1 論文式試験問題集[刑事系科目第1問]
2
3 - 1 -
4
5 [刑事系科目]
6 〔第1問〕(配点:100)
7 以下の事例に基づき,
8 甲及び乙の罪責について,
9 具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特別法違
10 反の点を除く。
11
12 )。
13
14
15
16
17 暴力団組長である甲(35歳)は,
18 同組幹部のA(30歳)が対立する暴力団に情報提供してい
19 ることを知り,
20 Aの殺害を決意した。
21
22
23 甲は,
24 Aに睡眠薬を混入させた飲料を飲ませて眠らせた上,
25 Aを車のトランク内に閉じ込め,
26
27 とけのない山中の採石場で車ごと燃やしてAを殺害することとした。
28
29 甲は,
30 Aを殺害する時間帯の
31 自己のアリバイを作っておくため,
32 Aに睡眠薬を飲ませて車のトランク内に閉じ込めるところま
33 では甲自身が行うものの,
34 採石場に車を運んでこれを燃やすことは,
35 末端組員である乙(20歳)
36 に指示して実行させようと計画した。
37
38 ただし,
39 甲は,
40 乙が実行をちゅうちょしないよう,
41 乙にはト
42 ランク内にAを閉じ込めていることは伝えないこととした。
43
44
45
46
47
48 甲は,
49 上記計画を実行する当日夜,
50 乙に電話をかけ,
51
52 「後でお前の家に行くから待ってろ。
53
54 」と指
55 示した上,
56 Aに電話をかけ,
57
58 「ちょっと話があるから付き合え。
59
60 」などと言ってAを呼び出した。
61
62
63 は,
64 古い自己所有の普通乗用自動車(以下「B車」という。
65
66
67 )を運転してAとの待ち合わせ場所に
68 向かったが,
69 その少し手前のコンビニエンスストアに立ち寄り,
70 カップ入りのホットコーヒー2杯
71 を購入し,
72 そのうちの1杯に,
73 あらかじめ用意しておいた睡眠薬5錠分の粉末を混入させた。
74
75 甲は,
76
77 程なく待ち合わせ場所に到着し,
78 そこで待っていたAに対し,
79
80 「乗れ。
81
82 」と言い,
83 AをB車助手席に
84 乗せた。
85
86 甲は,
87 B車を運転して出発し,
88 走行中の車内で,
89 上記睡眠薬入りコーヒーをAに差し出し
90 た。
91
92 Aは,
93 甲の意図に気付くことなくこれを飲み干し,
94 その約30分後,
95 昏睡状態に陥った。
96
97 甲は,
98
99 Aが昏睡したことを確認し,
100 ひとけのない場所にB車を止め,
101 車内でAの手足をロープで縛り,
102
103 が自由に動けないようにした上,
104 昏睡したままのAを助手席から引きずり出して抱え上げ,
105 B車の
106 トランク内に入れて閉じ込めた。
107
108 なお,
109 上記睡眠薬の1回分の通常使用量は1錠であり,
110 5錠を一
111 度に服用した場合,
112 昏睡状態には陥るものの死亡する可能性はなく,
113 甲も,
114 上記睡眠薬入りコーヒ
115 ーを飲んだだけでAが死亡することはないと思っていた。
116
117
118
119
120
121 その後,
122 甲は,
123 給油所でガソリン10リットルを購入し,
124 B車の後部座席にそのガソリンを入れ
125 た容器を置いた上,
126 B車を運転して乙宅に行った。
127
128 甲は,
129 乙に対し,
130
131 「この車を廃車にしようと思
132 うが,
133 手続が面倒だから,
134 お前と何度か行ったことがある採石場の駐車場に持って行ってガソリン
135 をまいて燃やしてくれ。
136
137 ガソリンはもう後部座席に積んである。
138
139 」などと言い,
140 トランク内にAを
141 閉じ込めた状態であることを秘したまま,
142 B車を燃やすよう指示した。
143
144 乙は,
145 組長である甲の指示
146 であることから,
147 これを引き受けた。
148
149 甲が以前に乙と行ったことがある採石場(以下「本件採石場」
150 という。
151
152 )は,
153 人里離れた山中にあり,
154 夜間はひとけがなく,
155 周囲に建物等もない場所であり,
156
157 は,
158 本件採石場の駐車場(以下「本件駐車場」という。
159
160 )でB車を燃やしても,
