1 論文式試験問題集[公法系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [公法系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 Aは,
8 B県が設置・運営するB県立大学法学部の学生で,
9 C教授が担当する憲法ゼミナール(以下
10 「Cゼミ」という。
11
12 )を履修している。
13
14 Cゼミの202*年度のテーマは,
15
16 「人間の尊厳と格差問題」
17 である。
18
19 Cゼミ生は,
20 C教授の承諾も得て,
21 ゼミの研究活動の一環として貧富の格差の拡大に関して
22 多くの県民と議論することを目的としたシンポジウム「格差問題を考える」を県民会館で開催した。
23
24
25 そのシンポジウムでの活発な意見交換を経て,
26
27 「格差の是正」を訴える一連のデモ行進を行うことに
28 なった。
29
30 そのデモ行進については,
31 Cゼミ生を中心として実行委員会が組織され,
32 Aがその委員長に
33 選ばれた。
34
35 実行委員会は,
36 第1回目のデモ行進を202*年8月25日(日)に行うこととして,
37 ツ
38 イッター等を通じて参加を呼び掛けたところ,
39 参加希望者は約1000人となった。
40
41 そこで,
42 Aは,
43
44 主催者として,
45 B県集団運動に関する条例第2条(【参考資料1】参照)の定めにより,
46 B県の県庁
47 所在地であるB市の金融街から市役所,
48 県庁に至る片道約2キロメートルの幹線道路を約1000
49 人の参加者が往復するデモ行進許可申請書を提出した。
50
51 デモ行進が行われる幹線道路沿いには多く
52 の飲食店があり,
53 市の中心部にある県庁や市役所の周りは県内最大の商業ゾーンでもある。
54
55 B県公安
56 委員会は,
57 デモ行進は片側2車線の車道の歩道寄りの1車線内のみを使うことという条件付きで許
58 可した。
59
60
61 第1回目のデモ行進の当日,
62 Aら実行委員会は,
63 デモ参加者に対し,
64 デモ行進中は拡声器等を使用
65 しないこと,
66 また,
67 ビラの類は配らず,
68 ゴミを捨てないようにすることを徹底させた。
69
70 第1回目のデ
71 モ行進は,
72 若干の飲食店から売上げが減少したとの県への苦情があったが,
73 その他は特に問題を起こ
74 すことなく終えた。
75
76 そこで,
77 Aら実行委員会は,
78 第2回目のデモ行進を同年9月21日(土)に,
79 第
80 1回目と同じ計画で行うこととし,
81 同月5日(木)にデモ行進の許可申請を行った。
82
83 これに対し,
84 B
85 県公安委員会は,
86 第1回目と同様の条件を付けて許可した。
87
88
89 B県では,
90 次年度以降の財政の在り方をめぐり,
91 社会福祉関係費の削減を中心として,
92 知事と県議
93 会が激しく対立していた。
94
95 知事は,
96 同月13日(金)に,
97 B県住民投票に関する条例(【参考資料2】
98 参照)第4条第3項に基づき,
99
100 「社会福祉関係費の削減の是非」を付議事項として住民投票を発議し,
101
102 翌10月13日(日)に住民投票を実施することとした。
103
104
105 第2回目のデモ行進も,
106 拡声器等を使用せず,
107 ビラの類も配らずに無事終了した。
108
109 ただし,
110 住民投
111 票実施ということもあって参加者は2000人近くに達し,
112
113 「県の社会福祉関係費の削減に反対」と
114 いう横断幕やプラカードを掲げる参加者もいたし,
115
116 「社会福祉関係費の削減に反対票を投じよう」と
117 いうシュプレヒコールもあった。
118
119 また,
120 デモ行進が行われた道路で交通渋滞が発生したために,
121 幹線
122 道路に近接した閑静な住宅街の道路を迂回路として使う車が増えた。
123
124 第2回目のデモ行進終了後,
125 市
126 民や町内会からは,
127 住宅街で交通事故が起きることへの不安や騒音被害を訴える苦情が県に寄せら
128 れた。
129
130 また,
131 第1回目よりも更に多くの飲食店から,
132 デモ行進の影響で飲食店の売上げが減少したと
133 いう苦情が県に寄せられた。
134
135
136 Aら実行委員会は,
137 第3回目のデモ行進を同年9月29日(日)に行うことにして,
138 参加予定人員
139 を2000人とし,
140 その他は第1回目・第2回目と同様の計画で許可申請を行った。
141
142 しかし,
143 B県公
144 安委員会は,
145 住民投票日が近づいてきて一層住民の関心が高まっており,
146 第3回目のデモ行進は,
147 市
148 民の平穏な生活環境を害したり,
149 商業活動に支障を来したりするなど,
150 住民投票運動に伴う弊害を生
