1 論文式試験問題集
2 [刑法・刑事訴訟法]
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4 - 1 -
5
6 [刑
7
8 法]
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10 以下の事例に基づき,
11 Vに現金50万円を振り込ませた行為及びD銀行E支店ATMコーナーに
12 おいて,
13 現金自動預払機から現金50万円を引き出そうとした行為について,
14 甲,
15 乙及び丙の罪責
16 を論じなさい(特別法違反の点を除く。
17
18 )。
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20
21
22
23 甲は,
24 友人である乙に誘われ,
25 以下のような犯行を繰り返していた。
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28 @乙は,
29 犯行を行うための部屋,
30 携帯電話並びに他人名義の預金口座の預金通帳,
31 キャッシ
32 ュカード及びその暗証番号情報を準備する。
33
34 A乙は,
35 犯行当日,
36 甲に,
37 その日の犯行に用いる
38 他人名義の預金口座の口座番号や名義人名を連絡し,
39 乙が雇った預金引出し役に,
40 同口座のキ
41 ャッシュカードを交付して暗証番号を教える。
42
43 B甲は,
44 乙の準備した部屋から,
45 乙の準備した
46 携帯電話を用いて電話会社発行の電話帳から抽出した相手に電話をかけ,
47 その息子を装い,
48
49 通事故を起こして示談金を要求されているなどと嘘を言い,
50 これを信じた相手に,
51 その日乙が
52 指定した預金口座に現金を振り込ませた後,
53 振り込ませた金額を乙に連絡する。
54
55 C乙は,
56 振り
57 込ませた金額を預金引出し役に連絡し,
58 預金引出し役は,
59 上記キャッシュカードを使って上記
60 預金口座に振り込まれた現金を引き出し,
61 これを乙に手渡す。
62
63 D引き出した現金の7割を乙が,
64
65 3割を甲がそれぞれ取得し,
66 預金引出し役は,
67 1万円の日当を乙から受け取る。
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72
73 甲は,
74 分け前が少ないことに不満を抱き,
75 乙に無断で,
76 自分で準備した他人名義の預金口座
77 に上記同様の手段で現金を振り込ませて,
78 その全額を自分のものにしようと計画した。
79
80 そこで,
81
82 甲は,
83 インターネットを通じて,
84 他人であるAが既に開設していたA名義の預金口座の預金通
85 帳,
86 キャッシュカード及びその暗証番号情報を購入した。
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90
91
92 某日,
93 甲は,
94 上記1の犯行を繰り返す合間に,
95 上記2の計画に基づき,
96 乙の準備した部屋か
97 ら,
98 乙の準備した携帯電話を用いて,
99 上記電話帳から新たに抽出したV方に電話をかけ,
100 Vに
101 対し,
102 その息子を装い,
103 「母さん。
104
105 俺だよ。
106
107 どうしよう。
108
109 俺,
110 お酒を飲んで車を運転して,
111
112 通事故を起こしちゃった。
113
114 相手のAが,
115 『示談金50万円をすぐに払わなければ事故のことを
116 警察に言う 。
117
118 』って言うんだよ。
119
120 警察に言われたら逮捕されてしまう。
121
122 示談金を払えば逮捕さ
123 れずに済む。
124
125 母さん,
126 頼む,
127 助けてほしい 。
128
129 」などと嘘を言った。
130
131 Vは,
132 電話の相手が息子で
133 あり,
134 50万円をAに払わなければ,
135 息子が逮捕されてしまうと信じ,
136 50万円をすぐに準備
137 する旨答えた。
138
139 甲は,
140 Vに対し,
141 上記A名義の預金口座の口座番号を教え,
142 50万円をすぐに
143 振り込んで上記携帯電話に連絡するように言った。
144
145 Vは,
146 自宅近くのB銀行C支店において,
147
148 自己の所有する現金50万円を上記A名義の預金口座に振り込み,
149 上記携帯電話に電話をかけ,
150
151 甲に振込みを済ませた旨連絡した。
152
153
154
155
156
157 上記振込みの1時間後,
158 たまたまVに息子から電話があり,
159 Vは,
160 甲の言ったことが嘘であ
161 ると気付き,
162 警察に被害を申告した。
163
164 警察の依頼により,
165 上記振込みの3時間後,
166 上記A名義
167 の預金口座の取引の停止措置が講じられた。
168
169 その時点で,
170 Vが振り込んだ50万円は,
171 同口座
172 から引き出されていなかった。
173
174
175
176
177
178 甲は,
179 上記振込みの2時間後,
180 友人である丙に,
181 上記2及び3の事情を明かした上,
182 上記A
183 名義の預金口座から現金50万円を引き出してくれれば報酬として5万円を払う旨持ちかけ,
184
185 丙は,
186 金欲しさからこれを引き受けた。
187
188 甲は,
189 丙に,
190 上記A名義の預金口座のキャッシュカー
191 ドを交付して暗証番号を教え,
192 丙は,
193 上記振込みの3時間10分後,
194 現金50万円を引き出す
195 ため,
196 D銀行E支店(支店長F)のATMコーナーにおいて,
197 現金自動預払機に上記キャッシ
198 ュカードを挿入して暗証番号を入力したが,
199 既に同口座の取引の停止措置が講じられていたた
200 め,
201 現金を引き出すことができなかった。
202
203 なお,
204 金融機関は,
205 いずれも,
206 預金取引に関する約
207 款等において,
208 預金口座の譲渡を禁止し,
209 これを預金口座の取引停止事由としており,
210 譲渡さ
211 れた預金口座を利用した取引に応じることはなく,
212 甲,
213 乙及び丙も,
214 これを知っていた。
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218 - 2 -
219
220 [刑事訴訟法]
221 次の記述を読んで,
222 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
223
224
225 甲は,
226 傷害罪の共同正犯として,
227
228 「被告人は,
229 乙と共謀の上,
230 平成25年3月14日午前1時頃,
231
232 L市M町1丁目2番3号先路上において,
233 Vに対し,
234 頭部を拳で殴打して転倒させた上,
235 コンクリ
236 ート製縁石にその頭部を多数回打ち付ける暴行を加え,
237 よって,
238 同人に加療期間不明の頭部打撲及
239 び脳挫傷の傷害を負わせたものである。
240
241 」との公訴事実が記載された起訴状により,
242 公訴を提起さ
243 れた。
244
245
246 〔設問1〕
247 冒頭手続において,
248 甲の弁護人から裁判長に対し,
249 実行行為者が誰であるかを釈明するよう検
250 察官に命じられたい旨の申出があった場合,
251 裁判長はどうすべきか,
252 論じなさい。
253
254
255 〔設問2〕
256 冒頭手続において,
257 検察官が,
258 「実行行為者は乙のみである。
259
260 」と釈明した場合,
261 裁判所が,
262
263 行行為者を「甲又は乙あるいはその両名」と認定して有罪の判決をすることは許されるか。
264
265 判決
266 の内容及びそれに至る手続について,
267 問題となり得る点を挙げて論じなさい。
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