社」という。
259
260 )
261 外10社に対する金属製品の販売に係る売掛金債権をそれぞれ譲渡した。
262
263 その際,
264 対抗要件の
265 具備については留保し,
266 B銀行がA社を代理して譲渡通知を行うことができる旨の委任がA社
267 からB銀行にされた。
268
269
270 B銀行は,
271 A社が再生手続開始の申立てを行ったことを受け,
272 同年6月1日,
273 上記の売掛金
274 債権の譲渡担保について確定日付のある証書による債務者らに対する譲渡通知をしたものの,
275
276 C社に対する売掛金債権については,
277 この譲渡通知を行うことを失念していた。
278
279 B銀行は,
280 同
281 月13日になってこれに気付いたことから,
282 同日,
283 C社に対し,
284 当該売掛金債権につき確定日
285 付のある証書によって譲渡通知をするとともに,
286 同月15日には,
287 C社から確定日付のある証
288 書による承諾も,
289 取得した。
290
291
292 以上の場合において,
293 A社がB銀行に対してC社に対する売掛金債権がA社に帰属すること
294 を主張することができるかどうかについて,
295 B銀行の譲渡通知及びC社の承諾がそれぞれ再生
296 手続上どのように取り扱われるかを踏まえて,
297 論じなさい。
298
299
300 2.A社は,
301 財産評定を完了し,
302 平成23年7月29日,
303 裁判所に対し,
304 財産目録及び貸借対照
305 表を提出した。
306
307 これらによれば,
308 A社の再生手続開始の時点における資産総額は,
309 3億円であ
310 り,
311 共益債権,
312 一般優先債権及び破産手続において清算するための費用等を控除して算定した
313 予想破産配当率は,
314 10%とされていた。
315
316 Xが調査を進めたところ,
317 A社について,
318 主要な取
319 引先であるD株式会社(以下「D社」という。
320
321 )から再生債権である未払の売掛金を即時に弁
322 済しなければ新規の取引を全て打ち切る旨を告げられたため,
323 やむを得ず,
324 再生手続開始後財
325 産評定前の段階で,
326 D社に対し,
327 裁判所に無断で,
328 500万円の弁済をしていたという事実が
329 当該財産評定後に判明した。
330
331
332 なお,
333 当該財産評定においては,
334 上記の500万円の弁済後の資産が計上されていた。
335
336
337 その後,
338 A社は,
339 同年8月29日,
340 裁判所に対し,
341 再生計画案を提出した。
342
343 当該再生計画案
344 における権利の変更の一般的基準の要旨は,
345 次の@からCまでのとおりであった。
346
347
348 @
349
350 再生債権の元本並びに再生手続開始の決定の日の前日までの利息及び遅延損害金の合計額
351
352 のうち,
353 10万円までの部分は,
354 免除を受けず,
355 10万円を超える部分は,
356 再生計画の認可
357 の決定が確定した時にその95%の免除を受ける。
358
359
360 A
361
362 再生手続開始の決定の日以後の利息及び遅延損害金は,
363 再生計画の認可の決定が確定した
364
365 時に全額の免除を受ける。
366
367
368 B
369
370 権利変更後の債権額のうち,
371 10万円までの部分は,
372 再生計画の認可の決定が確定した日
373
374 から2か月以内に支払う。
375
376
377 C
378
379 権利変更後の債権額のうち,
380 10万円を超える部分は,
381 均等額で5回に分割し,
382 平成24
383
384 年から平成28年までの間,
385 毎年7月末日限り,
386 支払う。
387
388
389 以上の事実関係を踏まえ,
390 裁判所がA社の提出した再生計画案を決議に付すかどうかを判断
391 するに当たり,
392 どのような法律上の問題点があるかを論じ,
393 あわせて,
394 XがA社に対してどの
395 - 4 -
396
397 ような是正措置を採るように勧告すべきかについて,
398 論じなさい。
399
400
401
402 - 5 -
403
404 - 6 -
405
406 論文式試験問題集[租
407
408 - 7 -
409
410 税
411
412 法]
413
414 [租
415
416 税
417
418 法]
419
420 〔第1問〕(配点:50)
421 上場会社であるX社(暦年を事業年度とする内国法人。
422
423 )は,
424 同社の知名度を上げるとともに,
425
426 同社の新規投資先発掘を目的として,
427 X社の商号を冠した「X起業大賞」という起業企画コンペを
428 行った。
429
430 X社は,
431 平成21年10月に,
432 X社が大賞受賞者と起業支援のための起業支援契約を締結
433 することなどを盛り込んだ募集要項を発表,
434 平成22年10月に優秀者5名を決定し,
435 うち1名を
436 最優秀者としてX起業大賞を授与することとした。
437
438
439 甲(居住者)は,
440 子供の頃から,
441 いつかは自分が発明したロボット製品を世界中に広めたいとい
442 う夢を持ち,
443 工学系大学院修了後は,
444 実家に住み,
445 叔父が経営するY精密機械工場(以下「Y」と
446 いう。
447
448 )で働きながら,
449 実家の物置を改装した作業場で,
450 大学院在学中に自分が取った特許技術を
451 応用した比較的低価格で製造可能な介護支援用ロボット「OKくん」の商品開発を続けていた。
452
453 甲
454 は,
455 ロボット専門誌でX起業大賞のことを知り,
456 ここが人生の正念場と考えて起業の決意を固め,
457
458 平成21年末にYを退職し,
459 その後,
460 退職時にYから受けた退職金100万円を軍資金とし,
461 叔父
462 の好意でYの工場の一角と工作機械を使わせてもらい,
463 OKくんの商品性の改良と企画書作りに専
464 念した。
465
466 甲は,
467 平成22年3月の締切りぎりぎりにOKくん起業企画書を仕上げて応募し,
468 同年4
469 月から発表までの間も,
470 父親から300万円を借金してOKくんの商品性の改良にまい進していた
471 ところ,
472 最優秀者に選ばれた。
473
474
475 平成22年11月1日に行われたX起業大賞表彰式において,
476 優秀者5名に対して,
477 X社から奨
478 励金として500万円が入った金一封が授与され,
479 最優秀者甲には,
480 この金一封に加えて,
481 甲を宛
482 先とし,
483 X社代表取締役社長名義で記名押印され,
484 「貴殿がX起業大賞に応募したOKくん起業企
485 画書を最優秀と認め,
486 奨励金500万円を授与するとともに,
487 @正賞として,
488 総額で最高5000
489 万円までの起業支援金を授与し,
490 A副賞として,
491 貴殿がX社のビジネス・パートナーとなった証と
492 して,
493 X社普通株式1000株を授与する。
494
495 また,
496 X社は,
497 本日付けで募集要項記載の起業支援契
498 約を貴殿と締結したことを確認する。
499
500 」と記載されたX起業大賞目録が授与された。
501
502
503 「起業支援契約」
504 の主要な条項は下記のとおりである。
505
506
507
508 第1条(起業支援金支払条件)
509 X社は,
510 甲に対し,
511 本契約に定める条件に従って,
512 X起業大賞目録記載の正賞として,
513 起業
514 支援金を支払う。
515
516 ただし,
517 X社は,
518 OKくん起業企画書(以下「甲起業企画書」という。
519
520 )の企
521 画を実行するための費用として,
522 本契約有効期間中に発生したものにつき,
523 甲がX社に対して
524 その請求書又は領収書を提出することを条件として,
525 当該費用相当額を,
526 本条に基づく起業支
527 援金として,
528 累積合計5000万円に至るまで支払うものとする。
529
530
531 第2条(協議及び独占販売権)
532 甲は,
533 甲起業企画書の企画達成状況につき,
534 本契約有効期間中,
535 少なくとも1か月に1回,
536
537 更にX社が希望する場合には随時,
538 X社に報告しなければならない。
539
540 X社は,
541 甲起業企画書記
542 載の商品につき,
543 別途合意する売買条件で,
544 本契約の期間満了日前でX社が指定する日(以下
545 「独占販売契約開始日」という。
546
547 )から2年間の独占販売権を甲から受ける権利を有する。
548
549
550 第3条(起業支援金残額の取扱い)
551 第1条の規定にかかわらず,
552 @甲が独占販売契約開始日までに同条に基づいてX社に請求し
553 た起業支援金の累積合計が5000万円に満たなかった場合には,
554 X社は甲に対し,
555 未請求分
556 の起業支援金残額を独占販売契約開始日に支払うものとするが,
557 AX社が本契約の期間満了日
558 までに独占販売契約開始日を指定しなかった場合には,
559 甲はX社に対し,
560 未請求分の起業支援
561 金残額の支払を請求することはできない。
562
563
564 - 8 -
565
566 第4条(契約期間)
567 本契約の有効期間は,
568 平成22年11月1日から,
569 @X社が第2条に基づいて独占販売契約
570 開始日を指定した場合には,
571 X社が指定した独占販売契約開始日の前日,
572 又はA平成23年1
573 1月1日のいずれか早い方の日までとする。
574
575
576
577 甲は,
578 奨励金500万円で父親からの借金の返済もでき,
579 平成22年11月にはようやく念願の
580 新作業場を賃借し,
581 アルバイトを雇って試作品の製作を開始した。
582
583 その後のOKくん発売までの道
584 のりは次のとおりであった。
585
586
587 平成22年
588 11月〜12月
589
590 甲は,
591 新作業場の賃料,
592 人件費及び機材購入費の請求書を添付して,
593 起業支
594 援金800万円の請求書をX社宛てに発行し,
595 X社は即時に請求額を支払った。
596
597
598
599 平成23年
600 1月〜3月
601
602 甲の新作業場で製作したOKくんの試作品をX社の技術研究所に持ち込み,
603
604 耐久性,
605 安全性等のテストを行い,
606 3月末には上々のテスト結果が得られた。
607
608
609
610 4月
611
612 X社は,
613 平成23年7月1日を独占販売契約開始日に指定した。
614
615
616
617 1月〜6月
618
619 甲は,
620 新作業場の賃料,
621 人件費及び機材購入費の請求書又は領収書を添付し
622 て,
623 起業支援金500万円の請求書を毎月1回,
624 月初めにX社宛てに発行し,
625
626 X社は甲に対し,
627 この半年間で合計3000万円の起業支援金を支払った。
628
629
630
631 6月
632
633 甲とX社は,
634 X社をOKくんの独占販売代理店に任命する2年間の独占販売
635 契約を締結した。
636
637 甲は,
638 新作業場では専ら製造原価引下げのための改良作業を
639 行うこととしていたので,
640 独占販売契約開始日以降の製造能力を確保するため
641 に,
642 起業を応援してくれた叔父に恩返しをしたいということもあり,
643 Yと,
644 取
645 りあえず1年間の製造委託契約を締結した。
646
647
648
649 7月1日
650
651 独占販売契約開始日。
652
653 X社は甲に対し,
654 平成23年6月30日時点の起業支
655 援金未請求額1200万円を支払った。
656
657
658
659 7月〜
660
661 X社は,
662 独占販売契約締結後速やかに,
663 平成23年の敬老の日を発売開始日
664 として,
665 OKくんの予約キャンペーンを開始したところ,
666 OKくんは爆発的な
667 ヒット商品となった。
668
669
670
671 甲に対する副賞のX社普通株式1000株は,
672 X社側の必要手続や甲側の証券口座開設手続等い
673 ろいろな手続に時間が掛かり,
674 結局,
675 平成23年4月1日にX社から甲に引き渡された。
676
677 なお,
678 甲
