1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
17 【事
18
19 例】
20 精密機械の製造等を営む取締役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は,経
21
22 営不振となり,その財産をもって債務を完済することができない状態に陥ったため,再生手続開
23 始の原因があるとして,平成24年4月5日に再生手続開始の申立てを行ったところ,同日中に
24 監督命令を受け,同月10日,再生手続開始の決定を受けるに至った。
25 〔設
26
27 問〕
28
29 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
30
31 1.A社は,平成22年4月1日,B株式会社(以下「B社」という。)との間で,精密機械の
32 製造に使用するための機械設備(以下「本件設備」という。)を目的として,契約期間を8年
33 とし,フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約(以下「本件リース契約」という。)
34 を締結し,その後,B社から本件設備の引渡しを受けて使用するとともに,本件リース契約の
35 約定に従い,毎月末日にリース料を支払ってきた。本件リース契約には,A社が1回でもリー
36 ス料の支払を怠った場合に関し,A社は,期限の利益を喪失し,また,B社は,本件リース契
37 約を解除し,本件設備を引き上げることができるとの約定がある。
38 A社は,再生手続開始の申立ての準備に伴う混乱から,再生手続開始の決定の前である平成
39 24年3月末日を支払期日とするリース料の支払を怠ってしまったものの,再生手続開始の決
40 定の後,B社との間で,改めて本件設備を継続して使用することができるよう,協議を行って
41 きた。しかし,B社からは,本件設備の使用による減価が著しいことから,同年3月末日支払
42 分を含めたリース料の残りの全額を支払うことができないのであれば,一日も早く引き上げた
43 いとの意向を示されており,このままでは,B社から本件リース契約を解除されるおそれがあ
44 る。
45 本件設備は,A社の事業の継続に不可欠な設備であり(なお,本件設備には,他に何らの担
46 保権等の設定はない。),また,B社以外の者から新たにリース契約等を締結することによって
47 同等の設備を調達することも困難であることから,A社としては,債務不履行を理由にB社か
48 ら契約を解除され,本件設備を引き上げられてしまう前に,本件設備を継続的に使用すること
49 ができるよう,B社との合意を成立させたいと考えている。
50 以上の場合において,A社の依頼を受けた弁護士として,当該合意を成立させるべく,B社
51 との間の協議を行う機会を確保するため,どのような申立てをすべきであるかについて,A社
52 が申立てをした場合の裁判所における審理の方法に関する問題点にも触れつつ,論じなさい。
53 また,既にB社が解除の意思表示を行い,A社に本件設備の引渡しを求めているとした場合に
54 違いが生ずるかどうかについて,B社の権利行使の方法にも触れつつ,論じなさい。
55 2.C株式会社(以下「C社」という。)は,A社に精密機械の部品を供給している会社であり,
56 A社に対して再生債権として売掛金債権を有している者であるが,かねてより,A社の技術力
57 を高く評価していたため,A社の経営の再建に当たり,そのスポンサー候補として,名乗りを
58 上げた。
59 A社の経営は,創業者の息子であり,その全ての株式を保有する代表取締役Dがその実権を
60 把握していたが,今般のA社の経営不振は,Dが採算性を十分に考慮することなく,他の分野
61 に業務を拡大し,多額の赤字を出したことに主たる原因があった。そこで,C社は,A社に資
62 金を供給するに当たり,Dの取締役からの退任を求めるとの方針の下,A社との間の交渉に入
63 った。しかし,A社は,Dの退任を拒否し,C社との間の交渉を打ち切った上で,スポンサー
64 を得ることなく,自ら経営を合理化し,今後の経営によって得られる利益から再生債権の弁済
65 - 2 -
66
67 を行うという再生計画案を作成し,裁判所に提出した。
68 C社は,A社の大口債権者であるE銀行などの複数の再生債権者から,Dが引き続きA社の
69 経営に当たることは望ましくなく,C社がスポンサーとなることが再生債権者全体の利益にな
70 るとして,C社がスポンサーとなるのであれば,支援をする旨を伝えられた。そこで,C社は,
71 A社の作成した再生計画案に対抗するため,届出再生債権者案として,A社がその事業を1億
72 円でC社に譲渡し,A社は,当該事業譲渡の代金を弁済原資として,再生計画認可の決定の確
73 定から3か月後に再生債権額の8%を弁済し,弁済時にその余の再生債権額については免除を
74 受けるとの内容の再生計画案を作成し,裁判所に提出した。
75 その後,債権者集会において,A社が提出した再生計画案は否決され,他方,C社が提出し
76 た再生計画案が可決され,裁判所は,再生計画認可の決定をした。
77 しかし,A社は,当該再生計画認可の決定があった後も,当該事業譲渡の実施を拒み,株主
78 総会を開催しようともしない。
79 以上の場合において,C社は,A社の再生手続が廃止されることを避けるため,どのような
80 申立てをすべきかについて,論じなさい。
81
82 - 3 -
83
84 〔第2問〕(配点:50)
85 次の事例について,以下の設問に答えなさい。
86 【事
87
88 例】
89 建設業を営むX株式会社(以下「X社」という。)は,A株式会社(以下「A社」という。)か
90
91 らマンションの建築工事の注文を受け,平成24年9月1日,A社との間で,請負代金総額10
92 億円,工事期間10か月間として,建築工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結
93 し,着工した。本件請負契約においては,請負代金の支払条件として,着工時である同日に前受
94 金として4億円を支払い,その後は,同年12月末日に5億円の中間金を支払い,マンションの
95 引渡し時に 1 億円を支払うことと約定されていた。また,本件請負契約の締結に際し,A社は,
96 B銀行との間で,本件請負契約に基づいてX社が受領した請負代金を何らかの事情によりA社に
97 返還しなければならない場合には,X社の当該返還債務をB銀行が連帯して保証する旨の契約を
98 締結した。
99 ところが,X社は,C銀行を始めとする金融機関から総額35億円の融資を受けていたほか,
100 下請業者に対して買掛金債務等を合計2億2000万円負担し,総額で,37億2000万円の
101 負債を有しており,平成25年4月15日には,同日を支払期日とする7500万円の約束手形
102 の決済が困難なことが判明した。そこで,X社は,同日,裁判所に破産手続開始の申立てを行っ
103 たため,即日に破産手続開始の決定を受けるに至り,弁護士Yが破産管財人に選任された。
104 当該破産手続開始の決定の時において,X社がA社から請け負ったマンションの出来高は,8
105 5%に過ぎなかったが,X社は,前受金を含め,A社から,既に9億円の請負代金を受領してい
106 た。また,X社は,本件請負契約に関し,下請業者であるD株式会社(以下「D社」という。)
107 との間で,毎月末日に出来高を確認して翌月末日にその出来高相当額を支払うという条件により,
108 請負契約(以下「本件下請契約」という。)を締結しており,X社に対する破産手続開始の決定
109 があった時点におけるD社の施工の出来高も,本件下請契約の対象となる工事全体の85%であ
110 ったが,X社は,本件下請契約の請負代金総額6億円のうち,出来高70%相当額の4億200
111 0万円しか支払っておらず,同年3月分の請負代金6000万円と同年4月の15日間の請負代
112 金3000万円の合計9000万円が未払の状態となっている。
113 なお,本件請負契約及び本件下請契約において,出来高は,A社に帰属するものとされている。
114 〔設
115
116 問〕
117
118 1.
