1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 事]
9
10 司法試験予備試験用法文及び本問末尾添付の資料を適宜参照して,
11 以下の各設問に答えなさい。
12
13
14 なお,
15 以下の〔設問1〕から〔設問3〕では,
16 甲建物の賃貸借契約に関する平成23年5月分以降
17 の賃料及び賃料相当損害金については考慮する必要はない。
18
19
20 〔設問1〕
21 別紙【Xの相談内容】を前提に,
22 弁護士Pは,
23 平成23年11月1日,
24 Xの訴訟代理人として,
25
26 Yに対し,
27 賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物明渡請求権を訴訟物として,
28
29 甲建物の明渡しを求める訴え(以下「本件訴え」という。
30
31 )を提起した。
32
33 そして,
34 弁護士Pは,
35
36 の訴状において,
37 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)として,
38 次の各事実を主
39 張した(なお,
40 これらの事実は,
41 請求を理由づける事実として適切なものであると考えてよい。
42
43 )。
44
45
46 @
47
48 Xは,
49 Yに対し,
50 平成20年6月25日,
51 甲建物を次の約定で賃貸し,
52 同年7月1日,
53 これ
54 に基づいて甲建物を引き渡したとの事実
55 賃貸期間
56
57 平成20年7月1日から5年間
58
59 賃料
60
61 月額20万円
62
63 賃料支払方法
64
65 毎月末日に翌月分を支払う
66
67 A
68
69 平成22年10月から平成23年3月の各末日は経過したとの事実
70
71 B
72
73 Xは,
74 Yに対し,
75 平成23年4月14日,
76 平成22年11月分から平成23年4月分の賃料
77 の支払を催告し,
78 同月28日は経過したとの事実
79
80 C
81
82 Xは,
83 Yに対し,
84 平成23年7月1日,
85 @の契約を解除するとの意思表示をしたとの事実
86
87 上記各事実が記載された訴状の副本の送達を受けたYは,
88 弁護士Qに相談をし,
89 同弁護士はYの
90 訴訟代理人として本件を受任することになった。
91
92 別紙【Yの相談内容】は,
93 弁護士QがYから受け
94 た相談の内容を記載したものである。
95
96 これを前提に,
97 以下の各問いに答えなさい。
98
99 なお,
100 別紙【X
101 の言い分】を考慮する必要はない。
102
103
104 (1)
105
106 別紙【Yの相談内容】の第3段落目の主張を前提とした場合,
107 弁護士Qは,
108 適切な抗弁事実と
109
110 して,
111 次の各事実を主張することになると考えられる。
112
113
114 D
115
116 Yは,
117 平成22年10月頃,
118 甲建物の屋根の雨漏りを修理したとの事実
119
120 E
121
122 Yは,
123 同月20日,
124 Dの費用として150万円を支出したとの事実
125
126 F
127
128 Yは,
129 Xに対し,
130 平成23年6月2日頃,
131 D及びEに基づく債権と本件未払賃料債権とを相
132 殺するとの意思表示をしたとの事実
133 上記DからFまでの各事実について,
134 抗弁事実としてそれらの事実を主張する必要があり,
135
136
137 つ,
138 これで足りると考えられる理由を,
139 実体法の定める要件や当該要件についての主張・立証責
140 任の所在に留意しつつ説明しなさい。
141
142
143 (2)
144
145 別紙【Yの相談内容】を前提とした場合,
146 弁護士Qは,
147 上記(1)の抗弁以外に,
148 どのような抗
149
150 弁を主張することになると考えられるか。
151
152 当該抗弁の内容を端的に記載しなさい(なお,
153 当該抗
154 弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。
155
156 )。
157
158
159 〔設問2〕
160 本件訴えにおいて,
161 弁護士Qは,
162 別紙【Yの相談内容】を前提として,
163 〔設問1〕のとおりの各
164 抗弁を適切に主張するとともに,
165 甲建物の屋根修理工事に要した費用についての証拠として,
166 次の
167 ような本件領収証(斜体部分はすべて手書きである。
168
169 )を,
170 丙川三郎作成にかかるものとして裁判
171 所に提出した。
172
173 これを受けて弁護士PがXと打合せを行ったところ,
174 Xは,
175 別紙【Xの言い分】に
176
177 - 2 -
178
179 記載したとおりの言い分を述べた。
180
181 そこで,
182 弁護士Pは,
183 本件領収証の成立の真正について「否認
184 する」との陳述をした。
185
186
187 この場合,
188 裁判所は,
189 本件領収証の成立の真正についての判断を行う前提として,
190 弁護士Pに対
191 して,
192 更にどのような事項を確認すべきか。
193
194 結論とその理由を説明しなさい。
195
196
197
198 平成22 年10 月20 日
199
200
201
202 但し
203
204
205
206
207
208 150万 円
209 屋根修理代金として
210
211 ○○建装 丙川三郎
212 〔設問3〕
213 本件訴えでは,
214 〔設問1〕のとおりの請求を理由づける事実と各抗弁に係る抗弁事実が適切に主
215 張されたのに加えて,
216 Xから,
217 別紙【Xの言い分】に記載された事実が主張された。
218
219 これに対して,
220
221 Yは,
222 Xが30万円を修理費用として支払ったとの事実(G)を否認した。
223
224 そこで,
225 EからGの各
226 事実の有無に関する証拠調べが行われたところ,
227 裁判所は,
228 Eの事実については,
229 Yが甲建物の屋
230 根の修理費用として実際に150万円を支払い,
231 その金額は相当なものである,
232 Fの事実について
233 は,
234 相殺の意思表示はXによる本件契約の解除の意思表示の後に行われた,
235 Gの事実については,
236
237 XはYに屋根の修理費用の一部として30万円を支払ったとの心証を形成するに至った。
238
239
240 以上の主張及び裁判所の判断を前提とした場合,
241 裁判所は,
242 判決主文において,
243 どのような内容
244 の判断をすることになるか。
245
246 結論とその理由を簡潔に記載しなさい。
247
248
249 以下の設問では,
250
251 〔設問1〕から〔設問3〕までの事例とは関係がないものとして解答しなさい。
252
253
254 〔設問4〕
255 弁護士Aは,
256 弁護士Bを含む4名の弁護士とともに共同法律事務所で執務をしているが,
257 弁護士
258 Bから,
259 その顧問先であり経営状況が厳しいR株式会社について,
260 複数の倒産手続に関する意見を
261 求められ,
262 その際に資金繰りの状況からR株式会社の倒産は避けられない情勢であることを知った。
263
264
265 これを前提に,
266 以下の各問いに答えなさい。
267
268
269 (1)
270
271 弁護士Aは,
272 義父Sから,
273 その経営するT株式会社がR株式会社と共同で事業を行うに当たり,
274
275
276 R株式会社が事業資金を借り入れることについてT株式会社が保証することに関する契約書の検
277 討を依頼された。
278
279 この場合において,
280 弁護士Aが,
281 義父SにR株式会社の経営状況を説明して保
282 証契約を回避するよう助言することに弁護士倫理上の問題はあるか。
283
284 結論とその理由を簡潔に記
285 載しなさい。
286
287
288 (2)
289
290 Aは,
291 義父Sの跡を継ぎ,
292 会社経営に専念するため弁護士登録を取り消してT株式会社の代表
293
294 取締役に就任したが,
295 その後,
296 R株式会社から共同事業を行うことを求められるとともに,
297 R株
298 式会社が事業資金を借り入れることについてT株式会社が保証することを求められた。
299
300 この場合
301 において,
302 Aが,
303 R株式会社の経営状況と倒産が避けられない情勢であることをT株式会社の取
304 締役会において発言することに弁護士倫理上の問題はあるか。
305
306 結論とその理由を簡潔に記載しな
307 さい。
308
309
310
311 - 3 -
312
313 (別
314
315 紙)
316
317 【Xの相談内容】
318 私は,
319 平成20年6月25日,
320 Yに対し,
321 私所有の甲建物を,
322 賃料月額20万円,
323 毎月末日に翌
324 月分払い,
325 期間は同年7月1日から5年間の約束で賃貸し(以下「本件契約」といいます。
326
327 ),
328 同日,
329
330 甲建物を引き渡しました。
331
332
333 Yは,
334 平成22年10月分の賃料までは,
335 月によっては遅れることもあったものの,
336 一応,
337 順調
338 に支払っていたのですが,
339 同年11月分以降は,
340 お金がないなどと言って,
341 賃料を支払わなくなり
342 ました。
343
