1 短答式試験問題集[刑事系科目]
2
3 -1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:2)
7 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄
8 は,[bP])
9 1.法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定め
10 られている場合には,選任監督上の過失がなくても刑事責任を負う。
11 2.法人事業主を両罰規定により処罰するためには,現実に犯罪行為を行った従業者も処罰され
12 なければならない。
13 3.法人事業主が処罰される場合には,その代表者も処罰される。
14 4.刑法各則に規定された行為の主体には,法人は含まれない。
15 5.刑法各則に規定された行為の客体には,法人は含まれない。
16 〔第2問〕(配点:3)
17 監禁の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選
18 びなさい。(解答欄は,[bQ],[bR]順不同)
19 1.甲は,自己が経営する飲食店で住み込みの従業員として違法に働かせていたA女が逃げたこ
20 とから,これを連れ戻すため,A女に対し,
21 「お母さんが病気で入院していると連絡があった。
22 これからその病院に連れて行くから,車に乗れ。」と嘘を言い,これを信じたA女を自己の運
23 転する普通乗用自動車に乗車させて約12キロメートル走行した。甲に監禁罪は成立しない。
24 2.甲は,身の代金取得の目的で7歳の子供Aを拐取し,さらに,Aの手足をロープで縛って逃
25 げることができないようにして自室に閉じ込め,その間にAの親に電話をかけて身の代金を要
26 求した。甲に監禁罪は成立しない。
27 3.甲は,知人のA女をA女宅に送るため,自己が運転する原動機付自転車の後部荷台に乗せて
28 走行していたが,途中でA女を強姦しようと考え,なおも走行を続けた。その後,甲の意図に
29 気付いたA女が「降ろして。」と叫んだが,甲は,これを無視して,そのまま約1キロメート
30 ルの間,同車を疾走させた。甲には監禁罪が成立する。
31 4.甲は,自己の所属する暴力団の配下組員Aに指を詰めさせることとし,嫌がるAを無理やり
32 普通乗用自動車に乗せて組事務所に連行し,約1時間半にわたってAを監視したが,その間に,
33 組事務所内において,Aの左腕を押さえ付け,包丁でAの小指を切断した。甲には監禁致傷罪
34 が成立する。
35 5.甲は,通行中のA女を殴るなどして無理やり自己が運転する普通乗用自動車に乗せて同車を
36 疾走させて連れ回そうと考え,同車を停めて運転席から降り,路上でA女に近づき,A女を同
37 車に連れ込むために,A女の顔面を殴打して加療約2週間を要する顔面挫傷の傷害を負わせた
38 が,A女が甲に捕まえられることなく逃げたため,A女を同車に乗せることはできなかった。
39 甲に監禁致傷罪は成立しない。
40 〔第3問〕(配点:2)
41 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1
42 から5までのうちどれか。(解答欄は,[bS])
43 ア.甲は,医師免許を有していなかったが,女性乙に対し,医学的に必要とされる措置をとるこ
44 となく豊胸手術を行った。女性乙が豊胸手術に伴う身体傷害につきあらかじめ甲に対して承諾
45 していた場合,甲に傷害罪(刑法第204条)は成立しない。
46 イ.甲は,民事訴訟の証拠調べの期日において,証人として宣誓の上,虚偽の陳述をした。原告
47 乙及び被告丙の双方とも甲が虚偽の陳述をすることにつきあらかじめ甲に対して承諾していた
48 -2 -
49
50 場合,甲に偽証罪(刑法第169条)は成立しない。
51 ウ.甲は,重病の母親乙の首をロープで絞めて殺害した。乙が殺害につきあらかじめ甲に対して
52 承諾していた場合,甲に殺人罪(刑法第199条)は成立しない。
53 エ.甲は,12歳の女児乙の同意を得て,女児乙に対してわいせつな行為を行った。甲に準強制
54 わいせつ罪(刑法第178条第1項)は成立しない。
55 オ.甲は,交通違反の取締りを受けた際,警察官に対し,乙の氏名を名乗り,交通事件原票の供
56 述書欄に乙名義で署名押印した。乙が名義使用につきあらかじめ甲に対して承諾していた場合,
57 甲に有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)は成立しない。
58 1.ア
59
60 イ
61
62 2.イ
63
64 ウ
65
66 3.ウ
67
68 エ
69
70 4.エ
71
72 オ
73
74 5.オ
75
76 ア
77
78 〔第4問〕(配点:4)
79 次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に窃盗罪が
80 成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。
81 (解答欄は,アからオの順に[bT]
82 から[bX])
83 ア.甲は,夜道を歩いていた際,乙が路上で倒れて急死したのを目撃し,乙が死亡しているのを
84 認識した上で,乙の上着ポケットに入っていた財布を自分のものにしようと考え,これを取り
85 出して自分のかばんにしまった。[bT]
86 イ.甲は,乙を強姦した直後,警察に通報されないよう乙の携帯電話を破壊するため,乙の持っ
87 ていたかばんから,乙に気付かれないうちに乙の携帯電話を取り出してその場で破壊した。
88 [
89 6]
90 ウ.甲は,自然湖であるA湖内で,同湖の一部を区切って錦鯉を養殖している乙のいけすから逃
91 げ出した錦鯉20匹を発見し,乙が養殖していた錦鯉であると認識しながら,これを自分のも
92 のにするため捕獲し,第三者に売却した。[bV]
93 エ.甲は,乙から鍵の掛かった乙の手提げ金庫を預かって保管していたが,同金庫の在中物を自
94 分のものにしようと考え,同金庫を破壊し,中に入っていた乙の宝石を取り出し,第三者に売
95 却した。[bW]
96 オ.甲は,A駅行きの満員電車に乗っていた際,隣の席に座っていた乙がかばんを忘れたままB
97 駅で下車したのを目撃し,乙のかばんとその中身を自分のものにしようと考え,次のC駅で乙
98 のかばんを持って下車し,自宅に持ち帰った。[bX]
99 〔第5問〕(配点:2)
100 責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは
101 どれか。(解答欄は,[10])
102 1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動す
103 る能力が欠けている場合をいう。
104 2.心神耗弱とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力が欠けている若しくは著しく
105 減退している場合,又はこの弁識に従って行動する能力が欠けている若しくは著しく減退して
106 いる場合をいう。
107 3.13歳であるが,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力に欠けると
108 ころがない場合,責任能力が認められる。
109 4.精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めること
110 はできない。
111 5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。
112
113 -3 -
114
115 〔第6問〕(配点:2)
116 文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいも
117 のはどれか。(解答欄は,[11])
118 1.甲は,A公立高校を中途退学した乙から「父親に見せて安心させたい。それ以外には使わな
119 いからA公立高校の卒業証書を作ってくれ。」と頼まれ,乙の父親に呈示させる目的で,A公
120 立高校校長丙名義の卒業証書を丙に無断で作成した。甲には公文書偽造罪は成立しない。
121 2.甲は,自己の所有する土地の登記記録を改ざんしようと考え,法務局の担当登記官である乙
122 にその情を打ち明けて記録の改ざんを依頼し,乙に登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録を
123 してもらった。甲には電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する。
124 3.甲は,行使の目的で,高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し,公害反
125 対の署名であると偽り,その旨誤信した乙に,甲を貸主,乙を借主とする100万円の借用証
126 書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。
127 4.甲と乙は,警察署に提出する目的で,県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨
128 共謀し,甲が丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲は,乙に相談することなく自ら県
129 立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立
130 する。
131 5.甲は,行使の目的で,正規の国際運転免許証を発給する権限のない民間団体乙名義で,外観
132 が正規の国際運転免許証に酷似する文書を作成した。甲は,乙からその文書の作成権限を与え
