1 平成25年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨
2 [憲
3
4 法]
5
6 202*年時点では,
7 衆議院小選挙区選出議員における,
8 いわゆる「世襲」議員の数が増加す
9 る傾向にある。
10
11 「世襲」議員とは,
12 例えば,
13 国会議員が引退する際に,
14 その子が親と同一の選挙区
15 から立候補して当選した場合の当選議員をいう。
16
17 「世襲」議員には,
18 立候補時において,
19 一般の新
20 人候補者に比べて,
21 後援会組織,
22 選挙資金,
23 知名度等のメリットがあると言われている。
24
25 このよ
26 うな「世襲」議員については賛否両論があるが,
27 政党A及び政党Bでは,
28 世論の動向も踏まえて
29 何らかの対応策を採ることとし,
30 立候補が制限される世襲の範囲や対象となる選挙区の範囲等に
31 ついて検討が行われた。
32
33 その結果,
34 政党Aから甲案が,
35 政党Bから乙案が,
36 それぞれ法律案とし
37 て国会に提出された。
38
39
40 甲乙各法律案の内容は,
41 以下のとおりである。
42
43
44 (甲案)政党は,
45 その政党に所属する衆議院議員の配偶者及び三親等内の親族が,
46 次の衆議
47 院議員選挙において,
48 当該議員が選出されている小選挙区及びその小選挙区を含む都
49 道府県内の他の小選挙区から立候補する場合は,
50 その者を当該政党の公認候補とする
51 ことができない。
52
53
54 (乙案)衆議院議員の配偶者及び三親等内の親族は,
55 次の衆議院議員選挙において,
56 当該議
57 員が選出されている小選挙区及びその小選挙区を含む都道府県内の他の小選挙区から
58 立候補することができない。
59
60
61 政党Cに所属する衆議院議員Dは,
62 次の衆議院議員選挙では自らは引退した上で,
63 長男を政党
64 Cの公認候補として出馬させようとして,
65 その準備を着々と進めている。
66
67 Dは,
68 甲案及び乙案の
69 いずれにも反対である。
70
71 Dは,
72 甲案にも乙案にも憲法上の問題があると考えている。
73
74
75 〔設
76
77 問〕
78 Dの立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,
79
80
81 なた自身の見解を述べなさい。
82
83
84
85 (出題趣旨)
86 本問は,
87 いわゆる世襲議員に関する立候補の自由の制限をめぐる問題である。
88
89
90 案は一定の要件の下で政党の公認候補とすることを禁止し,
91 乙案は一定の要件の下
92 で立候補自体を禁止している。
93
94
95 まず,
96 甲案と乙案によって,
97 どのような権利・自由が制約されるのかを明らかに
98 する必要がある。
99
100 そこでは,
101 甲案と乙案とで,
102 共通する問題と,
103 それぞれに特有の
104 問題とがある。
105
106 その上で,
107 被選挙権及び立候補の自由の憲法上の位置付けに関する
108 判例及び主要な学説を前提として,
109 世襲を理由とした別異の取扱いの合憲性が問題
110 となる。
111
112 そこでは,
113 選挙権・被選挙権及び立候補の自由,
114 そして平等に関する基礎
115 理論の正確な理解に基づいて,
116 D側及び法案提出側からの各主張の対立点を明確に
117 することが求められている。
118
119 さらに,
120 いわゆる世襲議員の功罪に関する一般的な指
121 摘,
122 立候補の制限と選挙に求められる公平さとの関係,
123 立候補の制限と選挙民によ
124 る選択との関係等に関する対立点を明確にする。
125
126 また,
127 甲案に関しては,
128 とりわけ
129
130 政党がその公認候補を自由に選定・決定するという政党の自律権に関し,
131 検討する
132 ことが求められよう。
133
134
135 そして,
136 それぞれの対立点に関して,
137 一定の説得力のある理由を付して自己の結
138 論を導き出すことが求められている。
139
140
141
142 [行政法]
143 A市は,
144 景観法(以下「法」という。
145
146 )に基づく事務を処理する地方公共団体(景観行政団体)
147 であり,
148 市の全域について景観計画(以下「本件計画」という。
149
150 )を定めている。
151
152 本件計画には,
153
154 A市の臨海部の建築物に係る形態意匠の制限として,
155 「水域に面した外壁の幅は,
156 原則として50
157 メートル以内とし,
158 外壁による圧迫感の軽減を図る。
159
160 」と定められている。
161
162 事業者Bは,
163 A市の臨
164 海部に,
165 水域に面した外壁の幅が70メートルのマンション(以下「本件マンション」という。
166
167
168 を建築する計画を立て,
169 2013年7月10日に,
170 A市長に対し法第16条第1項による届出を
171 行った。
172
173 本件マンションの建築は,
174 法第17条第1項にいう特定届出対象行為にも該当する。
175
176
177 かし,
178 本件マンションの建築予定地の隣に建っているマンションに居住するCは,
179 本件マンショ
180 ンの建築は本件計画に違反し良好な景観を破壊するものと考えた。
181
182 Cは,
183 本件マンションの建築
184 を本件計画に適合させるためには,
185 水域に面した外壁の幅が50メートル以内になるように本件
186 マンションの設計を変更させることが不可欠であると考え,
187 法及び行政事件訴訟法による法的手
188 段を採ることができないか,
189 弁護士Dに相談した。
190
191 Cから同月14日の時点で相談を受けたDの
192 立場に立って,
193 以下の設問に解答しなさい。
194
195
196 なお,
197 法の抜粋を資料として掲げるので,
198 適宜参照しなさい。
199
200
201 〔設問1〕
202 Cが,
203 本件計画に適合するように本件マンションの設計を変更させるという目的を実現する
204 には,
205 法及び行政事件訴訟法によりどのような法的手段を採ることが必要か。
206
207 法的手段を具体
208 的に示すとともに,
209 当該法的手段を採ることが必要な理由を,
210 これらの法律の定めを踏まえて
211 説明しなさい。
212
213
214 〔設問2〕
215 〔設問1〕の法的手段について,
216 法及び行政事件訴訟法を適用する上で問題となる論点のう
217 ち,
218 訴訟要件の論点に絞って検討しなさい。
219
220
221
222 【資料】景観法(平成16年法律第110号)(抜粋)
223 (目的)
224 第1条
225
226 この法律は,
227 我が国の都市,
228 農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため,
229 景観計
230
231 画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより,
232 美しく風格のある国土の形成,
233 潤いのある豊
234 かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り,
235 もって国民生活の向上並びに国
236 民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。
237
238
239 (基本理念)
240 第2条
241
242 良好な景観は,
243 美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠な
244
245 ものであることにかんがみ,
246 国民共通の資産として,
247 現在及び将来の国民がその恵沢を享受できる
248 よう,
249 その整備及び保全が図られなければならない。
250
251
252 2〜5
253
254 (略)
255
256 (住民の責務)
257 第6条
258
259 住民は,
260 基本理念にのっとり,
261 良好な景観の形成に関する理解を深め,
262 良好な景観の形成に
263
264 積極的な役割を果たすよう努めるとともに,
265 国又は地方公共団体が実施する良好な景観の形成に関
266 する施策に協力しなければならない。
267
268
269
270 (景観計画)
271 第8条
272
273 景観行政団体は,
274 都市,
275 農山漁村その他市街地又は集落を形成している地域及びこれ
276
277 と一体となって景観を形成している地域における次の各号のいずれかに該当する土地(中略)
278 の区域について,
279 良好な景観の形成に関する計画(以下「景観計画」という。
280
281 )を定めること
282 ができる。
283
284
285 一〜五
286
287 (略)
288
289 2〜11
290
291 (略)
292
293 (届出及び勧告等)
294 第16条
295
296 景観計画区域内において,
297 次に掲げる行為をしようとする者は,
298 あらかじめ,
299
300 (中略)
301
302 行為の種類,
303 場所,
304 設計又は施行方法,
305 着手予定日その他国土交通省令で定める事項を景観
306 行政団体の長に届け出なければならない。
307
308
309
310
311 建築物の新築(以下略)
312
313 二〜四
314 2〜7
315
316 (略)
317 (略)
318
319 (変更命令等)
320 第17条
321
322 景観行政団体の長は,
323 良好な景観の形成のために必要があると認めるときは,
324 特定
325
326 届出対象行為(前条第1項第1号又は第2号の届出を要する行為のうち,
327 当該景観行政団体
328 の条例で定めるものをいう。
329
330 (中略))について,
331 景観計画に定められた建築物又は工作物の
332 形態意匠の制限に適合しないものをしようとする者又はした者に対し,
333 当該制限に適合させ
334 るため必要な限度において,
335 当該行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを命
336 ずることができる。
337
338 (以下略)
339
340
341 前項の処分は,
342 前条第1項又は第2項の届出をした者に対しては,
343 当該届出があった日か
344
345 ら30日以内に限り,
346 することができる。
347
348
349 3〜9
350
351 (略)
352
353 (出題趣旨)
354 本問は,
355 事案に即して,
356 また関係行政法規を踏まえて,
357 行政訴訟についての基本
358
359 的な知識及び理解を運用する基本的な能力を試す趣旨の問題である。
360
361 具体的には,
362
363 マンションの建設計画に対し近隣住民が景観計画の遵守を求めるための行政事件訴
364 訟法上の手段について問うものである。
365
366 景観法による変更命令の期間制限に照らし
367 て,
368 実際上仮の義務付けの申立てが必要なこと,
369 及び,
370 当該申立てを行うには非申
371 請型(直接型)義務付け訴訟の提起が必要なことを説き,
372 申立て及び請求の趣旨を
373 具体的に示した上で,
374 原告適格を中心とする訴訟要件の論点について,
375 景観法の趣
376 旨及び景観という利益の性質に即して論じることが求められる。
377
378
379
380 [民法]
381 次の文章を読んで,
382 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
383
384
385 【事実】
386 1.Aは,
387 太陽光発電パネル(以下「パネル」という。
388
389 )の部品を製造し販売することを事業とす
390 る株式会社である。
391
392 工場設備の刷新のための資金を必要としていたAは,
393 平成25年1月11
394 日,
395 Bから,
396 利息年5%,
397 毎月末日に元金100万円及び利息を支払うとの条件で,
398 1200
399 万円の融資を受けると共に,
400 その担保として,
401 パネルの部品の製造及び販売に係る代金債権で
402 あって,
403 現在有しているもの及び今後1年の間に有することとなるもの一切を,
404 Bに譲渡した。
405
406
407 A及びBは,
408 融資金の返済が滞るまでは上記代金債権をAのみが取り立てることができること
409 のほか,
410 Aが融資金の返済を一度でも怠れば,
411 BがAに対して通知をすることによりAの上記
412 代金債権に係る取立権限を喪失させることができることも,
413 併せて合意した。
414
415
416 2.Aは,
417 平成25年3月1日,
418 Cとの間で,
419 パネルの部品を100万円で製造して納品する旨
420 の契約を締結した。
421
422 代金は同年5月14日払いとした。
423
424 Aは,
425 上記部品を製造し,
426 同年3月1
427 2日,
428 Cに納品した(以下,
429 この契約に基づくAのCに対する代金債権を「甲債権」という。
430
431 )。
432
433
434 Aは,
435 同月25日,
436 Dとの間で,
437 甲債権に係る債務をDが引き受け,
438 これによりCを当該債務
439 から免責させる旨の合意をした。
440
441
442 3.Aは,
443 平成25年3月5日,
444 Eとの間で,
445 パネルの部品を150万円で製造して納品する旨
446 の契約を締結した。
447
448 代金は同年5月14日払いとした。
449
450 Aは,
451 上記部品を製造し,
452 同年3月2
453 6日,
454 Eに納品した(以下,
455 この契約に基づくAのEに対する代金債権を「乙債権」という。
456
457 )。
458
459
460 乙債権については,
461 Eからの要請を受けて,
462 上記契約を締結した同月5日,
463 AE間で譲渡禁止
464 の特約がされた。
465
466 Aは,
467 Bに対してこの旨を同月5日到達の内容証明郵便で通知した。
468
469
470 4.その直後,
471 Aは,
472 大口取引先の倒産のあおりを受けて資金繰りに窮するようになり,
473 平成2
474 5年4月末日に予定されていたBへの返済が滞った。
475
476
477 5.Aの債権者であるFは,
478 平成25年5月1日,
479 Aを債務者,
480 Cを第三債務者として甲債権の
481 差押命令を申し立て,
482 同日,
483 差押命令を得た。
484
485 そして,
486 その差押命令は同月2日にCに送達さ
487 れた。
488
489
490 6.Bは,
491 平成25年5月7日,
492 Aに対し,
493 同年1月11日の合意に基づき取立権限を喪失させ
494 る旨を同年5月7日到達の内容証明郵便で通知した。
495
496 Aは,
497 同年5月7日,
498 D及びEに対し,
499
500 甲債権及び乙債権をBに譲渡したので,
501 これらの債権についてはBに対して弁済されたい旨を,
