1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
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4 - 1 -
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6 [民法]
7 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
8 【事実】
9 1.Aは,太陽光発電パネル(以下「パネル」という。)の部品を製造し販売することを事業とす
10 る株式会社である。工場設備の刷新のための資金を必要としていたAは,平成25年1月11日,
11 Bから,利息年5%,毎月末日に元金100万円及び利息を支払うとの条件で,1200万円の
12 融資を受けると共に,その担保として,パネルの部品の製造及び販売に係る代金債権であって,
13 現在有しているもの及び今後1年の間に有することとなるもの一切を,Bに譲渡した。A及びB
14 は,融資金の返済が滞るまでは上記代金債権をAのみが取り立てることができることのほか,A
15 が融資金の返済を一度でも怠れば,BがAに対して通知をすることによりAの上記代金債権に係
16 る取立権限を喪失させることができることも,併せて合意した。
17 2.Aは,平成25年3月1日,Cとの間で,パネルの部品を100万円で製造して納品する旨の
18 契約を締結した。代金は同年5月14日払いとした。Aは,上記部品を製造し,同年3月12日,
19 Cに納品した(以下,この契約に基づくAのCに対する代金債権を「甲債権」という。)。Aは,
20 同月25日,Dとの間で,甲債権に係る債務をDが引き受け,これによりCを当該債務から免責
21 させる旨の合意をした。
22 3.Aは,平成25年3月5日,Eとの間で,パネルの部品を150万円で製造して納品する旨の
23 契約を締結した。代金は同年5月14日払いとした。Aは,上記部品を製造し,同年3月26日,
24 Eに納品した(以下,この契約に基づくAのEに対する代金債権を「乙債権」という。)。乙債権
25 については,Eからの要請を受けて,上記契約を締結した同月5日,AE間で譲渡禁止の特約が
26 された。Aは,Bに対してこの旨を同月5日到達の内容証明郵便で通知した。
27 4.その直後,Aは,大口取引先の倒産のあおりを受けて資金繰りに窮するようになり,平成25
28 年4月末日に予定されていたBへの返済が滞った。
29 5.Aの債権者であるFは,平成25年5月1日,Aを債務者,Cを第三債務者として甲債権の差
30 押命令を申し立て,同日,差押命令を得た。そして,その差押命令は同月2日にCに送達された。
31 6.Bは,平成25年5月7日,Aに対し,同年1月11日の合意に基づき取立権限を喪失させる
32 旨を同年5月7日到達の内容証明郵便で通知した。Aは,同年5月7日,D及びEに対し,甲債
33 権及び乙債権をBに譲渡したので,これらの債権についてはBに対して弁済されたい旨を,同月
34 7日到達の内容証明郵便で通知した。
35
36 - 2 -
37
38 〔設問1〕
39 (1)
40
41 【事実】1の下線を付した契約は有効であるか否か,有効であるとしたならば,Bは甲債権を
42 いつの時点で取得するかを検討しなさい。
43
44 (2)
45
46 Cは,平成25年5月14日,Fから甲債権の支払を求められた。この場合において,Cの立
47 場に立ち,その支払を拒絶する論拠を示しなさい。
48
49 〔設問2〕
50 Eは,平成25年5月14日,Bから乙債権の支払を求められた。この請求に対し,Eは,【事
51 実】3の譲渡禁止特約をもって対抗することができるか。譲渡禁止特約の意義を踏まえ,かつ,B
52 が乙債権を取得した時期に留意しつつ,理由を付して論じなさい。
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54 - 3 -
55
56 [商
57
58 法]
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60 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
61 1.X株式会社(以下「X社」という。)は,日本国内において不動産の開発及び販売等を行う監
62 査役会設置会社であり,金融商品取引所にその発行する株式を上場している。
63 2.Y株式会社(以下「Y社」という。)は,日本国内において新築マンションの企画及び販売等
64 を行う取締役会設置会社であり,監査役を置いている。Y社が発行する株式は普通株式のみであ
65 り,その譲渡による取得にはY社の承認を要するものとされている。
66 Y社の発行済株式のうち,75%はX社及びその子会社(以下,X社を含め「Xグループ」と
67 いう。)が,15%はY社の取締役であるAが,10%は関東地方を中心に住居用の中古不動産
68 の販売等を行うZ株式会社(以下「Z社」という。)がそれぞれ保有している。なお,Z社の発
69 行済株式の67%はAが保有し,同社の取締役はA及びAの親族のみである。
70 3.X社は,平成23年9月,Y社の行う事業をXグループ内の他社に統合する方向で検討を始め,
71 その後,Aに対し,A及びZ社が保有するY社株式をX社に売却するよう求めた。しかし,Aは,
72 Y社との資本関係が失われることによって生じ得るZ社の事業展開への不安を訴えて回答を留保
73 し,その後のX社による説得にも応じなかった。
74 4.X社は,平成24年6月1日,取締役会を開催し,同年9月1日をもってY社をX社の完全子
75 会社とする旨の株式交換契約(以下「本件株式交換契約」という。)を締結することを適法に決
76 定した。また,Y社でも,同年6月1日,取締役会を開催し,本件株式交換契約を締結すること
77 を適法に決定した。
78 これらの決定を受けて,X社とY社との間で本件株式交換契約が正式に締結された。本件株式
79 交換契約においては,Y社株主に対しY社株式10株につきX社株式1株を交付する,すなわち,