679 が表彰式においてX起業大賞目録を受け取った日である平成22年11月1日におけるX社普通株
680 式の株価は,
681 1株2万円であったが,
682 その後急落し,
683 甲がX社から同社普通株式1000株の引渡
684 しを受けた日である平成23年4月1日の終値は,
685 1株1万円であった。
686
687 しかし,
688 OKくんが爆発
689 的なヒット商品となったことから,
690 同年12月末には,
691 1株3万円まで株価が上昇した。
692
693
694 以上の事案について,
695 次の設問に答えなさい。
696
697 ただし,
698 租税特別措置法は考慮しないこととする。
699
700
701
702 - 9 -
703
704 〔設問1〕
705 あなたは,
706 甲から,
707 次に掲げるX起業大賞の賞金・賞品は,
708 それぞれ,
709 所得税法上,
710 どの年に,
711
712 幾らの金額が,
713 いかなる種類の所得として取り扱われるかについて意見を求められた。
714
715 あなたの意
716 見を,
717 理由を明らかにして述べなさい。
718
719
720
721
722 奨励金
723
724
725
726 起業支援金
727
728
729
730 X社普通株式1000株
731
732 〔設問2〕
733 X社がX起業大賞の受賞者(優秀者及び最優秀者)に対して支払う奨励金及び起業支援金は,
734 法
735 人税法上,
736 どの年度においてどのように取り扱われるか。
737
738 根拠条文と理由を付して答えなさい。
739
740
741
742 - 10 -
743
744 〔第2問〕(配点:50)
745 A(居住者)は,
746 昭和40年頃からK市において小売業を営んできた。
747
748 Aは,
749 平成20年中に,
750
751 小売業の一部であるP店での事業を法人組織に切り換えることにしX株式会社(暦年を事業年度と
752 する内国法人。
753
754 以下「X社」という。
755
756 )を設立し,
757 P店の店舗,
758 敷地,
759 在庫商品及び売掛金(以下
760 それぞれ「P建物」,
761
762 「P土地」,
763
764 「P商品」及び「P売掛金」という。
765
766 )をX社に譲渡した(以下「本
767 件法人成り」という。
768
769 )。
770
771 P建物及びP土地は,
772 Aが平成10年に取得したものであり,
773 X社への譲
774 渡の時においてP建物の簿価は5億円,
775 時価も5億円,
776 譲渡対価は1億円であり,
777 P土地の簿価は
778 5億円,
779 時価は6億円,
780 譲渡対価は4億円であった。
781
782 また,
783 P商品の簿価総額は8000万円,
784 通
785 常の販売価額の総額は1億円,
786 譲渡対価は2000万円であった。
787
788 P売掛金の譲渡対価はその債権
789 額どおり1000万円であった。
790
791 なお,
792 P売掛金の基礎となる売買契約の対象商品は,
793 P売掛金の
794 X社への譲渡の時までに,
795 全てAから買主に引渡済みであった。
796
797
798 Aは,
799 本件法人成りの後もP店以外で営んできた小売業を,
800 平成22年末をもって全面的に廃業
801 したが,
802 平成23年1月1日に,
803 前年まで小売店のうちQ店の敷地として使用してきた土地(以下
804 「Q土地」という。
805
806 )をX社に贈与し(以下「本件贈与」という。
807
808 ),
809 また,
810 同日以降,
811 前年までQ
812 店の店舗として使用してきた建物(以下「Q建物」という。
813
814 )をX社に月額5万円の賃料で貸し付
815 けることにした(以下「本件貸付け」という。
816
817 )。
818
819 本件贈与に関しては,
820 AとX社との間で,
821 Q建物
822 の建築に係るAの借入金の残額(1000万円)をX社がAに代わって借入先に支払う旨が合意さ
823 れた。
824
825 Q土地は,
826 Aが平成元年に5000万円で取得したものであり,
827 X社への贈与時の時価は3
828 000万円であった。
829
830 また,
831 K市では平成23年において,
832 Q建物と類似の条件にある貸店舗の賃
833 料相場は月額30万円であった。
834
835
836 以上の事案について,
837 以下の設問に答えなさい。
838
839 ただし,
840 租税特別措置法及び同族会社の行為計
841 算否認規定(所得税法第157条,
842 法人税法第132条)の適用はないものとする。
843
844
845 〔設問1〕
846 本件法人成りに伴う資産の譲渡に係るAに対する所得税の課税関係について,
847 根拠条文を摘示し
848 て検討しなさい。
849
850
851 〔設問2〕
852 平成23年における本件贈与及び本件貸付けに係るAに対する所得税及びX社に対する法人税の
853 課税関係について,
854 根拠条文を摘示して検討しなさい。
855
856
857
858 - 11 -
859
860 - 12 -
861
862 論文式試験問題集[経
863
864 - 13 -
865
866 済
867
868 法]
869
870 [経
871
872 済
873
874 法]
875
876 〔第1問〕(配点:50)
877 A社,
878 B社,
879 C社及びD社(以下「4社」という。
880
881 )は,
882 いずれも石油を原料とする化学製品甲
883 の製造販売をしている。
884
885 国内における甲製造販売業者には,
886 4社のほかにX社,
887 Y社及びZ社があ
888 り,
889 我が国における市場占有率は,
890 上位から順に,
891 X社30%,
892 A社15%,
893 B社14%,
894 Y社1
895 4%,
896 Z社13%,
897 C社6%,
898 D社4%となっているほか,
899 輸入製品が4%となっている。
900
901 上記各
902 社の甲の品質にはほとんど差はない。
903
904 また,
905 輸入製品は,
906 国内製品よりも若干低価格であるものの,
907
908 その分品質がやや劣っていることもあって,
909 購入者は特定の需要者に限られており,
910 ここ10年ほ
911 ど輸入製品の市場占有率に変化はない。
912
913 なお,
914 甲に代替する商品はない。
915
916
917 甲製造販売業者は,
918 甲を直接需要者に販売しており,
919 需要者との間で価格交渉を行い,
920 個別に価
921 格を決定している。
922
923 甲は,
924 石油製品である乙を分解して得られる化学物質を原料としているため,
925
926 乙の市場における価格(以下「乙価格」という。
927
928 )が甲の製造コストに大きく影響する関係にあり,
929
930 従来から,
931 甲製造販売業者は,
932 甲の販売価格を引き上げる際,
933 乙価格の上昇を理由としてきている。
934
935
936 甲の市場占有率の状況は,
937 工場立地等の関係から,
938 東日本地区と西日本地区で大きく異なってお
939 り,
940 X社及びY社は,
941 主に東日本地区において販売しており,
942 A社,
943 B社及びC社は,
944 主に西日本
945 地区において販売しており,
946 Z社は東日本地区でしか,
947 また,
948 D社は西日本地区でしか販売してい
949 ない。
950
951 西日本地区における市場占有率は,
952 上位から順に,
953 A社32%,
954 B社24%,
955 C社14%,
956
957 X社10%,
958 D社10%,
959 Y社8%となっている。
960
961 以上のような市場状況は,
962 ここ十数年変化はな
963 く,
964 各社の製造設備は基本的に従前の取引量を前提としたものとなっているため,
965 短期的に製造量
966 を増やすことは各社とも難しい状況にある。
967
968 また,
969 甲製造販売業者とその需要者との取引は,
970 固定
971 的な関係にあって取引先が変更されることは少ない。
972
973
974 以上のような市場状況の下で,
975 4社は,
976 かねてから,
977 3か月に1回程度の割合で,
978 営業部長によ
979 る会合(以下「部長会」という。
980
981 )を開催し,
982 主として西日本地区における甲の販売に関する情報
983 交換を行っていた。
984
985 平成16年には,
986 乙価格が高騰したため,
987 部長会において,
988 西日本地区におけ
989 る甲の販売価格の値上げについて合意し,
990 この合意に基づいて各社が顧客との値上げ交渉を行い,
991
992 一部顧客との間で値上げに成功したことがあった。
993
994 また,
995 平成18年春頃から再び乙価格が上昇し
996 てきたことから,
997 同年6月に開催された部長会において,
998 西日本地区における甲の販売価格の値上
999 げについて合意し,
1000 この合意に基づいて各社が顧客との値上げ交渉を行い,
1001 一部顧客について同年
1002 8月販売分からの値上げに成功したことがあった。
1003
1004
1005 〔設問1〕
1006 その後,
1007 乙価格は安定していたが,
1008 平成20年に入ってから上昇が続いたことから,
1009 同年6月1
1010 5日に開催された部長会(出席者は,
1011 A社のP部長,
1012 B社のQ部長,
1013 C社のR部長,
1014 D社のS部長)
1015 において,
1016 P部長は,
1017 「A社としては,
1018 乙価格の上昇傾向が深刻なので,
1019 今年の8月販売分から,
1020
1021 西日本地区の顧客に対する甲の販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げたいと考え
1022 ている。
1023
1024 これまでも4社が同調して値上げした場合には,
1025 ある程度値上げに成功しているので,
1026 今
1027 回もB社,
1028 C社,
1029 D社にも同時に値上げをお願いしたい。
1030
1031 」旨を述べたところ,
1032 S部長も賛同した。
1033
1034
1035 これに対して,
1036 Q部長は,
1037 「B社としては,
1038 需要が伸び悩み値下げ要求も出されている中で,
1039 値上
1040 げについて取引先の理解を得ることは難しいと考えている。
1041
1042 値上げは時期尚早である。
1043
1044 」と述べ,
1045
1046 R部長は値上げの是非についての態度を明らかにしなかった。
1047
1048 そのため,
1049 同日の部長会は明確な結
1050 論を出すことなく終了した。
1051
1052
1053 上記部長会を終えて帰社したP部長は,
1054 それまでの経緯から,
1055 「A社が先行して値上げを実施す
1056 れば,
1057 他社も追随するのではないか。
1058
1059 」と考えた。
1060
1061 そこで,
1062 A社は,
1063 以後,
1064 B社,
1065 C社及びD社と
1066 の間で部長会等の会合を開催することなく,
1067 同年8月販売分について西日本地区の顧客との値上げ
1068 - 14 -
1069
1070 交渉を開始した。
1071
1072 もっとも,
1073 A社は,
1074 顧客との交渉開始に先立って,
1075 「8月販売分から甲の販売価
1076 格を1キログラム当たり10円の値上げをすべく,
1077 まず西日本地区の顧客との交渉を開始する。
1078
1079 」
1080 旨の新聞発表を行い,
1081 P部長は,
1082 上記新聞発表と同じ頃に,
1083 Q部長,
1084 R部長及びS部長に対し,
1085
1086 「A
1087 社は,
1088 8月販売分から甲の販売価格を値上げいたします。
1089
1090 」という内容のメールを一方的に送信し
1091 た。
1092
1093 B社,
1094 C社及びD社は,
1095 いずれもA社の値上げ交渉開始から数日ほど遅れて,
1096 同年8月販売分
1097 について西日本地区の顧客との値上げ交渉を開始し,
1098 結果として,
1099 4社ともおおむね1キログラム
1100 当たり10円近い値上げに成功した。
1101
1102 Y社は,
1103 上記新聞発表によってA社の値上げを知り,
1104 直ちに
1105 同年8月販売分について西日本地区の顧客との値上げ交渉を行い値上げに成功した。
1106
1107
1108 この場合の4社及びY社の行為は,