502
503 同月7日到達の内容証明郵便で通知した。
504
505
506 〔設問1〕
507 (1)
508
509 【事実】1の下線を付した契約は有効であるか否か,
510 有効であるとしたならば,
511 Bは甲債権
512 をいつの時点で取得するかを検討しなさい。
513
514
515
516 (2)
517
518 Cは,
519 平成25年5月14日,
520 Fから甲債権の支払を求められた。
521
522 この場合において,
523 Cの
524 立場に立ち,
525 その支払を拒絶する論拠を示しなさい。
526
527
528
529 〔設問2〕
530 Eは,
531 平成25年5月14日,
532 Bから乙債権の支払を求められた。
533
534 この請求に対し,
535 Eは,
536 【事
537 実】3の譲渡禁止特約をもって対抗することができるか。
538
539 譲渡禁止特約の意義を踏まえ,
540 かつ,
541
542 Bが乙債権を取得した時期に留意しつつ,
543 理由を付して論じなさい。
544
545
546
547 (出題趣旨)
548 設問1のうち,
549 小問1は,
550 将来債権譲渡が原則として有効であることを踏まえ,
551
552 担保目的でされた将来債権の譲渡契約の結果,
553 債権譲受人が将来債権をいつの時点
554 で取得したのかについて,
555 動産譲渡担保・不動産譲渡担保と異なる債権譲渡担保の
556 特性を意識しながら理論的に説明をすることができる能力を試すものである。
557
558 小問
559 2は,
560 担保目的での将来債権譲渡がされた後に債権者・引受人間でされた免責的債
561 務引受の効力及び対抗力に留意しつつ,
562 譲渡債権について差押債権者が有する地位
563 を,
564 事実に即して論じさせるものである。
565
566 また,
567 設問2は,
568 将来債権譲渡を目的と
569 する契約が締結された後に譲渡債権に付された譲渡禁止特約をもって債権譲受人に
570 対抗することができるか否かを,
571 譲渡禁止特約に関する民法第466条第2項の理
572 解を踏まえ,
573 債権譲受人の地位及び債務者の地位に結び付けられた利益を考慮に入
574 れつつ理論的に説明することができる能力を試すものである。
575
576
577
578 [商
579
580 法]
581
582 次の文章を読んで,
583 後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
584
585
586 1.X株式会社(以下「X社」という。
587
588 )は,
589 日本国内において不動産の開発及び販売等を行う監
590 査役会設置会社であり,
591 金融商品取引所にその発行する株式を上場している。
592
593
594 2.Y株式会社(以下「Y社」という。
595
596 )は,
597 日本国内において新築マンションの企画及び販売等
598 を行う取締役会設置会社であり,
599 監査役を置いている。
600
601 Y社が発行する株式は普通株式のみで
602 あり,
603 その譲渡による取得にはY社の承認を要するものとされている。
604
605
606 Y社の発行済株式のうち,
607 75%はX社及びその子会社(以下,
608 X社を含め「Xグループ」
609 という。
610
611 )が,
612 15%はY社の取締役であるAが,
613 10%は関東地方を中心に住居用の中古不動
614 産の販売等を行うZ株式会社(以下「Z社」という。
615
616 )がそれぞれ保有している。
617
618 なお,
619 Z社の
620 発行済株式の67%はAが保有し,
621 同社の取締役はA及びAの親族のみである。
622
623
624 3.X社は,
625 平成23年9月,
626 Y社の行う事業をXグループ内の他社に統合する方向で検討を始
627 め,
628 その後,
629 Aに対し,
630 A及びZ社が保有するY社株式をX社に売却するよう求めた。
631
632 しかし,
633
634 Aは,
635 Y社との資本関係が失われることによって生じ得るZ社の事業展開への不安を訴えて回
636 答を留保し,
637 その後のX社による説得にも応じなかった。
638
639
640 4.X社は,
641 平成24年6月1日,
642 取締役会を開催し,
643 同年9月1日をもってY社をX社の完全
644 子会社とする旨の株式交換契約(以下「本件株式交換契約」という。
645
646 )を締結することを適法に
647 決定した。
648
649 また,
650 Y社でも,
651 同年6月1日,
652 取締役会を開催し,
653 本件株式交換契約を締結する
654 ことを適法に決定した。
655
656
657 これらの決定を受けて,
658 X社とY社との間で本件株式交換契約が正式に締結された。
659
660 本件株
661 式交換契約においては,
662 Y社株主に対しY社株式10株につきX社株式1株を交付する,
663 すな
664 わち,
665 X社とY社との間の株式交換比率(以下「本件交換比率」という。
666
667 )を1対0.1とする
668 旨が定められた。
669
670
671 5.X社では,
672 同月29日,
673 定時株主総会が開催され,
674 本件株式交換契約の承認に関する議案が
675 適法に可決された。
676
677
678 6.Y社でも,
679 同日,
680 定時株主総会(以下「本件総会」という。
681
682 )が適法な招集手続に基づき開催
683 された。
684
685 本件総会には,
686 本件株式交換契約の承認に関する議案及びAの取締役からの解任に関
687 する議案が提出された。
688
689
690 Aは,
691 本件総会の議場において,
692 株主としての地位に基づき,
693 議長である代表取締役Bに対
694 し,
695 自らが取締役から解任される理由について質問をした。
696
697 これに対してBは,
698 「それはあなた
699 もわかっているはずであり,
700 答える必要はない。
701
702 」と回答し,
703 質疑を打ち切った。
704
705 A及びZ社は,
706
707 本件総会に提出された上記各議案に反対したが,
708 いずれもXグループ各社の賛成により可決さ
709 れた。
710
711
712 7.Aは,
713 同年7月,
714 本件交換比率の妥当性について独自に検討し,
715 算定を行うこととした。
716
717
718 の結果,
719 同年8月,
720 Aとしては,
721 Y社株主に対しY社株式10株につきX社株式3株を交付す
722 るのが妥当であるとの結論に至った。
723
724
725 〔設問1〕
726 Aは,
727 Aを取締役から解任する旨の本件総会の決議の効力を争うことができるか。
728
729
730 〔設問2〕
731 Aは,
732 Y社に対し,
733 本件交換比率の妥当性を検討するためであることを明らかにして,
734 本件
735
736 交換比率をY社が算定するために使用したY社の一切の会計帳簿及びこれに関する資料の閲覧
737 を請求した。
738
739 Y社は,
740 この請求を拒むことができるか。
741
742 なお,
743 Y社の会計帳簿及びこれに関す
744 る資料は書面をもって作成されているものとする。
745
746
747 〔設問3〕
748 本件交換比率を不当と考えるAが,
749
750 @
751
752 本件株式交換契約に基づく株式交換の効力発生前に会社法上採ることができる手段
753
754 A
755
756 本件株式交換契約に基づく株式交換の効力発生後に会社法上採ることができる手段
757
758 として,
759 それぞれどのようなものが考えられるか。
760
761
762
763 (出題趣旨)
764 本問は,
765 親子会社間で行われる株式交換について,
766 子会社の株主であり取締役で
767 もある者が反対している場合において,
768 @株主の質問を打ち切ってされた当該取締
769 役を解任する株主総会決議の効力,
770 A株式交換比率の妥当性を検討するためにされ
771 る会計帳簿閲覧請求の可否,
772 B株式交換比率の不当を主張する株主が救済を受ける
773 方法を問うものである。
774
775
776 解答に際しては,
777 @会社法第314条に基づく説明義務の違反の有無及び株主総
778 会決議の効力を争うことの可否,
779 A同法第433条第1項に基づき会計帳簿閲覧請
780 求をする場合における会計帳簿の特定性及び同条第2項第3号に定める拒絶事由(競
781 争者による請求)の有無,
782 B株式交換比率の不当を理由として株式交換を事前に差
783 し止めることの可否及び株式交換契約を承認する株主総会決議の効力を争うことの
784 可否,
785 同法第785条に基づく株式買取請求の可否,
786 同法第828条第1項第11
787 号に定める株式交換無効の訴えの無効事由の有無並びに同法第423条第1項又は
788 第429条第1項に基づく取締役の責任追及の可否について,
789 正しく論述すること
790 が求められる。
791
792
793
794 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,
795 7:3)
796 次の文章を読んで,
797 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
798
799
800 【事例】
801 Aは,
802 平成23年11月10日,
803 Bに対し,
804 弁済期を平成24年11月10日として,
805 1000
806 万円を貸し付けた(以下,
807 この貸付けに基づく貸金債権を「甲債権」という。
808
809 )。
810
811 しかし,
812 Bは,
813
814 済期にこれを返済しなかった。
815
816
817 そこで,
818 AがBの現在の財産状況を調査したところ,
819 Bの営む店舗の経営状態が悪化し,
820 甲債権
821 のほかにも,
822 多額の借入金や取引先に対する買掛金の合計1億円余りが弁済期を過ぎても未払とな
823 っていること,
824 Bの所有する不動産にはその評価額以上に抵当権が設定されており,
825 平成25年1
826 月31日を弁済期とする500万円の売掛金債権(以下「乙債権」という。
827
828 )をCに対して有する
829 ほか,
830 Bには見るべき資産がないことが判明した。
831
832
833 そこで,
834 平成25年2月25日,
835 Aは,
836 Bに代位して,
837 乙債権の支払を求める訴えをCに対して
838 提起した(以下,
839 この訴えに係る訴訟を「訴訟1」という。
840
841 )。
842
843
844 〔設問1〕((1)と(2)は,
845 独立した問題である。
846
847
848 (1)
849
850 Bは,
851 平成25年3月14日,
852 訴訟1に係る訴状の送達を受けたCから問い合わせを受けて,
853
854 訴訟1が第一審に係属中であることを知った。
855
856 Bは,
857 甲債権については,
858 平成24年12月1
859 0日にAから免除を受けたとしてその存在を争うとともに,
860 乙債権については,
861 自己に支払う
862 ようCに求めたいと考えている。
863
864
865
866
867 この場合,
868 Bは,
869 訴訟1において,
870 民事訴訟法上,
871 どのような手段を採ることができるか,
872
873 理由を付して述べなさい。
874
875
876
877
878
879 裁判所は,
880 審理の結果,
881 甲債権は存在せず,
882 乙債権は存在すると判断した場合,
883 どのよう
884 な判決をすべきか,
885 Aが提起した訴訟1に係る訴え及びアでBが採った手段のそれぞれにつ
886 いて説明しなさい。
887
888
889
890 (2)
891
892 Bが訴訟1の係属の事実を知らないうちに,
893 訴訟1について,
894 甲債権は存在すると認められ
895 るが,
896 乙債権が存在するとは認められないとして,
897 請求棄却判決がされ,
898 この第一審判決が確
899 定した。
900
901 その後,
902 Bが,
903 Cに対し,
904 乙債権の支払を求めて訴えを提起した(以下,
905 この訴えに
906 係る訴訟を「訴訟2」という。
907
908 )ところ,
909 訴訟2の過程において,
910 訴訟1についての上記確定
911 判決の存在が明らかになった。
912
913 この場合において,
914 訴訟2の受訴裁判所はどのような判決をす
915 べきか,
916 当該受訴裁判所が,
917 審理の結果,
918 訴訟1の口頭弁論終結時において甲債権が存在して
919 いたと判断したときと,
920 これが存在していなかったと判断したときとに分けて説明しなさい。
921
922
923
924 【事例(続き)】(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
925
926
927 Dは,
928 Bに対して,
929 平成25年2月10日を弁済期とする1500万円の売掛金債権を有してい
930 るが,
931 同年4月半ば,
932 Dの取引先でCとも取引関係があるEから,
933 AのCに対する訴訟1が第一審
934 に係属中であると知らされた。
935
936
937 そこで,
938 Dは,
939 顧問弁護士と相談した結果,
940 Aが甲債権を有することを争う必要はないが,
941 この
942 ままではAが乙債権の弁済による利益を独占し,
943 自らが弁済を受ける機会を失ってしまうこととな
944 るので,
945 それを避けたいと考えるに至った。
946
947
948 〔設問2〕
949 この場合,
950 Dは,
951 訴訟1において,
952 民事訴訟法上,
953 どのような手段を採ることができるか,
954
955
956 由を付して述べなさい。
957
958
959
960 (出題趣旨)
961 本問は,
962 債権者代位訴訟の基本的理解及びそれを踏まえた訴訟参加の基本的理解
963 を問うものである。
964
965
966 設問1(1)アは,
967 債権者Aが債権者代位訴訟を提起した場合の債務者Bの当事者
968 適格の有無等の検討を前提に,
969 Bがする訴訟参加の形態を問うものである。
970
971 設問1
972 (1)イでは,
973 債権者代位訴訟において債権者Aに当事者適格が認められるためには
974 甲債権が存在すると認められることが必要であること,
975 設問1(2)では,
976 これに加
977 えて,
978 債権者代位訴訟の既判力が債務者Bに及ぶかどうかの検討を踏まえて,
979 それ
980 ぞれの事例について,
981 裁判所がすべき判決内容を論じることが求められる。
982
983 また,
984
985 設問2は,
986 債権者Aが提起した債権者代位訴訟に係る判決の効力が,
987 債務者Bの他
988 の債権者であるDに及ぶかどうかの検討を前提に,
989 Dがする訴訟参加の形態を問う
990 ものである。
991
992
993
994 [刑
995
996 法]
997
998 以下の事例に基づき,
999 Vに現金50万円を振り込ませた行為及びD銀行E支店ATMコーナーに
