1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 事](〔設問1〕から〔設問5〕までの配点の割合は,
9 12:5:8:17:8)
10
11 司法試験予備試験用法文及び本問末尾添付の資料を適宜参照して,
12 以下の各設問に答えなさい。
13
14
15 〔設問1〕
16 弁護士Pは,
17 Xから次のような相談を受けた。
18
19
20 【Xの相談内容】
21 「私は,
22 平成17年12月1日から「マンション甲」の301号室(以下「本件建物」といい
23 ます。
24
25 )を所有していたAから,
26 平成24年9月3日,
27 本件建物を代金500万円で買い受け(以
28 下「本件売買契約」といいます。
29
30 ),
31 同日,
32 Aに代金500万円を支払い,
33 本件建物の所有権移転
34 登記を具備しました。
35
36
37 本件建物には現在Yが居住していますが,
38 Aの話によれば,
39 Yが本件建物に居住するようにな
40 った経緯は次のとおりです。
41
42
43 Aは,
44 平成23年4月1日,
45 Bに対し,
46 本件建物を,
47 賃貸期間を定めずに賃料1か月5万円と
48 する賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といいます。
49
50 )を締結し,
51 これに基づき,
52 本件建物を
53 引き渡しました。
54
55 ところが,
56 Bは,
57 平成24年4月2日,
58 Bの息子であるYに対し,
59 Aの承諾を
60 得ずに,
61 本件建物を,
62 賃貸期間を定めずに賃料1か月5万円とする賃貸借契約(以下「本件転貸
63 借契約」といいます。
64
65 )を締結し,
66 これに基づき,
67 本件建物を引き渡しました。
68
69 こうして,
70 Yが
71 本件建物に居住するようになりました。
72
73
74 そこで,
75 Aは,
76 同年7月16日,
77 Bに対し,
78 Aに無断で本件転貸借契約を締結したことを理由
79 に,
80 本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をし,
81 数日後,
82 Yに対し,
83 本件建物の明渡しを求め
84 ました。
85
86 しかし,
87 Yは,
88 本件建物の明渡しを拒否し,
89 本件建物に居住し続けています。
90
91
92 このような次第ですので,
93 私は,
94 Yに対し,
95 本件建物の明渡しを求めます。
96
97
98 弁護士Pは,
99 【Xの相談内容】を前提に,
100 Xの訴訟代理人として,
101 Yに対し,
102 所有権に基づく返
103 還請求権としての建物明渡請求権を訴訟物として,
104 本件建物の明渡しを求める訴えを提起した。
105
106
107 して,
108 弁護士Pは,
109 その訴状において,
110 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)と
111 して,
112 次の各事実を主張した(なお,
113 以下では,
114 これらの事実が請求を理由づける事実となること
115 を前提に考えてよい。
116
117 )。
118
119
120 @
121
122 Aは,
123 平成23年4月1日当時,
124 本件建物を所有していたところ,
125 Xに対し,
126 平成24年9
127 月3日,
128 本件建物を代金500万円で売ったとの事実
129
130 A
131
132 Yは,
133 本件建物を占有しているとの事実
134
135 上記各事実が記載された訴状の副本を受け取ったYは,
136 弁護士Qに相談をした。
137
138 Yの相談内容は
139 次のとおりである。
140
141
142 【Yの相談内容】
143 「Aが平成23年4月1日当時本件建物を所有していたこと,
144 AがXに対して平成24年9月
145 3日に本件建物を代金500万円で売ったことは,
146 Xの主張するとおりです。
147
148
149 しかし,
150 Aは,
151 私の父であるBとの間で,
152 平成23年4月1日,
153 本件建物を,
154 賃貸期間を定め
155 ずに賃料1か月5万円で賃貸し(本件賃貸借契約),
156 同日,
157 Bに対し,
158 本件賃貸借契約に基づき,
159
160 本件建物を引き渡しました。
161
162 そして,
163 本件賃貸借契約を締結する際,
164 Aは,
165 Bに対し,
166 本件建物
167 を転貸することを承諾すると約したところ(以下,
168 この約定を「本件特約」といいます。
169
170 ),
171 Bは,
172
173 本件特約に基づき,
174 私との間で,
175 平成24年4月2日,
176 本件建物を,
177 賃貸期間を定めずに賃料1
178
179 - 2 -
180
181 か月5万円で賃貸し(本件転貸借契約),
182 同日,
183 私に対し,
184 本件転貸借契約に基づき,
185 本件建物
186 を引き渡しました。
187
188 その後,
189 私は,
190 本件建物に居住しています。
191
192
193 このような次第ですので,
194 私にはXに本件建物を明け渡す義務はないと思います。
195
196
197 そこで,
198 弁護士Qは,
199 答弁書において,
200 Xの主張する請求を理由づける事実を認めた上で,
201 占有
202 権原の抗弁の抗弁事実として次の各事実を主張した。
203
204
205 B
206
207 Aは,
208 Bに対し,
209 平成23年4月1日,
210 本件建物を,
211 期間の定めなく,
212 賃料1か月5万円で
213 賃貸したとの事実。
214
215
216
217 C
218
219 Aは,
220 Bに対し,
221 同日,
222 Bの賃貸借契約に基づき,
223 本件建物を引き渡したとの事実。
224
225
226
227 D
228
229 Bは,
230 Yに対し,
231 平成24年4月2日,
232 本件建物を,
233 期間の定めなく,
234 賃料1か月5万円で
235 賃貸したとの事実。
236
237
238
239 E
240
241 Bは,
242 Yに対し,
243 同日,
244 Dの賃貸借契約に基づき,
245 本件建物を引き渡したとの事実。
246
247
248
249 以上を前提に,
250 以下の各問いに答えなさい。
251
252
253 (1)
254
255 本件において上記Cの事実が占有権原の抗弁の抗弁事実として必要になる理由を説明しなさ
256
257 い。
258
259
260 (2)
261
262 弁護士Qが主張する必要がある占有権原の抗弁の抗弁事実は,
263 上記BからEまでの各事実だ
264
265 けで足りるか。
266
267 結論とその理由を説明しなさい。
268
269 ただし,
270 本設問においては,
271 本件転貸借契約
272 締結の背信性の有無に関する事実を検討する必要はない。
273
274
275 〔設問2〕
276 平成24年11月1日の本件の第1回口頭弁論期日において,
277 弁護士Qは,
278 本件特約があった事
279 実を立証するための証拠として,
280 次のような賃貸借契約書(斜体部分は全て手書きである。
281
282 以下「本
283 件契約書」という。
284
285 )を提出した。
286
287
288
289 賃貸借契約書
290
291
292 AはBに対し,
293 本日から,
294 Aが所有する「マンション甲」301号室を賃貸し,
295 Bは
296 これを賃借する。
297
298
299
300
301
302 賃料は1か月金5万円とし,
303 Bは,
304 毎月末日限り翌月分をAに支払うものとする。
305
306
307
308
309
310 本契約書に定めがない事項は,
311 誠意をもって協議し,
312 解決するものとする。
313
314
315
316 4 Aは,
317 Bが上記建物を転貸することを承諾する。
318
319
320 以上のとおり,
321 契約が成立したので,
322 本書を2通作成し,
323 AB各1通を保有する。
324
325
326 平成23年4月1日
327
328 A A印
329 賃借人 B B印
330 賃貸人
331
332 本件契約書について,
333 弁護士PがXに第1回口頭弁論期日の前に確認したところ,
334 Xの言い分は
335 次のとおりであった。
336
337
338
339 - 3 -
340
341 【Xの言い分】
342 「Aに本件契約書を見せたところ,
343 Aは次のとおり述べていました。
344
345
346 『本件契約書末尾の私の署名押印は,
347 私がしたものです。
348
349 しかし,
350 本件契約書に記載されてい
351 る本件特約は,
352 私が記載したものではありません。
353
354 本件特約は,
355 B又はYが,
356 後で書き加えたも
357 のだと思います。
358
359 』」
360 そこで,
361 弁護士Pは,
362 第1回口頭弁論期日において,
363 本件契約書の成立の真正を否認したが,
364
365 れに加え,
366 本件特約がなかった事実を立証するための証拠の申出をすることを考えている。
367
368 次回期
369 日までに,
370 弁護士Pが申出を検討すべき証拠には,
371 どのようなものが考えられるか。
372
373 その内容を簡
374 潔に説明しなさい。
375
376 なお,
377 本設問に解答するに当たっては,
