1 論文式試験問題集[倒
2
3 - 1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 〔第1問〕(配点:50)
16 次の事例について,
17 以下の設問に答えなさい。
18
19
20 【事
21
22 例】
23 Aは,
24 先物取引に失敗したことを原因として,
25 消費者金融からの借入れも含め約1億円の負債
26
27 を負うに至り,
28 債務の支払が不能となったことから,
29 平成24年9月14日,
30 破産手続開始及び
31 免責許可の申立てをし,
32 同月21日,
33 破産手続開始の決定を受け(以下,
34 同開始決定に基づく破
35 産手続を「本件破産手続」という。
36
37 ),
38 破産管財人Xが選任された。
39
40
41 Aの友人であるBは,
42 本件破産手続開始の申立て前の平成22年10月20日,
43 Aに対し,
44 金
45 銭消費貸借契約書を作成することなく,
46 現金で1000万円を貸し付けた。
47
48 Bは,
49 その当時,
50 自
51 宅において,
52 内縁関係にあったCと同居していたが,
53 その後,
54 Cとの関係が悪化したことから自
55 宅を出て,
56 本件破産手続の開始時点においては外国に長期滞在していたため,
57 同手続が開始され
58 たことを知らなかった。
59
60 他方,
61 Cは,
62 本件破産手続開始の通知をBの自宅において受け取ったが,
63
64 同手続が開始された事実をBに知らせることなく,
65 自らがAに上記1000万円を貸し付けたも
66 のとして破産債権の届出をした。
67
68
69 破産管財人Xは,
70 Cから届出のあった破産債権の存否及び額等についてAに確認をしたところ,
71
72 Aは,
73 B及びCは経済的に一体の関係にあり,
74 いずれにしても1000万円を借り受けたことは
75 事実である上,
76 Cが資金を拠出した可能性もあると考えたことから,
77 Cによる破産債権の届出を
78 否定するほどのことはないと考え,
79 破産管財人Xに対し,
80 Cの届出内容に間違いはないと説明し
81 た。
82
83 破産管財人Xは,
84 Aの預金通帳の取引履歴についても確認したところ,
85 平成22年10月2
86 0日に現金で1000万円の預入れがされたとの事実を確認することができ,
87 Cの届け出た破産
88 債権の債権者がBであることを示す資料も見当たらなかった。
89
90
91 そこで,
92 破産管財人Xは,
93 平成24年12月10日の一般調査期日において,
94 Cの届け出た破
95 産債権を認め,
96 これに対して他の破産債権者も異議を述べなかったため,
97 当該破産債権は確定し
98 た。
99
100
101 〔設
102
103 問〕
104
105 以下の1から3までについては,
106 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
107
108
109
110 1.上記事例において,
111 Bは,
112 Cの届け出た破産債権が確定した後に帰国し,
113 本件破産手続が係
114 属している事実及びAに対する上記貸付けについてCが自らの債権であるとして破産債権の届
115 出をした事実を知った。
116
117 Bは,
118 Aに対して当該貸付けをしたのは自らであるとして,
119 最後配当
120 に関する除斥期間の経過前に,
121 裁判所に対して破産債権の届出をすることができるかについて,
122
123 論じなさい。
124
125
126 また,
127 Bが当該破産債権の届出ができるとした場合,
128 破産管財人Xは,
129 この届け出られた破
130 産債権についていかなる認否をすべきかについて,
131 論じなさい(なお,
132 Bの破産債権届出の際
133 に上記貸付けがBによるものであることを示す証拠が裁判所に提出されたことを前提とす
134 る。
135
136
137 )。
138
139
140 2.上記事例において,
141 Bは,
142 最後配当の実施後に帰国し,
143 Cが10%の最後配当(100万円)
144 を受けたことを知った。
145
146 そこで,
147 Bは,
148 Cに対し,
149 不当利得返還請求権に基づき,
150 Cが受領し
151 た配当金100万円の返還を求める訴えを提起し,
152 Aに対する上記貸付けをしたのは自らであ
153 るから,
154 Cが届け出た破産債権は,
155 CではなくBに帰属すると主張した。
156
157 BがCに対して当該
158 主張をすることが許されるかについて,
159 論じなさい。
160
161
162 3.上記事例において,
163 Aは,
164 本件破産手続開始の申立て前の平成24年8月初旬,
165 Dから共同
166 投資のための資金として500万円を現金で預かったが,
167 自己の借入金の返済資金が不足した
168 ため,
169 Dの承諾を得ることなく,
170 当該預り金の全額を流用して自己の借入金の返済に充てた。
171
172
173 - 2 -
174
175 Aとしては,
176 保有していた投資商品Mについて同月中旬に1200万円の償還が予定されてい
177 たことから,
178 その一部を流用した預り金に充てる心積りであり,
179 そうすれば共同投資に支障が
180 生じることはなく,
181 Dに損害を与えることもないと考えていた。
182
183 ところが,
184 投資商品Mの投資
185 先は,
186 償還期日直前に突然倒産し,
187 Aは1200万円の償還金を受け取ることができなくなっ
188 た。
189
190 その結果,
191 Aは,
192 上記預り金を投資資金に充てることも,
193 Dに返還することもできなくな
194 り,
195 Dに対してその損害を賠償すべき債務を負うこととなった。
196
197
198 Aは,
199 本件破産手続開始及び免責許可の申立てをする際,
200 Dに迷惑をかけたくないとの思い
201 から,
202 Dに対する損害賠償債務については,
203 本件破産手続の結果にかかわらず支払おうと考え,
204
205 債権者一覧表及び債権者名簿に記載しなかった。
206
207 Dは,
208 本件破産手続が開始したことを知って
209 いたが,
210 同手続外でAから支払を受けようと考え,
211 Aに対する破産債権の届出をしなかった。
212
213
214 その後,
215 本件破産手続は終結し,
216 平成25年2月,
217 Aに対する免責許可の決定が確定した。
218
219
220 Aは,
221 本件破産手続中に転職したこともあり,
222 生活は楽ではなかったものの,
223 Dに対する上記
224 の思いから,
225 同年3月,
226 Dとの間で,
227 AのDに対する500万円の損害賠償債務を目的とし,
228
229 同債務を1年以内に返済することを内容とする準消費貸借契約を締結した。
230
231
232 Dは,
233 平成26年4月,
234 Aに対し,
235 上記準消費貸借契約に基づく債務の履行を求めたが,
236 A
237 は,
238 その当時,
239 新しい職場での仕事がようやく軌道に乗り始めたところであり,
240 Dに対する上
241 記債務を返済すると経済的に困窮するおそれがあったことから,
242 Dの請求に応じなかった。
243
244
245 Dが,
246 Aに対し,
247 上記準消費貸借契約に基づき500万円の支払を求める訴えを提起し,
248 A
249 が同契約上の義務を争った場合,
250 Dの請求が認められるかについて,
251 予想されるA及びDの主
252 張を踏まえて,
253 論じなさい。
254
255
256
257 - 3 -
258
259 〔第2問〕(配点:50)
260 次の事例について,
261 以下の設問に答えなさい。
262
263
264 【事
265
266 例】
267 A株式会社(以下「A社」という。
268
269 )は,
270 不動産賃貸業を営む会社であり,
271 Bはその代表者で
272
273 ある。
274
275 A社は,
276 平成15年,
277 同社の所有する敷地上に甲ビルを建築し,
278 Cに対し,
279 賃貸期間を1
280 5年,
281 賃料を月額100万円,
282 敷金を1000万円と定め,
283 同ビルを貸し渡した(以下「本件賃
284 貸借契約」という。
285
286 )。
287
288 また,
289 本件賃貸借契約の締結に当たり,
290 Cは,
291 A社に対し,
292 3000万円
293 を貸し付け,
294 A社は,
295 平成20年3月から毎月末日限り50万円ずつ分割して同債務を弁済する
296 旨約した。
297
298 なお,
299 A社は,
300 甲ビルを建築するに当たって,
301 D銀行から5億円を借り入れ,
302 その際,
303
304 甲ビル及びその敷地に同行を抵当権者とする抵当権を設定し,
305 その登記もされたが,
306 本件賃貸借
307 契約は,
308 上記抵当権設定登記を備える以前に締結され,
309 Cは同ビルの引渡しも受けていた。
310
311 また,
312
313 A社は,
314 そのころ,
315 A社の関連会社がE銀行に対して負う借入債務を連帯保証した。
316
317
318 A社は,
319 平成20年頃から,
320 株式取引の失敗等により経営が次第に悪化し,
321 平成22年12月
322 以降,
323 甲ビル及びその敷地についてD銀行による担保権実行が避けられない状況にあった。
324
325
326 そこで,
327 A社は,
328 平成23年3月9日,
329 再生手続開始の申立てをし,
330 同日,
331 監督委員が選任さ
332 れ,
333 同月14日,
334 再生手続開始の決定がされた。
335
336 同手続の開始当時の債権者は,
337 C(Cの債権の
338 内訳は,
339 上記敷金の返還請求権が1000万円,
340 上記貸金の返還請求権が1200万円であり,
341
342 A社は当該貸金債権について期限の利益を喪失していない。
343
344 ),
345 D銀行及びE銀行であった。
346
347
348 A社は,
349 D銀行の有する抵当権について担保権消滅の許可の申立てをすることを前提として事
350 業を継続するとともに,
351 スポンサーから資金提供を受けて弁済を行う旨の再生計画案の作成を予
352 定し,
353 各債権者にその概要を説明したところ,
354 本件賃貸借契約の継続を希望するCは,
355 その計画
356 案であれば破産手続の方が貸金債権及び敷金返還請求権の回収にとって有利な事情があると考
357 え,
358 また,
359 D銀行も破産手続の方が甲ビル及びその敷地を高額で任意売却できると見込んだこと
360 から,
361 当該再生計画案に賛意を表明しなかった。
362
363 このため,
364 当該再生計画案が提出された場合に
365 は,
366 C及びD銀行がこれに反対することが予測された。
367
368
369 そこで,
370 Bは,
371 再生手続開始の決定後,
372 平成23年4月15日までと定められた再生債権の届
373 出期間の経過前に,
374 E銀行のA社関連会社に対する上記債権の回収可能性が極めて低いことを知
375 りながら,
376 実価を超える価額でE銀行から同債権を譲り受け,
377 これによってA社に対する保証債
378 務履行請求権を取得し,
379 更にその一部をBの親族であり,
380 A社の取締役であるF及びGに分割譲
381 渡した。
382
383 その後,
384 B,
385 F及びGは,
386 A社に対して有する債権の届出をそれぞれ行い,
387 A社は,
388 B,
389
390 C,
391 D銀行,
392 F及びGの届け出た債権の全額をいずれも認め,
393 再生債権者は届出債権について異
394 議を述べなかった。
395
396
397 最終的にA社が提出した再生計画案は,