1109 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独
1110 占禁止法」という。
1111
1112 )に違反するといえるか検討しなさい。
1113
1114
1115 〔設問2〕
1116 平成21年になると乙価格は低下し,
1117 しばらく安定していたが,
1118 平成22年暮れ頃から上昇に転
1119 じ,
1120 平成23年になってもその傾向に変化はなかった。
1121
1122 4社は,
1123 同年2月15日に開催された部長
1124 会(出席者は,
1125 A社のE部長,
1126 B社のF部長,
1127 C社のG部長,
1128 D社のH部長)において,
1129 乙価格の
1130 上昇によるコスト増を甲の販売価格に転嫁する必要があるとの結論に達し,
1131 同年4月販売分から,
1132
1133 西日本地区の顧客に対する甲の販売価格を1キログラム当たり10円をめどに引き上げること,
1134 顧
1135 客との値上げ交渉の進捗状況について情報交換するために,
1136 同年4月10日に再度部長会を開催す
1137 ることを合意した。
1138
1139
1140 上記2月15日の部長会を終えて帰社したG部長は,
1141 部長会における合意の内容を上司に報告し
1142 たところ,
1143 「独占禁止法上の問題があるのではないか。
1144
1145 以後,
1146 他社とは関わりを持たないように。
1147
1148 」
1149 との指示を受けた。
1150
1151 そこで,
1152 C社は,
1153 他の3社に何ら連絡をすることなく,
1154 同年4月販売分につい
1155 て西日本地区の顧客との値上げ交渉を行わなかった。
1156
1157 また,
1158 G部長は,
1159 急に別の予定が入ったとい
1160 う虚偽の連絡を入れて,
1161 同年4月10日に開催された部長会を欠席した。
1162
1163 C社を除く3社は,
1164 同年
1165 4月販売分について西日本地区の顧客との値上げ交渉を行った。
1166
1167 その結果,
1168 A社及びB社は,
1169 一部
1170 顧客との間で値上げに成功したが,
1171 D社は,
1172 大口取引先に拒否されるなどしたために,
1173 結果として
1174 値上げに成功しなかった。
1175
1176
1177 この場合の4社の行為は,
1178 独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
1179
1180
1181
1182 - 15 -
1183
1184 〔第2問〕(配点:50)
1185 X社は,
1186 特殊な植物から抽出した栄養成分を主とする栄養機能食品(注)αを製造・販売する大
1187 手食品メーカーであり,
1188 自社製品を甲というブランド名で販売している。
1189
1190
1191 αは,
1192 近年の健康志向の増大により市場が拡大しているが,
1193 独自の製法を必要とすること,
1194 原料
1195 である植物の調達が容易ではないことから,
1196 αを製造・販売するメーカーは6社に限定されている。
1197
1198
1199 また,
1200 価格より品質を優先する消費者の傾向とあいまって,
1201 メーカー間の価格競争はほとんど行わ
1202 れていない。
1203
1204 なお,
1205 αの類似品としてβがあり,
1206 栄養機能食品の対象となる栄養成分はαとほとん
1207 ど異ならないが,
1208 当該栄養成分を抽出する植物が異なることから,
1209 多くの消費者にとってβの栄養
1210 機能はαよりも大きく劣ると考えられており,
1211 仮にαの価格が大幅に引き上げられたとしても,
1212 α
1213 に代えてβを購入しようとする消費者はほとんど存在しない。
1214
1215
1216 甲は,
1217 他社製品に比べて栄養成分の体内吸収率が高いこと,
1218 X社の知名度の高さ,
1219 テレビでの有
1220 名タレントを使ったコマーシャルなどから人気商品となっており,
1221 その市場占有率は40%で第1
1222 位で,
1223 2位以下を大きく引き離している。
1224
1225 なお,
1226 他社の市場占有率は,
1227 A社18%,
1228 B社15%,
1229
1230 C社11%,
1231 D社9%,
1232 E社7%である。
1233
1234 そして,
1235 甲を指名して購入する消費者も少なくないこと
1236 から,
1237 栄養機能食品の販売業者にとっては,
1238 これを取りそろえておくことが不可欠の製品となって
1239 いる。
1240
1241
1242 甲の流通経路は,
1243 卸売業者を経て,
1244 薬事法上の許可を受けた薬局及び店舗販売業者(以下「薬
1245 局・薬店」という。
1246
1247 )の店頭で販売されるものが9割以上を占めているほか,
1248 インターネットを
1249 通じた販売(以下「ネット販売」という。
1250
1251 )が新たに登場してきている。
1252
1253 に関しては,
1254 X社は,
1255
1256 資本・人員・保管設備などの良否を勘案して,
1257 各都道府県ごとに卸売業者1社を選んで代理店とし,
1258
1259 それらの者のみに甲を販売している(以下「代理店卸売業者」という。
1260
1261 )。
1262
1263 代理店卸売業者は,
1264 各都
1265 道府県を担当地域として当該地域内で積極的な販売を行うよう義務付けられているが,
1266 他の都道府
1267 県での販売に特に制約は課されていない。
1268
1269 に関しては,
1270 インターネットのホームページを通じて
1271 注文を受け,
1272 宅配業者が配送するもので,
1273 無店舗のインターネット販売業者(以下「ネット販売業
1274 者」という。
1275
1276 )がこれを手掛けている。
1277
1278 その場合,
1279 ネット販売業者は,
1280 薬局・薬店相互の間で在庫
1281 調整や換金の必要性などから低価格で取引されている甲を,
1282 薬局・薬店から購入してその販売に充
1283 てている。
1284
1285 ネット販売は,
1286 店舗や人員のコストが節約できることなどから,
1287 薬局・薬店の店頭での
1288 販売価格に比べて5%〜10%ほど安いことが多く,
1289 最近,
1290 その売上高は増加傾向にある。
1291
1292
1293 X社は,
1294 当初から,
1295 ネット販売業者によるネット販売が,
1296 薬局・薬店による店頭での販売と異な
1297 り,
1298 甲の摂取目安量や摂取方法について,
1299 顧客の求めに応じて説明やアドバイスを行う機会がな
1300 く,
1301 製品の栄養機能が十分に発揮できなくなるおそれがあること,
1302 甲は,
1303 品質保持のため摂氏1
1304 5度以下の冷暗所での保存が必要なところ,
1305 その配送や保管における温度管理が不十分となり,
1306 品
1307 質が劣化するおそれがあることを理由に,
1308 これに消極的な姿勢を採ってきた。
1309
1310 そして,
1311 このままネ
1312 ット販売業者によるネット販売が拡大すると,
1313 上記により甲のブランドイメージが損なわれる
1314 危険が大きいと考え,
1315 今後はこれを行わせないようにするとの方針を決定し,
1316 そのために以下のよ
1317 うな方策を採ることを考えている。
1318
1319
1320 @
1321
1322 ネット販売業者に甲が販売されないようにするため,
1323 甲を扱っている薬局・薬店に対し,
1324 甲
1325 を,
1326 専ら一般消費者に対してのみ販売するよう要請する。
1327
1328
1329
1330 A
1331
1332 @の要請を遵守させるため,
1333 代理店卸売業者に対し,
1334 肉眼では見えない製品の隠しロット番
1335 号を用いた取引先の薬局・薬店の監視を義務付け,
1336 同要請に従わない薬局・薬店には甲を販売
1337 しないようにさせる。
1338
1339
1340
1341 〔設
1342
1343 問〕
1344
1345 X社が実施しようとしている上記@及びAの方策について,
1346 独占禁止法上の問題点を指摘して検
1347 討しなさい。
1348
1349
1350 - 16 -
1351
1352 (注)「栄養機能食品」とは,
1353 栄養成分(ビタミン・ミネラル)の補給のために利用される食品で
1354 あり,
1355 同食品として,
1356 その栄養成分の機能を表示して販売するためには,
1357 健康増進法に基づき,
1358
1359 一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が,
1360 定められた上・下限値の基準の範囲内
1361 である必要がある。
1362
1363 また,
1364 摂取目安量や摂取方法等についての注意喚起表示を行う必要がある。
1365
1366
1367 他方,
1368 それは,
1369 薬事法上の許可を受けた薬局及び店舗販売業者でなければ販売することができ
1370 ない「医薬品」には該当しないから,
1371 これ以外の者であっても販売することができる。
1372
1373
1374
1375 - 17 -
1376
1377 - 18 -
1378
1379 論文式試験問題集[知的財産法]
1380
1381 - 19 -
1382
1383 [知的財産法]
1384 〔第1問〕(配点:50)
1385 Aは,
1386 充電式でない電池(以下「使い捨て電池」という。
1387
1388 )を充電する方法の発明(以下「本件
1389 発明」という。
1390
1391 )について特許権を有している。
1392
1393 本件発明によると,
1394 電圧が低下した使い捨て電池
1395 を充電して繰り返し使用することができる。
1396
1397
1398 メーカーBは,
1399 新型の充電器(以下「B製品」という。
1400
1401 )を開発した。
1402
1403 B製品は,
1404 充電式の電池
1405 を充電する機能のほかに,
1406 電圧が低下した使い捨て電池を本件発明と同一の方法で充電する機能を
1407 有しており,
1408 ユーザーは充電したい電池の種類に応じて充電機能を選択することができるように設
1409 計されている。
1410
1411
1412 以上の事実関係を前提として,
1413 以下の設問に答えよ。
1414
1415
1416 〔設
1417
1418 問〕
1419
1420 1.Bは,
1421 日本国内市場及び外国市場を指向して,
1422 各国仕様ごとに生産工程を分けてB製品を製
1423 造し,
1424 国内仕様のB製品を国内で販売し,
1425 外国仕様のB製品を外国に輸出している。
1426
1427 AはBに
1428 対し,
1429 本件発明の特許権に基づいてB製品の製造,
1430 販売及び輸出の各行為につき差止請求をす
1431 ることができるか。
1432
1433 なお,
1434 B製品は,
1435 家庭内での使用を予定した装置であるものとする。
1436
1437 また,
1438
1439 Aは,
1440 外国において特許権を有していないものとする。
1441
1442
1443 2.Cは,
1444 ソフトウェアメーカーであるが,
1445 Bからの発注を受けて,
1446 B製品に搭載する部品であ
1447 る半導体チップ(以下「C部品」という。
1448
1449 )を製造してBに譲渡している。
1450
1451 C部品には,
1452 本件
1453 発明と同一の充電方法をB製品で機能させるプログラムが記録されている。
1454
1455 そこでAはCに対
1456 し,
1457 BがC部品を搭載して製造するB製品は,
1458 Aの本件発明の特許権を侵害していると通知し
1459 た。
1460
1461 AはCに対し,
1462 どのような請求をすることができるか。
1463
1464
1465 3.AはBに対し,
1466 家庭内で使用される製品に限る条件で,
1467 本件発明による充電機能を有するB
1468 製品の製造・販売行為を許諾したが,
1469 事業者向けの充電器の製造・販売行為は許諾しなかった。
1470
1471
1472 そこで,
1473 Bは,
1474 B製品に「家庭内使用に限る」と明記して販売した。
1475
1476 ところが,
1477 日本国内の事
1478 業者Dは,
1479 市場において購入したB製品を自らの事業目的で使用し,
1480 電圧が低下した使い捨て