119
120 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
121
122 Yは,本件請負契約に基づく建築工事の継続を断念し,D社との間の本件下請契約も,
123 解除した。この場合において,D社の有する本件下請契約に基づく請負代金請求権の行使
124 方法について,論じなさい。
125
126
127
128 Yは,裁判所の許可を得て,本件請負契約に基づく建築工事を継続することとし,D社
129 との間の本件下請契約に基づく建築工事は,継続されることとなった。この場合において,
130 D社が有する本件下請契約に基づく請負代金請求権の行使方法について,論じなさい。
131
132 2.Yは,本件請負契約に基づく建築工事について,このままD社を含む下請業者へ即時現金払
133 で継続した場合には,資金繰りが続かないおそれがあると判断し,本件請負契約を破産法第5
134 3条第1項の規定に基づき,解除した。しかし,出来高がいまだ85%に過ぎなかったため,
135 A社は,Yに対し,既にX社に支払った本件請負契約に基づく請負代金9億円のうち,出来高
136 の未達成部分である5000万円の返還を請求した。
137
138
139 A社のYに対する請負代金返還請求権の破産手続における法的性質について,論じなさい。
140
141
142
143 A社は,請負代金の返還を求めるに当たり,X社の破産財団が換価手続中であり,いまだ
144 資金がない状態であると考え,連帯保証人であるB銀行に対し,保証債務の履行を求めたた
145 め,B銀行は,この連帯保証債務を履行し,5000万円の求償債権を有するに至った。こ
146 の場合において,B銀行のYに対する権利行使の方法について,論じなさい。
147 - 4 -
148
149 論文式試験問題集[租
150
151 - 5 -
152
153 税
154
155 法]
156
157 [租
158
159 税
160
161 法]
162
163 〔第1問〕(配点:40)
164 S市に住むAは,S地方裁判所から,裁判員候補者として呼出しを受けた。Aは,職場の上司で
165 あるBに対し,「このたび,裁判所から呼出しがありました。休暇を取らせてください。」と依頼し
166 た。Bは,「了解しました。大事なことですから,安心して行きなさい。」と応じた。
167 裁判員を選任する手続の期日は,平成25年1月21日(月曜日)に指定されていた。同日の朝,
168 Aは,自宅からバスと電車を乗り継いで,S地方裁判所に出頭した。当日の手続によりAは裁判員
169 に選任され,直ちに翌日から公判が開始されることになった。Aの自宅からS地方裁判所まではか
170 なりの距離があり,交通機関の乗換えの便も悪かったため,帰宅はかなり遅くなったが,Aは何と
171 かその日のうちに自宅に戻った。
172 Aは帰宅後,裁判員に選任されたことをBに電話で説明し,さらに休暇を取得した。S地方裁判
173 所でAの合議体が取り扱うこととなった事件は,連日開廷の下で審理が行われ,平成25年1月2
174 5日(金曜日)に判決が言い渡された。この間のAの裁判員としての職務従事日数は計4日である。
175 Aは,自宅とS地方裁判所の間を連日往復することに体調面で不安があったこと,期日が連続して
176 いたこと,及び,同居する老親の同意を得られたことから,裁判員としてS地方裁判所に通ってい
177 た間,S地方裁判所付近のビジネスホテルで3泊し,ホテル代を支出した。
178 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」という。司法試験用法文を参照。)
179 の下で,裁判員候補者及び裁判員は期日に出頭する義務を負い,裁判員は審理に立ち会う職務を担
180 う。裁判員は,特別な知識,能力,経験等を要件とせず国民一般から無作為に抽出された者の中か
181 ら選任され,一定の事由に該当しない限りは,その辞退を申し立てることができない。正当な理由
182 がなく出頭しないときは過料に処することとされている。また,裁判員は,独立してその職権を行
183 うこととされている。
184 裁判員候補者や裁判員である者には,裁判員法において,旅費,日当及び宿泊料を支給すること
185 とされている(裁判員法第11条,第29条第2項)。Aは,平成25年2月に,裁判員法に基づ
186 き,裁判員候補者として出頭したことにつき旅費及び日当の支給を,裁判員として出頭し計4日間
187 職務に従事したことにつき旅費,日当及び宿泊料の支給を,それぞれ銀行振込によって受けた。
188 〔設
189
190 問〕
191 Aが裁判員候補者及び裁判員として支給を受けた旅費,日当及び宿泊料,並びに,Aが支出し
192
193 たホテル代は,所得税法の適用上,どのように扱われるか。所得税法の根拠条文を摘示して説明
194 しなさい。
195
196 - 6 -
197
198 〔第2問〕(配点:60)
199 Aは,平成10年4月に,それまで勤めていた不動産会社を辞めて,東京都内で,個人で不動産
200 賃貸の事業を開業した。Aは,開業に伴い,個人の不動産賃貸業者が会員となっているB協会に加
201 入した。
202 B協会は,平成16年4月,不動産の税務会計等に詳しいC税理士を講師に招き,本部事務所の
203 会議室において,B協会の会員の参加による講演会とC税理士を囲んだ懇親会を開催する計画を立
204 てた。同講演会の開催日を同年5月10日とし,参加する会員が負担する費用として,講演会の参
205 加費用を2万円,その後に開催される懇親会費用を1万円と決めて,その旨記載した案内状を各会
206 員に送付した。Aは,B協会からの案内状を見て,是非ともC税理士の講演を聴きたいと考え,同
207 年5月10日,本部事務所に行き,会場受付で,講演会及び懇親会の各費用として合計3万円を支
208 払い,C税理士の講演を聴いた。講演会及び懇親会の終了後,Aを含む会員数名で,本部事務所近
209 くの居酒屋において,C税理士を囲んで二次会をすることとなり,その費用についてはC税理士分
210 も含めて参加した会員で割り勘とし,結局,一人4000円を支払った。
211 ところで,Aは,開業以来,果敢な投資により事業を拡大し,それに伴って売上げも順調に伸ば
212 してきたが,そのため多額の税金を支払うこととなったため,少しでも納税額を減らそうと考えた。
213 そこで,Aは,平成16年12月10日ころ,取引先であるDに依頼して,額面300万円の架空
214 の請求書と領収証を作成してもらい,その報酬として,Dに対して20万円を支払った。
215 平成19年になって,Aは,E税務署の職員の調査により,過去3年分の所得を過少申告してい
216 たことが発覚した。そのため,E税務署長は,平成19年9月1日,Aに対して,3年分の所得税
217 の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下,両処分を併せて「本件各処分」という。)
218 をした。
219 Aは,直ちに,本件各処分に基づき本税及び加算税等を納付したが,本件各処分を不服として,
220 E税務署長に対して異議申立てをした。しかし,同申立ては棄却され,さらに国税不服審判所長に
221 対して審査請求をしたが棄却された。そこで,Aは,弁護士を選任して,本件各処分の取消しを求
222 めて,平成20年10月1日に東京地方裁判所に提訴した。
223 Aは,E税務署長に対する異議申立てに始まる一連の手続をするに当たって,C税理士に代理人
224 さらには補佐人として関与してもらえるように頼み,本件各処分が取り消された場合には成功報酬
225 として還付加算金を含めた認容額の10パーセントを支払うことを約束した。
226 第一審の東京地方裁判所は,Aの請求を棄却したため,Aが控訴したところ,東京高等裁判所は,
227 平成24年10月17日,本件各処分の一部を取り消す旨の判決を言い渡し,同判決は,当事者双
228 方が上訴せず確定した。