398 債権者にその概要を説明したものと同様の内容であ
399 り,
400 再生会社がスポンサーとなる企業から融資を受けて,
401 再生債権者に対し,
402 再生計画の認可決
403 定の確定後3か月以内に再生債権額の3%を一括で支払うというものであり,
404 Cの有する敷金返
405 還請求権については,
406 民事再生法の規律に従った内容の条項が定められていた。
407
408 なお,
409 A社の予
410 想清算配当率は1%未満であった。
411
412
413 〔設
414
415 問〕
416
417 1.Cが,
418 下線
419
420 を引いた部分に示されているように,
421 破産手続の方が貸金債権及び敷金返還
422
423 請求権の回収にとって有利な事情があると考えた理由は何か。
424
425 Cの有する上記敷金返還請求権
426 に関する再生計画案の条項の内容がいかなるものであったかについても検討の上,
427 敷金の取扱
428 いや相殺権に関する破産法の規律と民事再生法の規律の違いを踏まえ,
429 論じなさい。
430
431
432 なお,
433 本件賃貸借契約の終了後,
434 Cが行うべき原状回復の費用としては100万円を要する
435 見込みであり,
436 また,
437 同契約に基づく賃料の不払や遅滞がないことを前提とする。
438
439
440 - 4 -
441
442 2.上記事例において,
443 A社の提出した再生計画案は,
444 平成23年12月5日に開催された債権
445 者集会において,
446 C及びD銀行の反対にもかかわらず,
447 届出再生債権者の過半数であり,
448 議決
449 権総額の2分の1以上の議決権を有するB,
450 F及びGの同意を得て可決された。
451
452
453 上記再生計画を裁判所が認可すべきかどうかについて,
454 論じなさい。
455
456
457
458 - 5 -
459
460 - 6 -
461
462 論文式試験問題集[租
463
464 - 7 -
465
466 税
467
468 法]
469
470 [租
471
472 税
473
474 法]
475
476 〔第1問〕(配点:50)
477 1
478
479 Aは,
480 昭和58年10月に司法試験に合格し,
481 司法修習生を経て,
482 昭和61年4月に,
483 不動産
484 業者であるBから,
485 甲県乙市内のビルの一階の一室を3年の期間で賃借し,
486 Aの名前を冠した
487 法律事務所を開設して,
488 弁護士業務を始めた。
489
490 Aは,
491 同室を賃借するに当たり,
492 Bに対して,
493
494 乙市の不動産取引の慣行に従い,
495 3か月分の家賃相当額の敷金のほか,
496 権利金として200万
497 円を支払った。
498
499 Aは,
500 同事務所の営業時間を平日の午前9時から午後6時までとし,
501 乙市を管
502 轄している税務署から青色申告の承認を得て,
503 その後,
504 毎年,
505 納税申告を青色申告で行ってき
506 た。
507
508
509 Aは,
510 事務所開設と同時に,
511 事務員として,
512 法学部を卒業したCを採用し,
513 裁判所等に提出
514 する書面のワープロによる浄書や経理等の仕事をさせた。
515
516 近隣の法律事務所の事務員への給料
517 は,
518 おおむね月額15万円及び賞与年額80万円の年合計260万円であったが,
519 Cが法学部
520 卒であることを考慮して,
521 月額20万円及び賞与年額100万円の年合計340万円を支払っ
522 た。
523
524
525 Aは,
526 昭和62年4月頃,
527 司法試験受験生であったDと知り合い,
528 同年結婚し,
529 乙市内のマ
530 ンションで同居し,
531 生計を一にした。
532
533 Dは,
534 結婚後も受験勉強を続けていたが,
535 Aの事務所の
536 繁忙期やCの休暇時に,
537 無給で,
538 事務所内で,
539 電話応対やAが作成する書面のワープロによる
540 浄書等の仕事をしていたところ,
541 平成2年1月,
542 Aの事務所の顧問先が増え,
543 依頼案件も増加
544 したことから,
545 正規の事務員としてフルタイム(午前9時から午後6時まで)で働くようにな
546 った。
547
548 そこで,
549 Aは,
550 Dに対して,
551 毎月給料を支払うこととし,
552 その金額として,
553 Dの勤務時
554 間及び内容は,
555 Cとは異ならなかったが,
556 Dが妻であることから,
557 Cの給料の1.5倍の年額
558 510万円を支払った。
559
560 Aは,
561 Dをフルタイムで稼働させるに当たって,
562 税務署長に対し,
563 D
564 の氏名,
565 職務内容及び給与の金額等の法令が要求する事項を記載した書面を提出した。
566
567 なお,
568
569 乙市内にある法律事務所のうち,
570 経営者である弁護士がその妻をフルタイムの事務員として雇
571 っている事務所は7事務所あり,
572 支払っている給料の年額の最低額は300万円,
573 最高額は4
574 50万円であり,
575 7事務所平均では400万円であった。
576
577 もっとも,
578 妻が司法試験受験生であ
579 る弁護士はいなかった。
580
581
582 Dは,
583 平成4年10月に司法試験に合格し,
584 司法修習生を経て,
585 平成7年4月に乙市内のビ
586 ルの一室を借りて,
587 Dの名前を冠した法律事務所を開設し,
588 Aと同じ弁護士会に所属して弁護
589 士業務を始めた。
590
591 AとDの両事務所の経費は別であり,
592 それぞれの事務所において記帳がなさ
593 れ,
594 Dも税務署から青色申告の承認を得て,
595 その後,
596 毎年,
597 納税申告を青色申告で行った。
598
599 も
600 っとも,
601 Aは,
602 Dが弁護士登録した直後から,
603 Dに対して,
604 Aが行っていた弁護士業務の一部
605 を依頼し,
606 その対価として,
607 毎年定額の報酬をDに支払った。
608
609 その金額は,
610 Dが営む弁護士業
611 務の総収入金額のうち3分の1程度を占めていた。
612
613
614
615 2
616
617 Aは,
618 Bに対して,
619 事務所の賃貸借期間満了の都度,
620 更新料を支払うとともに賃料を増額して,
621
622 契約を継続してきた。
623
624 その後,
625 Bは,
626 平成24年1月,
627 同業者であるEに対して,
628 Aの事務所
629 (以下「旧事務所」という。
630
631 )が入居していたビルを売却しようと考えたが,
632 Eから,
633 Aが旧事
634 務所を明け渡さなければ買うことはできない旨言われたため,
635 Aに対して,
636 旧事務所の明渡し
637 を求めた。
638
639
640 Aは,
641 移転先としては乙市に所在する地方裁判所の近くにあるビルが望ましく,
642 旧事務所と
643 同様にビルの一階を借りるとすれば,
644 権利金として300万円を要するだけでなく,
645 新賃料は
646 旧事務所の賃料より高額となる可能性があり,
647 さらに,
648 引越費用,
649 電話工事等の内装工事費用
650 の支払が必要となると考えた。
651
652 そこで,
653 Aは,
654 Bとの間で,
655 事務所明渡しに当たって必要とな
656 る支出の保証を求めて交渉し,
657 それと並行して,
658 移転先のビルを探した結果,
659 不動産業者Fが
660 - 8 -
661
662 所有する地方裁判所前新築ビル一階の一室(以下「新事務所」という。
663
664 )を借りることとなった。
665
666
667 そして,
668 AとBは,
669 同年4月10日,
670 旧事務所の明渡しに関して,
671 以下の事項を合意し,
672 A
673 は,
674 その合意に従って,
675 旧事務所を明け渡した。
676
677
678
679
680 AとBとの賃貸借契約は,
681 平成24年4月30日限りで終了する。
682
683 Bは,
684 同日,
685 Aに対して,
686
687 Aが賃借権を放棄する代償として300万円を支払い,
688 旧事務所の明渡しを受けるものとす
689 る。
690
691
692
693
694
695 Bは,
696 Aに対して,
697 旧事務所からの引越費用及び新事務所の電話工事等の内装工事費用の一
698 部補填として,
699 旧事務所明渡し時に400万円を支払う。
700
701
702
703 以上の事案について,
704 以下の設問に答えなさい。
705
706
707 〔設
708 1
709
710 問〕
711 Dが司法試験に合格する前のA法律事務所で事務員としてフルタイムで勤務していた際に,
712 A
713 がDに支払った給料は,
714 Aの所得の金額の計算上,
715 どのように扱われるか,
716 関係する所得税法の
717 規定の趣旨に言及しつつ,
718 その金額が相当であったかも含めて検討せよ。
719
720
721
722 2
723
724 Dが弁護士となった後に,
725 AがDに支払った報酬は,
726 Aの所得の金額の計算上,
727 どのように扱
728 われるか,
729 異なる見解にも言及しつつ自説を述べよ。
730
731
732
733 3
734
735 AがBから支払を受けた問題文2及びの金銭は,
736 Aの所得の金額の計算上,
737 それぞれどの
738 ように扱われるか,
739 異なる見解にも言及しつつ自説を述べよ。
740
741
742
743 - 9 -
744
745 〔第2問〕(配点:50)
746 A(居住者)は,
747 住所地の市内に甲,
748 乙及び丙の3棟の建物を建てることにし,
749 建築施工をH株
750 式会社(以下「H社」という。
751
752 )に請け負わせた。
753
754 3棟はいずれも昭和49年中に竣工した。
755
756 Aは
757 甲を自身及び家族の住居として使用し,
758 乙を自身が営む小売業の店舗の1つとして使用してきたが,
759
760 丙は竣工の直後,
761 自身が代表取締役社長を務めるB株式会社(暦年を事業年度とする内国法人。
762
763 以
764 下「B社」という。
765
766 )に売却し,
767 B社は丙を本店の建物として使用してきた。
768
769
770 Aは,
771 平成24年に,
772 甲にはまだ十分に資産価値があったものの手狭になったことから,
773 甲を建
774 て替えることにし,
775 P社に解体工事を請け負わせた。
776
777 P社は,
778 解体工事の過程で,
779 甲の建築部材の
780 一部にアスベストと思われる物質が使用されていることが判明したため,
781 Q社にアスベストの使用
782 の有無に関する事前調査を実施させたところ,
783 アスベストの使用が確認されたので,
784 Q社にアスベ
785 スト除去作業をも実施させ,
786 Aから解体費用の一部として当該事前調査及び除去作業に要した費用
787 (以下「甲費用」という。
788
789 )の支払を受けた。
790
791
792 Aは,
793 甲,
794 乙及び丙の建築に当たりH社に対し,
795 アスベストの使用の可否に関する指示を全くし
796 ていなかったことから,
797 H社に乙及び丙に関するアスベストの使用の有無を照会したところ,
798 「弊
799 社では,
800 昭和50年4月1日から開始した事業年度以降はアスベストは全面的に使用しておりませ
801 んが,
802 それ以前は建築施工を請け負った建物の全てにアスベストを使用しておりましたので,
803 御照
804 会のありました乙及び丙にもアスベストが使用されております。
805
806 」との回答があった。
807