151 ずる蓋然性が高いと判断し,
152 当該デモ行進の実施がB県集団運動に関する条例第3条第1項第4号
153 に該当するとして,
154 当該申請を不許可とした。
155
156
157 この不許可処分に抗議するために,
158 Aら実行委員ばかりでなく,
159 デモ行進に参加していた人たち約
160 200人が,
161 B県庁前に集まった。
162
163 そこに地元のテレビ局が取材に来ていて,
164 Aがレポーターの質問
165 に答えて,
166
167 「第1回のデモ行進と第2回のデモ行進が許可されたのに,
168 第3回のデモ行進が不許可と
169 されたのは納得がいかない。
170
171 平和的なデモ行進であるのにもかかわらず,
172 デモ行進を不許可としたこ
173 - 2 -
174
175 とは,
176 県の重要な政策問題に関する意見の表明を封じ込めようとするものであり,
177 憲法上問題があ
178 る」と発言する映像が,
179 ニュースの中で放映された。
180
181 そのニュースを,
182 B県立大学学長や副学長も観
183 ていた。
184
185
186 AたちCゼミ生は,
187 当初から,
188 学外での活動の締めくくりとして,
189 学内で「格差問題と憲法」をテ
190 ーマにした講演会の開催を計画していた。
191
192 デモ行進が不許可になったので学内講演会の計画を具体
193 化することとなったが,
194 知事の施策方針に賛成する県議会議員と反対する県議会議員を講演者とし
195 て招き,
196 さらに,
197 今回のデモ行進の不許可処分に関するC教授による講演を加えて,
198 開催することに
199 した。
200
201 C教授の了承も得て,
202 Aたちは,
203 Cゼミとして教室使用願を大学に提出した。
204
205 同じ頃,
206 Cゼミ
207 主催の講演会とは開催日が異なるが,
208 経済学部のゼミからも,
209 2名の評論家を招いて行う「グローバ
210 リゼーションと格差問題:経済学の観点から」をテーマとした講演会のための教室使用願が提出さ
211 れていた。
212
213
214 B県立大学教室使用規則では,
215
216 「政治的目的での使用は認めず,
217 教育・研究目的での使用に限り,
218
219 これを許可する」と定められている。
220
221 この規則の下で,
222 同大学は,
223 ゼミ活動目的での申請であり,
224 か
225 つ,
226 当該ゼミの担当教授が承認していれば教室の使用を許可する,
227 という運用を行っている。
228
229 同大学
230 は,
231 経済学部のゼミからの申請は許可したが,
232 Cゼミからの申請は許可しなかった。
233
234 大学側は,
235 Aら
236 が中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること,
237 ニュースで流されたAの発言は県政批判
238 に当たるものであること,
239 また講演者が政治家であることから,
240 Cゼミ主催の講演会は政治的色彩が
241 強いと判断した。
242
243
244 Aは,
245 B県を相手取ってこの2つの不許可処分が憲法違反であるとして,
246 国家賠償訴訟を提起する
247 ことにした。
248
249
250 〔設問1〕
251 あなたがAの訴訟代理人となった場合,
252 2つの不許可処分に関してどのような憲法上の主張を
253 行うか。
254
255
256 なお,
257 道路交通法に関する問題並びにB県各条例における条文の漠然性及び過度の広汎性の問
258 題は論じなくてよい。
259
260
261 〔設問2〕
262 B県側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,
263 あなた自身の見解を述べなさい。
264
265
266 【参考資料1】B県集団運動に関する条例(抜粋)
267 第1条
268
269 道路,
270 公園,
271 広場その他屋外の公共の場所において集団による行進若しくは示威運動又は集
272
273 会(以下「集団運動」という。
274
275 )を行おうとするときは,
276 その主催者は予めB県公安委員会の許可
277 を受けなければならない。
278
279
280 第2条
281
282 前条の規定による許可の申請は,
283 主催者である個人又は団体の代表者(以下「主催者」とい
284
285 う。
286
287 )から,
288 集団運動を行う日時の72時間前までに次の事項を記載した許可申請書三通を開催地
289 を管轄する警察署を経由して提出しなければならない。
290
291
292 一
293
294 主催者の住所,
295 氏名
296
297 二
298
299 集団運動の日時
300
301 三
302
303 集団運動の進路,
304 場所及びその略図
305
306 四
307
308 参加予定団体名及びその代表者の住所,