229 E税務署長は,同判決の確定を受けて,平成24年11月1日,Aに対し,過納金2000万円
230 と還付加算金300万円を還付した。Aは,C税理士に成功報酬として,230万円を支払った。
231 以上の事実関係を前提に,以下の設問に答えよ。
232 〔設問1〕
233 所得税法における「必要経費」と法人税法における「損金」の異同を簡潔に論ぜよ。
234 〔設問2〕
235 Aは,平成16年分の所得税の申告に当たり,不動産所得の金額の計算上,@講演会への参加費
236 用(2万円),懇親会費用(1万円)及び二次会の費用(4000円)並びにADに支払った報酬
237 20万円を,それぞれ必要経費に算入できるか。Aについては,Aが法人であった場合と比較しつ
238 つ論ぜよ。
239
240 - 7 -
241
242 〔設問3〕
243 E税務署から還付された過納金及び還付加算金は,所得税法上,Aの平成24年分の課税所得に
244 含まれるか。課税所得に含まれるとした場合に,いかなる所得区分に該当するか。AがC税理士に
245 支払った報酬230万円は,所得税法上,どのように取り扱われるか。
246
247 - 8 -
248
249 論文式試験問題集[経
250
251 - 9 -
252
253 済
254
255 法]
256
257 [経
258
259 済
260
261 法]
262
263 〔第1問〕(配点:50)
264 X社は,自動車の重要な構成部品甲(以下「甲」という。)のメーカーであり,主な取引先は,
265 日本国内の自動車メーカーである。X社の甲の日本国内における販売シェアは40%であり,甲の
266 メーカーは日本国内には他に5社存在している。なお,甲に代替し得る製品は存在しない。
267 X社は,最近,甲の革新的な新しい製造方法(以下「新製造方法α」という。)の単独開発に成
268 功し,そのノウハウ技術(注)を保有している。新製造方法αは,旧製造方法に比べて,甲の品質
269 を大きく向上させ製造コストも大幅に削減させるものであることから,短期間のうちに,旧製造方
270 法は全て新製造方法αに取って代わられるものと予測された。もっとも,開発した新製造方法αを
271 実施するためには,別途,専用の製造装置が必要であった。しかし,X社は,製造装置メーカーで
272 はなく,当該製造装置を単独では開発できないため,従来から株式の相互保有関係にあった製造装
273 置メーカーのY社と当該製造装置を共同開発することとし,Y社に対して製造装置の開発に必要な
274 新製造方法αのノウハウ技術を開示した上で,共同開発を行った。X社及びY社による共同開発の
275 結果,新製造方法α向けの製造装置を製造するための技術の開発に成功し,Y社は,当該開発した
276 技術を用いた新製造方法α向けの製造装置βを製造することにも成功するに至った。
277 甲の製造装置メーカーは,日本国内にY社の他に4社存在する。現時点では,X社及びY社が共
278 同開発した新製造方法α向けの製造装置βの競合品は存在しないものの,甲の製造装置の分野は,
279 技術開発が活発な分野であり,他の4社の技術開発能力に照らして,少なくとも数年のうちには,
280 新製造方法α向けの代替製造装置を製造するための新技術の開発を行うとともに,当該新技術を用
281 いた新製造方法α向けの代替製造装置を製造する見込みが高い。
282 X社は,今後,新製造方法αのノウハウ技術を甲の他のメーカーにも利用許諾(以下「ライセン
283 ス」という。)することを考えているが,ライセンス先のメーカーが,ライセンスを受けた新製造
284 方法αのノウハウ技術を基に甲の他の製造装置メーカーと共同して代替製造装置に係る新技術の開
285 発を行う場合には,甲の他の製造装置メーカーに新製造方法αのノウハウ技術が漏えいするおそれ
286 があると考えている。また,X社は,Y社と行った製造装置βの共同開発に要した費用を回収する
287 には数年掛かると考えている。そこで,X社は,新製造方法αのノウハウ技術の秘密性を保持する
288 とともに,Y社との共同開発に要した費用を回収するために,甲の他のメーカーに対し新製造方法
289 αのノウハウ技術をライセンスするに際し,新製造方法α向けの製造装置を,Y社が製造する製造
290 装置βに限定し,Y社から購入することを義務付けることを計画している(以下「本件計画」とい
291 う。
292 )。
293 〔設
294
295 問〕
296
297 X社の本件計画について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」
298 という。)上の問題点を分析して検討しなさい。
299 (注)ノウハウ技術とは,公知となっていない技術的知識及び経験又はそれらの集積であって,そ
300 の経済価値を事業者自らが保護・管理するものを指し,おおむね,不正競争防止法上の営業秘
301 密のうちの技術に関するものをいう。
302
303 - 10 -
304
305 〔第2問〕(配点:50)
306 A協会は,水上スポーツ用の船舶である商品乙(以下「乙」という。)の普及と発展を目的とし
307 て設立された団体であり,乙のメーカーであるX1-X5の5社及び乙を取り扱う販売店のほとん
308 ど全てがその会員となっている。A協会は規約で総会,理事会等を設けており,メーカー5社及び
309 主要な販売店数社が理事会のメンバーになっている。
310 メーカー5社の合計シェアは,日本国内で販売される乙のほとんど全てを占めている。また,乙
311 の大部分は,メーカーから販売店を経てユーザーに販売されている。なお,乙は,用途・機能が特
312 定されていることから,他に代替品は存在しない。また,乙には大型と小型の区別があり,両者の
313 小売価格には約1.5倍程度の開きがあるが,いずれも,ユーザーにとっての基本的な用途・機能
314 に差異は存在しない。
315 乙は,マリンスポーツの人気の高まりとともに売上げを伸ばしてきたが,販売台数の増加ととも
316 に,船舶の動作不良とユーザーの操縦ミスが複合した転覆や衝突事故が増加し,これがマスコミで
317 も報道されるようになった。また,事故時における損害賠償をめぐるトラブルが多発するようにな
318 った。そこで,A協会は,これらの事態に対処して乙に対する信頼を維持するための方策を理事会
319 で話し合い,以下のような内容の「対策要綱」をまとめて,これを実施しようと考えている。
320
321
322 ユーザーによるメインテナンスの不備,並びに長期間使用されることによる船舶の経年劣化が
323 動作不良発生の原因であると考えられたことから,メインテナンスの必要性の認識を喚起すると
324 ともに船舶の使用期間の適正化を図ることを目的として,これまでは明確に定められていなかっ
325 た乙の「耐用年限」についての自主基準を設けることとする。
326 従来,乙の平均使用期間は約8年であったが,5,6年を経過する頃から事故発生率が上昇す
327 るというデータが得られたこと,実際に多くの会員メーカーが,修理や保守の経験に基づき,目
328 安となる耐用年限を5年程度としていたことから,適切な保守・点検により安全性が維持できる
329 期間として,耐用年限の自主基準を一律に5年間とする。
330 その場合,製品の耐用年限を設定するか否か,また耐用年限を設定する場合に上記の自主基準
331 に従うか否かについては,会員メーカーの自由とし,これより長い,又は短い耐用年限の製品を
332 製造し販売することは制限しないこととする。
333
334
335
336 乙については,賠償責任保険の加入者が少ないことが,事故時に損害賠償をめぐるトラブルが
337 多発する主因だと考えられたことから,トラブル防止のため,会員メーカーは,保険会社との間
338 で,メーカーが保険料を負担する乙向けの商品付帯賠償責任保険Wに係る契約を締結し,自社の
339 乙にこの保険Wを付帯して販売しなければならないこととする(注)。
340 乙に付帯する保険Wの保険期間は1年とし,どの保険会社の保険を選択するかは,会員メーカ