808 Aは,
809 この
810 回答を受けて両建物の扱いについて検討したが,
811 両建物はまだ十分に使用可能であり減価償却に係
812 る未償却残高も少なくなかったので,
813 あれこれ迷った末に,
814 乙については,
815 同店舗での売上げがず
816 っと不振であったことや乙の敷地は更地にした方が高く売却することができると前々から聞いてい
817 たことから,
818 乙を取り壊した上で,
819 その敷地を更地にして売却することにし,
820 他方,
821 丙については,
822
823 B社の取締役会に諮ることにした。
824
825 B社の取締役会では,
826 「当社の業績が好調な今のうちに建て替
827 えておくべきだ。
828
829 」との意見が多数を占めたため,
830 丙は建て替えられることになった。
831
832
833 乙及び丙についても解体工事はP社が請け負ったが,
834 P社は,
835 アスベスト除去作業をQ社に実施
836 させ,
837 平成24年末に,
838 A及びB社からそれぞれ解体費用の一部として当該除去作業に要した費用
839 (以下「乙費用」,
840 「丙費用」という。
841
842 )の支払を受けた。
843
844 乙の解体工事は乙費用の支払の10日前
845 に完了したが,
846 床面積が乙の10倍ほどあった丙については,
847 Q社によるアスベスト除去作業は丙
848 費用の支払の10日前に完了したものの,
849 解体工事は平成25年3月末までかかった。
850
851 P社は,
852 そ
853 の翌月,
854 A及びB社から解体費用の残額の支払を受けた。
855
856
857 Aは,
858 乙の敷地であった土地を,
859 乙の取壊しの前よりもかなり高い額で売却する契約を,
860 乙の解
861 体工事完了の翌日に締結することができ,
862 平成24年中に当該土地の引渡しを行い,
863 その売却代金
864 を小売業の借入金の返済に充てた。
865
866
867 アスベストは,
868 甲,
869 乙及び丙の建築当時は,
870 法的規制の対象とはされておらず,
871 これを建築部材
872 として使用することは何ら違法ではなく一般に行われていたが,
873 その後アスベストに対する法的規
874 制が段階的に強化され,
875 平成16年には製造,
876 使用等が法令上原則的に禁止され,
877 平成17年には,
878
879 建築物等の解体等の作業を行う事業者に対して,
880 作業員の健康被害を防ぐために、
881 アスベストの使
882 用の有無に関する事前調査,
883 アスベストが使用された建築物等の解体等の作業を行う場合における
884 アスベストの除去等の作業などが,
885 法令上義務付けられた。
886
887
888 以上の事案について,
889 以下の設問に答えなさい。
890
891
892 〔設
893 1
894
895 問〕
896 Aは甲費用について雑損控除の適用を受けることができるか。
897
898 雑損控除制度の趣旨に言及しつ
899 つ,
900 検討しなさい。
901
902
903
904 2
905
906 乙費用は,
907 Aに対する所得税の課税上,
908 どのように取り扱われるか。
909
910
911 - 10 -
912
913 3
914
915 丙費用は,
916 B社に対する法人税の課税上,
917 どのように取り扱われるか。
918
919
920
921 (参照条文)所得税法施行令
922 (災害の範囲)
923 第9条
924
925 法第2条第1項第27号(災害の意義)に規定する政令で定める災害は,
926 冷害,
927 雪害,
928 干害,
929
930
931 落雷,
932 噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害,
933 火薬類の爆発その他の人為による異常な
934 災害並びに害虫,
935 害獣その他の生物による異常な災害とする。
936
937
938 (雑損控除の対象となる雑損失の範囲等)
939 第206条
940
941 法第72条第1項(雑損控除)に規定する政令で定めるやむを得ない支出は,
942 次に掲げ
943
944 る支出とする。
945
946
947 一
948
949 災害により法第72条第1項に規定する資産(以下この項において「住宅家財等」という。
950
951 )
952
953 が滅失し,
954 損壊し又はその価値が減少したことによる当該住宅家財等の取壊し又は除去のための
955 支出その他の付随する支出
956 二
957
958 災害により住宅家財等が損壊し又はその価値が減少した場合その他災害により当該住宅家財等
959 を使用することが困難となつた場合において,
960 その災害のやんだ日の翌日から1年を経過した日
961 (大規模な災害の場合その他やむを得ない事情がある場合には,
962 3年を経過した日)の前日まで
963 にした次に掲げる支出その他これらに類する支出
964 イ
965
966 災害により生じた土砂その他の障害物を除去するための支出
967
968 ロ
969
970 当該住宅家財等の原状回復のための支出(当該災害により生じた当該住宅家財等の第3項に
971 規定する損失の金額に相当する部分の支出を除く。
972
973 第4号において同じ。
974
975 )
976
977 ハ
978 三
979
980 当該住宅家財等の損壊又はその価値の減少を防止するための支出
981 災害により住宅家財等につき現に被害が生じ,
982 又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込ま
983
984 れる場合において,
985 当該住宅家財等に係る被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置
986 を講ずるための支出
987 四
988 2
989
990 盗難又は横領による損失が生じた住宅家財等の原状回復のための支出その他これに類する支出
991 法第72条第1項第1号に規定する政令で定める金額は,
992 その年においてした前項第1号から第
993
994 3号までに掲げる支出の金額(保険金,
995 損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる
996 部分の金額を除く。
997
998 )とする。
999
1000
1001 3
1002
1003 法第72条第1項の規定を適用する場合には,
1004 同項に規定する資産について受けた損失の金額は,
1005
1006 当該損失を生じた時の直前におけるその資産の価額を基礎として計算するものとする。
1007
1008
1009
1010 - 11 -
1011
1012 - 12 -
1013
1014 論文式試験問題集[経
1015
1016 - 13 -
1017
1018 済
1019
1020 法]
1021
1022 [経
1023
1024 済
1025
1026 法]
1027
1028 〔第1問〕(配点:50)
1029 A社は,
1030 消費財甲製品のメーカーである。
1031
1032
1033 甲製品の用途には,
1034 乙製品を用いることもできるが,
1035 乙製品は甲製品に比べて品質が大きく劣る
1036 ことから,
1037 甲製品の代わりに乙製品が用いられることはほとんどない。
1038
1039 甲製品のメーカーは,
1040 日本
1041 国内には,
1042 A社のほか3社存在している。
1043
1044 甲製品は,
1045 外国でも製造・販売されているが,
1046 外国製の
1047 甲製品は日本へほとんど輸入されていない。
1048
1049
1050 日本国内では,
1051 甲製品の最終利用者には大口の利用者と小口の利用者とが存在するが,
1052 大口利用
1053 者向けと小口利用者向けとでは,
1054 甲製品の取引数量や取引価格などに大きな差が存在している。
1055
1056 日
1057 本における甲製品の販売全体に占める割合では,
1058 数量,
1059 金額とも大口利用者向けが圧倒的割合を占
1060 めている。
1061
1062
1063 甲製品は,
1064 大口利用者向けには,
1065 甲製品のメーカーが大口利用者向け販売業者に対して販売し,
1066
1067 大口利用者向け販売業者が大口利用者に対して販売している。
1068
1069 小口利用者向けには,
1070 甲製品のメー
1071 カーがホームセンター等の量販店に対して甲製品を販売し,
1072 量販店がその甲製品を小口利用者に対
1073 して販売している。
1074
1075 甲製品を小口利用者向けに販売するほとんどの量販店では,
1076 A社を含め全ての
1077 メーカーの甲製品が販売されている。
1078
1079 大口利用者向け販売業者の中には,
1080 自らの判断でA社の甲製
1081 品のみを取り扱う販売業者も存在するが,
1082 多くの大口利用者向け販売業者は複数のメーカーの甲製
1083 品を取り扱っている。
1084
1085 A社の甲製品は,
1086 特に大口利用者の間で広く認知され,
1087 強いブランド力を有
1088 しており,
1089 大口利用者向け販売業者においては,
1090 甲製品の品揃えの中にA社の甲製品を相当割合確
1091 保しておくことが重要となっている。
1092
1093
1094 国内の甲製品の販売シェアは,
1095 甲製品全体,
1096 大口利用者向け,
1097 小口利用者向けのいずれにおいて
1098 も,
1099 長期にわたり変化がなく,
1100 A社は,
1101 1位でおおむね70パーセントのシェアを占め,
1102 高水準の
1103 価格を維持してきた。
1104
1105
1106 甲製品の国内需要は,
1107 長期にわたり低迷していたが,
1108 一昨年の終わり頃以降,
1109 経済をめぐる大き
1110 な環境の変化に伴い,
1111 その需要が急速に高まってきたことから,
1112 これまで甲製品を製造・販売した
1113 ことのない複数のメーカーが,
1114 国内で新規に甲製品を製造・販売することを計画するに至った。
1115
1116 ま
1117 た,
1118 既存の甲製品のメーカーも,
1119 従来,
1120 需要低迷のため遊休状態であった製造設備を利用し,
1121 甲製
1122 品の製造を増大し始めている。
1123
1124 A社は,
1125 このような大きな環境の変化に直面して,
1126 従来安定的に維
1127 持してきた自社の甲製品の販売シェアや販売収益に大きな影響が出てくるという危機感を抱くに至
1128 った。
1129
1130 また,
1131 A社は,
1132 自社製品の販売先を確保することにより,
1133 自社の遊休製造設備をフル稼働さ
1134 せ,
1135 甲製品の製造コストを大幅に削減したいと考えた。
1136
1137
1138 そこで,
1139 A社は,
1140 甲製品の大口利用者向け販売業者のうち,
1141 A社以外のメーカーの甲製品も併せ
1142 取り扱ってきた取引先販売業者の過半を占める販売業者との間において,
1143 当該販売業者の甲製品の
1144 購入全体に占めるA社の甲製品の割合の多寡に応じて販売価格からの割戻金を支払うこととし,
1145 そ
1146 の割合が高くなるにつれて高額の割戻金を支払い,
1147 割合が100パーセントとなる場合には最高額
1148 の割戻金を支払うことを約束するに至った。
1149
1150 また,
1151 A社は,
1152 従来A社の甲製品のみを取り扱ってき
1153 た者との間で,
1154 今後も継続してA社の甲製品のみを取り扱う約束を取り付け,
1155 上記最高額の割戻金
1156 を支払うこととした。
1157
1158
1159 その後,
1160 国内で新規に甲製品を製造・販売することを計画していたメーカーは,
1161 その計画を取り
1162 やめた。
1163
1164 また,
