1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
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4 - 1 -
5
6 [民
7
8 事]
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10 司法試験予備試験用法文及び本問末尾添付の資料を適宜参照して,以下の各設問に答えなさい。
11 なお,以下の〔設問1〕から〔設問3〕では,甲建物の賃貸借契約に関する平成23年5月分以降
12 の賃料及び賃料相当損害金については考慮する必要はない。
13 〔設問1〕
14 別紙【Xの相談内容】を前提に,弁護士Pは,平成23年11月1日,Xの訴訟代理人として,
15 Yに対し,賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物明渡請求権を訴訟物として,
16 甲建物の明渡しを求める訴え(以下「本件訴え」という。)を提起した。そして,弁護士Pは,そ
17 の訴状において,請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)として,次の各事実を主
18 張した(なお,これらの事実は,請求を理由づける事実として適切なものであると考えてよい。)。
19 @
20
21 Xは,Yに対し,平成20年6月25日,甲建物を次の約定で賃貸し,同年7月1日,これ
22 に基づいて甲建物を引き渡したとの事実
23 賃貸期間
24
25 平成20年7月1日から5年間
26
27 賃料
28
29 月額20万円
30
31 賃料支払方法
32
33 毎月末日に翌月分を支払う
34
35 A
36
37 平成22年10月から平成23年3月の各末日は経過したとの事実
38
39 B
40
41 Xは,Yに対し,平成23年4月14日,平成22年11月分から平成23年4月分の賃料
42 の支払を催告し,同月28日は経過したとの事実
43
44 C
45
46 Xは,Yに対し,平成23年7月1日,@の契約を解除するとの意思表示をしたとの事実
47
48 上記各事実が記載された訴状の副本の送達を受けたYは,弁護士Qに相談をし,同弁護士はYの
49 訴訟代理人として本件を受任することになった。別紙【Yの相談内容】は,弁護士QがYから受け
50 た相談の内容を記載したものである。これを前提に,以下の各問いに答えなさい。なお,別紙【X
51 の言い分】を考慮する必要はない。
52 (1)
53
54 別紙【Yの相談内容】の第3段落目の主張を前提とした場合,弁護士Qは,適切な抗弁事実と
55
56 して,次の各事実を主張することになると考えられる。
57 D
58
59 Yは,平成22年10月頃,甲建物の屋根の雨漏りを修理したとの事実
60
61 E
62
63 Yは,同月20日,Dの費用として150万円を支出したとの事実
64
65 F
66
67 Yは,Xに対し,平成23年6月2日頃,D及びEに基づく債権と本件未払賃料債権とを相
68 殺するとの意思表示をしたとの事実
69 上記DからFまでの各事実について,抗弁事実としてそれらの事実を主張する必要があり,か
70
71 つ,これで足りると考えられる理由を,実体法の定める要件や当該要件についての主張・立証責
72 任の所在に留意しつつ説明しなさい。
73 (2)
74
75 別紙【Yの相談内容】を前提とした場合,弁護士Qは,上記(1)の抗弁以外に,どのような抗
76
77 弁を主張することになると考えられるか。当該抗弁の内容を端的に記載しなさい(なお,当該抗
78 弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。)。
79 〔設問2〕
80 本件訴えにおいて,弁護士Qは,別紙【Yの相談内容】を前提として,〔設問1〕のとおりの各
81 抗弁を適切に主張するとともに,甲建物の屋根修理工事に要した費用についての証拠として,次の
82 ような本件領収証(斜体部分はすべて手書きである。)を,丙川三郎作成にかかるものとして裁判
83 所に提出した。これを受けて弁護士PがXと打合せを行ったところ,Xは,別紙【Xの言い分】に
84
85 - 2 -
86
87 記載したとおりの言い分を述べた。そこで,弁護士Pは,本件領収証の成立の真正について「否認
88 する」との陳述をした。
89 この場合,裁判所は,本件領収証の成立の真正についての判断を行う前提として,弁護士Pに対
90 して,更にどのような事項を確認すべきか。結論とその理由を説明しなさい。
91
92 平成22 年10 月20 日
93
94
95
96 但し
97
98
99
100
101
102 150万 円
103 屋根修理代金として
104
105 ○○建装 丙川三郎
106 〔設問3〕
107 本件訴えでは,〔設問1〕のとおりの請求を理由づける事実と各抗弁に係る抗弁事実が適切に主
108 張されたのに加えて,Xから,別紙【Xの言い分】に記載された事実が主張された。これに対して,
109 Yは,Xが30万円を修理費用として支払ったとの事実(G)を否認した。そこで,EからGの各
110 事実の有無に関する証拠調べが行われたところ,裁判所は,Eの事実については,Yが甲建物の屋
111 根の修理費用として実際に150万円を支払い,その金額は相当なものである,Fの事実について
112 は,相殺の意思表示はXによる本件契約の解除の意思表示の後に行われた,Gの事実については,
113 XはYに屋根の修理費用の一部として30万円を支払ったとの心証を形成するに至った。
114 以上の主張及び裁判所の判断を前提とした場合,裁判所は,判決主文において,どのような内容
115 の判断をすることになるか。結論とその理由を簡潔に記載しなさい。
116 以下の設問では,
117 〔設問1〕から〔設問3〕までの事例とは関係がないものとして解答しなさい。
118 〔設問4〕
119 弁護士Aは,弁護士Bを含む4名の弁護士とともに共同法律事務所で執務をしているが,弁護士
120 Bから,その顧問先であり経営状況が厳しいR株式会社について,複数の倒産手続に関する意見を
121 求められ,その際に資金繰りの状況からR株式会社の倒産は避けられない情勢であることを知った。
122 これを前提に,以下の各問いに答えなさい。
123 (1)
124
125 弁護士Aは,義父Sから,その経営するT株式会社がR株式会社と共同で事業を行うに当たり,
126
127 R株式会社が事業資金を借り入れることについてT株式会社が保証することに関する契約書の検
128 討を依頼された。この場合において,弁護士Aが,義父SにR株式会社の経営状況を説明して保
129 証契約を回避するよう助言することに弁護士倫理上の問題はあるか。結論とその理由を簡潔に記
130 載しなさい。
131 (2)
132
133 Aは,義父Sの跡を継ぎ,会社経営に専念するため弁護士登録を取り消してT株式会社の代表
134
135 取締役に就任したが,その後,R株式会社から共同事業を行うことを求められるとともに,R株
136 式会社が事業資金を借り入れることについてT株式会社が保証することを求められた。この場合
137 において,Aが,R株式会社の経営状況と倒産が避けられない情勢であることをT株式会社の取
138 締役会において発言することに弁護士倫理上の問題はあるか。結論とその理由を簡潔に記載しな
139 さい。
140
141 - 3 -
142
143 (別
144
145 紙)
146
147 【Xの相談内容】
148 私は,平成20年6月25日,Yに対し,私所有の甲建物を,賃料月額20万円,毎月末日に翌
149 月分払い,期間は同年7月1日から5年間の約束で賃貸し(以下「本件契約」といいます。),同日,
150 甲建物を引き渡しました。
151 Yは,平成22年10月分の賃料までは,月によっては遅れることもあったものの,一応,順調
152 に支払っていたのですが,同年11月分以降は,お金がないなどと言って,賃料を支払わなくなり