341 ーの自由に任せる。また,メーカーが負担する保険料を乙の卸売価格に転嫁するかどうかについ
342 ても,各社の判断に委ねることとする。なお,現在,保険Wを取り扱っている保険会社は2社で
343 あるが,本対策要綱の実施を念頭に置いて,更に数社が新たに取扱いを計画している。
344
345 〔設
346
347 問〕
348
349 上記の「対策要綱」,について,独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
350 (注)乙向けの商品付帯賠償責任保険Wは,メーカーを保険契約者,当該メーカーの乙を購入した
351 ユーザーを被保険者とする保険で,この保険が付帯された乙を購入したユーザーは,保険料を
352 負担せずに補償を受けることができる。
353
354 - 11 -
355
356 - 12 -
357
358 論文式試験問題集[知的財産法]
359
360 - 13 -
361
362 [知的財産法]
363 〔第1問〕(配点:50)
364 Yの従業員である甲と乙は,物質Aに物質b1を反応させて化合物Cを生産する方法(以下「方
365 法1」という。)を職務発明として共同で発明した。甲と乙は,Yの職務発明規程に従って,方法
366 1に関する職務発明の特許を受ける権利を,双方同意の上でYに譲渡したが,Yは特許出願をしな
367 かった。しかし,Yは方法1の発明完成の報告を受けて,直ちに秘密裏に方法1の使用による化合
368 物Cの製造を複数の国内工場で開始した。
369 その後,乙は,Yを退職してYと競合するXの従業員となり,Xでの研究開発に従事したところ,
370 物質Aに物質b2を反応させて化合物Cを生産する方法(以下「方法2」という。)によると,方
371 法1よりも顕著に高い収率で化合物Cを生産できることを発見した。そして,乙は,方法2のみな
372 らず方法1についても,自分の単独発明としてXに届け出て,両発明の特許を受ける権利をXに譲
373 渡する旨をXと合意した。Xは,特許請求の範囲を「物質Aに物質Bを反応させて化合物Cを生産
374 する方法」
375 (以下「発明α」という。)とした特許出願を,発明者を乙として行った。その後,Xは,
376 方法1を使用して化合物Cの製造を開始した。なお,物質Bは物質b1と物質b2の両方を含む上
377 位概念であり,明細書には方法1と方法2の実施例がいずれも記載されている。
378 一方,Xが発明αの特許出願を行った1か月後,Yにおいても独自に方法2が開発され,直ちに,
379 Yは方法1を使用していた国内工場の生産ラインのうちの一部につき,方法2を使用するように変
380 更して化合物Cの製造を開始した。Yは,以来継続して方法1と方法2の両方法を使用して化合物
381 Cの製造を行っている。
382 Xは,発明αについて特許査定を受けて設定登録を得た(以下,この特許を「本件特許」という。)
383 ので,本件特許に基づき,Yに対し,化合物Cの製造行為の差止めを求めて提訴した。
384 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えよ。
385 〔設
386
387 問〕
388
389 1.本件特許に基づくXの差止請求に対し,方法1と方法2のそれぞれについて,Yはどのよう
390 な抗弁を主張できるか論ぜよ。
391 2.設問1で検討したYの抗弁のうち,方法2に関する抗弁に対して,Xはどのような再反論が
392 できるか論ぜよ。
393 3.Yは,本件特許について,Xに対し特許権の移転請求を行うことができるか,その可否につ
394 いて論ぜよ。また,Yによる特許権の移転請求が認められた場合,Yは本件特許に基づいてX
395 に対し方法1の使用の差止めを請求できるかについても論ぜよ。
396 【参考】特許法施行規則(昭和35年3月8日通商産業省令第10号)
397 (特許権の移転の特例)
398 第40条の2
399
400 特許法第74条第1項の規定による特許権の移転の請求は,自己が有すると認める
401
402 特許を受ける権利の持分に応じてするものとする。
403
404 - 14 -
405
406 〔第2問〕(配点:50)
407 小説家であるAは,古代中国の春秋戦国時代に生きた武将αの数奇な生涯を描いた小説(以下「本
408 件小説」という。)を執筆した。
409 漫画家であるBは,Aの承諾を得て,本件小説を原作とした連載漫画(以下「本件漫画」という。)
410 を執筆した。その際,Bは,本件小説に登場する主人公の武将αその他の登場人物の特徴について,
411 本件小説に言語で描かれている特徴を踏まえながらも漫画として描くにふさわしい容姿を自ら考え
412 出し,それぞれが身に着ける甲冑や衣装についても,数々の古代中国の資料を参考にし,さらに漫
413 画としての特徴を出すべく,西洋風の甲冑や衣装の要素も取り入れながら,独自の視点を加味して
414 描いた。
415 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えよ。ただし,著作者人格権について触れる必要
416 はない。
417 〔設
418
419 問〕
420
421 1.映画製作会社Cは,本件漫画に登場する武将αを主人公としたアニメーションを製作し,そ
422 れをDVDとして販売したいと考え,この企画をBに持ちかけたところBの承諾を得たので,
423 Aの承諾を得ないまま,同アニメーション(以下「本件アニメ」という。)を製作した。本件
424 アニメは,Bが描いた本件漫画の登場人物の作画を忠実にアニメ化したものではあるが,その
425 物語の展開は本件小説には全く描かれていない独自の内容であった。
426 Aは,Cに対して,本件アニメのDVDの製造・販売の差止めを求めるためにどのような主
427 張をすべきか。
428 これに対するCの反論としてどのような主張が考えられるか。
429 双方の主張の妥当性についても論ぜよ。
430 2.イベント主催会社Dは,各漫画雑誌に掲載された人気漫画の原画を展示して紹介するイベン
431 ト(以下「本件イベント」という。)を企画し,その際,所有者の承諾を得て本件漫画の原画
432 を展示する予定であるが,その一方で,A及びBに無断で,展示される武将αが描かれている
433 本件漫画の原画の1枚を,A5版30頁の観覧者向けパンフレット(以下「本件パンフレット」
434 という。)において,1頁の約3分の2の大きさで掲載し,それに簡単な解説を付けた上で,
435 これをイベント会場において観覧者に販売しようとしている。
436 また,Dは,本件イベントの入場前売りチケット(以下「本件チケット」という。)にも,
437 A及びBに無断で,本件漫画の原画の1コマを印刷して,これを販売しようとしている。なお,
438 本件チケットは,上記原画の1コマを除けば,本件イベントの名称,本件イベントの日時場所
439 が記載されているにすぎないものであった。
440 Bは,Dに対して,本件パンフレット及び本件チケットの販売の差止めを求めるためにどの
441 ような主張をすべきか。
442 これに対するDの反論としてどのような主張が考えられるか。
443 双方の主張の妥当性についても論ぜよ。
444 3.玩具製造業者Eは,A及びBの承諾を得て,本件漫画の主人公である武将αの小型のプラス
445 チック製人形(以下「本件フィギュア」という。)を製作し,これを大量に販売している。本
446 件フィギュアは,手足の関節が自由に屈折し,付属の甲冑の着せ替えができる高さ8センチメ
447 ートルほどのおもちゃの人形ではあったが,その模型原型は,武将αの全体像についてEの従
448 業員である造形師が想像力を駆使して造形したものであり,本件漫画では十分に描かれていな
449 い前後左右から見た武将αの容姿及び甲冑の立体的形状や色彩,金属としての光沢などがまる
450 で本物のような質感で造形されており,小さいながらも極めて精細かつ色鮮やかで躍動感にあ
451 ふれる形態のものであった。
452 菓子製造販売業者Fは,A,B及びEに無断で,自らが製造販売するスナック菓子のおまけ