1165 A社以外の甲製品の既存メーカーでは,
1166 取引先販売業者の数が減少し,
1167 取引数量も
1168 減少している。
1169
1170
1171 〔設
1172
1173 問〕
1174
1175 上記のA社の行為について,
1176 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止
1177 - 14 -
1178
1179 法」という。
1180
1181 )上の問題点を分析して検討しなさい。
1182
1183 なお,
1184 課徴金の賦課につき言及する必要はな
1185 い。
1186
1187
1188
1189 - 15 -
1190
1191 〔第2問〕(配点:50)
1192 X市は,
1193 X市内の道路舗装工事のうち,
1194 特定の条件を満たしたものについて,
1195 指名競争入札によ
1196 り発注していた。
1197
1198
1199 この指名競争入札に参加できるのは,
1200 X市の資格審査に合格したA等級の建設業者(以下「A等
1201 級業者」という。
1202
1203 )のみであり,
1204 A等級業者としては,
1205 AないしOの15社(以下,
1206 併せて「15
1207 社」という。
1208
1209 )のほか5社(以下「5社」という。
1210
1211 )が存在し,
1212 いずれも,
1213 X市又はX市に隣接する
1214 地域に本拠を置いていた。
1215
1216 X市は,
1217 工事の内容,
1218 場所等を考慮して,
1219 工事ごとに15社及び5社の
1220 計20社の中から10社を指名していた。
1221
1222
1223 X市は,
1224 平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に,
1225 上記の特定の条件を満たし
1226 た道路舗装工事(以下「X市発注の特定舗装工事」という。
1227
1228 )を50件(以下「50物件」という。
1229
1230 )
1231 発注した。
1232
1233 50物件のそれぞれにおいて指名された10社の中には,
1234 いずれも,15社及び5社に
1235 属する業者が含まれていた。
1236
1237
1238 X市は,
1239 X市発注の特定舗装工事において,
1240 予定価格(注)を入札前に公表していたが,
1241 入札に
1242 指名した業者名は落札者との契約締結後に公表していた。
1243
1244
1245 50物件中40物件(以下「40物件」という。
1246
1247 )において,
1248 15社の中でX市から指名を受け
1249 た業者のうち当該工事の受注を希望する者は,
1250 他の14社に電話をするなどして,
1251 14社のうちど
1252 の社が相指名業者になったのか,
1253 他に受注希望者がいるかを確認の上,
1254 自社が当該工事の受注を希
1255 望する旨を告げていた。
1256
1257 40物件のうち,
1258 35物件(以下「35物件」という。
1259
1260 )については,
1261 1
1262 5社のうち受注希望を表明した業者が1社のみであったので,
1263 その業者が受注予定者とされた。
1264
1265
1266 40物件のうち,
1267 5物件(以下「5物件」という。
1268
1269 )については,
1270 15社の中に受注希望者が複
1271 数存在したため,
1272 当該受注希望者間の話合いで受注予定者が決定された。
1273
1274 この受注希望者間の話合
1275 いにおいては,
1276 発注される工事の施工場所が自社に近い等の「地域性」,
1277 過去受注した工事の継続
1278 工事である等の「継続性」,
1279 その他の条件が考慮された。
1280
1281
1282 40物件の全てにおいて,
1283 15社の中の受注予定者は,
1284 X市が公表する予定価格を参考にして自
1285 社の入札価格を決定した。
1286
1287 受注予定者は,
1288 自社の入札価格が最低価格となるように15社の中の相
1289 指名業者の入札すべき価格をも決定し,
1290 当該相指名業者に対し,
1291 入札前までに,
1292 この価格を電話等
1293 で連絡した。
1294
1295
1296 35物件のうち33物件,
1297 5物件のうち4物件は,
1298 受注予定者が落札したが,
1299 これら以外の3物
1300 件については,
1301 5社のいずれかが受注予定者より低価格で応札したため,
1302 受注予定者は落札できな
1303 かった。
1304
1305 15社のうち,
1306 A,
1307 B,
1308 C,
1309 Dの4社は,
1310 50物件をいずれも落札しなかったが,
1311 40物
1312 件中の複数の入札において,
1313 15社の中の他の業者から,
1314 指名の有無や受注希望の有無を確認され,
1315
1316 受注予定者から連絡を受けた価格で応札した。
1317
1318
1319 50物件中,
1320 40物件以外の10物件(以下「10物件」という。
1321
1322 )については,
1323 入札前に指名
1324 業者の確認,
1325 受注希望の表明及び価格の連絡が行われたことは,
1326 いずれも確認されていない。
1327
1328 10
1329 物件中,
1330 15社のうちのいずれかの業者が落札した物件は7物件であった。
1331
1332
1333 50物件について,
1334 落札価格が予定価格に占める割合(以下「落札率」という。
1335
1336 )は,
1337 最高が9
1338 9パーセント,
1339 最低が90パーセント,
1340 平均が97パーセントで,
1341 40物件の落札率と10物件の
1342 落札率に顕著な差はなかった。
1343
1344
1345 〔設
1346
1347 問〕
1348
1349 15社の行為について独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
1350
1351 なお,
1352 課徴金の賦課につ
1353 き言及する必要はない。
1354
1355
1356 (注)予定価格は,
1357 競争入札を執行する者が,
1358 仕様書,
1359 設計書等に基づき入札に付する事項の総額に
1360 ついて作成するものであり,
1361 予定価格の制限の範囲内で最低の価格による入札を行った者が落札
1362 - 16 -
1363
1364 者となる。
1365
1366
1367
1368 - 17 -
1369
1370 - 18 -
1371
1372 論文式試験問題集[知的財産法]
1373
1374 - 19 -
1375
1376 [知的財産法]
1377 〔第1問〕(配点:50)
1378 製薬会社甲は,
1379 認知症に効く新薬の開発を進め,
1380 数々の実験を重ねた結果,
1381 製法Aによって,
1382 認
1383 知症治療に優れた効能を発揮する化合物αを製造することに成功した。
1384
1385 そこで,
1386 甲は,
1387 特許請求の
1388 範囲を「化合物αを有効成分とする認知症治療剤」とする特許出願をした。
1389
1390 ところが,
1391 その出願前
1392 に既に頒布されていた創薬に関する公知文献に化合物αの構造が記載されていることを理由とし
1393 て,
1394 特許庁から拒絶理由通知が発せられたため,
1395 甲は,
1396 特許請求の範囲を「製法Aによって生産さ
1397 れる化合物αを有効成分とする認知症治療剤」(以下「本件発明」という。
1398
1399 )に補正したところ,
1400 特
1401 許査定がされ,
1402 特許権の設定登録を受けた(以下,
1403 その特許権を「本件特許権」という。
1404
1405 )。
1406
1407 その後,
1408
1409 甲は,
1410 医薬品を製造・販売するために必要な薬事法所定の承認を得た上で,
1411 本件発明の実施品とし
1412 て「製法Aによって生産される化合物αを有効成分とする認知症治療カプセル」(以下「Aカプセ
1413 ル」という。
1414
1415 )を製造・販売している。
1416
1417
1418 以上の事実関係を前提として,
1419 以下の設問に答えよ。
1420
1421 なお,
1422 薬事法固有の問題を考慮する必要は
1423 ない。
1424
1425
1426 〔設
1427
1428 問〕
1429
1430 1.製薬会社乙は,
1431 製法Aによって生産される化合物αを有効成分とする医薬品が所定の効能を
1432 有するか疑問を抱き,
1433 これを確かめる目的で,
1434 甲に無断で,
1435 本件発明の技術的範囲に属する医
1436 薬品を製造して実験をした結果,
1437 所定の効能を有することを確認した(以下「乙行為1」とい
1438 う。
1439
1440 )。
1441
1442
1443 そこで,
1444 乙は,
1445 化合物αを有効成分としつつも,
1446 薬剤の有効成分が体内で徐々に放出される
1447 ようにして,
1448 より少ない服用回数で薬効を生ずるようにした新たな医薬品を開発するために,
1449
1450 甲に無断で,
1451 本件発明の技術的範囲に属する医薬品を製造し実験を重ねた(以下「乙行為2」
1452 という。
1453
1454 )。
1455
1456
1457 乙は,
1458 上記実験によっても所望の医薬品の開発に至らなかったが,
1459 実験中,
1460 偶然にも化合物
1461 αを製法Bによって生産することに成功した。
1462
1463 そこで,
1464 乙は,
1465 「製法Bによって生産される化
1466 合物αを有効成分とする認知症治療カプセル」(これを「Bカプセル」という。
1467
1468 )を開発し,
1469 薬
1470 事法所定の承認を得た上で,
1471 甲に無断で,
1472 これを製造・販売している(以下「乙行為3」とい
1473 う。
1474
1475 )。
1476
1477
1478 甲は,
1479 乙に対し,
1480 上記乙行為1ないし3は,
1481 いずれも本件特許権を侵害するものであるとし
1482 て,
1483 乙行為3の差止め及び乙行為1ないし3に基づく損害賠償を求める訴訟を提起した。
1484
1485
1486 同訴訟において,
1487 甲及び乙は,
1488 それぞれどのような主張をすることができるか。
1489
1490
1491 2.製薬会社丙は,
1492 本件特許権の存続期間が満了した後にAカプセルと同一の製法により同一の
1493 有効成分を有する後発医薬品(以下「Cカプセル」という。
1494
1495 )を製造・販売する計画を立て,
1496
1497 Cカプセルにつき薬事法所定の承認申請を行う際に必要な資料を揃えるために,
1498 甲に無断で,
1499
1500 Cカプセルを実際に製造して承認申請に必要な試験を行い,
1501 その結果,
1502 Cカプセルにつき薬事
1503 法所定の承認を得た(以下「丙行為1」という。
1504
1505
1506 )。
1507
1508
1509 そこで,
1510 丙は,
1511 Cカプセルの将来の販売に備え,
1512 化合物αを有効成分とする医薬品が今なお
1513 市場においてどの程度の需要があるかを調査するために,
1514 Cカプセルを少量製造してサンプル
1515 として提供し,
1516 市場調査を実施した(以下「丙行為2」という。
1517
1518 )。
1519
1520
1521 丙は,
1522 上記調査で満足のいく結果を得たため,
1523 本件特許権の存続期間満了前に,
1524 Cカプセル
1525 を将来の販売に備えて大量に製造している(以下「丙行為3」という。
1526
1527 )。
1528
1529
1530 甲は,
1531 丙に対し,
1532 上記丙行為1ないし3は,
1533 いずれも本件特許権を侵害するものであるとし