378 次の〔設問3〕のFの事実を前提にす
379 ること。
380
381
382 〔設問3〕
383 本件の第1回口頭弁論期日の1週間後,
384 弁護士Qは,
385 Yから次の事実を聞かされた。
386
387
388 F
389
390 本件の第1回口頭弁論期日の翌日にBが死亡し,
391 Yの母も半年前に死亡しており,
392 Bの相続
393 人は息子のYだけであるとの事実
394
395 これを前提に,
396 次の各問いに答えなさい。
397
398
399 (1)
400
401 上記Fの事実を踏まえると,
402 弁護士Qが主張すべき占有権原の抗弁の内容はどのようなもの
403
404 になるか説明しなさい。
405
406 なお,
407 当該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。
408
409
410 (2)
411
412 弁護士Pは,
413 (1)の占有権原の抗弁に対して,
414 どのような再抗弁を主張することになるか。
415
416
417 の再抗弁の内容を端的に記載しなさい。
418
419 なお,
420 当該再抗弁を構成する具体的事実を記載する必
421 要はない。
422
423
424
425 〔設問4〕
426 本件においては,
427 〔設問3〕の(1)の占有権原の抗弁及び(2)の再抗弁がいずれも適切に主張され
428 るとともに,
429 〔設問1〕の@からEまでの各事実及び〔設問3〕のFの事実は,
430 全て当事者間に争
431 いがなかった。
432
433 そして,
434 証拠調べの結果,
435 裁判所は,
436 次の事実があったとの心証を形成した。
437
438
439 【事実】
440 本件建物は,
441 乙市内に存在するマンションの一室で,
442 間取りは1DKである。
443
444 Aは,
445 平成17
446 年12月1日,
447 本件建物を当時の所有者から賃貸目的で代金600万円で買い受け,
448 その後,
449
450 三者に賃料1か月8万円で賃貸していたが,
451 平成22年4月1日から本件建物は空き家になって
452 いた。
453
454
455 平成23年3月,
456 Aは,
457 長年の友人であるBから,
458 転勤で乙市に単身赴任することになったと
459 の連絡を受けた。
460
461 AがBに転居先を確認したところ,
462 まだ決まっていないとのことであったため,
463
464 Aは,
465 Bに本件建物を紹介し,
466 本件賃貸借契約が締結された。
467
468 なお,
469 賃料は,
470 友人としてのAの
471 計らいで,
472 相場より安い1か月5万円とされた。
473
474
475 平成24年3月,
476 Bの長男であるY(当時25歳)が乙市内の丙会社に就職し,
477 乙市内に居住
478 することになった。
479
480 Yは,
481 22歳で大学を卒業後,
482 就職もせずに遊んでおり,
483 平成24年3月当
484 時,
485 貸金業者から約150万円の借金をしていた。
486
487 そこで,
488 Bは,
489 Yが借金を少しでも返済しや
490 すくするため,
491 Aから安い賃料で借りていた本件建物をYに転貸し,
492 自分は乙市内の別のマンシ
493 ョンを借りて引っ越すことにした。
494
495 こうして,
496 本件転貸借契約が締結された。
497
498
499 本件転貸借契約後も,
500 BはAに対し,
501 約定どおり毎月の賃料を支払ってきたが,
502 同年7月5日,
503
504 本件転貸借契約の締結を知ったAは,
505 同月16日,
506 Bに対し,
507 本件転貸借契約を締結したことに
508 ついて異議を述べた。
509
510 これに対し,
511 Bは,
512 転貸借契約を締結するのに賃貸人の承諾が必要である
513 - 4 -
514
515 ことは知らなかった,
516 しかし,
517 賃料は自分がAにきちんと支払っており,
518 Aに迷惑はかけていな
519 いのだから,
520 いいではないかと述べた。
521
522 Aは,
523 Bの開き直った態度に腹を立て,
524 貸金業者から借
525 金をしているYは信用できない,
526 Yに本件建物を無断で転貸したことを理由に本件賃貸借契約を
527 解除すると述べた。
528
529 しかし,
530 Bは,
531 解除は納得できない,
532 せっかくYが就職して真面目に生活す
533 るようになったのに,
534 解除は不当であると述べた。
535
536
537 その後,
538 Bは,
539 無断転貸ではなかったことにするため,
540 本件契約書に本件特約を書き加えた。
541
542
543 そして,
544 Bは,
545 Yに対し,
546 本件転貸借契約の締結についてはAの承諾を得ていると嘘をつき,
547
548 は,
549 これを信じて本件建物に居住し続けた。
550
551
552 この場合,
553 裁判所は,
554 平成24年7月16日にAがした本件賃貸借契約の解除の効力について,
555
556 どのような判断をすることになると考えられるか。
557
558 結論とその理由を説明しなさい。
559
560 なお,
561 上記事
562 実は全て当事者が口頭弁論期日において主張しているものとする。
563
564
565 〔設問5〕
566 弁護士Pは,
567 平成15年頃から継続的にAの法律相談を受けてきた経緯があり,
568 本件についても,
569
570 Aが本件転貸借契約の締結を知った翌日の平成24年7月6日,
571 Aから相談を受けていた。
572
573 その際,
574
575 弁護士Pは,
576 Aに対し,
577 本件建物を売却するのであれば,
578 無断転貸を理由に本件賃貸借契約を解除
579 してYから本件建物の明渡しを受けた後の方が本件建物を売却しやすいとアドバイスした。
580
581
582 その後,
583 Aは,
584 無断転貸を理由に本件賃貸借契約を解除したが,
585 Yから本件建物の明渡しを受け
586 る前に本件建物をXに売却した。
587
588 その際,
589 Aは,
590 Xから,
591 本件建物の明渡しをYに求めようと思う
592 ので弁護士を紹介してほしいと頼まれ,
593 本件の経緯を知っている弁護士PをXに紹介した。
594
595
596 弁護士Pは,
597 Aとの関係から,
598 Xの依頼を受けざるを得ない立場にあるが,
599 受任するとした場合,
600
601 受任するに当たってXに何を説明すべきか(弁護士報酬及び費用は除く。
602
603 )について述べなさい。
604
605
606
607 - 5 -
608
609 頼関係に基づくと認められるもの
610 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
611 四 社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任
612 している事件
613 五 社員が第二十七条、
614 第二十八条又は第六十三条第一号若しく
615 は第二号のいずれかの規定により職務を行い得ない事件
616 (同前)
617 第六十六条 弁護士法人は、
618 前条に規定するもののほか、
619 次の各号
620 のいずれかに該当する事件については、
621 その業務を行ってはなら
622 ない。
623
624 ただし、
625 第一号に掲げる事件についてその依頼者及び相手
626 方が同意した場合、
627 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び
628 他の依頼者のいずれもが同意した場合並びに第三号に掲げる事件
629 についてその依頼者が同意した場合は、
630 この限りでない。
631
632
633 一 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
634 を約している者を相手方とする事件
635 二 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
636 三 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件
637 (同前ー受任後)
638 第六十七条 社員等は、
639 事件を受任した後に第六十三条第三号の規
640 定に該当する事由があることを知ったときは、
641 速やかに、
642 依頼者
643 にその事情を告げ、
644 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとら
645 なければならない。
646
647
648 2 弁護士法人は、
649 事件を受任した後に第六十五条第四号又は第五
650 号の規定に該当する事由があることを知ったときは、
651 速やかに、
652
653 依頼者にその事情を告げ、
654 辞任その他の事案に応じた適切な措置
655 をとらなければならない。
656
657
658 (事件情報の記録等)
659 第六十八条 弁護士法人は、
660 その業務が制限されている事件を受任
661 すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士
662 が職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、
663 その弁
664 護士法人、
665 社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事
666 件の依頼者、