1000 おいて,
1001 現金自動預払機から現金50万円を引き出そうとした行為について,
1002 甲,
1003 乙及び丙の罪責
1004 を論じなさい(特別法違反の点を除く。
1005
1006 )。
1007
1008
1009
1010
1011 甲は,
1012 友人である乙に誘われ,
1013 以下のような犯行を繰り返していた。
1014
1015
1016 @乙は,
1017 犯行を行うための部屋,
1018 携帯電話並びに他人名義の預金口座の預金通帳,
1019 キャッシ
1020 ュカード及びその暗証番号情報を準備する。
1021
1022 A乙は,
1023 犯行当日,
1024 甲に,
1025 その日の犯行に用いる
1026 他人名義の預金口座の口座番号や名義人名を連絡し,
1027 乙が雇った預金引出し役に,
1028 同口座のキ
1029 ャッシュカードを交付して暗証番号を教える。
1030
1031 B甲は,
1032 乙の準備した部屋から,
1033 乙の準備した
1034 携帯電話を用いて電話会社発行の電話帳から抽出した相手に電話をかけ,
1035 その息子を装い,
1036
1037 通事故を起こして示談金を要求されているなどと嘘を言い,
1038 これを信じた相手に,
1039 その日乙が
1040 指定した預金口座に現金を振り込ませた後,
1041 振り込ませた金額を乙に連絡する。
1042
1043 C乙は,
1044 振り
1045 込ませた金額を預金引出し役に連絡し,
1046 預金引出し役は,
1047 上記キャッシュカードを使って上記
1048 預金口座に振り込まれた現金を引き出し,
1049 これを乙に手渡す。
1050
1051 D引き出した現金の7割を乙が,
1052
1053 3割を甲がそれぞれ取得し,
1054 預金引出し役は,
1055 1万円の日当を乙から受け取る。
1056
1057
1058
1059
1060
1061 甲は,
1062 分け前が少ないことに不満を抱き,
1063 乙に無断で,
1064 自分で準備した他人名義の預金口座
1065 に上記同様の手段で現金を振り込ませて,
1066 その全額を自分のものにしようと計画した。
1067
1068 そこで,
1069
1070 甲は,
1071 インターネットを通じて,
1072 他人であるAが既に開設していたA名義の預金口座の預金通
1073 帳,
1074 キャッシュカード及びその暗証番号情報を購入した。
1075
1076
1077
1078
1079
1080 某日,
1081 甲は,
1082 上記1の犯行を繰り返す合間に,
1083 上記2の計画に基づき,
1084 乙の準備した部屋か
1085 ら,
1086 乙の準備した携帯電話を用いて,
1087 上記電話帳から新たに抽出したV方に電話をかけ,
1088 Vに
1089 対し,
1090 その息子を装い,
1091 「母さん。
1092
1093 俺だよ。
1094
1095 どうしよう。
1096
1097 俺,
1098 お酒を飲んで車を運転して,
1099
1100 通事故を起こしちゃった。
1101
1102 相手のAが,
1103 『示談金50万円をすぐに払わなければ事故のことを
1104 警察に言う。
1105
1106 』って言うんだよ。
1107
1108 警察に言われたら逮捕されてしまう。
1109
1110 示談金を払えば逮捕さ
1111 れずに済む。
1112
1113 母さん,
1114 頼む,
1115 助けてほしい。
1116
1117 」などと嘘を言った。
1118
1119 Vは,
1120 電話の相手が息子で
1121 あり,
1122 50万円をAに払わなければ,
1123 息子が逮捕されてしまうと信じ,
1124 50万円をすぐに準備
1125 する旨答えた。
1126
1127 甲は,
1128 Vに対し,
1129 上記A名義の預金口座の口座番号を教え,
1130 50万円をすぐに
1131 振り込んで上記携帯電話に連絡するように言った。
1132
1133 Vは,
1134 自宅近くのB銀行C支店において,
1135
1136 自己の所有する現金50万円を上記A名義の預金口座に振り込み,
1137 上記携帯電話に電話をかけ,
1138
1139 甲に振込みを済ませた旨連絡した。
1140
1141
1142
1143
1144
1145 上記振込みの1時間後,
1146 たまたまVに息子から電話があり,
1147 Vは,
1148 甲の言ったことが嘘であ
1149 ると気付き,
1150 警察に被害を申告した。
1151
1152 警察の依頼により,
1153 上記振込みの3時間後,
1154 上記A名義
1155 の預金口座の取引の停止措置が講じられた。
1156
1157 その時点で,
1158 Vが振り込んだ50万円は,
1159 同口座
1160 から引き出されていなかった。
1161
1162
1163
1164
1165
1166 甲は,
1167 上記振込みの2時間後,
1168 友人である丙に,
1169 上記2及び3の事情を明かした上,
1170 上記A
1171 名義の預金口座から現金50万円を引き出してくれれば報酬として5万円を払う旨持ちかけ,
1172
1173 丙は,
1174 金欲しさからこれを引き受けた。
1175
1176 甲は,
1177 丙に,
1178 上記A名義の預金口座のキャッシュカー
1179 ドを交付して暗証番号を教え,
1180 丙は,
1181 上記振込みの3時間10分後,
1182 現金50万円を引き出す
1183 ため,
1184 D銀行E支店(支店長F)のATMコーナーにおいて,
1185 現金自動預払機に上記キャッシ
1186 ュカードを挿入して暗証番号を入力したが,
1187 既に同口座の取引の停止措置が講じられていたた
1188 め,
1189 現金を引き出すことができなかった。
1190
1191 なお,
1192 金融機関は,
1193 いずれも,
1194 預金取引に関する約
1195 款等において,
1196 預金口座の譲渡を禁止し,
1197 これを預金口座の取引停止事由としており,
1198 譲渡さ
1199
1200 れた預金口座を利用した取引に応じることはなく,
1201 甲,
1202 乙及び丙も,
1203 これを知っていた。
1204
1205
1206
1207 (出題趣旨)
1208 本問は,
1209 乙と共に振り込め詐欺を繰り返していた甲が,
1210 利益を独占するため,
1211
1212 に無断で,
1213 それまでと同様の方法で別の被害者をだまし,
1214 現金50万円を甲が予め
1215 キャッシュカード等を入手していた他人名義の預金口座に振り込ませることに成功
1216 し,
1217 甲からの依頼を受けた丙が,
1218 同口座から現金を引き出そうとしたが,
1219 直前に同
1220 口座が凍結されたため引出しが失敗に終わったという事案を素材として,
1221 事案を的
1222 確に分析する能力を問うとともに,
1223 詐欺罪の客体,
1224 実行行為及びその既遂時期,
1225
1226 謀共同正犯の成立要件,
1227 窃盗未遂罪の成否等に関する基本的理解とその事例への当
1228 てはめが論理的一貫性を保って行われているかを問うものである。
1229
1230
1231
1232 [刑事訴訟法]
1233 次の記述を読んで,
1234 後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1235
1236
1237
1238 甲は,
1239 傷害罪の共同正犯として,
1240
1241 「被告人は,
1242 乙と共謀の上,
1243 平成25年3月14日午前1時頃,
1244
1245 L市M町1丁目2番3号先路上において,
1246 Vに対し,
1247 頭部を拳で殴打して転倒させた上,
1248 コンク
1249 リート製縁石にその頭部を多数回打ち付ける暴行を加え,
1250 よって,
1251 同人に加療期間不明の頭部打
1252 撲及び脳挫傷の傷害を負わせたものである。
1253
1254 」との公訴事実が記載された起訴状により,
1255 公訴を提
1256 起された。
1257
1258
1259 〔設問1〕
1260
1261 冒頭手続において,
1262 甲の弁護人から裁判長に対し,
1263 実行行為者が誰であるかを釈明するよう
1264 検察官に命じられたい旨の申出があった場合,
1265 裁判長はどうすべきか,
1266 論じなさい。
1267
1268
1269 〔設問2〕
1270
1271 冒頭手続において,
1272 検察官が,
1273 「実行行為者は乙のみである。
1274
1275 」と釈明した場合,
1276 裁判所が,
1277
1278 実行行為者を「甲又は乙あるいはその両名」と認定して有罪の判決をすることは許されるか。
1279
1280
1281 判決の内容及びそれに至る手続について,
1282 問題となり得る点を挙げて論じなさい。
1283
1284
1285
1286 (出題趣旨)
1287 本問は,
1288 共同正犯者2名による傷害被告事件について,
1289 冒頭手続において,
1290 弁護
1291 人から裁判長に対し,
1292 検察官に実行行為者を特定するよう求釈明されたい旨の申出
1293 があった場合の裁判長のとるべき措置,
1294 裁判所が検察官の釈明内容と異なる事実を
1295 認定して有罪判決をする場合の判決の内容,
1296 及び手続上の問題点を検討させること
1297 により,
1298 起訴状における訴因の明示,
1299 これと論理的に関連する訴因についての義務
1300 的求釈明の要否,
1301 これと論理的に関連する釈明内容と異なる事実を認定する場合の
1302 手続上の措置,
1303 および択一的認定の可否について,
1304 基本的な学識の有無及び具体的
1305 事案に対する応用力を試すものである。
1306
1307
1308
1309 [法律実務基礎科目(民事)]
1310 (〔設問1〕から〔設問5〕までの配点の割合は,
1311 12:5:8:17:8)
1312 司法試験予備試験用法文及び本問末尾添付の資料を適宜参照して,
1313 以下の各設問に答えなさい。
1314
1315
1316 〔設問1〕
1317 弁護士Pは,
1318 Xから次のような相談を受けた。
1319
1320
1321 【Xの相談内容】
1322 「私は,
1323 平成17年12月1日から「マンション甲」の301号室(以下「本件建物」とい
1324 います。
1325
1326 )を所有していたAから,
1327 平成24年9月3日,
1328 本件建物を代金500万円で買い受け
1329 (以下「本件売買契約」といいます。
1330
1331 ),
1332 同日,
1333 Aに代金500万円を支払い,
1334 本件建物の所有
1335 権移転登記を具備しました。
1336
1337
1338 本件建物には現在Yが居住していますが,
1339 Aの話によれば,
1340 Yが本件建物に居住するように
1341 なった経緯は次のとおりです。
1342
1343
1344 Aは,
1345 平成23年4月1日,
1346 Bに対し,
1347 本件建物を,
1348 賃貸期間を定めずに賃料1か月5万円
1349 とする賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といいます。
1350
1351 )を締結し,
1352 これに基づき,
1353 本件建物
1354 を引き渡しました。
1355
1356 ところが,
1357 Bは,
1358 平成24年4月2日,
1359 Bの息子であるYに対し,
1360 Aの承
1361 諾を得ずに,
1362 本件建物を,
1363 賃貸期間を定めずに賃料1か月5万円とする賃貸借契約(以下「本
1364 件転貸借契約」といいます。
1365
1366 )を締結し,
1367 これに基づき,
1368 本件建物を引き渡しました。
1369
1370 こうして,
1371
1372 Yが本件建物に居住するようになりました。
1373
1374
1375 そこで,
1376 Aは,
1377 同年7月16日,
1378 Bに対し,
1379 Aに無断で本件転貸借契約を締結したことを理
1380 由に,
1381 本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をし,
1382 数日後,
1383 Yに対し,
1384 本件建物の明渡しを
1385 求めました。
1386
1387 しかし,
1388 Yは,
1389 本件建物の明渡しを拒否し,
1390 本件建物に居住し続けています。
1391
1392
1393 このような次第ですので,
1394 私は,
1395 Yに対し,
1396 本件建物の明渡しを求めます。
1397
1398
1399 弁護士Pは,
1400 【Xの相談内容】を前提に,
1401 Xの訴訟代理人として,
1402 Yに対し,
1403 所有権に基づく返
1404 還請求権としての建物明渡請求権を訴訟物として,
1405 本件建物の明渡しを求める訴えを提起した。
1406
1407
1408 そして,
1409 弁護士Pは,
1410 その訴状において,
1411 請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1項)
1412 として,
1413 次の各事実を主張した(なお,
1414 以下では,
1415 これらの事実が請求を理由づける事実となる
1416 ことを前提に考えてよい。
1417
1418 )。
1419
1420
1421 @
1422
1423 Aは,
1424 平成23年4月1日当時,
1425 本件建物を所有していたところ,
1426 Xに対し,
1427 平成24年
1428 9月3日,
1429 本件建物を代金500万円で売ったとの事実
1430
1431 A
1432
1433 Yは,
1434 本件建物を占有しているとの事実
1435
1436 上記各事実が記載された訴状の副本を受け取ったYは,
1437 弁護士Qに相談をした。
1438
1439 Yの相談内容
1440 は次のとおりである。
1441
1442
1443 【Yの相談内容】
1444 「Aが平成23年4月1日当時本件建物を所有していたこと,
1445 AがXに対して平成24年9
1446 月3日に本件建物を代金500万円で売ったことは,
1447 Xの主張するとおりです。
1448
1449
1450 しかし,
1451 Aは,
1452 私の父であるBとの間で,
1453 平成23年4月1日,
1454 本件建物を,
1455 賃貸期間を定
1456 めずに賃料1か月5万円で賃貸し(本件賃貸借契約),
1457 同日,
1458 Bに対し,
1459 本件賃貸借契約に基づ
1460 き,
1461 本件建物を引き渡しました。
1462
1463 そして,
1464 本件賃貸借契約を締結する際,
1465 Aは,
1466 Bに対し,
1467
1468 件建物を転貸することを承諾すると約したところ(以下,
1469 この約定を「本件特約」といいます。
1470
1471 ),
1472
1473
1474 Bは,
1475 本件特約に基づき,
1476 私との間で,
1477 平成24年4月2日,
1478 本件建物を,
1479 賃貸期間を定めず
1480 に賃料1か月5万円で賃貸し(本件転貸借契約),
1481 同日,
1482 私に対し,