1534 て,
1535 丙行為3の差止め及び丙行為1ないし3に基づく損害賠償を求める訴訟を提起した。
1536
1537
1538 - 20 -
1539
1540 同訴訟において,
1541 甲及び丙は,
1542 それぞれどのような主張をすることができるか。
1543
1544
1545 3.製薬会社丁は,
1546 Aカプセルと同一の効能を有する錠剤の医薬品(以下「D錠」という。
1547
1548 )を
1549 開発し,
1550 薬事法所定の承認を得た上で,
1551 Aカプセルを市場において大量に購入した上,
1552 甲に無
1553 断で,
1554 Aカプセルから化合物αを含む薬剤を取り出し,
1555 化合物αに化学反応を生じさせないよ
1556 うに,
1557 上記薬剤に精製水を加えて溶かし,
1558 化合物αを再精製し,
1559 これを固めて錠剤とし,
1560 この
1561 錠剤に特殊な皮膜を施すことによって,
1562 D錠を製造し,
1563 これを販売している。
1564
1565
1566 甲は,
1567 丁に対し,
1568 D錠の製造・販売行為は,
1569 本件特許権を侵害するものであるとして,
1570 D錠
1571 の製造・販売の差止めを求める訴訟を提起した。
1572
1573
1574 同訴訟において,
1575 甲及び丁は,
1576 それぞれどのような主張をすることができるか。
1577
1578
1579
1580 - 21 -
1581
1582 〔第2問〕(配点:50)
1583 Aは,
1584 見た人が住居とは思えないような,
1585 奇抜な家に住みたいと考え,
1586 Bとの間で設計請負契約
1587 を締結し,
1588 Bは,
1589 同契約に基づいて,
1590 斬新なデザインを考えつき,
1591 これを記した設計図αを作成し
1592 た。
1593
1594 しかしながら,
1595 請負代金をめぐってAとBの関係がうまくいかなくなったため,
1596 当該契約は解
1597 除された。
1598
1599 その際,
1600 Aは,
1601 Bから渡された設計図αをBに返却したが,
1602 返却前にBに無断でそのコ
1603 ピーを取っていた。
1604
1605 また,
1606 Bは,
1607 設計図αに設計者としてBの氏名を記載していたが,
1608 設計図αは
1609 AとB以外には知られていなかったため,
1610 Aは,
1611 そのコピー上のBの氏名を抹消して自分の氏名を
1612 記載した。
1613
1614
1615 その後,
1616 Aは,
1617 複数の建築業者に対して,
1618 Aがコピーした設計図αを,
1619 自分が作成したものと偽
1620 って見せた。
1621
1622 その上で,
1623 Aは,
1624 それらの建築業者の中からCを選んでその建築を依頼し,
1625 Cは,
1626 こ
1627 れに従ってAの住居(以下「A住居」という。
1628
1629 )を建築した。
1630
1631 A住居は,
1632 そのデザインの斬新さが
1633 評判となって,
1634 路上から見物する人が絶えなかった。
1635
1636 Aは,
1637 A住居に住み始めてから数年後に別の
1638 土地に転居しなければならなくなったため,
1639 不動産業者を介して,
1640 これをDに売却した。
1641
1642
1643 Dは,
1644 自分の住居であるA住居が注目されることには満足していたが,
1645 その玄関が余りに派手過
1646 ぎると感じたため,
1647 これをやや地味な印象を与えるように改築した。
1648
1649
1650 以上の事実関係を前提として,
1651 以下の設問に答えよ。
1652
1653
1654 〔設
1655
1656 問〕
1657
1658 1.Bは,
1659 Aに対してどのような請求をすることができるか。
1660
1661
1662 2.Bは,
1663 Dに対してどのような請求をすることができるか。
1664
1665
1666 3.Eは,
1667 A住居に興味を持ち,
1668 Dに無断で写真撮影した。
1669
1670 そして,
1671 その写真に基づいて,
1672 A住
1673 居のミニチュアを多数製作し,
1674 これを販売している。
1675
1676
1677 Bは,
1678 Eに対して,
1679 著作権に基づき,
1680 A住居のミニチュアの製作販売の差止めを請求するた
1681 めに,
1682 どのような主張をすることができるか。
1683
1684
1685 これに対して,
1686 Eは,
1687 どのような主張をすることができるか。
1688
1689
1690
1691 - 22 -
1692
1693 論文式試験問題集[労
1694
1695 - 23 -
1696
1697 働
1698
1699 法]
1700
1701 [労
1702
1703 働
1704
1705 法]
1706
1707 〔第1問〕(配点:50)
1708 次の事例について,
1709 弁護士であるあなたが,
1710 X1,
1711 X2及びX3から,
1712 Y社に対し,
1713 訴えの提起
1714 を行いたいとの相談を受けた場合に検討すべき法律上の問題点を指摘し,
1715 それについてのあなたの
1716 見解を述べなさい。
1717
1718
1719 なお,
1720 Y社の就業規則(抜粋)は,
1721 後記のとおりである。
1722
1723
1724 【事
1725
1726 例】
1727 Y社は,
1728 自動車製造等を業とする株式会社である。
1729
1730
1731 X1ら50名は,
1732 いずれも機械工としてY社に採用され,
1733 その後一貫して甲工場にあるスポー
1734
1735 ツカー部門においてエンジンの組立て作業に従事しており,
1736 短い者でも十数年間,
1737 長い者は二十
1738 数年間の経験を持つ,
1739 熟練機械工であった。
1740
1741
1742 X2及びX3の両名は,
1743 いずれも,
1744 平成元年3月に工学修士の学位を取得し,
1745 同年4月,
1746 Y社
1747 にスポーツカー用エンジンの開発設計の研究者として採用され,
1748 その後一貫して同スポーツカー
1749 部門において新型エンジンの開発設計を担当してきた。
1750
1751
1752 Y社は,
1753 自動車製造業界全体が不況にあえいでいた時期に,
1754 あえて大規模な設備投資と事業拡
1755 大を推し進めたことが災いし,
1756 平成24年期には累積赤字が50億円を超える事態に陥ったため,
1757
1758 採算のとれていない同スポーツカー部門の閉鎖を決定した。
1759
1760
1761 そこで,
1762 Y社は,
1763 平成25年6月6日,
1764 X1ら50名の熟練機械工に対し,
1765 甲工場で生産中の
1766 小型乗用車の塗装等他職種への異動を命じたが,
1767 X1は,
1768 機械工としての勤務を希望し,
1769 当該命
1770 令に応じていない。
1771
1772 なお,
1773 Y社は,
1774 当該命令を行うに当たり,
1775 X1ら50名の意向を一切聴取し
1776 なかった。
1777
1778
1779 また,
1780 Y社は,
1781 同年6月20日,
1782 X2及びX3に対し,
1783 早期退職募集と再雇用の提案を行い,
1784
1785 通常の退職金に加えてその1割を増額した割増退職金の支給を提示した。
1786
1787 Y社が提案した再雇用
1788 の内容は,
1789 甲工場内の営業事務所の営業職として採用することと,
1790 エンジン開発設計の研究者の
1791 みを支給対象とする研究特別手当(月額2万円)がなくなることを除き,
1792 従来と同様の労働条件
1793 であった。
1794
1795
1796 早期退職募集の応募期限は同年8月30日であったところ,
1797 X2は,
1798 同日,
1799 Y社に対し,
1800 前記
1801 再雇用の提案の内容につき,
1802 後に裁判で争うことを伝えた上で,
1803 早期退職募集及び再雇用に応ず
1804 る旨を申し出たが,
1805 Y社はこれを拒否した。
1806
1807 また,
1808 X3は,
1809 前記応募期限までに早期退職募集に
1810 応募せず,
1811 Y社に対し従前の労働条件で雇用を継続するよう求めた。
1812
1813
1814 そこで,
1815 Y社は,
1816 同年10月31日付けでX2及びX3を解雇する旨の意思表示を行った。
1817
1818
1819 【就業規則(抜粋)】
1820 (人事異動)
1821 第8条
1822
1823 会社は,
1824 業務上必要がある場合には,
1825 従業員に対し,
1826 あらかじめその意向を聴取した上で,
1827
1828
1829 就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
1830
1831
1832 2
1833
1834 前項の場合,
1835 従業員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
1836
1837
1838
1839 - 24 -
1840
1841 〔第2問〕(配点:50)
1842 労働組合法における「労働者」の概念につき,
1843 労働基準法におけるそれとの異同に言及しつつ概
1844 説した上,
1845 次の事例の甲が,
1846 労働組合法における「労働者」に該当するかについて論じなさい。
1847
1848
1849 なお,
1850 A社による団体交渉拒否の適法性について論じる必要はない。
1851
1852
1853 【事
1854
1855 例】
1856
1857 1
1858
1859 A社は,
1860 コピー機等ビジネス事務設備機器の販売及び修理補修等を業とする株式会社であ
1861 る。
1862
1863 甲は,
1864 A社と業務委託契約を締結してビジネス事務機器の修理補修等の業務に従事する
1865 「カスタマーサポーター」(以下「CS」という。
1866
1867 )であり,
1868 CSを構成員とするB労働組合
1869 に加入している。
1870
1871
1872
1873
1874
1875 A社とCSは,
1876 A社が作成した「業務委託に関する覚書」と題する文書に記載した内容で
1877 業務委託契約を締結しており,
1878 同覚書には,
1879 A社とCSとがそれぞれ独立した事業者である
1880 ことを認識した上で契約を遂行する旨の条項がある。
1881
1882 A社における修理補修等の業務の大部
1883 分は,
1884 総勢約600名のCSによって行われている。
1885
1886
1887
1888 2
1889
1890 A社は,
1891 顧客からの修理補修等の発注を修理受付センターで受け付けた後,
1892 顧客の所在場
1893 所を担当するCSに割り振って業務を依頼する。
1894
1895 CSは,
1896 原則として,
1897 業務日の午前8時半
1898 から午後7時までの間にA社から発注依頼連絡を受ける。
1899
1900 依頼を受けたCSがこれを応諾し
1901 た場合には,
1902 当該CSが修理補修等を遂行するが,
1903 当該CSが依頼を断った場合には,
1904 A社
1905 は他のCSに依頼している。
1906
1907 CSが応諾を拒否する割合は1%に過ぎないが,
1908 一方,
1909 CSが
1910 応諾を拒否した理由が,
1911 業務の遂行とは無関係の事情によるものであったとしても,
1912 A社が
1913 それを理由に業務委託契約の債務不履行であると判断することはない。
1914
1915 また,
1916 CSが独自に
1917 営業活動を行って修理補修等を行うことも認められている。
1918
1919
1920
1921
1922
1923 A社とCSとの間の業務委託契約は,
1924 前記覚書によって規律され,