667 相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように
668
669 努める。
670
671
672 (準用)
673 第六十九条 第一章から第三章まで(第十六条、
674 第十九条、
675 第二十
676 三条及び第三章中第二節を除く。
677
678
679
680
681 第六章及び第九章から第十二
682 章までの規定は弁護士法人に準用する。
683
684
685 第九章 他の弁護士との関係における規律
686 (名誉の尊重)
687 第七十条 弁護士は、
688 他の弁護士、
689 弁護士法人及び外国法事務弁護
690 士(以下「弁護士等」という。
691
692
693 )との関係において、
694 相互に名誉
695 と信義を重んじる。
696
697
698 (弁護士に対する不利益行為)
699 第七十一条 弁護士は、
700 信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れ
701 てはならない。
702
703
704 (他の事件への不当介入)
705 第七十二条 弁護士は、
706 他の弁護士等が受任している事件に不当に
707 介入してはならない。
708
709
710 (弁護士間の紛議)
711 第七十三条 弁護士は、
712 他の弁護士等との間の紛議については、
713
714 議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
715
716
717 第十章 裁判の関係における規律
718 (裁判の公正と適正手続)
719 第七十四条 弁護士は、
720 裁判の公正及び適正手続の実現に努める。
721
722
723 (偽証のそそのかし)
724 第七十五条 弁護士は、
725 偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、
726
727 は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
728
729
730 (裁判手続の遅延)
731 第七十六条 弁護士は、
732 怠慢により又は不当な目的のため、
733 裁判手
734 続を遅延させてはならない。
735
736
737 (裁判官等との私的関係の不当利用)
738 第七十七条 弁護士は、
739 その職務を行うに当たり、
740 裁判官、
741 検察官
742 その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係
743 があることを不当に利用してはならない。
744
745
746
747 第十一章 弁護士会との関係における規律
748 (弁護士法等の遵守)
749 第七十八条 弁護士は、
750 弁護士法並びに本会及び所属弁護士会の会
751 則を遵守しなければならない。
752
753
754 (委嘱事項の不当拒絶)
755 第七十九条 弁護士は、
756 正当な理由なく、
757 会則の定めるところによ
758 り、
759 本会、
760 所属弁護士会及び所属弁護士会が弁護士法第四十四条
761 の規定により設けた弁護士会連合会から委嘱された事項を行うこ
762 とを拒絶してはならない。
763
764
765 第十二章 官公署との関係における規律
766 (委嘱事項の不当拒絶)
767 第八十条 弁護士は、
768 正当な理由なく、
769 法令により官公署から委嘱
770 された事項を行うことを拒絶してはならない。
771
772
773 (受託の制限)
774 第八十一条 弁護士は、
775 法令により官公署から委嘱された事項につ
776 いて、
777 職務の公正を保ち得ない事由があるときは、
778 その委嘱を受
779 けてはならない。
780
781
782 第十三章 解釈適用指針
783 (解釈適用指針)
784 第八十二条 この規程は、
785 弁護士の職務の多様性と個別性にかんが
786 み、
787 その自由と独立を不当に侵すことのないよう、
788 実質的に解釈
789 し適用しなければならない。
790
791 第五条の解釈適用に当たって、
792 刑事
793 弁護においては、
794 被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護
795 権を侵害することのないように留意しなければならない。
796
797
798 2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、
799 第二十六条、
800 第三
801 十三条、
802 第三十七条第二項、
803 第四十六条から第四十八条まで、
804
805 五十条、
806 第五十五条、
807 第五十九条、
808 第六十一条、
809 第六十八条、
810
811 七十条、
812 第七十三条及び第七十四条の規定は、
813 弁護士の職務の行
814 動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければな
815 らない。
816
817
818 附 則
819 この規程は、
820 平成十七年四月一日から施行する。
821
822
823
824 - 6 -
825
826 について、
827 必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努
828 める。
829
830
831 (防御権の説明等)
832 第四十八条 弁護士は、
833 被疑者及び被告人に対し、
834 黙秘権その他の
835 防御権について適切な説明及び助言を行い、
836 防御権及び弁護権に
837 対する違法又は不当な制限に対し、
838 必要な対抗措置をとるように
839 努める。
840
841
842 (国選弁護における対価受領等)
843 第四十九条 弁護士は、
844 国選弁護人に選任された事件について、
845
846 目のいかんを問わず、
847 被告人その他の関係者から報酬その他の対
848 価を受領してはならない。
849
850
851 2 弁護士は、
852 前項の事件について、
853 被告人その他の関係者に対し、
854
855 その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。
856
857
858 ただし、
859 本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある
860 場合は、
861 この限りでない。
862
863
864 第五章 組織内弁護士における規律
865 (自由と独立)
866 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。
867
868 以下これら
869 を合わせて「組織」という。
870
871
872 )において職員若しくは使用人とな
873 り、
874 又は取締役、
875 理事その他の役員となっている弁護士(以下「組
876 織内弁護士」という。
877
878
879 )は、
880 弁護士の使命及び弁護士の本質であ
881 る自由と独立を自覚し、
882 良心に従って職務を行うように努める。
883
884
885 (違法行為に対する措置)
886 第五十一条 組織内弁護士は、
887 その担当する職務に関し、
888 その組織
889 に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、
890 又は行おうとし
891 ていることを知ったときは、
892 その者、
893 自らが所属する部署の長又
894 はその組織の長、
895 取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対
896 する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとら
897 なければならない。
898
899
900 第六章 事件の相手方との関係における規律
901 (相手方本人との直接交渉)
902 第五十二条 弁護士は、
903 相手方に法令上の資格を有する代理人が選
904 任されたときは、
905 正当な理由なく、
906 その代理人の承諾を得ないで
907 直接相手方と交渉してはならない。
908
909
910 (相手方からの利益の供与)
911 第五十三条 弁護士は、
912 受任している事件に関し、
913 相手方から利益
914 の供与若しくは供応を受け、
915 又はこれを要求し、
916 若しくは約束を
917 してはならない。
918
919
920 (相手方に対する利益の供与)
921 第五十四条 弁護士は、
922 受任している事件に関し、
923 相手方に対し、
924
925 利益の供与若しくは供応をし、
926 又は申込みをしてはならない。
927
928
929 第七章 共同事務所における規律
930
931 (遵守のための措置)
932 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所
933 である場合を除く。
934
935
936 )を共にする場合(以下この法律事務所を「共
937 同事務所」という。
938
939
940 )において、
941 その共同事務所に所属する弁護
942 士(以下「所属弁護士」という。
943
944
945 )を監督する権限のある弁護士
946 は、
947 所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるよ
948 うに努める。
949
950
951 (秘密の保持)
952 第五十六条 所属弁護士は、