1483 本件転貸借契約に基づき,
1484
1485 本件建物を引き渡しました。
1486
1487 その後,
1488 私は,
1489 本件建物に居住しています。
1490
1491
1492 このような次第ですので,
1493 私にはXに本件建物を明け渡す義務はないと思います。
1494
1495
1496 そこで,
1497 弁護士Qは,
1498 答弁書において,
1499 Xの主張する請求を理由づける事実を認めた上で,
1500
1501 有権原の抗弁の抗弁事実として次の各事実を主張した。
1502
1503
1504 B
1505
1506 Aは,
1507 Bに対し,
1508 平成23年4月1日,
1509 本件建物を,
1510 期間の定めなく,
1511 賃料1か月5万円
1512 で賃貸したとの事実。
1513
1514
1515
1516 C
1517
1518 Aは,
1519 Bに対し,
1520 同日,
1521 Bの賃貸借契約に基づき,
1522 本件建物を引き渡したとの事実。
1523
1524
1525
1526 D
1527
1528 Bは,
1529 Yに対し,
1530 平成24年4月2日,
1531 本件建物を,
1532 期間の定めなく,
1533 賃料1か月5万円
1534 で賃貸したとの事実。
1535
1536
1537
1538 E
1539
1540 Bは,
1541 Yに対し,
1542 同日,
1543 Dの賃貸借契約に基づき,
1544 本件建物を引き渡したとの事実。
1545
1546
1547
1548 以上を前提に,
1549 以下の各問いに答えなさい。
1550
1551
1552 (1)
1553
1554 本件において上記Cの事実が占有権原の抗弁の抗弁事実として必要になる理由を説明しなさ
1555
1556 い。
1557
1558
1559 (2)
1560
1561 弁護士Qが主張する必要がある占有権原の抗弁の抗弁事実は,
1562 上記BからEまでの各事実だ
1563
1564 けで足りるか。
1565
1566 結論とその理由を説明しなさい。
1567
1568 ただし,
1569 本設問においては,
1570 本件転貸借契約
1571 締結の背信性の有無に関する事実を検討する必要はない。
1572
1573
1574 〔設問2〕
1575 平成24年11月1日の本件の第1回口頭弁論期日において,
1576 弁護士Qは,
1577 本件特約があった
1578 事実を立証するための証拠として,
1579 次のような賃貸借契約書(斜体部分は全て手書きである。
1580
1581
1582 下「本件契約書」という。
1583
1584 )を提出した。
1585
1586
1587 賃貸借契約書
1588
1589
1590 AはBに対し,
1591 本日から,
1592 Aが所有する「マンション甲」301号室を賃貸し,
1593 Bは
1594 これを賃借する。
1595
1596
1597
1598
1599
1600 賃料は1か月金5万円とし,
1601 Bは,
1602 毎月末日限り翌月分をAに支払うものとする。
1603
1604
1605
1606
1607
1608 本契約書に定めがない事項は,
1609 誠意をもって協議し,
1610 解決するものとする。
1611
1612
1613
1614 4 Aは,
1615 Bが上記建物を転貸することを承諾する。
1616
1617
1618 以上のとおり,
1619 契約が成立したので,
1620 本書を2通作成し,
1621 AB各1通を保有する。
1622
1623
1624 平成23年4月1日
1625
1626 A A印
1627 賃借人 B B印
1628 賃貸人
1629
1630 本件契約書について,
1631 弁護士PがXに第1回口頭弁論期日の前に確認したところ,
1632 Xの言い分
1633 は次のとおりであった。
1634
1635
1636 【Xの言い分】
1637 「Aに本件契約書を見せたところ,
1638 Aは次のとおり述べていました。
1639
1640
1641
1642 『本件契約書末尾の私の署名押印は,
1643 私がしたものです。
1644
1645 しかし,
1646 本件契約書に記載されて
1647 いる本件特約は,
1648 私が記載したものではありません。
1649
1650 本件特約は,
1651 B又はYが,
1652 後で書き加え
1653 たものだと思います。
1654
1655 』」
1656 そこで,
1657 弁護士Pは,
1658 第1回口頭弁論期日において,
1659 本件契約書の成立の真正を否認したが,
1660
1661 それに加え,
1662 本件特約がなかった事実を立証するための証拠の申出をすることを考えている。
1663
1664
1665 回期日までに,
1666 弁護士Pが申出を検討すべき証拠には,
1667 どのようなものが考えられるか。
1668
1669 その内
1670 容を簡潔に説明しなさい。
1671
1672 なお,
1673 本設問に解答するに当たっては,
1674 次の〔設問3〕のFの事実を
1675 前提にすること。
1676
1677
1678 〔設問3〕
1679 本件の第1回口頭弁論期日の1週間後,
1680 弁護士Qは,
1681 Yから次の事実を聞かされた。
1682
1683
1684 F
1685
1686 本件の第1回口頭弁論期日の翌日にBが死亡し,
1687 Yの母も半年前に死亡しており,
1688 Bの相
1689 続人は息子のYだけであるとの事実
1690
1691 これを前提に,
1692 次の各問いに答えなさい。
1693
1694
1695 (1)
1696
1697 上記Fの事実を踏まえると,
1698 弁護士Qが主張すべき占有権原の抗弁の内容はどのようなもの
1699
1700 になるか説明しなさい。
1701
1702 なお,
1703 当該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。
1704
1705
1706 (2)
1707
1708 弁護士Pは,
1709 (1)の占有権原の抗弁に対して,
1710 どのような再抗弁を主張することになるか。
1711
1712
1713
1714 その再抗弁の内容を端的に記載しなさい。
1715
1716 なお,
1717 当該再抗弁を構成する具体的事実を記載する
1718 必要はない。
1719
1720
1721 〔設問4〕
1722 本件においては,
1723 〔設問3〕の(1)の占有権原の抗弁及び(2)の再抗弁がいずれも適切に主張され
1724 るとともに,
1725 〔設問1〕の@からEまでの各事実及び〔設問3〕のFの事実は,
1726 全て当事者間に争
1727 いがなかった。
1728
1729 そして,
1730 証拠調べの結果,
1731 裁判所は,
1732 次の事実があったとの心証を形成した。
1733
1734
1735 【事実】
1736 本件建物は,
1737 乙市内に存在するマンションの一室で,
1738 間取りは1DKである。
1739
1740 Aは,
1741 平成1
1742 7年12月1日,
1743 本件建物を当時の所有者から賃貸目的で代金600万円で買い受け,
1744 その後,
1745
1746 第三者に賃料1か月8万円で賃貸していたが,
1747 平成22年4月1日から本件建物は空き家にな
1748 っていた。
1749
1750
1751 平成23年3月,
1752 Aは,
1753 長年の友人であるBから,
1754 転勤で乙市に単身赴任することになった
1755 との連絡を受けた。
1756
1757 AがBに転居先を確認したところ,
1758 まだ決まっていないとのことであった
1759 ため,
1760 Aは,
1761 Bに本件建物を紹介し,
1762 本件賃貸借契約が締結された。
1763
1764 なお,
1765 賃料は,
1766 友人とし
1767 てのAの計らいで,
1768 相場より安い1か月5万円とされた。
1769
1770
1771 平成24年3月,
1772 Bの長男であるY(当時25歳)が乙市内の丙会社に就職し,
1773 乙市内に居
1774 住することになった。
1775
1776 Yは,
1777 22歳で大学を卒業後,
1778 就職もせずに遊んでおり,
1779 平成24年3
1780 月当時,
1781 貸金業者から約150万円の借金をしていた。
1782
1783 そこで,
1784 Bは,
1785 Yが借金を少しでも返
1786 済しやすくするため,
1787 Aから安い賃料で借りていた本件建物をYに転貸し,
1788 自分は乙市内の別
1789 のマンションを借りて引っ越すことにした。
1790
1791 こうして,
1792 本件転貸借契約が締結された。
1793
1794
1795 本件転貸借契約後も,
1796 BはAに対し,
1797 約定どおり毎月の賃料を支払ってきたが,
1798 同年7月5
1799 日,
1800 本件転貸借契約の締結を知ったAは,
1801 同月16日,
1802 Bに対し,
1803 本件転貸借契約を締結した
1804 ことについて異議を述べた。
1805
1806 これに対し,
1807 Bは,
1808 転貸借契約を締結するのに賃貸人の承諾が必
1809 要であることは知らなかった,
1810 しかし,
1811 賃料は自分がAにきちんと支払っており,
1812 Aに迷惑は
1813
1814 かけていないのだから,
1815 いいではないかと述べた。
1816
1817 Aは,
1818 Bの開き直った態度に腹を立て,
1819
1820 金業者から借金をしているYは信用できない,
1821 Yに本件建物を無断で転貸したことを理由に本
1822 件賃貸借契約を解除すると述べた。
1823
1824 しかし,
1825 Bは,
1826 解除は納得できない,
1827 せっかくYが就職し
1828 て真面目に生活するようになったのに,
1829 解除は不当であると述べた。
1830
1831
1832 その後,
1833 Bは,
1834 無断転貸ではなかったことにするため,
1835 本件契約書に本件特約を書き加えた。
1836
1837
1838 そして,
1839 Bは,
1840 Yに対し,
1841 本件転貸借契約の締結についてはAの承諾を得ていると嘘をつき,
1842
1843 Yは,
1844 これを信じて本件建物に居住し続けた。
1845
1846
1847 この場合,
1848 裁判所は,
1849 平成24年7月16日にAがした本件賃貸借契約の解除の効力について,
1850
1851 どのような判断をすることになると考えられるか。
1852
1853 結論とその理由を説明しなさい。
1854
1855 なお,
1856 上記
1857 事実は全て当事者が口頭弁論期日において主張しているものとする。
1858
1859
1860 〔設問5〕
1861 弁護士Pは,
1862 平成15年頃から継続的にAの法律相談を受けてきた経緯があり,
1863 本件について
1864 も,
1865 Aが本件転貸借契約の締結を知った翌日の平成24年7月6日,
1866 Aから相談を受けていた。
1867
1868
1869 その際,
1870 弁護士Pは,
1871 Aに対し,
1872 本件建物を売却するのであれば,
1873 無断転貸を理由に本件賃貸借
1874 契約を解除してYから本件建物の明渡しを受けた後の方が本件建物を売却しやすいとアドバイス
1875 した。
1876
1877
1878 その後,
1879 Aは,
1880 無断転貸を理由に本件賃貸借契約を解除したが,
1881 Yから本件建物の明渡しを受
1882 ける前に本件建物をXに売却した。
1883
1884 その際,
1885 Aは,
1886 Xから,
1887 本件建物の明渡しをYに求めようと
1888 思うので弁護士を紹介してほしいと頼まれ,
1889 本件の経緯を知っている弁護士PをXに紹介した。
1890
1891
1892 弁護士Pは,
1893 Aとの関係から,
1894 Xの依頼を受けざるを得ない立場にあるが,
1895 受任するとした場
1896 合,
1897 受任するに当たってXに何を説明すべきか(弁護士報酬及び費用は除く。
1898
1899 )について述べなさ
1900 い。
1901
1902
1903
1904 弁護士職務基本規程(平成十六年十一月十日会規第七十号)
1905 目次
1906 第一章 基本倫理(第一条ー第八条)
1907 第二章 一般規律(第九条ー第十九条)
1908 第三章 依頼者との関係における規律
1909 第一節 通則(第二十条ー第二十六条)
1910 第二節 職務を行い得ない事件の規律(第二十七条・第二十八
1911 条)
1912 第三節 事件の受任時における規律(第二十九条ー第三十四条)
1913 第四節 事件の処理における規律(第三十五条ー第四十三条)
1914 第五節 事件の終了時における規律(第四十四条・第四十五条)
1915 第四章 刑事弁護における規律(第四十六条―第四十九条)
1916 第五章 組織内弁護士における規律(第五十条・第五十一条)
1917 第六章 事件の相手方との関係における規律(第五十二条ー第五
1918 十四条)
1919 第七章 共同事務所における規律(第五十五条―第六十条)
1920 第八章 弁護士法人における規律(第六十一条―第六十九条)
1921 第九章 他の弁護士との関係における規律(第七十条ー第七十三
1922 条)
1923 第十章 裁判の関係における規律(第七十四条―第七十七条)
1924 第十一章 弁護士会との関係における規律(第七十八条・第七十
1925 九条)
1926 第十二章 官公署との関係における規律(第八十条・第八十一条)
1927 第十三章 解釈適用指針(第八十二条)
1928 附則
1929 弁護士は、
1930 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
1931
1932
1933 その使命達成のために、
1934 弁護士には職務の自由と独立が要請され、
1935
1936 高度の自治が保障されている。
1937
1938
1939 弁護士は、
1940 その使命を自覚し、
1941 自らの行動を規律する社会的責任
1942 を負う。
1943
1944
1945 よって、
1946 ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに
1947 するため、
1948 弁護士職務基本規程を制定する。
1949
1950
1951 第一章 基本倫理
1952 (使命の自覚)
1953 第一条 弁護士は、
1954 その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現
1955 にあることを自覚し、
1956 その使命の達成に努める。
1957
1958
1959 (自由と独立)
1960 第二条 弁護士は、
1961 職務の自由と独立を重んじる。
1962
1963
1964 (弁護士自治)
1965 第三条 弁護士は、
1966 弁護士自治の意義を自覚し、
1967 その維持発展に努
1968
1969 める。
1970
1971
1972 (司法独立の擁護)
1973 第四条 弁護士は、
1974 司法の独立を擁護し、
1975 司法制度の健全な発展に
1976 寄与するように努める。
1977
1978
1979 (信義誠実)
1980 第五条 弁護士は、
1981 真実を尊重し、
1982 信義に従い、
1983 誠実かつ公正に職
1984 務を行うものとする。