153 ました。
154 私は,Yの亡父が私の古くからの友人であったこともあって,あまり厳しく請求することは控え
155 ていたのですが,平成23年3月末日になっても支払がなかったことから,しびれを切らし,同年
156 4月14日,Yに対し,平成22年11月分から平成23年4月分までの未払賃料合計120万円
157 (以下「本件未払賃料」といいます。)を2週間以内に支払うよう求めましたが,Yは一向に支払
158 おうとしません。
159 そこで,私は,本件未払賃料の支払等に関してYと話し合うことを諦め,Yに対し,平成23年
160 7月1日,賃料不払を理由に,本件契約を解除して,甲建物の明渡しを求めました。このように,
161 本件契約は終わっているのですから,Yには,一日も早く甲建物を明け渡してほしいと思います。
162 なお,Yは,甲建物を修理したので,その修理費用と本件未払賃料とを対当額で相殺したとか,甲
163 建物の修理費用を支払うまでは甲建物を明け渡さない等と言って,明渡しを拒否しています。Yが
164 甲建物の屋根を修理していたこと自体は認めますが,甲建物はそれほど古いものではありませんの
165 で,Yが言うほどの高額の費用が掛かったとは到底思えません。また,Yは,私に対して相殺の意
166 思表示をしたなどと言っていますが,Yから相殺の話が出たのは,同年7月1日に私が解除の意思
167 表示をした後のことです。
168
169 【Yの相談内容】
170 X所有の甲建物に関する本件契約の内容や,賃料の未払状況及び賃料支払の催告や解除の意思表
171 示があったことは,Xの言うとおりです。
172 しかし,私は甲建物を明け渡すつもりはありませんし,そのような義務もないと思います。
173 甲建物は,昭和50年代の後半に建てられたもののようですが,屋根が傷んできていたようで,
174 平成22年8月に大雨が降った際に,かなりひどい雨漏りがありました。それ以降も,雨が降るた
175 びに雨漏りがひどいので,Xに対して修理の依頼をしたのですが,Xは,そちらで何とかしてほし
176 いと言うばかりで,修理をしてくれませんでした。そこで,私は,同年10月頃,仕方なく,自分
177 で150万円の費用を負担して,業者の丙川三郎さんに修理をしてもらったのです。この費用は,
178 同月20日に私が丙川さんに支払い,その場で丙川さんに領収証(以下「本件領収証」といいます。)
179 を書いてもらいました。しかし,これは,本来,私が支払わなければならないものではないので,
180 その分を回収するために,私は平成22年11月分以降の賃料の支払をしなかっただけなのです。
181 ところが,Xは,図図しくも,平成23年4月になって未払分の賃料の支払を求めてきたものです
182 から,しばらく無視していたものの,余りにもうるさいので,最終的には,知人のアドバイスを受
183 けて,同年6月2日頃,Xに対し,甲建物の修理費用と本件未払賃料とを相殺すると言ってやりま
184 した。
185 また,万が一相殺が認められなかったとしても,私は,Xが甲建物の修理費用を払ってくれるま
186 では,甲建物を明け渡すつもりはありません。
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188 - 4 -
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190 【Xの言い分】
191 甲建物はそれほど老朽化しているというわけでもないのですから,雨漏りの修理に150万円も
192 掛かったとは考えられません。Yは修理をしたと言いながら,本件訴えの提起までの間に,私に対
193 し,修理に関する資料を見せたこともありませんでした。そこで,実際に,知り合いの業者に尋ね
194 てみたところ,雨漏りの修理程度であれば,せいぜい,30万円くらいのものだと言っていました。
195 そこで,私は,Yとの紛争を早く解決させたいとの思いから,平成23年8月10日,Yに対して,
196 修理費用として30万円を支払っています。
197 本件訴訟に至って初めて本件領収証の存在を知りましたが,丙川さんは評判の良い業者さんで,
198 30万円程度の工事をして150万円もの請求をするような人ではありません。したがって,本件
199 領収証は,Yが勝手に作成したものだと思います。
200 いずれにせよ,Yの主張には理由がないと思います。
201
202 - 5 -
203
204 頼関係に基づくと認められるもの
205 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
206 四 社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任
207 している事件
208 五 社員が第二十七条、第二十八条又は第六十三条第一号若しく
209 は第二号のいずれかの規定により職務を行い得ない事件
210 (同前)
211 第六十六条 弁護士法人は、前条に規定するもののほか、次の各号
212 のいずれかに該当する事件については、その業務を行ってはなら
213 ない。ただし、第一号に掲げる事件についてその依頼者及び相手
214 方が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び
215 他の依頼者のいずれもが同意した場合並びに第三号に掲げる事件
216 についてその依頼者が同意した場合は、この限りでない。
217 一 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
218 を約している者を相手方とする事件
219 二 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
220 三 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件
221 (同前ー受任後)
222 第六十七条 社員等は、事件を受任した後に第六十三条第三号の規
223 定に該当する事由があることを知ったときは、速やかに、依頼者
224 にその事情を告げ、辞任その他の事案に応じた適切な措置をとら
225 なければならない。
226 2 弁護士法人は、事件を受任した後に第六十五条第四号又は第五
227 号の規定に該当する事由があることを知ったときは、速やかに、
228 依頼者にその事情を告げ、辞任その他の事案に応じた適切な措置
229 をとらなければならない。
230 (事件情報の記録等)
231 第六十八条 弁護士法人は、その業務が制限されている事件を受任
232 すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士
233 が職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、その弁
234 護士法人、社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事
235 件の依頼者、相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように
236
237 努める。
238 (準用)
239 第六十九条 第一章から第三章まで(第十六条、第十九条、第二十
240 三条及び第三章中第二節を除く。
241
242 、第六章及び第九章から第十二
243 章までの規定は弁護士法人に準用する。
244 第九章 他の弁護士との関係における規律
245 (名誉の尊重)
246 第七十条 弁護士は、他の弁護士、弁護士法人及び外国法事務弁護
247 士(以下「弁護士等」という。
248 )との関係において、相互に名誉
249 と信義を重んじる。
250 (弁護士に対する不利益行為)
251 第七十一条 弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れ