953 他の所属弁護士の依頼者について執務
954 上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、
955 又は利用してはな
956 らない。
957
958 その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、
959 同様と
960 する。
961
962
963 (職務を行い得ない事件)
964 第五十七条 所属弁護士は、
965 他の所属弁護士(所属弁護士であった
966 場合を含む。
967
968
969 )が、
970 第二十七条又は第二十八条の規定により職務
971 を行い得ない事件については、
972 職務を行ってはならない。
973
974 ただし、
975
976 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
977 この限りでない。
978
979
980 (同前ー受任後)
981 第五十八条 所属弁護士は、
982 事件を受任した後に前条に該当する事
983 由があることを知ったときは、
984 速やかに、
985 依頼者にその事情を告
986 げて、
987 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければなら
988 ない。
989
990
991 (事件情報の記録等)
992 第五十九条 所属弁護士は、
993 職務を行い得ない事件の受任を防止す
994 るため、
995 他の所属弁護士と共同して、
996 取扱い事件の依頼者、
997 相手
998 方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
999
1000
1001 (準用)
1002 第六十条 この章の規定は、
1003 弁護士が外国法事務弁護士と事務所を
1004 共にする場合に準用する。
1005
1006 この場合において、
1007 第五十五条中「複
1008 数の弁護士が」とあるのは「弁護士及び外国法事務弁護士が」と、
1009
1010 「共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という。
1011
1012
1013
1014
1015 とあるのは「共同事務所に所属する外国法事務弁護士(以下「所
1016 属外国法事務弁護士」という。
1017
1018
1019
1020 」と、
1021
1022 「所属弁護士が」とあるの
1023 は「所属外国法事務弁護士が」と、
1024 第五十六条から第五十九条ま
1025 での規定中「他の所属弁護士」とあるのは「所属外国法事務弁護
1026 士」と、
1027 第五十七条中「第二十七条又は第二十八条」とあるのは
1028 「外国特別会員基本規程第三十条の二において準用する第二十七
1029 条又は第二十八条」と読み替えるものとする。
1030
1031
1032 第八章 弁護士法人における規律
1033 (遵守のための措置)
1034 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、
1035 その弁護士法人の
1036 社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という。
1037
1038
1039 )及び使
1040
1041 用人である外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な
1042 措置をとるように努める。
1043
1044
1045 (秘密の保持)
1046 第六十二条 社員等は、
1047 その弁護士法人、
1048 他の社員等又は使用人で
1049 ある外国法事務弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正
1050 当な理由なく他に漏らし、
1051 又は利用してはならない。
1052
1053 社員等でな
1054 くなった後も、
1055 同様とする。
1056
1057
1058 (職務を行い得ない事件)
1059 第六十三条 社員等(第一号及び第二号の場合においては、
1060 社員等
1061 であった者を含む。
1062
1063
1064 )は、
1065 次に掲げる事件については、
1066 職務を行
1067 ってはならない。
1068
1069 ただし、
1070 第四号に掲げる事件については、
1071 その
1072 弁護士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、
1073
1074 の限りでない。
1075
1076
1077 一 社員等であった期間内に、
1078 その弁護士法人が相手方の協議を
1079 受けて賛助し、
1080 又はその依頼を承諾した事件であって、
1081 自らこ
1082 れに関与したもの
1083 二 社員等であった期間内に、
1084 その弁護士法人が相手方の協議を
1085 受けた事件で、
1086 その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと
1087 認められるものであって、
1088 自らこれに関与したもの
1089 三 その弁護士法人が相手方から受任している事件
1090 四 その弁護士法人が受任している事件(当該社員等が自ら関与
1091 しているものに限る。
1092
1093
1094 )の相手方からの依頼による他の事件
1095 (他の社員等との関係で職務を行い得ない事件)
1096 第六十四条 社員等は、
1097 他の社員等が第二十七条、
1098 第二十八条又は
1099 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
1100 行い得ない事件については、
1101 職務を行ってはならない。
1102
1103 ただし、
1104
1105 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
1106 この限りでない。
1107
1108
1109 2 社員等は、
1110 使用人である外国法事務弁護士が外国特別会員基本
1111 規程第三十条の二において準用する第二十七条、
1112 第二十八条又は
1113 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
1114 行い得ない事件については、
1115 職務を行ってはならない。
1116
1117 ただし、
1118
1119 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
1120 この限りでない。
1121
1122
1123 (業務を行い得ない事件)
1124 第六十五条 弁護士法人は、
1125 次の各号のいずれかに該当する事件に
1126 ついては、
1127 その業務を行ってはならない。
1128
1129 ただし、
1130 第三号に規定
1131 する事件については受任している事件の依頼者の同意がある場合
1132 及び第五号に規定する事件についてはその職務を行い得ない社員
1133 がその弁護士法人の社員の総数の半数未満であり、
1134 かつ、
1135 その弁
1136 護士法人に業務の公正を保ち得る事由がある場合は、
1137 この限りで
1138 ない。
1139
1140
1141 一 相手方の協議を受けて賛助し、
1142 又はその依頼を承諾した事件
1143 二 相手方の協議を受けた事件で、
1144 その協議の程度及び方法が信
1145
1146 - 7 -
1147
1148 (依頼者との金銭貸借等)
1149 第二十五条 弁護士は、
1150 特別の事情がない限り、
1151 依頼者と金銭の貸
1152 借をし、
1153 又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、
1154 若しく
1155 は依頼者の債務について保証をしてはならない。
1156
1157
1158 (依頼者との紛議)
1159 第二十六条 弁護士は、
1160 依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じな
1161 いように努め、
1162 紛議が生じたときは、
1163 所属弁護士会の紛議調停で
1164 解決するように努める。
1165
1166
1167 第二節 職務を行い得ない事件の規律
1168 (職務を行い得ない事件)
1169 第二十七条 弁護士は、
1170 次の各号のいずれかに該当する事件につい
1171 ては、
1172 その職務を行ってはならない。
1173
1174 ただし、
1175 第三号に掲げる事
1176 件については、
1177 受任している事件の依頼者が同意した場合は、
1178
1179 の限りでない。
1180
1181
1182 一 相手方の協議を受けて賛助し、
1183 又はその依頼を承諾した事件
1184 二 相手方の協議を受けた事件で、
1185 その協議の程度及び方法が信
1186 頼関係に基づくと認められるもの
1187 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
1188 四 公務員として職務上取り扱った事件
1189 五 仲裁、
1190 調停、
1191 和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手
1192 続実施者として取り扱った事件
1193 (同前)
1194 第二十八条 弁護士は、
1195 前条に規定するもののほか、
1196 次の各号のい
1197 ずれかに該当する事件については、