1985
1986
1987 (名誉と信用)
1988 第六条 弁護士は、
1989 名誉を重んじ、
1990 信用を維持するとともに、
1991 廉潔
1992 を保持し、
1993 常に品位を高めるように努める。
1994
1995
1996 (研鑽)
1997 第七条 弁護士は、
1998 教養を深め、
1999 法令及び法律事務に精通するため、
2000
2001 研鑽に努める。
2002
2003
2004 (公益活動の実践)
2005 第八条 弁護士は、
2006 その使命にふさわしい公益活動に参加し、
2007 実践
2008 するように努める。
2009
2010
2011 第二章 一般規律
2012 (広告及び宣伝)
2013 第九条 弁護士は、
2014 広告又は宣伝をするときは、
2015 虚偽又は誤導にわ
2016 たる情報を提供してはならない。
2017
2018
2019 2 弁護士は、
2020 品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
2021
2022
2023 (依頼の勧誘等)
2024 第十条 弁護士は、
2025 不当な目的のため、
2026 又は品位を損なう方法によ
2027 り、
2028 事件の依頼を勧誘し、
2029 又は事件を誘発してはならない。
2030
2031
2032 (非弁護士との提携)
2033 第十一条 弁護士は、
2034 弁護士法第七十二条から第七十四条までの規
2035 定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当
2036 な理由のある者から依頼者の紹介を受け、
2037 これらの者を利用し、
2038
2039 又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
2040
2041
2042 (報酬分配の制限)
2043 第十二条 弁護士は、
2044 その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法
2045 人でない者との間で分配してはならない。
2046
2047 ただし、
2048 法令又は本会
2049 若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その
2050 他正当な理由がある場合は、
2051 この限りでない。
2052
2053
2054 (依頼者紹介の対価)
2055 第十三条 弁護士は、
2056 依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その
2057 他の対価を支払ってはならない。
2058
2059
2060 2 弁護士は、
2061 依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価
2062 を受け取ってはならない。
2063
2064
2065 (違法行為の助長)
2066 第十四条 弁護士は、
2067 詐欺的取引、
2068 暴力その他違法若しくは不正な
2069 行為を助長し、
2070 又はこれらの行為を利用してはならない。
2071
2072
2073
2074 (品位を損なう事業への参加)
2075 第十五条 弁護士は、
2076 公序良俗に反する事業その他品位を損なう事
2077 業を営み、
2078 若しくはこれに加わり、
2079 又はこれらの事業に自己の名
2080 義を利用させてはならない。
2081
2082
2083 (営利業務従事における品位保持)
2084 第十六条 弁護士は、
2085 自ら営利を目的とする業務を営むとき、
2086 又は
2087 営利を目的とする業務を営む者の取締役、
2088 執行役その他業務を執
2089 行する役員若しくは使用人となったときは、
2090 営利を求めることに
2091 とらわれて、
2092 品位を損なう行為をしてはならない。
2093
2094
2095 (係争目的物の譲受け)
2096 第十七条 弁護士は、
2097 係争の目的物を譲り受けてはならない。
2098
2099
2100 (事件記録の保管等)
2101 第十八条 弁護士は、
2102 事件記録を保管又は廃棄するに際しては、
2103
2104 密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなけれ
2105 ばならない。
2106
2107
2108 (事務職員等の指導監督)
2109 第十九条 弁護士は、
2110 事務職員、
2111 司法修習生その他の自らの職務に
2112 関与させた者が、
2113 その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に
2114 及び、
2115 又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、
2116
2117 若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければな
2118 らない。
2119
2120
2121 第三章 依頼者との関係における規律
2122 第一節 通則
2123 (依頼者との関係における自由と独立)
2124 第二十条 弁護士は、
2125 事件の受任及び処理に当たり、
2126 自由かつ独立
2127 の立場を保持するように努める。
2128
2129
2130 (正当な利益の実現)
2131 第二十一条 弁護士は、
2132 良心に従い、
2133 依頼者の権利及び正当な利益
2134 を実現するように努める。
2135
2136
2137 (依頼者の意思の尊重)
2138 第二十二条 弁護士は、
2139 委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重し
2140 て職務を行うものとする。
2141
2142
2143 2 弁護士は、
2144 依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に
2145 表明できないときは、
2146 適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に
2147 努める。
2148
2149
2150 (秘密の保持)
2151 第二十三条 弁護士は、
2152 正当な理由なく、
2153 依頼者について職務上知
2154 り得た秘密を他に漏らし、
2155 又は利用してはならない。
2156
2157
2158 (弁護士報酬)
2159 第二十四条 弁護士は、
2160 経済的利益、
2161 事案の難易、
2162 時間及び労力そ
2163 の他の事情に照らして、
2164 適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなけ
2165 ればならない。
2166
2167
2168
2169 (依頼者との金銭貸借等)
2170 第二十五条 弁護士は、
2171 特別の事情がない限り、
2172 依頼者と金銭の貸
2173 借をし、
2174 又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、
2175 若しく
2176 は依頼者の債務について保証をしてはならない。
2177
2178
2179 (依頼者との紛議)
2180 第二十六条 弁護士は、
2181 依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じな
2182 いように努め、
2183 紛議が生じたときは、
2184 所属弁護士会の紛議調停で
2185 解決するように努める。
2186
2187
2188 第二節 職務を行い得ない事件の規律
2189 (職務を行い得ない事件)
2190 第二十七条 弁護士は、
2191 次の各号のいずれかに該当する事件につい
2192 ては、
2193 その職務を行ってはならない。
2194
2195 ただし、
2196 第三号に掲げる事
2197 件については、
2198 受任している事件の依頼者が同意した場合は、
2199
2200 の限りでない。
2201
2202
2203 一 相手方の協議を受けて賛助し、
2204 又はその依頼を承諾した事件
2205 二 相手方の協議を受けた事件で、
2206 その協議の程度及び方法が信
2207 頼関係に基づくと認められるもの
2208 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
2209 四 公務員として職務上取り扱った事件
2210 五 仲裁、
2211 調停、
2212 和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手
2213 続実施者として取り扱った事件
2214 (同前)
2215 第二十八条 弁護士は、
2216 前条に規定するもののほか、
2217 次の各号のい
2218 ずれかに該当する事件については、
2219 その職務を行ってはならない。
2220
2221
2222 ただし、
2223 第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同
2224 意した場合、
2225 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方
2226 が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及
2227 び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、
2228 この限りでない。
2229
2230
2231 一 相手方が配偶者、
2232 直系血族、
2233 兄弟姉妹又は同居の親族である
2234 事件
2235 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
2236 を約している者を相手方とする事件
2237 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
2238 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
2239 第三節 事件の受任時における規律
2240 (受任の際の説明等)
2241 第二十九条 弁護士は、
2242 事件を受任するに当たり、
2243 依頼者から得た
2244 情報に基づき、
2245 事件の見通し、
2246 処理の方法並びに弁護士報酬及び
2247 費用について、
2248 適切な説明をしなければならない。
2249
2250
2251 2 弁護士は、
2252 事件について、
2253 依頼者に有利な結果となることを請
2254 け合い、
2255 又は保証してはならない。
2256
2257
2258 3 弁護士は、
2259 依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにも
2260
2261 かかわらず、
2262 その見込みがあるように装って事件を受任してはな
2263 らない。
2264
2265
2266 (委任契約書の作成)
2267 第三十条 弁護士は、
2268 事件を受任するに当たり、
2269 弁護士報酬に関す
2270 る事項を含む委任契約書を作成しなければならない。
2271
2272 ただし、
2273
2274 任契約書を作成することに困難な事由があるときは、
2275 その事由が
2276 止んだ後、
2277 これを作成する。
2278
2279
2280 2 前項の規定にかかわらず、
2281 受任する事件が、
2282 法律相談、
2283 簡易な
2284 書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものである
2285 ときその他合理的な理由があるときは、
2286 委任契約書の作成を要し
2287 ない。
2288
2289
2290 (不当な事件の受任)
2291 第三十一条 弁護士は、
2292 依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに
2293 不当な事件を受任してはならない。
2294
2295
2296 (不利益事項の説明)
2297 第三十二条 弁護士は、
2298 同一の事件について複数の依頼者があって
2299 その相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、
2300 事件を受
2301 任するに当たり、
2302 依頼者それぞれに対し、
2303 辞任の可能性その他の
2304 不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。
2305
2306
2307 (法律扶助制度等の説明)
2308 第三十三条 弁護士は、
2309 依頼者に対し、
2310 事案に応じ、
2311 法律扶助制度、
2312
2313 訴訟救助制度その他の資力の乏しい者の権利保護のための制度を
2314 説明し、
2315 裁判を受ける権利が保障されるように努める。
2316
2317
2318 (受任の諾否の通知)
2319 第三十四条 弁護士は、
2320 事件の依頼があったときは、
2321 速やかに、
2322
2323 の諾否を依頼者に通知しなければならない。
2324
2325
2326 第四節 事件の処理における規律
2327 (事件の処理)
2328 第三十五条 弁護士は、
2329 事件を受任したときは、
2330 速やかに着手し、
2331
2332 遅滞なく処理しなければならない。
2333
2334
2335 (事件処理の報告及び協議)
2336 第三十六条 弁護士は、
2337 必要に応じ、
2338 依頼者に対して、
2339 事件の経過
2340 及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、
2341 依頼者と協議しな
2342 がら事件の処理を進めなければならない。
2343
2344
2345 (法令等の調査)
2346 第三十七条 弁護士は、
2347 事件の処理に当たり、
2348 必要な法令の調査を
2349 怠ってはならない。
2350
2351
2352 2 弁護士は、
2353 事件の処理に当たり、
2354 必要かつ可能な事実関係の調
2355 査を行うように努める。
2356
2357
2358 (預り金の保管)
2359 第三十八条 弁護士は、
2360 事件に関して依頼者、
2361 相手方その他利害関
2362 係人から金員を預かったときは、
2363 自己の金員と区別し、
2364 預り金で
2365
2366 あることを明確にする方法で保管し、
2367 その状況を記録しなければ
2368 ならない。
2369
2370
2371 (預り品の保管)
2372 第三十九条 弁護士は、
2373 事件に関して依頼者、
2374 相手方その他利害関
2375 係人から書類その他の物品を預かったときは、
2376 善良な管理者の注
2377 意をもって保管しなければならない。
2378
2379
2380 (他の弁護士の参加)
2381 第四十条 弁護士は、
2382 受任している事件について、
2383 依頼者が他の弁
2384 護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、