133 られていたが,乙に正規の国際運転免許証を発給する権限がないことは知っていた。甲には私
134 文書偽造罪は成立しない。
135 〔第7問〕(配点:2)
136 刑法第65条に関する次のTないしVの各【見解】についての後記1から5までの各【記述】の
137 うち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[12])
138 【見
139
140 解】
141
142 T.刑法第65条第1項は真正身分犯の成立及び科刑についての規定であり,同条第2項は不真
143 正身分犯の成立及び科刑についての規定である。
144 U.刑法第65条第1項は身分が違法性に関係する場合についての規定であり,同条第2項は身
145 分が責任に関係する場合についての規定である。
146 V.刑法第65条第1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定であり,
147 同条第2項は不真正身分犯の科刑についての規定である。
148 【記
149
150 述】
151
152 1.Tの見解に対しては,真正身分犯が身分を連帯的に作用させ,不真正身分犯が身分を個別的
153 に作用させることの実質的根拠が明らかでないとの批判がある。
154 2.Uの見解に対しては,身分が違法性に関係する場合と身分が責任に関係する場合を区別する
155 ことは困難であるとの批判がある。
156 3.Vの見解は,刑法第65条第1項が「共犯とする」と規定し,同条第2項が「通常の刑を科
157 する」と規定していることを根拠の一つとしている。
158 4.Tの見解に立った場合,甲が愛人である乙を唆して,乙が介護していた乙の老母の生存に必
159 要な保護をやめさせた事例では,甲には保護責任者遺棄罪の教唆犯が成立し,科刑は単純遺棄
160 罪の刑となる。
161 5.Vの見解に立ちつつ,常習賭博罪における常習性が身分に含まれると解した場合,賭博の非
162 常習者である甲が賭博の常習者乙を唆して,乙に賭博をさせた事例では,甲には常習賭博罪の
163 教唆犯が成立し,科刑は単純賭博罪の刑となる。
164
165 -4 -
166
167 〔第8問〕(配点:2)
168 犯人蔵匿等の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤って
169 いるものはどれか。(解答欄は,[13])
170 1.甲は,窃盗事件を犯して逃亡中の乙を自宅にかくまったが,かくまった時点では,既にその
171 窃盗事件の公訴時効が完成していた。甲には,犯人蔵匿罪は成立しない。
172 2.甲は,強盗事件を犯して逃亡中の乙の所在を知っていたが,その所在を警察官に尋ねられた
173 際,その質問に答えなかった。甲には,犯人隠避罪が成立する。
174 3.甲は,強盗事件を犯した息子乙を逮捕から免れさせるため,乙に逃走資金を与えた。甲には,
175 犯人隠避罪が成立する。
176 4.甲は,自動車運転過失致死事件の被告人として裁判を受けていた乙が保釈中であることを知
177 りながら,乙を逃亡させるため,乙にその資金を与えた。甲には,犯人隠避罪が成立する。
178 5.甲は,強姦事件を犯して逃亡中,告訴権者からの告訴がない時点で,友人乙に強姦事件を犯
179 して逃げているのでかくまってほしい旨依頼して乙宅に一晩かくまってもらった。甲には,犯
180 人蔵匿罪の教唆犯が成立する。
181 〔第9問〕(配点:4)
182 刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2
183 を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[14]から[18])
184 ア.自由刑には,懲役,禁錮及び労役場留置が含まれる。[14]
185 イ.財産刑には,罰金,没収及び追徴が含まれる。[15]
186 ウ.有期の懲役又は禁錮は,1月以上15年以下であり,これを加重する場合においては30年
187 にまで上げることができる。[16]
188 エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[17]
189 オ.懲役は,受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり,禁錮は,受刑者を
190 刑事施設に拘置する刑罰である。[18]
191
192 -5 -
193
194 〔第10問〕(配点:2)
195 次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤って
196 いるものはどれか。(解答欄は,[19])
197 【事案及び判旨】
198 精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属して
199 いる家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたA
200 の捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴し
201 た事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨
202 判示し,甲に有罪判決を言い渡した。
203 【記
204
205 述】
206
207 1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものであ
208 る。
209 2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪
210 における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。
211 3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を
212 認めたものである。
213 4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命
214 じた家庭裁判所の秘密であると考えている。
215 5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含
216 むかどうかは必ずしも明らかではない。
217 〔第11問〕(配点:2)
218 次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。
219 (解答欄は,[20])
220 【事
221
222 例】
223 甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独
224
225 自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血
226 を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあ
227 ったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した
228 上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しなが
229 ら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受け
230 させないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
231 【判
232
233 旨】
234 甲は,自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上,Bが運び込
235
236 まれたホテルにおいて,甲を信奉するAから,重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に
237 委ねられた立場にあったものと認められる。その際,甲は,Bの重篤な状態を認識し,これを自
238 らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちにBの生命を維持するために必要な医
239 療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず,未必的な殺
240 意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には,不作為による殺
241 人罪が成立する。
242 【記
243
244 述】
245
246 1.Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があ
247 れば,甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場か
248 らも殺人罪の成立は否定される。
249 2.判旨の立場によれば,この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ,重過
250 -6 -
251
252 失致死罪が成立するにとどまる。
253 3.判旨は,不作為犯が成立するためには,作為義務違反に加え,既発の状態を積極的に利用す
254 る意図が必要であると考えている。
255 4.判旨は,Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で,甲に殺人罪の実行の着手を認
256 めたものと解される。
257 5.判旨は,先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に,甲のBに対す
258 る殺人罪の作為義務を認めたものと解される。