344
345 私は,
346 Yの亡父が私の古くからの友人であったこともあって,
347 あまり厳しく請求することは控え
348 ていたのですが,
349 平成23年3月末日になっても支払がなかったことから,
350 しびれを切らし,
351 同年
352 4月14日,
353 Yに対し,
354 平成22年11月分から平成23年4月分までの未払賃料合計120万円
355 (以下「本件未払賃料」といいます。
356
357 )を2週間以内に支払うよう求めましたが,
358 Yは一向に支払
359 おうとしません。
360
361
362 そこで,
363 私は,
364 本件未払賃料の支払等に関してYと話し合うことを諦め,
365 Yに対し,
366 平成23年
367 7月1日,
368 賃料不払を理由に,
369 本件契約を解除して,
370 甲建物の明渡しを求めました。
371
372 このように,
373
374 本件契約は終わっているのですから,
375 Yには,
376 一日も早く甲建物を明け渡してほしいと思います。
377
378
379 なお,
380 Yは,
381 甲建物を修理したので,
382 その修理費用と本件未払賃料とを対当額で相殺したとか,
383
384 建物の修理費用を支払うまでは甲建物を明け渡さない等と言って,
385 明渡しを拒否しています。
386
387 Yが
388 甲建物の屋根を修理していたこと自体は認めますが,
389 甲建物はそれほど古いものではありませんの
390 で,
391 Yが言うほどの高額の費用が掛かったとは到底思えません。
392
393 また,
394 Yは,
395 私に対して相殺の意
396 思表示をしたなどと言っていますが,
397 Yから相殺の話が出たのは,
398 同年7月1日に私が解除の意思
399 表示をした後のことです。
400
401
402
403 【Yの相談内容】
404 X所有の甲建物に関する本件契約の内容や,
405 賃料の未払状況及び賃料支払の催告や解除の意思表
406 示があったことは,
407 Xの言うとおりです。
408
409
410 しかし,
411 私は甲建物を明け渡すつもりはありませんし,
412 そのような義務もないと思います。
413
414
415 甲建物は,
416 昭和50年代の後半に建てられたもののようですが,
417 屋根が傷んできていたようで,
418
419 平成22年8月に大雨が降った際に,
420 かなりひどい雨漏りがありました。
421
422 それ以降も,
423 雨が降るた
424 びに雨漏りがひどいので,
425 Xに対して修理の依頼をしたのですが,
426 Xは,
427 そちらで何とかしてほし
428 いと言うばかりで,
429 修理をしてくれませんでした。
430
431 そこで,
432 私は,
433 同年10月頃,
434 仕方なく,
435 自分
436 で150万円の費用を負担して,
437 業者の丙川三郎さんに修理をしてもらったのです。
438
439 この費用は,
440
441 同月20日に私が丙川さんに支払い,
442 その場で丙川さんに領収証(以下「本件領収証」といいます。
443
444
445 を書いてもらいました。
446
447 しかし,
448 これは,
449 本来,
450 私が支払わなければならないものではないので,
451
452 その分を回収するために,
453 私は平成22年11月分以降の賃料の支払をしなかっただけなのです。
454
455
456 ところが,
457 Xは,
458 図図しくも,
459 平成23年4月になって未払分の賃料の支払を求めてきたものです
460 から,
461 しばらく無視していたものの,
462 余りにもうるさいので,
463 最終的には,
464 知人のアドバイスを受
465 けて,
466 同年6月2日頃,
467 Xに対し,
468 甲建物の修理費用と本件未払賃料とを相殺すると言ってやりま
469 した。
470
471
472 また,
473 万が一相殺が認められなかったとしても,
474 私は,
475 Xが甲建物の修理費用を払ってくれるま
476 では,
477 甲建物を明け渡すつもりはありません。
478
479
480
481 - 4 -
482
483 【Xの言い分】
484 甲建物はそれほど老朽化しているというわけでもないのですから,
485 雨漏りの修理に150万円も
486 掛かったとは考えられません。
487
488 Yは修理をしたと言いながら,
489 本件訴えの提起までの間に,
490 私に対
491 し,
492 修理に関する資料を見せたこともありませんでした。
493
494 そこで,
495 実際に,
496 知り合いの業者に尋ね
497 てみたところ,
498 雨漏りの修理程度であれば,
499 せいぜい,
500 30万円くらいのものだと言っていました。
501
502
503 そこで,
504 私は,
505 Yとの紛争を早く解決させたいとの思いから,
506 平成23年8月10日,
507 Yに対して,
508
509 修理費用として30万円を支払っています。
510
511
512 本件訴訟に至って初めて本件領収証の存在を知りましたが,
513 丙川さんは評判の良い業者さんで,
514
515 30万円程度の工事をして150万円もの請求をするような人ではありません。
516
517 したがって,
518 本件
519 領収証は,
520 Yが勝手に作成したものだと思います。
521
522
523 いずれにせよ,
524 Yの主張には理由がないと思います。
525
526
527
528 - 5 -
529
530 頼関係に基づくと認められるもの
531 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
532 四 社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任
533 している事件
534 五 社員が第二十七条、
535 第二十八条又は第六十三条第一号若しく
536 は第二号のいずれかの規定により職務を行い得ない事件
537 (同前)
538 第六十六条 弁護士法人は、
539 前条に規定するもののほか、
540 次の各号
541 のいずれかに該当する事件については、
542 その業務を行ってはなら
543 ない。
544
545 ただし、
546 第一号に掲げる事件についてその依頼者及び相手
547 方が同意した場合、
548 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び
549 他の依頼者のいずれもが同意した場合並びに第三号に掲げる事件
550 についてその依頼者が同意した場合は、
551 この限りでない。
552
553
554 一 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
555 を約している者を相手方とする事件
556 二 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
557 三 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件
558 (同前ー受任後)
559 第六十七条 社員等は、
560 事件を受任した後に第六十三条第三号の規
561 定に該当する事由があることを知ったときは、
562 速やかに、
563 依頼者
564 にその事情を告げ、
565 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとら
566 なければならない。
567
568
569 2 弁護士法人は、
570 事件を受任した後に第六十五条第四号又は第五
571 号の規定に該当する事由があることを知ったときは、
572 速やかに、
573
574 依頼者にその事情を告げ、
575 辞任その他の事案に応じた適切な措置
576 をとらなければならない。
577
578
579 (事件情報の記録等)
580 第六十八条 弁護士法人は、
581 その業務が制限されている事件を受任
582 すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士
583 が職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、
584 その弁
585 護士法人、
586 社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事
587 件の依頼者、
588 相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように
589
590 努める。
591
592
593 (準用)
594 第六十九条 第一章から第三章まで(第十六条、
595 第十九条、
596 第二十
597 三条及び第三章中第二節を除く。
598
599
600
601
602 第六章及び第九章から第十二
603 章までの規定は弁護士法人に準用する。
604
605
606 第九章 他の弁護士との関係における規律
607 (名誉の尊重)
608 第七十条 弁護士は、
609 他の弁護士、
610 弁護士法人及び外国法事務弁護
611 士(以下「弁護士等」という。
612
613
614 )との関係において、
615 相互に名誉
616 と信義を重んじる。
617
618
619 (弁護士に対する不利益行為)
620 第七十一条 弁護士は、
621 信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れ
622 てはならない。
623
624
625 (他の事件への不当介入)