1198 その職務を行ってはならない。
1199
1200
1201 ただし、
1202 第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同
1203 意した場合、
1204 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方
1205 が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及
1206 び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、
1207 この限りでない。
1208
1209
1210 一 相手方が配偶者、
1211 直系血族、
1212 兄弟姉妹又は同居の親族である
1213 事件
1214 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
1215 を約している者を相手方とする事件
1216 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
1217 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
1218 第三節 事件の受任時における規律
1219 (受任の際の説明等)
1220 第二十九条 弁護士は、
1221 事件を受任するに当たり、
1222 依頼者から得た
1223 情報に基づき、
1224 事件の見通し、
1225 処理の方法並びに弁護士報酬及び
1226 費用について、
1227 適切な説明をしなければならない。
1228
1229
1230 2 弁護士は、
1231 事件について、
1232 依頼者に有利な結果となることを請
1233 け合い、
1234 又は保証してはならない。
1235
1236
1237 3 弁護士は、
1238 依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにも
1239
1240 かかわらず、
1241 その見込みがあるように装って事件を受任してはな
1242 らない。
1243
1244
1245 (委任契約書の作成)
1246 第三十条 弁護士は、
1247 事件を受任するに当たり、
1248 弁護士報酬に関す
1249 る事項を含む委任契約書を作成しなければならない。
1250
1251 ただし、
1252
1253 任契約書を作成することに困難な事由があるときは、
1254 その事由が
1255 止んだ後、
1256 これを作成する。
1257
1258
1259 2 前項の規定にかかわらず、
1260 受任する事件が、
1261 法律相談、
1262 簡易な
1263 書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものである
1264 ときその他合理的な理由があるときは、
1265 委任契約書の作成を要し
1266 ない。
1267
1268
1269 (不当な事件の受任)
1270 第三十一条 弁護士は、
1271 依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに
1272 不当な事件を受任してはならない。
1273
1274
1275 (不利益事項の説明)
1276 第三十二条 弁護士は、
1277 同一の事件について複数の依頼者があって
1278 その相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、
1279 事件を受
1280 任するに当たり、
1281 依頼者それぞれに対し、
1282 辞任の可能性その他の
1283 不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。
1284
1285
1286 (法律扶助制度等の説明)
1287 第三十三条 弁護士は、
1288 依頼者に対し、
1289 事案に応じ、
1290 法律扶助制度、
1291
1292 訴訟救助制度その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を
1293 説明し、
1294 裁判を受ける権利が保障されるように努める。
1295
1296
1297 (受任の諾否の通知)
1298 第三十四条 弁護士は、
1299 事件の依頼があったときは、
1300 速やかに、
1301
1302 の諾否を依頼者に通知しなければならない。
1303
1304
1305 第四節 事件の処理における規律
1306 (事件の処理)
1307 第三十五条 弁護士は、
1308 事件を受任したときは、
1309 速やかに着手し、
1310
1311 遅滞なく処理しなければならない。
1312
1313
1314 (事件処理の報告及び協議)
1315 第三十六条 弁護士は、
1316 必要に応じ、
1317 依頼者に対して、
1318 事件の経過
1319 及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、
1320 依頼者と協議しな
1321 がら事件の処理を進めなければならない。
1322
1323
1324 (法令等の調査)
1325 第三十七条 弁護士は、
1326 事件の処理に当たり、
1327 必要な法令の調査を
1328 怠ってはならない。
1329
1330
1331 2 弁護士は、
1332 事件の処理に当たり、
1333 必要かつ可能な事実関係の調
1334 査を行うように努める。
1335
1336
1337 (預り金の保管)
1338 第三十八条 弁護士は、
1339 事件に関して依頼者、
1340 相手方その他利害関
1341 係人から金員を預かったときは、
1342 自己の金員と区別し、
1343 預り金で
1344
1345 あることを明確にする方法で保管し、
1346 その状況を記録しなければ
1347 ならない。
1348
1349
1350 (預り品の保管)
1351 第三十九条 弁護士は、
1352 事件に関して依頼者、
1353 相手方その他利害関
1354 係人から書類その他の物品を預かったときは、
1355 善良な管理者の注
1356 意をもって保管しなければならない。
1357
1358
1359 (他の弁護士の参加)
1360 第四十条 弁護士は、
1361 受任している事件について、
1362 依頼者が他の弁
1363 護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、
1364 正当な理由な
1365 く、
1366 これを妨げてはならない。
1367
1368
1369 (受任弁護士間の意見不一致)
1370 第四十一条 弁護士は、
1371 同一の事件を受任している他の弁護士又は
1372 弁護士法人との間に事件の処理について意見が一致せず、
1373 これに
1374 より、
1375 依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、
1376 依頼者に対
1377 し、
1378 その事情を説明しなければならない。
1379
1380
1381 (受任後の利害対立)
1382 第四十二条 弁護士は、
1383 複数の依頼者があって、
1384 その相互間に利害
1385 の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、
1386 依頼者相互間に
1387 現実に利害の対立が生じたときは、
1388 依頼者それぞれに対し、
1389 速や
1390 かに、
1391 その事情を告げて、
1392 辞任その他の事案に応じた適切な措置
1393 をとらなければならない。
1394
1395
1396 (信頼関係の喪失)
1397 第四十三条 弁護士は、
1398 受任した事件について、
1399 依頼者との間に信
1400 頼関係が失われ、
1401 かつ、
1402 その回復が困難なときは、
1403 その旨を説明
1404 し、
1405 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならな
1406 い。
1407
1408
1409 第五節 事件の終了時における規律
1410 (処理結果の説明)
1411 第四十四条 弁護士は、
1412 委任の終了に当たり、
1413 事件処理の状況又は
1414 その結果に関し、
1415 必要に応じ法的助言を付して、
1416 依頼者に説明し
1417 なければならない。
1418
1419
1420 (預り金等の返還)
1421 第四十五条 弁護士は、
1422 委任の終了に当たり、
1423 委任契約に従い、
1424
1425 銭を清算したうえ、
1426 預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければ
1427 ならない。
1428
1429
1430 第四章 刑事弁護における規律
1431 (刑事弁護の心構え)
1432 第四十六条 弁護士は、
1433 被疑者及び被告人の防御権が保障されてい
1434 ることにかんがみ、
1435 その権利及び利益を擁護するため、
1436 最善の弁
1437 護活動に努める。
1438
1439
1440 (接見の確保と身体拘束からの解放)
1441 第四十七条 弁護士は、
1442 身体の拘束を受けている被疑者及び被告人
1443
1444 - 8 -
1445
1446 弁護士職務基本規程(平成十六年十一月十日会規第七十号)
1447 目次
1448 第一章 基本倫理(第一条ー第八条)
1449 第二章 一般規律(第九条ー第十九条)
1450 第三章 依頼者との関係における規律