259 〔第12問〕(配点:2)
260 強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているも
261 のはどれか。(解答欄は,[21])
262 1.甲は,乙に対し,金品を奪うために,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,その反抗
263 を抑圧して乙から財布を奪ったが,乙は財布を奪われたことに気付かなかった。甲には強盗既
264 遂罪が成立する。
265 2.甲は,乙宅で財布を窃取し,誰からも追跡されることなく,約2キロメートル離れた場所ま
266 で徒歩で移動した後,窃取した財布の中を見たが,予想していたよりも現金が少なかったこと
267 から,再び窃盗を行う目的で乙宅に戻り,玄関を開けたところ,帰宅していた乙に発見され,
268 逮捕を免れるために,乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。甲には事後強
269 盗既遂罪は成立しない。
270 3.甲は,電車内で乗客のポケットから財布を窃取した直後,その犯行状況を目撃して甲を逮捕
271 しようとした警察官乙に対し,逮捕を免れるために,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加
272 えたが,乙に逮捕された。甲には事後強盗未遂罪が成立する。
273 4.甲は,空き巣を行う目的で乙宅に侵入したところ,たまたま留守番をしていた乙の甥である
274 10歳の丙に発見され,金品を奪うために,丙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を
275 加え,その反抗を抑圧して寝室のタンス内にあった乙名義の預金通帳と印鑑を奪った。甲には
276 強盗既遂罪が成立する。
277 5.甲は,飲食店において,代金を支払う意思及び能力がないのに,店長乙をだまして酒食を注
278 文し,飲食した後,代金の支払いを免れるために,乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の
279 暴行を加え,その反抗を抑圧して逃走し,代金請求を免れた。甲には強盗既遂罪が成立する。
280
281 -7 -
282
283 〔第13問〕(配点:3)
284 正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2
285 個選びなさい。(解答欄は,[22],[23]順不同)
286 1.正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは,予期された侵害を避けるべき義務を
287 課する趣旨ではないが,単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を
288 利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,侵害の急迫性の要件
289 を欠く結果,そのような侵害に対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
290 2.憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には,防衛の意思を欠く結果,
291 防衛のための行為と認められることはない。
292 3.相手からの侵害が,それに先立つ自らの攻撃によって触発されたものである場合には,不正
293 の行為により自ら侵害を招いたことになるから,相手からの侵害が急迫性を欠く結果,これに
294 対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
295 4.刑法第36条にいう「権利」には,生命,身体,自由のみならず名誉や財産といった個人的
296 法益が含まれるので,自己の財産権への侵害に対して相手の身体の安全を侵害する反撃行為に
297 及んでも正当防衛となり得る。
298 5.正当防衛における「やむを得ずにした」とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又
299 は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること,すなわち反撃行為が侵害
300 に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味し,反撃行為が防衛手段として
301 相当性を有する以上,その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より
302 大であっても,その反撃行為が正当防衛でなくなるものではない。
303 〔第14問〕(配点:4)
304 放火の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,
305 誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[24]から[28])
306 ア.「放火」とは,目的物の焼損を惹起させる行為をいい,媒介物を介して目的物に点火する場
307 合には,媒介物に点火することも含まれる。[24]
308 イ.「焼損」とは,火力により目的物の重要部分が焼失し,その本来の効用が失われた状態をい
309 う。[25]
310 ウ.「建造物」とは,家屋その他これに類する工作物であって,土地に定着し,人の起居出入に
311 適する構造を有するものをいう。[26]
312 エ.「建造物」には,家屋の和室に敷かれている畳も含まれる。[27]
313 オ.「現に人が住居に使用し」の「人」には,犯人が含まれる。[28]
314 〔第15問〕(配点:2)
315 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。(解
316 答欄は,[29])
317 1.罰則を定めた特別法の法条に,過失行為を処罰する旨の明文の規定がない場合であっても,
318 当該特別法の目的から,罰則を定めた法条に過失行為を処罰する趣旨が包含されていると認め
319 られるときには,同法条が刑法第38条第1項ただし書に規定される特別の規定となり,過失
320 による行為を処罰することが可能である。
321 2.業務上過失致死傷罪の「業務」とは,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われ,ま
322 たは,反復継続して行う意思をもって行われる行為であり,他人の生命・身体等に危害を加え
323 るおそれがあるものをいう。
324 3.重過失致死傷罪の「重過失」とは,行為者としてわずかな注意を払えば,結果発生を予見す
325 ることができ,結果の発生を回避できた場合をいう。
326 -8 -
327
328 4.複数の行為者につき,行為者共同の注意義務が観念でき,行為者がその共同の注意義務に違
329 反し,共同の注意義務違反と発生した結果との間に因果関係が認められる場合には,過失犯の
330 共同正犯が成立し得る。
331 5.過失行為を行った者を監督すべき地位にある者の過失の有無を判断する際には,信頼の原則
332 は適用されない。
333 〔第16問〕(配点:4)
334 次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に公務執行
335 妨害罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順
336 に[30]から[34])
337 ア.甲は,県議会の議事が紛糾し,議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際,乙の顔
338 面をげんこつで殴った。[30]
339 イ.甲は,日本国内にある外国の大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際,乙の腹
340 部を足で蹴った。[31]
341 ウ.甲は,警察官乙から捜索差押許可状に基づき自宅の捜索を受け,覚せい剤入りの注射器を差
342 し押さえられた際,乙の眼前で同注射器を足で踏み付けて壊した。[32]
343 エ.甲は,無許可のデモ行進に参加していた際,これを解散させようとした警察官乙に向かって
344 石を1回投げ,その石は乙の頭部付近をかすめたが,乙には命中しなかった。[33]
345 オ.甲は,執行官から確定判決に基づき居室明渡しの強制執行を受けていた際,執行官の補助者
346 であった民間人乙の頭部を棒で殴った。[34]
347 〔第17問〕(配点:2)
348 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄
349 は,[35])
350 1.甲は,生活費欲しさから強盗を計画し,12歳の長男乙に対し,Vから現金を強取するよう
351 指示した。乙は,甲の指示に従い,Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判
352 断能力を有していたか否か,甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず,甲に
353 は強盗罪の間接正犯が成立する。
354 2.甲は,通常の判断能力がないVの殺害を計画し,Vに対し,首をつっても仮死状態になるだ
355 けであり,必ず生き返るとだまして,Vに首をつらせて窒息死させた。甲には自殺関与罪が成
356 立する。
357 3.甲と乙は,自分たちのことを日頃ばかにするVを懲らしめてやろうと思い,Vに傷害を負わ
358 せる旨共謀した。そして,甲と乙は,それぞれ,Vに対し,日頃の恨みを言いながら,その身