161 建物その他の物や
162 人に火勢が及ぶおそれは全くないと認識していた。
163
164
165
166
167
168 甲が乙宅から帰宅した後,
169 乙は,
170 一人でB車を運転し,
171 甲に指示された本件採石場に向かった。
172
173
174 乙の運転開始から約1時間後,
175 Aは,
176 B車のトランク内で意識を取り戻し,
177
178 「助けてくれ。
179
180 出して
181 くれ。
182
183 」などと叫び出した。
184
185 乙は,
186 トランク内から人の声が聞こえたことから,
187 道端にB車を止め
188 てトランクを開けてみた。
189
190 トランク内には,
191 Aが手足をロープで縛られて横たわっており,
192
193 「助け
194 てくれ。
195
196 出してくれ。
197
198 」と言って乙に助けを求めてきた。
199
200 乙は,
201 この時点で,
202 甲が自分に事情を告
203 げずにB車を燃やすように仕向けてAを焼き殺すつもりだったのだと気付いた。
204
205 乙は,
206 Aを殺害す
207 ることにちゅうちょしたが,
208 組長である甲の指示であることや,
209 乙自身,
210 日頃,
211 Aからいじめを受
212 けてAに恨みを抱いていたことから,
213 Aをトランク内に閉じ込めたままB車を燃やし,
214 Aを焼き殺
215 すことを決意した。
216
217 乙は,
218 Aが声を出さないようにAの口を車内にあったガムテープで塞いだ上,
219
220 - 2 -
221
222 トランクを閉じ,
223 再びB車を運転して本件採石場に向かった。
224
225 乙は,
226 Aの口をガムテープで塞いだ
227 ものの,
228 鼻を塞いだわけではないので,
229 それによってAが死亡するとは思っていなかった。
230
231
232
233
234 乙は,
235 その後,
236 山中の悪路を約1時間走行し,
237 トランク内のAに気付いた地点から距離にして約
238 20キロメートル離れた本件駐車場に到着した。
239
240 Aは,
241 その間に,
242 睡眠薬の影響ではなく上記走行
243 による車酔いによりおう吐し,
244 ガムテープで口を塞がれていたため,
245 その吐しゃ物が気管を塞ぎ,
246
247 本件駐車場に到着する前に窒息死した。
248
249
250
251
252
253 本件駐車場は,
254 南北に走る道路の西側に面する南北約20メートル,
255 東西約10メートルの長方
256 形状の砂利の敷地であり,
257 その周囲には岩ばかりの採石現場が広がっていた。
258
259 本件採石場に建物は
260 なく,
261 当時夜間であったので,
262 人もいなかった。
263
264 乙は,
265 上記南北に走る道路から本件駐車場に入る
266 と,
267 B車を本件駐車場の南西角にB車前方を西に向けて駐車した。
268
269 本件駐車場には,
270 以前甲と乙が
271 数回訪れたときには駐車車両はなかったが,
272 この日は,
273 乙が駐車したB車の右側,
274 すなわち北側約
275 5メートルの地点に,
276 荷台にベニヤ板が3枚積まれている無人の普通貨物自動車1台(C所有)が
277 B車と並列に駐車されていた。
278
279 また,
280 その更に北側にも,
281 順に約1メートルずつの間隔で,
282 無人の
283 普通乗用自動車1台(D所有)及び荷物が積まれていない無人の普通貨物自動車1台(E所有)が
284 いずれも並列に駐車されていた。
285
286 しかし,
287 本件駐車場内にはその他の車両はなく,
288 人もいなかった。
289
290
291 当時の天候は,
292 晴れで,
293 北西に向かって毎秒約2メートルの風が吹いていた。
294
295 また,
296 B車の車内の
297 シートは布製であり,
298 後部座席には雑誌数冊と新聞紙が置いてあった。
299
300 乙は,
301 それら本件駐車場内
302 外の状況,
303 天候や車内の状況等を認識した上,
304
305 「ここなら,
306 誰にも気付かれずにB車を燃やすこと
307 ができる。
308
309 他の車に火が燃え移ることもないだろう。
310
311 」と考え,
312 その場でB車を燃やすこととした。
313
314