1925 その内容をCSの側で
1926 変更した事例はない。
1927
1928 また,
1929 A社は,
1930 全国で一定水準以上の技術による確実な事務の遂行に
1931 資するため,
1932 CSに対し,
1933 修理補修等の作業手順,
1934 CSとしての心構えや役割,
1935 接客態度等
1936 を記載した各種マニュアルを配布し,
1937 これに基づく業務の遂行を求めている。
1938
1939 一方,
1940 委託さ
1941 れた業務をどの時間帯に,
1942 いかなる方法で行うかについては,
1943 CSの裁量に委ねられている。
1944
1945
1946
1947
1948
1949 A社は,
1950 ランキング制度を設け,
1951 毎年1回,
1952 CSを能力,
1953 実績及び経験を基に評価し,
1954 5
1955 段階ある級の昇格,
1956 更新及び降格の判定を行っている。
1957
1958 また,
1959 A社は,
1960 CSを全国の担当地
1961 域に配置して修理補修等の業務に対応させ,
1962 CSと調整しつつその業務日や休日を指定し,
1963
1964 日曜日や祝日についても交替で業務を担当するよう要請している。
1965
1966
1967
1968 3
1969
1970 CSは,
1971 修理補修等の業務が終了した後,
1972 顧客から代金を回収し,
1973 週1回程度の割合でA社
1974 に振込送金するほか,
1975 業務日ごとに行動予定,
1976 経過,
1977 結果等をA社に報告している。
1978
1979
1980 顧客に対する請求金額は,
1981 A社が,
1982 商品や修理内容に従ってあらかじめ全国一律で決定す
1983 るが,
1984 CSは,
1985 修理補修等の難易度や別のCSを補助者として使用したことなどを理由に,
1986
1987 その裁量によって,
1988 ある程度割増しして顧客に請求することが認められている。
1989
1990
1991 A社がCSに支払う業務委託手数料は,
1992 CSが顧客に請求する金額に,
1993 A社の前記ランキ
1994 ング制度における当該CSの属する級ごとに定められた一定率を乗ずる方法で支払われてい
1995 る。
1996
1997
1998 過去1年間のCSの作業時間は,
1999 1件平均約70分,
2000 1日平均計3.7時間であり,
2001 A社
2002 からの平均依頼件数は月113件,
2003 平均休日取得日数は月5.8日であった。
2004
2005
2006
2007 4
2008
2009 B労働組合が,
2010 A社に対して,
2011 業務委託条件を変更する場合にはB労働組合と協議すること
2012 や,
2013 最低年収額の保障を求めて団体交渉を申し入れたところ,
2014 A社は,
2015 甲らCSは労働組合法
2016 上の労働者に当たらないとして団体交渉を拒否した。
2017
2018
2019
2020 - 25 -
2021
2022 - 26 -
2023
2024 論文式試験問題集[環
2025
2026 - 27 -
2027
2028 境
2029
2030 法]
2031
2032 [環
2033
2034 境
2035
2036 法]
2037
2038 〔第1問〕(配点:50)
2039 A社は,
2040 B県C村内にある自社敷地において,
2041 水質汚濁防止法に基づき,
2042 テトラクロロエチレン
2043 を液体状態で貯蔵する地下タンク(以下「本件地下タンク」という。
2044
2045 )を設置しようとしている。
2046
2047
2048 この場合において,
2049 【資料】を参照しつつ,
2050 以下の問いに答えよ。
2051
2052
2053 〔設問1〕
2054 水質汚濁防止法は,
2055 2011年改正によって,
2056 本件地下タンクの設置のように,
2057 公共用水域に
2058 排水をしない行為を規制した。
2059
2060 このような行為を規制することの妥当性について,
2061 環境法の基本
2062 的考え方を2つ挙げ,
2063 その観点から説明せよ。
2064
2065
2066 〔設問2〕
2067 A社の担当者Dは,
2068 2013年1月9日に,
2069 事前相談のためにB県の担当課に協議に出向いた
2070 ところ,
2071 同課は,
2072 かねてより,
2073 E内水面漁業協同組合(以下「E組合」という。
2074
2075 )からの設置反
2076 対陳情を受けていたために,
2077 Dに対して,
2078 E組合の同意書を取得の上,
2079 これを添付して届け出る
2080 ように指導した。
2081
2082 A社は,
2083 何度も同意書の取得を試みたが,
2084 成功しなかった。
2085
2086
2087 同意書の取得は不可能と判断したA社は,
2088 2013年10月9日に,
2089 B県担当課宛てに,
2090 配達
2091 証明付郵便で,
2092 水質汚濁防止法上必要とされる届出書及び関係書類一式を送付し,
2093 同郵便は,
2094 同
2095 月10日に配達された。
2096
2097 しかし,
2098 3日後,
2099 「水質汚濁防止法上必要とされる届出書及び関係書類
2100 一式は配達されたが,
2101 なおE組合の同意書が添付されていない。
2102
2103 このため,
2104 届出はまだ完了して
2105 いない。
2106
2107 同意書の取得についてさらなる努力を期待する。
2108
2109 」という趣旨の手紙と一緒に,
2110 送付し
2111 たものがそのままA社に返送されてきた。
2112
2113 A社はどのように対応しようかと思案していたが,
2114 結
2115 局本件地下タンクを設置することを決意した。
2116
2117
2118 ただ,
2119 A社の代表取締役Fは,
2120 水質汚濁防止法のもとで刑事責任を問われることを懸念し,
2121 2
2122 013年12月1日に弁護士Gのもとを訪れ,
2123 2014年1月以降に設置することについて意見
2124 を求めた。
2125
2126 Gは,
2127
2128 「設置に問題はない。
2129
2130 」旨を述べた。
2131
2132 Gがこのように答えた理由について論ぜよ。
2133
2134
2135 〔設問3〕
2136 その後,
2137 本件地下タンクは,
2138 適法に設置された。
2139
2140 ところが,
2141 テトラクロロエチレンを含む水の
2142 受入れをしている際に,
2143 A社従業員のバルブ操作のミスが原因で,
2144 本件地下タンクから,
2145 テトラ
2146 クロロエチレンを含む水が大量にあふれ出し,
2147 事業場の地下に浸透した。
2148
2149 B県の調査によって,
2150
2151 敷地境界において,
2152 地下水環境基準を大幅に超過する地下水汚染が確認された。
2153
2154 事業場の隣地に
2155 は,
2156 飲用井戸があり,
2157 現在も利用されている。
2158
2159 B県知事は,
2160 本件地下タンクの使用,
2161 及び地下水
2162 の汚染に関して,
2163 A社に対し,
2164 水質汚濁防止法上,
2165 どのような措置を講ずることができるかを説
2166 明せよ。
2167
2168
2169 【資
2170
2171
2172 料】
2173 水質汚濁防止法施行令(昭和46年6月17日政令第188号)(抜粋)
2174
2175 (カドミウム等の物質)
2176 第2条
2177
2178 法第2条第2項第1号の政令で定める物質は,
2179 次に掲げる物質とする。
2180
2181
2182
2183 一
2184
2185 カドミウム及びその化合物
2186
2187 二
2188
2189 シアン化合物
2190
2191 三
2192
2193 有機燐化合物(ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名パラチオン),
2194 ジメチル
2195 パラニトロフエニルチオホスフエイト(別名メチルパラチオン),
2196 ジメチルエチルメルカプトエ
2197 - 28 -
2198
2199 チルチオホスフエイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホ
2200 スホネイト(別名EPN)に限る。
2201
2202 )
2203 四
2204
2205 鉛及びその化合物
2206
2207 五
2208
2209 六価クロム化合物
2210
2211 六
2212
2213 砒素及びその化合物
2214
2215 七
2216
2217 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物
2218
2219 八
2220
2221 ポリ塩化ビフェニル
2222
2223 九
2224
2225 トリクロロエチレン
2226
2227 十
2228
2229 テトラクロロエチレン
2230
2231 十一
2232
2233 ジクロロメタン
2234
2235 十二
2236
2237 四塩化炭素
2238
2239 十三
2240
2241 一・二―ジクロロエタン
2242
2243 十四
2244
2245 一・一―ジクロロエチレン
2246
2247 十五
2248
2249 一・二―ジクロロエチレン
2250
2251 十六
2252
2253 一・一・一―トリクロロエタン
2254
2255 十七
2256
2257 一・一・二―トリクロロエタン
2258
2259 十八
2260
2261 一・三―ジクロロプロペン
2262
2263 十九
2264
2265 テトラメチルチウラムジスルフイド(別名チウラム)
2266
2267 二十
2268
2269 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―s―トリアジン(別名シマジン)
2270
2271 二十一
2272
2273 S―四―クロロベンジル=N・N―ジエチルチオカルバマート(別名チオベンカルブ)
2274
2275 二十二
2276
2277 ベンゼン
2278
2279 二十三
2280
2281 セレン及びその化合物
2282
2283 二十四
2284
2285 ほう素及びその化合物
2286
2287 二十五
2288
2289 ふつ素及びその化合物
2290
2291 二十六
2292
2293 アンモニア,
2294 アンモニウム化合物,
2295 亜硝酸化合物及び硝酸化合物
2296
2297 二十七
2298
2299 塩化ビニルモノマー
2300
2301 二十八
2302
2303 一・四―ジオキサン
2304
2305 (有害物質貯蔵指定施設)
2306 第4条の4
2307
2308 法第5条第3項の政令で定める指定施設は,
2309 第2条に規定する物質を含む液状の物を貯
2310
2311 蔵する指定施設とする。
2312
2313
2314
2315
2316 水質汚濁防止法施行規則(昭和46年6月19日総理府・通商産業省令第2号)(抜粋)
2317
2318 (有害物質使用特定施設等に係る構造基準等)
2319 第8条の2
2320
2321 法第12条の4の環境省令で定める基準は,
2322 次条から第8条の7までに定めるとおりと
2323
2324 する。
2325
2326
2327 (使用の方法)
2328 第8条の7
2329
2330 有害物質使用特定施設又は有害物質貯蔵指定施設の使用の方法は,
2331 次の各号のいずれに
2332
2333 も適合することとする。
2334
2335
2336 一
2337
2338 次のいずれにも適合すること。
2339
2340
2341 イ
2342
2343 有害物質を含む水の受入れ,
2344 移替え及び分配その他の有害物質を含む水を扱う作業は,
2345 有害
2346 物質を含む水が飛散し,
2347 流出し,