626 第七十二条 弁護士は、
627 他の弁護士等が受任している事件に不当に
628 介入してはならない。
629
630
631 (弁護士間の紛議)
632 第七十三条 弁護士は、
633 他の弁護士等との間の紛議については、
634
635 議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
636
637
638 第十章 裁判の関係における規律
639 (裁判の公正と適正手続)
640 第七十四条 弁護士は、
641 裁判の公正及び適正手続の実現に努める。
642
643
644 (偽証のそそのかし)
645 第七十五条 弁護士は、
646 偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、
647
648 は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
649
650
651 (裁判手続の遅延)
652 第七十六条 弁護士は、
653 怠慢により又は不当な目的のため、
654 裁判手
655 続を遅延させてはならない。
656
657
658 (裁判官等との私的関係の不当利用)
659 第七十七条 弁護士は、
660 その職務を行うに当たり、
661 裁判官、
662 検察官
663 その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係
664 があることを不当に利用してはならない。
665
666
667
668 第十一章 弁護士会との関係における規律
669 (弁護士法等の遵守)
670 第七十八条 弁護士は、
671 弁護士法並びに本会及び所属弁護士会の会
672 則を遵守しなければならない。
673
674
675 (委嘱事項の不当拒絶)
676 第七十九条 弁護士は、
677 正当な理由なく、
678 会則の定めるところによ
679 り、
680 本会、
681 所属弁護士会及び所属弁護士会が弁護士法第四十四条
682 の規定により設けた弁護士会連合会から委嘱された事項を行うこ
683 とを拒絶してはならない。
684
685
686 第十二章 官公署との関係における規律
687 (委嘱事項の不当拒絶)
688 第八十条 弁護士は、
689 正当な理由なく、
690 法令により官公署から委嘱
691 された事項を行うことを拒絶してはならない。
692
693
694 (受託の制限)
695 第八十一条 弁護士は、
696 法令により官公署から委嘱された事項につ
697 いて、
698 職務の公正を保ち得ない事由があるときは、
699 その委嘱を受
700 けてはならない。
701
702
703 第十三章 解釈適用指針
704 (解釈適用指針)
705 第八十二条 この規程は、
706 弁護士の職務の多様性と個別性にかんが
707 み、
708 その自由と独立を不当に侵すことのないよう、
709 実質的に解釈
710 し適用しなければならない。
711
712 第五条の解釈適用に当たって、
713 刑事
714 弁護においては、
715 被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護
716 権を侵害することのないように留意しなければならない。
717
718
719 2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、
720 第二十六条、
721 第三
722 十三条、
723 第三十七条第二項、
724 第四十六条から第四十八条まで、
725
726 五十条、
727 第五十五条、
728 第五十九条、
729 第六十一条、
730 第六十八条、
731
732 七十条、
733 第七十三条及び第七十四条の規定は、
734 弁護士の職務の行
735 動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければな
736 らない。
737
738
739 附 則
740 この規程は、
741 平成十七年四月一日から施行する。
742
743
744
745 - 6 -
746
747 について、
748 必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努
749 める。
750
751
752 (防御権の説明等)
753 第四十八条 弁護士は、
754 被疑者及び被告人に対し、
755 黙秘権その他の
756 防御権について適切な説明及び助言を行い、
757 防御権及び弁護権に
758 対する違法又は不当な制限に対し、
759 必要な対抗措置をとるように
760 努める。
761
762
763 (国選弁護における対価受領等)
764 第四十九条 弁護士は、
765 国選弁護人に選任された事件について、
766
767 目のいかんを問わず、
768 被告人その他の関係者から報酬その他の対
769 価を受領してはならない。
770
771
772 2 弁護士は、
773 前項の事件について、
774 被告人その他の関係者に対し、
775
776 その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。
777
778
779 ただし、
780 本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある
781 場合は、
782 この限りでない。
783
784
785 第五章 組織内弁護士における規律
786 (自由と独立)
787 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。
788
789 以下これら
790 を合わせて「組織」という。
791
792
793 )において職員若しくは使用人とな
794 り、
795 又は取締役、
796 理事その他の役員となっている弁護士(以下「組
797 織内弁護士」という。
798
799
800 )は、
801 弁護士の使命及び弁護士の本質であ
802 る自由と独立を自覚し、
803 良心に従って職務を行うように努める。
804
805
806 (違法行為に対する措置)
807 第五十一条 組織内弁護士は、
808 その担当する職務に関し、
809 その組織
810 に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、
811 又は行おうとし
812 ていることを知ったときは、
813 その者、
814 自らが所属する部署の長又
815 はその組織の長、
816 取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対
817 する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとら
818 なければならない。
819
820
821 第六章 事件の相手方との関係における規律
822 (相手方本人との直接交渉)
823 第五十二条 弁護士は、
824 相手方に法令上の資格を有する代理人が選
825 任されたときは、
826 正当な理由なく、
827 その代理人の承諾を得ないで
828 直接相手方と交渉してはならない。
829
830
831 (相手方からの利益の供与)
832 第五十三条 弁護士は、
833 受任している事件に関し、
834 相手方から利益
835 の供与若しくは供応を受け、
836 又はこれを要求し、
837 若しくは約束を
838 してはならない。
839
840
841 (相手方に対する利益の供与)
842 第五十四条 弁護士は、
843 受任している事件に関し、
844 相手方に対し、
845
846 利益の供与若しくは供応をし、
847 又は申込みをしてはならない。
848
849
850 第七章 共同事務所における規律
851
852 (遵守のための措置)
853 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所
854 である場合を除く。
855
856
857 )を共にする場合(以下この法律事務所を「共
858 同事務所」という。
859
860
861 )において、
862 その共同事務所に所属する弁護
863 士(以下「所属弁護士」という。
864
865
866 )を監督する権限のある弁護士
867 は、
868 所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるよ
869 うに努める。
870
871
872 (秘密の保持)
873 第五十六条 所属弁護士は、
874 他の所属弁護士の依頼者について執務
875 上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、
876 又は利用してはな
877 らない。
878
879 その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、
880 同様と
881 する。
882
883
884 (職務を行い得ない事件)
885 第五十七条 所属弁護士は、
886 他の所属弁護士(所属弁護士であった
887 場合を含む。
888
889
890 )が、
891 第二十七条又は第二十八条の規定により職務
892 を行い得ない事件については、
893 職務を行ってはならない。
894
895 ただし、
896
897 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
898 この限りでない。
899
900
901 (同前ー受任後)
902 第五十八条 所属弁護士は、
903 事件を受任した後に前条に該当する事