309 氏名
310
311 五
312
313 参加予定人員
314
315 六
316
317 集団運動の目的及び名称
318
319 第3条
320
321 B県公安委員会は,
322 前条の規定による申請があつたときは,
323 当該申請に係る集団運動が次の
324
325 各号のいずれかに該当する場合のほかは,
326 これを許可しなければならない。
327
328
329 - 3 -
330
331 一〜三
332 四
333
334 (略)
335
336 B県住民投票に関する条例第14条第1項第2号及び第3号に掲げる行為がなされることと
337 なることが明らかであるとき。
338
339
340
341 2
342
343 B県公安委員会は,
344 次の各号に関し必要な条件を付けることができる。
345
346
347 一,
348 二
349
350 (略)
351
352 三
353
354 交通秩序維持に関する事項
355
356 四
357
358 集団運動の秩序保持に関する事項
359
360 五
361
362 夜間の静ひつ保持に関する事項
363
364 六
365
366 公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路,
367 場所又は日時の変更に
368 関する事項
369
370 【参考資料2】B県住民投票に関する条例(抜粋)
371 第1条
372
373 この条例は,
374 県政に係る重要事項について,
375 住民に直接意思を確認するための住民投票に
376
377 係る基本的事項を定めることにより,
378 住民の県政への参加を推進し,
379 もって県民自治の確立に資
380 することを目的とする。
381
382
383 第2条
384
385 住民投票に付することができる県政に係る重要事項(以下「重要事項」という。
386
387 )は,
388 現在
389
390 又は将来の住民の福祉に重大な影響を与え,
391 又は与える可能性のある事項であって,
392 住民の間又
393 は住民,
394 議会若しくは知事の間に重大な意見の相違が認められる状況その他の事情に照らし,
395 住
396 民に直接その賛成又は反対を確認する必要があるものとする。
397
398
399 第4条
400
401 (略)
402
403 2
404
405 (略)
406
407 3
408
409 知事は,
410 自ら住民投票を発議し,
411 これを実施することができる。
412
413
414
415 4
416
417 住民投票の期日は,
418 知事が定める。
419
420
421
422 第14条
423
424 何人も,
425 住民投票の付議事項に対し賛成又は反対の投票をし,
426 又はしないよう勧誘する
427
428 行為(以下「住民投票運動」という。
429
430 )をするに当たっては,
431 次に掲げる行為をしてはならない。
432
433
434
435 2
436
437 一
438
439 買収,
440 脅迫その他不正の手段により住民の自由な意思を拘束し又は干渉する行為
441
442 二
443
444 平穏な生活環境を害する行為
445
446 三
447
448 商業活動に支障を来す行為
449
450 (略)
451
452 - 4 -
453
454 論文式試験問題集[公法系科目第2問]
455
456 - 1 -
457
458 [公法系科目]
459 〔第2問〕(配点:100〔
460 〔設問1〕と〔設問2〕の配点割合は,
461 6:4〕)
462 Aは,
463 土地区画整理法(以下「法」という。
464
465
466 )に基づいて1987年に設立されたB土地区画整理組
467 合(以下「本件組合」という。
468
469 )の組合員である。
470
471 本件組合の施行する土地区画整理事業(以下「本件
472 事業」という。
473
474 )については,
475 当初,
476 国及びC県からの補助金並びに保留地(事業費を捻出するため
477 に売却に用いられる土地をいう。
478
479 )の処分による収入により実施する計画であったが,
480 地価の下落に
481 より,
482 保留地の処分が計画どおり進まなかったため,
483 本件組合は,
484 度々資金計画を変更して,
485 補助金
486 の増額や事業資金の借入れにより対応してきた。
487
488 しかし,
489 なおも地価の下落が続き,
490 事業費不足が生
491 じたため,
492 本件組合は,
493 組合員に対して総額15億円の賦課金の負担を求めることとした。
494
495
496 本件組合は,
497 2012年6月17日に開催された臨時総会(以下「本件臨時総会」という。
498
499
500 )にお
501 いて,
502 賦課金の新設を内容とする定款変更(以下「本件定款変更」という。
503
504 その内容については,
505
506 【資
507 料1】を参照。
508
509 )について議決した。