453 - 15 -
454
455 として本件フィギュアを細部まで模倣して小型化した武将αのプラスチック製人形を製造して,
456 これを消費者に提供しようとしている。
457 E及びBは,Fに対して,上記行為の差止めを求めるためにどのような主張をすべきか。
458 これに対するFの反論としてどのような主張が考えられるか。
459 双方の主張の妥当性についても論ぜよ。
460
461 - 16 -
462
463 論文式試験問題集[労
464
465 - 17 -
466
467 働
468
469 法]
470
471 [労
472
473 働
474
475 法]
476
477 〔第1問〕(配点:50)
478 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
479 【事
480
481 例】
482 Xは,平成20年3月に大学の理工学部を卒業し,自動車製造会社に勤務していたが,自己が
483
484 希望していた電気自動車の開発に携わることができず,営業を担当させられたことから,転職し
485 たいと考えるようになった。
486 学校法人Yは,同法人が経営する私立高校(以下「Y高校」という。)について,理数系特進
487 クラスを設けて生徒数を増加させるとの方針を採り,理科系教育に力を入れるべく,物理教員の
488 中途採用を拡充することとし,平成23年6月に,就職情報誌に物理教員の中途採用者募集広告
489 を出した。当該募集広告には,中途採用者の給与に関し,「既卒者でも収入面のハンデはありま
490 せん。例えば,平成20年3月大卒の方なら,同年に新卒で採用した教員の現時点での給与と同
491 等の額をお約束いたします。」などと記載されていた。
492 Xは大学在学中に教員を志望し,教員免許を取得していたこともあり,前記募集広告を見て応
493 募し,筆記試験を受け,平成23年9月に実施された採用説明会に出席した。同説明会において,
494 XがYから示された書面では,採用後の労働条件について,各種手当の額は表示されていたもの
495 の,基本給については具体的な額を示す資料は提示されなかった。
496 Xは,同年10月に実施された採用面接の際,Yの理事長から,「契約期間は平成24年4月
497 1日から1年ということに一応しておきます。その1年間の勤務状態を見て再雇用するかどうか
498 を決めたいと思います。その条件で良ければあなたを本校に採用したいと思います。」と言われ
499 たが,Xとしては,早く転職して念願の教員になりたかったことから,その申出を承諾するとと
500 もに,「私は,平成25年3月31日までの契約期間1年の常勤講師としてYに採用されること
501 を承諾いたします。同期間が満了したときは解雇予告その他何らの通知を要せず,期間満了の日
502 に当然退職の効果が生ずることに異議はありません。」という内容の誓約書をYに提出した。な
503 お,Yは,教員経験のない者を新規採用する際の契約期間については,Xに限らず,これを1年
504 としていたが,同期間経過後に引き続き雇用する場合に契約書作成の手続等は採られていなかっ
505 た。
506 Xは,Yに採用され,平成24年4月1日からY高校において物理教員として勤務し,同僚教
507 員と同程度の週12時限の特進クラスの授業を受け持ち,卓球部の顧問として部活指導等も行っ
508 ていた。そうした中,Xは,同年8月に至って,自己の給与については,平成24年4月に新卒
509 で採用された教員の給与と同等の給与であることを初めて知らされ,Yに対し,平成20年4月
510 に新卒で採用された教員の現時点での給与と同等の給与への増額を求めたものの認められなかっ
511 た。
512 Yの就業規則には,「賞与として,7月10日(算定対象期間:前年12月1日から当年5月
513 31日まで)及び12月25日(同期間:6月1日から11月30日まで)に,それぞれ基本給
514 の1か月分を支給する。」という規定があった。ところが,Yは,特進クラス創設に伴い,大規
515 模な設備投資や多数の教員採用等を行ったことから,経営状態が急激に悪化し,資金繰りに窮す
516 るようになり,平成24年12月の賞与を支払えない見込みとなった。そこで,Yの理事長は,
517 平成24年12月14日,教職員に対する説明会を開催し,平成24年12月の賞与を支払えな
518 いこと及びその理由を説明したところ,教職員側からは何ら異議は出ず,また,Xを含む教職員
519 全員から,平成24年12月の賞与の不支給について同意する旨の書面が提出された。しかし,
520 Yは,就業規則の変更は行わなかった。そして,その後,Yは,平成24年12月の賞与を教職
521 員に支払っていない。
522 - 18 -
523
524 その後,Yは,父母会からXの授業は特進クラスのレベルに達していないとのクレームが相次
525 いでいるため再雇用はしないとして,Xに対し,平成25年3月31日をもってXの労働契約は
526 期間満了により終了する旨の通知を行った。
527 〔設
528
529 問〕
530 弁護士であるあなたが,Xから,Y高校で今後も教員として働き続けるため,並びに,本来支
531
532 給されるべきものと考えた賃金及び賞与を得るため,Yを相手方として訴えを提起したいとの相
533 談を受けた場合に検討すべき法律上の問題点を指摘し,それについてのあなたの見解を述べなさ
534 い。
535
536 - 19 -
537
538 〔第2問〕(配点:50)
539 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
540 【事
541
542 例】
543 Y社は,従業員数約700名,客室数約500室,収容人員数約2000名のホテルを営んで
544
545 おり,X1らはいずれもY社の従業員で,Y社の従業員の半数以上により組織されるX労働組合
546 (以下「X組合」という。)の組合員である。また,Zは,Y社の従業員であり,当初X組合の
547 組合員であったが,平成24年8月17日,X組合の最高決議機関である組合大会において,除
548 名処分を受けた者である。
549 Y社は,平成22年度の決算から営業損失を計上するなど経営が悪化していたため,経営を再
550 建すべく経営コンサルタントであったAを採用した。Y社におけるX組合の活動は活発であり,
551 Y社としては好ましくないと思いつつ勤務時間中の組合活動も黙認している状態が続いていたた
552 め,Aは,Y社の人事労務管理についても抜本的に見直すようY社に提案した。そこで,Y社は,
553 平成24年3月14日,100名の人員削減を中心とする大幅な合理化案(経営改善計画)をX
554 組合に提示した上,従来黙認していた勤務時間中の組合活動を行う者に対しては,今後賃金をカ
555 ットするとともに懲戒処分を行い,職場規律の確立に努める旨をX組合に通知した。X組合は,
556 外部からきたAがこれまでの労使慣行を無視していることに納得せず,勤務時間中の組合活動は
557 既得権であると主張し,また,前記経営改善計画をめぐってY社との間で団体交渉を行ったが合
558 意に達しなかった。Y社は,同年5月8日,これまでの労働協約を全て破棄する旨通知し,同年
559 6月1日,X組合の組合員29名に対し,勤務時間中の組合活動を理由に3日間の出勤停止の懲
560 戒処分を行った。
561 X組合は,Y社の措置に強く反発し,これらの問題をめぐって同月5日に団体交渉を行ったが,
562 AがY社側の代表となっていることにX組合が拒否反応を示し,実質的な交渉に至らなかった。
563 その後も,X組合は,Aの団体交渉出席に強く反発し,同日以降,現在に至るまで正式な団体交
564 渉は開催されていない。
565 この状況を打破するために,X組合は,Y社に予告することなく,同年7月10日午後3時か
566 ら全組合員によるストライキに突入した。Y社は,ストライキの解除を求めたが,X組合は,4
567 8時間ストライキを継続するとY社に伝えた。実際には,X組合は同日午後6時にストライキを