1481 電池を充電している。
1482
1483 AはDに対し,
1484 本件発明の特許権に基づいてB製品の使用行為につき差
1485 止請求をすることができるか。
1486
1487
1488
1489 - 20 -
1490
1491 〔第2問〕(配点:50)
1492 音楽家であるA及びBは,
1493 共同で楽曲αを創作し,
1494 楽曲αについての著作権を共有している。
1495
1496 平
1497 成20年7月に,
1498 レコード会社Cは,
1499 A及びBとの間で,
1500 期間を3年とする楽曲αの日本国におけ
1501 る利用許諾契約を結び,
1502 その後,
1503 同契約に基づいて,
1504 楽曲αの演奏を録音したレコード(以下「C
1505 レコード」という。
1506
1507 )の製造販売を開始した。
1508
1509 また,
1510 A及びBは,
1511 X国のレコード会社Dに対して,
1512
1513 X国における楽曲αについての著作権を譲渡した。
1514
1515 レコード会社Dは,
1516 X国において,
1517 楽曲αの演
1518 奏を録音したレコード(以下「Dレコード」という。
1519
1520 )を製造し販売している。
1521
1522 映画会社Eは,
1523 レ
1524 コード会社Dから利用許諾を得て,
1525 X国において,
1526 楽曲αをエンディング・テーマとした劇場用映
1527 画(以下「E映画」という。
1528
1529 )を製作し,
1530 映画館等において上映した後,
1531 E映画のDVDを製造し
1532 販売している。
1533
1534
1535 平成23年5月に,
1536 AとCは,
1537 上記利用許諾契約を更新しようと考えていたが,
1538 Bは,
1539 Aとの人
1540 間関係のもつれからAを困らせたいと思い,
1541 この更新を拒絶した。
1542
1543 そのため,
1544 Cは,
1545 Cレコードの
1546 製造を中止し,
1547 同年7月までに,
1548 その製造したCレコードを全て販売した。
1549
1550 しかしながら,
1551 Cは,
1552
1553 Aからの強い要望を受けて,
1554 同年9月に,
1555 Bの許諾を得ないまま,
1556 Cレコードの製造販売を再開し
1557 た。
1558
1559 レコード店を経営するFは,
1560 平成24年2月から,
1561 Bの許諾がないという事情を知らずに,
1562 C
1563 からCレコードを購入していたところ,
1564 同年4月に当該事情を知り,
1565 その後はCレコードを新たに
1566 購入することはやめたが,
1567 現在,
1568 それ以前に購入したCレコードを消費者に販売している。
1569
1570
1571 以上の事実関係を前提として,
1572 以下の設問に答えよ。
1573
1574
1575 〔設
1576
1577 問〕
1578
1579 1.Bは,
1580 Cに対してCレコードの製造販売の差止請求をする場合,
1581 どのような主張をすべきか
1582 について,
1583 Cの反論を想定しつつ,
1584 述べよ。
1585
1586
1587 2.Bは,
1588 Fに対してCレコードの販売の差止請求をする場合,
1589 どのような主張をすべきかにつ
1590 いて,
1591 Fの反論を想定しつつ,
1592 述べよ。
1593
1594
1595 3.Gは,
1596 X国においてDレコードを購入し,
1597 これを日本に輸入し販売している。
1598
1599 Aは,
1600 Gに対
1601 して,
1602 Dレコードの輸入及び販売の各行為につき差止請求をすることができるか。
1603
1604
1605 4.Hは,
1606 X国においてE映画のDVDを購入し,
1607 これを日本に輸入し販売している。
1608
1609 Aは,
1610 H
1611 に対して,
1612 E映画のDVDの輸入及び販売の各行為につき差止請求をすることができるか。
1613
1614
1615
1616 - 21 -
1617
1618 - 22 -
1619
1620 論文式試験問題集[労
1621
1622 - 23 -
1623
1624 働
1625
1626 法]
1627
1628 [労
1629
1630 働
1631
1632 法]
1633
1634 〔第1問〕(配点:50)
1635 次の事例を読んで,
1636 後記の設問に答えなさい。
1637
1638
1639 【事
1640
1641 例】
1642 Xは,
1643 平成10年,
1644 インテリアデザイン設計・施工業を営むY社に期間の定めなく雇用され,
1645
1646
1647 入社以来,
1648 主にインテリアデザイン設計を担当している社員である。
1649
1650 Xが入社した当時,
1651 Y社に
1652 は,
1653 同じインテリアデザイン設計担当として勤続年数10年以上の正社員が1名いたが,
1654 この社
1655 員は平成20年に転職した。
1656
1657 ところが,
1658 Y社は人材を補充しなかったため,
1659 同年以降,
1660 X一人で
1661 インテリアデザイン設計を担当していた。
1662
1663 Xは,
1664 これでは自己の業務負担が大きく,
1665 まとまった
1666 休暇の取得もままならないことをY社に訴え続け,
1667 Y社は,
1668 適した人材が見付からないことを理
1669 由になかなか人材を補充しなかったが,
1670 ようやく平成23年4月になって,
1671 デザイン専門学校を
1672 卒業したばかりのAを正社員として雇用し,
1673 インテリアデザイン設計担当とした。
1674
1675
1676 ところで,
1677 Xは,
1678 共働きの妻が出産し,
1679 その産前産後休業後に妻が職場復帰できるよう,
1680 それ
1681 に合わせて2か月の育児休業を取得しようと考え,
1682 Y社の承認を得て,
1683 同年7月1日から同年8
1684 月31日まで所定の休日を除く43日の育児休業を取得した。
1685
1686
1687 Xは,
1688 当初,
1689 同年9月1日からは妻が育児休業を取得し,
1690 自分は職場復帰する予定でいたとこ
1691 ろ,
1692 妻の勤務先が繁忙で,
1693 同月中は妻の休業が困難であり,
1694 妻も勤務継続を希望した。
1695
1696 そこで,
1697
1698 Xは,
1699 いまだ消化していない当該年度の年次有給休暇20日分をここで利用しようと考え,
1700 同年
1701 8月25日,
1702 Y社に電話で連絡し,
1703 同年9月1日から同月30日まで所定の休日を除く20日の
1704 年次有給休暇を取得する旨申し出た。
1705
1706
1707 他方,
1708 Y社は,
1709 マンション建設・販売業を営むB社が新築マンションのインテリアデザイン設
1710 計・施工を外注する案件につき,
1711 他社に先んじて営業活動を展開し,
1712 Xが1年近く,
1713 B社との交
1714 渉や企画提案等に従事してきたところ,
1715 同年7月上旬頃,
1716 B社から,
1717 同年9月中にB社がY社及
1718 び競合他社の各企画提案を受け,
1719 その最終評価に基づき外注先を決する旨を伝えられていた。
1720
1721
1722 そこで,
1723 Y社は,
1724 同年8月25日に電話連絡してきたXに対し,
1725 前記事情を説明し,
1726 大きな利
1727 益が見込まれる前記案件を受注するためには,
1728 Xが最終的な企画提案及び交渉を行う必要が大き
1729 く,
1730 入社したばかりで実務経験の浅いAには任せられないことを理由に,
1731 同年9月の年次有給休
1732 暇の取得は避けてもらいたい旨申し出た。
1733
1734 しかし,
1735 家庭の事情を優先せざるを得ないと考えたX
1736 は,
1737 これに応じなかった。
1738
1739 そこで,
1740 Y社は,
1741 同年8月26日,
1742 Xに電話連絡し,
1743 同年9月半ばま
1744 では何とかAに代替させるとしても,
1745 他社との企画競争及びB社との交渉が山場となる同月15
1746 日から同月30日までの期間中(うち勤務日10日)は,
1747 Xによる年次有給休暇の取得が事業の
1748 正常な運営を妨げるとして,
1749 同月1日から同月14日までの期間における年次有給休暇は承認す
1750 るが,
1751 同月15日から同月30日までの期間における年次有給休暇は承認しない旨通知するとと
1752 もに,
1753 同年10月中であれば,
1754 これに相当する期間の年次有給休暇を取得しても差し支えない旨
1755 提案した。
1756
1757
1758 しかし,
1759 Xは,
1760 この提案も受け入れず,
1761 そのまま,
1762 同年9月1日から同月30日まで出勤しな
1763 かった。
1764
1765
1766 Y社は,
1767 やむなくXに代えてAを企画提案及び交渉に当たらせたが,
1768 その実務経験不足から,
1769
1770 結局,
1771 前記案件につき受注できなかった。
1772
1773
1774 Y社は,
1775 Xが同月15日から同月30日までの間の勤務日にY社の承認を得ずに出勤しなかっ
1776 たことが,
1777 就業規則に規定された懲戒事由である「正当な理由なく,
1778 業務上の指示命令に従わな
1779 かったとき」に該当するとして,
1780 就業規則所定の手続に従って,
1781 Xを懲戒処分であるけん責処分
1782 にした。
1783
1784 また,
1785 Y社は,
1786 同年10月,
1787 毎月末日締めで計算される同年9月分の賃金につき,
1788 Xに
1789 - 24 -
1790
1791 対し,
1792 Y社がXの年次有給休暇を承認しなかった同年9月15日から同月30日までの間の勤務
1793 日である10日相当分の賃金を控除して支給した。
1794
1795 さらに,
1796 Y社は,
1797 同年12月支給に係る賞与
1798 につき,
1799 Xに対し,
1800 全額支給しなかった。
1801
1802 Y社は,
1803 これについて,
1804 就業規則に定められた賞与の
1805 支給条件に従った措置であるとしているところ,
1806 就業規則には,
1807 賞与支給に関して,
1808 次のように
1809 規定されていた。
1810
1811
1812 すなわち,
1813 12月支給の賞与の対象期間は,
1814 5月初勤務日(同年では5月2日)から10月最
1815 終勤務日(同年では10月31日)まで,
1816 支給対象者は,
1817 同期間の出勤率(出勤した日数÷有効
1818 に取得した休暇日を含めた所定労働日数)が90パーセント以上の者(同年の前記対象期間で所
1819 定労働日124日のうち112日以上出勤した者)とされ,
1820 その出勤率の算定において,
1821 年次有
1822 給休暇はこれを出勤したものとみなす旨の規定はあるが,
1823 育児休業についてその旨の規定はない。
1824
1825
1826 また,
1827 賞与額の算定については,
1828 月額基本給3か月分の額から,
1829 月額基本給を20日分で除し
1830 て得た額に欠勤日数を乗じて得た額を差し引く計算方式を採ることとされている。
1831
1832 育児休業は無
1833 給とされているところ,
1834 前記賞与額の算定においては,
1835 年次有給休暇も含め,
1836 全ての取得休暇日
1837 を欠勤日数に算入するものと規定されている。
1838
1839
1840 なお,
1841 Xは,
1842 同年5月2日から同年10月31日までの間,
1843 前記のとおり出勤しなかった同年
1844 7月1日から同年9月30日までの期間を除き,
1845 全ての勤務日に出勤した。
1846
1847
1848 〔設
1849
1850 問〕
1851 Y社がXに対して行った懲戒処分,
1852 平成23年9月分給与からの10日相当分の賃金控除及び
1853
1854 同年12月の賞与全額不支給の各措置について,
1855 法律上の問題点を指摘し,
1856 あなたの見解を述べ
1857 なさい。
1858
1859 なお,
1860 Y社はXに対して賞与を支給すべきであるとする見解の場合には,
1861 前記計算方式
1862 による賞与額の算定において欠勤日数を何日として計算すべきか,
1863 また,
1864 その根拠について説明
1865 しなさい。
1866
1867
1868
1869 - 25 -
1870
1871 〔第2問〕(配点:50)