510
511 また,
512 本件臨時総会においては,
513 賦課金の額及び徴収方法を定
514 める賦課金実施要綱(以下「本件要綱」という。
515
516
517 )が議決された。
518
519 本件要綱によると,
520 300平方メ
521 ートル以下の小規模宅地の所有者又は借地権者(以下「所有者等」という。
522
523 )には,
524 賦課金は課され
525 ず,
526 300平方メートルを超える宅地の所有者等に対して,
527 300平方メートルを超える地積に比例
528 して,
529 賦課金が割り当てられる。
530
531 すなわち,
532 各組合員の賦課金の額は,
533
534 {(地積−300u)×賦課金
535 単価}とされ,
536 賦課金単価は,
537
538 {15億円÷(総地積−総賦課金免除地積)}とされている。
539
540 本件臨時
541 総会で,
542 本件組合の理事Dは,
543 小規模宅地の所有者等に対する政策的配慮から,
544 小規模宅地の所有者
545 等については一律に賦課金支払義務を免除した旨を説明した。
546
547
548 本件臨時総会における本件定款変更の議決状況は,
549
550 【資料2】のとおりである。
551
552 書面による議決権
553 行使の書類については,
554 本件組合の理事Dが組合員により署名捺印された白紙のままの書面議決書
555 500通を受け取り,
556 後で議案に賛成の記載を自ら施していた。
557
558
559 本件組合は,
560 法第39条第1項の規定に基づき,
561 本件定款変更について認可を申請し,
562 C県知事は,
563
564 2012年12月13日付けで,
565 本件定款変更の認可(以下「本件認可」という。
566
567 )を行った。
568
569
570 本件事業の施行区域内に2000平方メートルの宅地を所有するAは,
571 本件認可に不満を持ち,
572 C
573 県の担当部署を訪れて,
574 本件認可を見直すよう申し入れるとともに,
575 聞き入れられない場合には,
576 本
577 件認可の取消しを求めて訴訟を提起する考えを伝えた。
578
579 しかし,
580 C県職員からは,
581 本件認可を見直す
582 予定はないこと,
583 及び,
584 本件認可は取消訴訟の対象とならないことを告げられた。
585
586 途方に暮れたAは,
587
588 知り合いの弁護士Eに相談した。
589
590
591 以下に示された【法律事務所の会議録】を読んだ上で,
592 弁護士Eの指示に応じ,
593 弁護士Fの立場に
594 立って,
595 設問に答えなさい。
596
597
598 なお,
599 土地区画整理法の抜粋は【資料3】に掲げてあるので,
600 適宜参照しなさい。
601
602 ただし,
603 土地区
604 画整理法及び同法施行令の規定によると,
605 費用の分担に関する定款変更は総会の特別議決事項とさ
606 れており,
607 組合員の3分の2以上が出席し,
608 出席組合員の(人数及び地積における)3分の2以上で
609 決することとされているが,
610 これに関する規定は【資料3】には掲げていない。
611
612
613 〔設問1〕
614 本件認可は,
615 取消訴訟の対象となる処分に当たるか。
616
617 土地区画整理組合及びこれに対する定款変
618 更認可の法的性格を論じた上で,
619 本件認可の法的効果を丁寧に検討して答えなさい。
620
621
622 〔設問2〕
623 本件認可は適法か。
624
625 関係する法令の規定を挙げながら,
626 適法とする法律論及び違法とする法律論
627 として考えられるものを示して答えなさい。
628
629
630
631 - 2 -
632
633 【法律事務所の会議録】
634 弁護士E:Aさんは,
635 本件認可の取消訴訟を提起したい意向です。
636
637 そこで,
638 まず,
639 訴訟要件について
640 検討しましょう。
641
642 本件認可に処分性は認められるでしょうか。
643
644
645 弁護士F:
646 「認可」という文言からして,
647 処分性は問題なく認められるのではないでしょうか。
648
649
650 弁護士E:本件では,
651 土地区画整理組合に対する認可である点に注意が必要です。
652
653 Aさんの話では,
654
655 C県の職員は,
656
657 「本件組合は,
658 行政主体としての法的性格を与えられている」と述べたそう
659 です。
660
661
662 弁護士F:本件組合が行政主体であるとは,
663 どういうことでしょうか。
664
665 土地区画整理法にそのような
666 ことが規定されているのでしょうか。
667
668
669 弁護士E:認可の法的性格を考える上で前提になりますから,
670 検討をお願いします。
671
672 それから,
673 C県
674 の職員は,
675