568 解除したが,Y社としては,当日と翌日の宿泊客及び予約客をキャンセルせざるを得なかった。
569 このことがあって,その後の宿泊客数は大きく減少することになった。
570 Y社は,X組合とは何らの協議のないまま,同年8月1日,100名の希望退職者を募集した
571 が,これに対し,X組合はますます反発を強めた。X組合は,Y社の行った前記懲戒処分と希望
572 退職募集の撤回を求めて,同月10日午後3時から,予告なしに,調理部門の組合員のストライ
573 キを実施し,同ストライキは48時間継続した。調理部門の従業員の多くが,X組合の組合員で
574 あったため,Y社としては,夏休みシーズンの書き入れ時において通常どおりの営業を継続する
575 ことが困難となったことから,予約客については予約の取消しを要請した上で他のホテルに振り
576 分け,宿泊客についてはアルバイト従業員を利用するなどして何とか急場をしのいだ。
577 調理部門の組合員であったZは,X組合の戦術は行き過ぎであり,自分としては納得できない
578 として,同月11日,X組合に対し,今後ストライキには参加しないと通告し,同日からY社に
579 出勤した。X組合は,同月17日,組合大会において,Zのストライキ不参加を「組合の決定に
580 違反して統制を乱したとき」という組合規約の制裁事由に該当するとして,Zを除名処分とした。
581 なお,組合規約には,制裁の種類として,けん責,組合員資格の停止及び除名が規定されていた。
582 また,この除名処分は,組合規約にのっとって行われたものであり,手続的には問題がなかった。
583 その後,X組合は,同月20日午後3時から,予告なしに,調理部門の組合員による48時間
584 のストライキを行った。
585 - 20 -
586
587 このような状況の中で予約客数が著しく減少し,営業が不可能となったので,ついにY社は同
588 月22日からホテル建物を閉鎖して営業を休止し,以降X1らの就労を拒否し,同日以降の賃金
589 の支払いを拒んでいる。
590 〔設
591
592 問〕
593
594 1.X1らは,Y社に対し,平成24年8月22日以降の賃金を請求できるか。なお,Zにつ
595 いては論じなくてよい。
596 2.X組合によるZの除名処分は有効か。
597
598 - 21 -
599
600 - 22 -
601
602 論文式試験問題集[環
603
604 - 23 -
605
606 境
607
608 法]
609
610 [環
611
612 境
613
614 法]
615
616 〔第1問〕(配点:50)
617 A社は,B県C町の海沿いにD製鉄所を設置して操業をしているが,その岸壁に幾つかの亀裂が
618 あり,そこを通して排出水が数か月にわたって海に漏出している事実が,海上保安庁によって確認
619 された。同庁の分析によれば,D製鉄所に適用されるpH(水素イオン濃度)に係る排水基準値を
620 はるかに超える高アルカリ水であった。D製鉄所は,公有水面を埋め立てて造成した土地に立地し
621 ているが,捜査の結果,原因は,造成の際に用いられた埋立材料であることが判明している。
622 D製鉄所には,場内で発生する汚水の処理をする水処理施設があり,これは水質汚濁防止法の下
623 の特定施設となっている。その設置届出において,A社は,埋立地全体を特定事業場の所在地とし
624 ている。D製鉄所の工場長E及びA社は,
625 「特定施設が設置されている工場である特定事業場から,
626 排水基準値違反の排出水を,排水口を通じて排水した」として,水質汚濁防止法違反で起訴された。
627 〔設問1〕
628 A社及び工場長Eは,以下のように主張している。このような主張に対して,どのような反論
629 をすることが考えられるかを論ぜよ。
630 「水質汚濁防止法が規制対象としているのは,特定事業場内で発生する排水が特定施設の排水
631 と合流してパイプの先から排水されたものに限定されるはずである。本件では,特定施設以外の
632 部分から直接に公共用水域に排水されているのであるから,同法の規制対象外である。したがっ
633 て,水質汚濁防止法第31条第1項第1号及び第34条に該当しないから,A社及び工場長Eは
634 無罪である。」
635 〔設問2〕
636 結局,工場長E及びA社のいずれに対しても,罰金刑が確定した。ところで,A社は,D製鉄
637 所の場内で発生する産業廃棄物である廃プラスチックを焼却処理するための施設を設置し,B県
638 知事から廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づく中間処
639 理施設許可を得ている。
640
641
642 A社が,水質汚濁防止法上,有罪とされたことにより,D製鉄所の許可に対して,廃棄物処
643 理法上,どのような影響があるか。【資料】を参照しつつ説明せよ。
644
645
646 【資
647
648 法律相互の上記の連携措置を,廃棄物処理法はどのような趣旨から設けたのかを説明せよ。
649
650 料】
651 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第4条の6
652
653 法第七条第五項第四号ハに規定する政令
654
655 で定める法令は,次のとおりとする。
656 (法律番号は省略)
657 一
658
659 大気汚染防止法
660
661 二
662
663 騒音規制法
664
665 三
666
667 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
668
669 四
670
671 水質汚濁防止法
672
673 五
674
675 悪臭防止法
676
677 六
678
679 振動規制法
680
681 七
682
683 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
684
685 八
686
687 ダイオキシン類対策特別措置法
688
689 九
690
691 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
692 - 24 -
693
694 〔設問3〕
695 大気汚染防止法の下でのばい煙に係る排出基準の遵守が求められる場所は,水質汚濁防止法の
696 下での排水基準の遵守が求められる場所とどのように異なっているか。その相違及び理由を説明
697 せよ。
698
699 - 25 -
700
701 〔第2問〕(配点:50)
702 環境影響評価について,以下の設問に答えよ。
703 〔設問1〕
704 A県は,同県B市に3000メートルの滑走路を持つ本件空港を設置する事業(環境影響評価
705 法の第一種事業に当たる。)を計画し,2003年,B市内のC岳の北側陸上案を採用すること
706 を決めた。A県は,2005年,本件空港設置事業について環境影響評価法に基づく環境影響評
707 価手続を開始した。この環境影響評価手続の中では,C岳の北側陸上案しか対象とされず,複数
708 案は検討されていなかった。本件空港予定地周辺の海域には種々の希少なさんご礁が形成されて
709 いた。
710 2008年,A県は,本件空港の許可権者である国土交通大臣宛てに環境影響評価書(以下「本
711 件評価書」という。)を送付し,国土交通大臣は,環境大臣宛てにその写しを送付して意見を求
712 めた。国土交通大臣は,環境大臣の意見の内容を勘案した上でA県に対して,本件評価書につい
713 ての環境保全の見地からの意見を書面により述べた。その後,A県は,本件評価書について補正
714 を行い,国土交通大臣に対し,補正後の環境影響評価書(以下「本件補正書」という。)を送付
715 し,国土交通大臣は,環境大臣宛てにその写しを送付した。A県は,環境影響評価書を作成した
716 旨その他の事項を公告するとともに,本件評価書等を所定の期間,縦覧に供した。
717 国土交通大臣の本件評価書についての環境保全の見地からの意見の中では,本件事業実施区域