904 由があることを知ったときは、
905 速やかに、
906 依頼者にその事情を告
907 げて、
908 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければなら
909 ない。
910
911
912 (事件情報の記録等)
913 第五十九条 所属弁護士は、
914 職務を行い得ない事件の受任を防止す
915 るため、
916 他の所属弁護士と共同して、
917 取扱い事件の依頼者、
918 相手
919 方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
920
921
922 (準用)
923 第六十条 この章の規定は、
924 弁護士が外国法事務弁護士と事務所を
925 共にする場合に準用する。
926
927 この場合において、
928 第五十五条中「複
929 数の弁護士が」とあるのは「弁護士及び外国法事務弁護士が」と、
930
931 「共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という。
932
933
934
935
936 とあるのは「共同事務所に所属する外国法事務弁護士(以下「所
937 属外国法事務弁護士」という。
938
939
940
941 」と、
942
943 「所属弁護士が」とあるの
944 は「所属外国法事務弁護士が」と、
945 第五十六条から第五十九条ま
946 での規定中「他の所属弁護士」とあるのは「所属外国法事務弁護
947 士」と、
948 第五十七条中「第二十七条又は第二十八条」とあるのは
949 「外国特別会員基本規程第三十条の二において準用する第二十七
950 条又は第二十八条」と読み替えるものとする。
951
952
953 第八章 弁護士法人における規律
954 (遵守のための措置)
955 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、
956 その弁護士法人の
957 社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という。
958
959
960 )及び使
961
962 用人である外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な
963 措置をとるように努める。
964
965
966 (秘密の保持)
967 第六十二条 社員等は、
968 その弁護士法人、
969 他の社員等又は使用人で
970 ある外国法事務弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正
971 当な理由なく他に漏らし、
972 又は利用してはならない。
973
974 社員等でな
975 くなった後も、
976 同様とする。
977
978
979 (職務を行い得ない事件)
980 第六十三条 社員等(第一号及び第二号の場合においては、
981 社員等
982 であった者を含む。
983
984
985 )は、
986 次に掲げる事件については、
987 職務を行
988 ってはならない。
989
990 ただし、
991 第四号に掲げる事件については、
992 その
993 弁護士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、
994
995 の限りでない。
996
997
998 一 社員等であった期間内に、
999 その弁護士法人が相手方の協議を
1000 受けて賛助し、
1001 又はその依頼を承諾した事件であって、
1002 自らこ
1003 れに関与したもの
1004 二 社員等であった期間内に、
1005 その弁護士法人が相手方の協議を
1006 受けた事件で、
1007 その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと
1008 認められるものであって、
1009 自らこれに関与したもの
1010 三 その弁護士法人が相手方から受任している事件
1011 四 その弁護士法人が受任している事件(当該社員等が自ら関与
1012 しているものに限る。
1013
1014
1015 )の相手方からの依頼による他の事件
1016 (他の社員等との関係で職務を行い得ない事件)
1017 第六十四条 社員等は、
1018 他の社員等が第二十七条、
1019 第二十八条又は
1020 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
1021 行い得ない事件については、
1022 職務を行ってはならない。
1023
1024 ただし、
1025
1026 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
1027 この限りでない。
1028
1029
1030 2 社員等は、
1031 使用人である外国法事務弁護士が外国特別会員基本
1032 規程第三十条の二において準用する第二十七条、
1033 第二十八条又は
1034 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
1035 行い得ない事件については、
1036 職務を行ってはならない。
1037
1038 ただし、
1039
1040 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
1041 この限りでない。
1042
1043
1044 (業務を行い得ない事件)
1045 第六十五条 弁護士法人は、
1046 次の各号のいずれかに該当する事件に
1047 ついては、
1048 その業務を行ってはならない。
1049
1050 ただし、
1051 第三号に規定
1052 する事件については受任している事件の依頼者の同意がある場合
1053 及び第五号に規定する事件についてはその職務を行い得ない社員
1054 がその弁護士法人の社員の総数の半数未満であり、
1055 かつ、
1056 その弁
1057 護士法人に業務の公正を保ち得る事由がある場合は、
1058 この限りで
1059 ない。
1060
1061
1062 一 相手方の協議を受けて賛助し、
1063 又はその依頼を承諾した事件
1064 二 相手方の協議を受けた事件で、
1065 その協議の程度及び方法が信
1066
1067 - 7 -
1068
1069 (依頼者との金銭貸借等)
1070 第二十五条 弁護士は、
1071 特別の事情がない限り、
1072 依頼者と金銭の貸
1073 借をし、
1074 又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、
1075 若しく
1076 は依頼者の債務について保証をしてはならない。
1077
1078
1079 (依頼者との紛議)
1080 第二十六条 弁護士は、
1081 依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じな
1082 いように努め、
1083 紛議が生じたときは、
1084 所属弁護士会の紛議調停で
1085 解決するように努める。
1086
1087
1088 第二節 職務を行い得ない事件の規律
1089 (職務を行い得ない事件)
1090 第二十七条 弁護士は、
1091 次の各号のいずれかに該当する事件につい
1092 ては、
1093 その職務を行ってはならない。
1094
1095 ただし、
1096 第三号に掲げる事
1097 件については、
1098 受任している事件の依頼者が同意した場合は、
1099
1100 の限りでない。
1101
1102
1103 一 相手方の協議を受けて賛助し、
1104 又はその依頼を承諾した事件
1105 二 相手方の協議を受けた事件で、
1106 その協議の程度及び方法が信
1107 頼関係に基づくと認められるもの
1108 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
1109 四 公務員として職務上取り扱った事件
1110 五 仲裁、
1111 調停、
1112 和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手
1113 続実施者として取り扱った事件
1114 (同前)
1115 第二十八条 弁護士は、
1116 前条に規定するもののほか、
1117 次の各号のい
1118 ずれかに該当する事件については、
1119 その職務を行ってはならない。
1120
1121
1122 ただし、
1123 第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同
1124 意した場合、
1125 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方
1126 が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及
1127 び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、
1128 この限りでない。
1129
1130
1131 一 相手方が配偶者、
1132 直系血族、
1133 兄弟姉妹又は同居の親族である
1134 事件
1135 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
1136 を約している者を相手方とする事件
1137 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