676 「下級行政機関である本件組合に対する本件認可は,
677 処分に該当しない」と明言
678 していたようです。
679
680 なぜ本件認可の処分性が否定されることになるのか,
681 C県側の立脚して
682 いる考え方について,
683 整理してください。
684
685 その際,
686 C県側の主張の論拠となり得る土地区画
687 整理法の規定があれば,
688 挙げてください。
689
690
691 弁護士F:承知しました。
692
693 ただ,
694 本件認可の法的効果を幅広く検討することによって,
695 処分性が認め
696 られる余地があるのではないでしょうか。
697
698
699 弁護士E:なるほど。
700
701 本件認可の法的効果を条文に即して幅広く検討する必要がありますね。
702
703 Aさん
704 の話では,
705 C県の職員は,
706
707 「市町村が土地区画整理事業を行う場合には,
708 定款ではなく施行
709 規程を条例で定めることとされています。
710
711 条例の制定行為に処分性が認められないのと同
712 様に,
713 本件認可は処分に該当するものではありません。
714
715 」と述べたそうです。
716
717 この主張がど
718 のような法的根拠に基づいており,
719 何を理由に処分性を否定する趣旨なのか,
720 明らかにする
721 必要があります。
722
723 また,
724 この主張に対してどのように反論すべきかについて,
725 重要な点です
726 から,
727 賦課金の具体的な仕組みに即した丁寧な検討をお願いします。
728
729
730 弁護士F:承知しました。
731
732
733 弁護士E:次に,
734 本件認可の適法性について検討しましょう。
735
736 Aさんの話では,
737 本件事業は,
738 地価が
739 高騰しつつあったバブル経済期に計画され,
740 保留地を高値で売却できることが資金計画の
741 前提とされていました。
742
743 ところが,
744 バブル経済の崩壊により,
745 この前提が大きく崩れたにも
746 かかわらず,
747 本件組合は,
748 地価はいずれ持ち直すという楽観的な見通しのもとに資金計画を
749 変更し,
750 さらに資金計画の変更を迫られるということを繰り返しています。
751
752 今回の資金計画
753 の変更は,
754 事業当初から数えて7回目に当たります。
755
756 このような度重なる資金計画の変更
757 は,
758 本件組合が本件事業を遂行できるのかについて大きな疑問を抱かせるものであること,
759
760 また,
761 本件事業は既に実質的に破綻しており,
762 賦課金の新設を認めることは違法であること
763 などが,
764 Aさんの主張です。
765
766 Aさんの主張が本件認可の違法事由として法律構成できるもの
767 なのかについて,
768 土地区画整理法の条文に即して検討してください。
769
770
771 弁護士F:承知しました。
772
773
774 弁護士E:それから,
775 Aさんの不満は,
776 本件定款変更が本件臨時総会で議決された経緯にもあるよう
777 です。
778
779 費用の分担に関する定款変更は,
780 特別議決事項とされていますが,
781 本件臨時総会の議
782 決状況を見ると,
783 形の上では,
784 議決の要件を満たしていますね。
785
786 ただ,
787 書面議決書の取扱い
788 に問題があるように思われますので,
789 この点についての違法性を,
790 C県側の反論も想定した
791 上で,
792 検討してください。
793
794
795 弁護士F:承知しました。
796
797 Aさんは,
798 賦課金の算定方法が不公平であるという点にも不満を持ってお
799 られるようですね。
800
801 私の方で少し調査しましたところ,
802 本件組合の組合員1人当たりの平均
803 地積は約482平方メートルですが,
804 300平方メートル以下の宅地の所有権等を有し,
805 賦
806 課金が免除される組合員は930名で,
807 総組合員の約80パーセントを占めています。
808
809 ま
810 - 3 -
811
812 た,
813 賦課金が免除される宅地の総地積は約23万平方メートルで,
814 施行地区内の宅地の総地
815 積の約41パーセントを占めています。
816
817
818 弁護士E:なるほど。
819
820 そのデータを踏まえ,
821 本件の賦課金の算定方法の違法性につき,
822 土地区画整理
823 法の規定に照らして,
824 検討してください。
825
826 ただ,
827 賦課金の算定方法は本件定款において直接
828 定められているわけではありませんので,
829 C県側は,
830 賦課金の算定方法の違法性が本件認可
831 の違法性をもたらすわけではないという主張をしてくるかもしれません。
832