718 への降雨及び流入水が海域に浸出する場合の水質及び水量並びにそれによるさんご礁への影響に
719 ついて把握し,その結果を評価書に記載することが求められていたが,本件補正書の中では答え
720 られていない。
721 その後,A県は,本件空港の設置の許可の申請をし,2009年,国土交通大臣は,本件空港
722 の設置を許可する旨の処分を行った。
723 これに対し,本件空港予定地の敷地の一部の土地を所有するDは,A県が実施した環境影響評
724 価手続に問題があったとして許可の取消訴訟を提起したいと考えている。Dはどのような主張を
725 することが考えられるか。
726 〔設問2〕
727 複数案の検討に関して,2011年に改正された環境影響評価法及びその後に改正された「基
728 本的事項」(環境省告示)(【資料1】参照)ではどのように扱われているか。その趣旨はどこに
729 あるか。
730 〔設問3〕
731 【資料2】は,2008年に制定された生物多様性基本法の規定である。
732
733
734 2011年の環境影響評価法の改正によって導入された仕組みは,生物多様性基本法第25
735 条とどのような関係にあるか。
736
737
738
739 生物多様性基本法が想定する環境影響評価の仕組みは,環境基本法においてどのように位置
740 付けることができるか。
741
742 - 26 -
743
744 【資料1】
745 環境影響評価法第3条の2第3項,第3条の7第2項,第11条第4項,第12条第2項及び第3
746 8条の2第2項の規定による主務大臣が定めるべき指針並びに同法第4条第9項の規定による主務大
747 臣及び国土交通大臣が定めるべき基準に関する基本的事項(環境庁告示第87号(平成9年12月1
748 2日)。最終改正:平成24年4月2日環境省告示第63号)(抜粋)
749 第一
750
751 計画段階配慮事項等選定指針に関する基本的事項
752
753 一
754
755 一般的事項
756
757
758 第一種事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに調査,予測及び評価は,法第3条の2第
759 3項の規定に基づき,計画段階配慮事項等選定指針の定めるところにより行われるものであ
760 る。
761
762
763
764 計画段階配慮事項の範囲は,別表(略)に掲げる環境要素の区分及び影響要因の区分に従
765 うものとする。
766
767
768
769 計画段階配慮事項の検討に当たっては,第一種事業に係る位置・規模又は建造物等の構造
770 ・配置に関する適切な複数案(以下「位置等に関する複数案」という。)を設定することを基
771 本とし,位置等に関する複数案を設定しない場合は,その理由を明らかにするものとする。
772
773
774
775 計画段階配慮事項の調査,予測及び評価は,設定された複数案及び選定された計画段階配
776 慮事項(以下「選定事項」という。)ごとに行うものとする。(以下略)
777
778 【資料2】
779 生物多様性基本法(平成20年6月6日法律第58号)(抜粋)
780 (事業計画の立案の段階等での生物の多様性に係る環境影響評価の推進)
781 第25条
782
783 国は,生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており,一度損なわれた生
784
785 物の多様性を再生することが困難であることから,生物の多様性に影響を及ぼす事業の実施に先立
786 つ早い段階での配慮が重要であることにかんがみ,生物の多様性に影響を及ぼすおそれのある事業
787 を行う事業者等が,その事業に関する計画の立案の段階からその事業の実施までの段階において,
788 その事業に係る生物の多様性に及ぼす影響の調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その
789 事業に係る生物の多様性の保全について適正に配慮することを推進するため,事業の特性を踏まえ
790 つつ,必要な措置を講ずるものとする。
791
792 - 27 -
793
794 - 28 -
795
796 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
797
798 - 29 -
799
800 [国際関係法(公法系)]
801 〔第1問〕(配点:50)
802 X国では,甲元首の率いる軍事政権の下で専制的統治が続いてきたが,近年急速に民主的政治制
803 度を求める国民運動が高揚した。窮地に立たされた甲元首の軍事政権は,2012年9月に全土に
804 非常事態宣言を発令して反政府諸政党の解散と一切の集会・デモを禁止する措置を採るとともに,
805 同年11月には,反政府諸政党の指導者多数を反逆罪の被疑事実で逮捕し訴追することを決定した。
806 逮捕された多数の被拘禁者に対して,拷問が行われた。
807 X国の隣国であるY国の政府は,X国からの避難民が急激に増加したために,X国政府の人権
808 侵害に強い懸念を示すようになった。2012年12月1日,Y国政府は,X国政府の一連の行為
809 は拷問を禁止する慣習国際法に対する重大な違反行為に当たるとして,被拘禁者に対する拷問行為
810 を直ちに中止するよう求める外交的声明を発表するとともに,X国民の人権侵害に使用されるおそ
811 れのある産品のX国向け輸出を禁止する措置を採ることを決定した。Y国は「拷問及び他の残虐な,
812 非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」の当事国であるが,X国は非当事国
813 である。
814 さらに2012年12月25日,Y国の裁判所は,同国の拷問等禁止法が拷問及び拷問の共謀の
815 罪はY国外でこの罪を犯した者にも適用され,かつ,この罪には同国の刑事裁判権が及ぶと定めて
816 いることを根拠として,甲元首に対し,拷問の共謀を被疑事実とする逮捕状を発付し,国際刑事警
817 察機構を通じて国際手配した。この逮捕状の発付はY国領域内で甲元首に対する逮捕を執行可能に
818 するものであり,国際手配は甲元首が入国する第三国で当該国による甲元首の逮捕とその後のY国
819 への引渡しの法的根拠となり得るものであった。翌12月26日,X国政府は,甲元首に対する逮
820 捕状の発付と国際手配に対する対抗措置として,X国駐在のY国大使及び外交官の身柄を拘束する
821 とともに,甲元首に対する逮捕状の発付について事情聴取するため彼らをX国検察庁建物内に無期
822 限に抑留すると発表した。
823 2013年2月25日,X国政府は,同国内で海外貿易事業を営んでいた乙社の在X国支店に対
824 して営業活動停止を命じ,国内法上の根拠なくその資産の全てを没収する措置を採った。乙社は,
825 Z国の法律に基づいて設立され,かつ,Z国に本拠地を置く株式会社であるが,その株式の55%
826 はY国の国民丙が保有していた。X国政府による乙社資産の没収措置は,Y国の国民丙が乙社の多
827 数株主であることを実質的理由とするもので,これに対してはいかなる国内的救済手段も利用でき
828 なかった。ただし乙社は在X国支店の資産没収後も,Z国において株式会社としての法人格を維持
829 し,一定の事業を継続している。
830 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。
831 〔設
832
833 問〕
834
835 1.2012年12月1日のY国政府の外交的声明及び一定のX国向け産品の禁輸措置について,
836 X国政府が「Y国のこれらの行為は,X国の国内管轄事項に対する重大な介入行為であり,国
837 際法上違法な干渉に当たる」として強く非難したとする。Y国はX国の非難に対して一般国際
838 法に基づいてどのように反論することが可能かを論じなさい。なおX国とY国との間には二国
839 間又は多数国間条約に基づく輸出入に関する特別の権利義務は存在していない。
840 2.