1138 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
1139 第三節 事件の受任時における規律
1140 (受任の際の説明等)
1141 第二十九条 弁護士は、
1142 事件を受任するに当たり、
1143 依頼者から得た
1144 情報に基づき、
1145 事件の見通し、
1146 処理の方法並びに弁護士報酬及び
1147 費用について、
1148 適切な説明をしなければならない。
1149
1150
1151 2 弁護士は、
1152 事件について、
1153 依頼者に有利な結果となることを請
1154 け合い、
1155 又は保証してはならない。
1156
1157
1158 3 弁護士は、
1159 依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにも
1160
1161 かかわらず、
1162 その見込みがあるように装って事件を受任してはな
1163 らない。
1164
1165
1166 (委任契約書の作成)
1167 第三十条 弁護士は、
1168 事件を受任するに当たり、
1169 弁護士報酬に関す
1170 る事項を含む委任契約書を作成しなければならない。
1171
1172 ただし、
1173
1174 任契約書を作成することに困難な事由があるときは、
1175 その事由が
1176 止んだ後、
1177 これを作成する。
1178
1179
1180 2 前項の規定にかかわらず、
1181 受任する事件が、
1182 法律相談、
1183 簡易な
1184 書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものである
1185 ときその他合理的な理由があるときは、
1186 委任契約書の作成を要し
1187 ない。
1188
1189
1190 (不当な事件の受任)
1191 第三十一条 弁護士は、
1192 依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに
1193 不当な事件を受任してはならない。
1194
1195
1196 (不利益事項の説明)
1197 第三十二条 弁護士は、
1198 同一の事件について複数の依頼者があって
1199 その相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、
1200 事件を受
1201 任するに当たり、
1202 依頼者それぞれに対し、
1203 辞任の可能性その他の
1204 不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。
1205
1206
1207 (法律扶助制度等の説明)
1208 第三十三条 弁護士は、
1209 依頼者に対し、
1210 事案に応じ、
1211 法律扶助制度、
1212
1213 訴訟救助制度その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を
1214 説明し、
1215 裁判を受ける権利が保障されるように努める。
1216
1217
1218 (受任の諾否の通知)
1219 第三十四条 弁護士は、
1220 事件の依頼があったときは、
1221 速やかに、
1222
1223 の諾否を依頼者に通知しなければならない。
1224
1225
1226 第四節 事件の処理における規律
1227 (事件の処理)
1228 第三十五条 弁護士は、
1229 事件を受任したときは、
1230 速やかに着手し、
1231
1232 遅滞なく処理しなければならない。
1233
1234
1235 (事件処理の報告及び協議)
1236 第三十六条 弁護士は、
1237 必要に応じ、
1238 依頼者に対して、
1239 事件の経過
1240 及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、
1241 依頼者と協議しな
1242 がら事件の処理を進めなければならない。
1243
1244
1245 (法令等の調査)
1246 第三十七条 弁護士は、
1247 事件の処理に当たり、
1248 必要な法令の調査を
1249 怠ってはならない。
1250
1251
1252 2 弁護士は、
1253 事件の処理に当たり、
1254 必要かつ可能な事実関係の調
1255 査を行うように努める。
1256
1257
1258 (預り金の保管)
1259 第三十八条 弁護士は、
1260 事件に関して依頼者、
1261 相手方その他利害関
1262 係人から金員を預かったときは、
1263 自己の金員と区別し、
1264 預り金で
1265
1266 あることを明確にする方法で保管し、
1267 その状況を記録しなければ
1268 ならない。
1269
1270
1271 (預り品の保管)
1272 第三十九条 弁護士は、
1273 事件に関して依頼者、
1274 相手方その他利害関
1275 係人から書類その他の物品を預かったときは、
1276 善良な管理者の注
1277 意をもって保管しなければならない。
1278
1279
1280 (他の弁護士の参加)
1281 第四十条 弁護士は、
1282 受任している事件について、
1283 依頼者が他の弁
1284 護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、
1285 正当な理由な
1286 く、
1287 これを妨げてはならない。
1288
1289
1290 (受任弁護士間の意見不一致)
1291 第四十一条 弁護士は、
1292 同一の事件を受任している他の弁護士又は
1293 弁護士法人との間に事件の処理について意見が一致せず、
1294 これに
1295 より、
1296 依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、
1297 依頼者に対
1298 し、
1299 その事情を説明しなければならない。
1300
1301
1302 (受任後の利害対立)
1303 第四十二条 弁護士は、
1304 複数の依頼者があって、
1305 その相互間に利害
1306 の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、
1307 依頼者相互間に
1308 現実に利害の対立が生じたときは、
1309 依頼者それぞれに対し、
1310 速や
1311 かに、
1312 その事情を告げて、
1313 辞任その他の事案に応じた適切な措置
1314 をとらなければならない。
1315
1316
1317 (信頼関係の喪失)
1318 第四十三条 弁護士は、
1319 受任した事件について、
1320 依頼者との間に信
1321 頼関係が失われ、
1322 かつ、
1323 その回復が困難なときは、
1324 その旨を説明
1325 し、
1326 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならな
1327 い。
1328
1329
1330 第五節 事件の終了時における規律
1331 (処理結果の説明)
1332 第四十四条 弁護士は、
1333 委任の終了に当たり、
1334 事件処理の状況又は
1335 その結果に関し、
1336 必要に応じ法的助言を付して、
1337 依頼者に説明し
1338 なければならない。
1339
1340
1341 (預り金等の返還)
1342 第四十五条 弁護士は、
1343 委任の終了に当たり、
1344 委任契約に従い、
1345
1346 銭を清算したうえ、
1347 預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければ
1348 ならない。
1349
1350
1351 第四章 刑事弁護における規律
1352 (刑事弁護の心構え)
1353 第四十六条 弁護士は、
1354 被疑者及び被告人の防御権が保障されてい
1355 ることにかんがみ、
1356 その権利及び利益を擁護するため、
1357 最善の弁
1358 護活動に努める。
1359
1360
1361 (接見の確保と身体拘束からの解放)
1362 第四十七条 弁護士は、
1363 身体の拘束を受けている被疑者及び被告人
1364
1365 - 8 -
1366
1367 弁護士職務基本規程(平成十六年十一月十日会規第七十号)
1368 目次
1369 第一章 基本倫理(第一条ー第八条)
1370 第二章 一般規律(第九条ー第十九条)
1371 第三章 依頼者との関係における規律
1372 第一節 通則(第二十条ー第二十六条)
1373 第二節 職務を行い得ない事件の規律(第二十七条・第二十八
1374 条)
1375 第三節 事件の受任時における規律(第二十九条ー第三十四条)
1376 第四節 事件の処理における規律(第三十五条ー第四十三条)
1377 第五節 事件の終了時における規律(第四十四条・第四十五条)
1378 第四章 刑事弁護における規律(第四十六条―第四十九条)
1379 第五章 組織内弁護士における規律(第五十条・第五十一条)
1380 第六章 事件の相手方との関係における規律(第五十二条ー第五
1381 十四条)
1382 第七章 共同事務所における規律(第五十五条―第六十条)
1383 第八章 弁護士法人における規律(第六十一条―第六十九条)
1384 第九章 他の弁護士との関係における規律(第七十条ー第七十三
1385 条)
1386 第十章 裁判の関係における規律(第七十四条―第七十七条)
1387 第十一章 弁護士会との関係における規律(第七十八条・第七十
1388 九条)
1389 第十二章 官公署との関係における規律(第八十条・第八十一条)
1390 第十三章 解釈適用指針(第八十二条)