2385 正当な理由な
2386 く、
2387 これを妨げてはならない。
2388
2389
2390 (受任弁護士間の意見不一致)
2391 第四十一条 弁護士は、
2392 同一の事件を受任している他の弁護士又は
2393 弁護士法人との間に事件の処理について意見が一致せず、
2394 これに
2395 より、
2396 依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、
2397 依頼者に対
2398 し、
2399 その事情を説明しなければならない。
2400
2401
2402 (受任後の利害対立)
2403 第四十二条 弁護士は、
2404 複数の依頼者があって、
2405 その相互間に利害
2406 の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、
2407 依頼者相互間に
2408 現実に利害の対立が生じたときは、
2409 依頼者それぞれに対し、
2410 速や
2411 かに、
2412 その事情を告げて、
2413 辞任その他の事案に応じた適切な措置
2414 をとらなければならない。
2415
2416
2417 (信頼関係の喪失)
2418 第四十三条 弁護士は、
2419 受任した事件について、
2420 依頼者との間に信
2421 頼関係が失われ、
2422 かつ、
2423 その回復が困難なときは、
2424 その旨を説明
2425 し、
2426 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならな
2427 い。
2428
2429
2430 第五節 事件の終了時における規律
2431 (処理結果の説明)
2432 第四十四条 弁護士は、
2433 委任の終了に当たり、
2434 事件処理の状況又は
2435 その結果に関し、
2436 必要に応じ法的助言を付して、
2437 依頼者に説明し
2438 なければならない。
2439
2440
2441 (預り金等の返還)
2442 第四十五条 弁護士は、
2443 委任の終了に当たり、
2444 委任契約に従い、
2445
2446 銭を清算したうえ、
2447 預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければ
2448 ならない。
2449
2450
2451 第四章 刑事弁護における規律
2452 (刑事弁護の心構え)
2453 第四十六条 弁護士は、
2454 被疑者及び被告人の防御権が保障されてい
2455 ることにかんがみ、
2456 その権利及び利益を擁護するため、
2457 最善の弁
2458 護活動に努める。
2459
2460
2461 (接見の確保と身体拘束からの解放)
2462 第四十七条 弁護士は、
2463 身体の拘束を受けている被疑者及び被告人
2464
2465 について、
2466 必要な接見の機会の確保及び身体拘束からの解放に努
2467 める。
2468
2469
2470 (防御権の説明等)
2471 第四十八条 弁護士は、
2472 被疑者及び被告人に対し、
2473 黙秘権その他の
2474 防御権について適切な説明及び助言を行い、
2475 防御権及び弁護権に
2476 対する違法又は不当な制限に対し、
2477 必要な対抗措置をとるように
2478 努める。
2479
2480
2481 (国選弁護における対価受領等)
2482 第四十九条 弁護士は、
2483 国選弁護人に選任された事件について、
2484
2485 目のいかんを問わず、
2486 被告人その他の関係者から報酬その他の対
2487 価を受領してはならない。
2488
2489
2490 2 弁護士は、
2491 前項の事件について、
2492 被告人その他の関係者に対し、
2493
2494 その事件の私選弁護人に選任するように働きかけてはならない。
2495
2496
2497 ただし、
2498 本会又は所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある
2499 場合は、
2500 この限りでない。
2501
2502
2503 第五章 組織内弁護士における規律
2504 (自由と独立)
2505 第五十条 官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。
2506
2507 以下これら
2508 を合わせて「組織」という。
2509
2510
2511 )において職員若しくは使用人とな
2512 り、
2513 又は取締役、
2514 理事その他の役員となっている弁護士(以下「組
2515 織内弁護士」という。
2516
2517
2518 )は、
2519 弁護士の使命及び弁護士の本質であ
2520 る自由と独立を自覚し、
2521 良心に従って職務を行うように努める。
2522
2523
2524 (違法行為に対する措置)
2525 第五十一条 組織内弁護士は、
2526 その担当する職務に関し、
2527 その組織
2528 に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、
2529 又は行おうとし
2530 ていることを知ったときは、
2531 その者、
2532 自らが所属する部署の長又
2533 はその組織の長、
2534 取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対
2535 する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとら
2536 なければならない。
2537
2538
2539 第六章 事件の相手方との関係における規律
2540 (相手方本人との直接交渉)
2541 第五十二条 弁護士は、
2542 相手方に法令上の資格を有する代理人が選
2543 任されたときは、
2544 正当な理由なく、
2545 その代理人の承諾を得ないで
2546 直接相手方と交渉してはならない。
2547
2548
2549 (相手方からの利益の供与)
2550 第五十三条 弁護士は、
2551 受任している事件に関し、
2552 相手方から利益
2553 の供与若しくは供応を受け、
2554 又はこれを要求し、
2555 若しくは約束を
2556 してはならない。
2557
2558
2559 (相手方に対する利益の供与)
2560 第五十四条 弁護士は、
2561 受任している事件に関し、
2562 相手方に対し、
2563
2564 利益の供与若しくは供応をし、
2565 又は申込みをしてはならない。
2566
2567
2568 第七章 共同事務所における規律
2569
2570 (遵守のための措置)
2571 第五十五条 複数の弁護士が法律事務所(弁護士法人の法律事務所
2572 である場合を除く。
2573
2574
2575 )を共にする場合(以下この法律事務所を「共
2576 同事務所」という。
2577
2578
2579 )において、
2580 その共同事務所に所属する弁護
2581 士(以下「所属弁護士」という。
2582
2583
2584 )を監督する権限のある弁護士
2585 は、
2586 所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるよ
2587 うに努める。
2588
2589
2590 (秘密の保持)
2591 第五十六条 所属弁護士は、
2592 他の所属弁護士の依頼者について執務
2593 上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、
2594 又は利用してはな
2595 らない。
2596
2597 その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、
2598 同様と
2599 する。
2600
2601
2602 (職務を行い得ない事件)
2603 第五十七条 所属弁護士は、
2604 他の所属弁護士(所属弁護士であった
2605 場合を含む。
2606
2607
2608 )が、
2609 第二十七条又は第二十八条の規定により職務
2610 を行い得ない事件については、
2611 職務を行ってはならない。
2612
2613 ただし、
2614
2615 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
2616 この限りでない。
2617
2618
2619 (同前ー受任後)
2620 第五十八条 所属弁護士は、
2621 事件を受任した後に前条に該当する事
2622 由があることを知ったときは、
2623 速やかに、
2624 依頼者にその事情を告
2625 げて、
2626 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければなら
2627 ない。
2628
2629
2630 (事件情報の記録等)
2631 第五十九条 所属弁護士は、
2632 職務を行い得ない事件の受任を防止す
2633 るため、
2634 他の所属弁護士と共同して、
2635 取扱い事件の依頼者、
2636 相手
2637 方及び事件名の記録その他の措置をとるように努める。
2638
2639
2640 (準用)
2641 第六十条 この章の規定は、
2642 弁護士が外国法事務弁護士と事務所を
2643 共にする場合に準用する。
2644
2645 この場合において、
2646 第五十五条中「複
2647 数の弁護士が」とあるのは「弁護士及び外国法事務弁護士が」と、
2648
2649 「共同事務所に所属する弁護士(以下「所属弁護士」という。
2650
2651
2652
2653
2654 とあるのは「共同事務所に所属する外国法事務弁護士(以下「所
2655 属外国法事務弁護士」という。
2656
2657
2658
2659 」と、
2660
2661 「所属弁護士が」とあるの
2662 は「所属外国法事務弁護士が」と、
2663 第五十六条から第五十九条ま
2664 での規定中「他の所属弁護士」とあるのは「所属外国法事務弁護
2665 士」と、
2666 第五十七条中「第二十七条又は第二十八条」とあるのは
2667 「外国特別会員基本規程第三十条の二において準用する第二十七
2668 条又は第二十八条」と読み替えるものとする。
2669
2670
2671 第八章 弁護士法人における規律
2672 (遵守のための措置)
2673 第六十一条 弁護士法人の社員である弁護士は、
2674 その弁護士法人の
2675 社員又は使用人である弁護士(以下「社員等」という。
2676
2677
2678 )及び使
2679
2680 用人である外国法事務弁護士がこの規程を遵守するための必要な
2681 措置をとるように努める。
2682
2683
2684 (秘密の保持)
2685 第六十二条 社員等は、
2686 その弁護士法人、
2687 他の社員等又は使用人で
2688 ある外国法事務弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正
2689 当な理由なく他に漏らし、
2690 又は利用してはならない。
2691
2692 社員等でな
2693 くなった後も、
2694 同様とする。
2695
2696
2697 (職務を行い得ない事件)
2698 第六十三条 社員等(第一号及び第二号の場合においては、
2699 社員等
2700 であった者を含む。
2701
2702
2703 )は、
2704 次に掲げる事件については、
2705 職務を行
2706 ってはならない。
2707
2708 ただし、
2709 第四号に掲げる事件については、
2710 その
2711 弁護士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、
2712
2713 の限りでない。
2714
2715
2716 一 社員等であった期間内に、
2717 その弁護士法人が相手方の協議を
2718 受けて賛助し、
2719 又はその依頼を承諾した事件であって、
2720 自らこ
2721 れに関与したもの
2722 二 社員等であった期間内に、
2723 その弁護士法人が相手方の協議を
2724 受けた事件で、
2725 その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと
2726 認められるものであって、
2727 自らこれに関与したもの
2728 三 その弁護士法人が相手方から受任している事件
2729 四 その弁護士法人が受任している事件(当該社員等が自ら関与
2730 しているものに限る。
2731
2732
2733 )の相手方からの依頼による他の事件
2734 (他の社員等との関係で職務を行い得ない事件)
2735 第六十四条 社員等は、
2736 他の社員等が第二十七条、
2737 第二十八条又は
2738 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
2739 行い得ない事件については、
2740 職務を行ってはならない。
2741
2742 ただし、
2743
2744 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
2745 この限りでない。
2746
2747
2748 2 社員等は、
2749 使用人である外国法事務弁護士が外国特別会員基本
2750 規程第三十条の二において準用する第二十七条、
2751 第二十八条又は
2752 第六十三条第一号若しくは第二号のいずれかの規定により職務を
2753 行い得ない事件については、
2754 職務を行ってはならない。
2755
2756 ただし、
2757
2758 職務の公正を保ち得る事由があるときは、
2759 この限りでない。
2760
2761
2762 (業務を行い得ない事件)
2763 第六十五条 弁護士法人は、
2764 次の各号のいずれかに該当する事件に
2765 ついては、
2766 その業務を行ってはならない。
2767
2768 ただし、
2769 第三号に規定
2770 する事件については受任している事件の依頼者の同意がある場合
2771 及び第五号に規定する事件についてはその職務を行い得ない社員
2772 がその弁護士法人の社員の総数の半数未満であり、
2773 かつ、
2774 その弁
2775 護士法人に業務の公正を保ち得る事由がある場合は、
2776 この限りで
2777 ない。
2778
2779
2780 一 相手方の協議を受けて賛助し、
2781 又はその依頼を承諾した事件
2782 二 相手方の協議を受けた事件で、
2783 その協議の程度及び方法が信
2784
2785 頼関係に基づくと認められるもの
2786 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
2787 四 社員等又は使用人である外国法事務弁護士が相手方から受任
2788 している事件
2789 五 社員が第二十七条、
2790 第二十八条又は第六十三条第一号若しく
2791 は第二号のいずれかの規定により職務を行い得ない事件
2792 (同前)
2793 第六十六条 弁護士法人は、
2794 前条に規定するもののほか、
2795 次の各号
2796 のいずれかに該当する事件については、
2797 その業務を行ってはなら
2798 ない。
2799
2800 ただし、
2801 第一号に掲げる事件についてその依頼者及び相手
2802 方が同意した場合、