359 体を殴り付けた。Vは,これに応答して甲らを罵った。すると,乙は,Vの発言に腹を立て,
360 殺意をもって,隠し持っていたナイフでVを刺し殺した。乙に殺人罪が成立する場合,甲には,
361 Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する。
362 4.甲は,V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は,自分も窓ガラ
363 スを割りたいと思い,甲に気が付かれないよう,V宅に石を投げ付け,甲が割った窓ガラスと
364 は別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。
365 5.女性である甲は,甲の男友達である乙との間で,乙がVを強姦する旨共謀した。その後,甲
366 がVを誘い出してVの体を押さえ付け,乙がVを強姦した。乙に強姦罪が成立する場合でも,
367 甲には強姦罪の共同正犯は成立しない。
368
369 -9 -
370
371 〔第18問〕(配点:2)
372 横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは
373 どれか。(解答欄は,[36])
374 1.横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上
375 の支配力を有する状態を含まない。
376 2.株式会社の代表取締役には,同社の所有物について,横領罪の「占有」は認められない。
377 3.横領罪の「物」は,窃盗罪における「財物」と同義であり,不動産は横領罪の客体とはなら
378 ない。
379 4.法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に
380 照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。
381 5.業務上横領罪の「業務」には,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務であ
382 れば,いかなる事務も含まれる。
383 〔第19問〕(配点:2)
384 次の【事例】及び【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。
385 (解答欄は,[37])
386 【事
387
388 例】
389 Aは,殺意をもって,Bを狙い,けん銃を発射したところ,その弾丸がBを貫き,たまたまB
390
391 の背後を通行中のCにも命中したが,B,C共に死亡しなかった。なお,Aは,けん銃を発射し
392 た時点で,Cの存在を認識していなかった。
393 【見
394
395 解】
396 犯罪の故意があるとするには,罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが,犯人が認
397
398 識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するもの
399 ではなく,両者が法定の範囲内において一致することをもって足りる。人を殺す意思のもとに殺
400 害行為に出た以上,犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも,その結果に
401 ついて殺人の故意があり,Bに対する所為についてはもちろんのこと,Cに対する所為について
402 も殺人未遂罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
403 【記
404
405 述】
406
407 1.この【見解】によれば,甲が殺意をもって,乙を狙い,けん銃を発射したところ,弾丸が乙
408 に命中したが,乙は死亡せず,乙を貫通した弾丸が甲が予期しなかった丙に命中して丙が死亡
409 した場合,甲には,丙に対する殺人既遂罪が成立するが,乙に対する犯罪は成立しない。
410 2.この【見解】によれば,甲が殺意をもって,乙を狙い,けん銃を発射したところ,弾丸が乙
411 に命中して乙が死亡し,乙を貫通した弾丸が甲が予期しなかった丙にも命中して丙も死亡した
412 場合,甲には,乙に対する殺人既遂罪,丙に対する過失致死罪が成立する。
413 3.この【見解】に対しては,殺人罪は被害者ごとに成立する犯罪であるから,被害者の個別性
414 は構成要件的に重要な事実であるとの批判がある。
415 4.この【見解】に対しては,いわゆる客体の錯誤の場合と方法の錯誤の場合とで故意の有無に
416 ついて結論が異なるのは不合理であるとの批判がある。
417 5.この【見解】に対しては,1人を殺す故意しかないのに,1人を殺した場合より処断刑が重
418 くなるのは妥当ではないとの批判がある。
419
420 - 10 -
421
422 〔第20問〕(配点:2)
423 次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検
424 討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[38]
425 ,[39]順不同)
426 【事
427
428 例】
429 甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れてい
430
431 るのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態では
432 なかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って
433 自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を
434 取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち
435 去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,@大きさや重さ
436 は五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,Aク
437 レジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手
438 書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1
439 枚を見付けた。甲は,@の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持
440 っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投
441 入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。
442 また,Aの白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカ
443 ードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号
444 に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カー
445 ドを自宅に保管しておいた。
446 【記
447
448 述】
449
450 1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。
451 2.甲が上記Aの財布を自分のかばんに入れて持ち去った行為には,窃盗罪が成立する。
452 3.甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。
453 4.甲が上記金属片を自動販売機に投入してジュースと釣銭を得た行為には,電子計算機使用詐
454 欺罪が成立する。
455 5.甲が上記白色カードを自宅に保管しておいた行為には,不正電磁的記録カード所持罪が成立
456 する。
457 〔第21問〕(配点:2)
458 捜査機関の権限に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄
459 は,[40])
460 1.検察官は,司法警察員の取調べに際して任意の供述をした犯行の目撃者が,公判期日におい
461 ては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり,かつ,その者の供述が犯罪の証明に欠く
462 ことができないと認められる場合には,第1回公判期日前に限り,裁判官にその者の証人尋問
463 を請求することができる。
464 2.司法警察員は,告訴を受けた事件に関する書類及び証拠物について,当該事件について犯罪
465 の嫌疑がないものと思料するときは,検察官に送付しないことができる。
466 3.検察官は,司法警察員から送致を受けた事件であっても,捜査の必要があると思料するとき
467 は,自ら,捜索差押許可状の発付を受けて,捜索差押えを行うことができる。
468 4.司法警察員は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌
469 疑があるものと思料するときは,これを検察官ではなく家庭裁判所に送致しなければならない。
470 5.司法巡査は,犯罪の捜査について必要があるときは,犯罪の被害者の出頭を求め,これを取
471 り調べることができる。
472
473 - 11 -
474
475 〔第22問〕(配点:2)
476 告訴に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5まで