833 これに対する反
834 論についても検討をお願いします。
835
836
837 弁護士F:承知しました。
838
839
840 【資料1
841
842 本件定款変更の内容】
843
844 賦課金に関する規定を新設し,
845 第6条第2号を挿入して同条第3号以下を繰り下げるとともに,
846 第7
847 条及び第8条を挿入して第9条以下を繰り下げる。
848
849 変更後の第6条ないし第8条は,
850 以下のとおりであ
851 る。
852
853
854 (収入金)
855 第6条
856
857 この組合の事業に要する費用は,
858 次の各号に掲げる収入金をもってこれに充てる。
859
860
861
862 一
863
864 補助金及び助成金
865
866 二
867
868 次条の規定による賦課金
869
870 三
871
872 第9条の規定による保留地の処分金
873
874 四
875
876 (略)
877
878 五
879
880 寄付金及び雑収入
881
882 (賦課金)
883 第7条
884
885 前条第2号の賦課金の額及び賦課金徴収の方法は,
886 総会の議決に基づき定める。
887
888
889
890 (過怠金及び督促手数料)
891 第8条
892
893 前条の規定による賦課金の滞納に督促状を発した場合においては,
894 督促1回ごとに80円の
895
896 督促手数料及びその滞納の日数に応じて当該督促に係る賦課金の額に年利10.75パーセントの
897 割合を乗じて得た金額を延滞金として徴収するものとする。
898
899
900 【資料2
901
902 本件臨時総会における本件定款変更の議決状況】
903
904 総組合員数
905
906 1161名
907
908 宅地の総地積
909
910 56万平方メートル
911
912 出席組合員数
913
914 907名
915
916 (投票者287名,
917 書面による議決権行使者620名)
918 賛成した出席組合員数
919
920 795名
921
922 (投票者225名,
923 書面による議決権行使者570名)
924 賛成した出席組合員が所有権又は借地権を有する宅地総地積
925
926 39万平方メートル
927
928 (投票者18万平方メートル,
929 書面による議決権行使者21万平方メートル)
930 【資料3
931
932 土地区画整理法(昭和29年5月20日法律第119号)(抜粋)】
933
934 (この法律の目的)
935 第1条
936
937 この法律は,
938 土地区画整理事業に関し,
939 その施行者,
940 施行方法,
941 費用の負担等必要な事項を規
942
943 定することにより,
944 健全な市街地の造成を図り,
945 もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
946
947
948 - 4 -
949
950 (定義)
951 第2条
952
953 この法律において「土地区画整理事業」とは,
954 都市計画区域内の土地について,
955 公共施設の整
956
957 備改善及び宅地の利用の増進を図るため,
958 この法律で定めるところに従つて行われる土地の区画形
959 質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう。
960
961
962 2〜8
963
964 (略)
965
966 (土地区画整理事業の施行)
967 第3条
968 2
969
970 (略)
971
972 宅地について所有権又は借地権を有する者が設立する土地区画整理組合は,
973 当該権利の目的であ
974
975 る宅地を含む一定の区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる。
976
977
978 3
979
980 (略)
981
982 4
983
984 都道府県又は市町村は,
985 施行区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる。
986
987
988
989 5
990
991 (略)
992
993 (設立の認可)
994 第14条
995
996 第3条第2項に規定する土地区画整理組合(以下「組合」という。
997
998 )を設立しようとする者
999
1000 は,
1001 7人以上共同して,
1002 定款及び事業計画を定め,
1003 その組合の設立について都道府県知事の認可を受
1004 けなければならない。
1005
1006 (以下略)
1007 2〜4
1008
1009 (略)
1010
1011 (定款)
1012 第15条
1013
1014 前条第1項(中略)の定款には,
1015 次に掲げる事項を記載しなければならない。
1016
1017
1018
1019 一
1020
1021 組合の名称
1022
1023 二
1024
1025 施行地区(中略)に含まれる地域の名称