2348 又は地下に浸透しない方法で行うこと。
2349
2350
2351
2352 ロ
2353
2354 有害物質を含む水の補給状況及び設備の作動状況の確認その他の施設の運転を適切に行うた
2355 めに必要な措置を講ずること。
2356
2357
2358
2359 ハ
2360
2361 有害物質を含む水が漏えいした場合には,
2362 直ちに漏えいを防止する措置を講ずるとともに,
2363
2364 当該漏えいした有害物質を含む水を回収し,
2365 再利用するか,
2366 又は生活環境保全上支障のないよ
2367 - 29 -
2368
2369 う適切に処理すること。
2370
2371
2372 二
2373
2374 前号に掲げる使用の方法並びに使用の方法に関する点検の方法及び回数を定めた管理要領が明
2375 確に定められていること。
2376
2377
2378
2379 - 30 -
2380
2381 〔第2問〕(配点:50)
2382 甲県乙市は,
2383 青い海とサンゴ礁が美しく観光業が盛んである。
2384
2385 乙市在住のAは,
2386 同市においてホ
2387 テル(以下「本件ホテル」という。
2388
2389 )を経営し,
2390 また,
2391 同市を訪れる観光客に対し,
2392 業として,
2393 体
2394 験ダイビングや同市近海のクルージングを実施している。
2395
2396 本件ホテルの部屋の海側の窓から見える
2397 景色は絶景であると評判であり,
2398 多くの観光客をひきつけてきた。
2399
2400 乙市には国定公園(以下「本件
2401 国定公園」という。
2402
2403 )が存在し,
2404 同公園内には特別地域のほか,
2405 サンゴ礁が多数見られる海域に海
2406 域公園地区の区域が存在する。
2407
2408 Aは乙市内での環境保護活動を行うためにNPO法人Bを設立し,
2409
2410 Bは公園管理団体の指定を受けている。
2411
2412
2413 その後,
2414 観光業を営むCが,
2415 本件国定公園の特別地域内に,
2416 適法な許可を得て新たに5階建ての
2417 リゾート施設の建設工事を開始した。
2418
2419 甲県知事の許可に際し,
2420 工事の施工に当たって汚濁防止膜を
2421 設置する等の措置を講じて周辺水域に赤土を流出させないことが条件とされていた。
2422
2423 しかし,
2424 Cの
2425 工事の施工は上記許可条件に反するずさんな対応にとどまり,
2426 その結果,
2427 工事に伴う赤土の流出に
2428 よりサンゴが既に一部死滅したほか,
2429 残るサンゴについても今後の更なる工事の進行により死滅が
2430 懸念される状況にある。
2431
2432 Cの工事開始に伴い本件国定公園を訪れる観光客の減少が見られ,
2433 Aの売
2434 上げも減少している。
2435
2436 また,
2437 Aは,
2438 同施設の建設により本件ホテルの部屋の海側の窓から景色が全
2439 く見えなくなることも心配している。
2440
2441
2442 〔設問1〕
2443 Aは,
2444 C及び甲県に対してどのような法的手段をとることが考えられるか。
2445
2446
2447 〔設問2〕
2448 本件国定公園内に風景が美しい土地を所有しているDは,
2449 自己の土地の風景を長く保存したい
2450 と考え,
2451 NPO法人Bに相談に来た。
2452
2453 Dの要望に応えるために,
2454 Bは法律上のどのような制度を
2455 活用できるか。
2456
2457 その制度が法律上規定されていることの意味はどこにあるか。
2458
2459
2460 〔設問3〕
2461 乙市の対岸にある甲県丙町には国立公園が存在し,
2462 その中のサンゴ礁が美しい海域は海域公園
2463 地区に指定されているが,
2464 そこでは,
2465 乙市とは逆に観光客が増大し,
2466 観光船の無秩序なクルージ
2467 ング,
2468 水上バイクの頻繁な走行,
2469 一部のマナーの悪いダイバーの行為により,
2470 サンゴの損傷その
2471 他野生生物への影響が問題となっている。
2472
2473 かかる行為を規制するために,
2474 環境大臣は行政上の措
2475 置を講ずることを検討している。
2476
2477 どのような措置が考えられるか。
2478
2479 制度の趣旨を踏まえて論ぜよ。
2480
2481
2482
2483 - 31 -
2484
2485 - 32 -
2486
2487 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
2488
2489 - 33 -
2490
2491 [国際関係法(公法系)]
2492 〔第1問〕(配点:50)
2493 甲国と乙国は隣国であるが政治的に対立していた。
2494
2495 乙国は産油国で丙国等に原油を輸出してきた
2496 が,
2497 乙国の港に出入りする船舶は乙国領海と甲国排他的経済水域の一部との間にあるA海峡の甲国
2498 領海内に位置する航路を通過しなければならなかった。
2499
2500 後に乙国と丙国は安全保障条約を締結し,
2501
2502 乙国が丙国の軍隊に乙国施設・区域の使用を許可し,
2503 丙国が乙国に武器を供与することを定めると
2504 ともに,
2505 第5条に「各締約国は,
2506 乙国領域における,
2507 いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和
2508 及び安全を危うくするものと認め共通の危険に対処するように行動する」という規定を置いた。
2509
2510 こ
2511 れに反発した甲国政府は,
2512 「いかなる外国の軍艦及び乙国向け武器積載船によるA海峡の甲国領海
2513 内航路の通航も甲国の平和と安全を脅かすものであり,
2514 甲国は,
2515 許可なく同航路を通航するこれら
2516 の船舶に対して必要な措置を採る」との声明を発表した。
2517
2518
2519 その後,
2520 乙国では専制的なX大統領の退陣を求める全国的な民主化運動が起こったが,
2521 X大統領
2522 が政府軍を使って容赦ない弾圧をしたために国民に多数の犠牲者が出た。
2523
2524 甲国に避難した乙国民主
2525 化運動の各派指導者たちは甲国政府から会議場等の便宜提供や対立意見の調整などのあっせんを受
2526 けて,
2527 Y連盟という反政府政治組織とその軍事部門であるZ軍の創設に合意した。
2528
2529 乙国に拠点を戻
2530 したY連盟とZ軍は,
2531 X大統領政府に対する武力闘争を開始し,
2532 乙国は内戦状態になった。
2533
2534 X大統
2535 領政府と対立する甲国政府は,
2536 Y連盟に対して財政支援,
2537 訓練及び武器供与を行った。
2538
2539 Z軍の作戦
2540 行動はY連盟の政治的決定に基づきZ軍幹部が指揮しているが,
2541 甲国政府から供与される資金,
2542 訓
2543 練,
2544 武器及び情報がなければ,
2545 X大統領の政府軍と効果的にゲリラ戦を続けることはできなかった。
2546
2547
2548 2013年秋,
2549 Y連盟指導部の決定に基づきZ軍幹部は乙国国営原油生産施設(以下「原油生産施
2550 設」という。
2551
2552 )の破壊作戦を立案・指揮した。
2553
2554 同作戦は,
2555 甲国で訓練を受けたZ軍戦闘員が甲国か
2556 ら供与された武器・装備を動員して電撃的に実行し,
2557 Z軍は原油生産施設の基幹部分を破壊した後
2558 撤収した。
2559
2560 X大統領は,
2561 Y連盟及びZ軍による原油生産施設の破壊行為を甲国自身に帰属する国際
2562 違法行為であると非難した。
2563
2564
2565 Z軍が原油生産施設を破壊・撤収した1か月後,
2566 丙国の空軍部隊は,
2567 甲国の武器貯蔵庫,
2568 軍事基
2569 地,
2570 港湾の集荷場など数か所を爆撃し,
2571 これらを破壊した。
2572
2573 丙国政府は国際連合安全保障理事会(以
2574 下「国連安保理」という。
2575
2576 )議長に宛てた書簡で,
2577 「第1に,
2578 原油生産施設の破壊行為の後も,
2579 乙国
2580 で軍事行動を続けているY連盟及びZ軍に対して,
2581 甲国政府は,
2582 財政支援,
2583 訓練及び武器供与とい
2584 う形態の援助を継続していた。
2585
2586 第2に,
2587 甲国からのこれらの援助を利用して,
2588 Y連盟及びZ軍が乙
2589 国化学工場施設に対する新たな軍事作戦を決定し,
2590 そのためにZ軍部隊が行動を開始したという情
2591 報を乙国から入手した。
2592
2593 Z軍による同施設の武力攻撃は,
2594 甲国による武力攻撃とみなし得る。
2595
2596 した
2597 がって丙国は,
2598 安全保障条約第5条の義務に基づいて独自の決定により甲国に対する軍事行動を実
2599 施した。
2600
2601 この行動は,
2602 国際連合憲章第51条の集団的自衛権の行使に該当する」と述べた。
2603
2604
2605 乙国内の内戦又は甲国,
2606 乙国,
2607 丙国間に生じた一連の事態について,
2608 国連安保理は,
2609 有効な行動
2610 がとれていないものとする。
2611
2612 また,
2613 甲国,
2614 乙国及び丙国は,
2615 全て国際連合加盟国であり,
2616 海洋法に
2617 関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。
2618
2619 )の締約国である。
2620
2621
2622 以上を踏まえて,
2623 下記の設問に答えなさい。
2624
2625
2626 問1.A海峡に国連海洋法条約第45条の規定が適用されるとした場合,
2627 「いかなる外国の軍艦及び
2628 乙国向け武器積載船によるA海峡の甲国領海内航路の通航も甲国の平和と安全を脅かすものであ
2629 り,
2630 甲国は,
2631 許可なく同航路を通航するこれらの船舶に対して必要な措置を採る」という甲国政
2632 府の声明は国際法上どのように評価できるかを論じなさい。
2633
2634
2635 問2.Z軍による原油生産施設の破壊行為は,
2636 甲国に帰属する国際違法行為だといえるか検討しなさ
2637 い。
2638
2639
2640 - 34 -
2641
2642 問3.丙国空軍による甲国の爆撃に対して,
2643 甲国は,
2644 丙国政府が国連安保理議長に宛てた書簡におい
2645 て述べた主張に対して,
2646 どのような反論を行うことができるかを論じなさい。
2647
2648
2649
2650 - 35 -
2651
2652 〔第2問〕(配点:50)
2653 甲国と乙国は,
2654 共にヘーグ陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(以下「ヘーグ陸戦条約」という。
2655
2656 )の
2657 当事国であり,
2658 かつ,
2659 同条約批准後に交戦状態となった。
2660
2661 甲国の上級軍人Aは,
2662 乙国との交戦中に
2663 捕虜となり,
2664 乙国の捕虜収容所に送られ,
2665 過酷な強制労働等の虐待を受けた。
2666
2667
2668 交戦状態の終了後,
2669 甲国は,
2670 事実上分裂し,
2671 それまで唯一の政府であったX政府が支配する地域
2672 と新しく生まれたY政府が支配する地域に分裂したまま,
2673 膠着状態が続いている。
2674
2675 Aは,
2676 帰国後Y
2677 政府の支配地域に居住している。
2678
2679 甲国の分裂後,
2680 しばらくの間,
2681 Y政府の支配地域には,
2682 Y政府の
2683 要請に基づき,
2684 隣国丙の軍隊が駐屯し,