477 のうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(解答欄は,[
478 41])
479 ア.被害者が死亡したときは,被害者の明示の意思に反しない限り,その兄弟姉妹が告訴をする
480 ことができる。
481 イ.親告罪の告訴期間を起算する基準となる「犯人を知った」とは,犯人が誰であるかを知るこ
482 とをいい,告訴権者において,犯人の住所氏名などの詳細を知る必要はないが,少なくとも犯
483 人の何人たるかを特定し得る程度に認識することを要する。
484 ウ.告訴の取消しは,代理人によりこれをすることができない。
485 エ.被害者の司法警察員に対する供述調書であっても,犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求める
486 旨の意思の表示がされていれば,告訴調書として有効である。
487 オ.告訴は,書面でこれをしなければならない。
488 1.ア
489
490 イ
491
492 2.ア
493
494 ウ
495
496 3.イ
497
498 エ
499
500 4.ウ
501
502 オ
503
504 5.エ
505
506 オ
507
508 〔第23問〕(配点:2)
509 次のアからオまでの各手続のうち,その手続に関して裁判官の裁判が必要となるものの組合せは,
510 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[42])
511 ア.私人が,窃盗行為に及んだ者を現行犯逮捕する場合
512 イ.司法警察員が,殺人を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある者を緊急逮捕する場合
513 ウ.検察官が,逮捕状に基づき逮捕された者を司法警察員から受け取った後,勾留請求せずに釈
514 放する場合
515 エ.殺人の事実で勾留中に起訴された者につき,同じ事実で引き続き勾留する場合
516 オ.窃盗の事実で逮捕中に起訴された者につき,同じ事実で勾留する場合
517 1.ア
518
519 ウ
520
521 2.ア
522
523 エ
524
525 3.イ
526
527 ウ
528
529 4.イ
530
531 オ
532
533 5.エ
534
535 オ
536
537 〔第24問〕(配点:3)
538 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤って
539 いる場合には2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
540 (解答欄は,アからオの順に[43]から[47])
541 【事
542
543 例】
544 司法警察員は,甲が自宅において覚せい剤を密売しているとの被疑事実により,甲の逮捕状及
545
546 び甲宅に対する捜索差押許可状の発付を得て,甲宅に赴いた。甲宅には,甲の妻Aのみが在宅し
547 ていたことから,司法警察員は,@Aに前記捜索差押許可状を呈示した上で,甲宅に立ち入り,
548 Aを立会人として捜索を実施し,覚せい剤や電子計量器などを差し押さえた。更に捜索を進めた
549 ところ,甲宅リビングルームのテーブル上に,甲が野球賭博を開張していたことを示すノートが
550 発見されたことから,司法警察員はAにノートの提出を求めた。ノートは甲の所有物であったが,
551 AAは司法警察員にノートを任意に提出し,司法警察員がこれを領置した。捜索終了後,その日
552 のうちに,司法警察員は甲が帰宅した旨の情報を得たことから,直ちに甲宅に赴き,B玄関から
553 甲宅に立ち入り,在宅していた甲に逮捕状を示して通常逮捕した。翌日,Aは,甲の了解を得ず
554 に前記ノートを提出したことを後悔し,C司法警察員に対してノートの還付を請求した。
555 【記
556
557 述】
558
559 ア.下線部@につき,覚せい剤や電子計量器などが甲の所有物である場合には,甲に捜索差押許
560 可状を呈示していない以上,司法警察員がこれらの物を差し押さえることは違法である。[
561 43]
562 - 12 -
563
564 イ.下線部@につき,仮にAが不在であり,甲宅に誰も在宅していなかった場合でも,立会人な
565 くして捜索することは違法である。[44]
566 ウ.下線部Aにつき,任意提出を行うことができる者は,所有者又は所持者に限られるところ,
567 所持者とは自己のために当該物件を占有する者であるから,司法警察員がAからノートを領置
568 したことは違法である。[45]
569 エ.下線部Bにつき,既に甲宅に対する捜索が終わった後であるから,甲宅に立ち入るためには,
570 甲又はAの了解が必要である。[46]
571 オ.下線部Cにつき,任意提出物を領置した場合には,提出者から還付を請求されると直ちに還
572 付する必要がある。[47]
573 〔第25問〕(配点:3)
574 令状主義に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの個数を,後記1から6までの
575 中から選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
576 (解答欄は,
577 [48])
578 ア.捜査機関が,犯罪の証拠物として被疑者の体内に存在する尿を強制的に採取するには,捜索
579 差押令状を必要とするが,人権の侵害にわたるおそれがある点では,検証の方法としての身体
580 検査と共通の性質を有しているので,「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附
581 することができる」旨の規定が前記捜索差押令状に準用される。
582 イ.捜査機関は,身体を拘束されていない被疑者を採尿場所に任意に同行することが事実上不可
583 能であると認められる場合,採尿することを許可する捜索差押令状の効力として,採尿に適す
584 る最寄りの場所まで被疑者を連行することができ,その際,必要最小限度の有形力を行使する
585 ことができる。
586 ウ.身体検査令状に関する「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附することがで
587 きる」旨の規定は,その規定する条件の付加が強制処分の範囲,程度を減縮させる方向に作用
588 するので,身体検査令状以外の検証許可状にもその準用を肯定することができる。
589 エ.捜査機関は,強盗殺人事件に関し,被疑者が犯人である疑いを持つ合理的理由が存在する場
590 合,検証許可状がなくても,犯人の特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手する手段
591 として,これに必要な限度において,公道上を歩いている被疑者の容貌等を撮影することがで
592 きる。
593 オ.捜査機関が,捜査目的で宅配業者が保管している宅配便荷物に荷送人や荷受人の承諾を得る
594 ことなく,エックス線を照射して内容物の射影を観察するには,検証許可状を必要とする。
595 1.0個
596
597 2.1個
598
599 3.2個
600
601 4.3個
602
603 - 13 -
604
605 5.4個
606
607 6.5個
608
609 〔第26問〕(配点:2)
610 精神鑑定に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。
611 (解答欄は,
612 [49])
613 1.検察官は,医師に被疑者の精神状態の鑑定を嘱託した場合,裁判官に被疑者の鑑定留置を請
614 求しなければならない。
615 2.検察官から被疑者の精神状態の鑑定を嘱託された医師は,鑑定留置状により留置された被疑
616 者については,医療器具が整備された病院においてであれば,裁判官の許可がなくても,血液
617 を採取した上で血液検査を実施するなどの必要な身体検査を強制的に実施することができる。
618 3.裁判所は,裁判員裁判対象事件につき,公判前整理手続において被告人の精神状態の鑑定を
619 行うことを決定した場合,当該鑑定の結果の報告がなされるまでに相当の期間を要すると認め
620 るときは,公判前整理手続において鑑定の手続(鑑定の経過及び結果の報告を除く。)を行う
621 旨の決定をすることができる。
622 4.裁判所は,精神鑑定のため鑑定留置中の被告人についても,適当と認めるときは,職権で保
623 釈を許すことができる。
624 5.裁判所は,被告人の精神状態の鑑定を命じた鑑定人が作成した「鑑定の経過及び結果を記載
625 した書面」については,検察官が証拠とすることに同意しない場合でも,被告人が証拠とする
626 ことに同意すれば,直ちに証拠とすることができる。
627 〔第27問〕(配点:2)
628 次のアからオまでの場合のうち,刑事訴訟法の規定上,被疑者の弁護人又は被告人の弁護人が立
629 会いを求めることができるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
630 (解答欄は,
631 [50])
632 ア.警察官が,裁判官により発せられた捜索許可状に基づき,被疑者方を捜索する場合
633 イ.裁判官が,検察官からの勾留請求を受け,被疑者に対し,勾留質問をする場合
634 ウ.裁判官が,勾留されている被疑者につき,公開の法廷において,勾留の理由を開示する場合
635 エ.裁判官が,刑事訴訟法第226条に基づいて,検察官の請求により,犯罪の捜査に欠くこと
636 のできない知識を有すると明らかに認められる者につき,第1回公判期日前に証人尋問を行う
637 場合
638 オ.裁判所が,起訴された被告事件の犯行現場を検証する場合
639 1.ア
640
641 イ
642
643 2.ア