315 乙は,
316 トランク内のAがまだ生存していると思っており,
317 トランクを開けて確認することなく,
318
319 車を燃やしてAを殺害することとした。
320
321 乙は,
322 B車後部座席に容器に入れて置いてあったガソリン
323 10リットルをB車の車内及び外側のボディーに満遍なくまき,
324 B車の東方約5メートルの地点
325 まで離れた上,
326 丸めた新聞紙にライターで火をつけてこれをB車の方に投げ付けた。
327
328 すると,
329 その
330 火は,
331 乙がまいたガソリンに引火し,
332 B車全体が炎に包まれてAの死体もろとも炎上した。
333
334 その炎
335 は,
336 地上から約5メートルの高さに達し,
337 時折,
338 隣のC所有の普通貨物自動車の左側面にも届いた
339 が,
340 間もなく風向きが変わり,
341 南東に向かって風が吹くようになったため,
342 C所有の普通貨物自動
343 車は,
344 左側面が一部すすけたものの,
345 燃え上がるには至らず,
346 その他の2台の駐車車両は何らの被
347 害も受けなかった。
348
349
350
351 - 3 -
352
353 論文式試験問題集[刑事系科目第2問]
354
355 - 1 -
356
357 [刑事系科目]
358 〔第2問〕(配点:100)
359 次の【事例】を読んで,
360 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
361
362
363 【事
364
365
366 例】
367 平成25年2月1日午後10時,
368 Wは,
369 帰宅途中にH市内にあるH公園の南東側入口から同公
370
371 園内に入った際,
372 2名の男(以下,
373 「男1」及び「男2」とする。
374
375 )が同入口から約8メートル離
376 れた地点にある街灯の下でVと対峙しているのを目撃した。
377
378 Wは,
379 何か良くないことが起こるの
380 ではないかと心配になり,
381 男1,
382 男2及びVを注視していたところ,
383 男2が「やれ。
384
385 」と言った
386 直後に,
387 男1が右手に所持していた包丁でVの胸を2回突き刺し,
388 Vが胸に包丁が刺さったまま
389 仰向けに倒れるのを目撃した。
390
391 その後,
392 Wは,
393 男2が「逃げるぞ。
394
395 」と叫ぶのを聞くとともに,
396
397 男1及び男2が,
398 Vを放置したまま,
399 北西に逃げていくのを目撃した。
400
401
402 そこで,
403 Wは,
404 同日午後10時2分に持っていた携帯電話を使って110番通報し,
405 前記目
406 撃状況を説明したほか,
407 「男1は身長約190センチメートル,
408 痩せ型,
409 20歳くらい,
410 上下と
411 も青色の着衣,
412 長髪」,
413 「男2は身長約170センチメートル,
414 小太り,
415 30歳くらい,
416 上が白色
417 の着衣,
418 下が黒色の着衣,
419 短髪」という男1及び男2の特徴も説明した。
420
421
422 この通報を受けて,
423 H県警察本部所属の司法警察員が,
424 同日午後10時8分,
425 Vが倒れてい
426 る現場に臨場し,
427 Vの死亡を確認した。
428
429
430 また,
431 H県警察本部所属の別の司法警察員は,
432 H公園付近を管轄するH警察署の司法警察員
433 に対し,
434 H公園で殺人事件が発生したこと,
435 Wから通報された前記目撃状況,
436 男1及び男2の特
437 徴を伝達するとともに,
438 男1及び男2を発見するように指令を発した。
439
440
441
442
443 前記指令を受けた司法警察員P及びQの2名は,
444 一緒に,
445 男1及び男2を探索していたところ,
446
447 同日午後10時20分,
448 H公園から北西方向に約800メートル離れた路上において,
449 「身長約
450 190センチメートル,
451 痩せ型,
452 20歳くらい,
453 上下とも青色の着衣,
454 長髪の男」,
455 「身長約17
456 0センチメートル,
457 小太り,
458 30歳くらい,
459 上が白色の着衣,
460 下が黒色の着衣,
461 短髪の男」の2