252 てはならない。
253 (他の事件への不当介入)
254 第七十二条 弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に
255 介入してはならない。
256 (弁護士間の紛議)
257 第七十三条 弁護士は、他の弁護士等との間の紛議については、協
258 議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
259 第十章 裁判の関係における規律
260 (裁判の公正と適正手続)
261 第七十四条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続の実現に努める。
262 (偽証のそそのかし)
263 第七十五条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又
264 は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
265 (裁判手続の遅延)
266 第七十六条 弁護士は、怠慢により又は不当な目的のため、裁判手
267 続を遅延させてはならない。
268 (裁判官等との私的関係の不当利用)
269 第七十七条 弁護士は、その職務を行うに当たり、裁判官、検察官
270 その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係
271 があることを不当に利用してはならない。
272
273 第十一章 弁護士会との関係における規律
274 (弁護士法等の遵守)
275 第七十八条 弁護士は、弁護士法並びに本会及び所属弁護士会の会
276 則を遵守しなければならない。
277 (委嘱事項の不当拒絶)
278 第七十九条 弁護士は、正当な理由なく、会則の定めるところによ
279 り、本会、所属弁護士会及び所属弁護士会が弁護士法第四十四条
280 の規定により設けた弁護士会連合会から委嘱された事項を行うこ
281 とを拒絶してはならない。
282 第十二章 官公署との関係における規律
283 (委嘱事項の不当拒絶)
284 第八十条 弁護士は、正当な理由なく、法令により官公署から委嘱
285 された事項を行うことを拒絶してはならない。
286 (受託の制限)
287 第八十一条 弁護士は、法令により官公署から委嘱された事項につ
288 いて、職務の公正を保ち得ない事由があるときは、その委嘱を受
289 けてはならない。
290 第十三章 解釈適用指針
291 (解釈適用指針)
292 第八十二条 この規程は、弁護士の職務の多様性と個別性にかんが
293 み、その自由と独立を不当に侵すことのないよう、実質的に解釈
294 し適用しなければならない。第五条の解釈適用に当たって、刑事
295 弁護においては、被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護
296 権を侵害することのないように留意しなければならない。
297 2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、第二十六条、第三
298 十三条、第三十七条第二項、第四十六条から第四十八条まで、第
299 五十条、第五十五条、第五十九条、第六十一条、第六十八条、第
300 七十条、第七十三条及び第七十四条の規定は、弁護士の職務の行
301 動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければな
302 らない。
303 附 則
304 この規程は、平成十七年四月一日から施行する。
305
306 - 6 -
307
308 について、必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努
309 める。
310 (防御権の説明等)
311 第四十八条 弁護士は、被疑者及び被告人に対し、黙秘権その他の
312 防御権について適切な説明及び助言を行い、防御権及び弁護権に
313 対する違法又は不当な制限に対し、必要な対抗措置をとるように
314 努める。
315 (国選弁護における対価受領等)
316 第四十九条 弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名
317 目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対
318 価を受領してはならない。
319 2 弁護士は、前項の事件について、被告人その他の関係者に対し、
320 その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。
321 ただし、本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある
322 場合は、この限りでない。
323 第五章 組織内弁護士における規律
324 (自由と独立)
325 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。以下これら
326 を合わせて「組織」という。
327 )において職員若しくは使用人とな
328 り、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士(以下「組
329 織内弁護士」という。
330 )は、弁護士の使命及び弁護士の本質であ
331 る自由と独立を自覚し、良心に従って職務を行うように努める。
332 (違法行為に対する措置)
333 第五十一条 組織内弁護士は、その担当する職務に関し、その組織
334 に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、又は行おうとし
335 ていることを知ったときは、その者、自らが所属する部署の長又
336 はその組織の長、取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対
337 する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとら
338 なければならない。
339 第六章 事件の相手方との関係における規律
340 (相手方本人との直接交渉)
341 第五十二条 弁護士は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選
342 任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで
343 直接相手方と交渉してはならない。
344 (相手方からの利益の供与)
345 第五十三条 弁護士は、受任している事件に関し、相手方から利益
346 の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくは約束を
347 してはならない。
348 (相手方に対する利益の供与)
349 第五十四条 弁護士は、受任している事件に関し、相手方に対し、
350 利益の供与若しくは供応をし、又は申込みをしてはならない。
351 第七章 共同事務所における規律
352
353 (遵守のための措置)
354 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所
355 である場合を除く。
356 )を共にする場合(以下この法律事務所を「共
357 同事務所」という。
358 )において、その共同事務所に所属する弁護
359 士(以下「所属弁護士」という。
360 )を監督する権限のある弁護士
361 は、所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるよ
362 うに努める。
363 (秘密の保持)
364 第五十六条 所属弁護士は、他の所属弁護士の依頼者について執務