1451 第一節 通則(第二十条ー第二十六条)
1452 第二節 職務を行い得ない事件の規律(第二十七条・第二十八
1453 条)
1454 第三節 事件の受任時における規律(第二十九条ー第三十四条)
1455 第四節 事件の処理における規律(第三十五条ー第四十三条)
1456 第五節 事件の終了時における規律(第四十四条・第四十五条)
1457 第四章 刑事弁護における規律(第四十六条―第四十九条)
1458 第五章 組織内弁護士における規律(第五十条・第五十一条)
1459 第六章 事件の相手方との関係における規律(第五十二条ー第五
1460 十四条)
1461 第七章 共同事務所における規律(第五十五条―第六十条)
1462 第八章 弁護士法人における規律(第六十一条―第六十九条)
1463 第九章 他の弁護士との関係における規律(第七十条ー第七十三
1464 条)
1465 第十章 裁判の関係における規律(第七十四条―第七十七条)
1466 第十一章 弁護士会との関係における規律(第七十八条・第七十
1467 九条)
1468 第十二章 官公署との関係における規律(第八十条・第八十一条)
1469 第十三章 解釈適用指針(第八十二条)
1470 附則
1471 弁護士は、
1472 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
1473
1474
1475 その使命達成のために、
1476 弁護士には職務の自由と独立が要請され、
1477
1478 高度の自治が保障されている。
1479
1480
1481 弁護士は、
1482 その使命を自覚し、
1483 自らの行動を規律する社会的責任
1484 を負う。
1485
1486
1487 よって、
1488 ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに
1489 するため、
1490 弁護士職務基本規程を制定する。
1491
1492
1493 第一章 基本倫理
1494 (使命の自覚)
1495 第一条 弁護士は、
1496 その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現
1497 にあることを自覚し、
1498 その使命の達成に努める。
1499
1500
1501 (自由と独立)
1502 第二条 弁護士は、
1503 職務の自由と独立を重んじる。
1504
1505
1506 (弁護士自治)
1507 第三条 弁護士は、
1508 弁護士自治の意義を自覚し、
1509 その維持発展に努
1510
1511 める。
1512
1513
1514 (司法独立の擁護)
1515 第四条 弁護士は、
1516 司法の独立を擁護し、
1517 司法制度の健全な発展に
1518 寄与するように努める。
1519
1520
1521 (信義誠実)
1522 第五条 弁護士は、
1523 真実を尊重し、
1524 信義に従い、
1525 誠実かつ公正に職
1526 務を行うものとする。
1527
1528
1529 (名誉と信用)
1530 第六条 弁護士は、
1531 名誉を重んじ、
1532 信用を維持するとともに、
1533 廉潔
1534 を保持し、
1535 常に品位を高めるように努める。
1536
1537
1538 (研鑽)
1539 第七条 弁護士は、
1540 教養を深め、
1541 法令及び法律事務に精通するため、
1542
1543 研鑽に努める。
1544
1545
1546 (公益活動の実践)
1547 第八条 弁護士は、
1548 その使命にふさわしい公益活動に参加し、
1549 実践
1550 するように努める。
1551
1552
1553 第二章 一般規律
1554 (広告及び宣伝)
1555 第九条 弁護士は、
1556 広告又は宣伝をするときは、
1557 虚偽又は誤導にわ
1558 たる情報を提供してはならない。
1559
1560
1561 2 弁護士は、
1562 品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
1563
1564
1565 (依頼の勧誘等)
1566 第十条 弁護士は、
1567 不当な目的のため、
1568 又は品位を損なう方法によ
1569 り、
1570 事件の依頼を勧誘し、
1571 又は事件を誘発してはならない。
1572
1573
1574 (非弁護士との提携)
1575 第十一条 弁護士は、
1576 弁護士法第七十二条から第七十四条までの規
1577 定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当
1578 な理由のある者から依頼者の紹介を受け、
1579 これらの者を利用し、
1580
1581 又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
1582
1583
1584 (報酬分配の制限)
1585 第十二条 弁護士は、
1586 その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法
1587 人でない者との間で分配してはならない。
1588
1589 ただし、
1590 法令又は本会
1591 若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その
1592 他正当な理由がある場合は、
1593 この限りでない。
1594
1595
1596 (依頼者紹介の対価)
1597 第十三条 弁護士は、
1598 依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その
1599 他の対価を支払ってはならない。
1600
1601
1602 2 弁護士は、
1603 依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価
1604 を受け取ってはならない。
1605
1606
1607 (違法行為の助長)
1608 第十四条 弁護士は、
1609 詐欺的取引、
1610 暴力その他違法若しくは不正な
1611 行為を助長し、
1612 又はこれらの行為を利用してはならない。
1613
1614
1615
1616 (品位を損なう事業への参加)
1617 第十五条 弁護士は、
1618 公序良俗に反する事業その他品位を損なう事
1619 業を営み、
1620 若しくはこれに加わり、
1621 又はこれらの事業に自己の名
1622 義を利用させてはならない。
1623
1624
1625 (営利業務従事における品位保持)
1626 第十六条 弁護士は、
1627 自ら営利を目的とする業務を営むとき、
1628 又は
1629 営利を目的とする業務を営む者の取締役、
1630 執行役その他業務を執
1631 行する役員若しくは使用人となったときは、
1632 営利を求めることに
1633 とらわれて、
1634 品位を損なう行為をしてはならない。
1635
1636
1637 (係争目的物の譲受け)
1638 第十七条 弁護士は、
1639 係争の目的物を譲り受けてはならない。
1640
1641
1642 (事件記録の保管等)
1643 第十八条 弁護士は、
1644 事件記録を保管又は廃棄するに際しては、
1645
1646 密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなけれ
1647 ばならない。
1648
1649
1650 (事務職員等の指導監督)
1651 第十九条 弁護士は、
1652 事務職員、
1653 司法修習生その他の自らの職務に
1654 関与させた者が、
1655 その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に
1656 及び、
1657 又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、
1658
1659 若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければな
1660 らない。
1661
1662
1663 第三章 依頼者との関係における規律
1664 第一節 通則
1665 (依頼者との関係における自由と独立)
1666 第二十条 弁護士は、
1667 事件の受任及び処理に当たり、
1668 自由かつ独立
1669 の立場を保持するように努める。
1670
1671
1672 (正当な利益の実現)
1673 第二十一条 弁護士は、
1674 良心に従い、
1675 依頼者の権利及び正当な利益
1676 を実現するように努める。
1677
1678
1679 (依頼者の意思の尊重)
1680 第二十二条 弁護士は、
1681 委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重し
1682 て職務を行うものとする。
1683
1684
1685 2 弁護士は、
1686 依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に
1687 表明できないときは、
1688 適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に
1689 努める。
1690
1691
1692 (秘密の保持)
1693 第二十三条 弁護士は、
1694 正当な理由なく、
1695 依頼者について職務上知
1696 り得た秘密を他に漏らし、
1697 又は利用してはならない。
1698
1699
1700 (弁護士報酬)
1701 第二十四条 弁護士は、
1702 経済的利益、
1703 事案の難易、
1704 時間及び労力そ
1705 の他の事情に照らして、