1872 次の事例を読んで,
1873 後記の設問に答えなさい。
1874
1875
1876 【事
1877 1
1878
1879 例】
1880 Y社は,
1881 事務所用家具のインターネット販売を主な事業とする株式会社であり,
1882 従業員は5
1883 0名で,
1884 部長,
1885 課長及び係長の役職が設けられ,
1886 課長以上に人事考課の権限が与えられている。
1887
1888
1889
1890 2
1891
1892 Y社は,
1893 いわゆる薄利多売の営業でこれまで好調に売上げを伸ばしていたことから,
1894 例年4
1895 月に賃金の引上げ(ベース・アップ)を行ってきた。
1896
1897 ところが,
1898 主要な仕入先の会社が倒産し
1899 たことに伴い,
1900 従前の廉価な販売価格を維持できなくなり,
1901 平成21年の事業年度における業
1902 績が急激に悪化した。
1903
1904 Y社の代表取締役であるAは,
1905 現在の財務状況からすれば,
1906 平成22年
1907 も多少のベース・アップは可能ではあるものの,
1908 Y社のぜい弱な財務体質からすると,
1909 同年の
1910 事業年度以降も業績が引き続き低迷した場合,
1911 早ければ平成24年にも深刻な経営難に陥る可
1912 能性があると分析し,
1913 平成22年4月のベース・アップは行うべきではないと判断した。
1914
1915 そこ
1916 で,
1917 Y社は,
1918 同年1月上旬頃,
1919 全従業員に対して,
1920 平成21年の業績悪化により平成22年4
1921 月のベース・アップは実施しない旨を書面で通知した。
1922
1923
1924
1925 3
1926
1927 Y社には,
1928 これまで労働組合が存在しなかったところ,
1929 部下2名を配されたY社の係長であ
1930 るBは,
1931 平成21年の業績が悪化したとはいえ,
1932 ベース・アップができないほどにY社の財務
1933 状況は悪くないはずであり,
1934 ベース・アップを行わないのは不当であると考え,
1935 Y社に対して
1936 ベース・アップ要求の団体交渉を行うべく,
1937 Y社の係長以下の従業員を勧誘して,
1938 平成22年
1939 1月末頃,
1940 Y社の従業員計30名でX労働組合(以下「X組合」という。
1941
1942 )を結成し,
1943 自らそ
1944 の執行委員長に就任した。
1945
1946 そして,
1947 X組合は,
1948 Y社に対し,
1949 X組合結成の旨を通知し,
1950 X組合
1951 とのベース・アップを議題とする団体交渉の開催を求めた。
1952
1953
1954 Y社はこの要請に応じ,
1955 同年2月初め頃に開催された団体交渉に出席したAは,
1956 X組合に対
1957 し,
1958 「平成21年の業績が著しく悪く,
1959 現在の財務状況では,
1960 平成22年以降の業績が引き続
1961 き低迷した場合,
1962 早ければ平成24年にも従業員のリストラを検討せざるを得ないほどの経営
1963 難に陥る危険がある。
1964
1965 そこで,
1966 本年のベース・アップを断念し,
1967 財務体質の改善に力を注ぐ必
1968 要がある。
1969
1970 」旨,
1971 自らの判断を率直に説明した。
1972
1973 これに対し,
1974 X組合は,
1975 Y社の財務状況に関
1976 する資料の提出を数回にわたり求めたところ,
1977 Y社はその都度,
1978 これに迅速に対応し,
1979 財務諸
1980 表等,
1981 要求された資料を全てX組合に提出した上,
1982 その後,
1983 平成22年2月中,
1984 X組合からの
1985 合計3回にわたる日時指定の団体交渉開催要請に全て応じた。
1986
1987 これらの団体交渉では,
1988 いずれ
1989 も,
1990 X組合側が「深刻な経営難に陥る危険があると言うが,
1991 提出された財務関係資料を見ても
1992 Y社の説明は理解できない。
1993
1994 合理的根拠を示して納得のいく説明をしてほしい。
1995
1996 」などと主張
1997 したのに対し,
1998 Y社側は,
1999 「既に提出した資料をきちんと分析すれば当方の説明の合理性は明
2000 白だ。
2001
2002 説明しようにも根拠は資料のとおりだと言うほかない。
2003
2004 」などと述べるのみであった。
2005
2006
2007
2008 4
2009
2010 Bは,
2011 X組合の執行委員長として前記団体交渉の内容をX組合の全組合員に伝達するため,
2012
2013 同月末頃,
2014 Y社の許可なく,
2015 始業時刻前に,
2016 Y社事務所において,
2017 団体交渉の日時,
2018 出席者及
2019 び交渉概要に関する記述のほか,
2020 「会社は財務状況が悪いの一点張り。
2021
2022 」,
2023 「会社はベース・アッ
2024 プできない合理的根拠を示せ。
2025
2026 」などの文言を片面印刷したA4サイズの紙1枚を印刷面を下
2027 にしてX組合の各組合員の机上に置くという方法でビラを配布した。
2028
2029
2030 Y社は,
2031 Bの前記ビラ配布が,
2032 Y社の就業規則に規定された従業員の遵守事項のうち,
2033 「許
2034 可なく,
2035 社内で業務外の掲示をし,
2036 又は図書若しくは印刷物等の頒布あるいは貼付をしないこ
2037 と。
2038
2039 」との規定に違反するとともに,
2040 Y社の係長としての職責に照らして相当でない行為であ
2041 るとして,
2042 前記ビラ配布の翌日,
2043 Bにつき,
2044 人事権の行使として係長職を解いて役職なしに降
2045 格し,
2046 Bにその旨を通知した。
2047
2048 その結果,
2049 Bは,
2050 部下を持たない立場になったほか,
2051 基本給に
2052 変動はないものの,
2053 これまで支給されていた月額2万円の係長手当の支給が受けられなくなっ
2054 - 26 -
2055
2056 た。
2057
2058
2059 5
2060
2061 X組合は,
2062 前記降格通知の翌日,
2063 Y社に対して,
2064 従前のベース・アップ要求に加え,
2065 Bの降
2066 格人事の撤回を要求し,
2067 団体交渉の開催を求めたところ,
2068 Aは,
2069 「Bの降格は人事権の行使で
2070 あって経営権に属する事項であり,
2071 団体交渉に応じる必要はない。
2072
2073 ベース・アップについても,
2074
2075 合計4回の団体交渉にもX組合の資料要求にも全て応じた。
2076
2077 双方の主張が折り合わないのは,
2078
2079 要は,
2080 財務関係資料に基づく現在の財務状況及び今後の業績の見通しの分析・評価についての
2081 見解の相違である。
2082
2083 そもそも,
2084 そのような分析・評価も経営者の判断事項であって,
2085 その当否
2086 を団体交渉で議論する必要はない。
2087
2088 当方の経営判断を変えるつもりは全くないので,
2089 これ以上
2090 の団体交渉を行っても協議に進展が見られるとは思えない。
2091
2092 」などと述べて,
2093 Y社として,
2094 X
2095 組合に対し,
2096 今後,
2097 前記要求に関する団体交渉を拒否する旨を即時に通告した。
2098
2099
2100
2101 6
2102
2103 そこで,
2104 X組合は,
2105 Y社に対する前記要求を外部に宣伝し,
2106 Y社を団体交渉に応じさせるべ
2107 く,
2108 同年3月初め頃から,
2109 週2回,
2110 Y社の休憩時間中の午後零時30分から午後零時50分ま
2111 での間,
2112 Y社事務所が所在するビルの敷地内の1階出入口外において,
2113 ビラ配布等の活動を始
2114 めた。
2115
2116 その状況は,
2117 毎回,
2118 X組合の組合員10名余りが,
2119 同出入口外の両側に分かれて並び,
2120
2121 同ビルを出入りする不特定者に対して,
2122 「執行委員長の降格は組合敵視の現れ。
2123
2124 」,
2125 「会社は違法
2126 な降格人事を撤回しろ。
2127
2128 」,
2129 「会社は団体交渉に応じろ。
2130
2131 」,
2132 「会社はベース・アップできない合理
2133 的根拠を示せ。
2134
2135 」などの文言を印刷したA4サイズのビラを配布しながら,
2136 同旨の文言を声高
2137 に連呼するというものであった。
2138
2139
2140 このような活動が3回実施された後,
2141 Y社に対して,
2142 同ビルに事務所を置く他社等から,
2143
2144 「取
2145 引先がビルに入りにくいと言って迷惑している。
2146
2147 批判の相手が当社と勘違いされては企業イメ
2148 ージも下がり,
2149 売上げにも響く。
2150
2151 」といった抗議がなされ,
2152 テナントから同様の苦情を受けた
2153 同ビルの管理会社からも,
2154 X組合の前記活動を中止させてほしいとの強い要請がなされるよう
2155 になった。
2156
2157
2158
2159 7
2160
2161 Y社の人事管理の責任者である総務部長Cは,
2162 これまで前記団体交渉に毎回出席し,
2163 そもそ
2164 もX組合を好ましく思っていなかった上,
2165 前記ビル出入口外の活動をこのまま続けさせてはY
2166 社の対外的な信用にも関わることから,
2167 このような活動をやめさせるべきだと考え,
2168 同月下旬
2169 頃,
2170 Aその他Y社の役員に諮ることなく独断で,
2171 終業後,
2172 X組合の組合員を順次,
2173 酒食の席に
2174 誘い,
2175 「X組合の活動はかえって会社の業績を悪化させる。
2176
2177 今年はベース・アップがなされな
2178 くても,
2179 皆が一丸となって働いて業績を回復すれば,
2180 ベース・アップもできる。
2181
2182 組合活動を続
2183 けていると出世にも影響するぞ。
2184
2185 」などと話した。
2186
2187 その数日後,
2188 Cに誘われたこれら組合員の
2189 うち5名がX組合から脱退した。
2190
2191
2192
2193 8
2194
2195 Bその他X組合の幹部は,
2196 X組合の組合員に対するCの働き掛けがAの意向によるX組合へ
2197 の組織弱体化工作であると考えてY社への反感を強め,
2198 同月末頃,
2199 始業時刻前でY社の従業員
2200 がいずれも出勤していない早朝に,
2201 Y社事務所において,
2202 Y社の許可を得ず,
2203 X組合の組合員
2204 以外の者も含めたY社の全従業員の机上に,
2205 「会社は違法な降格人事を撤回しろ。
2206
2207 」,
2208 「会社は団
2209 体交渉に応じろ。
2210
2211 」,
2212 「会社はベース・アップできない合理的根拠を示せ。
2213
2214 」,
2215 「組合弱体化工作に
2216 断固抗議する。
2217
2218 」,
2219 「A社長は違法行為の達人。
2220
2221 」,
2222 「A社長は従業員を犠牲にして私腹を肥やす偽
2223 善者。
2224
2225 」などの文言を片面印刷したA4サイズの紙1枚を印刷面を上にして置くという方法で
2226 ビラを配布した。
2227
2228 その後,
2229 Bらが始業時刻までの時間を潰すために一旦Y社事務所を出ている
2230 間,
2231 Y社の他の従業員よりも早く出勤したCは,
2232 前記ビラを見て,
2233 これはA個人を根拠なく誹
2234 謗中傷するもので,
2235 従業員の目に触れさせるわけにはいかないと考え,
2236 Aその他Y社の役員に
2237 諮ることなく独断で,
2238 Y社の他の従業員が出勤してくる前に,
2239 机上配布された前記ビラをX組
2240 合に無断で全て回収してしまった。
2241
2242
2243
2244 - 27 -
2245
2246 〔設
2247 1
2248
2249 問〕
2250 X組合は,
2251 Y社側の一連の対応について,
2252 いずれも不当であると考えているが,
2253 その場合,
2254
2255 X組合として採り得る法的措置とその法律上の問題点について論じなさい。
2256
2257 なお,
2258 B個人が当
2259 事者となる法律関係については検討しなくてよい。