462 名が一緒に歩いているのを発見し,
463 そのうち,
464 身長約190センチメートルの男の上下の着衣及
465 び靴に一見して血と分かる赤い液体が付着していることに気付いた。
466
467 そのため,
468 司法警察員Pら
469 は,
470 これら男2名を呼び止めて氏名等の人定事項を確認したところ,
471 身長約190センチメート
472 ルの男が甲,
473 身長約170センチメートルの男が乙であることが判明した。
474
475 その後,
476 司法警察員
477 Pは,
478 甲及び乙に対し,
479 「なぜ甲の着衣と靴に血が付いているのか。
480
481 」と質問した。
482
483
484 これに対し,
485 甲は,
486 何も答えなかった。
487
488
489 一方,
490 乙は,
491 司法警察員P及びQに対し,
492 「甲の着衣と靴に血が付いているのは,
493 20分前に
494 H公園でVを殺したからだ。
495
496 二日前に俺が,
497 甲に対し,
498 報酬を約束してVの殺害を頼んだ。
499
500 そし
501 て,
502 今日の午後10時に俺がVをH公園に誘い出した。
503
504 その後,
505 俺が『やれ。
506
507 』と言ってVを殺
508 すように指示すると,
509 甲が包丁でVの胸を2回突き刺してVを殺した。
510
511 その場から早く逃げよう
512 と思い,
513 俺が甲に『逃げるぞ。
514
515 』と呼び掛けて一緒に逃げた。
516
517 俺は,
518 甲がVを殺すのを見ていた
519 だけだが,
520 俺にも責任があるのは間違いない。
521
522 」などと述べた。
523
524
525 その後,
526 同日午後10時30分,
527 前記路上において,
528 甲は,
529 司法警察員Pにより,
530 刑事訴訟
531 法第212条第2項に基づき,
532 乙と共謀の上,
533 Vを殺害した事実で逮捕された【逮捕@】。
534
535 また,
536
537 その頃,
538 同所において,
539 乙は,
540 司法警察員Qにより,
541 同項に基づき,
542 甲と共謀の上,
543 Vを殺害し
544 た事実で逮捕された【逮捕A】。
545
546
547 その直後,
548 乙は,
549 司法警察員P及びQに対し,
550 「今朝,
551 甲に対し,
552 メールでVを殺害すること
553 に対する報酬の金額を伝えた。
554
555 」旨述べ,
556 所持していた携帯電話を取り出し,
557 同日午前9時に甲
558 宛てに送信された「報酬だけど,
559 100万円でどうだ。
560
561 」と記載されたメールを示した。
562
563 これを
564 受けて,
565 司法警察員Qは,
566 乙に対し,
567 この携帯電話を任意提出するように求めたところ,
568 乙がこ
569 - 2 -
570
571 れに応じたため,
572 この携帯電話を領置した。
573
574
575
576
577 他方,
578 司法警察員Pは,
579 甲の身体着衣について,
580 前記路上において,
581 逮捕に伴う捜索を実施し
582 ようとしたが,
583 甲は暴れ始めた。
584
585 ちょうどその頃,
586 酒に酔った学生の集団が同所を通り掛かり,
587
588 司法警察員P及び甲を取り囲んだ。
589
590 そのため,
591 1台の車が同所を通行できず,
592 停車を余儀なくさ
593 れた。
594
595
596 そこで,
597 司法警察員Pは,
598 同所における捜索を断念し,
599 まず,
600 甲を300メートル離れたI交
601 番に連れて行き,
602 同交番内において,
603 逮捕に伴う捜索を実施することとした。
604
605 司法警察員Pは,
606
607 甲に対し,
608 I交番に向かう旨告げたところ,
609 甲は,
610 おとなしくなり,
611 これに応じた。
612
613
614 その後,
615 司法警察員Pと甲は,
616 I交番に向かって歩いていたところ,
617 同日午後10時40分頃,
618
619 前記路上から約200メートル離れた地点において,
620 甲がつまずいて転倒した。
621
622 その拍子に,
623
624 のズボンのポケットから携帯電話が落ちたことから,
625 甲は直ちに立ち上がり,