644
645 ウ
646
647 3.イ
648
649 エ
650
651 4.ウ
652
653 - 14 -
654
655 オ
656
657 5.エ
658
659 オ
660
661 〔第28問〕(配点:3)
662 次のTないしVの【見解】は,公訴時効の根拠に関してのものである。【見解】に関する後記ア
663 からオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解
664 答欄は,[51])
665 【見
666
667 解】
668
669 T.時間の経過により犯罪行為の可罰性が消滅するので,訴追の対象としない。
670 U.時間の経過により証拠が散逸し,公正な審理を行うことができなくなるので,訴追の対象と
671 しない。
672 V.時間の経過により長期間訴追されなかったという被告人の法的地位の安定を図る必要がある
673 ので,訴追の対象としない。
674 【記
675
676 述】
677
678 ア.Tの見解に対しては,刑の軽重により,公訴時効が異なることを説明できないとの批判があ
679 る。
680 イ.Tの見解に対しては,公訴時効完成後に公訴が提起された場合の判決が免訴という形式裁判
681 であることを説明できないとの批判がある。
682 ウ.Uの見解に対しては,犯人が国外にいる場合に公訴時効がその進行を停止することを説明で
683 きないとの批判がある。
684 エ.Uの見解に対しては,法改正により,公訴時効の期間が延長された場合,特別の定めを置か
685 ない限り,既に行われた犯罪行為に対し,新法を適用することができないとの批判がある。
686 オ.Vの見解に対しては,被告人の法的地位の安定は,正当な利益ないし権利といえるものでは
687 なく,公訴時効制度があることによる反射的利益にすぎないとの批判がある。
688 1.ア
689
690 ウ
691
692 2.ア
693
694 エ
695
696 3.イ
697
698 ウ
699
700 4.イ
701
702 オ
703
704 5.エ
705
706 オ
707
708 〔第29問〕(配点:2)
709 保釈に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう
710 ちどれか。(解答欄は,[52])
711 ア.裁判所は,犯罪の性質や情状によっては,保証金額を定めずに保釈を許可することができる。
712 イ.裁判員裁判対象事件は,刑事訴訟法第89条第1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上
713 の懲役若しくは禁錮に当たる罪」に該当するから,保釈は認められない。
714 ウ.保釈が許可されても,保証金(又はこれに代えることを許された有価証券,保証書)が納付
715 されなければ,被告人は釈放されない。
716 エ.裁判所は,保釈中に被告人が他の罪を犯した場合,保釈を取り消さなければならない。
717 オ.勾留されている被告人やその弁護人のみならず,被告人の配偶者や直系の親族も,保釈の請
718 求をすることができる。
719 1.ア
720
721 イ
722
723 2.ア
724
725 エ
726
727 3.イ
728
729 ウ
730
731 4.ウ
732
733 - 15 -
734
735 オ
736
737 5.エ
738
739 オ
740
741 〔第30問〕(配点:3)
742 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記
743 1から5までのうちどれか。(解答欄は,[53])
744 【事
745
746 例】
747 検察官は,Vを被害者とする傷害罪により甲を起訴したが,凶器を特定することができなかっ
748
749 たことから,起訴状には,「Vの足を刃物様の物で1回突き刺した」旨記載し,裁判所において
750 は,合議体で審理及び裁判をする旨の決定がなされた。検察官の起訴状朗読の後,弁護人は,裁
751 判長に対し,「刃物様の物」がいかなる凶器であるのか検察官に釈明を求めるように申し立てた
752 が,@裁判長は,その必要がないと判断して釈明を求めなかった。証拠調べ手続において,検察
753 官は,目撃者の供述を録取した検察官調書の証拠調べを請求したが,弁護人が同意しなかったこ
754 とから,目撃者の証人尋問を請求し,裁判所もこれを取り調べる旨の決定をした。目撃者に対す
755 る主尋問においては,A検察官の尋問に対して弁護人が異議を申し立てることがあった。結局,
756 目撃者は,記憶が減退してしまったとして検察官調書の記載内容と実質的に異なった供述をした
757 ので,検察官が,検察官調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号に基づき証拠調べ請求した。
758 B弁護人は,検察官調書における供述を信用すべき特別の情況がない旨意見を述べたが,裁判所
759 は,検察官調書を取り調べる旨の決定をした。
760 【記
761
762 述】
763
764 ア.下線部@につき,裁判長が釈明を求めなかったことについての異議申立ては,法令の違反が
765 あることを理由とする場合に限られる。
766 イ.下線部Aにつき,検察官の尋問に対する異議申立ては,法令の違反があることを理由とする
767 場合に限られる。
768 ウ.下線部Aにつき,裁判長は,弁護人の異議申立てに対して判断するに当たり,他の裁判官と
769 の合議を経る必要がない。
770 エ.下線部Bにつき,弁護人は,検察官調書の証拠調べをする決定に不服がある場合には,直ち
771 に抗告する必要がある。
772 オ.下線部Bにつき,裁判所は,仮に検察官からの証拠調べ請求を却下する場合であっても,弁
773 護人の意見を聴く必要がある。
774 1.ア
775
776 ウ
777
778 2.ア
779
780 オ
781
782 3.イ
783
784 エ
785
786 4.イ
787
788 オ
789
790 5.ウ
791
792 エ
793
794 〔第31問〕(配点:2)
795 第一審の被告人質問に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1
796 から5までのうちどれか。(解答欄は,[54])
797 ア.被告人質問については,証拠調べの最終の段階で行うこととされており,検察官の立証が終
798 了する前に被告人質問を実施することは許されない。
799 イ.被告人質問を実施するためには証拠調べの請求や決定を必要としない。
800 ウ.被告人質問を開始するに当たっては,あらかじめ被告人に供述する意思の有無を確かめなけ
801 れば違法な手続となる。
802 エ.被告人質問においては,まず弁護人が質問し,次いで検察官が質問をするという順番によら
803 なければならない。
804 オ.当事者の質問終了後,裁判長が被告人に対し質問をしなかったとしても,訴訟手続の法令違
805 反の問題は生じない。
806 1.ア
807
808 ウ
809
810 2.ア
811
812 エ
813
814 3.イ
815
816 ウ
817
818 4.イ
819
820 - 16 -
821
822 オ
823
824 5.エ
825
826 オ
827
828 〔第32問〕(配点:3)
829 次のT,Uの【見解】は,犯行を否認する甲を有罪とするに当たり,甲と共に犯行を行った旨自
830 白する乙の供述につき,補強証拠を要するか否かに関するものである。【見解】に関する後記アか
831 らオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答
832 欄は,[55])
833 【見
834
835 解】
836
837 T.甲を有罪とするには,乙の供述につき補強証拠を要する。
838 U.甲を有罪とするには,乙の供述につき補強証拠を要しない。
839 【記
840
841 述】
842
843 ア.Uの見解に対しては,他に補強証拠がない限り,否認した甲は有罪,自白した乙は無罪にな
844 り,事実を合一的に確定できないという批判がある。
845 イ.自白の証明力の過大評価を防止するという刑事訴訟法第319条第2項の規定の趣旨からす
846 れば,本人の自白と共犯者の自白を区別する理由がないと考えると,Tの見解に結び付く。
847 ウ.本人の自白は,証明力が過大に評価される点に危険があるが,共犯者の自白は,被告人の引
848 き込みや責任転嫁をする点に危険があり,その危険は異なると考えると,Tの見解に結び付く。
849 エ.刑事訴訟法第319条第2項の規定は,自由心証主義の例外であるから限定的に解すべきで
850 あると考えると,Uの見解に結び付く。
851 オ.共犯者である乙の自白は,甲の公判においては,反対尋問による吟味を経ることになるため
852 証明力が高いと考えると,Tの見解に結び付く。
853 1.ア
854
855 イ
856
857 2.ア
858
859 ウ
860
861 3.イ
862
863 エ
864
865 4.ウ
866
867 - 17 -
868
869 オ
870
871 5.エ
872
873 オ
874
875 〔第33問〕(配点:3)
876 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤って
877 いる場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[56]から[60])
878 【事
879
880 例】
881 甲及び乙は,共謀の上,平成24年12月5日午前1時頃,H市内のコンビニエンスストア「T」
882
883 において,同店店員Vから現金10万円を強取したとしてH地方裁判所に起訴され,併合審理さ