1391 附則
1392 弁護士は、
1393 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
1394
1395
1396 その使命達成のために、
1397 弁護士には職務の自由と独立が要請され、
1398
1399 高度の自治が保障されている。
1400
1401
1402 弁護士は、
1403 その使命を自覚し、
1404 自らの行動を規律する社会的責任
1405 を負う。
1406
1407
1408 よって、
1409 ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに
1410 するため、
1411 弁護士職務基本規程を制定する。
1412
1413
1414 第一章 基本倫理
1415 (使命の自覚)
1416 第一条 弁護士は、
1417 その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現
1418 にあることを自覚し、
1419 その使命の達成に努める。
1420
1421
1422 (自由と独立)
1423 第二条 弁護士は、
1424 職務の自由と独立を重んじる。
1425
1426
1427 (弁護士自治)
1428 第三条 弁護士は、
1429 弁護士自治の意義を自覚し、
1430 その維持発展に努
1431
1432 める。
1433
1434
1435 (司法独立の擁護)
1436 第四条 弁護士は、
1437 司法の独立を擁護し、
1438 司法制度の健全な発展に
1439 寄与するように努める。
1440
1441
1442 (信義誠実)
1443 第五条 弁護士は、
1444 真実を尊重し、
1445 信義に従い、
1446 誠実かつ公正に職
1447 務を行うものとする。
1448
1449
1450 (名誉と信用)
1451 第六条 弁護士は、
1452 名誉を重んじ、
1453 信用を維持するとともに、
1454 廉潔
1455 を保持し、
1456 常に品位を高めるように努める。
1457
1458
1459 (研鑽)
1460 第七条 弁護士は、
1461 教養を深め、
1462 法令及び法律事務に精通するため、
1463
1464 研鑽に努める。
1465
1466
1467 (公益活動の実践)
1468 第八条 弁護士は、
1469 その使命にふさわしい公益活動に参加し、
1470 実践
1471 するように努める。
1472
1473
1474 第二章 一般規律
1475 (広告及び宣伝)
1476 第九条 弁護士は、
1477 広告又は宣伝をするときは、
1478 虚偽又は誤導にわ
1479 たる情報を提供してはならない。
1480
1481
1482 2 弁護士は、
1483 品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
1484
1485
1486 (依頼の勧誘等)
1487 第十条 弁護士は、
1488 不当な目的のため、
1489 又は品位を損なう方法によ
1490 り、
1491 事件の依頼を勧誘し、
1492 又は事件を誘発してはならない。
1493
1494
1495 (非弁護士との提携)
1496 第十一条 弁護士は、
1497 弁護士法第七十二条から第七十四条までの規
1498 定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当
1499 な理由のある者から依頼者の紹介を受け、
1500 これらの者を利用し、
1501
1502 又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
1503
1504
1505 (報酬分配の制限)
1506 第十二条 弁護士は、
1507 その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法
1508 人でない者との間で分配してはならない。
1509
1510 ただし、
1511 法令又は本会
1512 若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その
1513 他正当な理由がある場合は、
1514 この限りでない。
1515
1516
1517 (依頼者紹介の対価)
1518 第十三条 弁護士は、
1519 依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その
1520 他の対価を支払ってはならない。
1521
1522
1523 2 弁護士は、
1524 依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価
1525 を受け取ってはならない。
1526
1527
1528 (違法行為の助長)
1529 第十四条 弁護士は、
1530 詐欺的取引、
1531 暴力その他違法若しくは不正な
1532 行為を助長し、
1533 又はこれらの行為を利用してはならない。
1534
1535
1536
1537 (品位を損なう事業への参加)
1538 第十五条 弁護士は、
1539 公序良俗に反する事業その他品位を損なう事
1540 業を営み、
1541 若しくはこれに加わり、
1542 又はこれらの事業に自己の名
1543 義を利用させてはならない。
1544
1545
1546 (営利業務従事における品位保持)
1547 第十六条 弁護士は、
1548 自ら営利を目的とする業務を営むとき、
1549 又は
1550 営利を目的とする業務を営む者の取締役、
1551 執行役その他業務を執
1552 行する役員若しくは使用人となったときは、
1553 営利を求めることに
1554 とらわれて、
1555 品位を損なう行為をしてはならない。
1556
1557
1558 (係争目的物の譲受け)
1559 第十七条 弁護士は、
1560 係争の目的物を譲り受けてはならない。
1561
1562
1563 (事件記録の保管等)
1564 第十八条 弁護士は、
1565 事件記録を保管又は廃棄するに際しては、
1566
1567 密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなけれ
1568 ばならない。
1569
1570
1571 (事務職員等の指導監督)
1572 第十九条 弁護士は、
1573 事務職員、
1574 司法修習生その他の自らの職務に
1575 関与させた者が、
1576 その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に
1577 及び、
1578 又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、
1579
1580 若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければな
1581 らない。
1582
1583
1584 第三章 依頼者との関係における規律
1585 第一節 通則
1586 (依頼者との関係における自由と独立)
1587 第二十条 弁護士は、
1588 事件の受任及び処理に当たり、
1589 自由かつ独立
1590 の立場を保持するように努める。
1591
1592
1593 (正当な利益の実現)
1594 第二十一条 弁護士は、
1595 良心に従い、
1596 依頼者の権利及び正当な利益
1597 を実現するように努める。
1598
1599
1600 (依頼者の意思の尊重)
1601 第二十二条 弁護士は、
1602 委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重し
1603 て職務を行うものとする。
1604
1605
1606 2 弁護士は、
1607 依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に
1608 表明できないときは、
1609 適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に
1610 努める。
1611
1612
1613 (秘密の保持)
1614 第二十三条 弁護士は、
1615 正当な理由なく、
1616 依頼者について職務上知
1617 り得た秘密を他に漏らし、
1618 又は利用してはならない。
1619
1620
1621 (弁護士報酬)
1622 第二十四条 弁護士は、
1623 経済的利益、
1624 事案の難易、
1625 時間及び労力そ
1626 の他の事情に照らして、
1627 適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなけ
1628 ればならない。
1629
1630
1631
1632 - 9 -
1633
1634 [刑
1635
1636 事]
1637
1638 次の【事例】を読んで,
1639 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1640
1641
1642 【事
1643
1644
1645 例】
1646 V(男性,
1647 28歳)は,
1648 平成24年4月2日午前11時頃,
1649 H県I市内のTマンション30
1650 4号室のV宅に1人でいた際,
1651 インターホンを通じて宅配便荷物を届けに来た旨を言われたこ
1652 とから,
1653 自ら玄関ドアを開けたところ,
1654 @男(以下「犯人」という。
1655
1656 )に,
1657 突然,
1658 右腕をつか
1659 まれた。
1660
1661 そして,
1662 Vは,
1663 犯人から刃物を突き付けられながら,