626 その携帯電話を取
627 ろうとして携帯電話に手を伸ばした。
628
629
630 一方,
631 司法警察員Pも,
632 甲のズボンのポケットから携帯電話が落ちたことに気付き,
633 この携帯
634 電話に乙から送信された前記報酬に関するメールが残っていると思い,
635 この携帯電話を差し押さ
636 える必要があると判断した。
637
638 そこで,
639 司法警察員Pは,
640 携帯電話を差し押さえるため,
641 携帯電話
642 に手を伸ばしたところ,
643 甲より先に携帯電話をつかむことができ,
644 これを差し押さえた【差押え】。
645
646
647 なお,
648 この差押えの際,
649 司法警察員Pが携帯電話の記録内容を確認することはなかった。
650
651
652 その後,
653 司法警察員Pは,
654 甲をI交番まで連れて行き,
655 同所において,
656 差し押さえた携帯電話
657 の記録内容を確認したが,
658 送信及び受信ともメールは存在しなかった。
659
660
661
662
663
664 甲及び乙は,
665 同月2日にH地方検察庁検察官に送致され,
666 同日中に勾留された。
667
668
669 その後,
670 同月4日までの間,
671 司法警察員Pが,
672 差し押さえた甲の携帯電話の解析及び甲の自宅
673 における捜索差押えを実施したところ,
674 乙からの前記報酬に関するメールについては,
675 差し押さ
676 えた甲の携帯電話ではなく,
677 甲の自宅において差し押さえたパソコンに送信されていたことが判
678 明した。
679
680
681 また,
682 司法警察員Pは,
683 同月5日午後10時,
684 H公園において,
685 Wを立会人とする実況見分
686 を実施した。
687
688 この実況見分は,
689 Wが目撃した犯行状況及びWが犯行を目撃することが可能であっ
690 たことを明らかにすることを目的とするものであり,
691 司法警察員Pは,
692 必要に応じてWに説明を
693 求めるとともに,
694 その状況を写真撮影した。
695
696
697 この実況見分において,
698 Wは,
699 目撃した犯行状況につき,
700 「このように,
701 犯人の一人が,
702 被害
703 者に対し,
704 右手に持った包丁を胸に突き刺した。
705
706 」と説明した。
707
708 司法警察員Pは,
709 この説明に基
710 づいて司法警察員2名(犯人役1名,
711 被害者役1名)をWが指示した甲とVが立っていた位置に
712 立たせて犯行を再現させ,
713 その状況を約1メートル離れた場所から写真撮影した。
714
715 そして,
716 後日,
717
718 司法警察員Pは,
719 この写真を貼付して説明内容を記載した別紙1を作成した【別紙1】。
720
721
722 また,
723 Wは,
724 同じく実況見分において,
725 犯行を目撃することが可能であったことにつき,
726 「私
727 が犯行を目撃した時に立っていた場所はここです。
728
729 」と説明してその位置を指示した上で,
730 その
731 位置において「このように,
732 犯行状況については,
733 私が目撃した時に立っていた位置から十分に
734 見ることができます。
735
736 」と説明した。
737
738 この説明を受けて司法警察員Pは,
739 Wが指示した目撃当時
740 Wが立っていた位置に立ち,
741 Wが指示した甲とVが立っていた位置において司法警察員2名が犯
742 行を再現している状況を目撃することができるかどうか確認した。
743
744 その結果,
745 司法警察員Pが立
746 っている位置から司法警察員2名が立っている位置までの間に視界を遮る障害物がなく,
747 かつ,
748
749 再現している司法警察員2名が街灯に照らされていたため,
750 司法警察員Pは,
751 司法警察員2名に
752 よる再現状況を十分に確認することができた。
753
754 そこで,
755 司法警察員Pは,
756 Wが指示した目撃当時
757 Wが立っていた位置,
758 すなわち,
759 司法警察員2名が立っている位置から約8メートル離れた位置
760 から,
761 司法警察員2名による再現状況を写真撮影した。
762
763 そして,
764 後日,
765 司法警察員Pは,