1706 適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなけ
1707 ればならない。
1708
1709
1710
1711 - 9 -
1712
1713 [刑
1714
1715 事]
1716
1717 次の【事例】を読んで,
1718 後記〔設問〕に答えなさい。
1719
1720
1721 【事
1722
1723
1724 例】
1725 V(男性,
1726 27歳)は,
1727 平成25年2月12日,
1728 カメラ量販店で,
1729 大手メーカーであるC社
1730 製のデジタルカメラ(商品名「X」)を30万円で購入した。
1731
1732 同デジタルカメラは,
1733 ヒット商
1734 品で飛ぶように売れていたため,
1735 販売店では在庫が不足気味であり,
1736 なかなか手に入りにくい
1737 ものであった。
1738
1739
1740
1741
1742
1743 Vは,
1744 同月26日午後10時頃から,
1745 S県T市内のQマンション405号室のV方居室で,
1746
1747 テーブルを囲んで友人のA(男性,
1748 25歳)とその友人の甲(男性,
1749 26歳)と共に酒を飲ん
1750 だが,
1751 その際,
1752 上記「X」を同人らに見せた。
1753
1754 Vは,
1755 その後同デジタルカメラを箱に戻して同
1756 室の机の引き出しにしまい,
1757 引き続きAや甲と酒を飲んだが,
1758 Vは途中で眠ってしまい,
1759 翌27
1760 日午前7時頃,
1761 Vが同所で目を覚ますと,
1762 既に甲もAも帰っていた。
1763
1764 Vは,
1765 その後外出するこ
1766 となく同室内でテレビを見るなどしていたが,
1767 同日午後1時頃,
1768 机の引き出しにしまっていた
1769 同デジタルカメラを取り出そうとしたところ,
1770 これが収納していた箱ごと無くなっていること
1771 に気付いた。
1772
1773 Vは,
1774 前夜V方で一緒に飲んだAや甲が何か知っているかもしれないと考え,
1775
1776 に電話をして同デジタルカメラのことを聞いたが,
1777 Aは,
1778
1779 「知らない。
1780
1781 」と答えた。
1782
1783 また,
1784 Vは,
1785
1786 Aの友人である甲については連絡先を知らなかったため,
1787 Aに聞いたところ,
1788 Aは,
1789 「自分の
1790 方から甲に聞いておく。
1791
1792 」と答えた。
1793
1794
1795 VがV方の窓や玄関ドアを確認したところ,
1796 窓は施錠されていたが,
1797 玄関ドアは閉まってい
1798 たものの施錠はされていなかった。
1799
1800 Vは,
1801 同デジタルカメラは何者かに盗まれたと判断し,
1802
1803 日午後3時頃,
1804 警察に盗難被害に遭った旨届け出た。
1805
1806
1807
1808
1809
1810 同日午後3時40分頃,
1811 通報を受けたL警察署の司法警察員Kら司法警察職員3名がV方に
1812 臨場し,
1813 Vは上記2の被害状況を司法警察員Kらに説明した。
1814
1815 なお,
1816 司法警察員KがVに被害
1817 に遭ったデジタルカメラの製造番号を確認したところ,
1818 Vは,
1819 「製造番号は保証書に書いてあ
1820 ったが,
1821 それを入れた箱ごと被害に遭ったため分からない。
1822
1823 」と答えた。
1824
1825
1826 司法警察員Kらは,
1827 引き続き同室の実況見分を行った。
1828
1829 V方居室はQマンションの4階にあ
1830 り,
1831 間取りは広さ約6畳のワンルームであり,
1832 テーブル,
1833 机及びベッドは全て一室に置かれて
1834 いた。
1835
1836 同室の窓はベランダに面した掃き出し窓一つのみであり,
1837 同窓にはこじ開けられたよう
1838 な形跡はなく,
1839 Vに確認したところ,
1840 Vは,
1841 「窓はふだんから施錠しており,
1842 昨日の夜も施錠
1843 していた。
1844
1845 」と申し立てた。
1846
1847 また,
1848 鑑識活動の結果,
1849 盗難に遭ったデジタルカメラをしまって
1850 いた机やその近くのテーブルから対照可能な指紋3個を採取した。
1851
1852
1853 さらに,
1854 司法警察員KらがVと共にQマンションに設置されている防犯ビデオの画像を確認
1855 したところ,
1856 同月26日午後9時55分にV,
1857 甲及びAの3人が連れ立って同マンション内に
1858 入ってきた様子,
1859 同日午後11時50分にAが一人で同マンションから出て行く様子,
1860 その後
1861 約5分遅れて甲が一人で同マンションから出て行く様子がそれぞれ撮影されていた。
1862
1863 Aや甲が
1864 同マンションから出て行った際の所持品の有無については,
1865 画像が不鮮明なため判然としなか
1866 った。
1867
1868 なお,
1869 甲が一人で同マンションを出て行って以降,
1870 同月27日午前7時20分まで,
1871
1872 マンションに人が出入りする状況は撮影されていなかった。
1873
1874 また,
1875 同マンションの出入口は防
1876 犯ビデオが設置されているエントランス1か所のみであり,
1877 それ以外の場所からは出入りでき
1878 ない構造になっていた。
1879
1880
1881 司法警察員Kは,
1882 同日,
1883 盗難に遭ったデジタルカメラの商品名を基に,
1884 L警察署管内の質屋
1885 やリサイクルショップ等に取扱いの有無を照会した。
1886
1887 また,
1888 司法警察員Kは,
1889 A及び甲の前歴
1890
1891 - 10 -
1892
1893 を確認したところ,
1894 Aには前歴はなかったが,
1895 甲には窃盗の前科前歴があることが判明した。
1896
1897
1898
1899
1900 同年3月1日,
1901 L警察署に対し,
1902 T市内のリサイクルショップRから,
1903 「甲という男からC
1904 社の『X』1台の買取りを行った。
1905
1906 」旨の回答があった。
1907
1908 そこで,
1909 司法警察員Kがリサイクル
1910 ショップRに赴き,
1911 同店店員Wから事情を聴取したところ,
1912 店員Wは,
1913 「一昨日の2月27日
1914 午前10時頃,
1915 甲が来店したので応対に当たった。
1916
1917 甲の身元は自動車運転免許証で確認した。
1918
1919
1920 甲から『X』1台を箱付きで27万円で買い取った。
1921
1922 甲には現金27万円と買取票の写しを渡
1923 した。
1924
1925 」旨供述した。
1926
1927 そのときの買取票を店員Wが呈示したため,
1928 司法警察員Kがこれを確認
1929 したところ,
1930 2月27日の日付,
1931 甲の氏名,
1932 製造番号SV10008643番の「X」1台を
1933 買い取った旨の記載があった。
1934
1935 司法警察員Kは甲の写真を含む男性20名の写真を貼付した写
1936 真台帳を店員Wに示したところ,
1937 店員Wは甲の写真を選んで「その『X』を持ち込んできたの
1938 はこの男に間違いない。
1939
1940 」と申し立てた。
1941
1942
1943 司法警察員Kは,
1944 同店店長から,
1945 甲から買い取った「X」1台の任意提出を受け,
1946 L警察署
1947 に持ち帰って調べたところ,
1948 内蔵時計は正確な時刻を示していたが,
1949 撮影した画像のデータを
1950 保存するためのメモリーカードが同デジタルカメラには入っておらず,
1951 抜かれたままになって
1952 いた。
1953
1954 司法警察員Kは,
1955 同デジタルカメラを鑑識係員に渡して,
1956 指紋の採取を依頼し,
1957 同デジ
1958 タルカメラの裏面から指紋1個を採取した。
1959
1960 この指紋及び同年2月27日にV方から採取した
1961 指紋をV及び甲の指紋と照合したところ,
1962 同デジタルカメラから採取された指紋及びV方のテ
1963 ーブルから採取された指紋1個が甲の指紋と合致し,
1964 V方の机から採取された指紋1個がVの
1965 指紋と合致し,
1966 それ以外の指紋は甲,
1967 Vいずれの指紋とも合致しなかった。
1968
1969
1970
1971
1972
1973 司法警察員Kは,
1974 甲を尾行するなどしてその行動を確認したところ,
1975 甲が消費者金融会社O
1976 に出入りしている様子を目撃したことから,
1977 甲の借金の有無をO社に照会したところ,
1978 限度額
1979 一杯の30万円を借り,
1980 その返済が滞っていたこと,
1981 同月27日に27万円が返済されている
1982 ことが判明した。
1983
1984
1985 さらに,
1986 司法警察員Kは,
1987 同年3月4日,
1988 AをL警察署に呼び出して事情を聞いたところ,
1989
1990 Aは以下のとおり供述した。
1991
1992
1993
1994 (1)
1995
1996 Vは前にアルバイト先で知り合った友人で,
1997 月に1,
1998 2回は一緒に飲んだり遊んだりして
1999 いる。
2000
2001 甲は高校時代の同級生であり,
2002 2か月くらい前に偶然再会し,