2260
2261 また,
2262 X組合が労働組合法上の労働組合に
2263 該当することを前提に論じてよい。
2264
2265
2266
2267 2
2268
2269 Y社は,
2270 直ちにX組合による前記ビル出入口外でのビラ配布等の活動をやめさせたいと考え
2271 ているが,
2272 その場合,
2273 Y社として採り得る法的措置とその法律上の問題点について論じなさい。
2274
2275
2276
2277 - 28 -
2278
2279 論文式試験問題集[環
2280
2281 - 29 -
2282
2283 境
2284
2285 法]
2286
2287 [環
2288
2289 境
2290
2291 法]
2292
2293 〔第1問〕(配点:50)
2294 A県B町に所在するC社の工場の近隣に住むDは,
2295 自分がぜん息に罹患したのは,
2296 同社工場に設
2297 置されているばい煙発生施設から排出される窒素酸化物が原因であると考えている。
2298
2299 同施設は,
2300 大
2301 気汚染防止法の規制対象であり,
2302 C社はA県知事に届出をしている。
2303
2304 この場合において,
2305 以下の設
2306 問に答えよ。
2307
2308 なお,
2309 各設問の事例はそれぞれ独立している。
2310
2311
2312 〔設問1〕
2313 C社は,
2314 昭和55年(1980年)の操業開始時に,
2315 B町との間に公害防止協定を締結してい
2316 る。
2317
2318 この協定においては,
2319 大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準よりも2割厳しい基準
2320 が定められ,
2321 その基準に関して,
2322 「C社工場内のばい煙発生施設の排出口において,
2323 本協定に規
2324 定する排出基準に適合しないばい煙を排出してはならない。
2325
2326 」と規定されていた。
2327
2328
2329 Dからの相談を受けたB町役場では,
2330 C社工場に職員を派遣して窒素酸化物の濃度を測定させ
2331 たところ,
2332 大気汚染防止法に基づく排出基準値は辛うじて遵守していたことが同社の測定記録か
2333 らは確認できたものの,
2334 協定に規定されている値は実現できていないことが判明した。
2335
2336 D以外に
2337 もぜん息症状を訴える住民が出てきたことから,
2338 B町は,
2339 C社に対して,
2340 このままでは協定の履
2341 行を求める訴訟を提起せざるを得ないと伝えた。
2342
2343
2344 C社は,
2345 協定値不遵守の事実は認めたものの,
2346 「協定に規定されている値は,
2347 あくまで目標値
2348 にすぎない。
2349
2350 また,
2351 窒素酸化物に関する規制は,
2352 大気汚染防止法のみにより適法になし得るので
2353 あって,
2354 協定により法的義務を創出することはできないはずであるから遵守義務は発生しない。
2355
2356 」
2357 と主張している。
2358
2359 これに対してB町は,
2360 どのように反論できるか。
2361
2362
2363 なお,
2364 窒素酸化物に関する上乗せ条例は制定されていないものとする。
2365
2366
2367 〔設問2〕
2368 大気汚染防止法は,
2369 昭和43年(1968年)に制定されたが,
2370 同法の昭和45年(1970
2371 年)の改正は,
2372 排出基準の違反について第33条の2を導入し,
2373 新たな法政策を採用した。
2374
2375 【資
2376 料1】及び【資料2】を踏まえてその趣旨を述べよ。
2377
2378
2379 〔設問3〕
2380 C社は,
2381 B町に対して,
2382 大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準値は遵守していたと主
2383 張したが,
2384 A県が立入検査をして質問などをしたところ,
2385 少なくとも平成19年(2007年)
2386 4月から平成24年(2012年)3月までの過去5年間にわたり,
2387 同法施行規則に基づく頻度
2388 で実施する排出基準の測定に当たって,
2389 度々同基準値を超過した排出をしていたにもかかわらず,
2390
2391 それが基準値内にあるように測定値を改ざんして記録していたことが判明した。
2392
2393 この場合につい
2394 て【資料1】ないし【資料3】を踏まえて次の及びに答えよ。
2395
2396
2397
2398
2399 このような事案に対し,
2400 設問2に挙げた規定の導入と一体として行われた昭和45年(19
2401 70年)の大気汚染防止法改正の一部(
2402 【資料2】参照)には,
2403 「十分認識されていなかった問
2404 題点」があったことが明らかになり,
2405 平成22年(2010年)に同法改正がなされた(平成
2406 23年(2011年)4月1日施行)。
2407
2408 この問題点は,
2409 我が国の環境法令の多くに前提となっ
2410 ている認識と関連しており,
2411 我が国の環境法令の特徴ともいえるが,
2412 それは何か。
2413
2414
2415
2416
2417
2418 C社はどのような刑事責任を負うか。
2419
2420 なお,
2421 罪数については答えなくてよい。
2422
2423
2424
2425 - 30 -
2426
2427 【資料1】昭和43年(1968年)の大気汚染防止法制定の際の関連規定
2428 (排出基準の遵守義務)
2429 第5条
2430
2431 指定地域におけるばい煙発生施設において発生するばい煙を排出する者(以下「ばい煙排
2432
2433 出者」という。
2434
2435 )は,
2436 当該ばい煙発生施設に係る排出基準を遵守しなければならない。
2437
2438
2439 (ばい煙量等の測定)
2440 第15条
2441
2442 ばい煙排出者は,
2443 厚生省令,
2444 通商産業省令で定めるところにより,
2445 当該ばい煙発生施設
2446
2447 に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し,
2448 その結果を記録しておかなければならない。
2449
2450
2451 第33条
2452
2453 第10条又は第14条第1項若しくは第2項の規定による命令に違反した者は,
2454 1年以
2455
2456 下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2457
2458
2459 第34条
2460
2461 第7条第1項の規定による届出をせず,
2462 又は虚偽の届出をした者は,
2463 5万円以下の罰金
2464
2465 に処する。
2466
2467
2468 第35条
2469
2470 次の各号の一に該当する者は,
2471 3万円以下の罰金に処する。
2472
2473
2474
2475 一
2476
2477 第8条第1項又は第9条第1項の規定による届出をせず,
2478 又は虚偽の届出をした者
2479
2480 二
2481
2482 第11条第1項の規定に違反した者
2483
2484 三
2485
2486 第15条の規定による記録をせず,
2487 又は虚偽の記録をした者
2488
2489 四
2490
2491 第26条第1項の規定による報告をせず,
2492 若しくは虚偽の報告をし,
2493 又は同項の規定による
2494 検査を拒み,
2495 妨げ,
2496 若しくは忌避した者
2497
2498 【資料2】昭和45年(1970年)の大気汚染防止法改正の際の関連規定
2499 (ばい煙の排出の制限)
2500 第13条
2501
2502 ばい煙発生施設において発生するばい煙を大気中に排出する者(以下「ばい煙排出者」
2503
2504 という。
2505
2506 )は,
2507 そのばい煙量又はばい煙濃度が当該ばい煙発生施設の排出口において排出基準に
2508 適合しないばい煙を排出してはならない。
2509
2510
2511 2
2512
2513 (略)
2514 (ばい煙量等の測定)
2515
2516 第16条
2517
2518 ばい煙排出者は,
2519 厚生省令,
2520 通商産業省令で定めるところにより,
2521 当該ばい煙発生施設
2522
2523 に係るばい煙量又はばい煙濃度を測定し,
2524 その結果を記録しておかなければならない。
2525
2526
2527 第33条
2528
2529 第9条又は第14条第1項の規定による命令に違反した者は,
2530 1年以下の懲役又は20
2531
2532 万円以下の罰金に処する。
2533
2534
2535 第33条の2
2536
2537 次の各号の一に該当する者は,
2538 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2539
2540
2541
2542 一
2543
2544 第13条第1項の規定に違反した者
2545
2546 二
2547
2548 第17条第2項,
2549 第18条の4又は第23条第4項の規定による命令に違反した者
2550
2551 2
2552
2553 過失により,
2554 前項第1号の罪を犯した者は,
2555 3月以下の禁錮又は5万円以下の罰金に処する。
2556
2557
2558
2559 第34条
2560
2561 次の各号の一に該当する者は,
2562 3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
2563
2564
2565
2566 一
2567
2568 第6条第1項又は第8条第1項の規定による届出をせず,
2569 又は虚偽の届出をした者
2570
2571 二
2572
2573 第15条第2項の規定による命令に違反した者
2574
2575 第35条
2576 一
2577
2578 次の各号の一に該当する者は,
2579 5万円以下の罰金に処する。
2580
2581
2582
2583 第7条第1項,
2584 第18条第1項若しくは第3項又は第18条の2第1項の規定による届出を
2585 せず,
2586 又は虚偽の届出をした者
2587
2588 二
2589
2590 第10条第1項の規定に違反した者
2591
2592 三
2593
2594 第26条第1項の規定による報告をせず,
2595 若しくは虚偽の報告をし,
2596 又は同項の規定による
2597 検査を拒み,
2598 妨げ,
2599 若しくは忌避した者
2600
2601 - 31 -
2602
2603 【資料3】中央環境審議会「今後の効果的な公害防止の取組促進方策の在り方について(答申)」(平
2604 成22年1月29日)(抜粋)
2605 「近年においては,
2606 環境問題の対象が地球温暖化や廃棄物・リサイクル等にも多様化し,
2607 事業者
2608 や地方自治体においてもこのような課題への対応に重点が置かれるようになり,
2609 公害防止の取組に
2610 対する社会的な注目度は相対的に低下し,
2611 現場における担当者の公害問題に対する危機意識も希薄
2612 となりがちな傾向にある。
2613
2614 それらを背景として,
2615 公害防止法令に基づく環境管理業務に充てられる
2616 人的・予算的な資源に制約が生じ,
2617 その適確な遂行が困難になりつつあり,
2618 さらに,
2619 これまで公害
2620 防止対策を担ってきた経験豊富な事業者や地方自治体の職員も退職期を迎えている。
2621
2622 また,
2623 企業に
2624 おけるコンプライアンスの確保が課題となっている。
2625
2626 このような中で,
2627 ここ数年,
2628 大企業も含めた
2629 一部の事業者において,
2630 『大気汚染防止法』や『水質汚濁防止法』の排出基準の超過及び工場の従
2631 業員による測定データの改ざん等の法令違反事案が相次いで明らかとなり,
2632 事業者の公害防止管理
2633 体制に綻びが生じている事例が見られている。
2634
2635 」
2636 「現行の『大気汚染防止法』及び『水質汚濁防止法』においては,
2637 (中略)ばい煙量等又は排出
2638 水の汚染状態の測定・記録(中略)により得られる排出測定データは,
2639 事業者が排出基準を超過し
2640 ないよう自主的管理のために用いられるとともに(中略)地方自治体による報告徴収や立入検査,
2641
2642 改善命令等の法に基づく措置を行う際に過去の排出の状況を明らかにする重要な資料となってき
2643 た。
2644