2685 治安と防衛を担っていた。
2686
2687 Y政府は,
2688 政府樹立当時,
2689 兵員,
2690
2691 治安要員共に人員数が不足し,
2692 丙国の軍隊派遣なくしては,
2693 単独では政権を十分に維持することが
2694 できなかった。
2695
2696
2697 XY両政府とも甲国の正統政府であると主張して譲らず,
2698 他方を否認し,
2699 現在に至るまで,
2700 他方
2701 と国交を結んだ国とは外交関係を断絶するとの政策を維持している。
2702
2703
2704 丙国は,
2705 自らの軍隊をY政府の支配地域に駐屯させて治安と防衛の役割を担わせた直後,
2706 直ちに
2707 丙国の外交使節団をX政府の所在地から退去させるとともに,
2708 Y政府を甲国の正統政府として承認
2709 し,
2710 Y政府の所在地に外交使節団を派遣した。
2711
2712 これに対してX政府は厳重な抗議を行った。
2713
2714
2715 乙国は,
2716 終戦直後から,
2717 X政府を引き続き甲国の正統政府として扱っていたが,
2718 丙国の軍隊がY
2719 政府支配地域から完全に撤収後,
2720 Y政府が自らの支配地域において十分に治安と防衛の役割を果た
2721 すようになってから,
2722 X政府に派遣していた外交使節団を引き揚げ,
2723 Y政府を甲国の正統政府とし
2724 て承認し,
2725 Y政府の所在地に外交使節団を派遣した。
2726
2727 その際,
2728 Y政府は,
2729 甲乙両国間の戦争に起因
2730 する賠償請求権は一切放棄することを一方的に宣言した。
2731
2732
2733 上記の乙国によるY政府への政府承認切替え後,
2734 Aは,
2735 乙国の裁判所において,
2736 ヘーグ陸戦条約
2737 第3条(「前記規則(陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則)ノ条項ニ違反シタル交戦当事者ハ,
2738 損害アル
2739 トキハ,
2740 之カ賠償ノ責ヲ負フヘキモノトス。
2741
2742 交戦当事者ハ,
2743 其ノ軍隊ヲ組成スル人員ノ一切ノ行為
2744 ニ付責任ヲ負フ」)に基づき,
2745 虐待への賠償を求めて,
2746 乙国を提訴した。
2747
2748 ヘーグ陸戦条約の附属書
2749 である陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則(以下「ヘーグ陸戦規則」という。
2750
2751 )は,
2752 第2章「俘虜」を置
2753 き,
2754 捕虜の保護を規定しているが,
2755 特に第4条では,
2756 「俘虜ハ人道ヲ以テ取扱ハルヘシ」と規定し
2757 ている。
2758
2759
2760 以上を踏まえて,
2761 下記の設問に答えなさい。
2762
2763
2764 問1.Aが,
2765 乙国裁判所において賠償請求をする場合に,
2766 ヘーグ陸戦条約及びヘーグ陸戦規則は根拠
2767 となり得るか論じなさい。
2768
2769
2770 問2.Aの賠償請求に関して,
2771 乙国は,
2772 Y政府が行った請求権放棄の一方的宣言をその反論の根拠と
2773 することができるかを論じなさい(請求権の放棄の範囲については論じなくてよい。
2774
2775 )
2776 問3.丙国のY政府承認に対して,
2777 X政府が,
2778 引き続き甲国を代表しているとの立場から,
2779 どのよう
2780 な抗議を行い得るか,
2781 乙国のY政府承認との比較において論じなさい。
2782
2783
2784
2785 - 36 -
2786
2787 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
2788
2789 - 37 -
2790
2791 [国際関係法(私法系)]
2792 〔第1問〕(配点:50)
2793 日本の大学に留学していた甲国人男Pは日本人女Qと知り合い,
2794 日本において婚姻を挙行した後,
2795
2796 直ちに甲国において婚姻生活を営み始めた。
2797
2798 しかし,
2799 両者の関係は当初から必ずしも円満ではなく,
2800
2801 甲国における婚姻生活が5年余に及んだ時にPとQは熟談し,
2802 婚姻関係の解消が双方にとり最善で
2803 あるとの結論に達した。
2804
2805 そこで,
2806 甲国において,
2807 下記の@からBまでの甲国の法規に従い離婚した。
2808
2809
2810 なお,
2811 法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)(以下「通則法」という。
2812
2813 )第41条
2814 の適用はなく,
2815 甲国においては次の法規が通用しているものとする。
2816
2817
2818 @
2819
2820 夫は,
2821 その意思表示により妻と離婚をすることができる。
2822
2823
2824
2825 A
2826
2827 妻は,
2828 離婚を請求することができない。
2829
2830
2831
2832 B
2833
2834 妻の面前で夫の離婚の意思を口授された公証人は,
2835 公正証書を作成し,
2836 その謄本を妻に与え
2837 なければならない。
2838
2839
2840
2841 C
2842 〔設
2843
2844 子は,
2845 常に父の親権に服する。
2846
2847
2848 問〕
2849
2850 1.日本に帰国したQは,
2851 戸籍法に従い,
2852 甲国の公証人が作成した離婚証書の謄本を添付して日本
2853 の戸籍管掌者に対してPとの離婚を報告する届出をした。
2854
2855 この謄本を見た戸籍管掌者は,
2856 「Pと
2857 Qの離婚は夫の一方的な意思表示によって成立した離婚であり,
2858 このような離婚を認めることは
2859 日本の公序良俗に反するから,
2860 当該離婚は日本においては効力を有しないのではないか」との疑
2861 念を抱いた。
2862
2863 PとQの離婚が日本において効力を有するか,
2864 論じなさい。
2865
2866
2867 2.他方,
2868 Pは,
2869 Qと離婚した後に再来日し日本において就労していたところ,
2870 乙国人女Rと知り
2871 合い,
2872 日本の戸籍管掌者に婚姻の届出をし,
2873 受理された。
2874
2875 そして,
2876 婚姻の約1年後に両者の間に
2877 甲国人子Cが出生した。
2878
2879 しかし,
2880 Cが満6歳に達した時に,
2881 Pは,
2882 無免許で自動車を運転してい
2883 た際に交通事故を起こして被害者を死亡させてしまい,
2884 実刑判決の確定により日本において服役
2885 することになった。
2886
2887 未成年者Cは,
2888 現在Rが養育しており,
2889 日本の小学校に通学している。
2890
2891
2892
2893
2894 PとRは離婚することに合意しているとする。
2895
2896 通則法第42条の適用はないとした場合に,
2897
2898 次の問題にはいずれの国の法が適用されるか。
2899
2900
2901 ア.PとRは,
2902 協議離婚という離婚の方法を採ることができるか。
2903
2904
2905 イ.Pは,
2906 出所後において,
2907 Cと面会交流をすることができるか。
2908
2909
2910
2911
2912
2913 Rは,
2914 日本の裁判所に離婚の訴えを提起し,
2915 同時に自らをCの親権者とするよう求めている
2916 とする。
2917
2918 親権者の指定につき日本の裁判所が国際裁判管轄権を有するとした場合に,
2919 日本の裁
2920 判所はRを親権者として指定することができるか。
2921
2922
2923
2924 - 38 -
2925
2926 〔第2問〕(配点:50)
2927 Xは,
2928 日本に居住する日本人であり,
2929 甲国には営業所や財産を一切有していない。
2930
2931 他方,
2932 Yは,
2933
2934 甲国法に基づき設立され甲国に主たる営業所を有する,
2935 医療機器の製造販売を業とする会社である。
2936
2937
2938 Yは,
2939 日本においては事業を行っておらず,
2940 営業所や子会社も有していない。
2941
2942
2943 Yは,
2944 自社製品を日本で販売するために,
2945 日本において子会社(以下「本件子会社」という。
2946
2947 )
2948 を設立する計画(以下「本件計画」という。
2949
2950 )を有している。
2951
2952 Yは,
2953 本件計画のために,
2954 本件子会
2955 社の設立に関する事務をXに委任することとし,
2956 その対価としてXに対して報酬の支払を約束した
2957 (以下,
2958 この契約を「本件契約」という。
2959
2960 )。
2961
2962
2963 本件契約には管轄に関する合意や当該報酬の支払地についての合意はなかったものとし,
2964 以下の
2965 1から3までの設問は各々独立しているものとして答えなさい。
2966
2967
2968 〔設
2969
2970 問〕
2971
2972 1.Xは,
2973 本件子会社が設立された後にYが自社製品を本件子会社に販売する場合に備えて,
2974 Yと
2975 本件子会社との間で締結される売買契約の契約書の作成を検討し始めた。
2976
2977 甲国は,
2978 国際物品売買
2979 契約に関する国際連合条約(平成20年7月7日条約第8号)(以下「条約」という。
2980
2981 )の締約国
2982 である。
2983
2984
2985 Yは,
2986 Yと本件子会社との売買契約には,
2987 条約ではなく専ら甲国の国内法源である同国の実質
2988 法の適用を欲している。
2989
2990 日本が法廷地国となった場合,
2991 「この売買契約は甲国法による」との条
2992 項を契約書に設けるだけで,
2993 当該売買契約を確実にYの意向に沿ったものとすることができるか。
2994
2995
2996 「隔地者間の契約は,
2997 承諾の通知を発した時に成立する」と定めている甲国民法P条の規定に言
2998 及しながら答えなさい。
2999
3000 なお,
3001 条約第1条第1項(b)の規定の適用はないものとする。
3002
3003
3004 2.本件契約には,
3005 準拠法が明示的にも黙示的にも定められていなかったとする。
3006
3007 本件契約の準拠
3008 法として推定されるのはいずれの国の法か。
3009
3010
3011 3. 本件計画が本件子会社の設立登記を待つだけの段階に至った時,
3012 経営状態が急速に悪化したY
3013 は,
3014 日本への進出計画を断念し,
3015 このことをXに通知した。
3016
3017 そこで,
3018 Xは,
3019 未払のままになって
3020 いる報酬の支払をYに要求した。
3021
3022 これに対して,
3023 Yは,
3024 未払の報酬はないと主張し,
3025 Xに対する
3026 債務不存在確認の訴えを甲国裁判所において提起したところ,
3027 当該裁判所はYの請求を認容する
3028 判決をし,
3029 この判決は確定した。
3030
3031
3032 Xが応訴しなかったとすると,
3033 当該判決が日本で効力を有するために必要な甲国裁判所の国際
3034 裁判管轄権を基礎付ける事由は存在するか。
3035
3036 XとYは本件契約の締結時に契約準拠法として甲国
3037 法を明示的に指定し,
3038 かつ,
3039 甲国民法Q条は「金銭債務の弁済は債務者の現在の住所においてし
3040 なければならない」と定めているものとして答えなさい。
3041
3042
3043
3044 - 39 -
3045
3046