2003 それ以降,
2004 毎週のよう
2005 に一緒に遊んでいる。
2006
2007 甲とVは直接の面識はなかったが,
2008 先月の初め頃,
2009 自分が紹介して3
2010 人で一緒に飲んだことがあった。
2011
2012
2013
2014 (2)
2015
2016 今年の2月26日は,
2017 Vに誘われて甲と共にV方に行って3人で酒を飲んだ。
2018
2019 その際,
2020
2021 からデジタルカメラを見せられた記憶がある。
2022
2023 しかし,
2024 Vが先に眠ってしまい,
2025 自分も終電
2026 があるので甲を誘って午後11時50分頃V方を出て帰った。
2027
2028 その後,
2029 Vから「カメラが無
2030 くなった。
2031
2032 」と聞かされたが,
2033 自分は知らない。
2034
2035 甲にも聞いてみたが,
2036 甲も知らないと言っ
2037 ていた。
2038
2039 ただ,
2040 思い出してみると,
2041 あの日帰るとき,
2042 甲が「たばこを一本吸ってから帰る。
2043
2044
2045 と言うので,
2046 Vの部屋の前で甲と別れて一人で帰った。
2047
2048 その後甲がいつ帰ったかは知らない。
2049
2050
2051
2052
2053
2054 司法警察員Kは,
2055 裁判官から甲を被疑者とする後記【被疑事実】での逮捕状の発付を得て,
2056
2057 同年3月5日午前8時頃,
2058 甲方に赴いた。
2059
2060 すると,
2061 甲が自宅前で普通乗用自動車(白色ワゴン
2062 車,
2063 登録番号「T550よ6789」)に乗り込み発進しようとするところであったことから,
2064
2065 司法警察員Kは甲を呼び止めて降車を促し,
2066 その場で甲を通常逮捕するとともに同車内の捜索
2067 を行った。
2068
2069 その際,
2070 司法警察員Kは同車内のダッシュボードからちり紙にくるまれたメモリー
2071 カード1枚を発見したので,
2072 これを押収した。
2073
2074 なお,
2075 同車は甲が勤務するZ社所有の物であっ
2076 た。
2077
2078
2079
2080
2081
2082 その後,
2083 同日午前9時からL警察署内で行われた弁解録取手続及びその後の取調べにおいて,
2084
2085 甲は以下のとおり供述した。
2086
2087
2088
2089 (1)
2090
2091 結婚歴はなく,
2092 T市内のアパートに一人で住んでいる。
2093
2094 兄弟はおらず,
2095 隣のU市に今年65
2096 - 11 -
2097
2098 歳になる母が一人で住んでいる。
2099
2100 高校卒業後,
2101 しばらくアルバイトで生活していたが,
2102 平成
2103 23年8月からZ社で正社員として働くようになり,
2104 今に至っている。
2105
2106 仕事の内容は営業回
2107 りである。
2108
2109 収入は手取りで月17万円くらいだが,
2110 借金が120万円ほどあり,
2111 月々3万円
2112 を返済に回しているので生活は苦しい。
2113
2114 警察に捕まったことがこれまで2回あり,
2115 最初は平
2116 成19年5月,
2117 友人方で友人の財布を盗み,
2118 そのことがばれて捕まったが,
2119 弁償し謝罪して
2120 被害届を取り下げてもらったので,
2121 処分は受けなかった。
2122
2123 2回目は,
2124 平成22年10月に換
2125 金目的でゲーム機やDVDを万引き窃取して捕まり,
2126 同事件で同年12月に懲役1年,
2127 3年
2128 間執行猶予の有罪判決を受け,
2129 今も執行猶予期間中である。
2130
2131
2132 (2)
2133
2134 今年の2月26日夜,
2135 AとV方に行った時にVからカメラを見せられた。
2136
2137 そのカメラを盗
2138 んだと疑われているらしいが,
2139 私はそんなことはしていない。
2140
2141 私はその日はAと一緒に帰っ
2142 たから,
2143 Aに聞いてもらえれば自分が盗みをしていないことが分かるはずだ。
2144
2145
2146
2147
2148
2149 司法警察員Kは,
2150 甲が乗っていた自動車内から押収したメモリーカードを精査したところ,
2151
2152 同カードはデジタルカメラで広く使われている規格のもので「X」にも適合するものであった。
2153
2154
2155 そこで,
2156 その内容を解析したところ,
2157 写真画像6枚のデータが記録されており,
2158 撮影時期はい
2159 ずれも同年2月12日から同月25日の間,
2160 撮影したデジタルカメラの機種はいずれも「X」
2161 であることが明らかとなった。
2162
2163 司法警察員Kは,
2164 同年3月5日午後6時頃,
2165 VをL警察署に呼
2166 んで上記データの画像をVに示したところ,
2167 Vは,
2168 「写っている写真は全て自分が新しく買っ
2169 た『X』で撮影したものに間違いないので,
2170 そのメモリーカードは『X』と一緒に盗まれたも
2171 のに間違いない。
2172
2173 」旨供述した。
2174
2175 さらに,
2176 Vがその写真の一部は自分がインターネット上で公
2177 開していると申し立てたので,
2178 司法警察員Kがインターネットで調べたところ,
2179 メモリーカー
2180 ド内の画像のうち3枚が,
2181 実際にVによって公開された画像と同一であることが判明した。
2182
2183
2184 また,
2185 司法警察員Kは,
2186 同月6日午前9時頃,
2187 甲の勤務するZ社に電話をして,
2188 代表者から
2189 同社が所有する車両の管理状況について聴取したところ,
2190 同人は,
2191
2192 「会社所有の車は4台あり,
2193
2194 うち1台は私が常時使っている。
2195
2196 残りの3台は3人の営業員に使わせているが,
2197 誰がどの車両
2198 を使っているかは車の鍵の管理簿を付けているのでそれを見れば分かる。
2199
2200 登録番号『T550
2201 よ6789』のワゴン車については,
2202 今年の2月24日から甲が使っている。
2203
2204 」旨供述した。
2205
2206
2207
2208
2209
2210 司法警察員Kは,
2211 同年3月6日午前9時30分頃から再度甲の取調べを行ったところ,
2212 甲は
2213 以下のとおり供述した。
2214
2215
2216
2217 (1)
2218
2219 Vのデジタルカメラは盗んでいない。
2220
2221
2222
2223 (2)
2224
2225 自分が今年の2月27日にリサイクルショップにデジタルカメラを持ち込んだことはある
2226 が,
2227 それは名前を言えない知り合いからもらった物だ。
2228
2229
2230
2231 (3)
2232
2233 車の中にあったメモリーカードのことは知らない。
2234
2235
2236
2237 (4)
2238
2239 自分が疑われて不愉快だからこれ以上話したくない。
2240
2241
2242
2243 10
2244
2245 司法警察員Kは,
2246 同年3月6日午前11時頃,
2247 後記【被疑事実】で甲をS地方検察庁検察官
2248 に送致した。
2249
2250 甲は,
2251 同日午後1時頃,
2252 検察官Pによる弁解録取手続において,
2253 「事件のことに
2254 ついては何も話すつもりはない。
2255
2256 」と供述した。
2257
2258
2259
2260 11
2261
2262 検察官Pは,
2263 同日午後2時30分頃,
2264 S地方裁判所裁判官に対して,
2265 甲につき後記【被疑事
2266 実】で勾留請求した。
2267
2268 S地方裁判所裁判官Jは,
2269 同日午後4時頃,
2270 甲に対する勾留質問を行っ
2271 たところ,
2272 甲は被疑事実について「検察官に対して話したとおり,
2273 事件のことについて話すつ
2274 もりはない。
2275
2276 」と供述した。
2277
2278
2279
2280 【被疑事実】
2281 被疑者は,
2282 平成25年2月26日午後11時55分頃,
2283 S県T市内所在のQマンション405
2284 号室V方において,
2285 同人が所有するデジタルカメラ1台(時価30万円相当)を窃取したもので
2286 ある。
2287
2288
2289 - 12 -
2290
2291 〔設
2292
2293 問〕
2294 上記【事例】の事実を前提として,
2295 本件勾留請求を受けた裁判官Jは,
2296 甲を勾留すべきか。
2297
2298
2299
2300 連条文を挙げながら,
2301 上記事例に即して具体的に論じなさい。
2302
2303 ただし,
2304 勾留請求に係る時間的制
2305 限,
2306 逮捕前置の遵守及び先行する逮捕の適法性については論じる必要はない。
2307
2308
2309 なお,
2310 甲が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由について論じるに当たっては,
2311 具体的な
2312 事実を摘示するのみならず,
2313 上記理由の有無の判断に際してそれらの事実がどのような意味を持
2314 つかについても説明しなさい。
2315
2316
2317
2318 - 13 -
2319
2320