1664 「金はどこだ。
1665
1666 言わないと殺す
1667 ぞ。
1668
1669
1670 」と言われたので恐ろしくなり,
1671
1672 「居間のテーブルに財布があります。
1673
1674 」と答えた。
1675
1676 すると,
1677
1678 犯人は,
1679 着用していたジャンパーの右ポケットから,
1680 ひもを取り出し,
1681 これでVの手首,
1682 足首
1683 を縛った上,
1684 さらにジャンパーの左ポケットからガムテープを取り出して,
1685 これをVの口を塞
1686 ぐようにして巻き,
1687 Vを玄関の上がり口に放置した。
1688
1689 その後,
1690 Vが犯人の様子を観察している
1691 と,
1692 犯人は居間に行き,
1693 テーブルの上に財布があるのを確認するなどした後,
1694 最終的に,
1695 Vの
1696 財布を右手に持って玄関から出て行った。
1697
1698
1699 同日午前11時30分頃,
1700 Vの妻Wが外出先から帰宅し,
1701 縛られたVを発見してひもやガム
1702 テープを外した。
1703
1704 Vは,
1705 すぐに居間などの犯人が出入りした部屋に行き,
1706 被害の有無を確認し
1707 たところ,
1708 タンスを開けられるなど金品を物色された跡があったものの,
1709 財産的被害について
1710 は,
1711 居間のテーブルにあった財布1個を奪われただけであることを確認した。
1712
1713 その上で,
1714 Vは,
1715
1716 110番通報をし,
1717 強盗の被害に遭ったことを訴えるとともに,
1718 財布に入っていたクレジット
1719 カードを利用できないようにするために,
1720 発行会社に連絡した。
1721
1722
1723
1724
1725
1726 同日午前11時45分頃,
1727 I警察署の司法警察員Kら司法警察職員4名はV宅に臨場し,
1728
1729 されたガムテープとひもを領置した後,
1730 玄関の上がり口にレシートが1枚落ちているのを発見
1731 した。
1732
1733 このレシートは,
1734 同日午前10時45分にTマンションから約200メートル離れたコ
1735 ンビニエンスストアZにおいて,
1736 ガムテープとひもを購入したことを示すものであった。
1737
1738 この
1739 レシートについて,
1740 Vは,
1741 「私が受け取ったものではない。
1742
1743 今日は,
1744 被害に遭うまでの間,
1745
1746 宅に誰も入っていないので,
1747 犯人が落とした物だと思う。
1748
1749 」旨説明し,
1750 Wも,
1751 「私が受け取った
1752 ものではない。
1753
1754 」旨説明した。
1755
1756 これを受けて,
1757 司法警察員Kは,
1758 このレシートを遺留物として
1759 領置した。
1760
1761 なお,
1762 臨場した司法警察職員4名の中に,
1763 前記Zを利用したことがある者はいなか
1764 った。
1765
1766
1767 また,
1768 臨場した司法警察職員の一部が鑑識作業に従事し,
1769 外側の玄関ドアノブから2種類の
1770 指紋を採取したが,
1771 物色されたタンスからは指紋を採取できなかった。
1772
1773
1774 さらに,
1775 Vは,
1776 司法警察員Kに対し,
1777 被害状況について,
1778 前記の状況や財布に現金2万円,
1779
1780 V名義のクレジットカード1枚が入っていたことなどを供述したが,
1781 犯人については,
1782 「会っ
1783 たことも見たこともない男である。
1784
1785 身長約180センチメートル,
1786 がっちりとした体格,
1787 20
1788 歳代くらい,
1789 緑色のジャンパーとサングラスを着用していたことくらいしか分からない。
1790
1791 手袋
1792 をはめていたかどうかも覚えていない。
1793
1794 」旨を供述した。
1795
1796
1797
1798
1799
1800 同日午後3時頃,
1801 赤色のジャンパーを着用していた甲が,
1802 H県I市内所在の家電量販店Sの
1803 電気製品売場において,
1804 V名義のクレジットカードを使用してパソコンを購入しようとした。
1805
1806
1807 しかし,
1808 店員は,
1809 V名義のクレジットカードの利用が停止されていることに気付き,
1810 警察に通
1811 報するとともに,
1812 何かと理由を付けて甲を店内に引き止めていた。
1813
1814 その後,
1815 司法警察員Kが同
1816 売場に到着し,
1817 甲にVかどうかを確認したところ,
1818 「Vではなく,
1819 甲である。
1820
1821 」と答えた。
1822
1823 しか
1824 し,
1825 甲は,
1826 同クレジットカードを所持していた理由については,
1827 黙秘した。
1828
1829 そこで,
1830 司法警察
1831 員Kは,
1832 甲を詐欺未遂により緊急逮捕した。
1833
1834 そして,
1835 この際,
1836 司法警察員Kは,
1837 同クレジット
1838
1839 - 10 -
1840
1841 カードを差し押さえた。
1842
1843
1844 甲は,
1845 I警察署に引致された後,
1846 「宅配便荷物を取り扱う会社Uに配送員として勤務してい
1847 る。
1848
1849 ひったくりによる窃盗の前科が2犯ある。
1850
1851 」などと自らの身上関係については供述し,
1852
1853 述調書の作成にも応じるものの,
1854 その他については,
1855 一切黙秘した。
1856
1857 なお,
1858 甲の年齢について
1859 は,
1860 27歳であること,
1861 甲の体格については,
1862 身長182センチメートル,
1863 体重95キログラ
1864 ムであること,
1865 甲の前科については,
1866 甲の供述どおり,
1867 窃盗の前科2犯があることが判明した。
1868
1869
1870 また,
1871 司法警察員Kが会社Uの担当者に甲の勤務状況について確認したところ,
1872 甲は,
1873 同年
1874 3月31日にV宅に宅配便荷物を届けていたこと,
1875 同年4月2日は休みであったことが判明し
1876 た。
1877
1878 そこで,
1879 司法警察員Kが,
1880 Vに対し,
1881 電話で,
1882 同年3月31日に会社Uから宅配便荷物が
1883 届けられたか否かを確認したところ,
1884 Vは,
1885 「その日,
1886 確かに私が会社Uが取り扱う宅配便荷
1887 物を受領した。
1888
1889 ただ,
1890 これを届けてきた人物については,
1891 男であったことしか覚えていない。
1892
1893
1894 旨供述した。
1895
1896
1897
1898
1899 同年4月2日午後6時30分頃,
1900 司法警察員Kは,
1901 部下を連れて甲の自宅に行き,
1902 同所にお
1903 いて,
1904 捜索差押許可状に基づき,
1905 甲の妻Aを立会人として捜索差押えを実施し,
1906 財布1個,
1907
1908 色のジャンパー1着,
1909 サングラス1個,
1910 果物ナイフ2本及び包丁2本を差し押さえた。
1911
1912 その後,
1913
1914 Aは,
1915 同日午後8時頃からI警察署において実施された取調べにおいて,
1916 以下のとおり,
1917 供述
1918 した。
1919
1920
1921
1922 (1)
1923
1924 同日午後零時頃の甲の言動について
1925 甲は,
1926 今日の午前9時30分頃,
1927 外出した。
1928
1929 その際,
1930 甲がどのような着衣で外出したのか
1931 見ていないので分からない。
1932
1933 その後,
1934 今日の午後零時頃,
1935 甲が自宅に戻り,
1936 甲の部屋に入っ
1937 て出てくると,
1938 財布を渡してきた。
1939
1940 そのとき,
1941 甲は,
1942 赤色のジャンパーを着用していたが,
1943
1944 サングラスは着用していなかった。
1945
1946 私が,
1947 「どうしたの。
1948
1949 」と聞くと,
1950 「友達にもらった。
1951
1952 」と
1953 言ってきた。
1954
1955 しかし,
1956 甲に財布をあげる知人などいるはずがなく,
1957 過去にひったくりで捕ま
1958 った前科もあったので,
1959 犯罪で得たものではないかと思い,
1960 「違うでしょ。
1961
1962 まさか,
1963 また悪
1964 いことしていないよね。
1965
1966 」と言った。
1967
1968 すると,
1969 甲は,
1970 「そんなことない。
1971
1972 ただ,
1973 お前がそのよ
1974 うに疑うなら,
1975 警察も同じように疑うかもしれない。
1976
1977 もし,
1978 警察が訪ねてきたら,
1979 今日は朝
1980 から午後零時まで家に俺とお前の2人でいたと言ってくれ。
1981
1982 警察に疑われたくないからね。
1983
1984
1985 と言ってきた。
1986
1987 その後,
1988 すぐに,
1989 甲は,
1990 財布を置いて出て行った。
1991
1992
1993
1994 (2)