841
842 2012年12月25日,Y国の裁判所がX国の甲元首に対して拷問の共謀を被疑事実
843 とする逮捕状を発付し,国際刑事警察機構を通じて諸外国に国際手配した行為は,仮にY
844 国に普遍的管轄権の行使が認められるとして,免除の観点から一般国際法上どのように評
845 価できるかを論じなさい。
846
847
848
849 2012年12月26日,X国政府がY国大使及び外交官の身柄を拘束及び抑留して事
850 情聴取する行為は,甲元首に対する逮捕状の発付と国際手配に対する対抗措置として正当
851 - 30 -
852
853 化できるか否かについて論じなさい。なおX国とY国は外交関係に関するウィーン条約の
854 当事国である。
855 3.2013年2月25日のX国による乙社の在X国支店に対する没収措置によってZ国で設立
856 された乙社に損害が生じた事件において,乙社の株主丙の国籍国であるY国は,株主丙のため
857 にX国に対して外交的保護権を行使できるか否かについて論じなさい。
858
859 - 31 -
860
861 〔第2問〕(配点:50)
862 公海上を航行中のA国を旗国とする豪華旅客船甲において,B国籍の乗組員乙と,旅客として乗
863 り合わせたC国籍の丙が,些細なことで口論となり,激高した丙が乙を突き飛ばした。乙は,そば
864 にあった階段を転げ落ち,頭部を強打して死亡してしまった。船長の緊急連絡を受け,近くに居合
865 わせたB国のコーストガードの艦艇が当該旅客船甲に接近して,最寄りのB国の港に入港するよう
866 に呼び掛けた。船長はこれに同意し,当該旅客船甲はB国の港に緊急入港したところ,急遽,B国
867 の警察官数名が船舶内に乗り込み,直ちに旅客丙を逮捕した。丙は,現在,B国における刑事手続
868 に服している。旅客丙の国籍国C国は,自国民丙に対するB国による管轄権の行使に対して抗議し
869 ている。なお,当該旅客船甲の旗国であるA国は,丙に対する刑事手続の執行に関するB国からの
870 照会に対し,特段の異議を表明していない。
871 ところで,B国とC国との間には犯罪人引渡条約が締結されており,同条約は,政治犯罪人の不
872 引渡しを規定する条文を含んでいる。C国は,人権抑圧政策で国際社会から非難されている国であ
873 り,旅客丙はC国政府に対して,人権擁護運動を積極的に行っている著名な反政府活動家である。
874 このような中C国は,犯罪人引渡条約に基づいて,傷害致死罪を引渡事由としてB国に対して旅客
875 丙の引渡しを求めた。これに対して,丙は,C国に引き渡されれば,傷害致死罪以外の政治犯罪を
876 含む他の罪で訴追される可能性があると疑っている。
877 また,当該旅客船甲にB国警察官が乗り込んだ際に,旅客丙の客室を捜索していた警察官が,適
878 切な令状もないままに隣の客室をも捜索する必要があると述べて丙の客室の隣にあるC国籍の旅客
879 丁の客室内に押し入り,当該客室内にあった高額の宝石類を盗んでいたことが発覚した。当該警察
880 官は,既に宝石類を換金し,手に入れた金銭を全て費消している。
881 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。
882 〔設
883
884 問〕
885
886 1.B国による刑事管轄権行使に関し,B国は,自らの執行管轄権の行使を正当化する根拠をど
887 のように主張できるかを論じなさい。
888 2.C国からの犯罪人引渡条約に基づく旅客丙の引渡要請に対して,仮にB国が丙をC国に引き
889 渡す意思があるとして,政治犯罪人不引渡しの観点から,丙をC国に引き渡すことができるか,
890 また,引き渡す場合,丙が政治犯罪人として訴追されないようにするために,どのように応ず
891 るべきか論じなさい。
892 3.B国警察官による旅客丁の財産の窃盗により丁が損害を被ったことについて,C国は,国際
893 法上,B国に対しどのような責任追及ができるか事実関係に即して論じなさい。
894
895 - 32 -
896
897 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
898
899 - 33 -
900
901 [国際関係法(私法系)]
902 〔第1問〕(配点:50)
903 甲国人女Wは,甲国人男によって懐胎した嫡出でない甲国人子Cを甲国において出生した。Wは,
904 その2年後,甲国において日本人男Hと知り合い,甲国において同国民法の定める方式に従い婚姻
905 した。法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)(以下「通則法」という。)第41条の
906 適用はなく,日本法からみてHとWの婚姻は有効に成立していることを前提として,以下の設問に
907 答えなさい。
908 なお,甲国民法は,日本民法の定める普通養子縁組に相当する制度を有しているほか,次の@か
909 らFの趣旨の規定を有している。
910 @
911
912 年齢18歳をもって,成年とする。
913
914 A
915
916 夫婦が未成年者を養子とする場合であっても,共同で縁組をする必要はない。
917
918 B
919
920 縁組は,甲国の戸籍管掌者に届け出ることによって,その効力を生ずる。
921
922 C
923
924 養子は,縁組の日から,養親の嫡出子の身分を取得する。
925
926 D
927
928 子が養子であるときは,養親の親権に服する。
929
930 E
931
932 親権は,父母の婚姻中は,父母が共同して行う。
933
934 F
935
936 父母と子は,互いに扶養をする義務がある。
937
938 〔設
939
940 問〕
941
942 1.Wは,Hとの婚姻直後にCと来日し,Hと共に平穏な生活を日本で営んできた。Cも日本の小
943 学校に通学し,日本での生活に慣れ親しんでいる。Hは,WとCが来日して5年が経過した時に,
944 Cと養子縁組をすることを決意するに至った。通則法第31条第1項後段が定める甲国法の要件
945 は,全て満たされているものとして,次の問いに答えなさい。
946
947
948
949 Hは,Wと共同して,Cを養子としなければならないか。
950 HとWが共同してCを養子とする場合,この縁組は,日本の戸籍管掌者への届出によって,
951 方式上有効に成立するか。
952
953 2.HとWが共同してCを養子とする縁組が成立した後,Cについて帰化が許可され,現在Cは日
954 本国籍だけを有している。
955
956
957 Cは嫡出子か。
958
959
960
961 Cにつき親権を行使する者は誰か。
962
963
964
965 HはCの扶養義務者か。
966
967 - 34 -
968
969 〔第2問〕(配点:50)
970 Xは甲国人であり,Yは甲国法に基づき設立されて甲国に主たる営業所を有する会社である。X
971 は,Yとの間で勤務期間の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結した。そ
972 の後,Xは,Yの命令に従い甲国内にあるYの複数の支店において勤務した後,日本と乙国におけ
973 る営業を統括する東京支店への配置転換を命じられた。
974 設問1と設問2は,各々独立したものとして答えなさい。
975 〔設
976
977 問〕
978
979 1.Xは,東京支店において継続して勤務していたが,来日後6年が経過した時に,Yから理由を
980 告げられることなく突然解雇された。そこで,Xは,Yによる解雇は日本の労働契約法(平成1
981 9年法律第128号)第16条の定める「権利を濫用したもの」であって無効であると主張して,
982 Yに対して本件雇用契約上の地位確認と賃金の支払を求める訴えを,日本の裁判所に提起した。
983 XとYは,本件雇用契約を締結した際,「本契約から発生する一切の紛争については甲国の裁判
984 所が専属的な管轄権を有し,かつ,本契約は甲国法により規律され解釈される」旨の書面による
985 合意をしていた。
986 なお,甲国法は解雇・退職の自由を原則とし,甲国法上,使用者は勤務期間の定めのない雇用
987 契約をいつでも何らの理由もなしに解約することができ,また,それに対して権利濫用を含む特
988 段の法的規制もない。
989
990
991 Yは,甲国裁判所が専属的管轄権を有する旨の合意がある以上,日本の裁判所はXの訴えに
992 ついて国際裁判管轄権を有していないと主張している。この主張の当否について論じなさい。
993
994
995
996 国際裁判管轄権に関する合意がなく,かつ,Yの応訴がないとした場合に,民事訴訟法第3
997 条の3に列挙されている管轄原因を除いて,日本の裁判所の国際裁判管轄権を基礎付ける原因
998 は存在するか。
999
1000
1001
1002 本件雇用契約の準拠法が甲国法であるとした場合に,日本の労働契約法第16条の規定は適
1003 用され得るか。
1004
1005 2.Xは,Yの東京支店に配置転換後,日本と乙国の顧客に対する営業の責任者として好成績を上
1006 げていたが,来日後6年が経過した時にYを任意に退職した。Yは,Xが退職後に顧客を奪取す
1007 ることを懸念し,Xとの間で次の@からBの合意を含む競業避止特約(以下「特約」という。)
1008 を締結し,YはXに競業避止の代償として特別退職金を支払った。@「Xは,2年間,日本と乙
1009 国における同業他社には就職しない」,A「Xは,特約に違反した場合には,特別退職金を返還
1010 する」及びB「特約から発生する一切の紛争については,甲国又は日本の裁判所が管轄権を有す
1011 る」。しかし,Xは,退職の約半年後,乙国に主たる営業所を有し,Yと競業関係にある会社A
1012 の勧誘に応じて,Aと雇用契約を締結するに至った。Xは,Aの乙国営業所に勤務するため,乙
1013 国に住所を有している。
1014 Yが,特約に基づき,Xに対して特別退職金の返還を求める訴えを日本の裁判所に提起した場
1015 合,日本の裁判所は国際裁判管轄権を有するか。前記Bの管轄権に関する合意がなかった場合と
1016 対比して論じなさい。
1017
1018 - 35 -
1019
1020