766 この写
767 真を貼付して説明内容を記載した別紙2を作成した【別紙2】。
768
769
770 - 3 -
771
772 司法警察員Pは,
773 同月10日付けで【別紙1】及び【別紙2】を添付した実況見分調書を作
774 成した【実況見分調書】。
775
776
777
778
779 甲及び乙は,
780 勾留期間の延長を経て同月21日に殺人罪(甲及び乙の共同正犯)によりH地方
781 裁判所に起訴された。
782
783 なお,
784 本件殺人につき,
785 甲は一貫して黙秘し,
786 乙は一貫して自白していた
787 ことなどを踏まえ,
788 検察官Aは,
789 甲を乙と分離して起訴した。
790
791
792 甲に対する殺人被告事件については,
793 裁判員裁判の対象事件であったことから,
794 H地方裁判所
795 の決定により,
796 公判前整理手続に付されたところ,
797 同手続の中で,
798 検察官Aは,
799
800 【実況見分調書】
801 につき,
802 立証趣旨を「犯行状況及びWが犯行を目撃することが可能であったこと」として証拠調
803 べの請求をした。
804
805 これに対し,
806 甲の弁護人Bは,
807 これを不同意とした。
808
809
810
811 〔設問1〕
812
813 【逮捕@】及び【逮捕A】並びに【差押え】の適法性について,
814 具体的事実を摘示し
815 つつ論じなさい。
816
817
818
819 〔設問2〕
820
821 【別紙1】及び【別紙2】が添付された【実況見分調書】の証拠能力について論じな
822 さい。
823
824
825
826 - 4 -
827
828
829
830
831
832
833
834
835
836 調
837
838
839 平成25年2月10日
840
841 H警察署
842 司法警察員
843
844
845
846 ,
847
848 被疑者甲ほか1名に対する殺人被疑事件につき,
849 本職は,
850 下記のとおり実況見分をした。
851
852
853
854
855
856 実況見分の日時
857 平成25年2月5日午後10時から同日午後11時まで
858
859
860
861 実況見分の場所,
862 身体又は物
863 H公園
864
865
866
867 実況見分の目的
868
869
870
871 Wが目撃した犯行状況を明らかにするため
872
873
874
875 Wが犯行を目撃することが可能であったことを明らかにするため
876
877
878
879 実況見分の立会人
880
881
882
883
884 実況見分の結果
885 別紙1及び別紙2のとおり
886
887
888 - 5 -
889
890
891
892 【別紙1】
893
894 司法警察員2名が犯行状況を再現した写真
895 (約1メートル離れた場所から撮影したもの)
896
897 立会人(W)は,
898 「このように,
899 犯人の一人が,
900 被害者に対し,
901 右手に持った包丁を胸に突き刺
902 した。
903
904 」と説明した。
905
906
907
908 - 6 -
909
910 【別紙2】
911
912 司法警察員2名が犯行状況を再現した写真
913 (約8メートル離れた場所[Wが指示した位置]から撮影したもの)
914
915 立会人(W)は,
916 「私が犯行を目撃した時に立っていた場所はここです。
917
918 」と指示し,
919 その位置に
920 おいて「このように,
921 犯行状況については,
922 私が目撃した時に立っていた位置から十分に見ること
923 ができます。
924
925 」と説明した。
926
927
928 本職も,
929 Wが指示した位置から司法警察員2名が犯行を再現している状況を目撃することができ
930 るか確認したところ,
931 本職が立っている位置から司法警察員2名が立っている位置までの間に視界
932 を遮る障害物がなく,
933 かつ,
934 再現している司法警察員2名が街灯に照らされていたため,
935 司法警察
936 員2名による再現状況を十分に確認することができた。
937
938
939 そこで,
940 本職は,
941 これらの状況を明らかにするため,
942 Wが指示した位置から司法警察員2名によ
943 る再現状況を写真撮影した。
944
945
946
947 - 7 -
948
949