884 れることとなった。この審理において,V,甲の妻A及び知人Bに対する証人尋問が行われたと
885 ころ,Vは,「2人組の犯人が店から出て行く際,犯人の1人がもう1人の犯人に対し,『@甲,
886 早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。次に,Aは,「平成24年12月8日午後3時
887 頃,自宅において,甲から『A3日前の午前1時頃,乙と一緒に,H市内のコンビニエンススト
888 ア「T」で,果物ナイフを店員に突き付けて現金10万円を奪ってきた。見付からないと思って
889 いたが,乙が捕まった。ひょっとしたら,乙が自分のことを話すかもしれない。そうなると,警
890 察が来るだろう。頼む。B3日前の午前1時頃には,俺が自宅で寝ていたということにして欲し
891 い。』と言われた。」旨を証言した。次に,Bは,「平成24年12月4日,甲から,『C明日の午
892 前1時頃,H市内のコンビニエンスストアで強盗をしないか。』と言われたが,断った。」旨を証
893 言した。また,乙に対する被告人質問において,乙は,「甲と一緒に強盗をした際,甲が店員に
894 『D金を出せ。出さないと殺すぞ。』と言っていた。」旨を供述した。
895 【記
896
897 述】
898
899 ア.下線部@の発言は,要証事実を「犯行後,犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれ
900 ていたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。[56]
901 イ.下線部Aの発言は,要証事実を「甲が乙と一緒に強盗を実行したこと」とした場合,伝聞証
902 拠ではない。[57]
903 ウ.下線部Bの発言は,要証事実を「甲がAに甲のアリバイ作りに協力するよう依頼したこと」
904 とした場合,伝聞証拠ではない。[58]
905 エ.下線部Cの発言は,要証事実を「甲がBに強盗を実行することを持ち掛けたこと」とした場
906 合,伝聞証拠ではない。[59]
907 オ.下線部Dの発言は,要証事実を「甲がVを脅迫したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。
908 [60]
909
910 - 18 -
911
912 〔第34問〕(配点:3)
913 次の【見解】は,実体的には常習特殊窃盗罪を構成する窃盗行為が刑法第235条の窃盗罪(以
914 下「単純窃盗罪」という。)として起訴され(以下「前訴」という。),判決が確定した後,その判
915 決の宣告前に犯されていた余罪の窃盗行為(実体的には確定判決を経由した窃盗行為と共に一つの
916 常習特殊窃盗罪を構成するもの)が,前同様に単純窃盗罪として起訴された場合(以下「後訴」と
917 いう。)に,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴に及ぶかという点に関するものである。後記1
918 から5までの【記述】のうち,【見解】と同じ立場から論じているものはどれか。(解答欄は,[
919 61])
920 【見
921
922 解】
923 訴因制度を採用した現行刑事訴訟法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対
924
925 象であると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も一事不再理効を有することに
926 加え,常習特殊窃盗罪の性質や一罪を構成する行為の一部起訴も適法になし得ることなどに鑑み
927 ると,前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的には,前訴
928 及び後訴の各訴因のみを基準としてこれらを比較対照することにより行うのが相当である。本件
929 においては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,両訴因を通じて常習性の発露とい
930 う面は全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,両訴因の相互関係を検討するに当たり,常
931 習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しないのであるから,ここに常習特殊窃盗罪によ
932 る一罪という観点を持ち込むことは,相当でないというべきである。
933 【記
934
935 述】
936
937 1.単純窃盗として起訴された以上,訴因を動かす権限のない裁判所としては,訴因の範囲にお
938 いて審判すべきである。
939 2.裁判所は訴因を超えて事実を認定し有罪判決をすることは許されないが,免訴や公訴棄却と
940 いった形式裁判をする場合に関する限り訴因に拘束されることはないと解すべきである。
941 3.両訴因間における公訴事実の単一性の有無を判断するに当たり,いずれの訴因の記載内容に
942 もなっていないところの犯行の常習性という要素について証拠により心証形成をし,両者は常
943 習特殊窃盗として包括的一罪を構成するから公訴事実の単一性を肯定できる場合には,前訴の
944 確定判決の一事不再理効が後訴にも及ぶとすべきである。
945 4.実体に合わせて訴因が変更されれば免訴となるが,そうでなければ有罪判決になるというこ
946 とになり,検察官の選択によって両極端の結果を生じさせるのは,不合理である。
947 5.訴因は有罪を求めて検察官により提示された審判の対象であり,訴因を超えて有罪判決をす
948 ることは,被告人の防御権を侵害するから許されないが,これに対し,確定判決の有無という
949 訴訟条件の存否は職権調査事項である上,その結果免訴判決がなされても,被告人の防御権を
950 侵害するおそれは全くないから,訴因に拘束力を認める理由も必要性も存しない。
951 (参照条文)盗犯等の防止及び処分に関する法律
952 第2条
953
954 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第235条,第236条,第238条若ハ第239
955
956 条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ3年以上,強盗ヲ以テ論ズ
957 ベキトキハ7年以上ノ有期懲役ニ処ス
958 一
959
960 凶器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
961
962 二
963
964 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
965
966 三
967
968 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ
969 侵入シテ犯シタルトキ
970
971 四
972
973 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
974
975 - 19 -
976
977 〔第35問〕(配点:3)
978 次の【記述】は,前科証拠の証拠能力に関する最高裁判所の判例を要約したものである。
979 【記述】
980 中の@からBまでの(
981
982 )内から適切な語句を選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記
983
984 1から5までのうちどれか。(解答欄は,[62])
985 【記
986
987 述】
988
989 前科も一つの事実であり,前科証拠は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての
990 価値(@(a.法律的関連性
991
992 b.自然的関連性))を有している。反面,前科,特に同種前科に
993
994 ついては,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために
995 事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲
996 に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生ずるなど,その取調べ
997 に付随してA(a.争点が拡散する
998
999 b.不当な不意打ちになる)おそれもある。したがって,前
1000
1001 科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば,(@)があるかどうかのみによ
1002 って証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,
1003 実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初め
1004 て証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一
1005 性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実がB(a.顕著な特徴
1006
1007 b.相当
1008
1009 の重大性)を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両
1010 者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用でき
1011 るものというべきである。
1012 1.@a
1013
1014 Aa
1015
1016 Ba
1017
1018 2.@a
1019
1020 Ab
1021
1022 Ba
1023