365 上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、又は利用してはな
366 らない。その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、同様と
367 する。
368 (職務を行い得ない事件)
369 第五十七条 所属弁護士は、他の所属弁護士(所属弁護士であった
370 場合を含む。
371 )が、第二十七条又は第二十八条の規定により職務
372 を行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、
373 職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。
374 (同前ー受任後)
375 第五十八条 所属弁護士は、事件を受任した後に前条に該当する事
376 由があることを知ったときは、速やかに、依頼者にその事情を告
377 げて、辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければなら
378 ない。
379 (事件情報の記録等)
380 第五十九条 所属弁護士は、職務を行い得ない事件の受任を防止す
381 るため、他の所属弁護士と共同して、取扱い事件の依頼者、相手
382 方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
383 (準用)
384 第六十条 この章の規定は、弁護士が外国法事務弁護士と事務所を
385 共にする場合に準用する。この場合において、第五十五条中「複
386 数の弁護士が」とあるのは「弁護士及び外国法事務弁護士が」と、
387 「共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という。
388
389
390 とあるのは「共同事務所に所属する外国法事務弁護士(以下「所
391 属外国法事務弁護士」という。
392
393 」と、
394 「所属弁護士が」とあるの
395 は「所属外国法事務弁護士が」と、第五十六条から第五十九条ま
396 での規定中「他の所属弁護士」とあるのは「所属外国法事務弁護
397 士」と、第五十七条中「第二十七条又は第二十八条」とあるのは
398 「外国特別会員基本規程第三十条の二において準用する第二十七
399 条又は第二十八条」と読み替えるものとする。
400 第八章 弁護士法人における規律
401 (遵守のための措置)
402 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、その弁護士法人の
403 社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という。
404 )及び使
405
406 用人である外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な
407 措置をとるように努める。
408 (秘密の保持)
409 第六十二条 社員等は、その弁護士法人、他の社員等又は使用人で
410 ある外国法事務弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正
411 当な理由なく他に漏らし、又は利用してはならない。社員等でな
412 くなった後も、同様とする。
413 (職務を行い得ない事件)
414 第六十三条 社員等(第一号及び第二号の場合においては、社員等
415 であった者を含む。
416 )は、次に掲げる事件については、職務を行
417 ってはならない。ただし、第四号に掲げる事件については、その
418 弁護士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、こ
419 の限りでない。
420 一 社員等であった期間内に、その弁護士法人が相手方の協議を
421 受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であって、自らこ
422 れに関与したもの
423 二 社員等であった期間内に、その弁護士法人が相手方の協議を
424 受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと
425 認められるものであって、自らこれに関与したもの
426 三 その弁護士法人が相手方から受任している事件
427 四 その弁護士法人が受任している事件(当該社員等が自ら関与
428 しているものに限る。
429 )の相手方からの依頼による他の事件
430 (他の社員等との関係で職務を行い得ない事件)
431 第六十四条 社員等は、他の社員等が第二十七条、第二十八条又は
432 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
433 行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、
434 職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。
435 2 社員等は、使用人である外国法事務弁護士が外国特別会員基本
436 規程第三十条の二において準用する第二十七条、第二十八条又は
437 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
438 行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、
439 職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。
440 (業務を行い得ない事件)
441 第六十五条 弁護士法人は、次の各号のいずれかに該当する事件に
442 ついては、その業務を行ってはならない。ただし、第三号に規定
443 する事件については受任している事件の依頼者の同意がある場合
444 及び第五号に規定する事件についてはその職務を行い得ない社員
445 がその弁護士法人の社員の総数の半数未満であり、かつ、その弁
446 護士法人に業務の公正を保ち得る事由がある場合は、この限りで
447 ない。
448 一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
449 二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信
450
451 - 7 -
452
453 (依頼者との金銭貸借等)
454 第二十五条 弁護士は、特別の事情がない限り、依頼者と金銭の貸
455 借をし、又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、若しく
456 は依頼者の債務について保証をしてはならない。
457 (依頼者との紛議)
458 第二十六条 弁護士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じな
459 いように努め、紛議が生じたときは、所属弁護士会の紛議調停で
460 解決するように努める。
461 第二節 職務を行い得ない事件の規律
462 (職務を行い得ない事件)
463 第二十七条 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件につい
464 ては、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事
465 件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、こ
466 の限りでない。
467 一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
468 二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信