2803 第二号に掲げる事件についてその依頼者及び
2804 他の依頼者のいずれもが同意した場合並びに第三号に掲げる事件
2805 についてその依頼者が同意した場合は、
2806 この限りでない。
2807
2808
2809 一 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供
2810 を約している者を相手方とする事件
2811 二 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
2812 三 依頼者の利益とその弁護士法人の経済的利益が相反する事件
2813 (同前ー受任後)
2814 第六十七条 社員等は、
2815 事件を受任した後に第六十三条第三号の規
2816 定に該当する事由があることを知ったときは、
2817 速やかに、
2818 依頼者
2819 にその事情を告げ、
2820 辞任その他の事案に応じた適切な措置をとら
2821 なければならない。
2822
2823
2824 2 弁護士法人は、
2825 事件を受任した後に第六十五条第四号又は第五
2826 号の規定に該当する事由があることを知ったときは、
2827 速やかに、
2828
2829 依頼者にその事情を告げ、
2830 辞任その他の事案に応じた適切な措置
2831 をとらなければならない。
2832
2833
2834 (事件情報の記録等)
2835 第六十八条 弁護士法人は、
2836 その業務が制限されている事件を受任
2837 すること及びその社員等若しくは使用人である外国法事務弁護士
2838 が職務を行い得ない事件を受任することを防止するため、
2839 その弁
2840 護士法人、
2841 社員等及び使用人である外国法事務弁護士の取扱い事
2842 件の依頼者、
2843 相手方及び事件名の記録その他の措置をとるように
2844
2845 努める。
2846
2847
2848 (準用)
2849 第六十九条 第一章から第三章まで(第十六条、
2850 第十九条、
2851 第二十
2852 三条及び第三章中第二節を除く。
2853
2854
2855
2856
2857 第六章及び第九章から第十二
2858 章までの規定は弁護士法人に準用する。
2859
2860
2861 第九章 他の弁護士との関係における規律
2862 (名誉の尊重)
2863 第七十条 弁護士は、
2864 他の弁護士、
2865 弁護士法人及び外国法事務弁護
2866 士(以下「弁護士等」という。
2867
2868
2869 )との関係において、
2870 相互に名誉
2871 と信義を重んじる。
2872
2873
2874 (弁護士に対する不利益行為)
2875 第七十一条 弁護士は、
2876 信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れ
2877 てはならない。
2878
2879
2880 (他の事件への不当介入)
2881 第七十二条 弁護士は、
2882 他の弁護士等が受任している事件に不当に
2883 介入してはならない。
2884
2885
2886 (弁護士間の紛議)
2887 第七十三条 弁護士は、
2888 他の弁護士等との間の紛議については、
2889
2890 議又は弁護士会の紛議調停による円満な解決に努める。
2891
2892
2893 第十章 裁判の関係における規律
2894 (裁判の公正と適正手続)
2895 第七十四条 弁護士は、
2896 裁判の公正及び適正手続の実現に努める。
2897
2898
2899 (偽証のそそのかし)
2900 第七十五条 弁護士は、
2901 偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、
2902
2903 は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
2904
2905
2906 (裁判手続の遅延)
2907 第七十六条 弁護士は、
2908 怠慢により又は不当な目的のため、
2909 裁判手
2910 続を遅延させてはならない。
2911
2912
2913 (裁判官等との私的関係の不当利用)
2914 第七十七条 弁護士は、
2915 その職務を行うに当たり、
2916 裁判官、
2917 検察官
2918 その他裁判手続に関わる公職にある者との縁故その他の私的関係
2919 があることを不当に利用してはならない。
2920
2921
2922
2923 第十一章 弁護士会との関係における規律
2924 (弁護士法等の遵守)
2925 第七十八条 弁護士は、
2926 弁護士法並びに本会及び所属弁護士会の会
2927 則を遵守しなければならない。
2928
2929
2930 (委嘱事項の不当拒絶)
2931 第七十九条 弁護士は、
2932 正当な理由なく、
2933 会則の定めるところによ
2934 り、
2935 本会、
2936 所属弁護士会及び所属弁護士会が弁護士法第四十四条
2937 の規定により設けた弁護士会連合会から委嘱された事項を行うこ
2938 とを拒絶してはならない。
2939
2940
2941 第十二章 官公署との関係における規律
2942 (委嘱事項の不当拒絶)
2943 第八十条 弁護士は、
2944 正当な理由なく、
2945 法令により官公署から委嘱
2946 された事項を行うことを拒絶してはならない。
2947
2948
2949 (受託の制限)
2950 第八十一条 弁護士は、
2951 法令により官公署から委嘱された事項につ
2952 いて、
2953 職務の公正を保ち得ない事由があるときは、
2954 その委嘱を受
2955 けてはならない。
2956
2957
2958 第十三章 解釈適用指針
2959 (解釈適用指針)
2960 第八十二条 この規程は、
2961 弁護士の職務の多様性と個別性にかんが
2962 み、
2963 その自由と独立を不当に侵すことのないよう、
2964 実質的に解釈
2965 し適用しなければならない。
2966
2967 第五条の解釈適用に当たって、
2968 刑事
2969 弁護においては、
2970 被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護
2971 権を侵害することのないように留意しなければならない。
2972
2973
2974 2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、
2975 第二十六条、
2976 第三
2977 十三条、
2978 第三十七条第二項、
2979 第四十六条から第四十八条まで、
2980
2981 五十条、
2982 第五十五条、
2983 第五十九条、
2984 第六十一条、
2985 第六十八条、
2986
2987 七十条、
2988 第七十三条及び第七十四条の規定は、
2989 弁護士の職務の行
2990 動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければな
2991 らない。
2992
2993
2994 附 則
2995 この規程は、
2996 平成十七年四月一日から施行する。
2997
2998
2999
3000 (出題趣旨)
3001 設問1は,
3002 転貸借に基づく占有権原の抗弁の抗弁事実について説明・検討を求め
3003 るものであり,
3004 実体法上の要件に留意して説明・検討することが求められる。
3005
3006
3007 設問2は,
3008 転貸承諾の事実を争うための立証手段を問うものであり,
3009 書証と人証
3010 の双方を検討することが求められる。
3011
3012
3013 設問3は,
3014 訴訟中に事実関係が変動した場合の影響を問うものであり,
3015 従前の抗
3016 弁を維持できるか否か,
3017 維持できない場合にはどのような抗弁とすべきかを検討し
3018 た上で,
3019 その抗弁に対する再抗弁を検討することが求められる。
3020
3021
3022 設問4は,
3023 解除の有効性に関する判断を問うものである。
3024
3025 主に,
3026 転貸借が背信行
3027 為と認めるに足りない特段の事情という規範的要件について,
3028 当事者が主張し,
3029
3030 判所が認定した事実の中から,
3031 どの事実がいかなる理由から評価を根拠付け又は障
3032 害する上で重要であるかに留意して,
3033 検討することが求められる。
3034
3035
3036 設問5は,
3037 弁護士倫理の問題であり,
3038 弁護士職務基本規程第29条に留意して,
3039
3040 将来生じ得る状況を想定した上で,
3041 依頼者に対していかなる説明をすべきかを検討
3042 することが求められる。
3043
3044
3045
3046 [法律実務基礎科目(刑事)]
3047 次の【事例】を読んで,
3048 後記〔設問〕に答えなさい。
3049
3050
3051 【事
3052
3053
3054 例】
3055 V(男性,
3056 27歳)は,
3057 平成25年2月12日,
3058 カメラ量販店で,
3059 大手メーカーであるC社
3060 製のデジタルカメラ(商品名「X」)を30万円で購入した。
3061
3062 同デジタルカメラは,
3063 ヒット商
3064 品で飛ぶように売れていたため,
3065 販売店では在庫が不足気味であり,
3066 なかなか手に入りにくい
3067 ものであった。
3068
3069
3070
3071
3072
3073 Vは,
3074 同月26日午後10時頃から,
3075 S県T市内のQマンション405号室のV方居室で,
3076
3077 テーブルを囲んで友人のA(男性,
3078 25歳)とその友人の甲(男性,
3079 26歳)と共に酒を飲ん
3080 だが,
3081 その際,
3082 上記「X」を同人らに見せた。
3083
3084 Vは,
3085 その後同デジタルカメラを箱に戻して同
3086 室の机の引き出しにしまい,
3087 引き続きAや甲と酒を飲んだが,
3088 Vは途中で眠ってしまい,
3089 翌27
3090 日午前7時頃,
3091 Vが同所で目を覚ますと,
3092 既に甲もAも帰っていた。
3093
3094 Vは,
3095 その後外出するこ
3096 となく同室内でテレビを見るなどしていたが,
3097 同日午後1時頃,
3098 机の引き出しにしまっていた
3099 同デジタルカメラを取り出そうとしたところ,
3100 これが収納していた箱ごと無くなっていること
3101 に気付いた。
3102
3103 Vは,
3104 前夜V方で一緒に飲んだAや甲が何か知っているかもしれないと考え,
3105
3106 に電話をして同デジタルカメラのことを聞いたが,
3107 Aは,
3108
3109 「知らない。
3110
3111 」と答えた。
3112
3113 また,
3114 Vは,
3115
3116 Aの友人である甲については連絡先を知らなかったため,
3117 Aに聞いたところ,
3118 Aは,
3119 「自分の
3120 方から甲に聞いておく。
3121
3122 」と答えた。
3123
3124
3125 VがV方の窓や玄関ドアを確認したところ,
3126 窓は施錠されていたが,
3127 玄関ドアは閉まってい
3128 たものの施錠はされていなかった。
3129
3130 Vは,
3131 同デジタルカメラは何者かに盗まれたと判断し,
3132
3133 日午後3時頃,
3134 警察に盗難被害に遭った旨届け出た。
3135
3136
3137
3138
3139
3140 同日午後3時40分頃,
3141 通報を受けたL警察署の司法警察員Kら司法警察職員3名がV方に
3142 臨場し,
3143 Vは上記2の被害状況を司法警察員Kらに説明した。
3144
3145 なお,
3146 司法警察員KがVに被害
3147 に遭ったデジタルカメラの製造番号を確認したところ,
3148 Vは,
3149 「製造番号は保証書に書いてあ
3150 ったが,
3151 それを入れた箱ごと被害に遭ったため分からない。
3152
3153 」と答えた。
3154
3155
3156 司法警察員Kらは,
3157 引き続き同室の実況見分を行った。
3158
3159 V方居室はQマンションの4階にあ
3160 り,
3161 間取りは広さ約6畳のワンルームであり,
3162 テーブル,
3163 机及びベッドは全て一室に置かれて
3164 いた。
3165
3166 同室の窓はベランダに面した掃き出し窓一つのみであり,
3167 同窓にはこじ開けられたよう
3168 な形跡はなく,
3169 Vに確認したところ,
3170 Vは,
3171 「窓はふだんから施錠しており,
3172 昨日の夜も施錠
3173 していた。
3174
3175 」と申し立てた。
3176
3177 また,
3178 鑑識活動の結果,
3179 盗難に遭ったデジタルカメラをしまって
3180 いた机やその近くのテーブルから対照可能な指紋3個を採取した。
3181
3182
3183 さらに,
3184 司法警察員KらがVと共にQマンションに設置されている防犯ビデオの画像を確認
3185 したところ,
3186 同月26日午後9時55分にV,
3187 甲及びAの3人が連れ立って同マンション内に
3188 入ってきた様子,
3189 同日午後11時50分にAが一人で同マンションから出て行く様子,
3190 その後
3191 約5分遅れて甲が一人で同マンションから出て行く様子がそれぞれ撮影されていた。
3192
3193 Aや甲が
3194 同マンションから出て行った際の所持品の有無については,
3195 画像が不鮮明なため判然としなか
3196 った。
3197
3198 なお,
3199 甲が一人で同マンションを出て行って以降,
3200 同月27日午前7時20分まで,
3201
3202 マンションに人が出入りする状況は撮影されていなかった。
3203
3204 また,
3205 同マンションの出入口は防
3206 犯ビデオが設置されているエントランス1か所のみであり,
3207 それ以外の場所からは出入りでき
3208 ない構造になっていた。
3209
3210
3211 司法警察員Kは,
3212 同日,
3213 盗難に遭ったデジタルカメラの商品名を基に,
3214 L警察署管内の質屋
3215 やリサイクルショップ等に取扱いの有無を照会した。
3216
3217 また,
3218 司法警察員Kは,
3219 A及び甲の前歴
3220
3221 を確認したところ,
3222 Aには前歴はなかったが,
3223 甲には窃盗の前科前歴があることが判明した。
3224
3225
3226
3227
3228 同年3月1日,
3229 L警察署に対し,
3230 T市内のリサイクルショップRから,
3231 「甲という男からC
3232 社の『X』1台の買取りを行った。
3233
3234 」旨の回答があった。
3235
3236 そこで,
3237 司法警察員Kがリサイクル
3238 ショップRに赴き,
3239 同店店員Wから事情を聴取したところ,
3240 店員Wは,
3241 「一昨日の2月27日
3242 午前10時頃,
3243 甲が来店したので応対に当たった。
3244
3245 甲の身元は自動車運転免許証で確認した。
3246
3247
3248 甲から『X』1台を箱付きで27万円で買い取った。
3249
3250 甲には現金27万円と買取票の写しを渡
3251 した。