1024 3.@a
1025
1026 Ab
1027
1028 Bb
1029
1030 4.@b
1031
1032 Aa
1033
1034 Ba
1035
1036 5.@b
1037
1038 Aa
1039
1040 Bb
1041
1042 〔第36問〕(配点:3)
1043 量刑において起訴されていない犯罪事実,すなわち余罪をどう扱うべきかに関し,「量刑は,被
1044 告人の性格,経歴及び犯罪の動機,目的,方法等全ての事情を考慮して,裁判所が処断刑の範囲内
1045 において,適当に決定すべきものであるから,その量刑のための一情状として,いわゆる余罪をも
1046 考慮することは,必ずしも禁じられるところではない。」との見解がある。次のアからオまでの各
1047 記述のうち,この見解に対する批判になり得ないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
1048 (解答欄は,[63])
1049 ア.起訴された犯罪事実のほかに,起訴されていない犯罪事実を余罪として認定し,実質上これ
1050 を処罰する趣旨で量刑資料として考慮し,被告人を重く処罰することとの区別が実際には困難
1051 な場合がある。
1052 イ.余罪が考慮できないと,犯罪に至らない不当な行状などが情状事実に含まれることと均衡を
1053 失する。
1054 ウ.余罪は被告人が犯した別の犯罪事実であるから,情状事実である犯罪傾向の有力な間接事実
1055 となる。
1056 エ.刑事裁判手続において犯罪事実の認定手続と量刑手続とは区分されていないため,量刑資料
1057 である余罪が犯罪事実の認定に不当な影響を及ぼすおそれがある。
1058 オ.余罪も犯罪事実であるため,その認定に当たっては,起訴された犯罪事実に準じた手続保障
1059 を求めるべきであるが,量刑のための一情状だとすると厳格な証明を要しないことになる。
1060 1.ア
1061
1062 ウ
1063
1064 2.ア
1065
1066 オ
1067
1068 3.イ
1069
1070 ウ
1071
1072 4.イ
1073
1074 - 20 -
1075
1076 エ
1077
1078 5.エ
1079
1080 オ
1081
1082 〔第37問〕(配点:2)
1083 公判前整理手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から
1084 5までのうちどれか。(解答欄は,[64])
1085 ア.裁判所は,被告人に弁護人がなければ公判前整理手続を行うことができない。
1086 イ.裁判所は,訴因の変更を許すことができない。
1087 ウ.裁判所は,証拠調べをする決定をすることができる。
1088 エ.検察官は,証明予定事実を記載した書面について,裁判所への提出を免除される場合がある。
1089 オ.被告人又は弁護人は,取調べを請求した証拠について,検察官に対し,開示する必要がない。
1090 1.ア
1091
1092 イ
1093
1094 2.ア
1095
1096 ウ
1097
1098 3.イ
1099
1100 エ
1101
1102 4.ウ
1103
1104 オ
1105
1106 5.エ
1107
1108 オ
1109
1110 〔第38問〕(配点:3)
1111 被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合における
1112 その配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)による意見陳述に関する次のアか
1113 らオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄
1114 は,[65])
1115 ア.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項に
1116 よる意見の陳述のいずれの場合であっても,その申出は,あらかじめ検察官にしなければなら
1117 ない。
1118 イ.裁判所は,審理の状況その他の事情を考慮して,相当でないと認めるときは,刑事訴訟法第
1119 292条の2第1項による意見の陳述の場合には,意見の陳述に代え意見を記載した書面を提
1120 出させることができるが,刑事訴訟法第316条の38第1項による意見の陳述の場合には,
1121 意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させることはできない。
1122 ウ.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項に
1123 よる意見の陳述のいずれの場合であっても,その陳述は,犯罪事実の認定のための証拠とはな
1124 らない。
1125 エ.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述と刑事訴訟法第316条の38第1項に
1126 よる意見の陳述のいずれの場合であっても,その陳述は,量刑資料にはなり得る。
1127 オ.刑事訴訟法第292条の2第1項による意見の陳述では,法律の適用についての意見を述べ
1128 ることはできないから,被害者等は,被告人が受けるべき刑罰について,「法律上,なし得る
1129 限りの最も重い刑罰に処してください。」と述べてはならない。
1130 1.ア
1131
1132 ウ
1133
1134 2.ア
1135
1136 エ
1137
1138 3.イ
1139
1140 ウ
1141
1142 4.イ
1143
1144 オ
1145
1146 5.エ
1147
1148 オ
1149
1150 (参照条文)刑事訴訟法
1151 第292条の2第1項
1152
1153 裁判所は,被害者等又は当該被害者の法定代理人から,被害に関する心情
1154
1155 その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,公判期日において,その意見を陳述
1156 させるものとする。
1157 第316条の38第1項
1158
1159 裁判所は,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から,事実又は法
1160
1161 律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において,審理の状況,申出をした者の
1162 数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,公判期日において,第293条第1項の規定に
1163 よる検察官の意見の陳述の後に,訴因として特定された事実の範囲内で,申出をした者がその意
1164 見を陳述することを許すものとする。
1165
1166 - 21 -
1167
1168 〔第39問〕(配点:2)
1169 控訴に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのう
1170 ちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
1171 (解答欄は,
1172 [66])
1173 ア.控訴裁判所は,事後審なので,原判決の言渡し後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべき情状
1174 について取り調べることはできない。
1175 イ.簡易裁判所がした刑事第一審の判決に対する控訴については,地方裁判所ではなく,高等裁
1176 判所が裁判権を有する。
1177 ウ.控訴裁判所は,被告人のみが控訴をした事件について,原判決の認定した事実に誤認がある
1178 と認める場合には,それより被告人に不利益な事実を認定することができる場合もある。
1179 エ.控訴審では,第一審の公判手続に関する規定が準用されるので,被告人は,公判期日におい
1180 て,控訴趣意書に基づき自ら弁論をすることができる。
1181 オ.第一審における弁護人は,判決の宣告により弁護人の選任の効力が失われるので,被告人の
1182 ため控訴をすることができず,控訴をするには改めて弁護人として選任される必要がある。
1183 1.ア
1184
1185 イ
1186
1187 2.ア
1188
1189 エ
1190
1191 3.イ
1192
1193 ウ
1194
1195 4.ウ
1196
1197 オ
1198
1199 5.エ
1200
1201 オ
1202
1203 〔第40問〕(配点:2)
1204 略式手続に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[
1205 67])
1206 1.略式命令を受けた者又は検察官は,その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求を
1207 することができる。
1208 2.検察官は,略式命令の請求に際し,被疑者に対し,あらかじめ,略式手続を理解させるため
1209 に必要な事項を説明し,通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上,略式手続
1210 によることについて異議がないかどうかを確かめなければならない。
1211 3.被疑者は,略式手続によることについて異議がないときは,書面でその旨を明らかにしなけ
1212 ればならない。
1213 4.地方裁判所は,検察官の請求により,その管轄に属する事件について,公判前,略式命令で,
1214 100万円以下の罰金又は科料を科することができる。
1215 5.略式命令の告知があったときは,勾留状は,その効力を失う。
1216
1217 - 22 -
1218
1219