1995
1996 差し押さえた財布1個,
1997 緑色のジャンパー1着及びサングラス1個について
1998 財布は,
1999 甲が今日の午後零時頃,
2000 自宅に置いていったものであるが,
2001 何も入っていなかっ
2002 た。
2003
2004 緑色のジャンパーとサングラスは,
2005 甲の部屋にあったものだが,
2006 今日,
2007 着用していたか
2008 どうかは分からない。
2009
2010
2011
2012 (3)
2013
2014 差し押さえた果物ナイフ2本及び包丁2本について
2015 2本の果物ナイフのうち,
2016 1本は古くなって切れ味が悪くなったので,
2017 捨てようと思い,
2018
2019 新聞紙にくるんで台所に置いていた。
2020
2021 残りの1本は,
2022 私が甲に頼んで,
2023 昨日,
2024 甲に買ってき
2025 てもらったものである。
2026
2027 使えなくなった1本を除く,
2028 3本の刃物については,
2029 今日の午前
2030 11時30分頃,
2031 昼食を作る際には台所にあった。
2032
2033 いずれも,
2034 今日,
2035 甲が持ち出したことは
2036 ない。
2037
2038
2039
2040
2041
2042 司法警察員Kは,
2043 財布を強取した犯人が甲に間違いないと判断するとともに,
2044 これについて
2045 も,
2046 前記詐欺未遂と併せてH地方検察庁検察官に送致した方が良いと判断し,
2047 同月3日,
2048 H地
2049 方裁判所裁判官から逮捕状の発付を受けた上で,
2050 甲を住居侵入・強盗の被疑事実により逮捕し
2051 た。
2052
2053 その後,
2054 同月4日,
2055 甲は,
2056 詐欺未遂,
2057 住居侵入・強盗の送致事実によりH地方検察庁検察
2058 官に送致された後,
2059 所要の手続を経て同日中に勾留された。
2060
2061
2062
2063
2064 (1)
2065
2066 その後,
2067 甲が被疑者として勾留されている間,
2068 以下の捜査結果が得られた。
2069
2070
2071 指紋に関する捜査
2072 - 11 -
2073
2074 V宅で領置したレシートからは,
2075 甲の指紋が検出された。
2076
2077 また,
2078 玄関ドアノブから採取し
2079 た2種類の指紋については,
2080 甲の指紋とWの指紋と一致することが判明した。
2081
2082 なお,
2083 甲宅で
2084 差し押さえた財布からは指紋が検出されなかった。
2085
2086
2087 (2)
2088
2089 Vに対する事情聴取
2090 司法警察員KがVに,
2091 差し押さえた前記証拠物について確認したところ,
2092 Vは,
2093 クレジッ
2094 トカードについては,
2095 「私名義ですし,
2096 奪われた財布の中に入っていたものに間違いありま
2097 せん。
2098
2099 」と供述したが,
2100 財布については,
2101 「私が奪われた財布の形,
2102 色とよく似ていますが,
2103
2104 私のものかはっきりしません。
2105
2106 」と供述し,
2107 緑色のジャンパーとサングラスについては,
2108 「犯
2109 人が着用していたものと同じものかよく分かりません。
2110
2111 」と供述した。
2112
2113 また,
2114 Vは,
2115 果物ナ
2116 イフ2本及び包丁2本については,
2117 「包丁2本については,
2118 明らかに今回の犯行に使用され
2119 たものではありません。
2120
2121 形が違います。
2122
2123 果物ナイフの2本のうち,
2124 古い方についても,
2125 明ら
2126 かに今回の犯行に使用されたものではありません。
2127
2128 古すぎます。
2129
2130 残りの果物ナイフ1本は,
2131
2132 今回の犯行に使用されたものとよく似ています。
2133
2134 今回の犯行に使われたものであると断言は
2135 できませんが,
2136 今回の犯行に使われた可能性はあると思います。
2137
2138 」と供述した。
2139
2140
2141 さらに,
2142 Vは,
2143 司法警察員Kから透視鏡を通じて取調室の甲の容貌を見せられ,
2144 犯人と同
2145 一か否か及び同年3月31日に宅配便荷物を届けに来た人物と同一か否かの確認を求められ
2146 たものの,
2147 「犯人はサングラスを掛けており,
2148 人相がよく分からなかったので,
2149 確認を求め
2150 られている人物が犯人と同一か分かりません。
2151
2152 また,
2153 宅配便荷物を届けに来た人物をしっか
2154 り見ていたわけではないので,
2155 その人と確認を求められている人物が同一かも分かりませ
2156 ん。
2157
2158 」旨供述した。
2159
2160
2161
2162 (3)
2163
2164 コンビニエンスストアZにおける捜査
2165 司法警察員Kが,
2166 コンビニエンスストアZの店員に対し,
2167 V宅で領置したガムテープとひ
2168 もを示すとともに,
2169 領置されたレシートが発行された経緯について確認したところ,
2170 同人は,
2171
2172 「レシートを発行した経緯については,
2173 全く覚えていない。
2174
2175 示されたガムテープとひもにつ
2176 いては,
2177 当方で販売しているものと同一のものか分からないが,
2178 同じ種類のものは販売して
2179 いる。
2180
2181 」旨供述した。
2182
2183
2184 また,
2185 司法警察員Kは,
2186 同店で保管されていた防犯ビデオを確認したところ,
2187 同年4月2
2188 日午前10時45分頃,
2189 緑色のジャンパーを着用した大柄の男がガムテープとひもを購入し
2190 ていることは確認できたものの,
2191 同人がサングラスを着用していたこともあって人相は確認
2192 できなかった。
2193
2194 また,
2195 甲宅で差し押さえた緑色のジャンパーも防犯ビデオに写っている緑色
2196 のジャンパーもいずれも特徴がなく,
2197 同一のものであるとは確認できなかったことなどから,
2198
2199 甲と防犯ビデオに写っている男とが同一人物か否かは判然としなかった。
2200
2201
2202
2203
2204
2205 同月13日,
2206 H地方検察庁検察官Pは,
2207 甲を住居侵入・強盗の公訴事実によりH地方裁判所
2208 に起訴し,
2209 詐欺未遂については,
2210 被害者であるS店の代表者が,
2211 実害もなく,
2212 特に処罰を求め
2213 ない旨を述べたことなどを考慮し,
2214 不起訴(起訴猶予)とした。
2215
2216 なお,
2217 甲は,
2218 同月2日から同
2219 月13日までの間の捜査において,
2220 供述調書の作成に応じた身上関係以外については,
2221 一切を
2222 黙秘していた。
2223
2224
2225
2226
2227
2228 本件は公判前整理手続に付されたところ,
2229 同手続において,
2230 検察官Pは,
2231 所要の証拠調べ請
2232 求の一つとして,
2233 Aの検察官調書につき,
2234 「犯行直後の甲の言動」を立証趣旨とする証拠調べ
2235 請求をしたが,
2236 甲の弁護人Bはこれを不同意とした。
2237
2238 このため,
2239 検察官PがAの証人尋問を請
2240 求したところ,
2241 裁判所はAの証人尋問を行うことを決定した。
2242
2243
2244 Aの証人尋問は同年6月5日の第1回公判期日に実施されたが,
2245 その主尋問の中で,
2246 検察官
2247 Pが,
2248 「平成24年4月2日午後零時頃,
2249 外出していた甲が自宅に戻った際,
2250 あなたに何と言
2251 いましたか。
2252
2253 」と質問したのに対し,
2254 Aは,
2255 「甲は,
2256 『もし,
2257 警察が訪ねてきたら,
2258 今日は朝か
2259 ら午後零時まで家に俺とお前の2人でいたと言ってくれ。
2260
2261 』と言ってきました。
2262
2263 」と証言した。
2264
2265
2266 - 12 -
2267
2268 これに対し,
2269 弁護人Bは,
2270 「ただいまの証言は,
2271 伝聞証拠を含むものであるから,
2272 排除された
2273 い。
2274
2275 」旨述べて異議を申し立てた。
2276
2277 これに対する意見を裁判所から聴かれた検察官Pは,
2278 異議
2279 に理由がない旨を陳述した。
2280
2281 これを受けて,
2282 A裁判所は,
2283 この異議の申立てについて決定した
2284 [決定]。
2285
2286
2287 甲に対する審理は,
2288 同年6月8日に結審したが,
2289 甲は,
2290 終始一貫して黙秘していた。
2291
2292
2293
2294 〔設問1〕
2295 【事例】の事実を前提として,
2296 甲が下線部@の犯人であると認定できるか否かについて,
2297 具体
2298 的な事実を摘示しつつ論じなさい。
2299
2300
2301 〔設問2〕
2302 下線部Aの[決定]の結論及びその理由について,
2303 条文を挙げつつ論じなさい。
2304
2305
2306
2307 - 13 -
2308
2309