469 頼関係に基づくと認められるもの
470 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
471 四 公務員として職務上取り扱った事件
472 五 仲裁、調停、和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手
473 続実施者として取り扱った事件
474 (同前)
475 第二十八条 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のい
476 ずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。
477 ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同
478 意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方
479 が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及
480 び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
481 一 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である
482 事件
483 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
484 を約している者を相手方とする事件
485 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
486 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
487 第三節 事件の受任時における規律
488 (受任の際の説明等)
489 第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た
490 情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び
491 費用について、適切な説明をしなければならない。
492 2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請
493 け合い、又は保証してはならない。
494 3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにも
495
496 かかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはな
497 らない。
498 (委任契約書の作成)
499 第三十条 弁護士は、事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関す
500 る事項を含む委任契約書を作成しなければならない。ただし、委
501 任契約書を作成することに困難な事由があるときは、その事由が
502 止んだ後、これを作成する。
503 2 前項の規定にかかわらず、受任する事件が、法律相談、簡易な
504 書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものである
505 ときその他合理的な理由があるときは、委任契約書の作成を要し
506 ない。
507 (不当な事件の受任)
508 第三十一条 弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに
509 不当な事件を受任してはならない。
510 (不利益事項の説明)
511 第三十二条 弁護士は、同一の事件について複数の依頼者があって
512 その相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、事件を受
513 任するに当たり、依頼者それぞれに対し、辞任の可能性その他の
514 不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。
515 (法律扶助制度等の説明)
516 第三十三条 弁護士は、依頼者に対し、事案に応じ、法律扶助制度、
517 訴訟救助制度その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を
518 説明し、裁判を受ける権利が保障されるように努める。
519 (受任の諾否の通知)
520 第三十四条 弁護士は、事件の依頼があったときは、速やかに、そ
521 の諾否を依頼者に通知しなければならない。
522 第四節 事件の処理における規律
523 (事件の処理)
524 第三十五条 弁護士は、事件を受任したときは、速やかに着手し、
525 遅滞なく処理しなければならない。
526 (事件処理の報告及び協議)
527 第三十六条 弁護士は、必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過
528 及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しな
529 がら事件の処理を進めなければならない。
530 (法令等の調査)
531 第三十七条 弁護士は、事件の処理に当たり、必要な法令の調査を
532 怠ってはならない。
533 2 弁護士は、事件の処理に当たり、必要かつ可能な事実関係の調
534 査を行うように努める。
535 (預り金の保管)
536 第三十八条 弁護士は、事件に関して依頼者、相手方その他利害関
537 係人から金員を預かったときは、自己の金員と区別し、預り金で
538
539 あることを明確にする方法で保管し、その状況を記録しなければ
540 ならない。
541 (預り品の保管)
542 第三十九条 弁護士は、事件に関して依頼者、相手方その他利害関
543 係人から書類その他の物品を預かったときは、善良な管理者の注
544 意をもって保管しなければならない。
545 (他の弁護士の参加)
546 第四十条 弁護士は、受任している事件について、依頼者が他の弁
547 護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、正当な理由な
548 く、これを妨げてはならない。
549 (受任弁護士間の意見不一致)
550 第四十一条 弁護士は、同一の事件を受任している他の弁護士又は
551 弁護士法人との間に事件の処理について意見が一致せず、これに
552 より、依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対
553 し、その事情を説明しなければならない。
554 (受任後の利害対立)
555 第四十二条 弁護士は、複数の依頼者があって、その相互間に利害
556 の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、依頼者相互間に
557 現実に利害の対立が生じたときは、依頼者それぞれに対し、速や
558 かに、その事情を告げて、辞任その他の事案に応じた適切な措置
559 をとらなければならない。
560 (信頼関係の喪失)
561 第四十三条 弁護士は、受任した事件について、依頼者との間に信
562 頼関係が失われ、かつ、その回復が困難なときは、その旨を説明
563 し、辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならな
564 い。
565 第五節 事件の終了時における規律
566 (処理結果の説明)
567 第四十四条 弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況又は
568 その結果に関し、必要に応じ法的助言を付して、依頼者に説明し
569 なければならない。
570 (預り金等の返還)