1026
1027 三
1028
1029 事業の範囲
1030
1031 四
1032
1033 事務所の所在地
1034
1035 五
1036
1037 (略)
1038
1039 六
1040
1041 費用の分担に関する事項
1042
1043 七〜十二
1044
1045 (略)
1046
1047 (設立の認可の基準等及び組合の成立)
1048 第21条
1049
1050 都道府県知事は,
1051 第14条第1項(中略)に規定する認可の申請があつた場合においては,
1052
1053
1054 次の各号(中略)のいずれかに該当する事実があると認めるとき以外は,
1055 その認可をしなければなら
1056 ない。
1057
1058
1059 一
1060
1061 申請手続が法令に違反していること。
1062
1063
1064
1065 二
1066
1067 定款又は事業計画若しくは事業基本方針の決定手続又は内容が法令(中略)に違反しているこ
1068
1069 と。
1070
1071
1072 三
1073
1074 (略)
1075
1076 四
1077
1078 土地区画整理事業を施行するために必要な経済的基礎及びこれを的確に施行するために必要な
1079
1080 その他の能力が十分でないこと。
1081
1082
1083 2〜7
1084
1085 (略)
1086
1087 (組合員)
1088 第25条
1089
1090 組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有
1091
1092 する者は,
1093 すべてその組合の組合員とする。
1094
1095
1096 2
1097
1098 (略)
1099
1100 (総会の組織)
1101 第30条
1102
1103 組合の総会は,
1104 総組合員で組織する。
1105
1106
1107
1108 (総会の議決事項)
1109 第31条
1110
1111 次に掲げる事項は,
1112 総会の議決を経なければならない。
1113
1114
1115 - 5 -
1116
1117 一
1118
1119 定款の変更
1120
1121 二
1122
1123 事業計画の決定
1124
1125 三
1126
1127 事業計画又は事業基本方針の変更
1128
1129 四〜六
1130 七
1131
1132 (略)
1133
1134 賦課金の額及び賦課徴収方法
1135
1136 八〜十二
1137
1138 (略)
1139
1140 (議決権及び選挙権)
1141 第38条
1142
1143 1,
1144 2
1145
1146 (略)
1147
1148 3
1149
1150 組合員は書面又は代理人をもつて(中略)議決権及び選挙権を行うことができる。
1151
1152
1153
1154 4
1155
1156 前項の規定により議決権及び選挙権を行う者は,
1157 (中略)出席者とみなす。
1158
1159
1160
1161 5,
1162 6
1163
1164 (略)
1165
1166 (定款又は事業計画若しくは事業基本方針の変更)
1167 第39条
1168
1169 組合は,
1170 定款又は事業計画若しくは事業基本方針を変更しようとする場合においては,
1171 その
1172
1173 変更について都道府県知事の認可を受けなければならない。
1174
1175 (以下略)
1176 2 (中略)第21条第1項(中略)の規定は前項に規定する認可の申請があつた場合又は同項に規定
1177 する認可をした場合について準用する。
1178
1179 (以下略)
1180 3〜6
1181
1182 (略)
1183
1184 (経費の賦課徴収)
1185 第40条
1186
1187 組合は,
1188 その事業に要する経費に充てるため,
1189 賦課金として(中略)組合員に対して金銭
1190
1191 を賦課徴収することができる。
1192
1193
1194 2
1195
1196 賦課金の額は,
1197 組合員が施行地区内に有する宅地又は借地の位置,
1198 地積等を考慮して公平に定めな
1199
1200 ければならない。
1201
1202
1203 3
1204
1205 (略)
1206
1207 4
1208
1209 組合は,
1210 組合員が賦課金の納付を怠つた場合においては,
1211 定款で定めるところにより,
1212 その組合員
1213
1214 に対して過怠金を課することができる。
1215
1216
1217 (賦課金等の滞納処分)
1218 第41条
1219
1220 組合は,
1221 賦課金(中略)又は過怠金を滞納する者がある場合においては,
1222 督促状を発して督
1223
1224 促し,
1225 その者がその督促状において指定した期限までに納付しないときは,
1226 市町村長に対し,
1227 その徴
1228 収を申請することができる。
1229
1230
1231 2