3252
3253 」旨供述した。
3254
3255 そのときの買取票を店員Wが呈示したため,
3256 司法警察員Kがこれを確認
3257 したところ,
3258 2月27日の日付,
3259 甲の氏名,
3260 製造番号SV10008643番の「X」1台を
3261 買い取った旨の記載があった。
3262
3263 司法警察員Kは甲の写真を含む男性20名の写真を貼付した写
3264 真台帳を店員Wに示したところ,
3265 店員Wは甲の写真を選んで「その『X』を持ち込んできたの
3266 はこの男に間違いない。
3267
3268 」と申し立てた。
3269
3270
3271 司法警察員Kは,
3272 同店店長から,
3273 甲から買い取った「X」1台の任意提出を受け,
3274 L警察署
3275 に持ち帰って調べたところ,
3276 内蔵時計は正確な時刻を示していたが,
3277 撮影した画像のデータを
3278 保存するためのメモリーカードが同デジタルカメラには入っておらず,
3279 抜かれたままになって
3280 いた。
3281
3282 司法警察員Kは,
3283 同デジタルカメラを鑑識係員に渡して,
3284 指紋の採取を依頼し,
3285 同デジ
3286 タルカメラの裏面から指紋1個を採取した。
3287
3288 この指紋及び同年2月27日にV方から採取した
3289 指紋をV及び甲の指紋と照合したところ,
3290 同デジタルカメラから採取された指紋及びV方のテ
3291 ーブルから採取された指紋1個が甲の指紋と合致し,
3292 V方の机から採取された指紋1個がVの
3293 指紋と合致し,
3294 それ以外の指紋は甲,
3295 Vいずれの指紋とも合致しなかった。
3296
3297
3298
3299
3300
3301 司法警察員Kは,
3302 甲を尾行するなどしてその行動を確認したところ,
3303 甲が消費者金融会社O
3304 に出入りしている様子を目撃したことから,
3305 甲の借金の有無をO社に照会したところ,
3306 限度額
3307 一杯の30万円を借り,
3308 その返済が滞っていたこと,
3309 同月27日に27万円が返済されている
3310 ことが判明した。
3311
3312
3313 さらに,
3314 司法警察員Kは,
3315 同年3月4日,
3316 AをL警察署に呼び出して事情を聞いたところ,
3317
3318 Aは以下のとおり供述した。
3319
3320
3321
3322 (1)
3323
3324 Vは前にアルバイト先で知り合った友人で,
3325 月に1,
3326 2回は一緒に飲んだり遊んだりして
3327 いる。
3328
3329 甲は高校時代の同級生であり,
3330 2か月くらい前に偶然再会し,
3331 それ以降,
3332 毎週のよう
3333 に一緒に遊んでいる。
3334
3335 甲とVは直接の面識はなかったが,
3336 先月の初め頃,
3337 自分が紹介して3
3338 人で一緒に飲んだことがあった。
3339
3340
3341
3342 (2)
3343
3344 今年の2月26日は,
3345 Vに誘われて甲と共にV方に行って3人で酒を飲んだ。
3346
3347 その際,
3348
3349 からデジタルカメラを見せられた記憶がある。
3350
3351 しかし,
3352 Vが先に眠ってしまい,
3353 自分も終電
3354 があるので甲を誘って午後11時50分頃V方を出て帰った。
3355
3356 その後,
3357 Vから「カメラが無
3358 くなった。
3359
3360 」と聞かされたが,
3361 自分は知らない。
3362
3363 甲にも聞いてみたが,
3364 甲も知らないと言っ
3365 ていた。
3366
3367 ただ,
3368 思い出してみると,
3369 あの日帰るとき,
3370 甲が「たばこを一本吸ってから帰る。
3371
3372
3373 と言うので,
3374 Vの部屋の前で甲と別れて一人で帰った。
3375
3376 その後甲がいつ帰ったかは知らない。
3377
3378
3379
3380
3381
3382 司法警察員Kは,
3383 裁判官から甲を被疑者とする後記【被疑事実】での逮捕状の発付を得て,
3384
3385 同年3月5日午前8時頃,
3386 甲方に赴いた。
3387
3388 すると,
3389 甲が自宅前で普通乗用自動車(白色ワゴン
3390 車,
3391 登録番号「T550よ6789」)に乗り込み発進しようとするところであったことから,
3392
3393 司法警察員Kは甲を呼び止めて降車を促し,
3394 その場で甲を通常逮捕するとともに同車内の捜索
3395 を行った。
3396
3397 その際,
3398 司法警察員Kは同車内のダッシュボードからちり紙にくるまれたメモリー
3399 カード1枚を発見したので,
3400 これを押収した。
3401
3402 なお,
3403 同車は甲が勤務するZ社所有の物であっ
3404 た。
3405
3406
3407
3408
3409
3410 その後,
3411 同日午前9時からL警察署内で行われた弁解録取手続及びその後の取調べにおいて,
3412
3413 甲は以下のとおり供述した。
3414
3415
3416
3417 (1)
3418
3419 結婚歴はなく,
3420 T市内のアパートに一人で住んでいる。
3421
3422 兄弟はおらず,
3423 隣のU市に今年65
3424
3425 歳になる母が一人で住んでいる。
3426
3427 高校卒業後,
3428 しばらくアルバイトで生活していたが,
3429 平成
3430 23年8月からZ社で正社員として働くようになり,
3431 今に至っている。
3432
3433 仕事の内容は営業回
3434 りである。
3435
3436 収入は手取りで月17万円くらいだが,
3437 借金が120万円ほどあり,
3438 月々3万円
3439 を返済に回しているので生活は苦しい。
3440
3441 警察に捕まったことがこれまで2回あり,
3442 最初は平
3443 成19年5月,
3444 友人方で友人の財布を盗み,
3445 そのことがばれて捕まったが,
3446 弁償し謝罪して
3447 被害届を取り下げてもらったので,
3448 処分は受けなかった。
3449
3450 2回目は,
3451 平成22年10月に換
3452 金目的でゲーム機やDVDを万引き窃取して捕まり,
3453 同事件で同年12月に懲役1年,
3454 3年
3455 間執行猶予の有罪判決を受け,
3456 今も執行猶予期間中である。
3457
3458
3459 (2)
3460
3461 今年の2月26日夜,
3462 AとV方に行った時にVからカメラを見せられた。
3463
3464 そのカメラを盗
3465 んだと疑われているらしいが,
3466 私はそんなことはしていない。
3467
3468 私はその日はAと一緒に帰っ
3469 たから,
3470 Aに聞いてもらえれば自分が盗みをしていないことが分かるはずだ。
3471
3472
3473
3474
3475
3476 司法警察員Kは,
3477 甲が乗っていた自動車内から押収したメモリーカードを精査したところ,
3478
3479 同カードはデジタルカメラで広く使われている規格のもので「X」にも適合するものであった。
3480
3481
3482 そこで,
3483 その内容を解析したところ,
3484 写真画像6枚のデータが記録されており,
3485 撮影時期はい
3486 ずれも同年2月12日から同月25日の間,
3487 撮影したデジタルカメラの機種はいずれも「X」
3488 であることが明らかとなった。
3489
3490 司法警察員Kは,
3491 同年3月5日午後6時頃,
3492 VをL警察署に呼
3493 んで上記データの画像をVに示したところ,
3494 Vは,
3495 「写っている写真は全て自分が新しく買っ
3496 た『X』で撮影したものに間違いないので,
3497 そのメモリーカードは『X』と一緒に盗まれたも
3498 のに間違いない。
3499
3500 」旨供述した。
3501
3502 さらに,
3503 Vがその写真の一部は自分がインターネット上で公
3504 開していると申し立てたので,
3505 司法警察員Kがインターネットで調べたところ,
3506 メモリーカー
3507 ド内の画像のうち3枚が,
3508 実際にVによって公開された画像と同一であることが判明した。
3509
3510
3511 また,
3512 司法警察員Kは,
3513 同月6日午前9時頃,
3514 甲の勤務するZ社に電話をして,
3515 代表者から
3516 同社が所有する車両の管理状況について聴取したところ,
3517 同人は,
3518
3519 「会社所有の車は4台あり,
3520
3521 うち1台は私が常時使っている。
3522
3523 残りの3台は3人の営業員に使わせているが,
3524 誰がどの車両
3525 を使っているかは車の鍵の管理簿を付けているのでそれを見れば分かる。
3526
3527 登録番号『T550
3528 よ6789』のワゴン車については,
3529 今年の2月24日から甲が使っている。
3530
3531 」旨供述した。
3532
3533
3534
3535
3536
3537 司法警察員Kは,
3538 同年3月6日午前9時30分頃から再度甲の取調べを行ったところ,
3539 甲は
3540 以下のとおり供述した。
3541
3542
3543
3544 (1)
3545
3546 Vのデジタルカメラは盗んでいない。
3547
3548
3549
3550 (2)
3551
3552 自分が今年の2月27日にリサイクルショップにデジタルカメラを持ち込んだことはある
3553 が,
3554 それは名前を言えない知り合いからもらった物だ。
3555
3556
3557
3558 (3)
3559
3560 車の中にあったメモリーカードのことは知らない。
3561
3562
3563
3564 (4)
3565
3566 自分が疑われて不愉快だからこれ以上話したくない。
3567
3568
3569
3570 10
3571
3572 司法警察員Kは,
3573 同年3月6日午前11時頃,
3574 後記【被疑事実】で甲をS地方検察庁検察官
3575 に送致した。
3576
3577 甲は,
3578 同日午後1時頃,
3579 検察官Pによる弁解録取手続において,
3580 「事件のことに
3581 ついては何も話すつもりはない。
3582
3583 」と供述した。
3584
3585
3586
3587 11
3588
3589 検察官Pは,
3590 同日午後2時30分頃,
3591 S地方裁判所裁判官に対して,
3592 甲につき後記【被疑事
3593 実】で勾留請求した。
3594
3595 S地方裁判所裁判官Jは,
3596 同日午後4時頃,
3597 甲に対する勾留質問を行っ
3598 たところ,
3599 甲は被疑事実について「検察官に対して話したとおり,
3600 事件のことについて話すつ
3601 もりはない。
3602
3603 」と供述した。
3604
3605
3606
3607 【被疑事実】
3608 被疑者は,
3609 平成25年2月26日午後11時55分頃,
3610 S県T市内所在のQマンション405
3611 号室V方において,
3612 同人が所有するデジタルカメラ1台(時価30万円相当)を窃取したもので
3613 ある。
3614
3615
3616
3617 〔設
3618
3619 問〕
3620 上記【事例】の事実を前提として,
3621 本件勾留請求を受けた裁判官Jは,
3622 甲を勾留すべきか。
3623
3624
3625
3626 連条文を挙げながら,
3627 上記事例に即して具体的に論じなさい。
3628
3629 ただし,
3630 勾留請求に係る時間的制
3631 限,
3632 逮捕前置の遵守及び先行する逮捕の適法性については論じる必要はない。
3633
3634
3635 なお,
3636 甲が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由について論じるに当たっては,
3637 具体的な
3638 事実を摘示するのみならず,
3639 上記理由の有無の判断に際してそれらの事実がどのような意味を持
3640 つかについても説明しなさい。
3641
3642
3643
3644 (出題趣旨)
3645 本問は,
3646 被疑者勾留の各要件についての正確な理解を前提に,
3647 具体的な事実関係
3648 を踏まえてその要件を充足するか否かについて妥当な結論を導くことができるか,
3649
3650 という基本的な実務能力を問うものである。
3651
3652 すなわち,
3653 勾留要件のうち罪を犯した
3654 ことを疑うに足りる相当な理由の有無については,
3655 【事例】に現れた事実関係のう
3656 ち甲の犯人性に関する具体的事実を摘示し,
3657 さらに,
3658 上記理由の判断に際してそれ
3659 らの事実がどのような意味を持つかなどを,
3660 また,
3661 その他の勾留要件(刑事訴訟法
3662 第60条第1項各号及び勾留の必要性)については,
3663 【事例】に現れた事実関係を
3664 踏まえつつ各要件を充足するか否かを,
3665 それぞれ具体的に検討し,
3666 妥当な結論を導
3667 くことができるかを問うものである。
3668
3669
3670
3671 [一般教養科目]
3672 次の文章は,
3673 和辻哲郎『倫理学』(1937〜49 年)の一節である。
3674
3675 これを読んで,
3676 後記の各設問に
3677 答えなさい。
3678
3679
3680
3681 (省
3682
3683 略)
3684
3685 〔設問1〕
3686 この文章を15行程度で要約しなさい。
3687
3688
3689 〔設問2〕
3690 本文で,
3691 著者は,
3692 「土地の共同」に基づくコミュニティ(共同体)について論じている。
3693
3694 それ
3695 とともに,
3696 著者は,
3697 「文化の共同」(共通の言語,
3698 芸術,
3699 学問,
3700 宗教,
3701 風習,
3702 制度,
3703 道徳等)に基
3704 づくコミュニティの存在をも想定している。
3705
3706 このことを踏まえて,
3707 コミュニティの現在について,
3708
3709 20行程度で論述しなさい。
3710
3711
3712
3713 (出題趣旨)
3714 設問1は,
3715 共同体が血縁共同体並びに非血縁共同体としての地縁(土地)共同体
3716 及び文化共同体に区分し得ることを前提に,
3717 土地の存立構造や地縁共同体の存在理
3718 由,
3719 道具や技術の存在意義を的確に捉えているかどうかを問うている。
3720
3721 その内容を
3722 要約するには,
3723 家と土地の区別,
3724 道具の二面性,
3725 道具と「隣り」との関係を正確に
3726 理解していることが求められる。
3727
3728 設問2は,
3729 筆者の考える共同体論を踏まえ,
3730 地縁
3731 共同体と文化共同体といったコミュニティの現代的特徴について,
3732 自説を説得的に
3733 展開することを問うている。
3734
3735 いずれの設問においても,
3736 全体として指定の分量内で
3737 簡明に記述する能力も求められる。
3738
3739
3740
3741