2645 」
2646
2647 - 32 -
2648
2649 〔第2問〕(配点:50)
2650 A県B町は,
2651 瀬戸内海に面した湾内に位置し,
2652 古くから海上交通の要衝として栄えた港町である。
2653
2654
2655 海岸には,
2656 中世からの港湾設備群や壮麗な神社等の歴史的建造物が並び,
2657 それらが良好な状態で保
2658 存されている。
2659
2660 同じ湾内の,
2661 B町の対岸側にあるA県C町からは,
2662 B町海岸の歴史的建造物があた
2663 かも海に浮かんでいるように見えるため,
2664 C町からの景観は名勝として知られ,
2665 C町住民は,
2666 その
2667 特徴的な歴史的景観を日常的に遠望していた。
2668
2669
2670 A県は,
2671 事業者として,
2672 県内の他地域における幹線道路の慢性的な交通渋滞を緩和するため,
2673 上
2674 記湾内の公有水面を埋め立て,
2675 埋立地に新たな地上式の県道(以下「計画道路」という。
2676
2677 )を設置
2678 する事業(以下「本件事業」という。
2679
2680 )を計画した。
2681
2682 計画道路は,
2683 C町を通る予定である。
2684
2685 本件事
2686 業による湾の埋立てにより,
2687 B町の歴史的建造物が並ぶ海岸地先海面も埋め立てられることとなっ
2688 た。
2689
2690 本件事業の計画に際し,
2691 埋立工事を行わず,
2692 別地区にトンネルを掘削する代替案も検討された
2693 が,
2694 代替案では,
2695 幹線道路の交通混雑解消の効果が,
2696 埋立工事を行う場合の約70%であるとして,
2697
2698 採用されなかった。
2699
2700
2701 なお,
2702 A県は,
2703 政府が瀬戸内海環境保全特別措置法第3条第1項に基づき策定した「瀬戸内海環
2704 境保全基本計画」に基づいて,
2705
2706 「瀬戸内海環境保全に関するA県計画」を策定しており,
2707 これには,
2708
2709 「瀬戸内海の自然景観と一体をなしている史跡,
2710 名勝,
2711 天然記念物等については,
2712 その指定,
2713 管理
2714 等に係る制度の適正な運用等によりできるだけ良好な状態で保全するよう努めるものとする。
2715
2716 」と
2717 の規定がある。
2718
2719
2720 A県は,
2721 A県知事に対し,
2722 公有水面埋立法第4条第1項に基づき埋立免許を申請し,
2723 A県知事は,
2724
2725 A県に対し,
2726 公有水面の埋立免許を付与した。
2727
2728 その後,
2729 本件事業による埋立工事が竣工した結果,
2730
2731 C町からは,
2732 B町の歴史的建造物が海に浮かんでいるようには見えなくなり,
2733 特徴的な歴史的景観
2734 が損なわれた。
2735
2736
2737 〔設問1〕
2738 C町に住むXは,
2739 長年,
2740 B町の歴史的建造物の見える景観を日常的に楽しんでいたが,
2741 本件事
2742 業による埋立てにより,
2743 特徴的な歴史的景観が損なわれ,
2744 精神的苦痛を感じているため,
2745 訴訟を
2746 提起して,
2747 損害の賠償を受けたいと考えている。
2748
2749
2750
2751
2752 Xは,
2753 誰に対してどのような請求ができるか。
2754
2755
2756
2757
2758
2759 当該訴訟において予想される争点について,
2760 Xがどのような主張をすべきかを,
2761 予想される
2762 被告側の反論にも言及しつつ,
2763 論ぜよ。
2764
2765
2766
2767 〔設問2〕
2768 本件事業に係る計画道路の供用開始後,
2769 当該道路の交通量が増加し,
2770 C町では当該道路を通行
2771 する自動車の騒音が激しくなり,
2772 Xの居住地では,
2773 昼夜の各環境基準を5デシベル超える騒音が
2774 毎日のように測定されるようになった。
2775
2776 Xは,
2777 生活妨害による精神的苦痛を感じているため,
2778 訴
2779 訟を提起して,
2780 損害の賠償を受けたいと考えている。
2781
2782
2783
2784
2785 Xは,
2786 誰に対してどのような請求ができるか。
2787
2788
2789
2790
2791
2792 当該訴訟において予想される争点について,
2793 Xがどのような主張をすべきかを,
2794 予想される
2795 被告側の反論にも言及しつつ,
2796 論ぜよ。
2797
2798
2799
2800 【資
2801 ○
2802
2803 料】
2804 公有水面埋立法(大正10年4月9日法律第57号)(抄)
2805
2806 第2条
2807
2808 埋立ヲ為サムトスル者ハ都道府県知事ノ免許ヲ受クヘシ
2809
2810 2,
2811 3
2812
2813 (略)
2814
2815 第4条
2816
2817 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ
2818 - 33 -
2819
2820 為スコトヲ得ズ
2821 一
2822
2823 国土利用上適正且合理的ナルコト
2824
2825 二
2826
2827 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
2828
2829 三
2830
2831 埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律
2832 ニ基ク計画ニ違背セザルコト
2833
2834 四
2835
2836 埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト
2837
2838 五,
2839 六
2840 2,
2841 3
2842 ○
2843
2844 (略)
2845 (略)
2846
2847 瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年10月2日法律第110号)(抄)
2848 (目的)
2849 第1条
2850
2851 この法律は,
2852 瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を推進するための瀬戸内海の環境
2853
2854 の保全に関する計画の策定等に関し必要な事項を定めるとともに,
2855 特定施設の設置の規制,
2856 富栄
2857 養化による被害の発生の防止,
2858 自然海浜の保全等に関し特別の措置を講ずることにより,
2859 瀬戸内
2860 海の環境の保全を図ることを目的とする。
2861
2862
2863 (瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画)
2864 第3条
2865
2866 政府は,
2867 瀬戸内海が,
2868 わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地と
2869
2870 して,
2871 また,
2872 国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として,
2873 その恵沢を国民がひとしく享受し,
2874 後
2875 代の国民に継承すべきものであることにかんがみ,
2876 瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を
2877 推進するため,
2878 瀬戸内海の水質の保全,
2879 自然景観の保全等に関し,
2880 瀬戸内海の環境の保全に関す
2881 る基本となるべき計画(以下この章において「基本計画」という。
2882
2883 )を策定しなければならない。
2884
2885
2886 2,
2887 3
2888
2889 (略)
2890
2891 (瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画)
2892 第4条
2893
2894 関係府県知事は,
2895 基本計画に基づき,
2896 当該府県の区域において瀬戸内海の環境の保全に関
2897
2898 し実施すべき施策について,
2899 瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画(以下この章において「府
2900 県計画」という。
2901
2902 )を定めるものとする。
2903
2904
2905 2〜5
2906
2907 (略)
2908
2909 (埋立て等についての特別の配慮)
2910 第13条
2911
2912 関係府県知事は,
2913 瀬戸内海における公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第2条
2914
2915 第1項の免許又は同法第42条第1項の承認については,
2916 第3条第1項の瀬戸内海の特殊性につ
2917 き十分配慮しなければならない。
2918
2919
2920 2
2921
2922 (略)
2923
2924 - 34 -
2925
2926 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2927
2928 - 35 -
2929
2930 [国際関係法(公法系)]
2931 〔第1問〕(配点:50)
2932 X国は,
2933 国内法で基線から12海里までを領海,
2934 24海里までを接続水域,
2935 200海里までを排
2936 他的経済水域(以下「EEZ」という。
2937
2938 )と定め,
2939 各海域に対して適用される国内法令を制定し,
2940
2941 施行した。
2942
2943 X国は,
2944 同国EEZ内での漁業活動を許可に基づき外国人にも認めている。
2945
2946 他方,
2947 X国
2948 は,
2949 関税に関する限り,
2950 領海及び接続水域だけでなくEEZの海域をも同国関税法の適用区域と定
2951 め,
2952 漁船燃料用の軽油の無許可での持込み及び販売を禁止し,
2953 違反者に重い罰則を科すことを定め
2954 ていた。
2955
2956 X国は,
2957 海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。
2958
2959 )批准時に「国
2960 連海洋法条約第56条に定める沿岸国の主権的権利及び管轄権には,
2961 排他的経済水域における外国
2962 船舶の商業活動に対する関税法の適用が含まれる。
2963
2964 」という宣言を付した。
2965
2966
2967 Y国の登録船舶A号,
2968 B号及びC号は,
2969 X国のEEZ内で操業する漁船に対して漁船燃料用軽油
2970 を販売することを目的とした船舶であり,
2971 A号は,
2972 X国基線から11海里の海域で漁業活動中でな
2973 い漁船に漁船燃料用軽油を販売しているところをX国沿岸警備当局の巡視艇に発見され,
2974 関税法違
2975 反で拿捕された。
2976
2977 また,
2978 B号は,
2979 基線から20海里の海域で,
2980 C号は,
2981 基線から100海里の海域
2982 で同様の販売行為により拿捕された。
2983
2984 これらの船舶及び乗組員は,
2985 X国の港に連行された後,
2986 関税
2987 法違反で起訴され,
2988 司法手続においてそれぞれ有罪を宣告され,
2989 漁船燃料用軽油は没収された。
2990
2991
2992 以上の事実を踏まえて,
2993 以下の設問に答えなさい。
2994
2995 なお,
2996 X国とY国は,
2997 共に国連海洋法条約の
2998 当事国である。
2999
3000 また,
3001 国連海洋法条約第292条に定める迅速な釈放の問題には触れなくてよい。
3002
3003
3004 〔設
3005
3006 問〕
3007
3008 1.X国が国連海洋法条約批准時に付した宣言の国際法上の効力について説明しなさい。
3009
3010
3011 2.X国によるY国の登録船舶A号,
3012 B号及びC号に対する各措置について,
3013 国際法上どのよう
3014 に評価できるか,
3015 沿岸国が領海,
3016 接続水域及びEEZのそれぞれにおいて有する管轄権の違い
3017 を踏まえて,
3018 説明しなさい。
3019
3020
3021 3.Y国の登録船舶C号に関する事件をX・Y両国は,
3022 合意により国際海洋法裁判所に付託した。
3023