1232
1233 (略)
1234
1235 3
1236
1237 市町村長は,
1238 第1項の規定による申請があつた場合においては,
1239 地方税の滞納処分の例により滞納
1240
1241 処分をする。
1242
1243 (以下略)
1244 4
1245
1246 市町村長が第1項の規定による申請を受けた日から30日以内に滞納処分に着手せず,
1247 又は90
1248
1249 日以内にこれを終了しない場合においては,
1250 組合の理事は,
1251 都道府県知事の認可を受けて,
1252 地方税の
1253 滞納処分の例により,
1254 滞納処分をすることができる。
1255
1256
1257 5
1258
1259 前2項の規定による徴収金の先取特権の順位は,
1260 国税及び地方税に次ぐものとする。
1261
1262
1263
1264 (施行規程及び事業計画の決定)
1265 第52条
1266
1267 都道府県又は市町村は,
1268 第3条第4項の規定により土地区画整理事業を施行しようとする
1269
1270 場合においては,
1271 施行規程及び事業計画を定めなければならない。
1272
1273 (以下略)
1274 2
1275
1276 (略)
1277
1278 (施行規程)
1279 第53条
1280 2
1281
1282 前条第1項の施行規程は,
1283 当該都道府県又は市町村の条例で定める。
1284
1285
1286
1287 前項の施行規程には,
1288 左の各号に掲げる事項を記載しなければならない。
1289
1290
1291 一
1292
1293 土地区画整理事業の名称
1294
1295 二
1296
1297 施行地区(中略)に含まれる地域の名称
1298 - 6 -
1299
1300 三
1301
1302 土地区画整理事業の範囲
1303
1304 四
1305
1306 事務所の所在地
1307
1308 五
1309
1310 費用の分担に関する事項
1311
1312 六〜八
1313
1314 (略)
1315
1316 (換地処分)
1317 第103条
1318
1319 換地処分は,
1320 関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものと
1321
1322 する。
1323
1324
1325 2
1326
1327 換地処分は,
1328 換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において,
1329
1330
1331 遅滞なく,
1332 しなければならない。
1333
1334 (以下略)
1335 3
1336
1337 個人施行者,
1338 組合,
1339 区画整理会社,
1340 市町村又は機構等は,
1341 換地処分をした場合においては,
1342 遅滞な
1343
1344 く,
1345 その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
1346
1347
1348 4
1349
1350 国土交通大臣は,
1351 換地処分をした場合においては,
1352 その旨を公告しなければならない。
1353
1354 都道府県知
1355
1356 事は,
1357 都道府県が換地処分をした場合又は前項の届出があつた場合においては,
1358 換地処分があつた旨
1359 を公告しなければならない。
1360
1361
1362 5,
1363 6
1364
1365 (略)
1366
1367 (報告,
1368 勧告等)
1369 第123条
1370
1371 国土交通大臣は都道府県又は市町村に対し,
1372 都道府県知事は個人施行者,
1373 組合,
1374 区画整理
1375
1376 会社又は市町村に対し,
1377 市町村長は個人施行者,
1378 組合又は区画整理会社に対し,
1379 それぞれその施行す
1380 る土地区画整理事業に関し,
1381 この法律の施行のため必要な限度において,
1382 報告若しくは資料の提出を
1383 求め,
1384 又はその施行する土地区画整理事業の施行の促進を図るため必要な勧告,
1385 助言若しくは援助を
1386 することができる。
1387
1388
1389 2
1390
1391 (略)
1392
1393 (組合に対する監督)
1394 第125条
1395
1396 都道府県知事は,
1397 組合の施行する土地区画整理事業について,
1398 その事業又は会計がこの法
1399
1400 律若しくはこれに基づく行政庁の処分又は定款,
1401 事業計画,
1402 事業基本方針若しくは換地計画に違反す
1403 ると認める場合その他監督上必要がある場合においては,
1404 その組合の事業又は会計の状況を検査す
1405 ることができる。
1406
1407
1408 2〜7
1409
1410 (略)
1411
1412 - 7 -
1413
1414