571 第四十五条 弁護士は、委任の終了に当たり、委任契約に従い、金
572 銭を清算したうえ、預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければ
573 ならない。
574 第四章 刑事弁護における規律
575 (刑事弁護の心構え)
576 第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されてい
577 ることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁
578 護活動に努める。
579 (接見の確保と身体拘束からの解放)
580 第四十七条 弁護士は、身体の拘束を受けている被疑者及び被告人
581
582 - 8 -
583
584 弁護士職務基本規程(平成十六年十一月十日会規第七十号)
585 目次
586 第一章 基本倫理(第一条ー第八条)
587 第二章 一般規律(第九条ー第十九条)
588 第三章 依頼者との関係における規律
589 第一節 通則(第二十条ー第二十六条)
590 第二節 職務を行い得ない事件の規律(第二十七条・第二十八
591 条)
592 第三節 事件の受任時における規律(第二十九条ー第三十四条)
593 第四節 事件の処理における規律(第三十五条ー第四十三条)
594 第五節 事件の終了時における規律(第四十四条・第四十五条)
595 第四章 刑事弁護における規律(第四十六条―第四十九条)
596 第五章 組織内弁護士における規律(第五十条・第五十一条)
597 第六章 事件の相手方との関係における規律(第五十二条ー第五
598 十四条)
599 第七章 共同事務所における規律(第五十五条―第六十条)
600 第八章 弁護士法人における規律(第六十一条―第六十九条)
601 第九章 他の弁護士との関係における規律(第七十条ー第七十三
602 条)
603 第十章 裁判の関係における規律(第七十四条―第七十七条)
604 第十一章 弁護士会との関係における規律(第七十八条・第七十
605 九条)
606 第十二章 官公署との関係における規律(第八十条・第八十一条)
607 第十三章 解釈適用指針(第八十二条)
608 附則
609 弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
610 その使命達成のために、弁護士には職務の自由と独立が要請され、
611 高度の自治が保障されている。
612 弁護士は、その使命を自覚し、自らの行動を規律する社会的責任
613 を負う。
614 よって、ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに
615 するため、弁護士職務基本規程を制定する。
616 第一章 基本倫理
617 (使命の自覚)
618 第一条 弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現
619 にあることを自覚し、その使命の達成に努める。
620 (自由と独立)
621 第二条 弁護士は、職務の自由と独立を重んじる。
622 (弁護士自治)
623 第三条 弁護士は、弁護士自治の意義を自覚し、その維持発展に努
624
625 める。
626 (司法独立の擁護)
627 第四条 弁護士は、司法の独立を擁護し、司法制度の健全な発展に
628 寄与するように努める。
629 (信義誠実)
630 第五条 弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職
631 務を行うものとする。
632 (名誉と信用)
633 第六条 弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔
634 を保持し、常に品位を高めるように努める。
635 (研鑽)
636 第七条 弁護士は、教養を深め、法令及び法律事務に精通するため、
637 研鑽に努める。
638 (公益活動の実践)
639 第八条 弁護士は、その使命にふさわしい公益活動に参加し、実践
640 するように努める。
641 第二章 一般規律
642 (広告及び宣伝)
643 第九条 弁護士は、広告又は宣伝をするときは、虚偽又は誤導にわ
644 たる情報を提供してはならない。
645 2 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
646 (依頼の勧誘等)
647 第十条 弁護士は、不当な目的のため、又は品位を損なう方法によ
648 り、事件の依頼を勧誘し、又は事件を誘発してはならない。
649 (非弁護士との提携)
650 第十一条 弁護士は、弁護士法第七十二条から第七十四条までの規
651 定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当
652 な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、
653 又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
654 (報酬分配の制限)
655 第十二条 弁護士は、その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法
656 人でない者との間で分配してはならない。ただし、法令又は本会
657 若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その
658 他正当な理由がある場合は、この限りでない。
659 (依頼者紹介の対価)
660 第十三条 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その
661 他の対価を支払ってはならない。
662 2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価
663 を受け取ってはならない。
664 (違法行為の助長)
665 第十四条 弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な
666 行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。
667
668 (品位を損なう事業への参加)
669 第十五条 弁護士は、公序良俗に反する事業その他品位を損なう事
670 業を営み、若しくはこれに加わり、又はこれらの事業に自己の名
671 義を利用させてはならない。
672 (営利業務従事における品位保持)
673 第十六条 弁護士は、自ら営利を目的とする業務を営むとき、又は
674 営利を目的とする業務を営む者の取締役、執行役その他業務を執
675 行する役員若しくは使用人となったときは、営利を求めることに
676 とらわれて、品位を損なう行為をしてはならない。
677 (係争目的物の譲受け)
678 第十七条 弁護士は、係争の目的物を譲り受けてはならない。
679 (事件記録の保管等)
680 第十八条 弁護士は、事件記録を保管又は廃棄するに際しては、秘
681 密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなけれ
682 ばならない。
683 (事務職員等の指導監督)
684 第十九条 弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に
685 関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に
686 及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、
687 若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければな
688 らない。
689 第三章 依頼者との関係における規律