3024
3025 Y国の請求は,
3026 海洋の使用に対するY国の自由及びX国関税法に服さないY国の権利が侵害さ
3027 れたことの宣言と,
3028 これらの侵害から生じたY国の損害の賠償を求めるものであった。
3029
3030 本件が,
3031
3032 国連海洋法条約第295条に定める,
3033 「国内的な救済措置を尽くすことが国際法によって要求
3034 されている場合」に当たらないとすれば,
3035 それはどのような理由によるものかをY国の請求内
3036 容から説明しなさい。
3037
3038
3039
3040 - 36 -
3041
3042 〔第2問〕(配点:50)
3043 A国にあるB国大使館が,
3044 同大使館の敷地内に通常大使館にはあり得ないような遊戯施設を建設
3045 して,
3046 A国に在留するB国民に開放した。
3047
3048 A国は,
3049 そのような遊戯施設は,
3050 外交機能に関わるもの
3051 ではなく,
3052 大使館の敷地内の建造物であるとはいえ,
3053 不可侵は認められないと主張している。
3054
3055
3056 ところで,
3057 B国は,
3058 当該遊戯施設を建設するに当たり,
3059 A国法人である甲建設会社(以下「甲」
3060 という。
3061
3062 )と契約して建設を委ねた。
3063
3064 建設が終了して建造物がB国に引き渡されても,
3065 B国は,
3066 契
3067 約にあるとおりの建設代金を甲に支払わないでいる。
3068
3069 そこで甲は,
3070 B国を相手としてA国の国内裁
3071 判所(以下「A国裁判所」という。
3072
3073 )に,
3074 建設代金の支払を求める訴えを提起した。
3075
3076 B国は,
3077 主権
3078 免除を理由として,
3079 A国の裁判管轄権は及ばないと主張した。
3080
3081 A国裁判所は,
3082 B国の主権免除の主
3083 張を認めず,
3084 B国に対して不履行となっている代金債務の支払を命じ,
3085 判決は確定した。
3086
3087 しかし,
3088
3089 B国は,
3090 代金を支払わないでいる。
3091
3092
3093 さらに,
3094 この遊戯施設で,
3095 小規模な火災が発生した。
3096
3097 そこで,
3098 A国警察は,
3099 火災現場の実況見分
3100 を求めた。
3101
3102
3103 その後,
3104 B国大使館のある地域で大規模な災害が発生した。
3105
3106 このためB国は,
3107 当該遊戯施設をB
3108 国民だけでなく,
3109 全ての者に開放して避難所としての利用に供した。
3110
3111 また,
3112 人命救助や復旧の目的
3113 で,
3114 A国の同意を得てB国から軍隊を派遣し,
3115 B国大使館の敷地内での人命救助や損壊している建
3116 物などの復旧に従事させた。
3117
3118 ところが,
3119 B国軍隊による人命救助や復旧活動が行われている際に,
3120
3121 B国軍隊が操作していたクレーンが倒れるという事故があり,
3122 この事故により遊戯施設に避難して
3123 いたA国民である乙が傷害を負った。
3124
3125 乙は,
3126 B国を相手として,
3127 A国裁判所に損害賠償を請求する
3128 訴えを提起した。
3129
3130
3131 以上の事実を踏まえて,
3132 以下の設問に答えなさい。
3133
3134
3135 〔設
3136
3137 問〕
3138
3139 1.遊戯施設を建設した甲がB国を代金債務の支払を求めて訴えた裁判で,
3140 A国裁判所は,
3141 B国
3142 の主張する主権免除を認めなかったことについて,
3143 あなたの評価を述べなさい。
3144
3145
3146 2.A国裁判所は,
3147 B国に対して代金の支払を命じた判決に基づき,
3148 B国大使館がA国内の銀行
3149 に開設している銀行口座を差し押さえることができるか論じなさい。
3150
3151
3152 3.A国警察から火災現場の実況見分を求められたことに対して,
3153 B国は不可侵を理由にこれを
3154 拒否できるか論じなさい。
3155
3156
3157 4.B国軍隊の行為により傷害を負った乙が,
3158 A国裁判所に,
3159 B国を相手として損害賠償を請求
3160 する訴えを提起しているが,
3161 裁判管轄権について,
3162 A国裁判所は,
3163 どのような判断を下すと考
3164 えるか論じなさい。
3165
3166
3167
3168 - 37 -
3169
3170 - 38 -
3171
3172 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
3173
3174 - 39 -
3175
3176 [国際関係法(私法系)]
3177 〔第1問〕(配点:50)
3178 甲国人夫A及び甲国人妻Bは,
3179 20年前に来日し,
3180 以後,
3181 日本において生活をしていた。
3182
3183 Aは,
3184
3185 来日後しばらくして知り合った甲国人女性との間に子Xをもうけたが,
3186 Xを認知していなかった。
3187
3188
3189 Xが出生以来日本において生活をしている甲国人であるとして,
3190 以下の設問に答えなさい。
3191
3192
3193 なお,
3194 甲国法は,
3195 日本の後見及び保佐に相当する制度を有するほか,
3196 次の@からBの趣旨の規定
3197 を有している。
3198
3199
3200 @
3201
3202 子は,
3203 父の死亡を知った日から2年以内に限り,
3204 検察官を被告として認知の訴えを提起する
3205 ことができる。
3206
3207
3208
3209 A
3210
3211 認知をするには,
3212 父が被後見人であるときであっても,
3213 その後見人の同意を要しない。
3214
3215
3216
3217 B
3218
3219 夫婦の一方が被後見人となったときは,
3220 他の一方はその後見人となる。
3221
3222
3223
3224 〔設
3225
3226 問〕
3227
3228 1.Aは,
3229 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に陥った。
3230
3231 本設問1との関係では甲
3232 国の国際私法からの反致はないものとして,
3233 次の問いに答えなさい。
3234
3235
3236
3237
3238 Bの請求により,
3239 日本の裁判所がAにつき後見開始の審判をする場合,
3240 いかなる国の法を準
3241 拠法とすべきか。
3242
3243
3244
3245
3246
3247 Aにつき後見開始の審判をした場合,
3248 日本の裁判所は,
3249 いかなる国の法を準拠法としてBを
3250 後見人として選任することができるか。
3251
3252
3253
3254
3255
3256 日本の裁判所がAの後見人としてBを選任した場合,
3257 AによるXの任意認知につき後見人B
3258 の同意は必要か。
3259
3260
3261
3262 2.Aは,
3263 その後,
3264 Xを認知することなく死亡し,
3265 Xは,
3266 Aの死亡を直ちに知った。
3267
3268 Xは,
3269 Aの死
3270 亡後2年6月を経過した時に,
3271 検察官を被告として日本の裁判所に認知の訴えを提起した。
3272
3273 甲国
3274 の国際私法P条が,
3275 「父による子の認知は,
3276 出生当時の父の本国法,
3277 認知の当時における父の本
3278 国法又は子の本国法若しくはその常居所地法による。
3279
3280 父が認知前に死亡したときは,
3281 その死亡の
3282 当時におけるその本国法を父の本国法とする。
3283
3284 」と規定しているとすると,
3285 この訴えは適法か。
3286
3287
3288
3289 - 40 -
3290
3291 〔第2問〕(配点:50)
3292 Yは,
3293 甲国に主たる営業所を有する甲国の会社である。
3294
3295 Yは,
3296 インターネット上に法人及び個人
3297 顧客向けに英語のほかに日本語表記のウェブサイト(以下「本件サイト」という。
3298
3299 ) を開設し, 本
3300 件サイトを通じて日本及びその他の国において自社製品であるG等の購入の問合せ及び購入ができ
3301 るようにしている。
3302
3303 Yは,
3304 日本の弁護士を日本における代表者として定めて外国会社としての登記
3305 をし,
3306 本件サイトを通じた継続的な取引を行っているが,
3307 日本には営業所や財産を一切有していな
3308 いものとして,
3309 以下の設問に答えなさい。
3310
3311
3312 〔設
3313
3314 問〕
3315
3316 1.Xは,
3317 日本に主たる営業所を有する日本の会社である。
3318
3319 Xは,
3320 本件サイトからGの購入の問合
3321 せをし,
3322 Yの主たる営業所から日本に派遣された担当者と交渉の上,
3323 Yと東京において売買契約
3324 を締結した(以下「本件売買契約」という。
3325
3326 )。
3327
3328 Xは,
3329 Gを受領してYに代金を支払ったが,
3330 Gに
3331 瑕疵があったため,
3332 損害を被った。
3333
3334 Xは,
3335 Yに対して債務不履行を理由として損害賠償を求める
3336 訴えを日本の裁判所に提起した。
3337
3338 甲国は,
3339 国際物品売買契約に関する国際連合条約(平成20年
3340 条約第8号。
3341
3342 以下「条約」という。
3343
3344 ) の締約国ではないとして,
3345 次の問いに答えなさい。
3346
3347
3348
3349
3350 XとYとの間には裁判管轄に関する合意はなく,
3351 民事訴訟法第3条の3第1号に掲げる管轄
3352 原因が日本にないとした場合に,
3353 この訴えに関して日本の裁判所の国際裁判管轄権を基礎付け
3354 る事由はあるか。
3355
3356
3357
3358
3359
3360 法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)によれば,
3361 本件売買契約の準拠法が日
3362 本法となるとすると,
3363 日本の裁判所は,
3364 Xの請求につき条約を適用することができるか。
3365
3366
3367
3368 2.日本に常居所を有する個人Zは,
3369 自宅のパソコンを使って私用のために本件サイトの個人顧客
3370 向けページを通じてGを購入する意図で注文を送信して代金を支払った。
3371
3372 ところが,
3373 本件サイト
3374 では注文の送信前に申込内容の確認を行う措置が講じられておらず,
3375 そのため,
3376 Zは,
3377 申込内容
3378 を確認できないままGと類似した別の商品Hの注文を送信してしまっていた。
3379
3380 その結果,
3381 Yから
3382 HがZ宅に送られてきた。
3383
3384
3385 日本法には,
3386 事業者のウェブサイトにおいて消費者の意思表示の際にその内容を確認する措置
3387 が講じられていない限り,
3388 当該ウェブサイトを通じて締結された電子消費者契約の消費者の意思
3389 表示に民法第95条の要素の錯誤があった場合に,
3390 消費者に同条ただし書の重大な過失はないも
3391 のと扱うP法Q条の強行規定がある。
3392
3393 他方,
3394 甲国法には,
3395 日本の民法第95条と同様の内容の要
3396 素の錯誤に関する規定はあるが,
3397 上記のような電子消費者契約の特則に係る規定はない。
3398
3399 本件サ
3400 イト上には「商品の購入に関するお客様と弊社Yとの間に起きるあらゆる紛争については,
3401 甲国
3402 の国内法がこれに適用されることに同意していただいたものとします。
3403
3404 」との表示があり,
3405 この
3406 表示に基づきZとYが甲国法を準拠法として合意していたとすると,
3407 日本の裁判所は,
3408 ZがYに
3409 支払った代金の返還をめぐる争いについてP法Q条を適用することができるか。
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3413 - 41 -
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