80 X社とY社との間の株式交換比率(以下「本件交換比率」という。)を1対0.1とする旨が定
81 められた。
82 5.X社では,同月29日,定時株主総会が開催され,本件株式交換契約の承認に関する議案が適
83 法に可決された。
84 6.Y社でも,同日,定時株主総会(以下「本件総会」という。)が適法な招集手続に基づき開催
85 された。本件総会には,本件株式交換契約の承認に関する議案及びAの取締役からの解任に関す
86 る議案が提出された。
87 Aは,本件総会の議場において,株主としての地位に基づき,議長である代表取締役Bに対し,
88 自らが取締役から解任される理由について質問をした。これに対してBは,「それはあなたもわ
89 かっているはずであり,答える必要はない。」と回答し,質疑を打ち切った。A及びZ社は,本
90 件総会に提出された上記各議案に反対したが,いずれもXグループ各社の賛成により可決された。
91 7.Aは,同年7月,本件交換比率の妥当性について独自に検討し,算定を行うこととした。その
92 結果,同年8月,Aとしては,Y社株主に対しY社株式10株につきX社株式3株を交付するの
93 が妥当であるとの結論に至った。
94
95 - 4 -
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97 〔設問1〕
98 Aは,Aを取締役から解任する旨の本件総会の決議の効力を争うことができるか。
99 〔設問2〕
100 Aは,Y社に対し,本件交換比率の妥当性を検討するためであることを明らかにして,本件交
101 換比率をY社が算定するために使用したY社の一切の会計帳簿及びこれに関する資料の閲覧を請
102 求した。Y社は,この請求を拒むことができるか。なお,Y社の会計帳簿及びこれに関する資料
103 は書面をもって作成されているものとする。
104 〔設問3〕
105 本件交換比率を不当と考えるAが,
106 @
107
108 本件株式交換契約に基づく株式交換の効力発生前に会社法上採ることができる手段
109
110 A
111
112 本件株式交換契約に基づく株式交換の効力発生後に会社法上採ることができる手段
113
114 として,それぞれどのようなものが考えられるか。
115
116 - 5 -
117
118 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,7:3)
119 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
120 【事例】
121 Aは,平成23年11月10日,Bに対し,弁済期を平成24年11月10日として,1000
122 万円を貸し付けた(以下,この貸付けに基づく貸金債権を「甲債権」という。)。しかし,Bは,弁
123 済期にこれを返済しなかった。
124 そこで,AがBの現在の財産状況を調査したところ,Bの営む店舗の経営状態が悪化し,甲債権
125 のほかにも,多額の借入金や取引先に対する買掛金の合計1億円余りが弁済期を過ぎても未払とな
126 っていること,Bの所有する不動産にはその評価額以上に抵当権が設定されており,平成25年1
127 月31日を弁済期とする500万円の売掛金債権(以下「乙債権」という。)をCに対して有する
128 ほか,Bには見るべき資産がないことが判明した。
129 そこで,平成25年2月25日,Aは,Bに代位して,乙債権の支払を求める訴えをCに対して
130 提起した(以下,この訴えに係る訴訟を「訴訟1」という。)。
131 〔設問1〕((1)と(2)は,独立した問題である。)
132 (1)
133
134 Bは,平成25年3月14日,訴訟1に係る訴状の送達を受けたCから問い合わせを受けて,
135 訴訟1が第一審に係属中であることを知った。Bは,甲債権については,平成24年12月10
136 日にAから免除を受けたとしてその存在を争うとともに,乙債権については,自己に支払うよ
137 うCに求めたいと考えている。
138 ア
139
140 この場合,Bは,訴訟1において,民事訴訟法上,どのような手段を採ることができるか,
141 理由を付して述べなさい。
142
143 イ
144
145 裁判所は,審理の結果,甲債権は存在せず,乙債権は存在すると判断した場合,どのよう
146 な判決をすべきか,Aが提起した訴訟1に係る訴え及びアでBが採った手段のそれぞれにつ
147 いて説明しなさい。
148
149 (2)
150
151 Bが訴訟1の係属の事実を知らないうちに,訴訟1について,甲債権は存在すると認められ
152 るが,乙債権が存在するとは認められないとして,請求棄却判決がされ,この第一審判決が確
153 定した。その後,Bが,Cに対し,乙債権の支払を求めて訴えを提起した(以下,この訴えに
154 係る訴訟を「訴訟2」という。)ところ,訴訟2の過程において,訴訟1についての上記確定
155 判決の存在が明らかになった。この場合において,訴訟2の受訴裁判所はどのような判決をす
156 べきか,当該受訴裁判所が,審理の結果,訴訟1の口頭弁論終結時において甲債権が存在して
157 いたと判断したときと,これが存在していなかったと判断したときとに分けて説明しなさい。
158
159 【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。)
160 Dは,Bに対して,平成25年2月10日を弁済期とする1500万円の売掛金債権を有してい
161 るが,同年4月半ば,Dの取引先でCとも取引関係があるEから,AのCに対する訴訟1が第一審
162 に係属中であると知らされた。
163 そこで,Dは,顧問弁護士と相談した結果,Aが甲債権を有することを争う必要はないが,この
164 ままではAが乙債権の弁済による利益を独占し,自らが弁済を受ける機会を失ってしまうこととな
165 るので,それを避けたいと考えるに至った。
166 〔設問2〕
167 この場合,Dは,訴訟1において,民事訴訟法上,どのような手段を採ることができるか,理
168 由を付して述べなさい。
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