690 第一節 通則
691 (依頼者との関係における自由と独立)
692 第二十条 弁護士は、事件の受任及び処理に当たり、自由かつ独立
693 の立場を保持するように努める。
694 (正当な利益の実現)
695 第二十一条 弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益
696 を実現するように努める。
697 (依頼者の意思の尊重)
698 第二十二条 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重し
699 て職務を行うものとする。
700 2 弁護士は、依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に
701 表明できないときは、適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に
702 努める。
703 (秘密の保持)
704 第二十三条 弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知
705 り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。
706 (弁護士報酬)
707 第二十四条 弁護士は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力そ
708 の他の事情に照らして、適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなけ
709 ればならない。
710
711 - 9 -
712
713 [刑
714
715 事]
716
717 次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
718 【事
719
720
721 例】
722 V(男性,28歳)は,平成24年4月2日午前11時頃,H県I市内のTマンション30
723 4号室のV宅に1人でいた際,インターホンを通じて宅配便荷物を届けに来た旨を言われたこ
724 とから,自ら玄関ドアを開けたところ,@男(以下「犯人」という。)に,突然,右腕をつか
725 まれた。そして,Vは,犯人から刃物を突き付けられながら,「金はどこだ。言わないと殺す
726 ぞ。
727 」と言われたので恐ろしくなり,
728 「居間のテーブルに財布があります。」と答えた。すると,
729 犯人は,着用していたジャンパーの右ポケットから,ひもを取り出し,これでVの手首,足首
730 を縛った上,さらにジャンパーの左ポケットからガムテープを取り出して,これをVの口を塞
731 ぐようにして巻き,Vを玄関の上がり口に放置した。その後,Vが犯人の様子を観察している
732 と,犯人は居間に行き,テーブルの上に財布があるのを確認するなどした後,最終的に,Vの
733 財布を右手に持って玄関から出て行った。
734 同日午前11時30分頃,Vの妻Wが外出先から帰宅し,縛られたVを発見してひもやガム
735 テープを外した。Vは,すぐに居間などの犯人が出入りした部屋に行き,被害の有無を確認し
736 たところ,タンスを開けられるなど金品を物色された跡があったものの,財産的被害について
737 は,居間のテーブルにあった財布1個を奪われただけであることを確認した。その上で,Vは,
738 110番通報をし,強盗の被害に遭ったことを訴えるとともに,財布に入っていたクレジット
739 カードを利用できないようにするために,発行会社に連絡した。
740
741
742
743 同日午前11時45分頃,I警察署の司法警察員Kら司法警察職員4名はV宅に臨場し,外
744 されたガムテープとひもを領置した後,玄関の上がり口にレシートが1枚落ちているのを発見
745 した。このレシートは,同日午前10時45分にTマンションから約200メートル離れたコ
746 ンビニエンスストアZにおいて,ガムテープとひもを購入したことを示すものであった。この
747 レシートについて,Vは,「私が受け取ったものではない。今日は,被害に遭うまでの間,自
748 宅に誰も入っていないので,犯人が落とした物だと思う。」旨説明し,Wも,「私が受け取った
749 ものではない。」旨説明した。これを受けて,司法警察員Kは,このレシートを遺留物として
750 領置した。なお,臨場した司法警察職員4名の中に,前記Zを利用したことがある者はいなか
751 った。
752 また,臨場した司法警察職員の一部が鑑識作業に従事し,外側の玄関ドアノブから2種類の
753 指紋を採取したが,物色されたタンスからは指紋を採取できなかった。
754 さらに,Vは,司法警察員Kに対し,被害状況について,前記の状況や財布に現金2万円,
755 V名義のクレジットカード1枚が入っていたことなどを供述したが,犯人については,「会っ
756 たことも見たこともない男である。身長約180センチメートル,がっちりとした体格,20
757 歳代くらい,緑色のジャンパーとサングラスを着用していたことくらいしか分からない。手袋
758 をはめていたかどうかも覚えていない。」旨を供述した。
759
760
761
762 同日午後3時頃,赤色のジャンパーを着用していた甲が,H県I市内所在の家電量販店Sの
763 電気製品売場において,V名義のクレジットカードを使用してパソコンを購入しようとした。
764 しかし,店員は,V名義のクレジットカードの利用が停止されていることに気付き,警察に通
765 報するとともに,何かと理由を付けて甲を店内に引き止めていた。その後,司法警察員Kが同
766 売場に到着し,甲にVかどうかを確認したところ,「Vではなく,甲である。」と答えた。しか
767 し,甲は,同クレジットカードを所持していた理由については,黙秘した。そこで,司法警察
768 員Kは,甲を詐欺未遂により緊急逮捕した。そして,この際,司法警察員Kは,同クレジット
769
770 - 10 -
771
772 カードを差し押さえた。
773 甲は,I警察署に引致された後,「宅配便荷物を取り扱う会社Uに配送員として勤務してい
774 る。ひったくりによる窃盗の前科が2犯ある。」などと自らの身上関係については供述し,供
775 述調書の作成にも応じるものの,その他については,一切黙秘した。なお,甲の年齢について
776 は,27歳であること,甲の体格については,身長182センチメートル,体重95キログラ
777 ムであること,甲の前科については,甲の供述どおり,窃盗の前科2犯があることが判明した。
778 また,司法警察員Kが会社Uの担当者に甲の勤務状況について確認したところ,甲は,同年
779 3月31日にV宅に宅配便荷物を届けていたこと,同年4月2日は休みであったことが判明し
780 た。そこで,司法警察員Kが,Vに対し,電話で,同年3月31日に会社Uから宅配便荷物が
781 届けられたか否かを確認したところ,Vは,「その日,確かに私が会社Uが取り扱う宅配便荷
782 物を受領した。ただ,これを届けてきた人物については,男であったことしか覚えていない。」
783 旨供述した。
784
785
786 同年4月2日午後6時30分頃,司法警察員Kは,部下を連れて甲の自宅に行き,同所にお
787 いて,捜索差押許可状に基づき,甲の妻Aを立会人として捜索差押えを実施し,財布1個,緑
788 色のジャンパー1着,サングラス1個,果物ナイフ2本及び包丁2本を差し押さえた。その後,
789 Aは,同日午後8時頃からI警察署において実施された取調べにおいて,以下のとおり,供述
790 した。
791
792 (1)
793
794 同日午後零時頃の甲の言動について
795 甲は,今日の午前9時30分頃,外出した。その際,甲がどのような着衣で外出したのか
796 見ていないので分からない。その後,今日の午後零時頃,甲が自宅に戻り,甲の部屋に入っ
797 て出てくると,財布を渡してきた。そのとき,甲は,赤色のジャンパーを着用していたが,
798 サングラスは着用していなかった。私が,「どうしたの。」と聞くと,「友達にもらった。」と
799 言ってきた。しかし,甲に財布をあげる知人などいるはずがなく,過去にひったくりで捕ま
800 った前科もあったので,犯罪で得たものではないかと思い,「違うでしょ。まさか,また悪
801 いことしていないよね。」と言った。すると,甲は,「そんなことない。ただ,お前がそのよ
802 うに疑うなら,警察も同じように疑うかもしれない。もし,警察が訪ねてきたら,今日は朝
803 から午後零時まで家に俺とお前の2人でいたと言ってくれ。警察に疑われたくないからね。」
804 と言ってきた。その後,すぐに,甲は,財布を置いて出て行った。
805
806 (2)
807
808 差し押さえた財布1個,緑色のジャンパー1着及びサングラス1個について
809 財布は,甲が今日の午後零時頃,自宅に置いていったものであるが,何も入っていなかっ
810 た。緑色のジャンパーとサングラスは,甲の部屋にあったものだが,今日,着用していたか
811 どうかは分からない。
812
813 (3)
814
815 差し押さえた果物ナイフ2本及び包丁2本について
816 2本の果物ナイフのうち,1本は古くなって切れ味が悪くなったので,捨てようと思い,
817 新聞紙にくるんで台所に置いていた。残りの1本は,私が甲に頼んで,昨日,甲に買ってき
818 てもらったものである。使えなくなった1本を除く,3本の刃物については,今日の午前
819 11時30分頃,昼食を作る際には台所にあった。いずれも,今日,甲が持ち出したことは
820 ない。
821
822
823
824 司法警察員Kは,財布を強取した犯人が甲に間違いないと判断するとともに,これについて
825 も,前記詐欺未遂と併せてH地方検察庁検察官に送致した方が良いと判断し,同月3日,H地
826 方裁判所裁判官から逮捕状の発付を受けた上で,甲を住居侵入・強盗の被疑事実により逮捕し
827 た。その後,同月4日,甲は,詐欺未遂,住居侵入・強盗の送致事実によりH地方検察庁検察
828 官に送致された後,所要の手続を経て同日中に勾留された。
829
830
831 (1)
832
833 その後,甲が被疑者として勾留されている間,以下の捜査結果が得られた。
834 指紋に関する捜査
835 - 11 -
836
837 V宅で領置したレシートからは,甲の指紋が検出された。また,玄関ドアノブから採取し
838 た2種類の指紋については,甲の指紋とWの指紋と一致することが判明した。なお,甲宅で
839 差し押さえた財布からは指紋が検出されなかった。
840 (2)
841
842 Vに対する事情聴取
843 司法警察員KがVに,差し押さえた前記証拠物について確認したところ,Vは,クレジッ
844 トカードについては,「私名義ですし,奪われた財布の中に入っていたものに間違いありま
845 せん。」と供述したが,財布については,「私が奪われた財布の形,色とよく似ていますが,
846 私のものかはっきりしません。」と供述し,緑色のジャンパーとサングラスについては,「犯
847 人が着用していたものと同じものかよく分かりません。」と供述した。また,Vは,果物ナ
848 イフ2本及び包丁2本については,「包丁2本については,明らかに今回の犯行に使用され
849 たものではありません。形が違います。果物ナイフの2本のうち,古い方についても,明ら
850 かに今回の犯行に使用されたものではありません。古すぎます。残りの果物ナイフ1本は,
851 今回の犯行に使用されたものとよく似ています。今回の犯行に使われたものであると断言は
852 できませんが,今回の犯行に使われた可能性はあると思います。」と供述した。
853 さらに,Vは,司法警察員Kから透視鏡を通じて取調室の甲の容貌を見せられ,犯人と同
854 一か否か及び同年3月31日に宅配便荷物を届けに来た人物と同一か否かの確認を求められ
855 たものの,「犯人はサングラスを掛けており,人相がよく分からなかったので,確認を求め
856 られている人物が犯人と同一か分かりません。また,宅配便荷物を届けに来た人物をしっか
857 り見ていたわけではないので,その人と確認を求められている人物が同一かも分かりませ
858 ん。」旨供述した。
859
860 (3)
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862 コンビニエンスストアZにおける捜査
863 司法警察員Kが,コンビニエンスストアZの店員に対し,V宅で領置したガムテープとひ
864 もを示すとともに,領置されたレシートが発行された経緯について確認したところ,同人は,
865 「レシートを発行した経緯については,全く覚えていない。示されたガムテープとひもにつ
866 いては,当方で販売しているものと同一のものか分からないが,同じ種類のものは販売して
867 いる。」旨供述した。
868 また,司法警察員Kは,同店で保管されていた防犯ビデオを確認したところ,同年4月2
869 日午前10時45分頃,緑色のジャンパーを着用した大柄の男がガムテープとひもを購入し
870 ていることは確認できたものの,同人がサングラスを着用していたこともあって人相は確認
871 できなかった。また,甲宅で差し押さえた緑色のジャンパーも防犯ビデオに写っている緑色
872 のジャンパーもいずれも特徴がなく,同一のものであるとは確認できなかったことなどから,
873 甲と防犯ビデオに写っている男とが同一人物か否かは判然としなかった。
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877 同月13日,H地方検察庁検察官Pは,甲を住居侵入・強盗の公訴事実によりH地方裁判所
878 に起訴し,詐欺未遂については,被害者であるS店の代表者が,実害もなく,特に処罰を求め
879 ない旨を述べたことなどを考慮し,不起訴(起訴猶予)とした。なお,甲は,同月2日から同
880 月13日までの間の捜査において,供述調書の作成に応じた身上関係以外については,一切を
881 黙秘していた。
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885 本件は公判前整理手続に付されたところ,同手続において,検察官Pは,所要の証拠調べ請
886 求の一つとして,Aの検察官調書につき,「犯行直後の甲の言動」を立証趣旨とする証拠調べ
887 請求をしたが,甲の弁護人Bはこれを不同意とした。このため,検察官PがAの証人尋問を請
888 求したところ,裁判所はAの証人尋問を行うことを決定した。
889 Aの証人尋問は同年6月5日の第1回公判期日に実施されたが,その主尋問の中で,検察官
890 Pが,「平成24年4月2日午後零時頃,外出していた甲が自宅に戻った際,あなたに何と言
891 いましたか。」と質問したのに対し,Aは,「甲は,『もし,警察が訪ねてきたら,今日は朝か
892 ら午後零時まで家に俺とお前の2人でいたと言ってくれ。』と言ってきました。」と証言した。
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895 これに対し,弁護人Bは,「ただいまの証言は,伝聞証拠を含むものであるから,排除された
896 い。」旨述べて異議を申し立てた。これに対する意見を裁判所から聴かれた検察官Pは,異議
897 に理由がない旨を陳述した。これを受けて,A裁判所は,この異議の申立てについて決定した
898 [決定]。
899 甲に対する審理は,同年6月8日に結審したが,甲は,終始一貫して黙秘していた。
900
901 〔設問1〕
902 【事例】の事実を前提として,甲が下線部@の犯人であると認定できるか否かについて,具体
903 的な事実を摘示しつつ論じなさい。
904 〔設問2〕
905 下線部Aの[決定]の結論及びその理由について,条文を挙げつつ論じなさい。
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